(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】アンチセンス核酸
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20220311BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20220311BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20220311BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/7088
A61P21/04
A61K48/00
(21)【出願番号】P 2020039457
(22)【出願日】2020-03-09
(62)【分割の表示】P 2017092674の分割
【原出願日】2012-12-27
【審査請求日】2020-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2011288040
(32)【優先日】2011-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2012043092
(32)【優先日】2012-02-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004156
【氏名又は名称】日本新薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510147776
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100141195
【氏名又は名称】西澤 恵美子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 直樹
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 春奈
(72)【発明者】
【氏名】武田 伸一
(72)【発明者】
【氏名】永田 哲也
【審査官】中山 基志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/048586(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/000057(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/150408(WO,A2)
【文献】アンチセンス核酸の分子設計,東亞合成研究年報TREND1998,2012年03月27日,https://web.archive.org/web/20120327073800/http://www2.toagosei.co.jp/develop/trend/No1/1anti.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトジストロフィン遺伝子の第50番目のエクソンのスキッピングを可能にするアンチセンスオリゴマーであって、ヒトジストロフィン遺伝子の第50番目のエクソンの5’末端から第108~127番目
のヌクレオチドからなる配列に相補的な塩基配列からな
り、
5’末端が、下記化学式(3)
の基である、アンチセンスオリゴマーまたはその医薬的に許容可能な塩もしくは水和物。
【請求項2】
配列番号7の第3~22番目
のヌクレオチドからなる配列からなる、請求項1に記載のアンチセンスオリゴマーまたはその医薬的に許容可能な塩もしくは水和物。
【請求項3】
オリゴヌクレオチドである、請求項
1又は2に記載のアンチセンスオリゴマーまたはその医薬的に許容可能な塩もしくは水和物。
【請求項4】
前記オリゴヌクレオチドを構成する少なくとも1つのヌクレオチドの糖部分及び/又はリン酸結合部分が修飾されている、請求項
3に記載のアンチセンスオリゴマーまたはその医薬的に許容可能な塩もしくは水和物。
【請求項5】
前記オリゴヌクレオチドを構成する少なくとも1つのヌクレオチドの糖部分が、2’位の-OH基が、OR、R、R’OR、SH、SR、NH
2、NHR、NR
2、N
3、CN、F、Cl、Br及びIからなる群より選択されるいずれかの基で置換されたリボースである、請求項
4に記載のアンチセンスオリゴマーまたはその医薬的に許容可能な塩もしくは水和物。
(上記Rは、アルキル又はアリールを示し、上記R’は、アルキレンを示す。)
【請求項6】
前記オリゴヌクレオチドを構成する少なくとも1つのヌクレオチドのリン酸結合部分が、ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合、アルキルホスホネート結合、ホスホロアミデート結合、及びボラノフォスフェート結合からなる群より選択されるいずれか1つのものである、請求項
4又は5に記載のアンチセンスオリゴマーまたはその医薬的に許容可能な塩もしくは水和物。
【請求項7】
モルホリノオリゴマーである、請求項
1又は2に記載のアンチセンスオリゴマーまたはその医薬的に許容可能な塩もしくは水和物。
【請求項8】
ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマーである、請求項
7に記載のアンチセンスオリゴマーまたはその医薬的に許容可能な塩もしくは水和物。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴマー、その医薬的に許容可能な塩又は水和物を有効成分とする、筋ジストロフィー治療用医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトジストロフィン遺伝子の第55、45、50及び44番目のエクソンのスキッピ
ングを可能にするアンチセンスオリゴマー及び該オリゴマーを含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は出生男子約3,500人に1人が発症する最も頻
度の高い遺伝性進行性筋萎縮症である。乳幼児期には正常のヒトとほとんど変わらない運
動機能を示すが、4~5歳頃から筋力低下がみられる。その後筋力低下は進行し12歳頃まで
に歩行不能になり、20歳代で心不全または呼吸器不全により死に至る重篤な疾患である。
現在、DMDに対する有効な治療法はなく、新たな治療薬の開発が強く求められている。
【0003】
DMDはジストロフィン遺伝子の変異が原因であることが知られている。ジストロフィン
遺伝子はX染色体に存在し、220万塩基対のDNAから成る巨大な遺伝子である。DNAからmRNA
前駆体に転写され、さらにスプライシングによりイントロンが除かれ79のエクソンが結合
したmRNAが合成される。このmRNAから3,685のアミノ酸に翻訳され、ジストロフィンタン
パク質が生成される。ジストロフィンタンパク質は筋細胞の膜安定性の維持に関与してお
り、筋細胞を壊れにくくするために必要である。DMD患者のジストロフィン遺伝子は変異
を有するため、筋細胞において機能を有するジストロフィンタンパク質が殆ど発現されな
い。そのため、DMD患者体内では、筋細胞の構造を維持できなくなり、多量のカルシウム
イオンが筋細胞内に流れ込む。その結果、炎症に似た反応が生じ、線維化が進むために筋
細胞が再生されにくくなる。
【0004】
ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)もジストロフィン遺伝子の変異が原因であるが、
その症状は筋萎縮による筋力低下を呈するものの一般にDMDと比較して軽く、筋力低下の
進行も遅く、多くの場合、成人期に発症する。DMDとBMDとの臨床症状の違いは、変異によ
りジストロフィンのmRNAがジストロフィンタンパク質へと翻訳される際のアミノ酸読み取
り枠が破壊されるか、あるいは維持されるかによるものと考えられている(非特許文献1
)。つまり、DMDでは、アミノ酸読み取り枠がずれる変異を有することにより、機能を持
つジストロフィンタンパク質がほとんど発現しないが、BMDでは変異によりエクソンの一
部は欠失しているが、アミノ酸読み取り枠は維持されているために不完全ながらも機能を
有するジストロフィンタンパク質が産生される。
【0005】
DMDの治療法として、エクソンスキッピング法が期待されている。この方法は、スプラ
イシングを改変することでジストロフィンのmRNAのアミノ酸読み取り枠を修復し、部分的
に機能を回復したジストロフィンタンパク質の発現を誘導する方法である(非特許文献2
)。エクソンスキッピングの対象となるアミノ酸配列部分は失われることになる。そのた
めこの治療で発現されるジストロフィンタンパク質は正常のものより短くなるが、アミノ
酸読み取り枠が維持されるために筋細胞を安定化する機能が部分的に保持される。従って
、エクソンスキッピングにより、DMDは、より軽症のBMDと同じような症状を呈するように
なると期待されている。エクソンスキッピング法は、マウスやイヌによる動物実験を経て
、ヒトDMD患者に対する臨床試験が行われている。
【0006】
エクソンスキッピングは、5’若しくは3’スプライス部位のいずれか若しくは両方、又
はエクソンの内部を標的とするアンチセンス核酸の結合により誘導することができる。エ
クソンは両方のスプライス部位がスプライソソーム複合体によって認識された場合のみmR
NAに包含される。従って、スプライス部位をアンチセンス核酸でターゲッティングするこ
とにより、エクソンスキッピングを誘導することができる。また、エクソンがスプライシ
ングの機構に認識されるためにはエクソンスプライシングエンハンサー(ESE)へのSRタ
ンパク質の結合が必要であると考えられており、ESEをターゲッティングすることでもエ
クソンのスキッピングを誘導することができる。
【0007】
ジストロフィン遺伝子の変異はDMD患者によって異なるため、遺伝子変異の場所や種類
に応じたアンチセンス核酸が必要になる。これまでに、西オーストラリア大学のSteve Wi
ltonらによって79個全てのエクソンに対してエクソンスキッピングを誘導するアンチセン
ス核酸が作製されており(非特許文献3)、オランダのAnnemieke Aartsma-Rusらによって
39種類のエクソンに対してエクソンスキッピングを誘導するアンチセンス核酸が作られて
いる(非特許文献4)。
【0008】
全DMD患者の20%程度は、第55、45、50及び44番目のエクソン(以下、それぞれ「エク
ソン55」、「エクソン45」、「エクソン50」及び「エクソン44」という)をスキッピング
することで治療可能と考えられている。近年では、ジストロフィン遺伝子のエクソン55、
45、50及び44をエクソンスキッピングのターゲットとした研究について、複数の研究機関
から報告がなされている(特許文献1~8)。しかしながら、エクソン55、45、50及び44を
患者細胞にて高効率にスキッピングさせる技術は、いまだに確立されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開公報 WO 2006/000057
【文献】国際公開公報 WO 2004/048570
【文献】米国特許公開公報 US 2010/0168212
【文献】国際公開公報 WO 2010/048586
【文献】国際公開公報 WO 2004/083446
【文献】国際公開公報 WO 2010/050801
【文献】国際公開公報 WO 2009/139630
【非特許文献】
【0010】
【文献】Monaco A. P. et al., Genomics 1988; 2: p. 90-95
【文献】Matsuo M., Brain Dev 1996; 18: p. 167-172
【文献】Wilton S. D., e t al., Molecular Therapy 2007: 15: p. 1288-96
【文献】Annemieke Aartsma-Rus et al., (2002) Neuromuscular Disorders 12: S71-S77
【文献】Linda J. Popplewell et al., (2010) Neuromuscular Disorders , vol. 20, no. 2, p. 102-10
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のような状況において、ジストロフィン遺伝子のエクソン55、45、50及び44のスキ
ッピングを強く誘導するアンチセンスオリゴマー及びそのオリゴマーを含む筋ジストロフ
ィー治療薬が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、ジストロフィン遺伝子の構造を詳細に研究した結果、ジストロフィン遺
伝子のmRNA前駆体(以下、「pre-mRNA」という)のうちエクソン55の5’末端から第1~21
番目、第11~31番目及び第14~34番目周辺のヌクレオチドからなる配列をアンチセンスオ
リゴマーでターゲッティングすることにより、高効率にエクソン55のスキッピングを誘導
できることを見出した。
また、本発明者らは、ジストロフィン遺伝子pre-mRNAのうちエクソン45の5’末端から
第1~25番目及び第6~30番目周辺のヌクレオチドからなる配列をアンチセンスオリゴマー
でターゲッティングすることにより、高効率にエクソン45のスキッピングを誘導できるこ
とを見出した。
さらに、本発明者らは、ジストロフィン遺伝子pre-mRNAのうちエクソン50の5’末端か
ら第107~127番目周辺のヌクレオチドからなる配列をアンチセンスオリゴマーでターゲッ
ティングすることにより、高効率にエクソン50のスキッピングを誘導できることを見出し
た。
またさらに、本発明者らは、ジストロフィン遺伝子pre-mRNAのうちエクソン44の5’末
端から第11~32番目及び第26~47番目周辺のヌクレオチドからなる配列をアンチセンスオ
リゴマーでターゲッティングすることにより、高効率にエクソン44のスキッピングを誘導
できることを見出した。
本発明者らは、この知見に基づき、本発明を完成させた。
【0013】
即ち、本発明は、以下のとおりである。
[1] ヒトジストロフィン遺伝子の第55番目のエクソンのスキッピングを可能にするア
ンチセンスオリゴマーであって、ヒトジストロフィン遺伝子の第55番目のエクソンの5’
末端から第-2~19番目、第-2~20番目、第-2~21番目、第-2~22番目、第-2~23番目、第
-1~19番目、第-1~20番目、第-1~21番目、第-1~22番目、第-1~23番目、第1~19番目
、第1~20番目、第1~21番目、第1~22番目、第1~23番目、第2~19番目、第2~20番目、
第2~21番目、第2~22番目、第2~23番目、第3~19番目、第3~20番目、第3~21番目、第
3~22番目、第3~23番目、第9~29番目、第9~30番目、第9~31番目、第9~32番目、第9
~33番目、第10~29番目、第10~30番目、第10~31番目、第10~32番目、第10~33番目、
第11~29番目、第11~30番目、第11~31番目、第11~32番目、第11~33番目、第12~29番
目、第12~30番目、第12~31番目、第12~32番目、第12~33番目、第13~29番目、第13~
30番目、第13~31番目、第13~32番目、第13~33番目、第12~34番目、第12~35番目、第
12~36番目、第13~34番目、第13~35番目、第13~36番目、第14~32番目、第14~33番目
、第14~34番目、第14~35番目、第14~36番目、第15~32番目、第15~33番目、第15~34
番目、第15~35番目、第15~36番目、第16~32番目、第16~33番目、第16~34番目、第16
~35番目又は第16~36番目のヌクレオチドからなる配列のいずれか1つに相補的な塩基配
列からなる、アンチセンスオリゴマー。
[2] ヒトジストロフィン遺伝子の第45番目のエクソンのスキッピングを可能にするア
ンチセンスオリゴマーであって、ヒトジストロフィン遺伝子の第45番目のエクソンの5’
末端から第-3~19番目、第-3~20番目、第-3~21番目、第-3~22番目、第-3~23番目、第
-2~19番目、第-2~20番目、第-2~21番目、第-2~22番目、第-2~23番目、第-1~19番目
、第-1~20番目、第-1~21番目、第-1~22番目、第-1~23番目、第1~19番目、第1~20番
目、第1~21番目、第1~22番目、第1~23番目、第2~19番目、第2~20番目、第2~21番目
、第2~22番目、第2~23番目、第-2~24番目、第-2~25番目、第-2~26番目、第-2~27番
目、第-1~24番目、第-1~25番目、第-1~26番目、第-1~27番目、第1~24番目、第1~25
番目、第1~26番目、第1~27番目、第2~24番目、第2~25番目、第2~26番目、第2~27番
目、第3~23番目、第3~24番目、第3~25番目、第3~26番目、第3~27番目、第4~28番目
、第4~29番目、第4~30番目、第4~31番目、第4~32番目、第5~28番目、第5~29番目、
第5~30番目、第5~31番目、第5~32番目、第6~28番目、第6~29番目、第6~30番目、第
6~31番目、第6~32番目、第7~28番目、第7~29番目、第7~30番目、第7~31番目、第7
~32番目、第8~28番目、第8~29番目、第8~30番目、第8~31番目又は第8~32番目のヌ
クレオチドからなる配列のいずれか1つに相補的な塩基配列からなる、アンチセンスオリ
ゴマー。
[3] ヒトジストロフィン遺伝子の第50番目のエクソンのスキッピングを可能にするア
ンチセンスオリゴマーであって、ヒトジストロフィン遺伝子の第50番目のエクソンの5’
末端から第105~125番目、第105~126番目、第105~127番目、第105~128番目、第105~1
29番目、第106~125番目、第106~126番目、第106~127番目、第106~128番目、第106~1
29番目、第107~125番目、第107~126番目、第107~127番目、第107~128番目、第107~1
29番目、第108~125番目、第108~126番目、第108~127番目、第108~128番目、第108~1
29番目、第109~125番目、第109~126番目、第109~127番目、第109~128番目又は第109
~129番目のヌクレオチドからなる配列のいずれか1つに相補的な塩基配列からなる、アン
チセンスオリゴマー。
[4] ヒトジストロフィン遺伝子の第44番目のエクソンのスキッピングを可能にするア
ンチセンスオリゴマーであって、ヒトジストロフィン遺伝子の第44番目のエクソンの5’
末端から第9~30番目、第9~31番目、第9~32番目、第9~33番目、第9~34番目、第10~3
0番目、第10~31番目、第10~32番目、第10~33番目、第10~34番目、第11~30番目、第1
1~31番目、第11~32番目、第11~33番目、第11~34番目、第12~30番目、第12~31番目
、第12~32番目、第12~33番目、第12~34番目、第13~30番目、第13~31番目、第13~32
番目、第13~33番目、第13~34番目、第24~45番目、第24~46番目、第24~47番目、第24
~48番目、第24~49番目、第25~45番目、第25~46番目、第25~47番目、第25~48番目、
第25~49番目、第26~45番目、第26~46番目、第26~47番目、第26~48番目、第26~49番
目、第27~45番目、第27~46番目、第27~47番目、第27~48番目、第27~49番目、第28~
45番目、第28~46番目、第28~47番目、第28~48番目、第28~49番目、第29~45番目、第
29~46番目、第29~47番目、第29~48番目又は第29~49番目のヌクレオチドからなる配列
のいずれか1つに相補的な塩基配列からなる、アンチセンスオリゴマー。[5] ヒトジス
トロフィン遺伝子の第55番目のエクソンの5’末端から第1~21番目、第11~31番目又は第
14~34番目のヌクレオチドからなる配列に相補的な塩基配列からなる、前記[1]に記載
のアンチセンスオリゴマー。
[6] 配列番号5の第170~190番目、第160~180番目又は第157~177番目のヌクレオチド
からなる配列のいずれか1つの塩基配列からなる、前記[1]に記載のアンチセンスオリゴ
マー。
[7] ヒトジストロフィン遺伝子の第45番目のエクソンの5’末端から第-2~19番、第1
~21番目、第1~25番目又は第6~30番目のヌクレオチドからなる配列に相補的な塩基配列
からなる、前記[2]に記載のアンチセンスオリゴマー。
[8] 配列番号6の第158~178番目、第156~176番目、第152~176番目又は第147~171番
目のヌクレオチドからなる配列のいずれか1つの塩基配列からなる、前記[2]に記載のア
ンチセンスオリゴマー。
[9] ヒトジストロフィン遺伝子の第50番目のエクソンの5’末端から第106~126番又は
第107~127番目のヌクレオチドからなる配列に相補的な塩基配列からなる、前記[3]に
記載のアンチセンスオリゴマー。
[10] 配列番号7の第4~24番目又は第3~23番目のヌクレオチドからなる配列のいずれ
か1つの塩基配列からなる、前記[3]に記載のアンチセンスオリゴマー。
[11] ヒトジストロフィン遺伝子の第44番目のエクソンの5’末端から第11~32番、第
25~45番、第26~46番、第26~47番又は第27~47番目のヌクレオチドからなる配列に相補
的な塩基配列からなる、前記[4]に記載のアンチセンスオリゴマー。
[12] 配列番号8の第117~138番目、第104~124番目、第103~123番目、第102~123番
目又は第102~122番目のヌクレオチドからなる配列のいずれか1つの塩基配列からなる、
前記[4]に記載のアンチセンスオリゴマー。
[13] オリゴヌクレオチドである、前記[1]~[12]のいずれか1つに記載のアンチ
センスオリゴマー。
[14] 前記オリゴヌクレオチドを構成する少なくとも1つのヌクレオチドの糖部分及び
/又はリン酸結合部分が修飾されている、前記[13]に記載のアンチセンスオリゴマー。[
15] 前記オリゴヌクレオチドを構成する少なくとも1つのヌクレオチドの糖部分が、2
’位の-OH基が、OR、R、R’OR、SH、SR、NH
2、NHR、NR
2、N
3、CN、F、Cl、Br及びIからな
る群より選択されるいずれかの基で置換されたリボースである、前記[14]に記載のアン
チセンスオリゴマー。
(上記Rは、アルキル又はアリールを示し、上記R’は、アルキレンを示す。)
[16] 前記オリゴヌクレオチドを構成する少なくとも1つのヌクレオチドのリン酸結合
部分が、ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合、アルキルホスホネート結
合、ホスホロアミデート結合、及びボラノフォスフェート結合からなる群より選択される
いずれか1つのものである、前記[14]又は[15]に記載のアンチセンスオリゴマー。
[17] モルホリノオリゴマーである、前記[1]~[12]のいずれか1つに記載のアン
チセンスオリゴマー。
[18] ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマーである、前記[17]に記載のアン
チセンスオリゴマー。
[19] 5’末端が、下記化学式(1)~(3)のいずれかの基である、前記[17]又は[
18]に記載のアンチセンスオリゴマー。
【化1】
[20] 前記[1]~[19]のいずれか1つに記載のアンチセンスオリゴマー、その医薬
的に許容可能な塩又は水和物を有効成分とする、筋ジストロフィー治療用医薬組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明のアンチセンスオリゴマーにより、ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン55、45
、50及び44のスキッピングを高効率に誘導することが可能である。また、本発明の医薬組
成物を投与することにより、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの症状を、効果的に軽減す
ることができる。また、本発明のアンチセンスオリゴマーは、患者のエクソン配列のみを
ターゲットとするため、イントロンをターゲットとするアンチセンスオリゴマーの場合と
比べて、ターゲット配列が個体間(個人間)で保存されており、このため、個体差(個人
差)に関係なく良好なスキッピング効率が得られることを特徴とする。さらに、本発明の
アンチセンスオリゴマーは、その鎖長が20bp前後と短いため、従来のDMD治療を目的とし
たアンチセンスオリゴマー(25bp前後)と比べて、ターゲット配列中にSNP(Single Nucle
otide Polymorphism)等の個体(個人)間の変異を含む可能性が低く、この点からも個体
差(個人差)に関係なく良好なスキッピング効率が得られることを特徴とする。また、一
般的に短鎖のアンチセンスオリゴマーは比較的免疫を誘導しにくいため、本発明のアンチ
センスオリゴマーはサイトカイン等の誘導による副作用が生じにくいという特徴を有する
。
さらに、本発明のアンチセンスオリゴマーは、鎖長が短いため、製造コストが比較的安
価である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ヒト横紋筋肉腫細胞株(RD細胞)における2’-OMe-S-RNAオリゴマーによるヒトジストロフィン遺伝子エクソン45のスキッピング効率を示す図である。
【
図2】ヒト横紋筋肉腫細胞株(RD細胞)における2’-OMe-S-RNAオリゴマーによるヒトジストロフィン遺伝子エクソン45のスキッピング効率を示す図である。
【
図3】ヒト横紋筋肉腫細胞株(RD細胞)におけるPMOによるヒトジストロフィン遺伝子エクソン45のスキッピング効率を示す図である。
【
図4】ヒト横紋筋肉腫細胞株(RD細胞)におけるPMOによるヒトジストロフィン遺伝子エクソン45のスキッピング効率を示す図である。
【
図5】ヒトDMD患者由来線維芽細胞(GM05017細胞)にヒトMyoD遺伝子を導入して筋肉細胞に分化誘導した細胞におけるPMOによるヒトジストロフィン遺伝子エクソン45のスキッピング効率を示す図である。
【
図6】ヒト横紋筋肉腫細胞株(RD細胞)における2’-OMe-S-RNAオリゴマーによるヒトジストロフィン遺伝子エクソン55のスキッピング効率を示す図である。
【
図7】ヒト横紋筋肉腫細胞株(RD細胞)における2’-OMe-S-RNAオリゴマーによるヒトジストロフィン遺伝子エクソン55のスキッピング効率を示す図である。
【
図8】ヒト横紋筋肉腫細胞株(RD細胞)におけるPMOによるヒトジストロフィン遺伝子エクソン55のスキッピング効率を示す図である。
【
図9】ヒト横紋筋肉腫細胞株(RD細胞)における2’-OMe-S-RNAオリゴマーによるヒトジストロフィン遺伝子エクソン44のスキッピング効率を示す図である。
【
図10】ヒト横紋筋肉腫細胞株(RD細胞)における2’-OMe-S-RNAオリゴマーによるヒトジストロフィン遺伝子エクソン44のスキッピング効率を示す図である。
【
図11】ヒト横紋筋肉腫細胞株(RD細胞)におけるPMOによるヒトジストロフィン遺伝子エクソン44のスキッピング効率を示す図である。
【
図12】ヒト横紋筋肉腫細胞株(RD細胞)におけるPMOによるヒトジストロフィン遺伝子エクソン44のスキッピング効率を示す図である。
【
図13】ヒト横紋筋肉腫細胞株(RD細胞)におけるPMOによるヒトジストロフィン遺伝子エクソン50のスキッピング効率を示す図である。
【
図14】ヒト横紋筋肉腫細胞株(RD細胞)におけるPMOによるヒトジストロフィン遺伝子エクソン45のスキッピング効率を示す図である。
【
図15】ヒト横紋筋肉腫細胞株(RD細胞)におけるPMOによるヒトジストロフィン遺伝子エクソン45のスキッピング効率を示す図である。
【
図16】ヒト横紋筋肉腫細胞株(RD細胞)におけるPMOによるヒトジストロフィン遺伝子エクソン55のスキッピング効率を示す図である。
【
図17】ヒト横紋筋肉腫細胞株(RD細胞)におけるPMOによるヒトジストロフィン遺伝子エクソン55のスキッピング効率を示す図である。
【
図18】ヒト横紋筋肉腫細胞株(RD細胞)におけるPMOによるヒトジストロフィン遺伝子エクソン44のスキッピング効率を示す図である。
【
図19】ヒト横紋筋肉腫細胞株(RD細胞)におけるPMOによるヒトジストロフィン遺伝子エクソン50のスキッピング効率を示す図である。
【
図20】エクソン45欠損DMD患者由来線維芽細胞(GM05112細胞)におけるPMOによるヒトジストロフィン遺伝子エクソン44のスキッピング効率を示す図である。
【
図21】エクソン45欠損DMD患者由来線維芽細胞(GM05112細胞)におけるPMOによるヒトジストロフィン遺伝子エクソン44のスキッピング結果(ウェスタンブロッティング)を示す図である。
【
図22】エクソン45欠損DMD患者由来線維芽細胞(GM05112細胞)におけるPMOによるヒトジストロフィン遺伝子エクソン50のスキッピング結果(RT-PCR)を示す図である。
【
図23】エクソン45欠損DMD患者由来線維芽細胞(GM05112細胞)におけるPMOによるヒトジストロフィン遺伝子エクソン50のスキッピング効率を示す図である。
【
図24】エクソン45欠損DMD患者由来線維芽細胞(GM05112細胞)におけるPMOによるヒトジストロフィン遺伝子エクソン55のスキッピング結果(RT-PCR)を示す図である。
【
図25】エクソン45欠損DMD患者由来線維芽細胞(GM05112細胞)におけるPMOによるヒトジストロフィン遺伝子エクソン55のスキッピング効率を示す図である。
【
図26】エクソン8-9重複DMD患者由来線維芽細胞(11-0627細胞)におけるPMOによるヒトジストロフィン遺伝子エクソン50のスキッピング結果(RT-PCR)を示す図である。
【
図27】エクソン8-9重複DMD患者由来線維芽細胞(11-0627細胞)におけるPMOによるヒトジストロフィン遺伝子エクソン50のスキッピング効率を示す図である。
【
図28】エクソン51-55欠損DMD患者由来線維芽細胞(GM04364細胞)におけるPMOによるヒトジストロフィン遺伝子エクソン50のスキッピング結果(RT-PCR)を示す図である。
【
図29】エクソン51-55欠損DMD患者由来線維芽細胞(GM04364細胞)におけるPMOによるヒトジストロフィン遺伝子エクソン50のスキッピング効率を示す図である。
【
図30】エクソン54単独欠損DMD患者由来細胞(04-035細胞)におけるPMOによるヒトジストロフィン遺伝子エクソン55のスキッピング結果(RT-PCR)を示す図である。
【
図31】エクソン54単独欠損DMD患者由来細胞(04-035細胞)におけるPMOによるヒトジストロフィン遺伝子エクソン55のスキッピング効率を示す図である。
【発明の実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示で
あり、本発明をこの実施の形態のみに限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱
しない限り、様々な形態で実施をすることができる。
なお、本明細書において引用した全ての文献、および公開公報、特許公報その他の特許
文献は、参照として本明細書に組み込むものとする。また、本明細書は、本願優先権主張
の基礎となる2011年12月28日に出願された日本国特許出願(特願2011-288040号)及び201
2年02月29日に出願された日本国特許出願(特願2012-043092号)の明細書及び図面に記載
の内容を包含する。
以下、本発明を詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示で
あり、本発明をこの実施の形態のみに限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱
しない限り、様々な形態で実施をすることができる。
また、特に記載のない場合、アミノ酸配列は左端をアミノ末端及び右端をカルボキシル
末端とし、塩基配列は左端を5’末端及び右端を3’末端として表わすものとする。
【0017】
1.アンチセンスオリゴマー
本発明は、ヒトジストロフィン遺伝子の第55番目のエクソンのスキッピングを可能にす
るアンチセンスオリゴマーであって、ヒトジストロフィン遺伝子の第55番目のエクソンの
5’末端から第-2~19番目、第-2~20番目、第-2~21番目、第-2~22番目、第-2~23番目
、第-1~19番目、第-1~20番目、第-1~21番目、第-1~22番目、第-1~23番目、第1~19
番目、第1~20番目、第1~21番目、第1~22番目、第1~23番目、第2~19番目、第2~20番
目、第2~21番目、第2~22番目、第2~23番目、第3~19番目、第3~20番目、第3~21番目
、第3~22番目、第3~23番目、第9~29番目、第9~30番目、第9~31番目、第9~32番目、
第9~33番目、第10~29番目、第10~30番目、第10~31番目、第10~32番目、第10~33番
目、第11~29番目、第11~30番目、第11~31番目、第11~32番目、第11~33番目、第12~
29番目、第12~30番目、第12~31番目、第12~32番目、第12~33番目、第13~29番目、第
13~30番目、第13~31番目、第13~32番目、第13~33番目、第12~34番目、第12~35番目
、第12~36番目、第13~34番目、第13~35番目、第13~36番目、第14~32番目、第14~33
番目、第14~34番目、第14~35番目、第14~36番目、第15~32番目、第15~33番目、第15
~34番目、第15~35番目、第15~36番目、第16~32番目、第16~33番目、第16~34番目、
第16~35番目又は第16~36番目のヌクレオチドからなる配列(以下、「エクソン55標的配
列」ともいう。)のいずれか1つに相補的な塩基配列からなる、アンチセンスオリゴマー
(以下、「本発明のエクソン55スキッピングオリゴマー」という)を提供する。
【0018】
また、本発明は、ヒトジストロフィン遺伝子の第45番目のエクソンのスキッピングを可
能にするアンチセンスオリゴマーであって、ヒトジストロフィン遺伝子の第45番目のエク
ソンの5’末端から第-3~19番目、第-3~20番目、第-3~21番目、第-3~22番目、第-3~2
3番目、第-2~19番目、第-2~20番目、第-2~21番目、第-2~22番目、第-2~23番目、第-
1~19番目、第-1~20番目、第-1~21番目、第-1~22番目、第-1~23番目、第1~19番目、
第1~20番目、第1~21番目、第1~22番目、第1~23番目、第2~19番目、第2~20番目、第
2~21番目、第2~22番目、第2~23番目、第-2~24番目、第-2~25番目、第-2~26番目、
第-2~27番目、第-1~24番目、第-1~25番目、第-1~26番目、第-1~27番目、第1~24番
目、第1~25番目、第1~26番目、第1~27番目、第2~24番目、第2~25番目、第2~26番目
、第2~27番目、第3~23番目、第3~24番目、第3~25番目、第3~26番目、第3~27番目、
第4~28番目、第4~29番目、第4~30番目、第4~31番目、第4~32番目、第5~28番目、第
5~29番目、第5~30番目、第5~31番目、第5~32番目、第6~28番目、第6~29番目、第6
~30番目、第6~31番目、第6~32番目、第7~28番目、第7~29番目、第7~30番目、第7~
31番目、第7~32番目、第8~28番目、第8~29番目、第8~30番目、第8~31番目又は第8~
32番目のヌクレオチドからなる配列(以下、「エクソン45標的配列」ともいう。)のいず
れか1つに相補的な塩基配列からなる、アンチセンスオリゴマー(以下、「本発明のエク
ソン45スキッピングオリゴマー」という)を提供する。
【0019】
さらに、本発明は、ヒトジストロフィン遺伝子の第50番目のエクソンのスキッピングを
可能にするアンチセンスオリゴマーであって、ヒトジストロフィン遺伝子の第50番目のエ
クソンの5’末端から第105~125番目、第105~126番目、第105~127番目、第105~128番
目、第105~129番目、第106~125番目、第106~126番目、第106~127番目、第106~128番
目、第106~129番目、第107~125番目、第107~126番目、第107~127番目、第107~128番
目、第107~129番目、第108~125番目、第108~126番目、第108~127番目、第108~128番
目、第108~129番目、第109~125番目、第109~126番目、第109~127番目、第109~128番
目又は第109~129番目のヌクレオチドからなる配列(以下、「エクソン50標的配列」とも
いう。)のいずれか1つに相補的な塩基配列からなる、アンチセンスオリゴマー(以下、
「本発明のエクソン50スキッピングオリゴマー」という)を提供する。
【0020】
またさらに、本発明は、ヒトジストロフィン遺伝子の第44番目のエクソンのスキッピン
グを可能にするアンチセンスオリゴマーであって、ヒトジストロフィン遺伝子の第44番目
のエクソンの5’末端から第9~30番目、第9~31番目、第9~32番目、第9~33番目、第9~
34番目、第10~30番目、第10~31番目、第10~32番目、第10~33番目、第10~34番目、第
11~30番目、第11~31番目、第11~32番目、第11~33番目、第11~34番目、第12~30番目
、第12~31番目、第12~32番目、第12~33番目、第12~34番目、第13~30番目、第13~31
番目、第13~32番目、第13~33番目、第13~34番目、第24~45番目、第24~46番目、第24
~47番目、第24~48番目、第24~49番目、第25~45番目、第25~46番目、第25~47番目、
第25~48番目、第25~49番目、第26~45番目、第26~46番目、第26~47番目、第26~48番
目、第26~49番目、第27~45番目、第27~46番目、第27~47番目、第27~48番目、第27~
49番目、第28~45番目、第28~46番目、第28~47番目、第28~48番目、第28~49番目、第
29~45番目、第29~46番目、第29~47番目、第29~48番目又は第29~49番目のヌクレオチ
ドからなる配列(以下、「エクソン44標的配列」ともいう。)のいずれか1つに相補的な
塩基配列からなる、アンチセンスオリゴマー(以下、「本発明のエクソン44スキッピング
オリゴマー」という)を提供する。
以下、本発明のエクソン55、45、50及び44スキッピングオリゴマーを、「本発明のオリ
ゴマー」と総称する場合がある。
【0021】
[ヒトジストロフィン遺伝子の第55、45、50及び44番目のエクソン]
本発明において、「遺伝子」には、ゲノム遺伝子以外に、cDNA、mRNA前駆体及びmRNAも
含まれる。好ましくは、遺伝子は、mRNA前駆体、即ち、pre-mRNAである。
【0022】
ヒトゲノムにおいて、ヒトジストロフィン遺伝子は遺伝子座Xp21.2に存在する。ヒトジ
ストロフィン遺伝子は、3.0 Mbpのサイズを有しており、既知のヒト遺伝子としては最大
の遺伝子である。但し、ヒトジストロフィン遺伝子のコード領域はわずか14kbに過ぎず、
該コード領域は79個のエクソンとしてジストロフィン遺伝子内に分散している(Roberts,
RG., et al., Genomics, 16: 536-538 (1993))。ヒトジストロフィン遺伝子の転写物で
あるpre-mRNAは、スプライシングを受けて14kbの成熟mRNAを生成する。ヒトの野生型ジス
トロフィン遺伝子の塩基配列は公知である(GenBank Accession No. NM_004006)。
ヒトの野生型ジストロフィン遺伝子のエクソン55の5’末端から第-2 ~190番目のヌク
レオチドからなる塩基配列を配列番号1に示す。また、ヒトの野生型ジストロフィン遺伝
子のエクソン45の5’末端から第-3 ~176番目のヌクレオチドからなる塩基配列を配列番
号2に示す。また、ヒトの野生型ジストロフィン遺伝子のエクソン50の5’末端から第1 ~
109番目及びイントロン50の5’末端から第1 ~20番目のヌクレオチドからなる塩基配列を
配列番号3に示す。
また、ヒトの野生型ジストロフィン遺伝子のエクソン44の5’末端から第1 ~148番目の
ヌクレオチドからなる塩基配列を配列番号4に示す。
【0023】
本発明のオリゴマーは、ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン55、45、50又は44のスキ
ッピングにより、DMD型ジストロフィン遺伝子でコードされるタンパク質を、BMD型ジスト
ロフィンタンパク質に改変することを目的として作製されたものである。従って、本発明
のオリゴマーのエクソンスキッピングの対象となるジストロフィン遺伝子のエクソン55、
45、50及び44には、野生型だけではなく、その各変異型も含まれる。
変異型のヒトジストロフィン遺伝子のエクソン55、45、50及び44は、具体的には、以下
の(a)又は(b)に記載のポリヌクレオチドである。
(a)配列番号1(若しくは配列番号1の第3~192番目のヌクレオチドからなる配列)、2(
若しくは配列番号2の第4~179番目のヌクレオチドからなる配列)、3(若しくは配列番号
3の第1~109番目のヌクレオチドからなる配列)又は4の塩基配列と相補的な塩基配列から
なるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチ
ド;
(b)配列番号1(若しくは配列番号1の第3~192番目のヌクレオチドからなる配列)、2(
若しくは配列番号2の第4~179番目のヌクレオチドからなる配列)、3(若しくは配列番号
3の第1~109番目のヌクレオチドからなる配列)又は4の塩基配列に対して、90%以上の同
一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチド
【0024】
本明細書中、「ポリヌクレオチド」とは、DNA又はRNAを意味する。
本明細書中、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」と
は、例えば、配列番号1(若しくは配列番号1の第3~192番目のヌクレオチドからなる配列
)、2(若しくは配列番号2の第4~179番目のヌクレオチドからなる配列)、3(若しくは
配列番号3の第1~109番目のヌクレオチドからなる配列)又は4の塩基配列と相補的な塩基
配列からなるポリヌクレオチドの全部又は一部をプローブとして、コロニーハイブリダイ
ゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法又はサザンハイブリダイゼーション法
などを用いることにより得られるポリヌクレオチドをいう。ハイブリダイゼーションの方
法としては、例えば、"Sambrook & Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Man
ual Vol. 3, Cold Spring Harbor, Laboratory Press 2001"及び"Ausubel, Current Prot
ocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons 1987-1997"などに記載されている方
法を利用することができる。
【0025】
本明細書中、「相補的な塩基配列」とは、対象となる塩基配列とワトソン・クリック対
を形成する塩基配列に限定されるものではなく、揺らぎ塩基対(Wobble base pair)を形
成する塩基配列も含む。ここで、ワトソン・クリック対とは、アデニン-チミン、アデニ
ン-ウラシル及びグアニン-シトシン間に水素結合が形成される塩基対を意味し、揺らぎ塩
基対とは、グアニン-ウラシル、イノシン-ウラシル、イノシン-アデニン及びイノシン-シ
トシン間に水素結合が形成される塩基対を意味する。また、「相補的な塩基配列」とは、
対象となる塩基配列と100%の相補性を有していなくてもよく、例えば、対象となる塩
基配列に対して、1~3個、1~2個又は1個の非相補的塩基が含まれていてもよい。
【0026】
本明細書中、「ストリンジェントな条件」とは、低ストリンジェントな条件、中ストリ
ンジェントな条件及び高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェン
トな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、32
℃の条件である。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハ
ルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、42℃又は5×SSC、1% SDS、50 mM Tris-HCl(
pH7.5)、50%ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例
えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、50℃又は0.2×SSC、0
.1% SDS、65℃の条件である。これらの条件において、温度を上げるほど高い同一性を有
するポリヌクレオチドが効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼー
ションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長
さ、イオン強度、時間、塩濃度等の複数の要素が考えられ、当業者であればこれらの要素
を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0027】
なお、ハイブリダイゼーションに市販のキットを用いる場合は、例えばAlkphos Direct
Labelling and Detection System(GE Healthcare)を用いることができる。この場合は
、キットに添付のプロトコールにしたがい、標識したプローブとのインキュベーションを
一晩行った後、メンブレンを55℃の条件下で0.1%(w/v)SDSを含む1次洗浄バッファーで
洗浄後、ハイブリダイズしたポリヌクレオチドを検出することができる。あるいは、配列
番号1(若しくは配列番号1の第3~192番目のヌクレオチドからなる配列)、2(若しくは
配列番号2の第4~179番目のヌクレオチドからなる配列)、3(若しくは配列番号3の第1~
109番目のヌクレオチドからなる配列)又は4の塩基配列と相補的な塩基配列の全部又は一
部に基づいてプローブを作製する際に、市販の試薬(例えば、PCRラベリングミックス(
ロシュ・ダイアグノス社)等)を用いて該プローブをジゴキシゲニン(DIG)ラベルした
場合には、DIG核酸検出キット(ロシュ・ダイアグノス社)を用いてハイブリダイゼーシ
ョンを検出することができる。
【0028】
上記のハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド以外のポリヌクレオチドとしては、相同
性検索ソフトウェアであるBLASTにより、デフォルトのパラメーターを用いて計算したと
きに、配列番号1(若しくは配列番号1の第3~192番目のヌクレオチドからなる配列)、2
(若しくは配列番号2の第4~179番目のヌクレオチドからなる配列)、3(若しくは配列番
号3の第1~109番目のヌクレオチドからなる配列)又は4のポリヌクレオチドからなる配列
と90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上
、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上
、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、又は99.9%以上の同一性を有するポリヌクレオ
チドをあげることができる。
【0029】
なお、塩基配列の同一性は、カーリン及びアルチュールによるアルゴリズムBLAST (Bas
ic Local Alignment Search Tool)(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 872264-2268, 1990; P
roc Natl Acad Sci USA 90: 5873, 1993)を用いて決定できる。BLASTのアルゴリズムに
基づいたBLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul SF, et al:
J Mol Biol 215: 403, 1990)。BLASTNを用いて塩基配列を解析する場合は、パラメータ
ーは、例えばscore = 100、wordlength = 12とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを
用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。
【0030】
エクソン55の5’末端から第-2~190番目のヌクレオチドの配列に相補的な配列を配列番
号5に示す。ここで、エクソン55の5’末端から第-2 ~-1番目のヌクレオチドからなる配
列(配列番号1の第1~2番目のヌクレオチドからなる配列)は、エクソン54とエクソン55
との間に存在するイントロン54の3’末端の最下流の2つのヌクレオチドからなる配列を示
す。即ち、エクソン55の塩基配列は、配列番号1の第3~192番目のヌクレオチドからなる
配列であり、エクソン55の塩基配列に相補的な配列は、配列番号5の第1~190番目のヌク
レオチドからなる配列である。
【0031】
ここで、ヒトジストロフィン遺伝子の第55番目のエクソンの5’末端から第-2~19番目
、第-2~20番目、第-2~21番目、第-2~22番目、第-2~23番目、第-1~19番目、第-1~20
番目、第-1~21番目、第-1~22番目、第-1~23番目、第1~19番目、第1~20番目、第1~2
1番目、第1~22番目、第1~23番目、第2~19番目、第2~20番目、第2~21番目、第2~22
番目、第2~23番目、第3~19番目、第3~20番目、第3~21番目、第3~22番目、第3~23番
目、第9~29番目、第9~30番目、第9~31番目、第9~32番目、第9~33番目、第10~29番
目、第10~30番目、第10~31番目、第10~32番目、第10~33番目、第11~29番目、第11~
30番目、第11~31番目、第11~32番目、第11~33番目、第12~29番目、第12~30番目、第
12~31番目、第12~32番目、第12~33番目、第13~29番目、第13~30番目、第13~31番目
、第13~32番目、第13~33番目、第12~34番目、第12~35番目、第12~36番目、第13~34
番目、第13~35番目、第13~36番目、第14~32番目、第14~33番目、第14~34番目、第14
~35番目、第14~36番目、第15~32番目、第15~33番目、第15~34番目、第15~35番目、
第15~36番目、第16~32番目、第16~33番目、第16~34番目、第16~35番目又は第16~36
番目のヌクレオチドからなる塩基配列に相補的な配列とは、それぞれ、配列番号5の第172
~192番目、第171~192番目、第170~192番目、第169~192番目、第168~192番目、第172
~191番目、第171~191番目、第170~191番目、第169~191番目、第168~191番目、第172
~190番目、第171~190番目、第170~190番目、第169~190番目、第168~190番目、第172
~189番目、第171~189番目、第170~189番目、第169~189番目、第168~189番目、第172
~188番目、第171~188番目、第170~188番目、第169~188番目、第168~188番目、第162
~182番目、第161~182番目、第160~182番目、第159~182番目、第158~182番目、第162
~181番目、第161~181番目、第160~181番目、第159~181番目、第158~181番目、第162
~180番目、第161~180番目、第160~180番目、第159~180番目、第158~180番目、第162
~179番目、第161~179番目、第160~179番目、第159~179番目、第158~179番目、第162
~178番目、第161~178番目、第160~178番目、第159~178番目、第158~178番目、第157
~179番目、第156~179番目、第155~179番目、第157~178番目、第156~178番目、第155
~178番目、第159~177番目、第158~177番目、第157~177番目、第156~177番目、第155
~177番目、第159~176番目、第158~176番目、第157~176番目、第156~176番目、第155
~176番目、第159~175番目、第158~175番目、第157~175番目、第156~175番目又は第1
55~175番目のヌクレオチドからなる配列と同一である。
【0032】
エクソン45の5’末端から第-3 ~176番目のヌクレオチドの配列に相補的な配列を配列
番号6に示す。ここで、エクソン45の5’末端から第-3 ~-1番目のヌクレオチドからなる
配列(配列番号2の第1~3番目のヌクレオチドからなる配列)は、エクソン44とエクソン4
5との間に存在するイントロン44の3’末端の最下流の3つのヌクレオチドからなる配列を
示す。即ち、エクソン45の塩基配列は、配列番号2の第4~179番目のヌクレオチドからな
る配列であり、エクソン45の塩基配列に相補的な配列は、配列番号6の第1~176番目のヌ
クレオチドからなる配列である。
【0033】
ここで、ヒトジストロフィン遺伝子の第45番目のエクソンの5’末端から第-3~19番目
、第-3~20番目、第-3~21番目、第-3~22番目、第-3~23番目、第-2~19番目、第-2~20
番目、第-2~21番目、第-2~22番目、第-2~23番目、第-1~19番目、第-1~20番目、第-1
~21番目、第-1~22番目、第-1~23番目、第1~19番目、第1~20番目、第1~21番目、第1
~22番目、第1~23番目、第2~19番目、第2~20番目、第2~21番目、第2~22番目、第2~
23番目、第-2~24番目、第-2~25番目、第-2~26番目、第-2~27番目、第-1~24番目、第
-1~25番目、第-1~26番目、第-1~27番目、第1~24番目、第1~25番目、第1~26番目、
第1~27番目、第2~24番目、第2~25番目、第2~26番目、第2~27番目、第3~23番目、第
3~24番目、第3~25番目、第3~26番目、第3~27番目、第4~28番目、第4~29番目、第4
~30番目、第4~31番目、第4~32番目、第5~28番目、第5~29番目、第5~30番目、第5~
31番目、第5~32番目、第6~28番目、第6~29番目、第6~30番目、第6~31番目、第6~32
番目、第7~28番目、第7~29番目、第7~30番目、第7~31番目、第7~32番目、第8~28番
目、第8~29番目、第8~30番目、第8~31番目又は第8~32番目のヌクレオチドからなる配
列に相補的な塩基配列とは、それぞれ、配列番号6の第158~179番目、第157~179番目、
第156~179番目、第155~179番目、第154~179番目、第158~178番目、第157~178番目、
第156~178番目、第155~178番目、第154~178番目、第158~177番目、第157~177番目、
第156~177番目、第155~177番目、第154~177番目、第158~176番目、第157~176番目、
第156~176番目、第155~176番目、第154~176番目、第158~175番目、第157~175番目、
第156~175番目、第155~175番目、第154~175番目、第153~178番目、第152~178番目、
第151~178番目、第150~178番目、第153~177番目、第152~177番目、第151~177番目、
第150~177番目、第153~176番目、第152~176番目、第151~176番目、第150~176番目、
第153~175番目、第152~175番目、第151~175番目、第150~175番目、第154~174番目、
第153~174番目、第152~174番目、第151~174番目、第150~174番目、第149~173番目、
第148~173番目、第147~173番目、第146~173番目、第147~173番目、第149~172番目、
第148~172番目、第147~172番目、第146~172番目、第145~172番目、第149~171番目、
第148~171番目、第147~171番目、第146~171番目、第145~171番目、第149~170番目、
第148~170番目、第147~170番目、第146~170番目、第145~170番目、第149~169番目、
第148~169番目、第147~169番目、第146~169番目又は第145~169番目のヌクレオチドか
らなる配列と同一である。
【0034】
エクソン50の5’末端から第1~109番目のヌクレオチド及びイントロン50の5’末端から
第1~20番目のヌクレオチドからなる塩基配列に相補的な配列を配列番号7に示す。ここで
、イントロン50の5’末端から第1~20番目のヌクレオチドからなる配列(配列番号3の第1
10~129番目のヌクレオチドからなる配列)は、エクソン50とエクソン51との間に存在す
るイントロン50の5’末端の最上流の20個のヌクレオチドからなる配列を示す。即ち、エ
クソン50の塩基配列は、配列番号3の第1~109番目のヌクレオチドからなる配列であり、
エクソン50の塩基配列に相補的な配列は、配列番号7の第21~129番目のヌクレオチドから
なる配列である。
【0035】
ここで、ヒトジストロフィン遺伝子の第50番目のエクソンの5’末端から第105~125番
目、第105~126番目、第105~127番目、第105~128番目、第105~129番目、第106~125番
目、第106~126番目、第106~127番目、第106~128番目、第106~129番目、第107~125番
目、第107~126番目、第107~127番目、第107~128番目、第107~129番目、第108~125番
目、第108~126番目、第108~127番目、第108~128番目、第108~129番目、第109~125番
目、第109~126番目、第109~127番目、第109~128番目又は第109~129番目のヌクレオチ
ドからなる塩基配列に相補的な配列とは、それぞれ、配列番号7の第5~25番目、第4~25
番目、第3~25番目、第2~25番目、第1~25番目、第5~24番目、第4~24番目、第3~24番
目、第2~24番目、第1~24番目、第5~23番目、第4~23番目、第3~23番目、第2~23番目
、第1~23番目、第5~22番目、第4~22番目、第3~22番目、第2~22番目、第1~22番目、
第5~21番目、第4~21番目、第3~21番目、第2~21番目又は第1~21番目のヌクレオチド
からなる配列と同一である。
【0036】
エクソン44の5’末端から第1~148番目のヌクレオチドの配列に相補的な配列を配列番
号8に示す。
【0037】
ここで、ヒトジストロフィン遺伝子の第44番目のエクソンの5’末端から第9~30番目、
第9~31番目、第9~32番目、第9~33番目、第9~34番目、第10~30番目、第10~31番目、
第10~32番目、第10~33番目、第10~34番目、第11~30番目、第11~31番目、第11~32番
目、第11~33番目、第11~34番目、第12~30番目、第12~31番目、第12~32番目、第12~
33番目、第12~34番目、第13~30番目、第13~31番目、第13~32番目、第13~33番目、第
13~34番目、第24~45番目、第24~46番目、第24~47番目、第24~48番目、第24~49番目
、第25~45番目、第25~46番目、第25~47番目、第25~48番目、第25~49番目、第26~45
番目、第26~46番目、第26~47番目、第26~48番目、第26~49番目、第27~45番目、第27
~46番目、第27~47番目、第27~48番目、第27~49番目、第28~45番目、第28~46番目、
第28~47番目、第28~48番目、第28~49番目、第29~45番目、第29~46番目、第29~47番
目、第29~48番目又は第29~49番目のヌクレオチドからなる塩基配列に相補的な配列とは
、それぞれ、配列番号8の第119~140番目、第118~140番目、第117~140番目、第116~14
0番目、第115~140番目、第119~139番目、第118~139番目、第117~139番目、第116~13
9番目、第115~139番目、第119~138番目、第118~138番目、第117~138番目、第116~13
8番目、第115~138番目、第119~137番目、第118~137番目、第117~137番目、第116~13
7番目、第115~137番目、第119~136番目、第118~136番目、第117~136番目、第116~13
6番目、第115~136番目、第104~125番目、第103~125番目、第102~125番目、第101~12
5番目、第100~125番目、第104~124番目、第103~124番目、第102~124番目、第101~12
4番目、第100~124番目、第104~123番目、第103~123番目、第102~123番目、第101~12
3番目、第100~123番目、第104~122番目、第103~122番目、第102~122番目、第101~12
2番目、第100~122番目、第104~121番目、第103~121番目、第102~121番目、第101~12
1番目、第100~121番目、第104~120番目、第103~120番目、第102~120番目、第101~12
0番目又は第100~120番目のヌクレオチドからなる配列と同一である。
【0038】
エクソン55、45、50及び44の塩基配列と、配列番号5~8の対応は、以下の表のようにま
とめることができる。
【0039】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表3】
【表4-1】
【表4-2】
【0040】
本発明のエクソン55スキッピングオリゴマーは、好ましくは、ヒトジストロフィン遺伝
子の第55番目のエクソンの5’末端から第1~21番目、第11~31番目又は第14~34番目のヌ
クレオチドからなる配列のいずれか1つに相補的な塩基配列(例えば、配列番号5の第170
~190番目、第160~180番目又は第157~177番目のヌクレオチドからなる配列のいずれか1
つの塩基配列)からなる。
【0041】
本発明のエクソン45スキッピングオリゴマーは、好ましくは、ヒトジストロフィン遺伝
子の第45番目のエクソンの5’末端から第-2~19番、第1~21番目、第1~25番目又は第6~
30番目のヌクレオチドからなる配列のいずれか1つに相補的な塩基配列(例えば、配列番
号6の第158~178番目、第156~176番目、第152~176番目又は第147~171番目のヌクレオ
チドからなる配列のいずれか1つの塩基配列)からなる。
【0042】
本発明のエクソン50スキッピングオリゴマーは、好ましくは、ヒトジストロフィン遺伝
子の第50番目のエクソンの5’末端から第106~126番又は第107~127番目のヌクレオチド
からなる配列のいずれか1つに相補的な塩基配列(例えば、配列番号7の第4~24番目又は
第3~23番目のヌクレオチドからなる配列のいずれか1つの塩基配列)からなる。
【0043】
本発明のエクソン44スキッピングオリゴマーは、好ましくは、ヒトジストロフィン遺伝
子の第44番目のエクソンの5’末端から第11~32番、第25~45番、第26~46番、第26~47
番又は第27~47番目のヌクレオチドからなる配列のいずれか1つに相補的な塩基配列(例
えば、配列番号8の第117~138番目、第104~124番目、第103~123番目、第102~123番目
又は第102~122番目のヌクレオチドからなる配列のいずれか1つの塩基配列)からなる。
【0044】
「ヒトジストロフィン遺伝子の第55番目のエクソンのスキッピングを可能にする」とは
、ヒトジストロフィン遺伝子の転写物(例えば、pre-mRNA)のエクソン55に相当する部位
に本発明のオリゴマーが結合することにより、該転写物がスプライシングを受けた際に、
例えばエクソン54が欠失したDMD患者の場合、エクソン53の3’末端に相当する塩基配列の
3’側にエクソン56の5’末端に相当する塩基配列が連結し、コドンのフレームシフトが起
こっていない成熟mRNAが形成されることを意味する。
【0045】
同様に「ヒトジストロフィン遺伝子の第45番目のエクソンのスキッピングを可能にする
」とは、ヒトジストロフィン遺伝子の転写物(例えば、pre-mRNA)のエクソン45に相当す
る部位に本発明のオリゴマーが結合することにより、該転写物がスプライシングを受けた
際に、例えばエクソン44が欠失したDMD患者の場合、エクソン43の3’末端に相当する塩基
配列の3’側にエクソン46の5’末端に相当する塩基配列が連結し、コドンのフレームシフ
トが起こっていない成熟mRNAが形成されることを意味する。
【0046】
また、「ヒトジストロフィン遺伝子の第50番目のエクソンのスキッピングを可能にする
」とは、ヒトジストロフィン遺伝子の転写物(例えば、pre-mRNA)のエクソン50に相当す
る部位に本発明のオリゴマーが結合することにより、該転写物がスプライシングを受けた
際に、例えばエクソン51が欠失したDMD患者の場合、エクソン49の3’末端に相当する塩基
配列の3’側にエクソン52の5’末端に相当する塩基配列が連結し、コドンのフレームシフ
トが起こっていない成熟mRNAが形成されることを意味する。
【0047】
また同様に、「ヒトジストロフィン遺伝子の第44番目のエクソンのスキッピングを可能
にする」とは、ヒトジストロフィン遺伝子の転写物(例えば、pre-mRNA)のエクソン44に
相当する部位に本発明のオリゴマーが結合することにより、該転写物がスプライシングを
受けた際に、例えばエクソン45 が欠失したDMD患者の場合、エクソン43の3’末端に相当
する塩基配列の3’側にエクソン46の5’末端に相当する塩基配列が連結し、コドンのフレ
ームシフトが起こっていない成熟mRNAが形成されることを意味する。
従って、本発明のオリゴマーは、ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン55、45、50及び
44のスキッピングを可能にする限り、各ターゲット配列(エクソン55、45、50及び44)に
対して100%相補的な塩基配列を有していなくてもよい。例えば、本発明のオリゴマーに
は、ターゲット配列に対して、1~3個、1~2個又は1個の非相補的塩基が含まれていても
よい。
【0048】
ここで、前記「結合」は、本発明のオリゴマーとヒトジストロフィン遺伝子の転写物と
を混合した場合に、生理的条件下で両者がハイブリダイズして二本鎖を形成することを意
味する。上記「生理的条件下」とは、生体内と類似のpH、塩組成、温度に調節された条件
を意味する。例えば、25~40℃、好ましくは37℃、pH 5~8、好ましくは、pH 7.4であっ
て、塩化ナトリウム濃度が150 mMの条件が挙げられる。
【0049】
ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン55、45、50及び44のスキッピングが生じたか否か
は、ジストロフィン発現細胞(例えば、ヒト横紋筋肉腫細胞)に本発明のオリゴマーを導
入し、前記ジストロフィン発現細胞のtotal RNAから、ヒトジストロフィン遺伝子のmRNA
のエクソン55、45、50及び44の周辺領域をRT-PCR増幅し、該PCR増幅産物に対してnested
PCR又はシークエンス解析を行うことにより確認することができる。 スキッピング効率
は、ヒトジストロフィン遺伝子のmRNAを被検細胞から回収し、該mRNAのうち、エクソン55
、45、50及び44がスキップしたバンドのポリヌクレオチド量「A」と、エクソン55、45、5
0及び44がスキップしなかったバンドのポリヌクレオチド量「B」を測定し、これら「A」
及び「B」の測定値に基づき、以下の式に従って計算することができる。
スキッピング効率(%)= A /( A + B )x 100
【0050】
本発明のオリゴマーとしては、例えば、18~28 塩基の長さを有する、オリゴヌクレオ
チド、モルホリノオリゴマー、又はペプチド核酸(Peptide Nucleic Acid:PNA)オリゴマ
ーを挙げることができる。15~30塩基又は20~25塩基の長さが好ましく、モルホリノオリ
ゴマーが好ましい。
【0051】
前記オリゴヌクレオチド(以下、「本発明のオリゴヌクレオチド」という)は、ヌクレ
オチドを構成単位とする本発明のオリゴマーであり、かかるヌクレオチドは、リボヌクレ
オチド、デオキシリボヌクレオチド又は修飾ヌクレオチドのいずれであってもよい。
修飾ヌクレオチドとは、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドを構成する核
酸塩基、糖部分、及びリン酸結合部分の全部又は一部が修飾されているものをいう。
【0052】
核酸塩基としては、例えば、アデニン、グアニン、ヒポキサンチン、シトシン、チミン
、ウラシル又はそれらの修飾塩基を挙げることができる。かかる修飾塩基としては、例え
ば、シュードウラシル、3-メチルウラシル,ジヒドロウラシル、5-アルキルシトシン(例
えば、5-メチルシトシン)、5-アルキルウラシル(例えば、5-エチルウラシル)、5-ハロ
ウラシル(5-ブロモウラシル)、6-アザピリミジン、6-アルキルピリミジン(6-メチルウ
ラシル)、2-チオウラシル、4-チオウラシル、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒド
ロキシメチル) ウラシル、5'-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウラシル、5-カルボ
キシメチルアミノメチルウラシル、1-メチルアデニン、1-メチルヒポキサンチン、2,2-ジ
メチルグアニン、3-メチルシトシン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、N6-メチル
アデニン、7-メチルグアニン、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、5-メチルアミ
ノメチルウラシル、5-メチルカルボニルメチルウラシル、5-メチルオキシウラシル、5-メ
チル-2-チオウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢
酸、2-チオシトシン、プリン、2,6-ジアミノプリン、2-アミノプリン、イソグアニン、イ
ンドール、イミダゾール、キサンチン等が挙げられるが、これらに限定されるものではな
い。
【0053】
糖部分の修飾としては、例えば、リボースの2’位の修飾及び糖のその他の部分の修飾
を挙げることができる。リボースの2’位の修飾としては、例えば、リボースの2’位の-O
H基をOR、R、R’OR、SH、SR、NH2、NHR、NR2、N3、CN、F、Cl、Br、Iに置換する修飾を挙
げることができる。ここで、Rはアルキル又はアリールを表す。R’はアルキレンを表す。
糖のその他の部分の修飾としては、例えば、リボース又はデオキシリボースの4’位のO
をSに置換したもの、糖の 2' 位と 4' 位を架橋したもの、例えば、LNA(Locked Nucleic
Acid)又はENA(2'-O,4'-C-Ethylene-bridged Nucleic Acids)などが挙げられるが、これ
らに限定されるものではない。
【0054】
リン酸結合部分の修飾としては、例えば、ホスホジエステル結合をホスホロチオエート
結合、ホスホロジチオエート結合、アルキルホスホネート結合、ホスホロアミデート結合
、ボラノフォスフェート結合(Enya et al: Bioorganic & Medicinal Chemistry ,2008,
18, 9154-9160 )に置換する修飾を挙げることができる(例えば、特許再公表公報第2006
/129594号及び第2006/038608号を参照)。
【0055】
アルキルとしては、直鎖状または分枝鎖状の炭素数1~6のアルキルが好ましい。具体的
には、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、se
c-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、n-
ヘキシル、イソヘキシルが挙げられる。当該アルキルは置換されていてもよく、かかる置
換基としては、例えば、ハロゲン、アルコキシ、シアノ、ニトロを挙げることができ、こ
れらが1~3個置換されていてもよい。
シクロアルキルとしては、炭素数5~12のシクロアルキルが好ましい。具体的には、例
えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシ
ル、シクロドデシルが挙げられる。
ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を挙げることができる。
アルコキシとしては、直鎖状または分枝鎖状の炭素数1~6のアルコキシ、例えば、メト
キシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブト
キシ、tert-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、イソペンチル
オキシ、n-ヘキシルオキシ、イソヘキシルオキシ等を挙げることができる。とりわけ、炭
素数1~3のアルコキシが好ましい。
アリールとしては、炭素数6~10のアリールが好ましい。具体的には、例えば、フェニ
ル、α-ナフチル、β-ナフチルを挙げることができる。とりわけフェニルが好ましい。当
該アリールは置換されていてもよく、かかる置換基としては、例えば、アルキル、ハロゲ
ン、アルコキシ、シアノ、ニトロを挙げることができ、これらが1~3個置換されていても
よい。
アルキレンとしては、直鎖状または分枝鎖状の炭素数1~6のアルキレンが好ましい。具
体的には、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレ
ン、ヘキサメチレン、2-(エチル)トリメチレン、1-(メチル)テトラメチレンを挙げる
ことができる。 アシルとしては、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルカノイル、又はアロイ
ルを挙げることができる。アルカノイルとしては、例えば、ホルミル、アセチル、2-メ
チルアセチル、2,2-ジメチルアセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ペ
ンタノイル、2,2-ジメチルプロピオニル、ヘキサノイル等が挙げられる。アロイルと
しては、例えば、ベンゾイル、トルオイル、ナフトイルを挙げることができる。かかるア
ロイルは置換可能な位置において置換されていてもよく、アルキルで置換されていてもよ
い。
【0056】
本発明のオリゴヌクレオチドは、好ましくは、リボースの2’位の-OH基がメトキシで置
換され、リン酸結合部分がホスホロチオエート結合である、下記一般式で表される基を構
成単位とする本発明のオリゴマーである。
【化2】
(式中、Baseは、核酸塩基を表す。)
【0057】
本発明のオリゴヌクレオチドは、各種自動合成装置(例えば、AKTA oligopilot plus 1
0 / 100(GE Healthcare))を用いて容易に合成することが可能であり、あるいは、第三
者機関(例えば、Promega社又はTakara社)等に委託して作製することもできる。
【0058】
本発明のモルホリノオリゴマーは、下記一般式で表される基を構成単位とする本発明の
オリゴマーである。
【化3】
(式中、Baseは、前記と同義であり;
Wは、以下のいずれかの式で表わされる基を表す。
【0059】
【0060】
(式中、Xは、-CH2R1、-O-CH2R1、-S-CH2R1、-NR2R3又はFを表し;
R1は、H、アルキルを表し;
R2及びR3は、同一又は異なって、H、アルキル、シクロアルキル、又は、アリールを表
し;
Y1は、0、S、CH2又はNR1を表し;
Y2は、0、S又はNR1を表し;
Zは、0又はSを表す。))
【0061】
モルホリノオリゴマーは、好ましくは、以下の式で表わされる基を構成単位とするオリ
ゴマー(ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(以下、「PMO」という))である
。
【化5】
(式中、Base、R
2、R
3は、前記と同義である。)
【0062】
モルホリノオリゴマーは、例えば、国際公開公報第1991/009033号、又は国際公開公報
第2009/064471号に従って製造することができる。特に、PMOは、国際公開公報第2009/064
471号に記載の方法に従って製造するか、又は以下に示す方法に従って製造することがで
きる。
【0063】
[PMOの製法]
PMOの1つの態様として、例えば、次の一般式(I)で表される化合物(以下、PMO(I)とい
う。)を挙げることができる。
【化6】
【0064】
[式中、各Base、R2、R3は、前記と同義であり;
nは、1~99の範囲内にある任意の整数であり、好ましくは、18~28の範囲内にある任意
の整数である。]
【0065】
PMO(I)は、公知の方法に従い製造することができるが、例えば、下記工程の操作を実
施することにより製造することができる。
下記工程に使用されている化合物及び試薬は、PMOの製造に一般的に使用されているも
のであれば特に限定されない。
また、下記のすべての工程は、液相法又は固相法(マニュアル又は市販の固相自動合成
機を用いる)で実施することができる。固相法でPMOを製造する場合、操作手順の簡便化
及び合成の正確性の点から自動合成機を用いる方法が望ましい。
【0066】
(1)工程A:
次の一般式(II)で表される化合物(以下、化合物(II)という。)に酸を作用させる
ことによって、次の一般式(III)で表される化合物(以下、化合物(III)という。)を
製造する工程。
【化7】
【0067】
[式中、n、R
2、R
3は、前記と同義であり;
各B
Pは,独立して、保護されていてもよい核酸塩基を表し;
Tは、トリチル基、モノメトキシトリチル基、又はジメトキシトリチル基を表し;
Lは、水素、アシル、又は次の一般式(IV)で表される基(以下、基(IV)という。)
を表す。]
【化8】
【0068】
BPに係る「核酸塩基」としては、Baseと同じ「核酸塩基」を挙げることができる。但し
、BPに係る核酸塩基のアミノ基又は水酸基は保護されていてもよい。
かかるアミノ基の保護基としては、核酸の保護基として使用されるものであれば特に制
限されず、具体的には、例えば、ベンゾイル、4-メトキシベンゾイル、アセチル、プロピ
オニル、ブチリル、イソブチリル、フェニルアセチル、フェノキシアセチル、4-tert-ブ
チルフェノキシアセチル、4-イソプロピルフェノキシアセチル、(ジメチルアミノ)メチレ
ンを挙げることができる。水酸基の保護基としては、例えば、2-シアノエチル、4-ニト
ロフェネチル、フェニルスルホニルエチル、メチルスルホニルエチル、トリメチルシリル
エチル、置換可能な任意の位置で1~5個の電子吸引性基で置換されていてもよいフェニル
、ジフェニルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、メチルフェ
ニルカルバモイル、1-ピロリジニルカルバモイル、モルホリノカルバモイル、4-(tert-
ブチルカルボキシ)ベンジル、4-[(ジメチルアミノ)カルボキシ]ベンジル、4-(フェニル
カルボキシ)ベンジルを挙げることができる(例えば、国際公開公報第2009/064471号公報
参照)。
「固相担体」としては、核酸の固相反応に使用しうる担体であれば特に制限されないが
、例えば、(i)モルホリノ核酸誘導体の合成に使用しうる試薬(例えば、ジクロロメタ
ン、アセトニトリル、テトラゾール、N-メチルイミダゾール、ピリジン、無水酢酸、ルチ
ジン、トリフルオロ酢酸)にほとんど溶解せず、(ii)モルホリノ核酸誘導体の合成に使
用しうる試薬に対して化学的に安定であり、(iii)化学修飾ができ、(iv)望ましいモ
ルホリノ核酸誘導体の装填ができ、(v)処理中にかかる高圧に耐える十分な強度をもち
、(vi)一定の粒径範囲と分布であるものが望ましい。具体的には、膨潤性ポリスチレン
(例えば、アミノメチルポリスチレン樹脂 1%ジベンジルベンゼン架橋(200~400メッシ
ュ)(2.4~3.0mmol/g)(東京化成社製)、Aminomethylated Polystyrene Resin・HCl[
ジベンジルベンゼン1%,100~200メッシュ](ペプチド研究所社製))、非膨潤性ポリス
チレン(例えば、Primer Support(GE Healthcare社製))、PEG鎖結合型ポリスチレン(
例えば、NH2-PEG resin(渡辺化学社製)、TentaGel resin)、定孔ガラス(controlled
pore glass;CPG)(例えば、CPG社製)、オキサリル化-定孔ガラス(例えば、Alulら,N
ucleic Acids Research,Vol.19,1527(1991)を参照)、TentaGel支持体-アミノポリエチ
レングリコール誘導体化支持体(例えば、Wrightら,Tetrahedron Letters,Vol.34,3373(
1993)を参照)、Poros-ポリスチレン/ジビニルベンゼンのコポリマーを挙げることができ
る。
「リンカー」としては、通常核酸やモルホリノ核酸誘導体を連結するために使用される
公知のものを用いることができるが、例えば、3-アミノプロピル、スクシニル、2,2’-ジ
エタノールスルホニル、ロングチェーンアルキルアミノ(LCAA)を挙げることができる。
【0069】
本工程は、化合物(II)に酸を作用させることにより実施することができる。
【0070】
本工程に使用しうる「酸」としては、例えば、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸又はト
リクロロ酢酸を挙げることができる。酸の使用量としては、例えば、化合物(II)1モル
に対して0.1モル当量~1000モル当量の範囲内が適当であり、好ましくは1モル当量~100
モル当量の範囲内である。
また、前記酸と一緒に、有機アミンを使用することができる。有機アミンとしては、特
に限定されるものではないが、例えば、トリエチルアミンを挙げることができる。有機ア
ミンの使用量は、例えば、酸1モルに対して、0.01モル当量~10モル当量の範囲内が適当
であり、好ましくは、0.1モル当量~2モル当量の範囲内である。
本工程において酸と有機アミンとの塩又は混合物を使用する場合には、例えば、トリフ
ルオロ酢酸とトリエチルアミンの塩又は混合物を挙げることができ、より具体的には、ト
リフルオロ酢酸2当量に対してトリエチルアミン1当量を混合したものを挙げることができ
る。
本工程に使用しうる酸は、0.1%~30%の範囲内の濃度になるように適当な溶媒で希釈し
て使用することもできる。溶媒としては、反応に関与しなければ特に限定されないが、例
えば、ジクロロメタン、アセトニトリル、アルコール類(エタノール、イソプロパノール
、トリフルオロエタノールなど)、水又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0071】
上記反応における反応温度は、例えば、10℃~50℃の範囲内が好ましく、より好ましく
は、20℃~40℃の範囲内であり、さらに好ましくは、25℃~35℃の範囲内である。
反応時間は、使用する酸の種類、反応温度によって異なるが、通常0.1分~24時間の範
囲内が適当である。好ましくは、1分~5時間の範囲内である。
【0072】
また、本工程が終了した後、必要に応じて、系中に存在する酸を中和するために塩基を
添加することができる。「塩基」としては、特に限定されないが、例えば、ジイソプロピ
ルアミンが挙げられる。塩基は、0.1%(v/v)~30%(v/v)の範囲内の濃度になるように
適当な溶媒で希釈して使用することもできる。
本工程に用いる溶媒としては、反応に関与しなければ特に限定されないが、ジクロロメ
タン、アセトニトリル、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、トリフルオロエ
タノールなど)、水又はこれらの混合物を挙げることができる。反応温度は、例えば、10
℃~50℃の範囲内が好ましく、より好ましくは、20℃~40℃の範囲内であり、さらに好ま
しくは、25℃~35℃の範囲内である。
反応時間は、使用する塩基の種類、反応温度によって異なるが、通常0.1分~24時間の
範囲内が適当であり、好ましくは、1分~5時間の範囲内である。
【0073】
なお、化合物(II)において、n=1であって、Lが基(IV)である、次の一般式(IIa)
で表される化合物(以下、化合物(IIa)という。)は、以下の方法に従って製造するこ
とができる。
【化9】
[式中、B
P、T、リンカー、固相担体は、前記と同義である。]
【0074】
工程1:
次の一般式(V)で表される化合物にアシル化剤を作用させることによって、次の一般
式(VI)で表される化合物(以下、化合物(VI)という。)を製造する工程。
【化10】
[式中、B
P、T、リンカーは、前記と同義であり;
R
4は、水酸基、ハロゲン、又は、アミノを表す。]
【0075】
本工程は、化合物(V)を出発原料として、公知のリンカーの導入反応により実施する
ことができる。
特に、次の一般式(VIa)で表される化合物は、化合物(V)と無水コハク酸とを用いて
エステル化反応として知られた方法を実施することにより製造することができる。
【化11】
[式中、B
P、Tは、前記と同義である。]
【0076】
工程2:
化合物(VI)に縮合剤等を作用させることによって、固相担体と反応させ、化合物(II
a)を製造する工程。
【化12】
[式中、B
P、R
4、T、リンカー、固相担体は、前記と同義である。]
本工程は、化合物(VI)と固相担体とを用いて縮合反応として知られた方法により製造す
ることができる。
化合物(II)において、n=2~99であって、Lが基(IV)である、次の一般式(IIa2)で表され
る化合物は、化合物(IIa)を出発原料とし、本明細書に記載のPMOの製法にかかる工程A及
び工程Bを所望の回数繰り返し実施することにより製造することができる。
【化13】
[式中、B
P、R
2、R
3、T、リンカー、固相担体は、前記と同義であり;
n’は、1~98を表す。]
【0077】
また、化合物(II)において、n=1であって、Lが水素である、次の一般式(IIb)で表され
る化合物は、例えば、国際公開公報第1991/009033号に記載の方法により製造することが
できる。
【化14】
[式中、B
P、Tは、前記と同義である。]
【0078】
化合物(II)において、n=2~99であって、Lが水素である、次の一般式(IIb2)で表さ
れる化合物は、化合物(IIb)を出発原料とし、本明細書に記載のPMOの製法にかかる工程
A及び工程Bを所望の回数繰り返し実施することにより製造することができる。
【化15】
[式中、B
P、n’、R
2、R
3、Tは、前記と同義である。]
【0079】
また、化合物(II)において、n=1であって、Lがアシルである、次の一般式(IIc)で
表される化合物は、化合物(IIb)に対してアシル化反応として知られた方法を実施する
ことにより製造することができる。
【化16】
[式中、B
P、Tは、前記と同義であり;
R
5は、アシルを表す。]
【0080】
化合物(II)において、n=2~99であって、Lがアシルである、次の一般式(IIc2)で表
される化合物は、化合物(IIc)を出発原料とし、本明細書に記載のPMOの製法にかかる工
程A及び工程Bを所望の回数繰り返し実施することにより製造することができる。
【化17】
[式中、B
P、n’、R
2、R
3、R
5、Tは、前記と同義である。]
【0081】
(2)工程B:
化合物(III)に塩基存在下にモルホリノモノマー化合物を作用させることによって、
次の一般式(VII)で表される化合物(以下、化合物(VII)という。)を製造する工程。
【化18】
[式中、各B
P、L、n、R
2、R
3、Tは、前記と同義である。]
【0082】
本工程は、化合物(III)に塩基存在下にモルホリノモノマー化合物を作用させること
により実施することができる。
【0083】
モルホリノモノマー化合物としては、例えば、次の一般式(VIII)で表される化合物を
挙げることができる。
【化19】
[式中、B
P、R
2、R
3、Tは前記と同義である。]
【0084】
本工程に使用しうる「塩基」としては、例えば、ジイソプロピルアミン、トリエチルア
ミン、又は、N-エチルモルホリンを挙げることができる。塩基の使用量としては、例えば
、化合物(III)1モルに対して、1モル当量~1000モル当量の範囲内が適当であり、好ま
しくは10モル当量~100モル当量の範囲内である。
本工程に使用しうるモルホリノモノマー化合物および塩基は、0.1%~30%の濃度になる
ように適当な溶媒で希釈して使用することもできる。溶媒としては、反応に関与しなけれ
ば特に限定されないが、例えば、N,N-ジメチルイミダゾリドン、N-メチルピペリドン、DM
F、ジクロロメタン、アセトニトリル、テロラヒドロフラン、又はこれらの混合物を挙げ
ることができる。
【0085】
反応温度は、例えば、0℃~100℃の範囲内が好ましく、より好ましくは、10℃~50℃の
範囲内である。
反応時間は、使用する塩基の種類、反応温度によって異なるが、通常1分~48時間の範
囲内が適当であり、好ましくは、30分~24時間の範囲内である。
【0086】
さらに本工程の終了後、必要に応じて、アシル化剤を添加することができる。「アシル
化剤」としては、例えば、無水酢酸、酢酸クロライド、フェノキシ酢酸無水物を挙げるこ
とができる。アシル化剤は、例えば、0.1%~30%の範囲内の濃度になるように適当な溶媒
で希釈して使用することもできる。溶媒としては、反応に関与しなければ特に限定されな
いが、例えば、ジクロロメタン、アセトニトリル、アルコール類(エタノール、イソプロ
パノール、トリフルオロエタノールなど)、水又はこれらの混合物を挙げることができる
。
また、必要であれば、アシル化剤と一緒に、例えば、ピリジン、ルチジン、コリジン、
トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N-エチルモルホリン等の塩基を使用す
ることができる。アシル化剤の使用量としては、0.1モル当量~10000モル当量の範囲内が
好ましく、1モル当量~1000モル当量の範囲内がより好ましい。塩基の使用量としては、
例えば、アシル化剤1モルに対して、0.1モル当量~100モル当量の範囲内が適当であり、
好ましくは1モル当量~10モル当量の範囲内である。
本反応の反応温度は、10℃~50℃の範囲内が好ましく、より好ましくは、10℃~50℃の
範囲内が好ましく、より好ましくは、20℃~40℃の範囲内であり、さらに好ましくは、25
℃~35℃の範囲内である。反応時間は、例えば、使用するアシル化剤の種類、反応温度に
よって異なるが、通常0.1分~24時間の範囲内が適当であり、好ましくは、1分から5時間
の範囲内である。
【0087】
(3)工程C:
工程Bにおいて製造される化合物(VII)において、脱保護剤を用いて保護基を脱離し、
一般式(IX)で表される化合物を製造する工程。
【化20】
[式中、Base、B
P、L、n、R
2、R
3、Tは、前記と同義である。]
【0088】
本工程は、化合物(VII)に脱保護剤を作用させることにより実施することができる。
【0089】
「脱保護剤」としては、例えば、濃アンモニア水、メチルアミンを挙げることができる
。本工程に使用しうる「脱保護剤」は、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロ
ピルアルコール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、DMF、N,N-ジメチルイミダゾリ
ドン、N-メチルピペリドン又はこれらの混合溶媒で希釈して使用することもできる。なか
でも、エタノールが好ましい。脱保護剤の使用量としては、例えば、化合物(VII)1モル
に対して、例えば、1モル当量~100000モル当量の範囲内が適当であり、好ましくは10モ
ル当量~1000モル当量の範囲内である。
【0090】
反応温度は、例えば、15℃~75℃の範囲内が適当であり、好ましくは40℃~70℃の範囲
内であり、より好ましくは50℃~60℃の範囲内である。脱保護反応時間は、化合物(VII
)の種類、反応温度等によって異なるが、10分~30時間の範囲内が適当であり、好ましく
は30分~24時間の範囲内であり、より好ましくは5時間~20時間の範囲内である。
【0091】
(4)工程D:
工程Cにおいて製造される化合物(IX)に酸を作用させることによって、PMO(I)を製
造する工程。
【化21】
[式中、Base、n、R
2、R
3、Tは、前記と同義である。]
本工程は、化合物(IX)に酸を加えることによって実施することができる。
【0092】
本工程において使用しうる「酸」としては、例えば、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、
酢酸、リン酸及び塩酸等を挙げることができる。酸の使用量としては、例えば、溶液のpH
が0.1~4.0の範囲内になるように使用するのが適当であり、より好ましくは1.0~3.0の範
囲内になるように使用する。溶媒としては、反応に関与しなければ特に限定されないが、
例えば、アセトニトリル、水、又はこれらの混合溶媒を挙げることができる。
【0093】
反応温度は、10℃~50℃の範囲内が好ましく、より好ましくは、20℃~40℃の範囲内で
あり、さらに好ましくは、25℃~35℃の範囲内である。脱保護反応時間は、化合物(IX)
の種類、反応温度等によって異なるが、0.1分~5時間の範囲内が適当であり、好ましくは
1分~1時間の範囲内であり、より好ましくは1分~30分の範囲内である。
【0094】
PMO(I)は、本工程で得られた反応混合物から通常の分離精製手段、例えば、抽出、濃縮
、中和、濾過、遠心分離、再結晶、C8からC18の逆相カラムクロマトグラフィー、陽イオ
ン交換カラムクロマトグラフィー、陰イオン交換カラムクロマトグラフィー、ゲルろ過カ
ラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、透析、限界ろ過などの手段を単
独若しくは組み合わせて用いることにより得ることができ、所望のPMO(I)を単離精製する
ことができる(例えば、国際公開公報WO1991/09033を参照)。
逆相クロマトグラフィーを用いてPMO(I)を精製する場合には、溶出溶媒として、例えば
20mMのトリエチルアミン/酢酸緩衝液とアセトニトリルの混合溶液を使用することができ
る。
また、イオン交換クロマトグラフィーを用いてPMO(I)を精製する場合には、例えば、1M
の食塩水と10mMの水酸化ナトリウム水溶液の混合溶液を使用することができる。
【0095】
ペプチド核酸は、下記一般式で表される基を構成単位とする本発明のオリゴマーである
。
【化22】
(式中、Baseは、前記と同義である。)
【0096】
ペプチド核酸は、例えば、以下の文献に従って製造することができる。
1)P. E. Nielsen, M. Egholm, R. H. Berg, O. Buchardt,Science, 254, 1497 (1991)
2)M. Egholm, O. Buchardt, P. E. Nielsen, R. H. Berg,Jacs., 114, 1895 (1992)
3)K. L. Dueholm, M. Egholm, C. Behrens, L. Christensen, H. F. Hansen, T. Vulpi
us, K. H. Petersen, R. H. Berg, P. E. Nielsen, O. Buchardt,J. Org. Chem., 59, 5
767 (1994)
4)L. Christensen, R. Fitzpatrick, B. Gildea, K. H. Petersen, H. F. Hansen, T.
Koch, M. Egholm,O. Buchardt, P. E. Nielsen, J. Coull, R. H. Berg, J. Pept. Sci.
, 1, 175 (1995)
5)T. Koch, H. F. Hansen, P. Andersen, T. Larsen, H. G. Batz, K. Otteson, H. Or
um, J. Pept. Res., 49, 80 (1997)
【0097】
また、本発明のオリゴマーは、5’末端が、下記化学式(1)~(3)のいずれかの基で
あってもよい。好ましくは(3)-OHである。
【化23】
以下、上記(1)、(2)及び(3)で示される基を、それぞれ「基(1)」、「基(2)」及び「基(
3)」と呼ぶ。
【0098】
2.医薬組成物
本発明のオリゴマーは、従来技術に係るアンチセンスオリゴマーと比較して、高効率に
エクソン55、45、50及び44のスキッピングを可能にする。従って、本発明のオリゴマーを
含む医薬組成物をDMD患者に投与することにより、高効率に筋ジストロフィーの症状を緩
和することができると予測される。例えば、本発明のオリゴマーを含む医薬組成物を用い
る場合、従来技術に係るオリゴマーと比べて少量の投与量でも同程度の治療効果を得られ
るため、副作用を軽減することができ、かつ経済的である。
そこで、別の実施態様として、本発明のオリゴマー、その医薬的に許容可能な塩又は水
和物を有効成分とする、筋ジストロフィー治療用医薬組成物(以下、「本発明の組成物」
という)を提供する。
【0099】
本発明の組成物に含まれる本発明のオリゴマーの医薬的に許容可能な塩の例としては、
ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩のようなアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネ
シウム塩のようなアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル
塩、コバルト塩などの金属塩;アンモニウム塩;t-オクチルアミン塩、ジベンジルアミン
塩、モルホリン塩、グルコサミン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジ
アミン塩、N-メチルグルカミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン
塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N, N' -ジベンジルエチレンジアミン塩、クロロプロカ
イン塩、プロカイン塩、ジエタノールアミン塩、N-ベンジル-フェネチルアミン塩、ピペ
ラジン塩、テトラメチルアンモニウム塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩のよ
うな有機アミン塩;弗化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、沃化水素酸塩のようなハロゲ
ン化水素酸塩;硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、リン酸塩などの無機酸塩;メタンスルホン
酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩のような低級アルカンスル
ホン酸塩;ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩のようなアリールスルホン酸
塩;酢酸塩、りんご酸塩、フマール酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸
塩、マレイン酸塩などの有機酸塩;グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩
、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩などが挙げられる。これらの塩
は、公知の方法で製造することができる。あるいは、本発明の組成物に含まれる本発明の
オリゴマーは、その水和物の形態にあってもよい。
【0100】
本発明の組成物の投与形態は、医薬的に許容可能な投与形態であれば特に制限されず、
治療方法に応じて選択することができるが、筋組織への送達容易性の観点から、静脈内投
与、動脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、経口投与、組織内投与、経皮投与等が好ましい
。また、本発明の組成物が取り得る剤型としては、特に制限されないが、例えば、各種の
注射剤、経口剤、点滴剤、吸入剤、軟膏剤、ローション剤等を挙げることができる。
【0101】
本発明のオリゴマーを筋ジストロフィー患者に投与する場合、本発明の組成物は、該オ
リゴマーの筋組織への送達を促進する担体を含むことが好ましい。このような担体は、医
薬的に許容可能なものであれば特に制限されず、その例として、カチオン性リポソーム、
カチオン性ポリマー等のカチオン性担体、またはウイルスエンベロープを利用した担体を
挙げることができる。カチオン性リポソームとしては、例えば、2-O-(2-ジエチルアミノ
エチル)カルバモイル-1,3-O-ジオレオイルグリセロールとリン脂質とを必須構成成分と
して形成されるリポソーム(以下、「リポソームA」という)、オリゴフェクトアミン(
登録商標)(Invitrogen社製)、リポフェクチン(登録商標)(Invitrogen社製)、リポ
フェクトアミン(登録商標)(Invitrogen社製)、Lipofectamine 2000(登録商標)(In
vitrogen社製)、DMRIE-C(登録商標)(Invitrogen社製)、GeneSilencer(登録商標)
(Gene Therapy Systems社製)、TransMessenger(登録商標)(QIAGEN社製)、TransIT
TKO(登録商標)(Mirus社製)、Nucleofector II(Lonza)を挙げることができる。それ
らの中で、リポソームAが好ましい。カチオン性ポリマーとしては、例えば、JetSI(登録
商標)(Qbiogene社製)、Jet-PEI(登録商標)(ポリエチレンイミン、Qbiogene社製)
を挙げることができる。ウイルスエンベロープを利用した担体としては、例えば、Genome
One(登録商標)(HVJ-Eリポソーム、石原産業社製)を挙げることができる。あるいは、
特許2924179号に記載の医薬デバイス、特許再公表公報第2006/129594号及び特許再公表公
報第2008/096690号に記載のカチオン性担体を用いることもできる。
【0102】
本発明の組成物に含まれる本発明のオリゴマーの濃度は、担体の種類等によって異なるが
、0.1 nM~100 μMの範囲内が適当であり、1 nM~10 μMの範囲内が好ましく、10 nM~1
μMの範囲内がより好ましい。また、本発明の組成物に含まれる本発明のオリゴマーと担
体との重量比(担体/本発明のオリゴマー)は、該オリゴマーの性質及び該担体の種類等
によって異なるが、0.1~100の範囲内が適当であり、1~50の範囲内が好ましく、10~20
の範囲内がより好ましい。
【0103】
本発明の組成物には、本発明のオリゴマーと上述した担体以外に、任意に医薬的に許容
可能な添加剤を配合することができる。かかる添加剤として、例えば、乳化補助剤(例え
ば、炭素数6~22の脂肪酸やその医薬的に許容可能な塩、アルブミン、デキストラン)、
安定化剤(例えば、コレステロール、ホスファチジン酸)、等張化剤(例えば、塩化ナト
リウム、グルコース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース)、pH調整剤
(例えば、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノ
ールアミン)を挙げることができる。これらを一種又は二種以上使用することができる。
本発明の組成物中の当該添加剤の含有量は、90重量%以下が適当であり、70重量%以下が
好ましく、50重量%以下がより好ましい。
【0104】
本発明の組成物は、担体の分散液に本発明のオリゴマーを加え、適当に攪拌することに
より調製することができる。また、添加剤は、本発明のオリゴマーの添加前でも添加後で
も適当な工程で添加することができる。本発明のオリゴマーを添加させる際に用い得る水
性溶媒としては、医薬的に許容可能なものであれば特に制限されず、例えば、注射用水、
注射用蒸留水、生理食塩水等の電解質液、ブドウ糖液、マルトース液等の糖液を挙げるこ
とができる。また、かかる場合のpH及び温度等の条件は、当業者が適宜選択することがで
きる。
【0105】
本発明の組成物は、例えば、液剤やその凍結乾燥製剤とすることができる。当該凍結乾
燥製剤は、常法により、液剤の形態を有している本発明の組成物を凍結乾燥処理すること
により調製することができる。例えば、液剤の形態を有している本発明の組成物を適当な
滅菌を行った後、所定量をバイアル瓶に分注し、約-40~-20℃の条件で予備凍結を2時
間程度行い、約0~10℃で減圧下に一次乾燥を行い、次いで、約15~25℃で減圧下に二次
乾燥して凍結乾燥することができる。そして、一般的にはバイアル内部を窒素ガスで置換
し、打栓して本発明の組成物の凍結乾燥製剤を得ることができる。
【0106】
本発明の組成物の凍結乾燥製剤は、一般には任意の適当な溶液(再溶解液)の添加によ
って再溶解し使用することができる。このような再溶解液としては、注射用水、生理食塩
水、その他一般輸液を挙げることができる。この再溶解液の液量は、用途等によって異な
り特に制限されないが、凍結乾燥前の液量の0.5~2倍量、又は500 mL以下が適当である。
【0107】
本発明の組成物を投与する際の用量としては、含有される本発明のオリゴマーの種類、
剤形、年齢や体重等の患者の状態、投与経路、疾患の性質と程度を考慮した上で調製する
ことが望ましいが、成人に対して本発明のオリゴマーの量として、1日当たり0.1mg~10g/
ヒトの範囲内が、好ましくは1 mg~1 g/ヒトの範囲内が一般的である。この数値は標的と
する疾患の種類、投与形態、標的分子によっても異なる場合がある。従って、場合によっ
てはこれ以下でも十分であるし、また逆にこれ以上の用量を必要とするときもある。また
1日1回から数回の投与又は1日から数日間の間隔で投与することができる。
【0108】
本発明の組成物の別の態様として、本発明のオリゴヌクレオチドを発現し得るベクター
と上述した担体とを含む医薬組成物を挙げることができる。かかる発現ベクターは、複数
の本発明のオリゴヌクレオチドを発現し得るものであってもよい。当該組成物には、本発
明のオリゴマーを含有する本発明の組成物と同様に、医薬的に許容可能な添加剤を添加す
ることができる。当該組成物中に含まれる発現ベクターの濃度は、担体の種類等によって
異なるが、0.1 nM~100 μMの範囲内が適当であり、1 nM~10 μMの範囲内が好ましく、1
0 nM~1 μMの範囲内がより好ましい。当該組成物中に含まれる発現ベクターと担体との
重量比(担体/発現ベクター)は、発現ベクターの性質、担体の種類等によって異なるが
、0.1~100の範囲内が適当であり、1~50の範囲内が好ましく、10~20の範囲内がより好
ましい。また、当該組成物中に含まれる担体の含有量は、本発明のオリゴマーを含有する
本発明の組成物の場合と同様であり、その調製方法等に関しても、本発明の組成物の場合
と同様である。
【実施例】
【0109】
以下に、実施例及び試験例を掲げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施
例に示される範囲に限定されるものではない。
【0110】
[参考例1]
アミノポリスチレン樹脂に担持された4-{[(2S,6R)-6-(4-ベンズアミド-2-オ
キソピリミジン-1-イル)-4-トリチルモルホリン-2-イル]メトキシ}-4-オキソ
ブタン酸
工程1:4-{[(2S,6R)-6-(4-ベンズアミド-2-オキソピリミジン-1(2H)-イ
ル)-4-トリチルモルホリン-2-イル]メトキシ}-4-オキソブタン酸の製造
アルゴン雰囲気下、N-{1-[(2R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)-4-トリチルモ
ルホリン-2-イル]-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル}ベンズアミド3
.44gと4-ジメチルアミノピリジン(4-DMAP)1.1gをジクロロメタン50mLに懸濁し、無水
コハク酸0.90gを加え、室温で3時間撹拌した。反応液にメタノール10mLを加え、減圧濃縮
した。残渣に酢酸エチルと0.5Mのリン酸二水素カリウム水溶液を用いて抽出操作を行った
。得られた有機層を0.5Mのリン酸二水素カリウム水溶液、水、飽和食塩水の順で洗浄した
。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮し、4.0gの目的物を得た。
【0111】
工程2:アミノポリスチレン樹脂に担持された4-{[(2S,6R)-6-(4-ベンズアミド
-2-オキソピリミジン-1-イル)-4-トリチルモルホリン-2-イル]メトキシ}-4
-オキソブタン酸の製造
4-{[(2S,6R)-6-(4-ベンズアミド-2-オキソピリミジン-1(2H)-イル)
-4-トリチルモルホリン-2-イル]メトキシ}-4-オキソブタン酸4.0gをピリジン(
脱水)200mLに溶解し、4-DMAP0.73g、1-エチル-3‐(3-ジメチルアミノプロピル)カ
ルボジイミド塩酸塩11.5gを加えた。次いで、アミノポリスチレン樹脂 Primer support
200 amino(GE Healthcare Japan社製、17-5214-97)25.0g、トリエチルアミン8.5mLを
加え、室温で4日間振とうした。反応後、樹脂をろ取した。得られた樹脂をピリジン、メ
タノール、ジクロロメタンの順で洗浄し、減圧乾燥した。得られた樹脂にテトラヒドロフ
ラン(脱水)200mL、無水酢酸15mL、2,6-ルチジン15mLを加え、室温で2時間振とうした
。樹脂をろ取し、ピリジン、メタノール、ジクロロメタンの順で洗浄し、減圧乾燥し、26
.7gの目的物を得た。
当該目的物のローディング量は、公知の方法を用いて、樹脂1g当たりのトリチルのモル
量を409nmにおけるUV吸光度を測定することにより決定した。樹脂のローディング量は、1
29.2μmol/gであった。
UV測定条件
機器:U-2910(日立製作所)
溶媒:メタンスルホン酸
波長:265 nm
ε値:45000
【0112】
[参考例2]
アミノポリスチレン樹脂に担持された4-[[(2S,6R)-6-[6-(2-シアノエトキシ)-2-[(2-フェ
ノキシアセチル)アミノ]プリン-9-イル]-4-トリチルモルホリン-2-イル]メトキシ]-4-オ
キソ-ブタン酸
工程1:N2-(フェノキシアセチル)グアノシンの製造
グアノシン100gを80℃で減圧下、24時間乾燥した。ピリジン(脱水)500mL、ジクロロ
メタン(脱水)500mLを加え、アルゴン雰囲気下、0℃にてクロロトリメチルシラン401mL
を滴下し室温で3時間撹拌した。再度氷冷し、フェノキシアセチルクロライド66.3gを滴下
し、氷冷下、更に3時間撹拌した。反応液にメタノール500mlを加え、室温で終夜撹拌後、
減圧下溶媒を留去した。残渣にメタノール500mLを加え、減圧下濃縮することを3回行った
。残渣に水4Lを加え氷冷下1時間撹拌し、析出物をろ取した。このものを、水、次いで、
冷メタノールで洗浄し、乾燥して目的化合物を150.2g得た(収率:102%)(参考:Org.
Lett.(2004),Vol.6,No.15,2555-2557)。
【0113】
工程2:N9-{[(2R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)-4-モルホリン-2-イル]-6
-オキソ-6,9-ジヒドロ-1H-プリン-2-イル}-2-フェノキシアセタミド p-ト
ルエンスルホン酸塩
工程1で得られた化合物30gをメタノール480mLに懸濁し、氷冷下、2N塩酸130mLを加えた
。次いで、四ほう酸アンモニウム4水和物56.8g、過ヨウ素酸ナトリウム16.2gをこの順で
加え、室温で3時間撹拌した。反応液を氷冷し、不溶物をろ過して除き、これをメタノー
ル100mLで洗浄した。ろ液と洗浄液を合わせて氷冷し、2-ピコリンボラン11.52gを加えて
20分間撹拌後、p-トルエンスルホン酸・1水和物54.6gをゆっくり加えて、4℃で終夜撹拌
した。析出物をろ取し、冷メタノール500mLで洗浄後、乾燥して目的化合物を17.7g得た(
収率:43.3%)。
1H NMR(δ,DMSO-d6):9.9-9.2(2H,br)、8.35(1H,s)、7.55(2H,m)、7.35(
2H,m)、7.10(2H,d, J=7.82Hz)、7.00(3H,m)、5.95(1H,dd, J=10.64,2.42H
z)、4.85(2H,s)、4.00(1H,m)、3.90-3.60(2H,m)、3.50-3.20(5H,m)、2.9
0(1H,m)、2.25(3H,s)
【0114】
工程3:N9-{(2R,6S)-6-ヒドロキシメチル-4-トリチルモルホリン-2
-イル}-N2-(フェノキシアセチル)グアニンの製造
工程2で得られた化合物2.0gをジクロロメタン(30ml)に懸濁し、氷冷下、トリエ
チルアミン(13.9g)、トリチルクロリド(18.3g)を加えて、室温で1時間撹
拌した。反応液を飽和重曹水、次いで水で洗浄後、有機層を回収して硫酸マグネシウムで
乾燥し、有機層を減圧濃縮した。残渣に0.2Mクエン酸ナトリウム緩衝液(pH3)/
メタノール(1:4(v/v),40ml)を加えて撹拌し、次いで水(40ml)を加
えて氷冷下1時間撹拌した(懸濁状態)。これをろ取し、冷メタノールで洗浄、乾燥して
目的化合物を1.84g得た(収率:82.0%)。
【0115】
工程4:N9-[(2R,6S)-6-{(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)メ
チル}-4-トリチルモルホリン-2-イル]-N2-(フェノキシアセチル)グアニン
の製造
工程3で得られた化合物(38.3g)をジクロロメタン(300mL)に溶解し、氷
冷下、イミダゾール(4.64g)、t-ブチルジメチルシリルクロリド(9.47g)
をこの順で加え、室温で1時間撹拌した。反応液を0.2Mクエン酸ナトリウム緩衝液(
pH3)、次いで、飽和食塩水で洗浄後、有機層を回収して硫酸マグネシウムで乾燥し、
有機層を減圧濃縮して目的化合物を粗生成物として44.1gを得た。
【0116】
工程5:N9-[(2R,6S)-6-{(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)メ
チル}-4-トリチルモルホリン-2-イル]-N2-(フェノキシアセチル)-O6-
トリイソプロピルベンゼンスルホニルグアニンの製造
工程4で得られた化合物(44.1g)をジクロロメタン(300mL)に溶解し、氷
冷下、4-ジメチルアミノピリジン(0.64g)、トリエチルアミン(29.2mL)
、トリイソプロピルベンゼンスルホニルクロリド(19.0g)を加えて室温で1時間撹
拌した。反応液を1Mリン酸二水素ナトリウム水溶液で洗浄後、有機層を回収して硫酸マ
グネシウムで乾燥し、有機層を減圧濃縮して目的化合物を粗生成物として60.5gを得
た。
【0117】
工程6: N9-[(2R,6S)-6-{(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)
メチル}-4-トリチルモルホリン-2-イル]-N2-(フェノキシアセチル)-O6
-(2-シアノエチル)グアニンの製造
工程5で得られた化合物(60.5g)をジクロロメタン(300mL)に溶解し、氷
冷下、N-メチルピロリジン(54.5mL)を加えて1時間撹拌した。反応液にエチレ
ンシアノヒドリン(37.2g)、次いで1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデ
カ-7-エン(11.96g)を加え、氷冷下、更に2時間撹拌した。反応液を1Mリン
酸二水素ナトリウム水溶液、次いで水で洗浄後、有機層を回収して硫酸マグネシウムで乾
燥し、有機層を減圧濃縮して目的化合物を粗生成物として72.4gを得た。
【0118】
工程7:N9-[(2R,6S)-6-ヒドロキシメチル-4-トリチルモルホリン-2
-イル]-N2-(フェノキシアセチル)-O6-(2-シアノエチル)グアニンの製造
工程6で得られた化合物(72.4g)をジクロロメタン(300mL)に溶解し、ト
リエチルアミントリヒドロフルオリド(21.1g)を加えて室温で17時間撹拌した。
反応液を冷飽和重曹水に注ぎ、中和後ジクロロメタン層を回収して硫酸マグネシウムで乾
燥し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(PSQ100B(冨
士シリシア化学株式会社製、以下同じ。))により精製し、目的化合物を14.3g得た
(工程4からの収率:39.2%)。
【0119】
工程8:アミノポリスチレン樹脂に担持された4-[[(2S,6R)-6-[6-(2-シアノエトキシ)-2-[
(2-フェノキシアセチル)アミノ]プリン-9-イル]-4-トリチルモルホリン-2-イル]メトキシ
]-4-オキソ-ブタン酸の製造
参考例1と同様の方法で標記化合物を製造した。但し、参考例1の工程1で用いたN-{1
-[(2R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)-4-トリチルモルホリン-2-イル]-2-オ
キソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル}ベンズアミドの代わりに、本工程では、N
9-[(2R,6S)-6-ヒドロキシメチル-4-トリチルモルホリン-2-イル]-
N2-(フェノキシアセチル)-O6-(2-シアノエチル)グアニンを使用した。
【0120】
[参考例3]
アミノポリスチレン樹脂に担持された4-{[(2S,6R)-6-(5-メチル-2,4-ジオキ
ソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1-イル)-4-トリチルモルホリン-2-イル]メトキシ
}-4-オキソブタン酸
参考例1と同様の方法で標記化合物を製造した。但し、参考例1の工程1で用いたN-{1
-[(2R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)-4-トリチルモルホリン-2-イル]-2-オ
キソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル}ベンズアミドの代わりに、本工程では、1-
[(2R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)-4-トリチルモルホリン-2-イル]-5-メチ
ルピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンを使用した。
【0121】
[参考例4]
アミノポリスチレン樹脂に担持された4-{[(2S,6R)-6-(6-ベンズアミドプリン-9-イル)-4
-トリチルモルフォリン-2-イル]メトキシ}-4-オキソブタン酸
参考例1と同様の方法で標記化合物を製造した。但し、参考例1の工程1で用いたN-{1
-[(2R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)-4-トリチルモルホリン-2-イル]-2-オ
キソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル}ベンズアミドの代わりに、本工程では、N-
{9-[(2R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)-4-トリチルモルフォリン-2-イル]プリン-6-イル}
ベンズアミドを使用した。
【0122】
[参考例5]
アミノポリスチレン樹脂に担持された1,12-ジオキソ-1-(4-トリチルピペラジン-1
-イル)-2,5,8,11-テトラオキサ-15-ペンタデカン酸
参考例1と同様の方法で標記化合物を製造した。但し、参考例1の工程1で用いたN-{1
-[(2R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)-4-トリチルモルホリン-2-イル]-2-オ
キソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル}ベンズアミドの代わりに、本工程では、2-
[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル 4-トリチルピペラジン-1-カルボ
ン酸(国際公開公報第2009/064471号に記載の化合物)を使用した。
【0123】
エクソン45について
以下の実施例1~8及び比較例1の記載に従い、表5のPMO No.1~6及び8~10に示す各種PM
Oを合成した。合成したPMOを注射用水(大塚製薬工場社製)で溶解した。なお、PMO No.7
はジーンツールズ社から購入した。
【0124】
【0125】
[実施例1]
PMO No.1
アミノポリスチレン樹脂に担持された4-{[(2S,6R)-6-(4-ベンズアミド-2-
オキソピリミジン-1(2H)-イル)-4-トリチルモルホリン-2-イル]メトキシ}-4
-オキソブタン酸(参考例1)0.2g(26μmol)をフィルター付きカラムに充填し、核酸合
成機(AKTA Oligopilot 10 plus)を使用して、下記合成サイク
ルを開始した。標記化合物の塩基配列になるよう、各カップリングサイクルにおいて所望
のモルホリノモノマー化合物を添加した。
【表6】
【0126】
なお、デブロック溶液としては、3%(w/v)トリフルオロ酢酸を含有するジクロロメタ
ン溶液を用いた。中和・洗浄溶液としては、N,N-ジイソプロピルエチルアミンを10%(
v/v)になるように、かつテトラヒドロフランを5%(v/v)になるように、35%(v/v)の
アセトニトリル含有するジクロロメタン溶液で溶解したものを用いた。カップリング溶液
Aとしては、モルホリノモノマー化合物を0.10Mになるように、テトラヒドロフランで溶解
したものを用いた。カップリング溶液Bとしては、N,N-ジイソプロピルエチルアミンを2
0%(v/v)になるように、かつテトラヒドロフランを10%(v/v)になるように、アセト
ニトリルで溶解したものを用いた。キャッピング溶液としては、アセトニトリルに対して
20%(v/v)の無水酢酸と30%(v/v)の2,6-ルチジンを溶解したものを使用した。
【0127】
上記で合成したPMOが担持されたアミノポリスチレン樹脂を反応容器から回収し、2時間
以上室温で減圧乾燥した。乾燥したアミノポリスチレン樹脂に担持されたPMOを反応容器
に入れ、28%アンモニア水-エタノール(1/4)5mLを加え、55℃で15時間撹拌した。アミ
ノポリスチレン樹脂をろ別し、水-エタノール(1/4)1mLで洗浄した。得られたろ液を減
圧濃縮した。得られた残渣を20mMの酢酸-トリエチルアミン緩衝液(TEAA緩衝液)とアセ
トニトリルの混合溶媒(4/1)10mLに溶解し、メンブレンフィルターでろ過した。得られ
たろ液を逆相HPLCにて精製した。使用した条件は、以下の通りである。
【表7】
【0128】
各フラクションを分析して、目的物を回収し、減圧濃縮した。濃縮残渣に2Mのリン酸水
溶液0.5mLを加え、15分間攪拌した。さらに、2Mの水酸化ナトリウム水溶液2mLを加えてア
ルカリ性とし、メンブレンフィルター(0.45μm)でろ過した。
得られた目的物を含有する水溶液を陰イオン交換樹脂カラムで精製した。使用した条件
は下記の通りである。
【0129】
【0130】
各フラクションを分析(HPLC)し、目的物を水溶液として得た。得られた水溶液に0.1M
のリン酸緩衝液(pH 6.0)を添加し中和した。次いで、下記条件で逆相HPLCにて脱塩した
。
【表9】
【0131】
目的物を回収し、減圧濃縮した。得られた残渣を水に溶かし、凍結乾燥して、白色綿状
固体として1.5mgの目的化合物を得た。
ESI-TOF-MS 計算値:6877.8
測定値:6877.4
【0132】
[実施例2]
PMO.No.3
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。
ESI-TOF-MS 計算値:6862.8
測定値:6862.5
【0133】
[実施例3]
PMO.No.2
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。
ESI-TOF-MS 計算値:6862.8
測定値:6862.3
【0134】
[実施例4]
PMO.No.4
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された4-[[(2S,6R)-6-[6-(2-シアノエトキシ)-2-[(2-フェノキ
シアセチル)アミノ]プリン-9-イル]-4-トリチルモルホリン-2-イル]メトキシ]-4-オキソ-
ブタン酸(参考例2)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:6902.8
測定値:6902.3
【0135】
[実施例5]
PMO.No.5
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された4-(((2S,6R)-6-(5-メチル-2,4-ジオキソ-
3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)-4-トリチルモルホリン-2-イル)メトキ
シ)-4-オキソブタン酸(参考例3)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:6902.8
測定値:6902.4
【0136】
[実施例6]
PMO.No.8
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。
ESI-TOF-MS 計算値:6547.5
測定値:6547.2
【0137】
[実施例7]
PMO.No.9
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。
ESI-TOF-MS 計算値:6547.5
測定値:6547.2
【0138】
[実施例8]
PMO.No.10
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された1,12-ジオキソ-1-(4-トリチルピペラジン-1-イ
ル)-2,5,8,11-テトラオキサ-15-ペンタデカン酸(参考例5)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:7214.1
測定値:7213.7
【0139】
[比較例1]
PMO.No.6
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。
ESI-TOF-MS 計算値:8193.9
測定値:8195.3
【0140】
[試験例1]
In vitroアッセイ
配列番号19~35に記載の2’-O-メトキシ-ホスホロチオエート体(2’-OMe-S-RNA)のア
ンチセンスオリゴマーを用いて実験を行った。アッセイに用いた各種アンチセンスオリゴ
マーは日本バイオサービス社より購入した。各種アンチセンスオリゴマーの配列を以下に
示す。
【表10】
【0141】
RD細胞(ヒト横紋筋肉腫細胞株)1×105個を12穴プレートに播種し、10%ウシ胎児血清
(FCS)(インビトロジェン社製)を含むEagle's minimal essential medium(EMEM)培地
(シグマ社製、以下同じ)1mL中、37℃、5%CO2条件下で一晩培養した。上記のエクソン4
5スキッピング用の各種アンチセンスオリゴマー(日本バイオサービス社製)(0.3または
1 μM)とLipofectamine2000(インビトロジェン社製)の複合体を作成し、0.9mLで培地
交換したRD細胞に、100μl添加し、終濃度30または100 nMとした。
【0142】
添加後、一晩培養した。細胞をPBS(ニッスイ社製、以下同じ)で2回洗浄した後、ISOG
EN (ニッポンジーン社製)250 μl を細胞に添加し、数分間室温に放置して細胞を溶解
させ、該溶解物をEppendorfチューブに回収した。ISOGENに添付のプロトコールに従ってt
otal RNAを抽出した。抽出したtotal RNAの濃度はNanoDrop ND-1000(エル・エム・エス
社製)を用いて測定した。
抽出したtotal RNA 400 ngに対し、QIAGEN OneStep RT-PCR Kitを用いてRT-PCRを行っ
た。キットに添付のプロトコールに従って、反応液を調製した。サーマルサイクラーはPT
C-100(MJ Research社製)を用いた。用いたRT-PCRのプログラムは、以下の通りである。
50℃、30分間:逆転写反応
95℃、15分間:熱変性
[94℃、30秒間;60℃、30秒間;72 ℃、1分間]x 35サイクル:PCR増幅
72℃、10分間:
【0143】
RT-PCRに使用したフォワードプライマーとリバースプライマーの塩基配列は以下の通り
である。
フォワードプライマー:5’- GCTCAGGTCGGATTGACATT-3’ (配列番号36)
リバースプライマー:5’- GGGCAACTCTTCCACCAGTA-3’ (配列番号37)
【0144】
上記PCRの反応産物1 μlをBioanalyzer(アジレント社製)を用いて解析した。
エクソン45 がスキップしたバンドのポリヌクレオチド量「A」と、エクソン45がスキッ
プしなかったバンドのポリヌクレオチド量「B」を測定した。これら「A」及び「B」の測
定値に基づき、以下の式に従って、スキッピング効率を求めた。
スキッピング効率(%)= A /( A + B )x 100
【0145】
実験結果
結果を
図1、2に示す。本実験により、ヒトジストロフィン遺伝子の第45番目のエクソ
ンの5’末端から第1~25番目又は第6~30番目にアンチセンスオリゴマーを設計した場合
、第45番目のエクソンの5’末端から第7~31番目にアンチセンスオリゴマーを設計した場
合と比較して高い効率でエクソン45をスキッピングさせることが判明した。
【0146】
[試験例2]
In vitroアッセイ
RD細胞(ヒト横紋筋肉腫細胞株)3.5×105個に対して、PMO No.1~5及び8~10の本発明
のオリゴマー並びにPMO No. 6及び7のアンチセンスオリゴマーを1、3、10 μMずつAmaxa
Cell Line Nucleofector Kit Lを用いてNucleofector II(Lonza)により導入した。プロ
グラムはT-030を用いた。
【0147】
導入後、細胞を、10%ウシ胎児血清(FCS)(インビトロジェン社製)を含むEagle's m
inimal essential medium(EMEM)培地(シグマ社製、以下同じ。) 2mL中、37℃、5%CO2
条件下で3日間培養した。細胞をPBS(ニッスイ社製、以下同じ。)で2回洗浄した後、ISO
GEN (ニッポンジーン社製)500 μl を細胞に添加し、数分間室温に放置して細胞を溶解
させ、該溶解物をEppendorfチューブに回収した。ISOGENに添付のプロトコールに従ってt
otal RNAを抽出した。抽出したtotal RNAの濃度はNanoDrop ND-1000(エル・エム・エス
社製)を用いて測定した。
【0148】
抽出したtotal RNA 400 ngに対し、QIAGEN OneStep RT-PCR Kit(キアゲン社製)を用
いてRT-PCRを行った。キットに添付のプロトコールに従って、反応液を調製した。サーマ
ルサイクラーはPTC-100(MJ Research社製)を用いた。用いたRT-PCRのプログラムは、以
下の通りである。
50℃、30分間:逆転写反応
95℃、15分間:熱変性
[94℃、30秒間;60℃、30秒間;72 ℃、1分間]x 35サイクル:PCR増幅
72℃、10分間:
【0149】
RT-PCRに使用したフォワードプライマーとリバースプライマーの塩基配列は以下の通り
である。
フォワードプライマー:5’-GCTCAGGTCGGATTGACATT-3’ (配列番号36)
リバースプライマー:5’-GGGCAACTCTTCCACCAGTA-3’ (配列番号37)
【0150】
上記PCRの反応産物1 μlをBioanalyzer(アジレント社製)を用いて解析した。
エクソン45 がスキップしたバンドのポリヌクレオチド量「A」と、エクソン45がスキッ
プしなかったバンドのポリヌクレオチド量「B」を測定した。これら「A」及び「B」の測
定値に基づき、以下の式に従って、スキッピング効率を求めた。
スキッピング効率(%)= A /( A + B )x 100
【0151】
実験結果
結果を
図3、
図4、
図14及び
図15に示す。本実験により、PMONo.1、3の本発明のオ
リゴマーは、RD細胞において、PMO No.6のアンチセンスオリゴマーと同等の効率でエクソ
ン45をスキッピングさせることが判明した(
図3、
図4)。また、PMONo.1、2、3の本発
明のオリゴマーは、RD細胞において、PMO No.7のアンチセンスオリゴマーと比較して高い
効率でエクソン45をスキッピングさせることが判明した(
図14)。さらに、PMONo.3は
末端構造の異なるPMO No.10と比較して高い効率でエクソン45をスキッピングさせること
が判明した(
図15)。
【0152】
[試験例3]
ヒト線維芽細胞を用いたIn vitroアッセイ
ZsGreen1共発現レトロウイルスベクターによりGM05017細胞(ヒトDMD患者由来線維芽細
胞、Coriell Institute for Medical Research)にヒトMyoD遺伝子(配列番号38)を導入
した。
4から5日間インキュベートした後に、FACSによりZsGreen陽性のMyoD転換線維芽細胞を
回収し、5×104個/cm2になるように12穴プレートに播種した。増殖培地は10%FCS及び1%
Penicillin/Streptomycin(P/S)(シグマ アルドリッチ社)を含むDulbecco's Modified
Eagle Medium:Nutrient Mixture F-12(DMEM・F-12)(インビトロジェン社)を1 mL使用し
た。
【0153】
24時間後に分化培地(2%ウマ血清(インビトロジェン社)、1%P/S及びITS Liquid Medi
a Supplement(シグマ社)含有DMEM/F-12)に交換した。2、3日ごとに培地交換を行い12
から14日間インキュベートし、筋管細胞に分化させた。
【0154】
その後、分化培地を6 μMのEndo-Porter(ジーンツール社)含有分化培地に交換し、終
濃度10μMになるようにモルホリノオリゴマーを添加した。48時間インキュベート後に、T
RIzol (インビトロジェン社製)により、細胞からtotal RNAを抽出した。抽出したtotal
RNA 50 ngに対し、QIAGEN OneStep RT-PCR Kitを用いてRT-PCRを行った。添付のプロト
コールに従って、反応液を調製した。サーマルサイクラーはiCycler(Bio-Rad社製)を用
いた。用いたRT-PCRのプログラムは、以下の通りである。
50℃、30分間:逆転写反応
95℃、15分間:熱変性
[94℃、1分間;60℃、1分間;72 ℃、1分間]x 35サイクル:PCR増幅
72℃、7分間:ポリメラーゼの熱失活
【0155】
プライマーはhDMD44F及びhDMD46Rを使用した。
hDMD44F:5’- CCTGAGAATTGGGAACATGC-3’ (配列番号39)
hDMD46R:5’- TTGCTGCTCTTTTCCAGGTT-3’ (配列番号40)
上記RT-PCR反応の反応産物を2%アガロースゲル電気泳動によって分離し、 GeneFlash
(Syngene社)によりゲル写真を撮影した。Image J(アメリカ国立衛生研究所製)により
、エクソン45 がスキップしたバンドのポリヌクレオチド量「A」と、エクソン45がスキッ
プしなかったバンドのポリヌクレオチド量「B」を測定した。これら「A」及び「B」の測
定値に基づき、以下の式に従って、スキッピング効率を求めた。
スキッピング効率(%)= A /( A + B )x 100
【0156】
実験結果
結果を
図5に示す。本実験により、PMO No.3の本発明のオリゴマーは、GM05017細胞に
おいて、高い効率でエクソン45をスキッピングさせることが判明した。
【0157】
エクソン55について
以下の実施例9~19の記載に従い、表11 PMO No.11~14及び16~22に示す各種PMOを合成
した。合成したPMOを注射用水(大塚製薬工場社製)で溶解した。なお、PMO No.15はジー
ンツールズ社から購入した。
【表11】
【0158】
[実施例9]
PMO.No.11
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された4-{[(2S,6R)-6-(6-ベンズアミドプリン-9-イル)-4-ト
リチルモルフォリン-2-イル]メトキシ}-4-オキソブタン酸(参考例4)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:6807.8
測定値:6807.0
【0159】
[実施例10]
PMO.No.12
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された4-(((2S,6R)-6-(5-メチル-2,4-ジオキソ-
3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)-4-トリチルモルホリン-2-イル)メトキ
シ)-4-オキソブタン酸(参考例3)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:6822.8
測定値:6822.5
【0160】
[実施例11]
PMO.No.13
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された4-(((2S,6R)-6-(5-メチル-2,4-ジオキソ-
3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)-4-トリチルモルホリン-2-イル)メトキ
シ)-4-オキソブタン酸(参考例3)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:6837.8
測定値:6837.3
【0161】
[実施例12]
PMO.No.14
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された4-{[(2S,6R)-6-(6-ベンズアミドプリン-9-イル)-4-ト
リチルモルフォリン-2-イル]メトキシ}-4-オキソブタン酸(参考例4)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:6861.8
測定値:6861.4
【0162】
[実施例13]
PMO.No.16
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された4-(((2S,6R)-6-(5-メチル-2,4-ジオキソ-
3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)-4-トリチルモルホリン-2-イル)メトキ
シ)-4-オキソブタン酸(参考例3)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:6812.8
測定値:6812.7
【0163】
[実施例14]
PMO.No.17
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された4-[[(2S,6R)-6-[6-(2-シアノエトキシ)-2-[(2-フェノキ
シアセチル)アミノ]プリン-9-イル]-4-トリチルモルホリン-2-イル]メトキシ]-4-オキソ-
ブタン酸(参考例2)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:6852.8
測定値:6852.7
【0164】
[実施例15]
PMO.No.18
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された4-[[(2S,6R)-6-[6-(2-シアノエトキシ)-2-[(2-フェノキ
シアセチル)アミノ]プリン-9-イル]-4-トリチルモルホリン-2-イル]メトキシ]-4-オキソ-
ブタン酸(参考例2)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:6901.8
測定値:6901.5
【0165】
[実施例16]
PMO.No.19
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された4-(((2S,6R)-6-(5-メチル-2,4-ジオキソ-
3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)-4-トリチルモルホリン-2-イル)メトキ
シ)-4-オキソブタン酸(参考例3)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:6901.8
測定値:6901.7
【0166】
[実施例17]
PMO.No.20
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された4-[[(2S,6R)-6-[6-(2-シアノエトキシ)-2-[(2-フェノキ
シアセチル)アミノ]プリン-9-イル]-4-トリチルモルホリン-2-イル]メトキシ]-4-オキソ-
ブタン酸(参考例2)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:6522.5
測定値:6522.0
【0167】
[実施例18]
PMO.No.21
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された4-{[(2S,6R)-6-(6-ベンズアミドプリン-9-イル)-4-ト
リチルモルフォリン-2-イル]メトキシ}-4-オキソブタン酸(参考例4)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:6546.5
測定値:6546.0
【0168】
[実施例19]
PMO.No.22
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された1,12-ジオキソ-1-(4-トリチルピペラジン-1-イ
ル)-2,5,8,11-テトラオキサ-15-ペンタデカン酸
(参考例5)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:7213.1
測定値:7212.5
【0169】
[試験例4]
In vitroアッセイ
配列番号49~68に記載の2’-O-メトキシ-ホスホロチオエート体(2’-OMe-S-RNA)のア
ンチセンスオリゴマーを用いて実験を行った。アッセイに用いた各種アンチセンスオリゴ
マーは日本バイオサービス社より購入した。各種アンチセンスオリゴマーの配列を以下に
示す。
【表12】
【0170】
RT-PCRを以下のプライマーで実施した他は、エクソン45(試験例1)と同様の条件・手
順で行った。
フォワードプライマー:5’- CATGGAAGGAGGGTCCCTAT-3’ (配列番号69)
リバースプライマー:5’- CTGCCGGCTTAATTCATCAT-3’ (配列番号70)
【0171】
実験結果
結果を
図6、7に示す。本実験により、ヒトジストロフィン遺伝子の第55番目のエクソ
ンの5’末端から第1~21番目又は第11~31番目にアンチセンスオリゴマーを設計した場合
、第55番目のエクソンの5’末端から第104~123番目にアンチセンスオリゴマーを設計し
た場合と比較して高い効率でエクソン55をスキッピングさせることが判明した。
【0172】
[試験例5]
In vitroアッセイ
RT-PCRを以下のプライマーで実施した他は、エクソン45(試験例2)と同様の条件・手
順で行った。
フォワードプライマー:5’- CATGGAAGGAGGGTCCCTAT-3’ (配列番号69)
リバースプライマー:5’- CTGCCGGCTTAATTCATCAT-3’ (配列番号70)
【0173】
実験結果
結果を
図8、16及び17に示す。本実験により、PMONo.12、13、14(H55_8-28(OH)、
H55_11-31(OH)及びH55_14-34(OH))の本発明のオリゴマーは、RD細胞において、高い効率
でエクソン55をスキッピングさせることが判明した(
図8)。また、PMO No. 14、16、17
、18、19(H55_14-34(OH)、H55_12-32(OH)、H55_13-33(OH)、H55_15-35(OH)及びH55_16-3
6(OH))の本発明オリゴマーは、RD細胞において、PMO No.15(H55_139-156(GT))のアン
チセンスオリゴマーと比較して著しく高い効率でエクソン55をスキッピングさせることが
判明した(
図16)。PMO No. 14の本発明オリゴマーと鎖長を1塩基短くしたPMO No. 21(
H55_15-34(OH))は同等の効率でエクソン55をスキッピングさせることが判明した(
図17
)。さらに、PMO No. 14の本発明オリゴマーは、末端構造の異なるPMO No. 22(H55_14-34
(TEG))と比較して、同等の効率でエクソン55をスキッピングさせることが判明した(
図1
7)。
【0174】
エクソン44について
以下の実施例20~29の記載に従い、下記表のPMO No.23~29及び31~33に示す各種PMOを
合成した。合成したPMOを注射用水(大塚製薬工場社製)で溶解した。なお、PMO No.30は
ジーンツールズ社から購入した。
【表13】
【0175】
[実施例20]
PMO.No.23
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された4-(((2S,6R)-6-(5-メチル-2,4-ジオキソ-
3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)-4-トリチルモルホリン-2-イル)メトキ
シ)-4-オキソブタン酸(参考例3)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:6918.9
測定値:6918.3
【0176】
[実施例21]
PMO.No.24
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された4-(((2S,6R)-6-(5-メチル-2,4-ジオキソ-
3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)-4-トリチルモルホリン-2-イル)メトキ
シ)-4-オキソブタン酸(参考例3)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:6903.9
測定値:6904.2
【0177】
[実施例22]
PMO.No.25
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された4-{[(2S,6R)-6-(6-ベンズアミドプリン-9-イル)-4-ト
リチルモルフォリン-2-イル]メトキシ}-4-オキソブタン酸(参考例4)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:6912.9
測定値:6912.4
【0178】
[実施例23]
PMO.No.26
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された4-(((2S,6R)-6-(5-メチル-2,4-ジオキソ-
3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)-4-トリチルモルホリン-2-イル)メトキ
シ)-4-オキソブタン酸(参考例3)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:6903.9
測定値:6904.2
【0179】
[実施例24]
PMO.No.27
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された4-{[(2S,6R)-6-(6-ベンズアミドプリン-9-イル)-4-ト
リチルモルフォリン-2-イル]メトキシ}-4-オキソブタン酸(参考例4)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:6927.9
測定値:6927.4
[実施例25]
PMO.No.28
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された4-(((2S,6R)-6-(5-メチル-2,4-ジオキソ-
3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)-4-トリチルモルホリン-2-イル)メトキ
シ)-4-オキソブタン酸(参考例3)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:6942.9
測定値:6942.3
【0180】
[実施例26]
PMO.No.29
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された4-(((2S,6R)-6-(5-メチル-2,4-ジオキソ-
3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)-4-トリチルモルホリン-2-イル)メトキ
シ)-4-オキソブタン酸(参考例3)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:6917.9
測定値:6918.3
【0181】
[実施例27]
PMO.No.31
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された4-{[(2S,6R)-6-(6-ベンズアミドプリン-9-イル)-4-ト
リチルモルフォリン-2-イル]メトキシ}-4-オキソブタン酸(参考例4)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:6573.6
測定値:6572.4
【0182】
[実施例28]
PMO.No.32
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された4-(((2S,6R)-6-(5-メチル-2,4-ジオキソ-
3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)-4-トリチルモルホリン-2-イル)メトキ
シ)-4-オキソブタン酸(参考例3)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:6588.6
測定値:6588.3
【0183】
[実施例29]
PMO.No.33
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された1,12-ジオキソ-1-(4-トリチルピペラジン-1-イ
ル)-2,5,8,11-テトラオキサ-15-ペンタデカン酸(参考例5)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:7255.2
測定値:7254.7
【0184】
[試験例6]
In vitroアッセイ
配列番号82~95及び配列番号109~118に記載の2’-O-メトキシ-ホスホロチオエート体
(2’-OMe-S-RNA)のアンチセンスオリゴマーを用いて実験を行った。アッセイに用いた
各種アンチセンスオリゴマーは日本バイオサービス社より購入した。各種アンチセンスオ
リゴマーの配列を以下に示す。
【表14】
【0185】
エクソン45(試験例1)と同様の条件・手順で行った。
【0186】
実験結果
結果を
図9、10に示す。本実験により、ヒトジストロフィン遺伝子の第44番目のエク
ソンの5’末端から第11~32番目又は第26~47番目にアンチセンスオリゴマーを設計した
場合、第44番目のエクソンの5’末端から第62~81番目にアンチセンスオリゴマーを設計
した場合と同等の効率でエクソン44をスキッピングさせることが判明した。
【0187】
[試験例7]
In vitroアッセイ
エクソン45(試験例2)と同様の条件・手順で行った。
【0188】
実験結果
結果を
図11、12及び18に示す。本実験により、PMONo.24、26(H44_25-45(OH)、H
44_27-47(OH))の本発明のオリゴマーは、RD細胞において、PMO No.30(H44_10-39(OH))
のアンチセンスオリゴマーと同等の効率でエクソン44をスキッピングさせることが判明し
た(
図11、12)。PMONo. 26の本発明オリゴマーと鎖長を1塩基短くしたPMO No. 31(H
44_27-46(OH))は同等の効率でエクソン44をスキッピングさせることが判明した(
図18
)。さらに、PMO No. 26の本発明オリゴマーは、末端構造の異なるPMO No. 33 (H44_27-4
7(TEG))と比較して、同等の効率でエクソン44をスキッピングさせることが判明した(図
18)。
【0189】
エクソン50について
以下の実施例30~39の記載に従い、表 15 PMO No.34~38及び41~45に示す各種PMOを合
成した。合成したPMOを注射用水(大塚製薬工場社製)で溶解した。なお、PMO No.39,40
はジーンツールズ社から購入した。
【表15】
【0190】
[実施例30]
PMO.No.34
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された4-{[(2S,6R)-6-(5-メチル-2,4-ジオキソ-
3,4-ジヒドロピリミジン-1-イル)-4-トリチルモルホリン-2-イル]メトキシ}-
4-オキソブタン酸(参考例3)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:6861.8
測定値:6861.8
【0191】
[実施例31]
PMO.No.35
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された4-{[(2S,6R)-6-(6-ベンズアミドプリン-9-イル)-4-ト
リチルモルフォリン-2-イル]メトキシ}-4-オキソブタン酸(参考例4)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:6885.8
測定値:6885.9
【0192】
[実施例32]
PMO.No.36
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された4-[[(2S,6R)-6-[6-(2-シアノエトキシ)-2-[(2-フェノキ
シアセチル)アミノ]プリン-9-イル]-4-トリチルモルホリン-2-イル]メトキシ]-4-オキソ-
ブタン酸(参考例2)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:6925.9
測定値:6925.9
【0193】
[実施例33]
PMO.No.37
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された4-[[(2S,6R)-6-[6-(2-シアノエトキシ)-2-[(2-フェノキ
シアセチル)アミノ]プリン-9-イル]-4-トリチルモルホリン-2-イル]メトキシ]-4-オキソ-
ブタン酸(参考例2)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:6950.9
測定値:6950.9
【0194】
[実施例34]
PMO.No.38
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された4-[[(2S,6R)-6-[6-(2-シアノエトキシ)-2-[(2-フェノキ
シアセチル)アミノ]プリン-9-イル]-4-トリチルモルホリン-2-イル]メトキシ]-4-オキソ-
ブタン酸(参考例2)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:6990.9
測定値:6991.0
【0195】
[実施例35]
PMO.No.41
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された4-[[(2S,6R)-6-[6-(2-シアノエトキシ)-2-[(2-フェノキ
シアセチル)アミノ]プリン-9-イル]-4-トリチルモルホリン-2-イル]メトキシ]-4-オキソ-
ブタン酸(参考例2)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:6635.6
測定値:6635.0
【0196】
[実施例36]
PMO.No.42
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された4-[[(2S,6R)-6-[6-(2-シアノエトキシ)-2-[(2-フェノキ
シアセチル)アミノ]プリン-9-イル]-4-トリチルモルホリン-2-イル]メトキシ]-4-オキソ-
ブタン酸(参考例2)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:6635.6
測定値:6634.9
【0197】
[実施例37]
PMO.No.43
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された4-(((2S,6R)-6-(5-メチル-2,4-ジオキソ-
3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)-4-トリチルモルホリン-2-イル)メトキ
シ)-4-オキソブタン酸(参考例3)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:6965.9
測定値:6965.2
【0198】
[実施例38]
PMO.No.44
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された4-{[(2S,6R)-6-(6-ベンズアミドプリン-9-イル)-4-ト
リチルモルフォリン-2-イル]メトキシ}-4-オキソブタン酸(参考例4)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:6949.9
測定値:6949.2
【0199】
[実施例39]
PMO.No.45
実施例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、出発原料として、アミ
ノポリスチレン樹脂に担持された1,12-ジオキソ-1-(4-トリチルピペラジン-1-イ
ル)-2,5,8,11-テトラオキサ-15-ペンタデカン酸(参考例5)を使用した。
ESI-TOF-MS 計算値:7342.2
測定値:7341.6
【0200】
[試験例8]
In vitroアッセイ
濃度を0.1、0.3、1μMとして、RT-PCRを以下のプライマーで実施した他は、エクソン45
(試験例2)と同様の条件・手順で行った。
フォワードプライマー:5’- AACAACCGGATGTGGAAGAG-3’ (配列番号103)
リバースプライマー:5’-TTGGAGATGGCAGTTTCCTT-3’ (配列番号104)
【0201】
実験結果
結果を
図13、19に示す。本実験により、PMONo.38 (H50_107-127(OH)) の本発明の
オリゴマーは、RD細胞において、PMO No.39又は40(H50_90-114(GT)、H50_103-127(GT))
のアンチセンスオリゴマーと比較して高い効率でエクソン50をスキッピングさせることが
判明した。また、PMONo.38は末端構造の異なるPMO No. 45(H50_107-127(TEG))と比較して
高い効率でエクソン50をスキッピングさせることが判明した(
図19)。
【0202】
エクソン44スキッピング検討
ヒト線維芽細胞を用いたIn vitroアッセイ
[試験例9]
GM05112細胞(エクソン45欠損DMD患者由来線維芽細胞、Coriell Institute for Medical
Research)を使用し、エクソン44スキッピング活性を検討した。増殖培地は10%FCS及び1
%Penicillin/Streptomycin(P/S)(シグマ アルドリッチ社)を含むDulbecco's Modifie
d Eagle Medium:Nutrient Mixture F-12(DMEM/F-12)(インビトロジェン社)を使用し、5
% CO2存在下、37℃で培養した。
細胞はT225フラスコで培養し、増殖培地35 mLに対して2.5 mLのヒト由来MyoD(配列番号3
8)発現レトロウイルス(ZsGreen1共発現)及び終濃度8 μg/mLでポリブレン(シグマ
アルドリッチ社)を添加した。32℃で2日間培養後、新鮮な増殖培地で培地交換を行い、
さらに37℃で3日間培養した。BD FACSAria Cell Sorter(BD Bioscience社)にてZsGreen
1陽性細胞を選択することでMyoD転換線維芽細胞を回収し、コラーゲンコートの24-wellプ
レートに9×104 cells/wellで播種した。翌日、分化培地(2%ウマ血清(インビトロジェ
ン社)、1%P/S及びITS Liquid Media Supplement(シグマ社)含有DMEM/F-12)に交換し
た。2~3日ごとに培地交換を行いながら培養し、筋管細胞へ分化誘導した。
分化培地に交換後7日目に、終濃度6 μMとなるようにEndo-Porter(ジーンツール社)
を添加した分化培地に交換し、終濃度が1、3、10μMとなるようにPMO No.26及び31を添加
した。7日間インキュベート後に、細胞を回収し、RNeasy Mini Kit(キアゲン社)を用い
てtotal RNAを抽出した。抽出したtotal RNA 50 ngに対し、QIAGEN OneStep RT-PCR Kit
を用いてRT-PCRを行った。添付のプロトコールに従って、反応液を調製した。サーマルサ
イクラーはiCycler(Bio-Rad社)を用いた。用いたRT-PCRのプログラムは、以下の通りで
ある。
50℃、30分間:逆転写反応
95℃、15分間:熱変性
[94℃、1分間;60℃、1分間;72℃、1分間]x 35サイクル:PCR増幅
72℃、7分間:最終伸長反応
【0203】
RT-PCRに使用したフォワードプライマーとリバースプライマーの塩基配列は以下の通り
である。
フォワードプライマー:5’- GCTCAGGTCGGATTGACATT-3’ (配列番号36)
リバースプライマー:5’- GGGCAACTCTTCCACCAGTA-3’ (配列番号37)
【0204】
上記RT-PCR反応の反応産物を2%アガロースゲル電気泳動によって分離し、 イメージア
ナライザーImageQuant LAS 4000 mini(富士フィルム社)によりゲル写真を撮影した。付
属のソフトにより、エクソン44 がスキップしたバンドのポリヌクレオチド量「A」と、エ
クソン44がスキップしなかったバンドのポリヌクレオチド量「B」を測定した。これら「A
」及び「B」の測定値に基づき、以下の式に従って、スキッピング効率を求めた。
スキッピング効率(%)= A /( A + B )x 100
【0205】
実験結果
結果を
図20に示す。本実験により、PMO No.26及び31の本発明のオリゴマーは、GM051
12細胞において、高い効率でエクソン44をスキッピングさせることが判明した。
【0206】
[試験例10]
試験例9と同様にGM05112細胞を使用してMyoD転換線維芽細胞を調製し、筋管細胞へ分化
誘導した。分化培地に交換後6日目に終濃度6 μMとなるようにEndo-Porter(ジーンツー
ル社)を添加した分化培地に交換し、終濃度10μMになるようにPMO No.26及び31を添加し
た。14日間インキュベート後に、プロテアーゼインヒビターカクテルComplete Mini(ロ
ッシュ社)を添加した細胞溶解バッファーRIPA buffer(Pierce社)によりスクレーパー
で細胞を回収した。超音波破砕機Bioruptor UCD-250(東湘電機社)により細胞を破砕し
、遠心後の上清を回収し、セルライセートとした。セルライセートのタンパク質濃度は、
Pierce BCA protein assay kit (Pierce社)を用いて求めた。波長544 nmの吸光度はプ
レートリーダーThermo Appliskan Type2001(Thermo Electron社)を用いて測定した。
セルライセート3 μgをポリアクリルアミドゲルNuPAGE Novex Tris-Acetate Gel 3-8%
(インビトロジェン社)を用いて電気泳動した。電気泳動終了後、セミドライブロット法
によりImmobilon-P membrane(Millipore社)へ転写した。転写した膜は0.1% Tween20を
含むPBS(PBST)で洗浄後、5% Amersham ECL Prime Blocking agent(GE Healthcare社)
を含むPBSTで冷蔵庫内一晩ブロッキングした。膜をPBSTで洗浄後、抗ジストロフィン抗体
(NCL-Dys1、Novocastra社)をCan Get Signal1(TOYOBO)で50倍希釈した溶液中で、室
温にて1時間インキュベートした。PBSTで洗浄後、ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgG
抗体(170-6516、Bio-Rad社)をCan Get Signal2(TOYOBO社)で2,500倍希釈した溶液中
で、室温にて10分間インキュベートした。PBSTで洗浄後、ECL Plus Western Blotting De
tection System(GE Healthcare社)で処理した。エクソン44-45に相当する部分が欠損し
たジストロフィンの化学発光を、ルミノ・イメージアナライザーImageQuant LAS 4000 mi
ni(富士フィルム社)により検出した。
【0207】
実験結果
ウェスタンブロッティングの結果を
図21に示す。
図21において矢印は発現が確認さ
れたジストロフィンタンパク質のバンドを示す。本実験により、PMO No. 26及び31の本発
明のオリゴマーは、GM05112細胞において、ジストロフィンタンパク質の発現を誘導する
ことが判明した。
【0208】
エクソン50スキッピング検討
ヒト線維芽細胞を用いたIn vitroアッセイ
[試験例11]
試験例9と同様にGM05112細胞を使用してMyoD転換線維芽細胞を調製し、筋管細胞へ分化誘
導した。
分化培地に交換後12日目に、終濃度6 μMとなるようにEndo-Porter(ジーンツール社)
を添加した分化培地に交換し、終濃度0.1、0.3、1、3、10μMになるようにPMO No.38を添
加した。2日間インキュベート後に、細胞を回収した。試験例9と同様にtotal RNAを抽出
後、RT-PCRを実施し、スキッピング効率を求めた。ただし、RT-PCRに使用したフォワード
プライマーとリバースプライマーの塩基配列は以下の通りである。
フォワードプライマー:5’- AACAACCGGATGTGGAAGAG-3’ (配列番号103)
リバースプライマー:5’-TTGGAGATGGCAGTTTCCTT-3’ (配列番号104)
【0209】
実験結果
RT-PCRの結果を
図22に、スキッピング効率を
図23に示す。本実験により、PMO No.3
8の本発明のオリゴマーは、GM05112細胞において、高い効率でエクソン50をスキッピング
させ、EC50値は1.3μMであることが判明した。
【0210】
[試験例12]
11-0627細胞(エクソン8-9重複DMD患者由来線維芽細胞、国立精神・神経医療研究セン
ター神経・筋疾患研究資源レポジトリー)を使用し、PMO No.38添加時の終濃度を0.1、1
、10μMとした他は試験例11と同様の条件・手順でスキッピング試験を行った。
【0211】
実験結果
RT-PCRの結果を
図26に、スキッピング効率を
図27に示す。本実験により、PMO No.3
8の本発明のオリゴマーは、11-0627細胞において、高い効率でエクソン50をスキッピング
させることが判明した。
【0212】
[試験例13]
pLVX-MyoD-ZsGreen1レンチウイルスの作製
pLVX-puro(8120 bp、Clontech社)のマルチクローニングサイト内XhoI (位置2816)
から、Puromycin耐性遺伝子コード領域の3'末端近傍(位置3890)まで、1164 bp を削除
して直鎖化したベクターに、ヒトMyoD遺伝子、IRES配列、ZsGreen1遺伝子の順でコードさ
れた配列(2272bp)を組み込み、レンチウイルス発現ベクターpLVX-MyoD-ZsGreen1(9210
bp)を作製した。Lenti-X HTX Packaging System(Clontech社)のプロトコールに従い、
Lenti-X 293T細胞を10cmコラーゲンコートディッシュに播種した。線維芽細胞への感染予
定日の3日前に、レンチウイルス発現ベクター、パッケージングベクターをトランスフェ
クションし、4時間後に培地を交換、以後は培地を交換せず3日間培養した。感染予定日当
日に、培養上清をウイルス液として回収した(10cmディッシュあたり約9mL)。培養上清
をセルストレーナー(40 μm)でろ過し、これをさらに500 x g, 10 minで遠心した。こ
の上清をLenti-X Concentrator(Clontech社)のプロトコールに従い濃縮し、最終的に回
収直後の10倍濃度となるように、DMEM/F12培地に溶解した。この溶液をウイルス液として
使用した。
【0213】
線維芽細胞へのウイルス感染
感染予定日までに、GM04364細胞(エクソン51-55欠損DMD患者由来線維芽細胞、Coriell
Institute for Medical Research)をコラーゲンコート24ウェルプレートに、3x104/wel
l の密度で播種した。感染予定日当日に、1ウェルあたり分化培地 400 uL, ウイルス液
100 uL, ポリブレン 最終濃度 8 ug/mL を添加した。感染翌日、ウイルス含有培地を分化
培地500 uLに交換した。 以降は2~3日おきに分化培地を交換し12日間培養することで、
筋管細胞に分化誘導した。
分化培地に交換後12日目に、終濃度6 μMとなるようにEndo-Porter(ジーンツール社)
を添加した分化培地に交換し、終濃度0.1、0.3、1、3、10μMになるようにPMO No.38を添
加した。2日間インキュベート後に、細胞を回収した。試験例11と同様に、スキッピング
効率を求めた。ただし、RT-PCRに使用したフォワードプライマーとリバースプライマーの
塩基配列は以下の通りである。
フォワードプライマー:5’- AACAACCGGATGTGGAAGAG-3’ (配列番号103)
リバースプライマー:5’- CTGCCGGCTTAATTCATCAT-3’ (配列番号70)
【0214】
実験結果
RT-PCRの結果を
図28に、スキッピング効率を
図29に示す。本実験により、PMO No.3
8の本発明のオリゴマーは、GM04364細胞において、高い効率でエクソン50をスキッピング
させることが判明した。
【0215】
エクソン55スキッピング検討
ヒト線維芽細胞を用いたIn vitroアッセイ
[試験例14]
PMO No.14、21を使用し、RT-PCRを以下のプライマーで実施した他は、試験例11と同様
の条件・手順で行った。
フォワードプライマー:5’- CATGGAAGGAGGGTCCCTAT-3’ (配列番号69)
リバースプライマー:5’- CTGCCGGCTTAATTCATCAT-3’ (配列番号70)
【0216】
実験結果
RT-PCRの結果を
図24に、スキッピング効率を
図25に示す。本実験により、PMO No.1
4、21の本発明のオリゴマーは、GM05112細胞において、高い効率でエクソン55をスキッピ
ングさせ、EC50値はそれぞれ3.5μM、7.5μMであることが判明した。
【0217】
[試験例15]
細胞を04-035細胞(エクソン54単独欠損DMD患者由来細胞、国立精神・神経医療研究セ
ンター神経・筋疾患研究資源レポジトリー)を使用し、PMO No.14、21を終濃度1、3、10
μMで添加し、RT-PCRを以下のプライマーで実施した他は、試験例13と同様の条件・手順
で行った。
フォワードプライマー:5’- CATGGAAGGAGGGTCCCTAT-3’ (配列番号69)
リバースプライマー:5’- CTGCCGGCTTAATTCATCAT-3’ (配列番号70)
【0218】
実験結果
RT-PCRの結果を
図30に、スキッピング効率を
図31に示す。本実験により、PMO No.1
4、21の本発明のオリゴマーは、エクソン54単独欠損DMD患者由来細胞において、高い効率
でエクソン55をスキッピングさせることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0219】
試験例に示す実験結果から、本発明のオリゴマーは、RD細胞及びDMD患者由来細胞の両
環境において、著しく高い効率で標的エクソン(例えば、エクソン55等)をスキッピング
させることが示された。
従って、本発明のオリゴマーは、DMDの治療において、非常に有用である。
【配列表フリーテキスト】
【0220】
配列番号9:合成核酸
配列番号10:合成核酸
配列番号11:合成核酸
配列番号12:合成核酸
配列番号13:合成核酸
配列番号14:合成核酸
配列番号15:合成核酸
配列番号16:合成核酸
配列番号17:合成核酸
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配列番号36:合成核酸
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配列番号111:合成核酸
配列番号112:合成核酸
配列番号113:合成核酸
配列番号114:合成核酸
配列番号115:合成核酸
配列番号116:合成核酸
配列番号117:合成核酸
配列番号118:合成核酸
配列番号119:合成核酸
配列番号120:合成核酸
配列番号121:合成核酸
配列番号122:合成核酸
【配列表】