(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
B25B 23/14 20060101AFI20220311BHJP
【FI】
B25B23/14 640Z
B25B23/14 610B
B25B23/14 610K
(21)【出願番号】P 2018200697
(22)【出願日】2018-10-25
【審査請求日】2021-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000201467
【氏名又は名称】TONE株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 勝弘
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-87359(JP,A)
【文献】特開2018-122429(JP,A)
【文献】特開2007-283455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を含む回転部材と、
ケーシングに収容され、前記回転部材を回転させるモーターを含む固定部材と、
を具えた電動工具であって、
前記回転部材に装着されて一体回転し、前記回転部材の物理量からなる測定値を測定するセンサーと、前記センサーに電気的に接続され、前記センサーにて測定された測定値に関する信号をワイヤレス送信する送信手段と、を具えるデータ送信ユニットと、
前記固定部材に装着され、前記データ送信ユニットから測定値に関する信号をワイヤレス受信する受信手段と、前記受信手段により受信された測定値に関する信号を有線出力する出力手段と、を具えるデータ送受信ユニットと、
を具え、
前記送信手段及び前記受信手段は、それぞれアンテナを具え、前記アンテナは、近接して配置されて近距離無線通信により測定値に関する信号を送受信する、
電動工具。
【請求項2】
前記物理量は、前記回転軸に作用するトルク又は前記回転軸の回転角度である、
請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記出力手段に有線接続され、前記測定値に関する信号に基づいて算出された前記物理量を表示する表示手段を具える、
請求項1又は請求項2に記載の電動工具。
【請求項4】
電動工具は、締付機である、
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の電動工具。
【請求項5】
前記締付機は、締結部材を装着可能なソケットを有する内軸と、反力受けを装着可能な外軸を含み、
前記センサーは、前記内軸に装着される、
請求項4に記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルト・ナット等の締結に用いられる締付機などの電動工具に関するものであり、より具体的には、回転軸を含む回転部材に加わるトルクなどの各種データを内部でワイヤレス通信を行なうことにより外部に有線出力することのできる電動工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
設定されたトルクでボルト・ナット等の締結部材を締め付けることのできる締付機などの電動工具が知られている。たとえば、特許文献1では、締付機の回転軸にトルクセンサーを有するトルク検出器を具える。トルク検出器は、ワイヤレス送受信ユニットを搭載し、外部に配置されたコントローラーにトルクデータをワイヤレス送信している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動工具の使用環境、すなわち工事現場や作業場には多種多様なワイヤレス送受信機器が配置されており、また、その他通信等に用いられる種々の電波が飛んでいる。その結果、トルク検出器からコントローラーにトルクデータをワイヤレス送信する際に、電波の干渉や妨害を受けて通信不良が生じることがあった。また、使用状況によっては、電動工具とコントローラーとの間に電波遮蔽物が存在することもあり、通信不良を招く。
【0005】
本発明の目的は、ワイヤレスと有線の通信方式を組み合わせることにより、電波の干渉や妨害を抑えて、良好なデータ通信を行なうことのできる電動工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電動工具は、
回転軸を含む回転部材と、
ケーシングに収容され、前記回転部材を回転させるモーターを含む固定部材と、
を具えた電動工具であって、
前記回転部材に装着されて一体回転し、前記回転部材の物理量からなる測定値を測定するセンサーと、前記センサーに電気的に接続され、前記センサーにて測定された測定値に関する信号をワイヤレス送信する送信手段と、を具えるデータ送信ユニットと、
前記固定部材に装着され、前記データ送信ユニットから測定値に関する信号をワイヤレス受信する受信手段と、前記受信手段により受信された測定値に関する信号を有線出力する出力手段と、を具えるデータ送受信ユニットと、
を具え、
前記送信手段及び前記受信手段は、それぞれアンテナを具え、前記アンテナは、近接して配置されて近距離無線通信により測定値に関する信号を送受信する。
【0007】
前記物理量は、前記回転軸に作用するトルク又は前記回転軸の回転角度とすることができる。
【0008】
前記出力手段に有線接続され、前記測定値に関する信号に基づいて算出された前記物理量を表示する表示手段を具えることが望ましい。
【0009】
電動工具は、締付機とすることができる。
【0010】
前記締付機は、締結部材を装着可能なソケットを有する内軸と、反力受けを装着可能な外軸を含み、
前記センサーは、前記内軸に装着することが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電動工具によれば、回転部材に装着されたセンサーは、測定値に関する信号を測定し、送信手段は、近距離無線通信を用いたワイヤレス送信により固定部材に配備された受信手段に送信する。そして、当該信号は、出力手段により有線出力される。近距離無線通信は、外部環境の電波の干渉や妨害を受け難いから、確実に測定値に関する信号を送受信することができる。また、送信手段と受信手段でワイヤレス送信を行なうことで、回転部材はケーブル接続する必要はないから、ケーブルの断線対策は不要であり、回転部材の回転規制等の機構も不要である。出力手段は、固定部材に配置され、測定値に関する信号を有線出力するから、回転部材の回転の影響、電波の干渉や妨害を受けることはなく、たとえば表示手段に測定値に関する信号に基づいて算出されたトルクや回転角度などの物理量を表示することができる。さらには、近距離無線通信を採用することで、データ送受信ユニットや、とくにデータ送信ユニットのバッテリー消耗量を低減できる利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る電動工具(締付機)の説明図である。
【
図2】
図2は、測定値に関する信号の送受信に用いられるユニットのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る電動工具として、締付機10を採用した実施形態について、図面を参照しながら説明を行なう。締付機10は、ボルト・ナット等の締結部材を締め付ける電動工具であり、図示の実施形態では、締付機10は、締結部材が嵌まるソケット(図示せず)を装着するインナーユニット21と、反力受け26が装着されたアウターユニット24をケーシング12の先端に配置して構成される。インナーユニット21は内軸22、アウターユニット24は外軸25を具え、これら各軸が遊星歯車機構などの減速機構28に接続されて回転部材20を構成する。内軸22と外軸25は、図中矢印で示すように逆方向に回転する。減速機構28はモーター16に接続されている。
【0014】
ケーシング12には持ち手17が形成されており、持ち手17に設けられたトリガースイッチ18を操作することで、モーター16が回転する。
【0015】
上記締付機10の回転部材20には、回転部材20の物理量を測定するセンサー31が装着される。センサー31は、測定される物理量に応じたものを採用することができ、たとえば、物理量がトルクである場合には歪みゲージ、回転角度の場合にはエンコーダー、ジャイロセンサー、フォトインターラプター、磁気センサーなどを例示できる。
【0016】
センサー31は、回転部材20のうち、インナーユニット21の内軸22に取り付けることが望ましい。これにより、アウターユニット24等に装着する場合に比べ、内軸22は、締結部材、ソケットに直接連繋されるため、より正確なトルク、回転角度などを測定することができる。
【0017】
センサー31は、
図1及び一部を
図2に示すように、たとえば回転部材20と一体回転する1又は複数の基板32に、A/D変換器、増幅回路、CPUなどとRF(Radio Frequency)回路と、RF回路に接続された送信用アンテナ35を具えた送信手段33に電気的に接続され、データ送信ユニット30を構成する。データ送信ユニット30は、二次電池などのバッテリーを具え、バッテリーから電源供給を受けて作動する。
【0018】
送信手段33は、たとえばBluetooth(登録商標)などの近距離無線通信により送信用アンテナ35から測定値に関する信号を送信する。近距離無線通信は、Bluetoothに限らず、ZigBee(登録商標)、赤外線通信等であっても構わない。
【0019】
送信用アンテナ35は、
図1の実施形態では、インナーユニット21の基端側に配置しており、後述するデータ送受信ユニット40と近接して信号の送受信が行なうことができるように、インナーユニット21の回転中心と同心に配置することが望ましい。
【0020】
データ送信ユニット30から送信される測定値に関する信号は、データ送受信ユニット40にて受信される。データ送受信ユニット40は、締付機10のケーシング12などの固定部材14に配備される1又は複数の基板42に、受信用アンテナ45、RF回路、CPUなどを具えた受信手段43と、受信手段43にてワイヤレス受信された測定値に関するデータを有線出力する有線出力手段44を具える。受信手段43は、たとえば締付機10の駆動が商用電源の場合、当該商用電源から取ることができ、バッテリー駆動の場合は、当該バッテリーから取ることができる。
【0021】
受信用アンテナ45は、近距離無線通信を効率的に行なうために、送信用アンテナ35と近接する位置、
図1の実施形態では、送信用アンテナ35と対向する位置に配置している。
【0022】
データ送受信ユニット40は、受信用アンテナ45を経由して受信手段43にて受信した測定値に関する信号を有線出力手段44に送信する。有線出力手段44には、ケーブル46が接続されており、当該ケーブル46は、
図1に示すように、締付機10の適所に配置された表示手段47や、締付機10の外部に配置されたモニターなどの表示手段47に出力され、測定値に関する信号を物理量として表示する。図示では、表示手段47は、トルク(700(N/m))を表示している。なお、表示手段47は、PDAなどであってもよく、表示手段47に物理量を表示するだけでなく、データ送受信ユニット40から出力される測定値に関する信号にGPS(Global Positioning System)機能による位置情報やタイムスタンプを重畳し、締付けを行なった場所や時間を表示することもできる。また、これらデータをグラフ化したり、記憶手段に記録することもできる。
【0023】
さらには、表示手段47は、締結部材を締め付けるトルク等の物理量を入力可能なコントローラーを兼ね、所望の物理量に到達したときに、モーター16の通電を遮断、或いは、所望の物理量に近づいたときにモーター16への供給電力を下げて減速させるなどの制御を行なうようにしてもよい。
【0024】
然して、本発明の締付機10によれば、回転部材20であるインナーユニット21に直接センサー31を配置できる。インナーユニット21、特に内軸22には、直接トルク等が作用するから、より正確に物理量の測定を行なうことができる。
【0025】
また、センサー31により測定された測定値に関する信号は、近距離無線通信によって固定部材14側にワイヤレス送信される。近距離無線通信は、外部環境の電波の干渉や妨害を受け難いから、通信不良を抑えて確実に測定値に関する信号を送受信することができる。また、送信手段33と受信手段43でワイヤレス送信を行なうことで、回転部材20はケーブル接続する必要はないから、ケーブルの断線対策は不要であり、回転部材20の回転規制等の機構も不要とすることができる。
【0026】
加えて、近距離無線通信を採用することで、データ送受信ユニットや、とくにデータ送信ユニットのバッテリー消耗量を低減することができる。
【0027】
さらに、固定部材14側では、近距離無線通信によって受信した測定値に関する信号を表示手段47に有線出力することにより、電波の干渉や妨害を受けることはなく、確実に測定値に関する信号に基づいて算出されたトルクや回転角度などの物理量を表示手段47に表示することができる。
【0028】
従って、本発明の電動工具は、妨害電波や電波干渉、電波遮蔽物などの多い工事現場において極めて有用である。
【0029】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0030】
10 電動工具(締付機)
14 固定部材
20 回転部材
30 データ送信ユニット
31 センサー
35 送信用アンテナ
40 データ送受信ユニット
43 受信手段
44 有線出力手段
45 受信用アンテナ
47 表示手段