(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】表示装置と音響装置とを兼ね備えた団扇を用いたラジオシステム又は災害用ラジオシステム
(51)【国際特許分類】
A45B 27/00 20060101AFI20220311BHJP
H04R 17/10 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
A45B27/00 B
H04R17/10
(21)【出願番号】P 2017148152
(22)【出願日】2017-07-31
【審査請求日】2020-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】506308460
【氏名又は名称】株式会社WECOM研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000073
【氏名又は名称】特許業務法人プロテック
(74)【代理人】
【識別番号】100167070
【氏名又は名称】狹武 哲詩
(74)【代理人】
【識別番号】100108051
【氏名又は名称】小林 生央
(72)【発明者】
【氏名】加藤 透
(72)【発明者】
【氏名】秋山 敏明
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-144212(JP,A)
【文献】特開2014-006892(JP,A)
【文献】特開2000-194300(JP,A)
【文献】特開2008-022919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45B 27/00
G09F 1/00~27/00
G09G 1/00~ 5/40
A47F 5/00
H04R 17/00~17/10
G02F 1/167
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジオとして機能する団扇と、局所的に放送を実施するローカル放送局として機能するラジオ放送装置とからなるラジオシステムであって、
前記団扇は、
電子部品を収容する持ち手と、
前記持ち手につながる扇部骨枠と、
前記扇部
骨枠を覆い、表示装置としての機能を有する電子ペーパーと、
前記電子ペーパーに密着する圧電素子と
を有し、
前記持ち手が収納する電子部品には、
前記ラジオ放送装置からの放送を受信するラジオ放送受信機と、前記電子ペーパーを駆動する電子ペーパー駆動回路と、前記圧電素子を駆動する圧電スピーカー駆動回路と、各回路に電源を供給する充電池と、前記充電池を制御する充電制御回路とを含み、
前記ラジオ放送装置は、文字放送と音声放送との双方が可能なものであって、
前記ラジオ放送装置が送信する文字情報は、前記団扇の前記持ち手に収容されたラジオ放送受信機に受信されて、前記電子ペーパー駆動回路を介して前記電子ペーパーに表示されて前記電子ペーパーが表示装置として機能するとともに、前記ラジオ放送装置が送信する音声情報は、前記団扇の前記持ち手に収容された
ラジオ放送受信機に受信されて、前記圧電スピーカー駆動回路を介して前記圧電素子に加える音源信号によって、前記電子ペーパーが振動して音響機器として機能することを特徴とする
ラジオシステム。
【請求項2】
請求項1に記載したラジオシステムであって、
前記団扇は、
前記
充電池に電力を蓄えるべく、発電するための発電用圧電素子を備え、
前記団扇を扇ぐ力を用いて発電することを特徴とする
ラジオシステム。
【請求項3】
請求項1に記載したラジオシステムであって、
前記団扇は、
前記圧電素子を、発電用圧電素子として切換えて使うための圧電素子機能切り替えスイッチをさらに有して、
前記充電池に電力を蓄えるべく、前記圧電素子機能切り替えスイッチにて、圧電素子の機能を発電用圧電素子として用いて、前記団扇を扇ぐ力を用いて発電することを特徴とするラジオシステム。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載したラジオシステムであって、
前記充電池に、スマートフォンに電源を供給するための端子を設けて、
スマートフォンの電池の残りが少なくて通話中に通話が切れてしまいそうな時に、前記団扇とスマートフォンとをコードでつないで、前記団扇を扇ぎながら通話を続けることを可能にしたラジオシステム。
【請求項5】
請求項1に記載したラジオシステムであって、
前記電子ペーパーは、表示機能のみならず、発電機能を併せ持つものであって、
前記団扇が光に当たると、その光により、発電がなされて、前記充電制御回路の働きにより充電が制御されて、充電池に電力が蓄えられることを特徴とするラジオシステム。
【請求項6】
災害が起きた場合に体育館に避難して避難生活を集団で行う人たちに地方自治体が配布する災害用ラジオとして機能する団扇と、被災地において局所的に放送を実施するローカル放送局として機能するラジオ放送装置とからなる災害用ラジオシステムであって、
前記団扇は、
電子部品を収容する持ち手と、
前記持ち手につながる扇部骨枠と、
前記扇部
骨枠を覆い、表示装置としての機能を有する電子ペーパーと、
前記電子ペーパーに密着する圧電素子と
を有し、
前記持ち手が収納する電子部品には、
前記ラジオ放送装置からの放送を受信するラジオ放送受信機と、前記電子ペーパーを駆動する電子ペーパー駆動回路と、前記圧電素子を駆動する圧電スピーカー駆動回路と、各回路に電源を供給する充電池と、前記充電池を制御する充電制御回路とを含み、
前記ラジオ放送装置は、文字放送と音声放送との双方が可能なものであって、
前記ラジオ放送装置が送信する文字情報は、前記団扇の前記持ち手に収容されたラジオ放送受信機に受信されて、前記電子ペーパー駆動回路を介して前記電子ペーパーに表示されて前記電子ペーパーが表示装置として機能するとともに、前記ラジオ放送装置が送信する音声情報は、前記団扇の前記持ち手に収容された
ラジオ放送受信機に受信されて、前記圧電スピーカー駆動回路を介して前記圧電素子に加える音源信号によって、前記電子ペーパーが振動して音響機器として機能することを特徴とする
災害用ラジオシステム。
【請求項7】
請求項6に記載した災害用ラジオシステムであって、
前記団扇は、
前記
充電池に電力を蓄えるべく、発電するための発電用圧電素子を備え、
前記団扇を扇ぐ力を用いて発電することを特徴とする
災害用ラジオシステム。
【請求項8】
請求項6に記載した災害用ラジオシステムであって、
前記団扇は、
前記圧電素子を、発電用圧電素子として切換えて使うための圧電素子機能切り替えスイッチをさらに有して、
前記充電池に電力を蓄えるべく、前記圧電素子機能切り替えスイッチにて、圧電素子の機能を発電用圧電素子として用いて、前記団扇を扇ぐ力を用いて発電することを特徴とする災害用ラジオシステム。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載した災害用ラジオシステムであって、
前記充電池に、スマートフォンに電源を供給するための端子を設けて、
スマートフォンの電池の残りが少なくて通話中に通話が切れてしまいそうな時に、前記団扇とスマートフォンとをコードでつないで、前記団扇を扇ぎながら通話を続けることを可能にした災害用ラジオシステム。
【請求項10】
請求項6に記載した災害用ラジオシステムであって、
前記電子ペーパーは、表示機能のみならず、発電機能を併せ持つものであって、
前記団扇が光に当たると、その光により、発電がなされて、前記充電制御回路の働きにより充電が制御されて、充電池に電力が蓄えられることを特徴とする災害用ラジオシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置と音響装置とを兼ね備えた団扇、とりわけ電子ペーパーと圧電スピーカを備えた団扇に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧電スピーカシステムが開示されている。音声信号をローパスフィルタ、パワーアンプを介して圧電素子に供給し、圧電素子に接しているガラス板を振動させて音を出すものである。ローパスフィルタを通すことで超高域周波数の信号レベルが低減されるので、ガラス板が割れることを未然に防ぐことができる。
【0003】
特許文献2には、携帯端末装置が開示されている。液晶表示パネルは、文字や画像を表示するとともに、圧電素子によって、振動して音を発生するようにして、表示とスピーカを兼用させるものである。
【0004】
特許文献3には、太陽光発電機能付き団扇が開示されている。団扇の扇部に太陽光発電装置を設け、柄の部分に蓄電池を設け、当該蓄電池からさまざまな用途の各種機器を充電する機能を設けた団扇である。
【0005】
特許文献4には、団扇型イオン発生装置が開示されている。団扇を扇ぐときに加えられる力を電圧に変換する発電部と、その電圧を利用してイオンを発生して空気中にイオンを放出するイオン発生器とを備えたものである。
【0006】
特許文献5には、発光団扇が開示されている。団扇本体がプリント配線基板により構成され、プリント配線基板の配線パターン上に発光ダイオードを複数配設するものである。
特許文献6には、発光素子の輝出する輝光部を骨枠に設けた発光団扇が開示されている。とする。骨と外周板とは透明プラスチックによって一体成形される。
【0007】
非特許文献1には、大日本印刷(DNP)と積水化学工業はフィルム型の太陽電池を活用し、室内でも利用できる電子ペーパーを開発したことが開示されている。2017年4月中旬から、都内のコンビニエンスストアの店頭に電子看板として設置し、実証試験を行っている。
【0008】
非特許文献2には、窓に貼る太陽電池が実用化へ動き出したことが開示されている。透明の有機薄膜太陽電池フィルムを使うものである。三菱化学は、有機薄膜太陽電池を用いた「シースルー発電フィルム」を開発・実用化し、市場開拓を開始する。三菱化学が今回実用化に向けて市場開拓を開始する有機薄膜太陽電池による「シースルー発電フィルム」は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業「有機系太陽電池実用化先導技術開発」に採択され、これまで窓や建物外装などへの使用について実証実験を進めてきた。実証実験についてはスリーエムジャパンと共同で実施しており、これまで仙台国際センター渡り廊下の窓への設置やスリーエム仙台市科学館エントランス付近の窓などに設置し実用化への課題解決などに取り組んでいる。
【0009】
非特許文献3には、貼れるフィルム型の太陽電池を、積水化学が印刷技術で量産へ向かうことが開示されている。積水化学工業は2017年3月、フィルム型色素増感太陽電池のロール・ツー・ロール方式での量産技術を完成させ、パイロット生産機をつくば事業所(茨城県つくば市)に導入したとするものである。
【0010】
非特許文献4には、1μm厚さのカラー電子ペーパーが開示されている。材質は柔軟で電力消費も少ない。スウェーデン、チャルマース工科大学のAndreas Dahlinと大学院生のKunli Xiongは、導電性ポリマーとナノ構造体を組み合わせる方法を研究中にこの材料を作り出した。小さなセル ― プラズモニックメタ表面と呼ばれる ― はわずかな電圧変化によってオン/オフできる。液晶のサプピクセルと似ている。しかし、他の反射型ディスプレイ(通常の紙も)と同じく、自らは光を発しない。リフレッシュレートは1秒間に数回程度だが、解像度は液晶や既存のeペーパーをはるかに上回る可能性をもっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2002-369290号公報
【文献】特開平10-164193号公報
【文献】特開2014-217489号公報
【文献】特開2016-077446号公報
【文献】特開平07-186208号公報
【文献】特開2017-025166号公報
【非特許文献】
【0012】
【文献】http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1704/21/news034.html
【文献】http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1508/10/news045.html
【文献】http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1704/04/news018.html
【文献】http://jp.techcrunch.com/2016/10/17/20161014flexible-e-paper-display-is-full-color-but-less-than-a-micrometer-thick/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
団扇は、スポーツの応援や、アイドルのコンサートに必要なグッズとしての需要が高まっている。また、表示装置としての電子ペーパーの実用化が進んでいる。さらに、圧電スピーカ(圧電素子を用いたスピーカ)も実用的な価値の高いものが市場に出ている。
【0014】
本発明の発明者は、団扇を電子機器として考えて、スマホの周辺機器として用いてブルートゥース(登録商標)などの近距離無線通信で接続することにより、団扇の価値を高めることができると考えた。
【0015】
本発明の目的は、スマホやパソコンの周辺機器として用いることが可能な、表示装置と音響機器とを兼ね備えた団扇を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る団扇は、扇部に設けた表示装置としての機能を有する電子ペーパーと、前記電子ペーパーに密着する圧電素子とを有し、前記圧電素子に加える音源信号によって、前記電子ペーパーが振動して音響機器として機能することを特徴とする。これにより、表示装置と音響装置とを兼用し、省スペースで携帯に便利な機器を提供することができる。
【0017】
また、電子部品を収容する持ち手と、前記持ち手につながる扇部骨枠と、前記扇部骨枠を覆い、表示装置としての機能を有する電子ペーパーと、前記電子ペーパーに密着する圧電素子とを有し、前記持ち手に収容された電子部品から前記圧電素子に加える音源信号によって、前記電子ペーパーが振動して音響機器として機能することを特徴とする。これにより、表示装置と音響装置とを備えた電子機器を提供可能である。
【0018】
また、近距離無線通信装置をさらに備え、前記圧電素子に加える音源信号のデータを前記近距離無線通信装置を用いて、外部機器から受け取ることを特徴とする。これにより、パソコンやスマートフォンの出力機器としての音響機器となり得る機器を提供可能である。
【0019】
また、近距離無線通信装置をさらに備え、前記電子ペーパーの表示内容のデータを前記近距離無線通信装置を用いて、前記近距離無線通信装置を用いて、外部機器から受け取ることを特徴とする。これにより、パソコンやスマートフォンの出力機器としての表示装置となり得る機器を提供可能である。
【0020】
さらに、前記電子ペーパー及び前記圧電素子を含む電子部品に必要な電源を発電するための発電用圧電素子を備え、団扇を扇ぐ力を用いて発電することを特徴とする。これにより、さまざまな回路(団扇の内部の回路のみならず、外部機器のそれを含む)の充電が可能である。
【0021】
前記近距離無線通信装置は、例えばBluetooth(登録商標)ブルートゥース(登録商標)又はWi-Fi(登録商標)ワイファイ(登録商標)を用いることができる。音響信号をデジタルでやりとりするのに、ブルートゥース(登録商標)を用いることが一般になされている。表示装置の表示内容については、動画などの書換頻度が多く、データ量が多いものを扱うので、ワイファイ(登録商標)が用いられることが多い。電子ペーパーの表示内容は、1秒間に数回の書換頻度であることから、ブルートゥース(登録商標)でまかなえる可能性がある。
【0022】
この団扇には、発電機能を持たせることができる。そして、その手段は、二通り考えられる。第一に、電子ペーパーとして、光による発電が可能なものを用いることである。第二に、発電用の圧電素子を用いて、団扇を扇ぐ力を電力に変換することである。この団扇には、音響装置のための圧電素子を既に持っているので、音響装置の圧電素子と発電用の圧電素子とを兼用し、スイッチを設けるなどして、切替えて用いることも可能である。
【0023】
音響装置の圧電素子と発電用の圧電素子とを別々に設ける場合には、団扇を扇いで発電しながら、圧電スピーカーを使用することが可能である。1個の圧電素子を切替えて用いる場合には、発電と、音声の再生とのどちらかの機能を選んで用いる。
【0024】
この団扇は、ノートパソコン、タブレットコンピュータ、スマートフォンなどの周辺機器として用いることができる。前述した近距離無線通信装置を介して、パソコンなどの周辺機器とする構成である。
【0025】
それのみならず、この団扇にラジオ受信機を設けて、災害用ラジオとして機能させることも可能である。電池を設けなくても、団扇を扇ぐことで発電し、充電する。その電力によりラジオを受信し、その音を圧電スピーカで再生する。さらに、FMの文字放送を受信して、文字放送の内容を電子ペーパーに表示することも可能である。FM文字放送は、公共の放送としては、すでに廃止されている。しかし、被災地において、ローカルなFM放送局を設ける場合には、文字放送を実施することができる可能性がある。
【0026】
さらに、ラジオ機能を設けた団扇を、コンサートグッズや、観劇グッズとして用いることができる。大きなコンサート会場や、能、歌舞伎などの日本の伝統芸能の演芸場などでは、観客に文字情報の提供をすることが望まれる場合がある。この場合、たとえば局所的なFM放送局による文字放送をして、団扇に設けたラジオにより受信して、団扇の電子ペーパーに表示するという利用の仕方が考えられる。この場合、文字放送を行う電波は、FM波に限定されない。その会場に適した電波で放送又は通信により観客の持つ団扇に表示される。
能、歌舞伎などの劇場では、外国人向けの解説のために、タブレットコンピュータを持たせる例もある。タブレットコンピュータに比べると、この団扇は、安価に製造可能となる可能性がある。
【0027】
スマートフォンの充電器としての利用も可能である。この団扇には、前述したように二通りの発電方法を持たせることが可能である。電子ペーパーに太陽光発電機能を持たせることと、発電用の圧電素子により扇ぐ力を電力に変換することである。これらにより生じた電力を用いて、スマートフォンの充電に用いることが可能である。たとえば、スマートフォンの電池の残りが少なくて通話中に通話が切れてしまいそうなときに、団扇とスマートフォントをコードでつないで、団扇を扇ぎながら通話を続けるという利用が考えられる。
【0028】
その際、圧電スピーカのための圧電素子と、発電用の圧電素子とを別々に設けている場合には、団扇を扇ぎながら通話し、かつ団扇を通話相手の声を聞くためのスピーカとして用いることが可能である。
【0029】
また、本発明の団扇をスマートフォンの周辺機器として用いる場合に、団扇に設けた電子ペーパーは、スマートフォンでいくつかの画面を切替えて表示したい場合に、そのうちの一つの画面を電子ペーパーに表示させておき、スマートフォン側の表示画面には、他の画面を表示して、電子ペーパー上に表示されている画面と見比べながら利用することが考えられる。それを実現するためには、スマートフォンのアプリとして、電子ペーパーの表示とスマートフォンの表示とを連携させるソフトウェアを設けることが望ましい。例えば、スマートフォンの画面の一部を電子ペーパーに拡大して表示すること、また、スマートフォンで複数のアプリを同時に使う場合に、複数のアプリの画面のうちの一つを電子ペーパーに表示するなどの機能をそのアプリによって実現することが考えられる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る団扇は、上述のように構成されているので、パソコンもしくはスマートフォンの周辺機器として、音声放送もしくは文字放送の受信機として使用可能な電子機器の機能を有する団扇を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明に係る表示装置と音響装置とを兼ね備えた団扇を正面から見た図である。
図1(a)は、表示がなされる側から見た図であり、
図1(b)は、裏側から見た図である。
【
図2】本発明に係る表示装置と音響装置とを兼ね備えた団扇の組み立てを説明する斜視図である。
【
図3】スマホの周辺機器としての使用の場合を示すブロック図である。
【
図4】テレビの周辺機器としての使用の場合を示すブロック図である。
【
図5】災害ラジオとして使用する場合を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。図中の符号が同一のものは、同様の構成、機能を有する。
【0033】
≪団扇の外観≫
図1は、本発明に係る表示装置と音響装置とを兼ね備えた団扇を正面から見た図である。
図1(a)は、電子ペーパー20に表示がなされる側から見た図であり、
図1(b)は、裏側から見た図である。団扇の持ち手11は、団扇の扇部骨枠12と一体的に成形されまたは、それぞれが成形されたものを接合して一体となる。持ち手11と扇部骨枠12とが一体となる強度は、団扇の使用者が持ち手11を手に持って団扇10を扇いで風を起こすときに、電子ペーパー20を動かして風を起こすことができる程度の強度である。
【0034】
団扇の扇部骨枠12は、例えば、透明プラスチックにより構成され、電子ペーパー20の表示部21に画像が表示されるのを使用者が視認するのを妨げないように考慮される。電子ペーパー20は、団扇の扇部骨枠12をカバーする大きさ及び形状にカッティングされる。電子ペーパー20は、カッティングした形状のほぼ全面を表示部として使用可能である。そして、電子ペーパー20の中央部の裏側に圧電素子30が設けられる。圧電素子30は、ピエゾ素子とも呼ばれるものであって、10センチメートル×14センチメートルの長方形の形状のもので、厚さが200μm(マイクロメートル)のものを密着させて固定する。この大きさの圧電素子が市場にて入手可能である。さらに、電子ペーパー20の裏側は、団扇の扇部骨枠12に透明接着剤を用いて接着される。
図1(b)には、団扇の扇部骨枠12がむき出しになっている状態を描いている。
裏側にさらに別のフィルムを接着することにより、電子ペーパー20及び圧電素子30を保護するようにしてもよい。その場合、裏側に貼るフィルムは、電子ペーパー20の表示部分21の視認効果を高める色及び材質を選択する。裏側に貼るフィルムをも、もう一つの電子ペーパーとすることにより、団扇の表裏の両面に画像を表示させることも可能である。
【0035】
≪団扇の組み立て説明図≫
図2は、本発明に係る表示装置と音響装置とを兼ね備えた団扇10の組み立てを説明する斜視図である。扇部の骨枠12は、持ち手11側を根元として多数の骨(ここでは11本)が延びているものを示している。骨の先が開いている形状のものを図示しているが、11本の骨の先をつなげて、枠のあるものとしてもかまわない。前述したように、電子ペーパー20の中央部裏側に圧電素子30が密着固定された状態で、扇部の骨枠12が接着される。その際に、圧電素子30の配線、表示部21の配線が持ち手11の内部に設けられた電子回路に接続されるように考慮される(配線については図示を省略した)。
【0036】
≪スマホの周辺機器として団扇を使用する≫
図3は、団扇10と、スマホ(スマートフォン)とをつなげて、団扇10をスマホの周辺機器として用いる際のブロック図である。団扇側には近距離無線通信回路50、スマホ側には近距離無線通信回路51が設けられ、データのやりとりがなされる。近距離無線通信は、ブルートゥース(登録商標)又はワイファイ(登録商標)が考えられる。他の無線通信の方式を用いてもかまわない。
スマホ側には、団扇の電子ペーパーに表示内容を表示させるための表示制御アプリ26と、団扇の圧電スピーカに音声を再生させるためのスピーカ制御アプリとが設けられ、団扇10に表示させる表示データの送信、そして、団扇10に再生される音声データの送信をつかさどる。
【0037】
使用者が、スマホの表示画面の一部を電子ペーパー20に表示させたいときには、スマホと団扇との近距離無線通信を確立させる(ブルートゥースで言えば、ペアリング、ワイファイで言えば、コネクション確立をする)。そして、表示制御アプリ26を用いて、電子ペーパーに表示させたい表示内容のデータを団扇側に送信する。団扇側では、近距離無線通信回路50が当該表示データを受け取って電子ペーパー駆動回路25に渡して、電子ペーパー駆動回路25は、電子ペーパー20に当該表示内容を表示させる。団扇を使用する使用者は、たとえば、スポーツ観戦時、コンサート参加時などにある程度の時間の長さ、ずっと表示しておきたい内容(例えば、応援ソングの楽譜、歌詞、振り付けの解説図など)を団扇10の電子ペーパー20の表示部分21に表示しておくという使い方が考えられる。
【0038】
使用者が、スマホの音声を団扇10で聴きたいときには、いきなり無線通信の確立をして、音声データを団扇側にとばしてもよいが、本発明の発明者は、いまひとつ、有用な提案をする。スマホ(携帯電話)の裏蓋に、圧電スピーカを設けることである。この裏蓋圧電スピーカ37は、スマホ(携帯電話)の筐体の一部を構成する裏蓋の内側に圧電素子30と類似の圧電素子(大きさはスマホの裏蓋に貼るのに適した大きさのもの)を固定して、裏蓋を振動させてスピーカーとするものである。使用者は、裏蓋の振動により発生する音声を聴くか、裏蓋の振動を外耳道開口部周辺につけて骨伝導させることにより、音声を聴くことが可能となる。これにより、いきなり団扇側に音声を飛ばす場合に、間違った音声データを送ってしまって、周囲の人々に迷惑をかけてしまうなどのトラブルを防止できる。
【0039】
具体的には、使用者がスマホの音声を聴き取りにくい、やかましい環境にいるときに、スピーカ制御アプリ36を用いて、通常のスマホのスピーカではなくて、裏蓋圧電スピーカ37に音声出力先を切替えて、聴いてみる。そして、この内容を確認した上で、その音声を団扇で聴きたい場合に、団扇10との近距離通信の接続を確立し、近距離無線通信回路51により音声データを団扇側に送る。団扇側では近距離無線通信回路50が音声データを受け取り、圧電スピーカー駆動回路35に送る。圧電素子スピーカー駆動回路35は、圧電素子30に信号を送る。圧電素子30は、電子ペーパー20を振動させて音声を出力する。この手順により、騒々しい環境にあっても、拡大すべき音声データを間違えることなく、団扇10の圧電スピーカーに出力することが可能となる。
【0040】
団扇10は、発電機能を持たせることができる。発電の仕方は二通り考えられる。第一に、電子ペーパー20が、表示機能のみならず、発電機能(太陽光発電の機能)を併せ持つものを用いるやり方である。団扇10が光にあたると、その光により、発電がなされて、充電制御回路45の働きにより充電が制御されて、充電池40に電力が蓄えられる。蓄えられた電力は、電子ペーパー及び電子ペーパー駆動回路の電源となり、電子ペーパー20の表示部分21に表示された表示内容を維持すること、その表示内容を書き換えることなどに用いられる。それのみならず、圧電スピーカー駆動回路35などの回路に必要な電源を供給することも可能である。
【0041】
第二の発電の仕方は、団扇を扇ぐ力を、圧電素子によって電圧(電力)に変換することである。圧電素子に振動を加えると、電圧が生じて、それにより発光ダイオードを光らせることが可能であることが知られている。このことを用いれば、団扇を扇ぐ力によって発電するための圧電素子を設けて、それによる発電をすること、そして、それを発電した電力により充電池40を充電することが可能となる。発電のための圧電素子と圧電スピーカーの圧電素子30とを別々に設けてもよいし、兼用させることも可能である。兼用させる場合には、充電と音の再生とを切替えるための切換スイッチを設けることもできる。
【0042】
このようにして得た電力を団扇10内の電子回路に必要な電源として用いるのみならず、外部機器(たとえばスマホ)を充電する充電器として用いることも考えられる。充電制御回路45が、外部機器の充電に十分な電力があると判断すると、図示をしていないが、LEDの点灯により、そのことを使用者に知らせる。使用者は、それを見て、スマホを充電したいと考えると、充電ケーブルをつないで、スマホの充電をする。必要があれば、団扇10を扇いでさらに充電をする。
なお、LED点灯により電池の残量を表示する以外に、電子ペーパー20に電池残量を表示させてもよい。
【0043】
≪パソコンの周辺機器として団扇を使用する≫
団扇10をパソコンの周辺機器として用いる場合には、
図3とほぼ同様の構成で、スマホ側の構成をパソコン側の構成と読み替えることで、同様の使い方が可能である。ノートパソコンでは、画面が小さいことが多いため、団扇10の電子ペーパー20の表示部分21が、補助画面として役立つ。ノートパソコンの表示装置の近くに団扇10を固定するための把持具を置くことで、団扇を固定し、表示部分21を使用者の見やすい方に向ける。近距離無線通信の確立をした上で、表示制御アプリ26により、団扇側に表示させたい表示内容を使用者が団扇側に送る。そして、近距離無線通信回路51,50、電子ペーパー駆動回路25、電子ペーパー20の働きにより、パソコンの画面を補助する表示内容が団扇に表示される。パソコン使用者は、二画面を同時に見ながら作業が出来る。
【0044】
パソコン使用者が、例えばノートパソコンの内蔵スピーカの音では、音量が足りないという場合に、団扇10に音声データを送って、団扇の圧電スピーカーから音声出力させることも可能である。
【0045】
≪テレビの周辺機器として団扇を使用する≫
テレビが近距離無線通信機能を有する場合に、テレビの音を団扇10に再生させることが可能となる。また、テレビ番組表や、番組の解説記事などのテキストデータを団扇の電子ペーパー20の表示部分21に表示させて、それを見ながらテレビを見ることも可能となる。
図4は、団扇をテレビの周辺機器として用いる場合の構成例を示すブロック図である。テレビ側と団扇側とは、近距離無線通信回路50,51により通信が確立可能なものとする。テレビを見る人は、テレビのリモートコントロール装置60と団扇10とを手に持ってテレビをある程度はなれたところから見る。テレビから大きな音を出すことが迷惑な事情が生じた際に、音の出力先を団扇に変えることが可能である。その場合、使用者は、リモートコントロール装置60を用いて、テレビと団扇との間で無線通信を確立させて、リモートコントロール装置制御回路61を介して、スピーカ制御36を実行し、団扇側に音声データを出力させる。団扇10では、圧電スピーカー駆動回路35を介して、圧電素子30に信号を送り、電子ペーパー20を振動させて音を再生する。
また、テレビの番組表や、番組解説記事、映画の登場人物の人物相関図などを団扇に表示させたい場合には、使用者は、リモートコントロール装置60を操作して、テレビのリモートコントロール装置制御回路61、表示制御26を介して、当該表示内容を近距離無線通信回路51、50を介して電子ペーパー駆動回路25に送り、電子ペーパー20の表示部分21に表示させる。
このようにして、テレビを見る人は、リモートコントロール装置60とともに団扇をもつことでテレビの使い勝手が高まる。特に、老人など、大きい音でテレビを楽しみたい場合に有益である。
【0046】
≪災害用ラジオとして団扇を使用する≫
災害用ラジオには、二通りがあると考えられる。各家庭において、常日頃から非常時に持ち出すリュックサックに備えておくもの、そして、大きな災害が起こった場合に、学校の体育館などに避難して避難生活を集団でしなければならない人たちに地方自治体が配布するものの二通りである。本発明にかかる団扇は、比較的安価に製作することが可能であり、電源を自ら発電できる災害用ラジオとして、使い勝手のよいものを提供できる可能性がある。被災地においては、ローカル放送局をFM放送局として設置することが考えられる。その場合、かつて2004年までには実施されていたFM文字放送の技術を用いれば、ラジオ放送の電波に文字情報を載せることが可能であるので、団扇10の電子ペーパー20の表示部分21に文字情報を表示し、圧電スピーカーでラジオ放送の音を出力することが可能となる。さらに、電池の充電が不十分の時には、扇いで充電することも可能となる。
【0047】
図5は、団扇10を災害用ラジオとして用いる場合のブロック図である。
図3,4に示した団扇に設ける通信装置を、ラジオ放送受信機70に置き換えたものである。ラジオ放送局側には、ラジオ放送送信機71と、文字放送装置75と音声放送装置76が設けられる。ラジオ放送局から放送される電波に載った文字情報、団扇のラジオ放送受信機70に受信されて、電子ペーパー駆動回路25を介して、電子ペーパー20に送られ、文字情報の表示がなされ、また音声情報は、ラジオ放送受信機70に受信されて圧電スピーカー駆動回路35を介して圧電素子30に渡されて、電子ペーパー20を振動させることにより、音声出力がなされる。
さらに、この団扇は、電子ペーパー20の光充電機能により充電され、扇ぐ力を電力に変えることによる充電もなされる。この電力は、スマホの充電などに役立てることも可能である。
【0048】
≪劇場内の解説グッズとして団扇を使用する≫
図5に類似した放送を能楽堂、歌舞伎の劇場などの劇場内で行うことも可能である。その場合、外国人に対しては、その国の言語で解説をするなどの利用方法が考えられる。
【符号の説明】
【0049】
10 団扇(うちわ)
11 持ち手
12 扇部骨枠
20 電子ペーパー
21 表示部分
25 電子ペーパー駆動回路
26 表示制御アプリ
30 圧電素子
35 圧電スピーカー駆動回路
36 スピーカ制御アプリ
37 裏蓋圧電スピーカ
40 充電池
45 充電制御回路
50,51近距離無線通信回路
60 リモートコントロール装置
61 リモートコントロール装置制御回路