(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】有機物処理設備管理装置及び有機物処理設備管理方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/60 20220101AFI20220311BHJP
C02F 11/04 20060101ALI20220311BHJP
C12P 5/02 20060101ALN20220311BHJP
【FI】
B09B3/00 D
C02F11/04 Z ZAB
C12P5/02
(21)【出願番号】P 2019138718
(22)【出願日】2019-07-29
【審査請求日】2020-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】515145700
【氏名又は名称】サイエンスシード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】中島 晋也
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/189525(WO,A1)
【文献】特表2010-536558(JP,A)
【文献】特開2016-203153(JP,A)
【文献】特開2008-245585(JP,A)
【文献】特開2004-167382(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1557743(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103626372(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0175462(US,A1)
【文献】国際公開第2019/102364(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/60
C02F 11/04
C12P 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定された条件に基づいて有機物を加水分解する加水分解槽と、加水分解された前記有機物を生物処理することによってバイオガスを生成するバイオガス生成槽とを備える有機物処理設備を管理する有機物処理設備管理装置であって、
前記加水分解槽内の前記加水分解の生成物の量を示す測定情報を取得する測定情報取得部と、
前記測定情報取得部が取得した前記測定情報が示す前記生成物の量に基づいて、前記加水分解槽が前記有機物を加水分解するための前記条件を変更する加水分解制御部と、
を有
し、
前記加水分解槽は、前記有機物に対して前記加水分解を行う加水分解生物を用いて前記加水分解を行い、
前記加水分解制御部は、前記測定情報取得部が取得した前記測定情報が示す前記生成物の量に基づいて、前記加水分解を行う際に前記加水分解槽に添加される前記加水分解生物の量を変更する、
有機物処理設備管理装置。
【請求項2】
設定された条件に基づいて有機物を加水分解する加水分解槽と、加水分解された前記有機物を生物処理することによってバイオガスを生成するバイオガス生成槽とを備える有機物処理設備を管理する有機物処理設備管理装置であって、
前記加水分解槽内の前記加水分解の生成物の量を示す測定情報を取得する測定情報取得部と、
前記測定情報取得部が取得した前記測定情報が示す前記生成物の量に基づいて、前記バイオガス生成槽内のアンモニアの量を予測する予測部と、
前記測定情報取得部が取得した前記測定情報が示す前記生成物の量と、前記予測部が予測した前記アンモニアの量と、に基づいて、前記加水分解槽が前記有機物を加水分解するための前記条件を変更する加水分解制御部と、
を有する、有機物処理設備管理装置。
【請求項3】
設定された条件に基づいて有機物を加水分解する加水分解槽と、加水分解された前記有機物を生物処理することによってバイオガスを生成するバイオガス生成槽とを備える有機物処理設備を管理する有機物処理設備管理装置であって、
前記加水分解槽内の前記加水分解の生成物の量を示す測定情報を取得する測定情報取得部と、
前記測定情報取得部が取得した前記測定情報が示す前記生成物の量に基づいて、前記バイオガス生成槽で生成される前記バイオガスの量を予測する予測部と、
前記予測部が予測した前記バイオガスの量に基づいて、前記加水分解槽に前記有機物を受け入れる受入条件を変更する受入条件設定部と、
前記測定情報取得部が取得した前記測定情報が示す前記生成物の量に基づいて、前記加水分解槽が前記有機物を加水分解するための前記条件を変更する加水分解制御部と、
を有する、有機物処理設備管理装置。
【請求項4】
設定された条件に基づいて有機物を加水分解する加水分解槽と、加水分解された前記有機物を生物処理することによってバイオガスを生成するバイオガス生成槽とを備える有機物処理設備を管理する有機物処理設備管理装置であって、
前記加水分解槽内の前記加水分解の生成物の量を示す測定情報を取得する測定情報取得部と、
前記測定情報取得部が取得した前記測定情報が示す前記生成物の量に基づいて、前記加水分解槽に前記有機物を受け入れる受入条件を変更する受入条件設定部と、
前記測定情報取得部が取得した前記測定情報が示す前記生成物の量に基づいて、前記加水分解槽が前記有機物を加水分解するための前記条件を変更する加水分解制御部と、
を有する、有機物処理設備管理装置。
【請求項5】
前記加水分解制御部は、前記生成物の量に基づいて、前記加水分解槽において前記加水分解を行う時間と、前記加水分解を行う際の前記加水分解槽内の温度とのうち少なくとも一方を変更する、請求項1
から4のいずれか一項に記載の有機物処理設備管理装置。
【請求項6】
前記測定情報取得部は、前記生成物として前記加水分解槽内の単糖類、グリセリン、脂肪酸及びアミノ酸のうち少なくとも1つの量を示す前記測定情報を取得し、
前記加水分解制御部は、前記単糖類、グリセリン、脂肪酸及びアミノ酸のうち少なくとも1つの量が所定の基準値よりも大きい場合に、そうでない場合よりも前記加水分解槽において前記加水分解を行う時間を短くすること及び前記加水分解を行う際の前記加水分解槽内の温度を低くすることのうち少なくとも一方を行う、請求項
5に記載の有機物処理設備管理装置。
【請求項7】
前記加水分解制御部は、前記予測部が予測した前記アンモニアの量が所定の基準値よりも大きい場合に、そうでない場合よりも前記加水分解槽において前記加水分解を行う時間を長くすること及び前記加水分解を行う際の前記加水分解槽内の温度を高くすることのうち少なくとも一方を行う、請求項
2に記載の有機物処理設備管理装置。
【請求項8】
設定された条件に基づいて有機物を加水分解する加水分解槽と、加水分解された前記有機物を生物処理することによってバイオガスを生成するバイオガス生成槽とを備える有機物処理設備を管理する有機物処理設備管理方法であって、
プロセッサが実行する、
前記加水分解槽内の前記加水分解の生成物の量を示す測定情報を取得するステップと、
前記取得するステップ
で取得された前記測定情報が示す前記生成物の量に基づいて、前記加水分解槽が前記有機物を加水分解するための前記条件を変更するステップと、
を有
し、
前記加水分解槽は、前記有機物に対して前記加水分解を行う加水分解生物を用いて前記加水分解を行い、
前記条件を変更するステップでは、前記取得するステップで取得された前記測定情報が示す前記生成物の量に基づいて、前記加水分解を行う際に前記加水分解槽に添加される前記加水分解生物の量を変更する、
有機物処理設備管理方法。
【請求項9】
設定された条件に基づいて有機物を加水分解する加水分解槽と、加水分解された前記有機物を生物処理することによってバイオガスを生成するバイオガス生成槽とを備える有機物処理設備を管理する有機物処理設備管理方法であって、
プロセッサが実行する、
前記加水分解槽内の前記加水分解の生成物の量を示す測定情報を取得するステップと、
前記取得するステップで取得された前記測定情報が示す前記生成物の量に基づいて、前記バイオガス生成槽内のアンモニアの量を予測するステップと、
前記取得するステップで取得された前記測定情報が示す前記生成物の量と、前記予測するステップで予測された前記アンモニアの量と、に基づいて、前記加水分解槽が前記有機物を加水分解するための前記条件を変更するステップと、
を有する、有機物処理設備管理方法。
【請求項10】
設定された条件に基づいて有機物を加水分解する加水分解槽と、加水分解された前記有機物を生物処理することによってバイオガスを生成するバイオガス生成槽とを備える有機物処理設備を管理する有機物処理設備管理方法であって、
プロセッサが実行する、
前記加水分解槽内の前記加水分解の生成物の量を示す測定情報を取得するステップと、
前記取得するステップで取得された前記測定情報が示す前記生成物の量に基づいて、前記バイオガス生成槽で生成される前記バイオガスの量を予測するステップと、
前記予測するステップで予測された前記バイオガスの量に基づいて、前記加水分解槽に前記有機物を受け入れる受入条件を変更するステップと、
前記取得するステップで取得された前記測定情報が示す前記生成物の量に基づいて、前記加水分解槽が前記有機物を加水分解するための前記条件を変更するステップと、
を有する、有機物処理設備管理方法。
【請求項11】
設定された条件に基づいて有機物を加水分解する加水分解槽と、加水分解された前記有機物を生物処理することによってバイオガスを生成するバイオガス生成槽とを備える有機物処理設備を管理する有機物処理設備管理方法であって、
プロセッサが実行する、
前記加水分解槽内の前記加水分解の生成物の量を示す測定情報を取得するステップと、
前記取得するステップで取得された前記測定情報が示す前記生成物の量に基づいて、前記加水分解槽に前記有機物を受け入れる受入条件を変更する受入条件設定部と、
前記取得するステップで取得された前記測定情報が示す前記生成物の量に基づいて、前記加水分解槽が前記有機物を加水分解するための前記条件を変更するステップと、
を有する、有機物処理設備管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物を処理する有機物処理設備を管理するための有機物処理設備管理装置及び有機物処理設備管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品残渣、農業残渣、糞尿等の有機物(有機性廃棄物)に対して、細菌等の生物を用いて生物処理をすることによって、メタンガス等のバイオガスを生成する技術が知られている。特許文献1には、有機物に対して加水分解処理(可溶化処理)を行った後に、メタン菌を用いてメタンガスを生成するメタン生成処理を行う方法が開示されている。メタン生成処理の前段階として有機物を加水分解することによって、メタンガスの生成量を増加させるとともに、メタンガスの生成を阻害するアンモニアを削減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された方法において、加水分解された有機物は、メタンガスの原料として利用される。また、有機物を加水分解する際に副次的に発生するアンモニアはメタンガスの原料になるため、メタンガスの生成を阻害しない程度の濃度のアンモニアが残存していることが好ましい。有機物の加水分解が過剰に進行すると、加水分解の生成物が消費され、アンモニアが除去されてしまうため、メタンガスの生成量が減少してしまう。
【0005】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、バイオガスを生成するための有機物に対する加水分解処理の進行を調整できる有機物処理設備管理装置及び有機物処理設備管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の有機物処理設備管理装置は、設定された条件に基づいて有機物を加水分解する加水分解槽と、加水分解された前記有機物を生物処理することによってバイオガスを生成するバイオガス生成槽とを備える有機物処理設備を管理する有機物処理設備管理装置であって、前記加水分解槽内の前記加水分解の生成物の量を示す測定情報を取得する測定情報取得部と、前記測定情報取得部が取得した前記測定情報が示す前記生成物の量に基づいて、前記加水分解槽が前記有機物を加水分解するための前記条件を変更する加水分解制御部と、を有する。
【0007】
前記加水分解制御部は、前記生成物の量に基づいて、前記加水分解槽において前記加水分解を行う時間と、前記加水分解を行う際の前記加水分解槽内の温度とのうち少なくとも一方を変更してもよい。
【0008】
前記測定情報取得部は、前記生成物として前記加水分解槽内の単糖類、グリセリン、脂肪酸及びアミノ酸のうち少なくとも1つの量を示す前記測定情報を取得し、前記加水分解制御部は、前記単糖類、グリセリン、脂肪酸及びアミノ酸のうち少なくとも1つの量が所定の基準値よりも大きい場合に、そうでない場合よりも前記加水分解槽において前記加水分解を行う時間を短くすること及び前記加水分解を行う際の前記加水分解槽内の温度を低くすることのうち少なくとも一方を行ってもよい。
【0009】
前記加水分解槽は、前記有機物に対して前記加水分解を行う加水分解生物を用いて前記加水分解を行い、前記加水分解制御部は、前記生成物の量に基づいて、前記加水分解を行う際に前記加水分解槽に添加される前記加水分解生物の量を変更してもよい。
【0010】
前記有機物処理設備管理装置は、前記生成物の量に基づいて、前記バイオガス生成槽内のアンモニアの量を予測する予測部をさらに有し、前記加水分解制御部は、前記予測部が予測した前記アンモニアの量に基づいて、前記加水分解槽における前記加水分解の条件を変更してもよい。
【0011】
前記加水分解制御部は、前記予測部が予測した前記アンモニアの量が所定の基準値よりも大きい場合に、そうでない場合よりも前記加水分解槽において前記加水分解を行う時間を長くすること及び前記加水分解を行う際の前記加水分解槽内の温度を高くすることのうち少なくとも一方を行ってもよい。
【0012】
前記有機物処理設備管理装置は、前記生成物の量に基づいて、前記バイオガス生成槽で生成される前記バイオガスの量を予測する予測部と、前記予測部が予測した前記バイオガスの量に基づいて、前記加水分解槽に前記有機物を受け入れる条件を変更する受入条件設定部と、をさらに有してもよい。
【0013】
前記有機物処理設備管理装置は、前記測定情報取得部が取得した前記測定情報が示す前記生成物の量に基づいて、前記加水分解槽に前記有機物を受け入れる条件を変更する受入条件設定部をさらに有してもよい。
【0014】
本発明の第2の態様の有機物処理設備管理方法は、設定された条件に基づいて有機物を加水分解する加水分解槽と、加水分解された前記有機物を生物処理することによってバイオガスを生成するバイオガス生成槽とを備える有機物処理設備を管理する有機物処理設備管理方法であって、プロセッサが実行する、前記加水分解槽内の前記加水分解の生成物の量を示す測定情報を取得するステップと、前記取得するステップが測定した前記生成物の量に基づいて、前記加水分解槽が前記有機物を加水分解するための前記条件を変更するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、バイオガスを生成するための有機物に対する加水分解処理の進行を調整できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る有機物処理システムの模式図である。
【
図2】実施形態に係る有機物処理システムのブロック図である。
【
図3】実施形態に係る有機物処理システムにおいて用いられる物質の変化を示す模式図である。
【
図4】加水分解処理を行う加水分解槽の模式図である。
【
図5】加水分解制御部が加水分解槽で行われる加水分解を制御する方法の模式図である。
【
図6】受入条件設定部が受入条件を設定する方法の模式図である。
【
図7】実施形態に掛かる有機物処理システムが行う有機物処理設備管理方法のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[有機物処理システムSの概要]
図1は、本実施形態に係る有機物処理システムSの模式図である。有機物処理システムSは、管理装置1と、有機物処理設備2とを含む。有機物処理システムSは、その他のサーバ、端末等の機器を含んでもよい。
【0018】
有機物処理設備2は、受入装置21と、加水分解槽22と、メタン生成槽23とを備える。受入装置21は、利用者が投入する食品残渣、農業残渣、糞尿等の有機物(有機性廃棄物)を受け入れる装置である。利用者は、有機物処理設備2へ有機物を提供する主体であり、個人、又は会社等の組織である。受入装置21は、受け入れた有機物を、パイプ、バルブ、ポンプ等を介して加水分解槽22へ搬送する。
【0019】
加水分解槽22(可溶化槽)は、有機物を加水分解することによって可溶化する装置である。加水分解槽22は、有機物を保持する槽(タンク)を有しており、有機物を分解可能な細菌等の微生物を槽内に添加し、槽内に保持されている有機物を加水分解する。加水分解槽22は、微生物に代えて又は加えて、有機物を分解可能な酵素(例えばプロテアーゼ、リパーゼ、グリコシダーゼ等)を槽内に添加してもよい。加水分解槽22は、複数の槽を有してもよい。加水分解槽22は、加水分解の生成物を、パイプ、バルブ、ポンプ等を介してメタン生成槽23へ搬送する。
【0020】
メタン生成槽23(バイオガス生成槽)は、加水分解の生成物からメタンガス等のバイオガスを生成する装置である。メタン生成槽23は、有機物を保持する槽(タンク)を有しており、槽内に細菌等の微生物を添加し、槽内に保持されている有機物に対して酸生成処理(低分子化)及びメタン生成処理をすることによって、バイオガス(例えばメタン)を生成する。メタン生成槽23は、複数の槽を有してもよい。メタン生成槽23は、生成したバイオガス及び廃液を、パイプ、バルブ、ポンプ等を介して有機物処理システムSの外部へ搬送する。有機物処理設備2は、ここに示した構成に限られず、有機物を生物処理してバイオガスを生成可能なその他構成を有してもよい。
【0021】
管理装置1(有機物処理設備管理装置)は、有機物処理設備2から受信した情報を記録するとともに、有機物処理設備2の作動を制御するコンピュータである。管理装置1は、ローカルエリアネットワーク、インターネット等のネットワークNを介して、有機物処理設備2の受入装置21、加水分解槽22及びメタン生成槽23に接続される。
【0022】
本実施形態に係る有機物処理システムSが行う有機物処理の概要を以下に説明する。まず利用者は、受入装置21へ有機物を投入する。受入装置21は、受け入れた有機物を、加水分解槽22へ搬送する。
【0023】
加水分解槽22は、予め設定された条件に基づいて、受入装置21が受け入れた有機物に対して加水分解処理を行う。加水分解の条件は、例えば槽内に添加される微生物の量、加水分解の時間、及び加水分解の温度である。また、加水分解槽22は、加水分解中に槽内の加水分解の生成物の量を測定し、測定した値を示す測定情報を管理装置1へ送信する。加水分解の生成物は、例えば単糖類、グリセリン、脂肪酸及びアミノ酸である。
【0024】
管理装置1は、加水分解槽22から受信した加水分解の生成物の量に基づいて、加水分解の条件を変更する。加水分解槽22は、管理装置1によって変更された条件を用いて、加水分解を継続する。例えば管理装置1は、加水分解の生成物の量が所定の基準値よりも大きい場合に、加水分解の時間を短くし、又は加水分解の温度を低くするように、加水分解の条件を変更する。
【0025】
加水分解槽22は、加水分解が終了した場合に、加水分解の生成物を、メタン生成槽23へ搬送する。メタン生成槽23は、加水分解の生成物を用いて酸生成処理及びバイオガス生成処理を行う。メタン生成槽23は、生成したバイオガス及び廃液を、有機物処理システムSの外部へ搬送する。
【0026】
このように本実施形態に係る有機物処理システムSは、受け入れた有機物に対して加水分解を行っている最中に加水分解槽22内の加水分解の生成物の量を測定し、測定した生成物の量に基づいて加水分解の条件を変更する。これにより、有機物処理システムSは、有機物の加水分解が過剰に進行することを抑制し、加水分解の生成物を用いて生成されるバイオガスの生成量を向上できる。
【0027】
[有機物処理システムSの構成]
図2は、本実施形態に係る有機物処理システムSのブロック図である。
図2において、矢印は主なデータの流れを示しており、
図2に示していないデータの流れがあってよい。
図2において、各ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、
図2に示すブロックは単一の装置内に実装されてよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてよい。ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてよい。
【0028】
管理装置1は、制御部11と、記憶部12とを有する。制御部11は、受入情報取得部111と、測定情報取得部112と、予測部113と、加水分解制御部114と、受入条件設定部115とを有する。記憶部12は、受入情報記憶部121と、測定情報記憶部122と、受入条件記憶部123とを有する。
【0029】
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブ等を含む記憶媒体である。記憶部12は、制御部11が実行するプログラムを予め記憶している。記憶部12は、管理装置1の外部に設けられてもよく、その場合にネットワークを介して制御部11との間でデータの授受を行ってもよい。受入情報記憶部121は、利用者から受け入れた有機物に関する情報を記憶する。測定情報記憶部122は、有機物処理設備2から取得した測定情報を記憶する。受入条件記憶部123は、有機物を受け入れる受入条件(例えば買取価格)を示す情報を記憶する。受入情報記憶部121、測定情報記憶部122及び受入条件記憶部123は、それぞれ記憶部12上の記憶領域であってもよく、あるいは記憶部12上で構成されたデータベースであってもよい。
【0030】
制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、受入情報取得部111、測定情報取得部112、予測部113、加水分解制御部114及び受入条件設定部115として機能する。制御部11の機能の少なくとも一部は電気回路によって実行されてもよい。また、制御部11の機能の少なくとも一部は、制御部11がネットワーク経由で実行されるプログラムを実行することによって実現されてもよい。
【0031】
加水分解槽22は、測定部221と、投入調節部222と、排出調節部223と、温度調節部224とを有する。測定部221は、加水分解槽22において有機物を保持する槽に関する値を測定し、測定した値を示す測定情報を管理装置1へ送信する。測定部221は、加水分解の生成物の量を測定するセンサを含む。加水分解の生成物は、例えば単糖類、グリセリン、脂肪酸及びアミノ酸である。加水分解の生成物の量を測定するセンサは、例えば加水分解槽22の層内の液体に溶存する加水分解の生成物の量を測定する。測定部221は、加水分解の生成物として、その他の物質の量を測定してもよい。
【0032】
投入調節部222は、加水分解槽22において有機物を保持する槽への微生物の添加を調節するバルブや弁等を含む。有機物を保持する槽へ添加される微生物(加水分解生物)は、有機物を加水分解することが可能な細菌等の微生物(例えばプロテアーゼ生成菌、リパーゼ生成菌、グリコシダーゼ生成菌等)である。投入調節部222は、予め設定された条件又は管理装置1によって変更された条件に基づいて、有機物を保持する槽への微生物の添加を調節する。
【0033】
排出調節部223は、加水分解槽22において有機物を保持する槽からの加水分解の生成物の排出を調節するバルブや弁等を含む。排出調節部223は、予め設定された条件又は管理装置1によって変更された条件に基づいて、有機物を保持する槽からの加水分解の生成物の排出を調節する。
【0034】
温度調節部224は、加水分解槽22に保持されている有機物の温度を調節するヒータやクーラ等を含む。温度調節部224は、予め設定された条件又は管理装置1によって変更された条件に基づいて、加水分解槽22に保持されている有機物の温度を調節する。
【0035】
メタン生成槽23は、測定部231を有する。測定部231は、メタン生成槽23において有機物を保持する槽に関する値を測定し、測定した値を示す測定情報を管理装置1へ送信する。測定部231は、メタン生成槽23が生成したメタンの量を測定するセンサを含む。メタンの量を測定するセンサは、例えばメタン生成槽23の層内の液体に溶存するメタンの量を測定し、又はメタン生成槽23の層内の気体に含まれるメタンの量を測定する。測定部231は、メタンに限られず、その他のバイオガスの量を測定してもよい。
【0036】
メタン生成槽23において有機物を保持する槽には、酸生成処理に用いられる微生物(酸処理生物)と、メタン生成処理に用いられる微生物(メタン生成生物)とが、メタン生成槽23によって自動的に、又は有機物処理システムSの管理者によって手作業で添加される。例えば酸生成処理に用いられる微生物は酸生成菌であり、メタン生成処理に用いられる微生物はメタン菌(メタン生成菌)である。
【0037】
本実施形態に係る有機物処理システムSは、
図2に示す具体的な構成に限定されない。管理装置1は、それぞれ1つの装置に限られず、2つ以上の物理的に分離した装置が有線又は無線で接続されることにより構成されてもよい。
【0038】
[物質の説明]
図3は、本実施形態に係る有機物処理システムSにおいて用いられる物質の変化を示す模式図である。利用者が投入する有機物は、多糖類、脂肪及び蛋白質を含む。まず有機物は、加水分解槽22において微生物(又は酵素)を用いた加水分解処理を受ける。有機物が加水分解されると、単糖類、グリセリン、脂肪酸及びアミノ酸が生成物として生成される。
【0039】
次に加水分解処理の生成物は、メタン生成槽23において、微生物を用いた酸生成処理(低分子化)を受ける。加水分解処理の生成物が酸生成処理を受けると、低級脂肪酸、アルコール及びアルデヒドが生成物として生成される。
【0040】
酸生成処理に引き続いて、酸生成処理の生成物は、メタン生成槽23において、微生物を用いたメタン生成処理を受ける。酸生成処理の生成物がメタン生成処理を受けると、メタン及び二酸化炭素が生成物として生成される。
【0041】
このように、有機物処理システムSは、利用者が投入する有機物に対して、加水分解処理、酸生成処理及びメタン生成処理を順に行うことによって、最終的にメタン(バイオガス)を生成することができる。
【0042】
[有機物処理設備管理方法の説明]
以下、本実施形態に係る有機物処理システムSが実行する有機物処理設備管理方法を詳細に説明する。まず利用者は、受入装置21に有機物を投入する。このとき受入装置21は、利用者から受け入れた有機物の量、内容及び有機物を投入した利用者を示す受入情報を、管理装置1へ送信する。管理装置1において、受入情報取得部111は、受入装置21が送信した受入情報を取得し、受入情報記憶部121に記憶させる。
【0043】
受入装置21は、有機物の量、内容及び有機物を投入した利用者を、センサやカメラ等を用いて自動的に特定し、又は利用者がキーボード、タッチパネル等によって入力した内容に基づいて特定する。例えば受入装置21は、カメラを用いて撮像した有機物の画像に対して既知の物体検出方法を適用することによって、有機物の量及び内容を特定する。また、例えば受入装置21は、カメラを用いて撮像した利用者の画像に対して既知の人物認識方法を適用することによって、有機物を投入した利用者(利用者の識別情報)を特定する。受入装置21は、ここに示した方法に限られず、その他の方法によって有機物の量、内容及び有機物を投入した利用者を特定してもよい。
【0044】
次に受入装置21は、利用者から受け入れた有機物を、加水分解槽22へ搬送する。加水分解槽22は、予め設定された条件に基づいて、有機物に対して加水分解処理を行う。
【0045】
図4は、加水分解処理を行う加水分解槽22の模式図である。加水分解槽22において、投入調節部222は、受入装置21から有機物が搬送されると、予め設定された条件(加水分解条件)に対応する量の微生物(加水分解生物)を、微生物を保持するタンクTから有機物を保持する槽内に添加する。また、温度調節部224は、有機物を保持する槽を、予め設定された条件に対応する温度に調節する。排出調節部223は、受入装置21から有機物が搬送された時刻からの経過時間を測定し、経過時間が予め設定された条件が示す時間に達した場合に、有機物を保持する槽から加水分解の生成物を排出し、メタン生成槽23へ搬送する。
【0046】
加水分解の条件は、槽内に添加される微生物の量と、槽に保持される有機物の温度と、加水分解を行う時間とを含み、加水分解槽22が備える記憶部(不図示)に予め記憶されている。投入調節部222、排出調節部223及び温度調節部224は、記憶部から加水分解の条件を読み出し、読み出した条件に基づいて作動する。これにより、加水分解槽22は、予め設定された条件に基づいて有機物の加水分解を開始することができる。
【0047】
別の方法として、投入調節部222、排出調節部223及び温度調節部224は、管理装置1から送信された制御信号に従って作動してもよい。この場合に、加水分解の条件は、管理装置1の記憶部12に予め設定されている。管理装置1の加水分解制御部114は、記憶部12から加水分解の条件を読み出し、読み出した条件に基づいて生成した制御信号を加水分解槽22へ送信する。投入調節部222、排出調節部223及び温度調節部224は、管理装置1が送信した制御信号に従って作動する。このような方法であっても、加水分解槽22は、予め設定された条件に基づいて有機物の加水分解を開始することができる。
【0048】
加水分解槽22が有機物の加水分解を行っている最中に、加水分解槽22の測定部221は、所定の時間間隔で、加水分解の生成物の量を測定し、測定した生成物の量を示す測定情報を管理装置1へ送信する。測定情報は、加水分解槽22内の単糖類、グリセリン、脂肪酸及びアミノ酸のうち少なくとも1つの量を示す。管理装置1において、測定情報取得部112は、加水分解槽22が送信した測定情報を取得し、測定情報記憶部122に記憶させる。
【0049】
次に予測部113は、測定情報が示す加水分解の生成物の量に基づいて、メタン生成槽23内で生成されるメタン(バイオガス)の量を予測する。また、予測部113は、測定情報が示す加水分解の生成物の量に基づいて、メタン生成槽23内で発生するアンモニアの量を予測する。具体的には、加水分解槽22内の加水分解の生成物の量(例えば単糖類、グリセリン、脂肪酸及びアミノ酸の量)と、メタン生成槽23内のメタン及びアンモニアの量との関係を示す情報(例えば関係式)は、予め記憶部12に記憶されている。予測部113は、記憶部12に記憶された関係において、測定情報が示す加水分解の生成物の量に関連付けられた値を、メタン生成槽23内のメタン及びアンモニアの量として予測する。
【0050】
加水分解槽22における加水分解処理は好気性生物を用いると例えば1日~2日程度で終了するのに対して、メタン生成槽23におけるメタン生成処理は嫌気性生物を用いる必要があるため例えば20日~30日程度掛かる。そのため、メタン生成槽23においてメタン及びアンモニアの量を測定しても、有機物の受入及び加水分解処理から大きなタイムラグがあるため、受入条件及び加水分解条件へ適切なフィードバックを行うことが難しい。それに対して、予測部113は、加水分解の生成物の量に基づいてメタン及びアンモニアの量を予測するため、後述のように受入条件及び加水分解条件へ適切なフィードバックを行うことができる。
【0051】
図5は、加水分解制御部114が加水分解槽22で行われる加水分解を制御する方法の模式図である。加水分解制御部114は、測定情報が示す加水分解の生成物の量に基づいて、加水分解槽22が有機物を加水分解するための条件(加水分解条件)を変更する。加水分解制御部114が変更する条件は、加水分解槽22において加水分解を行う時間と、加水分解を行う際の加水分解槽22内の温度(すなわち有機物の温度)と、加水分解槽22内に添加される微生物の量とのうち少なくとも1つである。
【0052】
例えば加水分解制御部114は、単糖類、グリセリン、脂肪酸及びアミノ酸のうち少なくとも1つの量が、所定の基準値よりも大きい場合に、そうでない場合よりも加水分解槽22において加水分解を行う時間を短くすること及び加水分解を行う際の加水分解槽22内の温度を低くすることのうち少なくとも一方を行うように、条件を変更する。単糖類、グリセリン、脂肪酸及びアミノ酸それぞれの基準値は、記憶部12に予め記憶されている。単糖類、グリセリン、脂肪酸及びアミノ酸の量が基準値よりも大きい場合には、有機物の加水分解が十分に進行しているため、さらに加水分解を進行させると有機物が消費されてメタンの生成量が減少する可能性がある。そこで加水分解制御部114は、加水分解の時間を短くし、又は加水分解の温度を低くすることによって、有機物の加水分解が過剰に進行することを抑制し、バイオガスの生成量を向上できる。
【0053】
一方、加水分解制御部114は、単糖類、グリセリン、脂肪酸及びアミノ酸のうち少なくとも1つの量が、所定の基準値以下である場合に、そうでない場合よりも加水分解槽22において加水分解を行う時間を長くすること及び加水分解を行う際の加水分解槽22内の温度を高くすることのうち少なくとも一方を行うように、条件を変更してもよい。これにより、有機物の加水分解の進行を促進し、バイオガスの生成量を向上できる。
【0054】
また、例えば加水分解制御部114は、単糖類、グリセリン、脂肪酸及びアミノ酸のうち少なくとも1つの量が、所定の基準値よりも小さい場合に、そうでない場合よりも加水分解槽22に添加される微生物の量を増加させるように、条件を変更する。単糖類、グリセリン、脂肪酸及びアミノ酸それぞれの基準値は、記憶部12に予め記憶されている。単糖類、グリセリン、脂肪酸及びアミノ酸の量が基準値よりも小さいと、有機物の加水分解が十分に進行していないため、メタンの生成量が減少する可能性がある。そこで加水分解制御部114は、加水分解槽22に添加される微生物の量を増加させることによって、有機物の加水分解の進行を促進し、バイオガスの生成量を向上できる。
【0055】
上述のように加水分解槽22における加水分解とメタン生成槽23におけるメタン生成との間には大きなタイムラグがあるため、メタンの生成量に基づいて処理の条件を変更したとしても、メタンの生成に用いられた有機物の組成と加水分解中の有機物の組成とが異なっており、メタンの生成量の向上に貢献しない可能性がある。それに対して、加水分解制御部114は、メタンの生成量ではなく加水分解の生成物の量に基づいて処理の条件を調節することにより、最終的なメタンの生成量を効果的に向上させることができる。
【0056】
さらに加水分解制御部114は、予測部113が予測した、メタン生成槽23内で発生するアンモニアの量に基づいて、加水分解槽22が有機物を加水分解するための条件を変更する。
【0057】
例えば加水分解制御部114は、予測されたアンモニアの量が、所定の基準値よりも大きい場合に、そうでない場合よりも加水分解槽22において加水分解を行う時間を長くすること及び加水分解を行う際の加水分解槽22内の温度を高くすることのうち少なくとも一方を行うように、条件を変更する。アンモニアの基準値は、記憶部12に予め記憶されている。予測されたアンモニアの量が基準値よりも大きいと、アンモニアがメタンの生成を阻害することにより、メタンの生成量が減少する可能性がある。そこで加水分解制御部114は、加水分解の時間を長くし、又は加水分解の温度を高くすることによって、アンモニアの量を抑制し、バイオガスの生成量を向上できる。
【0058】
一方、加水分解制御部114は、予測されたアンモニアの量が、所定の基準値以下である場合に、そうでない場合よりも加水分解槽22において加水分解を行う時間を短くすること及び加水分解を行う際の加水分解槽22内の温度を低くすることのうち少なくとも一方を行うように、条件を変更してもよい。これにより、メタンの生成の原料にもなるアンモニアを除去しすぎないようにし、バイオガスの生成量を向上できる。
【0059】
加水分解制御部114は、変更した条件を示す条件情報を、加水分解槽22へ送信する。加水分解槽22は、加水分解制御部114が送信した条件情報に基づいて、加水分解槽22が備える記憶部に記憶された加水分解の条件を変更する。投入調節部222、排出調節部223及び温度調節部224は、記憶部から変更された加水分解の条件を読み出し、読み出した条件に基づいて作動する。これにより、加水分解槽22は、管理装置1によって変更された条件に基づいて、有機物の加水分解を続行することができる。
【0060】
例えば、投入調節部222は、変更された条件が加水分解槽22に添加される微生物の量を増加させることを示す場合に、微生物を保持するタンクTから有機物を保持する槽内に、微生物を添加する。また、温度調節部224は、変更された条件が加水分解槽22内の温度を高くすること又は低くすることを示す場合に、有機物を保持する槽を、変更された条件に対応する温度に調節する。
【0061】
また、排出調節部223は、変更された条件が加水分解の時間を長くすること又は短くすることを示す場合に、受入装置21から有機物が搬送された時刻からの経過時間が、変更された条件が示す時間に達したことを条件として、有機物を保持する槽から加水分解の生成物を排出し、メタン生成槽23へ搬送する。
【0062】
別の方法として、加水分解制御部114は、変更された条件に基づいて生成した制御信号を、加水分解槽22へ送信してもよい。この場合に、加水分解槽22において、投入調節部222、排出調節部223及び温度調節部224は、管理装置1から送信された、変更された条件に対応する制御信号に従って作動する。このような方法であっても、加水分解槽22は、変更された条件に基づいて有機物の加水分解を続行することができる。
【0063】
図6は、受入条件設定部115が利用者から有機物を受け入れる受入条件Cを設定する方法の模式図である。受入条件Cは、有機物を投入する利用者(利用者の識別情報)と、有機物の種類と、買取価格とを関連付けた情報であり、受入条件記憶部123に予め記憶される。受入条件Cが含む買取価格は、金銭の額に限らず、利用者が投入した有機物に応じて利用者に提供するポイントや商品等の特典を示す情報であってもよい。有機物処理システムSの管理者(例えば有機物処理システムSの運営会社)は、受入条件記憶部123に記憶された受入条件Cに基づいて、受入装置21に投入された有機物の種類、量及び有機物を投入した利用者に対応する料金を、該利用者へ提供する。
【0064】
受入条件設定部115は、測定情報が示す加水分解の生成物の量と、予測部113が予測したメタンの量との少なくとも一方に基づいて、受入条件記憶部123に記憶された受入条件を変更する。例えば受入条件設定部115は、加水分解の生成物の量及び予測されたメタンの量の少なくとも一方が、所定の基準値よりも大きい場合に、そうでない場合より買取価格が高くなるように、受入条件を変更する。加水分解の生成物の量及び予測されたメタンの量それぞれの基準値は、記憶部12に予め記憶されている。一方、受入条件設定部115は、加水分解の生成物の量及び予測されたメタンの量の少なくとも一方が、所定の基準値以下である場合に、買取価格が低くなるように、受入条件を変更してもよい。
【0065】
同じ種類及び量の有機物であっても組成が異なるため、有機物を投入する利用者によってメタンの生成効率が異なる場合がある。そこで受入条件設定部115は、加水分解の生成物の量又は予測されたメタンの生成量に基づいて、より多くのメタンを生成できる有機物を投入する利用者に有利な受入条件Cを設定する。これにより、有機物処理システムSは、利用者に対してより多くのメタンを生成できる有機物を投入するように促し、効率的にメタンを生成することが可能になる。
【0066】
加水分解処理が終了した後、すなわち加水分解槽22からメタン生成槽23へ加水分解の生成物が搬送された後、メタン生成槽23は、加水分解の生成物に対して酸生成処理を所定の時間行い、さらにメタン生成処理を所定の時間行う。
【0067】
メタン生成槽23におけるメタン生成処理が終了した後に、メタン生成槽23の測定部231は、生成されたメタンの量を測定し、測定したメタンの量を示す測定情報を管理装置1へ送信する。管理装置1において、測定情報取得部112は、メタン生成槽23が送信した測定情報を取得し、取得した測定情報が示すメタンの量と、メタンの生成に用いた有機物の量、内容及び有機物を投入した利用者を示す受入情報とを関連付けて測定情報記憶部122に記憶させる。受入情報は、受入装置21が有機物を受け入れた際に受入情報記憶部121に記憶されている。メタンの生成に用いた有機物は、メタン生成処理の終了時刻から、加水分解処理、酸生成処理及びメタン生成処理に掛かった時間だけ遡った時刻に受け入れた有機物である。
【0068】
このように管理装置1は、利用者から受け入れた有機物に関する情報と、実際に生成されたメタンの量とを関連付けて記憶することによって、どのような有機物をどのような利用者から受け入れると効率的にメタンを得ることができるかを分析することを可能にする。
【0069】
[有機物処理設備管理方法のフロー]
図7は、本実施形態に掛かる有機物処理システムSが行う有機物処理設備管理方法のフローチャートを示す図である。まず利用者は、受入装置21に有機物を投入する。このとき受入装置21は、利用者から受け入れた有機物の量、内容及び有機物を投入した利用者を示す受入情報を、管理装置1へ送信する。管理装置1において、受入情報取得部111は、受入装置21が送信した受入情報を取得し、受入情報記憶部121に記憶させる(S11)。
【0070】
受入装置21は、利用者から受け入れた有機物を、加水分解槽22へ搬送する。加水分解槽22は、予め設定された条件に基づいて、有機物に対して加水分解処理を行う(S12)。加水分解槽22が有機物の加水分解を行っている最中に、加水分解槽22の測定部221は、所定の時間間隔で、加水分解の生成物の量を測定し、測定した生成物の量を示す測定情報を管理装置1へ送信する。管理装置1において、測定情報取得部112は、加水分解槽22が送信した測定情報を取得し、測定情報記憶部122に記憶させる(S13)。
【0071】
予測部113は、測定情報が示す加水分解の生成物の量に基づいて、メタン生成槽23内で生成されるメタン(バイオガス)の量と、メタン生成槽23内で発生するアンモニアの量とを予測する(S14)。
【0072】
加水分解制御部114は、測定情報が示す加水分解の生成物の量に基づいて、加水分解槽22が有機物を加水分解するための条件(加水分解条件)を変更する(S15)。加水分解槽22は、管理装置1によって変更された条件に基づいて、有機物の加水分解を続行する(S16)。
【0073】
受入条件設定部115は、測定情報が示す加水分解の生成物の量と、予測部113が予測したメタンの量との少なくとも一方に基づいて、受入条件記憶部123に記憶された有機物の受入条件を変更する(S17)。
【0074】
加水分解処理が終了した後、すなわち加水分解槽22からメタン生成槽23へ加水分解の生成物が搬送された後、メタン生成槽23は、加水分解の生成物に対して酸生成処理を所定の時間行い、さらにメタン生成処理を所定の時間行う。
【0075】
メタン生成槽23におけるメタン生成処理が終了した後に、メタン生成槽23の測定部231は、生成されたメタンの量を測定し、測定したメタンの量を示す測定情報を管理装置1へ送信する。管理装置1において、測定情報取得部112は、メタン生成槽23が送信した測定情報を取得する(S18)。そして測定情報取得部112は、取得した測定情報が示すメタンの量と、メタンの生成に用いた有機物の量、内容及び有機物を投入した利用者を示す受入情報とを関連付けて測定情報記憶部122に記憶させる(S19)。
【0076】
[本実施形態の効果]
本実施形態に係る有機物処理システムSは、受け入れた有機物に対して加水分解を行っている最中に加水分解槽22内の加水分解の生成物の量を測定し、測定した生成物の量に基づいて加水分解の条件を変更する。例えば有機物処理システムSは、加水分解の生成物の量が多い場合に、加水分解の時間を短くし、又は加水分解の温度を低くすることによって、有機物の加水分解が過剰に進行しないようにする。これにより、有機物処理システムSは、加水分解の生成物が消費されることを抑制し、加水分解の生成物を用いて生成されるバイオガスの生成量を向上できる。
【0077】
以上、実施の形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【0078】
管理装置1のプロセッサは、
図7に示す有機物処理設備管理方法に含まれる各ステップ(工程)の主体となる。すなわち、管理装置1のプロセッサは、
図7に示す有機物処理設備管理方法を実行するためのプログラムを記憶部から読み出し、該プログラムを実行して有機物処理システムSの各部を制御することによって、
図7に示す有機物処理設備管理方法を実行する。
図7に示す有機物処理設備管理方法に含まれるステップは一部省略されてもよく、ステップ間の順番が変更されてもよく、複数のステップが並行して行われてもよい。
【符号の説明】
【0079】
S 有機物処理システム
1 管理装置
11 制御部
111 受入情報取得部
112 測定情報取得部
113 予測部
114 加水分解制御部
115 受入条件設定部