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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】生活習慣病の改善又は予防用食品組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20220311BHJP
   A61K 35/10 20150101ALI20220311BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220311BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20220311BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20220311BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20220311BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20220311BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220311BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
A23L33/10
A61K35/10
A61P1/16
A61P3/00
A61P3/02
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/10
A61P21/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019567210
(86)(22)【出願日】2019-01-28
(86)【国際出願番号】 JP2019002820
(87)【国際公開番号】W WO2019146790
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-07-27
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2018012270
(32)【優先日】2018-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507261788
【氏名又は名称】株式会社スタイルアンドバリュージャパン
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】金川 シーラ 涼子
【合議体】
【審判長】冨永 みどり
【審判官】吉岡 沙織
【審判官】関 美祝
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101744844(CN,A)
【文献】特開2013-32298(JP,A)
【文献】国際公開第2015/179675(WO,A1)
【文献】特表2017-530980(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0108797(KR,A)
【文献】Phytotherapy Research,2014年,Vol.28, p.475-479
【文献】Journal of Ethnopharmacology,2012年,Vol.143, p.91-99
【文献】The Science of the Total Environment,1987年,Vol.62, p.347-354
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
A23L
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/FSTA(STN)
JSTplus/JMEDplus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルボ酸及び多種類のミネラルを含む組成物を含む生活習慣病の改善又は予防用食品組成物(ただし、シラジット及び海洋性腐植土の水性溶媒抽出物を含むものを除く)。
【請求項2】
前記生活習慣病が、糖尿病、インスリン抵抗性、脂質異常症、肥満、脂肪肝、ロコモティブシンドローム、サルコペニア、及びカヘキシアからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の食品組成物。
【請求項3】
フルボ酸及びミネラルを含む組成物を含む肝機能改善用食品組成物。
【請求項4】
フルボ酸及びミネラルを含む組成物を含む抗疲労用食品組成物(ただし、シラジットを含むものを除く)。
【請求項5】
フルボ酸及びミネラルを含む組成物を含む筋肉増強用食品組成物(ただし、シラジットを含むものを除く)。
【請求項6】
フルボ酸及びミネラルを含む組成物を含むミトコンドリア活性化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生活習慣病の改善又は予防用食品組成物、肝機能改善用食品組成物、抗疲労用食品組成物、筋肉増強用食品組成物、及びミトコンドリア活性化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活の欧米化により、脂肪摂取量が上昇し、脂質異常症、高血圧、糖尿病、肥満などの生活習慣病が増加している。一般的に、生活習慣病の発生及び予後に関する要因として、生活習慣、遺伝、環境などが挙げられる。そして、生活習慣としては、食生活、運動習慣、休養、喫煙、飲酒などが挙げられる。
【0003】
腐植は、主として、土壌中で植物残渣、微生物遺体などの中の炭水化物及びタンパク質が、長い年月の間に微生物によって分解され、その分解産物が縮合してできる重合体である。腐植には、フルボ酸及びフミン酸といった無定形の重合体が含まれている。フミン酸は、アルカリに可溶であって酸に不溶な赤褐色又は黒褐色無定形高分子有機酸である。一方、フルボ酸は、アルカリ及び酸に可溶な無定形高分子有機酸である。腐植には、フルボ酸及びフミン酸以外にも、脂肪酸、有機酸、アミノ酸、タンパク質、ミネラル等が含まれていることが知られている。
【0004】
このようにフルボ酸(FA:Fulvic acid)は腐植土壌に存在する有機酸であり、インドの古典医療:アーユルヴェーダにより、未精製の腐葉土が「シラジット」として用いられてきた。米国の一部、日本では佐賀県などにフルボ酸を含む腐葉土蓄積が認められ、産業上フルボ酸の規格化がすすめられている。
【0005】
フルボ酸を含むシラジットの健康上の利点は、フルボ酸を高濃度含むことに由来し、経口で、認知障害、アルツハイマー病、気道感染症、癌、重金属毒性、湿疹、及び低酸素症を予防する薬として使われている。しかしながら、エビデンスはなく、フルボ酸の作用メカニズムは全く分かっていない。
【0006】
なお、フミン酸については、例えば、非特許文献1において抗炎症作用について報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Phytother Res. 2015 Jun;29(6):791-5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、優れた生活習慣病の改善又は予防作用、肝機能改善作用、抗疲労作用、及び筋肉増強作用を有する食品組成物、並びにミトコンドリア活性化剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、フルボ酸が、抹消組織への糖の取り込みを促進し、筋肉分化に効果を有し、ミトコンドリア膜電位を保護し且つATP消費系を活性化するという知見を得た。ミトコンドリアの予備呼吸能力は、ミトコンドリア機能の重要な側面と見なされており、基礎ATP産生とその最大活性との間の差として定義される。細胞にストレスがかかると、細胞機能を維持するために必要なATPが増え、エネルギー需要が増加する。より大きな予備呼吸容量を有する細胞は、より多くのATPを産生し、酸化ストレスを含むより多くのストレスを克服することができる。さらに、マウスにフルボ酸を経口摂取させることで、高脂肪食による体重増加を抑制することを示し、これは生活習慣病に対して著効を有することを示すものである。また、マウスの肝機能に関わる血液検査結果から、フルボ酸により肝機能が改善されることを見出した。
【0010】
本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次の生活習慣病の改善又は予防用食品組成物、肝機能改善用食品組成物、抗疲労用食品組成物、筋肉増強用食品組成物、及びミトコンドリア活性化剤を提供するものである。
【0011】
項1.フルボ酸を有効成分とする生活習慣病の改善又は予防用食品組成物。
項2.前記生活習慣病が、糖尿病、インスリン抵抗性、脂質異常症、肥満、脂肪肝、ロコモティブシンドローム、サルコペニア、及びカヘキシアからなる群から選択される少なくとも1種である、項1に記載の食品組成物。
項3.フルボ酸を有効成分とする肝機能改善用食品組成物。
項4.フルボ酸を有効成分とする抗疲労用食品組成物。
項5.フルボ酸を有効成分とする筋肉増強用食品組成物。
項6.フルボ酸を有効成分とするミトコンドリア活性化剤。
項7.フルボ酸を有効成分とするミトコンドリア活性化用組成物。
項8.フルボ酸の有効量を哺乳動物に投与する工程を含む、生活習慣病の改善又は予防方法、肝機能改善方法、疲労改善方法、筋肉増強方法、又はミトコンドリア活性化方法。
項9.生活習慣病の改善又は予防用食品組成物、肝機能改善用食品組成物、抗疲労用食品組成物、筋肉増強用食品組成物、又はミトコンドリア活性化剤の製造におけるフルボ酸の使用。
項10.生活習慣病の改善又は予防剤、肝機能改善剤、抗疲労剤、筋肉増強剤、又はミトコンドリア活性化剤としてのフルボ酸の使用。
項11.前記生活習慣病が、糖尿病、インスリン抵抗性、脂質異常症、肥満、脂肪肝、ロコモティブシンドローム、サルコペニア、及びカヘキシアからなる群から選択される少なくとも1種である、項8に記載の方法、項9に記載の使用、又は項10に記載の使用。
【発明の効果】
【0012】
フルボ酸は、顕著に優れた生活習慣病の改善又は予防作用、肝機能改善作用、抗疲労作用、筋肉増強作用、及びミトコンドリア活性化作用を有するので、生活習慣病の改善又は予防用食品組成物、肝機能改善用食品組成物、抗疲労用食品組成物、筋肉増強用食品組成物、及びミトコンドリア活性化剤の有効成分として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ヒューミクルの筋肉細胞の糖取り込み促進作用を示すグラフである。GLUT阻害剤10μM(GLUT-I)、0.1%ヒューミクル、1μMインスリン。データは平均±S.E.M.を示す。n=6
図2】免疫組織化学によりヒューミクルの筋肉分化促進作用を示す写真である。
図3】ヒューミクルの筋肉細胞分化マーカーに及ぼす影響を示すグラフである。データは平均±S.E.M.を示す。n=6
図4】ヒューミクルのATP消費促進作用の経時変化(上)と用量反応(下)を示すグラフである。データは平均±S.E.M.を示す。n=6
図5】ヒューミクルによるミトコンドリア膜電位の変化を示す写真である。(A)コントロール、(B)ヒューミクル0.1%、(C)アクチノマイシン10μM
図6】ヒューミクルによるミトコンドリア膜電位亢進作用を示す図である。(左)ビヒクル、(右)ヒューミクル
図7】ヒューミクルのマウスへの投与後30~60分後の運動量を示すグラフである。*P<0.05, vs. vehicle, N.S.; not significant, n=6
図8】マウスへの高脂肪食投与時におけるヒューミクルによる体重減少効果を示すグラフである。ND: normal diet (CRF-1;オリエンタル酵母工業(株))、HFD: high fat diet (HFD-32; 日本クレア(株))、HFD+Humicle (HFD-32に混餌)を与えた。データは平均±S.E.M.を示す。n=5
図9】マウスへの高脂肪食投与時におけるヒューミクルの血液マーカーに及ぼす影響を示すグラフである。HFD (白カラム)、HFD+Humicle (黒カラム)、データは平均±S.E.M.を示す。*P<0.05, **P<0.001, n=5
図10】マウスへの高脂肪食投与時における剖検所見(A、C)及び病理解析の結果(B、D)を示す写真である(6週間投与)。(A、B)肝臓、(C、D)精巣上体、スケールバー:50μm
図11】脂肪細胞直径(ピクセル)を示すグラフである。データは平均±S.E.M.を示す。
図12】マウスへの高脂肪食6週間投与後、糖負荷試験を行った結果を示すグラフである。データは平均±S.E.M.を示す。n=5
図13】マウス筋組織におけるATP/ADP比アッセイの結果(A)並びに筋ホモジネートタンパク質当たりのATP及びADP量(B)を示すグラフである。*P<0.05, vs. HFD group, n=4
図14】フルボ酸のATP消費促進作用の用量反応を示すグラフである。暴露30分後のデータ。データは平均±S.E.M.を示す。n=8
図15】フルボ酸のFlux Analyzerによる分析結果を示す図である。n=7
図16】フルボ酸のFlux Analyzerによる分析結果を示す図である。左のバーはビヒクル、中央のバーはフルボ酸、右のバーはヒューミクルを示す。**P<0.001 vs vehicle control, n=7
図17】ヒューミクルと標準物質の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図18】ヒューミクルと標準物質の三次元蛍光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
なお、本明細書において「含む(comprise)」とは、「本質的にからなる(essentially consist of)」という意味と、「のみからなる(consist of)」という意味をも包含する。
【0016】
本発明の生活習慣病の改善又は予防用食品組成物、肝機能改善用食品組成物、抗疲労用食品組成物、筋肉増強用食品組成物、及びミトコンドリア活性化剤は、フルボ酸を有効成分とすることを特徴とする。
【0017】
フルボ酸は、腐植に含まれる物質のうち、アルカリ及び酸に可溶な無定形高分子有機酸である。フルボ酸の原料となる腐植としては、産地、状態などは特に制限されず、いずれの腐植も使用することができる。
【0018】
そのような腐植としては、例えば、米国ユタ州エメリー郡にある古代植物堆積層(頁岩層)から得られるヒューミックシェール(humic shale)が挙げられる。ヒューミックシェールは、約7000~1億2700万年前の多くの栄養素が含まれた肥沃な土壌が石油及び石炭に変性することなく、有機物として残存したものである。前記時代に生息した植物が、氷河期に入ると地下に埋没し、バクテリア等の微生物によってピートモスに変化し、その上に新しい有機物が積み重なって、再度、バクテリア等で分解され、時間の経過とともに堆積層を形成したものである。形成された堆積層に含まれる腐植には、フルボ酸、フミン酸といった有機高分子重合体からなる物質を主成分とし、70種以上の微量のミネラルを含有する。
【0019】
腐植からフルボ酸を抽出する方法としては、特に制限されず、各種公知の方法を使用することができる。抽出手段としては、例えば、固液抽出、液液抽出、浸漬、浸出、煎出、環流抽出、超臨界流体抽出、マイクロ波抽出、混合攪拌等が挙げられる。抽出手段は1種単独又は2種以上を組み合わせて行うことができる。
【0020】
腐植と抽出溶媒とを混合することによりフルボ酸を抽出する場合は、抽出溶媒としては、例えば、水(例えば、蒸留水、イオン交換水、逆浸透圧水など)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなど)、これらの混合液などが挙げられる。当該抽出操作における抽出時間、抽出温度、抽出溶媒のpHなどは、抽出効率などを考慮して適宜設定することができる。
【0021】
腐植の抽出物は、不要物除去及び除菌のために、ろ過を行ってもよい。ろ過の手段は、特に制限されず、常法により行うことができる。
【0022】
腐植の抽出物は、フルボ酸を単離又は精製する処理を更に行うことができる。そのような単離又は精製処理としては、例えば、濃縮、減圧濃縮、蒸留、分留、転溶、溶媒抽出、結晶化、再結晶、クロマトグラフィーなどが挙げられる。これらの方法は1種単独又は2種以上を組み合わせて行うことができる。
【0023】
フルボ酸としては、単離又は精製された状態でないもの(粗抽出物など)、及び単離精製されたもののいずれも使用することができる。
【0024】
また、フルボ酸は、フリーの状態又は塩の状態で使用することができる。フルボ酸の塩としては、例えば、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム等の無機塩;メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン等の有機塩基との塩;リジン、オルニチン、アルギニン等の塩基性アミノ酸との塩及びアンモニウム塩が挙げられる。当該塩は、酸付加塩であってもよく、かかる塩としては、具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、コハク酸、乳酸、マレイン酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の有機酸;アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸との酸付加塩が挙げられる。フルボ酸には、水和物、溶媒和、ミネラル類がキレートされたものなども含まれる。
【0025】
フルボ酸の形態としては、特に制限されず、例えば、粉末状、顆粒状、固形状、溶液状、懸濁液状、乳濁液状、濃縮液状、スラリー状などが挙げられる。
【0026】
フルボ酸は、自家調製品、又は市販品のいずれも使用できる。フルボ酸の市販品としては、例えば、株式会社スタイルアンドバリュージャパンより販売されている「ヒューミクル(商標)HCフルボ酸パウダー」などが挙げられる。当該ヒューミクルに含まれるフルボ酸は、FT-IR法における赤外線吸収スペクトルにおいて波数3362、2875、1675、1559、1360、1200、1047及び835 cm-1に赤外線吸収ピークを有する(特許第6120342号公報参照)。
【0027】
本発明のミトコンドリア活性化剤は、食品組成物の意味も包含するものである。
【0028】
食品組成物としては哺乳動物(ヒトを含む)が摂取できるあらゆる飲食品が含まれ、例えば、乳製品;発酵食品(ヨーグルト、チーズ等);飲料類(コーヒー、ジュース、ココア、茶飲料、スポーツドリンク、栄養ドリンクのような清涼飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、乳酸菌入り飲料、ヨーグルト飲料、炭酸飲料、日本酒、洋酒、果実酒のような酒等);スプレッド類(カスタードクリーム等);ペースト類(フルーツペースト等);洋菓子類(チョコレート、ドーナツ、パイ、シュークリーム、ガム、グミ、ゼリー、キャンデー、クッキー、ケーキ、プリン、ビスケット等);氷菓類(アイスクリーム、アイスキャンデー、シャーベット等);食品類(カレー、牛丼、雑炊、味噌汁、スープ、ミートソース、パスタ、漬物、ジャム、ハム、ソーセージ、ベーコン等);調味料類(ドレッシング、ふりかけ、旨味調味料、スープの素、味噌、醤油、ソース、ケチャップ、オイスターソース等)などが挙げられる。
【0029】
食品組成物の製法も特に限定されず、適宜公知の方法に従うことができる。
【0030】
食品組成物としては、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、保健用食品、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品なども挙げられる。サプリメントとして使用する際の投与単位形態については特に限定されず適宜選択できるが、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、液剤、散剤等が挙げられる。
【0031】
また、食品組成物としては、生活習慣病の改善又は予防作用、肝機能改善作用、抗疲労作用、筋肉増強作用、及びミトコンドリア活性化作用を付与する添加剤についての意味も包含するものである。
【0032】
食品組成物には、必要に応じて、賦形剤、ビタミン類、ミネラル類、フラボノイド類、キノン類、ポリフェノール類、アミノ酸、核酸、必須脂肪酸、清涼剤、結合剤、甘味料、崩壊剤、滑沢剤、着色料、香料、安定化剤、防腐剤、徐放調整剤、界面活性剤、光沢剤、溶解剤、湿潤剤等を配合することができる。
【0033】
食品組成物に含まれるフルボ酸の割合は、例えば、0.01~99質量%、1~80質量%、10~70質量%などが挙げられる。
【0034】
食品組成物の摂取量は、摂取者の体重、年齢、性別、症状などの種々の条件に応じて適宜設定することができる。
【0035】
後述する試験例で示すように、本発明者らは、フルボ酸が、抹消組織への糖の取り込みを促進し、筋肉分化に効果を有し、ミトコンドリア膜電位を保護し且つATP消費系を活性化することを見出した。すなわち、抹消組織への糖の取り込みを促進することから糖尿病に対する改善又は予防効果が期待できる。また、筋肉分化に効果を有することから、筋肉増強作用、及びサルコペニア、ロコモティブシンドローム等に対する改善又は予防作用が期待できる。ミトコンドリア膜電位を保護し且つATP消費系を活性化することから、ミトコンドリア老化を改善し疲労回復作用が期待できる。
【0036】
その上、マウスにフルボ酸を経口摂取させることで、高脂肪食による体重増加を抑制することを見出したことから、生活習慣病に対する改善又は予防作用が期待できる。また、マウスの糖負荷試験では、フルボ酸摂取により血糖値の低下が観察されたことから、インスリン抵抗性に対する効果が期待できる。さらに、マウスの肝機能及び脂質代謝に関わる血液検査結果から、フルボ酸による肝機能及び脂質代謝の改善が観察された。さらに、フルボ酸は、食欲を活性化させ、筋組織の代謝も亢進させているので(ATP/ADP比)、カヘキシアに対する改善又は予防作用が期待できる。また、ミトコンドリアの機能を亢進することから、ミトコンドリアの活性化作用が期待できる。
【0037】
そのため、フルボ酸は、顕著に優れた生活習慣病の改善又は予防作用、肝機能改善作用、抗疲労作用、筋肉増強作用、及びミトコンドリア活性化作用を有するので、生活習慣病の改善又は予防用食品組成物、肝機能改善用食品組成物、抗疲労用食品組成物、筋肉増強用食品組成物、及びミトコンドリア活性化剤の有効成分として好適に使用することができる。
【0038】
ここで、生活習慣病としては、特に制限されず、例えば、糖尿病、インスリン抵抗性、脂質異常症、高血圧、肥満、脂肪肝、ロコモティブシンドローム、サルコペニア、カヘキシア(cachexia)(悪液質)などが挙げられる。
【0039】
本明細書において、筋肉増強とは、筋肉量を増加すること、筋肉量の低減を抑制(防止)すること、低減した筋肉量を回復すること等を含む意味である。
【0040】
また、フルボ酸は、天然由来成分であるので、安全性が高い。
【実施例
【0041】
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
【0042】
動物
特に記載が無い限りC57BL/6N雄マウスを以下の実験で使用した。8週齢のC57BL/6N雄マウスは清水実験材料株式会社(Kyoto, Japan)より購入した。
【0043】
試験例1:インビトロ試験(ヒューミクルの筋肉細胞の糖取り込み促進作用)
C2C12細胞を常法に従って、分化させた。グルコースを含まない培地に置き換え、GLUT阻害剤存在下又は非存在下30分処置後、0.1%ヒューミクル又はインスリンにより刺激した。グルコース取り込みは、Glucose Uptake-Glo (商標) Assay (Promega, Madison, WI)を用いて、ルミネセンス活性を測定した。
【0044】
結果を図1に示す。図1から、インスリンによって、糖取り込みが促進されたが、0.1%ヒューミクルによりインスリンよりも強力に糖取り込みが促進されたことが分かる。また、その作用は一部グルコーストランスポーターを介したものであることが、GLUT-Iによる阻害試験からわかった。
【0045】
試験例2:インビトロ試験(ヒューミクルの筋肉分化促進作用)
C2C12細胞を常法に従って、分化させた。0.1%ヒューミクルにより刺激し、MHC (Myosin heavy chain)抗体(mouse monoclonal MF20 antibody (Developmental Hybridoma Bank, Iowa City, IA))による染色を行った。
【0046】
結果を図2に示す。図2から、0.1%ヒューミクルによりMHC抗体陽性反応は明確に誘導されたことが分かる。すなわち、0.1%ヒューミクルにより筋肉分化が促進された。
【0047】
マウス横紋筋由来細胞C2C12を6ウェルプレートに播種し、ヒューミクルを終濃度0.1%とし、5日間、培養を分化培地で行った。培地交換は隔日に行った。常法によりtotal RNAを調製し、qPCR解析を行った。
【0048】
結果を図3に示す。図3から、0.1%ヒューミクルが、初期分化マーカーの発現を抑制し、後期分化マーカーであるMCK (マッスルクレアチンキナーゼ)を誘導したことが分かる。
【0049】
試験例3:インビトロ試験(ヒューミクルのATP消費促進作用)
マウス横紋筋由来細胞C2C12を96ウェルプレートに1.25×104 cells/wellの細胞数で播種し、ヒューミクルを終濃度0.1%とし、経時的に細胞内ATP含量を測定した。図4に示した時間で細胞を可溶化し、ENLITEN (商標) ATP Assay System (Promega, Madison, WI)を用いて20/20n Luminometer (Turner BioSystems, Sunnyvale, CA)により測定した。また、ヒューミクルの6時間後の濃度依存的ATP消費亢進作用についても測定した。
【0050】
結果を図4に示す。図4から、0.1%ヒューミクルによりATP消費系が駆動することが分かる。データには示していないが、各濃度のヒューミクルにより細胞毒性は示さなかった。
【0051】
試験例4:インビトロ試験(ヒューミクルのミトコンドリアの膜電位亢進作用)
C2C12細胞を48ウェルプレートに1×105 cells/wellの細胞数で播種し、ヒューミクルを終濃度0.1%とし、24時間後のミトコンドリア膜電位について、JC-1色素を用いて観察した。
【0052】
結果を図5に示す。図5から、0.1%ヒューミクルがミトコンドリア膜電位に24時間後には影響を与えないこと、抗がん剤であるアクチノマイシンによっては影響があったことが分かる。
【0053】
C2C12細胞を播種し、ヒューミクルを終濃度0.1%とし、48時間後のミトコンドリア膜電位について、Muse (商標) Mitopotential Assay Kit (EMD Millipore Corp., Darmstadt, Germany)を用いて測定した。
【0054】
結果を図6に示す。図6から、0.1%ヒューミクルによりミトコンドリア膜電位が亢進したことが分かる。
【0055】
試験例5:インビボ試験(ヒューミクルの経口摂取によるマウスの行動変化)
直径20 cmの円筒内のマウスをカメラで行動スキャンした(Smart3.0システム, Bioresearch Center, Aichi, Japan)。PBS 200μL (Vehicle), ヒューミクル100 mg/200μLをddY、及び副腎を摘出したADX ddYに経口摂取させ、90分間の行動を観察した。最も行動量の差が見られた30~60分の時間区分で自発運動量を比べた。
【0056】
結果を図7に示す。図7から、0.1%ヒューミクルによりATP消費系が駆動する、また、交換神経系を活性化する可能性が極めて高いことが分かる。交感神経系が活性化すると、腸の蠕動運動が低下するため、排便は抑制される。これらの検討の間、排便は、ヒューミクル投与群において減少傾向が見られた。
【0057】
試験例6:インビボ試験(ヒューミクルの経口摂取によるマウスへの影響)
マウスに、Normal diet: ND、High fat diet: HFD及びHFDと2%ヒューミクルの混合飼料を投与し、体重を経時的に測定した。
【0058】
結果を図8に示す。図8から、HFD (高脂肪食)に2%ヒューミクルを配合することにより体重増加を抑制したことが分かる。図には示さないが、餌の摂取量は、2%ヒューミクルとの混合飼料が増加傾向を示した。そのため、体重変化は、ヒューミクルを混餌したことによる摂取量低下に起因するものではないことが分かった。むしろ約2倍の摂取量があり、摂取量が増加しても体重減少が認められたことから、新陳代謝促進効果がヒューミクルにあることが推察される。
【0059】
HFD、及びHFDと2%ヒューミクルとの混合飼料をマウスに投与し、尾部を切開して採血した。血糖値は、ニプロフリースタイルフリーダムライト(Nipro, Osaka, Japan)を用いて測定した。採血した血液はヘマトクリット管遠心機により、血清を分離した。血漿中インスリン、アディポネクチン濃度はそれぞれ、レビス(商標) インスリン-マウス-T (FUJIFILM Wako Pure Chemical Corporation, Osaka, Japan)、Mouse Adiponectin/Acrp30 Quantikine ELISA Kit (R&D systems, Minneapolis, MN)を用いて測定した。
【0060】
結果を図9に示す。図9から、0.1%ヒューミクルは生体で血糖値の上昇を抑え、膵臓にやさしい効果が見込まれること、脂肪組織の機能を改善したことが分かる。
【0061】
マウスに、ND、HFD及びHFDと2%ヒューミクルの混合飼料を6週間投与した剖検所見を図10に示す。肝臓及び精巣上体組織重量は、HFDにより顕著に増加し、2%ヒューミクルを配合したHFDでは組織重量の増加がHFDに比べて低下した(A及びC)。
【0062】
肝臓及び精巣上体組織を10%(w/v)パラホルムアルデヒドで固定化し、パラフィンブロックに包埋した。このブロックをミクロトーム(Leica Biosystems, Wetzlar, Germany)で薄片にした。切片(5μm厚)はヘマトトキシン及びエオジンで染色し、光学顕微鏡で観察した。結果を図10のB及びDに示す。肝臓及び精巣上体組織の脂肪細胞径のいずれにおいても、HFDにより増加していたが、2%ヒューミクルを配合したHFDでは減少していた。
【0063】
精巣上体組織の脂肪組織HE染色データを、顕微鏡用イメージングソフトウェアcellSens (オリンパス株式会社)を用いて測定した。各グループ5匹から別々に組織サンプルを得て、6断面(6切片)を染色した。5視野において1視野あたり30細胞を計測した。結果を図11に示す。脂肪細胞径は、HFDにより増加していたが、2%ヒューミクルを配合したHFDでは減少していた。
【0064】
試験例7:インビボ試験(マウスの糖負荷試験)
マウスに糖負荷試験(OGTT: oral glucose tolerance test)を行った結果を図12に示す。上述と同様、6週間それぞれの餌を給餌し、300 mg/mlグルコースを100μl経口投与することにより行い、継時的に上述の血糖値測定を行った。その結果、最高血糖値は、0.1%ヒューミクルにより低下し、また糖負荷60分以降において、血糖値の低下は0.1%ヒューミクルにより改善された。また、II型糖尿病モデルであるKK-Ayマウスにおいても同様の実験を行って、ヒューミクルを経口投与することで、体重減少及び平常時血糖値が低下することを確認した。
【0065】
試験例8:インビボ試験(マウスの肝機能及び脂質代謝にかかわる血液検査)
マウスへの高脂肪食6週間投与時における、マウスの肝機能及び脂質代謝にかかわる血液検査結果を表1に示す。血液は心採血により行い、遠心分離によって血清を得た。
【0066】
【表1】
【0067】
AST、ALT、ALP、LDH、ChE値は、肝機能を示す。ND群に比べ、HFD群で肝機能が悪化したが、HFDへの0.1%ヒューミクルの混餌は、大幅に肝機能を改善することが分かった。中性脂肪(TG)、LDL-C値はND群に比べてHFD群は、大幅に悪化することが分かった。これに対して、HFDへの0.1%ヒューミクルの混餌は、大幅に脂質代謝を改善することが分かった。
【0068】
試験例9:インビボ試験(ATP/ADP比アッセイ)
1 mL PBS中のマウス筋組織ホモジネートを遠心した(4℃、15,000 rpm, 5 min)。5μLの上清について、ADP/ATP Assay kit (Sigma-Aldrich, MO, USA)を用いて20/20n Luminometerによりルミネセンスを測定した。また、96ウェルプレートの1ウェル当たり150μLのworking reagentに15μLの上清を添加した。37℃で15分間インキュベート後、Protein Assay Bicichoninate Kit (Nacalai Tesque, Kyoto, Japan)を用いてModel 680 Microplate Reader (Bio-Rad Laboratories)により570 nmの吸光度を測定した。
【0069】
結果を図13に示す。図13における筋組織中のATP/ADP比から、ヒューミクルは新陳代謝を活性化していることが分かる。
【0070】
試験例10:フルボ酸の効果
試験例3と同様の方法によりフルボ酸の濃度依存的ATP消費亢進作用について測定した。結果を図14に示す。図14から、フルボ酸純品(日本腐植物質学会より提供された)の効果は、概ねヒューミクル(フルボ酸+ミネラル)の効果を再現することが分かる。
【0071】
また、C2C12細胞におけるミトコンドリア機能は、製造業者の説明書に従って、XFe24フラックスアナライザーSeahorse Bioscience (North Billerica、MA)を使用して分析した。簡潔には、C2C12は専用の24ウェルプレート上に30,000 cells/wellの濃度で播種し一晩培養した。また、フルボ酸及びヒューミクルは専用培地に1 mMピルビン酸、2 mMグルタミンを添加した培地(以降、基本培地)に溶解した。ビヒクルは基本培地を示す。アッセイの少なくとも40分前に、培地を基本培地に交換した。プロトン漏出からOCRを評価するために、オリゴマイシン(ATPシンターゼ阻害剤)、FCCP(ミトコンドリア脱共役剤)、及びロテノン/アンチマイシンA(呼吸阻害剤)を用いた連続処理により、酸素消費比(OCR、pmol/分)をリアルタイムでモニターした。結果を図15及び16に示す。図15及び16から、0.01%フルボ酸純品及び0.01%ヒューミクルのいずれも、予備呼吸能(spare respiration capacity)を増強したことが分かる。
【0072】
これらの結果は、フルボ酸及びヒューミクルが、ATPの合成を抑制し、間接的にGLUTを介した糖輸送を刺激するので、ミトコンドリアでの呼吸による好気的代謝経路ではなく、嫌気的代謝経路に導くことを示唆している。このように、フルボ酸及びヒューミクルは弱い脱共役剤として働き、ミトコンドリアバイオジェネシスを増加させると考えられる。結果として、インビボでのATP/ADP比のデータに表されていたように、強い新陳代謝が観察されることになる。
【0073】
試験例11:ヒューミクルの分析結果
(試料調製)
試料の作製方法:試料を攪拌し分析に供した。250 mL広口瓶に少量のヒューミクルパウダー(以下、試料)と少量の精製水を加え、よくかき混ぜ溶解させた。更に試料と精製水を少量ずつ加え、よくかき混ぜ溶解させた。これを繰り返し60%(60 g/100 mL)溶液とした後、回転子を入れ、マグネティックスターラーで、20℃で24時間撹拌した。24時間撹拌後の溶液を遠沈管に移し入れ、遠心分離(2500rpm×10分:2回)をし、得られた上澄み液を分取し、これを試験溶液として分析に供した。
【0074】
フルボ酸分画:アルカリ性可溶分を作製するために、60%溶液について、水酸化ナトリウムを入れ、0.1M-NaOH溶液相当とした(このとき、60%溶液は5 mLを用いた)。グラスファイバーろ紙を用いて沈殿物を除去し、ろ液をアルカリ性可溶分とした。酸性不溶分を除去(フルボ酸分画の作製)するために、アルカリ性可溶分に塩酸を加えpH=2として約12時間静置し、グラスファイバーろ紙を用いて酸性不溶分を除去した。得られたろ液をフルボ酸分画として分析に供した。
【0075】
赤外吸光(FT-IR):フーリエ変換-赤外分光光度計法:試料を105℃で2時間(液体試料では乾燥するまで)乾燥し、重量法で分析した。乾燥後の試料を600℃で2時間強熱し、重量法で分析した。精製したSupelco社製DAX-8樹脂を用いて、4%溶液中の樹脂吸着性有機物を吸着し、その後、アルカリ性溶液で脱着後、イオン交換樹脂で不要な塩類を取り除いたものを分析試料とし、FT-IR法にて赤外吸収スペクトルを取得した。
【0076】
フルボ酸(三次元分光蛍光光度法)試料を測定セルに入れ、三次元励起-蛍光スペクトルを取得し、腐植物質が蛍光を示す波長全域の蛍光強度の総和を元に定量を行った。なお、蛍光特性の標準物質として段戸フルボ酸(日本腐植物質学会頒布)を用いたため、得られた値は段戸フルボ酸の蛍光特性に対して規格化された値である。また、10μg/L硫酸キニーネの励起波長345 nm、蛍光波長455 nmの蛍光強度を10QSUとして相対蛍光強度(QSU)を算出し、上述波長範囲の蛍光強度の総和及びピークトップから、試料の相対蛍光強度(QSU)を計算した。
【0077】
(結果)
光学的特性に関わる注釈:分析方法に記載したとおり、蛍光特性の標準物質として段戸フルボ酸(日本腐植物質学会頒布)を用いた時の定量値であった。したがって、異なる産地のフルボ酸を標準として用いた場合は、分子構造の違いに由来する光学的特性(蛍光特性)の違いによって、定量値が異なることがある。
【0078】
結果を図17及び18に示す。また、表2及び3に相対蛍光強度(QSU)を示した。励起波長260 nm、蛍光波長440 nm付近にピークトップが見られた。赤外吸収スペクトル(FT-IR)では、フルボ酸に特有の各種官能基が確認され(図17)、三次元蛍光スペクトルでは、フルボ酸に特有の波長域に自家蛍光を示していた(図18)。このことから、本試料に含まれる有機物は、フルボ酸であると考えられる。また、赤外吸収スペクトルの文献値の比較において、日本腐植物質学会が頒布する段戸フルボ酸よりカルボキシル基が少なく芳香族が多い傾向が見られた。
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
統計解析
2群間の統計的差異は、スチューデントのt検定を用いて解析した。P値が0.05未満の場合に有意差ありと判断した。
図1
図2
図3
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図7
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図10
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