(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】噴霧凍結造粒乾燥粉体製造装置及び噴霧凍結造粒乾燥粉体製造システム
(51)【国際特許分類】
F26B 5/06 20060101AFI20220311BHJP
【FI】
F26B5/06
(21)【出願番号】P 2020505974
(86)(22)【出願日】2018-03-13
(86)【国際出願番号】 JP2018009652
(87)【国際公開番号】W WO2019175954
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】512313920
【氏名又は名称】株式会社プリス
(74)【代理人】
【識別番号】100110434
【氏名又は名称】佐藤 勝
(72)【発明者】
【氏名】川口 晋也
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-314956(JP,A)
【文献】特開2014-081093(JP,A)
【文献】特表2017-503641(JP,A)
【文献】特表2014-530061(JP,A)
【文献】特表2014-529055(JP,A)
【文献】実開平03-007937(JP,U)
【文献】米国特許第05208998(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に供給される原液を冷却することにより凍結造粒用チャンバ内で凍結造粒体を生成し、生成した前記凍結造粒体を凍結乾燥して乾燥粉体を製造する噴霧凍結造粒乾燥粉体製造装置であって、
凍結防止手段を有し、前記凍結造粒用チャンバ内に対して前記原液を噴霧する噴霧機構部と、
前記凍結造粒用チャンバ下部において脱着自在に構成され、前記凍結造粒用チャンバ内で生成した前記凍結造粒体を貯留する貯留容器を有し、当該貯留容器に貯留した前記凍結造粒体を凍結乾燥する凍結乾燥部とを備え、
前記凍結造粒用チャンバは、冷却媒体を直接チャンバ内に導入して冷却する直接冷却、前記凍結造粒用チャンバの周囲に設けられたジャケット構造体に前記冷却媒体を充填することで冷却する間接冷却の何れか又はこれらの組み合わせによって冷却され
、
前記ジャケット構造体には充填された前記冷却媒体が蒸発した蒸発ガスをチャンバ内に直接導入する蒸発ガス導入配管が設けられること
を特徴とする噴霧凍結造粒乾燥粉体製造装置。
【請求項2】
前記貯留容器は、容器長手方向軸に対し所定の角度で揺動可能となるように形成されること
を特徴とする請求項1に記載の噴霧凍結造粒乾燥粉体製造装置。
【請求項3】
前記貯留容器は、容器長手方向軸に対し回動可能となるように形成されること
を特徴とする請求項1に記載の噴霧凍結造粒乾燥粉体製造装置。
【請求項4】
前記貯留容器は、前記凍結造粒体を静置する底浅形状として形成されること
を特徴とする請求項1に記載の噴霧凍結造粒乾燥粉体製造装置。
【請求項5】
前記貯留容器は、貯留した前記凍結造粒体を攪拌する攪拌部材を備えること
を特徴とする請求項1に記載の噴霧凍結造粒乾燥粉体製造装置。
【請求項6】
前記噴霧機構部は、二流体ノズル、一流体加圧ノズル、超音波ノズル、遠心噴霧機の何れかの噴霧機構を備えること
を特徴とする請求項1に記載の噴霧凍結造粒乾燥粉体製造装置。
【請求項7】
前記凍結防止手段は、前記噴霧機構の原液吐出部近傍に常温又は加温の凍結防止ガスを供給する凍結防止ガス供給部を備えること
を特徴とする請求項6に記載の噴霧凍結造粒乾燥粉体製造装置。
【請求項8】
前記冷却媒体は、液体窒素、窒素ガス、液体アルゴン、アルゴンガス、液体ヘリウム、ヘリウムガス、ドライアイス、二酸化炭素ガス、又は大気を冷却した冷却ガスの何れかであること
を特徴とする請求項1に記載の噴霧凍結造粒乾燥粉体製造装置。
【請求項9】
前記ジャケット構造体は断熱構造を備えること
を特徴とする請求項1に記載の噴霧凍結造粒乾燥粉体製造装置。
【請求項10】
連続的に供給される原液を冷却することにより凍結造粒用チャンバ内で凍結造粒体を生成し、生成した前記凍結造粒体を凍結乾燥して乾燥粉体を製造する噴霧凍結造粒乾燥粉体製造装置であって、
凍結防止手段を有し、前記凍結造粒用チャンバ内に対して前記原液を噴霧する噴霧機構部と、
前記凍結造粒用チャンバ下部において脱着自在に構成され、前記凍結造粒用チャンバ内で生成した前記凍結造粒体を貯留する貯留容器を有し、当該貯留容器に貯留した前記凍結造粒体を凍結乾燥する凍結乾燥部とを備え、
前記凍結造粒用チャンバは、冷却媒体を直接チャンバ内に導入して冷却する直接冷却、前記凍結造粒用チャンバの周囲に設けられたジャケット構造体に前記冷却媒体を充填することで冷却する間接冷却の何れか又はこれらの組み合わせによって冷却され
、
前記ジャケット構造体内の前記冷却媒体残量を検知する媒体残量検知手段を備えること
を特徴とする噴霧凍結造粒乾燥粉体製造装置。
【請求項11】
前記媒体残量検知手段による検知結果に基づき前記ジャケット構造体内に前記冷却媒体を補充する冷却媒体補充手段を備えること
を特徴とする請求項10に記載の噴霧凍結造粒乾燥粉体製造装置。
【請求項12】
冷却媒体が導入された凍結造粒用チャンバ内において、連続的に供給される原液から凍結造粒体を生成させ、生成した前記凍結造粒体を凍結乾燥して乾燥粉体を製造する噴霧凍結乾燥粉体製造システムであって、
凍結防止手段を有し、前記凍結造粒用チャンバ内に対して前記原液を噴霧する噴霧機構部と、
前記凍結造粒用チャンバ下部において脱着自在に構成され、前記凍結造粒用チャンバ内で生成した前記凍結造粒体を貯留する貯留容器を有し、当該貯留容器に貯留した前記凍結造粒体を凍結乾燥する凍結乾燥部と、
前記冷却媒体の排気に伴い移動する前記凍結造粒体を捕集する捕集手段とを備え
、
前記冷却媒体は冷却ガスであり、前記凍結造粒用チャンバは、冷却ガスを直接チャンバ内に導入して冷却することを特徴とする噴霧凍結乾燥粉体製造システム。
【請求項13】
前記捕集手段は、サイクロン型集塵装置及び/又はバグフィルタ型集塵装置を含むこと
を特徴とする請求項12に記載の噴霧凍結乾燥粉体製造システム。
【請求項14】
前記冷却ガスは、チラーにて冷やした熱交換器に常温ガスを通過させて生成されることを特徴とする請求項12に記載の噴霧凍結乾燥粉体製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧した原液を急速冷却することにより凍結造粒体を生成し、生成した凍結造粒体を凍結乾燥することで乾燥粉体を製造する噴霧凍結造粒乾燥粉体製造装置及び噴霧凍結造粒乾燥粉体製造システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品、農薬、化学薬品、金属材料、工業用材料等の製造分野において、球形で流動性に優れた顆粒体の製造が可能である、熱に弱い物質の乾燥が可能である、低密度でソフトな顆粒体の製造が可能であるといった利点から、スラリー・溶液等の原液を噴霧し、これを急速冷却することにより凍結造粒体を生成し、生成した凍結造粒体を凍結乾燥することで乾燥粉体を得ることができる凍結造粒乾燥法が好んで用いられている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、凍結造粒乾燥法並びに大まかな装置構成について記載がなされており、一連の処理を通してセラミックス乾燥粉体が得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】K.Rundgren etc. 「Improving Powders With Freeze Granulation」 Ceramic Industry Magazine、2003年4月、p40-44.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1で開示されている凍結造粒乾燥装置は、
図12に示すように、原液と圧縮ガスとを混合し、ノズルを介して-196℃に維持された液体窒素内に噴霧することで凍結造粒体を生成するものである。生成した凍結造粒体は、予め冷却されたバット等の回収容器に別途回収された後、凍結乾燥機にて乾燥がなされる。
【0006】
しかしながら、
図12に示された従来技術では、液体窒素の蒸発が激しく定期的に液体窒素を補充する必要がある、ノズル吐出口につらら状の凍結固形物が付着することでノズル閉塞の危険性がある、液体窒素内の凍結造粒体の量が多くなるとマグネットスターラーの撹拌子による攪拌に不具合が生じ、頻繁に凍結造粒体を回収する必要があるといった問題があった。そして、これらの処理は全て手動で行う必要があり、また処理中には原液の供給を停止しなければならず、連続運転による大量生産が難しいといった問題もあった。さらに、液体窒素内から回収した凍結造粒体は手作業で予め冷却した回収容器に薄く敷いた状態で凍結乾燥機に供する必要があり、この作業が迅速に完了されないと、凍結造粒体の溶解が始まり、品質低下の要因ともなっていた。
【0007】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、手動による工程を極力省き、連続運転、長時間運転による乾燥粉体の大量生産が可能な噴霧凍結造粒乾燥粉体製造装置及び噴霧凍結造粒乾燥粉体製造システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る噴霧凍結造粒乾燥粉体製造装置は、連続的に供給される原液を冷却することにより凍結造粒用チャンバ内で凍結造粒体を生成し、生成した凍結造粒体を凍結乾燥して乾燥粉体を製造する噴霧凍結造粒乾粉体製造装置であって、凍結防止手段を有し、凍結造粒用チャンバ内に対して原液を噴霧する噴霧機構部と、凍結造粒用チャンバ下部において脱着自在に構成され、凍結造粒用チャンバ内で生成した凍結造粒体を貯留する貯留容器を有し、当該貯留容器に貯留した凍結造粒体を凍結乾燥する凍結乾燥部とを備え、凍結造粒用チャンバは、冷却媒体を直接チャンバ内に導入して冷却する直接冷却、凍結造粒用チャンバの周囲に設けられたジャケット構造体に冷却媒体を充填することで冷却する間接冷却の何れか又はこれらの組み合わせによって冷却され、前記ジャケット構造体には充填された前記冷却媒体が蒸発した蒸発ガスをチャンバ内に直接導入する蒸発ガス導入配管が設けられることを特徴としている。
【0009】
ジャケット構造体には充填された冷却媒体が蒸発した蒸発ガスをチャンバ内に直接導入する蒸発ガス投入配管を設けることで、原液が噴霧されている間、蒸発防止ガス配管から噴射された、例えば、空気等の常温ガスにより、つらら状の凍結固形物の発生・付着を抑制し、吐出部における閉塞を防ぐことができる。
【0010】
なお、凍結造粒用チャンバ内で生成した凍結造粒体を貯留する貯留容器は、容器長手方向軸に対し所定の角度で揺動可能となるように形成されてもよく、容器長手方向軸に対し回転可能となるように形成されてもよい。
【0011】
また、貯留容器は、凍結造粒体を静置可能な底浅形状として形成してもよく、貯留した凍結造粒体を攪拌する攪拌部材を具備してもかまわない。
【0012】
噴霧機構部は、二流体ノズル、一流体加圧ノズル、超音波ノズル、遠心噴霧機の何れかの噴霧機構を備えることができ、凍結防止手段として、噴霧機構の原液吐出部近傍に常温又は加温の凍結防止ガスを供給する凍結防止ガス供給部を設けるのが好ましい。
【0013】
ところで、冷却媒体としては、液体窒素、液体窒素を蒸発させた窒素ガス、液体アルゴン、液体アルゴンを蒸発させたアルゴンガス、ドライアイス、二酸化炭素ガス、直膨式又はチラー式により大気を冷却した冷却ガスを用いることができる。さらに、ジャケット構造体内の冷却媒体残量を検知する媒体残量検知手段を設けるとともに、媒体残量検知手段による検知結果に基づきジャケット構造体内に冷却媒体を補充する冷却媒体補充手段を設けてもよい。なお、ジャケット構造体は断熱構造を備える構成としてもかまわない。
【0014】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る噴霧凍結造粒乾燥粉体製造システムは、冷却媒体が導入された凍結造粒用チャンバ内において、連続的に供給される原液から凍結造粒体を生成させ、生成した凍結造粒体を凍結乾燥して乾燥粉体を製造する噴霧凍結乾燥粉体製造システムであって、凍結防止手段を有し、凍結造粒用チャンバ内に対して原液を噴霧する噴霧機構部と、凍結造粒用チャンバ下部において脱着自在に構成され、凍結造粒用チャンバ内で生成した凍結造粒体を貯留する貯留容器を有し、当該貯留容器に貯留した凍結造粒体を凍結乾燥する凍結乾燥部と、冷却媒体の排気に伴い移動する凍結造粒体を捕集する捕集手段とを備え、前記冷却媒体は冷却ガスであり、前記凍結造粒用チャンバは、冷却ガスを直接チャンバ内に導入して冷却することを特徴としている。
【0015】
この場合、捕集手段は、サイクロン型集塵装置及び/又はバグフィルタ型集塵装置を含めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、手動による工程を極力省き、連続運転、長時間運転による乾燥粉体の大量生産が可能な噴霧凍結造粒乾燥粉体製造装置及び噴霧凍結造粒乾燥粉体製造システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】噴霧凍結造粒乾燥粉体製造装置100の装置構成を説明する装置外観図である。
【
図2】噴霧機構部10及び凍結造粒チャンバ30の内部構成を概略的に説明する模式図である。
【
図3】噴霧機構部10が備える噴霧機構の他の一例である遠心噴霧機400の構成を説明する概略図である。
【
図4】凍結乾燥部50の構成を説明する正面図である。
【
図5】
図4において矢印z軸方向から見た凍結乾燥部50の構成を説明する上面図である。
【
図6】
図4において矢印y軸方向から見た凍結乾燥部50の構成を説明する側面図である。
【
図11】噴霧凍結造粒乾燥粉体製造システム700の構成例の一例を説明するシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨に逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0019】
図1(a)は、本発明に係る実施形態の好適な一例である噴霧凍結造粒乾燥粉体製造装置100の装置全体構成を説明する装置外観図であり、
図1(b)は、凍結造粒用チャンバ30から凍結乾燥部50を分離した状態を説明する装置外観図である。噴霧凍結造粒乾燥粉体製造装置100は、噴霧機構部10と、支持部材40を介して架台70に支持された凍結造粒用チャンバ30と、凍結乾燥部50とを備える。噴霧機構部10から凍結造粒用チャンバ30内に連続的に供給される原液は、所定の温度に維持された凍結造粒用チャンバ30内において瞬時に凍結し、凍結造粒体を形成する。凍結造粒体は、凍結造粒用チャンバ30内を自然落下し、凍結造粒用チャンバ30下部に着脱自在に設けられた凍結乾燥部50内の貯留容器に貯留される。凍結乾燥部50に一定量の凍結造粒体が貯留されると、オペレータは
図1(b)に示すように、凍結造粒用チャンバ30から凍結乾燥部50を分離し、密閉後、凍結乾燥を行うことで乾燥粉体を得ることができる。このような構成を有する噴霧凍結造粒乾燥粉体装置100について、
図1に加えて
図2、
図3、
図4、
図5、及び
図6を用いて説明する。
図2は、噴霧機構部10及び凍結造粒チャンバ30の内部構成を概略的に説明する模式図であり、
図3は、噴霧機構部10が備える噴霧機構の他の一例である遠心噴霧機400の構成を説明する概略図である。
図4乃至
図6は、凍結乾燥部50の構成を説明する正面図、上面図、及び側面図である。なお、
図2は説明並びに理解を容易とするために、凍結造粒用チャンバ30上部(天面近傍)の密閉構造部分を開状態であるものとして説明する。
【0020】
図2に示すように、本実施形態においては、噴霧機構部10が備える噴霧機構として、二流体ノズルを用いた例について説明するが、本発明に適用可能な噴霧機構はこれに限定されず、例えば、一流体加圧ノズル、超音波ノズル、遠心噴霧機等を用いることができ、乾燥粉体として得られる粒子のサイズ、均一性、又は噴霧する原液の物理・化学特性等の種々の事情を考慮し適宜選択することができる。
【0021】
原液Mを噴霧する吐出部21が凍結造粒チャンバ30側先端部に形成された二流体ノズル本体部11には、原液供給管12及び圧縮ガス供給管15がそれぞれ接続されている。原液供給管12は、原液タンク13に備蓄された原液Mをポンプ14を介して二流体ノズル本体部11に供給するための配管部材であり、圧縮ガス供給管15は、コンプレッサー、ボンベ等を備えた圧縮ガス供給部16からの圧縮ガス(例えば、空気)を二流体ノズル本体部11に供給するための配管部材である。二流体ノズル本体部11は、これらの配管部材から供給された原液Mと圧縮ガスとを混合したのち吐出部21を介して当該原液Mを凍結造粒チャンバ30内に噴霧する。また、圧縮ガス供給部16からの圧縮ガスによるベンチュリー効果により、ポンプ14を介さず原液Mを供給することも可能である。
【0022】
なお、本実施形態に係る噴霧機構部10には、二流体ノズル本体部11の吐出部21に原液Mが凍結することにより生成する凍結固形物が付着するのを防止するための凍結防止手段が設けられている。凍結防止手段は、凍結防止ガス供給部として、ガス吸入フィルタ17、送風ブロワ18、ヒータ22、HEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)19等を介して供給された常温又は加温されたガスを吐出部21近傍に噴射する凍結防止ガス配管20を備える。二流体ノズル本体部11の吐出部21から原液Mが噴霧されている間、凍結防止ガス配管20から噴射された、例えば、空気等の常温ガスAにより、つらら状の凍結固形物の発生・付着を抑制し、吐出部21における閉塞を防ぐことができる。また、送風ブロワ18を用いず、コンプレッサー、ボンベ等の圧力ガスを使用することも可能である。
【0023】
なお、噴霧機構部10が備える噴霧機構として、遠心噴霧機を用いる場合は、
図3で例示するように、モータ部401、回転ディスク部402、原液供給管12等を有する遠心噴霧機400として構成することができる。回転ディスク部402は、回転部として機能する部材であって、モータ部401より与えられる駆動力に応じた回転数で回転し、原液供給管12から供給される原液Mを凍結造粒チャンバ30内部に遠心噴霧する。回転ディスク402としては、例えば、ベル型、ピン型といった種々の形状、構造を有するものを採用することができる。
【0024】
ところで、本発明において、原液Mとしては、食品、医薬品、農薬、化学薬品、金属材料、工業用材料の分野における各種原料を用いることができるが、例えば、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ジルコニア、アルミナ、ムライト、フェライト、フォルステライト、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、ステアタイト、ジルコンといった、所謂、ファインセラミックス原料、ガラス、セメント等のセラミックス原料を用いた場合においても球形で流動性に優れた乾燥粉体を製造することができ、プレス成型前の中間材料に適した乾燥粉体を提供することができる。
【0025】
図2に戻り、二流体ノズル本体部11の吐出部21から噴霧された原液Mは、凍結造粒用チャンバ30内で凍結し、凍結造粒体Gを形成する。凍結造粒用チャンバ30は、ステンレス等の鋼材で形成することができ、中空の略円筒形状に形成された凍結造粒室31を備える。そして、凍結造粒室外壁33から同心円状に外側に向って断熱室34が形成されおり、凍結造粒室外壁33と断熱室内壁35との間は、凍結造粒室31室内を間接冷却する冷却媒体を充填するための冷却媒体充填室37として用いられ、これらはジャケット構造体を形成している。
【0026】
凍結造粒室31は、天面近傍に設けられた二流体ノズル11の吐出部21から噴霧された原液Mから凍結造粒体Gを形成させる場であり、冷却媒体充填室37に充填された冷却媒体又は凍結造粒室31内部に直接導入された冷却媒体の冷却効果により、その室内温度が原液Mを凍結させる凍結温度(大凡-10℃~-190℃、好ましくは-20℃~-150℃)を維持することが可能となるように構成されている。凍結造粒室31の下部には、凍結造粒室31室内で形成された凍結造粒体Gを貯留する凍結乾燥部50との連通が可能となるように開口部32が設けられているとともに、開口部32周辺の外壁部分には、凍結乾燥部50との接続・連通が可能となるように、ヘルール、バンド、クランプ、フランジ等を用いた造粒室側接合部38が形成されている。
【0027】
凍結造粒室外壁33と断熱室内壁35との間に設けられた冷却媒体充填室37には、凍結造粒室31室内を冷却するための冷却媒体が充填される。冷却媒体としては、例えば、液体窒素、窒素ガス、液体アルゴン、アルゴンガス、液体ヘリウム、ヘリウムガス、ドライアイス、二酸化炭素ガス等を用いることができる。また、大気をチラー、冷凍機を介して直膨式又は間接式にて熱交換器を介して冷却した冷却ガスも用いることができる。この場合、チラー、冷凍機、熱交換器等を新規に設置してもかまわない。
【0028】
断熱室34は、断熱室内壁35と断熱室外壁39との間の空間が真空状態に維持された二重構造を有した真空断熱構造として形成されてもよく、冷却媒体充填室37に充填された冷却媒体又は外気からの熱伝達を防ぐことができるように構成されている。なお、断熱室34には、例えば、グラスウール、セルロースファイバー、インショレーションボード、羊毛断熱材、ロックウール、硬質ウレタンフォーム、フェノールフォームといった断熱材、グラスウールを芯材とした真空断熱材の使用又は併用も可能であり、また、断熱効果を高めるための外内壁表面を鏡面仕上げ、銅箔の貼付けといった工夫も可能である。
【0029】
なお、上記ジャケット構造体には、
図2に示すように、冷却媒体充填室37の上部からと凍結造粒室31の下部に連通する蒸発ガス投入配管36を設け、冷却媒体として、液体窒素や液体アルゴンといった液化ガスを使用する場合に、当該液化ガスが蒸発した蒸発ガスを冷却媒体充填室37の上部から直接凍結造粒室31下部に直接導入し、凍結造粒室31内部を直接冷却することも可能である。また、冷却媒体として窒素ガス、アルゴンガス、ドライアイス、二酸化炭素ガス、大気を冷却した冷却ガスを使用する場合、冷却媒体充填室37にこれらのガスを充填することにより凍結造粒室31内部を間接冷却することも可能であるし、凍結造粒室31上部に設けた冷却ガス供給・排気管36’を介して凍結造粒室31内部を直接冷却する形態としてもかまわない。
【0030】
なお、本実施形態においては、冷却媒体充填室37における冷却媒体の残量を検知する媒体残量検知手段80を設けても良い。媒体残量検知手段80は、例えば、冷却媒体が液体である場合には、フロート式、ディスプレーサー式、ガイドパルス式、光学式、超音波、レーザー式といった各種レベルセンサを用いることができ、冷却媒体がガス体である場合には、半導体式、熱線型半導体式、赤外線式、超音波式といった各種濃度センサを用いることができる。そして、これらの検知結果を制御コンピュータ81等の情報処理装置に出力し、管理することで冷却媒体の残量、補充タイミング等を的確に把握することができる。また、制御コンピュータ81を介して接続された図示せぬモニタ等の表示手段や、スピーカー等の報知手段を介してオペレータに対し、冷却媒体の残量、補充タイミングを報知する構成としてもかまわない。
【0031】
さらに、本実施形態においては、冷却媒体の補充用ボンベ82、バルブ83といった冷却媒体補充手段を更に設けてもよい。この場合、バルブ83の開閉をオペレータの手動で行う形態としてもよいし、これらの冷却補充手段をレギュレータ84を介して制御コンピュータ81と接続することで、冷却媒体の残量検知、残量が不足した場合の補充を制御コンピュータ81介して自動的に行う形態とすることも無論可能である。
【0032】
凍結造粒用チャンバ30内で形成された凍結造粒体Gは、当該凍結造粒用チャンバ30に対して着脱自在に設けられた凍結乾燥部50に貯留することになる。凍結乾燥部50に一定量の凍結造粒体Gが貯留されると、オペレータは凍結造粒用チャンバ30から凍結乾燥部50を分離し、密閉後、凍結乾燥を行うことで乾燥粉末を得ることができる。以下に、本実施形態に係る凍結乾燥部50の構成について説明する。
【0033】
なお、凍結乾燥機能を有していない着脱自在な貯留容器を凍結造粒用チャンバ30に接続し、凍結造粒体Gを貯留し、後工程にて、凍結乾燥部50へ移送して乾燥粉末を得ることもできる。その際は、凍結造粒体Gの移送前に後述する凍結乾燥部50の筐体52の媒体注入口63を介して、冷却媒体を空隙部52に導入し、乾燥本体部51を十分に冷却させることが好ましい。また乾燥本体部51内部に直接、液体窒素、ドライアイス等を投入して冷却することも問題ない。
【0034】
図4に示すように、凍結乾燥部50は、図中x軸方向を容器長手方向としたときに、両端部が丸底の略円筒状に形成された貯留容器としての乾燥本体部51と、当該乾燥本体部51の周囲を取り囲むように構成され、乾燥本体部51との間で空隙部53を形成する筐体部52とを備える。
【0035】
乾燥本体部51の上側の胴体部略中央部分には、筐体部52を介して突出するように、略円形の開口部形状を有する乾燥部開口部54が形成されており、凍結造粒用チャンバ30内で形成された凍結造粒体Gは当該乾燥部開口部54を介して乾燥本体部51に貯留することになる。このため、
図5に示すように、乾燥部開口部54には凍結造粒室31下部の開口部32に形成された造粒室側接合部38を介した接続・連通が可能となるように、その内壁部分にヘルール、バンド、クランプ、フランジ等の乾燥部側接合部55が形成されている。なお、乾燥部側接合部55は、凍結造粒用チャンバ30(凍結造粒室31)との接続を解除した後、乾燥本体部51を密閉するための上蓋56との接合が可能となるよう構成されている。
【0036】
また、乾燥本体部51の上側には、筐体部52を介して乾燥本体部51内部を観察するためのサイトグラス57が設けられている。オペレータは、サイトグラス57を介して凍結造粒体Gの貯留量、凍結乾燥の進行状態等を観察することができる。また、凍結造粒体Gの貯留量、含有溶媒量を計測する上で、乾燥本体部51内部に機械式又は光学式の貯留量検出センサ、赤外分光分析計を設け、検出結果、分析結果を制御コンピュータ81等の情報処理装置に出力する形態としてもかまわない。
【0037】
同じく、乾燥本体部51の上側には、フィルタ付きの真空引き用チューブコネクタ59が設けられている。真空引き用チューブコネクタ59には、フレキシブル配管60を介してコールドトラップ61、真空ポンプ62が接続されている。真空ポンプ62が始動すると、乾燥本体部51内部の内部圧力(真空圧力)が徐々に低下する。そして、後述する空隙部53への熱媒体の循環、凍結乾燥部50本体の揺動により凍結造粒体Gに含まれる溶媒の昇華を促進させることで凍結乾燥の効率化が図られる。なお、フィルタは真空引きチューブコネクタに付帯しても良いが、コールドトラップ61と真空ポンプ62との間に付帯させることもできる。
【0038】
オペレータは、凍結乾燥が完了した後、フレキシブル配管60を乾燥本体部50から外し、乾燥本体部51を容器長手方向軸に対して180°回転させて、乾燥部開口部54を床方向に向け、直下に図示せぬ回収用トレイ等の回収容器を載置し、乾燥部開口部54を開放して乾燥粉体を落下させることにより、乾燥粉体を回収することができる。
【0039】
筐体52には、乾燥本体部51との間で形成される空隙部53に加温水、蒸気、冷却ガス、冷媒油、熱媒油といった熱媒体を導入するための媒体注入口63及びこれらを排出するための媒体排出口64がそれぞれ設けられている。空隙部53は、乾燥本体部51周囲の略全域に亘って形成されているため、乾燥本体部51全体を均一に加熱又は冷却することができる。また、空隙部53の外周に断熱室34と同等の断熱構造を設けてもかまわない。
【0040】
また、筐体部52には、図中x軸方向を容器長手方向としたときに、長手方向軸65に対して所定の角度で揺動可能となるようにその両端側に軸体66がそれぞれ設けられている。長手方向軸65、軸体66は、乾燥本体部51の中心でもよいが、フレキシブル配管60の可動域を狭め、消耗を軽減させるために乾燥本体部51の上部に設置することも可能である。軸体66は、架台90に設けられた軸受け91に軸支されており、図示せぬモータからの駆動力により、
図6に示すように、凍結乾燥部50を所定の角度(例えば、長手方向軸65に対して図中左右100°の可動範囲)で揺動可能となるように構成されている。凍結乾燥時に凍結乾燥部50が揺動可能、すなわち、凍結乾燥部50本体が容器長手方向軸に対して左右方向に傾斜するため、凍結造粒体Gは乾燥本体部51内を流動することになる。その結果、凍結造粒体Gの乾燥対象面の露出頻度が増加するため、また乾燥が促進しにくい凍結造粒体Gのバルク体の内部が攪拌、露出されるため、乾燥効率を向上させることができる。また、静置式の凍結乾燥機において起こり得る乾燥ムラの発生を防ぐことができる。凍結造粒体Gの流動が少なく、攪拌が十分でない場合は、乾燥本体部51内部の底部に邪魔板を設定して流動を促進させることもできる。凍結造粒体Gが乾燥本体部51内に付着して流動しない場合は、乾燥本体部51にノッカー、バイブレータ等を設置し、衝撃、振動を与えることで、凍結造粒体Gを強制流動させることもできる。
【0041】
前述したように、本実施形態においては、凍結造粒用チャンバ30下部に凍結乾燥部50が直接接続されているため、凍結造粒用チャンバ30の凍結造粒室31の冷気が凍結乾燥部50の乾燥本体部51に直接流れ込むことになる。その結果、乾燥本体部51は適度に冷却された状態となるため、従来技術において必要であった回収容器の事前冷却の手間も無くなり、容器移し替えの際の凍結造粒体の溶解も防止することができる。
【0042】
次に、上記構成を有する本実施形態に係る噴霧凍結造粒乾燥粉体製造装置100による乾燥粉体の製造方法について説明する。なお、ここでの説明では、冷却媒体として液体窒素を用いる場合について説明する。
【0043】
まず、事前準備としてオペレータは、冷却媒体充填室37に液体窒素を充填し、凍結造粒室31の室内温度を原液Mを凍結させる温度(大凡-10℃~-190℃、好ましくは-20℃~-150℃)まで低下させる。ところで、液体窒素は、凍結造粒室31を冷却する際に熱交換され気化しガス化する。蒸発した窒素ガスを、冷却媒体充填室37に設けた蒸発ガス投入配管36を介して凍結造粒室31に投入することで、より効率的に凍結造粒室31を直接冷却することができる。なお、後述の原液Mの噴霧開始後も同様に窒素ガスを凍結造粒室31に投入することも可能である。また、凍結造粒室31上部に設けた冷却ガス供給・排気管36’を介して凍結造粒室31内部に直接窒素ガスを直接投入してもよい。
【0044】
凍結造粒室31の室内温度が原液Mが凍結する温度まで低下すると、オペレータは、二流体ノズル本体部11の吐出部21からの原液Mの噴霧を開始する。このとき、凍結防止ガス配管20から常温又は加熱されたガスを噴射することで、吐出部21における凍結固形物の発生・付着を防止することができる。
【0045】
二流体ノズル本体部11の吐出部21から噴霧された原液Mは、凍結造粒用チャンバ30の凍結造粒室31内で凍結し、凍結造粒体Gを形成する。形成した凍結造粒体Gは、凍結造粒室31下方に自然落下し、当該凍結造粒室31下部に接続された凍結乾燥部50の乾燥本体部51内に貯留する。なお、大量生産を意図した装置の大型化や、噴霧方式の変更等により、凍結造粒室31の径が大きくなった場合には、凍結乾燥部50との接続を円錐形のホッパーとすることも可能である。この際、ホッパー部に設けたノッカー、バイブレータ等を用いて衝撃、振動等を与えることで、凍結造粒体Gを強制落下させることが好ましい。ところで、大型機、小型機問わず、液化ガスを間接冷却媒体として使用し、蒸発したガスを冷却媒体充填室37に設けた蒸発ガス投入配管36を介して凍結造粒室31に投入する際、又は液化ガス等を用いた間接冷却ではなく、直接冷却によるガスを大量に投入して凍結造粒体Gを作成する際は、冷却ガス供給・排気管36’の上流側にサイクロン、バグフィルタ等を設置して、ガスの気流に乗った凍結造粒体Gを捕集することが好ましい。
【0046】
乾燥本体部51内の凍結造粒体Gの貯留量が一定量となると、オペレータは、凍結乾燥部50を凍結造粒用チャンバ30から分離し、乾燥部開口部54に上蓋56を接合(装着)することで、乾燥本体部51を密閉する。
【0047】
そして、オペレータは、真空ポンプ62を始動させることによって乾燥本体部51内部の真空引きを開始する。さらに、オペレータは、図示せぬモータを駆動させ、軸体66を所定の角度で回動させることにより、凍結乾燥部50の揺動を開始する。
【0048】
乾燥本体部51の内部圧力が所定の圧力まで低下した状態で、筐体52の媒体注入口63を介して、例えば、加温水、加熱油、蒸気等の熱媒体を空隙部53に導入することにより、凍結造粒体Gの溶媒の昇華を促進させる。この際、凍結乾燥部50本体が容器長手方向軸に対して左右方向に傾斜するため、凍結造粒体Gは乾燥本体部51内を流動し、さらに熱媒体からの伝導電熱により均一に加熱されることになる。これにより乾燥効率を効率的に促進させることができる。
【0049】
オペレータは、凍結乾燥が完了した後、乾燥本体部51直下に図示せぬ回収用トレイ等の回収容器を載置し、フレキシブル配管60を乾燥本体部51から外し、乾燥本体部51を容器長手方向軸に対して180°回転させて、乾燥部開口部54を床方向へ向け、乾燥部開口部54を開放して乾燥粉体を回収する。
【0050】
本実施形態に係る乾燥粉体の製造は、凍結乾燥後の凍結乾燥部50又は別体の凍結乾燥部50を凍結造粒用チャンバ30に再接続することで連続的に行うことが出来る。この際、噴霧機構部10による原液Mの噴霧を完全停止せずとも、例えば、噴霧量を低下させた状態で噴霧を継続することで、安定した噴霧状態を維持させることが可能である。また、噴霧量を低下させる代わりに、造粒室側接合部38直下にダンパを設置し閉状態とすることで、凍結乾燥部50を再接続する間の時間も、密閉状態で安定した噴霧状態を維持させることが可能である。また、本実施形態に係る凍結造粒室31の冷却は液体窒素等の液化ガスを冷却媒体とする間接冷却と、蒸発した窒素ガスの直接冷却とで行うことが可能であるため、連続運転中においても、噴霧機構部10における原液Mの噴霧に影響を与えることなく冷却媒体の補充を行うことが可能である。
【0051】
[変形例]
本実施形態の噴霧凍結造粒乾燥粉体製造装置100の好適な例においては、凍結乾燥部として、容器長手方向軸に対して所定の角度で揺動可能な凍結乾燥部50について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、
図7に示すような、図中x軸方向を容器長手方向としたときに、長手方向軸65’に対して360°回動可能な凍結乾燥部200の構成としてもかまわない。
【0052】
凍結乾燥部200は、貯留容器としての乾燥本体部51’と該乾燥本体部51’の周囲を取り囲むように構成され、乾燥本体部51’との間で空隙部53’を形成する筐体部52’とを備える構成であり、その名称・機能共に凍結乾燥部50のものと同一とすることができる。凍結乾燥部200は、乾燥部開口部54’を介して凍結造粒用チャンバ30の凍結造粒室31との接続・連通が可能となるように構成されている。
【0053】
また、凍結乾燥部200は、架台90’に設けられた軸受け91’に軸支可能となるように軸体66’が筐体部52’の左右両側に形成されている。凍結乾燥部200を長手方向軸65’に対して360°回動可能とするために、本変形例では、軸体66’の中心軸から乾燥本体部51’室内にかけて真空引き用チューブコネクタ59’が挿通されており、これにフレキシブル配管60’が接続される形態となっている。真空引き用チューブコネクタ59’をこのような接続形態とすることで、凍結乾燥部200の回動時に、真空引きチューブコネクタ59’やフレキシブル配管60’が架台90’又は軸受け91’に引っかかり、回動が阻害されるといった不具合を防止することができる。凍結乾燥部50と同様に、凍結乾燥時に凍結乾燥部200が回動可能、すなわち、凍結乾燥部200本体が容器長手方向軸に対して左右方向に傾斜し回転するため、凍結造粒体Gは乾燥本体部51’内を流動することになる。その結果、凍結造粒体Gの乾燥対象面の露出頻度が増加するため乾燥効率を向上させることができる。
【0054】
さらに、凍結乾燥部を、
図8に示すような、所謂、タンブラー型回転乾燥部500の構成とすることも無論可能である。タンブラー型回転乾燥部500は、貯留容器としての乾燥本体部511と該乾燥本体部511の周囲を取り囲むように構成され、乾燥本体部511との間で空隙部553を形成する筐体部552とを備える。タンブラー型回転乾燥部500は、乾燥部開口部554を介して凍結造粒用チャンバ30の凍結造粒室31との接続・連通が可能となるように構成されている。
【0055】
タンブラー型回転乾燥部500は、回動軸565に対して360°回動可能となるように、架台590にその両端が軸支されている。筐体部552の図中左側では、真空引き用ライン559が乾燥本体部511室内に挿通されており、図中右側では、媒体注入ライン563が空隙部553に接続されている。
【0056】
タンブラー型回転乾燥部500を用いた乾燥動作は、凍結乾燥部50、200等と同様に行うことができる。すなわち、乾燥本体部511内の凍結造粒体Gの貯留量が一定量となると、オペレータは、凍結乾燥部511を凍結造粒用チャンバ30から分離し、乾燥部開口部554に上蓋56を接合(装着)することで、乾燥本体部511を密閉する。
【0057】
そして、オペレータは、真空引き用ライン559を介して乾燥本体部511内部の真空引きを開始する。さらに、オペレータは、図示せぬモータの駆動若しくは手動により、タンブラー型回転乾燥部500の回動を開始する。
【0058】
乾燥本体部511の内部圧力が所定の圧力まで低下した状態で、媒体注入ライン563を介して、例えば、加温水、加熱油、蒸気等の熱媒体を空隙部553に導入することにより、凍結造粒体Gの溶媒の昇華を促進させる。この際、タンブラー型回転乾燥部500は回動しているため、凍結造粒体Gは乾燥本体部511内を流動し、さらに熱媒体からの伝導電熱により均一に加熱されることになる。これにより乾燥効率を効率的に促進させることができる。
【0059】
オペレータは、凍結乾燥が完了した後、乾燥本体部511直下に図示せぬ回収用トレイ等の回収容器を載置し、乾燥本体部511を回転軸に対して180°回転させて、乾燥部開口部554を床方向へ向け、乾燥部開口部554を開放して乾燥粉体を回収する。
【0060】
なお、本発明では、凍結乾燥部としての構成を上記例に限定するものではない。すなわち、
図9に示すような、凍結造粒用チャンバ30の凍結造粒室31との接続・連通が可能な乾燥部開口部354を備えた、所謂、静置式の浅底形状を有する貯留容器を凍結乾燥部300として用いてもかまわない。凍結乾燥の効率を考慮すると、貯留量に制限を伴うが、上記例と同様に、凍結造粒用チャンバ30の凍結造粒室31の冷気が凍結乾燥部300の乾燥本体部に直接流れ込むこむ形態であるため、従来技術において必要であった回収容器の事前冷却の手間も無くなり、容器移し替えの際の凍結造粒体の溶解も防止することができる。なお、凍結造粒体Gの乾燥対象面の露出頻度を増加させるために、例えば、
図10に示すように、乾燥本体部内部に貯留した凍結造粒体Gを攪拌する攪拌羽根等の攪拌部材301を設けた貯留容器を凍結乾燥部300’として用いることも無論可能である。
【0061】
なお、本発明の好適な説明においては、凍結乾燥部を1台用いた例について説明したが、例えば、複数台の凍結乾燥部を同時運用することも無論可能である。具体的には、凍結造粒用チャンバ下部から延在し、内部にヘリカルブレード等の攪拌搬送手段を備えた搬送用配管を設け、当該搬送用配管により搬送された凍結造粒体を複数台の凍結乾燥部で順に受け、貯留量が一定量を超えたものから凍結乾燥を順次開始することで完全自動化に近い形態とすることが可能となる。この場合、複数台の凍結乾燥部を予め冷却しておく必要があるが、凍結乾燥部の筐体部に設けられた媒体注入口を介して冷却したガス、油、エチレングリコール含有液、プロピレングリコール含有液等の不凍液を予め導入しておくことで、乾燥本体部を適度に冷却することができる。オペレータは、凍結乾燥の準備が出来た凍結乾燥部に真空ラインを接続し凍結乾燥を開始することで乾燥粉体を得ることが出来るため、より生産性を向上させることも可能である。
【0062】
ところで、凍結造粒室に送り込まれた冷却媒体を排気する際に、気流に乗って排出される凍結造粒体を捕集する捕集手段を本実施形態に係る噴霧凍結造粒乾燥粉体製造装置に対して設けることにより、さらなる収量向上を目指した噴霧凍結造粒粉体製造システムを構築することも可能である。
【0063】
図11は噴霧凍結造粒乾燥粉体製造システム700の構成例の一例を説明するシステム構成図である。ここでの説明では、噴霧凍結造粒乾燥粉体製造装置として、凍結造粒体の大量生産を意図し、凍結乾燥部との接続を円錐形のホッパー部を介して行うものであって、噴霧機構部が備える噴霧機構として
図3で例示した遠心噴霧機400を備えた噴霧凍結造粒乾燥粉体製造装置600を一例にして説明する。
【0064】
ガス吸入フィルタ617を介して送風ブロワ618により引き込まれた大気は、チラー619で冷却された熱交換器615を通すことにより冷却大気ガスとなる。冷却大気ガスはフィルタ623を介し冷却ガス供給管624を通して凍結造粒チャンバ630内の凍結造粒室631に導入される。この際、大気に含まれる水分が熱交換器615に霜となって付着することで、長時間運転に支障をきたす恐れがあるため、熱交換器615前段に除湿器621を付帯させることが好ましい。なお、冷却ガスとしては、ここで述べた冷却大気ガスでもよいし、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、二酸化炭素ガス等の冷却ガスを用いることも無論可能である。また、凍結造粒チャンバ630の冷却は、前述したジャケット構造体を用いた間接冷却で行ってもかまわない。この場合、ジャケット構造体に蒸発ガス投入配管を設け、冷却媒体として、液体窒素や液体アルゴンといった液化ガスを使用する場合に、当該液化ガスが蒸発した蒸発ガスをジャケット構造体の上部から直接凍結造粒室631下部に直接導入する構成とすることが好ましい。
【0065】
原液タンク613内の原液Mは、ポンプ614により原液供給管612を介して遠心噴霧機400に供給される。遠心噴霧機400は、供給された原液Mを遠心噴霧することにより微粒子化させる。微粒子化した原液Mは冷却ガス供給管624を通して供給された冷却大気ガスと接触して凝固化し、凍結造粒体Gを形成する。遠心噴霧機400の回転ディスク部402の近傍には、回転ディスク部402の周囲を囲む形状の冷却ガス遮熱板634が設けられている。冷却ガス遮熱板634の前段には、ガス吸入フィルタ617’、送風ブロワ618’、ヒータ622が設けられている。送風ブロワ618’はガス吸入フィルタ617’を介して、例えば、大気等のガスを引き込む。常温又はヒータ622により加熱されたガスは、凍結防止ガス配管620を通して、冷却ガス遮熱板634の内側に投入され、回転ディスク402部への凍結固形物の発生・付着を抑制することができる。また、上記の冷却ガス供給ラインと同様に、除湿器621’を送風ブロワ618’とヒータ622’との間に設けることで、凍結造粒室631内に導入される水分を減少させ、凍結造粒室631内での霜の発生を抑制することも可能である。
【0066】
凍結造粒室631内で生成した凍結造粒体Gは、凍結造粒チャンバ630内の凍結造粒室631下方に位置する円錐形状のホッパー部632に堆積し、当該ホッパー部632に設けられたノッカー633、バイブレータ等による衝撃、振動により、前述の凍結乾燥部に強制落下させられる。凍結乾燥部内における結造粒体Gの貯留量が一定量となると、オペレータは凍結造粒用チャンバ630から凍結乾燥部を分離し、密閉後、凍結乾燥を行うことで乾燥粉末を得ることができる。
【0067】
なお、ホッパー部632には、凍結造粒室631に導入された冷却大気ガスを排気するための冷却ガス排気管625が接続されている。そして、冷却ガス排気管625には、冷却大気ガスの排気の際に、気流に乗って排出される微細な凍結造粒体Gを捕集するための捕集手段としてのサイクロン型集塵装置626が設けられている。サイクロン型集塵装置626で捕集された凍結造粒体Gは、サイクロン型集塵装置626下部に設けられた凍結乾燥部によって回収することができる。また、サイクロン型集塵装置626の上端部には、サイクロン型集塵装置626では捕集できない更に微細な凍結造粒体Gを捕集するための捕集手段としてのバグフィルタ型集塵装置628が冷却ガス排気管627を介して接続されている。バグフィルタ型集塵装置628で捕集された凍結造粒体Gは、バグフィルタ型集塵装置628下部に設けられた凍結乾燥部によって回収することができる。なお、ホッパー部632、サイクロン型集塵装置626、バグフィルタ型集塵装置628の下部に凍結造粒体Gの集合配管を設置、または凍結乾燥部に複数の凍結造粒体Gの投入口を設けることで、1つの凍結乾燥部で捕集することもできる。なお、サイクロン型集塵装置626及びバグフィルタ型集塵装置628には、ホッパー部632と同様にノッカー633、バイブレータ等を設け、これらによる衝撃、振動により凍結造粒体Gを凍結乾燥部に強制落下させてもよい。なお、ここでの説明においては、冷却ガス排気管625をホッパー部632に設けた構成について説明したが、当該冷却ガス排気管625を凍結造粒室631側に設けた構成としてもかまわない。
【0068】
バグフィルタ型集塵装置628を通過した冷却大気ガスは排風ブロワ629によって大気中に放出することも可能であるが、図中点線で示す循環用配管640を接続し、送風ブロワ618前において循環させることによって、冷却大気ガスを再利用することもできる。
【0069】
このように、凍結造粒室に送り込まれた冷却媒体を排気する際に、気流に乗って排出される凍結造粒体を捕集して回収する捕集回収手段を本実施形態に係る噴霧凍結造粒乾燥粉体製造装置に対して設けることにより、さらなる収量向上を目指した噴霧凍結造粒粉体製造システムを提供することも可能である。
【0070】
以上のように、本発明によれば、手動による工程を極力省き、連続運転、長時間運転による乾燥粉体の大量生産が可能な噴霧凍結造粒乾燥粉体製造装置及び噴霧凍結造粒粉体製造システムを提供することができる。
【符号の説明】
【0071】
10 噴霧機構部
11 二流体ノズル本体部
12、612 原液供給管
13、613 原液タンク
14、614 ポンプ
15 圧縮ガス供給管
16 圧縮ガス供給部
17、617、617’ ガス吸入フィルタ
18、618、618’ 送風ブロア
19 HEPAフィルタ
20、620 凍結防止ガス配管
21 吐出部
22、622 ヒータ
30、630 凍結造粒用チャンバ
31、631 凍結造粒室
32 開口部
33 凍結造粒室外壁
34 断熱室
35 断熱室内壁
36 蒸発ガス投入配管
36’ 冷却ガス供給・排気管
37 冷却媒体充填室
38 造粒室側接合部
39 断熱室外壁
40 支持部材
50、200、300、300’、500 凍結乾燥部
51、51’、511 乾燥本体部
52、52’、552 筐体部
53、53’、553 空隙部
54、54’、354、554 乾燥部開口部
55 乾燥部側接合部
56 上蓋
57 サイトグラス
59 真空引き用チューブコネクタ
60 フレキシブル配管
61 コールドトラップ
62 真空ポンプ
63 媒体注入口
64 媒体排出口
65、65’ 長手方向中心軸
66、66’ 軸体
70 架台
80 媒体残量検知手段
81 制御コンピュータ
82 補充用ボンベ
83 バルブ
84 レギュレータ
90、90’、590 架台
91、91’ 軸受け
100、600 噴霧凍結造粒乾燥粉体製造装置
301 攪拌部材
400 遠心噴霧機
401 モータ部
402 回転ディスク部
559 真空引きライン
563 媒体注入ライン
565 回動軸
615 熱交換器
619 チラー
621、621’ 除湿器
623 フィルタ
624 冷却ガス供給管
625、627 冷却ガス排気管
626 サイクロン型集塵装置
628 バグフィルタ型集塵装置
629 排風ブロワ
632 ホッパー部
633 ノッカー
634 冷却ガス遮熱板
640循環用配管
700 噴霧凍結造粒乾燥粉体製造システム