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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】高所作業車用サブブーム
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/06 20060101AFI20220311BHJP
   B66F 11/04 20060101ALI20220311BHJP
   H02G 1/02 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
B66F9/06 M
B66F11/04
H02G1/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020540505
(86)(22)【出願日】2019-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2019020854
(87)【国際公開番号】W WO2020240649
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2020-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】591083772
【氏名又は名称】株式会社永木精機
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】後藤 政則
(72)【発明者】
【氏名】坂井 博昭
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-167683(JP,A)
【文献】特開2016-078958(JP,A)
【文献】特開2003-189433(JP,A)
【文献】実用新案登録第2530356(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/06
B66F 11/04
H02G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高所作業用のバケットを支える基台に取り付けられて工具を支持する高所作業車用サブブームであって、
前記基台に対して略水平に取り付けられる基台側ブーム材と、
前記工具が取り付けられる工具取付ブーム材と、
前記基台側ブーム材及び前記工具取付ブームの間で90度の角度を形成して連結可能な、少なくとも1つの連結部とを備え
前記連結部は、
前記工具取付ブーム材を前記基台側ブーム材に軸周り方向に対して所定角度から上方へのみ回動可能に、且つ、角度調整可能となるように、略L型に連結する可動連結部であり、
前記可動連結部は、
前記基台側ブーム材を収容する第1収容部と、
前記工具取付ブーム材を収容する第2収容部と、
前記第1収容部の収容方向へ立設され、前記第2収容部の回動中心となる回動軸と、
前記第2収容部を貫通して前記回動軸と平行に前記第1収容部上に立設され、前記第2収容部の回動域を規定する少なくとも1本の規定軸と、
前記規定軸に対して直交する回動方向から先端を突き当て可能となる前記第2収容部上の位置に螺設され、螺進退により前記第2収容部の角度調整を行う調整ネジと
を備えたことを特徴とする高所作業車用サブブーム。
【請求項2】
前記調整ネジは、前記規定軸の対極の2方向から突き当て可能となるように、前記第2収容部上で互いに対向して螺設されていることを特徴とする請求項に記載の高所作業車用サブブーム。
【請求項3】
前記所定角度は、水平を基準として上下にそれぞれ10度の範囲内の角度であることを特徴とする請求項又はに記載の高所作業車用サブブーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
高所作業車を用いた配電線工事の間接活線作業において、バケット上で用いられる絶縁操作棒などの工具を支持するための高所作業車用サブブームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
配電線工事などに用いられる高所作業車のバケットの最大積載重量は、一般に200~250kg程度である。仮に250kgとして作業員が2名搭乗する場合、それだけで許容値の半分程度の重量を占める。作業には高重量の工具も使用される上、作業対象である配電線の荷重が一部加わる可能性もあり、制限重量を考慮した工具の選択は容易ではない。状況によっては、安全面を重視して作業効率が犠牲になる場合もあり得る。
【0003】
一方、バケット上の作業では、一般に、2メートル程度の絶縁操作棒が使用される。この絶縁操作棒を介した工具の操作には熟練を要し、特に、高重量工具を取り扱う作業では、作業員の肉体的負担が大きくなる。よって、作業員の負担を軽減し、熟練工以外の者でも安定して作業を進めるためには、工具類をできるだけ固定した状態で作業をするのが望ましい。しかし、高重量の工具をバケットで支えるためにはバケットを補強する必要があり、その補強部材の重量も考慮しなければならず、重量配分が容易ではない。
【0004】
以上のような、積載重量の問題と、作業性の向上及び作業員の負担軽減とを解決するために、従来から、サブブームが利用されている。図9に従来のサブブームの構成を示す。
【0005】
図9に示すように、メインブーム100の先端に基台102が設けられている。この基台102はバケット103の側方を支持すると共に、上方ではサブブーム101を支持している。サブブーム101は基台102を中心として旋回可能に設けられており、作業状況に応じて姿勢を変えることができる。このサブブーム101はバケット103ではなく、バケット103を支える基台102側に取り付けられている。すなわち、バケット103とサブブーム101とは、それぞれに最大積載重量(共に200~250kg程度)が規定されている。したがって、工具(図示せず)をサブブーム101側に支持させれば、バケット103側の重量に大きな変動は生じ難いので、作業員は安全に作業を行うことができることに加えて、作業員の負担も大きく軽減される。このようなサブブーム101については、特許文献1に記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-116331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、サブブーム101の材質には、絶縁操作棒と同様にFRP材が使用されることが多い。したがって、上述のように、片持ち式で基台102に取り付けられたサブブーム101は、工具類が取り付けられると、それらの重量によって撓りが生じて下方へ傾斜することがある。すると、このように足場として利用しているサブブーム101の傾斜分を補正するために、配電線との間隔などの再調整が必要となり、作業が煩雑になる。
【0008】
また、作業内容によっては、工具の配置を変更する必要が生じることがある。この場合、単にサブブーム101に沿ってスライドさせるだけでは不十分であり、サブブーム101上の位置を変更する度に高さなどの再調整も必要となる。
【0009】
そこで、本発明では、バケットの一辺と平行に設置することができ、且つ、撓りなどの影響を容易に修正できるサブブームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の高所作業車用サブブームは、高所作業用のバケットを支える基台に取り付けられて工具を支持する高所作業車用サブブームであって、前記基台に対して略水平に取り付けられる基台側ブーム材と、前記工具が取り付けられる工具取付ブーム材と、前記基台側ブーム材及び前記工具取付ブームの間で90度の角度を形成して連結可能な、少なくとも1つの連結部とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の高所作業車用サブブームでは、上記構成に加えて、前記連結部は、前記工具取付ブーム材を前記基台側ブーム材の軸周り方向に対して所定角度から上方へのみ回動可能に、且つ、角度調整可能となるように、略L型に連結する可動連結部であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の高所作業車用サブブームは、上記構成に加えて、前記可動連結部に、前記基台側ブーム材を収容する第1収容部と、前記工具取付ブーム材を収容する第2収容部と、前記第1収容部の収容方向へ立設され、前記第2収容部の回動中心となる回動軸と、前記第2収容部を貫通して前記回動軸と平行に前記第1収容部上に立設され、前記第2収容部の回動域を規定する少なくとも1本の規定軸と、前記規定軸に対して直交する回動方向から先端を突き当て可能となる前記第2収容部上の位置に螺設され、螺進退により前記第2収容部の角度調整を行う調整ネジとを備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の高所作業車用サブブームでは、上記構成に加えて、前記調整ネジは、前記規定軸の対極の2方向から突き当て可能となるように、前記第2収容部上で互いに対向して螺設されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の高所作業車用サブブームでは、上記構成に加えて、前記所定角度は、水平を基準として上下にそれぞれ10度の範囲内の角度であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、架設電線に対する作業を行う場合、バケット及び工具取付ブーム材を架設電線に対して平行に配置すると、工具類を工具取付ブーム材上で位置変更しても、架設電線に対する距離は一定に保たれるので、バケットの操作を伴わずに工具類を自由に移動できる。また、基台側ブーム材と工具取付ブーム材とが90度の角度で連結可能な少なくとも1つの連結部を介して連結されているので、用いる連結部の数によって、基台側ブーム材に対する工具取付ブーム材の配置を、L型にもI型にも構成することが可能である。
【0016】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、基台が設けられていないバケットの側面に先端をL型に回り込ませることができるので、バケットから離間した位置にサブブームを配置することができる。また、可動連結部によって、工具取付ブーム材を基台側ブーム材の軸回りに角度調整できるので、撓りを生じ易い部材で構成されていても、傾斜を水平位置になるように容易に修正可能である。さらに、上方へのみ回動可能に連結されているので、工具取付ブーム材を持ち上げることによって可動連結部への負担を軽減した状態で、工具の設置や移動を行うことができる。
【0017】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、基台側ブーム材を収容する第1収容部に対して、工具取付ブーム材を収容する第2収容部は、第1収容部に立設された1本の回動軸に対して回動可能であり、角度調整は、少なくとも1本の規定軸に対して進退量を調節した調整ネジにより行われる。このように、少なくとも2本の回動軸及び規定軸と1本の調整ネジからなる簡易且つ軽量な部材で、回動及び角度調整のための機構を構成できる。
【0018】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、調整ネジが規定軸を介して対極の2方向に対向して螺設されているので、基台に対して上下反転させて何れの向きに配置しても同じ操作が可能となり、状況に応じて作業位置を自由に選択できる。
【0019】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、角度調整の範囲を上下にそれぞれ10度設けることにより、工具取付ブーム材を持ち上げて撓りによる傾きを吸収できるだけでなく、作業内容に応じた高さ調整も行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るサブブームの使用状態を示す斜視図である。
図2図1のサブブームの全体斜視図である。
図3】工具取付ブーム材の撓りの修正を説明する模式図である。
図4】一部破断による図1のサブブームの連結域周辺の拡大斜視図である。
図5】工具取付ブーム材側から見た動作説明のための側面図である。
図6】本発明の第2の実施の形態に係るサブブームを示す全体斜視図である。
図7図6のサブブームの使用状態を示す図である。
図8図6のサブブームの連結部及びその周辺について示し、(a)はサブブームの結合状態、(b)は分離状態を示す拡大図である。
図9】従来のサブブームの設置状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係る高所作業車用サブブーム(以下、単にサブブームと呼ぶ。)について図を用いて説明する。
【0022】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明に係るサブブーム1の使用状態を示す斜視図である。
【0023】
具体的には、高所作業車のバケット51を用いた配電線工事の間接活線作業についての使用状態が示されている。図1では高所作業車のバケット51の一部が表されており、バケット51と一体に設けられた本発明のサブブーム1には、間接活線作業で用いる工具類が取り付けられた様子が示されている。ここでは、説明の便宜のため、バケット51周辺の構成は模式的に表されている。
【0024】
サブブーム1は高所作業車から延びるメインブーム(図示せず)の先端に設けられた基台52の上方に取り付けられている。この基台52は、作業員が搭乗するバケット51を側方で支えている。サブブーム1は概形がL型に構成されており、その一端が基台52に対して片持ち式に水平方向へ取り付けられている。このサブブーム1を用いて、図示のように、配電線工事に用いられる先端工具が取り付けられた遠隔操作棒53や、これら遠隔操作棒53を支持する支持具54を支えることができる。
【0025】
サブブーム1は、基台52に対して水平に取り付けられる基台側ブーム材2と、工具類を支持している工具取付ブーム材4とを有しており、これら基台側ブーム材2と工具取付ブーム材4とがL型に連結されている。このように、L型に構成されているので、基台52の設けられていないバケット51の側方まで工具取付ブーム材4を回り込ませて配置できる。したがって、基台52から直線状にブーム材を延設するのに比べて、バケット51を横切ることなく、広い作業空間を確保することが可能である。基台側ブーム材2と工具取付ブーム材4とは、可動連結部6によって連結されている。
【0026】
なお、本発明のサブブーム1は、基台52に取り付けられており、バケット51側の最大積載重量とは独立に重量の管理を行うことができるので、次のような利点がある。
【0027】
図1に示したような配電線工事では、作業内容によっては、電線50の重量の一部が工具を介して作業員側に加わる場合がある。この場合、作業員2名で多数の高重量工具を使用しなければならないような複雑な作業では、バケット51の重量制限を超える恐れがあり、安全上の問題がある。しかし、本発明のサブブーム1のように、バケット51ではなく基台52側に直接取り付けることにより、バケット51側の重量制限に余裕が生じ、作業員が安全に作業を行うことができる。
【0028】
図2は、図1のサブブーム1の全体斜視図である。ここでは、上述のバケット51との位置関係を把握し易いように、バケット51の概形を点線で表している。
【0029】
上述のように、可動連結部6により、直線状の基台側ブーム材2と工具取付ブーム材4とがL型に連結されている。この可動連結部6の内部機構については、後に図3を用いて詳しく説明することとし、ここでは、機構の概略についての説明を行う。
【0030】
可動連結部6は、基台側ブーム材2の端部を収容する基台側収容部10(第1収容部)と、工具取付ブーム材4の端部を収容する回動側収容部12(第2収容部)とを有している。基台側収容部10は水平方向から基台側ブーム材2の端部を収容する。そして、回動側収容部12は、工具取付ブーム材4の端部を、基台側ブーム材2と直交する方向から収容する。
【0031】
本実施の形態に係るサブブーム1では、可動連結部6は、水平を基準として工具取付ブーム材4を上下にそれぞれ10度の範囲で角度変更可能に構成されている。
【0032】
回動側収容部12には、上下に調整ネジ18の頭部が突出するように螺設されている。これらの調整ネジ18のうち、上方に配置された方を操作して±10度の範囲で角度を調整することができる。
【0033】
図2に見て取れるように、サブブーム1は上下対称に構成されている。したがって、上下を反転させて使用することができる。すなわち、バケット51(図1参照)の反対側の側方で作業を行う必要があるときは、基台52から取り外し、上下反転させて設置することができる。上下反転した状態では、上方に入れ替わった調整ネジ18が角度調整のために機能する。
【0034】
ところで、一般に、配電線工事に用いられるサブブームの材質には、絶縁材としてFRP材が用いられることが多い。そして、FRP材は樹脂材であるため、高荷重に対して撓りが生じる可能性がある。
【0035】
加えて、本実施の形態の構成のように、基台52から遠く離れた位置までL型に迂回してバケット51の側面に沿って配置されていると、各部の撓りは僅かであっても、基台52側と工具取付ブーム材4の先端側との間、あるいは、可動連結部6と工具取付ブーム材4の先端側との間では傾斜が生じて高低差が大きくなる場合がある。
【0036】
しかし、本発明のサブブーム1では、可動連結部6の角度調整機構を用いて、予め撓り量を見込んだ角度で工具取付ブーム材4をやや上方に傾斜させて配置すると、工具類を設置した状態では、作業を略水平状態で行うことが可能である。このような作用について、模式図を用いて説明する。
【0037】
図3は、工具取付ブーム材4の撓りの修正を説明する模式図である。図3(a)は修正を施さない使用状態を示し、図3(b)は修正を施した状態を示し、また、図3(c)は修正を施した上での使用状態を示している。
【0038】
図3(a)に示すように、何も修正を施さずに工具類(遠隔操作棒53、支持具54)を工具取付ブーム材4に載置すると、撓りが生じて先端側が下方へ傾斜する。これを修正するために、撓りの生じる量を見込んで、予め工具取付ブーム材4を上方へ傾斜させた状態で設置する。そして、図3(b)の状態の工具取付ブーム材4に対して工具類(遠隔操作棒53、支持具54)を取り付けると、図3(c)のように、略水平に工具類が並ぶ。
【0039】
これにより、サブブーム1とバケット51との距離、サブブーム1と作業対象物との距離、延いては、作業員と作業対象物との距離を一定に保つことができる。したがって、工具をサブブーム1に沿って移動させた場合であっても、同じ姿勢で作業できるので、距離修正などの不要な作業を削減でき、作業負担を軽減することができる。
【0040】
また、傾斜補正をしている調整ネジ18の調整量を確認することにより、扱っている工具類の重量を直感的に把握することができるというメリットもある。
【0041】
続いて、可動連結部6の内部構造について説明する。
【0042】
図4は、図1のサブブーム1の連結域周辺の構成について、一部破断により表した拡大斜視図である。具体的には、上で説明した可動連結部6のうち回動側収容部12の一部を破断させ、内部構造が確認し易いように表されている。
【0043】
図4に示すように、回動側収容部12は、断面コの字型の2つの部材同士を対向させて組み合わせることにより、工具取付ブーム材4を収容可能な空間が形成されている。この2つの部材の間隔を調節することにより、太さの異なる工具取付ブーム材4を収容することも可能である。
【0044】
この回動側収容部12を2本の回動軸14及び規定軸16が貫通して配置されている。回動軸14は工具取付ブーム材4が回動する中心軸となるものであり、規定軸16はその回動範囲を規定するものである。これら回動軸14及び規定軸16は平行に配置され、ともに、可動連結部6の基台側収容部10に対して水平方向(長手方向)へ立設されている。このうち、規定軸16の周りには、回動軸14を中心とする弧状の長孔であるガイド孔12aが形成されている。これにより、回動側収容部12は、回動軸14を中心として、鉛直面内で基台側収容部10に対して相対回動可能となる。
【0045】
本実施の形態に係る構成では、このガイド孔12aの長さは、回動軸14の配置されている水平位置を基準として±10度の振れ角の範囲に形成されている。したがって、角度の調整操作の際に、調整ネジ18を緩めた状態で誤って手を滑らせたとしても、最大で水平位置から10度の降下で留まるので、工具の落下などの事故を防止することができる。
【0046】
回動側収容部12には、図2を用いて説明したように、上下に調整ネジ18が対向して螺設されているのが見て取れる。これら調整ネジ18の先端は、図4から分かるように、規定軸16と直交する方向を向いている。そして、これら調整ネジ18の先端が交差する規定軸16上の位置には、ネジ受け20が設けられている。このネジ受け20の上下端には、調整ネジ18の先端が嵌入可能な凹部20aが形成されている。調整ネジ18は、このネジ受け20を介して規定軸16と安定して接することができる。このように構成されているので、ガイド孔12aの形成されている範囲内では、調整ネジ18の先端にネジ受け20が突き当たる角度まで、回動側収容部12の回動が可能である。
【0047】
なお、本実施の形態では、規定軸16は、回動軸14に対して工具取付ブーム材4が延びる側に配置されている。このため、工具取付ブーム材4及びこれに取り付けられる工具類の重量は、上側の調整ネジ18を介してネジ受け20の上端が受ける。すなわち、角度調整に関わっているのは、上下に設けられた2本の調整ネジ18のうち上方のみである。
【0048】
上述のように反転して使用する場合は、それらが入れ替わるので、操作が必要な調整ネジ18は、常に作業員が操作し易い上方に位置している。角度調整に関わっていない下方の調整ネジ18は、図示のように下方へ退避させておくと、ガイド孔12aの範囲内であれば、工具取付ブーム材4を上方に持ち上げることができる。よって、作業中に工具の配置を変更したりする場合には、内部機構への負荷が軽減されるので、工具の寿命を延ばすことができる。
【0049】
また、工具の位置変更によって角度調整が必要になった場合などに、工具取付ブーム材4を僅かに持ち上げると、ネジ受け20からの反力から解放されるので、上方の調整ネジ18を工具を用いずに容易に回転操作することが可能である。
【0050】
さらに、作業のための最適な角度が決定し、その角度を固定したい場合は、下方の調整ネジ18をネジ受け20の下端に突き当てると、上下から規定軸16が挟持された形となる。例えば、風の影響による振動など上下方向からの力を抑えたい場合には、工具取付ブーム材4を安定させることができるので、状況に応じて下方の調整ネジ18も有効に併用することができる。
【0051】
また、回動側収容部12内には、回動軸14及び規定軸16の周辺にスペーサー22が設けられている。このスペーサー22は、断面コの字型の2つの部材同士の間隔を規定するものである。そして、このスペーサー22には、2本の調整ネジ18と規定軸16とを収容するガイド溝22aが形成されている。このガイド溝22aに沿って調整ネジ18を安定して螺進退させることができる。ガイド溝22aは、ネジ受け20の姿勢を制御するためのガイドとしても機能する。この機能については、次の動作説明で示す。
【0052】
図5は工具取付ブーム材4側から見た動作説明のための側面図である。図5(a)は工具取付ブーム材4(図4参照)が水平に延びている状態を示し、図5(b)は上方へ傾いた状態を示している。図5(b)に示すように、可動連結部6の回動側収容部12が傾斜すると、内部のスペーサー22のガイド溝22aも傾斜する。これにより、ネジ受け20の側面がガイド溝22aの内壁によって斜め方向に押圧され、ネジ受け20が追従するように傾斜する。このように、ガイド溝22aが形成されていることにより、ガイド孔12a内で規定軸16が動く範囲内で回動側収容部12が角度を変えても、常にネジ受け20の上下端に形成されている凹部20aは、調整ネジ18の先端に向けられる。
【0053】
(第2の実施の形態)
図6は、本発明の第2の実施の形態に係るサブブーム30を示す全体斜視図である。また、図7は、図6のサブブーム30の使用状態を示す図である。ここでは、第1の実施の形態において示したものと同一の構成には同一の符号を付して示すものとする。これらの図6、7を用いて構成の概略を説明する。
【0054】
第1の実施の形態に係るサブブーム1がL型に構成されているに対して、本実施の形態に係るサブブーム30は略直線状に延びるI型に構成されている。ここでI型とは、厳密な意味における直線ではなく、構成する直線状の複数のブーム材の長手方向が同じ方向に揃っているものを指す。したがって、完全に一直線上に延びずに中間位置でオフセットされている構成も含まれるものとする。このようなサブブーム30は、多関節機構による動力部分(以下、多関節機構部56)を有する高所作業車に適している(図7参照)。なお、本実施の形態では、基台52側の多関節機構部56に接続される構成であって、作業環境に応じて選択される付加部分をサブブーム30とする。
【0055】
多関節機構部56を用いた基台52では、上下左右に平行移動及び傾斜角の変更ができ、微調整も可能である。このような構成を備えたバケット51を有する高所作業車では、多関節機構部56を操作してサブブーム30をバケット51の作業側の一辺へ配置させることが容易である。これにより、略直線状のサブブーム30であっても、第1の実施の形態のサブブーム1と同様に、バケット51の作業空間を横切ることなく、工具取付ブーム材34をバケット51の側辺に対して平行に配置することが可能である。L型に比べて基台側ブーム材32をコンパクトに構成することができるので、軽量化が図られる。
【0056】
図6に示すように、サブブーム30は、単純な直線形状ではない。サブブーム30は、基台側ブーム材32と工具取付ブーム材34との間に、90度の角度で連結する連結部36を備えている。この連結部36を介して、基台側ブーム材32と工具取付ブーム材34とがオフセットするような配置で略直線状に構成されている。これら基台側ブーム材32と工具取付ブーム材34とは、後述するように、連結部36において分離可能に構成されている。
【0057】
図7を参照してサブブーム30の使用状態を説明する。メインブーム100の先端の基台52に対して多関節機構部56が備えられている。多関節機構部56はバケット51とサブブーム30(図6参照)を独立して操作できる。
【0058】
本実施の形態に係る構成では、サブブーム30の基台側ブーム材32に対してバケット51側へ工具取付ブーム材34がオフセットするように配置されている。第1の実施の形態のサブブーム1と同様に、本実施の形態に係るサブブーム30も基台52側において片持式に固定されている。したがって、図3を用いて説明したのと同様に、工具取付ブーム材34の先端側が下方へ傾く作用が生じる点において共通している。
【0059】
しかし、本実施の形態に係る構成では、多関節機構部56の操作により先端側を持ち上げるように配置することができるため、図2に示したような可動連結部6(図2、4参照)を採用する必要がない。これにより、部品点数が削減されるので、コストを抑えることができると共に、軽量化を図ることも可能である。
【0060】
図8は、図6のサブブーム30の連結部36及びその周辺について示した拡大図である。図8(a)は結合状態のサブブーム30、(b)は分離状態のサブブーム30を示している。
【0061】
図8に示すように、連結部36は、基台側ブーム材32の端部に設けられた基台側連結部38と、工具取付ブーム材34の端部に取り付けられた工具側連結部40とにより構成されている。
【0062】
図8(b)の分離状態に示すように、工具側連結部40は、工具取付ブーム材34の長手方向に対して直交する方向に貫通孔40aが形成されている。また、基台側連結部38は、貫通孔40aに挿入される挿入部38aを有している。
【0063】
この貫通孔40aに挿入される挿入部38aは、連結ナット42によって固定される。このように、基台側ブーム材32に一体に形成された挿入部38aから連結ナット42を取り外すだけで容易に工具取付ブーム材34を分離することが可能である。したがって、仮設電線に沿って広範囲に作業を行う際、作業環境の変化に応じて形状の異なる工具取付ブーム材34へ適宜交換することも容易である。
【0064】
また、工具取付ブーム材34に取り付ける工具の大きさを異なるものに変更するなど、バケット51の手前のスペースを調節する必要が生じた際に、多関節機構部56(図7参照)の動きだけでは対応できない状況であっても、基台側ブーム材32の挿入部38aを逆側に取り付けることによって柔軟に対応することも可能であり、作業の自由度が向上する。
【0065】
以上に述べてきたような構成は本発明の一例であり、以下のような変形例も含まれる。
【0066】
上記の第1の実施の形態では、可動連結部6において、1本の規定軸16を用いた構成を例として示した。しかし、回動軸14からの距離が異なる位置に複数本の規定軸16を配置するような構成であってもよい。このように構成すると、支点である回動軸14からの距離の大小により調整ネジ18を使い分けることも可能である。例えば、回動軸14に近い側では、耐荷重が小さいが、小さい移動距離で調整ネジ18を操作できるので、作業時間を短縮して軽快に取り廻すことが可能である。これに対して、回動軸14から遠い側では、耐荷重が大きくなるので、高重量工具を用いる場合に有効である。
【0067】
また、上記の第1の実施の形態では、回動軸14に対して規定軸16は、工具取付ブーム材4の先端側に配置された構成を示した。しかし、規定軸16よりも工具取付ブーム材4の先端側に回動軸14を配置する構成でも構わない。この場合は、工具取付ブーム材4の荷重を受け、角度調整機構に関わるのは下方側の調整ネジ18になる。下方からの操作が容易な作業環境では有効である。
【0068】
また、上記の第1の実施の形態では、回動軸14と規定軸16とは水平に並ぶように配置された構成を例として示した。しかし、回動軸14と規定軸16とが水平方向以外に配列されるような構成であっても構わない。調整ネジ18の螺設される方向が上下方向以外に制約されるような作業環境では有効である。
【0069】
また、上記の第1の実施の形態では、調整ネジ18を上下に対向して配置し、上下対称に構成した例を示した。しかし、調整ネジ18は何れか一方に設けられていればよく、反転可能な構成は必須ではない。
【0070】
また、上記の第2の実施の形態では、基台側ブーム材32と工具取付ブーム材34との間に一つの連結部36を設けた構成を例として示した。この例では、工具取付ブーム材34側に形成された貫通孔40aと基台側ブーム材32側に設けられた挿入部38aとの間で分離可能に構成されている。しかし、基台側ブーム材32側に同様の貫通孔を形成し、工具取付ブーム材34側に同様の挿入部を設ける構成であっても構わない。また、両側で脱着可能に構成しても構わない。これにより、基台側ブーム材32及び工具取付ブーム材34の双方に対して直交する方向に延びる部材を交換可能なスペーサーのように用いることが可能となり、さらなる作業自由度の向上が図られる。
【0071】
また、上記の第2の実施の形態では、貫通孔40aが形成された工具取付ブーム材34の方がI型に形成され、挿入部38aが設けられた基台側ブーム材32がL型に形成されている構成を例として示した。しかし、全体として基台側及び工具取付側の長手方向が同じ方向に揃っていれば、逆に、基台側ブーム材をI型に、工具取付ブーム材をL型にして構成しても構わない。
【0072】
また、上記の第1及び第2実施の形態では、直角部分を少なくとも1箇所含む連結構造(可動連結部6、連結部36)を有する構成を例として示した。具体的には、第1の実施の形態における可動連結部6は1箇所、第2の実施の形態における連結部36は2箇所の直角部分を含んでいる。このように直角に結合すると、バケットの縁に対して平行な配置を選択することが容易である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の高所作業車用サブブームは、基台の設けられていないバケット又は作業台の側方までサブブームを延設できるので、配電線工事以外にも、トンネル点検や橋梁点検等の作業においても有用である。
【符号の説明】
【0074】
1 サブブーム
2 基台側ブーム材
4 工具取付ブーム材
6 可動連結部
10 基台側収容部(第1収容部)
12 回動側収容部(第2収容部)
12a ガイド孔
14 回動軸
16 規定軸
18 調整ネジ
20 ネジ受け
20a 凹部
22 スペーサー
22a ガイド溝
30 サブブーム
32 基台側ブーム材
34 工具取付ブーム材
36 連結構造
38 基台側連結部
38a 挿入部
40 工具側連結部
40a 貫通孔
42 連結ナット
50 電線
51 バケット
52 基台
53 遠隔操作棒(工具)
54 支持具(工具)
56 多関節機構部
100 メインブーム
101 サブブーム
102 基台
103 バケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9