(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】殺有害生物剤を含有する散布剤
(51)【国際特許分類】
A01N 25/02 20060101AFI20220311BHJP
A01N 59/14 20060101ALI20220311BHJP
A01N 59/00 20060101ALI20220311BHJP
A01N 61/00 20060101ALI20220311BHJP
A01P 7/02 20060101ALI20220311BHJP
A01P 7/04 20060101ALI20220311BHJP
A01M 1/20 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
A01N25/02
A01N59/14
A01N59/00 C
A01N61/00 A
A01P7/02
A01P7/04
A01M1/20 A
(21)【出願番号】P 2020562427
(86)(22)【出願日】2019-12-26
(86)【国際出願番号】 JP2019051209
(87)【国際公開番号】W WO2020138323
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-01-15
(31)【優先権主張番号】P 2018246595
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】598084600
【氏名又は名称】四国ケージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181250
【氏名又は名称】田中 信介
(72)【発明者】
【氏名】井川 茂樹
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-511395(JP,A)
【文献】特表2005-511262(JP,A)
【文献】特開平10-291205(JP,A)
【文献】国際公開第2007/102688(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102342296(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102674993(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102643144(CN,A)
【文献】特開2018-029573(JP,A)
【文献】特開2017-190318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/02
A01N 59/14
A01N 59/00
A01N 61/00
A01P 7/02
A01P 7/04
A01M 1/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害生物に対する食毒として作用するホウ酸と、前記有害生物に対する気門封鎖および移動抑制として作用するアルカリ金属ケイ酸塩と、を含有することによって、殺有害生物剤としての作用を有し、
乳化剤又は界面活性剤と、油脂と、を含有する水溶液であることによって、前記有害生物の表皮における油脂の除去剤としての作用を有する
ことを特徴とする殺有害生物剤を含有する散布剤。
【請求項2】
請求項1に記載の殺有害生物剤を含有する散布剤において、
タンパク質、および糖質のうちの少なくともいずれかを含有することによって、前記有害生物に対する誘引剤または摂食剤としての作用を有する
ことを特徴とする殺有害生物剤を含有する散布剤。
【請求項3】
(削除)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜および家禽の有害生物に対する畜舎における散布剤であって、殺有害生物剤を含有する散布剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、畜産業界においては、畜舎内における有害生物の大量発生が問題となっている。例えば、養鶏業界においては、鶏などを吸血する害虫であるワクモ、トリサシダニ等の有害生物による鶏の貧血や吸血ストレスによる飼料摂取量の減少および産卵率の低下などが問題となっている。このような家畜および家禽における有害生物の発生に対する対策として、従来は、有害生物の防除のために、殺虫成分を含有する防除剤を畜舎内に散布したりすることが実施されていた(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の畜舎内で散布している防除剤といった散布剤については、有害生物に対する殺有害生物の効果でさらなる改良の余地があった。例えば、従来の防除剤においては、有害生物に対する直接の散布が必要であり、当該防除剤が付着しなかった有害生物は死滅することなく移動してしまい、結果として、当該防除剤の散布量に対して望ましい殺有害生物の効果を奏することができなかった。そこで、本発明の目的は、従来に比べてより殺有害生物の効果が高い殺有害生物剤を含有する散布剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。なお、本欄における括弧内の参照符号や補足説明等は、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0006】
本発明における適用例1の殺有害生物剤を含有する散布剤は、有害生物に対する食毒として作用するホウ酸と、当該有害生物に対する気門封鎖および移動抑制として作用するアルカリ金属ケイ酸塩と、を殺有害生物剤として含有することを要旨とする。
【0007】
本発明における適用例2の殺有害生物剤を含有する散布剤は、適用例1の散布剤であって、タンパク質、および糖質のうちの少なくともいずれかを含有し、前記有害生物に対する誘引または摂食としての作用を有することを要旨とする。
【0008】
本発明における適用例3の殺有害生物剤を含有する散布剤は、適用例1又は適用例2の散布剤であって、乳化剤又は界面活性剤と、油脂と、を含有する水溶液であって、前記有害生物の表皮における油脂を除去する作用を有することを要旨とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実験1の実験結果を説明する表を示した図である。
【
図2】実験2の実験結果を説明する表を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明が適用された実施形態について説明する。なお、本発明の実施形態は、下記の実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。なお、本発明の実施形態における有害生物とは、ハエやダニ類であり、ダニ類として具体的には、家畜および家禽における有害生物であるマダニ、ワクモ、およびトリサシダニである。
【0011】
本発明の実施形態の一つである散布剤は、有害生物に対する食毒として作用するホウ酸と、有害生物に対する気門封鎖および移動抑制として作用するアルカリ金属ケイ酸塩と、を殺有害生物剤として含有する水溶液である。また、更に散布剤は、有害生物に対する誘引または摂食として作用するタンパク質および糖質と、有害生物の表皮における油脂の除去作用を有する乳化剤又は界面活性剤および油脂と、を含有する。
【0012】
<本実施形態の散布剤の説明>
本実施形態における散布剤は、第1基材を10kgと、第2基材を10kgと、を500Lの水に溶解させることによって製造される。第1基材は、9.5kgのホウ酸塩と、0.5kgの粉末状油脂とタンパク質と糖質と乳化剤又は界面活性剤との混合物と、を混成させたものである。第2基材は、10kgの水溶性のアルカリ金属ケイ酸塩から構成されたものである。また、第1基材における粉末状油脂とタンパク質と糖質と乳化剤又は界面活性剤との混合物は、100質量部に対して、25~35質量部の粉末状油脂と、0.5~1.5質量部の粉末状のタンパク質と、50~70質量部の粉末状の糖質と、0.5~1.5質量部の粉末状の乳化剤又は界面活性剤と、を撹拌させたものである。なお、この混合物として、特に好ましくは、100質量部に対して、30質量部の粉末状油脂と、1質量部の粉末状のタンパク質と、60質量部の粉末状の糖質と、1質量部の粉末状の乳化剤又は界面活性剤と、を撹拌させたものである。
【0013】
本実施形態の散布剤において、ホウ酸塩としては、ホウ酸ナトリウムが好ましく、その他にも、ホウ酸、ホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸アルカリ土類金属塩等を用いることができ、これらホウ酸塩の水和物を用いてもよい。より具体的には、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂等を用いてもよい。
【0014】
本実施形態の散布剤において、アルカリ金属ケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム及びこれらの水和物が好ましく、特に、メタケイ酸ナトリウム9水和物が好ましい。その他にも、オルトケイ酸ナトリウムや、二酸化ケイ素と酸化ナトリウムとの混合物(一般的にNa2O・nSiO2で表されるもの)や、二酸化ケイ素と酸化カリウムとの混合物(一般的にK2O・mSiO2で表されるもの)等を用いてもよい。
【0015】
本実施形態の散布剤において、粉末状油脂としては、粉末状の動物性脂肪が好ましく、特に、粉末状の鶏油が好ましい。その他にも、動物性油脂としては、豚脂、牛脂、乳性脂肪等であってもよい。また、油脂としては、植物油脂であってもよく、具体的には、ヤシ油、パーム油、コーン油、綿実油、オリーブ油、菜種油、ゴマ油、大豆油、ヒマワリ油等を用いてもよい。
【0016】
本実施形態の散布剤において、タンパク質としては、カゼインが好ましく、その他にも、動物性タンパク質および植物性タンパク質のいずれでもよく、具体的には、ホエイ、卵白、大豆タンパク、小麦タンパク等といったものを挙げることができる。
【0017】
本実施形態の散布剤において、糖質としては、単糖類や二糖類等といった糖類であればよく、上述の製造においては、コーンシロップが好ましい。その他にも、糖質としては、ブドウ糖粉末、果糖粉末、砂糖等といったものを挙げることができる。
【0018】
本実施形態の散布剤において、乳化剤又は界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステルが好ましく、その他にも、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、大豆リン脂質(大豆レシチン)、サポニン等といったものであってもよい。
【0019】
<本実施形態の効果>
このような散布剤によれば、散布剤にはホウ酸が含有されているため、畜舎内に散布すると、ホウ酸が畜舎内のハエやダニ類等の有害生物に対する食毒として作用し、摂食した有害生物を弱らせたり、死に至らしめたりすることができる。また、散布剤には所定の粘度を有するアルカリ金属ケイ酸塩が含有されているため、所定の粘度によって有害生物に対する気門封鎖として作用して、ハエやダニ類等の有害生物を弱らせたり、死に至らしめたりすることができる。さらに、散布剤に含有されているアルカリ金属ケイ酸塩は所定の粘度を有するため、飛翔性等のあるハエ等の有害生物に対して、移動を抑制することもでき、ホウ酸による食毒の作用およびアルカリ金属ケイ酸塩による気門封鎖の作用を高めることもできる。特に、本実施形態の散布剤においては、pHの値を8.5~10.5(より望ましくは、9.0~10.0である。)としているため、pHの値に応じて粘度が変化するアルカリ金属ケイ酸塩の粘度が有害生物に対する移動の抑制や気門封鎖として効果的に作用するとともに、散布器等による散布に適したものとなるようにすることができる。つまり、このような散布剤であれば、例えば、畜舎内に散布すると、従来のホウ酸とアルカリ金属ケイ酸塩とを含有していない防除剤に比べて、より殺有害生物の効果の高いものであるといえる。
【0020】
このような散布剤によれば、散布剤にはタンパク質又は糖質が含有されているため、畜舎内に散布すると、タンパク質又は糖質が畜舎内のハエやダニ類等の有害生物に対する誘引又は摂食として作用し、上述のホウ酸やアルカリ金属ケイ酸塩による殺有害生物の効果を高めることができる。
【0021】
このような散布剤によれば、散布剤には乳化剤又は界面活性剤と、油脂と、が含有されているため、畜舎内に散布すると、有害生物の表皮における油脂を除去する除去剤として作用することとなる。そして、表皮の油脂が除去された有害生物に対しては、アルカリ金属ケイ酸塩による気門封鎖等の作用が高まることとなり、延いては、より殺有害生物の効果が高まることとなる。
【0022】
また、一般的に、アルカリ金属ケイ酸塩が殺菌の効果を有することと、pHの値が10.0以上であると殺菌の効果を有することと、が知られている。つまり、このような散布剤によれば、散布された畜舎内における殺菌の効果も奏することとなる。さらに、アルカリ金属ケイ酸塩は、付着した部材に対する防錆や防炎の効果も奏するため、このようにアルカリ金属ケイ酸塩を含有する散布剤が畜舎内で散布されると、畜舎における防錆や防炎の効果を奏することとなる。さらに、上述の実施例の散布剤では、散布剤に含有される乳化剤等と油脂とによって、有害生物の表皮における油脂を除去する除去剤の効果も奏するとしたが、畜舎内に散布すると、畜舎内の油脂汚れ等に対する洗浄剤としても作用することとなる。
【0023】
<本実施形態を適用した実施例の実験1および実験2の説明>
図1および
図2を参照して、次に、上述した散布剤におけるワクモ又はハエといった有害生物に対する効果について説明する。
図1は、実験1の実験結果を説明する表を示した図である。
図2は、実験2の実験結果を説明する表を示した図である。
【0024】
ここで、実験1および実験2の具体的な方法について説明する。実験1は、ワクモ100匹に対して比較例1~比較例4、および上述の実施形態を適用した実施例の散布剤の各々を散布した場合の経過時間に対するワクモの死滅数を測定する実験である。より具体的には、縦50cm、横30cm、高さ30cmの閉鎖空間を形成する半透明のアクリル樹脂製容器を5つ準備し、閉鎖空間の各々に100匹のワクモを入れ、各閉鎖空間内に各散布剤を霧吹き器にて5回噴霧した状態で96時間静置し、24時間毎のワクモの死滅数を目視にて測定した。実験2は、ハエ50匹に対して比較例1~比較例4、および実施例の散布剤の各々を供給した場合の経過時間に対するハエの死滅数と誘引割合を測定する実験である。より具体的には、縦50cm、横30cm、高さ30cmの閉鎖空間を形成する半透明のアクリル樹脂製容器を5つ準備し、閉鎖空間の各々に50匹のハエを入れ、各閉鎖空間内に各散布剤50ml入れたシャーレを投入した状態で96時間静置し、24時間毎のハエの死滅数と誘引割合とを目視にて測定した。なお、ハエの誘引割合とは、シャーレ近傍に集まっている生きているハエとシャーレ近傍で死滅したハエとの合計数に基づき、ハエの総数50匹に対する割合を算出した数値である。また、実験1および実験2で使用したアクリル樹脂製容器においては、ワクモおよびハエが通過不可能な程度の大きさの換気用の孔が形成されているものとする。
【0025】
また、実験1および実験2において使用した比較例1~比較例4の散布剤の各々の組成と、実施例の散布剤の組成と、について説明する。実施例の散布剤は、水1000ccに対して19gのホウ酸と、20gのメタケイ酸ナトリウムと、1gの混合物と、を溶解させた水溶液である。混合物は、100質量部に対して、30質量部の菜種油と、1質量部のカゼインと、60質量部のコーンシロップと、1質量部のグリセリン脂肪酸エステルと、5質量部の脱脂粉乳と、3質量部の炭酸カルシウムと、を撹拌させたものである。また、比較例1の散布剤は、水1000ccに対して4mlのアルカリ系の洗浄剤(商品名が「Shift」(登録商標)で、Evans Vanоdine International PLC.が製造したものであって、主成分としては、水酸化ナトリウム、非イオン界面活性剤、両面界面活性剤である。)を溶解させた水溶液である。さらに、比較例2の散布剤は、水1000ccに対して19gのホウ酸を溶解させた水溶液である。そして、比較例3の散布剤は、水1000ccに対して19gのホウ酸と20gのメタケイ酸ナトリウムとを溶解させた水溶液である。またさらに、比較例4は、水1000ccに対して1gの上述の混合物を溶解させた水溶液である。
【0026】
図1に示すように、実験1においては、まず、比較例1の散布剤を噴霧した場合には、96時間経過後のワクモの死滅数が0匹であった。次に、比較例2の散布剤を噴霧した場合には、24時間経過時点のワクモの死滅数が0匹であったものの、48時間経過後のワクモの死滅数は5匹であり、72時間経過後のワクモの死滅数は9匹であり、96時間経過後のワクモの死滅数が20匹であった。次に、比較例3の散布剤を噴霧した場合には、24時間経過時点でのワクモの死滅数が25匹であり、48時間経過後のワクモの死滅数は46匹であり、72時間経過後のワクモの死滅数は60匹であり、96時間経過後のワクモの死滅数が65匹であった。次に、比較例4の散布剤を噴霧した場合には、96時間経過後のワクモの死滅数が0匹であった。そして、実施例の散布剤を噴霧した場合には、24時間経過時点でのワクモの死滅数が42匹であり、48時間経過後のワクモの死滅数は70匹であり、72時間経過後のワクモの死滅数は74匹であり、96時間経過後のワクモの死滅数が89匹である。
【0027】
このような実験1の結果によると、ホウ酸等を含有する比較例2および比較例3は、ホウ酸等を含有しない比較例1および比較例4に比べて、ワクモの死滅数が多いものであるため、ホウ酸等は殺有害生物剤としての効果があるものといえる。特に、食毒として作用するホウ酸のみを含有する比較例2に比べて、気門封鎖等として作用するアルカリ金属ケイ酸塩をホウ酸とともに含有する比較例3は、ワクモの死滅数が短時間で多くなっているため、気門封鎖等となるアルカリ金属ケイ酸塩は食毒となるホウ酸に比べて即効性のある殺有害生物剤であり、殺有害生物剤として十分な効果があるものといえる。そして、実施例は、比較例1~比較例4に比べて、ワクモの死滅数が短時間で多くなっているだけでなく、96時間経過後の死滅数も最も多くなっているため、誘引剤や摂食剤としてのタンパク質等および有害生物の表皮の油脂除去剤としての乳化剤等により、ホウ酸やアルカリ金属ケイ酸塩の殺有害生物剤としての効果が高まったものといえる。
【0028】
なお、実験1において、有害生物の誘引剤等としてのタンパク質および糖質を含有する比較例4および実施例は、タンパク質等を含有しない比較例1~比較例3に比べて、ワクモおよびワクモの幼虫は散布剤が濃く散布されたと考えられる箇所に集まっていることが目視にて確認できた。特に、ワクモの成虫に比べて移動性の低い幼虫は、比較例4および実施例においては、散布剤が濃く散布された箇所に集まってタンパク質等や成虫の排泄物を摂食していることも確認できた。つまり、実施例の散布剤であれば、ワクモの幼虫は、食毒であるホウ酸を摂食した成虫からの排泄物に含まれる食毒を摂食する、といった連鎖的な作用によって、より殺有害生物剤としての効果が高まったものといえる。
【0029】
図2に示すように、実験2においては、まず、比較例1の散布剤を投入した場合には、96時間経過後のハエの死滅数が0匹であり、ハエの誘引割合が常に20%(概ね10匹程度がシャーレ近傍に集まっていた。)であった。次に、比較例2の散布剤を投入した場合には、24時間経過時点のハエの死滅数が0匹であったものの、48時間経過後のハエの死滅数は1匹であり、72時間経過後のハエの死滅数は6匹であり、96時間経過後のハエの死滅数が15匹であり、ハエの誘引割合は30~40%(概ね15~20匹程度がシャーレ近傍に集まっていた。)であった。次に、比較例3の散布剤を投入した場合には、24時間経過時点でのハエの死滅数が0匹であったものの、48時間経過後のハエの死滅数は11匹であり、72時間経過後のハエの死滅数は15匹であり、96時間経過後のハエの死滅数が17匹であり、ハエの誘引割合は30~40%(概ね15~20匹程度がシャーレ近傍に集まっていた。)であった。次に、比較例4の散布剤を投入した場合には、96時間経過後のハエの死滅数が0匹であったものの、ハエの誘引割合は常に90%(概ね45匹程度がシャーレ近傍に集まっていた。)であった。そして、実施例の散布剤を投入した場合には、24時間経過時点でのハエの死滅数が13匹であり、48時間経過後のハエの死滅数は28匹であり、72時間経過後のハエの死滅数は40匹であり、96時間経過後のハエの死滅数が46匹であり、ハエの誘引割合は常に90%(概ね45匹程度がシャーレ近傍に集まっていた。)であった。
【0030】
このような実験2の結果によると、比較例2、比較例3、および実施例の散布剤は、上述のワクモに対してと同様に、ハエに対しても殺有害生物剤としての効果を奏するものといえるる。特に、タンパク質および糖質である誘引剤を含有する比較例4および実施例は、当該誘引剤を含有しない比較例1~比較例3に比べて、誘引割合が高いことから、タンパク質および糖質はハエに対する誘引剤としての効果が十分にあるものといえる。また、アルカリ金属ケイ酸塩を含有する比較例3および実施例において、散布剤に浸ったり触れたりしたハエは、飛翔が困難となっていたことが目視にて確認できたため、アルカリ金属ケイ酸塩はハエの移動抑制としての効果が十分にあるものといえる。つまり、実施例は、比較例1~比較例4に比べて、ハエの死滅数が短時間で多くなっているだけでなく、96時間経過後の死滅数も最も多くなっているため、誘引剤や摂食剤としてのタンパク質等および有害生物の表皮の油脂除去剤としての乳化剤等により、ホウ酸やアルカリ金属ケイ酸塩の殺有害生物剤としての効果が高まったものといえる。
【0031】
以上、実施形態や実施例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施例は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。