(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】ベルト成形用ポリアミドイミド溶液およびポリアミドイミドベルトの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/34 20060101AFI20220311BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20220311BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20220311BHJP
B29C 41/04 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
C08G18/34 030
C08G18/76 057
C08G18/00 B
B29C41/04
(21)【出願番号】P 2021019898
(22)【出願日】2021-02-10
【審査請求日】2021-06-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柴田 健太
(72)【発明者】
【氏名】吉野 文子
(72)【発明者】
【氏名】森北 達弥
(72)【発明者】
【氏名】山田 宗紀
(72)【発明者】
【氏名】越後 良彰
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特許第6883887(JP,B1)
【文献】特開2016-017084(JP,A)
【文献】特開2018-136484(JP,A)
【文献】特開2009-086190(JP,A)
【文献】特開2003-147199(JP,A)
【文献】国際公開第2017/099172(WO,A1)
【文献】特開2004-155947(JP,A)
【文献】特開2011-231278(JP,A)
【文献】国際公開第2019/239865(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G18/00-18/87
B29C41/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸成分として無水トリメリット酸(TMA)、イソシアネート成分としてo-トリジンジイソシアネート(TODI)を用いたポリアミドイミド(PAI)を含む溶液であって、以下を特徴とするPAI溶液。
1)B型粘度計を用いて測定された、30℃における回転粘度が60Pa・s以上、200Pa・s以下であり、濃度が15質量%超、25質量%未満である。
2)TODIの10~60モル%
(ただし10~40モル%を除く)がメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)および/またはトルエンジイソシアネート(TDI)に置換されている。
【請求項2】
ベルト成形用である、請求項1記載のPAI溶液。
【請求項3】
請求項1記載のPAI溶液を、円筒状金型に塗布、乾燥後、脱型することを特徴とするPAIベルトの製造方法。
【請求項4】
酸成分として無水トリメリット酸(TMA)、イソシアネート成分としてo-トリジンジイソシアネート(TODI)を用いたポリアミドイミド(PAI)を含む溶液であって、以下を特徴とするPAI溶液(ただし、ベルト成形用のものを除く)。
1)B型粘度計を用いて測定された、30℃における回転粘度が60Pa・s以上、200Pa・s以下であり、濃度が15質量%超、25質量%未満である。
2)TODIの10~40モル%がメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)および/またはトルエンジイソシアネート(TDI)に置換されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミドイミド(PAI)を含むベルト成形用溶液およびこれを用いたベルトの製造方法に関するものであり、このベルトは、複写機、プリンタ等の中間転写ベルト、定着ベルト等として好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
高速化が求められる複写機、プリンタの中間転写ベルト、定着ベルトとして、耐熱性、機械特性、寸法安定性に優れたPAI等のポリイミド系材料が広く用いられている。
これらのベルトは、例えば、PAIを含有する溶液を金型に塗布、乾燥することにより得ることができ、通常、厚みが50μm~150μmのPAIフィルムからなるシームレスのベルトとして用いられる。
【0003】
これらのベルト成形に用いられるPAI溶液として、酸成分としてトリメリット酸(TMA)、イソシアネート成分としてo-トリジンジイソシアネート(TODI)を用いたPAIを含む溶液が知られている。
すなわち、このような化学構造を有するPAIを含むベルト成形用PAI溶液として、特許文献1の実施例(段落0018)、特許文献2の実施例(段落0027)には、濃度が20質量%のPAI溶液が記載されている。特許文献3の実施例(段落0037)には、濃度が22.1質量%のPAI溶液(粘度8.0Pa・s)が記載されている。特許文献4の実施例(段落0038)には、濃度が30質量%のPAI溶液が記載されている。特許文献5の実施例(段落0041)には、濃度が22質量%のPAI溶液が記載されている。特許文献6の実施例(段落0049)には、濃度が20質量%のPAI溶液が記載されている。特許文献7の実施例(段落0064)には、濃度が20量%のPAI溶液が記載されている。特許文献8の実施例(段落0083)には、濃度が20質量%のPAI溶液が記載されている。これらの特許文献には、酸成分としてTMA、イソシアネート成分としてTODIを用いたPAIを含む溶液が、複写機、プリンタ等の中間転写ベルト、定着ベルト等の成形用として好適に用いられることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-147199号公報
【文献】特開2004-155947号公報
【文献】特開2003-261768号公報
【文献】特開2007-16097号公報
【文献】特開2011-79965号公報
【文献】特開2018-72583号公報
【文献】特開2015-106022号公報
【文献】特開2009-086190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献に記載されたPAI溶液は、PAI濃度を、例えば、20質量%とある程度高めたとしても、溶液とした際の溶液粘度が高々50Pa・s未満程度と低いものであった。ベルト成形用のPAI溶液の粘度としては、例えば、特開2018-130843号公報の段落0039に記載されているように、通常、25℃で、1Pa・s以上100Pa・s以下の範囲のものを適用することが可能ではあるが、粘度が、50Pa・s未満のようなものでは、厚みが50μm以上という肉厚のPAIフィルム成形用の溶液として用いた場合には、十分な厚み均一性を有するベルトの成形が難しいことがあった。また、PAI溶液粘度が低いこと、すなわち、PAIの重合度が低いこと、に起因して、ベルト成形後のPAIベルトの力学的特性、特に引張強度が高いものではなく、改良する必要があった。
しかしながら、従来開示された方法を駆使したとしても、酸成分としてTMA、イソシアネート成分としてTODIを用いたPAI溶液であって、粘度が60Pa・s以上のPAI溶液、すなわち高重合度のPAIを得ることは極めて困難であり、このような高粘度のPAI溶液は知られていなかった。
【0006】
そこで、本発明は前記課題を解決するものであって、十分な厚み均一性を有し、かつ力学的特性が良好なPAIベルトが作成できるPAI溶液およびこれを用いたPAIベルトの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために鋭意研究した結果、「酸成分としてTMA、イソシアネート成分としてTODIを用いたPAI」を含むベルト成形用のPAI溶液において、PAI溶液の粘度を特定のものとすることにより、前記課題が解決されることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
本発明は下記を趣旨とするものである。
<1>酸成分としてTMA、イソシアネート成分としてTODIを用いたPAIを含む溶液であって、粘度が60Pa・s以上であることを特徴とするベルト成形用PAI溶液。
<2> 前記PAI溶液を、円筒状金型に塗布、乾燥後、脱型することを特徴とするPAIベルトの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のPAI溶液を用いることにより、厚みが50μm以上であっても均一な厚みのPAIフィルムを得ることができる。またこれから得られるフィルムは力学特性が良好で、引張強度が高いものである。従い、このPAI溶液から得られるPAIベルトは、複写機、プリンタの中間転写ベルト、定着ベルトとして好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明のPAI溶液は、その溶液粘度が、60Pa・s以上であることが必要であり、80Pa・s以上とすることが好ましい。前記したように、溶液粘度が、60Pa・s未満になると、十分な厚み均一性を得ることが難しくなることがある上、力学的特性が良好なPAIベルトが得られにくくなる。
溶液粘度の上限に制限はないが、200Pa・s以下とすることが好ましい。 200Pa・sを超えると。成形の際、金型への塗工が困難になることがある。
ここで、溶液粘度は、トキメック社製、DVL-BII型デジタル粘度計(B型粘度計)を用い、30℃における回転粘度を測定することにより確認することができる。
【0012】
本発明のPAI溶液は、その溶液粘度を前記とした上で、その濃度を、15質量%超、25質量%未満とすることが好ましく、16質量%以上、22質量%以下とすることがより好ましい。 濃度を15質量%以下とすると、厚みが50μm以上という比較的肉厚のベルトに成形した場合、良好な厚み均一性を得ることが難しくなることがある。また、溶液粘度が、60Pa・s以上の溶液粘度が確保されたPAI溶液であっても、濃度を25質量%以上とすると良好な力学特性が得られにくいことがある。
【0013】
本発明のPAI溶液は、例えば、以下のような方法で得ることができる。
すなわち、略当モルのTMAとTODIとを、溶媒中、重合反応させることにより得ることができる。
ここで、TMAとTODIのみからなるホモポリマは、反応溶媒に溶解しにくい傾向があり、このホモポリマからなる溶液は、光学的に均一な溶液を得られにくいということがある。 そこでこのような問題を避けるために、TODIの一部を、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)および/またはトルエンジイソシアネート(TDI)に置換することができる。すなわち、TODIの10~60モル%をMDIおよび/またはTDIに置換することができる。この置換比率としては、15~50モル%とすることが好ましい。このようにすることにより、光学的に均一なPAI溶液とすることができる。なお、光学的に均一かどうかは目視により判定することができる。すなわち、溶液を観察し、白濁が認められた場合を光学的に不均一、白濁が認められない場合を光学的に均一とする。
本発明でいう「溶液」とは、このような濁りのない「光学的に均一」溶液をいう。
また、酸成分としては、無水トリメリット酸(TMA)のみを用いることが好ましいが、TMAの一部は、他の酸成分で置換されていてもよい。具体的には、TMAの10モル%以下であれば、ピロメリット酸無水物、フタル酸無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸無水物等で置換されていてもよい。 この置換率が10モル%を超えると、ベルトに成形した場合、良好な力学特性が得られにくいことがある。
酸成分と、イソシアネート成分とのモル比は、1/1.01~1.05とすることが好ましい。
このように、イソシアネート成分を酸成分に対し小過剰用いることにより、本発明で規定された濃度、粘度を有するPAI溶液を得ることができる。
さらに重合反応に際しては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、トリエチレンジアミン(DABCO)等の塩基性化合物を触媒としてTMAに対し、0.01~1モル%配合することが好ましい。
このような塩基性触媒を用いることにより、さらに高粘度のPAI溶液とすることができる。
これらの塩基性触媒は、PAI重合の際の重合触媒として知られてはいるが、TMAとTODIとからなるPAIの重合反応において、特異的に有効である。
【0014】
重合反応に用いられる溶媒に制限はないが、アミド系溶媒を用いることが好ましい。アミド系溶媒の具体例としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)等を挙げることができる。これらの溶媒は、単独または混合物として用いることができる。これらの中で、NMP、DMAc、およびそれらの混合物が好ましい。これらの重合溶媒は、その水分率が100ppm以下に脱水されていることが好ましい。
【0015】
重合反応を行う際の反応温度としては、100~200℃が好ましく、120~180℃がより好ましい。この反応において、モノマーおよび溶媒の添加順序は特に制限はなく、いかなる順序でもよい。
【0016】
本発明のPAI溶液には、ベルトの帯電特性を調整するために、カーボンブラック、黒鉛粒子等の導電性フィラを配合することができる。
【0017】
前記のように得られる本発明のPAI溶液は、円筒状の金型に塗布、乾燥後、脱型することにより、PAIベルトとすることができる。乾燥の際には、50~180℃の温度で予備乾燥した後、200~300℃で乾燥することが好ましい。
【0018】
PAIベルトの外径に制限はないが、通常、10~1000mmである。また、PAIベルトの厚みにも制限はないが、通常、50~150μmである。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0020】
<実施例1>
ガラス製反応容器に、窒素雰囲気下、TMA:1.00モル、TODI:0.82モル、TDI:0.20モル、DABCO:0.0005モルを固形分濃度が20質量%となるように脱水されたNMP(水分率80ppm)と共に仕込み、攪拌しながら150℃に昇温して5時間反応させさせることにより、30℃における溶液粘度が135Pa・sで、PAI固形分濃度が18質量%のPAI溶液(PAI-1A)を得た。次に、円筒状金型にPAI-1Aを塗布し、回転させながら90℃で10分、150℃で10分予備乾燥後、250℃で60分乾燥した。 その後、冷却して脱型することにより、外径50mm、厚み約60μmのベルトを得た。
このPAIベルトの厚みを50mm間隔で接触式段差計を用いて測定し、厚み均一性を以下の基準で評価した。
A:厚み均一性が±3%未満
B:厚み均一性が±3%以上、±5%以下
C:厚み均一性が±5%超
その結果を表1に示す。
また、このPAIベルトの引張強度をJIS K7127:1999に準拠し測定した。 その結果を表1に示す。
【0021】
<実施例2>
DABCOの使用量を0.0001モルとしたこと以外は、実施例1と同様にして、30℃における溶液粘度が98Pa・sで、PAI固形分濃度が20質量%のPAI溶液(PAI-2A)を得た。PAI-2Aを用い、実施例1と同様にしてベルトを作成し、その厚み均一性、引張強度を測定した結果を表1に示す。
【0022】
<実施例3>
イソシアネート成分として、「TODI:0.77モル、MDI:0.25モル」を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、30℃における溶液粘度が112Pa・sで、PAI固形分濃度が18質量%のPAI溶液(PAI-3A)を得た。PAI-3Aを用い、実施例1と同様にしてベルトを作成し、その厚み均一性および引張強度を測定した結果を表1に示す。
【0023】
<実施例4>
イソシアネート成分として、「TODI:0.77モル、MDI:0.25モル」を用い、重合触媒としてDBUを0.0005モル用いたこと以外は、実施例1と同様にして、30℃における溶液粘度が76Pa・sで、PAI固形分濃度が18質量%のPAI溶液(PAI-4A)を得た。PAI-4Aを用い、実施例1と同様にしてベルトを作成し、その厚み均一性、引張強度を測定した結果を表1に示す。
【0024】
<実施例5>
イソシアネート成分として、「TODI:0.73モル、TDI:0.30モル」を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、30℃における溶液粘度が145Pa・sで、PAI固形分濃度が22質量%のPAI溶液(PAI-5A)を得た。PAI-5Aを用い、実施例1と同様にしてベルトを作成し、その厚み均一性、引張強度を測定した結果を表1に示す。
【0025】
<実施例6>
重合触媒を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、30℃における溶液粘度が69Pa・sで、PAI固形分濃度が20質量%のPAI溶液(PAI-6A)を得た。PAI-6Aを用い、実施例1と同様にしてベルトを作成し、その厚み均一性、引張強度を測定した結果を表1に示す。
【0026】
<実施例7>
イソシアネート成分として、「TODI:0.56モル、MDI:0.46モル」を用い用いたたこと以外は、実施例1と同様にして、30℃における溶液粘度が69Pa・sで、PAI固形分濃度が18質量%のPAI溶液(PAI-7A)を得た。PAI-7Aを用い、実施例1と同様にしてベルトを作成し、その厚み均一性、引張強度を測定した結果を表1に示す。
【0027】
<実施例8>
イソシアネート成分として、「TODI:0.46モル、TDI:0.56モル」を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、30℃における溶液粘度が61Pa・sで、PAI固形分濃度が22質量%のPAI溶液(PAI-8A)を得た。PAI-8Aを用い、実施例1と同様にしてベルトを作成し、その厚み均一性、引張強度を測定した結果を表1に示す。
【0028】
<比較例1>
イソシアネート成分として、「TODI:0.80モル、TDI:0.20モル」を用い、重合触媒を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、30℃における溶液粘度が19Pa・sで、PAI固形分濃度が20質量%のPAI溶液(PAI-1B)を得た。PAI-1Bを用い、実施例1と同様にしてベルトを得て、その厚み均一性、引張強度を測定した結果を表1に示す。
【0029】
<比較例2>
イソシアネート成分として、「TODI:0.75モル、TDI:0.25モル」を用い、重合触媒を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、30℃における溶液粘度が11Pa・sで、PAI固形分濃度が18質量%のPAI溶液(PAI-2B)を得た。PAI-2Bを用い、実施例1と同様にしてベルトを得て、その厚み均一性、引張強度を測定した結果を表1に示す。
【0030】
<比較例3>
イソシアネート成分として、「TODI:0.70モル、MDI:0.30モル」を用い、重合触媒を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、30℃における溶液粘度が16Pa・sで、PAI固形分濃度が20質量%のPAI溶液(PAI-3B)を得た。PAI-3Bを用い、実施例1と同様にしてベルトを得て、その厚み均一性、引張強度を測定した結果を表1に示す。
【0031】
<比較例4>
イソシアネート成分として、「TODI:0.80モル、TDI:0.20モル」を用い、重合触媒を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、30℃における溶液粘度が71Pa・sで、PAI固形分濃度が26質量%のPAI溶液(PAI-4B)を得た。PAI-4Bを用い、実施例1と同様にしてベルトを得て、その厚み均一性、引張強度を測定した結果を表1に示す。
【0032】
<比較例5>
イソシアネート成分として、「TODI:0.70モル、MDI:0.30モル」を用い、重合触媒を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、30℃における溶液粘度が65Pa・sで、PAI固形分濃度が26質量%のPAI溶液(PAI-5B)を得た。PAI-5Bを用い、実施例1と同様にしてベルトを得て、その厚み均一性、引張強度を測定した結果を表1に示す。
【0033】
<比較例6>
イソシアネート成分として、「TODI:0.94モル、TDI:0.08モル」を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、重合反応を行ったが、反応終了後も液は濁ったままであり、光学的に均一なPAI溶液を得ることはできなかった。
【0034】
<比較例7>
イソシアネート成分として、「TODI:0.102モル」を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、重合反応を行ったが、反応終了後も液は濁ったままであり、光学的に均一なPAI溶液を得ることはできなかった。
【0035】
【0036】
実施例で示したように、本発明のPAI溶液を用いることにより、厚み均一性が良好で、200MPa以上という高い引張強度を有するPAIベルトを得ることができる。
これに対し、比較例で得られたPAIベルトの引張強度は160MPa以下という低いものであり、かつ厚み均一性も不十分なものであった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のPAI溶液を用いることにより得られるPAIベルトは、厚み均一性が良好で、引張強度が高いので、複写機やプリンタ等における中間転写ベルト、定着ベルトとして好適に用いることができる。
【要約】
【課題】良好な厚み均一性を有し、かつ力学的特性が良好なポリアミドイミド(PAI)ベルトが作成できるPAI溶液およびこれを用いたPAIベルトの製造方法の提供。
【解決手段】<1> 酸成分としてトリメリット酸、イソシアネート成分としてo-トリジンジイソシアネートを用いたPAIを含む溶液であって、粘度が60Pa・s以上であることを特徴とするベルト成形用PAI溶液。
<2> 前記PAI溶液を、円筒状金型に塗布、乾燥後、脱型することを特徴とするPAIベルトの製造方法。
【選択図】なし