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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】抗アレルギー用投与デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4402 20060101AFI20220311BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20220311BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20220311BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220311BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220311BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220311BHJP
   A61K 33/30 20060101ALI20220311BHJP
   A61K 33/34 20060101ALI20220311BHJP
   A61K 33/26 20060101ALI20220311BHJP
   A61K 31/375 20060101ALI20220311BHJP
   A61K 31/4415 20060101ALI20220311BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20220311BHJP
   A61K 31/045 20060101ALI20220311BHJP
   A61K 31/60 20060101ALI20220311BHJP
   A61K 31/12 20060101ALI20220311BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220311BHJP
   A61K 36/87 20060101ALI20220311BHJP
   A61K 36/82 20060101ALI20220311BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20220311BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220311BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20220311BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220311BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20220311BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220311BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220311BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220311BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
A61K31/4402
A61P37/08
A61K9/00
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/18
A61K33/30
A61K33/34
A61K33/26
A61K31/375
A61K31/4415
A61K31/122
A61K31/045
A61K31/60
A61K31/12
A61K45/00
A61K36/87
A61K36/82
A61K31/198
A61P43/00 121
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/107
A61K47/36
A61K47/10
A61K47/42
A61K9/70 401
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021118740
(22)【出願日】2021-07-19
【審査請求日】2021-10-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521319188
【氏名又は名称】沼田 雅行
(74)【復代理人】
【識別番号】100173679
【弁理士】
【氏名又は名称】備後 元晴
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】沼田 雅行
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2000/067699(WO,A1)
【文献】特表平09-507477(JP,A)
【文献】特表平08-508280(JP,A)
【文献】特表2003-518009(JP,A)
【文献】米国特許第08679552(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第111773272(CN,A)
【文献】特開2000-219607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
A61K 33/00-33/44
A61K 45/00-45/08
A61K 36/00-36/9068
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目の粘膜リンパ組織周囲から経粘膜的に抗アレルギー薬剤を投与する投与デバイスにおいて、前記抗アレルギー薬剤は、ピリチオンイオン、ピリチオン塩、又はピリチオン化合物を5重量%以下の含有量で含有する、抗アレルギー投与デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の投与デバイスにおいて、
前記目の第1下縁に沿った形状を備え、前記抗アレルギー薬剤を含み、且つ、前記目の下眼瞼の粘膜リンパ組織周囲に装着されることにより前記抗アレルギー薬剤を投与する第1パッチ部材を有する、投与デバイス。
【請求項3】
請求項2に記載の投与デバイスにおいて、
左目の第2下縁に沿った形状を備え、前記抗アレルギー薬剤を含み、且つ、前記左目の下眼瞼の粘膜リンパ組織がある第1下眼瞼に装着されることにより前記抗アレルギー薬剤を投与する第2パッチ部材を有し、
前記第1パッチ部材は、前記目としての右目の前記第1下縁に沿った形状を備え、且つ、前記右目の下眼瞼の粘膜リンパ組織がある第2下眼瞼に装着されることにより前記抗アレルギー薬剤を投与する、投与デバイス。
【請求項4】
請求項3に記載の投与デバイスにおいて、
前記第2パッチ部材は、前記第1パッチ部材と一体的に形成されている、投与デバイス。
【請求項5】
鼻の粘膜リンパ組織周囲、鼻孔の内部から経粘膜的に抗アレルギー薬剤を投与する投与デバイスにおいて、
前記鼻の右側又は左側の鼻翼部の側縁及び下縁に沿った形状を備え、前記抗アレルギー薬剤を含み、鼻翼部の前記側縁と隣り合う部分及び前記鼻翼部の前記下縁と隣り合う部分に貼り付けられることにより前記抗アレルギー薬剤を投与するパッチ部材を有し、
前記抗アレルギー薬剤は、ピリチオンイオン、ピリチオン塩、又はピリチオン化合物を5重量%以下の含有量で含有する、抗アレルギー用投与デバイス。
【請求項6】
請求項5に記載の投与デバイスにおいて、
2つの鼻孔のうち、前記鼻翼部と同一の側に配置された鼻孔である第1鼻孔に挿入可能な形状を備え、前記抗アレルギー薬剤を含み、且つ、前記第1鼻孔の内部に装着されて前記第1鼻孔の内部の粘膜と接触させられることにより経粘膜的に前記抗アレルギー薬剤を投与するパッチ部材を有し、
記パッチ部材は、前記パッチ部材と一体的に形成されている、投与デバイス。
【請求項7】
鼻の粘膜リンパ組織周囲、鼻孔の内部から経粘膜的に抗アレルギー薬剤を投与する投与デバイスにおいて、
前記鼻孔に挿入可能な形状を備え、前記抗アレルギー薬剤を含み、且つ、前記鼻孔に挿入されて前記鼻孔の内部の粘膜と接触させられることにより経粘膜的に前記抗アレルギー薬剤を投与するタンポン部材を有し、
前記抗アレルギー薬剤は、ピリチオンイオン、ピリチオン塩、又はピリチオン化合物を5重量%以下の含有量で含有する、
抗アレルギー用投与デバイス。
【請求項8】
請求項7に記載の投与デバイスにおいて、
顔面のうち、前記鼻の鼻尖部及び口を覆うマスク部と、
前記マスク部の左側部及び右側部の各々にそれぞれ設けられ、且つ、前記マスク部を右耳及び左耳の各々にそれぞれ係止する2つの係止部と、
を有し、
前記タンポン部材は、前記マスク部の内面に、可動性連結部を介して連結されているか、又は、粘着テープにより装着されている、投与デバイス。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の投与デバイスにおいて、
前記抗アレルギー薬剤は、
前記抗アレルギー薬剤のpHを調整するpH調整剤を含有し、
前記pH調整剤の濃度は、1~100mMであり、
前記抗アレルギー薬剤のpHは、4.0~7.0である、投与デバイス。
【請求項10】
請求項9に記載の投与デバイスにおいて、
前記pH調整剤は、リン酸、クエン酸、酢酸又はグリシンを含む、投与デバイス。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の投与デバイスにおいて、
前記抗アレルギー薬剤は、水溶性金属塩を、1重量%以下の含有量で含有する、投与デバイス。
【請求項12】
請求項11に記載の投与デバイスにおいて、
前記水溶性金属塩は、水溶性亜鉛塩、水溶性銅塩又は水溶性鉄塩を含む、投与デバイス。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の投与デバイスにおいて、
前記抗アレルギー薬剤は、ビタミンC、又は、ビタミンB群から選択された少なくとも一種を、10重量%以下の含有量で含有する、投与デバイス。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の投与デバイスにおいて、
前記抗アレルギー薬剤は、ビサボロール又はヒノキチオールを、5重量%以下の含有量で含有する、投与デバイス。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の投与デバイスにおいて、
前記抗アレルギー薬剤は、サリチル酸、サリチル酸塩、クルクミン、ブドウ種子抽出物、茶葉抽出物、海洋プランクトン抽出物、アミノ酸、N-アセチルシステイン、グルタチオン、ガンマグルタミルシステインアラントインレズベラトロールルテオリンベルベリンカテキン群化合物抗掻痒剤、又は、抗ヒスタミン剤を、10重量%以下の含有量で含有する、投与デバイス。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか一項に記載の投与デバイスにおいて、
前記抗アレルギー薬剤は、抗生物質又はステロイドを、10重量%以下の含有量で含有する、投与デバイス。
【請求項17】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の投与デバイスにおいて、
前記抗アレルギー薬剤は、
脂溶性成分である第1成分と、
水溶性成分である第2成分と、
を含有し、
前記第1成分は、脂肪酸を含み、
前記第2成分は、第1乳化剤、第1保形剤、第1安定剤、第1保存剤又は第1透過性亢進剤を含み、
前記第1成分と前記第2成分とにより、軟膏、ローション、溶液、ゲル又はエマルジョンが形成されている、投与デバイス。
【請求項18】
請求項17に記載の投与デバイスにおいて、
前記抗アレルギー薬剤は、界面活性剤、第2透過性亢進剤、第2安定剤、第2保形剤、第2乳化剤、第2保存剤、調整剤又は保護剤を含有する、投与デバイス。
【請求項19】
請求項18に記載の投与デバイスにおいて、
前記第2透過性亢進剤は、テルペン、テルぺノイド、アゾン、ピロリドン、メントール、エッセンシャルオイル、デキストリン化合物ポリエチレングリコール、又は、合成ペプチドを含む、投与デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経粘膜的に抗アレルギー薬剤を投与する投与デバイス及び投与方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、花粉症等のアレルギー又は大気汚染による目又は鼻の粘膜刺激を緩和する方法として、抗炎症薬としての飲み薬又は目薬が用いられてきた。
【0003】
このうち、飲み薬に関しては、即効性に欠けるか、又は、眠気若しくはだるさ等を伴うといった副作用があった。
【0004】
また、目の周囲には、アレルギー反応を引き起こすリンパ組織又は免疫細胞が集結している(非特許文献1,2)。そのため、抗炎症薬として目薬も広く用いられる。しかしながら、目薬に関しては、有効作用時間が短いか、又は、外出先等で頻繁に点眼をする必要があり煩雑であった。更に、抗炎症薬の中には、酸性度が強い等の理由で点眼して眼粘膜に直接接触すると目に対する刺激性が強い、あるいは非親水性等の理由で点眼することが困難等の理由から、目薬として使用できないものもあった。目薬として使用できない有効成分としてピリチオンイオン、ピリチオン化合物、ピリチオン塩等があげられる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6676779号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Knop E, Knop N. The role of eye‐associated lymphoid tissue in corneal immune protection. Journal of anatomy. 2005 Mar;206(3):271-85.
【文献】Brandtzaeg P, Kiyono H, Pabst R, Russell MW. Terminology: nomenclature of mucosa-associated lymphoid tissue. Mucosal immunology. 2008 Jan;1(1):31.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、目薬として使用できない有効成分を標的に投与可能な技術を提供することが求められている。
【0008】
本発明は、上述のような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、アレルギー又は大気汚染等による粘膜刺激を緩和または予防するために有効な薬剤を、飲み薬及び目薬のいずれを用いる方法とも異なる、粘膜リンパ組織を標的に投与することができる投与デバイス又は投与方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、抗炎症作用又は抗菌作用を有する物質としてピリチオンイオン、ピリチオン塩、及びピリチオン化合物から選択される1種以上の抗アレルギー薬剤を含有する抗アレルギー投与デバイスを試作し、目の粘膜リンパ組織周囲に塗布したところ、流涙、発赤、掻痒感等の粘膜刺激症状が緩和されることを見出した。これにより、本発明者は、花粉症アレルギーによる粘膜刺激を緩和する方法として、目の粘膜リンパ組織周囲、鼻の粘膜リンパ組織周囲又は鼻孔の内部の粘膜と接触させられることにより薬剤を投与する投与デバイスが有効であることを見出した。
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0011】
本発明の一態様としての投与デバイスは、目の粘膜リンパ組織周囲、鼻の粘膜リンパ組織周囲又は鼻孔の内部の粘膜に接触させられることにより経粘膜的に抗アレルギー薬剤を投与する投与デバイスであり、抗アレルギー薬剤は、ピリチオンイオン、ピリチオン塩、又はピリチオン化合物を5重量%以下の含有量で含有する。
【0012】
また、本発明の一態様としての投与方法は、目の粘膜リンパ組織周囲、鼻の粘膜リンパ組織周囲又は鼻孔の内部の粘膜に抗アレルギー薬剤を接触させることにより経粘膜的に薬剤を投与する投与方法であり、抗アレルギー薬剤は、ピリチオンイオン、ピリチオン塩、又はピリチオン化合物を5重量%以下の含有量で含有する。
【0013】
上述した通り、目の周囲には、アレルギー反応を引き起こすリンパ組織又は免疫細胞が集結している(非特許文献1,2)。そのため、投与デバイスとして、目の周囲から目の粘膜リンパ組織周囲に接触させられることにより経粘膜的に抗アレルギー薬剤を投与する投与デバイスが考えられる。このような目の周囲から薬剤を投与する投与デバイスとして、例えば目の周囲に合わせたパッチ状の部材、即ちパッチ部材、又は、小型の湿布薬のような使い捨ての投与デバイスが考えられる。このような投与デバイスを目の周囲に装着することにより、目の粘膜リンパ組織に効率良く薬剤を投与することができる。
【0014】
また、鼻孔の内部の粘膜から経粘膜的に薬剤を投与する投与デバイスとしては、鼻孔の開口部から、鼻孔の内部に、吸湿性と通気性が良いタンポン部材又は不織布部材に、粘膜刺激を緩和する薬剤を浸透させたものを有する投与デバイスを挿入して用いることが考えられる。このような投与デバイスを鼻孔の内部に挿入して鼻孔の内部の粘膜と接触させることにより、効率良く経粘膜的に薬剤を投与することができる。なお、鼻孔の奥部、即ち、鼻孔の内部のうち開口部から遠い部分には、フィルターを装着することが考えられる。これにより、吸気から鼻孔の奥部に薬剤を拡散させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様を適用することで、アレルギー又は大気汚染等による炎症疾患を治療するために有効な薬剤を、飲み薬及び目薬のいずれを用いる方法とも異なり、粘膜リンパ組織を標的に投与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態1の投与デバイスを示す図である。
図2】実施の形態1の第1変形例の投与デバイスを示す図である。
図3】実施の形態1の第2変形例の投与デバイスを示す図である。
図4】実施の形態1の第3変形例の投与デバイスを示す図である。
図5】実施の形態1の第3変形例の投与デバイスが有するタンポン部材を示す図である。
図6】実施の形態1の第4変形例の投与デバイスを顔面に装着した状態を示す正面図である。
図7】実施の形態1の第4変形例の投与デバイスが有するタンポン部材を示す図である。
図8】実施の形態1の第4変形例の投与デバイスの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実施の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0019】
また本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0020】
更に、実施の形態で用いる図面においては、構造物を区別するために付したハッチング(網掛け)を図面に応じて省略する場合もある。
【0021】
なお、以下の実施の形態においてA~Bとして範囲を示す場合には、特に明示した場合を除き、A以上B以下を示すものとする。
【0022】
(実施の形態1)
<投与デバイス及び投与方法の技術思想>
初めに、本発明の一実施形態である実施の形態1の投与デバイス及び投与方法における技術思想について説明する。本実施の形態1の投与デバイスは、目の粘膜リンパ組織周囲、鼻の粘膜リンパ組織周囲又は鼻孔の内部の粘膜に接触させられることにより経粘膜的に薬剤を投与する投与デバイスである。また、本実施の形態1の投与方法は、目の粘膜リンパ組織周囲、鼻の粘膜リンパ組織周囲又は鼻孔の内部の粘膜に薬剤を接触させることにより経粘膜的に薬剤を投与する投与方法である。
【0023】
前述したように、従来は、花粉症アレルギー又は大気汚染による目又は鼻の刺激を緩和する方法として、抗炎症薬としての飲み薬又は目薬が用いられてきた。このうち、飲み薬に関しては、即効性に欠けるか、又は、眠気若しくはだるさ等を伴うといった副作用があった。一方、目薬に関しては、有効作用時間が短いか、又は、外出先等で頻繁に点眼をする必要があり煩雑であった。更に、抗炎症薬の中には、目に対する刺激性が強いため、目薬として使用できないものもあった。
【0024】
本発明者は、抗炎症作用又は抗菌作用を有する物質としてジンクピリチオンを含有するクリームを試作し、目の粘膜リンパ組織周囲に塗布したところ、流涙、発赤、掻痒感等の粘膜刺激症状が緩和されることを見出した(実施例)。これにより、本発明者は、花粉症アレルギーによる粘膜刺激を緩和する方法として、目の粘膜リンパ組織周囲、鼻の粘膜リンパ組織周囲又は鼻孔の内部の粘膜と接触させられることにより薬剤を投与する投与デバイスが有効であることを見出した。
【0025】
目の周囲には、アレルギー反応を引き起こすリンパ組織又は免疫細胞が集結している(非特許文献1,2)。そのため、投与デバイスとして、目の周囲から薬剤を投与する投与デバイスが考えられる。このような目の周囲から薬剤を投与する投与デバイスとして、例えば目の周囲に合わせたパッチ状の部材、即ちパッチ部材、又は、小型の湿布薬のような使い捨ての投与デバイスが考えられる。このような投与デバイスを目の周囲に装着することにより、目の粘膜リンパ組織に効率良く薬剤を投与することができる。
【0026】
また、パッチ状の部材として不織布を素材とし、例えば透明な部材を用いることが考えられる。このような透明な投与デバイスを目の周囲に使用した場合、投与デバイスが目立たなくなるため、外見を気にすることなく投与デバイスを使用することができる。
【0027】
また、鼻孔の内部の粘膜から経粘膜的に薬剤を投与する投与デバイスとしては、鼻孔の開口部から、鼻孔の内部に、吸湿性と通気性が良いタンポン部材又は不織布部材に、粘膜刺激を緩和する薬剤を浸透させたものを有する投与デバイスを挿入して用いることが考えられる。このような投与デバイスを鼻孔の内部に挿入して鼻孔の内部の粘膜と接触させることにより、効率良く経粘膜的に薬剤を投与することができる。なお、鼻孔の奥部、即ち、鼻孔の内部のうち開口部から遠い部分には、フィルターを装着することが考えられる。これにより、吸気から鼻孔の奥部に薬剤を拡散させることができる。
【0028】
薬剤に含有される薬効成分であって、ピリチオンイオン、ピリチオン塩、又はピリチオン化合物以外の薬効成分としては、抗炎症剤、抗ヒスタミン薬、ビタミン剤、毛細血管若しくは微小血管の循環に効果を有する薬剤、抗掻痒剤、抗菌剤、又は、抗生物質等が例示される。これらの薬効成分は、水分と油分とのエマルジョンとし、そのエマルジョンにエッセンシャルオイルを加えたものとすることができる。これにより、爽快感に加えて薬剤浸透性を向上させることが期待できる。
【0029】
また、このような投与デバイスは、花粉症とは異なる他の炎症疾患、アレルギー、大気汚染による目又は鼻の刺激を除去することに役立つものと考えられる。本発明及び本実施形態において、「アレルギー」とは、花粉症とは異なる種々のアレルギー性炎症疾患を含むものとし、例えば、大気汚染によって引き起こされるアレルギー性結膜炎及びアレルギー性鼻炎等も含むものとする。
【0030】
<投与デバイス及び投与方法>
次に、本発明の一実施形態である実施の形態1の投与デバイス及び投与方法について説明する。本実施の形態1の投与デバイスは、目の粘膜リンパ組織周囲、鼻の粘膜リンパ組織周囲又は鼻孔の内部の粘膜に接触させられることにより経粘膜的に薬剤を投与する投与デバイスである。また、本実施の形態1の投与方法は、目の粘膜リンパ組織周囲、鼻の粘膜リンパ組織周囲又は鼻孔の内部の粘膜に薬剤を接触させることにより経粘膜的に薬剤を投与する投与方法であり、本実施の形態1の投与デバイスを用いて経粘膜的に薬剤を投与する投与方法である。
【0031】
本実施の形態1の投与デバイス及び投与方法により投与される薬剤として、花粉症その他の炎症疾患、アレルギー、又は、大気汚染による目若しくは鼻の刺激を除去することが可能な薬効成分を有する薬剤を用いることができ、ピリチオンイオン、ピリチオン塩、又はピリチオン化合物を5重量%以下の含有量で含有する薬剤を用いることができる。
【0032】
図1は、実施の形態1の投与デバイスを示す図である。図1(a)は、投与デバイスを目の周囲に貼り付けた状態を示す図であり、図1(b)は、投与デバイスの正面図である。
【0033】
図1(a)及び図1(b)に示すように、好適には、本実施の形態1の投与デバイス10は、パッチ部材11及びパッチ部材12を有する。パッチ部材11は、目としての右目31の下縁31aに沿った形状を備えており、薬剤DR1を含み、且つ、右目31の下眼瞼である下眼瞼31bに貼り付けられることにより薬剤DR1を投与する。パッチ部材12は、目としての左目32の下縁32aに沿った形状を備えており、薬剤DR1を含み、且つ、左目32の下眼瞼である下眼瞼32bに貼り付けられることにより薬剤DR1を投与する。なお、図1(a)では、下眼瞼31b及び下眼瞼32bを二点鎖線で示している(後述する図2(a)においても同様)。
【0034】
これにより、目の粘膜リンパ組織周囲から薬剤DR1が投与される。下眼瞼31b及び下眼瞼32bには、アレルギー反応を引き起こすリンパ組織又は免疫細胞が集中している。そのため、下眼瞼31b及び下眼瞼32bにパッチ部材11及びパッチ部材12が貼り付けられることにより、目の周囲に集結し、且つ、アレルギー反応を引き起こすリンパ組織又は免疫細胞に薬剤が投与されるので、例えば花粉症等のアレルギー反応が引き起こされることを抑制することができる。そして、アレルギー又は大気汚染等による刺激を緩和するために有効な薬剤を、飲み薬及び目薬のいずれを用いる方法とも異なる方法により投与することができる。そのため、飲み薬に比べて、即効性を有し、眠気若しくはだるさ等の副作用が少なくて済む。また、目薬に比べて、有効作用時間を長くすることができ、外出先等で頻繁に使用する必要がない。また、目に対する刺激性が強いため目薬として使用できない抗炎症薬を薬効成分として含有する薬剤を用いることもできる。このような有効成分としてピリチオンイオン、ピリチオン化合物、ピリチオン塩等があげられる(実施例、特許文献1)。
【0035】
図1(a)及び図1(b)に示すように、好適には、パッチ部材12は、パッチ部材11と一体的に形成されている。なお、パッチ部材11及びパッチ部材12により一体的に形成されたパッチ部材を、パッチ部材13と称する。
【0036】
このようにパッチ部材11とパッチ部材12とが一体的に形成されることにより、投与デバイス10の部品点数が少なくなるので、使用者が投与デバイス10を貼り付けやすくなる等の理由により、投与デバイス10が使いやすくなる。
【0037】
図1(b)に示すように、パッチ部材13の使用時における左右方向の幅を、幅HW1とし、パッチ部材13の使用時における上下方向の最大高さを、高さVH1とする。このとき、幅HW1を、例えば155mm程度とすることができ、高さVH1を、例えば22mm程度とすることができる。このような場合、パッチ部材13を右目31の下縁31a、及び、左目32の下縁32aに沿って貼り付けることができる。
【0038】
なお、前述したように、パッチ部材11及びパッチ部材12として透明なパッチ部材を用いることができる。このような透明なパッチ部材を目の周囲に貼り付けた場合、貼り付けられたパッチ部材を有する投与デバイスが目立たなくなるため、外見を気にすることなく投与デバイスを使用することができる。
【0039】
<投与デバイスの第1変形例>
図2は、実施の形態1の第1変形例の投与デバイスを示す図である。図2(a)は、投与デバイスを目の粘膜リンパ組織周囲に装着した状態を示す図であり、図2(b)は、投与デバイスの正面図である。
【0040】
本第1変形例の投与デバイス10は、パッチ部材12がパッチ部材11と一体的に形成されていない点を除き、実施の形態1の投与デバイスと同様にすることができる。
【0041】
図2(a)及び図2(b)に示すように、本第1変形例では、パッチ部材12は、パッチ部材11と分離されている。このような場合でも、目の粘膜リンパ組織周囲から薬剤が投与される。一方、下眼瞼31b及び下眼瞼32bには、アレルギー反応を引き起こすリンパ組織又は免疫細胞が集中している。そのため、下眼瞼31b及び下眼瞼32bにパッチ部材11及びパッチ部材12が貼り付けられることにより、目の周囲に集結し、アレルギー反応を引き起こすリンパ組織又は免疫細胞に薬剤が投与されるので、例えば花粉症等のアレルギー反応が引き起こされることを抑制することができる。そして、アレルギー又は大気汚染等による刺激を緩和するために有効な薬剤を、飲み薬及び目薬のいずれを用いる方法とも異なる方法で粘膜リンパ組織を標的に効率的に投与することができる。
【0042】
図2(b)に示すように、パッチ部材11の右目31の下縁31a(図2(a)参照)に沿った長さ、及び、パッチ部材12の左目32の下縁32a(図2(a)参照)に沿った長さの各々を、長さLN1とする。このとき、長さLN1を、例えば62~67mm程度とすることができる。このような場合、パッチ部材11を、右目31の下縁31aに沿って貼り付けることができ、パッチ部材12を、左目32の下縁32aに沿って貼り付けることができる。
【0043】
なお、図2では、右目31及び左目32の各々にそれぞれパッチ部材11及びパッチ部材12が貼り付けられる例を例示するが、右目31及び左目32のいずれか一方にのみパッチ部材が貼り付けられてもよい。
【0044】
<投与デバイスの第2変形例>
図3は、実施の形態1の第2変形例の投与デバイスを示す図である。図3(a)は、投与デバイスを鼻の周囲に貼り付けた状態を示す図であり、図3(b)は、投与デバイスの正面図である。
【0045】
図3(a)及び図3(b)に示すように、本第2変形例の投与デバイス10は、パッチ部材14及びパッチ部材15を有する。パッチ部材14は、鼻33の右側の鼻翼部34の側縁34a及び下縁34bに沿った形状を備えており、薬剤DR1を含み、鼻33周囲のうち、鼻翼部34の側縁34aと隣り合う部分PR1、及び、鼻翼部34の下縁34bと隣り合う部分PR2に装着されることにより薬剤DR1を投与する。パッチ部材15は、鼻33の左側の鼻翼部35の側縁35a及び下縁35bに沿った形状を備えており、薬剤DR1を含み、鼻33の周囲のうち、鼻翼部35の側縁35aと隣り合う部分PR3、及び、鼻翼部35の下縁35bと隣り合う部分PR4に装着されることにより薬剤DR1を投与する。
【0046】
これにより、顔面の皮膚のうち、鼻孔の内部の粘膜に近い部分である鼻33部位粘膜リンパ組織に薬剤DR1が投与される。そのため、例えば花粉症等のアレルギー反応が引き起こされることを抑制することができる。そして、アレルギー又は大気汚染等による粘膜刺激を緩和するために有効な薬剤を、飲み薬及び目薬のいずれを用いる方法とも異なる方法により投与することができる。
【0047】
なお、パッチ部材14は、2つの鼻孔のうち、鼻翼部34と同一の側に配置された鼻孔である鼻孔36に挿入されて鼻孔36の内部の粘膜と接触させられることにより経粘膜的に薬剤を投与してもよい。このとき、パッチ部材14は、鼻孔36に挿入可能な形状を備え、薬剤DR1を含み、鼻孔36の内部に貼り付けられるパッチ部材(図示は省略)を含み、当該パッチ部材は、パッチ部材14本体と一体的に形成されている。また、パッチ部材15は、2つの鼻孔のうち、鼻翼部35と同一の側に配置された鼻孔である鼻孔37に挿入されて鼻孔37の内部の粘膜と接触させられることにより経粘膜的に薬剤を投与してもよい。このとき、パッチ部材15は、鼻孔37に挿入可能な形状を備え、薬剤DR1を含み、鼻孔37の内部に貼り付けられるパッチ部材(図示は省略)を含み、当該パッチ部材は、パッチ部材15本体と一体的に形成されている。これにより、例えば花粉症等のアレルギー反応が引き起こされることを更に効率良く抑制することができる。
【0048】
また、図3(a)及び図3(b)では、左右両側の鼻翼部34及び鼻翼部35の各々の側縁及び下縁にそれぞれパッチ部材14及びパッチ部材15が貼り付けられる例を例示するが、左右両側の2つの鼻翼部34及び鼻翼部35のうちいずれか一方の鼻翼部の側縁及び下縁にのみパッチ部材14又はパッチ部材15が貼り付けられてもよい。このような場合でも、投与デバイス10で鼻33の粘膜リンパ組織に効率よく薬剤DR1を投与することができる。
【0049】
また、本第2変形例のパッチ部材と、実施の形態1又は実施の形態1の第1変形例のパッチ部材とを組み合わせて用いてもよい。これにより、本第2変形例のパッチ部材を用いた場合に得られる効果と、実施の形態1又は実施の形態1の第1変形例のパッチ部材を用いた場合に得られる効果とを足し合わせた効果が得られる。
【0050】
<投与デバイスの第3変形例>
図4は、実施の形態1の第3変形例の投与デバイスを示す図である。図4(a)は、投与デバイスを鼻孔の内部に挿入した状態を正面から視た図であり、図4(b)は、投与デバイスを鼻孔の内部に挿入した状態における鼻及び投与デバイスを下方から視た図である。図5は、実施の形態1の第3変形例の投与デバイスが有するタンポン部材を示す図である。図5(a)は、タンポン部材の正面図であり、図5(b)は、タンポン部材の側面図である。
【0051】
本第3変形例の投与デバイスは、タンポン部材を有する点で、実施の形態1の投与デバイスと異なる。
【0052】
図4及び図5に示すように、本第3変形例の投与デバイス10は、タンポン部材16及びタンポン部材17を有する。タンポン部材16は、2つの鼻孔のうち、鼻翼部34と同一の側に配置された鼻孔である鼻孔36に挿入可能な形状を備え、薬剤DR1を含み、且つ、鼻孔36に挿入されて鼻孔36の内部の粘膜と接触させられることにより経粘膜的に薬剤を投与する。タンポン部材17は、2つの鼻孔のうち、鼻翼部35と同一の側に配置された鼻孔である鼻孔37に挿入可能な形状を備え、薬剤DR1を含み、且つ、鼻孔37に挿入されて鼻孔37の内部の粘膜と接触させられることにより経粘膜的に薬剤DR1を投与する。
【0053】
これにより、鼻孔の内部の粘膜から経粘膜的に薬剤DR1が効率良く投与される。そのため、例えば花粉症等のアレルギー反応が引き起こされることを効率良く抑制することができる。そして、アレルギー又は大気汚染等による粘膜刺激を緩和するために有効な薬剤を、飲み薬及び目薬のいずれを用いる方法とも異なる方法である経粘膜的な方法により投与することができる。
【0054】
図5(a)及び図5(b)に示すように、タンポン部材16及びタンポン部材17の各々の使用時における上下方向の高さを高さVH2とし、タンポン部材16及びタンポン部材17の各々の使用時において正面から視たときの奥行方向の厚さを厚さTH1とする。また、タンポン部材16及びタンポン部材17の各々の使用時における上端部の左右方向の幅を幅HW2とし、タンポン部材16及びタンポン部材17の各々の使用時における下端部の左右方向の幅を幅HW3とする。
【0055】
このとき、高さVH2を、例えば15mm程度とすることができ、厚さTH1を、例えば3~5mm程度とすることができ、幅HW2を、例えば5mm程度とすることができ、幅HW3を、例えば7~10mm程度とすることができる。即ち、タンポン部材16及びタンポン部材17の各々の使用時において正面から視たときのタンポン部材16及びタンポン部材17の各々が、台形形状を有するようにすることができる。
【0056】
このような場合、使用開始時は、タンポン部材16を鼻孔36に容易に挿入することができ、使用中は、タンポン部材16を鼻孔36の内部の粘膜と接触させた状態で容易に保持することができ、使用終了時は、タンポン部材16を鼻孔36から容易に引き抜くことができる。また、使用開始時は、タンポン部材17を鼻孔37に容易に挿入することができ、使用中は、タンポン部材17を鼻孔37の内部の粘膜と接触させた状態で容易に保持することができ、使用終了時は、タンポン部材17を鼻孔37から容易に引き抜くことができる。
【0057】
なお、図4では、左右両側の鼻孔36及び鼻孔37の各々の内部にそれぞれタンポン部材16及びタンポン部材17が挿入される例を例示するが、左右両側の鼻孔36及び鼻孔37のうちいずれか一方の内部にのみタンポン部材16又はタンポン部材17が挿入されてもよい。このような場合でも、投与デバイスが2つの鼻孔のうちいずれか一方の内部の粘膜の一部と接触することができるので、効率良く経粘膜的に薬剤DR1を投与することができる。
【0058】
また、本第3変形例のタンポン部材と、実施の形態1又は実施の形態1の第1変形例のパッチ部材とを組み合わせて用いてもよい。これにより、本第3変形例のタンポン部材を用いた場合に得られる効果と、実施の形態1又は実施の形態1の第1変形例のパッチ部材を用いた場合に得られる効果とを足し合わせた効果が得られる。
【0059】
<投与デバイスの第4変形例>
図6は、実施の形態1の第4変形例の投与デバイスを顔面に装着した状態を示す正面図である。図7は、実施の形態1の第4変形例の投与デバイスが有するタンポン部材を示す図である。図7(a)は、タンポン部材の正面図であり、図7(b)は、タンポン部材の側面図である。図8は、実施の形態1の第4変形例の投与デバイスの側面図である。なお、図6では、マスク部18を二点鎖線で示している。
【0060】
本第4変形例の投与デバイスは、マスク部と、2つの係止部と、を有する点で、実施の形態1の第3変形例の投与デバイスと異なる。
【0061】
図6乃至図8に示すように、本第4変形例の投与デバイス10は、実施の形態1の第3変形例の投与デバイス10と同様に、タンポン部材16及びタンポン部材17を有する。これにより、鼻孔の内部の粘膜から経粘膜的に薬剤DR1が効率良く投与される。そのため、例えば花粉症等のアレルギー反応が引き起こされることを効率良く抑制することができる。そして、アレルギー又は大気汚染等による粘膜刺激を緩和するために有効な薬剤を、飲み薬及び目薬のいずれを用いる方法とも異なる方法である経粘膜的な方法により投与することができる。
【0062】
また、図7(a)及び図7(b)に示すように、本第4変形例でも、実施の形態1の第3変形例と同様に、高さVH2を、例えば15mm程度とすることができ、厚さTH1を、例えば3~5mm程度とすることができ、幅HW2を、例えば5mm程度とすることができ、幅HW3を、例えば7~10mm程度とすることができる。
【0063】
このような場合、使用開始時は、タンポン部材16を鼻孔36に容易に挿入することができ、使用中は、タンポン部材16を鼻孔36の内部の粘膜と接触させた状態で容易に保持することができ、使用終了時は、タンポン部材16を鼻孔36から容易に引き抜くことができる。また、タンポン部材17についても、タンポン部材16と同様にすることができる。
【0064】
一方、図6乃至図8に示すように、本第4変形例の投与デバイス10は、実施の形態1の第3変形例の投与デバイス10と異なり、マスク部18と、2つの係止部19と、を有する。マスク部18は、例えば不織布よりなり、顔面のうち、鼻33の鼻尖部38及び口39を覆う。2つの係止部19は、マスク部18の左側部及び右側部の各々にそれぞれ設けられ、それぞれ例えばゴム紐よりなり、且つ、マスク部18を右耳40及び左耳41の各々にそれぞれ係止する。また、タンポン部材16及びタンポン部材17はいずれも、マスク部18の内面に貼り付けられている。タンポン部材16及びタンポン部材17はいずれも、マスク部18の内面に、例えば伸縮自在のゴム糸等よりなる可動性連結部20を介して連結されているか、又は、粘着テープ(図示は省略)を介して貼り付けられている。
【0065】
このようにタンポン部材16及びタンポン部材17をマスク部18の内面に貼り付け、タンポン部材16及びタンポン部材17が内面に貼り付けられたマスク部18を顔面に係止部19により装着することにより、タンポン部材16及びタンポン部材17を、鼻孔の内部の粘膜に容易に接触させることができる。
【0066】
なお、図6では、左右両側の鼻孔36及び鼻孔37の各々の内部にそれぞれタンポン部材16及びタンポン部材17が挿入される例を例示するが、左右両側の鼻孔36及び鼻孔37のうちいずれか一方の内部にのみタンポン部材16又はタンポン部材17が挿入されてもよい。このような場合でも、投与デバイス10が2つの鼻孔のうちいずれか一方の内部の粘膜の一部と接触することができるので、効率良く経粘膜的に薬剤DR1を投与することができる。
【0067】
また、本第4変形例のタンポン部材と、実施の形態1及び実施の形態1の第1変形例のいずれかのパッチ部材とを組み合わせて用いてもよい。これにより、本第4変形例のタンポン部材を用いた場合に得られる効果と、実施の形態1又は実施の形態1の第1変形例のパッチ部材を用いた場合に得られる効果とを足し合わせた効果が得られる。
【0068】
<投与デバイス及び投与方法により投与する薬剤>
次に、実施の形態1の投与デバイス及び投与方法により投与する薬剤について説明する。なお、実施の形態1の第1変形例乃至第4変形例の投与デバイスにより投与する薬剤についても同様にすることができる。
【0069】
前述したように、本実施の形態1の投与デバイス及び投与方法により投与される薬剤として、花粉症その他の炎症疾患、アレルギー、又は、大気汚染による目若しくは鼻の刺激を除去することが可能な薬効成分を有する薬剤を用いることができる。
【0070】
本実施の形態1の投与デバイス及び投与方法により投与される薬剤は、例えば以下のような薬効成分を含有することが好ましい。
【0071】
本実施の形態1の薬剤は、酸性度が強い等の理由で、点眼して眼粘膜に直接接触した場合に目に刺激が起こり得る薬効成分、非親水性等の理由で、点眼することが困難な薬効成分、又は、点眼した場合よりも長い作用時間が得られる薬効成分を含むことが好ましい。
【0072】
このような薬効成分として、ピリチオンイオン、ピリチオン塩、又はピリチオン化合物が挙げられる。薬剤として、ピリチオンイオン、ピリチオン塩、又はピリチオン化合物を5重量%以下の含有量で含有する薬剤を用いることが好ましい。また、薬剤として、ピリチオンイオン、ピリチオン塩、又はピリチオン化合物を2.5重量%以下の含有量で含有する薬剤を用いることがより好ましく、ピリチオンイオン、ピリチオン塩、又はピリチオン化合物を1.0重量%以下の含有量で含有する薬剤を用いることが更により好ましく、ピリチオンイオン、ピリチオン塩、又はピリチオン化合物を0.1重量%以下の含有量で含有する薬剤を用いることが最も好ましい(実施例)。
【0073】
なお、本願明細書において、薬剤中のピリチオンイオン、ピリチオン塩、又はピリチオン化合物の含有量とは、水溶性画分及び脂溶性画分とを合計した液体成分の総重量に対するピリチオン化合物の重量比を意味する(以下の含有量についても同様。)。
【0074】
或いは、薬剤のpHは、薬理的に許容されているpH調整剤を用いて調整されていることが好ましい。即ち、薬剤は、pH調整剤を含有することが好ましい。pH調整剤として、例えばリン酸、クエン酸、酢酸又はグリシン等を含むpH調整剤を用いることができる。pH調整剤を用いて調整された薬剤のpHは、4.0~7.0であることが好ましく、4.5~6.5であることがより好ましい。このような範囲のpHとすることにより、薬効効果が最も効力を高めることが可能となる(特許文献1)。るまた、pH調整剤の濃度は、1~100mMであることが好ましく、10~50mMであることがより好ましい。このような酸性のピリチオンは点眼では目に痛みを生じ、飲み薬などによる全身投与では副作用が強いため、点眼や飲み薬等の投与方法では使用できないという問題があったが、本発明の一態様としての投与デバイス又は投与方法によって投与できる。
【0075】
ピリチオンイオン、ピリチオン塩、又はピリチオン化合物以外にも、飲み薬や注射による全身投与では安定性が保たれないため有効濃度が維持できない薬剤や全身に対する副作用のために有効濃度を使用できない薬剤、目薬といった方法では痛みやピリピリ感、目への副作用のため使用できない薬剤も本発明の一態様としての投与デバイス又は投与方法によって投与できる。
【0076】
或いは、薬剤は、水溶性金属塩を1重量%以下の含有量で含有することが好ましい。このような水溶性金属塩は、例えば硫酸亜鉛に代表される水溶性亜鉛塩、例えば硫酸銅に代表される水溶性銅塩、又は、水溶性鉄塩、又は、亜鉛、銅及び鉄以外の金属の水溶性金属塩を含む。水溶性金属塩を含有することによりピリチオン化合物の抗炎症作用が増強されることが期待される(特許文献1)。
【0077】
或いは、薬剤は、ビタミンC又はビタミンC誘導体を、10重量%以下の含有量で含有することが好ましく、1重量%以下の含有量で含有することがより好ましい。このような範囲の含有量とすることによりピリチオン化合物の抗炎症作用が増強されることが期待される(特許文献1)。
【0078】
或いは、薬剤は、ビタミンB群から選択された少なくとも一種、又は、ビタミンB群から選択された少なくとも一種の誘導体を、10重量%以下の含有量で含有してもよく、1重量%以下の含有量で含有することがより好ましい。このような範囲の含有量とすることによりピリチオン化合物の抗炎症作用が増強されることが期待される(特許文献1)。
【0079】
或いは、薬剤は、ビサボロールを、5重量%以下の含有量で含有してもよく、1重量%以下の含有量で含有することがより好ましい。
【0080】
或いは、薬剤は、ヒノキチオールを、5重量%以下の含有量で含有してもよく、1重量%以下の含有量で含有することがより好ましい。
【0081】
或いは、薬剤は、サリチル酸又はサリチル酸塩を、10重量%以下の含有量で含有してもよく、1重量%以下の含有量で含有することがより好ましい。
【0082】
或いは、薬剤は、クルクミン又はクルクミン誘導体を、10重量%以下の含有量で含有してもよく、1重量%以下の含有量で含有することがより好ましい。
【0083】
或いは、薬剤は、ブドウ種子抽出物、茶葉抽出物、又は、海洋プランクトン抽出物を、10重量%以下の含有量で含有してもよく、1重量%以下の含有量で含有することがより好ましい。
【0084】
或いは、薬剤は、アミノ酸又はアミノ酸誘導体(例:ロイシン誘導体(beta-Hydroxy-beta-methyl-butyrate(HMB)))を、10重量%以下の含有量で含有してもよく、1重量%以下の含有量で含有することがより好ましい。
【0085】
或いは、薬剤は、N-アセチルシステイン又はN-アセチルシステイン誘導体を、10重量%以下の含有量で含有してもよく、1重量%以下の含有量で含有することがより好ましい。
【0086】
或いは、薬剤は、グルタチオン又はグルタチオン誘導体を、10重量%以下の含有量で含有してもよく、1重量%以下の含有量で含有することがより好ましい。
【0087】
或いは、薬剤は、ガンマグルタミルシステイン又はガンマグルタミルシステイン誘導体を、10重量%以下の含有量で含有してもよく、1重量%以下の含有量で含有することがより好ましい。
【0088】
或いは、薬剤は、アラントイン若しくはアラントイン誘導体、レズベラトロール若しくはレズベラトロール誘導体、ルテオリン若しくはルテオリン誘導体、ベルベリン若しくはベルベリン誘導体、又は、カテキン群化合物若しくはカテキン群化合物誘導体、抗掻痒剤、又は、抗ヒスタミン剤を、10重量%以下の含有量で含有してもよく、1重量%以下の含有量で含有することがより好ましい。
【0089】
或いは、薬剤は、抗生物質又はステロイドを、10重量%以下の含有量で含有してもよく、1重量%以下の含有量で含有することがより好ましい。
【0090】
或いは、薬剤は、脂溶性成分と、水溶性成分と、を含有してもよい。
【0091】
薬剤は、脂溶性成分として、脂肪酸又は脂肪酸誘導体を含有してもよく、特にドコサヘキサエノイン酸及びエイコサペンタエノイン酸等のオメガ-3不飽和脂肪酸並びにその誘導体、オレイン酸その他の不飽和脂肪酸及びその誘導体、生体膜構成成分である脂質コレステロール及びその誘導体、スフィンゴ脂質及びその誘導体、糖脂質及びその誘導体、リン脂質及びその誘導体並びに代謝産物並びにそれらの構造類似物質からなる群から選択された少なくとも一種を含有してもよい。また、薬剤は、脂溶性成分として、脂溶性有効成分、保形剤、乳化剤、安定剤、調整剤又は透過性亢進剤を含有してもよい。
【0092】
薬剤は、水溶性成分として、水を主成分として含有してもよく、水溶性成分として、水溶性有効成分、pH調整剤、一部の乳化剤、保形剤、安定剤、保存剤又は透過性亢進剤を含有してもよい。
【0093】
また、脂溶性成分と水溶性成分と乳化剤とにより、軟膏、ローション、溶液、ゲル又はエマルジョンが形成されていてもよい。
【0094】
また、薬剤は、界面活性剤、透過性亢進剤、安定剤、保形剤、乳化剤、保存剤、調整剤又は皮膚保護剤を含有してもよい。
【0095】
或いは、透過性亢進剤は、テルペン、テルペノイド、アゾン、ピロリドン又はメントールを含有してもよい。或いは、透過性亢進剤は、茶エキス、茶エッセンシャルオイル若しくはミントオイル等に代表されるエッセンシャルオイルを含有してもよい。或いは、透過性亢進剤は、デキストリン化合物若しくはデキストリン誘導体、ポリエチレングリコール、又は、合成ペプチドを含有してもよい。
【0096】
デキストリン誘導体、ペプチド、薬効成分及びpH調整剤はいずれも、クリーム、ローション等の形状を有する液体成分作成時に、これらの物質の化学形状に応じて水溶性成分又は脂溶性成分に溶解させることができる。ペプチドの多くは水溶性であるが、脂溶性のペプチドもある。デキストリンは水油共に溶解するが、脂溶性成分に溶解させることができる。pH調整剤は水溶性であるので、他の水溶性成分と混合することにより、pHを調整することができる。水溶性成分及び脂溶性成分がそれぞれ溶解した段階で、水溶性成分と脂溶性成分とを混合して、乳化剤、界面活性剤又は固形剤の存在下で、エマルジョン、クリーム又はローション等とすることができる。
【0097】
保形剤、安定剤、乳化剤、保存剤及び調整剤はいずれも、水溶性の場合は水溶性画分に混合させ、脂溶性の場合には脂溶性画分に混合させる。保形剤の多くは脂溶性であり、安定剤は水溶性又は脂溶性であり、乳化剤の多くは脂溶性であるが、水溶性の乳化剤もある。保存剤の多くは水溶性である。調整剤は、水溶性又は脂溶性である。但し、安定剤や保存剤の一部、又は、多くの薬効成分等、高温で失活するような物質は、水溶性画分と脂溶性画分とを混合してエマルジョンを形成した後、温度が下がってから、加えることが望ましい。
【0098】
薬剤の経粘膜的投与は、薬学的に許容される塩を用いて、クリーム、軟膏、ローション、ゲル、固形スティック、スプレー又は滴剤(点眼剤、点鼻剤及び同様のもの)等を接触させることにより行われてもよい。薬剤が有する液体成分は、水中油型エマルジョン、油中水型エマルジョン、粘性液体又は水溶性溶液であってもよい。また、ピリチオン化合物及び他の活性成分を含有するリザーバを覆う半透過性膜といった投与デバイスを、ピリチオン化合物、並びに、ステロイド及び抗炎症剤のような他の活性成分を放出するために用いてもよい。ピリチオン化合物を投与するための薬剤に含まれる成分として、例えば、乳化剤、界面活性剤、安定化剤、増粘剤、保湿剤、皮膚コンディショニング剤、皮膚保護剤及び日焼け止め剤が挙げられる。メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート及びクロロクレゾール等の防腐剤及び静菌剤が、薬剤に含有されてもよい。
【0099】
また、有効成分の吸収効能を高めるために、薬剤に、化学物質浸透増強剤及び可溶化促進剤が含有されてもよい。化学的浸透増強剤は、オレイン酸、ドコサヘキサエン酸若しくはエイコサペンタエン酸等の不飽和脂肪酸、ペプチド類、テルペン、テルペノイド、精油、アゾン、又は、ピロリドンを含んでもよい。可溶化促進剤は、界面活性剤、シクロデキストリン又はジメチルスルホキシド(DMSO)を含んでもよい。
【0100】
(実施の形態2)
実施の形態1では、パッチ部材又はタンポン部材を有する投与デバイスを用いた薬剤の投与方法について説明した。一方、投与デバイスを用いず、例えば薬剤を塗布又は噴霧することにより経粘膜的に薬剤を投与してもよい。このような薬剤を塗布又は噴霧することによる投与方法を、実施の形態2の投与方法として説明する。なお、本実施の形態2の投与方法も、実施の形態1の投与方法と同様に、目の粘膜リンパ組織周囲、鼻の粘膜リンパ組織周囲又は鼻孔の内部の粘膜に薬剤を接触させることにより経粘膜的に薬剤を投与する投与方法の一種である。
【0101】
本実施の形態2の投与方法により投与される薬剤については、実施の形態1の投与デバイス及び投与方法により投与される薬剤と同様であり、少なくとも、ピリチオンイオン、ピリチオン塩、又はピリチオン化合物を5重量%以下の含有量で含有するものであり、詳細な説明を省略する。
【0102】
本実施の形態2の投与方法の一例として、目の粘膜リンパ組織周囲又は鼻の粘膜リンパ組織周囲に薬剤を投与する投与方法が挙げられる。具体的には、実施の形態1に記載した各種の投与方法の一部と同様に、クリーム、軟膏、ローション、ゲル、固形スティック又はスプレー等を塗布することにより薬剤を投与することができる。また、実施の形態1と同様に、薬剤は、水溶性成分として、水を主成分として含有してもよく、脂溶性成分と水溶性成分と乳化剤とにより、軟膏、ローション、溶液、ゲル又はエマルジョンが形成されていてもよい。
【0103】
<実施の形態2の変形例>
実施の形態2では、目の粘膜リンパ組織周囲、又は、鼻の粘膜リンパ組織周囲に塗布することにより薬剤を投与する投与方法について説明した。一方、例えば薬剤を噴霧することにより経粘膜的に薬剤を投与してもよい。このように薬剤を噴霧することによる投与方法を、実施の形態2の変形例の投与方法として説明する。なお、本変形例の投与方法も、実施の形態1の投与方法と同様に、目の粘膜リンパ組織周囲、鼻の粘膜リンパ組織周囲又は鼻孔の内部の粘膜に薬剤を接触させることにより経粘膜的に薬剤を投与する投与方法の一種である。
【0104】
本変形例の投与方法により投与される薬剤については、実施の形態1の投与デバイス及び投与方法により投与される薬剤と同様であり、少なくとも、ピリチオンイオン、ピリチオン塩、又はピリチオン化合物を5重量%以下の含有量で含有するものであり、詳細な説明を省略する。
【0105】
本変形例の投与方法の一例として、鼻孔の内部に薬剤を噴霧し、噴霧された薬剤を鼻孔の内部の粘膜に接触させることにより経粘膜的に薬剤を投与する投与方法が挙げられる。具体的には、実施の形態1に記載した各種の投与方法の一部と同様に、スプレー又は滴剤(点眼剤、点鼻剤及び同様のもの)等を噴霧することにより経粘膜的に薬剤を投与することができる。また、実施の形態1と同様に、薬剤は、水溶性成分として、水を主成分として含有してもよく、脂溶性成分と水溶性成分と乳化剤とにより、軟膏、ローション、溶液、ゲル又はエマルジョンが形成されていてもよい。
【0106】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0107】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0108】
例えば、前述の各実施の形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0109】
<実施例> ジンクピリチオン等の有効成分を含有するクリームの効果
[実験手法]
鼻や目等の粘膜に炎症、アレルギー症状を有するボランティアの被験者に、ジンクピリチオン等の有効成分を含有するクリームを、目周囲及び鼻腔周囲に供与することで、これら被験者の症状を改善し得るかに関して検証を行った。クリームの成分組成は、以下のとおりである。

ジンクピリチオン含有クリームの成分組成〕
ジンクピリチオン:0.1重量%
ピリドキシンジカプリレート:0.2重量%
グリセロール:5重量%
ポリソルベート20:1重量%
クエン酸1モル濃度溶液:0.7重量%
クエン酸ナトリウム1モル濃度溶液:1.3重量%
べへニルアルコール:3重量%
セタノール:3重量%
ステアリン酸グリセリル:1重量%
ステアリン酸:1重量%
ソルビタンステアレート:1重量%
パルミチン酸セチル:0.5重量%
ジメチコン:1重量%
ティーツリーオイル:0.03重量%
蒸留水:全体容積を100%にするのに必要な分量

〔ジンクピリチオンを含まないクリームの成分組成〕
グリセロール:5重量%
ポリソルベート20:1重量%
クエン酸1モル濃度溶液:0.7重量%
クエン酸ナトリウム1モル濃度溶液:1.3重量%
べへニルアルコール:3重量%
セタノール:3重量%
ステアリン酸グリセリル:1重量%
ステアリン酸:1重量%
ソルビタンステアレート:1重量%
パルミチン酸セチル:0.5重量%
ジメチコン:1重量%
ティーツリーオイル:0.03重量%
蒸留水:全体容積を100%にするのに必要な分量
【0110】
まず、被験者を無作為に2つのグループに割り当てた。被験者は二種類のクリームの成分内容に関して、知らされなかった。第一のグループは、第一日目にジンクピリチオン含有クリームを使用、2日の間隔を置いて第四日目にジンクピリチオンを含まないクリームを使用、これに対し第二のグループは第一日目にジンクピリチオンを含まないクリームを使用、2日の間隔を置いて第四日目にジンクピリチオンを含むクリームを使用するクロスオーバ比較試験とした。第一日目と第四日目の試験当日の、クリーム使用以前、使用30分後、2時間後、6時間後、試験当日睡眠前、翌朝起床時における各症状の重症度を被験者にアンケート用紙に記載してもらった。
【0111】
アンケート内容は、鼻掻痒感、鼻水、鼻塞、くしゃみ、咳嗽、目の掻痒感、流涙、目の発赤、の8症状の重症度の自己申告による4段階数値表示(0:症状なし;1:軽度;2:中程度;3:重症)、及び副作用があったかどうか、あった場合にはその重症度に関する記載、から構成される。更に被験者が希望する場合にはその他の記載が適宜付け加えられた。各時点での症状の重症度の総計点数を以てその時点での重症度スコアと定義する。
【0112】
表1A及び表1Bは鼻及び目等に粘膜刺激症状を持つ被験者にジンクピリチオン含有クリームの下眼瞼及び鼻腔周囲に塗布した場合とジンクピリチオンを含有しないクリームを塗布した場合の鼻及び目等の粘膜刺激症状に対する効果をまとめた表である。

【表1A】

【表1B】
【0113】
[結果及び考察]
被験者1:第一日目のジンクピリチオン含有クリームによる試験開始前の重症度スコアは10点であったが、ピリチオン含有クリーム使用30分後ですでに5ポイントの症状低下を認めた。鼻、目双方の症状に対して有効性を示し、この症状軽減効果はクリーム使用後6時間まで持続した。対して、第四日目のジンクピリチオンを含まないクリームによる試験開始前の重症度スコアは4点で、クリーム使用後6時間後に1ポイントの症状軽減はあったものの、それ以上の症状変化は見られなかった。
【0114】
被験者2:第一日目のジンクピリチオン含有クリームによる試験開始前の重症度スコアは12点であったが、ジンクピリチオン含有クリーム使用開始後30分から徐々に症状改善を認め、試験当日睡眠前には重症度スコアが6点まで改善、翌朝起床時までこの症状改善効果は持続した。対して、第四日目に行われたジンクピリチオンを含まないクリームの使用前に12点あった重症度スコアはクリーム塗布6時間以後の10点までの減少を見るにとどまった。
【0115】
被験者3:第一日目に行われたジンクピリチオンを含有しないクリームによる試験開始前に9点であった重症度スコアは、ジンクピリチオンを含まないクリーム使用後30分後6点、2時間後に3点まで低下後、再上昇し当日睡眠前にはほぼもとの状態まで悪化した。対して、第四日目、ジンクピリチオン含有クリーム使用前に9点あった重症度スコアは、ジンクピリチオン含有クリーム使用30分後にはすでに3点まで低下、2時間後にいったん5点まで上昇するも、6時間後には再度1点まで低下し、この時点で鼻塞以外の全ての症状が完全に消失した。
【0116】
被験者4:第一日目に行われたジンクピリチオンを含有しないクリームによる試験開始前に6点であった重症度スコアがジンクピリチオンを含まないクリーム使用後徐々に減少し6時間後には2点まで低下した。しかし、本被験者の第一日目のアンケート用紙には、「このクリーム(ジンクピリチオンを含まないクリーム)の効果はあまりはっきりしない」という重症度スコアの動向を反映しない被験者のコメントが記載されていた。対して、第四日目のジンクピリチオン含有クリームによる試験開始前には4点あった重症度スコアはジンクピリチオン含有クリーム塗布の30分後には2点、2時間後には1点、そして6時間後には遂に0点まで改善する。
【0117】
被験者5(欠番):上記4例に加えて更に一例、試験第一日目にジンクピリチオンを含まないクリームを使用後、目に刺激感と不快感を訴えたため、試験を即座に中止した。本結果は本表には含まれていない。
【0118】
以上から、ジンクピリチオンを下眼瞼及び鼻腔周囲に一日一回塗布するだけで、鼻及び目の粘膜刺激症状に対する軽減効果があることが示唆される。試験開始前の重症度スコアが10点未満の場合は、ジンクピリチオンを含有しないクリームによっても若干の症状改善効果が得られる傾向にあったが、ジンクピリチオンを含有するクリームを塗布したときの方が、症状改善効果が高かった。重症度スコア10点以上の被験者と10点未満の被験者では異なる病態を持っている可能性があり、ジンクピリチオンは重症度スコア10点以上の病態に対してより有効に作用する可能性がある。
【符号の説明】
【0119】
10 投与デバイス
11~15 パッチ部材
16、17 タンポン部材
18 マスク部
19 係止部
20 可動性連結部
31 右目
31a、32a 下縁
31b、32b 下眼瞼
32 左目
33 鼻
34、35 鼻翼部
34a、35a 側縁
34b、35b 下縁
36、37 鼻孔
38 鼻尖部
39 口
40 右耳
41 左耳
DR1 薬剤
HW1~HW3 幅
LN1 長さ
PR1~PR4 部分
TH1 厚さ
VH1、VH2 高さ
【要約】
【課題】目薬として使用できない有効成分を標的に投与可能な技術を提供する。
【解決手段】本発明に係る投与デバイス(10)は、目(31,32)の周囲の皮膚、鼻(33)の周囲の皮膚又は鼻孔の内部の粘膜に接触させられることにより経皮的又は経粘膜的に薬剤(DR1)を投与可能であり、抗アレルギー薬剤(DR1)は、ジンクピリチオンを5重量%以下の含有量で含有する。投与デバイス(10)は、目(31,32)の第1下縁(31a,32a)に沿った形状を備え、抗アレルギー薬剤(DR1)を含み、且つ、目の下眼瞼(31b,32b)の粘膜リンパ組織周囲に装着されることにより薬剤を投与する第1パッチ部材を有することが好ましい。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8