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特許7038456再生可能エネルギー施設を利用した地すべり及び斜面崩壊対策工法
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  • 特許-再生可能エネルギー施設を利用した地すべり及び斜面崩壊対策工法 図1
  • 特許-再生可能エネルギー施設を利用した地すべり及び斜面崩壊対策工法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】再生可能エネルギー施設を利用した地すべり及び斜面崩壊対策工法
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20220311BHJP
【FI】
E02D17/20
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021192305
(22)【出願日】2021-11-26
【審査請求日】2022-01-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】321013200
【氏名又は名称】LLC合同会社Dr.GEOLABO.I
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大河原 正文
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-210741(JP,A)
【文献】特開2000-332285(JP,A)
【文献】特開2000-212977(JP,A)
【文献】特開2017-11921(JP,A)
【文献】特開平11-103659(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110847196(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地すべり及び崩壊の冠頭部付近には,雨水が浸透しないようにソーラーパネルを密閉するように配置し,中腹部においてはソーラーパネルから水路工,集水ます(桝)への連続した集水によって雨水を集め,その集めた雨水を地すべり及び崩壊の末端部に配置したふとん籠及び蛇篭に集めて押さえ盛り土の効果を持たせることで,ソーラーパネルを利用した抑制工を可能としたことを特徴とする再生可能エネルギー施設を利用した地すべり及び斜面崩壊対策工法。
【請求項2】
水路工については地すべり及び崩壊の対策として用いられるコンクリート製,鋼製を利用し,末端のふとん籠及び蛇篭については鋼制の網構造のものを利用して中に埋設するタンクについては耐候性の高いポリエチレン製のタンクとすることで,ソーラーパネルを利用した抑制工を可能とした請求項1記載の再生可能エネルギー施設を利用した地すべり及び斜面崩壊対策工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,再生可能エネルギー施設を利用した地すべり及び斜面崩壊対策工法に関するものである。
【0002】
本発明は,近年において地球温暖化に配慮した自然再生可能エネルギーの利用が活発化してきている中で,平坦地だけでなく,傾斜地に太陽光パネルを設置される事例が多くなっており,豪雨時に太陽光パネルを設置した斜面における土砂災害が全国的に発生している現状がある。このような現状を踏まえて,太陽光パネルの配置を工夫して地表面排除工とし,この地表面排除工で集水した雨水を地すべりの末端部で押え盛土工として利用することを可能とした地すべり対策工法である。
【0003】
なお,地すべり対策工には,抑制工と抑止工があり,抑制工については,地すべり地の地形,地下水の状態などの自然条件を変化させることによって,地すべりの滑動力と抵抗力のバランスを改善し,地すべり運動を停止または緩和させる手法である。
【背景技術】
【0004】
地球温暖化に配慮した自然再生可能エネルギーの利用が活発化してきている中で,平坦地だけでなく,傾斜地に太陽光パネルを設置される事例が近年多くなっている。斜面に重量物である太陽光パネルを配置することによって,地すべり地における上載荷重が増加し,近年多発しているゲリラ豪雨による雨水の急激な浸透によって間隙水圧が上昇して浮力の増加に伴う斜面の滑動が頻発している。一方で,このように斜面に配置されている太陽光パネルには,配置や構造等を工夫すれば地表面への雨水の浸透を抑制することが期待できることから,雨水の利用方法と合わせた災害に強い自然再生可能エネルギー施設への新たな取り組みが社会的な要望となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-188927号公報
【文献】特開平10-219760号公報
【文献】実用新案登録第3229249号公報
【0006】
上記特許文献1の発明の構成は,太陽電池モジュールを設置する敷地面積を有効に活用することが可能な太陽光発電システムである。陸屋根等の略水平面上に架台を設置し,この架台上で,頂上部と谷間部が交互に形成される様に連なる複数の山型に各太陽光電池モジュールを配列支持している。太陽電池モジュールを近接配置しても,太陽電池モジュールの影に他の太陽電池モジュールが入ることがなく,システムの敷地面積を有効に活用できる。また,谷間部に隙間を設けているので,傾斜した太陽電池モジュール表面を流れた雨水を谷間部から効率よく排出させることができる。
【0007】
これに対して,本発明においては太陽光パネルと水路工及び集水ます(桝)を組み合わせて地表面排除工とし,この地表面排除工で集水した雨水を地すべりの末端部においてかご枠及びふとん籠に設置したポリエチレンタンクに蓄えて押え盛土工として利用することを可能とした地すべり対策手法であることから特許文献1とは異なっている。
【0008】
上記特許文献2の発明の構成は,天然資源,天然エネルギーの有効利用を図る雨水リサイクルシステムである。雨水を貯留する貯留タンクと貯留タンクより高い位置に設けられたサブタンクと,両タンクに設けられた液面センサーとを含み,制御回路により液面センサーの信号に連動してポンプを駆動することによって,貯留タンクからサブタンクへ雨水を供給するようにした。また,制御回路等を太陽電池で作動させた。これにより,天然資源を有効活用することができ,しかも,経済的に優位にできるとしたものである。
【0009】
これに対して,本発明においては太陽光パネルと水路工及び集水ます(桝)を組み合わせて地表面排除工とし,この地表面排除工で集水した雨水を地すべりの末端部においてかご枠及びふとん籠に設置したポリエチレンタンクに蓄えて押え盛土工として利用することを可能とした地すべり対策手法であることから特許文献2とは異なっている。
【0010】
上記特許文献3の発明の構成は,太陽光パネルが数多く大規模な場合であっても太陽光パネル面上に降り注ぎ流下する大量の雨水を円滑に処理する太陽光パネルの雨水回収装置を提供する。太陽光パネルの雨水回収装置は,設置面に配置した架台と,架台上に傾斜配置された太陽光パネルに沿って配置されるとともに,太陽光パネル面を流下する雨水の流出側に配置した雨水用の樋ユニットとを有し,樋ユニットは架台により支持され太陽光パネルに沿って配置されるとともに,太陽光パネル面を流下する雨水を受水し,樋底部の途中位置に設けた穴部から雨水を下方に流下させる上樋と上樋の下方に配置され,上樋の穴部から流下する雨水を受水するとともに,長さ方向最頂部からその両側端の長さ方向最低部に向かって双方向下降傾斜形状とし,長さ方向最低部側から雨水を放水する構造の下樋と,下樋を定位置で支持する下樋支持部とを具備するものである。
【0011】
これに対して,本発明においては太陽光パネルと水路工及び集水ます(桝)を組み合わせて地表面排除工とし,この地表面排除工で集水した雨水を地すべりの末端部において雨水タンク式擁壁は,かご枠及びふとん籠に設置したポリエチレンタンクに雨水を蓄えて押え盛土工として利用することを可能とした地すべり対策手法であることから特許文献3とは異なっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで,本発明はソーラーパネルと水路工及び集水ます(桝)を組み合わせて地表面排除工とし,この地表面排除工で集水した雨水を地すべりの末端部においてかご枠及びふとん籠に設置したポリエチレンタンクに雨水を蓄えて押え盛土工として利用することを可能とした地すべり対策を可能とした工法である。
【0013】
本発明の第1は,再生可能エネルギー施設を利用した地すべり及び斜面崩壊対策工法において,地すべり及び崩壊の冠頭部付近には,雨水が浸透しないように太陽光パネルを密閉するように配置し,中腹部においてはソーラーパネルから水路工,集水ます(桝)への連続した集水によって雨水を集め,その集めた雨水を地すべり及び崩壊の末端部に配置したふとん籠及び蛇篭に集めて押さえ盛り土の効果を持たせることで,太陽光パネルを利用した抑制工を可能とした地すべり及び崩壊対策手法である。
【0014】
本発明の第2は,第1の発明に係る再生可能エネルギー施設を利用した地すべり及び斜面崩壊対策工法において,水路工については地すべり及び崩壊の対策として用いられるコンクリート製,鋼製を利用し,末端の雨水タンク式擁壁に利用されるふとん籠及び蛇篭については鋼製の網構造のものを利用して中に埋設するタンクについては鋼製の網構造のものを利用して中に埋設するタンクについは耐候性の高いポリエチレン製のタンクとすることで,ソーラーパネルを利用した抑制工を可能とした地すべり及び崩壊対策工法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上記の構成であるから,次の効果がある。地すべり及び崩壊の冠頭部付近には,雨水が浸透しないようにソーラーパネルを密閉するように配置し,中腹部においてはソーラーパネルから水路工,集水ます(桝)への連続した集水によって雨水を集め,その集めた雨水を地すべり及び崩壊の末端部に配置した雨水タンク式擁壁に利用されるふとん籠及び蛇篭に集めて押さえ盛り土の効果を持たせることが可能である。
【0016】
また,水路工については地すべり及び崩壊の対策として用いられるコンクリート製,鋼製を利用し,末端の雨水タンク式擁壁に利用されるふとん籠及び蛇篭については鋼製の網構造のものを利用して中に埋設するタンクについては耐候性の高いポリエチレン製のタンクとすることで,ソーラーパネルを利用した抑制工の効果を持たせることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】斜面の崩壊状態の平面図である。
図2】斜面の崩壊状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0018】
次に,本発明の実施例を説明する。図において,1は冠頭部ソーラーパネルであり,地表面に雨水が浸透しないように密閉してある。2は地山の崩壊範囲,3は冠頭部のソーラーパネル1に沿って下部に配置した水路,4は斜面の中腹部に設置した中腹部ソーラーパネル,4′・4″は冠頭部のソーラーパネル1と中腹部ソーラーパネル4の間に設置してあるソーラーパネル,4nは中腹部ソーラーパネル4の下位に位置するソーラーパネルである。上記の冠頭部とは地山Gの崩壊範囲2における斜面の頭部であり,中腹部とは崩壊範囲2における斜面の真ん中あたりを示す。
【0019】
5は地山斜面の上部,中腹部,先端部に設けた集水ます(桝),6は斜面の先端部に設けた雨水タンク式擁壁,7は基端を土留工10に接続してある排水管,8は冠頭部のソーラーパネル1及び中腹部ソーラーパネル4等のパネル支持部,9は地山Gにおける崩壊面,10は地山斜面の先端部に設置した土留工,Gは地山を示す。
【0020】
「再生可能エネルギー施設を利用した地すべり対策工法」
次に,本発明の実施例を説明する。
【0021】
再生可能エネルギー施設を利用した地すべり対策手法については,以下により行う。
(1)地すべり及崩壊の冠頭部及びその上部斜面については,地表面に雨水が浸透しないように密閉して冠頭部ソーラーパネル1を設置する。
(2)地すべり及び崩壊の中腹部おいては,中央部に地表面排水の水路3と集水ます(桝)5を配置し,その水路3の両側の等高線上に冠頭部パネル1を設置する。冠頭部ソーラーパネル1で集水した雨水については,等高線上に配置した冠頭部ソーラーパネル1に沿って下部に配置した水路3で受けて中央に配置した水路3に集水する。
(3)地すべり及び崩壊の末端部の土留工10においては,ふとん籠,蛇篭を擁壁状に配置する。このふとん籠,蛇篭の内部には通常であるとぐり石等を充填するものであるが,本発明では耐候性の高いポリエチレン製のタンクを配置することを基本とする。豪雨時に,このポリエチレン製のタンクに上部斜面から集水した雨水が充填されて押さえ盛り土工としての効果を持たせることが可能となる。
【0022】
[効果確認試験1]
表aでは,各対策工と坑廃水量の比較をしており,人工物での全面的地表面遮水の効果が最も高いことが確認されている。(経産省,JOGMEC,地圏環境テクノロジー)
この調査結果から,地すべり及び崩壊の冠頭部及びその上部斜面については,地表面に雨水が浸透しないように密閉して冠頭部ソーラーパネル1を設置することが新たな流水のおそれのある水量の形成の抑制に効果があると判断できる。
【表a】
【0023】
[効果確認試験2]
表bは,地すべり及び崩壊縦断面図を作成し地表,すべり面,水位を想定した模式図である。
【表b】
【0024】
表cでは,地すべり地内にソーラーパネル設置後の地すべりおよび崩壊断面図を作成し地表,すべり面,水位を想定した模式図である。
【表c】
【0025】
表dでは,地すべりおよび崩壊末端部において雨水タンク式擁壁として利用する枠及びふとん籠に設置したポリエチレンタンクに雨水を蓄えて効果を発揮する押え盛土工設置後の地すべりおよび崩壊断面図を作成し地表,すべり面,水位を想定した。
【表d】
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は,地すべり及び崩壊の冠頭部付近には,雨水が浸透しないようにソーラーパネル1を密閉するように配置し,中腹部においてはソーラーパネル4から水路3,集水ます(桝)5への連続した集水によって雨水を集め,その集めた雨水を地すべり及び崩壊の末端部に配置したタンク式擁壁に集めて押さえ盛り土の効果を持たせることが可能とした工法である。
【符号の説明】
【0027】
1… 冠頭部ソーラーパネル
2… 崩壊範囲
3… 水路
4… 中腹部ソーラーパネル
4′ 冠頭部のソーラーパネル1と中腹部ソーラーパネル4の間に設置してあるソーラーパネル
4″ 冠頭部のソーラーパネル1と中腹部ソーラーパネル4の間に設置してあるソーラーパネル
4n 中腹部ソーラーパネル4の下位に設置してあるソーラーパネル
5… 集水ます(桝)
6… 雨水タンク式擁壁
7… 排水管
8… パネル支持部
9… 崩壊面
10… 土留工
G… 地山
【要約】
【課題】
近年自然再生可能エネルギーの利用が活発化しており,傾斜地にソーラーパネルを設置される事例が多くなっている。斜面にソーラーパネルを配置することで,地すべり地における上載荷重が増加し,多発しているゲリラ豪雨による雨水の急激な浸透によって間隙水圧が上昇して浮力の増加に伴う斜面の滑動が頻発している。一方,ソーラーパネルには,配置や構造を工夫すれば地表面への雨水の浸透を抑制することが期待でき,雨水の利用方法と合わせた災害に強い自然再生可能エネルギー施設への取り組みが社会的な要望となっている。
【解決手段】
地すべり及び崩壊の冠頭部付近には,雨水が浸透しないようにソーラーパネルを密閉するように配置し,中腹部においてソーラーパネルから水路,集水桝への集水によって雨水を集め,その集めた雨水を地すべり及び崩壊の末端部に配置したタンク式擁壁に集めて盛り土の効果を持たせる構成。
【選択図】 図1
図1
図2