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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】車両用吸気ホース
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/10 20060101AFI20220311BHJP
【FI】
F02M35/10 101D
F02M35/10 101L
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017193086
(22)【出願日】2017-10-02
(65)【公開番号】P2019065788
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【弁理士】
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 晶子
【審査官】池田 匡利
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-304290(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01101997(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0045138(US,A1)
【文献】特開2009-270672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の通路形成部により空気流通路が形成されたホース本体と、
前記通路形成部の一部を肉厚にすることで該通路形成部の全周に亘って該通路形成部から張り出して形成され、前記空気流通路の空気流通方向と直交する断面に対して傾くように延在する補強部と、を備えていることを特徴とする車両用吸気ホース(ただし、熱可塑性樹脂の繊維からなる不織布の帯状体の一部を重ね合わせて、螺旋状に巻回して形成した車両用吸気ホースにおいて、前記帯状体の片側の幅端部が折り返されて重合部が形成され、その重合部の側に隣合う前記帯状体における前記片側の幅端部と反対側の幅端部により、前記重合部が被覆されていることを特徴とする車両用吸気ホースを除く)。
【請求項2】
筒状の通路形成部により空気流通路が形成されたホース本体と、
前記通路形成部の一部を肉厚にすることで該通路形成部の全周に亘って該通路形成部から張り出して形成され、前記空気流通路の空気流通方向と直交する断面に対して傾くように延在する補強部と、を備えており、
ゴム系材料又は動的架橋熱可塑性エラストマーで構成される
ことを特徴とする車両用吸気ホース。
【請求項3】
筒状の通路形成部により空気流通路が形成されたホース本体と、
前記通路形成部の一部を肉厚にすることで該通路形成部の全周に亘って該通路形成部から張り出して形成され、前記空気流通路の空気流通方向と直交する断面に対して傾くように延在する複数の補強部と、を備えている
ことを特徴とする車両用吸気ホース。
【請求項4】
筒状の通路形成部により空気流通路が形成されたホース本体と、
前記通路形成部の全周に亘って該通路形成部から張り出し、閉環状に形成された補強部と、を備え、
前記補強部は、前記空気流通路の空気流通方向と直交する断面に対して傾くように延在している
ことを特徴とする車両用吸気ホース。
【請求項5】
前記ホース本体は、湾曲部を有し、
前記湾曲部または該湾曲部近傍に配置された前記補強部は、該湾曲部の曲がりの軸となる方向に延在する部位同士がずれるように傾けて形成されている請求項1~4の何れか一項に記載の車両用吸気ホース。
【請求項6】
前記補強部は、前記空気流通路を挟む部位同士が前記空気流通方向にずれた非対称に形成されている請求項1~5の何れか一項に記載の車両用吸気ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンに空気を導入するための車両用吸気ホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両において、エンジンへ空気を導入するための吸気系が、ダクトやホース等によって構成されている。例えば、吸気系は、空気を取り入れる吸気ダクトと、取り入れた空気中から塵や埃等を除去するためのエアクリーナーと、エアクリーナーおよびインテークマニホルドを繋ぐエアクリーナーホースとを備えている。このようなエアクリーナーホースは、ゴム系材料や熱可塑性エラストマー等の合成樹脂よりなるパイプ状の成形品が用いられている。
【0003】
前記エアクリーナーホースには、仮にエアクリーナーのフィルターが詰まって該エアクリーナーホース内の負圧が高くなった場合であっても、エアクリーナーホースが潰れない剛性が要求される。そこで、エアクリーナーホースの表面に補強線条が挿入された肉厚部を形成し、エアクリーナーホースが負圧で潰れないように補強したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平1-80888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の開示のエアクリーナーホースは、負圧に耐えるために、補強リブ線条を挿入すると共に、更に肉厚部を網目状に形成しているので、エアクリーナーホースの重量が嵩んでしまう問題が指摘される。
【0006】
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、補強部によってホース本体を効果的に補強して、補強部による重量増加を抑えることができる車両用吸気ホースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明の車両用吸気ホースは、
筒状の通路形成部により空気流通路が形成されたホース本体と、
前記通路形成部の全周に亘って該通路形成部から張り出して形成され、前記空気流通路の空気流通方向と直交する断面に対して傾くように延在する補強部と、を備えていることを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、補強部を空気流通路の空気流通方向と直交する断面に対して傾けて延在するように形成することで、空気流通路を挟んでずれて延在する補強部によってホース本体を効果的に補強でき、ホース本体の座屈を適切に防止できる。また、補強部によるホース本体の補強効果が高いので、補強部の大きさや数などを抑えて、車両用吸気ホースの重量増加を防止できる。
【0008】
請求項2に係る発明では、前記ホース本体は、湾曲部を有し、
前記湾曲部または該湾曲部近傍に配置された前記補強部は、該湾曲部の曲がりの軸となる方向に延在する部位同士がずれるように傾けて形成されていることを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、湾曲部の曲がりとの関係で傾きが設定された補強部によって、湾曲部の座屈を適切に防止できる。
【0009】
請求項3に係る発明では、前記補強部は、前記空気流通路を挟む部位同士が前記空気流通方向にずれた非対称に形成されていることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、空気流通路を挟む部位同士が空気流通方向にずれた非対称に形成されている補強部によって、ホース本体を効果的に補強でき、ホース本体の座屈を適切に防止できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る車両用吸気ホースによれば、補強部によってホース本体を効果的に補強でき、補強部による重量増加を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の好適な実施例に係るエアクリーナーホースを用いた吸気系を示す説明図である。なお、エアクリーナーホースの補強部を図示省略してある。
図2】実施例のエアクリーナーホースを示す平面図である。
図3】実施例のエアクリーナーホースを示す正面図である。
図4図3のA-A線で切断した端面図である。
図5】(a)は、実施例のエアクリーナーホースの直線部の一部を概略的に示す図2のB矢視図であり、(b)は、実施例のエアクリーナーホースの直線部の一部を概略的に示す図3のC矢視図であり、(c)は、(a)のD-D線断面図であり、(d)は、(b)のE-E線断面図である。
図6】(a)は、実施例のエアクリーナーホースの湾曲部の一部を概略的に示す図2のF矢視図であり、(b)は、実施例のエアクリーナーホースの湾曲部の一部を概略的に示す図3のG矢視図であり、(c)は、(a)のH-H線断面図であり、(d)は、(b)のI-I線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明に係る車両用吸気ホースにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお、実施例では、車両用吸気ホースとして、エアクリーナーホースを例示する。
【実施例
【0013】
図1に示すように、車両の吸気系は、吸気ダクト10から取り入れた空気(外気)を、エアクリーナー12を通して清浄にした後に、エアクリーナーホース14およびスロットルボディ16を介してエンジン18に導くように構成されている。なお、エアクリーナーホース14には、吸気による騒音の発生を抑えるために、共鳴式のレゾネーター(図示せず)を設けてもよい。
【0014】
図2図4に示すように、エアクリーナーホース14は、エアクリーナー12からエンジン18に向けて空気を導く空気流通路24を有するホース本体22を備えている。ホース本体22は、筒状(実施例では円筒形)に形成された通路形成部26によって空気流通路24を画成している。また、ホース本体22の途中には、山折りと谷折りとを繰り返す蛇腹部28が設けられ、ホース本体22を蛇腹部28で曲げることができるようになっている。なお、実施例のホース本体22は、蛇腹部28がエアクリーナー12に繋がる入口側(空気流通方向の上流側)に設けられている。ここで、ホース本体22がエアクリーナー12に繋がる入口側を空気流通方向上流側とし、スロットルボディ16に繋がる出口側を空気流通方向下流側と指称する。
【0015】
図2および図3に示すように、ホース本体22は、通路形成部26が直線的に延在して、空気流通方向上流側から下流側に向けて直線的に通じる空気流通路24が画成された直線部22Aを備えている。また、ホース本体22は、通路形成部26が湾曲するように延在して、空気流通方向上流側から下流側に向かうにつれて曲がる空気流通路24が画成された湾曲部22Bを備え、直線部22Aと湾曲部22Bとが組み合わさった三次元的な形状になっている。具体的には、蛇腹部28の空気流通方向下流側に設けられた湾曲部(区別する場合は上流湾曲部22Baという。)と、該上流湾曲部22Baの空気流通方向下流側に設けられた直線部22Aと、直線部22Aの空気流通方向下流側に設けられた湾曲部(区別する場合は下流湾曲部22Bbという。)とを備えている。
【0016】
エアクリーナーホース14は、ウレタンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレン・プロピレンゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)等のゴム系材料や、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)又は動的架橋熱可塑性エラストマー(TPV)などの熱可塑性エラストマー等で構成され、可撓性を有している。エアクリーナーホース14は、空気流通路24に合わせた中子を設置した成形型において射出成形することで、蛇腹部28および後述する補強部30などの各部を一体的に形成し、空気を吹き込んで膨らませて中子を取り出すことで得られる。
【0017】
図2図6に示すように、エアクリーナーホース14は、ホース本体22における通路形成部26の全周に亘って形成された補強部30を備えている。補強部30は、空気流通路24を画成する壁である通路形成部26から外方へ張り出すように、通路形成部26と一体的に形成されている。すなわち、通路形成部26は、補強部30によって一部領域が肉厚になっている。補強部30は、通路形成部26に連なる幅広の根元から突端に向かうにつれて狭くなる先細りの断面形状で形成されている(図4参照)。実施例の補強部30は、根元が曲面でなだらかに通路形成部26の外面に連なると共に、突端が円弧状に形成された断面形状である。
【0018】
図4図6に示すように、補強部30は、空気流通路24の空気流通方向と直交する断面(以下、基準断面Sという。)に対して傾くように延在している。なお、基準断面Sは、ホース本体22の通路形成部26を補強したい補強位置において、空気流通路24の空気流通方向と直交するように仮想的に設定したものである。また、基準断面Sを規定する空気流通方向は、補強部30の配置位置においてホース本体22の通路形成部26で規定されるものを指し、湾曲部22Bであれば、補強位置の湾曲に沿う接線方向になる。
【0019】
図5および図6に示すように、補強部30は、少なくとも、空気流通路24を挟んで基準断面Sに沿った一方向に延在する部位同士が空気流通方向にずれるように非対称な関係で設けられている。例えば、補強部30は、通路形成部26の周面のある点(位置P1)に対応する部位(部位X1)と、位置P1に対して空気流通方向と直交する方向へ空気流通路24を挟んで反対側の点(位置P2)に対応する部位(X2)とが、空気流通方向にずれている(図5(d)および図6(d)参照)。実施例の補強部30は、空気流通路24を挟んで延在する部位同士が、空気流通方向にずれるように非対称な関係で形成されている。具体的には、補強部30は、部位X1と部位X2とが空気流通方向にずれているだけでなく、通路形成部26の周面において位置P1と位置P2とを結ぶ直線と直交する直線上に位置する位置P3に対応する部位X3と、位置P3と空気流通路24を挟んで反対側の位置P4に対応する部位X4とが、空気流通方向にずれている(図5(c)および図6(c)参照)。このように、通路形成部26の全周に亘って延在する補強部30は、通路形成部26の周方向の各部位が、空気流通方向に直交する方向へ空気流通路24を挟んで非対称に形成されている。また、補強部30は、部位X1~X4が基準断面S上からずれており、補強部30において空気流通路24を挟む部位同士の間に基準断面Sが位置している。
【0020】
図5および図6に示すように、補強部30は、位置P1(P3)に対応する部位X1(X3)から当該位置P1(P3)と空気流通路24を挟んで反対側の位置P2(位置P4)に対応する部位X2(X4)へ向かうにつれて、空気流通方向上流側または下流側へ変位するように傾いている。補強部30は、部位X1(X3)と部位X2(X4)との間の傾きが徐々に変わることで弧状に延在していてもよく(実施例)、傾きが部位X1(X3)と部位X2(X4)との間で一定であってもよく、傾きが途中で変わってもよい。補強部30は、部位X1(X3)と部位X2(X4)とを、基準断面Sに沿う方向で一部重なるようにずらして配置してもよく(図5(c)および図6(c))、部位X1(X3)と部位X2(X4)とを、基準断面Sに沿う方向で重ならないようにずらして形成してもよい(図5(d)および図6(d))。
【0021】
実施例では、エアクリーナーホース14の上面となる通路形成部26の上面を便宜的に位置P1として、補強部30の上端を部位X1としており、これに対応して通路形成部26の下面が位置P2となって、補強部30の下端が部位X2となる。また、空気流通路24を空気流通方向に見た通路形成部26の右面を便宜的に位置P3として、補強部30の右端を部位X3としており、これに対応して通路形成部26の左面が位置P4となって、補強部30の左端が部位X4となっている。
【0022】
図4に示すように、エアクリーナーホース14において、空気流通方向に離して複数の補強部30を設ける場合、複数の補強部30の傾きを同じ方向にすることが好ましい。実施例において空気流通方向に隣り合う補強部30,30は、上端の部位X1に対して下端の部位X2が空気流通方向下流側に位置するように何れも傾くと共に、右端の部位X3に対して左端の部位X4が空気流通方向上流側に位置するように何れも傾けてある。このように、複数の補強部30の傾きを同じ方向にすることで、隣り合う補強部30,30の間が広くあくことを抑えて、通路形成部26(ホース本体22)全体で所望の剛性を確保できる。
【0023】
図2および図4に示すように、エアクリーナーホース14には、直線部22Aに2本の補強部30(特に区別する場合は、第1補強部30Aという。)が設けられると共に、上流湾曲部22Baおよび下流湾曲部22Bbのそれぞれに1本の補強部30(特に区別する場合は第2補強部30Bという。)が設けられている。実施例のホース本体22には、直線部22Aの空気流通方向上流側と下流側とのそれぞれに第1補強部30Aが設けられ、第1補強部30Aが湾曲部22Bとの境(湾曲部22Bの近傍)に配置されている。
【0024】
図5(d)に示すように、第1補強部30Aは、通路形成部26の上面の部位X1よりも通路形成部26の下面の部位X2が空気流通方向下流側に位置するように傾いている。すなわち、第1補強部30Aは、隣接する湾曲部22Bの曲がりの軸となる方向に延在する部位X1と部位X2とがずれるように形成されている。また、第1補強部30Aは、通路形成部26の右面の部位X3よりも通路形成部26の左面の部位X4が空気流通方向上流側に位置するように傾いている(図5(c)参照)。すなわち、第1補強部30Aは、隣接する湾曲部22Bの曲がりの半径方向に延在する部位X3と部位X4とがずれるように形成されている。なお、通路形成部26の全周に亘って空気流通方向に傾けて形成する第1補強部30Aは、直線部22Aと湾曲部22Bとの両方にかかるように形成してもよい。
【0025】
図6に示すように、第2補強部30Bは、湾曲部22Bに対応して設けられている。湾曲部22Bに配置される第2補強部30Bは、少なくとも、湾曲部22Bの曲がりの軸となる方向に延在する部位X1と部位X2とがずれるように傾けて形成される(図6(d)参照)。すなわち、第2補強部30Bは、通路形成部26の上面の部位X1よりも通路形成部26の下面の部位X2が空気流通方向下流側に位置するように傾いている。また、第2補強部30Bは、湾曲部22Bの曲がりの半径方向に延在する部位X3と部位X4とがずれるように傾けて形成されている(図6(c)参照)。すなわち、第2補強部30Bは、通路形成部26の右面の部位X3よりも通路形成部26の左面の部位X4が空気流通方向上流側に位置するように傾いている。実施例では、第2補強部30Bにおいて湾曲部22Bの曲がりの内側になる部位X3が、基準断面Sよりも空気流通方向下流側にずれて、湾曲部22Bの曲がりの外側となる部位X4が、基準断面Sよりも空気流通方向上流側にずれている。このように、第2補強部30Bは、湾曲部22Bの曲がりと関連付けて傾きの方向が設定されており、少なくとも、湾曲部22Bの曲がりの軸となる方向に延在する部位同士がずれるように傾けられる。湾曲部22Bの近傍または湾曲部22Bに一部かかるように設ける第1補強部30Aについても、第2補強部30Bと同様に、隣接する湾曲部22Bの曲がりと関連付けて傾きの方向を設定するとよい。
【0026】
実施例の補強部30は、湾曲部22Bの曲がりの軸となる方向などの通路形成部26が撓み易い補強方向に対応して、基準断面Sに対する傾きを設定してもよい。具体的には、補強部30は、補強方向に対向する位置(例えば湾曲部22BのP1とP2)に対応する部位(X1とX2)同士のずれが、補強方向と直交する方向に対向する位置(湾曲部22BのP3とP4)に対応する部位(X3とX4)同士のずれよりも大きくしてある。
【0027】
例えば、従来のエアクリーナーホースのように、空気流通方向に直交するように基準断面Sの回りに補強線条を設定すると、補強線条の各部が空気流通路24を挟んで全て対称な関係になる。エアクリーナー12の詰まり等によってホース本体22にかかる負圧が高くなり、ホース本体22の通路形成部26の座屈が始まると、全て対称な位置関係にある補強線条では、座屈が始まった部位と空気流通路24を挟んで反対側の部位も座屈が誘発される傾向にある。
【0028】
エアクリーナーホース14は、例えば、通路形成部26の周面における位置P1(P3)に座屈させるような力(負圧)がかかった場合、位置P1(P3)に対応して補強部30の部位X1(X3)が延在しているので、通路形成部26の位置P1(P3)が座屈することを防止できる。補強部30は、位置P1(P3)と該位置P1(P3)に空気流通路24を挟んで対向する位置P2(P4)とを通る基準断面Sに対して傾くように延在しているので、位置P2(P4)に対応する補強部30の部位X2(X4)が、部位X1(X3)に対して空気流通方向上流側または下流側にずれて配置される。部位X1(X3)と部位X2(X4)とが空気流通路24を挟んで非対称に形成された補強部30によって、通路形成部26の位置P1(P3)に力が加わっても位置P2(P4)側での座屈の誘発を回避できる。そして、実施例の補強部30は、部位X1(X3)と部位X2(X4)との関係だけが非対称なのではなく、通路形成部26の全周に亘って空気流通路24を挟む各部位同士の関係が空気流通方向に互いにずれる非対称である。従って、通路形成部26に負圧がかかっても、補強部30によって、通路形成部26の全周に亘って座屈の誘発を防止することができる。
【0029】
このように、エアクリーナーホース14は、ホース本体22の通路形成部26が補強部30によって座屈し難くなり、所望の剛性を確保することができる。しかも、1本の補強部30毎の補強効果が高いので、補強部30の大きさ(幅や高さなど)や本数などを従来よりも抑えることができ、エアクリーナーホース14の重量増加を防止できる。また、補強部30にワイヤー等の補強材を挿入することなく、通路形成部26を部分的に肉厚にすることのみで補強部30を形成することができるため、エアクリーナーホース14の重量増加を防止できると共に、エアクリーナーホース14の製造工程を簡略化できる。ここで、補強部30は、ホース本体22の全周に亘って切れ目なく延在しているので、補強部30の切れ目を起点としてホース本体22が変形することを防止できる。
【0030】
エアクリーナーホース14は、ホース本体22の湾曲部22Bに対応して、第2補強部30Bを設けることで、湾曲部22Bの剛性を確保している。第2補強部30Bは、湾曲部22Bの曲がりの軸となる方向に延在する部位同士がずれるように形成してあるので、曲がりの軸となる方向に座屈し易い湾曲部22Bを適切に補強することができる。
【0031】
前述した実施例に限らず、例えば以下のように変更してもよい。
(1)実施例のように、補強部を外方へ張り出すように形成してホース本体における通路形成部の内面を滑らかに形成することが空気流通路を通る空気の圧力損失の観点から好ましい。しかし、これに限らず、補強部を通路形成部から内方(空気流通路側)へ張り出すように形成することも可能である。
(2)実施例では、ホース本体における通路形成部の直線部に設ける第1補強部を、隣接する湾曲部の曲がりと関連付けて基準断面に対する傾きの方向を設定したが、これに限らず、第1補強部を湾曲部の曲がりを関係なく傾きの方向を設定してもよい。
(3)実施例では、通路形成部の全周に亘って空気流通路を挟む各部位同士の関係を空気流通方向に互いにずれる非対称な関係で補強部を形成したが、これに限らず、例えば、前述した部位X1と部位2とが空気流通方向にずれる非対称であるものの、部位X3とX4とが対称になるように補強部を形成してもよい。このように、補強部の傾きを一軸で設定する際は、湾曲部の曲がりの軸となる方向など、補強部において通路形成部が撓み易い方向に延在する部位同士がずれるように、補強部の傾きを設定するとよい。
(4)実施例ではエアクリーナーホースを例示したが、車両の吸気系ホースを構成するものであれば、これに限らない。
【符号の説明】
【0032】
22 ホース本体,22B 湾曲部,24 空気流通路,26 通路形成部,
30 補強部(30A 第1補強部、30B 第2補強部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6