(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
F24C 15/10 20060101AFI20220311BHJP
H05B 6/12 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
F24C15/10 B
H05B6/12 305
(21)【出願番号】P 2017205018
(22)【出願日】2017-10-24
【審査請求日】2020-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】井下 ちづる
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-243755(JP,A)
【文献】特開平09-007749(JP,A)
【文献】実開昭58-146394(JP,U)
【文献】特開2011-216386(JP,A)
【文献】特開2010-067356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 15/10
H05B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理器具が載置されるトッププレートと、
前記トッププレートの下方に配置され、前記調理器具を加熱する加熱コイルまたは抵抗加熱ヒータである加熱源とを備え、
前記トッププレートには、
前記調理器具が載置される領域を示す載置部と、
前記載置部に接する領域に設けられ、前記トッププレートに前記調理器具が接触した状態での前記載置部の外側へ向かう前記調理器具の移動に対して、抵抗力を生じさせる抵抗部と、が形成されており、
前記抵抗部の前記抵抗力は、前記載置部の外周から外側に向かって段階的あるいは連続的に大きくなるように構成されている
ことを特徴とする
加熱調理器。
【請求項2】
調理器具が載置されるトッププレートと、
前記トッププレートの下方に配置され、前記調理器具を加熱する加熱コイルまたは抵抗加熱ヒータである加熱源とを備え、
前記トッププレートには、
前記調理器具が載置される領域を示す載置部と、
前記載置部に接する領域に設けられ、前記トッププレートに前記調理器具が接触した状態での前記載置部の外側へ向かう前記調理器具の移動に対して、抵抗力を生じさせる抵抗部と、が形成されており、
前記抵抗部は、前記載置部の外周を囲む第1抵抗部と、前記第1抵抗部の外周を囲む第2抵抗部とを含み、
前記第1抵抗部の抵抗力は、前記第2抵抗部の抵抗力よりも大きい
ことを特徴とする
加熱調理器。
【請求項3】
調理器具が載置されるトッププレートと、
前記トッププレートの下方に配置され、前記調理器具を加熱する加熱コイルまたは抵抗加熱ヒータである加熱源とを備え、
前記トッププレートには、
前記調理器具が載置される領域を示す載置部と、
前記載置部に接する領域に設けられ、前記トッププレートに前記調理器具が接触した状態での前記載置部の外側へ向かう前記調理器具の移動に対して、抵抗力を生じさせる抵抗部と、が形成されており、
前記抵抗部は、前記載置部を基準として使用者と対峙する側にある第1抵抗部と、前記使用者と対峙する側とは反対側の領域にある第2抵抗部とを含み、
前記第1抵抗部の前記抵抗力は、前記第2抵抗部の前記抵抗力よりも大きい
ことを特徴とする
加熱調理器。
【請求項4】
調理器具が載置されるトッププレートと、
前記トッププレートの下方に配置され、前記調理器具を加熱する加熱コイルまたは抵抗加熱ヒータである加熱源とを備え、
前記トッププレートには、
前記調理器具が載置される領域を示す載置部と、
前記載置部に接する領域に設けられ、前記トッププレートに前記調理器具が接触した状態での前記載置部の外側へ向かう前記調理器具の移動に対して、抵抗力を生じさせる抵抗部と、が形成されており、
前記抵抗部の前記抵抗力は、前記載置部に接する位置から使用者と対峙する側に向かって、段階的あるいは連続的に大きくなるように構成されている
ことを特徴とする
加熱調理器。
【請求項5】
前記抵抗部は、前記載置部の外周を囲んでいる
ことを特徴とする請求項1
又は請求項4に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記トッププレートの下方には、使用者からの操作入力を前記トッププレートを介して取得する操作部を備え、
前記抵抗部は、平面視において前記操作部と重なる位置に設けられている
ことを特徴とする請求項1~請求項
5のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記トッププレートの下方には、使用者からの操作入力を前記トッププレートを介して取得する操作部を備え、
前記抵抗部は、前記操作部の外周に設けられている
ことを特徴とする請求項1~請求項
5のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記トッププレートの下方には、前記加熱調理器の設定状態を前記トッププレートを介して表示する表示部を備え、
前記抵抗部は、平面視において前記表示部と重なる位置に設けられている
ことを特徴とする請求項1~請求項
6のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項9】
前記トッププレートの下方には、前記加熱調理器の設定状態を前記トッププレートを介して表示する表示部を備え、
前記抵抗部は、前記表示部の外周に設けられている
ことを特徴とする請求項1~請求項
6のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項10】
前記トッププレートの表面に塗布された塗料が前記抵抗部を構成しており、前記抵抗部の前記塗料の摩擦係数は、前記載置部の表面の摩擦係数よりも大きい
ことを特徴とする請求項1~請求項
9のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項11】
前記抵抗部は、前記塗料の厚みが互いに異なる2以上の領域を含む
ことを特徴とする請求項
10記載の加熱調理器。
【請求項12】
前記抵抗部における前記トッププレートの表面は、前記載置部における前記トッププレートの表面よりも高く、前記載置部と前記抵抗部との間に段差が形成されている
ことを特徴とする請求項1~請求項
9のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項13】
前記トッププレートの表面に貼付された、粘着剤又は接着剤が裏面に塗布されたシートを備え、前記シートが前記抵抗部を構成する
ことを特徴とする請求項1~請求項
9のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項14】
前記トッププレートの表面に取り外し可能に載置されたシートを備え、前記シートが前記抵抗部を構成する
ことを特徴とする請求項1~請求項
9のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トッププレートの上に載置される調理器具を加熱する加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
平坦なトッププレートを備え、トッププレートの上に載置される調理容器を、加熱コイルまたは抵抗加熱ヒータを加熱源として加熱する加熱調理器が知られている。このような加熱調理器として、トッププレートの下側に配置した静電容量式スイッチを用いて使用者からの操作入力を受け付ける操作部を構成し、トッププレートの上面全体を平坦化したものも提案されている。
【0003】
ここで、平坦なトッププレートに載置された鍋などの調理器具を加熱しているときに、調理器具とトッププレートとの間に液体が混入して水膜ができた場合や、誘導加熱により調理器具が浮いた場合などには、意図せぬ調理器具の移動が生じうる。このような調理器具の移動は、調理器具とその内部の調理物とを合わせた重量が軽い場合に、生じやすい。
【0004】
また、平坦なトッププレートに載置された調理器具が加熱されると、調理器具の温度が上昇すると同時に、調理器具が接触するトッププレートの温度も上昇して、調理器具とトッププレートとは同等の温度になる。この状態で、調理中や調理後に調理器具が移動させられると、高温の調理器具に接していたトッププレートの部分が露出してしまう。このようなトッププレートの高温部に使用者が注意を払えるようにするため、従来から色々な工夫が提案されてきた。
【0005】
例えば、トッププレート上に配置された操作部と表示部の上部に塗膜を設けて、操作部と表示部の視認性を向上させた加熱調理器が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この加熱調理器はさらに、トッププレートの操作部と表示部以外の領域に塗膜を設けて、調理器具の滑りやすさとトッププレートの傷つきを軽減するように構成されている。
【0006】
また、トッププレートの加熱コイルの上部に位置する部分に、他の部分とは色または模様を異ならせた耐熱塗料による印刷を施した加熱調理器が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0007】
また、トッププレートの上面に、感温変色塗料と滑り防止塗料とを交互に印刷して、調理器具の滑りやすさ軽減するとともに、トッププレートの高温部分の視認性を向上させた加熱調理器が提案されている(たとえば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2009-245753号公報(請求項1)
【文献】特開2004-103445号公報(第6頁)
【文献】特開2009-243755号公報(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
高齢者が使用する加熱調理器として、加熱コイルや抵抗加熱ヒータを加熱源とする加熱調理器が選択される機会が増えている。このような加熱調理器は、調理時に火を使わないこと、およびトッププレートが平坦で清掃が簡単であることが、使用者に好まれる理由の一つである。
【0010】
しかし、高齢者は、調理中に、トッププレートに載置された調理器具を無意識に自身の手前に引き寄せてしまう傾向がある。また、高齢者の視力が低下している場合には、調理中に調理器具をトッププレート上の最適な載置位置に保持することが困難であった。トッププレートに載置された調理器具が移動させられると、加熱源と調理器具との位置関係が変化するため、調理器具が効率よく加熱されなくなってしまう。
【0011】
上記特許文献1の技術によれば、操作部と表示部の視認性が向上される。しかし、調理中に使用者が、意識的、無意識に関わらず、トッププレートに載置された調理器具を押したり引いたりして調理器具に滑らせる力を加えた場合には、容易に調理器具が移動してしまう。
【0012】
上記特許文献2の技術によれば、トッププレートにおける加熱口の視認性が向上される。しかし、加熱口の上に載置された調理器具に滑らせる力が加えられ、加熱口から調理器具が外れてしまうと、容易に調理器具が移動されてしまう。
【0013】
上記特許文献3の技術によれば、トッププレートの全体に滑り防止塗料が塗布されていてトッププレートの上に載置された調理器具が滑りにくくなっている。しかし、一旦、調理器具が移動できるだけの力が加えられると、加熱口の外側に調理器具が移動してしまうことがある。
【0014】
本発明は、上記のような課題を背景としてなされたものであり、トッププレートに載置された調理器具を滑らせる使用者の動作を抑制できる加熱調理器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る加熱調理器は、調理器具が載置されるトッププレートと、前記トッププレートの下方に配置され、前記調理器具を加熱する加熱コイルまたは抵抗加熱ヒータである加熱源とを備え、前記トッププレートには、前記調理器具が載置される領域を示す載置部と、前記載置部に接する領域に設けられ、前記トッププレートに前記調理器具が接触した状態での前記載置部の外側へ向かう前記調理器具の移動に対して、抵抗力を生じさせる抵抗部と、が形成されており、前記抵抗部の前記抵抗力は、前記載置部の外周から外側に向かって段階的あるいは連続的に大きくなるように構成されているものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、載置部に載置された調理器具に、載置部の外側へ向かって滑らせる加えられたときに、抵抗部が調理器具の移動に対する抵抗となる。このため、トッププレートに載置された調理器具を滑らせる使用者の動作を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態1に係る加熱調理器1の概略斜視図である。
【
図2】実施の形態1に係る加熱調理器1の主要部の概略構成図である。
【
図3】実施の形態1に係るトッププレート3の概略平面図である。
【
図5】実施の形態1の変形例1に係るトッププレート3の概略平面図である。
【
図6】実施の形態1の変形例2に係るトッププレート3の概略平面図である。
【
図7】実施の形態1の変形例3に係るトッププレート3の概略平面図である。
【
図8】実施の形態1の変形例4に係るトッププレート3の概略図である。
【
図9】実施の形態1の変形例5に係るトッププレート3の概略図である。
【
図10】実施の形態1の変形例6に係るトッププレート3の概略平面図である。
【
図11】実施の形態1の変形例7に係るトッププレート3の概略平面図である。
【
図12】実施の形態1の変形例8に係るトッププレート3の概略平面図である。
【
図13】実施の形態1の変形例9に係るトッププレート3の概略平面図である。
【
図14】実施の形態1の変形例10に係るトッププレート3の概略図である。
【
図15】実施の形態1の変形例11に係るトッププレート3の概略図である。
【
図16】実施の形態1の変形例12に係るトッププレート3の概略図である。
【
図17】実施の形態1の変形例13に係るトッププレート3の概略平面図である。
【
図18】実施の形態2に係るトッププレート3の概略図である。
【
図19】実施の形態2の変形例1に係るトッププレート3の概略平面図である。
【
図20】実施の形態2の変形例2に係るトッププレート3の概略図である。
【
図21】実施の形態2の変形例3に係るトッププレート3の概略平面図である。
【
図22】実施の形態3に係る第1抵抗部31Bの斜視図である。
【
図23】実施の形態3に係る第1抵抗部31Bの変形例の斜視図である。
【
図24】実施の形態3に係るトッププレート3の斜視図である。
【
図25】実施の形態4に係る第1抵抗部31Cの斜視図である。
【
図26】実施の形態4に係るトッププレート3の斜視図である。
【
図27】実施の形態4の変形例1に係る第1抵抗部31Cが載置されたトッププレート3の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る加熱調理器を、家庭用IH(induction heating)式加熱調理器に適用した場合の実施の形態を、図面を参照して説明する。本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、本発明は、以下の各実施の形態に示す構成のうち、組合せ可能な構成のあらゆる組合せを含むものである。また、図面に示す加熱調理器は、本発明の加熱調理器が適用される機器の一例を示すものであり、図面に示された加熱調理器によって本発明の適用機器が限定されるものではない。また、以下の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば「上」、「下」、「右」、「左」、「前」、「後」など)を適宜用いるが、これらは説明のためのものであって、本発明を限定するものではない。また、各図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。なお、各図面では、各構成部材の相対的な寸法関係又は形状等が実際のものとは異なる場合がある。
【0019】
実施の形態1.
(加熱調理器の構成)
図1は、実施の形態1に係る加熱調理器1の概略斜視図である。
図1に示すように、加熱調理器1は、本体2と、本体2の上面に配置されたトッププレート3とを備えている。本体2の前面には、前面操作部5が設けられている。前面操作部5は、加熱調理器1の電源をON/OFFするための電源スイッチおよび火力を調節するための複数の操作ダイヤルなどを含んでいる。
【0020】
トッププレート3は、例えば、耐熱性のガラス板と、ガラス板の周囲に取り付けられた金属の枠体とにより構成される。トッププレート3には、加熱領域である加熱口が設けられている。本実施の形態では、3つの加熱口が設けられている。加熱口に対応するトッププレート3の上面には、加熱口を示す載置部20が設けられている。載置部20は、鍋やフライパンなどの調理器具が載置される領域を示すものであり、加熱口の数と同数である3つの載置部20が、トッププレート3に設けられている。載置部20の下側の本体2の内部には、加熱源である加熱コイル4が設けられている。載置部20は、加熱源である加熱コイル4の外形と同じ形状か、あるいは、加熱コイル4の外形よりも若干大きい形状に形成される。本実施の形態では、載置部20は平面視で円形状に形成されている。なお、加熱口および加熱コイル4の数および形状は、本発明を限定しない。
【0021】
トッププレート3の手前側には、操作表示部6が設けられている。本実施の形態の操作表示部6は、例えば複数の発光ダイオード(LED)を有する表示画面と、静電容量式のタッチセンサとを備える。タッチセンサは、トッププレート3を介して使用者の操作入力を取得する。操作表示部6は、各載置部20に対応した加熱コイル4の火力、温度、及び調理モードなどの操作入力を受け付ける操作部と、火力操作部で設定された火力の大きさを表す火力表示部と、加熱調理器1の設定状態及び動作状態に関する情報が表示される情報表示部とを含む。ここで、加熱調理器1の動作状態に関する情報とは、選択された調理モード、自動調理の進行状況、載置部20に載置された調理器具の温度および警告情報の表示等が含まれる。
【0022】
図2は、実施の形態1に係る加熱調理器1の主要部の概略構成図である。
図2は、トッププレート3に載置された調理器具300とともに加熱調理器1の概略断面と機能構成とを併せて示している。
図2では、一つの加熱コイル4についてのみ図示しているが、他の加熱コイル4に関連する構造も同様の構造である。
図2に示すように、加熱調理器1の本体2の内部であって、トッププレート3の下方には、加熱コイル4と、加熱コイル4を支持するコイルベース9と、コイルベース9の下面に配置される複数のフェライトコア10と、赤外線センサ11とが設けられている。トッププレート3の裏面には、接触式温度センサ12が取り付けられている。また、温度検出部13、制御部14、およびインバータ15が設けられている。
【0023】
加熱コイル4は、トッププレート3に設けられた載置部20の下方に配置される。加熱コイル4は、たとえば銅線またはアルミ線などの導線を巻回して構成されたコイルであり、高周波電流が供給されることで高周波磁界を発生する。本実施の形態の加熱コイル4は、二重環状であるが、加熱コイル4の形状及び配置は図示のものに限定されない。なお、加熱コイル4に代えて、加熱源として抵抗加熱ヒータを備えていてもよい。
【0024】
コイルベース9は、合成樹脂などで構成され、加熱コイル4を収容し支持する。
【0025】
フェライトコア10は、非導電性で高透磁率を有する強磁性材料からなる棒状の部材である。フェライトコア10を設けることで、加熱コイル4の下方向への漏れ磁束が抑制され、加熱効率の向上および調理器具300の均熱化を図ることができる。フェライトコア10の形状および構成は本発明を限定しない。
【0026】
接触式温度センサ12は、トッププレート3の裏面、すなわち加熱コイル4と対向する面に接触して配置される。接触式温度センサ12を、1つの加熱コイル4に対して複数設けてもよい。接触式温度センサ12は、トッププレート3の上に載置される調理器具300の温度を、トッププレート3を介して検出する。
【0027】
赤外線センサ11は、加熱コイル4上のトッププレート3に載置された調理器具300の底部から放射される赤外線エネルギーを検出する。赤外線センサ11は、加熱コイル4の近傍を流れる冷却風が直接当たらないように、周囲をセンサケース110で覆われている。赤外線センサ11の周囲の雰囲気温度が一様となるように、赤外線センサ11はセンサケース110に空間距離を保ちながら保持されている。センサケース110は、コイルベース9にタッピングネジなどで止められる、あるいはコイルベース9と一部が一体で形成されるなどしており、トッププレート3と赤外線センサ11との間の距離が一定に保たれている。
【0028】
トッププレート3の載置部20には、透過窓16が設けられている。透過窓16は、トッププレート3を透過する調理器具300の赤外線を赤外線センサ11が検出できるようにするために設けられたものである。透過窓16は、載置部20の範囲内であって、赤外線センサ11の検出部と対向する位置に、設けられている。赤外線が透過しやすいように、透過窓16には塗装を施さないことが望ましい。しかしながら、透過窓16に塗装を施さない場合、トッププレート3の上から本体2の内部の加熱コイル4や配線などが見えてしまうおそれがあり、意匠上望ましくない。このため、透過窓16に塗装を施さない場合には、加熱コイル4を保持するコイルベース9やセンサケース110に、トッププレート3の方向に向かって筒や板を設けるようにすればよい。このような目隠しのための筒や板を設けることで、加熱コイル4や配線などを外部から見えにくくすることができる。また、透過窓16の全面を塗装で覆うのではなく、透過窓16に対してドット状やストライプ状に塗装を施して塗装されていない開口部の割合を少なくするようにしてもよく、このようにすることで意匠性と機能性とを担保することが可能となる。
【0029】
温度検出部13は、その機能を実現する回路デバイスなどのハードウェア、またはマイコン等の演算装置およびその上で実行されるソフトウェアで構成される。温度検出部13は、赤外線センサ11および接触式温度センサ12からの出力値を受信し、受信した出力値に基づいて調理器具300の温度を算出する。
【0030】
制御部14は、その機能を実現する回路デバイスなどのハードウェア、またはマイコン等の演算装置およびその上で実行されるソフトウェアで構成される。制御部14は、前面操作部5または操作表示部6に入力された設定内容に基づいて、加熱調理器1の動作を制御する。また、制御部14は、使用者によって設定された調理温度と、温度検出部13によって算出された調理器具300の温度とに基づいてインバータ15を制御し、加熱制御を行う。
【0031】
インバータ15は、商用電源200の交流電源を高周波電流に変換して、加熱コイル4へ供給する駆動回路である。なお、加熱調理器1は、
図2に示す以外の構成を含んでもよく、例えば、外部機器との通信を行う通信部などを備えてもよい。また、制御部14が温度検出部13の機能を備える構成としてもよい。
【0032】
(トッププレートの構成)
図3は、実施の形態1に係るトッププレート3の概略平面図、
図4は、
図3のA1-A2の概略断面図である。本実施の形態では、トッププレート3の上面の載置部20の外側に、第1抵抗部31及び第2抵抗部32が設けられている。説明のため、
図3及びこれ以降の図面では、第1抵抗部31及び第2抵抗部32をハッチングまたは網掛けで示している。
【0033】
第1抵抗部31は、載置部20を囲む形状を有し、載置部20の外側に載置部20に接して設けられている。
図3の第1抵抗部31は、円形の載置部20の外周と相似形の環状である。第2抵抗部32は、第1抵抗部31を囲む形状を有し、第1抵抗部31の外周に接して設けられている。
図3の例では、3つの第1抵抗部31の全体を第2抵抗部32が囲んでおり、トッププレート3の上面のうち、載置部20及び第1抵抗部31を除く部分全体が、第2抵抗部32である。第2抵抗部32は、操作表示部6と重なる領域にも設けられている。第1抵抗部31および第2抵抗部32は、トッププレート3に調理器具が接触した状態での、載置部20の外側へ向かう調理器具の移動に対して、抵抗力を生じさせる。載置部20と、第1抵抗部31と、第2抵抗部32とでは、上述した調理器具の移動に対する抵抗力の大きさが、互いに異なる。
【0034】
本実施の形態では、トッププレート3の表面に、ガラス系無機質、熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等で構成された塗料を用いて印刷し、この塗料によって上述した調理器具の移動に対する抵抗力を構成する。なお、印刷に用いられる塗料は、上記に限らず、比較的高い剛性と低い脆性を持ち、有害物質を含まない素材で有れば、広範な材料を用いることができる。
【0035】
図4(a)~(c)を参照して、載置部20、第1抵抗部31および第2抵抗部32の複数の構成例を説明する。
図4(a)に示す例では、トッププレート3の上面に塗料101が設けられている。載置部20、第1抵抗部31、第2抵抗部32の順に、塗料101の厚みが大きくなっている。そして、載置部20、第1抵抗部31および第2抵抗部の互いの境界部分には、塗料の厚みの差異によって生じる段差が形成されている。調理器具が滑らされて段差に当たったときの衝撃で、使用者は調理器具の移動に気づくことができるので、載置部20の外側への調理器具の移動が抑制される。載置部20と第1抵抗部31との間の段差よりも、第1抵抗部31と第2抵抗部32との間の段差を大きくしてもよい。このようにすることで、トッププレート3の外周に近づく方向への調理器具の移動を、さらに抑制することができる。また、載置部20には、塗料101を設けなくてもよい。
【0036】
図4(b)に示す例では、トッププレート3の上面の載置部20と、第1抵抗部31と、第2抵抗部32とに、異なる摩擦係数を有する塗料101a、101b、101cが設けられている。ここで、摩擦係数は、静止摩擦係数と動摩擦係数とを含む。使用者がトッププレート3の上に載置された調理器具を移動させたときに、摩擦係数の異なる塗料によって生じる摩擦力の変化を使用者が感じるため、使用者は調理器具を移動させているという状態を認識しやすくなる。塗料の摩擦係数が高いほど、調理器具の移動に対する抵抗力が大きくなることから、載置部20の塗料101a、第1抵抗部31の塗料101b、第2抵抗部32の塗料101cの順に、摩擦係数を高くする。このようにすることで、トッププレート3の外周に近づく方向への調理器具の移動を、さらに抑制することができる。また、載置部20には、塗料101aを設けなくてもよい。
【0037】
図4(c)に示す例では、トッププレート3の上面に、載置部20と、第1抵抗部31と、第2抵抗部32とで、塗料の配置密度及び塗料の配置形状を異ならせている。塗料の印刷密度が高いほど、調理器具の移動に対する抵抗力が大きくなることから、載置部20の塗料101a、第1抵抗部31の塗料101b、第2抵抗部32の塗料101cの順に、印刷密度を高くしている。また、調理器具の移動に対する抵抗力は、印刷密度のみならず、配置された塗料の形状、特に塗料の上面の形状の影響も受ける。印刷密度が高い場合でも、塗料の上面の形状によっては抵抗力が低くなって調理器具が滑りやすくなることがある。このため、
図4(c)に示すように、載置部20、第1抵抗部31、第2抵抗部32の順に調理器具の移動に対する抵抗力が大きくなるように、それぞれに配置される塗料101a、101b、101cの上面の形状を構成する。
【0038】
なお、
図4(a)、(b)、(c)で例示した構成を互いに組み合わせてもよい。また、第2抵抗部32を設けなくてもよい。また、載置部20のそれぞれに対応させて第1抵抗部31を設けるのではなく、複数の載置部20を囲む1つの第1抵抗部31を設けてもよい。
【0039】
以上のように、本実施の形態では、調理器具が載置される載置部20に接する領域に、トッププレート3に調理器具が接触した状態での載置部20の外側へ向かう調理器具の移動に対して抵抗力を生じさせる、第1抵抗部31を備えた。本実施の形態によれば、載置部20に載置された調理器具に、載置部20の外側へ滑らせる力が加えられたときに、第1抵抗部31が調理器具の移動に対する抵抗となる。このため、載置部20に載置された調理器具の、載置部20の外側への移動が抑制される。たとえば調理中の使用者が、意図せずに調理器具を引き寄せたり押したりして、調理器具を滑らせる動作を行った場合でも、第1抵抗部31が生じさせる抵抗力によって使用者が自身の動作を認識しやすいため、調理器具を移動させる動作が停止されうる。使用者が触れている調理器具から得る感覚で調理器具の移動に対する抵抗力を認識できるので、高齢者や視覚障害者であっても、調理器具の移動を認識しやすい。調理器具の移動が抑制されることで、調理器具を載置部20内に保持した状態で加熱調理を行うことができる。調理器具が載置部20内に保持された状態で加熱調理が行われることで、調理器具の加熱ムラが低減されて調理の仕上がりが向上するとともに、加熱調理に寄与しない電力の増加による消費電力の増加を抑制できる。
【0040】
また、調理器具が載置部20内に保持された状態で加熱調理が行われることで、載置部20以外のトッププレート3が、加熱された調理器具の熱で高温化することを抑制できる。このため、使用者が高温になったトッププレート3に接触する機会を低減できる。また、トッププレート3の下側に配置される操作表示部6が高温環境にさらされる機会を低減でき、操作表示部6の耐久性を向上することが可能となる。
【0041】
また、載置部20の外側に設けられた第1抵抗部31は、調理容器から吹きこぼれた液体の移動に対する抵抗力を発生させる。このため、吹きこぼれが発生した場合でも、吹きこぼれた液体がトッププレート3に広がる速度を低減できるため、トッププレート3の汚れの範囲の拡大を抑制できる。
【0042】
また、
図4(a)に例示したように、載置部20の塗料101の厚みを、第1抵抗部31および第2抵抗部32よりも小さくした場合には、調理器具の底面とトッププレート3の上面との間の距離を、相対的に小さくできる。このため、調理器具の加熱効率を向上させることができる。
【0043】
(変形例)
以下、図面を参照して、第1抵抗部31及び第2抵抗部32の配置または形状の変形例を説明する。
【0044】
図5は、実施の形態1の変形例1に係るトッププレート3の概略平面図である。
図5に示す例では、トッププレート3のうち、平面視において操作表示部6と重なる領域には、第1抵抗部31及び第2抵抗部32が設けられていない。このように構成することで、タッチパネル式の操作表示部6の感度および表示の視認性を向上することができる。
【0045】
図6は、実施の形態1の変形例2に係るトッププレート3の概略平面図である。
図6に示す例では、第1抵抗部31がトッププレート3の載置部20を除く領域に設けられており、第2抵抗部32が設けられていない。このように構成することで、トッププレート3の製造工程を削減でき、加熱調理器1の生産性を向上させることができる。
【0046】
図7は、実施の形態1の変形例3に係るトッププレート3の概略平面図である。
図7に示す例では、第1抵抗部31が、トッププレート3のうち、載置部20の左右及び後方の全体と、載置部20の前側の一部に設けられている。第2抵抗部32は、トッププレート3のうち、平面視において操作表示部6と重なる領域に設けられている。
図7の第2抵抗部32は、操作表示部6の外側の領域にも設けられている。調理容器の移動に対する抵抗力は、第1抵抗部31の方が第2抵抗部32よりも大きい。このように、第1抵抗部31よりも調理容器の移動に対する抵抗力の大きい第2抵抗部32を、操作表示部6と重なる領域に設けている。このように構成することで、トッププレート3の上に載置された調理容器が、第2抵抗部32の上、つまり操作表示部6の上に移動させられるのを抑制できる。このため、使用者が接触する頻度が高い操作表示部6が、加熱された調理容器の熱で高温化するのを抑制できる。
【0047】
図8(a)は、実施の形態1の変形例4に係るトッププレート3の概略平面図、
図8(b)は
図8(a)のB1-B2の概略断面図である。
図8(b)に示すように、第1抵抗部31の厚みを、載置部20及び第2抵抗部32の厚みよりも大きくすることで、載置部20の外周に第1抵抗部31からなる凸部が形成されている。ここで、第1抵抗部31の厚みは、トッププレート3の上面と第1抵抗部31の上面との間の距離である。
【0048】
図9(a)は、実施の形態1の変形例5に係るトッププレート3の概略平面図、
図9(b)は
図9(a)のC1-C2の概略断面図である。
図9(b)に示すように、第1抵抗部31の厚みを、載置部20及び第2抵抗部32の厚みよりも小さくすることで、載置部20の外周に第1抵抗部31からなる凹部が形成されている。ここで、第1抵抗部31の厚みは、トッププレート3の上面と第1抵抗部31の上面との間の距離である。
【0049】
変形例4の
図8および変形例5の
図9に示すように、載置部20と第1抵抗部31との間に段差を設けることで、トッププレート3に載置された調理容器の移動に、使用者が気づきやすくなる。たとえば使用者がトッププレート3に載置された調理容器を動かす場合、調理容器の底面全体がトッププレート3に接触しているとは限らず、調理容器が傾けられて底面の一部がトッププレート3に接触している状況もある。そのような状況でも、載置部20の外周に設けられた第1抵抗部31との間に段差を設けることで、段差を乗り越えたときの調理容器の衝撃が使用者に伝わるため、使用者に調理容器の移動に気づかせやすくすることができる。
【0050】
図10は、実施の形態1の変形例6に係るトッププレート3の概略平面図である。変形例6では、載置部20を基準として使用者と対峙するトッププレート3の一辺側に、第1抵抗部31が設けられている。ここで、トッププレート3の使用者と対峙する側とは、加熱調理器1が使用されるときに使用者と主に対面することを予定している側をいう。たとえば、操作部または表示部が設けられた側、本体2に内蔵されたグリルまたは収納庫の扉が設けられた側をいう。本実施の形態では、操作表示部6が設けられたトッププレート3の手前側に、第1抵抗部31が設けられている。載置部20よりもトッププレート3の奥側、すなわち奥行き方向において第1抵抗部31の反対側の領域には、第2抵抗部32が設けられている。調理容器の移動に対する抵抗力は、第1抵抗部31の方が第2抵抗部32よりも大きい。このように構成することで、トッププレート3の手前側から調理器具を操作する使用者が、調理容器を手前側に引き寄せて移動させるのを抑制することができる。
【0051】
図11は、実施の形態1の変形例7に係るトッププレート3の概略平面図である。変形例7は、トッププレート3の外周のいずれの方向からでも、調理容器を載置及び移動したり操作したりできるように、トッププレート3の固定位置には操作表示部6が設けられていない。トッププレート3の四辺のいずれもが、使用者と対峙して使用されうる。この変形例7は、いわゆるアイランドキッチンに適した構成である。変形例7では、複数の載置部20の外周全周に渡る領域に第1抵抗部31が設けられ、第1抵抗部31の外周を囲む領域に第2抵抗部32が設けられている。このように構成することで、トッププレート3の周囲のいずれの方向から使用者が調理容器を操作する場合であっても、使用者が調理容器を引き寄せて移動させるのを抑制することができる。
【0052】
図12は、実施の形態1の変形例8に係るトッププレート3の概略平面図である。変形例8では、トッププレート3の載置部20を除く領域全体に、第1抵抗部31が設けられている。この第1抵抗部31は、調理容器の移動に対する抵抗力が異なる複数の部分31a、31b、31c、31dを含んでいる。
図12の例では、トッププレート3の奥側(紙面上側)から手前側(紙面下側)に向かって、部分31a、31b、31c、31dの順で抵抗力が大きい。言い換えると、載置部20に接する位置から、使用者が対峙する側に向かって、平行に段階的に抵抗力が大きくなるように、第1抵抗部31が構成されている。
【0053】
図13は、実施の形態1の変形例9に係るトッププレート3の概略平面図である。変形例9では、変形例8と同様に、トッププレート3の載置部20を除く領域全体に、調理容器の移動に対する抵抗力が異なる複数の部分31a、31b、31c、31dを含む第1抵抗部31が設けられている。変形例9の部分31a~31dの形状及び配置は、変形例8とは異なる。変形例9では、載置部20の外周から外側に向かって、放射状に段階的に抵抗力が大きくなるように、第1抵抗部31が構成されている。
【0054】
変形例8の
図12および変形例9の
図13に示すように、第1抵抗部31の抵抗力を段階的に異ならせることで、使用者に調理容器の移動に気づかせやすくすることができる。
図12の例の場合、載置部20に対して手前側に使用者が調理容器を引き寄せて移動させるにしたがって、使用者が感じる調理容器の移動に対する抵抗も大きくなるので、調理容器の手前側への移動が抑制される。また、
図13の例の場合、載置部20から離れる方向に使用者が調理容器を引き寄せて移動させるにしたがって、使用者が感じる調理容器の移動に対する抵抗も大きくなる。このため、載置部20の外周のいずれの方向から調理容器が操作された場合でも、調理容器の移動が抑制される。
【0055】
図14(a)は、実施の形態1の変形例10に係るトッププレート3の概略平面図、
図14(b)は
図14(a)のD1-D2の概略断面図である。変形例10では、トッププレート3の載置部20を除く領域のうち、トッププレート3の手前側の領域に、第1抵抗部31が設けられている。第1抵抗部31は、
図14(b)に示すように、載置部20からトッププレート3の手前側に向かって第1抵抗部31を構成する塗料の厚みが連続的に大きくなるように構成されている。すなわち、第1抵抗部31は、使用者が対峙する側に向かって、平行に連続的に抵抗力が大きくなるように、構成されている。なお、
図14ではトッププレート3の奥行き方向の手前側にのみ第1抵抗部31を設けた例を示しているが、載置部20を除くトッププレート3の全体に第1抵抗部31を設けてもよい。
【0056】
図15(a)は、実施の形態1の変形例11に係るトッププレート3の概略平面図、
図15(b)は
図15(a)のE1-E2の概略断面図である。変形例11では、トッププレート3の載置部20を除く領域全体に、第1抵抗部31が設けられているが、載置部20の外周から外側に向かって、放射状に連続的に第1抵抗部31を構成する塗料の厚みが大きくなるように、第1抵抗部31が構成されている。
図15(b)では、トッププレート3の手前側の2つの載置部20に渡る領域の概略断面のみを示しているが、すべての載置部20の外周に、放射状に連続的に厚みが大きくなる第1抵抗部31が設けられている。
【0057】
変形例10、11に示すように、第1抵抗部31の塗料の厚みを調整して抵抗力を連続的に異ならせることで、使用者に調理容器の移動に気づかせやすくすることができる。
図14の例の場合、載置部20に対して手前側に使用者が調理容器を引きずって移動させるにしたがって、使用者が感じる調理容器の移動に対する抵抗も大きくなるので、調理容器の手前側への移動が抑制される。また、
図15の例の場合、載置部20から離れる方向に使用者が調理容器を引きずって移動させるにしたがって、使用者が感じる調理容器の移動に対する抵抗も大きくなる。このため、載置部20の外周のいずれの方向から調理容器が操作された場合でも、調理容器の移動が抑制される。
【0058】
図16(a)は、実施の形態1の変形例12に係るトッププレート3の概略平面図、
図16(b)は
図16(a)のF1-F2の概略断面図である。変形例12では、トッププレート3の載置部20を除く領域に、トッププレート3の幅方向に長い線形状の複数の第1抵抗部31を、奥行き方向に互いに間隔をあけて配置したものである。
図16の例では、隣接する第1抵抗部31と第1抵抗部31との間には、抵抗部を構成する塗料が設けられていない。しかし、隣接する第1抵抗部31と第1抵抗部31との間に、第1抵抗部31とは調理容器の移動に対する抵抗力の異なる第2抵抗部32を設けてもよい。
【0059】
図17は、実施の形態1の変形例13に係るトッププレート3の概略平面図である。変形例13では、トッププレート3の載置部20を除く領域に、環状の複数の第1抵抗部31を、載置部20の径方向に互いに間隔をあけて配置したものである。
図17の例では、隣接する第1抵抗部31と第1抵抗部31との間には、抵抗部を構成する塗料が設けられていない。しかし、隣接する第1抵抗部31と第1抵抗部31との間に、第1抵抗部31とは調理容器の移動に対する抵抗力の異なる第2抵抗部32を設けてもよい。
【0060】
変形例12の
図16および変形例13の
図17に示すように第1抵抗部31を設けることで、調理容器の移動に対する抵抗力の異なる領域が交互に形成される。変形例12、13の載置部20に載置された調理容器を、使用者が引き寄せて移動させると、間隔をあけて配置された第1抵抗部31から生じる抵抗力の変化を、使用者は調理容器を介して感じることができる。このように、抵抗力が変化したときの調理容器の衝撃が使用者に伝わるため、使用者に調理容器の移動に気づかせやすくすることができる。また、第1抵抗部31を形成する面積が、他の変形例と比べて小さいため、第1抵抗部31を構成する塗料の材料費の削減が可能になる。
【0061】
実施の形態2.
実施の形態1では、トッププレート3の表面に設けた塗料によって第1抵抗部31を構成する例を示した。本実施の形態では、トッププレート3の表面の形状によって構成された第1抵抗部31Aを説明する。本実施の形態では、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0062】
図18(a)は、実施の形態2に係るトッププレート3の概略平面図、
図18(b)は、
図18(a)のG1-G2の概略断面図である。
図18に示すように、トッププレート3の表面を凹ませることによって、載置部20Aが構成されている。言い換えると、トッププレート3の表面位置を高くすることによって、第1抵抗部31Aが構成されている。載置部20Aと第1抵抗部31Aとの間には、段差33が形成されている。
【0063】
このように本実施の形態では、トッププレート3に形成された凸部からなる第1抵抗部31Aを設け、載置部20Aに接する第1抵抗部31Aと載置部20Aとの間に段差33を設けた。このため、載置部20Aに載置された調理容器が使用者によって外側へ引き寄せられた場合には、載置部20Aと第1抵抗部31Aとの間の段差33を乗り越えたときの調理容器の衝撃が使用者に伝わる。このような作用により、使用者に調理容器の移動に気づかせやすくすることができる。また、トッププレート3を成形する際に、載置部20Aおよび第1抵抗部31Aを形成することができ、実施の形態1の塗料101を使用しないので、第1抵抗部31Aの材料費が削減される。
【0064】
(変形例)
以下、図面を参照して、第1抵抗部31Aの配置または形状の変形例を説明する。以下の変形例のように構成しても、実施の形態2と同様の効果を得ることができる。
【0065】
図19は、実施の形態2の変形例1に係るトッププレート3の概略平面図である。
図19に示す例では、複数の加熱コイル4を包含するトッププレート3の領域に、載置部20Aを設け、載置部20Aの外側に、枠状の第1抵抗部31Aを設けている。載置部20Aと第1抵抗部31Aとの間の段差33の平面形状は、矩形である。
【0066】
図20(a)は、実施の形態2の変形例2に係るトッププレート3の概略平面図、
図20(b)は、
図20(a)のH1-H2の概略断面図である。
図20(b)に示すように、第1抵抗部31Aに対応するトッププレート3の厚みを、載置部20A及びその他の部分の厚みよりも大きくすることで、載置部20Aの外周に平面視で環状の凸部からなる第1抵抗部31Aが形成されている。
【0067】
図21は、実施の形態2の変形例3に係るトッププレート3の概略平面図である。変形例3では、トッププレート3の載置部20Aを除く領域に、トッププレート3の幅方向に長い線形状の凸部からなる複数の第1抵抗部31Aが、奥行き方向に互いに間隔をあけて形成されている。
【0068】
実施の形態3.
本実施の形態では、トッププレート3とは別部材によって構成された第1抵抗部31Bを説明する。本実施の形態では、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0069】
図22は、実施の形態3に係る第1抵抗部31Bの斜視図である。
図23は、実施の形態3に係る第1抵抗部31Bの変形例の斜視図である。第1抵抗部31Bは、裏面に粘着剤又は接着剤が塗布されたシートで構成される。第1抵抗部31Bを構成するシートの材料は、耐熱性と低い脆性を持ち、有害物質を含まない素材であれば、広範な材料を用いることができる。また、適度な柔軟性と張りを持ち合わせた材料とすることで、トッププレート3に貼付しやすい構成としてもよい。
図22の第1抵抗部31Bは、環状であり、
図23の第1抵抗部31Bは、短冊状である。第1抵抗部31Bの厚み、形状、色、および模様は、特に限定されない。また、第1抵抗部31Bの裏面に、繰り返し脱着可能な粘着剤又は接着剤を塗布してもよい。
【0070】
図24は、実施の形態3に係るトッププレート3の斜視図である。
図24に示すように、トッププレート3の表面に、第1抵抗部31Bが貼り付けられる。第1抵抗部31Bは、載置部20の外周に接する位置に貼り付けるのが好ましいが、載置部20の外周と接する位置以外に、第1抵抗部31Bを貼り付けてもよい。
【0071】
このように本実施の形態では、平らなトッププレート3の表面に、別部材からなる第1抵抗部31Bを設けた。このため、トッププレート3の載置部20と第1抵抗部31Bとの間には、トッププレート3と第1抵抗部31Bの上面との高低差による段差が形成される。このため、載置部20に載置された調理容器が使用者によって外側へ引きずられた場合には、載置部20と第1抵抗部31Bとの間の段差を乗り越えたときの調理容器の衝撃が使用者に伝わるため、使用者に調理容器の移動に気づかせやすくすることができる。
【0072】
また、本実施の形態の第1抵抗部31Bは、トッププレート3とは別体であるため、第1抵抗部31Bが汚れたり劣化したりした場合には、第1抵抗部31Bを交換できる。このため、加熱調理器のメンテナンス性を向上させることができる。また、第1抵抗部31Bの配置、厚み、形状、色、模様の設計の自由度を向上させることができる。このため、たとえば、使用者が高齢者である場合にはトッププレート3の手前側だけに第1抵抗部31Bを設ける、視覚障害者である場合には厚みを厚くした第1抵抗部31Bを設ける、といったように、使用者の状況に合わることができる。また、トッププレート3の表面のデコレーションとして、第1抵抗部31Bを機能させることもできる。したがって、使用者の多様な好みに応じた加熱調理器を提供することができる。
【0073】
実施の形態4.
本実施の形態では、トッププレート3とは別部材によって構成された第1抵抗部31Cを説明する。本実施の形態では、実施の形態3との相違点を中心に説明する。
【0074】
図25は、実施の形態4に係る第1抵抗部31Cの斜視図である。第1抵抗部31Cは、耐熱性のある合成樹脂(シリコン)等を材料とするシートで構成され、外形は矩形である。第1抵抗部31Cの内側には、載置部20の形状と概ね対応した形状の穴34が形成されている。第1抵抗部31Cを構成するシートの材料は、結晶化ガラス、シリコン等の樹脂、グラスファイバー、セラミック、金属等、耐熱性と低い脆性を持ち、熱容量や熱伝導が低い有害物質を含まない素材で有れば、広範な材料を用いることができる。また、適度な柔軟性と張りを持ち合わせた材料で第1抵抗部31Cを構成することで、トッププレート3に載置しやすくできる。第1抵抗部31Cの厚み、形状、色、および模様は、特に限定されない。
【0075】
図26は、実施の形態4に係るトッププレート3の斜視図である。
図26に示すように、トッププレート3の表面に、第1抵抗部31Cが載置される。第1抵抗部31Cの穴34と載置部20とを対応させるようにして、第1抵抗部31Cが載置されることで、載置部20の外周に第1抵抗部31Cが位置する。第1抵抗部31Cを構成するシートは、トッププレート3の上に取り外し可能に載置される。
【0076】
このように本実施の形態では、平坦なトッププレート3の表面に、別部材からなる第1抵抗部31Cを設けた。このため、トッププレート3の載置部20と第1抵抗部31Cとの間には、トッププレート3と第1抵抗部31Cの上面との高低差による段差が形成される。このため、載置部20に載置された調理容器が使用者によって外側へ引き寄せられた場合には、載置部20と第1抵抗部31Cとの間の段差を乗り越えたときの調理容器の衝撃が使用者に伝わるため、使用者に調理容器の移動に気づかせやすくすることができる。
【0077】
また、本実施の形態の第1抵抗部31Cは、トッププレート3とは別体であるため、実施の形態3で述べたように、メンテナンス性がよく、また使用者の多様な好みに応じた加熱調理器を提供することができる。
【0078】
(変形例)
図27は、実施の形態4の変形例1に係る第1抵抗部31Cが載置されたトッププレート3の斜視図である。この変形例1の第1抵抗部31Cは、トッププレート3の表面全体を覆う形状を有し、載置部20と対応する位置に、穴34が形成されている。このように第1抵抗部31Cでトッププレート3の載置部20を除く領域を覆うことで、トッププレート3の汚れや破損を抑制できる。なお、この第1抵抗部31Cの、操作表示部6に対応する位置に、穴を設けてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 加熱調理器、2 本体、3 トッププレート、4 加熱コイル、5 前面操作部、6 操作表示部、9 コイルベース、10 フェライトコア、11 赤外線センサ、12 接触式温度センサ、13 温度検出部、14 制御部、15 インバータ、16 透過窓、20 載置部、20A 載置部、31 第1抵抗部、31A 第1抵抗部、31B 第1抵抗部、31C 第1抵抗部、31a 部分、31b 部分、31c 部分、31d 部分、32 第2抵抗部、33 段差、34 穴、101 塗料、101a 塗料、101b 塗料、101c 塗料、110 センサケース、200 商用電源、300 調理器具。