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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】均質な無ハロゲン装飾表面被覆材
(51)【国際特許分類】
   C09D 153/00 20060101AFI20220311BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20220311BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20220311BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20220311BHJP
   E04F 15/16 20060101ALI20220311BHJP
   C09D 153/02 20060101ALI20220311BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20220311BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
C09D153/00
C08L53/00
C08L75/04
C09D175/04
E04F15/16 Z
C09D153/02
C08L83/04
C09D183/04
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2017559658
(86)(22)【出願日】2016-05-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2016061002
(87)【国際公開番号】W WO2016184845
(87)【国際公開日】2016-11-24
【審査請求日】2019-02-20
(31)【優先権主張番号】15167990.9
(32)【優先日】2015-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512280873
【氏名又は名称】タルケット・ゲーデーエル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヘレーナ・ヨハンソン
(72)【発明者】
【氏名】ローランド・カールソン
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・カールソン
(72)【発明者】
【氏名】ニルス・ヴァルネス
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-310617(JP,A)
【文献】特開2008-247972(JP,A)
【文献】国際公開第2009/071549(WO,A1)
【文献】特開平07-279062(JP,A)
【文献】登録実用新案第3044889(JP,U)
【文献】特開2004-137757(JP,A)
【文献】国際公開第2014/096336(WO,A1)
【文献】特開2003-136647(JP,A)
【文献】特表2010-508423(JP,A)
【文献】特開2009-209273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00- 10/00
101/00-201/10
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
E04F 15/00- 15/22
B32B 1/00- 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)硬質および軟質配列を含むブロックコポリマーである少なくとも1つの熱可塑性エラストマーであって、硬質配列が1つまたは複数のビニル芳香族モノマーの(コ)ポリマーであり、軟質配列が1つまたは複数のアルキレンの(コ)ポリマーであるかまたは1つまたは複数のアルキレンと1つまたは複数のビニル芳香族モノマーとの混合物の(コ)ポリマーである、少なくとも1つの熱可塑性エラストマー60~20重量%と、
b)少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタン40~80重量%とを含むポリマーブレンドを25~70重量%含み、
(a)および(b)の合計がポリマーブレンドの100重量%を構成する、
無ハロゲン装飾床被覆材用無ハロゲン装飾被覆材用または無ハロゲン装飾天井被覆材用の組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの熱可塑性エラストマー(a)が、硬質配列を10~70重量%の間で含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの熱可塑性エラストマー(a)が、少なくとも1つのビニル芳香族モノマーを30~90重量%で含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの熱可塑性エラストマー(a)が、スチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-イソプレン-スチレン、スチレン-イソブチレン-スチレン、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンおよびスチレン-エチレン-プロピレン-スチレンからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタン(b)が芳香族熱可塑性ポリウレタンを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリマーブレンドを30~60重量%で含む請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物であって、前記ポリマーブレンドが熱可塑性エラストマー(a)を50~30重量%と、熱可塑性ポリウレタン(b)を50~70重量%含み、(a)および(b)の合計が100%である、組成物。
【請求項7】
1つまたは複数の充填剤を20~70重量%と、1つまたは複数の顔料および/または染料を0.1~10重量%とを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
ジメチルシロキサン単位、メチル水素シロキサン単位、ジフェニルシロキサン単位、フェニルメチルシロキサン単位、ジメチル水素シロキサン単位およびトリメチルシロキサン単位を含むシロキサンホモポリマーまたはコポリマーからなる群から選択される1つまたは複数のシリコーンを0.5~5重量%で含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
組成物が、潤滑剤、相溶化剤、シリコーン、酸化防止剤、充填剤、顔料、染料および添加剤からなる群から選択される1つまたは複数の成分を30~75重量%の間で含み、前記ポリマーブレンドと1つまたは複数の成分とが全体として、前記組成物の100%を構成する、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
a)請求項1~8のいずれか一項に記載の各々の単色組成物の異なった成分を混合し、配合することによって複数の単色ストランドを提供する工程と、
b)各々の単色ストランドを別々に造粒して単色粒体を形成するかまたは前記複数の単色ストランドを合体し、合体産物を造粒して複数色粒体を形成する工程と、
)前記単色または複数色マーブルド粒体を複数色無ハロゲン表面被覆材に変換する工程とを含む、無ハロゲン装飾表面被覆材の調製方法。
【請求項11】
配合工程a)が140~220℃の間に含まれる温度において行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程b)の前記合体産物が、前記複数の単色ストランドをカレンダー加工または押出する工程から得られる、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
工程b)の前記カレンダー加工が、110~160℃の間に含まれる温度において行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程b)の前記押出が、40~150℃の間に含まれる温度において行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
工程c)が、カレンダー加工またはベルトプレスによって実施される、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
工程c)がベルトプレスによって実施され、工程c)のベルトプレスが、
- 130~220℃の間に含まれる温度、
- 2~25m/分の間に含まれる速度、
- 3~20バールの間に含まれる圧力において運転される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程c)がカレンダー加工によって実施され、カレンダーが、
- 130~220℃の間に含まれる温度、
- 2~25m/分の間に含まれる速度において運転される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記複数色無ハロゲン表面被覆材を、架橋された材料を含むトップコート層と接触させる付加的な工程を含む、請求項10~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記トップコート層が、放射線硬化性コーティング組成物を硬化させる工程から得られ、前記放射線硬化性組成物が、エチレン性不飽和アクリル、エステル、エーテルまたはウレタンを含むポリマー、オリゴマーまたはモノマーを含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均質な(HO)無ハロゲン装飾床、壁または天井被覆材に関する。本発明はさらに、床、壁または天井被覆材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
床、壁および天井被覆材のための材料は、多種多様な性質を有するのがよい。床被覆材に使用される材料のために特に重要であるのは、事務用椅子などの家具および転動体の可視的な引掻きおよびくぼみを低減するための良好な摩滅、摩耗、引掻きおよび押込抵抗および良好なくぼみ回復である。
【0003】
よく知られた床被覆材はポリ塩化ビニル(PVC)である。ポリ塩化ビニルベースの材料は、良い充填剤受容性、可撓性および引掻抵抗などの多くの望ましい性質を有する。しかしながら、さらに近年ではポリ塩化ビニルベースのフローリングの不利な点に注目が集まっている。
【0004】
典型的な均質なポリ塩化ビニル表面床被覆材は、S-PVC、可塑剤、安定剤、無機充填剤および顔料を含有する。床被覆材は、ロールミルまたはベルトプレスと組合せて押出機を使用して製造することができる。
【0005】
金属安定剤(例えばカルシウムおよび亜鉛)の使用は、ポリ塩化ビニルポリマーの劣化を避けるために特に重要である。
【0006】
金属安定剤の分解から生じる塩化水素および金属灰は、ポリ塩化ビニルベースの被覆材料の製造および取付けに伴う廃棄物の焼却に由来する望ましくない産物である。
【0007】
従って、ポリ塩化ビニルは床被覆材へのその適用においてすぐれた機械的、遮音および断熱の妥協条件を提供するが、これらの被覆材の製造元は、以下の3つの問題点に対する解決策を提供する、それの代替物を求めている。
- 燃焼時に、塩素、塩酸、二酸化硫黄または酸化窒素などの毒性ガスを放出しない。
- ポリ塩化ビニルによって現在得られる性質と同じ位の性質、特に機械的性質および耐火性を有する。
- 既存の装置で、特に押出、カレンダー加工等によって加工または製造可能である。
【0008】
近年、オレフィンベースの装飾表面被覆材料が一般的になっており、すでにかなりの数の特許の課題になっている。
【0009】
無PVC床および壁被覆材は例えば、(特許文献1)、(特許文献2)、(特許文献3)、(特許文献4)、(特許文献5)、(特許文献6)、(特許文献7)、(特許文献8)、(特許文献9)、(特許文献10)、(特許文献11)、(特許文献12)、(特許文献13)、(特許文献14)、(特許文献15)、(特許文献16)、(特許文献17)、(特許文献18)、(特許文献19)、(特許文献20)および(特許文献21)に開示されている。
【0010】
標準ゴム床被覆材は公知である。このような床被覆材の主な利点は、それらの寸法安定性、クリーピングが無いことおよびそれらの比較的高い磨耗抵抗である。
【0011】
加硫性標準ゴム床被覆材組成物は一般的に、充填剤約60重量%ならびに加硫剤および加工助剤約10重量%未満と内部混合されたゴム30重量%未満を含む。ゴム床被覆材は、ポリ塩化ビニルフローリングほど耐引裂性および耐汚染性がないことが知られている。さらに、従来のポリ塩化ビニル装置はこれらの組成物を処理することができない。
【0012】
(特許文献22)には、一連のエラストマー、熱可塑性樹脂の他、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS)、亜鉛ジベンジルジチオカルバメート(ZBEC)、N-シクロヘキシルベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド(CBS)、硫黄、ステアリン酸および酸化亜鉛のような従来の硬化系を使用して硬化される高スチレン樹脂を組み合わせる多様な可能な組成物が開示されている。実施例において開示される組成物を従来のポリ塩化ビニル押出機で押出することはできない。さらに、得られた粒体は、輸送容器内で凝集する強い傾向がある。さらに別の欠点は高い製造費である。
【0013】
(特許文献23)には、天然ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン-ゴム(EPDM)、アクリロニトリル-ブタジエン-ゴム(NBR)およびスチレン-ブタジエン-ゴム(SBR)などのエポキシ化ゴム、アイオノマーおよびエチレンビニルアセテート(EVA)などの稀釈ポリマーの動的に加硫されたブレンドを含む装飾表面被覆材のための実質的に無ハロゲンの熱可塑性エラストマー組成物が開示されている。組合せによって柔軟且つ可撓性フローリング製品が製造される。
【0014】
(特許文献24)には、明るい色のゴム上層の下に配置された電気導電性ゴムの底層を備える、互いに接合された少なくとも2つの層を含む電気導電性床被覆材が開示されており、そこで上層は、色が明るく且つ電気絶縁ゴムから製造される第1の粒子の粉末から製造され、そして電気導電性の、少なくとも部分的に加硫されたゴムから製造される、第2の粒子がその中に埋め込まれる。第1および第2の粒子が一緒に且つ底層にプレスされ、加硫によって接合される。第1および第2の粒子の両方が、高スチレン樹脂(HSR)とスチレン-ブタジエン-ゴム(SBR)との組合せを使用する。
【0015】
(特許文献25)には、スチレンブタジエンスチレンブロックコポリマー(SBS)からなる第1のポリマー成分と、ブタジエンとスチレンとのランダムまたは部分ランダムコポリマー(SBR)およびアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)からなる群から選択される第2のポリマー成分と、高スチレン含有量スチレンブタジエンコポリマー(HSR)からなる第3のポリマー成分と、充填剤と、加硫系と、加工助剤、安定剤、顔料および相溶化剤からなる群から選択される添加剤とを含む加硫可能な組成物によって得ることができる装飾表面被覆材が開示されている。
【0016】
(特許文献26)には、フローリングなどの被覆材を提供するための方法が開示されており、前記方法は、押出機に異なった色の加硫可能なエラストマー材料のストリップを供給し、前記材料を押出に供した後に、細断して粒状材料を形成する作業と、実質的に均質にされるまで前記粒状材料を混合に供する作業と、混合によって均質にされた前記粒状材料を、カレンダーのローラー間の間隙に重力によって直接供給することによってカレンダーに供給して、カレンダー加工の結果として、加硫可能なエラストマー材料のストリップを得る作業と、ストリップの形態の前記材料を加硫に供する作業とを含む。
【0017】
加硫は、製造プロセスの複雑さを増加させ、最終生成物の再利用をいっそう難しくする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】欧州特許第0257796(B1)号明細書
【文献】欧州特許第0742098(B1)号明細書
【文献】欧州特許第0850272(B1)号明細書
【文献】欧州特許第1611201(B1)号明細書
【文献】米国特許第4,379,190号明細書
【文献】米国特許第4,403,007号明細書
【文献】米国特許第4,438,228号明細書
【文献】米国特許第5,409,986号明細書
【文献】米国特許第6,214,924号明細書
【文献】米国特許第6,187,424号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/0305886号明細書
【文献】特開2004168860号公報
【文献】特開2002276141号公報
【文献】特開平07125145号公報
【文献】特開平06128402号公報
【文献】特開2000063732号公報
【文献】特開平1148416号公報
【文献】特開2000045187号公報
【文献】特開平0932258号公報
【文献】特開昭6092342号公報
【文献】特開平09302903号公報
【文献】国際公開第2006/005752号パンフレット
【文献】欧州特許第1361249B1号明細書
【文献】米国特許出願公開第2002/0168500A1号明細書
【文献】国際公開第2008/083973号パンフレット
【文献】欧州特許第1389519B1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ポリ塩化ビニル装飾基材と同じ性質を有する無ハロゲン装飾基材を提供することが本発明の目的であり、その性質は加硫工程なしに得られる。また、既存のポリ塩化ビニル製造装置の使用を可能にする方法に従って無ハロゲン装飾基材に変換され得る無ハロゲン組成物を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、
a)硬質および軟質配列を含むブロックコポリマーである少なくとも1つの熱可塑性エラストマーであって、硬質配列が1つまたは複数のビニル芳香族モノマーの(コ)ポリマーであり、軟質配列が1つまたは複数のアルキレンの(コ)ポリマーであるかまたは1つまたは複数のアルキレンと1つまたは複数のビニル芳香族モノマーとの混合物の(コ)ポリマーである、少なくとも1つの熱可塑性エラストマーと、
b)少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタンとを含むポリマーブレンドを含む、無ハロゲン装飾表面(床壁または天井)被覆材組成物を開示する。
【0021】
本発明の好ましい実施形態は、以下の特徴の1つまたは複数を開示する:
- 少なくとも1つの熱可塑性エラストマー(a)が、硬質配列を10~70重量%の間、好ましくは10~60重量%の間、より好ましくは20~60重量%の間で含む。
- 少なくとも1つの熱可塑性エラストマー(a)が、少なくとも1つのビニル芳香族モノマーを30~90重量%、好ましくは40~80重量%、より好ましくは50~70重量%で含む。
- 少なくとも1つの熱可塑性エラストマー(a)が、スチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-イソプレン-スチレン、スチレン-イソブチレン-スチレン、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンおよびスチレン-エチレン-プロピレン-スチレンからなる群から選択される。
- 少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタン(b)が芳香族熱可塑性ポリウレタンを含む。
- 無ハロゲン装飾表面被覆材組成物がポリマーブレンドを25~70重量%、好ましくは30~60重量%、より好ましくは40~50重量%で含み、ポリマーブレンドが熱可塑性エラストマー(a)60~20重量%、好ましくは50~30重量%と、熱可塑性ポリウレタン(b)40~80重量%、好ましくは50~70重量%とを含み、(a)および(b)の合計が100%である。
- 無ハロゲン装飾表面被覆材組成物が1つまたは複数の充填剤20~70重量%、好ましくは30~60重量%、より好ましくは40~50重量%と、1つまたは複数の顔料および/または染料0.1~10重量%、好ましくは0.2~8重量%、より好ましくは0.3~6重量%とを含む。
- 無ハロゲン装飾表面被覆材組成物がジメチルシロキサン単位、メチル水素シロキサン単位、ジフェニルシロキサン単位、フェニルメチルシロキサン単位、ジメチル水素シロキサン単位およびトリメチルシロキサン単位を含むシロキサンホモポリマーまたはコポリマーからなる群から選択される1つまたは複数のシリコーンを0.5~5重量%、好ましくは1.5~4.5重量%、より好ましくは2~4%で含む。
【0022】
好ましくは、熱可塑性エラストマー(a)と熱可塑性ポリウレタン(b)とが全体として、ポリマーブレンドの100%を構成する。
【0023】
好ましくは、無ハロゲン装飾表面被覆材組成物がポリマーブレンドを25~70重量%で含み、ポリマーブレンドが熱可塑性エラストマー(a)60~20重量%、好ましくは50~30重量%と、熱可塑性ポリウレタン(b)40~80重量%、好ましくは50~70重量%とを含み、(a)および(b)の合計が100%であり、組成物が、潤滑剤、相溶化剤、シリコーン、酸化防止剤、充填剤、顔料、染料および添加剤からなる群から選択される1つまたは複数の成分を30~75重量%の間で含み、ポリマーブレンドと1つまたは複数の成分とが全体として、組成物の100%を構成する。
【0024】
本発明はさらに、
a)各々の単色組成物の異なった成分を混合し、配合することによって複数の単色ストランドを提供する工程と、
b)各々の単色ストランドを別々に造粒して単色粒体を形成するかまたは複数の単色ストランドを合体し、合体産物を造粒して複数色粒体を形成する工程と、
c)好ましくはカレンダー加工またはプレスすることによって単色または複数色マーブルド粒体を複数色無ハロゲン表面被覆材に変換する工程とを含む、無ハロゲン装飾表面被覆材の調製方法を開示する。
【0025】
無ハロゲン装飾表面被覆材の作製方法の好ましい実施形態は、以下の特徴の1つまたは複数を開示する:
- 配合工程a)が140~220℃の間、好ましくは150~200℃の間、より好ましくは160~190℃の間に含まれる温度において行われる。
- 工程b)の合体産物が、複数の単色ストランドをカレンダー加工または押出する工程から得られる。
- 工程b)のカレンダー加工が、110~160℃の間、好ましくは120~150℃の間、より好ましくは130~140℃の間に含まれる温度において行われる。
- 工程b)の押出が、40~150℃の間、好ましくは80~150℃の間、より好ましくは100~140℃の間に含まれる温度において行われる。
- 工程c)のベルトプレスが、
・ 130~220℃の間、好ましくは150~210℃の間、より好ましくは170~200℃の間に含まれる温度、
・ 2~25m/分の間、好ましくは10~18m/分の間、より好ましくは12~16m/分の間に含まれる速度、
・ 3~20バールの間、好ましくは5~18バールの間、より好ましくは8~15バールの間に含まれる圧力において運転する。
工程c)のカレンダーが、
・ 130~220℃の間、好ましくは150~210℃の間、より好ましくは170~200℃の間に含まれる温度、
・ 2~25m/分の間、好ましくは10~18m/分の間、より好ましくは12~16m/分の間に含まれる速度において運転する。
- 複数色無ハロゲン表面被覆材が、付加的な工程において、架橋された材料を含むトップコート層と接触される。
- トップコート層が、放射線硬化性コーティング組成物を硬化させる工程から得られ、放射線硬化性組成物が、エチレン性不飽和アクリル、エステル、エーテルまたはウレタンを含むポリマー、オリゴマーまたはモノマーを含む。
【発明を実施するための形態】
【0026】
装飾表面被覆材には、床被覆材、壁被覆材および天井被覆材などの任意のデザイン被覆材が含まれる。
【0027】
本発明の装飾表面被覆材は実質的に無ハロゲンであり、「無ハロゲン」という表現は、任意のハロゲンを含むポリマーが無いこととして理解されなければならず、1パーセンテージ未満の濃度で存在しているハロゲンを含む不純物またはハロゲンを含む添加剤の存在を除外しない。
【0028】
本発明の装飾表面被覆材は、1つまたは複数の熱可塑性エラストマーと1つまたは複数の熱可塑性ポリウレタンとのブレンドを含む。
【0029】
1つまたは複数の熱可塑性エラストマーは、硬質ブロックおよび軟質ブロックを含むブロックコポリマーであり、硬質ブロックは1つまたは複数のビニル芳香族モノマーの重合から得られ、軟質ブロックは1つまたは複数のアルキレンの重合または1つまたは複数のアルキレンと1つまたは複数のビニル芳香族モノマーとの共重合により得られる。
【0030】
ビニル芳香族モノマーは、スチレンおよびα-メチルスチレン(ベンゼン環が1~3個の(C1~C4)アルキル、好ましくはメチルもしくはエチル基によってまたは1個もしくは複数個のメチルもしくはエチル基によって場合により置換されたビニルナフタレンによって置換されていてもよい)からなる群から選択される。
【0031】
ビニル芳香族モノマーは好ましくは、スチレン、α-メチルスチレンおよびビニルトルエンからなる群から選択される。ビニル芳香族モノマーはより好ましくはスチレンである。
【0032】
アルキレンは好ましくは、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテン、ヘキサン、オクタン、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、ピペリレン、2,4-ヘキサジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエンおよびフェニル-1,3-ブタジエンからなる群から選択される。アルキレンはより好ましくはブタジエンまたはイソプレンである。
【0033】
本発明の熱可塑性エラストマーは、直鎖ジブロック、トリブロックおよびマルチブロックコポリマーの形態であるかまたはラジアルブロックコポリマーの形態であり得る。また、直鎖ブロックコポリマーとラジアルブロックコポリマーとの混合物も本発明に従って使用することができる。
【0034】
熱可塑性エラストマーの軟質ブロックは好ましくは、50モル%超、好ましくは少なくとも70モル%である全アルキレンモノマーを含有し、残りの部分は、もしあるとすれば、ビニル芳香族モノマーなどの他の共重合性モノマーからなる。
【0035】
本発明の熱可塑性エラストマーは好ましくは、硬質ブロックを10~70重量%の間、より好ましくは10~60重量%の間、最も好ましくは20~50重量%の間で含む。
【0036】
本発明の熱可塑性エラストマーは好ましくは、少なくとも1つのビニル芳香族モノマーを30~90重量%、好ましくは40~80重量%、より好ましくは50~70重量%で含む。
【0037】
硬質ブロックは、使用温度よりも高いガラス転移温度を特徴としている。軟質ブロックは、使用温度よりも低く好ましくは20~-110℃の間、好ましくは-10~-100℃の間、より好ましくは-20~-90℃の間に含まれるガラス転移温度を特徴としている。
【0038】
熱可塑性エラストマーの軟質ブロックは、部分的にまたは完全に水素化されてもよい。
【0039】
熱可塑性エラストマーの重量平均分子量は好ましくは、100.000~500.000g/モル、より好ましくは150.000~400.000g/モルの範囲である。
【0040】
本発明の熱可塑性エラストマーは好ましくは、スチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-イソプレン-スチレン、スチレン-イソブチレン-スチレン、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンおよびスチレン-エチレン-プロピレン-スチレンからなる群から選択される。
【0041】
熱可塑性エラストマー好ましくは、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマーである。
【0042】
本発明のブレンドにおいて使用するのに適した熱可塑性エラストマーの例には、Europrene(Polimeri Europe)、Kraton(Kraton Performance Polymers Inc.)、Stereon(Firestone Polymers)、Styroflex(Styrolution)、Finaprene(Total Petrochemicals)、Tufprene(旭化成)ならびにLapreneおよびSoprene(So.F.Ter group)が含まれる。
【0043】
熱可塑性ポリウレタンは、ジイソシアネート化合物と、イソシアネート基と反応し得る少なくとも1つの二官能性化合物、好ましくは少なくとも1つの二官能性ヒドロキシル基を含む化合物と、任意選択により連鎖延長剤との反応から得られる。
【0044】
ジイソシアネート化合物は芳香族または脂肪族であってもよい。
【0045】
芳香族ジイソシアネートには、例えば、4,4’-、2,2’-および2,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートおよびトルエンジイソシアネートが含まれる。脂肪族ジイソシアネートには、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよび2,2’-、4,4’-および2,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが含まれる。芳香族ジイソシアネートと脂肪族ジイソシアネートとの混合物を用いてもよい。
【0046】
芳香族ジイソシアネートおよびより好ましくはメチレンジフェニルジイソシアネートを含むイソシアネート組成物が好ましい。
【0047】
イソシアネート基と反応し得る二官能性化合物は好ましくは二官能性ヒドロキシル基を含む化合物であり、ポリエステルアミド、ポリチオエーテル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリオレフィン、ポリシロキサン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカプロラクトンの誘導体およびそれらの混合物から選択されてもよい。ポリエステル、ポリエーテル、ポリカプロラクトンが好ましい。
【0048】
適した連鎖延長剤には、1,4-ブタンジオールまたは1,6-ヘキサンジオールなどの脂肪族ジオールまたはN-メチルジエタノールアミンなどのアミノアルコールが含まれる。
【0049】
熱可塑性ポリウレタンの重量平均分子量は好ましくは、50.000~400.000g/モル、より好ましくは75.000~200.000g/モルの範囲である。
【0050】
本発明のブレンドにおいて使用するのに適した熱可塑性ポリウレタンの例には、Epamould(Epaflex Polyurethanes)、Laripur(CoimS.p.A.)、Apilon(Api Plastic S.p.A.)、EstaneおよびPearlcoat/Pearlthane(Lubrizol)、Avalon(Huntsman Polyurethanes)、Elastollan(BASF)およびPellethane(Dow Chemical Co)が含まれる。
【0051】
本発明の装飾表面被覆材は、上に指定された熱可塑性エラストマーと熱可塑性ポリウレタンとを含むポリマーブレンドを30~60重量%、好ましくは35~55重量%、より好ましくは40~50重量%で含む組成物を加工することにより得られ、前記ポリマーブレンドは、熱可塑性ポリウレタン40~80重量%と熱可塑性エラストマー60~20重量%とを含む。好ましくは、ポリマーブレンドは、熱可塑性ポリウレタン50~70重量%と熱可塑性エラストマー50~30重量%とを含む。
【0052】
本発明による好ましい組成物は、潤滑剤、相溶化剤、シリコーン、酸化防止剤、充填剤および顔料または染料などの成分をさらに含む。
【0053】
適した潤滑剤の例は、単独でまたは混合物として使用される、ステアリン酸タイプ、脂肪酸エステルタイプ、脂肪酸アミドタイプ、パラフィン系炭化水素タイプ、ナフテン炭化水素タイプ、金属石鹸タイプ、シリコーンタイプ、ポリエチレングリコールタイプおよびワックスである。
【0054】
好ましい潤滑剤には、ステアリン酸およびステアリン酸亜鉛がある。
【0055】
適した相溶化剤の例には、エチレン/アルキルアクリレートコポリマー、エチレン/アルキルアクリレート/一酸化炭素コポリマー、カルボン酸無水物基がグラフトされたエチレン/アルキルアクリレート/一酸化炭素コポリマー、エチレン/アルキルアクリレート/モノメチルマレエートコポリマー、カルボン酸無水物基がグラフトされたエチレン/アルキルアクリレートコポリマー、エチレン/ビニルアセテートコポリマー、カルボン酸無水物基がグラフトされたエチレン/ビニルアセテートコポリマー、エチレン/ビニルアセテート/一酸化炭素コポリマー、カルボン酸無水物基がグラフトされたエチレン/ビニルアセテート/一酸化炭素コポリマー、およびカルボン酸無水物基がグラフトされた、1つまたは複数のアルキレンと1つまたは複数のビニル芳香族モノマーとを含むブロックコポリマーが含まれる。
【0056】
シリコーンの例は、ジメチルシロキサン単位、メチル水素シロキサン単位、ジフェニルシロキサン単位、フェニルメチルシロキサン単位、ジメチル水素シロキサン単位およびトリメチルシロキサン単位を含むポリマーおよびコポリマーなどのポリシロキサンである。
【0057】
好ましいシリコーンはポリジメチルシロキサンである。
【0058】
適した酸化防止剤の例には、フェノールおよびチオエステル酸化防止剤が含まれる。酸化防止剤は単独でまたは組み合わせて使用されてもよい。好ましい酸化防止剤は、ペンタエリトリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(Irganox 1010)およびオクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(Irganox 1076)であり、両方ともBASFから入手可能である。
【0059】
本発明の組成物のために適した充填剤の例は、任意の従来の充填剤、特に、表面被覆材において従来から使用されるそれらのタイプであり得る。
【0060】
充填剤は、有機、無機、または異なったモルフォロジーを有するような、両方の組合せであり得る。例には、限定されないが、石炭フライアッシュ、カーボネート塩、例えば炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムおよび炭酸カルシウムマグネシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、金属酸化物、無機材料、天然材料、アルミナ三水和物、水酸化マグネシウム、ボーキサイト、タルク、マイカ、ドロマイト、重晶石、カオリン、シリカ、再生ガラス、または脱工業化ガラス、合成繊維および天然繊維、またはそれらの任意の組合せが含まれる。
【0061】
好ましくは、充填剤は、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、重晶石、カオリン、ボーキサイト、ドロマイト、シリカ、ガラス、またはそれらの任意の組合せを含む。
【0062】
本発明の組成物のために適した顔料および染料の例は、二酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛等の金属酸化物、金属水酸化物、金属粉末、硫化物、硫酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩、紺青(iron blues)、有機レッド、有機マルーン等である。
【0063】
本発明による組成物は、任意選択により、1つまたは複数の添加剤、例えば、改質用樹脂、クロスカップリング剤、安定剤、発泡剤、粘着付与剤、分散剤および/またはポリオレフィンにおいてまたは他の表面被覆材において一般的に使用される他の従来の有機または無機添加剤、例えば、限定されないが、紫外線安定剤、帯電防止剤、熱安定剤および光安定剤、難燃剤、またはそれらの任意の組合せを含有することができる。
【0064】
好ましくは、組成物は、少なくとも1つの顔料、難燃剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、またはそれらの任意の組合せを含有する。
【0065】
本発明の第1の態様に従って装飾表面被覆材、より詳しくは床および壁被覆材が提供される。
【0066】
本発明の装飾表面被覆材は、組成物の全重量に基づいて、
- 1つまたは複数の熱可塑性エラストマーと1つまたは複数の熱可塑性ポリウレタンとを含むポリマーブレンド25~70重量%、好ましくは30~60重量%、より好ましくは40~50重量%と、
- 1つまたは複数の相溶化剤2~8重量%、好ましくは3~7重量%、より好ましくは4~6重量%と、
- 1つまたは複数の上記の滑剤0.1~1.1重量%、好ましくは0.3~0.9重量%、より好ましくは0.5~0.7重量%と、
- 1つまたは複数のシリコーン0.5~5重量%、好ましくは1.5~4.5重量%、より好ましくは2~4重量%と、
- 1つまたは複数の酸化防止剤0.1~1重量%、好ましくは0.15%to0.7重量%、より好ましくは0.2~0.5重量%と、
- 1つまたは複数の充填剤20~70重量%、好ましくは30~60重量%、より好ましくは40~50重量%と、
- 1つまたは複数の顔料および/または染料0.1~10重量%、好ましくは0.2~8重量%、より好ましくは0.3~6重量%と、
- 1つまたは複数の添加剤0~5重量%、好ましくは0.1~4重量%、より好ましくは0.3~5重量%とを含む。
【0067】
本発明の第2の態様に従って前記装飾表面被覆材を製造するための方法が提供される。
【0068】
この方法は、
- 組成物の成分を混合する工程と、
- 成分混合物を配合し、ストランドの形態の単色配合物を提供する工程と、
- 複数の組成物のための混合および配合工程を繰り返す工程であって、前記組成物の各々が異なっていてもよい工程とを含む。
【0069】
異なった組成物とは、本発明では、1つまたは複数の成分(熱可塑性エラストマー、熱可塑性ポリウレタン、相溶化剤、シリコーン、滑剤、酸化防止剤、充填剤、顔料、染料および添加剤)のタイプおよび量が別の組成物とは異なる組成物を意味する。
【0070】
混合および配合工程が繰り返され、そこで異なった顔料着色がシートの形態の複数の単色配合物をもたらす。
【0071】
混合は一般的に、バンバリーミキサー、連続ミキサー、リボンミキサーまたはそれらの任意の組合せ内で行われ、ブレンドを形成する。
【0072】
配合は一般的に、140~220℃の間、好ましくは150~200℃の間、より好ましくは160~190℃の間に含まれる温度で、押出機内で行われる。
【0073】
本発明の方法の第1の実施形態はさらに、
- 各々の単色ストランドを別々に造粒して単色粒体を形成する工程と、
- 異なった色の単色粒体をベルトプレス、好ましくは二重ベルトプレスのスチールベルト上に散乱させるか、またはそれらをカレンダーに供給する工程と、
- 粒体を複数色シートに変換する工程とを含む。
【0074】
本発明の方法の第2の実施形態はさらに、工程を含む:
- カレンダー加工によって複数の単色ストランドを合体して多層シートを形成する工程と、
- 得られた多層シートを造粒して複数色粒体を形成する工程と、
- 複数色粒体をベルトプレス、好ましくは二重ベルトプレスのスチールベルト上に散乱させるか、またはそれらをカレンダーに供給する工程と、
- 粒体を複数色シートに変換する工程とを含む。
【0075】
本発明の方法の第3の実施形態はさらに、
- カレンダー加工によって複数の単色ストランドを合体して複数色マーブルドシートを形成する工程と、
- 得られた複数色マーブルドシートを造粒して複数色マーブルド粒体を形成する工程と、
- 複数色マーブルド粒体をベルトプレス、好ましくは二重ベルトプレスのスチールベルト上に散乱させるか、またはそれらをカレンダーに供給する工程と、
- 粒体を複数色シートに変換する工程とを含む。
【0076】
本発明の方法の第4の実施形態はさらに、
- 造粒押出機によって複数の単色ストランドを合体して複数色マーブルド粒体を形成する工程と、
- 複数色マーブルド粒体をベルトプレス、好ましくは二重ベルトプレスのスチールベルト上に散乱させるか、またはそれらをカレンダーに供給する工程と、
- 粒体を複数色シートに変換する工程とを含む。
【0077】
造粒工程の前のカレンダー加工工程が、110~160℃の間、好ましくは120~150℃の間、より好ましくは130~140℃の間に含まれる温度において行われる。
ローラーの速度は一般的には、2~15m/分の間、好ましくは4~12m/分の間、より好ましくは6~10m/分の間に含まれる。
【0078】
造粒押出機工程は、40~150℃の間、好ましくは80~150℃の間、より好ましくは100~140℃の間に含まれる温度において行われる。スクリューの速度は一般的には、10~30rpmの間、好ましくは16~25rpmの間、より好ましくは18~25rpmの間に含まれる。
【0079】
実施形態1~4の各々において、複数色シートへの粒体の変換は以下の作業条件下で行われる:
- ベルトプレスまたはカレンダーの温度は130~220℃の間、好ましくは150~210℃の間、より好ましくは170~200℃の間に含まれ、
- ベルトプレスまたはカレンダーの速度は2~25m/分の間、好ましくは10~18m/分の間、より好ましくは12~16m/分の間に含まれる。
- ベルトプレスの圧力は3~20バールの間、好ましくは5~18バールの間、より好ましくは8~15バールの間に含まれる、
【0080】
さらに本発明の方法は、トップコートを複数色シート上に提供する付加的な工程を含み、そこでトップコートは、放射線硬化性コーティング組成物を化学線照射に供することによって得られるのが好ましい架橋層である。
【0081】
放射線硬化性コーティング組成物は一般的には、エチレン性不飽和アクリル、エステル、エーテルまたはウレタンを含むポリマー、オリゴマーまたはモノマーを含み、有機溶剤を含有しないかまたは水性であってもよい。
【0082】
放射線硬化性コーティング組成物を複数色マーブルシートと接触させるための方法は、カーテンコーティング、ローラー適用または吹き付けコーティングなどの本技術分野に公知の任意の液体コーティング適用技術を含む。
【0083】
本発明の装飾表面被覆材の性質は、従来のポリ塩化ビニルベースの装飾表面被覆材の性質と同等である。
【0084】
他方、本発明の装飾表面被覆材は、現在存在する無PVC装飾表面被覆材と同等であるかまたはそれらより優れている性質を有する。
【0085】
本発明の装飾表面被覆材は、ポリ塩化ビニルを含む表面被覆材の製造用の既存の装置で製造することができる。
【0086】
それらは、著しい耐引掻き性および耐擦り傷性であり、安定性(クリープ)があり、ウエットルーム取付けに承認されている。それらは保守および乾燥バフ研磨が容易であり、さらに、加硫工程がないため容易に再生利用可能である。
【実施例
【0087】
以下の具体的な実施例は、本発明を例示しようとするものにすぎず、本発明の範囲を限定しあるいは他の方法で規定するものではない。
【0088】
表1~5に示される調合による組成物は、約170℃の温度で、押出機で溶融混合され、ストランドの形態の単色配合物を提供する。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
【表4】
【0093】
【表5】
【0094】
これらの表においてCalprene(登録商標)C540は、Dynasol製の直鎖スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマーであり、Europrene(登録商標)SOLT6414は、Polimeri Europa製のラジアルスチレンブタジエンブロックコポリマーであり、Finaclear(登録商標)602 Dは、Total Petrochemicals製のスチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマーであり、Tufprene(登録商標)Aは、旭化成製のスチレン/ブタジエンブロックコポリマーであり、Pearlcoat(登録商標)163Kは、Lubrizol製のポリエーテルベースの熱可塑性ポリウレタンであり、Pearlcoat(登録商標)127Kは、Lubrizol製のポリエステルベースの熱可塑性ポリウレタンであり、Elastollan 1185A10は、BASF製の芳香族熱可塑性ポリエーテルウレタンであり、Fusabond(登録商標)N525は、Dupont製の無水物改質エチレンコポリマーであり、Fusabond(登録商標)C250は、Dupont製の改質エチレンビニルアセテートコポリマーであり、Kraton(登録商標)FG1901 Gは、Kraton製の無水マレイン酸を含むスチレンおよびエチレン/ブチレンをベースとした直鎖トリブロックコポリマーであり、Afrimal447 Sは、Alpha Calcit製の水酸化アルミニウムであり、Myanit A10はOmya製の中粒度ドロマイトであり、Reasorb90は、Omya製の炭酸カルシウムであり、Martinal ON313およびMartinal(登録商標)OL104LEOは、Albemarle製の水酸化アルミニウムであり、Rhodorsil(登録商標)47V30.000は、Clearco Products製のポリジメチルシロキサンであり、Irganox 1010およびIrganox 1076は、Ciba Specialty Chemicals製の立体障害フェノール系酸化防止剤であり、Ligastar Zn101/6は、Peter Greven製のステアリン酸亜鉛であり、二酸化チタンはSachtleben製である。
【0095】
表1~5のそれぞれの組成物について、顔料(二酸化チタン)を除いて、異なった色の3つのストランドを調製し、その後、134℃の温度および10m/分のローラー速度にてロールミルで造粒およびカレンダー加工して、マーブルドシート1~5を形成した。
【0096】
次に、このように得られた各々のシートを造粒して、適した大きさ(例えば0.1~40mm)の複数色マーブルド粒体を得た。185℃の温度、18バールの圧力および12m/分のベルト速度において運転する二重ベルトプレス内のスチールベルト上に粒体を散乱させ、プレスして複数色シートにした。
【0097】
次に、以下に簡潔に説明することができる本発明者の部分的に詳細な試験方法にそれぞれの複数色シート1~5を供した。
【0098】
引掻抵抗
ワゴンを表面全体にわたって引っ張ることができるように、引掻き具を有する装置を試料の上に置く。加えられる力は0.5Nから出発し、引掻きが現れるまで毎回0.5N増加させる。結果は、見ることができる(=可視的)引掻きをもたらす負荷(N)と触ってみることができる(触感)引掻きをもたらす負荷(N)として表される。
【0099】
摩擦
摩擦は改良Tortus摩擦試験機によって測定される。測定足を使用する代わりに、そりが綱によって装置に留められる。装置のモーターを使用して試料の表面の上でそりを引きずるために必要とされる力が摩擦値として記録される。
【0100】
汚損と清浄化
フローリング試料を、摩滅面を露出させてドラム内に置く。ゴム被覆四面体(またはテトラポッド)重りと汚損物質とが加えられ、ドラムが1000回転しながら混転される。
【0101】
表面を汚損し、引掻いた後に、粗い汚れがテイッシュペーパーを使用して拭き取られた。
【0102】
試験材料を平らにし、清浄化装置の移動ボード上の試料ホルダーに固定した。
【0103】
清浄化手順は、機械による清浄化/洗浄をシミュレートする。清浄化は、水中に溶解された洗剤を使用して行われる。回転清浄化パッドが表面の上を6回通過する。
【0104】
グレースケールを使用して試験結果を目視評価し、汚損および引掻きの程度に従ってランクづける。結果は0~5の尺度で記載され、0が激しい損傷を表わし5が可視的な変化がないことを表わす。
【0105】
難燃性
難燃性は輻射パネル試験EN ISO9239-1に基づいており、そこで試験片は、30°に傾斜されたガス燃焼輻射パネルの下に水平に置かれる。試験片は、輻射パネルに近い高温側の端部で11kW/m2、そして輻射パネルから遠いほうの他方の端部で1kW/m2まで減少する、全熱流束の確定領域に暴露される。
【0106】
試験片を焼くためにラインバーナーからのパイロット火炎面を高温側の端部に適用する。
【0107】
試験片の長さに沿う火炎面の進行は、様々な距離に移動するのにかかる時間を用いて記録される。試験中の煙の発生が、排気ダクト内の煙による光掩蔽に基づいて測定される。試験時間は30分である。
【0108】
分類基準は、そこで火炎が消える輻射束または30分の試験時間後の輻射束として定義される臨界熱流束(CHF)であり、いずれか低いほうである。言い換えれば、CHFは、延焼の最も大きい程度に相当する流束に相当する。
【0109】
この試験においてBFLは臨界流束≧8.0kW.m-2を表わし、CFLは臨界流束≧4.5kW.m-2を表わし、DFLは臨界流束≧3.0kW.m-2を表わし、s1は煙発生≦750%.分を表わす。
【0110】
表1~5の組成物をそれぞれ加工することにより得られたシート1~5の試験結果が表6に示され、全てが第3欄(本発明による床)に示される範囲内である。
【0111】
【表6】
【0112】
乾燥バフ研磨
床材料の乾燥保守性能を判断するために乾燥バフ研磨の結果の評価は非常に適している。乾燥バフ研磨は、摩滅が可視的になると床の表面を修復するために使用する最も効率的方法である。乾燥バフ研磨のパッドが、不織繊維と、摩耗粒子が分散されてもされなくてもよい樹脂結合剤とからなるとき、摩擦熱は床の表面上のパッドの摩擦摺擦によって生じ、したがって摩耗インジケータの大部分を完全にまたは部分的に除去する。床が機械清浄化された直後に乾燥バフ研磨するのが最も良い。乾燥バフ研磨は新たな汚損を抑える。最も良い結果は、500~1500rpmによっておよび赤パッドの使用によって得られる。
【0113】
乾燥バフ研磨は、Amanoによって製造された高速Clean Star D-430バフ盤を使用して行われた。表層の色変化、光沢、摩耗およびブリスターが、1回、2回または3回の20秒の乾燥バフ研磨後に検査された。本発明の床材料の光沢は、磨き回数によって著しく増加した。さらに、この手順は、色変化を起こさず、明らかな摩耗を生じず、ブリスターを形成せず、したがって高速バフ盤によって著しくすぐれた乾燥保守性能を示した。
【0114】
本発明の組成物から加工された装飾床被覆材は、ゴムフローリングと比較して改良された加工性を特徴としている。すなわち、加硫工程が無い結果として、加工温度および溶融粘度においてより柔軟性を特徴とするプロセスが実現可能である。加硫が行われないので、本発明の装飾表面被覆材は約100%再生利用可能である。