(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 47/40 20060101AFI20220311BHJP
B65D 47/06 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
B65D47/40 200
B65D47/06
(21)【出願番号】P 2018003264
(22)【出願日】2018-01-12
【審査請求日】2020-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】中川 敦仁
(72)【発明者】
【氏名】荻島 敦子
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-186032(JP,A)
【文献】特開2009-248978(JP,A)
【文献】特開2010-274976(JP,A)
【文献】特開2008-155953(JP,A)
【文献】特開2002-120854(JP,A)
【文献】米国特許第04836419(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/40
B65D 47/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性を有する液状の内容物を収容する容器本体の口部に着脱可能に装着され前記内容物を傾倒注出するキャップであって、
前記口部に嵌合する嵌合部と、
前記嵌合部の内側に設けられ底面部に前記口部の軸方向に貫通する注出用開口部を有するノズル基部と、
前記注出用開口部の少なくとも一部を囲むように前記底面部に立設され前記容器本体とは反対側に延出するノズル部と、を備え、
前記ノズル基部は、内側筒部と、前記内側筒部の下側に設けられた前記底面部とを有する有底円筒状をなし、
前記底面部は、前記内容物を傾倒注出する際に前記ノズル部を傾倒する側に配置され前記内側筒部の下端
における前記傾倒する側から
前記傾倒する側とは対向する側に向かうのに従って下向きに傾斜する傾倒側傾斜底部と、前記傾倒する側とは対向する側に配置され前記内側筒部の下端
における前記傾倒する側とは対向する側から
前記傾倒する側に向かうのに従って下向きに傾斜し前記傾倒側傾斜底部と交差部において交差する反傾倒側傾斜底部とを有し、
前記交差部の上面側には、線状に連なり断面形状が略V字状の液会合部が前記軸方向の上面視で間隔をあけて対で設けられ、
前記注出用開口部の周縁は、前記上面視で対をなす前記液会合部の端部同士をつなぐ第1部分と、前記傾倒側傾斜底部に配置され前記第1部分の端部同士をつなぐ第2部分とを含み、
前記反傾倒側傾斜底部における前記第1部分の位置から前記軸方向下側に向けて、前記反傾倒側傾斜底部の下面よりも突出する液回収促進面を有し前記反傾倒側傾斜底部に連設された突出壁を有
し、
前記液会合部、前記第1部分および前記液回収促進面は、前記上面視で同一直線上に位置することを特徴とするキャップ。
【請求項2】
前記突出壁の下端は、水平な平坦部を有することを特徴とする請求項1記載のキャップ。
【請求項3】
前記突出壁における前記注出用開口部に臨む側面は、前記液会合部の端部同士をつなぐ方向の長さが前記第1部分の長さよりも長く形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のキャップ。
【請求項4】
前記傾倒側傾斜底部の上面及び前記反傾倒側傾斜底部の上面は、平面で形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、液体洗剤、液体漂白剤、液体柔軟剤、溶剤等の液状の内容物を収容する容器では、ノズルを有しボトル(容器本体)の口部に装着されるノズルキャップと、ノズルから注出される内容物を計量する計量筒部を有し、容器に着脱自在に装着される計量キャップとを有するものがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
上記の容器においては、計量キャップを容器から外し、容器本体を傾け(傾注し)、ノズルの注ぎ口から内容物を計量キャップ内に注入して計量し、使用後に計量キャップを嵌合して容器を正立させると、計量キャップ内に残留した内容物は計量キャップの内壁面からノズルキャップのノズル底部に垂れ落ち、傾斜したノズル底部を伝って貫通孔から容器内部に回収される。
【0004】
上記の内容物は、環境・コスト面などから濃縮化が進んでいる。内容物を濃縮化すると粘度上昇となる可能性が高く、傾注操作や詰替え操作後にノズルキャップの液受け空間に残液を生じやすく、残液は液ダレの原因となる。そのため、例えば、特許文献2には、ノズルキャップの傾斜底壁の最下部から下方に延びる傾斜壁を設けることにより、液ダレした液を容器本体内にスムーズに回収することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5538193号公報
【文献】特許第5052883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載された傾斜壁は、注出口をほぼ半分まで遮蔽しているため、内容物が高粘度である場合、内容物の注出及び回収に支障を来す可能性がある。また、傾斜筒壁の上面及び傾斜底壁の上面に沿って下降し、当該上面同士の交差部で会合した内容物は、傾斜壁の上面を移動した後に注出口に達するため、キャップに残留した内容物を速やかに回収できるとは言い難い。
【0007】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、高粘度の内容物であっても速やかに回収できるキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に従えば、粘性を有する液状の内容物を収容する容器本体の口部に着脱可能に装着され前記内容物を傾倒注出するキャップであって、前記口部に嵌合する嵌合部と、前記嵌合部の内側に設けられ底面部に前記口部の軸方向に貫通する注出用開口部を有するノズル基部と、前記注出用開口部の少なくとも一部を囲むように前記底面部に立設され前記容器本体とは反対側に延出するノズル部と、を備え、前記ノズル基部は、内側筒部と、前記内側筒部の下側に設けられた前記底面部とを有する有底円筒状をなし、前記底面部は、前記内容物を傾倒注出する際に前記ノズル部を傾倒する側に配置され前記内側筒部の下端から径方向内側に向かうのに従って下向きに傾斜する傾倒側傾斜底部と、前記傾倒する側とは対向する側に配置され前記内側筒部の下端から径方向内側に向かうのに従って下向きに傾斜し前記傾倒側傾斜底部と交差部において交差する反傾倒側傾斜底部とを有し、前記交差部の上面側には、線状に連なり断面形状が略V字状の液会合部が前記軸方向の上面視で間隔をあけて対で設けられ、前記注出用開口部の周縁は、前記上面視で対をなす前記液会合部の端部同士をつなぐ第1部分と、前記傾倒側傾斜底部に配置され前記第1部分の端部同士をつなぐ第2部分とを含み、前記反傾倒側傾斜底部における前記第1部分の位置から前記軸方向下側に向けて、前記反傾倒側傾斜底部の下面よりも突出する液回収促進面を有し前記反傾倒側傾斜底部に連設された突出壁を有することを特徴とするキャップが提供される。
【0009】
また、上記本発明の一態様に係るキャップにおいて、前記突出壁の下端は、水平な平坦部を有することを特徴とする。
【0010】
また、上記本発明の一態様に係るキャップにおいて、前記突出壁における前記注出用開口部に臨む側面は、前記液会合部の端部同士をつなぐ方向の長さが前記第1部分の長さよりも長く形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、上記本発明の一態様に係るキャップにおいて、前記傾倒側傾斜底部の上面及び前記反傾倒側傾斜底部の上面は、平面で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のキャップでは、高粘度の内容物であっても速やかに回収することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係るノズルキャップ(キャップ)が容器本体の口部に装着された正立状態の容器の構成を示す側面図。
【
図2】同ノズルキャップ10の構成を示す正面図である。
【
図3】同ノズルキャップ10の構成を示す左側面図である。
【
図4】同ノズルキャップ10の構成を示す断面斜視図である。
【
図5】同ノズルキャップ10を底部側から見た様子を示す斜視図である。
【
図6】同ノズルキャップ10を軸線方向から見た上面図である。
【
図7】同ノズルキャップ10が装着された容器を用いて、内容物を注出する動作を説明するための図である。
【
図8】第2実施形態に係るノズルキャップ(キャップ)の構成を示す外観斜視図である。
【
図9】第2実施形態に係るノズルキャップを軸線方向から見た上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願発明者は、キャップ内に残留した液状の内容物の回収性を改善するために、残留した内容物が会合した際の内容物の体積(質量)の増加量と、内容物の表面張力の増加量との差に着目し、内容物の会合が多くなることにより内容物の体積(質量)が増加して容器本体内への落下が促進される構成を検討した。
以下、本発明のキャップに係る実施形態の構成について説明する。
【0015】
[キャップの第1実施形態]
以下、本発明のキャップの第1実施形態を、
図1ないし
図7を参照して説明する。
なお、以下の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0016】
図1は、第1実施形態に係るノズルキャップ(キャップ)10が容器本体100Aの口部101に装着された正立状態の容器100の構成を示す側面図である。
図2は、ノズルキャップ10の構成を示す正面図である。
図3は、ノズルキャップ10の構成を示す左側面図である。
図4は、ノズルキャップ10の構成を示す断面斜視図である。
図5は、ノズルキャップ10を底部側から見た様子を示す斜視図である。
図6は、ノズルキャップ10を軸線方向から見た上面図である。
【0017】
本実施形態のノズルキャップ10は、
図1に示すように、内容物を収容する容器本体100Aの上端に形成された口部101に嵌合する中栓であり、その上側に内容物を計量する計量キャップ102が装着されるものである。
【0018】
容器本体100Aは、例えばポリエチレン等のオレフィン系合成樹脂を用いたブロー成形により一体形成されている。容器本体100Aは、内容物として、例えば、液体洗剤、液体漂白剤、液体柔軟剤、溶剤等の液状物を収納するための収容空間100aを有している。容器本体100Aの口部101は、上下方向(Z方向)に延びる軸線Cを中心とする円筒状に形成されており、収容空間100aを上方に開放している。口部101の外周には、軸線C周りに雄ねじ部(不図示)が形成されており、本実施形態におけるノズルキャップ10が螺合する。
【0019】
本実施形態では、螺合タイプのノズルキャップ10の構成について述べるが、これに限らない。ノズルキャップ10は、例えば、圧入やアンダーカット部等の係合により、上方に抜けないように容器本体100Aの口部101に挿入されて嵌合する構成であってもよい。
【0020】
以下の説明では、軸線Cに沿った方向を軸線方向、軸線Cに直交する方向を径方向、軸線Cを中心とする軸周り方向を周方向と適宜称する。また、ノズルキャップ10において、軸線方向における計量キャップ102側を上方(上側)、容器本体100A側を下方(下側)と適宜称する。また、軸線方向をZ方向とし、
図1中、径方向をX方向とし、Z方向およびX方向と直交する方向(
図1中、紙面と直交する方向)をY方向として適宜説明する。
【0021】
図2に示すように、ノズルキャップ10は、例えば、ポリプロピレン等のオレフィン系合成樹脂を用いた射出成形により形成されている。ノズルキャップ10は、嵌合部11、ノズル基部12、ノズル部13及び突出壁50を主に有し、互いに軸線Cを中心として構成されている。
【0022】
嵌合部11は、筒状をなし、
図1に示した容器本体100Aの口部101の外側に嵌合する。嵌合部11は、ノズルキャップ10の下端側にキャップ最大径となる環状凸部14と、軸線Cに沿う環状凸部14の上端に連続し環状凸部14よりも径方向内側に位置する中間部15と、中間部15の環状凸部14とは反対側の端部に連続するとともに中間部15よりも径方向内側に位置する上部16とを有している。上部16の軸線C周りには、計量キャップ102の雌ねじ部に螺合する雄ねじ部17が形成されている。本実施形態のノズルキャップ10は、軸線Cに沿って上部16から中間部15、環状凸部14へ向かうに従って、径方向外側に段階的に拡径した形状となっている。
【0023】
図1に示したように、ノズルキャップ10には上述の計量キャップ102が装着される。計量キャップ102は、
図2に示すように、上部16の外側から、上部16と中間部15との間の段差19内に収まるように装着される。すなわち、計量キャップ102がノズルキャップ10に装着された状態で、計量キャップ102からノズルキャップ10にかけて連続した外形をなすように構成されている。
【0024】
また、嵌合部11には、
図4に示すように、内周面11bに沿って軸線C周りに雌ねじ部20が形成されており、
図1に示した容器本体100Aの口部101の外側に形成された雄ねじ部(不図示)に螺合する構成とされている。
【0025】
ノズル基部12は、嵌合部11の内側に同軸をなして設けられ、キャップ装着時に容器本体100Aの口部101内に挿入される。ノズル基部12は、
図2乃至
図5に示すように、内側筒部21と、内側筒部21の下端側に設けられた底面部22とを有する有底円筒状に形成されている。底面部22には、注出用開口部23(
図4及び
図5参照)が形成されている。
【0026】
内側筒部21は、
図4に示すように、嵌合部11の上部16よりも径方向内側(軸線C側)に位置し、軸線Cに沿う下端側が環状凸部14よりも-Z側(容器本体100A側)に突出している。
【0027】
底面部22は、容器本体100A側に凸のV字形状に形成されている。
図5に示すように、底面部22は、互いに傾斜角度が異なり-X側からX方向に沿って順次配置された平板状の第1傾斜部(傾倒側傾斜底部)22Aと、平板状の第2傾斜部(反傾倒側傾斜底部)22Bとを有している。第1傾斜部22Aは、内容物を傾倒注出する際にノズル部13を傾倒する側(-X側)に配置され内側筒部21の下端から径方向内側(+X側)に向かうのに従って下向きに傾斜している。第2傾斜部22Bは、上記傾倒する側とは対向する側(+X側)に配置され内側筒部21の下端から径方向内側(-X側)に向かうのに従って下向きに傾斜している。
【0028】
第1傾斜部22A及び第2傾斜部22Bがそれぞれ水平面(XY平面)に対して傾斜する角度(以下、単に傾斜角度と称する)の大小関係は、第1傾斜部22A及び第2傾斜部22Bが軸線Cよりも+X側の位置で交差していることにより決定される。すなわち、第1傾斜部22Aの傾斜角度は、第2傾斜部22Bの傾斜角度よりも小さい。第1傾斜部22Aの上面32Aと第2傾斜部22Bの上面32Bとは平面形状であり、軸線Cよりも+X側の位置で断面形状が+Z側に開口する略V字状に交差している。上面32Aと上面32Bとの交差部は、主に自重によって上面32Aに沿って下向きに移動する液状の内容物と、主に自重によって上面32Bに沿って下向きに移動する液状の内容物とが会合する液会合部34である。
図6に示すように、液会合部34は、軸線C方向の上面視でY方向に線状に連なり、注出用開口部23を挟んだY方向の両側に対で設けられている。
【0029】
ノズル部13は、ノズル基部12の底面部22に立設され、軸線Cに沿って容器本体100Aとは反対側(+Z側)に向かって延出している。具体的には、ノズル部13は、底面部22の第1傾斜部22Aに立設された樋状部24と、一対の受け部26,26とを有している。
【0030】
樋状部24は、
図6に示すように、注出用開口部23の周縁から上方(+Z側)へ立ち上がるようにして延在し、内側に形成されるノズル流路18の流路径が延在方向(Z方向)で略一定とされている。樋状部24は、軸線C方向の上面視において、注出用開口部23の周縁のうちの一部を囲むようにして設けられている。樋状部24は、+X側に開口する断面U字形状をなし、+X側の開口端24a,24aは注出用開口部23の周縁から外れた位置にX方向に沿って延在している。
【0031】
樋状部24の両外側には、樋状部24に沿って軸線方向へ延びるとともに樋状部24の外形に倣って湾曲する一対の受け部26,26が設けられている。受け部26は、軸線C方向の上面視において、軸線Cを中心とする円弧形状に形成され、一端が樋状部24に接続されている。受け部26は、第1傾斜部22Aに+Z側に向けて立設されている。
【0032】
本実施形態の注出用開口部23は、第1傾斜部22AをZ方向に貫通して形成されている。注出用開口部23は、周縁23a、23b、23cを有している。周縁23aは、軸線C方向の上面視において、樋状部24の内壁面24bのうち、X方向に関して開口端24aと軸線Cとの間の位置よりも-X側の内壁面24bと略面一に形成されている。周縁23cは、軸線C方向の上面視において、対で配置された液会合部34の端部同士をつないでおり、Y方向に延びて形成されている。Y方向に関する周縁23cの各端部の位置は、開口端24aと軸線Cとの間に配置されている。周縁23bのそれぞれは、周縁23aの端部と周縁23cの端部とをつないでいる。
【0033】
すなわち、周縁23cは、対で配置された液会合部34の端部同士をつなぐ第1部分であり、周縁23a、23bは、第1部分の端部同士をつなぐ第2部分である。樋状部24の内側には、底面部22の第1傾斜部22Aの一部からなる流出規制部29がそれぞれ設けられている。流出規制部29は、開口端24a,24a側の樋状部24と、周縁23bと、液会合部34とにより囲まれた領域である。これら流出規制部29により、注出用開口部23の周縁の一部が樋状部24の内壁面24bから離れた構成となっている。
【0034】
図4乃至
図6に示すように、突出壁50は、YZ平面と平行な板状に形成されている。突出壁50は、第2傾斜部22Bの下端部から-Z側に延出して連設されている。突出壁50における-X側の側面50aは、Y方向に関して周縁23cを含み、周縁23cよりも長く形成されている。突出壁50における+X側の側面50bは、第2傾斜部22Bの下面33Bに接続されている。また、突出壁50の下端は、
図3に示すように、水平な平坦面(平坦部)50cを有している。なお、平坦部としては、水平な平坦面50cの他に、Y方向の両端がZ方向で同一位置にあり中央側が両端に対して+Z側に凹んだ形状であってもよい。
【0035】
側面50aは、上端のX方向の位置が液会合部34及び周縁23cと同一の位置である。上端のX方向の位置が周縁23cと同一位置の側面50aは、注出用開口部23に臨んでいる。側面50aは、液会合部34の端部同士をつなぐ方向の長さが周縁23cの長さよりも長く形成されている。側面50aのうち、注出用開口部23に臨む側面50aは、後述するように、液状の内容物の容器本体100Aへの回収を促進させる液回収促進面51である。
【0036】
X方向及びZ方向において、液回収促進面51の上端位置は、液会合部34と同一位置である。Y方向における液回収促進面51の両端は、液会合部34と接続されている。すなわち、液回収促進面51の両端では、第1傾斜部22Aの上面32Aと、第2傾斜部22Bの上面32Bと、液回収促進面51とが交差している。そのため、液会合部34の延長線は、液回収促進面51上に配置されている。
【0037】
上記構成のノズルキャップ10は、
図1に示した容器本体100Aの口部101から、ノズル基部12の底部側を収容空間100a内へ挿入させつつ、嵌合部11の雌ねじ部20を容器本体100A側の雄ねじ部(不図示)に螺合させながら締結することにより、容器本体100Aに装着される。容器本体100Aに装着されたノズルキャップ10には、嵌合部11の雄ねじ部17に計量キャップ102の雌ねじ部(不図示)が螺合されて締結されることにより、計量キャップ102が装着される。
【0038】
容器本体100A内から内容物を注出する際には、計量キャップ102を締結時とは逆方向に回転して、計量キャップ102の雌ねじ部(不図示)と、ノズルキャップ10の雄ねじ部17との螺合を解除して計量キャップ102をノズルキャップ10から取り外す。計量キャップ102を取り外した状態で、容器本体100Aを把持してノズルキャップ10のノズル部13の開口側を上方に向け、その後、
図7に示すように、ノズル部13が下方に位置するように斜めに傾けることにより、容器本体100Aに収納された内容物をノズル部13から計量キャップ102に注出して計量することができる。
【0039】
このとき、内容物を多く出し過ぎてしまった場合は再び容器本体100A内へ戻そうとするが、その際に、注出用開口部23内へ入らなかった内容物は、第1傾斜部22Aの上面32A、第2傾斜部22Bの上面32Bまたは受け部26,26によって受け止められる。受け部26によって受容された内容物は、第1傾斜部22Aの上面32Aを流動し、上面32Aにおける最下部の液会合部34に達する。
【0040】
一方、第2傾斜部22Bの上面32Bを流動した内容物のうち、注出用開口部23の周縁23cに達した内容物は、突出壁50の液回収促進面51に沿って流下する。また、第2傾斜部22Bの上面32Bを流動した内容物のうち、周縁23cから外れた位置の内容物は、上面32Bおける最下部の液会合部34に達する。
【0041】
液会合部34においては、上面32Aを流動した内容物同士、上面32Bを流動した内容物同士、あるいは上面32Aを流動した内容物と上面32Bを流動した内容物が会合する。液会合部34においては、注出用開口部23と逆側が内側筒部21で遮蔽されているため、会合し増加した内容物は注出用開口部23に向かって移動し、液会合部34と連なった液回収促進面51に沿って流下する。
【0042】
液会合部34から液回収促進面51に達した内容物は、例えば、複数の液滴が合一することで液滴毎の重量が大きくなっている。また、液回収促進面51に沿って流下する内容物の液滴も内容物が高粘度で流下速度が遅いことから、液回収促進面51においても液滴同士が合一して液滴毎の重量が大きくなる。
【0043】
液回収促進面51に付着している内容物については、体積(質量)に応じた重力が下向きに作用する。一方、内容物の表面張力は、表面積(液回収促進面51との接触面積)の大きさに応じて大きくなる。内容物の表面張力は、重力の作用を阻害する方向に作用する。
【0044】
ここで理解を容易にするために、内容物の液滴が半径r1、表面積S1、体積V1の球形であるとした場合、体積V1は下式(1)で表され、表面積S1は下式(2)で表される。
V1=(4/3)×π×(r1)3 …(1)
S1=4×π×(r1)2 …(2)
【0045】
そして、二つの液滴が合一した液滴が半径r2、表面積S2、体積V2の球形であるとした場合、体積V2は下式(3)で表される。
V2=(4/3)×π×(r2)3 …(3)
V2/V1=2と、上式(1)、(3)から下式(4)が導かれる。
r2=r1×(2)1/3≒r1×1.26 …(4)
合一した液滴の表面積S2は、4×π×(r2)2 であるから上式(4)から下式(5)が導かれる。
S2=S1×(r2/r1)2≒S1×1.59 …(5)
【0046】
従って、二つの液滴が合一した液滴は、重力による下向きの力が2倍になるのに対して表面張力は約1.59倍となり、相対的に液滴に対して下向きに作用する力が、2/1.59≒1.26倍に大きくなる。これにより、液回収促進面51において液滴の合一が進むのに従って、下向きに作用する力、すなわち内容物の液滴を落下させて容器本体100Aに回収するための力が大きくなる。その結果、内容物を速やかに容器本体Aに回収することが可能となる。また、合一する液滴が3滴以上の場合には、さらに液滴に対して下向きに作用する力が大きくなり内容物の回収がより速やかに行える。
【0047】
以上のように、本実施形態のノズルキャップ10においては、第1傾斜部22Aの上面32Aと第2傾斜部22Bの上面32Bとが底面部22の下端にて交差する液会合部34を設け、液会合部34の端部同士をつなぐ注出用開口部23の周縁23cを設けることにより、液回収促進面51において、液会合部34から流動した液滴、上面32Bから流下した液滴を合一して体積及び質量が大きな液滴を形成することが可能となる。そのため、本実施形態のノズルキャップ10においては、高粘度の内容物であっても表面張力よりも重力の影響を大きくすることで内容物を速やかに容器本体100Aに回収することが可能となる。
【0048】
また、本実施形態のノズルキャップ10においては、突出壁50の液会合部34の端部同士をつなぐ方向の長さを周縁23cの長さよりも長くすることにより、液会合部34の端部と回収促進面51との間に隙間ができることを回避できる。そのため、本実施形態のノズルキャップ10においては、当該隙間において液滴の合一が途切れ、内容物の速やかな回収に支障を来すことを抑制できる。
【0049】
また、本実施形態のノズルキャップ10においては、突出壁50の下端部に水平な平坦面50Cが設けられているので、ノズルキャップ10を安定した姿勢で静置することが可能であり、製造工程でのキャップ供給プロセスにおけるハンドリング性が高まり、生産性向上が図られる。
【0050】
[キャップの第2実施形態]
続いて、キャップ10の第2実施形態について、
図8及び
図9を参照して説明する。これらの図において、
図1乃至
図7に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。第2実施形態に係るキャップ10は、第1傾斜部22Aの構成が第1実施形態と異なっている。
【0051】
図8は、第2実施形態に係るノズルキャップ(キャップ)10の構成を示す外観斜視図である。
図9は、
図8に示すノズルキャップ10を軸線方向から見た上面図である。
【0052】
図8及び
図9に示すように、本実施形態におけるノズルキャップ10の第1傾斜部22Aは、-X側からX方向に沿って順次配置された平板状の緩傾斜部42と急傾斜部43とを有している。緩傾斜部42は、内側筒部21の下端から径方向内側(+X側)に向かうのに従って下向きに傾斜している。急傾斜部43は、緩傾斜部42の下端から液会合部34に向かうのに従って下向きに傾斜している。緩傾斜部42の上面42Aと、急傾斜部43の上面43Aとは平面形状である。水平面に対する上面43Aの交差角度は、水平面に対する上面42Aの交差角度よりも大きい。
【0053】
さらに、急傾斜部43は、内側筒部21の下端からY方向に沿って軸線Cに向かうのに従って下向きに傾斜している。すなわち、急傾斜部43の上面43Aは、XY平面をX軸周り及びY軸周りに回転した平面と平行な平面形状で形成されている。従って、急傾斜部43の上面43Aと第2傾斜部22Bの上面32Bとの交差部である液会合部34は、Y方向の両外側から軸線C(注出用開口部23)に向かうのに従って下向き(-Z側)に傾斜している。
【0054】
緩傾斜部42の上面42Aについては、XY平面をY軸周りに回転した平面と平行な平面形状である。この場合、上面42Aと上面43Aとは段差が生じた状態で連結される。そのため、上面42Aから上面43Aに円滑に液滴が流動可能とするために、上面43Aを上面42Aよりも下側(-Z側)に配置する。例えば、上面43Aは、Y方向の最も両外側の位置で上面42Aと交差し、当該交差部からY方向で軸線C(注出用開口部23)に向かうのに従って、上面42Aの下端との距離が漸次大きくなるように下向き(-Z側)に傾斜する構成とする。
【0055】
なお、緩傾斜部42の上面42Aについては、上面43Aと同様に、XY平面をX軸周り及びY軸周りに回転した平面と平行な平面形状であってもよい。上面42AがXY平面をX軸周り及びY軸周りに回転した平面と平行な平面形状である場合には、上面42AのX軸周りの回転角度を上面43AのX軸周りの回転角度と同一とすることにより、上面42Aと上面43Aとは段差が生じることなく連続的に連結される。この場合、Y方向の両側に配置された上面42A同士は、樋状部24の-X側において交差し、軸線Cと交差するX軸と平行な図示しない稜線を形成することになる。
【0056】
急傾斜部43の上面43Aと第2傾斜部22Bの上面32Bとは断面形状が+Z側に開口する略V字状に交差している。急傾斜部43の上面43Aと第2傾斜部22Bの上面32Bとの交差角度は、上記第1実施形態で示した第1傾斜部22Aの上面32Aと第2傾斜部22Bの上面32Bとの交差角度よりも小さい。
【0057】
上記構成のキャップ10において、計量時に多く出し過ぎて再び容器本体100A内へ戻される内容物のうち、第1傾斜部22Aを流動する内容物は、例えば、緩傾斜部42の上面42Aから急傾斜部43の上面43Aを順次流動する。上面43Aを流動した内容物は、上面43Aにおける最下部の液会合部34に達する。上面43Aを流動した内容物は、上面32Bを流動した内容物と会合する。
【0058】
このとき、上面43Aは、水平面に対する交差角度が水平面に対する上面42Aの交差角度よりも大きく、また、第2傾斜部22Bの上面32Bとの交差角度が上述した第1実施形態における上面32Aと第2傾斜部22Bの上面32Bとの交差角度よりも小さいため、狭い空間において大きな流動速度で上面32Bを流動した内容物と会合する。そのため、上面43Aを流動した内容物と上面32Bを流動した内容物とは液会合部34において短時間で合一することができる。また、より大きな運動エネルギーをもって合一した内容物は、大きな速度で注出用開口部23に向かって移動し、そして、大きな速度で液会合部34と連なった液回収促進面51に沿って流下する。
【0059】
さらに、本実施形態では、液会合部34が、Y方向の両外側から軸線C(注出用開口部23)に向かうのに従って下向き(-Z側)に傾斜しているため、液会合部34で合一した内容物は、下側に傾斜する液会合部34に沿って重力が加わった大きな速度で注出用開口部23に向かって移動し、液会合部34と連なった液回収促進面51に沿って流下することになる。
【0060】
このように、本実施形態のノズルキャップ10では、上記第1実施形態と同様の作用・効果が得られることに加えて、液会合部34における内容物の合一、及び合一した内容物がより大きな速度で流動及び流下することにより、内容物を一層速やかに容器本体100Aに回収することが可能となる。
【0061】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0062】
例えば、上記実施形態では、第1傾斜部22Aの上面32Aと第2傾斜部22Bの上面32Bとが平面形状である構成を例示したが、この構成に限定されず、少なくとも一方が軸線Cと平行な軸線を中心とし、上端よりも下端が軸線Cに近くなるように傾斜する円錐状の曲面であってもよい。この構成においても、液会合部34と注出用開口部23の周縁23cとの二つの交点をつなぐ直線を含むZ方向に垂直でXY平面と平行な仮想平面を考えた時に、周縁23cの上端は全てこの仮想平面に含まれるか、又はこの仮想平面よりも-Z側に存在することが内容物を速やかに回収する観点から好適である。
【符号の説明】
【0063】
10…ノズルキャップ(キャップ)、 11…嵌合部、 12…ノズル基部、 13…ノズル部、 21…内側筒部、 22…底面部、 22A…第1傾斜部(傾倒側傾斜底部)、 22B…第2傾斜部(反傾倒側傾斜底部)、 23…注出用開口部、 23a、23b…周縁(第2部分)、 23c…周縁(第1部分)、 34…液会合部、 50…突出壁、 50c…平坦面(平坦部)、 51…液回収促進面、 100…容器、 100A…容器本体、 101…口部