IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブリヂストンサイクル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-三輪自転車 図1
  • 特許-三輪自転車 図2
  • 特許-三輪自転車 図3
  • 特許-三輪自転車 図4
  • 特許-三輪自転車 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】三輪自転車
(51)【国際特許分類】
   B62K 5/06 20060101AFI20220311BHJP
【FI】
B62K5/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018126497
(22)【出願日】2018-07-03
(65)【公開番号】P2020006709
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000112978
【氏名又は名称】ブリヂストンサイクル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】小高 克彦
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第01/036257(WO,A1)
【文献】特開2013-091473(JP,A)
【文献】特開昭51-010537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪を支持する前フレームと、左右一対の後輪を支持する後フレームと、を備え、前記前フレームが、前記後フレームに対して、前後方向に延びる揺動軸回りに揺動可能に配設された三輪自転車であって、
前記前フレームおよび前記後フレームのうちのいずれか一方のフレームには、他方のフレームが備える第1規制部に、前記前フレームが前記後フレームに対して揺動軸回りに揺動したときに当接する第2規制部が備えられ、
前記第1規制部は、前記前フレームが前記後フレームに対して揺動軸回り揺動したときに、前記第2規制部が当接する複数の規制面を備えるとともに、前記他方のフレームに対して姿勢若しくは配設位置が替えられるように着脱可能に取り付けられ、
前記他方のフレームに対する前記第1規制部の姿勢若しくは配設位置が替えられたときに、前記第2規制部と揺動軸回りに対向する前記規制面が替えられて、前記規制面と前記第2規制部との揺動軸回りの距離が変更され
前記第1規制部は、厚さの異なる複数の板体が一体に連結されて構成され、複数の前記板体が各別に前記規制面を有する三輪自転車。
【請求項2】
前記他方のフレームにおいて、前記第2規制部と揺動軸回りに対向する部分に、前記第1規制部の複数の前記板体のうちのいずれか1つが選択的に配置される装着凹部が形成されている請求項1に記載の三輪自転車。
【請求項3】
前輪を支持する前フレームと、左右一対の後輪を支持する後フレームと、を備え、前記前フレームが、前記後フレームに対して、前後方向に延びる揺動軸回りに揺動可能に配設された三輪自転車であって、
前記前フレームおよび前記後フレームのうちのいずれか一方のフレームには、他方のフレームが備える第1規制部に、前記前フレームが前記後フレームに対して揺動軸回りに揺動したときに当接する第2規制部が備えられ、
前記第1規制部は、前記前フレームが前記後フレームに対して揺動軸回り揺動したときに、前記第2規制部が当接する複数の規制面を備えるとともに、前記他方のフレームに対して姿勢若しくは配設位置が替えられるように着脱可能に取り付けられ、
前記他方のフレームに対する前記第1規制部の姿勢若しくは配設位置が替えられたときに、前記第2規制部と揺動軸回りに対向する前記規制面が替えられて、前記規制面と前記第2規制部との揺動軸回りの距離が変更され
前記一方のフレームは、前後方向に延びる連結軸を備え、
前記他方のフレームは、前記連結軸を揺動軸回りに回転可能に支持する軸受部を備え、
前記第1規制部は、前記軸受部に着脱可能に取り付けられ、
前記第2規制部は、前記連結軸に配設されている三輪自転車。
【請求項4】
前輪を支持する前フレームと、左右一対の後輪を支持する後フレームと、を備え、前記前フレームが、前記後フレームに対して、前後方向に延びる揺動軸回りに揺動可能に配設された三輪自転車であって、
前記前フレームおよび前記後フレームのうちのいずれか一方のフレームには、他方のフレームが備える第1規制部に、前記前フレームが前記後フレームに対して揺動軸回りに揺動したときに当接する第2規制部が備えられ、
前記第1規制部は、前記前フレームが前記後フレームに対して揺動軸回り揺動したときに、前記第2規制部が当接する複数の規制面を備えるとともに、前記他方のフレームに対して姿勢若しくは配設位置が替えられるように着脱可能に取り付けられ、
前記他方のフレームに対する前記第1規制部の姿勢若しくは配設位置が替えられたときに、前記第2規制部と揺動軸回りに対向する前記規制面が替えられて、前記規制面と前記第2規制部との揺動軸回りの距離が変更され
前記第2規制部は、揺動軸回りに延びる円弧壁となっている三輪自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三輪自転車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、前輪を支持する前フレームと、左右一対の後輪を支持する後フレームと、を備え、前フレームが、後フレームに対して、前後方向に延びる揺動軸回りに揺動可能に配設された三輪自転車が知られている。
この種の三輪自転車として、例えば下記特許文献1に示されるような、後フレームが、揺動軸回りに揺動した前フレームに当接する規制面を有する規制部と、規制面を前フレームに近付けるスペーサと、を備え、スペーサが着脱可能に配設された構成が知られている。この三輪自転車では、スペーサを後フレームに対して着脱することにより、規制面と前フレームとの揺動軸回りの距離が変更され、前フレームの後フレームに対する揺動範囲を変更することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-55514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の三輪自転車では、規制面と前フレームとの揺動軸回りの距離を拡げるために、スペーサを後フレームから離脱すると、スペーサを紛失するおそれがある。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、部品の紛失、および部品点数の増大を抑えつつ、前フレームの後フレームに対する揺動範囲を変更することができる三輪自転車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の三輪自転車は、前輪を支持する前フレームと、左右一対の後輪を支持する後フレームと、を備え、前記前フレームが、前記後フレームに対して、前後方向に延びる揺動軸回りに揺動可能に配設された三輪自転車であって、前記前フレームおよび前記後フレームのうちのいずれか一方のフレームには、他方のフレームが備える第1規制部に、前記前フレームが前記後フレームに対して揺動軸回りに揺動したときに当接する第2規制部が備えられ、前記第1規制部は、前記前フレームが前記後フレームに対して揺動軸回り揺動したときに、前記第2規制部が当接する複数の規制面を備えるとともに、前記他方のフレームに対して姿勢若しくは配設位置が替えられるように着脱可能に取り付けられ、前記他方のフレームに対する前記第1規制部の姿勢若しくは配設位置が替えられたときに、前記第2規制部と揺動軸回りに対向する前記規制面が替えられて、前記規制面と前記第2規制部との揺動軸回りの距離が変更される。
【0007】
この発明によれば、前記他方のフレームに対する第1規制部の姿勢若しくは配設位置が替えられたときに、第2規制部と揺動軸回りに対向する第1規制部の規制面が替えられて、規制面と第2規制部との揺動軸回りの距離が変更される。したがって、三輪自転車から離脱されたまま放置される部材を生じさせずに、同一の第1規制部を前記他方のフレームに取り付けた状態で、前フレームの後フレームに対する揺動範囲を変更することができる。
以上より、部品の紛失、および部品点数の増大を抑えつつ、前フレームの後フレームに対する揺動範囲を変更することができる。
【0008】
ここで、前記第1規制部は、厚さの異なる複数の板体が一体に連結されて構成され、複数の前記板体が各別に前記規制面を有してもよい。
【0009】
この場合、第1規制部が、厚さの異なる複数の板体が一体に連結されて構成され、複数の板体が各別に規制面を有するので、第1規制部の構造の複雑化を抑えることが可能になり、コストの増大を抑制することができる。
【0010】
また、前記他方のフレームにおいて、前記第2規制部と揺動軸回りに対向する部分に、前記第1規制部の複数の前記板体のうちのいずれか1つが選択的に配置される装着凹部が形成されてもよい。
【0011】
この場合、前記他方のフレームにおいて、第2規制部と揺動軸回りに対向する部分に、第1規制部の複数の板体のうちのいずれか1つが選択的に配置される装着凹部が形成されているので、前フレームの後フレームに対する揺動範囲を確保するために、第1規制部の板体の厚さが過度に薄くなるのを防ぐことが可能になり、第1規制部の耐久性を確実に確保することができる。
【0012】
また、前記一方のフレームは、前後方向に延びる連結軸を備え、前記他方のフレームは、前記連結軸を揺動軸回りに回転可能に支持する軸受部を備え、前記第1規制部は、前記軸受部に着脱可能に取り付けられ、前記第2規制部は、前記連結軸に配設されてもよい。
【0013】
この場合、第1規制部および第2規制部が、前フレームと後フレームとを連結して互いに近接している軸受部および連結軸に各別に配設されているので、第1規制部および第2規制部をかさ張り少なくコンパクトに配設することができる。
また、第1規制部が、連結軸より配設位置や形状の自由度が高い軸受部に配設されているので、前記他方のフレームに対する第1規制部の姿勢若しくは配設位置を替える操作が困難になるのを抑えることができる。
【0014】
また、前記第2規制部は、揺動軸回りに延びる円弧壁となってもよい。
【0015】
この場合、第2規制部が、揺動軸回りに延びる円弧壁となっているので、前フレームが後フレームに対して揺動軸回り揺動し、第2規制部が、第1規制部の規制面に当接したときに、第2規制部に生ずる応力を、例えば、第2規制部が平坦壁となっている場合と比べて抑制することが可能になり、耐久性を確保することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、部品の紛失、および部品点数の増大を抑えつつ、前フレームの後フレームに対する揺動範囲を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る一実施形態として示した三輪自転車の側面図である。
図2図1に示す三輪自転車の要部を示す上面図である。
図3図2のIII-III線矢視断面図である。
図4図2および図3のIV-IV線矢視断面図である。
図5図4に示す状態に対して、後フレームに対する第1規制部の姿勢を替えた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る三輪自転車の一実施形態を、図1から図4を参照しながら説明する。
三輪自転車1は、前輪21を支持する前フレーム11と、左右一対の後輪22を支持する後フレーム12と、を備える。
【0019】
前フレーム11は、フロントフォーク13、ヘッドパイプ14、上下メインチューブ15、前後メインチューブ16、シートチューブ17、およびシートステー18を備える。フロントフォーク13、ヘッドパイプ14、上下メインチューブ15、前後メインチューブ16、シートチューブ17、およびシートステー18それぞれの左右方向の中央部は一致している。
【0020】
フロントフォーク13は、上下方向に延びている。フロントフォーク13は、左右方向に間隔をあけて2つ配設され、これらの間に前輪21が差し込まれている。フロントフォーク13の下端部に、前輪21が左右方向に延びる軸線回りに回転可能に取り付けられている。図示の例では、前輪21は、ハブモータ31を介してフロントフォーク13の下端部に取り付けられている。
ヘッドパイプ14は、フロントフォーク13の上端部から上方に向けて延びている。ヘッドパイプ14の上端部内に、ハンドルステム23が回転可能に挿入されている。ハンドルステム23の上端部にハンドル24が取り付けられている。ハンドルステム23およびフロントフォーク13は、ヘッドパイプ14の内側で連結されている。
【0021】
上下メインチューブ15は、ヘッドパイプ14から下方に向かうに従い漸次、後方に向けて延びている。
前後メインチューブ16は、上下メインチューブ15の下端部から後方に向けて延びている。
シートチューブ17は、前後メインチューブ16における前後方向の中間部から上方に向けて延びている。シートチューブ17の上端部内に、シートポスト25が嵌合されている。シートポスト25の上端部にサドル19が取り付けられている。
シートステー18は、シートチューブ17の上端部から下方に向かうに従い漸次、後方に向けて延び、前後メインチューブ16の後部に連結されている。
【0022】
前後メインチューブ16におけるシートチューブ17との連結部分に、不図示の前方スプロケットを介して、クランク29の一端部が取り付けられ、クランク29の他端部にペダル28が取り付けられている。前方スプロケット、およびクランク29の一端部は、左右方向に延びる軸線回りに回転可能に配設されており、クランク29がその一端部回りに回転するのに伴い、前方スプロケットも軸線回りに回転する。ペダル28は、クランク29の他端部に、左右方向に延びる軸線回りに回転可能に支持されている。クランク29およびペダル28は、前フレーム11を左右方向に挟む両側に配設されている。
【0023】
前フレーム11において、ヘッドパイプ14より前方に位置する部分に前籠32が配設されている。左右方向から見て、前後メインチューブ16とシートチューブ17とシートステー18とで囲まれた領域にバッテリー装置33が配設されている。
【0024】
後フレーム12は、図2および図3に示されるように、リアフォーク34、対向板35、横架部材36、架橋部材37、および籠支持部材38を備える。
【0025】
リアフォーク34は、左右方向に間隔をあけて2つ配設され、後輪22は、左右一対のリアフォーク34同士の間に配設されている。リアフォーク34の下端部に、後輪22が左右方向に延びる回転軸線回りに回転可能に取り付けられている。この回転軸線は、前フレーム11の前後メインチューブ16より後方に位置している。この回転軸線は、前後メインチューブ16より下方に位置している。左右一対の後輪22のうちのいずれか一方に、後部スプロケット39が、後輪22の回転軸線と同軸に配設された状態で連結されている。後部スプロケット39および前部スプロケットにチェーン41が巻回されており、ペダル28に加えられた、クランク29の一端部回りの回転力がチェーン41を介して片方の後輪22に伝達される。
【0026】
対向板35は、左右方向に間隔をあけて2つ配設され、左右一対の後輪22同士の間に配設されている。対向板35の表裏面は左右方向を向いている。
横架部材36は、左右方向に延び、対向板35同士を連結している。横架部材36は、前フレーム11の前後メインチューブ16より後方に位置している。横架部材36は、前後メインチューブ16より下方に位置している。横架部材36は、前後方向に間隔をあけて複数配設されている。
【0027】
架橋部材37は、後輪22の上方を左右方向に跨いで、リアフォーク34および対向板35の各上端部における前端部同士を連結した前架橋部37aと、後輪22の上方を左右方向に跨いで、リアフォーク34および対向板35の各上端部における後端部同士を連結した後架橋部37bと、を備える。架橋部材37は、左右方向に間隔をあけて2つ配設されている。
籠支持部材38は、左右方向に延び、左右一対の前架橋部37a同士を連結する第1部材38aと、左右方向に延び、左右一対の後架橋部37b同士を連結する第2部材38bと、前後方向に延び、第1部材38aと第2部材38bとを連結する複数の第3部材38cと、を備える。籠支持部材38上に、後籠42が取り付けられている。
【0028】
ここで、前フレーム11は、前後方向に延びる連結軸45を備え、後フレーム12は、連結軸45を前後方向に延びる揺動軸O回りに回転可能に支持する軸受部46を備える。前フレーム11の連結軸45が、後フレーム12の軸受部46に支持されることにより、前フレーム11が、後フレーム12に対して揺動軸O回りに揺動可能に配設されている。
揺動軸O、および前フレーム11の左右方向の中央部それぞれの左右方向の位置は互いに一致している。後フレーム12が備えるリアフォーク34、対向板35、横架部材36、架橋部材37、および籠支持部材38は、上面視において、揺動軸Oに対して対称に配置されている。揺動軸Oは、前フレーム11の前後メインチューブ16より下方で、かつ後輪22の回転軸線より上方に位置している。
【0029】
軸受部46は、横架部材36の上面における左右方向の中央部に取り付けられている。軸受部46は、前後メインチューブ16より後方に位置している。軸受部46は、少なくとも上方を向く上面、および下方を向く下面を有する直方体状に形成され、軸受部46の下面が、横架部材36の上面に取り付けられている。軸受部46は、左右方向の長さが、前後方向の長さより短く、かつ上下方向の長さより長い直方体状に形成されている。図4に示されるように、軸受部46の上面において、その左右方向の両端部46aより左右方向の内側に位置する部分に、揺動軸O回りに延びる突曲面部が形成されている。軸受部46の上面の左右方向の両端部46aは、平坦面となっている。軸受部46に、前後方向に貫通し、揺動軸Oと同軸に配設された貫通孔が形成されている。この貫通孔に摺動ブッシュ46bが固定状態で嵌合されている。摺動ブッシュ46b内に連結軸45が揺動軸O回りに回転可能に挿入されている。
【0030】
連結軸45は、前後方向に延びる芯軸体51と、芯軸体51に外嵌された装着体52と、を備える。なお、芯軸体51および装着体52は一体に形成されてもよい。連結軸45は、前フレーム11の前後メインチューブ16と一体に形成されてもよい。
【0031】
芯軸体51は、揺動軸Oと同軸に配設されている。芯軸体51の前部は、前後メインチューブ16の直下に配設されている。芯軸体51の後部は、前後メインチューブ16より後方に位置し、軸受部46の摺動ブッシュ46b内に挿入されている。
ここで、前後メインチューブ16には、下方に向けて突出した軸受板16bが配設されている。軸受板16bの表裏面は、前後方向を向いている。軸受板16bに、前後方向に貫く貫通孔が形成されており、この貫通孔に芯軸体51の前端部が挿入されている。芯軸体51の前端部に雄ねじ部が形成されている。芯軸体51の前端部において、軸受板16bを前後方向に挟む両側に位置する部分に、ナットが各別に螺着され、これらのナットにより軸受板16bが前後方向に挟み込まれている。これにより、芯軸体51の前端部が、前後メインチューブ16に固定されている。
【0032】
装着体52は、芯軸体51に外嵌された外嵌筒53と、外嵌筒53の上端部に連結され、左右方向に延びる横筒54と、を備える。外嵌筒53および横筒54それぞれの左右方向の中央部は互いに一致している。外嵌筒53の後端開口縁は、横筒54より後方に位置し、軸受部46の前面に近接している。
【0033】
ここで、前後メインチューブ16の後端部に、後方に向けて突出した左右一対の接続板16aが配設されており、これらの接続板16a同士の間に、横筒54が配設されている。接続板16aの表裏面は、左右方向を向いている。各接続板16aに、左右方向に貫く貫通孔が形成されている。各接続板16aの貫通孔に横筒54の内側を通して頭部付きボルトが一体に挿通され、かつこのボルトにおいて、いずれか一方の接続板16aから左右方向の外側に突出したねじ部にナットが螺着されることによって、装着体52が前後メインチューブ16に固定されている。
【0034】
本実施形態では、前フレーム11が、後フレーム12に対して揺動軸O回りに揺動したときに、前フレーム11を復元移動させる弾性体55を備える。弾性体55は、左右方向に2つ並べられて配設され、連結軸45と、後フレーム12における左右一対の対向板35と、を連結している。
【0035】
図示の例では、連結軸45の芯軸体51において、軸受部46から後方に突出した部分に、上方に向けて突出した支持板51aが配設されている。支持板51aの表裏面は、前後方向を向いている。弾性体55は、支持板51aの上端部と、対向板35の上端部と、を連結している。支持板51aの上端部は、対向板35の上端部より上方に位置している。なお、対向板35の上端部は、横架部材36より上方に位置している。弾性体55は、左右方向の内側である支持板51a側から、左右方向の外側である対向板35側に向かうに従い漸次、下方に向けて延びている。
【0036】
そして、本実施形態では、前フレーム11および後フレーム12に、前フレーム11が後フレーム12に対して揺動軸O回りに揺動したときに互いに当接する第1規制部26および第2規制部27が各別に備えられている。第1規制部26は、後フレーム12に備えられ、第2規制部27は、前フレーム11に備えられている。
【0037】
第2規制部27は、連結軸45の装着体52に配設されている。第2規制部27は、横筒54の後端部、および外嵌筒53の上端部に一体に連結されている。第2規制部27は、外嵌筒53の後端開口縁、および接続板16aより後方に突出し、軸受部46の前部の上面を上方から覆っている。第2規制部27は、揺動軸O回りに延びる円弧壁となっている。上面視において、第2規制部27の左右方向の中央部は、揺動軸O上に位置している。図4に示されるように、揺動軸Oに直交する断面視において、第2規制部27の下面と、軸受部46の上面のうち、左右方向の両端部46aより左右方向の内側に位置する突曲面部と、の間の隙間は、揺動軸O回りに沿う方向の全域にわたって同等になっている。
【0038】
第1規制部26は、軸受部46に着脱可能に取り付けられている。第1規制部26は、軸受部46における左右方向の両端部に各別に配設されている。2つの第1規制部26は、互いに同じ形状で、同じ大きさで形成されている。
第1規制部26は、前フレーム11が後フレーム12に対して揺動軸O回り揺動したときに、第2規制部27が当接する複数の規制面26a、26bを備えるとともに、図4および図5に示されるように、後フレーム12に対して姿勢が替えられるように着脱可能に取り付けられている。そして、軸受部46に対する第1規制部26の姿勢が替えられたときに、第2規制部27と揺動軸O回りに対向する規制面26a、26bが替えられて、規制面26a、26bと第2規制部27との揺動軸O回りの距離が変更されるように構成されている。
【0039】
図示の例では、第1規制部26は、厚さの異なる複数の板体61、62が一体に連結されて構成され、複数の板体61、62が各別に規制面26a、26bを有する。
第1規制部26は、2つの板体61、62を備える。2つの板体61、62のうち、いずれか一方の板体61が、軸受部46の上面に配置され、いずれか他方の板体62が、軸受部46の表面のうち、左右方向を向く側面に配置されていて、第1規制部26は前後方向から見て逆L字状を呈する。
【0040】
2つの板体61、62はそれぞれ、平面視矩形状を呈し、この矩形状を画成する4つの辺のうち、一対の辺が前後方向に延び、残り一対の辺が、軸受部46の上面に配置された一方の板体61では、左右方向延び、軸受部46の側面に配置された他方の板体62では、上下方向に延びる。このうち、前後方向に延びる一対の辺のうちの1辺は、2つの板体61、62で共通している。
【0041】
軸受部46の上面に配置された一方の板体61では、規制面26aが上方を向き、軸受部46の側面に配置された他方の板体62では、規制面26bが左右方向の外側を向いている。一方の板体61の規制面26aは、第2規制部27と上下方向で対向している。図示の例では、一方の板体61の規制面26aのうちの前部が、第2規制部27と上下方向で対向している。
【0042】
2つの板体61、62の前後方向の長さは互いに同じになっている。軸受部46の上面に配置された一方の板体61において、規制面26aの反対側に位置して、軸受部46の上面に当接する当接面の左右方向の大きさは、軸受部46の側面に配置された他方の板体62において、規制面26bの反対側に位置して、軸受部46の側面に当接した当接面の上下方向の大きさと同等になっている。
【0043】
軸受部46の側面に、ボルト47が螺着される雌ねじ部が、前後方向に間隔をあけて複数形成されている。2つの板体61、62にはそれぞれ、ボルト47が挿通される挿入孔61a、62aが、前後方向に間隔をあけて複数形成されている。図示の例では、ボルト47を、他方の板体62の挿入孔62aに挿通し、軸受部46の前記雌ねじ部に螺着することによって、第1規制部26が軸受部46に取り付けられている。
【0044】
2つの板体61、62に形成された挿入孔61a、62aの内径およびピッチは同じになっている。一方の板体61の前記当接面と、他方の板体62の挿入孔62aの中心と、の上下方向の距離Aは、他方の板体62の前記当接面と、一方の板体61の挿入孔61aの中心と、の左右方向の距離Bと同じになっている。
【0045】
以上より、図4に示されるような、後フレーム12に対する第1規制部26の姿勢に替えて、図5に示されるように、他方の板体62の前記当接面を軸受部46の上面に当接させ、かつ一方の板体61の前記当接面を軸受部46の側面に当接させた姿勢にしても、ボルト47を、一方の板体61の挿入孔61aに挿通し軸受部46の前記雌ねじ部に螺着することによって、第1規制部26を軸受部46に取り付けることができる。すなわち、1つの第1規制部26において、軸受部46の上面に位置させる板体61、62と、軸受部46の側面に位置させる板体61、62と、を選択的に切り替えることができるようになっている。
また、2つの第1規制部26が、互いに同じ形状で、同じ大きさで形成されているので、2つの第1規制部26のいずれも、軸受部46における左側の端部および右側の端部の双方に取り付けることができる。
【0046】
軸受部46において、第2規制部27と揺動軸O回りに対向する部分に、第1規制部26の複数の板体61、62のうちのいずれか1つが選択的に配置される装着凹部58が形成されている。装着凹部58は、軸受部46の上面における左右方向の両端部46aに形成されている。装着凹部58は、軸受部46の前部に形成されている。装着凹部58は、左右方向の外側および前方の双方向に開口している。
【0047】
装着凹部58の内面のうち、少なくとも第1規制部26が当接する、上方を向く底面は、平坦面となっている。図示の例では、装着凹部58の内面のうち、左右方向を向く側面も平坦面となっている。装着凹部58の底面の左右方向の大きさは、装着凹部58に配置される板体61、62の前記当接面の左右方向の大きさ以上となっている。これにより、軸受部46の側面に配置された板体61、62の前記当接面を、軸受部46の側面に当接させることができる。
【0048】
以上の構成において、例えば三輪自転車1が旋回走行するときなど、三輪自転車1に加えられた外力に起因して、前フレーム11が、後フレーム12に対して揺動軸O回りに回転すると、2つの弾性体55のうちのいずれか一方が引張され、かつ他方が圧縮されながら、前後メインチューブ16、芯軸体51、装着体52、および支持板51aが揺動軸O回りに回転し、第2規制部27における揺動軸O回りの端部が、第1規制部26の規制面26aに当接する。そして、この外力が解除されると、2つの弾性体55の復元力により、前フレーム11が、元の姿勢に復帰するように後フレーム12に対して揺動軸O回りに回転する。
【0049】
以上説明したように、本実施形態による三輪自転車1によれば、後フレーム12に対する第1規制部26の姿勢が替えられたときに、第2規制部27と揺動軸O回りに対向する第1規制部26の規制面26a、26bが替えられて、規制面26a、26bと第2規制部27との揺動軸O回りの距離が変更される。したがって、三輪自転車1から離脱されたまま放置される部材を生じさせずに、同一の第1規制部26を後フレーム12に取り付けた状態で、前フレーム11の後フレーム12に対する揺動範囲を変更することができる。
以上より、部品の紛失、および部品点数の増大を抑えつつ、前フレーム11の後フレーム12に対する揺動範囲を変更することができる。
【0050】
また、第1規制部26が、厚さの異なる複数の板体61、62が一体に連結されて構成され、複数の板体61、62が各別に規制面26a、26bを有するので、第1規制部26の構造の複雑化を抑えることが可能になり、コストの増大を抑制することができる。
【0051】
また、後フレーム12において、第2規制部27と揺動軸O回りに対向する部分に、第1規制部26の複数の板体61、62のうちのいずれか1つが選択的に配置される装着凹部58が形成されているので、前フレーム11の後フレーム12に対する揺動範囲を確保するために、第1規制部26の板体61、62の厚さが過度に薄くなるのを防ぐことが可能になり、第1規制部26の耐久性を確実に確保することができる。
【0052】
また、第1規制部26および第2規制部27が、前フレーム11と後フレーム12とを連結して互いに近接している軸受部46および連結軸45に各別に配設されているので、第1規制部26および第2規制部27をかさ張り少なくコンパクトに配設することができる。
また、第1規制部26が、連結軸45より配設位置や形状の自由度が高い軸受部46に配設されているので、後フレーム12に対する第1規制部26の姿勢を替える操作が困難になるのを抑えることができる。
【0053】
また、第2規制部27が、揺動軸O回りに延びる円弧壁となっているので、前フレーム11が後フレーム12に対して揺動軸O回りに揺動し、第2規制部27が、第1規制部26の規制面26a、26bに当接したときに、第2規制部27に生ずる応力を、例えば、第2規制部27が平坦壁となっている場合と比べて抑制することが可能になり、耐久性を確保することができる。
【0054】
なお、本発明の技術範囲は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0055】
例えば、前記実施形態では、軸受部46に対する第1規制部26の姿勢が替えられたときに、第2規制部27と揺動軸O回りに対向する規制面26a、26bが替えられて、規制面26a、26bと第2規制部27との揺動軸O回りの距離が変更されるように構成したが、軸受部46に対する第1規制部26の配設位置を替えることで、第2規制部27と揺動軸O回りに対向する規制面26a、26bが替えられて、規制面26a、26bと第2規制部27との揺動軸O回りの距離が変更されるように構成してもよい。
具体的には、第1規制部26として、厚さの異なる2つの板体61、62が、下面は面一とされた状態で前後方向に連ねられた構成を採用し、軸受部46に対する第1規制部26の前後方向の位置を替えたときに、第2規制部27と揺動軸O回りに対向する規制面26a、26bが替えられて、規制面26a、26bと第2規制部27との揺動軸O回りの距離が変更されるように構成してもよい。
【0056】
また、前フレーム11が軸受部46を備え、後フレーム12が連結軸45を備えてもよい。
また、第1規制部26が、前フレーム11の例えば連結軸45などに配設され、第2規制部27が、後フレーム12の例えば軸受部46などに配設されてもよい。
また、第1規制部26は、3つ以上の板体を備えてもよい。
また、軸受部46に装着凹部58を形成しなくてもよい。
また、第2規制部27は、平坦壁などであってもよい。
また、ハブモータ31およびバッテリー装置33は配設しなくてもよい。
【0057】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 三輪自転車
11 前フレーム
12 後フレーム
21 前輪
22 後輪
26 第1規制部
26a、26b 規制面
27 第2規制部
45 連結軸
46 軸受部
58 装着凹部
61、62 板体
O 揺動軸
図1
図2
図3
図4
図5