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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/282 20060101AFI20220311BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20220311BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20220311BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220311BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220311BHJP
   C07H 19/10 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
A61K31/282
A61K31/7068
A61K47/54
A61P35/00
A61P43/00 121
C07H19/10
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2018517349
(86)(22)【出願日】2015-10-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-10-11
(86)【国際出願番号】 GB2015052902
(87)【国際公開番号】W WO2017060661
(87)【国際公開日】2017-04-13
【審査請求日】2018-07-09
【審判番号】
【審判請求日】2020-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】517395747
【氏名又は名称】ニューカナ パブリック リミテッド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】ヒュー グリフィス
【合議体】
【審判長】原田 隆興
【審判官】前田 佳与子
【審判官】穴吹 智子
(56)【参考文献】
【文献】Sarah Patricia Blagden et al., ’A first in human Phase I/II study of NUC-1031 in patients with advanced gynecological cancers.’, Journal of Clinical Oncology [online] , Published online May 20.2015, Vol.33 Issue15, Abstract 2547, p.1-4, [令和3年5月12日検索], <URL: https://ascopubs.org/doi/abs/10.1200/jco.2015.33.15_suppl.2547>
【文献】Journal of Medicinal Chemistry,2014,Vol.57,No.4,p.1531-1542
【文献】Journal of Clinical Oncology 24:4699-4707.2006 by American Society of Clinical Oncology
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H,A61K
REGISTRY/CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラチナ製剤抵抗性又は不応性の癌の治療用の医薬であって、(i)ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート又はその薬学上許容される塩又は溶媒和物、及び(ii)カルボプラチンを含んでなり、前記剤(i)及び(ii)は、同時に又は別々に投与されるものである医薬。
【請求項2】
ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートが、実質的にジアステレオ異性的に純粋な形のゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-(S)-ホスフェートである請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートが、ホスフェートジアステレオ異性体の混合物である請求項1に記載の医薬。
【請求項4】
ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートが、遊離塩基の形である請求項1~3のいずれかに記載の医薬。
【請求項5】
ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートが、静脈内投与される請求項1~4のいずれかに記載の医薬。
【請求項6】
癌が、肺癌、膀胱癌、乳癌及び卵巣癌から選ばれるものである請求項1~5のいずれかに記載の医薬。
【請求項7】
癌が卵巣癌である請求項6に記載の医薬。
【請求項8】
癌が再発性である請求項1~7のいずれかに記載の医薬。
【請求項9】
癌がプラチナ系抗癌剤に対して不応性、抵抗性又は部分的抵抗性である請求項1~8のいずれかに記載の医薬。
【請求項10】
(i)ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート又はその薬学上許容される塩又は溶媒和物、及び(ii)カルボプラチンを含んでなり、前記剤(i)及び(ii)は、同時に又は別々に投与されるものであるプラチナ製剤抵抗性又は不応性の癌の併用治療用の医薬の製造における、ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート又はその薬学上許容される塩又は溶媒和物の使用。
【請求項11】
ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートが、実質的にジアステレオ異性的に純粋な形のゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-(S)-ホスフェートである請求項10に記載の使用。
【請求項12】
ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートが、ホスフェートジアステレオ異性体の混合物である請求項10に記載の使用。
【請求項13】
ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートが、遊離塩基の形である請求項10~12のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートが、静脈内投与される請求項10~13のいずれかに記載の使用。
【請求項15】
癌が、肺癌、膀胱癌、乳癌及び卵巣癌から選ばれるものである請求項10~14のいずれかに記載の使用。
【請求項16】
癌が卵巣癌である請求項15に記載の使用。
【請求項17】
癌が再発性である請求項10~16のいずれかに記載の使用。
【請求項18】
癌がプラチナ系抗癌剤に対して不応性、抵抗性又は部分的抵抗性である請求項10~17のいずれかに記載の使用。
【請求項19】
ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート又はその薬学上許容される塩又は溶媒和物の用量が、250~1250mg/m であり、カルボプラチンの用量が、AUC2~5.5mg/ml/分を提供するように選ばれるものである請求項1~8のいずれかに記載の医薬又は請求項10~19のいずれかに記載の使用。
【請求項20】
プラチナ製剤抵抗性又は不応性の癌が、カルボプラチンに対して抵抗性又は不応性である請求項1~9のいずれか又は19に記載の医薬又は請求項10~19のいずれかに記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート(化学名:2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロ-D-シチジン-5’-O-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート)(NUC-1031)と、カルボプラチン、ジシクロプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、及びネダプラチンから選ばれるプラチナ系抗癌剤との組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
NUC-1031
ゲムシタビン((1);ジェムザール(登録商標)として販売されている)は、現在、乳癌、非小細胞肺癌、卵巣癌及び膵臓癌の治療用に認可され、膀胱癌、胆管癌、大腸癌及びリンパ腫を含む各種の他の癌を治療するために広く使用されている効果的なヌクレオシド類似体である。
【0003】
ゲムシタビン(1)
【化1】
【0004】
ゲムシタビンの臨床有用性は、多数の本来の及び獲得した抵抗性機構によって制限される。細胞レベルでは、抵抗性は、3つのパラメーター:(i)リン酸化部分への活性化に必要なデオキシシチジンキナーゼのダウンレギュレーション;(ii)ヌクレオシドトランスポーター、特に、癌細胞による取り込みに要求されるhENT1の低下した発現;及び(iii)触媒酵素、特に、ゲムシタビンを分解するシチジンデアミナーゼのアップレギュレーションに依存する。
【0005】
国際公開第2005/012327号には、一連のゲムシタビンのプロドラッグ及び関連するヌクレオシド薬物分子が記載されている。それらの中でも、特に効果的な化合物として、ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホフェート(NUC-1031;2)が認定されている。これらのプロドラッグは、ゲムシタビンの有用性を制限する多くの本来の及び獲得された抵抗性機構を回避することを示している(「RroTide技術のゲムシタビンへの適用:極めて重要な癌抵抗性機構を克服するための奏功のアプローチは、臨床開発において、新たな薬剤(NUC-1031)をもたらす」;Slusarczykら;J. Med. Chem.;2014,57,1531-1542)。
【0006】
NUC-1031(2)は、代表的には、ホスフェート中心においてエピマーである2つのジアステレオ異性体(S-エピマー(3)及びR-エピマー(4))の混合物として調製され、該混合物は分離され、単一のエピマーとして投与される。
【0007】
NUC-1031(2)
【化2】
【0008】
S-エピマー(3)
【化3】
【0009】
R-エピマー(4)
【化4】
【0010】
ProGem1は、進行した固形悪性腫瘍の被験者において、2つの並行投与量スケジュールで投与されたNUC-1031の安全性、忍容性、臨床有効性、薬物動態(PK)及び薬力学(PD)を調査するための、ヒトへの最初の投与(FTIH)、フェーズ1、オープンラベル、2ステージ治験である(EudraCT番号:2011-005232-26)。被験者は、治験登録時、次の腫瘍を有していた:大腸癌(対象3人)、原発不明癌(3人)、卵巣癌(4人)、乳癌(2人)、膵臓癌(3人)、胆管癌(2人)、子宮又は子宮内膜癌(3人)、頸癌(1人)、肺癌(2人)、中皮腫(3人)及び甲状腺癌(1人)。治験では、進行した進行癌の患者(全ての標準的な治療オプションを尽くしており、その多くは、従来のヌクレオシド類似体(ゲムシタビンを含む)治療に対して抵抗性又は不応性であった)においてNUC-1031の抗腫瘍活性が確認された。特に注目すべきことには、薬物動態データが、単剤としてのNUC-1031は、当モル用量での単剤ゲムシタビンよりも約10倍大きい活性トリホスフェート部分(dFdCTP)のCmax細胞内レベルを生ずることを示した。さらに、分析では、NUC-1031は、ゲムシタビンと通常関連する有毒性代謝物のレベルの半分未満を解放することが示された。
【0011】
卵巣癌
卵巣癌は、世界で、毎年約204,000件の割合で新たに診断される、女性についての6番目に最も一般的に診断される癌である。死亡率は、主に、多くの女性が末期疾患を示すとの理由から、さらに、病気の再発及びプラチナ製剤抵抗性発現が高い率であるとの理由から、5年生存率45%と高い。進行した段階の卵巣がんの初期治療は、最適な外科的減量及び全身療法と、プラチナ製剤+タキサン化学療法レジメンとの組み合わせである。完璧であったとしても、治療後の奏功率は70%であることが観察され、その結果、多くは、2年以内に病気が再発するであろう。
【0012】
再発疾患についての治療は、初期治療と再発との間の時間によって支配される。これは、前回プラチナ製剤による治療終了後から再びプラチナ製剤投与までの期間(PFI)として定義される:(1)プラチナ製剤治療を受けている間又は最終のプラチナ製剤治療から4週間内に疾患の進行があったものを、プラチナ製剤不応性疾患として定義する;(2)>1か月、6か月未満のPFIを有するものは、プラチナ製剤抵抗性疾患を有する;(3)PFI6~12か月を有するものは、部分的プラチナ製剤抵抗性を有する;及び(4)>12カ月のPFIを有するものは、プラチナ製剤感受性再発を有する。NICEガイドラインによれば、プラチナ製剤抵抗性又は不応性疾患を有するものは、ついで、トポテカン、リポソーム製剤のドキソルビシン、週1回のパクリタキセルによる治療を受けるか、又は臨床治験に入るべきである。部分的にプラチナ製剤抵抗性再発を有するものは、カルボプラチン及びゲムシタビン併用、カルボプラチン及びリポソーム製剤のドキソルビシンの併用のようなプラチナ製剤レジメンによる治療を受けるか、又は臨床治験に入るべきである。プラチナ製剤抵抗性疾患を有するものは、単剤治療として又はパクリタキセルと組み合わせてカルボプラチンによる治療を受けるべきである。残念ながら、プラチナ製剤抵抗性再発を有するものは、プラチナ製剤感受性疾患を有するもの(>104週間)と比べて、著しく短い全生存期間中央値(35~61週間)を有し、これは、プラチナ製剤に対する奏功が生存の極めて重要な決定因子であることを示唆している。
【0013】
卵巣癌における化学療法抵抗性
プラチナ製剤化学療法の治療単位を繰り返し行うことによるほとんど避けられない結果は、プラチナ製剤抵抗性の発現である。これは、DNA損傷修復及び抗アポトーシスタンパク質のアップレギュレーション、低減された銅トランスポーター及び増大された癌細胞からの薬物流出のような多数の機構を介して生ずる。プラチナ製剤化学療法(例えば、カルボプラチン)を、他の化学療法剤、例えば、ゲムシタビン又はリポソーム製剤のドキソルビシンと組み合わせる根拠は、抵抗性を克服し、プラチナ製剤に対する感受性を改善することである。確かに、部分的プラチナ製剤抵抗性再発におけるカルボプラチン単独に対する奏功は、カルボプラチンがゲムシタビン又はリポソーム製剤のドキソルビシンと組み合わされる場合と比べると劣る。併用療法に対する奏功は、プラチナ製剤単独療法よりも優れているが、これらの患者についての予後は非常に乏しく、この集団については、新規な治療戦術が求められている。
【0014】
卵巣癌におけるゲムシタビン
プラチナ製剤(例えば、カルボプラチン)と組み合わせたゲムシタビンは、既にプラチナ製剤による治療を行った後でも、増大されたDNA修復に伴う、抵抗性を改善するゲムシタビンの能力のため、再発卵巣癌には有効である。AGO-OVAR治験では、プラチナ製剤感受性再発性卵巣癌患者356人を、カルボプラチンAUC5単独、及びカルボプラチンAUC4(day1)+3週毎、day1及び8におけるゲムシタビン1000mg/mの投与グループに割り当てた。17カ月の中央値追跡調査後、ゲムシタビン+カルボプラチンについて中央値PFS8.6カ月(95%Cl、7.9~9.7カ月)及びカルボプラチン単独について中央値PFS5.8カ月(95%Cl、5.2~7.1カ月)が観察された(HR0.72(95%Cl、0.58~0.90;P=0.0031))。ゲムシタビン+カルボプラチンについて奏効率47.2%(95%Cl、39.9~54.5%)及びカルボプラチン単独について奏効率30.9%(95%Cl、24.1~37.7%)が記録された(P=0.0016))。改善された奏効率及び生存率に鑑み、再発性プラチナ製剤感受性設定では、ゲムシタビンは、通常、カルボプラチンと一緒に投与される。
【0015】
カルボプラチンAUC4(day1)及び3週毎のゲムシタビン1000mg/m(day1及び8)の組み合わせは、プラチナ製剤感受性卵巣癌の患者における、ランダム化治験であるOCEANS治験のコントロールアームにおいて試行されている。患者242人がこの組み合わせを受け、奏効率57.4%、48.3%の部分奏功及び奏功期間7.4カ月を示した。プラチナ製剤抵抗性再発の女性では、カルボプラチンと一緒に投与されたゲムシタビンは、1治験において、全体的奏功率47%を有することを示した。しかし、これら患者における起こり得るカルボプラチンに対する抵抗性及び比較的乏しいゲムシタビンの細胞内取込に鑑み、一般的には、カルボプラチン及びゲムシタビン以上に、他の非プラチナ製剤レジメンが支持されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、癌治療のために併用療法を提供することにある。本発明の目的は、既存の治療法よりも効果的である治療法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の確実な実施例は、上記目的のいくつか又はすべてを満足する。
【0018】
本発明によれば、カルボプラチン、ジシクロプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、及びネダプラチンから選ばれるプラチナ系抗癌剤と組み合わせて癌治療に使用される、ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート、又は薬学上許容されるその塩又は溶媒和物が提供される。
【0019】
本発明は、また、カルボプラチン、ジシクロプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、及びネダプラチンから選ばれるプラチナ系抗癌剤と組み合わされたゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート、又は薬学上許容されるその塩又は溶媒和物を提供する。この組み合わせは、代表的には、癌治療での使用のためにものである。
【0020】
本発明は、また、ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート、又は薬学上許容されるその塩又は溶媒和物と組み合わせて癌治療において使用するための、カルボプラチン、ジシクロプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、及びネダプラチンから選ばれるプラチナ系抗癌剤を提供する。
【0021】
本発明は、また、癌を治療する方法を提供するものであり、該方法は、必要とする患者に、カルボプラチン、ジシクロプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、及びネダプラチンから選ばれるプラチナ系抗癌剤と組み合わせて、治療上有効な量のゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート、又は薬学上許容されるその塩又は溶媒和物を投与することを含んでなる。
【0022】
本発明は、また、癌治療用医薬の製造における使用のための、カルボプラチン、ジシクロプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、及びネダプラチンから選ばれるプラチナ系抗癌剤と組み合わされたゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート、又は薬学上許容されるその塩又は溶媒和物を提供する。
【0023】
本発明は、また、カルボプラチン、ジシクロプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、及びネダプラチンから選ばれるプラチナ系抗癌剤と組み合わせた癌治療用医薬の製造における使用のための、ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート、又は薬学上許容されるその塩又は溶媒和物を提供する。
【0024】
本発明は、また、ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート、又は薬学上許容されるその塩又は溶媒和物と組み合わせた癌治療用医薬の製造における使用のための、カルボプラチン、ジシクロプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、及びネダプラチンから選ばれるプラチナ系抗癌剤を提供する。
【0025】
本発明は、また、カルボプラチン、ジシクロプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、及びネダプラチンから選ばれるプラチナ系抗癌剤、及び少なくとも1つの薬学上許容される添加剤と一緒に、ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート、又は薬学上許容されるその塩又は溶媒和物を含んでなる製剤処方を提供する。
【0026】
前記処方は、単位用量のゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート及び単位用量のプラチナ系抗癌剤を含有することができる。単位用量は同一であってもよいが、代表的には相違する。
【0027】
本発明は、また、一緒に使用される2つの別個の処方を提供するものであり、処方は、
ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート、又は薬学上許容されるその塩又は溶媒和物、及び少なくとも1つの薬学上許容される添加剤を含んでなる第1の処方;及び
カルボプラチン、ジシクロプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、及びネダプラチンから選ばれるプラチナ系抗癌剤、及び少なくとも1つの薬学上許容される添加剤を含んでなる第2の処方
である。処方はキットの形でもよい。処方(すなわち、前記処方を含んでなるキット)は、代表的には、癌の治療用である。
【0028】
本発明の治療は、2つの剤(すなわち、ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート及びプラチナ系抗癌剤)の組み合わせが、各々を単独で投与する場合よりも、組み合わせて投与する場合には、より大きい効力を示すとの事実に基づくものである。本明細書における用語「組み合わせて」又は「一緒に」は、2つの剤の両方が、治療期間中に、同一の患者に投与されることを意味する。投与は、別個の投薬で提供されるとの意味で別個であってもよく、又は同一の投薬であってもよい。投与は、同時に行われてもよく、又は一方の投与の直後に又は2つの剤の投与の間に間隔をおいて行われてもよい。この明細書における用語「単独で」は、このように、間隔後であっても、治療期間中に、1つの活性剤のみが投与され、他の剤が投与されないことを意味する。
【0029】
本発明による併用療法は、全体の治療期間中に、活性剤の一方の単独での投与と比べて、全体の治療効果を増大させるように、2つの剤の同時投与又は連続投与を含む。この目的に使用される製剤処方は、個々の、すなわち、別個の処方であってもよく、又は単一の処方であってもよい。処方又は個々の処方は、液状(希釈されたもの又は希釈されるようになっているもの)であってもよく、又は固体であってもよい。固体型は、好適な溶媒に溶解され得るものとして提供される。固体型は、また、錠剤、カプセル剤、等として濃縮単位用量型であってもよい。
【0030】
特に、発明者らは、投与直後の活性代謝物NUC-1031dFdCTP(ゲムシタビントリホスフェート)のプラズマ濃度が、NUC-1031を、典型的なプラチナ系抗癌剤であるカルボプラチンの不存在下で投与した場合と比較して、NUC-1031をカルボプラチンと一緒にヒト患者に投与した場合にかなり高いとの知見を得た。このように、2つの剤の併用は、予期しない相乗効果を提供する。
【0031】
NUC-1031とカルボプラチンとの併用によって達成される正の臨床成績及び改善された薬物動態結果は、2つの理由から予期し得ないものである:(i)NUC-1031単剤は、非常に高い活性代謝物dFdCTPレベルを達成すること(これは、酵素的飽和に達したものと思われる)、及び(ii)ゲムシタビン及びプラチナ製剤について観察される相乗効果を実証する分子機構が、NUC-1031に適用されるとは思われないこと。
【0032】
酵素ヌクレオシド-ジホスフェートキナーゼ(NDPK)は、dFdCDPをdFdCTPに変化させる。臨床では、単剤としてのNUC-1031は、ゲムシタビン単剤よりも10倍高いCmax細胞内dFdCTPレベル及び等モル用量のカルボプラチンと組み合わせたゲムシタビンよりも4倍高いCmax細胞内dFdCTPレベルを発生するため、酵素NDPKを飽和させると考えらえる。NUC-1031は、ゲムシタビンと関連する全ての重要な抵抗性機構を克服し、高いdFdCDPレベルを発生し、これにより、酵素NDPKを飽和さる。一方、ゲムシタビンは、dCKによる乏しい活性化(癌において30%低いdCK)とともに、hENT1による限られた摂取(50%hENT1-欠乏癌)及びCDAによる広範なデグラデーション(癌において60%高いCDA発現及び活性)のため、NDPK用基質として乏しい源である。従って、これらの3つの機構が腫瘍細胞中に存在するとすれば、投与されたゲムシタビン100分子毎について、わずか9分子がNDPK基質dFdCDPに転化されてdFdCTPを発生する。これに対して、NUC-1031代謝はこれらの酵素とは無関係であるため、100分子のNUC-1031の内の100分子全てがNDPK用基質となり、酵素を飽和することが予期される。
【0033】
(ii)ゲムシタビン及びプラチナ製剤について観察される相乗効果は、活性な代謝物dFdCTPのレベルにおける1.5倍の増大によるものであり(van Moorselら,British Journal of Cancer,1999,80(7),981-990)、これは、改善されたデオキシシチジンキナーゼ(dCK)活性の結果として記載されている。ゲムシタビンと組み合わされた場合、dCKを介するdFdCTPレベルを増加させるために、2つのプラチナ製剤機構が提案されている。第1の細胞機構は、dCKを阻害することについて知られた、デオキシシチジントリホスフェート(dCTP)合成を担当する酵素であるリボヌクレオシドリダクターゼの阻害を包含する(Bajettara,Annals of Oncology,2003,14,242-247)。第2の分子機構では、プラチナ惹起DNA-ダメージが、ヌクレオチド除去修復プロセスを活性化し、これはデオキシリボヌクレオチド(dNTPs)を必要とする。次に、dNTPs合成に関与するいくつかの酵素(dCKを含む)が増大される(vanMoorselら,1999)。NUC-1031は、モノホスフェートの形で、ヌクレオチド類似体として合成され、dCK依存性dFdCTP形成をバイパスし、従って、NUC-1031及びカルボプラチンを併用する際に観察される相乗効果は、異なった及び未だ知られていない経路に由来すると思われる。
【0034】
いくつかの好ましい具体例では、プラチナ系抗癌剤はカルボプラチンである。
【0035】
ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートは、ホスフェートジアステレオ異性体の混合物であるか、又は実質的にジアステレオ異性的に純粋である形の(S)-エピマー又は(R)-エピマーでもよい。「実質的にジアステレオ異性的に純粋」は、本発明の目的について、約90%以上のジアステレオ異性純度として定義される。実質的にジアステレオ異性的に純粋な形で存在する場合、ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートは、95%、98%、99%又は99.5%以上のジアステレオ異性純度を有する。
【0036】
癌は、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、大腸癌、肺癌、胆道癌、前立腺癌、胆管癌、腎癌、リンパ腫、白血病、子宮頸癌、胸腺癌、原発不明癌、食道癌、中皮腫、副腎癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、精巣癌、頭頚部癌、中枢神経系の癌、及び胚細胞性腫瘍から選ばれる癌である。
【0037】
癌は、肺癌、胆道癌、乳癌及び婦人科系の癌から選ばれてもよい。癌は、婦人科系の癌(例えば、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、卵巣癌及び子宮頸癌)であってもよい。プラチナ系抗癌剤がカルボプラチンである併用は、特に、これらの特別な癌の治療について好適である。いくつかの好ましい具体例では、癌が卵巣癌である。いくつかの好ましい具体例では、癌が卵巣癌であり、及びプラチナ系抗癌剤がカルボプラチンである。
【0038】
癌(例えば、卵巣癌)は再発性でもよい。癌(例えば、卵巣癌)は、難治性、プラチナ系抗癌剤(例えば、カルボプラチン)に対して抵抗性又は部分的抵抗性であってもよい。癌(例えば、卵巣癌)は、プラチナ系抗癌剤(例えば、カルボプラチン)に対して感受性であってもよい。
【0039】
溶媒和物は、代表的には、水和物である。このように、ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートは、塩又は水和物、又は溶媒和物の形である(例えば、塩の水和物)。ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートは塩の形でなくてもよく、及び溶媒和物又は水和物の形でなくてもよい。好ましくは、ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートは遊離塩基の形である。
【0040】
ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート及びプラチナ系抗癌剤は同時に投与されるか、又は連続して投与される。同時に投与される場合には、単剤処方で投与されるか、又は別々の処方で投与される。連続して投与される場合、同日に投与されるか、又は治療期間中の別個の日に投与される。治療期間中の特定の日に、ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート及びプラチナ系抗癌剤を同時に投与するか、又は治療期間中の同じ日に又は特定の他の日に、剤のただ1つを投与する。
【0041】
NUC-1031処方
ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートは、非経口的に、例えば、静脈内、皮下、又は筋肉内投与される。好ましくは、ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートは静脈内投与される。
【0042】
ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートは、一般的に、水性処方(任意に、極性の有機溶媒、例えば、DMAも含んでなる)として投与される。非経口(例えば、静脈内)投与の場合、処方は、好ましくは、極性の有機溶媒、例えば、DMAも含んでなる。
【0043】
処方は、投与直前、すなわち、投与前48時間以内(例えば、24時間、12時間又は2時間内)に、所定の量により希釈されるものでもよい。
【0044】
処方は、1以上の薬学上許容される可溶化剤、例えば、薬学上許容される非イオン性可溶化剤を含むこともできる。可溶化剤は、界面活性剤又は乳化剤とも呼ばれる。実例となる可溶化剤は、ポリエトキシル化脂肪酸及び脂肪酸エステル及びその混合物を含む。好適な可溶化剤は、ポリエトキシル化ヒマシ油(例えば、商品名Kolliphor(登録商標)ELPで販売されているもの)であるか又は含んでなるか;又はポリエトキシル化ヒドロキシ-ステアリン酸(例えば、商品名Solutol(登録商標)又はKolliphor(登録商標)HS15で販売されているもの)であるか又は含んでなるか;又はポリエトキシル化(例えば、ポリオキシエチレン(20))ソルビタンモノオレエート(例えば、商品名Tween(登録商標)80で販売されているもの)であるか又は含んでなるものである。
【0045】
いくつかの好ましい具体例では、処方は、1以上の薬学上許容される可溶化剤を含んでなる。
【0046】
処方は、水性ビヒクルを含むこともできる。処方は、すぐに投与されるものであり、この場合、代表的には、水性ビヒクルを含んでなる。
【0047】
処方は、非経口用であり、例えば、静脈内、皮下又は筋肉内投与用である。好ましくは、処方は静脈内投与用である。投与は、中心静脈を経由するか、又は末梢静脈を経由する。
【0048】
投与に好適な処方におけるゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートの総用量は、代表的には、250mg~3g、例えば、1g~2g、例えば、約1.5gである。
【0049】
極性の非プロトン性溶媒(例えば、DMA)は、処方の30容量%以上を占めることができる。このように、極性の非プロトン性溶媒(例えば、DMA)は、処方の50容量%以上、例えば、60%以上を占めることができる。極性の非プロトン性溶媒(例えば、DMA)は、処方の95容量%以下、例えば、90%以下を占めることができる。水性ビヒクルは、処方の50容量%以下、例えば、処方の30容量%以下を占めることができる。
代表的には、水性ビヒクル(例えば、食塩水)は、処方の5容量%以上、例えば、10容量%以上を占めることができる。
【0050】
処方溶媒中のゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートの濃度は500mg/ml以下である。濃度は、100mg/ml以上であってもよい。好ましくは、濃度は、1ml当たり、200~300mg、225~275mg、例えば、約250mgである。
【0051】
いくつかの好ましい処方は、
DMA30~95容量%;
水性ビヒクル5~50容量%;及び
ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート100~400mg(例えば、100~300mg)/ml
を含んでなる。
【0052】
より好ましい処方は、
DMA70~90容量%;
水性ビヒクル(例えば、食塩水)10~30容量%;及び
ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート200~300mg/ml
を含んでなる。
【0053】
先の4つのパラグラフに記載の処方(主要構成成分として極性の非プロトン性溶媒(例えば、DMA)が存在する)は、例えば、ホスフェートジアステレオ異性体混合物の形のゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートを投与するために使用される。これらは、実質的にジアステレオ異性的に純粋な(S)-ホスフェートエピマーの形のゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートを投与するためにも使用される。これらのパラグラフに記載の処方は、投与前に希釈することなく処方を投与する(例えば、点滴又は注射による)ことによって使用される。これらは、中心静脈を経由して投与される。
【0054】
或いは、これらの処方は希釈され、末梢静脈を経由して投与されてもよい。
【0055】
極性の非プロトン性溶媒(例えば、DMA)は、処方の10容量%以上、例えば、20容量%以上を占めることができる。このように、極性の非プロトン性溶媒(例えば、DMA)は、処方の80容量%以下、例えば、60%容量以下を占めることができる。極性の非プロトン性溶媒(例えば、DMA)は、処方の40容量%以下を占めることができる。処方は、1以上の可溶化剤(例えば、1以上のポリエトキシル化脂肪酸)も含んでなることができる。1以上の可溶化剤は、処方の90容量%以下、例えば、処方の80容量%以下を占めることができる。代表的には、可溶化剤は、処方の30容量%以上、例えば、50容量%以上、又は60容量%以上を占めることができる。1つの好ましい処方は、30%:70%のDMA:可溶化剤混合物中の溶液として、薬剤を含んでなる。
【0056】
処方溶媒中のゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートの濃度は200mg/ml以下、例えば、150mg以下、又は120mg以下である。濃度は、40mg/ml以上、例えば、60mg/mlであってもよい。好ましくは、濃度は、1ml当たり、70~110mg、例えば、約75mg、又は約100mgである。
【0057】
いくつかの好ましい処方は、
DMA20~80容量%;
可溶化剤30~80容量%;及び
ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート50~150mg/ml
を含んでなる。
【0058】
処方は、水性ビヒクルを、例えば、1~15容量%の量で含んでなることもできる。
【0059】
いくつかの特に好ましい処方は、
DMA20~80容量%;
第1の可溶化剤20~60容量%;
第2の可溶化剤5~40容量%;
水性ビヒクル2~12容量%;及び
ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート50~150mg/ml
を含んでなる。第1の可溶化剤は、ポリエトキシル化ヒマシ油(例えば、商品名Kolliphor(登録商標)ELPで販売されているもの)である。第2の可溶化剤は、ポリエトキシル化ソルビタンモノオレエート(例えば、商品名Tween(登録商標)80で販売されているもの)である。処方は、水性ビヒクルを、例えば、3~15容量%の量で含んでなることもできる。
【0060】
処方は、
DMA50~60容量%;
第1の可溶化剤20~30容量%;
第2の可溶化剤8~15容量%;
水性ビヒクル4~10容量%;及び
ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート75~125mg/ml
を含んでなる。
【0061】
先の5つのパラグラフに記載の処方(主要構成成分として極性の非プロトン性溶媒(例えば、DMA)が存在する)は、例えば、実質的にジアステレオ異性的に純粋な(S)-ホスフェートエピマーの形のゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートを投与するために使用される。これらは、R及びSエピマーの混合物、又はRエピマーを投与するためにも使用される。これらのパラグラフに記載の処方は、典型的には、投与前に、水性ビヒクルによって希釈される。希釈された後、これらは、中心静脈を経由して投与される。
【0062】
これらの処方は、何ら可溶化剤を含有しない処方を希釈することによって形成される。ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートは、特定の可溶化剤の存在下では分解する。
【0063】
極性の非プロトン性溶媒(例えば、DMA)は、処方の0.1容量%以上、例えば、0.5容量%以上、又は1容量%以上を占めることができる。このように、DMAは、処方の10容量%以下、例えば、5%容量以下、又は3容量%以下を占めることができる。極性の非プロトン性溶媒(例えば、DMA)は、処方の8容量%以下、又は2容量%以下を占めることができる。処方は、水性ビヒクル(例えば、WFI)を含んでなることもできる。水性ビヒクルは、処方の99.5容量%以下、例えば、99容量%又は98容量%以下で存在できる。典型的には、水性ビヒクルは、処方の85容量%以上、例えば、90%容量以上、又は95容量%以上を占める。処方は、1以上の可溶化剤(例えば、1以上のポリエトキシル化脂肪酸)も含んでなることができる。1以上の可溶化剤は、処方の10容量%以下、例えば、処方の7.5容量%以下、5容量%以下、又は3容量%以下を占めることができる。典型的には、1以上の可溶化剤は、処方の0.1容量%以上、例えば、0.5容量%以上、1容量%以上、又は2容量%以上を占めることができる。
【0064】
処方溶媒中のゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートの濃度は、12.0mg/ml以下又は10.0mg/ml以下、例えば、7.0mg/ml以下、又は4.5mg/ml以下である。濃度は、1.0mg/ml以上、例えば、2.0mg/mlであってもよい。好ましくは、濃度は、1ml当たり、2.5~11mg、例えば、約3~7mg、又は約4.5mgである。
【0065】
いくつかの好ましい処方は、
DMA0.1~15容量%(例えば、0.5~5容量%);
可溶化剤0.1~15容量%(例えば、0.1~7.5容量%);
水性ビヒクル85~99容量%;及び
ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート2.0~12.0mg/ml(例えば、2.0~10.0mg/ml)
を含んでなる。
【0066】
いくつかの特に好ましい処方は、
DMA0.5~10容量%;
第1の可溶化剤0.2~4容量%;
第2の可溶化剤0.1~2容量%;
水性ビヒクル85~99容量%;及び
ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート2.0~12.0mg(例えば、2.0~10.0mg)
を含んでなる。第1の可溶化剤は、ポリエトキシル化ヒマシ油(例えば、商品名Kolliphor(登録商標)ELPで販売されているもの)である。第2の可溶化剤は、ポリエトキシル化ソルビタンモノオレエート(例えば、商品名Tween(登録商標)80で販売されているもの)である。
【0067】
処方は、
DMA0.5~6容量%;
第1の可溶化剤0.5~6容量%;
第2の可溶化剤0.2~4容量%;
水性ビヒクル85~99容量%;及び
ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート2.0~12.0mg/ml(例えば、2.0~10.0mg/ml)
を含んでなる。
【0068】
先の4つのパラグラフに記載の処方(主要構成成分として極性の非プロトン性溶媒(例えば、DMA)が存在する)は、例えば、実質的にジアステレオ異性的に純粋な(S)-ホスフェートエピマーの形のゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートを投与するために使用される。これらは、R及びSエピマーの混合物、又はRエピマーを投与するためにも使用される。これらのパラグラフに記載の処方は、典型的には、投与前48時間以内に、濃縮された極性非プロトン性溶媒(例えば、DMA)処方又は濃縮された極性非プロトン性溶媒(例えば、DMA)及び可溶化剤処方を、水性ビヒクルにて希釈することによって調製される。得られた処方は、中心静脈を経由して投与される。
【0069】
ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートは、好ましくは、非経口投与用に処方されるが、本発明のいくつかの具体例では、経口投与される。
【0070】
上記処方は、いずれも、プラチナ系抗癌剤を含んでなることもできる。
【0071】
キット
本発明は癌を治療するためのキットを提供するものであり、該キットは、
ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート、又はその薬学上許容される塩又は溶媒和物、及び少なくとも1つの薬学上許容される添加剤を含んでなる第1の処方;及び
プラチナ系抗癌剤及び少なくとも1つの薬学上許容される添加剤を含んでなる第2の処方
を含んでなる。
【0072】
いくつかの特別な具体例では、キットは、
DMA30~95容量%、
水性ビヒクル5~50容量%、及び
ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート100~400mg/ml(例えば、100~300mg/ml)
を含んでなる第1の処方;
プラチナ系抗癌剤及び少なくとも1つの薬学上許容される添加剤を含んでなる第2の処方;及び
DMA30~95容量%、
水性ビヒクル5~50容量%
を含んでなる第3の処方
を含んでなる。
【0073】
第3の処方は、典型的には、活性剤を含まない。このように、第3の処方は、典型的には、ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートだけでなく、プラチナ系抗癌剤も含まない。第3の処方は、2つの別個の容器又は単一の容器で提供される。
【0074】
先の2つのパラグラフにおいて述べたキットは、ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートが中心ラインを経由して静脈内投与される場合に有用である。中心ラインは、第1の処方の投与前に、第3の処方にてフラッシュされる。これは、活性剤処方と水性媒体(例えば、食塩水フラッシング溶液)とが直接接触することを避けることによって、静脈内投与装置(すなわち、中心ライン)内又は入口においてゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートが析出する危険を軽減する。中心ラインは、第1の処方の投与後に、第3の処方にてフラッシュされてもよい。
【0075】
いくつかの特別な具体例では、キットは、
DMA30~95容量%、
水性ビヒクル5~50容量%、及び
ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート100~400mg/ml(例えば、100~300mg/ml)
を含んでなる第1の処方;
プラチナ系抗癌剤及び少なくとも1つの薬学上許容される添加剤を含んでなる第2の処方;及び
DMA20~80容量%、
第1の可溶化剤20~60容量%、
第2の可溶化剤10~40容量%
を含んでなる第3の処方
を含んでなる。
【0076】
典型的には、第3の処方は、活性剤を何ら含まない。このように、第3の処方は、ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートだけでなく、プラチナ系抗癌剤も含まない。
【0077】
先の2つのパラグラフにおいて述べたキットは、ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートが末梢静脈を経由して静脈内投与される場合に有用である。第1の処方を、投与前48時間以内、例えば、24時間以内に第3の処方にて希釈して、第4の処方を形成する。第4の処方を、さらに、投与前に、水性ビヒクルにて所望を濃度に希釈して、患者への点滴又は注射によって投与される処方を形成する。ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートの析出に関して安定な末梢投与用の処方を形成するためは、代表的には、可溶化剤を含むことが望ましい。しかし、ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートは、このような可溶化剤の存在下では、分解を生じ易い。このように、2段階希釈法は、本発明の特定の具体例では、好ましい手段であり、これによって、末梢投与用のゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェートの処方が達成される。
【0078】
プラチナ系抗癌剤の処方
プラチナ系抗癌剤は、非経口的、例えば、静脈内、腹腔内、皮下、又は筋肉内投与される。好ましくは、プラチナ系抗癌剤は静脈内投与される。
【0079】
プラチナ系抗癌剤は、典型的には、水性溶液、例えば、殺菌した、発熱物質を含まない10mg/ml水性溶液として投与される。カルボプラチンの投与に関する更なる情報は、例えば、Paraplatin(登録商標)に関する米国FDA承認ラベルにおいて利用可能である。
【0080】
カルボプラチンは、典型的には、静脈への点滴によって投与されるが、腹腔内投与されてもよい。カルボプラチンを静脈内投与する場合には、15~60分間で行うか、又は、より長い期間で、例えば、24時間の連続IV点滴で行ってもよい。
【0081】
用量レジメン
NUC-1031は、21日サイクル内で2回投与される。プラチナ系抗癌剤は、21日サイクル内で1回投与される。好ましい用量レジメンでは、NUC-1031は、21日サイクルのday1及びday8に投与され、プラチナ系抗癌剤(例えば、カルボプラチン)は、21日サイクルのday1に投与される。NUC-1031及びプラチナ系抗癌剤(例えば、カルボプラチン)は、21日サイクルのday1に同時に投与されてもよい。
【0082】
各投与機会に投与されるNUC-1031の用量は、好ましくは、250~1250mg/mである。各投与機会に投与されるNUC-1031の用量は、300~1000mg/mである。各投与機会に投与されるNUC-1031の用量は、400~800mg/mである。各投与機会に投与されるNUC-1031の用量は、約500mg/m又は約750mg/mである。
【0083】
各投与機会に投与されるプラチナ系抗癌剤(カルボプラチン)の用量は、AUC2~5.5mg/ml/分を提供するように選ばれる。用量は、AUC2.5~4.5mg/ml/分を提供するように選ばれる。AUC約3又は約4mg/ml/分を提供すれば十分である。
【0084】
各治療サイクルにおいて、NUC-1031の用量、又はプラチナ系抗癌剤(例えば、カルボプラチン)の用量、又は両化合物の用量は、実質的に同一である。例えば、複数回の治療サイクルにおいて、投与機会当たり約750mg/mのNUC-1031用量、及びAUC約4mg/ml/分を提供するように選ばれたカルボプラチン用量を使用できる。同様に、複数回の治療サイクルにおいて、投与機会当たり約500mg/mのNUC-1031用量、及びAUC約4mg/ml/分を提供するように選ばれたカルボプラチン用量を使用できる。
【0085】
或いは、NUC-1031の用量、又はプラチナ系抗癌剤(例えば、カルボプラチン)の用量、又は両化合物の用量は、1回目の治療サイクルから、2回目(又はその後)の治療サイクルに向かって低減されてもよい。例えば、各投与機会に投与されるNUC-1031の用量は、1回目の治療サイクルにおける約750mg/mから、2回目(又はその後)の治療サイクルにおける約500mg/mに低減される。プラチナ系抗癌剤(例えば、カルボプラチン)の用量は、1回目の治療サイクルにおけるAUC約5mg/ml/分を提供するように選ばれた量から、2回目(又はその後)の治療サイクルにおけるAUC約4mg/ml/分、又はAUC約3mg/ml/分を提供するように選ばれた量に低減される。
【0086】
好適な治療レジメンは、1回目の治療サイクルから2回目(又はその後)の治療サイクルに向かって、NUC-1031の用量及びプラチナ系抗癌剤(例えば、カルボプラチン)の用量の両方を減量する(先のパラグラフにおいて提示しているように)ことである。例えば、各投与機会に投与されるNUC-1031の用量を、1回目の治療サイクルにおける約750mg/mから、2回目(又はその後)の治療サイクルにおける約500mg/mに低減し、及びプラチナ系抗癌剤(例えば、カルボプラチン)の用量を、1回目の治療サイクルにおけるAUC約5mg/ml/分を提供するように選ばれる量から、2回目(又はその後)の治療サイクルにおけるAUC約4mg/ml/分を提供するように選ばれる量、又はAUC約3mg/ml/分を提供するように選ばれる量に低減する。
【0087】
NUC-1031の用量が、1回目から2回目、又はその後の治療サイクルに向かって低減する(例えば、投与機会当たり約750mg/mから投与機会当たり約500mg/mに低減する)場合、プラチナ系抗癌剤(例えば、カルボプラチン)の用量は、1回目及び2回目又はその後の治療サイクルの間で同一のままであってもよい(例えば、各サイクルにおいて、AUC約4mg/ml/分を提供するように選ばれる量)。
【0088】
NUC-1031の用量が、1回目から2回目、又はその後の治療サイクルまで一定のままである(例えば、投与機会当たり約500mg/mである)場合、プラチナ系抗癌剤(例えば、カルボプラチン)の用量は、1回目及び2回目又はその後の治療サイクルの間で低減される(例えば、1回目の治療サイクルにおけるAUC約5mg/ml/分を提供するように選ばれる量から、2回目(又はその後)の治療サイクルにおけるAUC約4mg/ml/分を提供するように選ばれる量に低減する)。
【0089】
発明者らは、上述の用量レジメンが、組合せの各成分の毒性が許容レベルにあり、それにもかかわらず、なお当該組み合わせによる治療効果が観察されるとのバランスを提供するとの知見を得た。
【0090】
上述の用量レジメンは、患者の改善された生存率を提供するものであってもよい。患者50%以上において不変を提供するものであってもよい。また、患者50%以上において、50%以上のCA125の減少を提供するものであってもよい。許容できる副作用レベルで、上記効果の1以上を提供するものであってもよい。用量は、dFdCTPのAUCが、単剤として投与されるNUC-1031の場合よりも併用の場合により高くなるものであってもよい。用量は、AUC:dFdCTPのCmaxの比が、単剤として投与されるNUC-1031の場合よりも併用の場合に高くなるものであってもよい。
【0091】
以下に、添付図面を参照して、さらに、本発明の具体例を記載する。
【図面の簡単な説明】
【0092】
図1】Chiralpak ADカラム及びn-ヘプタン/PAグラディエント溶離剤系を使用するHPLCによる化合物3及び4の分離に関するクロマトグラフを示す。
図2】サイクル1、day1(n=11)におけるNUC-1031の静脈内投与後のPBMCsにおける細胞内dFdCTPのPK時間濃度曲線を示す。細胞内濃度を、組織タンパク質濃度に正規化している。dFdCTP=2’,2’-ジフルオロ-2’-デオキシシチジン。PBMCs=末梢血単核球。
図3】サイクル1、day1(n=10)におけるNUC-1031及びカルボプラチンの静脈内投与後のPBMCsにおける細胞内dFdCTPのPK時間濃度曲線を示す。細胞内濃度を、組織タンパク質濃度に正規化している。dFdCTP=2’,2’-ジフルオロ-2’-デオキシシチジン。PBMCs=末梢血単核球。
図4】サイクル1、day1(n=10)におけるNUC-1031単剤及び併用レジメンNUC-1031及びカルボプラチンの静脈内投与後のPBMCsにおける細胞内dFdCTPのPK時間濃度曲線を示す。細胞内濃度を、組織タンパク質濃度に正規化している。dFdCTP=2’,2’-ジフルオロ-2’-デオキシシチジン。PBMCs=末梢血単核球。
【発明を実施するための形態】
【0093】
「同時」は、実質的同時を意味し、例えば、30分未満で離れていてもよい。「その後」は、30分以上離れた投与を意味する。
【0094】
この明細書を通して、用語「S-エピマー」又は「S-ジアステレオ異性体」は、ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-(S)-ホスフェートをいう。同様に、この明細書を通して、用語「R-エピマー」又は「R-ジアステレオ異性体」は、ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-(R)-ホスフェートをいう。
【0095】
本発明の化合物は、薬学上許容される塩の形で得られ、保存され及び/又は投与される。好適な薬学上許容される塩としては、薬学上許容される無機酸の塩、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、スルファミン酸、及び臭化水素酸の塩、又は薬学上許容される有機酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、ムチン酸、グルコン酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、サリチル酸、スルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パントテン酸、タンニン酸、アスコルビン酸、及び吉草酸の塩が含まれる(ただし、これらに限定されない)。好適な塩基塩は、無毒性塩を形成する塩基から形成される。例としては、アルミニウム、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジオラミン、グリシン、リジン、マグネシウム、メグルミン、オラミン、カリウム、ナトリウム、トロメタミン、及び亜鉛の塩が含まれる。酸又は塩基のヘミ塩、例えば、ヘミ硫酸塩、ヘミシュウ酸、及びヘミカルシウム塩も形成される。いくつかの具体例では、特に、S-エピマーに適用されるものについては、化合物は、HCl塩又はヘミシュウ酸の形である。
【0096】
本発明の化合物は、単結晶型又は結晶型の混合物として存在し、又は非晶質型であってもよい。このように、医薬用途を目的とする本発明の化合物は、結晶型生成物又は非晶質型生成物として投与される。これらは、沈殿、結晶化、凍結乾燥、又はスプレー乾燥、又は蒸発乾燥のような方法によって、例えば、固体粒、粉体、又はフィルムとして得られる。この目的のために、マイクロ波又は高周波乾燥が使用される。
【0097】
本発明の上記化合物について、もちろん、投与される用量は、使用する化合物、投与形態、所望される治療及び現在の疾患によって変動する。例えば、本発明の化合物が、非経口投与されるとすると、本発明の化合物の用量は、0.1~5g/m、例えば、0.5~2g/mの範囲である。本発明の化合物の治療目的の用量サイズは、当然、よく知られた薬剤の原理に従って、病状及び重篤性、動物又はヒトの年齢及び性別、及び投与ルートに応じて変動する。
【0098】
本発明の用量レベル、投与頻度、及び治療期間は、処方及び臨床的適応、患者の年齢及び共存する病状に応じて異なることが予測される。
【0099】
カルボプラチンの所望のAUCを得るための適切な用量は、Calvert式を使用して計算される。
【0100】
本発明の化合物、又は薬学上許容されるその塩は、単独で使用されるが、一般に、本発明の化合物、又は薬学上許容されるその塩を、薬学上許容されるアジュバント、希釈剤又はキャリヤーと一緒に含んでなる医薬組成物の形で投与される。好適な医薬処方の選択及び調製に関する一般的な手続きは、例えば、「医薬品-製剤設計の科学」,M.E.Aulton,Churchill Livingstone,1988に記載されている。
【0101】
本発明の化合物の投与形態に応じて、本発明の化合物を投与するために使用される医薬組成物は、好ましくは、本発明の化合物0.05~99質量%、より好ましくは、本発明の化合物0.05~80質量%、さらに好ましくは、本発明の化合物0.10~70質量%、及びさらに一層好ましくは、本発明の化合物0.10~50質量%を含んでなる(全ての百分率が組成物の総質量基準である)。
【0102】
経口投与については、本発明の化合物を、アジュバント又はキャリヤー、例えば、乳糖、ショ糖、ソルビトール、マンニトール;デンプン、例えば、ジャガイモデンプン、コーンスターチ又はアミロペクチン;セルロース誘導体;結合剤、例えば、ゼラチン又はポリビニルピロリドン;及び/又は滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレングリコール、ワックス、パラフィン、等と混合され、及びついで打錠される。コーティング錠が望まれる場合には、上記の通りに調製したコアを、濃縮した砂糖溶液(例えば、アラビヤゴム、ゼラチン、タルカム及び二酸化チタンを含有できる)で被覆する。或いは、錠剤を、容易に揮発する有機溶媒に溶解した好適なポリマーで被覆することもできる。
【0103】
軟質ゼラチンカプセルの調製については、本発明の化合物を、例えば、植物油、又はポリエチレングリコールと混合する。一方、硬質ゼラチンカプセルは、錠剤用の上記添加剤のいずれかを使用して、化合物の粒状物を含有できる。また、本発明の化合物の液体又は半固体処方を、硬質ゼラチンカプセルに充填してもよい。
【0104】
経口投与用の液体調製物は、シロップ又は懸濁液、例えば、本発明の化合物を含有し、残余が砂糖及びエタノール、水、グリセリン及びプロピレングリコールの混合物である溶液の形である。任意に、このような液体調製物は、着色料、香料、甘味料(例えば、サッカリン)、保存料及び/又は増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース又は当業者に知られている他の添加剤を含有できる。
【0105】
非経口(例えば、静脈内)投与については、化合物を、殺菌した水性又は油性溶液として投与できる。本発明の化合物は非常に親油性である。それ故、水性処方は、典型的には、薬学上許容される極性の有機溶媒も含有するであろう。
【0106】
本発明の化合物の治療目的の用量サイズは、当然、よく知られた薬剤の原理に従って、病状及び重篤性、動物又はヒトの年齢及び性別、及び投与ルートに応じて変動する。
【0107】
本発明の化合物の用量レベル、投与頻度、及び治療期間は、当然、処方及び臨床的適応、患者の年齢及び併存する病状に応じて異なることが予測される。
【0108】
本発明は、1以上の原子が、同じ原子番号を有するが、原子質量又は質量数が、天然に通常見出される主な同位体の原子質量又は質量数とは異なる原子によって置換された、いずれも薬学上許容される同位体標識した形の化合物(2)、(3)又は(4)も含む。
【0109】
本発明の化合物に含まれる好適な同位体の例としては、水素の同位体、例えば、H及びH、炭素の同位体、例えば、11C、13C及び14C、塩素の同位体、例えば、36Cl、フッ素の同位体、例えば、18F、ヨウ素の同位体、例えば、123I及び125I、窒素の同位体、例えば、13N及び15N、酸素の同位体、例えば、15O、17O及び18O、リンの同位体、例えば、32P、及びイオウの同位体、例えば、35Sが含まれる。
【0110】
いくつかの同位体標識化合物、例えば、放射性同位体を含むものは、薬剤及び/又は基質の組織分布の研究において有用である。放射性同位体トリチウム、すなわち、H、及び炭素14、すなわち、14Cは、導入の容易性及び既存の検出手段に鑑み、この目的には特に有用である。
【0111】
重水素、すなわち、Hのようなより重質の同位体による置換は、より大きい代謝安定性から生ずるいくつかの治療上の利点、例えば、増大したインビボ半減期又は低減した必要用量を提供し、このため、状況次第では好まれる。
【0112】
11C、18F、15O及び13Nのようなポジトロン放出性同位体による置換は、基質受容体占有を調べるためのポジトロン断層(PET)法では有用である場合がある。
【0113】
同位体標識化合物は、一般に、当業者に知られた一般的な技術によって又はこれまで使用されてきた非標識試薬の代わりに、好適な同位体標識試薬を使用する公知の方法と類似の方法によって調製される。
【0114】
癌治療のための治療方法又は癌治療における使用のための化合物は、ゲムシタビン-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート及びプラチナ系抗癌剤に加えて、一般的な手術又は放射線治療又は化学療法を含む。このような化学療法は、1以上の他の活性剤の投与を含むことができる。
【0115】
このように、医薬処方、その各々、又はいずれか1つは、他の活性剤を含んでなることもできる。
【0116】
1以上の他の活性剤は、抗腫瘍剤の下記のカテゴリーの1以上である:
(i)抗増殖剤/抗新生物治療剤、例えば、アルキル化剤(例えば、シクロホスファアミド、ナイトロジェンマスタード、ベンダムスチン、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、テモゾロミド、及びニトロソ尿素);代謝拮抗剤(例えば、ゲムシタビン、及びフルオロピリミジン(例えば、5-フルオロウラシル及びテガフール)、ラルチトレキセド、メトトレキサート、ペメトレキセド、シトシンアラビノシド、及びヒドロキシ尿素のような葉酸代謝拮抗剤);抗生物質(例えば、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシン-C、ダクチノマイシン及びミトラマイシンのようなアントラサイクリン);抗有糸分裂剤(例えば、ビンカルカトイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン及びビノレルビン)及びタキソイド(例えば、タキソール及びタキソテレ)及びポロ様キナーゼ阻害剤);プロテアソーム阻害剤、例えば、カーフィルゾミブ及びボルテゾミブ);インターフェロン療法;及びトポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシド及びテニポシド)、アムサクリン、トポテカン、ミトキサントロン及びカンプトテシン);
【0117】
(ii)細胞分裂阻害剤、例えば、抗エストロゲン剤(例えば、タモキシフェン、フルベストラント、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン及びイドキシフェン)、抗アンドロゲン薬(例えば、ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド及び酢酸シプロテロン)、LHRH拮抗薬又はLHRH作動薬(例えば、ゴセレリン、リュープロレリン及びブセレリン)、プロゲストーゲン(例えば、酢酸メゲストロール)、アロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール、レトロゾール、ボロゾール及びエキセケスタン)及び5α-リダクターゼの阻害剤、例えば、フィナステリド;
【0118】
(iii)抗侵襲剤、例えば、ダサチニブ及びボスチニブ(SKI-606)、及びメタロプロテアーゼ阻害剤、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体機能阻害剤又はヘパラナーゼに対する抗体;
【0119】
(iv)成長因子機能の阻害剤、例えば、このような阻害剤は、成長因子抗体及び成長因子受容体抗体(例えば、抗-erbB2抗体トラスツズマブ(Herceptin(商標名))、抗-EGFR抗体パニツムマブ、抗-erbB1抗体セツキシマブ)、チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、上皮成長因子ファミリーの阻害剤(例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ及び6-アクリルアミド-N-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-7-(3-モルホリノプロポキシ)-キナゾリン-4-アミン(Cl1033)のようなEGFRファミリーチロシンキナーゼ阻害剤、ラパチニブのようなerbB2チロシンキナーゼ阻害剤);肝細胞増殖因子ファミリーの阻害剤;インスリン成長因子ファミリーの阻害剤;細胞アポプトーシスのタンパク質調節剤の修飾因子(例えば、Bcl-2阻害剤);血小板由来成長因子ファミリーの阻害剤、例えば、イマチニブ及び/又はニロチニブ(AMN107);セリン/スレオニンキナーゼの阻害剤(例えば、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、ソラフェニブ、チピファルニブ及びロナファルニブ)のようなRas/Rafシグナル経路阻害剤)、MEK及び/又はAKTキナーゼを介する細胞シグナル経路の阻害剤、c-キット阻害剤、ablキナーゼ阻害剤,PI3キナーゼ阻害剤、PIt3キナーゼ阻害剤、CSF-1Rキナーゼ阻害剤、IGF受容体キナーゼ阻害剤;オーロラキナーゼ阻害剤及びサイクリン依存性キナーゼ阻害剤、例えば、CDK2及び/又はCDK4阻害剤;
【0120】
(v)抗血管新生薬、例えば、血管内皮成長因子の影響を阻害するもの(例えば、抗-血管内皮細胞成長因子抗体ベバシズマブ(Avastin(商標名));サリドマイド;レナリドマイド;及び例えば、バンデタニブ、バタラニブ、スニチニブ、アキシチニブ及びパゾパニブのようなVEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤;
【0121】
(vi)例えば、異常p53、異常BRCA1又はBRCA2のような異常遺伝子を置き換えるアプローチを含む遺伝子療法アプローチ;
【0122】
(vii)例えば、アレムツズマブ、リツキシマブ、イブリツモマブ・チウキセタン(Zevalin(登録商標))及びオファツムマブのような抗体療法;インターフェロンαのようなインターフェロン;IL-2(アルデスロイキン)のようなインターロイキン;;インターロイキン阻害剤、例えば、IRAK4阻害剤;HPVワクチン(例えば、ガーダシル、サーバリックス、オンコファージ及びSipuleucel-T(Provenge)のような予防用及び治療用ワクチンを含む癌ワクチン;及びtoll様受容体修飾物質(例えば、TLR-7又はTLR-9作動薬)を含む免疫療法;及び
【0123】
(viii)細胞毒性薬、例えば、フルダラビン(フルダラ)、クラドリビン、ペントスタチン(Nipent(商標名));
【0124】
(ix)コルチコステロイド(グルココルチコイド及びミネラルコルチコイドを含む)ステロイド、例えば、アルクロメタゾン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アルドステロン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム、ベタメタゾン吉草酸エステル、ブデソニド、クロベタゾン、クロベタゾン酪酸エステル、クロベタゾンプロピオン酸エステル、クロプレドノール、コルチゾン、コルチゾン酢酸エステル、コルチバゾール、デオキシコルトン、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム、デキサメタゾンイソニコチン酸エステル、ジフルオロコルトロン、フルクロロロン、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオロコルチゾン、フルオロコルトロン、フルオロコルトロンカプロン酸エステル、フルオロコルトロンピバル酸エステル、フルオロメトロン、フルプレドニデン、プルプレドニデン酢酸エステル、フルランドレノロン、フルチカゾン、フルチカゾンプロピオン酸エステル、ハルシノニド、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン酢酸エステル、ヒドロコルチゾン酪酸エステル、ヒドロコルチゾンアセポン酸エステル、ヒドロコルチゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル、ヒドロコルチゾン吉草酸エステル、イコメタゾン、イコメタゾンブタン酸エステル酢酸エステル、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、モメタゾン、パラメタゾン、モメタゾンフランカルボン酸エステル1水和物、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾン、チキソコルトール、チキソコルトールピバル酸エステル、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンアルコール及びそれらの各薬学上許容される誘導体(ステロイドの組み合わせ、例えば、このパラグラフに記載した2以上のステロイドの組み合わせを使用できる);
【0125】
(x)標的治療、例えば、PI3Kd阻害剤(例えば、アイデラリシブ及びペリホシン、又はPD-1、PD-L1及びCAT Tを阻害する化合物)。
【0126】
1以上の他の活性剤は、抗生物質でもよい。
【0127】
この明細書及び特許請求の範囲を通して、用語「含んでなる」及び「含有する」及びその変形は、「含むが、限定されない」を意味するものであり、これらは、他の部分、添加剤、成分、整数又は工程を除外することを意図するものではない(及び除外しない)。この明細書及び特許請求の範囲を通して、単数は、他に要求されない限り、複数も含むものである。特に、不定冠詞を使用する場合、明細書は、他に要求されない限り、単一性とともに、複数性を含むものとして理解されなければならない。
【0128】
特殊な態様と合わせて記載する本発明の特徴、整数、特性、化合物、化学部分及び基、具体例又は実施例は、矛盾しない限り、ここに記載する他の態様、具体例又は実施例のいずれにも適用できるものであると理解されなければならない。この明細書(特許請求の範囲、要約及び図面を含む)に開示する特徴の全て、及び/又は同様に開示された方法及びプロセスの工程の全ては、このような特徴及び/又は工程の少なくともいくつかが、相互に排他的である組み合わせを除き、いかようにも組み合わされる。本発明は、上述の具体例の詳細に限定されない。本発明は、この明細書に開示された特徴のいずれかの新規な1つ又は新規な組み合わせに、又は同様に開示されたいずれかの方法又はプロセスの工程のいずれかの新規な1つ又は新規な組み合わせに及ぶものである。
【0129】
読者の注目は、この出願に関連するこの明細書と同時に又はこれよりも先に提出された、又はこの明細書と一緒に縦覧に供される全ての論文及び文献に向けられるが、このような全ての論文及び文献の内容は、参照することによって、ここに組み込まれる。
【0130】
[実施例1]-NUC-1031の単一のジアステレオ異性体
下記の条件下におけるHPLCによって、(R)及び(S)異性体を分離できる:
装置:DAD検出器を有するAgilent1200(商標名)シリーズ
流速:1.0ml/分
カラム:ChiralpakAD(商標名);250×4.6mmID(順相)
温度:室温
粒径:20μm
フィード:MeOHに溶解;10g/l
溶媒:n-ヘプタン/IPA 10→50%イソプロピルアルコール
クロマトグラムを図1に示す。(S)-異性体は8.6分で溶離し、(R)異性体は10.3分で溶離した。
【0131】
特徴付け及び物質:
分光計Bruker Advance500において、25℃で、プロトン(H)、炭素(13C)、リン(31P)及びフッ素(19F)のNMRスペクトルを記録した。スペクトルを重溶媒ピークに自動計算し、全ての13CNMR及び31PNMRがプロトンデカップリングされている。最終化合物の純度が、分析カラムとしてVarian PolarisC18-A(10μM)を使用し、HO/MeOH100/0~0/100、35分間のグラデーション溶離によるHPLC分析によって、>95%であることが確認された。Varian Prostar(LC Workstation‐Varian prostar335LC検出器)によって、HPLC分析を行った。
【0132】
2’-デオキシ‐2’,2’-ジフルオロ-D-シチジン-5’-O-[フェニル(ベンジルオキシ-L-アラニニル)]-(S)-ホスフェート(3)
(ES+)m/z、実測値:(M-Na)603.14
2527NaP理論値:(M)580.47
31PNMR(202MHz,MeOD):δ3.66
HNMR(500MHz,MeOD):δ7.58(d,J=7.5Hz,1H,H-6),7.38-7.32(m,7H,ArH),7.26-7.20(m,3H,ArH),6.24(t,J=7.5Hz,1H,H-1’),5.84(d,J=7.5Hz,1H,H-5),5.20(AB system,JAB=12.0Hz,2H,OCHPh),4.46-4.43(m,1H,H-5’),4.36-4.31(m,1H,H-5’),4.25-4.19(m,1H,H-3’),4.07-4.00(m,2H,H-4’,CHCH),1.38(d,J=7.2Hz,3H,CHCH
19FNMR(470MHz,MeOD):δ-118.0(d,J=241Hz,F),-120.24(broad d,J=241Hz,F)
13C NMR(125MHz,MeOD):δ174.61(d,C-P=5.0Hz,C=O,エステル),167.63(C-NH),157.74(C=O base),152.10(d,C-P=7.0Hz,C-Ar),142.40(CH-base),137.22(C-Ar),130.90,129.63,129.39,129.32,126.32(CH-Ar),124.51(d,C-F=257Hz,CF),121.47,121.43(CH-Ar),96.67(CH-base),85.92(broad signal,C-1’),80.31(C-4’),71.27(apparent t,C-F=23.7Hz,C-3’),68.03(OCHPh),65.73(d, C-P=5.30Hz,C-5’),51.66(CHCH),20.42(d,C-P=6.25Hz,CHCH
逆相HPLC:HO/MeOH 100/0~0/100、35分間での溶離、t=22.53分を有するジアステレオ異性体の1つのピークを示した。
【0133】
2’-デオキシ‐2’,2’-ジフルオロ-D-シチジン-5’-O-[フェニル(ベンジルオキシ-L-アラニニル)]-(R)-ホスフェート(4)
(ES+)m/z、実測値:(M-Na)603.14
2527NaP理論値:(M)580.47
31PNMR(202MHz,MeOD):δ3.83
HNMR(500MHz,MeOD):δ7.56(d,J=7.5Hz,1H,H-6),7.38-7.31(m,7H,ArH),7.23-7.19(m,3H,ArH),6.26(t,J=7.5Hz,1H,H-1’),5.88(d,J=7.5Hz,1H,H-5),5.20(s,2H,OCHPh),4.49-4.46(m,1H,H-5’),4.38-4.34(m,1H,H-5’),4.23-4.17(m,1H,H-3’),4.07-4.01(m,2H,H-4’,CHCH),1.38(d,J=7.2Hz,3H,CHCH
19FNMR(470MHz,MeOD):δ-118.3(d,J=241Hz,F),-120.38(broad d,J=241Hz,F)
13C NMR(125MHz,MeOD):δ174.65(d,C-P=5.0Hz,C=O,エステル),167.65(C-NH),157.75(C=O base),152.10(d,C-P=7.0Hz,CH-Ar),142.28(CH-base),137.50(C-Ar),130.86,129.63,129.40,129.32,126.31(CH-Ar),124.50(d,C-F=257Hz,CF),121.44,121.40(CH-Ar),96.67(CH-base),85.90(broad signal,C-1’),80.27(C-4’),71.30(apparent t,C-F=23.7Hz,C-3’),68.02(OCHPh),65.50(C-5’),51.83(CHCH),20.22(d,C-P=7.5Hz,CHCH
逆相HPLC:HO/MeOH 100/0~0/100、35分間での溶離、t=21.87分を有するジアステレオ異性体の1つのピークを示した。
【0134】
[実施例2]-再発卵巣癌患者におけるNUC-1031及びカルボプラチン併用の臨床治験
再発卵巣癌の参加者において、6サイクルについて、q3-週毎に、day1及び8に投与したNUC-1031及びday1に投与したカルボプラチンの安全性、薬物動態及び臨床活性を評価するために、相IB非盲検、用量漸増治験PRO-002を行った。
【0135】
【表1】
【0136】
【表2】
【0137】
【表3】
【0138】
各患者及びその治療レジメンの詳細を以下に再現する:
NUC-1031(Acelarin)を受ける患者に、21日サイクルレジメンのday1におけるカルボプラチンと一緒に、21日サイクルレジメンday1及び8に、スローボーラス静脈内点滴として投与した。各患者は、6サイクルの治療を受けた。
NUC-1031を、250mg/mlNUC-1031のジメチルアセトアミド(DMA)及び生理食塩水(80:20)溶液を収容する透明なバイアルにおける単回用量静脈内点滴として用意した。製品は、目視可能な粒子を含まない透明な黄色溶液である。
治験では、大多数の患者をAcelerinのS-エピマーにて処置した。幾人かの患者については、S-エピマー及びR-エピマーの2:1混合物を投与した。2つのエピマー間に顕著な薬理学的差異はあるとは考えられないが、S-エピマーの方が処方は容易であることが認められた。
【0139】
患者001
診断:再発性、部分的プラチナ製剤感受性ステージIIIb、グレード3卵巣漿液性腺癌。BRCAネガティブ。前回プラチナ製剤による治療終了後から再びプラチナ製剤投与までの期間(PFI)7カ月。
年齢54歳、PS=0
2012年に診断。2012年5月に、初めての減量手術、肉眼的に完全に除去。
1.2012年10月、カルボプラチン+パクリタキセルの化学療法(IOCN8)6サイクル完了
2.2013年7月~2014年1月、DESKTOP治験の化学療法群において、カルボプラチン+Caelyx6サイクル完了。2014年9月:増大する腹膜の小結節形成及び新規の肺転移を有する進行性疾患。
2014年11月27日治験開始、NUC-1031 750mg/m及びカルボプラチンAUC4、及び治験完了(6サイクル)、患者は非常に良好に経過。
有効性:2014年12月12日におけるPETスキャンでは、標的病巣におけるサイズ及び代謝活性における低下による治験薬剤に対する顕著な奏功を示した。CA125における顕著な低減、現在、ベースライン218から正常レベル。2015年1月21日のCTスキャンでは、固形癌治療効果判定基準(RECIST)部分奏功を示した。2つの標的病巣が完全に消散した。ただ1つの非標的病巣が「やっと目視可能」のままであった。治験終了時、CTスキャンは、依然として、持続した部分奏功のままであった。
安全性:カルボプラチンに対してわずかなアレルギー反応を有し、ステロイド及び抗ヒスタミン剤によって管理した。
最良のRECIST奏功:部分奏功
最良のGCIG奏功:部分奏功、CA125減少88%(218-27)
【0140】
患者002
診断:再発性、プラチナ製剤不応性(PFI0カ月)ステージIV、グレード3漿液性卵巣乳頭状腺癌。BRCA不明。
年齢68歳、PS=0
2010年に診断。2010年5月発症。2010年6月15日、最適以下の減量手術。プレ処置CA125は2,056であった。
1.2010年12月:カルボプラチン+タキソール6サイクル完了
2.2011年8月~2012年8月、MORAB治験において、カルボプラチン+パクリタキセル+PDGFR阻害剤/プラセボを受け、続いて、病状悪化が証明されるまで、持続PDGFR阻害剤/プラセボを受ける。
3.2013年3月:ゲムシタビン+カルボプラチンの6サイクル完了(後処置にてのCA125 441)
4.2013年5月~11月:パゾパニブ+毎週のパクリタキセルの6サイクル(11月までパゾパニブ継続)(PAZPET治験)
5.2014年6月カルボプラチン+caelyxを開始、ただし、4サイクル後、進行した。
2014年12月2日治験開始、NUC-1031 750mg/m及びカルボプラチンAUC4、及び治験完了(6サイクル)。
有効性:CA125が、治験導入時、ベースライン865にて急上昇したが、この知見では、CA125における顕著な低減が認められた。膣出血により、ベースラインで、以降のサイクル1を中止した。2015年2月10日におけるPETスキャンでは、RECIST安定を示し、SLDの減少14%。治験の終了時、CTスキャンは、持続したRECIST安定を示した。
安全性:C1D1後、ALTが上昇、治療を1週間遅らす。胸部感染症のため、C2D8を1週間遅らせる。好中球減少症(G4)のため、C4D8を省略。GCSFサポートが必要。
最良のRECIST奏功:安定(14%減少)
最良のGCIG奏功:部分奏功CA125減少56%(865-377)
【0141】
患者003
診断:再発性、プラチナ製剤不応性(PFI0カ月)ステージIIIb、グレード3漿液性卵巣乳頭状腺癌。BRCA1及び2変異。
年齢37歳、PS=1
2010年3月16日最初の減量手術後に診断
1.2010年8月:アジュバントカルボプラチン+パクリタキセル6サイクル完了。
2.2012年2月~8月:カルボプラチン+パクリタキセル+PDGFR阻害剤/プラセボ(MORAB治験)を受け、続いて、進行まで、MORABを継続。
3.2012年9月~2013年2月:毎日のパゾパニブ及び毎週のパクリタキセルを6サイクル受け、続いて、(PAZPET)治験において、パゾパニブを継続。
4.2013年7月~2014年4月:毎日のAKT阻害剤+3週毎のカルボプラチン+パクリタキセル(AKTRES治験)6サイクル、続いて、進行まで毎日のAKT阻害剤継続。
5.2014年6月~10月:進行まで、ゲムシタビン+カルボプラチン4サイクルを受ける(腸閉塞あり)。大腸切除術及び癒着の切除を受け、及び腹膜疾患。
6.2014年11月~12月:リポソーム製剤のドキソルビシン2サイクルを受けたが、疾患進行のため中止。
2015年1月21日治験開始、NUC-1031 750mg/m及びカルボプラチンAUC4を1サイクル受ける。C2D1について、用量を、NUC-1031 500mg/m及びカルボプラチンAUC3に低減、現在、治験を完了。
有効性:2015年4月1日におけるPETスキャンでは、RECIST安定を示し、SLDの減少5%。CA125の顕著な減少。治験の終了時、CTスキャンは、進行を示し、SLDがベースラインから50%増大。
安全性:G4血小板減少症及びG4好中球減少症の骨髄抑制のため、再発が治療を遅らせる。投与の遅延、用量の低減及びGCSFが必要。C2以降、各サイクルからD8省略。感染症のため、入院2回。
最良のRECIST奏功:安定(5%減少)
最良のGCIG奏功:部分奏功CA125減少57%(272-117)
【0142】
患者004
診断:再発性、部分的プラチナ製剤感受性(PFI8カ月)ステージIV、グレード3右卵巣の漿液性腺癌。BRCAネガティブ。
年齢64歳、PS=0
腹痛の検査の間に骨盤腔内腫瘍及び多発性肝臓転移の同定後、2012年5月に診断。CTガイド下肝臓生検は、グレード3の漿液性腺癌(ER+)を示した。
1.2012年5月~11月:カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ(3週間毎)6サイクルを受けたが、地元の腫瘍医によって、手術不可能の疾患とみなされた。
2013年1月に受けた肝臓摘出及び手術可能のセカンドオピニオンを受けたことを自己申告。2013年2月に遅延された最初の減量手術を受け、続いて、カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ(3週間毎)3サイクルを受け、2013年5月に完了。2013年10月まで、ベバシズマブを継続。
2.2013年11月~2014年5月:カルボプラチン+caelyx6サイクル(好中球減少症のため、1治療サイクルを遅らせた)を受け、肝臓内疾患のみ残った。
3.2014年8月:肝臓の両葉へのY-90放射線照射を受けた。
2015年1月:CTスキャンは、肝臓及び腹膜への転移を有する進行及びCA125レベルの急激な上昇を示した。
2015年2月3日治験開始、NUC-1031 750mg/m及びカルボプラチンAUC5を1投与受ける。C2D1からAUC4に低減し、1サイクルを受ける。C3D1について、NUC-1031を500mg/mに低減し、さらに、2サイクル完了。サイクル5について、カルボプラチンをAUC3に低減し、1投与を受けた。
有効性:2015年2月24日におけるPETスキャンでは、良好な代謝奏功及び腫瘍容積の若干の減少を示した。2015年4月8日におけるCTスキャンでは、RECIST安定を示し、SLDの減少22%。CA125の顕著な減少。患者は、彼女の肝臓における腫瘍小結節をもはや感ずることはなく、C1後には、原発腫瘍部位周囲の痛みが顕著に減少したことを報告した。13/5におけるCTスキャンは、新たな病巣を有する進行を示した。
安全性:再発性の好中球減少症及び血小板減少症により、投与の遅延、用量の減少及びGCSFが必要であった。肝臓転移のため、LFTを継続して評価した。
最良のRECIST奏功:安定(22%減少)
最良のGCIG奏功:部分奏功CA125減少77%(1,574-356)
【0143】
患者005
診断:再発性、プラチナ製剤不応性(PFI3カ月)ステージIV、グレード3卵巣の両側漿液性腺癌。BRCA不明
年齢75歳、PS=1
2011年12月に診断し、全腹式子宮摘出術、卵管卵巣摘出術及び大網切除術を受けた。
1.2012年5月、カルボプラチン+パクリタキセルの6アジュバントサイクル完了
2.2013年6月~12月:DESKTOP治験の化学療法群において、カルボプラチン+Caelyx6サイクル完了。
3.2014年7月~2015年1月:3週毎のカルボプラチン及びパクリタキセルを、毎日のAKT阻害剤を受け、続いて、AKTRES治験におけるPDまで、AKT阻害剤を継続。
2015年2月20日治験開始、NUC-1031 750mg/m及びカルボプラチンAUC4完了。
有効性:C3の終了時、CTスキャンでは、RECIST安定を示し、SLDの減少26%。CA125の顕著な減少。治験終了時、CTスキャンは、持続したRECIST安定を示した。
安全性:好中球減少症(G3)のため、C2D1を遅らせた。感染症のため入院1回。疲労(G1)。
最良のRECIST奏功:安定(26%減少)
最良のGCIG奏功:部分奏功、CA125減少80%(638-127)
【0144】
患者006
診断:再発性、プラチナ製剤不応性(PFI0カ月)ステージIIIc、グレード3卵巣の漿液性腺癌。BRCA不明
年齢70歳、PS=1
2012年9月に診断。2012年10月4日、supra-radical手術を受け、残存病変が残った。
1.2013年3月:カルボプラチン6サイクル完了
2.2013年11月~2014年4月:毎週のパクリタキセル6サイクルを受ける。
3.2014年7月~2014年9月:カルボプラチン+ゲムシタビン3サイクルを受けるが、進行を有する。
2015年2月20日治験開始、治験において、NUC-1031 750mg/m及びカルボプラチンAUC4、これまで4サイクル完了。C5D1について、NUC-1031の用量を500mg/mに低減し、及びAUC4を投与し、さらに1サイクルを完了。
有効性:C3後、CTスキャンでは、RECIST安定を示し、SLDの減少28%。CA125が顕著に減少し、現在、ベースライン48から正常に。
安全性:好中球減少症(G2)のため、C2D1を3日間遅らせた。痛みが増大したが、主として、オピオイドの低コンプライアンスによるものである。胸部感染症のため入院1回。
絞扼性ヘルニアのための手術を受けた。治験を受け、CTスキャンでは回復していた。
最良のRECIST奏功:安定(28%減少)
最良のGCIG奏功:安定、CA125減少48%(48-25)
【0145】
患者007
診断:再発性、プラチナ製剤感受性(PFI14カ月)ステージIIb、卵巣原発性大細胞神経内分泌腫瘍。BRCA不明;非-CA125発現体
年齢77歳、PS=1
2011年11月に診断。減量手術を受けた(残留病巣なし)。
1.2012年3月:アジュバントカルボプラチン+エトポシド6サイクル完了
2.2013年7月~11月:3週毎のカルボプラチン+パクリタキセル6サイクル完了(CRに)。
2015年1月:CTスキャンでは、進行性のリンパ節病変を示した。
2015年2月25日治験開始、治験において、NUC-1031 750mg/m及びカルボプラチンAUC4、今日まで4サイクル完了。
有効性:C3後、CTスキャンでは、RECIST部分奏功を示し、SLDの減少50%。治験終了時、CTスキャンでは、CRECIST完全奏功を示し、全ての標的病巣及び非標的病巣が消失した。
安全性:好中球減少症(G2)のため、C2D1を3日間遅らせた。便秘G2(制吐剤に伴う)。C4以後、好中球減少症G4及びライン感染を訴えて入院。サイクル5について、用量を減量。
最良のRECIST奏功:完全奏功
C125の非発現体
【0146】
患者008
診断:再発性、部分的プラチナ製剤感受性(PFI7カ月)ステージIIIc、グレード3卵巣の漿液性腺癌。BRCA不明
年齢54歳、PS=0
2012年3月27日に行った腹腔鏡下生検後、卵巣の漿液性腺癌の非減量ステージIIIc、グレード3と診断。
1.2012年9月:ICON8治験においてカルボプラチン+パクリタキセル6サイクル完了、ただし、依然として手術不能。
2.2014年5月:カルボプラチン、ゲムシタビン及びベバシズマブを開始したが、更なる化学療法を辞退する前に、1サイクル受けたのみ。
2015年2月:病状の進行を再発。CT:進行性腹膜疾患、及びCA125の急激な上昇。
2015年3月10日治験開始。NUC-1031 500mg/m及びカルボプラチンAUC5、これまで3サイクル完了。サイクル4について、カルボプラチンをAUC4に低減し、及びさらに2以上のサイクルを受けた。
有効性:C3後、CTスキャンでは、RECIST安定を示し、SLDの減少15%。CA125の顕著な減少。治験の終了時、CTスキャンでは、持続した安定を示し、SLDの減少28%。
安全性:疲労(G1)。好中球減少症(G2)のため、C3D8を省略。サイクル4について、AUC4に減量。
最良のRECIST奏功:安定(28%減少)
最良のGCIG奏功:部分奏功、CA125減少97%(791-23)
【0147】
患者009
診断:再発性、プラチナ製剤抵抗性(PFI4カ月)ステージIV、グレード3卵巣の漿液性腺癌。BRCA1変異
年齢63歳、PS=0
2012年12月7日の超音波ガイド生検後に診断。
1.2013年1月:ICON8治験において、ネオ-アジュバントカルボプラチン+パクリタキセルを受け、サイクル3の後、2013年2月26日に遅らせた初回の減量手術を受けた。手術は、ultra-radicalであり、直腸の前方切除、脾臓摘出、腹膜のストリッピング、及びリンパ節摘出を含む。カルボプラチン及びドセタキセル(パクリタキセルアレルギーのため)による術後化学療法4サイクル完了。
2.2014年5月:PISARRO治験において、カルボプラチン、ゲムシタビン及びP-53標的剤(APR-243)を受ける。部分奏功。
2015年2月:再発。
2015年3月13日治験開始。NUC-1031 500mg/m及びカルボプラチンAUC5を4サイクル完了。C5について、カルボプラチンをAUC4に減量。
有効性:C3後、CTスキャンでは、RECIST安定を示し、SLDの減少2%。CA125の顕著な減少。治験終了後、CTスキャンでは、RECIST持続した安定を示した。
安全性:疲労G1(ベースラインG1)。C4D8について、好中球減少症(G2)示した。D8を省略し、カルボプラチンをAUC4に減量した。
最良のRECIST奏功:安定(2%減少)
最良のGCIG奏功:安定、CA125減少44%(75-42)
【0148】
患者010
診断:再発性、プラチナ製剤抵抗性(PFI5カ月)ステージIIIc、グレード3卵巣の漿液性腺癌。
年齢76歳、PS=1
2013年2月に診断し、右卵管卵巣摘出及び大網切除を行い、残留腹膜疾患の1cm未満の沈着物が残る。前処置のCA125レベル930
1.2013年4月~8月:ICON8の群3において、カルボプラチン及びタキソール6サイクル完了。
2.2014年2月にCA125の無症候性上昇。2014年6月、ゲムシタビン+カルボプラチン+ベバシズマブ開始。
3.2014年11月、ベバシズマブの継続開始。2015年3月、CA125上昇のため中止。
2015年4月15日治験開始。NUC-1031 500mg/m及びカルボプラチンAUC5を4サイクル完了。
有効性:C3後、CTスキャンでは、RECIST安定を示した。サイクル3の終了時、CA125が、ベースラインにおいて304から515に上昇した。治験終了後、CTスキャンでは、RECIST持続した安定を示した。
安全性:耐用性を示した処置良好
最良のRECIST奏功:安定
最良のGCIG奏功:
【0149】
[実施例3]-PRO-002臨床治験(カルボプラチンと組み合わせたNUC-1031)からのdFdCTP濃縮物の薬物動態分析及びProGem1臨床治験(NUC-1031単独)からの結果との比較
物質及び方法
1.物質
dFdCTP対象化合物を、英国Biorbytから入手した。Lymphoprepを英国STEMCELL Technologies Ltd.から入手した。過塩素酸(PCA)、酢酸アンモニウム(NH4Ac)及びアンモニアを、全て、英国Sigma Aldrichから入手した。LC-Msグレードの水、メタノール、アセトニトリル及びギ酸を、全て、英国Fisher Scientificから入手した。
2.方法
A.血液の採取及びPBMCsの調製:ヘパリン処理した血液収集管を使用して血液6mlを採取した。血漿を遠沈及び分離した後、バフィーコートを収集し、Lymphoprep密度差分離液3mlを収容する新たな試験管に移した。遠心分離後、PBMC層を含有する上方界面を、新たな試験管に移した。リン酸塩緩衝化食塩水(PBS)にて洗浄した後、PBMCsを、PBS100μlに再懸濁化した。ついで、0.8M PCA100μlを添加し、混合物をボルテックス混合し、遠心分離し、続いて、上澄み100μlを新たな試験管に移した。PCA抽出物を、分析時まで、-80℃において保存した。
B.サンプルの抽出(PBMCs):PCA抽出物を、1M NH4Ac50μlを使用して緩衝化し、ついで、10%アンモニア溶液20μlを使用して中和した。最後に、内部基準物8-ChloroATPの含有物5μl及び精製水5μ1を添加した。抽出物をLC-MSバイアルに移し、10μlを、UPLC-MS/MSシステムに注入した。
3.クロマト法及びサンプル分析
分析物の10mg/mlストック溶液を調製し、使用時まで、アリコートを-80℃で凍結した。BiobasicAX、5μm、50×2.1mmカラム(Thermo Electron Corporation、米国カリフォルニア州マリエータ)及びNH4Acの10mM ACN/HO(30:70v/v)溶液(pH6.0)(A)及びNH4Acの1mM ACN/HO(30:70v/v)の溶液(pH10.5)(B)の混合物からなる移動相を備えた超高速液体クロマトシステム(Accela、Thermo Scientific、英国)を使用して、分析物を分析した。緩衝液A=0~0.5分において95%、1.25分で95~0%、1.75分間0%に維持、0.1分で0~95%、2.9分間95%で終了、全ての流速500μl/分でなる移動相グラディエントを使用した。
4.質量分析法
エレクトロスプレーイオン源を備えた3連四重極型Vantage質量分析システム(Thermo Scientific、英国)を使用して、目的の溶離化合物を検出した。多重反応モニタリング(MRM)において、それぞれ、スプレー電圧3500及び3000Vにおいて、ポジティブ(+ve)及びネガティブ(-ve)イオンモードでサンプルを分析した。シースガス及び補助ガスとして、それぞれ、流速50及び20arbで窒素を使用した。コリジョンガスとして、アルゴンを圧力1.5mトルで使用した。
結果
NUC-1031単剤は、Tmax1時間点滴終了(EOI)においてdFdCTPの最大濃度(Cmax)11.3μM/mg組織タンパク質(TP)及び見掛けt1/29.6時間を有する活性な代謝物フルオロデオキシシチジントリホスフェート(dFdCTP)の迅速かつ持続的な細胞内蓄積を生じた。これらのデータは、NUC-1031が非常に高くかつ持続したレベルの活性な抗癌代謝物dFdCTPを送達できることを示している。dFdCTPに関する細胞内の濃度曲線下面積(AUC)は、最初の24時間EOIで103.3μM/mgTPであった(図2)。
第Ib相PRO-002治験の一部として、NUC-1031及びカルボプラチンの組み合わせレジメンを、卵巣癌の患者10人に投与した。最初の24時間EOIで、細胞内dFdCTPのCmaxは15.1μM/mgTPに達し、AUCは235.0μM/mgTPであった(図3)。500mg/mゲムシタビン用量に正規化した平均の薬物動態パラメーターを、下記の表に示し、NUC-1031単剤で処置した卵巣癌のProGem1患者において得られたデータと比較した。
【表4】

考察
NUC-1031単剤(ProGem1)の薬物動態は非常に有益であり、ゲムシタビンについて観察されるものよりも約10倍高い細胞内dFdCTPのCmax濃度を達成する。NUC-1031及びカルボプラチンの組み合わせレジメン(PRO-002)は、単剤使用よりも、細胞内dFdCTPのCmax濃度の増大34%及びAUC0~24の増大127%を示した。NUC-1031及びカルボプラチンの併用療法後に観察されたdFdCTPCPレベルにおける相乗効果は、癌の成長を阻止するために及び単剤使用後の再発癌の治療において高いdFdCTPレベルが要求される癌の治療のための幅広い臨床上の利用を含む極めて重要な臨床的意義を有する。
図1
図2
図3
図4