(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】IL-2医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/20 20060101AFI20220311BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220311BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20220311BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20220311BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220311BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220311BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220311BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220311BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220311BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220311BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220311BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20220311BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220311BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220311BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
A61K38/20
A61K9/08
A61K47/20
A61K47/28
A61K47/02
A61K47/12
A61P29/00
A61P37/06
A61P37/02
A61P37/04
A61P3/10
A61P31/00
A61P35/00
A61P13/12
A61P35/04
(21)【出願番号】P 2018520594
(86)(22)【出願日】2016-10-20
(86)【国際出願番号】 EP2016075204
(87)【国際公開番号】W WO2017068031
(87)【国際公開日】2017-04-27
【審査請求日】2019-10-17
(32)【優先日】2015-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518083571
【氏名又は名称】イルトゥー・ファルマ
【氏名又は名称原語表記】ILTOO PHARMA
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100165892
【氏名又は名称】坂田 啓司
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー・マリオ
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・ティリー
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01688146(EP,A1)
【文献】特開昭61-224985(JP,A)
【文献】特開昭60-243021(JP,A)
【文献】特表2003-519175(JP,A)
【文献】特表昭61-500790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者への注射用の液体医薬組成物であって、
0.1~12MIU/mlの濃度で存在し、およびタンパク質1mg当たり8~18MIUの比活性を有する非凍結乾燥インターロイキン2、
リン酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンヒドロクロライド(TRIS.HCl)、TRIS-グリシン、クエン酸、ホウ酸、クエン酸/リン酸、炭酸水素、グルタル酸、コハク酸、それらの塩、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される5mM~25mMの濃度の緩衝化剤
、
C
8-C
20アルキル硫酸塩、ラウロイルサルコシン酸塩、コール酸塩、デオキシコール酸塩、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される0.05~5mg/mlの濃度の
アニオン性界面活性剤、
および
水、から本質的に成り、
インターロイキン2に対する界面活性剤の重量比が0.1~3.0であり、
マンニトールを含まない、液体医薬組成物。
【請求項2】
インターロイキン2が2~12MIU/mlの濃度で存在する、請求項1に記載の液体医薬組成物。
【請求項3】
界面活性剤がアルカリ金属およびアルカリ土類金属のドデシル硫酸塩から選択される、請求項1または2に記載の液体医薬組成物。
【請求項4】
界面活性剤が0.05~0.5mg/mLの濃度で存在する、請求項1-3のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項5】
インターロイキン2に対する界面活性剤の重量比が1.5~2.5である、請求項1-3のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項6】
インターロイキン2がタンパク質1mg当たり12±3MIUの比活性を有する、請求項1-5のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項7】
インターロイキン2が組換えヒトインターロイキン2またはその変異体である、請求項1-6のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項8】
アルブミンを含まない、請求項1-7のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項9】
- 2~12MIU/mLの投与量のインターロイキン2
- 0.05~0.5mg/mLの濃度のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)
- 5mM~25mMの範囲の濃度で存在する、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせから選択されるバッファー、並びに
- 水
から本質的に成る、請求項1-8のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項10】
以下の特徴の少なくとも1つを特徴とする、請求項1-9のいずれか一項に記載の液体医薬組成物:
- 組成物のpHが7.1~7.8である、
- 緩衝化剤がリン酸バッファーである、
- インターロイキン2がアルデスロイキンである、
- 医薬組成物が凍結乾燥安定剤を含まない、
- 液体医薬組成物が5℃で少なくとも6ヵ月間安定である。
【請求項11】
抗酸化物質、モル浸透圧濃度調整剤、および保存剤からなる群より選択される賦形剤を更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項12】
界面活性剤がドデシル硫酸ナトリウム(SDS)またはドデシル硫酸リチウムである、請求項1~11のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項13】
皮下注射による使用のための、請求項1-12のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項14】
自己免疫疾患、免疫関連疾患、または炎症性疾患の治療または予防における使用のための液体組成物であって、該組成物が0.1~3MIUのインターロイキン2の投与量に相当する量で皮下経路により投与される、請求項1-13のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項15】
a.精製インターロイキン2の濃縮溶液を提供すること
b.該精製インターロイキン2の濃縮溶液を1つまたは複数の賦形剤を添加することにより製剤化し、インターロイキン2の液体医薬組成物を得ること、および
c.バイアル、カートリッジ、または注射のための送達デバイス、例えばシリンジもしくはペンに、該液体医薬組成物を包装すること
のステップを含む、請求項1-12のいずれか一項に規定される液体医薬組成物を調製する方法。
【請求項16】
請求項1-12のいずれか一項に規定される液体組成物を含むバイアルまたはカートリッジ、並びにシリンジ、ニードル、および/または自己注射器デバイスなどの皮下注射のための手段を含む医薬品キット。
【請求項17】
請求項1-12のいずれか一項に規定される液体組成物が充填された注射のための、送達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターロイキン2(IL-2)を含む新規の医薬組成物および、自己免疫関連疾患または炎症性疾患の治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン2はT細胞の活性化と増殖を可能にすると最初に記述されたサイトカインである。インターロイキン2は、ある種のがんおよび感染症におけるエフェクター免疫応答を刺激するために臨床的に用いられてきた。インターロイキン2は、1998年に、転移性腎細胞癌の治療のために、商品名Proleukin(登録商標)として承認された。Proleukin(登録商標)の薬量学には、高投与量のIL-2の間欠投与、通例70kgの患者に対し42×106UIの8時間毎の継続点滴、又は5日間連日の皮下注射が含まれ、これは薬剤不使用の治療期間後に、数回繰り返すことができる。
【0003】
近年、インターロイキン2がTregの生存および活性化に不可欠であることが示された。IL-2は、Proleukin(登録商標)の10~100倍低い投与量では、免疫を制御する細胞である制御性T細胞(Treg)を特異的に活性化することにより、免疫を刺激するのではなく自己寛容を回復させる。それ故IL-2は、免疫ホメオスタシスにおける重要な免疫学的ドライバーであるTreg/Teffバランスに、選択的生物学的効果を発揮する。当該特性は、生得的にTreg機能不全に起因する自己免疫疾患および炎症性疾患(AIDs)の治療におけるIL2の使用に道を開く(非特許文献1)。現在、IL-2は、1型糖尿病などのいくつかの自己免疫性および炎症性の疾病の治療において、低投与量にて検討されている。
【0004】
インターロイキン2は、水および酸素存在下で分解されやすい。先行技術によると、インターロイキン2は溶液中において、化学分解および物理的不安定を起こし得る。従って、これらの分解反応を回避するために、凍結乾燥製剤の開発が開始された。その点で、凍結乾燥製剤においてIL-2の安定性を改善させる安定剤を特定するために、いくつかの研究が行われた。例えば、Horaら(非特許文献2)は、インターロイキン2を製剤化するために、アミノ酸、非イオン性界面活性剤、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンまたは血清アルブミンなどの非晶質賦形剤の、凍結乾燥安定剤としての使用について述べている。IL-2などのサイトカインの安定した標準物質を生産するために、世界保健機関(WHO)は、適切な賦形剤および緩衝剤(buffer agent)の存在下で本タンパク質をフリーズドライすること、並びに、得られた製剤を乾燥状態、低温、および不活性雰囲気下で保存することを推奨している(非特許文献3)。
【0005】
特筆すべきは、転移性腎細胞癌の治療を目的として、Proleukin(登録商標)が、インターロイキン2、マンニトール、ドデシル硫酸ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウム二水和物を含む凍結乾燥組成物として市販されており、これは不活性条件下でバイアルに包装されており、2℃~8℃で保存しなければならない。マンニトールは凍結乾燥安定剤として存在している。Proleukin(登録商標)は注射に際し、水で再構成する。一度水で再構成すると、Proleukin(登録商標)は直ちに使用しなければならず、いかなる場合でも水に再構成後24時間以内に使用しなければならない(例えば、非特許文献4を参照されたい)。
【0006】
これらの凍結乾燥製剤は、水に再構成しなければならず、一度再構成すると短期間しか保存できないことから、自己投与および長期治療に適していない。
【0007】
従って、インターロイキン2の代替となる医薬組成物が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Klatzmann & Abbas, Nature Reviews Immunology, 2015, 15, 283-294
【文献】Develop. Biol. Standard, 1991, vol 74, 295-306
【文献】Mire-Sluis at al., Journal of immunological methods, 1998, 216, 103-116
【文献】The Summary of Product Characteristics for Proleukin(登録商標) in United Kingdom, January 20, 2015, Novartis Pharmaceuticals UK Ltd
【発明の概要】
【0009】
本発明は、患者への注射に好適な液体医薬組成物であって、100,000~20,000,000IU/mLの濃度のインターロイキン2、緩衝化剤(buffering agent)、界面活性剤、並びに好ましくは抗酸化物質(antioxidant)、モル浸透圧濃度調整剤、および保存剤から選択される、場合により存在する賦形剤と、水とから本質的に成る液体医薬組成物に関する。インターロイキン2は、2~12MIU/mL、好ましくは4~10MIU/mLの濃度で存在してよい。ある種の実施形態において、界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)およびドデシル硫酸リチウムなどのアニオン性界面活性剤である。界面活性剤は、約0.05~0.5mg/mLの濃度で存在してよい。インターロイキン2に対する界面活性剤の重量比は、通例0.04~5、例えば0.1~3.0である。
【0010】
本発明の液体医薬組成物は、好ましくは非凍結乾燥インターロイキン2より得られる。
【0011】
いくつかの実施形態において、液体医薬組成物はマンニトールおよび/またはアルブミンを含まない。
【0012】
インターロイキン2は、アルデスロイキンなどの、組換えヒトインターロイキン2またはその変異体であってよい。
【0013】
他の実施形態、またはさらなる実施形態において、液体医薬組成物は、
-2~12MIU/mL、例えば4~10MIU/mLの投与量のインターロイキン2
-約0.05~0.5mg/mLの濃度のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)
-5mM~25mMの範囲の濃度で存在する、一塩基性リン酸ナトリウム(monobasic sodium phosphate)、二塩基性リン酸ナトリウム(dibasic sodium phosphate)、およびそれらの組み合わせから選択されるバッファー
-場合により、NaClなどのモル浸透圧濃度調整剤、並びに
-水
から本質的に成る。
【0014】
本発明の液体医薬組成物は、好ましくは5℃で少なくとも6ヵ月間安定である。
【0015】
いくつかの別の実施形態またはさらなる実施形態において、本発明の液体医薬組成物は、以下の特徴の少なくとも1つを有していてもよい:
-組成物のpHが7.1~7.8、好ましくは7.5±0.2である、
-緩衝化剤がリン酸バッファーである、
-インターロイキン2がアルデスロイキンである、
-Il-2に対する界面活性剤の重量比が0.1~3である、
-液体医薬組成物がシリンジもしくはペンなどの注射のための送達デバイスに包装するのに好適である、
-医薬組成物が凍結乾燥安定剤を含まない。
【0016】
本発明はまた、本発明の液体医薬組成物の、皮下経路による投与への使用に関する。通例、本発明の液体医薬組成物は、自己免疫疾患、免疫関連疾患、または炎症性疾患の治療または予防において用いられ得る。これらの用途において、該組成物は通例、0.1MIU~3MIUのインターロイキン2の投与量に相当する量で皮下経路により投与される。
【0017】
本発明のさらなる対象は、以下のステップを含む、上述の液体医薬組成物を調製するための方法である:
a.好ましくは20MIU/mgを超えるインターロイキン2を含有する、精製インターロイキン2の濃縮溶液を提供すること
b.該精製インターロイキン2の濃縮溶液を1つまたは複数の賦形剤を添加することにより製剤化し、インターロイキン2の液体医薬組成物を得ること
c.場合により、バイアル、カートリッジ、または注射のための送達デバイス、例えばシリンジもしくはペンに、該液体医薬組成物を包装すること。
【0018】
本発明はまた、該液体組成物が充填されたバイアルまたはカートリッジ、並びにシリンジ、ニードル、および/または自己注射器デバイスなどの皮下注射の手段を含む医薬品キットに関する。本発明のさらなる対象は、上記で規定された液体組成物が充填された注射のための、好ましくは皮下注射のための、送達システムである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
本発明者は、注射に使用できる状態であり、かつ、顕著な分解または生物学的活性の損失を伴うことなく2℃~8℃の間の温度で数ヶ月保存可能である、インターロイキン2の液体水性製剤の調製が可能であることを証明した。従って、先行技術ではインターロイキン2の水中での安定性が乏しいとされ、凍結乾燥製剤の開発に繋がっていることが明らかだが、本発明者は高度に安定なインターロイキン2の水性医薬組成物を開発することにより偏見を打破した。
【0020】
本発明者により開発された医薬組成物は、非常に単純であり、高度および高価な賦形剤の使用に頼っていない。本製剤は、賦形剤をほとんど含有せず、通例1つの界面活性剤、1つの緩衝剤および場合により存在する1つの賦形剤を含有する。場合により存在する賦形剤は、例えば、抗酸化物質、保存剤、またはモル浸透圧濃度調整剤であってよい。本調製方法は、インターロイキン2の凍結乾燥のステップを必要としない。実際、本タンパク質の凍結乾燥は、再構成した溶液中のインターロイキン2の生物学的活性および安定性にとって不利であるため、必要ではなく、回避すべきである。
【0021】
本発明の液体医薬組成物は、低濃度、例えば1×106~5×106IU/mLのインターロイキン2を含む。本発明者は、驚くべきことに、これら低濃度においてさえも、Il-2が本発明の液体組成物において安定であり得ることを示した。本発明の液体医薬組成物は、従って、長期治療における使用に特に適している。該組成物は、頻回投与に好適であり、1型糖尿病、多発性硬化症、および関節リウマチなどのAIDsの治療において使用できる。本発明の医薬組成物は注射に使用できる状態であるため、ペンデバイスまたはシリンジ内に調製し得、従って特に自己投与に適している。
【0022】
さらに、本発明の液体医薬組成物は、Proleukin(登録商標)と比較して、注射部位における局所的皮膚反応(発赤および/または腫れ)などの局所的副作用が少ないことが期待される。
【0023】
最後に、本発明の液体医薬組成物を調製する方法は、インターロイキン2に凍結乾燥を行うことなく、精製ステップの直後に製剤化するために、先行技術に記載されているよりも単純で、かつ、より迅速である。
【0024】
本発明の医薬組成物
本発明の第一の対象は、0.1×106~20×106IU/mLのインターロイキン2を含む、患者への注射に好適な水性液体医薬組成物である。
【0025】
本明細書で用いられる場合、用語「注射に好適な」は、液体医薬組成物が、注射、好ましくは静脈内、筋肉内、皮内、または皮下経路により患者に投与できることを意味する。
【0026】
好ましい実施形態において、本発明の液体医薬組成物は、皮内または皮下注射に好適である。
【0027】
好ましくは、本発明の水性液体医薬組成物は使用できる状態であり、特に注射に使用できる状態である。本明細書で用いられる場合、「注射に使用できる状態である」は、液体医薬組成物が、さらなる製剤化のステップに供することなく患者に直接投与できることを意味する。
【0028】
本明細書で用いられる場合、「製剤化ステップ」は、1つ以上の賦形剤を組成物に添加することを指す。
【0029】
好ましくは、本発明の液体医薬組成物に存在するインターロイキン2は、フリーズドライ(または凍結乾燥プロセス)に供されていない。本明細書で用いられる場合、用語「フリーズドライ」または「凍結乾燥」は、水分を含む物質を凍結することと、減圧して物質中の凍結水が昇華により除去されることとを含む脱水プロセスを指す。
【0030】
例えば、Proleukin(登録商標)は凍結乾燥により得られたインターロイキン2の固体の医薬組成物である。
【0031】
従って、本発明の液体医薬組成物は、好ましくは非凍結乾燥インターロイキン2、すなわち、凍結乾燥プロセスに供されていないインターロイキン2から調製される。より一般的な局面において、本発明の液体医薬組成物は、凍結乾燥安定剤の存在下であっても、インターロイキン2がフリーズドライまたは凍結乾燥されるステップを含まない製造プロセスにより、調製され得る。本発明の液体医薬組成物を調製する好適な方法をさらに以下に記載する。
【0032】
本明細書で用いられる場合、インターロイキン2(IL-2)には、哺乳動物野生型インターロイキン2、およびその変異体が包含される。好ましくは、IL-2はヒトIL-2、あるいはその変異体である。
【0033】
IL-2の活性変異体が文献に開示されている。天然のIL-2の変異体は、フラグメント、アナログ、およびそれらの誘導体であり得る。「フラグメント」は、損傷のないポリペプチド配列の一部のみを含むポリペプチドを表す。「アナログ」は、1つ以上のアミノ酸の置換、挿入または欠失を有する天然のポリペプチド配列を含むポリペプチドを指す。ムテインおよび偽ペプチドは、アナログの具体例である。「誘導体」には、例えばグリコシル化、リン酸化、別のポリペプチドまたは分子への融合、重合などの、化学的または酵素的な改変または付加によるIL-2の特性(例えば安定性、特異性など)の改善を通じた、任意の改変された天然のIL-2ポリペプチド、またはそのフラグメントもしくはアナログが含まれる。基準となるIL-2ポリペプチドの活性変異体は、一般的に、基準となるIL-2ポリペプチド、例えば成熟野生型ヒトIL-2のアミノ酸配列に、少なくとも75%、好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0034】
変異IL-2ポリペプチドが活性であるかどうかを決定する方法は当技術分野で利用可能であり、本発明で具体的に記載されている。最も好ましくは、活性変異体はTregを刺激する変異体である。
【0035】
例えば、IL-2変異体の実施例が、EP109748、EP136489、US4,752,585;EP200280、またはEP118,617に開示されている。
【0036】
IL-2はDNA組換え技術により生産され得る。IL-2をコードする組換えDNAの発現に用いられる宿主生物は、原核生物(大腸菌(E.coli)などの細菌)または真核生物(例えば、酵母、真菌、植物または哺乳動物細胞)であってよい。IL-2を生産するプロセスは、例えば、US4,656,132;US4,748,234;US4,530,787;またはUS4,748,234に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
あるいは、IL-2は化学的なペプチド合成により生産され得る。例えばIL-2は、より短いペプチドがその後集合して、正確なジスルフィド架橋を有する完全な配列のIL-2を生み出す、より短いペプチドのパラレル合成により生産され得る。インターロイキン2の全合成は、例えば、Asahina et al., Angewandte Chemie International Edition, 2015, Vol.54, Issue 28, 8226-8230において例示されており、当該開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
ある実施形態において、IL-2は、成熟した野生型ヒトIL-2と、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、95%、98%、99%の配列同一性を有する変異体である。本変異体は、グリコシル化、あるいは非グリコシル化であり得る。ヒトIL-2のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、例えば、Genbank ref 3558またはP60568にそれぞれ開示されている。
【0039】
IL-2は製薬用途を含んで市販されており、ヒト患者への使用が承認されている。好適な市販の形態には、例えば以下が含まれる。
-Proleukin(登録商標)(アルデスロイキン)は、大腸菌(E.coli)で生産された、組換え非グリコシル化デスアラニル-1、セリン-125ヒトインターロイキン2である。
-Roncoleukin(登録商標)は、酵母で生産された組換えヒトIL-2である。
【0040】
好ましい実施形態において、IL-2はアルデスロイキンである。アルデスロイキンはProleukin(登録商標)の有効成分である。アルデスロイキンは、成熟ヒトIL-2と比較して2つのアミノ酸改変、第一アミノ酸(アラニン)の欠失、および125番目のシステインのセリンによる置換を含む、成熟ヒトIL-2の非グリコシル化変異体である。
【0041】
本発明で用いられるIL-2は、好ましくは本質的に純粋な形態であって、例えば95%を超える純度、さらに好ましくは96、97、98、または99%純粋である。
【0042】
本発明で用いられるIL-2は、通例、タンパク質1mg当たり1.2~24百万国際単位(MIU)の比活性を有し、好ましくはタンパク質1mg当たり8~18MIUを有する。例えば、本発明の組成物中に存在するIL-2は、タンパク質1mg当たり12±3MIUの比活性を有し得る。
【0043】
例えば、IL-2がタンパク質1mg当たり約12MIUの比活性を有する場合、本発明の液体組成物は、1mL当たり約0.008~約1.67mgのIL-2を含んでよい。
【0044】
IL-2の生物学的活性は、好ましくはIL-2に増殖を左右されるHT-2細胞株(clone A5E、ATCC(登録商標)CRL-1841(商標))で行う細胞ベースのアッセイにより決定する。様々なインターロイキン2の試作品存在下における細胞増殖を、IL-2の国際標準品(INTERLEUKIN 2のWHO 2nd International Standard(ヒト、rDNA由来)NIBSC code:86/500)で記録した増殖と比較する。[3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム(分子内塩、MTS)を添加し、活性な生存細胞によりホルマザンに変換された後に、細胞増殖を測定する。その際、ホルマザン濃度を分光光度法により490nmで測定する。
【0045】
いくつかの実施形態において、インターロイキン2は単量体、凝集体、およびそれらの組み合わせの形態で、本発明の液体組成物中に存在している。
【0046】
本発明の液体組成物は、好ましくは、100,000~20,000,000IU/mLの濃度のインターロイキン2、緩衝化剤、界面活性剤、並びに抗酸化物質、モル浸透圧濃度調整剤、および保存剤から選択される、場合により存在する賦形剤と、水とから本質的に成る。
【0047】
本明細書で用いられる場合、「本質的に成る」は、列挙された構成成分が液体組成物の95%重量を超えることを表す。言い換えれば、インターロイキン2、緩衝化剤、界面活性剤、場合により存在する賦形剤および水は、好ましくは、液体組成物の総重量の95%重量超えて、例えば96%、97%、98%、99%、99.5%、または99.9%重量を超えて占める。
【0048】
水は、水溶液の担体である。通例、水は医薬品グレードである。
【0049】
界面活性剤は、水溶液中のインターロイキン2の溶解性および安定性を向上させるために存在している。好適な界面活性剤には、C8-C20アルキル硫酸塩、フォスファチジン酸などのある種のリン脂質、コール酸塩、デオキシコール酸塩、ラウロイルサルコシン酸の塩(サルコシルとして知られるナトリウム塩など)CHAPS、CHAPSO、Triton X100、Triton X114、NP40、オクチルグルコシド、例えば商品名Brij(商標)35として市販されているポリエチレングリコールドデシルエーテル、例えば商品名Brij(商標)58として市販されているポリエチレングリコールヘキサデシルエーテル、Tween20およびTween80などのモノラウリン酸ソルビタンのポリオキシエチレン誘導体、モノステアリン酸ソルビタンまたはモノラウリン酸ソルビタンなどのソルビタンエステル、およびそれらの組み合わせが包含されるが、これらに限定されない。
【0050】
いくつかの実施形態において、界面活性剤はアニオン性界面活性剤である。従って、界面活性剤はC8-C20アルキル硫酸塩、ラウロイルサルコシン酸塩、コール酸塩、デオキシコール酸塩およびこれらの組み合わせから選択され得る。
【0051】
本発明の好ましいアニオン性界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)またはドデシル硫酸リチウムなどのドデシル硫酸塩である。例えば、界面活性剤は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のドデシル硫酸塩から選択され得る。好ましい界面活性剤はSDSである。
【0052】
いかなる理論にも縛られることなく、本発明者は、水溶液中の界面活性剤の濃度と、IL-2に対する界面活性剤の重量比とが、長期間のインターロイキン2の安定性にいくらか影響を与え得ると信じている。いくつかの実施形態において、界面活性剤、特にSDSなどのドデシル硫酸塩は、0.01~0.5mg/mLの濃度で存在している。いかなる理論にも縛られることなく、本出願人は、界面活性剤、特にSDSなどのドデシル硫酸塩の濃度が0.05mg/mlより高いと、ミセルを形成することより水溶液中のIL2の安定性を向上させ得ると考えている。好ましい実施形態において、界面活性剤、好ましくはSDSは、0.05~5.0mg/ml、例えば0.06、0.07または0.08~5.0mg/mlの濃度で存在している。界面活性剤は、本発明の液体組成物において、0.07~0.4mg/mlの濃度で存在してもよい。
【0053】
さらなるまたは別の実施形態において、界面活性剤、好ましくはSDSの、インターロイキン2に対する重量比は、0.01~5、好ましくは0.04~5、例えば0.1~3である。例示を目的として、界面活性剤のインターロイキン2に対する重量比は、0.1~0.4、例えば0.15~0.30、または1.0~3.0、例えば1.5~2.5であってよい。
【0054】
緩衝化剤は、インターロイキン2の製剤化に適しており、かつ、注射、特に皮下注射に適していれば、どのようなタイプでもよい。緩衝化剤は、酸、酸の塩の形態、およびその組み合わせを指す。緩衝化剤には、リン酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンヒドロクロライド(TRIS.HCl)、4ーモルホリンプロパンスルホン酸(MOPS)、4ー(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-エタンスルホン酸(HEPES)、PIPES、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-2,2’,2”-ニトリロトリエタノール(BIS-TRIS)、TRIS-グリシン、ビシン、トリシン、TAPS、TAPSO、MES、クエン酸、ホウ酸、クエン酸/リン酸、炭酸水素、グルタル酸、コハク酸、それらの塩、およびそれらの組み合わせが包含される。
【0055】
本発明の液体製剤中の緩衝化剤の濃度は、通例、1mM~100mM、好ましくは5mM~25mM、例として5mM~15mMである。
【0056】
本発明の液体組成物のpHは、好ましくは7.0~8.0、例えばpH7.5±0.2である。いくつかの実施形態において、緩衝化剤は、約6.5~8.5、好ましくは7.0~8.0のpKaを有する。好ましくは、緩衝化剤はナトリウム、カルシウムまたはカリウムの酸性リン酸塩などの、リン酸塩である。例えば、緩衝化剤は、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、およびその組み合わせから選択される。言い換えれば、好ましいバッファーはリン酸バッファーである。
【0057】
好ましい実施形態において、本発明の液体医薬組成物は、皮下注射に好適なモル浸透圧濃度を有する。通例、本発明の組成物のモル浸透圧濃度は、少なくとも250mOsm、好ましくは少なくとも330mOsm、特に少なくとも360mOsmである。
【0058】
場合により存在する賦形剤は、保存剤、抗酸化物質およびそれらの組み合わせから選択され得る。保存剤には、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、ソルビン酸およびこれらの塩が包含されるが、これらに限定されない。抗酸化物質には、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、トコフェロールおよびこれらの組み合わせが包含される。通例、場合により存在する賦形剤は、本組成物の総重量の、5%重量未満、好ましくは3%、2%、1%、さらには0.1%重量未満を占める。
【0059】
場合により存在する賦形剤はまた、モル浸透圧濃度調整剤から選択されてもよい。モル浸透濃度調整剤は、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムなどの医薬上許容される無機塩類、並びにナトリウム有機酸塩またはカリウム有機酸塩などの医薬上許容される有機酸塩、例えばカリウムまたはナトリウムのクエン酸塩、アスパラギン酸塩、または酢酸塩を含む。モル浸透圧濃度調整剤は、通例本発明の組成物に、組成物のモル浸透圧濃度が少なくとも330mOsmまたは少なくとも360mOsmの値に調整され得るように、添加される。モル浸透圧濃度は、通例330mOsm~600mOsmである。NaClは、本発明の好ましいモル浸透圧濃度調整剤である。
【0060】
いくつかの実施形態において、液体医薬組成物は場合により存在する賦形剤を含まない。いくつかの特定の実施形態において、本発明の液体医薬組成物はモル浸透圧濃度調整剤を含有するが、保存剤または抗酸化剤(antioxidant agent)を含まない
【0061】
いくつかの実施形態において、本発明の液体医薬組成物は、100,000~20,000,000IU/mLの濃度のインターロイキン2、緩衝化剤、および界面活性剤と、水とから本質的に成る。他の実施形態において、本発明の液体医薬組成物は、100,000~20,000,000IU/mLの濃度のインターロイキン2、緩衝化剤、モル浸透圧濃度調整剤および界面活性剤と、水とから本質的に成る。
【0062】
上述のように、本発明の組成物を調製するために用いられるインターロイキン2は、好ましくは非凍結乾燥インターロイキン2である。その結果として、本発明の液体医薬組成物において、凍結乾燥安定剤の存在を必要としない。本明細書で用いられる場合、「凍結乾燥安定剤」または「フリーズドライ安定剤」は、タンパク質、特にインターロイキン2を凍結乾燥中に変性から保護する賦形剤を指す。凍結乾燥安定剤は、通例、マンニトール、スクロース、デキストロースおよびトレハロースなどの糖、アミノ酸、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン並びに血清アルブミンを包含する。
【0063】
いくつかの実施形態において、本液体組成物は凍結乾燥安定剤を含まない。
【0064】
いくつかの他の実施形態において、本発明の液体組成物は、マンニトールおよび/またはアルブミンを含まない。
【0065】
本発明者は、本発明の液体医薬組成物が長期間安定であることを実証した。液体医薬組成物は、2℃~8℃、好ましくは5℃で、かつ、不活性雰囲気下で、少なくとも6ヵ月間、顕著な生物学的活性の損失なく、すなわち、最大で25%、好ましくは最大で20%、15%、10%、または5%の生物学的活性の減少で、保存することができる。特に、6ヵ月間5℃での保存期間後において、水溶液中のインターロイキン2の生物学的活性の減少は、保存前の生物学的活性の、30%未満、好ましくは25%または20%未満、特に15%、10%、または5%未満である。本明細書で用いられる場合、「液体医薬組成物は安定である」は、本発明の液体医薬組成物が、5℃で、かつ、不活性雰囲気下で、少なくとも6ヵ月、さらには少なくとも12ヵ月の期間保存された場合に、安定であることを意味する。いくつかの実施形態において、液体医薬組成物は、2℃~8℃の温度で、かつ、不活性雰囲気下で、1~3年の期間保存された場合に、安定であり得る。
【0066】
特筆すべきは、たとえ、インターロイキン2が低濃度、例えば1mL当たり12MIU未満、例えば1mL当たり2~12MIUで存在しても、液体医薬組成物は安定である。少量のインターロイキン2を含む安定な液体医薬組成物は、自己投与に適したシリンジおよびペンなどの送達デバイスに包装するのに便利であるために、自己免疫疾患および炎症性疾患の長期治療における使用において、高い関心が示されている。
【0067】
いくつかの実施形態において、本発明の液体医薬組成物は、組成物1mL当たり0.1~12MIUの量で、例えば組成物1mL当たり0.1~10MIU、または2~12MIUの量で、インターロイキン2を含む。1mL当たり0.1~12MIUの量には、1mL当たり0.1~1MIU、1mL当たり1MIU~2MIU、1mL当たり2MIU~3MIU、1mL当たり3MIU~4MIU、1mL当たり4MIU~5MIU、1mL当たり5MIU~6MIU、1mL当たり6MIU~7MIU、1mL当たり7MIU~8MIU、1mL当たり8MIU~9MIU、1mL当たり9MIU~10MIU、1mL当たり10MIU~11MIU、1mL当たり11MIU~12MIUの量が包含される。好ましい実施形態において、本発明の液体医薬組成物は、インターロイキン2を、1mL当たり4MIU~10MIUの量で、例えば1mL当たり4MIU~6MIUの量で含む。
【0068】
いくつかの実施形態において、本発明の液体医薬組成物は、インターロイキン2を、組成物1mL当たり0.1~6MIUの量で、好ましくは1mL当たり0.5~5MIUの量で含む。例えば、本発明の組成物中のインターロイキン2の量は、1mL当たり0.5MIU、1mL当たり1.0MIU、1mL当たり1.5MIU、1mL当たり2.0MIU、1mL当たり2.5MIU、1mL当たり3.0MIU、1mL当たり3.5MIU、1mL当たり4.0MIU、1mL当たり4.5MIU、または1mL当たり5.0MIUであってよい。
【0069】
いくつかの特定の実施形態において、本発明の液体医薬組成物は、1mL当たり、1.0~3.0MIUのインターロイキン2を含む。
【0070】
例えば、該実施形態において、IL-2がタンパク質1mg当たり約12MIUの比活性を有する場合、1mL当たり1.0~3.0MIUのインターロイキン2は、1mL当たり約0.08mgのIL-2から、1mL当たり約0.24mgのIL-2に相当する。
【0071】
本発明のいくつかの他の実施形態において、液体医薬組成物は以下から本質的に成る:
-1mL当たり1.0~3.0MIUの量、または、1mL当たり2MIU~12MIU、例えば1mL当たり4MIU~10MIU、もしくは例えば1mL当たり4MIU~6MIUの量のインターロイキン2
-界面活性剤、好ましくはドデシル硫酸ナトリウム(SDS)
-好ましくはリン酸一ナトリウム(sodium monobasic phosphate)およびリン酸二ナトリウム(sodium dibasic phosphate)などのリン酸塩から選択される緩衝剤、
-好ましくは保存剤、抗酸化物質、およびモル浸透圧濃度調整剤から選択される、場合により存在する賦形剤、並びに
-水。
【0072】
上述のように、界面活性剤、特にSDSは、0.01~0.50mg/mLの量で存在してよい。好ましくは、SDSは0.05~0.5mg/mLの濃度で存在する。別のまたはさらなる実施形態において、界面活性剤、好ましくはSDSの、インターロイキン2に対する重量比は、0.04~5、さらに好ましくは0.1~3.0、例えば、2.2などの2.0~2.5、または、0.22などの0.10~0.30である。
【0073】
いくつかの実施形態において、液体医薬組成物は以下から本質的に成る:
-1mL当たり1.0~3.0MIUの量、または、1mL当たり2MIU~12MIU、例えば1mL当たり4MIU~10MIUの量のインターロイキン2
-約0.05~0.5mg/mLの濃度で存在するドデシル硫酸ナトリウム(SDS)
-リン酸バッファー
-水、および
-場合により、好ましくはNaClであるモル浸透圧濃度調整剤。
【0074】
いくつかの別のまたはさらなる実施形態において、本発明の液体組成物は、1つ以上の以下の特徴を特徴とする:
-液体組成物は患者への注射に好適である、
-液体組成物は、1mL当たり2.0~12MIUの量のインターロイキン2、界面活性剤、緩衝剤、モル浸透圧濃度調整剤および水から本質的に成る、
-界面活性剤は、0.1~0.4mg/mLの濃度で存在するSDSである、
-緩衝剤は、総濃度1mM~100mM、好ましくは5mM~25mMで存在するリン酸塩である、
-本組成物のpHは、7.0~8.0、好ましくはpH7.5±0.2である、
-インターロイキン2に対する界面活性剤の重量比は、0.1~3.0である、
-インターロイキン2は、非凍結乾燥インターロイキン2である、
-インターロイキン2は、タンパク質1mg当たり12±3MIUの比活性を有する、
-インターロイキン2は、アルデスロイキンである、
-医薬組成物は、マンニトールを含む凍結乾燥安定剤を含まない、
-モル浸透圧濃度調整剤は、NaClである、
-液体組成物のモル浸透圧濃度は、少なくとも330mOsm、好ましくは少なくとも360mOsmである、
-医薬組成物は、5℃の温度で、かつ、不活性雰囲気下で、少なくとも6ヵ月の期間保存された場合に安定である、
-液体医薬組成物は、シリンジもしくはペンなどの注射送達デバイスに包装されている、
-液体医薬組成物は、皮下投与に好適である。
【0075】
いくつかの実施形態において、液体組成物は上記の全ての特徴を特徴とする。
【0076】
本発明の液体医薬組成物を調製する方法
本発明はまた、患者への注射に好適な、上述のインターロイキン2の液体医薬組成物を調製する方法であって、
a.精製インターロイキン2の濃縮溶液を提供すること、および
b.該精製インターロイキン2の濃縮溶液を1つ以上の賦形剤を添加することにより製剤化し、インターロイキン2の該液体医薬組成物を得ること、
を含む方法に関する。
【0077】
通例、ステップa)の精製インターロイキン2の濃縮溶液は、担体としての水と、緩衝剤とを含む。インターロイキン2は、本濃縮溶液中において、20MIU/mLの濃度で、好ましくは少なくとも25MIUの濃度で、例えば1mL当たり25MIU~50MIUの濃度で存在する。本濃縮溶液は一般的に、pH7.0~8.0である。精製インターロイキン2の濃縮溶液は、IL-2生産の標準的プロセスにより得る。該標準的プロセスは、宿主培養物中でIL-2を組換え生産すること、並びに宿主培養物からインターロイキン2を回収かつ精製し、その結果精製インターロイキン2の濃縮溶液を得ることを含み得る。インターロイキン2の濃縮溶液を調製するために用いられるプロセスは、好ましくは凍結乾燥ステップを含まない。ある実施形態において、該プロセスはまた、液体担体をIL-2の固体組成物、例えばインターロイキン2の凍結乾燥組成物に添加する再構成ステップを含まない。
【0078】
いくつかの実施形態において、精製インターロイキン2の濃縮溶液は、
i.組換え大腸菌(E.coli)培養物中でインターロイキン2を生産すること、
ii.組換え大腸菌(E.coli)培養物中からインターロイキン2を回収し、かつ、インターロイキン2を精製して、精製インターロイキン2の濃縮溶液を得ること、
を含むプロセスにより得ることができる。
【0079】
大腸菌(E.coli)におけるインターロイキン2の生産は、標準的方法により行い得る。大腸菌(E.coli)培養物からのインターロイキン2の回収および精製はまた、標準的方法により行い得、大腸菌(E.coli)培養物の均質化および遠心分離、封入体の回収および可溶化、タンパク質のリフォールディングなどのステップ、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、マルチモーダルクロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、HPLC、またはヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーなどの1つ以上のクロマトグラフィーステップ、深層濾過、限外濾過、タンジェンシャル限外濾過、ナノ濾過、および逆浸透などの1つ以上の濾過ステップを含んでもよい。精製インターロイキン2の水溶液を、限外濾過により濃縮し、所望の濃度(例として、少なくとも15MIU/mLの濃度)のIl-2を得ることができる。精製に先立ち、細胞培養物から回収したIL-2は、リフォールディングステップに供し得る。
【0080】
あるいは、精製IL-2の濃縮溶液は、化学合成により得ることができる。例えば、該濃縮溶液を調製するプロセスは、ペプチド合成によるIL-2の生産と、化学的に生産された該IL-2の精製とにより、該濃縮溶液を得ることを含み得る。例えば、IL-2は固相または液相において、好ましくは固相法により、より短いペプチドのパラレル合成によって調製し得る。得られたペプチドは、続いて連結され、完全な配列のIL-2となる。得られたIL-2は、その後分取クロマトグラフィーなどの標準的方法により精製し、必要であればリフォールディングする。
【0081】
製剤化に先立ち、精製インターロイキン2の濃縮溶液は、滅菌および/またはウイルス不活性ステップに供し得る。通例、精製インターロイキン2の濃縮溶液は、無菌濾過に供し得る。精製インターロイキン2の濃縮溶液はまた、界面活性剤、または、抗酸化物質および保存剤などの他の賦形剤を含んでもよい。
【0082】
好ましくは、精製インターロイキン2の濃縮溶液は、少なくとも15MIU/mL、好ましくは少なくとも20MIU/mLの濃度のインターロイキン2、緩衝剤、水、および場合により界面活性剤から本質的に成る。好ましい緩衝化剤は、リン酸バッファーであり、好ましい界面活性剤はSDSである。
【0083】
精製インターロイキンの濃縮溶液の製剤化は、所望のインターロイキン2の液体医薬組成物を得るように行われる。出発の精製インターロイキン2の濃縮溶液および所望の最終的な医薬品の特徴に応じて、ステップb)は以下を含んでよい:
-該水溶液を希釈して、インターロイキン2の濃度を1mL当たり.1MIU~20MIUの範囲、例えば1mL当たり2MIU~12MIU、1mL当たり4MIU~10MIU、1mL当たり0.1MIU~10MIU、もしくは0.1MIU~6MIUに調整すること、並びに/または、
-界面活性剤を添加すること、および/もしくは、界面活性剤の濃度を調整すること、
-1つ以上の緩衝剤を添加して、7.0~8.0の間にpHを調整すること、および/もしくは水溶液中のバッファーのモル濃度を1mM~100mMの間、例えば5mM~25mMの値に調整すること、並びに/または、
-抗酸化物質、保存剤、モル浸透圧濃度調整剤、およびこれらの組み合わせから選択される、場合により存在する賦形剤を添加すること。
【0084】
本発明の方法はさらに、包装のステップc)を含んでよい。通例、本発明の液体医薬組成物は、注射のためのデバイス、例えば注射のためのシリンジもしくはペンに、アルゴン下または窒素下などの不活性雰囲気下または調整雰囲気(modified atmosphere)下で、包装し得る。あるいは、本液体医薬品は、不活性雰囲気下でバイアルまたはカートリッジ内に条件付けし得る。本発明の液体医薬組成物を充填したバイアルまたはカートリッジは、シリンジ、ニードルおよび自己注射器システムなどの注射のための手段と共に包装し得る。注射のための医薬組成物の包装は、好ましくは無菌状態で行う。
【0085】
本発明の方法はまた、例えば電子ビーム照射による、滅菌またはウイルス不活化ステップを含んでよい。該ステップは、使用する技術に応じて、包装の前または後に行い得る。例えば、本液体医薬組成物は包装の前に無菌濾過に、かつ/または包装の後に電子ビームに供し得る。
【0086】
いくつかの実施形態において、患者への注射に好適な上述のインターロイキン2の液体医薬組成物を調製する方法は、以下のステップを含む:
i.組換え宿主培養物、好ましくは大腸菌(E.coli)で、インターロイキン2を生産すること、
ii.組換え宿主培養物からインターロイキン2を回収し、かつ、インターロイキン2を精製して、精製インターロイキン2の濃縮溶液を得ること、
iii.精製インターロイキン2の濃縮溶液を製剤化してインターロイキン2の液体医薬組成物を得ること、並びに
iv.場合により、シリンジもしくはペンなどの注射のためのデバイスに、インターロイキン2の液体医薬組成物を包装すること。
【0087】
上述のように、本発明の方法は、インターロイキン2をフリーズドライするステップを含まない。
【0088】
ステップiVは、好ましくは無菌状態で行う。
【0089】
言うまでもなく、本発明はまた、当該方法により得ることができる液体医薬組成物のみならず、該液体医薬組成物を充填した注射デバイスにも関する。
【0090】
本発明の使用、治療方法、キットおよびデバイス
本発明はまた、対象者の自己免疫疾患、免疫関連疾患、または炎症性疾患の治療または予防における、本発明のインターロイキン2の液体医薬組成物の使用に関する。好ましい、対象者の自己免疫疾患、免疫関連疾患、または炎症性疾患は、Tregの機能不全に関連する疾患である。
【0091】
自己免疫疾患、免疫関連疾患、または炎症性疾患には、HCV関連血管炎、ぶどう膜炎、筋炎、1型糖尿病、全身性エリテマトーデス、全身性血管炎、乾癬、アレルギー、喘息、クローン病、多発性硬化症、関節リウマチ、粥状動脈硬化、自己免疫性甲状腺疾患、神経変性疾患、アルツハイマー病、移植片対宿主病、自然流産および移植片拒絶が含まれるが、これらに限定されない。好ましい自己免疫疾患および炎症性疾患(AIDs)は、1型糖尿病、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、および関節リウマチである。
【0092】
本発明の液体医薬組成物は、好ましくは患者に対して注射で、例えば、静脈内、筋肉内、皮内または皮下経路で投与する。好ましい投与経路は、皮下経路および皮内経路である。好ましい実施形態において、本発明の液体医薬組成物は皮下注射を目的としている。
【0093】
本発明の液体医薬組成物は、好ましくはインターロイキン2の範囲が0.1MIU~3MIUであるIl-2の投与量、例えば、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、または3.0MIUの投与量を送達するのに好適である。
【0094】
従って、本発明の液体医薬組成物は、自己免疫疾患、免疫関連疾患、または炎症性疾患の治療または予防における使用を目的としてよく、ここでは、該液体医薬組成物は患者に0.1MIU~3MIUのIl-2投与量を提供するために、皮下経路で投与する。
【0095】
本発明の液体医薬組成物は、頻回投与に好適である。通例、本発明の液体医薬組成物は、治療する疾病および得られる治療効果に応じて、月に1回、2週間に1回、1週間に1回、1週間に2回、あるいは毎日、投与し得る。本治療は、数日、数週間、数ヶ月および数年でさえ、続け得る。本治療は、本発明の液体医薬組成物を数日間毎日投与する開始の過程と、本発明の液体医薬組成物を低頻度で、例えば月に1回または2ヶ月に1回投与する維持の期間とを含み得る。
【0096】
いくつかの実施形態において、本発明の液体医薬組成物は、該組成物が少なくとも月に1回投与される、自己免疫疾患、免疫関連疾患、または炎症性疾患の治療または予防における使用を目的としている。
【0097】
いくつかのさらなるまたは別の実施形態において、本発明の液体医薬組成物は、自己免疫疾患、免疫関連疾患、または炎症性疾患の長期治療における使用を目的としている。
【0098】
本明細書で用いられる場合、「長期治療」は、少なくとも3ヶ月続く治療を指し、ここで本発明の液体医薬組成を少なくとも月に1回投与する。
【0099】
投与量、投与頻度、投与計画および治療期間は、治療または予防する疾患、疾患の重大性、患者の特性、特に患者の年齢、体重、体表面積(BSA)、一般的病状、病歴などに応じて異なる。
【0100】
本発明はまた、患者の、自己免疫疾患、免疫関連疾患、または炎症性疾患を治療または予防する方法であって、患者に本発明の液体医薬組成物を投与することを含む方法に関する。上述のように、液体医薬組成物を、好ましくは注射により、特に皮下経路により、0.1MIU~3.0MIUの範囲のIl-2投与量に相当する量で、投与する。
【0101】
本発明のさらなる対象は、本発明の液体医薬組成物を充填した、注射のための、好ましくは皮下注射のための、デバイスである。本デバイスは、例えばシリンジもしくはペンであってよい。好ましくは、本デバイスは本発明の液体医薬組成物の皮下投与を提供するのに好適である。本デバイスは、本発明の液体医薬組成物の単回投与または複数回投与を提供するのに適していてよい。本発明の液体医薬組成物の各投与量は、好ましくは、0.1MIU~3.0MIUの範囲のIL-2の量に相当する。通例、本発明のデバイスは、50μl~2mL、好ましくは100μl~1mLの範囲の量を送達するのに好適である。
【0102】
ある実施形態において、本発明のデバイスは単回使用を目的としている。本デバイスは、好ましくは使い捨てである。
【0103】
いくつかの他の実施形態において、本発明のデバイスは、例えばマルチドーズペンのように、複数回投与を送達するのに適している。
【0104】
ある実施形態において、本デバイスは、投与する液体医薬組成物の量を調整できる手段を含む。別の実施形態において、本デバイスは、一定量の液体医薬組成物を投与するのに好適である。
【0105】
好ましくは、デバイスは自己投与に好適である。
【0106】
いくつかの実施形態において、本発明のデバイスは、自己注射器と共に用い得る、プレフィルドシリンジ、またはプレフィルドカートリッジであり得る。自己注射器は、電子的または機械的であり得る。
【0107】
皮下投与および/または自己投与に好適なデバイスは、先行技術からよく知られている。複数のホルモン製品が、プレフィルドペンまたはプレフィルドシリンジの状態で、販売されている。例えば、インスリンペン(例えば商品名NovoPen(登録商標)として市販されているもの)またはインスリン皮下注射シリンジなどの、インスリン投与に用いるデバイスを挙げることができる。
【0108】
言うまでもなく、皮下注射ニードルは、注射を行うために、該シリンジもしくはペンに適合させることができる。
【0109】
さらなる例として、例えばRebif(登録商標)Rebidose(単回使用のプレフィルドペン)、複数回投与カートリッジで自己投与するように設計された電子自己注射デバイスであるRebiSmart(登録商標)、およびプレフィルドシリンジで自己投与するように設計された自己注射器であるRebiject II(登録商標)などの、Rebif(登録商標)の投与のために市販されている皮下送達システムを挙げることができる。
【0110】
本発明のデバイスがシリンジである場合、本シリンジは、好ましくは予め組み立てられたシリンジであり、これはニードルが既にシリンジに取り付けられていることを意味する。例えば、予め組み立てられたシリンジであるOrgalutran(登録商標)を挙げることができる。
【0111】
いくつかの別のまたはさらなる実施形態において、本シリンジは、自己注射器での使用に適している。
【0112】
好ましくは、本デバイスはマルチドーズペンまたはガラスシリンジ、例えば0.5~1.5mlシリンジである。本シリンジは、キャップ付きあるいは、キャップでカバーされたニードル付きであり得る。
【0113】
セルフインジェクションのための他のデバイスも用いられ得る。例えば、Crossjectにより市販されているZeneo(登録商標)などの、皮下投与に適した無針送達デバイスを挙げることができる。本システムは、噴射水による切断(cutting jet water)の原理:ガラスカプセルに密閉された液体ジェットを、非常に小さい直径の注射ノズルを通して、組織を貫通するのに十分である150メーター/秒の速度で押し出す、に基づいている。
【0114】
別の局面において、本発明は以下を含むキットに関する:
-本発明の液体医薬組成物を含むバイアルまたはカートリッジ、並びに
-シリンジ、ニードルおよび/または自己注射器デバイスなどの投与手段。
【0115】
以下の実施例は、例示のみを目的として提供されるものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0116】
安定性試験
本試験は、75%RHにて、5℃で36ヵ月間、および、30℃で12ヵ月間、IL2活性物質(アルデスロイキン)のいくつかの医薬組成物の安定性を評価することを目的としている。
【0117】
1.本発明の液体医薬組成物の調製
水溶液は、室温にて、層流フード下の無菌状態で、無菌IL2活性物質(2mg/mLのIL2に相当する25MIU/mlを含む濃縮溶液)から調製する。下記の処方表に従って、IL2活性物質を希釈し、製剤化する。各組成物(1ml)を、タイプ1シリコン処理ガラスバイアルに窒素雰囲気下で封入し、Flurotecブロモブチルストッパーで栓をした。
【表1】
【0118】
2.安定性試験
調製した組成物を、75%RHにて、5℃または30℃で、36ヵ月間、モニターチャンバー内で保存する。各組成物(1-10)の安定性について、6ヵ月で評価した。さらなる安定性の解析を、36ヵ月間の保存まで行う。
【0119】
安定性を、バリデーション済みの分析方法により評価し、特に逆相HPLC(RP-HPLC)により評価してIL-2物質の純度と、分解産物の潜在的形成とを決定し、かつ、生物学的活性アッセイにより評価した。RP-HPLCは、以下の条件で行った:
-固定相:PhenomenexのC4カラム、Jupiter C4 5μm、300Å、4.6×250mm。
-グラジエント:溶出は、下記の通り、バッファーA(超純水に溶解した0.1%ギ酸)中の、バッファーB(アセトニトリルに溶解した0.1%ギ酸)の、30分間のグラジエントで行う:
【表2】
【0120】
-IL-2の保持時間は、14.0-14.6分である。
【0121】
精度管理として、最初に1MIU/mlのIL2活性物質を注入する。
【0122】
IL-2の生物学的活性を、好ましくはIL-2に成長が左右されるHT-2細胞株(clone A5E、ATCC(登録商標)CRL-1841(商標))で行われる細胞ベースのアッセイにより決定する。様々なインターロイキン2の試作品存在下における細胞増殖を、IL-2の国際標準品(INTERLEUKIN 2のWHO 2nd International Standard(ヒト、rDNA由来)NIBSC code:86/500)で記録した増殖と比較する。[3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム(分子内塩、MTS)を添加し、活性な生存細胞によりホルマザンに変換された後に、細胞増殖を測定する。その際、ホルマザン濃度を分光光度法により490nmで測定する。本濃度は、培養物中に存在する生存細胞の数に直接比例している。
【0123】
結果
IL-2物質の純度および生物学的活性を、各製剤において、各保存条件の6ヵ月目に評価した。
【0124】
【0125】
製剤3および6を除いて、試験した全ての製剤が、5℃での6ヵ月保存後に良好な安定性を示した。製剤3および6は、5℃および30℃での3ヵ月保存後にはすでに、IL-2の大量の分解を示した。30℃での3ヵ月保存後に、製剤3および6の残存する生物学的活性のパーセンテージは、それぞれ約12%および46%であった。この安定性の低さは、水溶液中のSDS濃度が低いことによる可能性がある。水溶液中のIL2の安定性を向上させるためには、少なくとも0.05mg/mlのSDS濃度が必要となりうる。その点で、0.88mg/mlのSDSを含有する製剤7は、5℃および30℃において、良好な安定性を示した。
【0126】
特筆すべきは、5~10MIU/mlのIL2を含む製剤7、8および10が、良好な安定性プロファイルを示したことである。製剤8で、5℃および30℃での6ヵ月保存後の純度および生物学的活性の点における最良の結果が得られた。製剤8は10MIU/mlのIL2と、0.176mg/mlのSDSを含有し、SDS/IL2重量比は0.22である。
【0127】
製剤1および4は、マンニトールを含有する、比較上の製剤である。製剤1および4は、純度および生物学的活性の点において、マンニトールを含まない製剤2および5と同様の安定性を示した。従って、マンニトールの存在は、保存中のIL2の安定性向上に必要ではない。