(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】スチレンポリマーの発泡
(51)【国際特許分類】
C08J 9/14 20060101AFI20220311BHJP
C08L 25/04 20060101ALI20220311BHJP
C08K 5/02 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
C08J9/14 CET
C08L25/04
C08K5/02
(21)【出願番号】P 2018558276
(86)(22)【出願日】2017-05-04
(86)【国際出願番号】 US2017031052
(87)【国際公開番号】W WO2017192846
(87)【国際公開日】2017-11-09
【審査請求日】2020-03-11
(32)【優先日】2016-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アーネスト バイロン ワイソン
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ アンソニー クレアッツォ
(72)【発明者】
【氏名】ブルース ピー.ヒッチェンズ
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンティノス コントマリス
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0017111(US,A1)
【文献】特表2004-512406(JP,A)
【文献】特表2010-522808(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02706086(EP,A1)
【文献】特表2013-514450(JP,A)
【文献】特表2009-513814(JP,A)
【文献】特表2009-513815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
B29C 44/00-44/60,67/20
C08L
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレンを含む熱可塑性ポリマーを発泡する方法であって、前記方法は、前記熱可塑性ポリマー、ブロックコポリマー、並びにZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及びE-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンのうちの少なくとも1つを含む発泡剤を含む溶融発泡可能組成物を形成する工程と、前記発泡可能組成物を膨張させて、その結果として、発泡した熱可塑性ポリマーを得る工程と、を含
み、前記ブロックコポリマーが、スチレンと、ブタジエン、ブチレン、アクリロニトリル、エチレン、及びイソプレンのうちの少なくとも1つとの、ジブロック又はトリブロックコポリマーである、方法。
【請求項2】
前記溶融発泡可能組成物は押出成形機内にあり、前記膨張させる工程は、前記組成物を押出成形することの結果である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物中に存在する前記ブロックコポリマーの量が、前記発泡可能組成物の重量に基づいて5~15重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及びE-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンが、8重量%以下の重量増加により示されるとおり、溶融状態の前記熱可塑性ポリマーに高度に不溶性である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記熱可塑性ポリマーが、その少なくとも60mol%がスチレンである、重合したモノマー単位を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記発泡剤が、Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及びE-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンのうちの少なくとも1つと、ジメチルエーテル及びトランス-1,2-ジクロロエチレンからなる群から選択される共発泡剤とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ポリスチレン、ポリスチレンコポリマー、及びポリスチレンと他の熱可塑性ポリマーとのブレンドからなる群から選択される熱可塑性材料、ブロックコポリマー、並びにZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及びE-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンのうちの少なくとも1つを含む発泡剤を含むポリマーマトリックスを含み、平均セルサイズを有する複数のセルを画定し、
前記ブロックコポリマーが、スチレンと、ブタジエン、ブチレン、アクリロニトリル、エチレン、及びイソプレンのうちの少なくとも1つとの、ジブロック又はトリブロックコポリマーである、発泡製品。
【請求項8】
前記熱可塑性材料がポリスチレンである、
請求項7に記載の発泡製品。
【請求項9】
前記発泡製品中に存在する前記ブロックコポリマーの量が、前記発泡製品の重量に基づいて5~15重量%である、
請求項7に記載の発泡製品。
【請求項10】
前記発泡剤が、前記発泡製品の10重量%~25重量%である、
請求項7に記載の発泡製品。
【請求項11】
前記発泡剤が、Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを含む、
請求項10に記載の発泡製品。
【請求項12】
前記発泡剤が、Z-異性体とE-異性体との混合物を含み、Z-異性体が前記発泡剤の50%超を構成する、
請求項11に記載の発泡製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡剤がHFO-Z-1336mzzを含む、スチレンポリマーの発泡に関する。
【背景技術】
【0002】
国際特許公開第2008/1118627号は、ヒドロフルオロカーボン発泡剤が低いODP(酸素枯渇係数)と低いGWP(地球温暖化係数)の両方を有することに対する所望を開示する。この公報は、ODPが0で、かつGWPが50未満であり、またアルケニル芳香族ポリマー、とりわけポリスチレンに溶解性を有する、いくつかのこのような発泡剤を開示する。HFO-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンは、このようなODP及びGWP特徴を示す、開示発泡剤の1つである。HFO-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンは、2種の異性体形態、すなわちZ(シス)-異性体及びE(トランス)-異性体で存在することが知られている。
【0003】
国際特許公開第2007/084665号は、発泡される熱可塑性樹脂と機能的に適合性がある、第1のブロックと、発泡剤と機能的に適合性がある第2のブロックと、を有する、ブロックコポリマー相溶剤を開示する。この広報の5頁の第2の全段落に、これらの適合性態様は、発泡される樹脂となるポリスチレン、すなわち樹脂との適合性のためのポリスチレンを含有するブロックコポリマーと、HFC-134a発泡剤との適合性のためのポリ(ブチルアクリレート)と、に関して説明されている。HFC-134a発泡剤との適合性は、HFC-134aに可溶であるアクリレートポリマーに関して更に説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際特許公開第2008/1118627号
【文献】国際特許公開第2007/084665号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一部として、Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンとE-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンとのどちらも、溶融ポリスチレンに高度に不溶性であることが発見された。Z-及びE-異性体がブロックコポリマーに高度に不溶性である場合でさえも、ブロックコポリマーがこれらの異性体の溶融ポリスチレンへの溶解度を増加させることも発見された。
【0006】
溶融ポリスチレンへのZ-及びE-異性体単独の不溶性は、溶融ポリスチレンへの異性体の吸収として表現することができる。溶融ポリスチレンによる異性体のいずれの吸収も、ポリスチレンによる重量増加として測定される。以下に記載されているとおり、ポリスチレン単独の元の重量に基づいて、8重量%以下及びそれよりかなり少ない量となるその重量増加によって示されるように、非常に少量の異性体しか溶融ポリスチレンによって吸収されない。
【0007】
これらの発見は本発明で具現化されており、これらの発見は、一実施形態では、ポリスチレンを含む熱可塑性ポリマーを発泡する方法として記載することができ、前記方法は、前記熱可塑性ポリマー、ブロックコポリマー、並びにZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及びE-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンのうちの少なくとも1つを含む発泡剤を含む溶融発泡可能組成物を形成する工程と、前記発泡可能組成物を膨張させて、その結果として、発泡した熱可塑性ポリマーを得る工程と、を含む。
【0008】
本溶融発泡可能組成物は、好ましくは、押出成型機中にあり、溶融発泡可能組成物の膨張は、前記組成物の押出成形の結果である。したがって、本発明の方法は好ましい実施形態によって記載することもでき、本方法は、ポリスチレンを含む溶融熱可塑性ポリマー、ブロックコポリマー、並びにZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及びE-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンのうちの少なくとも1つを含む発泡剤を含む溶融発泡可能組成物を押出成形して、その結果として、発泡した熱可塑性ポリマーを得る工程を含む。
【0009】
これらの両方の実施形態では、好ましい態様は、以下のとおりである。
ブロックコポリマーは非極性である。非極性とは、ブロックコポリマーの極性が、3.3×10-30Cm以下(1.0D(デバイ))以下であることを意味する。これは、極性である、国際特許公開第2007/084665号のポリ(ブチルアクリレート)含有ブロックコポリマーとは対照的である。極性とは、ブロックコポリマーの極性が、少なくとも6.7×10-30Cm(少なくとも2.0D(デバイ))であることを意味する。発泡剤HFC-134aも、6.7×10-30Cmより大きい(2.0Dより大きい)極性を示すと言う点で、やはり極性である。対照的に、例えばE-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンは、3.3×10-30Cm見満(1.0D未満)の極性を示すという点で非極性である。
【0010】
溶融熱可塑性ポリマー組成物中に存在するブロックコポリマーの量は、発泡可能組成物の重量に基づいて、5~15重量%であり、これは、前記熱可塑性ポリマー、Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び/又はE-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン発泡剤、並びにブロックコポリマー、並びに添加物の重量を含む。
【0011】
溶融熱可塑性ポリマーへのZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及びE-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン異性体の不溶性は、発泡可能組成物の重量に基づいて、溶融熱可塑性ポリマー単独へのこれらの異性体の吸収(重量増加)が、Z-異性体の場合、6.0重量%以下であり、E-異性体の場合、3重量%以下であるようなものである。
【0012】
ブロックコポリマーは、Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及びE-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンに不溶性である。Z-及びE-異性体は、以下に更に記載されているとおり、ブロックコポリマーに高度に不溶性である。
【0013】
熱可塑性ポリマーは、その少なくとも60mol%が、スチレンの重合に由来する、重合した単位を含む。
【0014】
これらの好ましい態様は、本発明の実施において、個々に、又は任意の組合せで使用されてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明により発泡される熱可塑性ポリマーは、ポリスチレンを含む。ポリスチレンはスチレンホモポリマーとすることができ、又はスチレン以外の共重合したモノマーを含有することができる。本熱可塑性ポリマーは、ポリスチレンと他の熱可塑性ポリマーとのブレンドとすることもできる。他の熱可塑性ポリマーは、スチレンと、スチレン以外のモノマーとのコポリマーとすることもできる。スチレン以外の好ましいモノマーは、アクリロニトリルである。好ましくは、ポリスチレンを含む熱可塑性ポリマー中に存在するいずれのコポリマーも、ランダム又は交互コポリマーであり、ブロックコポリマーではない。
【0016】
発泡される熱可塑性ポリマーがポリスチレンであっても、又はポリスチレンと他の熱可塑性ポリマーとのブレンドであっても、スチレンが、好ましくは、発泡される熱可塑性ポリマー中の主要な重合したモノマー(単位)である。より好ましくは、スチレンの重合した単位は、発泡される熱可塑性ポリマーを構成する重合したモノマー単位の、少なくとも70mol%、又は少なくとも80mol%、又は少なくとも90mol%、又は少なくとも100mol%を構成する。
【0017】
熱可塑性ポリマーがスチレンコポリマーを含有するとき、スチレンと共重合している他のモノマーの量は、コポリマーのスチレン含有量が、コポリマーを構成する合計のmol(100%)に基づいて、コポリマーの少なくとも60mol%、好ましくはコポリマーの少なくとも70mol%又は少なくとも80mol%又は少なくとも90mol%となる量である。スチレンコポリマーが熱可塑性ポリマー中の唯一のスチレン含有ポリマーであろうが、又はスチレンホモポリマー又は他のスチレンコポリマーなどの、他の熱可塑性ポリマーとのブレンドであろうが、上記のことが当てはまる。
【0018】
好ましくは、発泡される熱可塑性ポリマーは、全体がポリスチレンホモポリマーである。発泡される熱可塑性ポリマーが、ポリスチレンと上記の他の熱可塑性ポリマーとのブレンドであるとき、このブレンドのポリスチレン構成成分は、好ましくは、ポリスチレンと他の熱可塑性ポリマーとの組合せ重量の少なくとも80重量%を構成するスチレンホモポリマーである。
【0019】
発泡される熱可塑性ポリマーの分子量は、発泡体用途の要件に必要な強度をもたらすのに十分に大きい。好ましくは、この熱可塑性ポリマーのヤング率は、少なくとも15MPaであるか、又はこのポリマーは、200℃において、及び溶融ポリマーに対して5kgの重りを使用して、ASTM D1238に準拠して決定すると、1~50g/10分のメルトフローレートを示す。
【0020】
発明において使用されるブロックコポリマーは、ポリマー鎖中に、異なるホモポリマーの2種以上のセグメントから形成されるポリマー鎖を含む。異なるホモポリマーは、2種の異なるホモポリマー(ジブロック)、3種の異なるホモポリマー(トリブロック)、又は3種超(マルチブロック)の異なるホモポリマーセグメントとすることができる。好ましくは、ホモポリマーセグメントの1つは、ポリスチレンである。好ましくは、他のホモポリマーセグメントは、ブタジエン、ブチレン、アクリロニトリル、エチレン、及びイソプレンのうちの少なくとも1つである。非極性である特性を示すため、好ましくは、ブロックコポリマーはポリ(ブチルアクリレート)セグメントを含まない。
【0021】
別の実施形態では、組成物中のブロックコポリマーの量は、7~14重量%である。更に別の実施形態では、組成物中のブロックコポリマーの量は、7~13重量%である。ブロックコポリマーの量が13重量%より増加すると、発泡した組成物の特性が損なわれ始め、これは、発泡可能組成物中に、ブロックコポリマーが15重量%を超えないのが理由である。ブロックコポリマーのこれらの量は、発泡可能組成物の総重量に基づいている。
【0022】
Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及びE-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンのうちの少なくとも1つを含む発泡剤はまた、ポリスチレンを発泡させるために、発泡剤中に使用されることが多い、タルク及び/又は共発泡剤などの発泡セル核化剤などの追加の成分も含むことができる。共発泡剤が存在するとき、発泡剤のZ-異性体及び/又はE-異性体の含有量は、発泡剤の総重量の、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、又は少なくとも70重量%、又は80重量%、又は少なくとも90重量%、又は少なくとも100重量%である。E-異性体は溶融ポリスチレンに溶解度が低いので、E-異性体発泡剤と共に共発泡剤を使用することが好ましい。共発泡剤は、溶融ポリスチレンにより大きな溶解度を有するべきである。共発泡剤の例としては、ジメチルエーテル及びジクロロエチレンが挙げられる。
【0023】
発泡可能組成物中のZ-異性体、E-異性体、又はZ-異性体とE-異性体との組合せの量は、発泡時の望ましい密度に依存することになる。好ましくは、その量は、少なくとも30kg/m3の発泡密度を得るのに有効である。一般に、好ましくは、Zー異性体、E-異性体、又はそれらの組合せである発泡剤の量は、発泡可能組成物の重量に基づいて、10~25重量%になることになる。
【0024】
本発明の方法は、溶融発泡可能組成物を形成し、かつ溶融発泡可能組成物を押出成形して発泡製品を形成するために、好ましくは押出成型機を使用して実施される。ポリスチレンを含む熱可塑性ポリマーは、押出成型機へのフィードを形成する。発泡剤は、好ましくは、供給と押出成型機の押し出しの終わりとの中間の場所において押出成型機の中へと、通常、押出スクリューがその長さに沿ってフィードを押出成型機へと進ませるにつれて生成される、溶融発泡可能組成物の中へと供給される。溶融組成物への他の添加物は、都合がよく、また添加物の状態によって決定づけられてもよいところで加えられる。例えば、固体添加物を、押出成型機のフィード端部に、場合によってはポリマーフィードとの混合物として微粒子形態で、押出成型機に都合よく添加することができる。押出成型機内の溶融組成物はダイを通して押出成形され、それによって発泡可能組成物を発泡製品へと膨張させることができる。シート、板、ロッド又は管などの形態である可能性がある発泡製品は、次に、冷却される。
【0025】
本発明で使用するとき、用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、又はこれらの他の任意の変化形は、非排他的な包含を網羅することを意図する。例えば、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、又は装置は、これらの要素に必ずしも限定されるものではなく、そのようなプロセス、方法、物品、又は装置に対して明示的に記載されていない、又はこれらに固有のものではない、他の要素も含んでもよい。
【0026】
移行句「からなる」は、特定されていないいかなる要素、工程、又は成分も除外する。特許請求の範囲における場合には、材料に通常付随する不純物を除き、このような句は、列挙された材料以外の材料を含むことに対して特許請求の範囲を限ることになる。語句「からなる」がプリアンブルの直後ではなく請求項の本文の節内で現れるとき、この語句はその節の中に示される要素のみを制限するものであり、他の要素が特許請求の範囲全体から除外されるわけではない。移行句「から本質的になる」は、これらの追加的に含まれる材料、工程、特徴、構成成分、又は要素が、特許請求される発明の基本的及び新規の特徴(複数可)、特に本発明のプロセスのいずれかの所望の結果を達成するための作用機序に実質的に影響を及ぼさないことを条件に、文字とおり開示されているものに加えて、材料、工程、特徴、構成成分、又は要素を含む、組成物、方法を定義するために使用される。用語「から本質的になる」は、「含む」と「からなる」との間の中間の立場を占める。
【0027】
出願人らが、発明又はその一部分を、「含む」などの非限定的な用語で定義していた場合、(特に明記しないかぎり)その記載は、用語「から本質的になる」又は「からなる」を用いる発明も含むと解釈すべきであることは容易に理解されるべきである。
【実施例】
【0028】
溶融ポリスチレン中のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(Z-1336mzz)及びE-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(E-1336mzz)の溶解度は、以下の手順により決定する。ポリスチレン78グラムを125ccのステンレス鋼製Parr(著作権)反応器に装填する。反応器を秤量して、入口/出口の配管に装着し、油浴に浸ける。HIP圧力発生器(High Pressure Equipment Companyにより作製された)を使用して、排気後に、反応器の中へと過剰量の発泡剤を装填する。油浴を、ポリスチレンが溶融する温度である最終温度(179℃)まで約90分で加熱し、30分間、この温度を維持する。最終圧力を記録し、この圧力は、発泡プロセスに使用したときに押出成型機中で遭遇する圧力に類似である。Parr(著作権)反応器を油浴から取り出し、室温まで冷却する。過剰(ポリスチレンに溶解しない)の発泡剤を排気(E-異性体)/排出(Z-異性体)した後、反応器(内部に再固化したポリスチレンを有する)を秤量する。重量増加を、以下の式に従って、溶解度として記録する:
溶解度(重量%)=(重量増加÷78)×100
【0029】
溶融ポリスチレンにブロックコポリマーを加えたものへのZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び/又はE-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの組合せの溶解度は、ブロックコポリマーが存在することを除いて、同じ手順により決定される。
【0030】
E-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び共発泡剤の組合せの溶解度は、共発泡剤が反応器中に存在することを除いて、同一の手順により決定される。
【0031】
重量増加が低いことは、溶融ポリスチレンに異性体が不溶性であることを示す。本明細書において報告される溶融ポリスチレンによる重量(重量%)増加は、ポリスチレンの元の重量に基づく。
【0032】
ブロックコポリマー中のZ-異性体又はE-異性体の溶解度は、ブロックコポリマーによる異性体の吸収(重量増加)を測定することにより決定される。この測定の手順は、以下のとおりである:ブロックコポリマー10.00グラムを蓋付きの100ccガラス製瓶に加える。瓶、蓋及び内容物を秤量し、次に、20.00gの発泡剤(Z異性体又はE異性体)を加え、十分に混合し、以下に記載する条件下で24時間、静置する。発泡剤は液体状態にある。この時間の後に、過剰の剤を排気(E-異性体)/排出(Z-異性体)した後、コポリマー固体をろ過して秤量する。重量増加は、以下の式に従って、溶解度として記録される:
溶解度(重量%)=(重量増加÷10)×100。
【0033】
重量増加が低いことは、ブロックコポリマーに異性体が不溶性であることを示す。
【0034】
33℃で沸騰(1気圧)するZ-異性体の場合、浸漬は、周囲温度(15~25℃)で行う。7.5℃で沸騰(1気圧)するE-異性体の場合、浸漬は、0℃で行う。
【0035】
ブロックコポリマーによる異性体の吸収に関して報告された重量(湿潤%)増加(ブロックコポリマー中の溶解度)は、上記のポリスチレンを含む熱可塑性ポリマーにも適用可能である。
【0036】
実施例1-ブロックコポリマー中の1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの溶解度
以下のブロックコポリマーを試験した:
1.Sigma-Aldrich Co.LLCからSA432431として入手可能なポリスチレン/エチレンran-ブチレン
2.Kraton Polymers LLCからD1171Pとして入手可能なポリスチレン/イソプレン/ブチレン(ポリスチレン含有量は19重量%)
3.Kraton Polymers LLCからFG1901として入手可能なポリスチレン/イソプレン/ブチレン(ポリスチレン含有量は30重量%)
これらのコポリマーはすべて、非極性であり、3.3×10-30Cm未満(1.0D未満)の極性を示す。
【0037】
粉末形態のこれらのコポリマーを、上記の手順に従い、液体Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルロ(hexafluro)-2-ブテンに浸漬した。浸漬後、コポリマーはすべて、表1に報告される重量増加を示した。
【0038】
【0039】
最大重量増加は、3.2重量%(計算:(0.32/10)×100)であった。重量損失がなかったという事実は、Z-異性体にブロックコポリマーが完全に不溶性であることを示す。同じことが、E-異性体についても言える。好ましくは、本発明の実施において、E-異性体又はZ-異性体のどちらか一方による重量増加は、ブロックコポリマー単独の重量の5重量%以下となることになる。
【0040】
実施例2-溶融スチレンポリマー中の溶解度
溶融ポリスチレン中のZ-1336mzzの溶解度は、上記の手順に従い決定され、5.7重量%であることがわかった。
【0041】
溶融ポリスチレン中のE-1336mzzの溶解度は、上記の手順に従い決定され、2.4重量%であることがわかった。ブロックコポリマーは、溶解度決定において存在しない。溶融ポリスチレン中のこれらの異性体の溶解度は、実質的に圧力の影響を受けない。例えば、溶融ポリスチレン中の溶解度は、5.5MPa(800psiゲージ圧)における2.1重量%から、17.9MPa(2600psiゲージ圧)における2.6重量%に増加する。
【0042】
10重量%のブロックコポリマー2を、溶融して溶融ポリスチレンを形成する組成物に添加すると、表2に報告されている溶解度結果をもたらす。この10重量%(w%)の添加は、発泡可能組成物の重量に基づく。
【0043】
【0044】
溶融ポリスチレン中のブロックコポリマーの存在により、E-異性体及びZ-異性体の溶解度が少なくとも33%増加する。組成物の加熱中に存在する圧力は、17.76MPa~18.9MPa(2576psia~2770psia)の範囲となる。
【0045】
コポリマー2が、同量のコポリマー1により置きかえられ、圧力が17.4MPa(2544psia)であるとき、Z-異性体の結果として得られる溶解度は6.8重量%である。
【0046】
コポリマー2が、同量のコポリマー3により置きかえられ、圧力が、17.2MPa(2521psia)であるとき、Z-異性体の結果として得られる溶解度は6.8重量%である。
【0047】
実施例3-共発泡剤の添加
ジメチルエーテル(DME)が、この実施例に使用した共発泡剤である。DMEは、178℃及び9.1MPa(1325psia)において溶融ポリスチレンに16.9重量%可溶である。この溶解度とE-1336mzzの溶解度(2.4重量%)の相加平均は、9.7重量%である。E-異性体とDMEの50:50重量混合物の実際の溶解度は、11.9重量%であり、これは、混合物から予測されたものよりも大きい。10MPa(1500psia)における、E-133mzzとDMEとの重量比で87.5:12.5の混合物(mixiture)の溶解度は、純粋な構成成分の重量平均溶解度である4.3重量%と比べて、6.2重量%であった。
【0048】
未希釈のZ-1336mzz、未希釈のジメチルエーテル(DME)、及びポリスチレンホモポリマー中のZ-1336mzz/DME(87.5/12.5重量%)ブレンド(約5.0のメルトフローインデックスを有する)の溶解度を、上記の方法に従い、179℃、10MPa(1,500psia)で測定した。未希釈のHFO-1336mzz(Z)及び未希釈のDMEの溶解度は、この測定に基づくと、それぞれ、5.5重量%及び17.9重量%であった。その未希釈の構成成分の溶解度の重量分率重量平均として予測されるHFO-1336mzz(Z)/DME(87.5/12.5重量%)ブレンドの溶解度は、7.1重量%になるものとされる。驚くべきことに、この測定により、179℃及び10MPa(1,500psia)におけるHFO-1336mzz(Z)/DME(87.5/12.5重量%)ブレンドの溶解度は、10.2重量%であり、すなわち予測よりもかなり大きいことが明らかとなった。
【0049】
実施例4-ブロックコポリマーとのブレンドの溶解度
ポリスチレンホモポリマー(MFI5)中、及び10重量%(ポリスチレン(polystryrene)/イソプレン(iosoprene)/ブチレン)ブロックコポリマー(ブロックコポリマー3)を含むポリスチレン中、179℃の温度、21MPa(3000psia)において、Z-1336mzz、及びZ-1336mzzとDME(87.5/12.5重量%)とのブレンドの溶解度を上記のとおり決定した。結果は、以下の表3にまとめられている。
【0050】
【0051】
実施例5-ポリスチレンの発泡
発泡される組成物は、二軸スクリュー押出成型機で形成され、発泡は、組成物が押出成形されるとすぐに生じる。
【0052】
押出成型機は、押出成型機シェルを、溶融ゾーンを通して200℃に加熱し、次いで、シェル温度を、200℃から180℃まで、次に180℃から160℃まで、160℃~140℃まで、次に140℃~120℃まで、次に120℃~110℃まで、そして最後に直径が0.79cm(5/16インチ)の円形オリフィスにおいて110℃から100℃まで段階的に低下させるヒータを装備した、30mmの二軸スクリュー(ZSK-30)押出成型機である。使用したポリスチレンは、6g/10分(200C及び5kgの重量において、ASTM D1238に準拠)のメルトフローレートを有し、Nova ChemicalsからStyrosolution(著作権)1600として入手可能である。発泡剤は、以下に記載されており、ポリスチレンが溶融している押出成型機内のゾーンの中へと供給される。供給速度は、押出成型機内で所望される組成物、すなわち15重量%の発泡剤に対応する。ブロックコポリマーは、上記のコポリマー2であり、ポリスチレンとの混合物として、押出成型機に供給される。ブロックコポリマーの量は、発泡剤の重量を含む押出成型機内の組成物の総重量に基づいて10重量%である。混合物には、発泡体のための核化剤として、発泡剤を含む押出成型機内の組成物の総重量に基づいて0.5重量%のタルクが含まれる。押出成形オリフィスにおける押出成型機内の圧力は、9.3MPa(1355psia)である。組成物の発泡は、組成物が押出成型機オリフィスを出る際に、押出成型機内の圧力から組成物が解放されるとすぐに生じる。195kg/m3(6.5lb/ft3)の密度を有する滑らかな発泡押出物が得られる。
【0053】
押出成形発泡の結果は、以下のとおりである:発泡剤がZ-異性体であるとき、ブロックコポリマーが発泡可能組成物中に存在する場合、滑らかな発泡押出物が得られる。発泡剤がE-異性体/トランス-1,2-ジクロロ-エチレンの重量比が70:30の混合物であるとき、同じことが当てはまる。発泡押出物の滑らかさは、発泡可能組成物中のブロックコポリマーの存在によって実現される、発泡剤の溶解度の改善を示す。対照的に、ブロックコポリマーが発泡可能組成物に添加されていない(発泡可能組成物中に存在しない)とき、押出成形された発泡押出物の表面は粗い。ブロックコポリマー1及び3をコポリマー2と置きかえると、同様の結果が得られる。