(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】定量的化学交換飽和移動(qCEST)を用いた非侵襲性のpH依存的イメージング
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20220311BHJP
G01N 24/08 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
A61B5/055 311
A61B5/055 382
G01N24/08 510D
G01N24/08 510Y
(21)【出願番号】P 2018564357
(86)(22)【出願日】2017-06-08
(86)【国際出願番号】 US2017036617
(87)【国際公開番号】W WO2017214439
(87)【国際公開日】2017-12-14
【審査請求日】2020-04-22
(32)【優先日】2016-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514135801
【氏名又は名称】シーダーズ-サイナイ メディカル センター
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ガジット ダン
(72)【発明者】
【氏名】リ デビアオ
(72)【発明者】
【氏名】ペレド ガディ
(72)【発明者】
【氏名】ガジット ズルマ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ ツェンウェイ
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0081578(US,A1)
【文献】特表2009-508970(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0323632(US,A1)
【文献】特開2015-144825(JP,A)
【文献】特開2007-152128(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0054299(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00 -24/14
G01R 33/20 -33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における状態を検査するための方法であって、前記方法が、
磁気共鳴イメージング(MRI)スキャナーによって対象の身体の領域を画像化する工程であって、前記領域が定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスを用いて画像化される、工程;
前記画像化された領域内で1以上の生理的なバイオマーカーを測定する工程であって、前記生理的なバイオマーカーが溶質プールと水プールとの間での不安定プロトン交換速度(k
sw)を含む、工程;及び
前記対象における状態を検査するために前記対象由来の不安定プロトン交換速度を参照値と比較する工程であって、
前記参照値と比較した前記対象由来の
上昇した不安定プロトン交換速度が
、前記対象における1以上の神経原性因子の上方調節と相関する、工程
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記参照値と比較した前記対象由来の上昇した不安定プロトン交換速度が低いpH値と相関する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記
対象由来の上昇した不安定プロトン交換速度が200交換/秒より大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記
対象由来の上昇した不安定プロトン交換速度が201~1000交換/秒である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記低いpH値が5.6~6.99である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記参照値が参照の不安定プロトン交換速度であり、前記参照の不安定プロトン交換速度が100~200交換/秒である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記参照の不安定プロトン交換速度が参照のpH値と相関する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記参照のpH値が7.0~7.2である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記状態が、椎間板変性、椎間板起因の疼痛、椎間板起因の腰痛、慢性腰痛、腰痛、背痛、慢性背痛、進行性椎間板変性、変形性関節症、関節リウマチ、関節軟骨傷害、側頭下顎骨円板変性及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記対象の身体の前記画像化された領域が関節または椎間板を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記状態が痛みを伴う状態である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記参照値と比較した前記対象由来の上昇した不安定プロトン交換速度が前記対象における1以上の疼痛関連因子の上方調節と相関する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記1以上の疼痛関連因子が、ブラジキニン受容体B1(BDKRB1)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、及びカテコール-0-メチルトランスフェラーゼ(COMT)から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記参照値と比較した前記対象由来の上昇した不安定プロトン交換速度が前記対象における1以上の炎症関連因子の上方調節と相関する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記炎症関連因子がインターロイキン-6(IL-6)である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記神経原性因子が脳に由来する神経栄養因子(BDNF)または神経成長因子(NGF)である、請求項
1に記載の方法。
【請求項17】
前記定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスが二次元(2D)の定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスが三次元(3D)の定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記MRIスキャナーが3.0T MRIスキャナーである、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記MRIスキャナーが1.5T MRIスキャナーである、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記MRIスキャナーが7.0T MRIスキャナーである、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる2016年6月8に出願された米国仮特許出願番号62/347,509の米国特許法第119条のもとでの優先権を主張する。
【0002】
連邦支援の研究開発に関する言及
本発明は、国立衛生研究所によって授与された助成金番号AR066517のもとでの政府の支援によって行われた。
【0003】
技術分野
本発明は、一般に、イメージング及び画像処理についてのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
本明細書における出版物はすべて、各個々の出版物または特許出願が具体的に且つ個々に参照によって組み入れられるように指示されたかのような同じ程度に参照によって本明細書に組み入れられる。以下の記載は本発明を理解するのに有用であってもよい情報を含む。それは、本明細書で提供されている情報のいずれかが従来技術であるもしくは現在請求されている発明に関連する、または具体的にもしくは暗に引用されている任意の出版物が従来技術であると認めることではない。
【0005】
腰痛は米国人口の85%までを冒すと推定される主要な医学的状態である。椎間板(IVD)変性は背痛に関連することが多い。変性した椎間板は磁気共鳴イメージング(MRI)を用いて特定することができるが、それらは常に痛みを引き起こすわけではない。従って、腰痛のある患者が幾つかの変性した椎間板を有するのであれば、外科的介入を決定するまえにどの椎間板が痛みの源であるかを判定するためにさらなる検査が必要とされる。標準の処置には椎間板造影法が挙げられ、その間に、痛みを誘発するために疑わしい椎間板が圧迫される。これは、椎間板の変性、椎間板ヘルニア、及び椎間板の高さの喪失をさらに加速し、隣接する脊椎端板を冒すことも知られる痛みを伴う処置である。それはまた、針の配置、加えられた圧力及び麻酔の変化に対しても自覚的である。最近の研究は低いpHを椎間板起因の疼痛と関連付けている。pHは椎間板起因の背痛についての新しい代謝性バイオマーカーとして役立つ可能性があると考えられている。
【0006】
化学交換飽和移動(CEST)はpH依存的なシグナル変化を測定する新たに出現したMR(磁気共鳴)技法である。この技法は、特定の分子における水のプロトンと溶質のプロトンとの間でのpHに感受性である絶え間ない化学交換を活用する。化学交換の速度はpH値に依存する。溶質のプロトンが先ず一連の周波数選択性の高周波(RF)パルスによって磁化飽和され、水のプロトンで交換した後、飽和は水のシグナルにて間接的に検出される。たとえば、化学交換飽和移動(CEST)はグリコサミノグリカン(GAG)の含量を検出するための新たに出現したMR技法である。この技法はGAGにおける水のプロトンとヒドロキシルのプロトンとの間での絶え間ない化学交換を活用する。先ずヒドロキシルのプロトンが飽和され、水のプロトンとの移動の後、飽和は水のシグナルにて間接的に検出されるであろう。以前の研究はgagCESTを適用して変性した椎間板疾患の患者にてGAG含量の分布を調べていた。濃度に加えて、pHとの相関も報告された。しかしながら、gagCESTのコントラストはむしろ複雑な効果である。それには、(a)pHに左右される水プロトンとGAGプロトンとの間の交換速度;(b)GAGの濃度と線形で相関する不安定プロトンの比;(c)水緩和パラメータT1及びT2;ならびに(d)CESTの飽和モジュールのRF照射パワーを含むが、これらに限定されない複数の交絡因子が関与する。
【0007】
最近の研究は、CEST実験にて交換速度または不安定プロトンの比を他の交絡因子から分離することに焦点が置かれている。これらの方法の間で、定量的CEST(qCEST)は交換速度及び不安定プロトンの比の同時測定を可能にする。それは、CESTの効果が1/B1
2の線形関数として表すことができるという観察に基づいて開発された。オメガプロット解析のB1振幅を変化させて複数のCEST実験を行った。
【0008】
qCESTを用いたpH値及び濃度の同時測定はクレアチンのファントム試験で示されている。クレアチンのプロトンは水プロトンとの遅い~中程度の交換速度を有する。しかしながら、相対的に速い化学交換を受けるGAGのプロトンについては、この技法がpHの変化を検出できるかどうかは検討されていない。加えて、試験のほとんどは連続波(cw)飽和パルスを用いて前臨床スキャナーで行われた。生体内での検証は行われておらず、臨床応用の可能性は未だ明らかではない。
【0009】
組織変性、特に背痛に関連するものを含む状態の進行を診断する、予後診断する、及びモニターするための改善されたシステム及び方法について当該技術にてニーズが明らかに存在する。
【発明の概要】
【0010】
例示であり、説明に役立ち、範囲を限定するのではないシステム、組成物、製造物品及び方法と併せて、以下の実施形態及びその態様が記載され、説明されている。
【0011】
種々の実施形態では、本発明は、対象において状態を診断する方法を提供し、該方法は、磁気共鳴イメージング(MRI)スキャナーによって対象の身体の領域を画像化する工程であって、領域が定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスを用いて画像化される、工程;画像化された領域内で1以上の生理的バイオマーカーを測定する工程であって、生理的バイオマーカーが溶質プールと水プールとの間での不安定プロトン交換速度(ksw)を含む、工程;及び参照値に比べて不安定プロトン交換速度が上昇する場合、対象がその状態を有すると判定する工程を含む。一部の実施形態では、不安定プロトン交換速度の上昇は低いpH値と相関する。一部の実施形態では、不安定プロトンの上昇した交換速度は200交換/秒を超える。一部の実施形態では、不安定プロトンの上昇した交換速度は201~1000交換/秒である。一部の実施形態では、低いpH値は5.6~6.99である。一部の実施形態では、参照値は参照の不安定プロトン交換速度であり、参照の不安定プロトン交換速度は100~200交換/秒である。一部の実施形態では、参照の不安定プロトン交換速度は参照のpH値と相関する。一部の実施形態では、参照のpH値は7.0~7.2である。一部の実施形態では、状態は、椎間板変性、椎間板起因の疼痛、椎間板起因の腰痛、慢性腰痛、腰痛、背痛、慢性背痛、進行性椎間板変性、変形性関節症、関節リウマチ、関節軟骨傷害、側頭下顎骨円板変性及びそれらの組み合わせから選択される。一部の実施形態では、対象の身体の画像化された領域は関節または椎間板を含む。一部の実施形態では、状態は痛みを伴う状態である。一部の実施形態では、不安定プロトン交換速度の上昇は対象における1以上の疼痛関連因子の上方調節と相関する。一部の実施形態では、1以上の疼痛関連因子は、ブラジキニン受容体B1(BDKRB1)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、及びカテコール-0-メチルトランスフェラーゼ(COMT)から選択される。一部の実施形態では、不安定プロトン交換速度の上昇は対象における1以上の炎症関連因子の上方調節と相関する。一部の実施形態では、炎症関連因子はインターロイキン6(IL-6)である。一部の実施形態では、不安定プロトン交換速度の上昇は対象における1以上の神経原性因子の上方調節と相関する。一部の実施形態では、神経原性因子は脳に由来する神経栄養因子(BDNF)または神経成長因子(NGF)である。一部の実施形態では、定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスは、二次元(2D)の定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスである。一部の実施形態では、定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスは三次元(3D)の定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスである。一部の実施形態では、MRIスキャナーは3.0T MRIスキャナーである。一部の実施形態では、MRIスキャナーは1.5T MRIスキャナーである。一部の実施形態では、MRIスキャナーは7.0T MRIスキャナーである。一部の実施形態では、方法はさらに、対象の状態の起源が生理的なバイオマーカーを測定した対象の身体の画像化された領域の範囲内にあると判定する工程を含む。一部の実施形態では、低いpH値は状態を有する対象を示す。一部の実施形態では、方法はさらに、状態が判定される場合、対象のための1以上の治療を選択する工程を含む。一部の実施形態では、方法はさらに、状態が判定される場合、1以上の治療で対象を治療する工程を含む。
【0012】
例となる実施形態が参照の図面にて説明される。本明細書で開示されている実施形態及び図面は制約ではなく説明に役立つと見なされるべきであることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の種々の実施形態に従って、同一濃度(60mM)であるが、pH値を変化させた(5.8、6.1、6.4、6.7及び7.0)ファントム(A)及び同じpH値(7.0)であるが、GAG濃度を変化させた(20mM、40mM、60mM、80mM及び100mM)ファントム(B)のΩプロット解析を示す図である。
【
図2A】本発明の種々の実施形態に従って、ファントム試験の定量結果を示す図である。(A)不安定プロトン交換速度の画素単位のマッピング。
【
図2B】本発明の種々の実施形態に従って、ファントム試験の定量結果を示す図である。(B)不安定プロトンの比の画素単位のマッピング。
【
図2C】本発明の種々の実施形態に従って、ファントム試験の定量結果を示す図である。(C)pHの関数としての化学交換速度。
【
図2D】本発明の種々の実施形態に従って、ファントム試験の定量結果を示す図である。(D)GAG濃度の関数としての不安定プロトンの比。
【
図3】本発明の種々の実施形態に従って、1匹のミニブタにおけるIVDの代表的な画像及び対応する交換速度マップを示す図である。(A)矢状面におけるT2加重画像。(B)相当するIVDの軸方向の解剖学的画像。(C)相当するIVDの交換速度マップ。低いpHのIVDは高い交換速度を有する傾向がある。
【
図4】本発明の種々の実施形態に従って、動物試験におけるpH値を変化させた(5.0、5.8及び6.7)代表的なIVDのΩプロット解析(A)及びpHの関数としての化学交換速度(B)を示す図である。
【
図5】本発明の種々の実施形態に従って、本発明の方法を実行することができるMRI装置及びコンピュータ機器を含むシステムを示す図である。
【
図6】本発明の種々の実施形態に従って、IVD変性の時系列を示す図である。ミニブタは4つのIVDレベルにて線維輪の損傷を受け、変性を誘導した。変性に続いて、動物を無作為に3群に分け、2、6及び10週に走査した。各時点で、群の1匹を屠殺し、損傷したIVD内のpHを測定した。遺伝子解析及び組織学のためにIVDを採取した。
【
図7A】本発明の種々の実施形態に従って、椎間板内穿刺に続くIVDの変性を示す図である。(A)T
2加重矢状方向MRIによってモニターされるような穿刺に続く2、6、10週でのIVD変性の進行。白矢印は、変性したIVDを示す。穿刺に続く2、6、10週での健常対照と比べた変性したIVDのT
2(B)、T
1(C)及びT
1ρ(D)のマッピングの定量(実験群当たりn=12、
*p<0.05、
****p<0.0001)。(E)低倍率(上の図、縮尺棒:1mm)及び高倍率(下の図、縮尺棒:100μm)での変性の誘導後2、6、10週での変性を受けた代表的なIVDのヘマトキシリンとエオシンの染色。
【
図8A】本発明の種々の実施形態に従って、IVD変性に続くpH及びqCESTの変化を示す図である。(A)溶質プールと水プールとの間での交換速度(k
sw)によって表されるqCESTのシグナルと動物の屠殺に続いてIVD内で測定されたpHとの間の相関。(B)変性しているIVDの検出のためのqCESTシグナルについてのROC曲線解析。変性の2、6、10週後での変性しているIVD内でのpH(C)及びqCEST(D)の測定(実験群当たりn=12、
*p<0.05、
**p<0.01、
****p=0.0001、qCEST=定量的化学交換飽和移動)。
【
図9A】本発明の種々の実施形態に従って、変性しているIVDにおける疼痛及び炎症のマーカーの上方調節を示す図である。変性の誘導の2、6及び10週後での変性したIVDの線維輪及び髄核から採取した疼痛に関連する遺伝子(CGRP、BDKRB1及びCOMT)(A~C)、IL-6(D)及びBDNF(E)の定量的RT-PCR解析。(群当たりn=3、
*p<0.05、
**p<0.01、CGRP=カルシトニン遺伝子関連ペプチド、BDKRB1=ブラジキニン受容体B1、COMT=カテコール-0-メチルトランスフェラーゼ、BDNF=脳由来の神経栄養因子)。
【
図10-1】本発明の種々の実施形態に従って、IVDの変性及びマーカーの上方調節の免疫蛍光解析を示す図である。変性の2、6及び10週後での髄核の連続切片のCOMT、IL-6、BDNF、CGRP、BDKRB1に対する免疫染色及びDAPIによる対比染色。異なる染色をマージしたパネルを右の欄に提示する(NP=髄核、CGRP=カルシトニン遺伝子関連ペプチド、BDKRB1=ブラジキニン受容体B1、COMT=カテコール-0-メチルトランスフェラーゼ、BDNF=脳由来の神経栄養因子)。
【
図11】本発明の種々の実施形態に従って、変性しているIVDにおけるqCESTとバイオマーカーとの間の線形相関を示す図である。qCESTのシグナルと、変性したIVD及び健常のIVDから抽出したCGRP(A)、BDKRB1(B)、COMT(C)、IL-6(D)及びBDNF(E)の対応する発現との間の相関曲線。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
本明細書で引用されている参考文献はあたかも完全に記述されているかのようにその全体が参照によって組み入れられる。定義されない限り、本明細書で使用されている専門用語及び科学用語はすべて本発明が属する技術の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。Westbrook,et al.,MRI in Practice 4th ed.,ならびにGuyton及びHall,Textbook of Medical Physiology 12th ed.,は当業者に本出願で使用されている用語の多くに対する一般的な手引きを提供する。
【0015】
当業者は、本発明の実践で使用されてもよい、本明細書に記載されているものに類似するまたはそれと同等である多数の方法及び物質を認識するであろう。本発明の他の特徴及び利点は、例として本発明の実施形態の種々の特徴を説明している添付の図面と併せて以下の詳細な説明から明らかになるであろう。実際、本発明は、記載されている方法及び物質に決して限定されない。便宜上、本明細書、実施例及び添付の特許請求の範囲で採用された特定の用語がここに収集されている。
【0016】
記述されない限り、または文脈から暗に示されない限り、以下の用語及び語句は以下で提供される意味を含む。明白に記述されない限り、または文脈から明らかでない限り、以下の用語及び語句は、その用語及び語句が関係する技術分野で獲得している意味を排除しない。定義は、特定の実施形態を記載するのに役立つように提供されるのであって、本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定されるので、請求される本発明を限定するように意図されるものではない。
【0017】
本明細書で使用されるとき、用語「含む(comprising)」または「含む(comprises)」は、実施形態に有用である組成物、方法、システム、製造物品及びその各成分(複数可)を参照して使用され、有用であろうとなかろうと特定されていない要素の包含を受け入れる。一般に本明細書で使用されている用語は一般に「非限定」用語として意図されることが当業者によって理解されるであろう(たとえば、用語「含む(including)」は「含むが、それに限定されない」として解釈されるべきであり、用語「有する(having)」は「少なくとも有する」として解釈されるべきであり、用語「含む(includes)」は「含むが、それに限定されない」として解釈されるべきである)。
【0018】
記述されない限り、本出願の特定の実施形態を記載する文脈(特に特許請求の範囲における文脈)で使用される用語「1つ(a)」及び「1つ(an)」及び「その(the)」及び類似の参照は、単数及び複数の双方を扱うように解釈することができる。本明細書での値の範囲の引用は、範囲内に入る各別個の値を個々に参照する簡潔な方法として役立つように単に意図される。本明細書で示されない限り、各個々の値は、それが個々に本明細書で引用されたかのように本明細書に組み入れられる。本明細書で示されない限り、または文脈によって明瞭に反対に示されない限り、本明細書に記載されている方法はすべて好適な順序で実施することができる。本明細書での特定の実施形態に関連して提供される任意の及びすべての例または例示となる言語(たとえば、「など(such as)」)は本出願をよりよく説明するように単に意図されるのであって、さもなければ請求される本出願の範囲での限定を提起するものではない。略記「たとえば(e.g.)」はラテン語のexempli gratiaに由来し、非限定例を示すのに本明細書で使用される。従って略記「たとえば(e.g.)」は用語「たとえば」と同義である。本明細書における言語は、本出願の実践に必須である請求されない要素を示すと解釈されるべきではない。
【0019】
本明細書で使用されるとき、用語「治療する」、「治療」、「治療すること」または「改善」は疾患、障害、状態、病状または医学的状態を参照して使用される場合、治療上の処置及び予防的なまたは予防上の対策を指し、目的は、症状または状態の進行または重症度を元に戻す、緩和する、改善する、抑制する、減らす、減速するまたは停止させることである。用語「治療すること」には、状態の少なくとも1つの有害効果または症状を軽減するまたは緩和することを含む。治療は一般に、1以上の症状または臨床マーカーが低減する場合、「有効」である。或いは、治療は、疾患、障害、状態、病状または医学的状態の進行が減るまたは停止する場合、「有効」である。すなわち、「治療」は、単に症状またはマーカーの改善だけでなく、治療の非存在下で予想される症状の進行または悪化の停止または少なくとも減速も含む。また、「治療」は、有益な成績を続けるもしくは得ること、または治療が最終的に不首尾であるとしても状態を進展させる個体の機会を減らすことを意味してもよい。治療を必要とする者には、状態をすでに伴う者と同様に状態を有する傾向がある者または状態が防がれるべきである者が挙げられる。治療または治療上の処置の非限定例には、薬物療法、生物学的療法、細胞療法及び遺伝子治療及び/または介入性の外科治療が挙げられる。治療または治療上の処置の非限定例は薬物治療である。治療または治療上の処置の非限定例は生物学的治療である。治療または治療上の処置の非限定例は細胞治療である。治療または治療上の処置の非限定例は遺伝子治療である。治療または治療上の処置の非限定例は介入性の外科治療である。治療または治療上の処置には1以上の治療または治療の併用が含まれてもよい。
【0020】
「有益な成績」または「所望の成績」には、疾患、障害、状態、病状または医学的状態の重症度を減らすことまたは緩和すること、疾患、障害、状態、病状または医学的状態が悪化するのを防ぐこと、疾患、障害、状態、病状または医学的状態を治癒させること、疾患、障害、状態、病状または医学的状態が発症するのを防ぐこと、疾患、障害、状態、病状または医学的状態を発症する患者の機会を減らすこと、罹患率及び死亡率を減らすこと、ならびに患者の生命または平均余命を延ばすことが挙げられてもよいが、決してこれらに限定されない。非限定例として、「有益な成績」または「所望の成績」は、1以上の症状(複数可)の緩和、欠損の程度の縮小、疾患、障害、状態、病状または医学的状態の安定した(すなわち、悪化しない)容態、疾患、障害、状態、病状または医学的状態の遅延または減速、及び疾患、障害、状態、病状または医学的状態に関連する症状の改善または緩和であってもよい。
【0021】
本明細書で使用されるとき、用語「投与すること」は、所望の部位での作用物質または治療の少なくとも部分的な局在を生じる方法または経路によって対象に本明細書で開示されているような作用物質または治療を配置することを指す。「投与の経路」は、エアロゾル、鼻、吸入を介した、経口、肛門、肛門内、肛門周囲、経粘膜、経皮、非経口、腸内、局所、または局部を含むが、これらに限定されない当該技術で既知の投与経路を指してもよい。「非経口」は、頭蓋内、脳室内、髄腔内、硬膜外、硬膜内、眼窩内、点滴、嚢内、心臓内、皮内、筋肉内、腹腔内、肺内、脊髄内、胸骨内、髄腔内、子宮内、血管内、静脈内、動脈内、クモ膜下、被膜下、皮下、経粘膜または経気管を含む注射に一般に関連する投与の経路を指す。
【0022】
「診断」は、病態の存在または性質を特定することを意味し、疾患、障害、状態、病状または医学的状態を発症するリスクがある患者を特定することを含む。診断方法はその感度及び特異度で異なる。診断アッセイの「感度」は陽性を検査する罹患個体の比率(「真陽性」のパーセント)である。アッセイによって検出されない罹患個体は「偽陰性」である。罹患していない且つアッセイで陰性を検査する対象は「真陰性」と呼ばれる。診断アッセイの「特異度」は1マイナス偽陽性比率であり、「偽陽性」比率は陽性を検査する疾患のない者の比率として定義される。特定の診断方法が状態の明確な診断を提供しなくてもよい一方で、方法が診断に役立つ陽性の指示を提供すれば、それは十分である。
【0023】
「のリスクがある」によって、正常対象に比べてまたは正常群に比べて、たとえば、患者集団の高いリスクを意味するように意図される。従って、特定のマーカーを持つ対象は、特定の疾患、障害、状態、病状または医学的状態について高いリスクを有してもよく、さらなる検査を必要とすると特定されてもよい。「高いリスク」または「上昇したリスク」は、たとえば、対象が疾患、障害、状態、病状または医学的状態を有する可能性での統計的に有意な上昇を意味する。リスクは好ましくは、比較が行われる対照群に対して少なくとも10%、さらに好ましくは少なくとも20%、一層さらに好ましくは少なくとも50%上昇する。
【0024】
用語「統計的に有意な」または「有意に」は、差異があるという統計的な証拠を指す。それは、帰無仮説が実際に真実であるとき帰無仮説を拒絶する決定を行う確率として定義される。決定はp値を用いて行われることが多い。
【0025】
用語「検出」、「検出すること」等は、疾患、障害、状態、病状または医学的状態を検出する文脈で使用されてもよい(たとえば、陽性のアッセイ結果が得られる場合)。後者の文脈では、「検出すること」及び「診断すること」は同義と見なされる。
【0026】
用語「診断」または「dx」は特定の現象の性質及び原因の特定を指す。本明細書で使用されるとき、診断は通常、どの疾患、障害、状態、病状または医学的状態が症状及び兆候を説明するかを判定する過程である医学診断を指す。診断手順、多くは診断の検査またはアッセイを用いて診断を提供することができる。診断は、疾患、障害、状態、病状または医学的状態の存在を検出すること、または疾患、障害、状態、病状または医学的状態になるリスクを検出することを含むことができる。
【0027】
用語「予後診断」または「px」は本明細書で使用されるとき、現在の立場のありそうな転帰を予測することを指す。たとえば、予後診断には、疾患、障害、状態、病状または医学的状態の予想される持続時間及び経過、たとえば、進行性の低下及び予想される回復を挙げることができる。
【0028】
用語「セラノーシス」または「tx」は本明細書で使用されるとき、医療の文脈で使用される診断及び予後診断を指す。たとえば、セラノーシスは、遺伝的内容または他の分子解析または細胞解析の背景に基づいて適当な且つ最適な治療法(または逆)を選択するために使用される診断検査を含むことができる。セラノーシスは薬理ゲノミクス、オーダーメイド医療及びプレシジョン医療を含む。
【0029】
本明細書で使用されるとき、「対象」はヒトまたは動物を意味する。たとえば、動物は、たとえば、霊長類、齧歯類、家畜または狩猟動物のような脊椎動物である。霊長類には、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、及びマカク、たとえば、アカゲザルが挙げられる。齧歯類には、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギ及びハムスターが挙げられる。家畜及び狩猟動物には、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、水牛、ネコ科種、たとえば、イエネコ、及びイヌ科種、たとえば、イヌ、キツネ、オオカミが挙げられる。用語「患者」、「個体」及び「対象」は本明細書では相互交換可能に使用される。一実施形態では、対象は哺乳類である。哺乳類は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシであることができるが、これらの例に限定されない。加えて、本明細書に記載されている方法は飼い慣らされた動物及び/またはペットを治療するのに使用することができる。一実施形態では、対象はヒトである。
【0030】
「哺乳類」は本明細書で使用されるとき、限定しないで、ヒト及び非ヒト霊長類、たとえば、チンパンジー及び他の類人猿及びサル種、たとえば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、及びウマのような家畜、たとえば、イヌ及びネコのような飼い慣らされた動物、たとえば、マウス、ラット及びモルモットのような齧歯類を含む実験動物、等を含む哺乳動物綱の任意のメンバーを指す。その用語は特定の年齢または性別を意味しない。従って、成熟対象及び新生児対象はオスであれ、メスであれ、この用語の範囲内に含まれるように意図される。示されない限り、本明細書に記載されている対象は哺乳類を含むことができる。
【0031】
対象は、治療を必要とする疾患、障害、状態、病状または医学的状態または疾患、障害、状態、病状または医学的状態に関連する1以上の合併症であると以前診断されている、またはそれを患っているもしくは有すると特定されている者、及び任意で、疾患、障害、状態、病状または医学的状態または疾患、障害、状態、病状または医学的状態に関連する1以上の合併症についての治療をすでに受けている者であることができる。或いは、対象は、疾患、障害、状態、病状または医学的状態または疾患、障害、状態、病状または医学的状態に関連する1以上の合併症を有すると以前診断されていない者であることができる。たとえば、対象は、疾患、障害、状態、病状または医学的状態または疾患、障害、状態、病状または医学的状態に関連する1以上の合併症について1以上のリスク因子を示す者、またはリスク因子を示さない対象であることができる。たとえば、対象は、疾患、障害、状態、病状または医学的状態または疾患、障害、状態、病状または医学的状態に関連する1以上の合併症について1以上の症状を示す者、または症状を示さない対象であることができる。特定の疾患、障害、状態、病状または医学的状態について診断または治療を「必要とする対象」は、その疾患、障害、状態、病状または医学的状態を有すると疑われる対象、その疾患、障害、状態、病状または医学的状態を有すると診断された対象、その疾患、障害、状態、病状または医学的状態についてすでに治療されたまたは治療されている対象、その疾患、障害、状態、病状または医学的状態について治療されていない対象、またはその疾患、障害、状態、病状または医学的状態を発症するリスクがある対象であることができる。
【0032】
「試料」は本明細書では最も広い意味で使用される。用語「生体試料」は本明細書で使用されるとき、生物から採取されたまたは単離された試料を意味する。試料または生体試料は、血液、血清、血漿、涙液、水性及び粘性の体液、脊髄液を含む体液;細胞または組織の調製物の可溶性画分、または細胞が増殖する培地;または細胞または組織から単離されたまたは抽出された膜;溶液におけるまたは基質に結合したポリペプチドまたはペプチド;細胞、組織、組織プリント、フィンガープリント、皮膚または毛髪;それらの断片及び誘導体を含んでもよい。試料または生体試料の非限定例には、口腔粘膜検体、粘液、全血、血液、血清、血漿、尿、唾液、精液、リンパ、糞便抽出物、痰、他の体液または生物流体、細胞試料、及び組織試料、等が挙げられる。その用語はまた上述の試料または生体試料の混合物も含む。用語「試料」は未治療のまたは治療前の(または処理前の)生体試料も含む。一部の実施形態では、試料または生体試料は対象に由来する1以上の細胞を含むことができる。一部の実施形態では、試料または生体試料は対象に由来する1以上の組織試料を含むことができる。
【0033】
「任意の」または「任意で」は、その後に続く記載されている状況が生じてもよくまたは生じなくてもよいので、記載は状況が生じる場合の例及びそれが生じない場合の例を含むことを意味する。
【0034】
「上方調節」は遺伝子発現の上昇を意味する。
【0035】
「下方調節」は遺伝子発現の低下を意味する。
【0036】
本発明の方法
種々の実施形態では、本発明は、磁気共鳴イメージング(MRI)スキャナーによって対象の身体の領域を画像化する工程、及び画像化された領域内で1以上の生理的なバイオマーカーを測定する工程を含み、(a)生理的なバイオマーカーは、溶質プールと水プールの間での不安定プロトンの比(fr)及び/または溶質プールと水プールの間での交換速度(ksw)を含む、方法を提供する。一部の実施形態では、領域は定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスを用いて画像化される。
【0037】
種々の実施形態では、本発明は、対象において状態を診断する方法を提供し、該方法は、磁気共鳴イメージング(MRI)スキャナーによって対象の身体の領域を画像化する工程であって、領域が定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスを用いて画像化される、工程;及び画像化された領域内で1以上の生理的なバイオマーカーを測定する工程であって、生理的なバイオマーカーが溶質プールと水プールの間での不安定プロトン交換速度(ksw)を含む、工程を含む。
【0038】
種々の実施形態では、本発明は、対象において状態を診断する方法を提供し、該方法は、磁気共鳴イメージング(MRI)スキャナーによって対象の身体の領域を画像化する工程であって、領域が定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスを用いて画像化される、工程;画像化された領域内で1以上の生理的なバイオマーカーを測定する工程であって、生理的なバイオマーカーが溶質プールと水プールの間での不安定プロトン交換速度(ksw)を含む、工程;及び不安定プロトン交換速度が参照値に比べて上昇する場合、対象がその状態を有すると判定する工程を含む。一部の実施形態では、方法はさらに、状態が判定される場合、対象のための1以上の治療を選択する工程を含む。一部の実施形態では、治療は、薬物療法、生物学的療法、細胞療法及び遺伝子治療及び/または介入性の外科治療から選択される。一部の実施形態では、上昇した不安定プロトン交換速度は低いpH値と相関する。一部の実施形態では、上昇した不安定プロトン交換速度は200交換/秒を超える。一部の実施形態では、上昇した不安定プロトン交換速度は201~1000交換/秒である。一部の実施形態では、低いpH値は5.6~6.99である。一部の実施形態では、参照値は参照の不安定プロトン交換速度であり、参照の不安定プロトン交換速度は100~200交換/秒である。一部の実施形態では、参照の不安定プロトン交換速度は参照のpH値と相関する。一部の実施形態では、参照のpH値は7.0~7.2である。一部の実施形態では、状態は、椎間板変性、椎間板起因の疼痛、椎間板起因の腰痛、慢性腰痛、腰痛、背痛、慢性背痛、進行性椎間板変性、変形性関節症、関節リウマチ、関節軟骨傷害、側頭下顎骨円板変性及びそれらの組み合わせから選択される。一部の実施形態では、対象の身体の画像化された領域は関節または椎間板を含む。一部の実施形態では、状態は痛みを伴う状態である。一部の実施形態では、上昇した不安定プロトン交換速度は、対象における1以上の疼痛関連因子の上方調節と相関する。一部の実施形態では、1以上の疼痛関連因子は、ブラジキニン受容体B1(BDKRB1)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、及びカテコール-0-メチルトランスフェラーゼ(COMT)から選択される。一部の実施形態では、上昇した不安定プロトン交換速度は、対象における1以上の炎症関連因子の上方調節と相関する。一部の実施形態では、炎症関連因子はインターロイキン-6(IL-6)である。一部の実施形態では、上昇した不安定プロトン交換速度は対象における1以上の神経原性因子の上方調節と相関する。一部の実施形態では、神経原性因子は脳に由来する神経栄養因子(BDNF)または神経成長因子(NGF)である。一部の実施形態では、定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスは、二次元(2D)の定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスである。一部の実施形態では、定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスは三次元(3D)の定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスである。一部の実施形態では、MRIスキャナーは3.0T MRIスキャナーである。一部の実施形態では、MRIスキャナーは1.5T MRIスキャナーである。一部の実施形態では、MRIスキャナーは7.0T MRIスキャナーである。一部の実施形態では、対象の状態の起源が、生理的なバイオマーカーが測定された対象の身体の画像化された領域内にあると判定する工程をさらに含む。一部の実施形態では、低いpH値は状態を有する対象を示す。一部の実施形態では、方法はさらに、状態が判定される場合、対象のための1以上の治療を選択する工程を含む。一部の実施形態では、方法はさらに、状態が判定される場合、1以上の治療で対象を治療する工程を含む。
【0039】
種々の実施形態では、本発明は、状態を有すると診断された対象を治療する方法を提供し、対象は、磁気共鳴イメージング(MRI)スキャナーによって対象の身体の領域を画像化する工程であって、領域が定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスを用いて画像化される、工程;画像化された領域内で1以上の生理的なバイオマーカーを測定する工程であって、生理的なバイオマーカーが溶質プールと水プールとの間での不安定プロトン交換速度(ksw)を含む、工程;不安定プロトン交換速度が参照値に比べて上昇する場合、対象がその状態を有すると判定する工程;対象のために治療を選択する工程;及び対象をその治療で治療する工程を含む方法によって、その状態を有すると診断された。
【0040】
種々の実施形態では、本発明は、状態を有すると診断された対象を治療する方法を提供し、対象は、磁気共鳴イメージング(MRI)スキャナーによって対象の身体の領域を画像化する工程であって、領域が定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスを用いて画像化される、工程;画像化された領域内で1以上の生理的なバイオマーカーを測定する工程であって、生理的なバイオマーカーが溶質プールと水プールとの間での不安定プロトンの比(fr)及び/または溶質プールと水プールとの間での交換速度(ksw)を含む、工程;対象のために治療を選択する工程;及び対象をその治療で治療する工程とを含む方法によって、その状態を有すると診断された。
【0041】
種々の実施形態では、本発明は、対象が治療されてもよいように診断結果を要求する工程;対象のために治療を選択する工程:及び診断結果に基づいて対象を治療する工程を含む、状態を有すると診断された対象を治療する方法を提供し、対象は、磁気共鳴イメージング(MRI)スキャナーによって対象の身体の領域を画像化する工程であって、領域が定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスを用いて画像化される、工程;画像化された領域内で1以上の生理的なバイオマーカーを測定する工程であって、生理的なバイオマーカーが溶質プールと水プールとの間での不安定プロトン交換速度(ksw)を含む、工程;不安定プロトン交換速度が参照値に比べて上昇する場合、対象がその状態を有すると判定する工程を含む方法によって、その状態を有すると診断された。
【0042】
種々の実施形態では、本発明は、対象が治療されてもよいように診断結果を要求する工程;対象のために治療を選択する工程;及び診断結果に基づいて対象を治療する工程を含む、状態を有すると診断された対象を治療する方法を提供し、対象は、磁気共鳴イメージング(MRI)スキャナーによって対象の身体の領域を画像化する工程であって、領域が定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスを用いて画像化される、工程;及び画像化された領域内で1以上の生理的なバイオマーカーを測定する工程であって、生理的なバイオマーカーが溶質プールと水プールとの間での不安定プロトンの比(fr)及び/または溶質プールと水プールとの間での交換速度(ksw)を含む、工程を含む方法によって、その状態を有すると診断された。
【0043】
対象において状態を予後診断する方法であって、該方法は、磁気共鳴イメージング(MRI)スキャナーによって対象の身体の領域を画像化する工程であって、領域が定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスを用いて画像化される、工程;画像化された領域内で1以上の生理的なバイオマーカーを測定する工程であって、生理的なバイオマーカーが溶質プールと水プールとの間での不安定プロトン交換速度(ksw)を含む、工程;及び1以上の生理的なバイオマーカーの測定値を同じ1以上の生理的なバイオマーカーの以前の測定値と比較する工程であって、不安定プロトン交換速度の経時的な上昇が状態の予後不良である、工程を含む。一部の実施形態では、方法はさらに、状態の予後診断に基づいて対象のための1以上の治療を選択する工程を含む。一部の実施形態では、方法はさらに、状態の予後診断に基づいて1以上の治療で対象を治療する工程を含む。一部の実施形態では、低いpH値は状態の予後不良を示す。
【0044】
対象において組織変性及び/または疼痛に関連する状態を予後診断する方法であって、該方法は、対象の身体の領域を画像化する工程であって、領域が定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスで画像化される、工程;画像化された領域内で1以上の生理的なバイオマーカーを測定する工程であって、生理的なバイオマーカーが溶質プールと水プールとの間での不安定プロトン交換速度(ksw)を含む、工程;及び画像化された領域内で測定された1以上の生理的なバイオマーカーの測定値を画像化された領域内で測定された同じ1以上の生理的なバイオマーカーの以前の測定値と比較することによって状態を予後診断する工程を含む。
【0045】
対象において組織変性及び/または疼痛に関連する状態を予後診断する方法であって、該方法は、対象の身体の領域を画像化する工程であって、領域が定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスで画像化される、工程;画像化された領域内で1以上の生理的なバイオマーカーを測定する工程であって、生理的なバイオマーカーが溶質プールと水プールとの間での不安定プロトンの比(fr)及び/または溶質プールと水プールとの間での交換速度(ksw)を含む、工程;及び画像化された領域内で測定された1以上の生理的なバイオマーカーの測定値を画像化された領域内で測定された同じ1以上の生理的なバイオマーカーの以前の測定値と比較することによって状態を予後診断する工程を含む。
【0046】
種々の実施形態では、本発明は、対象において状態を検出する方法を提供し、該方法は、磁気共鳴イメージング(MRI)スキャナーによって対象の身体の領域を画像化する工程であって、領域が定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスを用いて画像化される、工程;画像化された領域内で1以上の生理的なバイオマーカーを測定する工程であって、生理的なバイオマーカーが溶質プールと水プールとの間での不安定プロトン交換速度(ksw)を含む、工程;及び不安定プロトン交換速度が参照値に比べて上昇する場合、対象が状態を有すると判定する工程を含む。一部の実施形態では、方法はさらに、状態が判定される場合、対象のための1以上の治療を選択する工程を含む。一部の実施形態では、治療は、薬物療法、生物学的療法、細胞療法及び遺伝子治療及び/または介入性の外科治療から選択される。一部の実施形態では、方法はさらに、状態が判定される場合、1以上の治療で対象を治療する工程を含む。
【0047】
種々の実施形態では、本発明は、対象において状態を検出する方法を提供し、該方法は、磁気共鳴イメージング(MRI)スキャナーによって対象の身体の領域を画像化する工程であって、領域が定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスを用いて画像化される、工程;及び画像化された領域内で1以上の生理的なバイオマーカーを測定する工程であって、生理的なバイオマーカーが溶質プールと水プールとの間での不安定プロトンの比(fr)及び/または溶質プールと水プールとの間での交換速度(ksw)を含む工程を含む。一部の実施形態では、方法はさらに、状態が判定される場合、対象のための1以上の治療を選択する工程を含む。一部の実施形態では、治療は、薬物療法、生物学的療法、細胞療法及び遺伝子治療及び/または介入性の外科治療から選択される。一部の実施形態では、方法はさらに、状態が判定される場合、1以上の治療で対象を治療する工程を含む。
【0048】
一部の実施形態では、1以上の磁気共鳴画像がある期間にわたって得られる。一部の実施形態では、1以上の磁気共鳴画像が様々な時間に得られる。一部の実施形態では、1以上の磁気共鳴画像が同時に得られる。一部の実施形態では、1以上の磁気共鳴画像は2以上の磁気共鳴画像である。一部の実施形態では、ある期間は、ミリ秒、秒、分、時間、日数、月数または年数またはそれらの組み合わせで測定される。
【0049】
一部の実施形態では、本発明は、磁気共鳴イメージング(MRI)スキャナーによって対象の身体の領域を画像化する工程であって、領域が定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスを用いて画像化される、工程;画像化された領域内で1以上の生理的なバイオマーカーを測定する工程であって、生理的なバイオマーカーが溶質プールと水プールとの間での不安定プロトン交換速度(ksw)を含む、工程;及び対象に由来する不安定プロトン交換速度を参照値と比較する工程であって、参照値と比較した対象に由来する不安定プロトン交換速度の上昇が状態を発症する対象のリスクの上昇を示す工程を含む、対象において状態を発症するリスクを判定する方法を提供する。一部の実施形態では、低いpH値は状態を発症する対象のリスクの上昇を示す。一部の実施形態では、方法はさらに、状態を発症する対象の高いリスクに基づいて対象のための1以上の治療を選択する工程を含む。一部の実施形態では、方法はさらに、状態を発症する対象の高いリスクに基づいて1以上の治療で対象を治療する工程を含む。
【0050】
一部の実施形態では、方法はさらに、対象に由来する不安定プロトン交換速度を参照値と比較する工程であって、参照値と比較した対象に由来する不安定プロトン交換速度の上昇が対象の評価であり、その評価が状態を発症する予後診断である、工程を含む。一部の実施形態では、方法はさらに、対象に由来する不安定プロトン交換速度を参照値と比較する工程であって、参照値と比較した対象に由来する不安定プロトン交換速度の上昇が対象の評価であり、その評価が状態の診断である、工程を含む。一部の実施形態では、方法はさらに、対象に由来する不安定プロトン交換速度を参照値と比較する工程であって、参照値と比較した対象に由来する不安定プロトン交換速度の上昇が対象の評価であり、状態を示す、工程を含む。一部の実施形態では、方法はさらに、評価に基づいて対象を治療する工程を含む。一部の実施形態では、方法はさらに、評価に基づいて対象のための1以上の治療を選択する工程を含む。一部の実施形態では、方法はさらに、評価に基づいて1以上の治療で対象を治療する工程を含む。
【0051】
一部の実施形態では、本発明は、磁気共鳴イメージング(MRI)スキャナーによって対象の身体の領域を画像化する工程であって、領域が定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスを用いて画像化される、工程;画像化された領域内で1以上の生理的なバイオマーカーを測定する工程であって、生理的なバイオマーカーが溶質プールと水プールとの間での不安定プロトン交換速度(ksw)を含む、工程;及び対象に由来する不安定プロトン交換速度を参照値と比較する工程であって、参照値と比較した対象に由来する不安定プロトン交換速度の上昇が状態を発症する対象のリスクの上昇を示す、工程を含む、対象において状態を発症するリスクを判定する方法を提供する。一部の実施形態では、低いpH値は状態を発症する対象のリスクの上昇を示す。一部の実施形態では、方法はさらに、状態を発症する対象の高いリスクに基づいて対象のための1以上の治療を選択する工程を含む。一部の実施形態では、方法はさらに、状態を発症する対象の高いリスクに基づいて1以上の治療で対象を治療する工程を含む。
【0052】
一部の実施形態では、不安定プロトン交換速度の上昇は対象における1以上の疼痛関連因子の上方調節と相関する。一部の実施形態では、疼痛関連因子(疼痛関連マーカー)は、ブラジキニン受容体B1(BDKRB1)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、及びカテコール-0-メチルトランスフェラーゼ(COMT)から選択される。一部の実施形態では、疼痛関連因子はブラジキニン受容体B1(BDKRB1)である。一部の実施形態では、疼痛関連因子はカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)である。一部の実施形態では、疼痛関連因子はカテコール-0-メチルトランスフェラーゼ(COMT)である。一部の実施形態では、方法はさらに、状態に関連する対象の疼痛の起源が、1以上の疼痛関連因子(疼痛関連マーカー)の発現が検出される対象の身体の領域内にあると判定する工程を含む。一部の実施形態では、状態は痛みを伴う状態である。
【0053】
一部の実施形態では、不安定プロトン交換速度の上昇は対象における1以上の炎症関連因子の上方調節と相関する。一部の実施形態では、炎症因子(炎症関連マーカーまたは炎症関連因子)はインターロイキン-6(IL-6)から選択される。一部の実施形態では、方法はさらに、状態に関連する対象の疼痛の起源が、1以上の炎症因子(炎症関連マーカー)の発現が検出される対象の身体の領域内にあると判定する工程を含む。一部の実施形態では、状態は痛みを伴う状態である。
【0054】
一部の実施形態では、不安定プロトン交換速度の上昇は対象における1以上の神経原性因子の上方調節と相関する。一部の実施形態では、神経原性因子(神経原性マーカー)は脳に由来する神経栄養因子(BDNF)または神経成長因子(NGF)から選択される。一部の実施形態では、方法はさらに、状態に関連する対象の疼痛の起源が、1以上の神経原性因子(神経原性マーカー)の発現が検出される対象の身体の領域内にあると判定する工程を含む。一部の実施形態では、状態は痛みを伴う状態である。
【0055】
一部の実施形態では、生理的なバイオマーカーは溶質プールと水プールの間での不安定プロトンの比(fr)及び/または溶質プールと水プールの間での交換速度(ksw)を含む。一部の実施形態では、生理的なバイオマーカーは溶質プールと水プールの間での不安定プロトンの比(fr)及び/または溶質プールと水プールの間での不安定プロトン交換速度(ksw)を含む。一部の実施形態では、生理的なバイオマーカーは溶質プールと水プールの間での不安定プロトンの比(fr)及び溶質プールと水プールの間での不安定プロトン交換速度(ksw)を含む。一部の実施形態では、生理的なバイオマーカーは溶質プールと水プールの間での不安定プロトンの比(fr)または溶質プールと水プールの間での不安定プロトン交換速度(ksw)を含む。一部の実施形態では、生理的なバイオマーカーは溶質プールと水プールの間での不安定プロトンの比(fr)を含む。一部の実施形態では、生理的なバイオマーカーは溶質プールと水プールの間での交換速度(ksw)を含む。一部の実施形態では、生理的なバイオマーカーは溶質プールと水プールの間での不安定プロトン交換速度(ksw)を含む。
【0056】
特定の実施形態では、異常な生理的な状況には、状態を有さない正常な対象と比べて低いpH及び/または低いGAG濃度が挙げられてもよいが、決してこれらに限定されない。特定の実施形態では、異常な生理的な状況は、状態を有さない正常な対象と比べて低いGAG濃度である。特定の実施形態では、異常な生理的な状況は低いGAG濃度である。一部の実施形態では、異常な生理的な状況には、状態を有さない正常な対象と比べて低いpHである。一部の実施形態では、GAG濃度は健常な変性のない椎間板に関係がある。一部の実施形態では、低いpH濃度は健常な変性のない椎間板に関係がある。一部の実施形態では、GAG濃度は対象における健常な変性のない椎間板に関係がある。一部の実施形態では、低いpH濃度は対象における健常な変性のない椎間板に関係がある。一部の実施形態では、正常な対象は対象が状態を有さない対象である。一部の実施形態では、正常な対象は対象が状態について治療される前の対象である。一部の実施形態では、正常な対象は状態について治療された対象である。一部の実施形態では、正常な対象は早い時点(早い時点)での対象である。
【0057】
特定の実施形態では、異常な生理的状況は状態を有さない正常な対象と比べて低いpHである。特定の実施形態では、異常な生理的状況は低いpHである。一部の実施形態では、異常な生理的状況は、pH参照試料から得られるpH値(参照pH値)と比べて低いpHである。一部の実施形態では、低いpH(低いpH値)は5.6~6.99である。一部の実施形態では、低いpH(低いpH値)は、5.6~5.7、5.6~5.8、5.6~5.9、5.6~6.0、5.6~6.1、5.6~6.2、5.6~6.3、5.6~6.4、5.6~6.5、5.6~6.6、5.6~6.7、5.6~6.8、5.6~6.9、または5.6~6.99である。
【0058】
一部の実施形態では、低いpH(低いpH値)は、5.60~6.99、5.60~6.90、5.60~6.80、5.60~6.70、5.60~6.60、5.60~6.50、5.60~6.40、5.60~6.30、5.60~6.20、5.60~6.10、5、60~6.00、5.60~5.90、5.60~5.80、5.60~5.70、5.70~6.99、5.70~6.90、5.70~6.80、5.70~6.70、5.70~6.60、5.70~6.50、5.70~6.40、5.70~6.30、5.70~6.20、5.70~6.10、5.70~6.00、5.70~5.90、5.70~5.80、5.80~6.99、5.80~6.90、5.80~6.80、5.80~6.70、5.80~6.60、5.80~6.50、5.80~6.40、5.80~6.30、5.80~6.20、5.80~6.10、5.80~6.00、5.80~5.90、5.90~6.99、5.90~6.90、5.90~6.80、5.90~6.70、5.90~6.60、5.90~6.50、5.90~6.40、5.90~6.30、5.90~6.20、5.90~6.10、5.90~6.00、6.00~6.99、6.00~6.90、6.00~6.80、6.00~6.70、6.00~6.60、6.00~6.50、6.00~6.40、6.00~6.30、6.00~6.20、6.00~6.10、6.10~6.99、6.10~6.90、6.10~6.80、6.10~6.70、6.10~6.60、6.10~6.50、6.10~6.40、6.10~6.30、6.0~6.20、6.20~6.99、6.20~6.90、6.20~6.80、6.20~6.70、6.20~6.60、6.20~6.50、6.20~6.40、6.20~6.30、6.30~6.99、6.30~6.90、6.30~6.80、6.30~6.70、6.30~6.60、6.30~6.50、6.30~6.40、6.40~6.99、6.40~6.90、6.40~6.80、6.40~6.70、6.40~6.60、6.40~6.50、6.50~6.99、6.50~6.90、6.50~6.80、6.50~6.70、6.50~6.60、6.60~6.99、6.60~6.90、6.60~6.80、6.60~6.70、6.70~6.99、6.70~6.90、6.70~6.80、6.80~6.99、6.80~6.90、または6.90~6.99である。
【0059】
特定の実施形態では、参照pH値は7.0~7.2である。一部の実施形態では、参照pH値は7.00~7.20、7.00~7.15、7.00~7.10、7.00~7.05、7.05~7.20、7.05~7.15、7.05~7.10、7.10~7.20、7.10~7.15、または7.15~7.20である。
【0060】
一部の実施形態では、上昇した不安定プロトン交換速度は200交換/秒より大きい。一部の実施形態では、上昇した不安定プロトン交換速度は201~1000交換/秒である。一部の実施形態では、上昇した不安定プロトン交換速度は201~1000、201~950、201~900、201~850、201~800、201~750、201~700、201~650、201~600、201~550、201~500、201~450、201~400、201~350、201~300、201~250、250~1000、250~950、250~900、250~850、250~800、250~750、250~700、250~650、250~600、250~550、250~500、250~450、250~400、250~350、250~300、300~1000、300~950、300~900、300~850、300~800、300~750、300~700、300~650、300~600、300~550、300~500、300~450、300~400、300~350、350~1000、350~950、350~900、350~850、350~800、350~750、350~700、350~650、350~600、350~550、350~500、350~450、350~400、400~1000、400~950、400~900、400~850、400~800、400~750、400~700、400~650、400~600、400~550、400~500、400~450、450~1000、450~950、450~900、450~850、450~800、450~750、450~700、450~650、450~600、450~550、450~500、500~1000、500~950、500~900、500~850、500~800、500~750、500~700、500~650、500~600、500~550、550~1000、550~950、550~900、550~850、550~800、550~750、550~700、550~650、550~600、600~1000、600~950、600~900、600~850、600~800、600~750、600~700、600~650、650~1000、650~950、650~900、650~850、650~800、650~750、650~700、700~1000、700~950、700~900、700~850、700~800、700~750、750~1000、750~950、750~900、750~850、750~800、800~1000、800~950、800~900、800~850、850~1000、850~950、850~900、900~1000、900~950、または950~1000交換/秒である。
【0061】
一部の実施形態では、参照値は参照の不安定プロトン交換速度であり、参照の不安定プロトン交換速度は100~200交換/秒である。一部の実施形態では、参照の不安定プロトン交換速度は、100~200、100~190、100~180、100~170、100~160、100~150、100~140、100~130、100~120、100~110、110~200、110~190、110~180、110~170、110~160、110~150、110~140、110~130、110~120、120~200、120~190、120~180、120~170、120~160、120~150、120~140、120~130、130~200、130~190、130~180、130~170、130~160、130~150、130~140、140~200、140~190、140~180、140~170、140~160、140~150、150~200、150~190、150~180、150~170、150~160、160~200、160~190、160~180、160~170、170~200、170~190、170~180、180~200、180~190、または190~200交換/秒である。
【0062】
一部の実施形態では、参照値は、状態を有さない正常な対象から得られる。一部の実施形態では、参照値は、状態を有さない対照の対象から得られる。一部の実施形態では、参照値は、状態を有さない対象から得られる。一部の実施形態では、参照値は、対象が状態について治療される前の対象から得られる。一部の実施形態では、参照値は、状態について治療された対象から得られる。一部の実施形態では、参照値は、早い時点(早い時点)で対象から得られる。
【0063】
一部の実施形態では、対象の身体の画像化された領域は、対象の脊椎または脊柱または背骨またはその切片または成分を含む。一部の実施形態では、対象の身体の画像化された領域は関節または椎間板を含む。一部の実施形態では、対象の身体の画像化された領域は1以上の関節である。一部の実施形態では、対象の身体の画像化された領域は1以上の椎間板である。
【0064】
一部の実施形態では、状態には、椎間板変性、椎間板起因の疼痛、変形性関節症、関節リウマチ、関節軟骨傷害、側頭下顎骨円板変性及びそれらの組み合わせが挙げられてもよいが、決してこれらに限定されない。一部の実施形態では、状態は、椎間板変性、椎間板起因の疼痛、椎間板起因の腰痛、慢性腰痛、腰痛、背痛、慢性背痛、進行性椎間板変性、変形性関節症、関節リウマチ、関節軟骨傷害、側頭下顎骨円板変性及びそれらの組み合わせから選択される。特定の実施形態では、状態は椎間板起因の疼痛である。特定の実施形態では、状態は椎間板起因の腰痛である。特定の実施形態では、状態は椎間板変性である。一部の実施形態では、状態は病状である。一部の実施形態では、状態は医学的状態である。一部の実施形態では、状態は障害である。一部の実施形態では、状態は疾患である。一部の実施形態では、状態は椎間板変性である。一部の実施形態では、状態は変形性関節症である。一部の実施形態では、状態は関節リウマチである。一部の実施形態では、状態は関節軟骨傷害である。一部の実施形態では、状態は側頭下顎骨円板変性である。一部の実施形態では、状態は慢性腰痛である。一部の実施形態では、状態は腰痛である。一部の実施形態では、状態は背痛である。一部の実施形態では、状態は慢性背痛である。一部の実施形態では、状態は進行性椎間板変性である。一部の実施形態では、状態は痛みを伴う状態である。
【0065】
特定の実施形態では、方法はさらに、状態に関連する対象の疼痛の起源が、1以上の異常な生理的状況が検出される対象の身体の領域内にあると判定する工程を含む。
【0066】
一部の実施形態では、磁気共鳴イメージング法は化学交換飽和移動(CEST)シーケンスである。一部の実施形態では、磁気共鳴イメージング法は定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスである。一部の実施形態では、領域は化学交換飽和移動(CEST)シーケンスを用いて画像化される。一部の実施形態では、領域は定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスを用いて画像化される。一部の実施形態では、二次元(2D)縮小視野(rFOV)高速スピンエコー(TSE)化学交換飽和移動(CEST)シーケンスを用いて画像化される。一部の実施形態では、領域は二次元(2D)縮小視野(rFOV)高速スピンエコー(TSE)定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスを用いて画像化される。一部の実施形態では、代替のCESTシーケンスを用いて前述の生理的なバイオマーカーを測定してもよい。一部の実施形態では、代替のqCESTシーケンスを用いて前述の生理的なバイオマーカーを測定してもよい。一部の実施形態では、定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスは二次元(2D)定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスである。一部の実施形態では、定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスは三次元(3D)定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスである。
【0067】
種々の実施形態では、磁気共鳴イメージング(MRI)スキャナーによる対象の身体の領域のイメージングは生体内で実施される。種々の実施形態では、対象からの磁気共鳴画像は生体内で得られる。
【0068】
CESTシーケンスの読み出しには、勾配エコー(GRE)、エコープラナー画像化法(EPI)、勾配及びスピンエコー(GRASE)、及び平衡定常状態自由歳差運動(SSFP)が挙げられてもよいが、決してこれらに限定されない。qCESTシーケンスの読み出しには、勾配エコー(GRE)、エコープラナー画像化法(EPI)、勾配及びスピンエコー(GRASE)、及び平衡定常状態自由歳差運動(SSFP)が挙げられてもよいが、決してこれらに限定されない。特定の実施形態では、方法はさらに、イメージングから検出される生理的なバイオマーカーが画像化された領域内で1以上の異常な生理的状況を示す場合、疼痛及び/または組織変性を特徴とする状態を有すると対象を診断する工程を含む。
【0069】
一部の実施形態では、MRIスキャナーは7.0Tスキャナーである。特定の実施形態では、MRIスキャナーは3.0T MRIスキャナーである。一部の実施形態では、MRIスキャナーは1.5T MRIスキャナーである。
【0070】
特定の実施形態では、イメージングは縮小視野(rFOV)励起を用いて実施される。他の実施形態では、rFOV励起は使用されない。一部の実施形態では、MRI走査のためのスライス厚は、脂肪によるシグナルの妨害を回避するのに十分小さく選択される。特定の実施形態では、CEST MRIイメージングのパラメータには、TR/TE=10500/10ms、2平均、単一ショットが挙げられる。特定の実施形態では、qCEST MRIイメージングのパラメータには、TR/TE=10500/10ms、2平均、単一ショットが挙げられる。特定の実施形態では、CEST MRIイメージングのパラメータには、TR/TE1/4 10,500/10ms、2平均、単一ショットが挙げられる。特定の実施形態では、qCEST MRIイメージングのパラメータには、TR/TE1/4 10,500/10ms、2平均、単一ショットが挙げられる。一部の実施形態では、TR/TE=7000~16000/7~15ms。特定の実施形態では、各IVDについて、画像は、3mmのスライス厚、100×40mm2の視野(FOV)、及び0.8×0.8mm2の空間分解能で軸平面にて取得される。一部の実施形態では、スライス厚は2~4mmであり、FOVは80~160×40~160mm2であり、空間分解能は0.6~1mm2である。特定の実施形態では、各IVDについて、画像は、3mmのスライス厚、140×40mm2の視野、及び1.1×1.1mm2の空間分解能で軸平面にて取得される。特定の実施形態では、イメージングで利用されるCESTの飽和モジュールは、各パルスについて持続時間tp=80ms、ならびに飽和フリップ角900°、1500°、2100°及び3000°(B1振幅=フリップ角/(γtp)=0.73μT、1.22μT、1.71μT及び2.45μT;ガウス飽和パルスのパラメータc1=0.50、c2=0.59)でのパルス間遅延td=80ms(デューティサイクル=50%、合計飽和持続時間Ts=6240ms)を伴う39のガウス形状パルスから成る。特定の実施形態では、イメージングで利用されるqCESTの飽和モジュールは、各パルスについて持続時間tp=80ms、ならびに飽和フリップ角900°、1500°、2100°及び3000°(B1振幅=フリップ角/(γtp)=0.73μT、1.22μT、1.71μT及び2.45μT;ガウス飽和パルスのパラメータc1=0.50、c2=0.59)でのパルス間遅延td=80ms(デューティサイクル=50%、合計飽和持続時間Ts=6240ms)を伴う39のガウス形状パルスから成る。一部の実施形態では、CESTの飽和モジュールは600°から3000°に及ぶ飽和フリップ角にて総飽和Ts=4000~8000msを有してもよい。一部の実施形態では、qCESTの飽和モジュールは600°から3000°に及ぶ飽和フリップ角にて総飽和Ts=4000~8000msを有してもよい。特定の実施形態では、Zスペクトルは±1.6、±1.3、±1.0、±0.7及び±0.4ppmを含むが、これらに限定されない様々な飽和頻度で取得される。一部の実施形態では、各IVDについてのCEST実験の走査時間は約40分であった。一部の実施形態では、各IVDについてのqCEST実験の走査時間は約40分であった。
【0071】
本明細書で使用されるとき、生理的なバイオマーカーは、たとえば、pH値、溶質プールと水プールとの間での不安定プロトン交換速度(ksw)または溶質プールと水プールとの間での不安定プロトンの比(fr)を指す。用語、生理的なバイオマーカー及び代謝バイオマーカーは同一の意味を有し、本明細書では相互交換可能に使用される。
【0072】
システム及びコンピュータ
種々の実施形態では、本発明は、磁気共鳴イメージング(MRI)パルスシーケンスを対象における関心体積(VOI)に適用する工程であって、VOIが関節または椎間板(IVD)を含む、工程;対象における関心体積(VOI)から磁気共鳴データを取得する工程;及び取得した磁気共鳴データに基づいて画像化された領域内で1以上の生理的なバイオマーカーを測定する工程を含む方法を、MRI装置の1以上のプロセッサに実行させる;ための、コンピュータ可読の指示書を有する持続性のコンピュータ可読の媒体を開示し、(a)生理的なバイオマーカーは、たとえば、「実施例」のセクションでさらに詳細に本明細書に記載されているような、溶質プールと水プールとの間での不安定プロトンの比(fr)及び/または溶質プールと水プールとの間での交換速度(ksw)を含む。特定の実施形態では、パルスシーケンスは二次元(2D)の縮小視野(rFOV)高速スピンエコー(TSE)の化学交換飽和移動(CEST)シーケンスである。特定の実施形態では、パルスシーケンスは二次元(2D)の縮小視野(rFOV)高速スピンエコー(TSE)の定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスである。一部の実施形態では、MRIスキャナーは7.0Tスキャナーである。特定の実施形態では、MRIスキャナーは3.0T MRIスキャナーである。一部の実施形態では、MRIスキャナーは1.5T MRIスキャナーである。
【0073】
種々の実施形態では、本発明は、磁場を提供するように操作可能な磁石と;磁場内の領域に伝達するように操作可能な送信器と;領域から磁気共鳴シグナルを受け取るように操作可能な受信器と;送信器と受信器を制御するように操作可能な1以上のプロセッサと;本明細書に記載されているパルスシーケンスを対象における関心体積(VOI)に適用する工程であって、VOIが関節または椎間板(IVD)またはその一部を含む、工程;対象における関心体積(VOI)から磁気共鳴データを取得する工程;及び取得した磁気共鳴データに基づいて、画像化された領域内で1以上の生理的なバイオマーカーを測定する工程とを含む方法を、磁気共鳴イメージング(MRI)システムの1以上のプロセッサに実行させるための、コンピュータ可読の指示書を有する持続性のコンピュータ可読の媒体とを含む、磁気共鳴イメージングシステムを開示し、(a)生理的なバイオマーカーは、溶質プールと水プールとの間での不安定プロトンの比(fr)及び/または溶質プールと水プールとの間での交換速度(ksw)を含む。
【0074】
当業者は、本明細書に記載されている本発明の方法を実施するのに多数の異なる型のイメージングシステムが使用されてもよいことを容易に十分に理解する。単に例として、実施例に記載されているイメージングシステムが使用されてもよい。
図5もやはり本発明の方法を達成するのに使用することができるシステム100の図を示す。システム100はハードウェア及びコンピュータ107を含む。ハードウェアは、磁石102と送信器103と受信器104と勾配105とを含み、そのすべてはプロセッサ101と連絡を取り合う。磁石102には永久磁石、超電導磁石または他の型の磁石を挙げることができる。送信器103は受信器104と共にRFシステムの一部である。送信器103は高周波の送信器、電力増幅器、及びアンテナ(またはコイル)を表すことができる。受信器104は
図5に示されるように、受信器アンテナ(またはコイル)及び増幅器を表すことができる。示される例では、送信器103及び受信器104は別々の表されるが、一例では、送信器103及び受信器104は共通のコイルを共有することができる。ハードウェアは勾配105を含む。勾配105は局在化のための勾配を適用するのに使用される1以上のコイルを表すことができる。
【0075】
ハードウェアの種々の要素と連絡を取り合うプロセッサ101は、本明細書で開示されている方法のいずれかに相当する一揃いの指示書を実施するように構成される1以上のプロセッサを含む。プロセッサ101は、RF励起と勾配を提供し、関心体積から磁気共鳴データを受け取るための一揃いの指示書(ハードウェアまたはサブシステム108のメモリに保存されている)を実施するように構成することができる。サブシステム108はハードウェアと、MRI装置におけるプロセッサ101によって通常取り扱われる画像の再構成に関連する処理の代用と併せて、または代用としてハードウェアによって生成されるデータの処理を促すことができるソフトウエアとを含むことができる。当業者は、プロセッサ101及び/またはサブシステム108を含む、本明細書に記載されているイメージングシステムの特定の成分が使用されてコンピュータ可読の媒体に組み込まれた指示書を実行して本明細書に記載されている本発明のデータの取得、画像の再構成、及び生理的なバイオマーカーの評価方法を実施することを容易に十分に理解する。
【0076】
一部の実施形態では、コンピュータ107はハードウェア及びサブシステム108に操作可能に繋がれる。コンピュータ107には、デスクトップ型コンピュータ、ワークステーション、またはラップトップ型コンピュータの1以上を挙げることができる。一例では、コンピュータ107は、ユーザーが操作可能であり、ディスプレイ、プリンター、ネットワークインターフェース、または他のハードウェアを含んで操作者がシステム100の操作を制御するのを可能にする。
【0077】
一部の実施形態では、本発明は、本明細書に記載されている方法またはシステムのいずれかを使用して、取得した画像に基づいて背痛、1以上の変性椎間板、関節痛、1以上の変性関節、等を含むが、決してこれらに限定されない疾患、障害、状態、病状または医学的状態の存在または非存在で対象を診断する工程を含む。
【0078】
種々の実施形態では、本発明は、本明細書に記載されている方法を実施するように構成されるシステムを開示し、該システムはコンピュータ機器に操作可能に接続された(物理的または電子的な連絡を介して)磁気共鳴イメージング装置(本明細書または本明細書で引用された参考文献に記載されている磁気共鳴イメージング装置のいずれかの型を含むが、決してこれらに限定されない)を含む。コンピュータ機器には、本明細書に記載されている方法を実施するのに十分な計算許容能力を持つデスクトップ型コンピュータ、ラップトップ型コンピュータ、またはコンパクトなコンピュータ機器が挙げられてもよいが、決してこれらに限定されない。一部の実施形態では、コンピュータ機器は本明細書に記述されている画像解析のための方法の1以上の工程を実施するように具体的に構成される。
【0079】
本発明によれば、「通信回線」は本開示で使用されるとき、少なくとも2つの点の間でデータまたは情報を伝達する有線の及び/またはワイヤレスの媒体を意味する。有線のまたはワイヤレスの媒体には限定しないで、たとえば、金属導体回線、高周波(RF)通信回線、赤外線(IR)通信回線、光学通信回線、等が挙げられてもよい。RF通信回線には、たとえば、WiFi、WiMAX、IEEE 802.11、DECT、0G、1G、2G、3Gまたは4Gのセルラー規格、ブルートゥース等が挙げられてもよい。
【0080】
コンピュータ及びコンピュータ機器は通常、コンピュータ可読の保存媒体及び/または通信媒体を含むころができる種々の媒体を含み、これら2つの用語が以下のように互いに異なって本明細書では使用されている。
【0081】
コンピュータ可読の保存媒体は、コンピュータによってアクセスすることができ、通常持続性の性質であり、且つ揮発性及び非揮発性双方の媒体、脱着式及び非脱着式の媒体を含むことができる利用可能な保存媒体であることができる。例として且つ限定ではなく、コンピュータ可読の保存媒体は、たとえば、コンピュータ可読の指示書、プログラムモジュール、構造化データまたは非構造化データのような情報の保存のための方法または技術と関連して実施することができる。コンピュータ可読の保存媒体には、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリまたは他の記憶技術、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)または光学ディスク保存、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク保存または他の磁気保存装置、または所望の情報を保存するのに使用することができる有形的表示媒体及び/または持続性媒体を挙げることができるが、これらに限定されない。コンピュータ可読の保存媒体は、媒体によって保存されている情報に関する種々の操作のために、たとえば、アクセス要求、クエリまたは他のデータ検索プロトコールを介して1以上の近くのまたは遠隔のコンピュータ機器によってアクセスすることができる。
【0082】
他方、通信媒体は通常、たとえば、調節されたデータシグナル、たとえば、キャリア波または他の輸送メカニズムのように一時的であることができるデータシグナルにてコンピュータ可読の指示書、プログラムモジュールまたは他の構造化もしくは非構造化データを具体化し、任意の情報送達または輸送媒体を含む。用語「調節されたデータシグナル」またはシグナルは、1以上のシグナルにて情報をコード化するような方法で設定されたまたは変更された特徴の1以上を有するシグナルを指す。例として、且つ限定ではなく、通信媒体には、有線の媒体、たとえば、有線のネットワークまたは直接ワイヤでの接続、及び楽器のようなワイヤレス媒体、RF媒体、赤外線媒体及び他のワイヤレス媒体が挙げられる。
【0083】
コンピュータ可読の媒体のいずれか1つまたはその組み合わせにて保存して、本開示の例となる実施形態は、例となる実施形態のデバイス及びサブシステムを制御するために、例となる実施形態のデバイス及びサブシステムを動かすために、例となる実施形態のデバイス及びサブシステムがヒトユーザーと対話するのを可能にするために、及びその類のためにソフトウエアを含んでもよい。そのようなソフトウエアには、デバイスドライバー、ファームウエア、操作システム、開発ツール、アプリケーションソフトウエア、データベース管理ソフトウエア等を挙げることができるが、これらに限定されない。例となる実施形態のコンピュータコードデバイスは、スクリプト、説明できるプログラム、動的リンクライブラリ(DLL)、Javaクラス及びアプレット、完全な実行できるプログラム、等を含むが、これらに限定されない好適な説明できるまたは実行できるコードメカニズムを含むことができる。さらに、処理許容能力は、さらに良好な性能、信頼性、コストまたは他の利益のために複数のプロセッサにわたって分配されてもよい。
【0084】
本開示の態様を提供するために、実施形態は、ソフトウエアまたは保存された指示書を実行する任意の数のプログラム可能な処理デバイスを採用してもよい。処理または評価のために本開示の実施形態によって採用される物理的なプロセッサ及び/または機構には、例となる実施形態の開示に従ってプログラムされた1以上のネットワーク化された(インターネット、クラウド、WAN、LAN、サテライト、有線またはワイヤレス(RF、セルラー、WiFi、ブルートゥース、等))またはネットワーク化されていない一般目的のコンピュータシステム、マイクロプロセッサ、ファイルしたプログラム可能なゲートアレイ(FPGA)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、マイクロコントローラ、スマートデバイス(たとえば、スマートフォン)、コンピュータタブレット、小型コンピュータ、等が挙げられてもよい。加えて、例となる実施形態のデバイス及びサブシステムは、アプリケーション専用の集積回路(ASIC)によって、または従来の成分回路の適当なネットワークを相互接続することによって実施することができる。従って、例となる実施形態はハードウェア回路及び/またはソフトウエアの特定の組み合わせに限定されない。
【0085】
本発明の一部の実施形態は以下の番号を付けたパラグラフのいずれかとして定義することができる。
1.磁気共鳴イメージング(MRI)スキャナーによって対象の身体の領域を画像化する工程;及び
前記画像化された領域内で1以上の生理的なバイオマーカーを測定する工程
を含む方法であって、(a)前記生理的なバイオマーカーは溶質プールと水プールとの間での不安定プロトンの比(fr)及び/または溶質プールと水プールとの間での交換速度(ksw)を含む、
前記方法。
【0086】
2.前記領域が化学交換飽和移動(CEST)シーケンスを用いて画像化される、パラグラフ1に記載の方法。
【0087】
3.前記領域が二次元(2D)縮小視野(rFOV)高速スピンエコー(TSE)化学交換飽和移動(CEST)シーケンスを用いて画像化される、パラグラフ1に記載の方法。
【0088】
4.前記イメージングから検出される前記生理的なバイオマーカーが、前記画像化された領域内で1以上の異常な生理的状況を示し、前記生理的状況が、状態を有さない正常な対象と比べて低いpH及び/または低いGAG濃度から成る群から選択される場合、疼痛及び/または組織変性を特徴とする前記状態を有すると前記対象を診断する工程をさらに含む、パラグラフ1に記載の方法。
【0089】
5.前記対象の身体の前記画像化された領域が関節または椎間板を含む、パラグラフ1または2に記載の方法。
【0090】
6.前記状態が、椎間板変性、椎間板起因の疼痛、変形性関節症、関節リウマチ、関節軟骨傷害、側頭下顎骨円板変性及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、パラグラフ2または3に記載の方法。
【0091】
7.さらに、前記状態に関連する前記対象の疼痛の起源が、前記異常な生理的状況が検出される前記対象の身体の前記領域内にあると判定する工程を含む、パラグラフ3または4に記載の方法。
【0092】
8.前記MRIスキャナーが3.0T MRIスキャナーである、パラグラフ1に記載の方法。
【0093】
9.前記MRIスキャナーが1.5T MRIスキャナーである、パラグラフ1に記載の方法。
【0094】
10.前記MRIスキャナーが7.0T MRIスキャナーである、パラグラフ1に記載の方法。
【0095】
11.前記イメージングが縮小視野(rFOV)励起を用いて実施される、パラグラフ1に記載の方法。
【0096】
12.前記MRI走査のためのスライス厚が脂肪によるシグナル妨害を回避するのに十分小さく選択される、パラグラフ1に記載の方法。
【0097】
13.磁気共鳴イメージング(MRI)装置の1以上のプロセッサに方法を実行させるための、コンピュータ可読の指示書を有する持続性のコンピュータ可読の媒体であって、
前記方法が、
対象における関心体積(VOI)にMRIパルスシーケンスを適用する工程であって、前記VOIが関節または椎間板(IVD)またはその一部を含む、工程;
前記対象における前記関心体積(VOI)から磁気共鳴データを取得する工程;及び
取得した前記磁気共鳴データに基づいて、前記画像化された領域内で1以上の生理的なバイオマーカーを測定する工程
を含み、(a)前記生理的なバイオマーカーが、溶質プールと水プールとの間での不安定プロトンの比(fr)及び/または溶質プールと水プールとの間での交換速度(ksw)を含む、
前記持続性のコンピュータ可読の媒体。
【0098】
14.前記パルスシーケンスが、二次元(2D)縮小視野(rFOV)高速スピンエコー(TSE)化学交換飽和移動(CEST)シーケンスである、パラグラフ13に記載の持続性のコンピュータ可読の媒体。
【0099】
15.前記MRIスキャナーが3.0T MRIスキャナーである、パラグラフ13に記載の持続性のコンピュータ可読の媒体。
【0100】
16.前記MRIスキャナーが1.5T MRIスキャナーである、パラグラフ13に記載の持続性のコンピュータ可読の媒体。
【0101】
17.磁気共鳴イメージングシステムであって、
磁場を提供するように操作可能な磁石と、
前記磁場内の領域に伝達するように操作可能な送信器と、
前記領域からの磁気共鳴シグナルを受け取るように操作可能な受信器と、
前記送信器及び前記受信器を制御するように操作可能な1以上のプロセッサと、
パルスシーケンスを対象における関心体積(VOI)に適用する工程であって、前記VOIが関節または椎間板(IVD)またはその一部を含む、工程;前記対象における前記関心体積(VOI)から磁気共鳴データを取得する工程;及び取得した前記磁気共鳴データに基づいて、前記画像化された領域内で1以上の生理的なバイオマーカーを測定する工程を含む方法を、前記磁気共鳴イメージング(MRI)システムの1以上のプロセッサに実行させるための、コンピュータ可読の指示書を有する持続的なコンピュータ可読の媒体と
を含み、(a)前記生理的なバイオマーカーが、溶質プールと水プールとの間での不安定プロトンの比(fr)及び/または溶質プールと水プールとの間での交換速度(ksw)を含む、
前記磁気共鳴イメージングシステム。
【0102】
本発明の一部の実施形態は以下の番号を付けたパラグラフのいずれかとして定義することができる。
1.対象において状態を診断する方法であって、前記方法が、
磁気共鳴イメージング(MRI)スキャナーによって対象の身体の領域を画像化する工程であって、前記領域が定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスを用いて画像化される、工程;
前記画像化された領域内で1以上の生理的なバイオマーカーを測定する工程であって、前記生理的なバイオマーカーが溶質プールと水プールとの間での不安定プロトン交換速度(ksw)を含む、工程;及び
前記不安定プロトン交換速度が参照値に比べて上昇する場合、前記対象が前記状態を有すると判定する工程
を含む、前記方法。
【0103】
2.前記上昇した不安定プロトン交換速度が低いpH値と相関する、パラグラフ1に記載の方法。
【0104】
3.前記上昇した不安定プロトン交換速度が200交換/秒より大きい、パラグラフ1に記載の方法。
【0105】
4.前記上昇した不安定プロトン交換速度が201~1000交換/秒である、パラグラフ1に記載の方法。
【0106】
5.前記低いpH値が5.6~6.99である、パラグラフ2に記載の方法。
【0107】
6.前記参照値が参照の不安定プロトン交換速度であり、前記参照の不安定プロトン交換速度が100~200交換/秒である、パラグラフ1に記載の方法。
【0108】
7.前記参照の不安定プロトン交換速度が参照のpH値と相関する、パラグラフ6に記載の方法。
【0109】
8.前記参照のpH値が7.0~7.2である、パラグラフ7に記載の方法。
【0110】
9.前記状態が、椎間板変性、椎間板起因の疼痛、椎間板起因の腰痛、慢性腰痛、腰痛、背痛、慢性背痛、進行性椎間板変性、変形性関節症、関節リウマチ、関節軟骨傷害、側頭下顎骨円板変性及びそれらの組み合わせから選択される、パラグラフ1に記載の方法。
【0111】
10.前記対象の身体の前記画像化された領域が関節または椎間板を含む、パラグラフ1に記載の方法。
【0112】
11.前記状態が痛みを伴う状態である、パラグラフ1に記載の方法。
【0113】
12.前記上昇した不安定プロトン交換速度が前記対象における1以上の疼痛関連因子の上方調節と相関する、パラグラフ1に記載の方法。
【0114】
13.前記1以上の疼痛関連因子が、ブラジキニン受容体B1(BDKRB1)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、及びカテコール-0-メチルトランスフェラーゼ(COMT)から選択される、パラグラフ12に記載の方法。
【0115】
14.前記上昇した不安定プロトン交換速度が前記対象における1以上の炎症関連因子の上方調節と相関する、パラグラフ1に記載の方法。
【0116】
15.前記炎症関連因子がインターロイキン-6(IL-6)である、パラグラフ14に記載の方法。
【0117】
16.前記上昇した不安定プロトン交換速度が前記対象における1以上の神経原性因子の上方調節と相関する、パラグラフ1に記載の方法。
【0118】
17.前記神経原性因子が脳に由来する神経栄養因子(BDNF)または神経成長因子(NGF)である、パラグラフ16に記載の方法。
【0119】
18.前記定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスが二次元(2D)の定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスである、パラグラフ1に記載の方法。
【0120】
19.前記定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスが三次元(3D)の定量的化学交換飽和移動(qCEST)シーケンスである、パラグラフ1に記載の方法。
【0121】
20.前記MRIスキャナーが3.0T MRIスキャナーである、パラグラフ1に記載の方法。
【0122】
21.前記MRIスキャナーが1.5T MRIスキャナーである、パラグラフ1に記載の方法。
【0123】
22.前記MRIスキャナーが7.0T MRIスキャナーである、パラグラフ1に記載の方法。
【0124】
23.前記対象の状態の起源が、前記生理的なバイオマーカーを測定した前記対象の身体の前記画像化された領域内にあると判定する工程をさらに含む、パラグラフ1に記載の方法。
【0125】
24.前記低いpH値が前記状態を有する前記対象を示す、パラグラフ2に記載の方法。
【0126】
25.前記状態が判定される場合、前記対象のための1以上の治療を選択する工程をさらに含む、パラグラフ1に記載の方法。
【0127】
26.前記状態が判定される場合、1以上の治療で前記対象を治療する工程をさらに含む、パラグラフ1に記載の方法。
【0128】
本発明の種々の実施形態は、実施例を裏付けることにおいて記載されている。実施例は説明に役立つように且つ決して制約ではないように意図される。
【実施例】
【0129】
以下の実施例は本発明の特許請求の範囲を限定するようには意図されず、むしろ、特定の実施形態の例示であるように意図される。当業者に思い当たる例示された方法における任意の変更は本発明の範囲内に入るように意図される。
【0130】
本発明は、本発明の純粋に例示であるように意図され、本発明を限定するとは決して見なされるべきではない以下の実施例によってさらに説明されるであろう。以下の実施例は請求されている本発明をさらによく説明するために提供されているのであって、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。具体的な物質が言及される程度に、それは単に説明目的であって、本発明を限定するように意図されるものではない。当業者は創造力を行使することなく、且つ本発明の範囲を逸脱しないで同等の手段または反応物質を開発してもよい。
【0131】
実施例1
理論
追加の背景を経て、以前の研究は、プール「w」(水プール)とプール「s」(溶質プール)の間でのプロトン交換を記載しているBloch-McConnellの方程式を用いた2つのプールの交換モデルに焦点を置いている。この2プールシステムでは、frは不安定プロトンの比M0s/M0wを指し、kswは溶質プールと水プールとの間での交換速度を指す。R1w、R2w、R1s及びR2sはそれぞれ水プロトン及び溶質プロトンについての縦緩和及び横緩和の速度である。
【0132】
従来のCEST非対称解析は、標識走査(溶質プールの共鳴周波数での)及び参照走査(水に関する逆周波数での)の間での直接差異を利用する。それは、CESTR=Zlabel-Zrefとして定義することができ、Zlabel及びZrefは基準化されたシグナル強度または標識走査と参照走査のためのZスペクトルである。
【0133】
最近の研究は、逆数CESTの差異(CESTR
ind)を
として簡略化しており、式中、Z
label及びZ
refは基準化されたシグナル強度または標識走査(溶質プールの共鳴周波数での)及び参照走査(水に関する逆周波数での)のためのZスペクトルである。ω
1はRF照射の振幅である。
【0134】
方程式1はcwCESTの飽和についてのみ有効である。CEST実験でパルス状の飽和が適用される場合、方程式1は、
として書くことができ、式中、DCはデューティサイクルを表し;c
1及びc
2はガウスの飽和パルスの形状を記載する。(
σ及びt
pはガウスパルスの幅及び長さである)。
ここでのω
1はガウスパルス1つの平均RF照射振幅として定義され、すなわち、ω
1=フリップ角/パルス持続時間であることに留意のこと。
【0135】
この表現では、1/CESTR
indは1/ω
1
2の線形関数として記載されている。CESTR
indを様々なRF照射振幅で測定することによって傾きm及びインターカットnを算出することができ、最終的にk
sw及びf
rを推定することができる。
R
1wはT
1マッピング法を用いて測定することができる。GAGのR
2sは200s
-1であると推定される(あたかも完全に記述されているかのようにその全体が参照によって本明細書に組み入れられるLee,J-S,Xia,D,Jerschow,A,Regatte,RR,In vitro study of endogenous CEST agents at 3 T and 7 T.Contrast Media Mol.Imaging,2016;11:4‐14.doi:10.1002/cmmi.1652を参照のこと)。
【0136】
方程式1はCEST実験の定常状態を記載する簡略化された表現であることに留意のこと。qCEST実験を行う場合、RF飽和パルスは定常状態に達することを保証するのに十分に長いことが必要である。簡略化は遅い及び中間の化学交換を受けている希釈CEST作用物質についてのみ有効である。
【0137】
方法
ファントム
種々のpH値及び濃度を持つコンドロイチン硫酸A(Aldrich-Sigma,St.Louis,MO)とリン酸緩衝溶液(PBS)から調製されたGAGを含有する2セットのファントムを準備した。pHのセットについては、GAG濃度を60mMに固定し、pHを5.8、6.1、6.4、6.7及び7.0に用量設定した。濃度ファントムについては、種々のGAG濃度(100mM、80mM、60mM、40mM及び20mM)を使用し、pHを7.0に用量設定した。次いで溶液を15mLのチューブに移した。これら10本のチューブを水で満たしたファントムホルダーに入れた。
【0138】
試験管内MRI実験
イメージング実験は室温で3.0Tesla臨床スキャナー(Magnetom Verio;Siemens Healthcare,Erlangen,Germany)にて行った。画像はすべて8mmのスライス厚、160×160mm2の視野、及び128×128のイメージングマトリクスで取得した。CEST MRIはパルス状RF飽和高速スピンエコー(TSE)シーケンス(TR/TE=16000/12ms、2平均)で行った。CEST飽和モジュールは、各パルスについて持続時間tp=80ms、ならびに飽和フリップ角900°、1500°、2100°及び3000°(B1振幅=フリップ角/(γtp)=0.73μT、1.22μT、1.71μT及び2.45μT;ガウス飽和パルスのパラメータc1=0.50、c2=0.59)でのパルス間遅延td=80ms(デューティサイクル=50%、合計飽和持続時間Tsat=6240ms)を伴う39のガウス形状のパルスから成る。Zスペクトルは±1.6ppm、±1.3ppm、±1.0ppm、±0.7ppm及び±0.4ppmでの様々な飽和頻度(10の異なる飽和頻度)で取得した。B0電界は水飽和シフト参照(WASSR)マップを用いて修正した(あたかも完全に記述されているかのようにその全体が参照によって本明細書に組み入れられるKim,M,et al.Water saturation shift referencing (WASSR) for chemical exchange saturation transfer(CEST) experiments.Magnetic Resonance in Medicine,2009;61:1441‐1450.doi:10.1002/mrm.21873を参照のこと)。T1加重MR画像は10の異なる反転遅延を伴った反転回復TSEシーケンスによって取得した(TI=50-4000ms(すなわち、TI=50,150,350,700,1050,1400,2000,2500,3000,及び4000ms);TR/TE=6000/12ms)。T2加重MR画像は様々なエコー遅延を伴ったTSEシーケンスによって取得した(TE=12-399ms(すなわち、TE=12,24,48,97,205及び399ms);TR=6000ms)。
【0139】
動物の準備
動物関連の手順はすべてCedars-Sinaiメディカルセンターの施設内動物実験委員会(IACUC)によって承認された。合計4匹のメスのユカタンミニブタ(S&S Farms)を使用した。18時間の術前絶食に続いて、各ブタを筋肉内薬剤(アセプロマジン0.25mg/kg、ケタミン20mg/kg及びアトロピン0.02~0.05mg/kg)で鎮静し、それに続いて動物にプロポフォール(2mg/kg)を静脈注射し、完全な麻酔を誘導した。これが達成された後、気管に挿管し、気管チューブを介して吸入された1~3.5%のイソフルランを用いて手順の持続時間の間麻酔を維持した。麻酔に続いて、蛍光透視鏡の誘導のもとで、3本のMR適合性の14G同軸針(Invivo,Gainesville,FL)を腰椎椎間板L1/L2、L3/L4及びL5/L6の実質部に挿入した。Melkusらによって記載されたように及び患者の病的な椎間板内で測定されたpH値に従って、5~7の範囲での椎間板内でのpH値の勾配を誘導するために、様々な濃度の乳酸ナトリウム(Sigma Aldrich,St.Louis,MO)をこれらの腰椎椎間板に注入した。椎間板内への注入に続いて、MR走査の直前にMR適合性の針を介して挿入された特注の針状の組織pHプローブ(Warner Instruments,LLC,Hamden,CT)を用いて椎間板内部の正確なpH値を測定した。腰椎椎間板L2/L3も対照椎間板として走査した。動物を安楽死させた直後にそのpH値を測定した。
【0140】
生体内MRI実験
イメージング実験は3.0Tesla臨床スキャナー(Magnetom Verio;Siemens Healthcare,Erlangen,Germany)にて行った。後面棘突起を中心として巻き付けられたボディアレイコイルと共に動物を右臥位で置いた。イメージング手順の全体を通して麻酔はイソフルラン(1~3.5%)によって維持した。
【0141】
CEST MRIは、二次元(2D)縮小視野(rFOV)TSE CESTシーケンス(TR/TE=10500/10ms、2平均、単一ショット)を用いて行った。rFOVは腸運動による作為的な結果を効果的に抑え、走査の効率を高めることができる(あたかも完全に記述されているかのようにその全体が参照によって本明細書に組み入れられるLiu,Q et al.Reliable chemical exchange saturation transfer imaging of human lumbar intervertebral discs using reduced‐field‐of‐view turbo spin echo at 3.0 T.NMR in Biomedicine,2013;26:1672‐1679.doi:10.1002/nbm.3001を参照のこと)。各IVDについて、画像は、3mmのスライス厚、100×40mm2の視野、及び0.8×0.8mm2の空間分解能で軸平面にて取得した。CESTの飽和モジュールは、各パルスについて持続時間tp=80ms、ならびに飽和フリップ角900°、1500°、2100°及び3000°(B1振幅=フリップ角/(γtp)=0.73μT、1.22μT、1.71μT及び2.45μT;ガウス飽和パルスのパラメータc1=0.50、c2=0.59)でのパルス間遅延td=80ms(デューティサイクル=50%、合計飽和持続時間Ts=6240ms)を伴う39のガウス形状のパルスから成る。Zスペクトルは±1.6ppm、±1.3ppm、±1.0ppm、±0.7ppm及び±0.4ppmでの様々な飽和頻度(10の異なる飽和頻度)で取得した。各RFの照射振幅についてのCEST実験の走査時間は約6分である。B0電界はWASSRを用いて修正した。
【0142】
T1加重MR画像は、7つの様々なTI(50ms、150ms、350ms、700ms、1050ms、1400ms及び2000ms)による反転回復TSEシーケンスによって取得した。画像はCEST MRIシーケンス(TR/TE=6000/12ms;1つの平均;FOV=200×200mm2;空間分解能=0.8×0.8×3mm3;走査時間=約2.5分)と同じ切片の位置で取得した。
【0143】
データ解析
後処理はMatlabにおける特注のプログラム(The Mathworks,Natick,MA,USA)で行った。CESTRindは、1.0ppm(Zlab=Z(+1.0ppm),Zref=Z(-1.0ppm))でのB0の修正の後、方程式1に従って算出した。線形回帰を使用して1/CESTRindと1/ω1
2の間でのΩプロット解析を行い、傾き及びインターカットを得た。交換速度ksw及び不安定プロトンの比frはその後方程式[3]及び[4]に従って算出した。これらの算出は画素単位で、及び関心領域(ROI)によって行った。T1マップ及びT2マップは、Iがシグナル強度であるシグナル方程式I=I0[1-(1+η)・exp(-TI/T1)]の画素単位での対数適合によって得た。TIは反転時間であり、ηは反転効率である。T2マップはIがシグナル強度であり、TEがエコー時間であるシグナル方程式I=I0・exp(-TE/T2)を適合させることによって得た。
【0144】
結果
ファントム
図1では、様々なGAG濃度とpH値のチューブにて1/CESTR
indと1/ω
1
2との関係を評価した。1/CESTR
indは各チューブの関心領域(ROI)内での平均シグナルである。チューブのすべてにおいて1/CESTR
indは1/ω
1
2の線形関数として表すことができる。この実験的知見は方程式[2]に一致する。
【0145】
加えて、化学交換速度k
sw及び不安定プロトンの比f
rの画素単位のマッピングを再構築し、
図2A及び
図2Bで示す。pH値が変わるにつれて化学交換速度がどのように変化するか(
図2A)及びGAG濃度が変わるにつれて不安定ピクセルの比がどのように変化するか(
図2B)を見ることができる。定量的には、化学交換速度はk
sw=1.5x10
-pH+8+252.0,R
2=0.9508として記載することができる(
図2C)。これは酸が触媒する化学交換の式に従う(あたかも完全に記述されているかのようにその全体が参照によって本明細書に組み入れられるEnglander,SW,et al.Hydrogen exchange.Annu.Rev.Biochem.1972;41:903-924.doi:10.1146/annurev.bi.41.070172.004351を参照のこと)。不安定プロトンの比はGAG濃度と線形に相関する(
図2D)。それは、f
r=4.6×10
-5[GAG]-4.4×10
-5(R
2=0.9869)として表すことができ、[GAG]はmMでのGAG濃度である。
図2C及び
図2Dにおけるエラーバーは、それぞれk
sw及びf
rについて各チューブのROI内での画素すべての標準偏差を表す。これらの実験結果はqCEST法の生体内での適用を促した。
【0146】
動物試験
この試験で16のIVDを調べ、そのうち3つは針がIVDの両側を通り抜け、形態的な損傷を引き起こしたので除外した。乳酸ナトリウムの注射後に調べたIVDのpH値は5.0から7.2に及んだ。
図3A~3Cは、1匹の代表的なミニブタ腰椎のIVDの解剖学的画像及び相当する交換速度マップを示す。
図3A~3Cで示されるように、交換速度は低いpH値のIVDで高かった。各椎間板内で、交換速度マップにて若干の不均質性があった。これは、現在のSNRがシグナル画素の正確な測定を保証できないためである。しかしながら、各IVDの平均値はさらに信頼できることが判明した。これは、類似のpH環境にある画素すべてを平均した後SNRが上昇するためである。
【0147】
図4Aでは、我々は異なるpH値(5.0、5.8及び6.7)での代表的なIVDにおける1/CESTR
indと1/ω
1
2の間の関係を評価した。ファントム試験で示したのに類似して、1/CESTR
indは1/ω
1
2の線形関数として表すことができる。
図4Bでは、各椎間板の平均交換速度を例にとり、pHプローブを用いて椎間板内pH値を直接測定することによって得た、相当するpH値でその関係を評価した。交換速度は、酸が触媒する化学交換の式k
sw=9.2x10
-pH+6+196.9,R
2=0.7883によって記載することができる。
【0148】
考察
この研究では、qCESTを用いて生体内にて3.0TeslaMRスキャナーでIVDにおけるpH変化を検出することができるかどうかを検討した。ファントム試験は、qCEST解析で使用された近似値がGAGのような分子についてやはり当てはまり、qCEST解析から決定された交換速度がGAG溶液のpHレベルに依存することを示した。交換速度とpH値の間の関係をブタ脊椎の生体内試験にてさらに調べた。結果は、酸が触媒するプロトンの化学交換の式を用いて、pHの関数として交換速度を記載することができることを示した。これは、組織pHメーターを参照として用いたqCESTの妥当性を示す最初の生体内試験であると考えられる。
【0149】
以前の研究は、gagCESTのpH依存性を検討していた。T1ρを用いてGAG濃度を修正したとしても、水緩和のパラメータT1及びT2は依然としてgagCESTのシグナルに寄与する。一方、qCEST解析は、数値シミュレーション及びファントム試験にてT1、T2及び濃度と無関係なpH変化を検出することが示されている。T1及びT2は椎間板変性の後で有意に変化するので、IVDにおけるpH変化を測定することはさらに信頼できるアプローチである。この生体内試験では、交換速度とpHレベルの間で関係性が確立されたが、それは交換速度をpHレベルに変換する将来の試験に適用される可能性があり得る。
【0150】
この試験は3.0Tesla臨床MRスキャナーで行われたので、パルス状のCEST飽和パルスが使用された。パルス状のqCEST解析は絶え間なく変化するRF照射振幅のために一層さらに複雑である。パルス状のCEST実験は通常、等価のcwB1電界強度として照射パワーを報告する。しかしながら、パルス状のCEST実験におけるプロトン交換は予想以上に複雑である。等価のcwB1電界強度を単に組み込むことが、交換速度及び不安定プロトンの比を推定することにおいてエラーを引き起こすであろう。Meissnerらはパルス状のCEST実験のための分析用溶液を考え付いた(あたかも完全に記述されているかのようにその全体が参照によって本明細書に組み入れられるMeissner,J-E,et al.Quantitative pulsed CEST-MRI using Ω-plots NMR in Biomedicine,2015;28:1196-1208.doi:10.1002/nbm.3362を参照のこと)。これはパルス状のCEST実験さらに正確な定量的結果を可能にする。
【0151】
この研究では、交換速度とpHレベルの間の関係性がファントム試験及び生体内動物試験の双方で研究された。しかしながら、結果は正確に同一であるわけではない。理由の1つはこれら2つの試験が異なる温度(ファントム試験は約20℃及び動物試験は約38℃)で行われたことである。もう1つの考えられる理由はIVDにおけるGAGがさらに複雑な環境を経験することである。CESTの影響に加えて、qCEST解析に影響を及ぼし得る高分子のような半固形成分からの磁化移動(MT)の影響もIVDには存在する。
【0152】
いつものCEST実験は、長いTRや複数の平均等のために相対的に時間がかかる。それに加えて、qCEST解析は、(a)定常状態を達成するための長いRF飽和時間(本試験では6秒)及び(b)Ωプロットを行うために様々なRF照射振幅での複数回のCEST実験も必要とする。圧縮センシング法及びパラレルイメージング法を利用してqCEST実験を加速することができる(あたかも完全に記述されているかのようにその全体が参照によって本明細書に組み入れられるHeo,HY,Zhang,Y,Lee,DH,Jiang,S,Zhao,X,Zhou,J.,Accelerating chemical exchange saturation transfer (CEST) MRI by combining compressed sensing and sensitivity encoding techniques.Magnetic Resonance in Medicine,2016:n/a‐n/a.doi:10.1002/mrm.26141を参照のこと)ので、本発明のシステム及び方法と併せたこれらの技法の実施は本発明の範囲内として熟考される。
【0153】
乳酸ナトリウムを注射することによるIVDにおけるpHレベルの操作は限定された程度にのみ変性状態を模倣する。pHの変化に加えて、椎間板変性は髄核におけるGAG及び含水量の喪失に関係する。GAGの喪失はCEST値を有意に低下させ、脱水過程はMR緩和のパラメータの変化を引き起こすであろう。
【0154】
結論
本出願で報告されている実験はIVDにおけるGAGの生体内qCEST解析の実現可能性を実証している。本出願で報告されている実験はまた、qCEST解析から決定される交換速度がpH値と密接に相関し、IVDにてpHを非侵襲的に測定するのに使用することができることも実証している。qCEST法は、IVDの病態に関する追加の情報を提供し、腰痛及びその根底にある変性過程の病態形成についての洞察を得るのに役立つ潜在性を有する。
【0155】
実施例2
結果
IVD変性の誘導
ミニブタは、4つのIVD(L1/2~L4/5)の線維輪に穴を開けて変性を誘導する手術を受けた(
図6)。IVD変性の進行をMRIを用いてモニターし、健常なIVDに比べて穴を開けたIVDではT
2加重のシグナル強度に明瞭な低下があった(
図7A)。穴を開けたIVD内での含水量の2倍の低下は、T
2加重のマッピングに基づいて健常なブタIVDに比べて変性誘導の2週間後すぐに明らかだった(p<0.0001;
図7B)。含水量は2週目に比べて変性誘導の10週後さらに低下した(p<0.05)。加えて、1.6から1.4へのT
1シグナルの有意な低下は健常対照に比べて変性誘導の2週間後注目に値した(p<0.0001;
図7C)。T
1シグナルの1.2までのさらなる低下は変性誘導の6週間後に測定された(p<0.0001)。T
1ρマッピングは変性誘導の2週間後すぐにシグナルの2倍の低下を明らかにした(p<0.0001;
図7D)。全体的に見て、これらの定量的なシグナルは、穴を開けたIVDにおける迅速に進行する変性状況を示している。組織学は、穴開けに続く異常なIVD構造及び細胞マトリクスを示し、変性したIVDに典型的な髄核における広範な線維化及び細胞塊の形成があった(
図7E)。
【0156】
MRシグナルは変性したIVDにおける椎間板内pHと相関する
IVDの変性状況を測定することに加えて、変性IVDからqCESTシグナルを取得した。これらの値はIVDから直接測定した相当するpHの読み取りと相関した(
図8A)。強い相関は変性IVDのqCESTシグナルとpHとの間で観察された(R
2=0.8004;p<0.0001)。2、6及び10週目での利用可能なqCESTの読み取りを健常または変性のいずれかに分類し、それを用いて81.3%感度及び76.1%特異度のROC曲線(曲線下面積=0.813、p=0.0003)を作り出した(
図8B)。7.2から6.3までの有意なpH低下は損傷の2週間後すぐにIVDにて測定された(p=0.0001、
図8C)。pHにおけるこの低下は10週目まで維持された。pH低下に従って、取得したqCESTシグナルは損傷の2週間後有意に上昇した(p<0.05、
図8D)。シグナルのさらなる上昇が6週及び10週で観察された(p<0.01)ということは、物理的測定によっては統計的に有意ではなかったpHにおける小さな変化に対するMRプロトコールの高い感度を実証している。
【0157】
MRシグナルは変性IVDにおける疼痛マーカーと相関する
次に、我々は変性したIVDにおける疼痛関連因子の発現を評価した。採取した変性IVDにて髄核及び線維輪から抽出されたRNAの遺伝子発現解析を行った。具体的には、我々はブラジキニン受容体B1(BDKRB1)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、及びカテコール-0-メチルトランスフェラーゼ(COMT)の発現を評価した。CGRP発現における10倍の上昇は変性の6及び10週後の髄核で観察された(p<0.05、
図9A)。BDKRB1発現の13倍の上昇は変性の6週後、線維輪にて観察された(p<0.05)一方で、有意ではない低下が変性の10週後に観察された(p=0.1367、
図9B)。変性の2、6及び10週後、線維輪にてCOMTの発現で4倍の上昇があった(p<0.01、
図9C)。加えて、炎症過程に関与するIL-6の発現も変性に続いて評価した。IL-6の発現解析は変性の6及び10週後、線維輪にて20倍の上昇を明らかにした(p<0.05、
図9D)。我々はまた、神経の成長に関与する脳由来の神経栄養因子(BDNF)の発現も評価した。変性の6週後、線維輪におけるBDNFの発現で22倍の上昇が観察された(p<0.05、
図9E)。驚くべきことに、変性10週後の線維輪では有意ではない下方調節が観察された(p=0.0925)一方で、その間に髄核では有意な18倍の上昇が観察された(p<0.05)。前述のマーカーに対する抗体による髄核の免疫蛍光染色は、健常IVDに比べて調べた疼痛マーカーの上昇したシグナルと同時局在化を明らかにした(
図10)。COMTとIL-6の同時局在化が変性IVD内で観察されたということは、これらの過程を変性の進行の一部として関連付けている。遺伝子解析の結果とは対照的に、変性の10週後、BDNFの発現は髄核では観察されなかった。しかしながら、場合によっては、タンパク質の発現は免疫蛍光染色では測定できず、遺伝子発現試験は一般にさらに高感度である。全体として見れば、我々は変性したIVDにて幾つかの疼痛因子、炎症因子及び神経原性因子の上方調節があることを見いだした。最終的に、測定したqCESTのシグナルは同じIVDに由来する前述のマーカーの発現レベルと対を為し、強い線形の相関を生じる(すべての対合についてp<0.0001;
図11A~
図11E)。本明細書に記載されている我々の他の結果と組み合わせて、このデータはqCESTシグナルの上昇がIVD内での幾つかの疼痛マーカーの上方調節と相関するので、痛みを伴うIVDの検出を可能にすることを実証している。
【0158】
考察
以前の研究は椎間板起因の腰痛を診断するための測定単位としてpHを評価しようとした。Zuoらは、インタクトなウシ及びヒトの死体IVDにて3.0Tスキャナーで局在した1Hスペクトルを取得して低いpHの原因となる乳酸塩を定量することの実現可能性を実証した(J.Zuo,E.Saadat,A.Romero,K.Loo,X.Li,T.M.Link,J.Kurhanewicz,S.Majumdar,Assessment of intervertebral disc degeneration with magnetic resonance single-voxel spectroscopy.Magn Reson Med,62,1140-1146(2009))。しかしながら、この技法を生体内の分光法に変換することは幾つかの制限に悩まされる。著者らが言及したように、それらの共鳴周波数が近いので脂質ピークから乳酸塩を識別するのは困難である。別の制限は崩壊した空間でのIVDにおける代謝産物の不適切な定量である。同じグループの後者の研究は分光法によって生体内でIVDを特徴付けた(J.Zuo,G.B.Joseph,X.Li,T.M.Link,S.S.Hu,S.H.Berven,J.Kurhanewitz,S.Majumdar,In vivo intervertebral disc characterization using magnetic resonance spectroscopy and T1rho imaging:association with discography and Oswestry Disability Index and Short Form-36 Health Survey.Spine(Phila Pa 1976)37,214-221(2012))。有意な上昇した水/プロテオグリカンの面積比が陽性の椎間板造影法によってIVDで見いだされた。生体内MRSは、低いSNR、生理的な動き及び骨感受性が誘導する線幅拡大のために難題であり、乳酸塩の評価を不正確にしている。
【0159】
別の研究はブタIVD検体にてpHに対するGAGのCEST効果の非線形の依存性を見いだした(G.Melkus,M.Grabau,D.C.Karampinos,S.Majumdar,Ex vivo porcine model to measure pH dependence of chemical exchange saturation transfer effect of glycosaminoglycan in the intervertebral disc.Magn Reson Med,71,1743-1749(2014))。しかしながら、試験は7.0T MRIにて生体外で行われたが、方法の臨床MRシステム(1.5Tまたは3.0T)に対する有効性は示されていない。
【0160】
以前の研究とは対照的に、この研究では、我々はMRIを使用して、IVD変性のミニブタモデルにて生体内で椎間板起因の腰痛を検出した。我々は、MRI及び組織学によって検出されたように、変性は損傷に続く10週間で達成されることを示した。変性過程の間で有意なpH低下が観察されたと共に、qCESTシグナルの有意な上昇も観察された。これらの変化は損傷の2週後すぐに検出された。qCESTのシグナルは変性したIVDから直接得られたpH測定値と良く相関した。遺伝子解析は変性したIVDにて幾つかの疼痛マーカーの上方調節を明らかにし、この上方調節は種々の時点でqCESTのシグナルの上昇と強く相関した。
【0161】
そのようなものとして、種々の実施形態では、本発明は、臨床のMRIシステムで実施することができる。qCEST法を用いてIVDの生理に関する追加の情報を提供し、早期の変性に関連するpH変化を検出することができるので、患者に早期の診断を提供することができる。種々の実施形態では、本発明はまた、IVD変性についての早期の介入及び慢性腰痛の予防も可能にする。
【0162】
材料及び方法
研究計画
我々の研究の目的は、腰痛を診断するためのpHレベル依存的MRイメージングのアプローチを開発することであった。我々の事前に特定した仮説は、変性しているIVDにおける疼痛は椎間板内の酸性環境により少なくとも部分的に生じ、このpH低下はqCESTイメージングを用いて非侵襲的に検出できるということだった。9匹の健常なメスで骨格上成熟したユカタンミニブタ(S&S Farms;平均年齢1.5歳、35~40kg)をこの研究に含めた。一元配置ANOVAを用いて、使用した試料サイズを概算して0.8の検出力及びα=0.05を達成した。qCESTは、IVD内でのpH変化を検出し、この変化が疼痛マーカーの上方調節と相関し得るかどうかを見るその能力について検討された。この目的で、我々は、14Gの針で線維輪に穴を開け、こうしてミニブタ当たり4つの変性しているIVDを作り出すことによって大型で臨床的に関連する動物モデルにてIVD変性のモデルを作り出した(
図6)。次いで、ミニブタは変性の2、6及び10週後、MRI走査を体験した。各時点で、pHメーターを用いてIVD内でのpHを直接測定するために3匹のブタを無作為に安楽死させ、遺伝子発現解析、組織学及び免疫蛍光のために変性したIVDを採取した。イメージングパラメータ及び組織学を用いてIVDの変性を評価した。疼痛は遺伝子発現及び免疫蛍光を用いて検出し、IVD内でのqCEST測定値と比較した。動物の福祉を損なう経過観察中での神経損傷または苦痛の兆候のような急性の手技上の合併症を発症した動物は試験から除外した。
【0163】
IVD変性の動物モデル
動物の処置はすべてCedars-Sinaiメディカルセンターの施設内動物実験委員会によって承認された。IVD変性のモデルは以前確立された方法の改変によって作り出された(O.Mizrahi,D.Sheyn,W.Tawackoli,S.Ben-David,S.Su,N.Li,A.Oh,H.Bae,D.Gazit,Z.Gazit,Nucleus pulposus degeneration alters properties of resident progenitor cells.Spine J13,803-814(2013))。18時間の術前絶食に続いて、各ミニブタを筋肉内アセプロマジン(0.25mg/kg)、ケタミン(20mg/kg)及びアトロピン(0.02~0.05mg/kg)を用いて鎮静した。次いで、動物にプロポフォール(2mg/kg)を静脈内投与し、気管内挿管を行った。処置の間中、1~3.5%の吸入イソフルランを用いて麻酔を維持した。IVD変性を誘導するために、髄核吸引またはアポトーシス剤の注入に比べてそれが最も信頼でき且つ再現性がある方法であることが見いだされているので、線維輪に単一の損傷を作った(K.S.Kim,S.T.Yoon,J.Li,J.S.Park,W.C.Hutton,Disc degeneration in the rabbit: a biochemical and radiological comparison between four disc injury models.Spine(Phila Pa 1976)30,33-37(2005))。蛍光透視鏡の誘導のもとで、14GのVerteportの針(Stryker,Kalamazoo,MI)を用いて後側部のアプローチを介して運動終板に平行にIVDの線維輪に侵入し、損傷させた。4つの標的レベル:L1/L2、L2/L3、L3/L4及びL4/L5にてこの処置を繰り返した。
【0164】
生体内MRI
イメージング実験は3T臨床スキャナー(Magnetom Verio;Siemens Healthcare,Erlangen,Germany)で行った。後面棘突起を中心として巻き付けられたボディアレイコイルと共に動物を右臥位で置いた。イメージング手順の全体を通して麻酔はイソフルラン(1%~3.5%)によって維持した。
【0165】
CEST MRIは、二次元縮小視野TSE CESTシーケンス(TR/TE 1/4 10,500/10ms、2平均、単一ショット)を用いて行った。各IVDについて、画像は、3mmのスライス厚、140×40mm2の視野、及び1.1×1.1mm2の空間分解能で軸平面にて取得した。CEST飽和モジュールは、各パルスについて持続時間tp=80ms、ならびに飽和フリップ角900°、1500°、2100°及び3000°(B1振幅=フリップ角/(gtp)=0.73、1.22、1.71及び2.45μT)でのパルス間遅延td=80ms(デューティサイクル=50%、合計飽和持続時間Ts=6240ms)を伴う39のガウス形状のパルスから成る;Zスペクトルは±1.6ppm、±1.3ppm、±1.0ppm、±0.7ppm及び±0.4ppmでの10の異なる飽和頻度で取得した。各IVDについてのCEST実験の走査時間はおよそ40分だった。B0電界は水飽和シフト参照(WASSR)マップを用いて修正した。
【0166】
T1マッピングは、7つの変化するTI(50、150、350、700、1050、1400、及び2000ms)による反転回復TSEシーケンスを用いて行った。他のイメージングパラメータは、TR/TE=6000/12ms;FOV=280×280mm2;空間分解能=1.1×1.1×3mm3である。
【0167】
T2マッピングは、変化するエコー遅延(TE=12、25、50、99、199及び397ms;TR=6000ms)によるTSEシーケンスを用いて行った。他のイメージングパラメータは、TR=6000ms;FOV=280×280mm2;空間分解能=1.1×1.1×3mm3である。
【0168】
T1ρマッピングは、変化するスピンロック時間(TSL=0、10、40及び80ms)によるrFOV TSEシーケンスを用いて行った。スピンロック周波数は300Hzである。他のイメージングパラメータは、TR/TE=3500/9.1ms;1平均;FOV=140×40mm2;空間分解能=1.1×1.1×3mm3である。イメージングのデータ解析はMATLABにおける特注のプログラムで行った(MathWorks,Natick,Massachusetts,USA)。
【0169】
IVDのpH測定
IVD内部のpHの測定は動物の屠殺の直後に行った。脊椎を外科的に露出し、線維輪の細かく切った切開を介して損傷したIVDの髄核に特注の針状の組織pHプローブ(Warner Instruments,Hamden,Connecticut,USA)を挿入した。
【0170】
遺伝子発現の解析
変性の2、6及び10週後に採取した変性したIVDにて定量的RT-PCRを行った。変性IVDに由来する遺伝子発現を各時点で採取した健常IVDと比較した。製造元のプロトコールに従ってRNeasy Miniキット(Qiagen GmbH,Hilden,Germany)を用いて線維輪及び髄核から全RNAを抽出した。無作為プライマー及び逆転写酵素(Promega Corp.,Madison,WI,USA)を用いてRNAを逆転写した。ABI 7500 Prismシステム(Applied Biosystems,Foster City,CA)の助けを借りて定量的なリアルタイムPCRを行った。調べたブタの遺伝子は、疼痛マーカーの上方調節を検出するためのブラジキニン受容体B1(BDKRB1;Ss03389804_s1,Thermofisher scientific)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP;Ss03386432_uH)及びカテコール-0-メチルトランスフェラーゼ(COMT;Ss04247881_g1)、炎症反応を調べるためのインターロイキン-6(IL-6;Ss03384604_u1)ならびに神経の成長を判定するための脳由来の神経栄養因子(BDNF;Ss03822335_s1)であった。18sをハウスキーピング遺伝子対照として使用した。
【0171】
組織学的解析及び免疫蛍光イメージング
変性の2、6及び10週後に採取した変性したIVDにて組織学的解析を行った。IVDを切片にし、以前記載された(D.Sheyn,D.Cohn Yakubovich,I.Kallai,S.Su,X.Da,G.Pelled,W.Tawackoli,G.Cook-Weins,E.M.Schwarz,D.Gazit,Z.Gazit,PTH promotes allograft integration in a calvarial bone defect.Mol.Pharm.10,4462-4471(2013)ように形態的解析のためにヘマトキシリン及びエオシンを用いて染色した。免疫蛍光染色については、組織を脱パラフィン処理し、37℃で45分間の予備加熱したTarget Retrieval Solution(Dako,Carpinteria,CA)におけるインキュベートによって抗原を検索した。ブロッキング無血清溶液(Dako)を適用することによって非特異的な抗原をブロックした。BDKRB1、CGRP、COMT、IL-6及びBDNFに対する一次抗体でスライドを染色した。一次抗体をスライドに塗布し、4℃で一晩インキュベートし、PBSを用いて洗い流し、スライドを二次抗体と共に室温で1時間インキュベートし、その後、それをPBSで洗い流した(表S1)。次いでスライドを暗所にて4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール二塩酸塩(1μg/ml)で5分間染色し、その後再びそれをPBSで3回洗浄した。VectaMount封入剤(Vector Laboratories,Burlingame,CA)を組織に適用した。×20倍率、z-スタッキング及び5×5のタイル走査での4チャンネルレーザー走査顕微鏡780(Zeiss,Pleasanton,CA)を用いてスライドを画像化した。ズームイン画像については、単一のz-スタック画像を生成した。試料はすべて同じゲイン及び露出の設定を用いて走査した。
【0172】
統計解析
GraphPad Prism 5.0fソフトウエア(GraphPad Prism,San Diego,CA)を用いてデータを解析した。データ解析はTukeyの多重比較事後検定と共に一元配置または二元配置のANOVAを用いて行った。結果は平均値±SEとして提示する。箱髭図では、中央値を横線で示し、箱は25番目の100分位数から75番目の100分位数まで広がり、髭は最小値から最大値まで広がる。qCESTとpH値の間でピアソン相関を行った。qCESTについてROC曲線を生成し、曲線下面積を算出した。0.05未満であるP値を統計的に有意であると見なした。
【0173】
(表S1)試験の全体を通して免疫蛍光法に使用された抗体
*Jackson Immuno Research Laboratories Incから購入した。
【0174】
上記に記載されている種々の方法及び技法は本出願を実施するための多数の手段を提供している。当然、記載されている目的及び利点の必ずしもすべてが本明細書に記載されている特定の実施形態に従って達成することができるわけではないことが理解されるべきである。従って、たとえば、当業者は、本明細書で開示されているまたは示唆されているような他の目的または利点を必ずしも達成することなく、本明細書で開示されているような利点の1つまたは利点の群を達成するまたは最適化するやり方で方法を実施することができることを認識するであろう。種々の代替が本明細書で言及されている。一部の好まれる実施形態が具体的に1つ、もう1つ、または幾つかの特徴を含む一方で、他は具体的に1つ、もう1つ、または幾つかの特徴を排除する一方で、さらに他は1つ、もう1つ、または幾つかの有利な特徴の包含によって特定の特徴を軽減することが理解されるべきである。
【0175】
さらに、当業者は様々な実施形態に由来する種々の特徴の適用可能性を認識するであろう。同様に、上記で考察された種々の要素、特徴及び工程と同様にそのような要素、特徴及び工程それぞれについての他の既知の同等物がこの当該技術の当業者によって種々の君合わせで採用されて本明細書に記載されている原理に従って方法を実施することができる。種々の要素、特徴及び工程の中で、多様な実施形態にて一部が具体的に含まれ、他は具体的に排除されるであろう。
【0176】
本出願は特定の実施形態及び実施例の文脈で開示されているが、本出願の実施形態は具体的に開示された実施形態を超えて他の代替の実施形態及び/またはその使用及び改変及び同等物に拡大することが当業者によって理解されるであろう。
【0177】
本出願を実施するための本発明者らに既知の最良の方法を含む本出願の好まれる実施形態が本明細書に記載されている。それら好まれる実施形態における変化は前述の記載を読んだ際、当業者に明らかになるであろう。当業者は適宜そのような変化を採用することができることが熟考され、本出願は本明細書に具体的に記載されている以外に実践することができる。従って、本出願の多数の実施形態は、適用法令で認められているように本明細書に添付されている特許請求の範囲で引用されている主題の改変及び同等物すべてを含む。さらに、考えられるその変化すべてにおける上述の要素の任意の組み合わせは、本明細書で指示されない限りまたは文脈によって明瞭に矛盾しない限り、本出願によって包含される。
【0178】
本明細書で参照される特許、特許出願、特許出願の出版物、及びたとえば、論文、書籍、明細書、出版物、文書、物、等のような他の物質すべては、本文書と一致しないまたは矛盾するそれら、それらのいずれかに、または本文書に今または後で関連する特許請求の範囲の最も広い範囲に関して制限する影響を有し得るそれらのいずれかに関連する審査出願経歴を除いて、あらゆる目的でその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。例として、組み入れられた物質のいずれかに関連し、且つ本文書に関連する用語の記載、定義及び/または使用の間で不一致または矛盾がある場合、本文書における用語の記載、定義及び/または使用が優先すべきである。
【0179】
本明細書で開示されている本出願の実施形態は本出願の実施形態の原理を説明するのに役立つことが理解されるべきである。採用することができる他の改変は本出願の範囲内にあることができる。従って、例として、しかし、限定ではなく、本出願の実施形態の代替の構成は本明細書での開示に従って利用することができる。従って、本出願の実施形態は正確に示され、記載されているものに限定されない。
【0180】
本発明の種々の実施形態は詳細な説明にて上記で記載されている。これらの記載が上記の実施形態を直接記載する一方で、当業者は、本明細書で示され、記載されている具体的な実施形態に対する改変及び/または変異を思い付いてもよいことが理解される。この記載の範囲の中に入る任意のそのような改変または変化は同様にその中に含まれるように意図される。具体的に言及されない限り、本明細書及び特許請求の範囲における単語及び語句には適用できる技術分野(複数可)の当業者にとって普通で且つ習慣的な意味が与えられることは本発明者らの意図である。
【0181】
本出願を出願するこの時期に出願者に知られている本発明の種々の実施形態の前述の記載が提示されており、説明及び記載を目的とする。本記載は、開示されている正確な形態に徹底的であることも、または本発明をそれに限定することも目的とせず、多数の改変及び変化が上記開示の観点で可能である。記載されている実施形態は、本発明の原理及びその実践的な応用を説明するのに役立ち、他の当業者が種々の実施形態で及び熟考される特定の使用に合うような種々の改変と共に本発明を利用するのを可能にするのに役立つ。従って、本発明は、本発明を実施するために開示されている特定の実施形態に限定されないことが意図される。
【0182】
本発明の特定の実施形態が示され、記載されている一方で、本明細書の開示に基づいて、本発明及びそのさらに広い態様を逸脱することなく変更及び改変が行われてもよいので、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神及び範囲の範囲内にあるようにそのような変更及び改変のすべてをその範囲内に包含するべきであることは当業者に明らかであろう。