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  • 特許-保護フィルムの剥離方法および剥離装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】保護フィルムの剥離方法および剥離装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 41/00 20060101AFI20220311BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
B65H41/00 Z
H05K3/46 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019237902
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021104889
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 貴哉
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一輝
【審査官】飯田 義久
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-309664(JP,A)
【文献】特開2005-029325(JP,A)
【文献】特開2000-086080(JP,A)
【文献】特開2016-001679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 41/00
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線板の製造において、基板上の絶縁層から保護フィルムを剥離する保護フィルムの剥離方法であって、
保護フィルムの一端部の絶縁層に対する密着力を下げる端部きっかけ工程と、
保護フィルムの密着力を下げた一端部を起こす起こし工程と、
起こした一端部から保護フィルムの3辺の端面を絶縁層からはがす端面分離工程と、
3辺の端面がはがされた保護フィルムを絶縁層からはがす剥離工程と、
を含む。
【請求項2】
請求項1に記載の保護フィルムの剥離方法であって、
前記端部きっかけ工程が、
きっかけロッドを保護フィルムに押付ける工程と、
きっかけロッドを保護フィルムから離間させた後保護フィルムの内側へ移動させる工程と、
きっかけロッドを再度保護フィルムに押付け、そのまま保護フィルムの端部へ戻して、保護フィルムの端部に浮きを入れる工程と、
を含む。
【請求項3】
請求項1に記載の保護フィルムの剥離方法であって、
前記起こし工程が、
保護フィルムの密着力をさげて浮きが入った部分に粘着テープを押付ける工程と、
押付けた粘着テープをめくることで保護フィルムの浮きが入った部分を絶縁層から起こす工程と、
を含む。
【請求項4】
請求項1に記載の保護フィルムの剥離方法であって、
前記端面分離工程が、
粘着テープで起こされて持ち上がった保護フィルムと絶縁層との隙間にリムーバを挿入する工程と、
保護フィルムの端面に沿ってリムーバを走らせることで、保護フィルムの3
辺の端面を絶縁層から分離する工程と、
を含む。
【請求項5】
請求項1に記載の保護フィルムの剥離方法であって、
前記剥離工程が、
絶縁層から分離された保護フィルムの端面に粘着テープを貼付けてめくることで、保護フィルムを起こす工程と、
保護フィルムを起こした部分を、把持部材でクランプし、把持部材を移動させることで、保護フィルムを絶縁層から剥離する工程と、
を含む。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の保護フィルムの剥離方法を実行する保護フィルムの剥離装置であって、
前記端部きっかけ工程を実行する端部きっかけ部と、前記起こし工程を実行する起こし部と、前記端面分離工程を実施する端面分離部と、を備える前処理ユニットと、
前記剥離工程を実行する剥離部からなる剥離ユニットと、
を、搬送ライン上に有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板の製造に用いる保護フィルムの剥離方法および剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、回路パターンを構成する導体層と層間絶縁層とからなるビルドアップ層を有するプリント配線板において、層間絶縁層を形成するために、熱硬化性の絶縁層フィルムに保護フィルムを貼付した複合フィルムを用い、絶縁層フィルムを熱硬化して絶縁層を硬化形成した後、保護フィルムを剥離することが行われている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-324974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、絶縁層フィルムとしてヤング率が高い材料が使用されると、絶縁層フィルムとPET樹脂などからなる保護フィルムとの密着性が高くなり、保護フィルムを絶縁層フィルムから剥離する際、保護フィルムの剥離ミスや保護フィルムの破れが発生していた。そのため、保護フィルムの剥離ミスや破れがない保護フィルムの剥離方法の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る保護フィルムの剥離方法は、プリント配線板の製造において、基板上の絶縁層から保護フィルムを剥離する保護フィルムの剥離方法であって、保護フィルムの一端部の絶縁層に対する密着力を下げる端部きっかけ工程と、保護フィルムの密着力を下げた一端部を起こす起こし工程と、起こした一端部から保護フィルムの3辺の端面を絶縁層からはがす端面分離工程と、3辺の端面がはがされた保護フィルムを絶縁層からはがす剥離工程と、を含む。
【0006】
また、本発明に係る保護フィルムの剥離装置は、上述した保護フィルムの剥離方法を実行する剥離装置であって、前記端部きっかけ工程を実行する端部きっかけ部と、前記起こし工程を実行する起こし部と、前記端面分離工程を実施する端面分離部と、を備える前処理ユニットと、前記剥離工程を実行する剥離部からなる剥離ユニットと、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、保護フィルムの剥離方法における所定の方法を実行することで、保護フィルムの剥離ミスや破れがない保護フィルムの剥離方法を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の保護フィルムの剥離方法の一実施形態を説明するためのフローチャートである。
図2】(a)、(b)は、それぞれ、本発明の保護フィルムの剥離方法の一実施形態における端部きっかけ工程を説明するための図である。
図3】(a)、(b)は、それぞれ、本発明の保護フィルムの剥離方法の一実施形態における起こし工程を説明するための図である。
図4】(a)~(c)は、それぞれ、本発明の保護フィルムの剥離方法の一実施形態における端面分離工程を説明するための図である。
図5】(a)、(b)は、それぞれ、本発明の保護フィルムの剥離方法の一実施形態における剥離工程を説明するための図である。
図6】(a)、(b)は、それぞれ、本発明の保護フィルムの剥離方法の一実施形態における剥離工程を説明するための図である。
図7】本発明の保護フィルムの剥離装置の一実施形態における構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の保護フィルムの剥離方法を用いるプリント配線板の一実施形態は、コア基板の片面または両面に所定の回路パターンを有する導体層と樹脂絶縁層とを交互に積層してなるコア付き基板であってよい。コア基板の両面に導体層を形成する場合には、コア基板を介して対向する導体層同士は、スルーホール導体を介して接続されていてもよい。あるいは、プリント配線板は、コア基板の代わりに支持板上で導体層と樹脂絶縁層とを交互に積層した後、支持板を除去してなるコアレス基板であってもよい。いずれにせよ、プリント配線板は、少なくとも1層の樹脂絶縁層のうち最外に配置されたものである基部絶縁層と、基部絶縁層上に形成された、所定の回路パターンを有する導体層とを備えている。基部絶縁層の下層には他の複数の導体層および樹脂絶縁層が交互に設けられている場合が多い。しかし、プリント配線板は、1層の基部絶縁層と1層の導体層とからなるものでもよい。
【0010】
本発明の保護フィルムの剥離方法は、上述した構成のプリント配線板の作製にあたり、絶縁層を形成する場合に用いられる。すなわち、絶縁層を形成するために、熱硬化性の絶縁層フィルムに保護フィルムを貼付した複合フィルムを用い、絶縁層フィルムを熱硬化して絶縁層を硬化形成した後、保護フィルムを剥離する際に用いられる。
【0011】
図1は、本発明の保護フィルムの剥離方法の一実施形態を説明するためのフローチャートである。図1に示す一実施形態において、まず、絶縁層を硬化形成した後の絶縁層と保護フィルムとの複合フィルムにおいて、保護フィルムの一端部の絶縁層に対する密着力を下げる端部きっかけ工程S1を実行する。次に、保護フィルムの密着力を下げた一端部を起こす起こし工程S2を実行する。次に、起こした一端部から保護フィルムの3辺の端面を絶縁層からはがす端面分離工程S3を実行する。最後に、3辺の端面がはがされた保護フィルムを絶縁層からはがす剥離工程S4を実行する。以上の工程S1~S4を順次実行することにより、保護フィルムの剥離ミスや破れがない保護フィルムの剥離方法を行うことができる。
【0012】
図2(a)、(b)は、それぞれ、本発明の保護フィルムの剥離方法の一実施形態における端部きっかけ工程S1を説明するための図である。図2(a)、(b)に示す一実施形態において、10は基板、12は基板10上に形成した絶縁層、14は絶縁層12の保護フィルムである。本実施形態では、図2(a)、(b)に示すように、端部きっかけ工程S1が、きっかけロッド16を保護フィルム14の端部に押付ける工程S11と、きっかけロッド16の押付けで保護フィルム14に入った浮きを広げるために、きっかけロッド16を保護フィルム14から離間させた後保護フィルム14の内側へ移動させる工程S12と、きっかけロッド16を再度保護フィルム14に押付け、そのまま保護フィルム14の端部へ戻して、保護フィルム14の端部に浮きを入れる工程S13と、を含む。

【0013】
図3(a)、(b)は、それぞれ、本発明の保護フィルムの剥離方法の一実施形態における起こし工程S2を説明するための図である。本実施形態では、起こし工程S2が、図3(a)に示すように、保護フィルム14の密着力をさげて浮きが入った部分に粘着テープ18を押付ける工程S21と、図3(b)に示すように、押付けた粘着テープ18を押付けプレート20でめくることで保護フィルム18の浮きが入った部分を絶縁層12から起こす工程S22と、を含む。
【0014】
図4(a)~(c)は、それぞれ、本発明の保護フィルムの剥離方法の一実施形態における端面分離工程S3を説明するための図である。本実施形態では、端面分離工程S3が、図4(a)、(b)に示すように、粘着テープ18で起こされて持ち上がった保護フィルム14の端部と絶縁層12との隙間にリムーバ22を挿入する工程S31と、保護フィルム14の一端面に沿ってリムーバ22を走らせることで一端面を絶縁層12から剥離する工程S32と、図4(c)に示すように、これを他の2辺にも実行して保護フィルム14の3辺の端面を絶縁層12から分離する工程S33と、を含む。
【0015】
上述した端部きっかけ工程S1、起こし工程S2および端面分離工程S3による前処理により、保護フィルム14を絶縁層12から剥離させるためのきっかけを作ることができる。その後、上述した前処理によりきっかけを作った保護フィルム14に対し、従来と同様に、保護フィルム14の剥離を行う。
【0016】
図5(a)、(b)および図6(a)、(b)は、それぞれ、本発明の保護フィルムの剥離方法の一実施形態における剥離工程S4を説明するための図である。本実施形態では、図5(a)、(b)に示すように、絶縁層12から分離された保護フィルム14の端面に粘着テープ24を貼付けてめくることで、保護フィルム14を起こす工程S41と、図6(a)、(b)に示すように、保護フィルム14を起こした部分を、把持部材26でクランプし、把持部材26を移動させることで、保護フィルム14を絶縁層12から剥離する工程S42と、を備える。
【0017】
上述した本発明の保護フィルムの剥離方法に一実施形態において、工程S11~S13において、金属などの材料からなる円柱形状のきっかけロッド16を、保護フィルム14に対し例えば50°傾けた状態で保護フィルム14を押付けることが好ましい。また、工程S13において、保護フィルム14にきっかけロッド16を押付けた状態でのきっかけロッド16の移動方向については、PET樹脂からなる保護フィルム14の場合、PET樹脂の繊維と90°方向に移動させると、浮きを作製しやすくなるため好ましい。さらに、工程S31~S33において、使用するリムーバ22としては、プラスチック材料例えばMCナイロン(登録商標)などの材料からなるものを用いることが好ましい。
【0018】
図7は、本発明の保護フィルムの剥離装置の一実施形態における構成を説明するための図である。本実施形態においては、基板10上に形成した絶縁層12と保護フィルム14とからなる複合フィルムを、搬送ライン30に沿って搬送する。搬送ライン30に沿って、上流側から下流側に、端部きっかけ工程S1を実行する端部きっかけ部32と、起こし工程S2を実行する起こし部34と、端面分離工程S3を実施する端面分離部36と、を備える前処理ユニットU1と、剥離工程S4を実行する剥離部38からなる剥離ユニットU2と、を設けている。40は、搬送ライン30、端部きっかけ部32、起こし部34からなる前処理ユニットU1、および、剥離部38からなる剥離ユニットU2を制御する制御部である。
【0019】
本実施形態において、搬送ライン30は、制御部40の制御により、絶縁層12と保護フィルム14とからなる複合フィルムを形成した基板10を搬送する。端部きっかけ部32においては、きっかけロッド16の動作を制御部40により制御して、工程S11、S12、S13を実行する。起こし部34では、粘着テープ18および押付けプレート20の動作を制御部40により制御して、工程S21、S22を実行する。端面分離部36では、リムーバ22の動作を制御部40により制御して、工程S31、S32、S33を実行する。剥離部38では、粘着テープ24および把持部材26の動作を制御部40により制御して、工程S41、S42を実行する。
【0020】
上述したように、前処理ユニットU1および剥離ユニットU2の動作を制御部40により制御することで、本発明に係る保護フィルムの剥離方法を、人手を介さずに自動的に実行することができる、保護フィルムの剥離装置を得ることができる。
【符号の説明】
【0021】
10 基板
12 絶縁層
14 保護フィルム
16 きっかけロッド
18 粘着テープ
20 押付けプレート
22 リムーバ
24 粘着テープ
26 把持部材
30 搬送ライン
32 端部きっかけ部
34 起こし部
36 端面分離部
38 剥離部
40 制御部
U1 前処理ユニット
U2 剥離ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7