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特許7038697網膜剥離および他の眼性障害を治療するための方法およびポリマー組成物
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  • 特許-網膜剥離および他の眼性障害を治療するための方法およびポリマー組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】網膜剥離および他の眼性障害を治療するための方法およびポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/18 20060101AFI20220311BHJP
   A61F 9/007 20060101ALI20220311BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20220311BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220311BHJP
   A61K 31/795 20060101ALI20220311BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220311BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20220311BHJP
   A61L 27/16 20060101ALI20220311BHJP
   A61L 27/52 20060101ALI20220311BHJP
   A61L 27/58 20060101ALI20220311BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220311BHJP
   A61K 47/02 20060101ALN20220311BHJP
   A61K 47/10 20060101ALN20220311BHJP
【FI】
A61L27/18
A61F9/007 120
A61K9/06
A61K9/08
A61K31/795
A61K47/32
A61K47/34
A61L27/16
A61L27/52
A61L27/58
A61P27/02
A61K47/02
A61K47/10
【請求項の数】 36
(21)【出願番号】P 2019500823
(86)(22)【出願日】2017-07-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-08
(86)【国際出願番号】 US2017041947
(87)【国際公開番号】W WO2018013819
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-07-10
(31)【優先権主張番号】62/361,746
(32)【優先日】2016-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511140770
【氏名又は名称】マサチューセッツ アイ アンド イヤー インファーマリー
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】ステファター,ジェームス,アンソニー ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】ストリジュースキ,トマシュ,パウェル
【審査官】深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0009872(US,A1)
【文献】特表2015-516240(JP,A)
【文献】特表2008-526965(JP,A)
【文献】Journal of Materials Chemistry B,2015年,Vol.3,pp.1097-1105
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61L 27/00-27/60
CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
網膜剥離または黄斑円孔を修復するための硝子体切除術を受けたことのある被験体の眼内の網膜組織と接触し、該網膜組織を支持する方法に使用するための医薬であって、該医薬が核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーを含有し、該方法が、
a. 網膜剥離または黄斑円孔を修復するための硝子体切除術を受けたことのある該被験体の眼の硝子体腔に、該核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーの有効量を注入する工程;ならびに
b. 該核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーを反応させて、硝子体腔内でヒドロゲルを形成し、ヒドロゲルが眼内で該網膜組織と接触し、該網膜組織を支持し、それにより網膜タンポナーデを提供する工程
を含み、ここで該核機能性ポリマーは、複数のチオ官能基-OC(O)-(CH 2 CH 2 )-SHを含むポリ(ビニルアルコール)を含、該電子機能性ポリマーは、少なくとも1つのチオール反応性基-OC(O)CH=CH 2 を含むポリ(エチレングリコール)を含む、医薬。
【請求項2】
該網膜組織が、網膜剥離を修復するための硝子体切除術を受けたことがある被験体の眼内において接触および支持され、該被体が、網膜組織における物理的な不連続性、網膜組織の破れ目、網膜組織の裂け目または網膜組織の穴を有する、請求項1記載の医薬。
【請求項3】
被験体の眼内に網膜タンポナーデを提供する方法に使用するための医薬であって、該医薬が核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーを含有し、該方法が、
a. 該被験体の眼の硝子体腔に、該核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーの有効量を注入する工程;ならびに
b. 該核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーを反応させてヒドロゲルを形成し、該ヒドロゲルが硝子体腔内に網膜タンポナーデを形成する工程
を含み、ここで該核機能性ポリマーは、複数のチオ官能基-OC(O)-(CH 2 CH 2 )-SHを含むポリ(ビニルアルコール)を含、該電子機能性ポリマーは、少なくとも1つのチオール反応性基-OC(O)CH=CH 2 を含むポリ(エチレングリコール)を含む、医薬。
【請求項4】
被験体の眼内に医薬組成物を含む網膜タンポナーデを提供する方法に使用するための医薬であって、該医薬が核機能性ポリマー、電子機能性ポリマーおよび医薬組成物を含有し、該方法が、
a. 該被験体の眼の硝子体腔に、該核機能性ポリマー、電子機能性ポリマーおよび医薬組成物の有効量を注入する工程;ならびに
b. 該核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーを反応させてヒドロゲルを形成し、該ヒドロゲルが硝子体腔内に医薬組成物を含む網膜タンポナーデを形成する工程
を含み、ここで該核機能性ポリマーは、複数のチオ官能基-OC(O)-(CH 2 CH 2 )-SHを含むポリ(ビニルアルコール)を含、該電子機能性ポリマーは、少なくとも1つのチオール反応性基-OC(O)CH=CH 2 を含むポリ(エチレングリコール)を含む、医薬。
【請求項5】
該網膜タンポナーデが、網膜組織における物理的な不連続性、網膜組織の破れ目、網膜組織の裂け目または網膜組織の穴を有する被験体の眼内に提供される、請求項3又は4記載の医薬。
【請求項6】
該網膜タンポナーデが、黄斑円孔のための手術を受けたことがあるか、網膜上膜の少なくとも一部を除去するための手術を受けたことがあるか、硝子体黄斑牽引のための硝子体切除術を受けたことがあるか、裂孔原性網膜剥離を有するか、牽引性網膜剥離を有するか、または漿液性網膜剥離を有する被験体の眼内に提供される、請求項3~5いずれか記載の医薬。
【請求項7】
該核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーが、液体水性医薬として別々に、または単一の液体水性医薬として一緒に、該被験体の眼の硝子体腔に注入される、請求項1~6いずれか記載の医薬。
【請求項8】
別々の液体水性医薬または単一の液体水性医薬が、7.2~7.6の範囲のpHを有する、請求項7記載の医薬。
【請求項9】
ヒドロゲルが、1.2~1.5の範囲の屈折率を有する、請求項1~8いずれか記載の医薬。
【請求項10】
ヒドロゲルが、2cmの厚さを有するヒドロゲルを通して測定された場合に、可視スペクトル内の光について少なくとも90%の透明度を有する、請求項1~9いずれか記載の医薬。
【請求項11】
ヒドロゲルが、10分未満のゲル化時間を有する、請求項1~10いずれか記載の医薬。
【請求項12】
ヒドロゲルが、3~7日以内、2~8週以内、または4ヶ月~6ヶ月以内、または12ヶ月もしくは24ヶ月以内に該被験体の眼からの完全な生分解を受ける、請求項1~11いずれか記載の医薬。
【請求項13】
ヒドロゲルが、眼の硝子体腔内に配置された場合に1~3週または8~15週の範囲の生分解半減期を有する、請求項1~12いずれか記載の医薬。
【請求項14】
ヒドロゲルが、25mmHg未満の眼内圧力を生じる、請求項1~13いずれか記載の医薬。
【請求項15】
該核機能性ポリマーが、500g/mol~1,000,000g/molの範囲の重量平均分子量を有し、該電子機能性ポリマーが、500g/mol~1,000,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する、請求項1~14いずれか記載の医薬。
【請求項16】
(i)チオ官能基 対(ii)少なくとも1つのチオール反応性基のモル比が10:1~1:10、5:1~1:1または2:1~1:1の範囲にある、請求項1~15いずれか記載の医薬。
【請求項17】
該網膜タンポナーデが、硝子体切除術を受けたことがある被験体の眼内に提供される、請求項1~16いずれか記載の医薬。
【請求項18】
ポリ(エチレングリコール)が、直鎖、分岐、デンドリマーまたはマルチアームである、請求項1~17いずれか記載の医薬。
【請求項19】
被験体の眼内の網膜組織とポリマーを接触させるための医薬であって、該医薬が、核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーの有効量を含み、
該核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーは、反応し、硝子体腔内でヒドロゲルを形成し、ここで該核機能性ポリマーは、複数のチオ官能基-OC(O)-(CH 2 CH 2 )-SHを含むポリ(ビニルアルコール)を含、該電子機能性ポリマーは、少なくとも1つのチオール反応性基-OC(O)CH=CH 2 を含むポリ(エチレングリコール)を含む、医薬。
【請求項20】
該網膜組織が、網膜組織における物理的な不連続性、網膜組織の破れ目、網膜組織の裂け目または網膜組織の穴を有する被験体の眼内において接触させられる、請求項19記載の医薬。
【請求項21】
該網膜組織が、黄斑円孔のための手術を受けたことがあるか、網膜上膜の少なくとも一部を除去するための手術を受けたことがあるか、硝子体黄斑牽引のための硝子体切除術を受けたことがあるか、裂孔原性網膜剥離を有するか、牽引性網膜剥離を有するか、または漿液性網膜剥離を有する被験体において接触させられる、請求項19または20記載の医薬。
【請求項22】
該核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーが、液体水性医薬として別々に、または単一の液体水性医薬として一緒に、該被験体の眼の硝子体腔に投与される、請求項1921いずれか記載の医薬。
【請求項23】
別々の液体水性医薬または単一の液体水性医薬が、7.2~7.6の範囲のpHを有する、請求項22記載の医薬。
【請求項24】
ヒドロゲルが、1.2~1.5の範囲の屈折率を有する、請求項1923いずれか記載の医薬。
【請求項25】
ヒドロゲルが、2cmの厚さを有するヒドロゲルを通して測定された場合に、可視スペクトル内の光について少なくとも90%の透明度を有する、請求項1924いずれか記載の医薬。
【請求項26】
ヒドロゲルが、10分未満のゲル化時間を有する、請求項1925いずれか記載の医薬。
【請求項27】
ヒドロゲルが、3~7日以内、2~8週以内、または4ヶ月~6ヶ月以内、または12ヶ月もしくは24ヶ月以内に該被験体の眼からの完全な生分解を受ける、請求項1926いずれか記載の医薬。
【請求項28】
ヒドロゲルが、眼の硝子体腔内に配置された場合に1~3週または8~15週の範囲の生分解半減期を有する、請求項1927いずれか記載の医薬。
【請求項29】
ヒドロゲルが、25mmHg未満の眼内圧力を生じる、請求項1928いずれか記載の医薬。
【請求項30】
該核機能性ポリマーが、500g/mol~1,000,000g/molの範囲の重量平均分子量を有し、該電子機能性ポリマーが、500g/mol~1,000,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する、請求項1929いずれか記載の医薬。
【請求項31】
(i)チオ官能基 対(ii)少なくとも1つのチオール反応性基のモル比が10:1~1:10、5:1~1:1または2:1~1:1の範囲にある、請求項1930いずれか記載の医薬。
【請求項32】
該網膜組織が、硝子体切除術を受けたことがある被験体において接触させられる、請求項1931いずれか記載の医薬。
【請求項33】
被験体の眼内でヒドロゲルを形成するための注射可能眼性製剤であって、該製剤が、
a. 複数のチオ官能基-OC(O)-(CH 2 CH 2 )-SHを含むポリ(ビニルアルコール)を含む核機能性ポリマー;
b. 少なくとも1つのチオール反応性基-OC(O)CH=CH 2 を含むポリ(エチレングリコール)を含む電子機能性ポリマー;および
c. 被験体の眼への投与のための液体の薬学的に許容され得る担体
を含む、製剤。
【請求項34】
該核機能性ポリマーが、500g/mol~1,000,000g/molの範囲の重量平均分子量を有し、該電子機能性ポリマーが、500g/mol~1,000,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する、請求項33記載の製剤。
【請求項35】
(i)チオ官能基 対(ii)少なくとも1つのチオール反応性基のモル比が10:1~1:10、5:1~1:1または2:1~1:1の範囲にある、請求項33または34記載の製剤。
【請求項36】
該製剤が水を含み、該製剤が7.1~7.7の範囲のpHを有する、請求項3335いずれか記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2016年7月13日に出願された米国仮特許出願第62/361,746号の利益および優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、網膜剥離および他の眼性障害を治療するための方法およびポリマー組成物を提供し、該方法は、被験体の眼中でヒドロゲルを形成し得るポリマー組成物を使用する。
【背景技術】
【0003】
背景
網膜の障害は、弱っていく視力(vision)の喪失の一般的な原因である。網膜剥離、網膜裂孔および黄斑円孔(macular holes)などの種々の網膜の障害のための治療計画(regimen)の一部として手術が必要とされ得る。かかる手術の第1の工程は、眼を占める硝子体ゲルを除去し(すなわち硝子体切除術)、それにより網膜組織への外科的アクセスを可能にすることである。これらの硝子体切除術の終わりに、網膜に力をかけ、望ましくは任意の網膜の裂け目を密閉し、それにより網膜組織をその望ましい位置に維持して網膜を治癒させるための薬剤(すなわちタンポナーデ剤(tamponade agent))が眼に入れられる。現在の医療的実務に一般的に使用されるタンポナーデ剤としては、膨脹性ガスおよびシリコーンオイルが挙げられる。
【0004】
現在利用可能な膨脹性ガスおよびシリコーンオイルのタンポナーデ剤は、複数の望ましくない特徴を有する。例えば、膨脹性ガスタンポナーデ剤で治療された患者は、手術後数週間顔を下に向けた姿勢(face-down position)のままでいなければならず、患者の術後の視力(vision)の質は典型的に不良であり、通常、患者は飛行機によるまたは高標高への旅行が数か月間許可されない。また、膨脹性ガスタンポナーデ剤はしばしば、網膜の下半分における網膜組織の支持において有効性に乏しく、網膜病状が網膜の下半分に位置する場合に問題を生じる。シリコーンオイルタンポナーデ剤は、患者の視野を実質的に歪め、患者は、網膜組織が治癒した後、眼からシリコーンオイルを除去するための第2の手術を受けなければならず、オイルはガスに比べて弱い圧迫力(tamponade force)をかけるという欠点を有する。
【0005】
現在の医療的実務に一般的に使用されるタンポナーデ剤の前述および他の制限は、タンポナーデ剤として他の材料を使用することを調査することを促している。タンポナーデ剤としての使用のために調査される例示的な代替材料としては、例えばBaino in Polymers (2010) vol. 2, pages 286-322;Crafoord et al. in Graefes Arch. Clin. Exp. Ophthalmol. (2011) vol. 249, pages 1167-1174;および米国特許第9,072,809に記載されるものなどの、例えば種々のポリマー材料が挙げられる。しかしながら、眼に容易に投与でき、いったん眼に入ると網膜全体に十分な支持/圧力を提供し、患者に対して毒性でなく、光学的に透明であり、かつタンポナーデ剤を除去するための第2の手術を行う必要なく、硝子体切除後に網膜組織の治癒を促進するのに適当な時間、網膜組織が支持されるように、適当な速度で生分解されるポリマー組成物を達成することは困難である。
【0006】
したがって、網膜タンポナーデを挿入する(install)ためおよび/または網膜剥離および他の眼性障害を治療するための新規の網膜タンポナーデ剤および方法についての必要性がある。本発明はこの必要性に取り組み、他の関連のある利点を提供する。
【発明の概要】
【0007】
概要
本発明は、網膜剥離および他の眼性障害を治療するための方法およびポリマー組成物を提供し、ここで該方法は、被験体の眼においてヒドロゲルを形成し得るポリマー組成物を使用する。該方法は、(i)複数のチオ官能基-R1-SH (式中、R1はエステル含有リンカーである)を含む生体適合性ポリマーである核機能性(nucleo-functional)ポリマー、および(ii)α-β不飽和エステルなどの少なくとも1つのチオール反応性基を含む生体適合性ポリマーである電子機能性(electro-functional)ポリマーを被験体の眼に投与する工程を含む。該核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーは、望ましくは、細いゲージの針を通って患者の眼に容易に注射され得、それにより患者の眼において小さい外科的出入口(port)を通してのポリマーの投与を可能にする低粘度の材料である。これは、患者の眼に対する外傷を最小にし、外科的に実行可能である。該核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーは、混合されると自発的に反応し始め、ここで核機能性ポリマーと電子機能性ポリマーの間の反応の大部分は、ポリマーが患者の眼の中にある間に起こり、それにより患者の眼において、患者の眼内で網膜組織に圧力をかけて支持するヒドロゲルを形成する。
【0008】
本明細書に記載される方法およびポリマー組成物の1つの例示的な利点は、核機能性ポリマーと電子機能性ポリマーの間の反応を促進するために毒性の開始剤または紫外線を必要としないことである。本明細書に記載される方法およびポリマー組成物のさらなる例示的な利点は、核機能性ポリマーと電子機能性ポリマーの間の反応が副生成物を生じないかまたは任意の医学的に有意な熱の形成を生じないことである。したがって、本明細書に記載される方法およびポリマー組成物は、文献に以前に記載される種々のポリマー組成物よりもかなり安全である。本明細書に記載される方法およびポリマー組成物のさらなる例示的な利点は、ポリマーが小さな外科的出入口を通って、ポリマーの任意の有意な分解を生じることなく患者の眼内に挿入され得、ポリマーの反応により形成される得られるヒドロゲルが無毒性であり、網膜組織の治癒に必要な期間にわたり網膜組織を支持するのに適した速度で生分解されることである。例えば、適切な時間での患者の眼からのヒドロゲルの自然な除去(clearance)は、ヒドロゲルタンポナーデ剤を除去するためのその後の手術を行う必要を回避するので、適切な生分解速度は有利である。本発明の種々の局面および態様は、本発明により提供される複数の利点のさらなる記載と共に、以下にさらに詳細に記載される。
【0009】
したがって、本発明の一局面は、被験体の眼内の網膜組織とヒドロゲルを接触させる方法を提供する。該方法は、(a)被験体の眼の硝子体腔に核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーの有効量を投与する工程;ならびに(b)核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーを反応させて、硝子体腔内でヒドロゲルを形成させる工程を含み、ここで該核機能性ポリマーは、複数のチオ官能基-R1-SH (式中、R1はエステル含有リンカーである)を含む生体適合性ポリマーであり、該電子機能性ポリマーは、少なくとも1つのチオール反応性基を含む生体適合性ポリマーである。該核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーは、単一組成物として一緒に被験体の眼の硝子体腔に投与され得るか、代替的に該核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーは、被験体の眼の硝子体腔に別々に投与され得る。該方法はさらに、例えば以下の詳細な説明に記載されるように、核機能性ポリマー、電子機能性ポリマーの同一性、およびそれらから形成されるヒドロゲルの物理的特性に従って特徴付けられ得る。該方法から利益を受け得る例示的な被験体としては、例えば網膜組織に破れ目、網膜組織に裂け目または網膜組織に穴を有する被験体などの網膜組織に物理的な不連続性を有する被験体が挙げられる。ある態様において、該被験体は黄斑円孔のための手術を受けたことがあるか、または硝子体黄斑牽引(vitreomacular traction)のための硝子体切除術を受けたことがある。他のある態様において、被験体は、漿液性網膜剥離を修復するため、牽引性網膜剥離を修復するためまたは網膜上膜の少なくとも一部を除去するための手術を受けたことがある。
【0010】
本発明の別の局面は、被験体の眼において網膜組織を支持する方法を提供し、該方法は、(a)被験体の眼の硝子体腔に核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーの有効量を投与する工程;ならびに(b)核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーを反応させて硝子体腔内でヒドロゲルを形成させる工程を含み、ここで該核機能性ポリマーは、複数のチオ官能基-R1-SH (式中、R1はエステル含有リンカーである)を含む生体適合性ポリマーであり、該電子機能性ポリマーは、少なくとも1つのチオール反応性基を含む生体適合性ポリマーである。該核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーは、被験体の眼の硝子体腔に単一組成物として一緒に投与され得るか、または代替的に該核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーは、被験体の眼の硝子体腔に別々に投与され得る。該方法はさらに、以下の詳細な説明に記載されるように、例えば核機能性ポリマー、電子機能性ポリマーの同一性、およびそれらから形成されるヒドロゲルの物理的特性に従って特徴付けられ得る。該方法により利益を受け得る例示的な被験体としては、例えば網膜組織に破れ目、網膜組織に裂け目または網膜組織に穴を有する被験体などの網膜組織に物理的な不連続性を有する被験体が挙げられる。ある態様において、該被験体は、黄斑円孔のための手術を受けたことがあるか、または硝子体黄斑牽引のための硝子体切除術を受けたことがある。他のある態様において、被験体は、漿液性網膜剥離を修復するため、牽引性網膜剥離を修復するためまたは網膜上膜の少なくとも一部を除去するための手術を受けたことがある。
【0011】
本発明の別の局面は、網膜剥離を有する被験体を治療する方法を提供し、該方法は、(a)網膜組織の少なくとも一部の剥離を有する被験体の眼の硝子体腔に核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーの有効量を投与する工程;ならびに(b)核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーを反応させて、硝子体腔においてヒドロゲルを形成させる工程を含み、ここで該ヒドロゲルは、網膜組織の一部の再付着の間、網膜組織を支持し、該核機能性ポリマーは、複数のチオ官能基-R1-SH (式中、R1はエステル含有リンカーである)を含む生体適合性ポリマーであり、該電子機能性ポリマーは、少なくとも1つのチオール反応性基を含む生体適合性ポリマーである。該核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーは、被験体の眼の硝子体腔に単一組成物として一緒に投与され得るか、または代替的に該核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーは、被験体の眼の硝子体腔に別々に投与され得る。該方法はさらに、以下の詳細な説明に記載されるように、例えば核機能性ポリマー、電子機能性ポリマーの同一性、およびそれらから形成されるヒドロゲルの物理的特性に従って特徴付けられ得る。網膜剥離は、例えば裂孔原性網膜剥離、牽引性網膜剥離または漿液性網膜剥離であり得る。
【0012】
本発明の別の局面は、被験体の眼においてヒドロゲルを形成するための注射可能眼性製剤を提供し、該製剤は、(a)複数のチオ官能基-R1-SH (式中、R1はエステル含有リンカーである)を含む生体適合性ポリマーである核機能性ポリマー;(b)少なくとも1つのチオール反応性基を含む生体適合性ポリマーである電子機能性ポリマー;および(c)被験体の眼への投与のための液体の薬学的に許容され得る担体を含む。ヒドロゲルを形成するためのかかる注射可能眼性製剤は、本明細書に記載される方法において使用され得る。
【0013】
核機能性ポリマーは、例えばポリアルキレンおよびポリヘテロアルキレンのポリマーから選択される生体適合性ポリマーであり得、ポリアルキレンおよびポリヘテロアルキレンのポリマーのそれぞれは(i)複数のチオ官能基-R1-SH、および任意に(ii)1つ以上のヒドロキシル、アルキルエステル、ヒドロキシアルキルエステルまたはアミド基により置換される。ある態様において、該核機能性ポリマーは、
【化1】
(式中、aは1~10の整数であり、bは1~10の整数である)
を含む、生体適合性ポリ(ビニルアルコール)ポリマーである。
【0014】
電子機能性ポリマーは、例えばそれぞれが少なくとも1つのチオール反応性基により置換されているポリアルキレンおよびポリヘテロアルキレンのポリマーから選択される生体適合性ポリマーであり得る。ある態様において、チオール反応性基は-OC(O)CH=CH2である。さらに他の態様において、電子機能性ポリマーは、式:
【化2】
(式中、R*は、それぞれの出現について独立して水素、アルキル、アリールまたはアラルキルであり、mは5~15,000の範囲の整数である)
を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施例1においてさらに記載されるような、例示的な開始材料(すなわちTPVAおよびPEGDA)および分解条件に供されたヒドロゲルの分解産物を示すGPCクロマトグラフであり、ここで該ヒドロゲルは、チオール化されたポリ(ビニルアルコール)およびポリ(エチレングリコール)-ジアクリレートの反応により形成された。
図2図2は、実施例2においてさらに記載されるような、チオール化されたポリ(ビニルアルコール)ポリマーの1H NMR (D2O)スペクトルである。
図3図3は、実施例2においてさらに記載されるような、試験ヒドロゲルの試料においてとられた吸光度スペクトルである。
図4図4は、実施例4においてさらに記載されるような、試験ヒドロゲルのレオロジー特性分析の結果を示すグラフである。
図5図5は、実施例5においてさらに記載されるような、シリンジから容器に分配されたヒドロゲルプレミックスの例示である。
図6図6は、実施例5においてさらに記載されるような、容器中で形成されたヒドロゲルの例示であり、ここで容器は、垂直位置に保持される。
図7図7は、実施例7においてさらに記載されるような、(i)ヒドロゲルプレミックスを受けた(「ヒドロゲル処置した眼」)および(ii)ヒドロゲルプレミックを受けなかった(すなわち「対照」)ウサギの眼についての硝子体内注射後の7日目に得られたウサギ網膜組織の組織病理学的分析の例示である。
図8図8は、実施例8に記載される手順に従ってヒドロゲルを使用した、硝子体切除術後のウサギの眼の例示である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
本発明は、網膜剥離および他の眼性障害を治療するための方法およびポリマー組成物を提供し、ここで該方法は、被験体の眼内でヒドロゲルを形成し得るポリマー組成物を使用する。該方法は、被験体の眼に、(i)複数のチオ官能基-R1-SH (式中、R1はエステル含有リンカーである)を含む生体適合性ポリマーである核機能性ポリマー、および(ii)α-β不飽和エステルなどの少なくとも1つのチオール反応性基を含む生体適合性ポリマーである電子機能性ポリマーを投与する工程を含む。該核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーは、望ましくは、細いゲージの針を通って患者の眼内に容易に注射でき、それにより患者の眼において小さな外科的出入口を通してのポリマーの投与を可能にする低粘度の材料である。これは患者の眼に対する外傷を最小にする。核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーは、いったん混合されると自発的に反応を開始し、ここで核機能性ポリマーと電子機能性ポリマーの反応の大部分は、ポリマーが患者の眼の中にある間に起こり、それにより患者の眼において、患者の眼内の網膜組織に圧力をかけ、網膜組織を支持するヒドロゲルが形成される。
【0017】
本明細書に記載される方法およびポリマー組成物の1つの例示的な利点は、核機能性ポリマーと電子機能性ポリマーの間の反応を促進するために、毒性の開始剤または紫外線を必要としないことである。本明細書に記載される方法およびポリマー組成物のさらなる例示的な利点は、核機能性ポリマーと電子機能性ポリマーの間の反応が副生成物を生じないか、または任意の医学的に有意な熱の形成を生じないことである。したがって、本明細書に記載される方法およびポリマー組成物は、以前の文献に記載された種々のポリマー組成物よりもかなり安全である。本明細書に記載される方法およびポリマー組成物のさらなる例示的な利点は、ポリマーの任意の有意な分解を生じることなく、患者の眼における小さな外科的出入口を通してポリマーが挿入され得、ポリマーの反応により形成された生じるヒドロゲルが無毒性であり、網膜組織の治癒に必要な期間にわたり網膜組織を支持するのに適した速度で生分解されることである。例えば、適切な時間での患者の眼からのヒドロゲルの自然の除去は、ヒドロゲルタンポナーデ剤を除去するためのその後の手術を行う必要を回避するので、適切な生分解速度は有利である。
【0018】
本発明の種々の局面は区切られて、以下に記載されるが、ある特定の区切りにおいて記載される本発明の局面は、任意の特定の区切りには限定されない。
【0019】
I. 定義
本発明の理解を容易にするための、いくつかの用語および句を以下に定義する。
【0020】
本明細書で使用する場合、用語「a」および「an」は、「1つ以上」を意味し、文脈が不適切でない限り複数を含む。
【0021】
本明細書で使用する場合、用語「アルキル」は、飽和の直鎖または分岐の炭化水素、例えば本明細書においてC1-C12アルキル、C1-C10アルキルおよびC1-C6アルキルのそれぞれで称される、1~12、1~10または1~6個の炭素原子の直鎖または分岐の基をいう。例示的アルキル基としては、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2-メチル-1-プロピル、2-メチル-2-プロピル、2-メチル-1-ブチル、3-メチル-1-ブチル、2-メチル-3-ブチル、2,2-ジメチル-1-プロピル、2-メチル-1-ペンチル、3-メチル-1-ペンチル、4-メチル-1-ペンチル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、2,2-ジメチル-1-ブチル、3,3-ジメチル-1-ブチル、2-エチル-1-ブチル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル等が挙げられる。
【0022】
用語「シクロアルキル」は、一価の飽和の環式、二環式または橋かけした環式(例えばアダマンチル)の3~12、3~8、4~8または4~6個の炭素の炭化水素基をいい、本明細書において、例えばシクロアルカンから誘導される「C4-8シクロアルキル」と称される。例示的なシクロアルキル基としては、限定されないが、シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロブタンおよびシクロプロパンが挙げられる。
【0023】
用語「アリール」は当該技術分野で認識され(art-recognized)、炭素環式芳香族基をいう。代表的なアリール基としては、フェニル、ナフチル、アントラセニル等が挙げられる。他に特定されない限り、芳香族環は、1つ以上の環の位置で、例えば、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、カルボン酸、-C(O)アルキル、-CO2アルキル、カルボニル、カルボキシル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド(sulfonamido)、スルホンアミド(sulfonamide)、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリール部分、-CF3、-CN等で置換され得る。用語「アリール」としてはまた、2つ以上の炭素が2つの隣接する環に共通する2つ以上の炭素環式環(該環は「縮合環」である)を有する多環式環系が挙げられ、ここで環の少なくとも1つは芳香族であり、例えば他の環式環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニルおよび/またはアリールであり得る。ある態様において、芳香族環は、1つ以上の環の位置で、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシルまたはアルコキシルで置換される。他のある態様において、芳香族環は置換されず、すなわち非置換である。
【0024】
用語「アラルキル」は、アリール基で置換されたアルキル基をいう。
【0025】
用語「ヘテロアリール」は当該技術分野で認識され、少なくとも1つの環ヘテロ原子を含む芳香族基をいう。ある例において、ヘテロアリール基は、1、2、3または4個の環ヘテロ原子を含む。ヘテロアリール基の代表的な例としては、ピロリル、フラニル、チオフェニル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリダジニルおよびピリミジニル等が挙げられる。他に特定されない限り、ヘテロアリール環は、1つ以上の環の位置で、例えばハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、カルボン酸、-C(O)アルキル、-CO2アルキル、カルボニル、カルボキシル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリール部分、-CF3、-CN等で置換され得る。用語「ヘテロアリール」としてはまた、2つ以上の炭素が2つの隣接する環(該環は「縮合環」である)に共通する2つ以上の環を有する多環式環系が挙げられ、ここで環の少なくとも1つは、ヘテロ芳香族であり、例えば他の環式環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニルおよび/またはアリールであり得る。ある態様において、ヘテロアリール環は、1つ以上の環の位置で、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシルまたはアルコキシルで置換される。他のある態様において、ヘテロアリール環は置換されず、すなわち非置換である。
【0026】
用語「ヘテロアラルキル」はヘテロアリール基で置換されたアルキル基をいう。
【0027】
用語オルト、メタおよびパラは当該技術分野で認識され、それぞれ1,2-、1,3-および1,4-二置換されたベンゼンをいう。例えば、名称1,2-ジメチルベンゼンおよびオルトジメチルベンゼンは同義である。
【0028】
用語「ヘテロシクリル」および「複素環式基」は当該技術分野で認識され、飽和または部分不飽和の3~10員環構造、代替的に3~7員環をいい、それらの環構造は、窒素、酸素および硫黄などの1~4個のヘテロ原子を含む。ヘテロシクリル基中の環原子の数は、Cx-Cx命名を使用して特定され得、ここでxは、環原子の数を特定する整数である。例えば、C3-C7ヘテロシクリル基は、窒素、酸素および硫黄などの1~4個のヘテロ原子を含む飽和または部分不飽和の3~7員環構造をいう。名称「C3-C7」は、複素環式環が、環原子の位置を占める任意のヘテロ原子を含めて合計3~7個の環原子を含むことを示す。C3ヘテロシクリルの一例はアジリジニルである。複素環はまた、単環式、二環式または他の多環式環系であり得る。複素環は、1つ以上のアリール、部分的に不飽和の環または飽和環に縮合され得る。ヘテロシクリル基としては、例えば、ビオチニル、クロメニル、ジヒドロフリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジチアゾリル、ホモピペリジニル、イミダゾリジニル、イソキノリル、イソチアゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、オキソラニル、オキサゾリジニル、フェノキサンテニル(phenoxanthenyl)、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリジン-2-オニル、ピロリニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロイソキノリル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロキノリル、チアゾリジニル、チオラニル、チオモルホリニル、チオピラニル、キサンテニル、ラクトン、ラクタム、例えばアゼチジノンおよびピロリジノン、スルタム、スルトン等が挙げられる。他に特定されない限り、複素環式環は任意に、1つ以上の位置で、アルカノイル、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミジノ、アミノ、アリール、アリールアルキル、アジド、カルバメート、カルボネート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、イミノ、ケトン、ニトロ、ホスフェート、ホスフォナト(phosphonato)、ホスフィナト(phosphinato)、スルフェート、スルフィド、スルホンアミド、スルホニルおよびチオカルボニル等の置換基で置換される。ある態様において、ヘテロシクリル基は置換さずれ、すなわち非置換である。
【0029】
用語「アミン」および「アミノ」は、当該技術分野で認識され、非置換アミンおよび置換アミンの両方、例えば一般式-N(R50)(R51) (式中、R50およびR51はそれぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アルケニル、アリール、アラルキルまたは-(CH2)m-R61であるか、またはR50およびR51は、それらが結合するN原子と一緒になって、環構造中に4~8個の原子を有する複素環を完成させ、R61は、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環または多環式環であり、mは、0または1~8の範囲の整数である)により表される部分をいう。ある態様において、R50およびR51はそれぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニルまたは-(CH2)m-R61である。
【0030】
用語「アルコキシル」または「アルコキシ」は、当該技術分野で認識され、それに結合した酸素ラジカルを有する先に定義されるようなアルキル基をいう。代表的なアルコキシル基としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、tert-ブトキシ等が挙げられる。「エーテル」は、酸素により共有結合した2つの炭化水素である。したがって、アルキルをエーテルにするアルキルの置換基は、アルコキシルであるかまたはアルコキシルに似ており、例えば-O-アルキル、-O-アルケニル、-O-アルキニル、-O-(CH2)m-R61(式中、mおよびR61は先に記載される)の1つで表され得る。
【0031】
本明細書で使用する場合、用語「アミド(amide)」または「アミド(amido)」は、形態-RaC(O)N(Rb)-、-RaC(O)N(Rb)Rc-、-C(O)NRbRcまたは-C(O)NH2のラジカルをいい、ここでRa、RbおよびRcは、それぞれ独立して、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、水素、ヒドロキシル、ケトンまたはニトロである。アミドは、炭素、窒素、Rb、RcまたはRaを介して別の基に結合され得る。アミドはまた、環式であり得、例えばRbおよびRc、RaおよびRbまたはRaおよびRcは、結合されて、3~12員環、例えば3~10員環または5~6員環を形成し得る。
【0032】
本開示の化合物は、1つ以上のキラル中心および/または二重結合を含み得るので、幾何異性体、エナンチオマーまたはジアステレオマーなどの立体異性体として存在し得る。用語「立体異性体」は、本明細書で使用する場合、全ての幾何異性体、エナンチオマーまたはジアステレオマーからなる。これらの化合物は、ステレオジェン(stereogenic)炭素原子の周囲の置換基の立体配置に応じて記号「R」または「S」により指定され得る。本発明は、これらの化合物の種々の立体異性体およびそれらの混合物を包含する。立体異性体としては、エナンチオマーおよびジアステレオマーが挙げられる。エナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物は、命名法において「(±)」と指定され得るが、当業者は、構造がキラル中心を黙示的に示し得ることを理解する。化学構造、例えば一般的化学構造の図示的描写は、そうではないと示されない限り、特定の化合物の全ての立体異性体形態を包含することが理解される。
【0033】
本明細書で使用する場合、用語「被験体」および「患者」は、本発明の方法により治療される生物をいう。かかる生物は、好ましくは哺乳動物(例えば、マウス、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ等)であり、より好ましくはヒトである。
【0034】
本明細書で使用する場合、用語「有効量」は、有益なまたは望ましい結果をもたらすのに十分な化合物(例えば本発明の化合物)の量をいう。本明細書で使用する場合、用語「治療(treating)」は、状態、疾患、障害等の向上、またはその症状の改善を生じる任意の効果、例えば低下、低減、調節、改善もしくは排除を含む。
【0035】
本明細書で使用する場合、用語「医薬組成物」は、活性剤と、組成物を診断または治療的なインビボまたはエクソビボにおける使用に特に適したものにする不活性または活性な担体との組合せをいう。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容され得る担体」は、標準的な医薬担体、例えばリン酸緩衝化食塩水溶液、水、エマルジョン(例えば油/水または水/油エマルジョン等)および種々の型の湿潤剤のいずれかをいう。ある態様において、薬学的に許容され得る担体は、平衡塩溶液(balanced salt solution)であるかまたはそれを含む。該組成物はまた、安定化剤および保存剤を含み得る。担体、安定化剤およびアジュバントの例について、例えばMartin, Remington's Pharmaceutical Sciences, 15版、Mack Publ. Co., Easton, PA [1975]参照。該組成物は任意に色素を含み得る。したがって、ある態様において、該組成物はさらに色素を含む。
【0037】
説明を通じて、ポリマーの分子量は、ポリマーの分子量が数平均分子量であることが明確に示されるなど文脈が明らかにそうではないと示さない限り、重量平均分子量である。
【0038】
組成物およびキットが特定の成分を有するか含む(including)かもしくは含む(comprising)と記載されるか、またはプロセスおよび方法が特定の工程を有するか含むかもしくは含むと記載される説明を通じて、さらに、記載される成分から本質的になるまたは該成分からなる本発明の組成物およびキットが存在すること、ならびに記載される処理工程から本質的になるかまたは該工程からなる本発明のプロセスおよび方法が存在することが企図される。
【0039】
一般的事項としてパーセンテージを特定する組成は、そうではないと特定されない限り重量パーセントである。さらに、変数が定義を伴わなければ、該変数の以前の定義が支配する。
【0040】
II. 治療方法およびヒドロゲルを形成するための注射可能な眼性製剤
本発明は、網膜剥離および他の眼性障害を治療するための方法およびポリマー組成物を提供し、ここで該方法は、被験体の眼においてヒドロゲルを形成し得るポリマー組成物を使用する。該方法は、例えば被験体の眼において網膜組織とヒドロゲルを接触させるための方法、網膜組織を支持するための方法、網膜剥離を有する被験体を治療するための方法、および低圧を治療するための方法、脈絡膜滲出を治療するための方法、眼の前眼房においてまたはそれに隣接して組織を支持するための方法、ならびに鼻涙管を維持または拡張する方法ならびにヒドロゲルを形成するための注射可能な眼性製剤を含む。該方法および組成物は以下により詳細に記載される。
【0041】
第1の方法-被験体の眼において網膜組織とヒドロゲルを接触させる
本発明の一局面は、被験体の眼において網膜組織とヒドロゲルを接触させる方法を提供する。該方法は、(a)被験体の眼の硝子体腔に、核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーの有効量を投与する工程;ならびに(b)該核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーを反応させて、硝子体腔においてヒドロゲルを形成させる工程を含み、ここで該核機能性ポリマーは、複数のチオ官能基-R1-SH (式中、R1はエステル含有リンカーである)を含む生体適合性ポリマーであり、該電子機能性ポリマーは、少なくとも1つのチオール反応性基を含む生体適合性ポリマーである。
【0042】
該方法はさらに、例えば被験体の同一性により特徴付けられ得る。ある態様において、被験体は、網膜組織において物理的な不連続性を有する。ある態様において、該物理的な不連続性は、網膜組織の破れ目、網膜組織の裂け目または網膜組織の穴である。他の態様において、被験体は、黄斑円孔のための手術を受けたことがあるか、網膜上膜の少なくとも一部を除去するための手術を受けたことがあるか、または硝子体黄斑牽引のための硝子体切除術を受けたことがある。他の態様において、被験体は、網膜組織の少なくとも一部の剥離を有する。網膜剥離は、例えば裂孔原性網膜剥離であり得る。代替的に、網膜剥離は、牽引性網膜剥離または漿液性網膜剥離であり得る。
【0043】
核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーは、網膜と接触するヒドロゲルを生成するのに有効な量で被験体の眼に投与される。この有効量は、充填される眼の空洞の体積に応じて変化し得るので、大きな眼の空洞は、本明細書において提供される教示に基づいて当業者が容易に決定し得るように、より大きな体積を占有するヒドロゲルを生成するためにより多くの核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーを必要とする。
【0044】
該方法はまた、例えば核機能性ポリマーの同一性、電子機能性ポリマーの同一性、形成されるヒドロゲルの物理的特性および本明細書において以下に記載される他の特徴によりさらに特徴付けられ得る。
【0045】
第2の方法-網膜組織を支持する
本発明の別の局面は、被験体の眼において網膜組織を支持する方法を提供し、該方法は、(a)被験体の眼の硝子体腔に、核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーの有効量を投与する工程;ならびに(b)該核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーを反応させて、硝子体腔においてヒドロゲルを形成させる工程を含み、ここで該核機能性ポリマーは、複数のチオ官能基-R1-SH (式中、R1はエステル含有リンカーである)を含む生体適合性ポリマーであり、該電子機能性ポリマーは、少なくとも1つのチオール反応性基を含む生体適合性ポリマーである。
【0046】
該方法はさらに、例えば被験体の同一性により特徴付けられ得る。ある態様において、被験体は、網膜組織における物理的な不連続性を有する。ある態様において、該物理的な不連続性は、網膜組織の破れ目、網膜組織の裂け目または網膜組織の穴である。他の態様において、該被験体は、黄斑円孔のための手術を受けたことがあるか、網膜上膜の少なくとも一部を除去するための手術を受けたことがあるか、または硝子体黄斑牽引のための硝子体切除術を受けたことがある。他の態様において、該被験体は、網膜組織の少なくとも一部の剥離を有する。網膜剥離は、例えば裂孔原性網膜剥離であり得る。代替的に、網膜剥離は、牽引性網膜剥離または漿液性網膜剥離であり得る。
【0047】
核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーは、ヒドロゲルの形成の際に、ヒドロゲルが網膜組織に接触する量などの網膜組織を支持するのに有効な量で被験体の眼に投与される。
【0048】
該方法はまた、例えば核機能性ポリマーの同一性、電子機能性ポリマーの同一性、形成されるヒドロゲルの物理的特性および本明細書の以下に記載される他の特徴によりさらに特徴付けられ得る。
【0049】
第3の方法-網膜剥離を有する被験体を治療する
本発明の別の局面は、網膜剥離を有する被験体を治療する方法を提供し、該方法は、(a)核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーを、網膜組織の少なくとも一部の剥離を有する被験体の眼の硝子体腔に投与する工程;ならびに(b)該核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーを反応させて、硝子体腔においてヒドロゲルを形成させる工程を含み、ここで該ヒドロゲルは、網膜組織の一部の再付着の間に、網膜組織を支持し、該核機能性ポリマーは、複数のチオ官能基-R1-SH (式中、R1はエステル含有リンカーである)を含む生体適合性ポリマーであり、該電子機能性ポリマーは、少なくとも1つのチオール反応性基を含む生体適合性ポリマーである。
【0050】
該方法はさらに、例えば網膜剥離の性質により特徴付けられ得る。ある態様において、該網膜剥離は、裂孔原性網膜剥離である。他の態様において、該被験体は牽引性網膜剥離または漿液性網膜剥離を有する。
【0051】
該核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーは、網膜組織を支持するのに有効な量で被験体の眼に投与され、それにより網膜剥離の治療を容易にする。
【0052】
該方法はまた、例えば核機能性ポリマーの同一性、電子機能性ポリマーの同一性、形成されるヒドロゲルの物理的特性および本明細書において以下に記載される他の特徴によりさらに特徴付けられ得る。
【0053】
第4の方法-低圧を治療する
本発明の別の局面は、眼における低い圧力(すなわち低圧)を有する被験体を治療する方法を提供し、該方法は、(a)核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーの有効量を被験体の眼の硝子体腔に投与する工程;ならびに(b)該核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーを反応させて、硝子体腔においてヒドロゲルを形成させ、それにより眼において低い圧力を有する被験体を治療する工程を含み、ここで該核機能性ポリマーは、複数のチオ官能基-R1-SH (式中、R1はエステル含有リンカーである)を含む生体適合性ポリマーであり、該電子機能性ポリマーは、少なくとも1つのチオール反応性基を含む生体適合性ポリマーである。ある態様において、該方法は、被験体の眼において、少なくとも約1mmHg、2mmHg、5mmHg、7mmHgまたは10mmHgの圧力の増加を引き起こす。
【0054】
ある態様において、該被験体は、脈絡膜滲出(例えば漿液性の脈絡膜滲出または出血性の脈絡膜滲出)に苦しむ。
【0055】
該方法はまた、例えば核機能性ポリマーの同一性、電子機能性ポリマーの同一性、形成されるヒドロゲルの物理的特性および本明細書において以下に記載される他の特徴によりさらに特徴付けられ得る。
【0056】
第5の方法-脈絡膜滲出を治療する
本発明の別の局面は、脈絡膜滲出を治療する方法を提供し、該方法は、(a)核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーの有効量を、脈絡膜滲出を有する被験体の眼に投与する工程;ならびに(b)該核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーを反応させてヒドロゲルを形成させ、それにより脈絡膜滲出を治療する工程を含み、ここで該核機能性ポリマーは、複数のチオ官能基-R1-SH (式中、R1はエステル含有リンカーである)を含む生体適合性ポリマーであり、該電子機能性ポリマーは、少なくとも1つのチオール反応性基を含む生体適合性ポリマーである。
【0057】
ある態様において、該脈絡膜滲出は、漿液性の脈絡膜滲出または出血性の脈絡膜滲出である。
【0058】
ある態様において、該方法は、被験体の眼において、少なくとも約1mmHg、2mmHg、5mmHg、7mmHgまたは10mmHgの圧力の増加を引き起こす。
【0059】
該方法はまた、例えば核機能性ポリマーの同一性、電子機能性ポリマーの同一性、形成されるヒドロゲルの物理的特性および本明細書において以下に記載される他の特徴によりさらに特徴付けられ得る。
【0060】
第6の方法-視覚性能(visual performance)を向上させる
本発明の別の局面は、網膜剥離に苦しむ患者における視覚性能を向上させる方法を提供し、該方法は、(a)被験体の眼の硝子体腔に、核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーの有効量を投与する工程;ならびに(b)該核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーを反応させて、硝子体腔においてヒドロゲルを形成させる工程を含み、ここで該核機能性ポリマーは、複数のチオ官能基-R1-SH (式中、R1はエステル含有リンカーである)を含む生体適合性ポリマーであり、該電子機能性ポリマーは、少なくとも1つのチオール反応性基を含む生体適合性ポリマーである。
【0061】
該方法はさらに、例えば被験体の同一性により特徴付けられ得る。ある態様において、該被験体は、裂孔原性網膜剥離である網膜剥離に苦しみ得る。代替的に、網膜剥離は、牽引性網膜剥離または漿液性網膜剥離であり得る。
【0062】
核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーは、ヒドロゲルの形成の際に、ヒドロゲルが網膜組織と接触する量などの、網膜組織を支持するのに有効な量で被験体の眼に投与される。
【0063】
視覚性能は、患者の全体的な視覚の質に関し、患者の明瞭に見る能力、および対象とその背景を識別する能力を含む。視覚性能の一局面は、患者の明瞭に見る能力の基準である視力(visual acuity)である。視力は、例えば各行に所定の大きさの5文字を有する、特定の大きさの文字を識別する能力により視力が評価される従来の「視力チャート(eye chart)」を使用することにより評価され得る(例えばMurphy, R.P., CURRENT TECHNIQUES IN OPHTHALMIC LASER SURGERY, 3版、L.D. Singerman, and G. Cascas編, Butterworth Heinemann, 2000に記載される「ETDRS」視力チャート参照)。視力の評価は、読む速度および読む時間を測定することによっても達成され得る。視力を測定して、罹患した眼への壊死阻害剤および/またはアポトーシス阻害剤の投与が視力の向上を(例えば20/40の視力(vision)までまたは20/20の視力(vision)までへの)保つかまたは可能にするかを評価し得る。ある態様において、Snellenチャートを使用して患者の視力を測定し得、該測定は、低コントラストの視力を試験する条件または高コントラストの視力を試験する条件下で行われ得る。また、視力の測定は、暗順応条件、薄明視条件および/または明所視条件下で行われ得る。
【0064】
視覚性能の別の局面は、患者の対象とその背景を識別する能力の基準であるコントラスト感度(contrast sensitivity)である。コントラスト感度は、例えば明所視条件、薄明視条件および暗順応条件を含む種々の明るさ条件下で測定され得る。ある態様において、コントラスト感度は、薄明視条件下で測定される。
【0065】
ある態様において、該方法により提供される視覚性能の向上は、向上された視力である。ある態様において、該方法により提供される視覚性能の向上は、暗順応条件下の向上された視力である。ある態様において、該方法により提供される視覚性能の向上は、薄明視条件下での向上された視力である。ある態様において、該方法により提供される視覚性能の向上は、明所視条件下での向上された視力である。ある態様において、視力の向上は、Snellenチャートを使用して測定した場合の患者の視力(vision)における2線(two-line)の向上である。他のある態様において、視力の向上は、Snellenチャートを使用して測定した場合の患者の視力(vision)における1線(one-line)の向上である。
【0066】
ある態様において、該方法により提供される視覚性能の向上は、向上されたコントラスト感度である。コントラスト感度の向上は、明所視条件、薄明視条件および暗順応条件などの種々の光条件下で測定され得る。ある態様において、該方法により提供される視覚性能の向上は、明所視条件下での向上したコントラスト感度である。ある態様において、該方法により提供される視覚性能の向上は、薄明視条件下での向上されたコントラスト感度である。ある態様において、該方法により提供される視覚性能の向上は、暗順応条件下での向上されたコントラスト感度である。
【0067】
該方法により達成される結果は、患者のコントラスト感度における向上に従って特徴付けられ得る。例えば、ある態様において、コントラスト感度の向上は、Holladay Automated Contrast Sensitivity System等の当該技術分野で認識される試験を使用した薄明視条件下で測定される少なくとも10%、20%、30%、50%、60%、70%、80%、90%または100%の向上である。ある態様において、コントラスト感度の向上は、Holladay Automated Contrast Sensitivity Systemなどの当該技術分野で認識される試験を使用した明所視条件下で測定される少なくとも10%、20%、30%、50%、60%、70%、80%、90%または100%の向上である。他のある態様において、コントラスト感度の向上は、Holladay Automated Contrast Sensitivity Systemなどの当該技術分野で認識される試験を使用した薄明視条件または暗順応条件下で測定される少なくとも10%、20%、30%、50%、60%、70%、80%、90%または100%の向上である。
【0068】
視覚性能はまた、斑の厚さの増加があるかどうか(例えば斑の厚さは、光干渉断層撮影(optical coherence tomography) (OCT)により測定される場合の治療なしでの斑よりも15%厚い、35%厚い、50%厚い、60%厚い、70%厚いまたは80%厚い);OCTで見られる場合に光受容細胞層またはその下位区分の向上;視野の向上(例えばHumphrey Visual Field Testにおける平均標準偏差の少なくとも10%だけ);網膜電図(electroretinograph) (ERG)の向上、網膜の光刺激に対する電気応答の測定(例えば少なくとも15%だけのERG振幅の増加):およびまたは網膜の多焦点刺激に対する応答を評価して、網膜の限定された領域の機能の特徴付けを可能にする多焦点ERGの維持もしくは向上を決定することにより測定され得る。
【0069】
視覚性能はまた、網膜の静止電位を測定するための技術である電気眼球図記録法(EOG)により測定され得る。EOGは特に、RPE機能の評価に有用である。EOGを使用して、壊死阻害剤および/またはアポトーシス阻害剤の罹患した眼の網膜への投与が例えばArden比の向上(例えば少なくとも10%のArden比の増加)を維持するかまたは可能にするかを評価し得る。
【0070】
視覚性能はまた、光受容細胞とRPEの間の相互作用の評価を可能にする臨床ツールである眼底自発蛍光(AF)画像化により評価され得る。例えば、眼底AFの増加または眼底AFの低下は、AMDおよび他の眼性障害で生じることが示されている。眼底AF画像化を使用して、壊死阻害剤および/またはアポトーシス阻害剤の罹患した眼の網膜への投与が疾患進行を遅延させるかどうかを評価し得る。
【0071】
視覚性能はまた、網膜の厚さまたは構造に対する網膜の視覚的機能および経時的な被験体の視線固定(fixation)の状態をモニタリングするマイクロペリメトリー(microperimetry)により評価され得る。マイクロペリメトリーを使用して、壊死阻害剤および/またはアポトーシス阻害剤の罹患した眼の網膜への投与が網膜の感度および視線固定の向上を維持するかまたは可能にするかを評価し得る。
【0072】
該方法はまた、例えば核機能性ポリマーの同一性、電子機能性ポリマーの同一性、形成されるヒドロゲルの物理的特性および本明細書において以下に記載される他の特徴によりさらに特徴付けられ得る。
【0073】
第7の方法-眼の前眼房内またはそれに隣接する組織を支持する
本発明の別の局面は、被験体の眼の前眼房内またはそれに隣接する組織を支持する方法を提供し、該方法は、(a)核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーの有効量を、被験体の眼の前眼房に投与する工程;ならびに(b)該核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーを反応させて、前眼房においてヒドロゲルを形成させる工程を含み、ここで該核機能性ポリマーは、複数のチオ官能基-R1-SH (式中、R1はエステル含有リンカーである)を含む生体適合性ポリマーであり、該電子機能性ポリマーは、少なくとも1つのチオール反応性基を含む生体適合性ポリマーである。ある態様において、該方法は、眼の前眼房における移植片を支持する。ヒドロゲルは、眼の前眼房における組織またはそれと隣接する組織と接触して、必要に応じて該組織に力(例えば0.1、0.5、1.0または2.0N)をかけることにより、該組織を支持することを達成する。
【0074】
該方法はまた、例えば核機能性ポリマーの同一性、電子機能性ポリマーの同一性、形成されるヒドロゲルの物理的特性および本明細書において以下に記載される他の特徴によりさらに特徴付けられ得る。
【0075】
第8の方法-鼻涙管を維持または拡張する
本発明の別の局面は、被験体において鼻涙管を維持または拡張する方法を提供し、該方法は、(a)核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーの有効量を、被験体の鼻涙管に投与する工程;ならびに(b)該核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーを反応させて、鼻涙管においてヒドロゲルを形成させる工程を含み、ここで該核機能性ポリマーは、複数のチオ官能基-R1-SH (式中、R1はエステル含有リンカーである)を含む生体適合性ポリマーであり、該電子機能性ポリマーは、少なくとも1つのチオール反応性基を含む生体適合性ポリマーである。該ヒドロゲルは、かかる組織と接触して、必要に応じて該組織に対して力(例えば0.1、0.5、1.0または2.0N)をかけることにより、鼻涙管を維持または拡張することを達成する。
【0076】
該方法はまた、例えば核機能性ポリマーの同一性、電子機能性ポリマーの同一性、形成されるヒドロゲルの物理的特性および本明細書において以下に記載される他の特徴によりさらに特徴付けられ得る。
【0077】
ヒドロゲルを形成するための注射可能な眼性製剤
本発明の別の局面は、被験体の眼においてヒドロゲルを形成するための注射可能な眼性製剤を提供し、該製剤は、(a)複数のチオ官能基-R1-SH (式中、R1はエステル含有リンカーである)を含む生体適合性ポリマーである核機能性ポリマー;(b)少なくとも1つのチオール反応性基を含む生体適合性ポリマーである電子機能性ポリマー;および(c)被験体の眼への投与のための薬学的に許容され得る液体担体を含む。該製剤はさらに、例えば核機能性ポリマーの同一性、電子機能性ポリマーの同一性、形成されるヒドロゲルの物理的特性および本明細書において以下に記載される他の特徴により特徴付けられ得る。
【0078】
該方法および注射可能眼性製剤の一般的な特徴
該方法および注射可能眼性製剤の一般的な特徴を以下に記載する。
【0079】
ヒドロゲルの特徴
治療方法およびヒドロゲルを形成するための組成物は、ヒドロゲルの特徴に従ってさらに特徴付けられ得る。ヒドロゲルの例示的な特徴としては、例えば屈折率、透明度、密度、ゲル化時間、弾性率、粘度(例えば動的粘度)、生分解および眼またはヒドロゲルを形成するためのポリマーが挿入される他の位置内での水素により発生される圧力が挙げられる。
【0080】
ヒドロゲルは、核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーの反応ならびにその後の被験体(例えば被験体の眼)からの水の更新により形成される。核機能性ポリマーとしてのチオール化ポリ(ビニルアルコール)ポリマーおよび電子機能性ポリマーとしてのチオール反応性基を含むポリ(エチレングリコール) (PEG)のより具体的な態様において、ヒドロゲルは、チオール化ポリ(ビニルアルコール) (TPVA)とチオール反応性基を含むポリ(エチレングリコール) (PEG)との架橋反応により形成される。チオール化ポリ(ビニルアルコール)ポリマーは、文献(例えば参照により本明細書に援用される米国特許出願公開公報第2016/0009872号参照)に記載される手順に従って調製され得、チオール基は、チオール官能基の、ポリ(ビニルアルコール)のヒドロキシル基へのカップリングにより、または保護されたチオール官能基のその後の脱保護による使用により、ポリ(ビニルアルコール) (PVA)に組み込まれる。チオール反応性基を含む特定のポリ(エチレングリコール)ポリマー(例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイミジルまたはN-ヒドロキシスクシンイミジル)は、文献(例えば米国特許出願公開公報第2016/0009872号参照)に記載されている。
【0081】
チオール化ポリ(ビニルアルコール)およびチオール反応性基を含むポリ(エチレングリコール)の架橋は、副生成物を形成することなく、毒性の開始剤またはUV供給源の使用を必要とすることなく、マイケル付加を介して生じる。さらに、架橋反応の間に医学的に有意な熱の放出はない。さらに、ポリ(ビニルアルコール)ヒドロゲルを形成するために一般的に使用されるような凍結融解プロセスは必要ない。したがって、核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーは、手術室で容易に混合され得る。また、任意の未反応核機能性ポリマーおよび/または電子機能性ポリマーが存在する程度にまで、これらの成分の分子量は、天然のプロセスにより目から容易に除去されるのに十分に望ましくは十分に低い。
【0082】
PVA(その中においてPVAのヒドロキシル基のいくつかがアセテート基としてエステル化されたまま残る)からのチオール化ポリ(ビニルアルコール)の形成およびその後のチオール化ポリ(ビニルアルコール)とチオール反応性基を含むポリ(エチレングリコール)との反応を、以下のスキームに図示する。
【化3】
【0083】
屈折率
治療方法および組成物は、形成されるヒドロゲルの屈折率に従って特徴付けられ得る。例えば、ある態様において、ヒドロゲルは、約1.2~約1.5の範囲の屈折率を有する。他のある態様において、ヒドロゲルは、約1.3~約1.4の範囲の屈折率を有する。他のある態様において、ヒドロゲルは、約1.30~約1.35または約1.31~約1.36の範囲の屈折率を有する。
【0084】
透明度
治療方法および組成物は、形成されるヒドロゲルの透明度に従って特徴付けられ得る。例えば、ある態様において、ヒドロゲルは、2cmの厚さを有するヒドロゲルを通して測定した場合、可視スペクトル内の光について少なくとも95%の透明度を有する。ある態様において、ヒドロゲルは、2cmの厚さを有するヒドロゲルを通して測定した場合、可視スペクトル内の光について少なくとも90%、94%または98%の透明度を有する。
【0085】
密度
治療方法および組成物は、形成されるヒドロゲルの密度に従って特徴付けられ得る。例えば、ある態様において、ヒドロゲルは、約1~約1.5g/mLの範囲の密度を有する。他のある態様において、ヒドロゲルは、約1~約1.2g/mL、約1.1~約1.3g/mL、約1.2~約1.3g/mLまたは約1.3~約1.5g/mLの範囲の密度を有する。他のある態様において、ヒドロゲルは、約1~約1.2g/mLの範囲の密度を有する。他のある態様において、ヒドロゲルは、約1~約1.1g/mLの範囲の密度を有する。
【0086】
ゲル化時間
治療方法および組成物は、ヒドロゲルのゲル化時間(すなわち、一旦核機能性ポリマーが電子機能性ポリマーと合されると、ヒドロゲルが形成されるのにどのくらい長くかかるのか)に従って特徴付けられ得る。例えば、ある態様において、ヒドロゲルは、核機能性ポリマーと電子機能性ポリマーを合わせた後、約1分~約30分のゲル化時間を有する。ある態様において、ヒドロゲルは、核機能性ポリマーと電子機能性ポリマーを合わせた後、約5分~約30分のゲル化時間を有する。他のある態様において、ヒドロゲルは、核機能性ポリマーと電子機能性ポリマーを合わせた後、約5分~約20分のゲル化時間を有する。他のある態様において、ヒドロゲルは、核機能性ポリマーと電子機能性ポリマーを合わせた後、約5分~約10分のゲル化時間を有する。他のある態様において、ヒドロゲルは、約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55または60分未満のゲル化時間を有する。
【0087】
弾性率
治療方法および組成物は、形成されるヒドロゲルの弾性率に従って特徴付けられ得る。例えば、ある態様において、ヒドロゲルは、25℃の温度で約200Pa~約15kPaの範囲の弾性率を有する。ある態様において、ヒドロゲルは、25℃の温度で約600Pa~約7kPaの範囲の弾性率を有する。
【0088】
動的粘度
治療方法および組成物は、形成されるヒドロゲルの動的粘度に従って特徴付けられ得る。例えば、ある態様において、ヒドロゲルは、20℃の温度で約20~60cPの範囲の動的粘度を有する。
【0089】
生分解
治療方法および組成物は、ヒドロゲルが生分解性であるかどうかに従って特徴付けられ得る。したがって、ある態様において、ヒドロゲルは生分解性である。生分解性ヒドロゲルはさらに、ヒドロゲルが眼から生分解を受ける速度に従って特徴付けられ得る。ある態様において、ヒドロゲルは、約2週~約8週以内に被験体の眼から完全な生分解を受ける。ある態様において、ヒドロゲルは、約3週~約5週以内に被験体の眼から完全な生分解を受ける。ある態様において、ヒドロゲルは、約4ヶ月~約6ヶ月以内に被験体の眼から完全な生分解を受ける。ある態様において、ヒドロゲルは、約3日~約7日以内に被験体の眼から完全な生分解を受ける。ある態様において、ヒドロゲルは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24週以内に被験体の眼から完全な生分解を受ける。ある態様において、ヒドロゲルは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24ヶ月以内に被験体の眼から完全な生分解を受ける。
【0090】
ある態様において、ヒドロゲルは、眼の硝子体腔内に配置された場合に、約4日~約20日の範囲の生分解半減期を有する。ある態様において、ヒドロゲルは、眼の硝子体腔内に配置された場合に、約1ヶ月~約2ヶ月の範囲の生分解半減期を有する。ある態様において、ヒドロゲルは、眼の硝子体腔内に配置された場合に、約1週~約3週の範囲の生分解半減期を有する、ある態様において、ヒドロゲルは、眼の硝子体腔内に配置された場合に、約8週~約15週の範囲の生分解半減期を有する。ある態様において、ヒドロゲルは、眼の硝子体腔内に配置された場合に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24週未満の生分解半減期を有する。ある態様において、ヒドロゲルは、眼の硝子体腔内に配置された場合に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24ヶ月未満の生分解半減期を有する。
【0091】
さらに他の態様において、ヒドロゲルは、20℃~25℃の範囲の温度で約5週後、またはその中の全ての値および範囲を含む約4週~10週以内に液体に変わる。態様において、ヒドロゲル内に残るエステル結合は、リン酸緩衝化食塩水などの溶液中、室温で分解し得る。態様において、分解は数日後に開始し得、ヒドロゲルはほぼ完全に分解され得、すなわちヒドロゲルは可溶性産物を形成し、ヒドロゲルは20℃~25℃の範囲の温度で約5週目に液体に変わる。分解の速度は、総架橋密度、架橋内のエステル結合の数および環境の特性を含むいくつかのパラメーターに基づく。
【0092】
核機能性(nucle-functional)ポリマーおよび/または電子機能性ポリマー内への分解性構成要素の計画的な含入は、選択された用途におけるこれらの材料の分解性および寿命の調節を可能にする。分解性構成要素の例は、架橋または他の場所内にあり得、例としては例えばエステル結合を含む任意の分子または群(例えば、カルバメート、アミド、カルボネート、乳酸、グリコール酸、カプロラクトンまたは他のもの)が挙げられ得る。特定の態様において、分解性要素は、架橋剤当たり1~6の範囲の量で組込まれ得る。同様に、ポリ(ビニルアルコール)またはポリ(エチレングリコール)の修飾などによる他の官能基のヒドロゲルへの組み込みは、ヒドロゲルの特性のさらなる程度の調節を提供する。
【0093】
眼内で生じる圧力
治療方法および組成物は、被験体の眼におけるヒドロゲルにより生じる圧力の量に従って特徴付けられ得る。例えば、ある態様において、ヒドロゲルは、眼内で25mmHg未満の圧力を生じる。他のある態様において、ヒドロゲルは、眼内で約10mmHg~約25mmHgの範囲の圧力を生じる。他のある態様において、ヒドロゲルは、眼内で約15、16、17、18、29、20、21、22、23、24または25mmHgの圧力を生じる。
【0094】
被験体の眼内でのヒドロゲルの最初の形成の際に、ヒドロゲルは高浸透圧状態にあることが企図され、ここでヒドロゲルの濃度は、さらなる流体が(利用可能な場合)ゲルにより引っ張られてゲルを膨潤させるようなものである。このアプローチは、注射されたヒドロゲルを空洞の大きさに受動的に充填させ、次いでさらなる水を引っ張って、眼の内部にタンポナーデ効果に適した能動的な膨潤圧力をかけさせる。高浸透圧状態の程度は活性成分の濃度を使用して調節可能である。インビボにおける水の供給源は、約2~3μL/分の速度で生成されることが知られる眼内の天然の水様物(aqueous)の産生である。
【0095】
核機能性ポリマーの特徴
治療方法およびヒドロゲルを形成するための組成物は、核機能性ポリマーの特徴に従って特徴付けられ得る。したがって、ある態様において、核機能性ポリマーは、それぞれが(i)複数のチオ官能基-R1-SH (式中、上述のようにR1はエステル含有リンカーである)および任意に(ii)1つ以上のヒドロキシル基、アルキルエステル基、ヒドロキシアルキルエステル基またはアミド基により置換されるポリアルキレンおよびポリヘテロアルキレンのポリマーから選択される生体適合性ポリマーである。ある態様において、核機能性ポリマーは、(i)複数のチオ官能基-R1-SHおよび(ii)ヒドロキシル、アルキルエステル、ヒドロキシアルキルエステルおよびアミドからなる群より選択される複数の基により置換される生体適合性ポリアルキレンポリマーである。ある態様において、核機能性ポリマーは、それぞれが複数のチオ官能基-R1-SHにより置換されるポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアルコールメタクリレート)、ポリアクリルアミドまたはポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)から選択される生体適合性ポリマーである。ある態様において、核機能性ポリマーは、複数のチオ官能基-R1-SHにより置換される生体適合性ポリ(ビニルアルコール)ポリマーである。ある態様において、核機能性ポリマーは、複数のチオ官能基-R1-SHにより置換される、生体適合性の部分的に加水分解されたポリ(ビニルアルコール)ポリマーである。ある態様において、核機能性ポリマーは、複数のチオ官能基-R1-SHにより置換される生体適合性の部分的に加水分解されたポリ(ビニルアルコール)ポリマーであり、ここで該部分的に加水分解されたポリ(ビニルアルコール)ポリマーの加水分解の程度は、少なくとも85%、88%、90%、92%、95%、97%、98%または99%である。ある態様において、核機能性ポリマーは、複数のチオ官能基-R1-SHにより置換される生体適合性の部分的に加水分解されたポリ(ビニルアルコール)ポリマーであり、ここで該部分的に加水分解されたポリ(ビニルアルコール)ポリマーの加水分解の程度は少なくとも95%である。ある態様において、核機能性ポリマーは、複数のチオ官能基-R1-SHにより置換される生体適合性の部分的に加水分解されたポリ(ビニルアルコール)ポリマーであり、ここで該部分的に加水分解されたポリ(ビニルアルコール)ポリマーの加水分解の程度は少なくとも98%である。
【0096】
ある態様において、チオ官能基-R1-SHは-OC(O)-(C1-C6アルキレン)-SHである。ある態様において、チオ官能基-R1-SHは-OC(O)-(CH2CH2)-SHである。
【0097】
文献に記載されるように、ポリ(ビニルアルコール)は、最初にビニルアセテートを重合させてポリ(ビニルアセテート)を生成し、次いでポリ(ビニルアセテート)を加水分解条件に供してポリマー骨格に結合したヒドロキシル基のみを残してアセテート基のエステル結合を切断することにより調製される。アセテート基のエステル結合を切断するために使用される加水分解条件に応じて、得られるポリマー生成物は依然としていくつかのアセテート基を含み得る。すなわち、ポリマー上の全てのアセテート基が切断されるわけではない。この理由のために、文献において使用される共通の命名法によれば、ポリ(ビニルアルコール)は、(a)完全に加水分解されるか(すなわち開始ポリ(ビニルアセテート)開始材料由来の全てのアセテート基がヒドロキシル基に変換されている))または(b)部分的に加水分解されるか(すなわちポリ(ビニルアセテート)開始材料由来のアセテート基のいくつかの割合がヒドロキシル基に変換されていない)に従ってさらに特徴付けられ得る。部分的に加水分解されたポリ(ビニルアルコール)は、ポリ(ビニルアルコール-コ-ビニルアセテート))でといわれ得る。文献における一般的な使用によれば、部分的に加水分解されるポリ(ビニルアルコール)は、加水分解の程度(すなわちヒドロキシル基に変換されている開始ポリ(ビニルアセテート)開始材料由来のアセテート基のパーセンテージ)、例えば約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%より高い程度に従って特徴付けられ得る。ある態様において、加水分解の程度は、約75%~約95%、約80%~約95%、約80%~約90%、約80%~約85%、約85%~約95%または約85%~約90%の範囲内にある。明確性のために、本明細書で使用される用語「ポリ(ビニルアルコール)」は、(a)完全に加水分解された(すなわち開始ポリ(ビニルアセテート)開始材料由来の全てのアセテート基がヒドロキシル基に変換されている))材料および(b)部分的に加水分解された(すなわちポリ(ビニルアセテート)開始材料由来のアセテート基のいくつかの割合がヒドロキシル基に変換されていない)材料の両方を包含する。
【0098】
ある態様において、核機能性ポリマーは、
【化4】
(式中、aは1~20の整数であり、bは1~20の整数である)を含む生体適合性ポリ(ビニルアルコール)ポリマーである。ある態様において、核機能性ポリマーは、
【化5】
(式中、aは1~20の整数であり、bは1~20の整数であり、cは約20~約500の整数である)を含む生体適合性ポリ(ビニルアルコール)ポリマーである。
【0099】
核機能性ポリマーはさらに、ポリマーの重量平均分子量などのその分子量に従って特徴付けられ得る。ある態様において、核機能性ポリマーは、約500g/mol~約1,000,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する。ある態様において、核機能性ポリマーは、約2,000g/mol~約500,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する。ある態様において、核機能性ポリマーは、約4,000g/mol~約30,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する。ある態様において、核機能性ポリマーは、約200,000g/mol未満または約100,000g/mol未満の重量平均分子量を有する。ある態様において、核機能性ポリマーは、約26,000g/mol~約32,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する。ある態様において、核機能性ポリマーは、約29,000g/molの重量平均分子量を有する。ある態様において、核機能性ポリマーは、約30,000g/molの重量平均分子量を有する。ある態様において、核機能性ポリマーは、約45,000g/mol~約55,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する。ある態様において、核機能性ポリマーは、約50,000g/molの重量平均分子量を有する。
【0100】
より具体的な態様において、核機能性ポリマーは、完全に加水分解されているかまたは部分的に加水分解されている(例えば約75%以上、例えば75%~99.9%の全ての値および範囲例えば75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%等の加水分解)チオール化ポリ(ビニルアルコール)である。チオール化ポリ(ビニルアルコール)は、チオール化ポリ(ビニルアルコール)が、その中の全ての値および範囲を含む2kDa~2,000,000kDa、例えば2kDa~1,000,000kDa、2kDa~200kDaおよび30kDa~50kDa等の範囲の重量平均分子量(Mw)を有する場合のように、その分子量に従ってさらに特徴付けられ得る。チオール化ポリ(ビニルアルコール)は、任意の実現性のある濃度および好ましくはその中の全ての値および増分を含む0.0001wt%~50wt%の範囲の濃度で、溶液中で提供され得るか、水または他の溶媒(限定されないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)またはジメチルホルムアミド(DMF)を含む)に溶解され得る。
【0101】
チオール化ポリ(ビニルアルコール)は、参照により本明細書に援用される米国特許出願公開公報第2016/0009872号にさらに記載されるように、ある範囲のチオール含有官能基とポリ(ビニルアルコール)とを反応させることにより調製され得る。ある態様において、チオール化ポリ(ビニルアルコール)は、(a)チオール官能基および少なくとも1つのヒドロキシル反応性基、例えばカルボキシル基等を有し、HS-R-CO2Hで表される化合物(式中、Rは、アルカン、不飽和エーテルまたはエステル基を含み得、Rは、1~20個の炭素を含む)と、(b)ポリ(ビニルアルコール)を反応させることにより調製される。
【0102】
他のより具体的な態様において、チオール化ポリ(ビニルアルコール)は以下の断片:
【化6】
を含み、式中、Rは、1~20個の炭素を含み、アルカン、飽和エーテルまたはエステルであり得、個々の単位は、無作為的にポリ(ビニルアルコール)鎖の長さに沿って分布される。Xは0.1~10%の範囲であり、nは80~99.9%の範囲であり、ポリ(ビニルアルコール)ポリマーの加水分解のレベルを示し、ポリマーの水溶性を可能にし、加水分解されていないアセテート基の量であるmは、0.1~20%の範囲である。
【0103】
ポリ(ビニルアルコール)上のチオール基の量は、チオール化ポリ(ビニルアルコール)を生成するためのチオール化剤との反応を受けるポリ(ビニルアルコール)上のヒドロキシル基の数により調節され得る。ある態様において、ポリ(ビニルアルコール)上のチオール官能基の量は、チオール官能基 対 ポリ(ビニルアルコール)ポリマーのモル比、例えばその中の全ての値および範囲を含む約0.1:1~約10.0:1に従って特徴付けられ得る。さらに、ポリ(ビニルアルコール)上のチオール基の量は、チオール化ポリ(ビニルアルコール)を形成するためのチオール化剤とポリ(ビニルアルコール)との反応の際に使用される反応温度および反応時間により調節され得る。ある態様において、反応温度は40℃~95℃の範囲であり得、反応時間は、その中の全ての値および範囲を含む5時間~48時間の範囲であり得る。当然ながら、20℃から40℃までの範囲などのより低い反応温度も使用されてもよい。
【0104】
より一般的に、複数のチオ官能基を含む核機能性ポリマーは、米国特許出願第2016/0009872号などの文献に記載される手順に基づいて調製され得、該手順において、求核性基(例えばヒドロキシル基)を有するポリマーは、チオール含有化合物と反応して、生じるポリマーは、リンカーを介してポリマー骨格に結合したチオール基を含む。
【0105】
電子機能性ポリマーの特徴
治療方法およびヒドロゲルを形成するための組成物は、電子機能性ポリマーの特徴に従って特徴付けられ得る。したがって、ある態様において、電子機能性ポリマーは、それぞれが少なくとも1つのチオール反応性基により置換されるポリアルキレンおよびポリヘテロアルキレンのポリマーから選択される生体適合性ポリマーである。ある態様において、電子機能性ポリマーは、少なくとも1つのチオール反応性基により置換される生体適合性ポリヘテロアルキレンポリマーである。ある態様において、電子機能性ポリマーは、少なくとも1つのチオール反応性基により置換される生体適合性ポリ(オキシアルキレン)ポリマーである。ある態様において、電子機能性ポリマーは、少なくとも1つのチオール反応性基により置換される生体適合性ポリ(エチレングリコール)ポリマーである。
【0106】
ある態様において、チオール反応性基は、α-β不飽和エステル、マレイミジルまたは
【化7】
であり、それらのそれぞれは任意に、アルキル、アリールまたはアラルキルの1つ以上の出現により置換される。ある態様において、チオール反応性基は、アルキル、アリールまたはアラルキルの1つ以上の出現により任意に置換されるα-β不飽和エステルである。ある態様において、チオール反応性基は-OC(O)CH=CH2である。
【0107】
ある態様において、電子機能性ポリマーは、式:
【化8】
を有し、式中、R*は、それぞれの出現について独立して、水素、アルキル、アリールまたはアラルキルであり;mは5~15,000の範囲の整数である。ある態様において、R*は水素である。さらに他の態様において、mは、約20~約100、約100~約500、約500~約750、約750~約1,000、約1,000~約2,000、約2,000~約5,000、約5,000~約7,500、約7,500~約10,000、約10,000~約12,500、約12,500~約15,000の範囲の整数である。
【0108】
電子機能性ポリマーはさらに、ポリマーの重量平均分子量などのその分子量に従って特徴付けられ得る。したがって、ある態様において、電子機能性ポリマーは、約500g/mol~約1,000,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する。ある態様において、電子機能性ポリマーは、約1,000g/mol~約100,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する。ある態様において、電子機能性ポリマーは、約2,000g/mol~約8,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する。ある態様において、電子機能性ポリマーは、約200,000g/mol未満または約100,000g/mol未満の重量平均分子量を有する。ある態様において、電子機能性ポリマーは、約3,000g/mol~約4,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する。ある態様において、電子機能性ポリマーは、約3,200g/mol~約3,800g/molの範囲の重量平均分子量を有する。ある態様において、電子機能性ポリマーは、約3,500g/molの重量平均分子量を有する。
【0109】
電子機能性ポリマーは、直鎖ポリマーまたは分岐鎖ポリマーであり得る。さらに他の態様において、電子機能性ポリマーは、参照により本明細書に援用される米国特許第9.072,809号に記載されるマルチアームポリマー、例えばペンタエリスリトールポリエチレングリコールマレイミド(4ARM-PEG-MAL) (約5,000~約40,000から選択される分子量、例えば10,000または20,000)、ペンタエリスリトールポリエチレングリコールスクシンイミジルスクシネート(4ARM-PEG-SS) (約5,000~約40,000から選択される分子量、例えば10,000または20,000)、ペンタエリスリトールポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタレート(4ARMPEG-SG) (約5,000~約40,000から選択される分子量、例えば10,000または20,000)、ペンタエリスリトールポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタルアミド(4ARM-PEG-SGA) (約5,000~約40,000から選択される分子量、例えば10,000または20,000)、ヘキサグリセリンポリエチレングリコールスクシンイミジルスクシネート(8ARM-PEG-SS) (約5,000~約40,000から選択される分子量、例えば10,000または20,000)、ヘキサグリセリンポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタレート(8ARM-PEG-SG) (約5,000~約40,000から選択される分子量、例えば10,000、15,000、20,000または40,000)、ヘキサグリセリンポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタルアミド(8ARM-PEG-SGA) (約5,000~約40,000から選択される分子量、例えば10,000、15,000、20,000または40,000)、トリペンタエリスリトールポリエチレングリコールスクシンイミジルスクシネート(8ARM(TP)-PEG-SS) (約5,000~約40,000から選択される分子量、例えば10,000または20,000)、トリペンタエリスリトールポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタレート(8ARM(TP)-PEG-SG) (約5,000~約40,000から選択される分子量、例えば10,000、15,000、20,000または40,000)またはトリペンタエリスリトールポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタルアミド(8ARM(TP)-PEG-SGA) (約5,000~約40,000から選択される分子量、例えば10,000、15,000、20,000または40,000)であり得る。
【0110】
別のより具体的な態様において、電子機能性ポリマーは、少なくとも2つのチオール反応性基で末端キャップされるポリ(エチレングリコール)であり得る。ポリ(エチレングリコール)は、直鎖、分岐、デンドリマー(dendrimer)またはマルチアームであり得る。チオール反応性基は、例えばアクリレート、メタクリレート、マレイミジル、ハロアセチル、ピリジルジチオールまたはN-ヒドロキシスクシンイミジルであり得る。チオール反応性基で末端キャップされる例示的なポリ(エチレングリコール)は、式Y-[-O-CH2CH2-]n-O-Yで表され得、式中、各Yはチオール反応性基であり、nは例えば200~20,000の範囲にある。別のより具体的な態様において、電子機能性ポリマーはCH2=CHC(O)O-[-CH2CH2-O-]b-C(O)CH=CH2であり得、式中、bは、例えば約200~約20,000の範囲にある。上述の直鎖の態様について代替的または付加的に、ポリ(エチレングリコール)はデンドリマーであり得る。例えば、ポリ(エチレングリコール)は4~32個のヒドロキシルデンドロン(dendron)であり得る。さらなる態様において、ポリ(エチレングリコール)はマルチアームであり得る。かかる態様において、ポリ(エチレングリコール)は、例えば4、6または8個のアームであり得、ヒドロキシ末端化され得る。ポリ(エチレングリコール)の分子量は変化し得、いくつかの場合においてチオール反応性基の1つは、他の構造により置換されて、架橋よりもむしろダングリング鎖(dangling chain)を形成し得る。ある態様において、分子量(Mw)は、200~20,000の全ての値および範囲を含む20,000未満、例えば200~1,000、1,000~10,000等である。また、官能基化(functionality)の程度は異なり得、これはポリ(エチレングリコール)が一官能基性、二官能基性または多官能基性であり得ることを意味する。
【0111】
より一般的に、電子機能性ポリマーは、商業的な供給源から購入され得るか、または核機能性ポリマーを、1つ以上の求電子性基を取り付けるための試薬(1つまたは複数)により処置すること(例えばポリエチレングリコールを、エステル化反応中でアクリル酸と反応させて、ポリエチレングリコールジアクリレートを形成すること)などによる、文献に記載される手順に基づいて調製され得る。
【0112】
核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーの相対量
治療方法およびヒドロゲルを形成するための組成物は、使用される核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーの相対量に従って特徴付けられ得る。したがって、ある態様において、(i)チオ官能基-R1-SH 対 (ii)チオール反応性基のモル比は10:1~1:10の範囲にある。ある態様において、(i)チオ官能基-R1-SH 対 (ii)チオール反応性基のモル比は5:1~1:1の範囲にある。ある態様において、(i)チオ官能基-R1-SH 対 (ii)チオール反応性基のモル比は2:1~1:1の範囲にある。
【0113】
より具体的な態様において、チオール化ポリ(ビニルアルコール)およびポリ(エチレングリコール)-ジアクリレートは、その中の全ての値および範囲を含む2:1~0.5:1の範囲内の官能基の比(mmol/mmol)、好ましくは1:1で送達される。さらに、いったん合わされると、チオール化ポリ(ビニルアルコール)とポリ(エチレングリコール)-ジアクリレートの組合せは、その中の全ての値および範囲を含む約6mg/mL~約250mg/mLの範囲、好ましくは約25mg/mL~約65mg/mLおよび時々約45mg/mLで溶液中に存在する。架橋およびゲル化の前のチオール化ポリ(ビニルアルコール)およびポリ(エチレングリコール)-ジアクリレートの粘度は、その中の全ての値および範囲を含む約0.005Pa*s~約0.35Pa*sの範囲、例えば約0.010Pa*s~約0.040Pa*sの範囲、および時々約0.028Pa*sである。
【0114】
核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーの投与特徴
該方法はさらに、核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーが、被験体の眼の硝子体腔に単一組成物として一緒に投与されるか、または代替的に核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーが、被験体の眼の硝子体腔に別々に投与されるかに従って特徴付けられ得る。ある態様において、核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーは、被験体の眼の硝子体腔に単一組成物として一緒に投与される。単一組成物はさらに、例えば被験体の眼への投与のための液体の薬学的に許容され得る担体を含み得る。ある態様において、核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーは、被験体の眼の硝子体腔に、単一の液体水性医薬組成物として一緒に投与される。
【0115】
他のある態様において、核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーは、被験体の眼の硝子体腔に別々に投与される。別々に投与される場合であっても、核機能性ポリマーは、被験体の眼への投与のための液体の薬学的に許容され得る担体を含む液体眼性製剤として投与され得る。これにより、被験体の眼における外科的出入口を通しての核機能性ポリマーの容易な投与が促進される。同様に、電子機能性ポリマーは、被験体の眼への投与のための液体の薬学的に許容され得る担体を含む液体眼性製剤として投与され得る。これにより、被験体の眼の外科的出入口を通しての電子機能性ポリマーの容易な投与が促進される。したがって、ある態様において、核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーは、被験体の眼の硝子体腔に別々に投与され、ここで核機能性ポリマーは、被験体の眼の硝子体腔に、単一の液体水性医薬組成物として投与され、電子機能性ポリマーは、被験体の眼の硝子体腔に、単一の液体水性医薬組成物として投与される。
【0116】
液体水性医薬組成物はさらに、例えばpH、重量オスモル濃度ならびに塩の存在および/または同一性に従って特徴付けられ得る。ある態様において、液体水性医薬組成物は、約7.1~約7.7の範囲のpHを有する。ある態様において、液体水性医薬組成物は、約7.3~約7.5の範囲のpHを有する。ある態様において、液体水性医薬組成物は、約7.4のpHを有する。ある態様において、液体水性医薬組成物はさらに、アルカリ金属塩を含む。ある態様において、液体水性医薬組成物はさらに、アルカリ金属ハロゲン化物塩、アルカリ土類金属ハロゲン化物塩またはそれらの組合せを含む。ある態様において、液体水性医薬組成物はさらに塩化ナトリウムを含む。ある態様において、液体水性医薬組成物はさらに、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムまたは前述の2つ以上の組合せを含む。ある態様において、液体水性医薬組成物は、約280mOsm/kg~約315mOsm/kgの範囲の重量オスモル濃度を有する。ある態様において、液体水性医薬組成物は、約280mOsm/kg~約300mOsm/kgの範囲の重量オスモル濃度を有する。ある態様において、液体水性医薬組成物は、約285mOsm/kg~約295mOsm/kgの範囲の重量オスモル濃度を有する。ある態様において、液体水性医薬組成物は約290mOsm/kgの重量オスモル濃度を有する。
【0117】
(i)核機能性ポリマーおよび/または電子機能性ポリマーならびに(ii)被験体の眼への投与のための液体の薬学的に許容され得る担体を含む液体製剤はさらに、製剤の粘度に従って特徴付けられ得る。ある態様において、液体製剤は、水の10%、25%、50%、75%、100%、150%、200%または300%以内の粘度を有する。他のある態様において、液体製剤は、5N以下の力を使用して23以下のゲージを有する針を通して投与され得るような粘度を有する。ある態様において、液体製剤は、1~2mLの液体製剤が、5N以下の力を使用して23以下のゲージを有する針を使用して3分以内に投与され得るような粘度を有する。
【0118】
より具体的な態様において、核機能性ポリマーおよび/または電子機能性ポリマーは、眼への投与のための水性医薬組成物中で提供される。かかる水性医薬組成物は、望ましくは低粘度の液体である。態様において、該液体は、その中の全ての値および範囲を含む0.004Pa*s~0.5Pa*sの範囲、例えば0.010Pa*s~0.05Pa*sの粘度を示す。例えば、水性医薬組成物は、望ましくは、その中の全ての値および範囲を含む3mg/mL~300mg/mL、例えば10mg/mL~50mg/mLの範囲、およびさらにより具体的な約30mg/mLの値の濃度でポリ(エチレングリコール)ジアクリレートを含み得る。別のより具体的な態様は、その中の全ての値および範囲を含む0.007Pa*s~0.5Pa*sの範囲、例えば0.01Pa*s~0.05Pa*sの範囲、またはより具体的な約0.035Pa*sの値の粘度を有するポリ(エチレングリコール)ジアクリレート水溶液である。別のより具体的な態様は、その中の全ての値および範囲を含む10mg/mL~200mg/mLの範囲、例えば40mg/mL~80mg/mLの範囲、およびより具体的な約60mg/mLの値でチオール化ポリ(ビニルアルコール)を含むチオール化ポリ(ビニルアルコール)水溶液である。別のより具体的な態様は、その中の全ての値および範囲を含む0.004Pa*s~0.2Pa*sの範囲、例えば0.010Pa*s~0.040Pa*sの範囲、またはより具体的な約0.020Pa*sの値の粘度を有するチオール化ポリ(ビニルアルコール)水溶液である。
【0119】
その場所で(in situ)形成されたゲルの特性およびゲル化時間は、チオール化ポリ(ビニルアルコール)およびポリ(エチレングリコール)-ジアクリレートの濃度、架橋および官能性(functionality)に使用されるそれらの比(ポリ(ビニルアルコール)に結合するチオール基の量およびポリ(エチレングリコール)1分子当たりのチオール反応性基の量)により調節され得ることが理解される。チオール化ポリ(ビニルアルコール) 対 ポリ(エチレングリコール)の比を変化させることによっても、ヒドロゲルの表面特性を向上するために使用され得るダングリングポリ(エチレングリコール)鎖の小部分(fraction)を調節し得る。さらに、官能性がチオール反応性基である一官能基性および二官能基性のポリ(エチレングリコール)架橋剤の混合物を混合することにより、架橋 対 ヒドロゲルの親水性の調節が可能になる。一官能基性および二官能基性架橋剤の長さまたは開始ポリ(ビニルアルコール)の大きさの調節により、機械的特性、膨潤、潤滑性、形態および親水性、ならびに摩擦および摩耗特性の改変が可能になる。チオール化ポリ(ビニルアルコール)およびポリ(エチレングリコール)-ジアクリレートに関して記載されるこれらの特徴は一般的に、本明細書に記載される核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーのより広範囲に適用される。
【0120】
眼から硝子体液を除去するさらなる工程
該方法は任意に、核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーの投与の前に、眼から硝子体液を除去する工程をさらに含む。
【0121】
III. 注射可能眼性医薬組成物
本発明は、(i)核機能性ポリマーおよび/または電子機能性ポリマー、ならびに(ii)眼への投与のための薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物を提供する。好ましくは、該医薬組成物は、液体医薬組成物である。薬学的に許容され得る担体は、水または被験体の眼への投与に適した任意の他の液体であり得る。
【0122】
医薬組成物は、滅菌されたものであり、任意に保存剤、酸化防止剤、および/または粘度調節剤を含み得る。例示的な粘度調節剤としては、例えばアラビアゴム、寒天、アルギン酸、ベントナイト、カルボマー、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、セラトニア(ceratonia)、セトステアリルアルコール、キトサン、コロイド状二酸化ケイ素、シクロメチコン(cyclomethicone)、エチルセルロース、ゼラチン、グリセリン、グリセリルベヘネート、グアーガム、ヘクトライト、硬化植物油I型、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒプロメロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、マルトデキストリン、メチルセルロース、ポリデキストロース、ポリエチレングリコール、ポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸)、ポリビニルアセテートフタレート、ポリビニルアルコール、塩化カリウム、ポビドン、アルギン酸プロピレングリコール、サポナイト、アルギン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ステアリルアルコール、スクロース、スルホブチルエーテル(3-シクロデキストリン、トラガカント、キサンタンガム、ならびにそれらの誘導体および混合物が挙げられる。いくつかの態様において、粘度調節剤は、生体接着剤であるかまたは生体接着剤ポリマーを含む。
【0123】
いくつかの態様において、医薬組成物中の粘度調節剤の濃度は、0.1~20重量%の範囲である。ある態様において、医薬組成物中の粘度調節剤の濃度は、5~20重量%の範囲である。ある態様において、医薬組成物中の粘度調節剤の濃度は、20重量%未満、15重量%未満、10重量%未満、9重量%未満、8重量%未満、7重量%未満、6重量%未満、5重量%未満、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1.8重量%未満、1.6重量%未満、1.5重量%未満、1.4重量%未満、1.2重量%未満、1重量%未満、0.9重量%未満、0.8重量%未満、0.7重量%未満、0.6重量%未満、0.5重量%未満、0.4重量%未満、0.3重量%未満、0.2重量%未満または0.1重量%未満である。
【0124】
医薬組成物はさらにその粘度に従って特徴付けられ得る。ある態様において、医薬組成物の粘度は、4000cP未満、2000cP未満、1000cP未満、800cP未満、600cP未満、500cP未満、400cP未満、200cP未満、100cP未満、80cP未満、60cP未満、50cP未満、40cP未満、20cP未満、10cP未満、8cP未満、6cP未満、5cP未満、4cP未満、3cP未満、2cP未満、1cP未満である。いくつかの態様において、医薬組成物の粘度は、少なくとも4,000cP、少なくとも2,000cP、少なくとも1,000cP、少なくとも800cP、少なくとも600cP、少なくとも500cP、少なくとも400cP、少なくとも200cP、少なくとも100cP、少なくとも80cP、少なくとも60cP、少なくとも50cP、少なくとも40cP、少なくとも20cP、少なくとも10cP、少なくとも8cP、少なくとも6cP、少なくとも5cP、少なくとも4cP、少なくとも3cP、少なくとも2cP、少なくとも1cPである。ある態様において、医薬組成物の粘度は、約4,000cP、約2,000cP、約1,000cP、約800cP、約600cP、約500cP、約400cP、約200cP、約100cP、約80cP、約60cP、約50cP、約40cP、約20cP、約10cP、約8cP、約6cP、約5cP、約4cP、約3cP、約2cP、約1cPである。いくつかの態様において、医薬組成物の粘度(the viscosity of the viscosity)は、約5cP~50cPである。
【0125】
医薬組成物はさらにそのpHに従って特徴付けられ得る。ある態様において、医薬組成物は、約5~約9または約6~約8の範囲のpHを有する。ある態様において、医薬組成物は約6.5~約7.5の範囲のpHを有する。ある態様において、医薬組成物は約7のpHを有する。
【0126】
ある態様において、医薬組成物は水を含み、製剤は、約7.1~約7.7の範囲のpHを有する。ある態様において、医薬組成物は水を含み、製剤は、約7.1~約7.6、約7.1~約7.5、約7.1~約7.4、約7.2~約7.6、約7.2~約7.5、約7.2~約7.4、約7.2~約7.3、約7.3~約7.7、約7.3~約7.6、約7.3~約7.5、約7.3~約7.4、約7.4~約7.7、約7.4~約7.6または約7.4~約7.5の範囲のpHを有する。ある態様において、医薬組成物は水を含み、製剤は約7.3~約7.5の範囲のpHを有する。ある態様において、医薬組成物は水を含み、製剤は約7.4のpHを有する。
【0127】
医薬組成物はさらに、塩の重量オスモル濃度ならびに存在および/または同一性に従って特徴付けられ得る。例えば、ある態様において、医薬組成物は、約280mOsm/kg~約315mOsm/kgの範囲の重量オスモル濃度を有する。ある態様において、医薬組成物は、約280mOsm/kg~約300mOsm/kgの範囲の重量オスモル濃度を有する。ある態様において、医薬組成物は、約285mOsm/kg~約295mOsm/kgの範囲の重量オスモル濃度を有する。ある態様において、医薬組成物は、約290mOsm/kgの重量オスモル濃度を有する。ある態様において、医薬組成物はさらにアルカリ金属塩を含む。ある態様において、医薬組成物はさらに、アルカリ金属ハロゲン化物塩、アルカリ土類金属ハロゲン化物塩またはそれらの組合せを含む。ある態様において、医薬組成物はさらに塩化ナトリウムを含む。ある態様において、医薬組成物はさらに、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムまたは前述の2つ以上の組合せを含む。
【0128】
IV. 医学適用における使用のためのキット
本発明の別の局面は、障害を治療するためのキットを提供する。該キットは、i)本明細書に記載される方法(例えば被験体の眼の網膜組織とヒドロゲルを接触させるための方法、網膜組織を支持するための方法および網膜剥離を有する被験体を治療するための方法)の1つを達成するための指示書;およびii)本明細書に記載される核機能性ポリマーおよび/または本明細書に記載される電子機能性ポリマーを含む。
【0129】
上述の記載は、本発明の多数の局面および態様を記載する。該特許出願は、該局面および態様の全ての組合せおよび入れ替えを具体的に企図する。
【実施例
【0130】
実施例
本発明はここで一般的に記載されており、以下の実施例に対する参照によりより容易に理解され、該実施例は、単に本発明のある局面および態様の例示のために含まれ、本発明を限定することを意図しない。
【0131】
実施例1-例示的なヒドロゲルの調製および特徴付け
ヒドロゲルは、チオール化ポリ(ビニルアルコール)(略してTPVA)とポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(略してPEGDA)の反応により形成される。TPVAは、PVAと3-メルカプトプロピオン酸のエステル化反応により調製され、1H NMRにより特徴付けられる。形成されたTPVAは、チオール基をPVA骨格に結合させるエステル結合を有するペンダント鎖(pendant chain)を含む。TPVAとPEGDAの間のゲル化反応は、ラジカル開始剤または照射なしで、水性環境中、生理学的条件で進行する。
【0132】
ヒドロゲル形成
例示的なヒドロゲルについてのゲル化時間および弾性率(G')の値を表1に示す。架橋のための数時間のゲル化時間は、臨床的に破局的であり再剥離をもたらす網膜下(sub-renal)の移動などの有害な医学的事象のリスクを生じるので、迅速なゲル化時間が重要である。
【表1】
【0133】
ヒドロゲル分解
ヒドロゲルの分解は、ヒドロゲル中のエステル基の存在により促進され、ヒドロゲルは容易に加水分解可能であり分解を生じるための酵素の存在を必要としない。例示的なPVA-PEGヒドロゲルの分解可能性および膨潤性を周囲温度、1xPBS中で試験した。米国特許出願公開公報US 2016/0009872に記載されるように、3wt%ポリマー固形物で、ヒドロゲルは18日後に分解を開始し、35日後に完全に可溶化した。
【0134】
インビトロ分解プロセスの初期生成物を分析するためにGPCを使用した。GPCクロマトグラムを図1に示し、これはTPVA、PEGDAおよびTVPA/PEGDA分解産物を含む同定された材料に従って標識される。
【0135】
実施例2-さらなる例示的なヒドロゲルの調製および特徴付け
チオール化ポリ(ビニルアルコール)(略してTPVA)とポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(略してPEGDA)の反応によりヒドロゲルが形成された。ヒドロゲルの物理的特性を以下に記載するように分析した。
【0136】
ヒドロゲル形成
ポリプロピレン使い捨てキュベットに1mLのTPVA溶液および1mLのPEGDA溶液を添加することにより、ヒドロゲルプレミックスを形成させた。ヒドロゲルプレミックスを37℃の温度で約8分間、定位インキュベーターに入れ、その間の時間にゲル化が生じて、それにより試験ヒドロゲルを得た。
【0137】
TPVA溶液は、リン酸緩衝化食塩水中の6%w/wチオール化ポリ(ビニルアルコール)であった。チオール化ポリ(ビニルアルコール)ポリマーは、ポリマー上の約4.3%のヒドロキシル基が-OC(O)CH2CH2-SHで置換されたポリ(ビニルアルコール)である。チオール化ポリ(ビニルアルコール)ポリマーの1H NMR (D2O)スペクトルを図2に示し、示されるように、該スペクトルは2.697ppmでのピーク(2つの水素原子に相当、これは-SH基に結合したCH2基のためであると考えられる)および3.889ppmでのピーク(1つの水素原子に相当、これはヒドロキシル基を有する炭素原子についてポリマー骨格上のC-H水素原子のためであると考えられる)を有する。チオール化ポリ(ビニルアルコール)ポリマーの重量平均分子量は、約29,000g/molであると計算された。チオール化ポリ(ビニルアルコール)ポリマーは、Ossipov et al. in Macromolecules (2008), vol. 41(11), pages 3971-3982に記載される手順に基づいて、約27,000g/molの重量平均分子量を有するポリ(ビニルアルコール)から調製された。
【0138】
PEGDA溶液は、リン酸緩衝化食塩水中の3%w/wポリ(エチレングリコール)ジアクリレートであり、ここでポリ(エチレングリコール)ジアクリレートは約3,400g/molの重量平均分子量を有する。
【0139】
UV-可視光吸光度の分析
試験ヒドロゲルのUV-可視光吸光度は、試験ヒドロゲルをThermo Scientific Genesys 10S UV-Vis分光光度計に入れ、300nm~900nmの範囲の波長にわたる吸光度走査を行うことにより分析した。試験ヒドロゲルについての吸光度値は、蒸留水を含むブランクキュベットを使用して得られた吸光度値と比較して分析した。試験ヒドロゲルのUV-可視光吸光度走査の結果を図3に示す。
【0140】
実施例3-例示的なヒドロゲルの屈折率
実施例2由来のTPVA溶液のアリコートを実施例2由来の同体積のPEGDA溶液のアリコートと混合して、ヒドロゲルプレミックスを生成し、ヒドロゲルプレミックスの1mLアリコートを37℃の温度で屈折率検出器に入れた。ヒドロゲルを形成させた。一旦ヒドロゲルが形成されると、ヒドロゲルの屈折率を測定して1.3376であると決定した。屈折率の測定に使用した機器はAnton Paar Abbemat 200 Refractometerであった。
【0141】
実施例4-例示的なヒドロゲルについてのゲル化時間および弾性率
実施例2由来のTPVA溶液の1mLアリコートを実施例2由来のPEGDA溶液の1mLアリコートと混合し、得られた混合物を、TA brand Advanced Rheometer AR 550の頂部プラットフォームに置いた。頂部プラットフォームを37℃の温度で維持した。60mmの2°の円錐を混合物に適用して頂部幾何学(top geometry)を提供した。頂部プラットフォーム上の混合物のレオロジー特性を、6.283rad/sの速度で所定の時点において振動により30分かけて測定した。結果を図4に示す。
【0142】
実施例5-外科的出入口を通るヒドロゲルプレミックスの透過
実施例2由来のTPVA溶液のアリコートを、実施例2由来の同体積のPEGDA溶液のアリコートと混合して、ヒドロゲルプレミックスを生成した。プレミックスをすぐに約300マイクロメートルの内径を有する注射針を有するシリンジに充填した。プレミックスは、シリンジから注射針を通って容易に分配された。図5は、シリンジから容器に分配されたヒドロゲルプレミックスの図示である。一旦ヒドロゲルプレミックスが容器に分配されると、ヒドロゲルプレミックスは、約37℃の温度で約3~5分の間にヒドロゲルを形成することが観察された。図6は、容器内で形成されたヒドロゲルの図示であり、容器は垂直位置に保持される。
【0143】
実施例6-例示的なヒドロゲルについてのインビトロ毒性分析
実施例2に記載されるTPVA溶液のアリコートを、実施例2に記載される同体積のPEGDA溶液のアリコートと混合して、15mLのチューブに含まれるヒドロゲルプレミックスを生成し、この実験において(i)チオール化ポリ(ビニルアルコール)は紫外線(254nm)で数分間処置した後にリン酸緩衝化食塩水と混合してTPVA溶液を形成し、(ii)ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートは紫外線(254nm)で数分間処置した後にリン酸緩衝化食塩水と混合してPEGDA溶液を形成することに注意した。ヒドロゲルを形成するためにヒドロゲルプレミックスは37℃の温度で20分間の維持時間でゲル化させた。
【0144】
(i)チオール化ポリ(ビニルアルコール)、(ii)ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートおよび(iii)ヒドロゲルの試料を、Nelson Laboratoriesにより実施されたISO 10993-5細胞傷害性プロトコルに従ってインビトロ毒性分析に供した。
【0145】
チオール化ポリ(ビニルアルコール)のインビトロ毒性を試験するために、チオール化ポリ(ビニルアルコール)のアリコートを、血清補充哺乳動物細胞培養培地(MEM)と混合して6%w/wチオール化ポリ(ビニルアルコール)である混合物を作製した。得られた混合物をL929細胞に適用した。混合物による毒性効果の証拠について細胞を評価した。アッセイの結果は、「わずかな細胞傷害性」を示す1のスコアが観察されたということであった。
【0146】
ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートのインビトロ毒性を試験するために、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートのアリコートをMEMと混合して、3%w/wポリ(エチレングリコール)ジアクリレートである混合物を作製した。得られた混合物をL929細胞に適用した。混合物による毒性効果の証拠について細胞を評価した。アッセイの結果は、「わずかな細胞傷害性」を示す1のスコアが観察されたということであった。
【0147】
ヒドロゲルのインビトロ毒性を試験するために、ヒドロゲルをMEMにより抽出して、得られた抽出物をL929細胞に適用した。抽出物による毒性効果の証拠について細胞を評価した。アッセイの結果は、「細胞傷害性が観察されない」ことを示す0のスコアが観察されたということであった。
【0148】
≦2のスコアは許容され得るレベルの細胞傷害性であると考えられるので、この実験で試験した全ての材料は許容され得るレベルの細胞傷害性を有すると決定された。
【0149】
実施例7-例示的なヒドロゲルについてのインビボ毒性分析
3匹のウサギのそれぞれの左目を、実施例2由来のヒドロゲルプレミックスの硝子体内注射に供した。3匹のウサギのそれぞれの右目は処置を受けなかったので、「対照」として使用した。注射の日に硝子体内注射後にウサギの眼を検査して、次いで硝子体内注射の1、2、3および7日後に再度検査した。炎症、眼内の高眼内圧、白内障の形成または網膜の変化の証拠は臨床的には観察されなかった。さらに、ウサギの網膜組織の組織病理学的分析は、正常な網膜構造を示した。図7は、ウサギの眼に対する硝子体内注射の7日後に得られたウサギ網膜組織の組織病理学的分析の図示であり、(i)ウサギの眼はヒドロゲルプレミックスを受け(「ヒドロゲル処置した眼」)、(ii)ウサギの眼はヒドロゲルプレミックスを受けなかった(すなわち「対照」)。
【0150】
実施例8-ウサギの眼における硝子体切除術における例示的なヒドロゲルの使用
実施例2由来のヒドロゲルプレミックスを使用して、3匹のウサギを、左眼に対する25ゲージの経毛網様体扁平部硝子体切除術に供した。該手順は、後部硝子体面(posterior hyaloid face)を剥がすこと、流体空気交換およびその後のウサギの眼へのヒドロゲルプレミックスの注射を含んだ。前述の手順の完了の1週間後にウサギを分析した。全てのウサギが正常な眼内圧を有し、良好にかん流された視神経を有し、健常であったことが決定された。ウサギの眼の眼内圧値を以下の表1に示す。
【表2】
【0151】
図8は、この手順に従ってヒドロゲルを使用して硝子体切除術を行った1日後のウサギの眼の図示を提供する。図8に示されるように、ウサギの眼は、正常な後極の外観を有することが観察された。
【0152】
均等物
本発明は、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態において具体化され得る。そのため、前述の態様は、本明細書に記載される発明を限定するよりもむしろ全ての点において例示的であるものとみなされる。したがって、本発明の範囲は、前述の記載よりも添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の均等物の意味および範囲内にある全ての変化が本明細書内に包含されることが意図される。
本発明の態様として以下のものが挙げられる。
[1]被験体の眼内の網膜組織とヒドロゲルを接触させる方法であって、該方法が、
a. 該被験体の眼の硝子体腔に、核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーの有効量を投与する工程;ならびに
b. 該核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーを反応させて、硝子体腔内でヒドロゲルを形成させる工程
を含み、ここで該核機能性ポリマーは、複数のチオ官能基-R 1 -SH(式中、R 1 は、エステル含有リンカーである)を含む生体適合性ポリマーであり、該電子機能性ポリマーは、少なくとも1つのチオール反応性基を含む生体適合性ポリマーである、方法。
[2]被験体の眼内の網膜組織を支持する方法であって、該方法が、
a. 該被験体の眼の硝子体腔に、核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーの有効量を投与する工程;ならびに
b. 該核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーを反応させて、硝子体腔内でヒドロゲルを形成させる工程
を含み、ここで該核機能性ポリマーは、複数のチオ官能基-R 1 -SH(式中、R 1 は、エステル含有リンカーである)を含む生体適合性ポリマーであり、該電子機能性ポリマーは、少なくとも1つのチオール反応性基を含む生体適合性ポリマーである、方法。
[3]該被験体が、網膜組織において物理的な不連続性を有する、[1]または[2]記載の方法。
[4]該物理的な不連続性が、網膜組織の破れ目、網膜組織の裂け目または網膜組織の穴である、[3]記載の方法。
[5]該被験体が、黄斑円孔のための手術を受けたことがあるか、網膜上膜の少なくとも一部を除去するための手術を受けたことがあるか、または硝子体黄斑牽引のための硝子体切除術を受けたことがある、[1]~[3]いずれか記載の方法。
[6]該被験体が網膜組織の少なくとも一部の剥離を有する、[1]~[4]いずれか記載の方法。
[7]網膜剥離を有する被験体を治療する方法であって、該方法が、
a. 網膜組織の少なくとも一部の剥離を有する被験体の眼の硝子体腔に、核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーの有効量を投与する工程;ならびに
b. 該核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーを反応させて、該硝子体腔内でヒドロゲルを形成させる工程
を含み、ここで該ヒドロゲルは、網膜組織の一部の再付着の間に網膜組織を支持し、該核機能性ポリマーは、複数のチオ官能基-R 1 -SH(式中、R 1 は、エステル含有リンカーである)を含む生体適合性ポリマーであり、該電子機能性ポリマーは、少なくとも1つのチオール反応性基を含む生体適合性ポリマーである、方法。
[8]該剥離が、裂孔原性網膜剥離である、[6]または[7]記載の方法。
[9]該被験体が、牽引性網膜剥離または漿液性網膜剥離を有する、[1]~[3]または[7]のいずれか一項記載の方法。
[10]核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーの投与前に眼から硝子体液を除去する工程をさらに含む、[1]~[9]いずれか記載の方法。
[11]該核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーが、単一組成物として一緒に、該被験体の眼の硝子体腔に投与される、[1]~[10]いずれか記載の方法。
[12]該核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーが、単一の液体水性医薬組成物として一緒に、該被験体の眼の硝子体腔に投与される、[1]~[10]いずれか記載の方法。
[13]該核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーが、該被験体の眼の硝子体腔に別々に投与される、[1]~[10]いずれか記載の方法。
[14]該核機能性ポリマーおよび電子機能性ポリマーが、該被験体の眼の硝子体腔に別々に投与され、ここで該核機能性ポリマーが、単一の液体水性医薬組成物として該被験体の硝子体腔に投与され、該電子機能性ポリマーが、単一の液体水性医薬組成物として該被験体の眼の硝子体腔に投与される、[1]~[10]いずれか記載の方法。
[15]液体水性医薬組成物が、約7.1~約7.7の範囲のpHを有する、[12]または[14]記載の方法。
[16]液体水性医薬組成物が、約7.3~約7.5の範囲のpHを有する、[12]または[14]記載の方法。
[17]液体水性医薬組成物が約7.4のpHを有する、[12]または[14]記載の方法。
[18]液体水性医薬組成物がアルカリ金属塩を含む、[12]または[14]~[17]いずれか一項記載の方法。
[19]液体水性医薬組成物が、アルカリ金属ハロゲン化物塩、アルカリ土類金属ハロゲン化物塩またはそれらの組合せを含む、[12]または[14]~[17]いずれか一項記載の方法。
[20]液体水性医薬組成物が塩化ナトリウムを含む、[12]または[14]~[17]いずれか一項記載の方法。
[21]液体水性医薬組成物が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムまたは前述の2つ以上の組合せを含む、[12]または[14]~[17]いずれか一項記載の方法。
[22]液体水性医薬組成物が、約280mOsm/kg~約315mOsm/kgの範囲の重量オスモル濃度を有する、[12]または[14]~[21]いずれか一項記載の方法。
[23]液体水性医薬組成物が、約280mOsm/kg~約300mOsm/kgの範囲の重量オスモル濃度を有する、[12]または[14]~[21]いずれか一項記載の方法。
[24]液体水性医薬組成物が、約285mOsm/kg~約295mOsm/kgの範囲の重量オスモル濃度を有する、[12]または[14]~[21]いずれか一項記載の方法。
[25]液体水性医薬組成物が、約290mOsm/kgの重量オスモル濃度を有する、[12]または[14]~[21]いずれか一項記載の方法。
[26]ヒドロゲルが、約1.2~約1.5の範囲の屈折率を有する、[1]~[25]いずれか記載の方法。
[27]ヒドロゲルが、約1.3~約1.4の範囲の屈折率を有する、[1]~[25]いずれか記載の方法。
[28]ヒドロゲルが、2cmの厚さを有するヒドロゲルを通して測定された場合に、可視スペクトル内の光について少なくとも95%の透明度を有する、[1]~[27]いずれか記載の方法。
[29]ヒドロゲルが、約1~約1.5g/mLの範囲の密度を有する、[1]~[28]いずれか記載の方法。
[30]ヒドロゲルが、約1~約1.2g/mLの範囲の密度を有する、[1]~[28]いずれか記載の方法。
[31]ヒドロゲルが、該核機能性ポリマーと電子機能性ポリマーを合わせた後に約1分~約30分のゲル化時間を有する、[1]~[30]いずれか記載の方法。
[32]ヒドロゲルが、該核機能性ポリマーと電子機能性ポリマーを合わせた後に約5分~約20分のゲル化時間を有する、[1]~[30]いずれか記載の方法。
[33]ヒドロゲルが、該核機能性ポリマーと電子機能性ポリマーを合わせた後に約5分~約10分のゲル化時間を有する、[1]~[30]いずれか記載の方法。
[34]ヒドロゲルが、25℃の温度で約200Pa~約15kPaの範囲の弾性率を有する、[1]~[33]いずれか記載の方法。
[35]ヒドロゲルが、25℃の温度で約600Pa~約7kPaの範囲の弾性率を有する、[1]~[33]いずれか記載の方法。
[36]ヒドロゲルが、20℃の温度で約20~60cPの範囲の動的粘度を有する、[1]~[35]いずれか記載の方法。
[37]ヒドロゲルが生分解性である、[1]~[36]いずれか記載の方法。
[38]ヒドロゲルが、約2週~約8週以内に該被験体の眼からの完全な生分解を受ける、[37]記載の方法。
[39]ヒドロゲルが、約3週~約5週以内に該被験体の眼からの完全な生分解を受ける、[37]記載の方法。
[40]ヒドロゲルが、約4ヶ月~約6ヶ月以内に該被験体の眼からの完全な生分解を受ける、[37]記載の方法。
[41]ヒドロゲルが、約3日~約7日以内に該被験体の眼からの完全な生分解を受ける、[37]記載の方法。
[42]ヒドロゲルが、眼の硝子体腔内に配置された場合に約1週~約3週の範囲の生分解半減期を有する、[37]記載の方法。
[43]ヒドロゲルが、眼の硝子体腔内に配置された場合に約8週~約15週の範囲の生分解半減期を有する、[37]記載の方法。
[44]ヒドロゲルが、25mmHg未満の眼内圧力を生じる、[1]~[43]いずれか記載の方法。
[45]ヒドロゲルが、約10mmHg~約25mmHgの範囲の眼内圧力を生じる、[1]~[43]いずれか記載の方法。
[46]該核機能性ポリマーが、ポリアルキレンポリマーおよびポリヘテロアルキレンポリマーから選択される生体適合性ポリマーであり、ポリアルキレンポリマーおよびポリヘテロアルキレンポリマーのそれぞれが、(i)複数のチオ官能基-R 1 -SHおよび任意に(ii)1つ以上のヒドロキシル基、アルキルエステル基、ヒドロキシアルキルエステル基またはアミド基で置換されている、[1]~[45]いずれか記載の方法。
[47]該核機能性ポリマーが、(i)複数のチオ官能基-R 1 -SHならびに(ii)ヒドロキシル、アルキルエステル、ヒドロキシアルキルエステルおよびアミドからなる群より選択される複数の基で置換される生体適合性ポリアルキレンポリマーである、[1]~[45]いずれか記載の方法。
[48]該核機能性ポリマーが、それぞれが複数のチオ官能基-R 1 -SHで置換されるポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアルコールメタクリレート)、ポリアクリルアミドまたはポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)から選択される生体適合性ポリマーである、[1]~[45]いずれか記載の方法。
[49]該核機能性ポリマーが、複数のチオ官能基-R 1 -SHで置換される生体適合性ポリ(ビニルアルコール)ポリマーである、[1]~[45]いずれか記載の方法。
[50]該核機能性ポリマーが、複数のチオ官能基-R 1 -SHで置換される生体適合性の部分的に加水分解されるポリ(ビニルアルコール)ポリマーである、[1]~[45]いずれか記載の方法。
[51]該核機能性ポリマーが、複数のチオ官能基-R 1 -SHで置換される生体適合性の部分的に加水分解されるポリ(ビニルアルコール)ポリマーであり、部分的に加水分解されるポリ(ビニルアルコール)ポリマーの加水分解の程度が少なくとも95%である、[1]~[45]いずれか記載の方法。
[52]チオ官能基-R 1 -SHが-OC(O)-(C 1 -C 6 アルキレン)-SHである、[1]~[51]いずれか記載の方法。
[53]チオ官能基-R 1 -SHが-OC(O)-(CH 2 CH 2 )-SHである、[1]~[51]いずれか記載の方法。
[54]該核機能性ポリマーが、
【化A-1】

(式中、aは1~20の整数であり、bは1~20の整数である)を含む生体適合性ポリ(ビニルアルコール)ポリマーである、[1]~[45]いずれか記載の方法。
[55]該核機能性ポリマーが、
【化A-2】

(式中、aは1~20の整数であり、bは1~20の整数であり、cは約20~約500の整数である)を含む生体適合性ポリ(ビニルアルコール)ポリマーである、[1]~[45]いずれか記載の方法。
[56]該核機能性ポリマーが、約500g/mol~約1,000,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する、[1]~[54]いずれか記載の方法。
[57]該核機能性ポリマーが、約2,000g/mol~約500,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する、[1]~[54]いずれか記載の方法。
[58]該核機能性ポリマーが、約4,000g/mol~約30,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する、[1]~[55]いずれか記載の方法。
[59]該核機能性ポリマーが、約26,000g/mol~約32,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する、[1]~[55]いずれか記載の方法。
[60]該核機能性ポリマーが、約30,000g/molの重量平均分子量を有する、[1]~[55]いずれか記載の方法。
[61]該核機能性ポリマーが、約45,000g/mol~約55,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する、[1]~[55]いずれか記載の方法。
[62]該核機能性ポリマーが、約50,000g/molの重量平均分子量を有する、[1]~[55]いずれか記載の方法。
[63]該電子機能性ポリマーが、ポリアルキレンポリマーおよびポリヘテロアルキレンポリマーから選択される生体適合性ポリマーであり、ポリアルキレンポリマーおよびポリヘテロアルキレンポリマーがそれぞれ少なくとも1つのチオール反応性で置換される、[1]~[62]いずれか記載の方法。
[64]該電子機能性ポリマーが、少なくとも1つのチオール反応性基で置換される生体適合性ポリヘテロアルキレンポリマーである、[1]~[62]いずれか記載の方法。
[65]該電子機能性ポリマーが、少なくとも1つのチオール反応性基で置換される生体適合性ポリ(オキシアルキレン)ポリマーである、[1]~[62]いずれか記載の方法。
[66]該電子機能性ポリマーが、少なくとも1つのチオール反応性基で置換される生体適合性ポリ(エチレングリコール)ポリマーである、[1]~[62]いずれか記載の方法。
[67]該チオール反応性基が、α-β不飽和エステル、マレイミジルまたは
【化A-3】

であり、それらのそれぞれが、アルキル、アリールまたはアラルキルの1つ以上の出現で任意に置換される、[1]~[66]いずれか記載の方法。
[68]該チオール反応性基が、アルキル、アリールまたはアラルキルの1つ以上の出現で任意に置換されるα-β不飽和エステルである、[1]~[66]いずれか記載の方法。
[69]該チオール反応性基が-OC(O)CH=CH 2 である、[1]~[66]いずれか記載の方法。
[70]該電子機能性ポリマーが、式:
【化A-4】

(式中、R * は、それぞれの出現について独立して、水素、アルキル、アリールまたはアラルキルであり;mは、5~15,000の範囲の整数である)
を有する、[1]~[62]いずれか記載の方法。
[71]R * が水素である、[70]記載の方法。
[72]該電子機能性ポリマーが、約500g/mol~約1,000,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する、[1]~[71]いずれか記載の方法。
[73]該電子機能性ポリマーが、約1,000g/mol~約100,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する、[1]~[71]いずれか記載の方法。
[74]該電子機能性ポリマーが、約2,000g/mol~約8,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する、[1]~[71]いずれか記載の方法。
[75]該電子機能性ポリマーが、約3,000g/mol~約4,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する、[1]~[71]いずれか記載の方法。
[76]該電子機能性ポリマーが、約3,200g/mol~約3,800g/molの範囲の重量平均分子量を有する、[1]~[71]いずれか記載の方法。
[77]該電子機能性ポリマーが、約3,500g/molの重量平均分子量を有する、[1]~[71]いずれか記載の方法。
[78](i)チオ官能基-R 1 -SH 対 (ii)チオール反応性基のモル比が10:1~1:10の範囲にある、[1]~[77]いずれか記載の方法。
[79](i)チオ官能基-R 1 -SH 対 (ii)チオール反応性基のモル比が5:1~1:1の範囲にある、[1]~[77]いずれか記載の方法。
[80](i)チオ官能基-R 1 -SH 対 (ii)チオール反応性基のモル比が2:1~1:1の範囲にある、[1]~[77]いずれか記載の方法。
[81]被験体の眼内でヒドロゲルを形成するための注射可能眼性製剤であって、該製剤が、
a. 複数のチオ官能基-R 1 -SH(式中、R 1 はエステル含有リンカーである)を含む生体適合性ポリマーである核機能性ポリマー;
b. 少なくとも1つのチオール反応性基を含む生体適合性ポリマーである電子機能性ポリマー;
c. 被験体の眼への投与のための液体の薬学的に許容され得る担体
を含む、製剤。
[82]該核機能性ポリマーが、ポリアルキレンポリマーおよびポリヘテロアルキレンポリマーから選択される生体適合性ポリマーであり、ポリアルキレンポリマーおよびポリヘテロアルキレンポリマーのそれぞれが、(i)複数のチオ官能基-R 1 -SHおよび任意に(ii)1つ以上のヒドロキシル基、アルキルエステル基、ヒドロキシアルキルエステル基またはアミド基で置換される、[81]記載の製剤。
[83]該核機能性ポリマーが、(i)複数のチオ官能基-R 1 -SHならびに(ii)ヒドロキシル、アルキルエステル、ヒドロキシアルキルエステルおよびアミドからなる群より選択される複数の基で置換される生体適合性ポリアルキレンポリマーである、[81]記載の製剤。
[84]該核機能性ポリマーが、それぞれが複数のチオ官能基-R 1 -SHで置換されるポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアルコールメタクリレート)、ポリアクリルアミドまたはポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)から選択される生体適合性ポリマーである、[81]記載の製剤。
[85]該核機能性ポリマーが、複数のチオ官能基-R 1 -SHで置換される生体適合性ポリ(ビニルアルコール)ポリマーである、[81]記載の製剤。
[86]該核機能性ポリマーが、複数のチオ官能基-R 1 -SHで置換される、生体適合性の部分的に加水分解されるポリ(ビニルアルコール)ポリマーである、[81]記載の製剤。
[87]該核機能性ポリマーが、複数のチオ官能基-R 1 -SHで置換される、生体適合性の部分的に加水分解されるポリ(ビニルアルコール)ポリマーであり、ここで該部分的に加水分解されるポリ(ビニルアルコール)ポリマーの加水分解の程度が少なくとも95%である、[81]記載の製剤。
[88]該チオ官能基-R 1 -SHが-OC(O)-(C 1 -C 6 アルキレン)-SHである、[81]~[87]いずれか記載の製剤。
[89]該チオ官能基-R 1 -SHが-OC(O)-(CH 2 CH 2 )-SHである、[81]~[87]いずれか記載の製剤。
[90]該核機能性ポリマーが、
【化A-5】

(式中、aは1~10の整数であり、bは1~10の整数である)
を含む、生体適合性ポリ(ビニルアルコール)ポリマーである、[81]記載の製剤。
[91]該核機能性ポリマーが、
【化A-6】

(式中、aは1~10の整数であり、bは1~10の整数であり、cは約20~約500の整数である)
を含む、生体適合性ポリ(ビニルアルコール)ポリマーである、[81]記載の製剤。
[92]該核機能性ポリマーが、約500g/mol~約1,000,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する、[81]~[90]いずれか記載の製剤。
[93]該核機能性ポリマーが、約2,000g/mol~約500,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する、[81]~[91]いずれか記載の製剤。
[94]該核機能性ポリマーが、約4,000g/mol~約30,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する、[81]~[91]いずれか記載の製剤。
[95]該核機能性ポリマーが、約26,000g/mol~約32,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する、[81]~[91]いずれか記載の製剤。
[96]該核機能性ポリマーが、約30,000g/molの重量平均分子量を有する、[81]~[91]いずれか記載の製剤。
[97]該核機能性ポリマーが、約45,000g/mol~約55,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する、[81]~[91]いずれか記載の製剤。
[98]該核機能性ポリマーが、約50,000g/molの重量平均分子量を有する、[81]~[91]いずれか記載の製剤。
[99]該電子機能性ポリマーが、ポリアルキレンポリマーおよびポリヘテロアルキレンポリマーから選択される生体適合性ポリマーであり、ポリアルキレンポリマーおよびポリヘテロアルキレンポリマーがそれぞれ少なくとも1つのチオール反応性基で置換される、[81]~[98]いずれか記載の製剤。
[100]該電子機能性ポリマーが、少なくとも1つのチオール反応性基で置換される生体適合性ポリヘテロアルキレンポリマーである、[81]~[98]いずれか記載の製剤。
[101]該電子機能性ポリマーが、少なくとも1つのチオール反応性基で置換される生体適合性ポリ(オキシアルキレン)ポリマーである、[81]~[98]いずれか記載の製剤。
[102]該電子機能性ポリマーが、少なくとも1つのチオール反応性基で置換される生体適合性ポリ(エチレングリコール)ポリマーである、[81]~[98]いずれか記載の製剤。
[103]該チオール反応性基が、α-β不飽和エステル、マレイミジルまたは
【化A-7】

であり、それらのそれぞれが、アルキル、アリールまたはアラルキルの1つ以上の出現で任意に置換される、[81]~[102]いずれか記載の製剤。
[104]該チオール反応性基が、アルキル、アリールまたはアラルキルの1つ以上の出現で任意に置換されるα-β不飽和エステルである、[81]~[102]いずれか記載の製剤。
[105]該チオール反応性基が-OC(O)CH=CH 2 である、[81]~[102]いずれか記載の製剤。
[106]該電子機能性ポリマーが、式:
【化A-8】

(式中、R * は、それぞれの出現について独立して、水素、アルキル、アリールまたはアラルキルであり;mは5~15,000の範囲の整数である)
を有する、[81]~[98]いずれか記載の製剤。
[107]R * が水素である、[106]記載の製剤。
[108]該電子機能性ポリマーが、約500g/mol~約1,000,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する、[81]~[107]いずれか記載の製剤。
[109]該電子機能性ポリマーが、約1,000g/mol~約100,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する、[81]~[107]いずれか記載の製剤。
[110]該電子機能性ポリマーが、約2,000g/mol~約8,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する、[81]~[107]いずれか記載の製剤。
[111]該電子機能性ポリマーが、約3,000g/mol~約4,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する、[81]~[107]いずれか記載の製剤。
[112]該電子機能性ポリマーが、約3,200g/mol~約3,800g/molの範囲の重量平均分子量を有する、[81]~[107]いずれか記載の製剤。
[113]該電子機能性ポリマーが、約3,500g/molの重量平均分子量を有する、[81]~[107]いずれか記載の製剤。
[114](i)チオ官能基-R 1 -SH 対 (ii)チオール反応性基のモル比が10:1~1:10の範囲にある、[81]~[113]いずれか記載の製剤。
[115](i)チオ官能基-R 1 -SH 対 (ii)チオール反応性基のモル比が5:1~1:1の範囲にある、[81]~[113]いずれか記載の製剤。
[116](i)チオ官能基- R 1 -SH 対 (ii)チオール反応性基のモル比が2:1~1:1の範囲にある、[81]~[113]いずれか記載の製剤。
[117]該製剤が水を含み、該製剤が約7.1~約7.7の範囲のpHを有する、[81]~[116]いずれか記載の製剤。
[118]該製剤が水を含み、該製剤が約7.3~約7.5の範囲のpHを有する、[81]~[116]いずれか記載の製剤。
[119]該製剤が水を含み、該製剤が約7.4のpHを有する、[81]~[116]いずれか記載の製剤。
[120]アルカリ金属塩をさらに含む、[81]~[119]いずれか記載の製剤。
[121]アルカリ金属ハロゲン化物塩、アルカリ土類金属ハロゲン化物塩またはそれらの組合せをさらに含む、[81]~[119]いずれか記載の製剤。
[122]塩化ナトリウムをさらに含む、[81]~[119]いずれか記載の製剤。
[123]塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムまたは前述の2つ以上の組合せをさらに含む、[81]~[119]いずれか記載の製剤。
[124]該製剤が、約280mOsm/kg~約315mOsm/kgの範囲の重量オスモル濃度を有する、[81]~[123]いずれか記載の製剤。
[125]該製剤が、約280mOsm/kg~約300mOsm/kgの範囲の重量オスモル濃度を有する、[81]~[123]いずれか記載の製剤。
[126]該製剤が、約285mOsm/kg~約295mOsm/kgの範囲の重量オスモル濃度を有する、[81]~[123]いずれか記載の製剤。
[127]該製剤が、約290mOsm/kgの重量オスモル濃度を有する、[81]~[123]いずれか記載の製剤。
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8