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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】駆動装置において回転数を制限する方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 3/72 20060101AFI20220311BHJP
   F16H 3/54 20060101ALI20220311BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20220311BHJP
   H02K 7/108 20060101ALI20220311BHJP
   H02P 29/032 20160101ALI20220311BHJP
   H02K 9/02 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
F16H3/72 A
F16H3/54
H02K7/116
H02K7/108
H02P29/032
H02K9/02 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019504071
(86)(22)【出願日】2017-07-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-03
(86)【国際出願番号】 EP2017067836
(87)【国際公開番号】W WO2018019616
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-03-27
(31)【優先権主張番号】102016213639.9
(32)【優先日】2016-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506408818
【氏名又は名称】フォイト パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】VOITH PATENT GmbH
【住所又は居所原語表記】St. Poeltener Str. 43, D-89522 Heidenheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベアント ラウター
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン リンデンマイアー
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102014210864(DE,A1)
【文献】特開2012-1108(JP,A)
【文献】特開2013-136329(JP,A)
【文献】特開2014-107956(JP,A)
【文献】特開2001-227616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/72
F16H 3/54
H02K 7/116
H02K 7/108
H02P 29/032
H02K 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主駆動機(2)または補助駆動機(3.1,3.2)の故障時または迅速遮断時に、駆動装置において回転数を制限する方法であって、
前記駆動装置は、
重畳伝動装置(17)と、
前記重畳伝動装置(17)の入力軸(14)に接続された主駆動機(2)と、
1つまたは複数の補助駆動機(3.1,3.2)と、
前記重畳伝動装置(17)の、作業機械(1)に接続することができる、出力軸(15)と、
を含み、
前記重畳伝動装置(17)は、リングギヤ(4)、サンギヤ(7)、遊星キャリヤ(10)および複数の遊星ギヤ(5)を備えた遊星歯車伝動装置(18)を有し、前記入力軸(14)は、前記リングギヤ(4)に接続され、前記出力軸(15)は前記サンギヤ(7)に接続され、1つまたは複数の前記補助駆動機(3.1,3.2)は、一定の変速比(i_SG1)を有する第1の伝動装置段(6.1,6.1a,6.1b,6.2,6.2a,6.2b)を介して前記遊星キャリヤ(10)に接続されている、駆動装置において、
一定の変速比(i_SG1,i_SG2,i_SG3)を有する追加的な駆動結合部が、前記補助駆動機(3.1,3.2)と、前記入力軸における前記リングギヤ(4)またはピニオン(4.1)との間に設けられており、前記追加的な駆動結合部に、該追加的な駆動結合部をアクティブにするまたは遮断することができる切換可能なクラッチ(11.1,11.2)が設けられていて、前記クラッチ(11.1,11.2)による遮断時に、前記補助駆動機(3.1,3.2)と前記遊星キャリヤ(10)との間における結合を、前記第1の伝動装置段(6.1,6.1a,6.1b,6.2,6.2a,6.2b)を介してアクティブに保ち、
前記方法は、
A)前記主駆動機(2)または前記補助駆動機(3.1,3.2)の故障または迅速遮断を認識するステップと、
B)前記補助駆動機(3.1,3.2)の回転数(n3)、前記主駆動機(2)の回転数(n2)、および前記作業機械(1)の回転数(n1)を測定するステップと、
C)前記主駆動機(2)の回転数(n2)が前記クラッチ(11)の閉鎖前において前記クラッチ(11)の閉鎖後における回転数(n2)に等しいという条件から同期点を計算するステップと、
S1)前記補助駆動機(3.1,3.2)の回転数(n3)が、前記同期点での前記主駆動機(2)の回転数(n2)と変速比(i_SG2)から求められた前記補助駆動機(3.1,3.2)の同期回転数(n_syn)から所定値を超える偏差を有している場合に、前記クラッチ(11)を直ちに閉鎖するステップと、
S2)前記補助駆動機の回転数(n3)が前記同期回転数(n_syn)から前記所定値以内の偏差を有している場合に、前記クラッチ(11)を遅延させて閉鎖するステップと、
を実施する、
方法。
【請求項2】
前記所定値は、5%である、請求項記載の方法。
【請求項3】
駆動機の巻線温度および/または軸受温度に対する温度上限を、1つまたは複数の温度センサ(24,26,28および/または25,27,29)によって監視することによって、前記主駆動機(2)の間近の故障または迅速遮断を、既に発生前に認識する、
請求項または記載の方法。
【請求項4】
故障または間近の故障を認識するために、前記補助駆動機(3.1,3.2)の回転数(n3)の加速度、前記主駆動機(2)の回転数(n2)の加速度、および前記作業機械(1)の回転数(n1)の加速度を、追加的に使用する、
請求項からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記主駆動機(2)の故障時または機能不全時に、前記補助駆動機(3.1,3.2)を同期回転数の近くにもたらすために、別の方法ステップとして、前記補助駆動機(3.1,3.2)に回転数設定またはトルク設定を行う、
請求項からまでのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重畳伝動装置、該重畳伝動装置の入力軸に接続された主駆動機、1つまたは複数の補助駆動機、および作業機械に接続することができる出力軸を含んでおり、このとき重畳伝動装置は、リングギヤ、サンギヤ、遊星キャリヤおよび複数の遊星ギヤを備えた遊星歯車伝動装置を有しており、かつこのとき入力軸は、リングギヤに接続され、出力軸はサンギヤに接続され、かつ1つまたは複数の補助駆動機は、伝動装置段を介して遊星キャリヤに接続されている、駆動装置に関する。
【0002】
さらに本発明は、このような駆動装置における主駆動機または補助駆動機の故障時または迅速遮断時に回転数を制限する方法に関する。
【0003】
重畳伝動装置では、一般的に、遊星歯車伝動装置の2つの軸が、互いに無関係の駆動装置によって駆動され、出力軸である第3の軸における回転数が上昇または低下されるようになっている。駆動機のうちの1つが調整可能であると、これによって出力軸に対する無段階の回転数調整を達成することができる。
【0004】
従来技術に基づいて、重畳伝動装置を備えた駆動装置が公知であり、重畳伝動装置では、主駆動機が、入力軸を介して遊星歯車伝動装置のリングギヤを駆動し、かつ調整可能な補助駆動機が、1つの伝動装置段を介して遊星キャリヤを駆動するのに対して、作業機械は出力軸を介してサンギヤに接続されている。このような駆動装置によって、主駆動機の一定の作動時において、出力軸における回転数を、かなり大きな回転数範囲において無段階式に調節することができる。
【0005】
さらに、補助駆動機が高回転時にその都度回転数を主駆動機に印加することによって、主駆動機を負荷なしにドラッグすることが可能である。主駆動機が定格回転数の近くになった場合に初めて、ひいては大きなトルクをもたらすことができる場合に初めて、負荷は、補助駆動機による回転数の補償が減じられることによって、ゆっくりと加速される。
【0006】
具体的な構成は、例えば文献独国特許出願公開第102014210864号明細書に開示されている。この文献では、追加的に、1つのクラッチが補助駆動機と、遊星キャリヤへの第1の伝動装置段との間に設けられている。このクラッチは、補助駆動機を遊星歯車伝動装置から完全に切り離すことができる。これによって補助駆動機の異常時に、補助駆動機を停止させることができ、かつ残りは、少なくとも主駆動機を用いて一定の回転数でさらに作動させることができる。
【0007】
このような駆動装置は、特に、例えば石油産業およびガス産業または熱発電所において使用される、大出力のポンプ、圧縮機またはコンプレッサを駆動するために利用される。
【0008】
しかしながらこのとき、主駆動機が運転時に故障した場合または電源網から切り離されねばならない場合に、補助駆動機および伝動装置が損傷するおそれがあるという問題は、満足できる程度に解決されていない。上に述べた使用例では、多くの場合主駆動機の質量慣性は、駆動される作業機械の質量慣性よりもはるかに大きいので、主駆動機における駆動モーメントの消失時に作業機械の回転数は、急速に0になる。遊星歯車伝動装置における回転数バランスに基づいて、この伝動装置変化形態では、遊星キャリヤおよび補助駆動機は強く加速される。このとき遊星キャリヤにおいて許容不能な回転数が発生することがある。このことは、補助駆動機における連結によって阻止することができず、それどころか、確かに連結の遮断によって補助駆動機を保護することは可能であるが、遊星キャリヤにおける回転数は、このときしかしながらさらに急速に上昇するおそれがある。従来技術では、このことを、遊星キャリヤにおける制動によって阻止することが提案されているが、そのためにはしかしながら連結のために、さらに追加的なコンポーネントが必要になる。このことは、駆動装置のコストを高騰させ、かつより大きな構造空間を必要とすることになり、これは、2つの大きな欠点である。
【0009】
本発明の課題は、上に述べた問題に対する改善された解決策を見出すことである。
【0010】
装置に対しては、この課題は、請求項1に記載の駆動装置によって解決される。装置をさらに改善する、本発明に係る構成の別の好適な特徴は、相応の従属請求項において見られる。このとき装置は、本発明によれば、一定の変速比を有する追加的な駆動結合部が、補助駆動機と、入力軸におけるリングギヤまたはピニオンとの間に設けられており、このときこの追加的な駆動結合部に、追加的な駆動結合部を活性化または中断することができる切換可能なクラッチが設けられていて、クラッチによる中断時に、補助駆動機と遊星キャリヤとの間における結合部を、第1の伝動装置段を介して活性状態に保つようになっている。このとき活性状態というのは、出力およびトルクを伝達することができることを意味している。このようにしてクラッチを用いて、補助駆動機および主駆動機を、追加的な駆動結合部を介して遊星歯車伝動装置の入力側において直接連結することができる。追加的な駆動結合部のための変速比を適宜に選択すると、主駆動機の故障時に、エネルギの大部分を、クラッチにおいて補助駆動機の迂回加速(Umbeschleunigung)により消費することができる。クラッチを適宜に遅延させて駆動制御すると、エネルギの比較的大きな部分を、補助駆動機においても消費することができ、これによってクラッチを比較的小さくかつ軽量に設計することができる。これにより補助駆動機または遊星キャリヤの過剰回転数が、効果的に阻止される。これによって、特に遊星ボルトは、極めて大きな遠心力による損傷に対して保護される。
【0011】
クラッチが適宜に駆動制御され、これによって可能な限り多くのエネルギが補助駆動機において、かつ比較的僅かなエネルギがクラッチにおいて消費されると、駆動装置における温度上昇を小さく保つことができる。このことは、特に例えば爆発のおそれがある場所における使用、例えば石油産業およびガス産業における圧縮機または可燃性の塵埃が存在する場所でのベンチレータにおける使用が計画されている場合に、公知のブレーキを備えた変化形態に対する特別な利点である。しばしばこのような場所では、異常時でない場合においても、超過することが許されない特定の温度制限が設定されている。
【0012】
通常運転時に、クラッチは開放されており、かつ追加的な駆動結合部は遮断されている。補助駆動機は、補助駆動軸および第1の伝動装置段を介して遊星キャリヤに接続されている。異常時にクラッチは、上に述べたように閉鎖され、追加的な駆動結合部が活性化される。
【0013】
このような装置は、例えば高速作動するコンプレッサまたは大型のベンチレータにおいて要求される、被動部における高回転数のために良好に適している。なぜならば、これによって駆動装置の構造空間および重量を比較的小さく保つことができるからである。
【0014】
本発明に係る装置においては、追加的に、主駆動機の無電流時においても、駆動装置はクラッチの閉鎖時に補助駆動機だけによって作業機械を駆動することができるという利点が提供される。このようなことは、従来公知の装置によっては不可能である。利点は特に、これによって低回転数範囲において作業機械を補助駆動機だけによって運転することができるということにある。入力軸における回転数が主駆動機の定格回転数の範囲になると、主駆動機は電源網に接続することができる。このようにして、不所望の投入接続時電流ピークの継続時間を大幅に短くすることができる。
【0015】
伝動装置段というのは、一定の変速比、つまり不変の回転数比で、出力およびトルクを伝達する駆動接続装置であると理解される。第1の伝動装置段は、好ましくは、補助駆動軸における歯車と、歯車として形成されているかまたは接合されている歯車を保持する遊星キャリヤとの間における、単段の平歯車伝動装置によって形成される。特に好ましくは、第1の伝動装置段は、いわゆる歯車列として形成されており、すなわち複数の、少なくとも2つの歯車から形成されており、これらの歯車は、互いに次々と係合していて、かつこれによりトルクを遊星キャリヤにおける歯車に伝達する。択一的に第1の伝動装置段は、多段の適合伝動装置(Anpassgetriebe)またはチェーン駆動装置または歯付きベルト駆動装置によって形成することができる。
【0016】
追加的な駆動結合部は、同様に好ましくは、補助駆動軸における歯車と、リングギヤにおける外歯列または入力軸における追加的なピニオンとから成る、単段の平歯車伝動装置として形成されてもよい。第1の伝動装置段において述べた、構成に対する変化形態は、特に歯車列は、追加的な駆動結合部においても好適に使用することができる。必要なクラッチは、好ましくは、補助駆動軸と補助駆動軸における歯車との間に設けられている。このように構成されていると、追加的な駆動結合部の1つまたは複数の歯車を、クラッチの開放時に一緒に運動させる必要がなくなり、このことは好適であると言える。入力軸に追加的なピニオンを備えた変化形態では、クラッチは、択一的にピニオンと入力軸との間に設けられていてもよい。
【0017】
追加的な駆動結合部は、第2の伝動装置段によって形成することができ、このとき追加的な駆動結合部は、補助駆動軸から第2の伝動装置段を介して、リングギヤまたはピニオンに直接作用する。追加的な駆動結合部は、また第2および第3の伝動装置段によっても形成することができ、このとき第2の伝動装置段は、まずトルクを補助駆動軸から中間軸に伝達し、かつ第3の伝動装置段は、トルクを中間軸から、入力軸におけるピニオンに、またはリングギヤに伝達する。または追加的な駆動結合部は、補助駆動軸から第1の伝動装置段を介して遊星キャリヤに、第2の伝動装置段を介して遊星キャリヤから中間軸に、かつ第3の伝動装置段を介して中間軸からリングギヤまたはピニオンにトルクが伝達されるように形成されている。このとき好ましくは、第1の伝動装置段および/または第3の伝動装置段は、それぞれ少なくとも2つの歯車から成る歯車列として、トルクの伝達が望まれている歯車またはピニオンに加えて構成されていてもよい。クラッチは、好ましくは第2の伝動装置段と第3の伝動装置段との間に設けられていてもよく、かつ中間軸を第1の中間軸と第2の中間軸とに分割することができる。このことは、特に構造空間を節減する変化形態および分割継ぎ目を備えたケーシングを可能にする。
【0018】
特に好適な本発明に係る構成では、主駆動機は、単に回転数一定に運動可能であり、かつ1つまたは複数の補助駆動機は、回転数調整されて運転可能であり、かつ特に1つまたは複数の補助駆動機は、低電圧モータとして形成されている。駆動出力の大部分は、一定に運転される主駆動機によってもたらすことができる。この主駆動機は、周波数変換器を必要とせず、このことは投資コストを節減する。好ましくは、主駆動機は、1kVよりも大きな電圧を有する中電圧モータとして形成されている。回転数調整は、補助駆動機を介して行われ、補助駆動機は、比較的小さな出力しか必要とせず、かつ好ましくは、1kV未満の電圧を有する低電圧モータとして形成されている。これによって、そのために必要な周波数変換器は、比較的小型でかつ比較的安価である。
【0019】
補助駆動機における許容不能な温度上昇を低減するために、かつ補助駆動機の出力、つまり補助駆動機のトルクを、低回転数においても呼び出すことができるようにするために、好ましくは、1つまたは複数の補助駆動機は、各1つの外部冷却器を有しており、該外部冷却器は、別体のファンモータを備えた外部ファンとして形成されており、かつ特に、別体のファンモータにおける巻線温度を監視するセンサを有している。モータ軸に設置されていてかつモータ回転数で一緒に回転する、従来技術において使用されているファンは、そのためには不十分である。外部ファンによって、冷却出力を、補助駆動機の回転数とは無関係に制御することができる。
【0020】
択一的に、1つまたは複数の補助駆動機は、各1つの外部冷却器を有しており、該外部冷却器は、水冷器として形成されており、かつ特に、冷却器戻り路における冷却水温度を監視するセンサ、および/または冷却水ポンプを監視するセンサを有していることができる。このような構成においても、冷却出力の無関係に独立した制御が可能である。冷却水としては、それぞれの適宜な液状の冷媒を使用することができる。
【0021】
追加的なセンサは、冷却出力の認識、ひいては補助駆動機の負荷の認識を可能にする。これらのデータは、駆動装置全体を制御するために、かつ異常を前もって認識するためにも使用することができる。
【0022】
特に好ましくは、クラッチは、該クラッチが、駆動制御されていない状態において、特にエネルギ消滅時に、閉鎖された状態に移行するように構成されており、かつクラッチは、好ましくは多板クラッチ、咬み合いクラッチ、または粘性クラッチとして形成されている。クラッチの無電流時閉鎖構成によって、完全なエネルギ消滅時においても過剰回転数に対する保護を与えることが保証されている。多板クラッチ、咬み合いクラッチまたは粘性クラッチまたは流体力学式のクラッチは、高出力を伝達するのに特に良好に適している。
【0023】
クラッチの、所望のように遅延させられた切換を可能にするためには、正しい切換時点を確定することが必要である。そのためには、駆動装置における回転数を認識することが不可欠である。したがって好ましくは、駆動装置は、3つの回転数(n1,n2,n3)、すなわち主駆動機、出力軸および補助駆動機の回転数のうちの少なくとも2つの回転数が、検出または測定され得るように構成されている。遊星歯車伝動装置における第3の必要な回転数は、回転数方程式(ウィリスの方程式)によって確定することができる。検出または測定は、特に、駆動機におけるパルス発信器および/または回転数センサを用いて行うことができる。
【0024】
負荷および場合によっては発生する異常を前もって認識するために、好ましくは、1つまたは複数の補助駆動機は、巻線温度を検出するセンサおよび/または軸受温度を検出するセンサを有している。特に、駆動装置における温度限界に対する要求が高い場合に、このような構成は好適であると言える。さらに同じ理由から、主駆動機が、巻線温度を検出するセンサおよび/または軸受温度を検出するセンサを有することができる。
【0025】
方法に対しては、課題は、請求項11に記載の構成によって解決される。方法をさらに改善する、本発明に係る方法の別の好適な特徴は、相応の従属請求項において見られる。
【0026】
補助駆動機および遊星キャリヤにおける不所望の過剰回転数を回避するために、本発明に係る駆動装置において以下に記載の方法ステップ、すなわち、
A)主駆動機または補助駆動機の故障または迅速遮断を認識するステップ、
S)およびその後でクラッチを閉鎖するステップ
を実施する。
【0027】
異常の認識後におけるクラッチの閉鎖によって、主駆動機および補助駆動機は、第2の平歯車段を介して、互いに不動に連結される。これによって、このとき補助駆動機および遊星キャリヤが主駆動機の大きな質量慣性に基づいて極めて強く加速されることが回避される。過度の高回転数に基づく損傷のリスクは、回避される。
【0028】
故障または迅速遮断の認識(このときこれらに、間近の故障または間近の迅速遮断も一緒に含まれている)は、例えば駆動装置制御を介してかつ/または給電部からの信号を介して、特に給電網の故障時または安全装置もしくは緊急遮断装置のトリガ時に行うことができる。同様に、エラー通知または異常通知を使用することが可能である。
【0029】
クラッチの閉鎖というのは、クラッチの駆動制御の切換時点であると理解される。駆動制御の後には、まず、ほぼ完全なトルク伝達が達成されるまで、クラッチにおいてある程度のスリップが発生するという段階が生じる。
【0030】
回転数制限をさらに改善するため、かつクラッチに対する負荷を低減するために、好ましくは、追加的に以下に記載のステップ、すなわち、
B)補助駆動機のうちの1つの補助駆動機または遊星キャリヤにおける、入力軸または主駆動機における、および出力軸または作業機械における回転数を繰り返し求めるまたは測定するステップ、
C)主駆動機の回転数(n2)がクラッチの閉鎖前においてクラッチの閉鎖後における回転数(n2)に等しいという条件から同期点を計算するステップ、
S1)補助駆動機の回転数(n3)が同期回転数(n_syn)から離れている場合にだけ、クラッチを直ちに閉鎖するステップ、
S2)またはそうでない場合に、つまり補助駆動機の回転数(n3)が同期回転数(n_syn)から最大5%、好ましくは最大3%の偏差を有するや否や、クラッチを遅延させて閉鎖するステップ
を実施する。
【0031】
プロセスに条件付けられて、幾つかのステップを、完全にまたは部分的に並行に行うことができる。特にステップB)およびC)は、並行に行うことができる。もしくはステップB)は、運転中に継続的に行うこともできる。ステップS1)およびS2)は、事例の差と見なすことができ、かつステップS)の詳細と見なすことができる。すなわち、「補助駆動機の回転数(n3)が同期回転数から離れている」という条件が満たされている場合に、S1)が実施される。これに対して、この条件が満たされていない場合には、その代わりにS2)が実施される。
【0032】
両駆動軸および出力軸の回転数を確定できるようにするためには、回転数のうちの少なくとも2つの回転数を測定する必要がある。このとき第3の回転数は、いわゆるウィリスの方程式によって求めることができる。測定は、適宜な箇所における回転数センサによって、または駆動機におけるパルス発信器によって行うことができる。主駆動機が一定に駆動される場合には、精度はある程度低下するが、異常時においても、回転数は最初一定であり、その後も回転数測定は十分であるという近似値を想定することができる。
【0033】
クラッチの開放時における回転数バランスのためのウィリスの方程式は、次のように表される:すなわち、
n1-(i_PG・n2)-((1-i_PG)・(n3/i_SG1))=0
(Gl.1)
回転数および変速比の名称は、図面に対する符号の説明において見られる。
【0034】
同期点の計算のために、主駆動機の回転数(n2)がクラッチの閉鎖の前後において等しいという条件が満たされねばならない。ウィリスの方程式が、クラッチの開放時における条件を定めているのに対して、下記の方程式は、クラッチの閉鎖時における条件を定めている:すなわち、
n2=n3/i_SG2 (Gl.2a)
両方程式は、同期点において同時に満たされねばならない。このことが与えられている場合に、クラッチは、最小のスリップで閉鎖することができる。変速比i_SG2によって、同期点における補助駆動機の回転数が、主駆動機の回転数に関連して設定されている。Gl.1をGl.2に代入することによって、条件は、n2およびn3に対してのみならず、択一的に他の回転数との関連においても表現することができる。変速比i_SG2の選択は、同期点における回転数が駆動装置の調整範囲内にあるように選択される。
【0035】
補助駆動機から第1の伝動装置段を介して遊星キャリヤに、かつこの遊星キャリヤから第2の伝動装置段を介して中間軸に、かつこの中間軸から第3の伝動装置段を介してリングギヤまたは入力軸におけるピニオンに作用する、追加的な駆動結合部を備えた構成においては、方程式(2a)の代わりに、クラッチの閉鎖時における条件のための下記の方程式:すなわち、
n2=n3・(i_SG3・i_SG2/i_SG1) (Gl.2b)
が通用する。
【0036】
そこで故障の認識時には、現在の回転数が同期点における回転数と比較される。補助駆動機の回転数が、補助駆動機の同期回転数から離れている場合には、クラッチは直ちに閉鎖され、かつ補助駆動機は、主駆動機に不動に連結される。これに対して補助駆動機の回転数が同期回転数へと上昇している場合には、クラッチの閉鎖は遅延させられる。つまり遅延は、補助駆動機の回転数が、所属の同期回転数から5%よりも大きな偏差、好ましくは3%よりも大きな偏差を有しなくなるまで行われる。これによって、クラッチにおけるエネルギの受け止めひいては温度上昇は、可能な限り小さくなる。クラッチを直ちに閉鎖することを伴う第1の場合は、補助駆動機の回転数が同期回転数を既に超過していて、かつ係合なしにはもはや同期回転数を得ることができない場合にだけ必要である。
【0037】
特に、主駆動機の間近の故障または迅速遮断を、既にその発生前に認識できると好適である。そのためには、例えば1つまたは複数の駆動機の巻線温度のためおよび/または軸受温度のための温度上限を、1つまたは複数の温度センサによって監視することができる。
【0038】
さらに、故障または間近の故障を認識するために、測定されたまたは求められた回転数(n1,n2,n3)から成る現在の加速値を、追加的に使用することができる。このようにして回転数における特別な勾配の発生時に、故障を認識することができ、かつ回転数を制限するための本発明に係る方法を実施することができる。
【0039】
主駆動機の故障時または機能不全時に、補助駆動機を同期回転数の近くにもたらすために、別の方法ステップとして、補助駆動機に回転数設定またはトルク設定を行うことが、好適であると言える。このようにすると、過度に大きなエネルギをクラッチにおいて受け止めねばならないということを、回避することができる。これによってクラッチにおける温度上昇が低減される。
【0040】
次に図面を参照しながら実施形態を用いて、本発明の別の好適な構成を説明する。上に述べた特徴は、図示の組合せにおいてのみ好適に使用できるのではなく、互いに個々に組み合わせることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明に係る駆動装置を示す図である。
図2a】補助駆動機の正の回転数を有する、別の本発明に係る駆動装置を示す図である。
図2b】補助駆動機の負の回転数を有する、別の本発明に係る駆動装置を示す図である。
図3a】歯車列を介した別の駆動結合形態を有する、別の本発明に係る駆動装置を示す図である。
図3b】歯車列を介した別の駆動結合形態を有する、別の本発明に係る駆動装置の一部を示す正面図である。
図4a】クラッチを閉鎖しない場合における回転数変化を例示する図である。
図4b】クラッチを閉鎖しない場合における別の回転数変化を例示する図である。
図5】クラッチを直ちに閉鎖した場合における回転数変化を例示する図である。
図6】クラッチを遅延させて閉鎖した場合における回転数変化を例示する図である。
【0042】
以下において図面について詳細に説明する。同一もしくは同様の部材またはコンポーネントに対しては、同一の参照符号が付されている。
【0043】
図1には、本発明に係る駆動装置が示されており、この駆動装置は、出力軸15を介して作業機械1に結合されている。このような装置において、回転数を制限するための本発明に係る方法を、好適に使用することができる。重畳伝動装置17は、ケーシング9を有しており、かつ変速比i_PGを有する遊星歯車伝動装置18を含んでいる。入力軸14は、主駆動機2を遊星歯車伝動装置のリングギヤ4に接続しており、かつ出力軸15は、サンギヤ7を作業機械1に接続している。重畳伝動装置の第3の軸は、補助駆動軸16.1,16.2によって形成される。これらの補助駆動軸16.1,16.2は、第1の伝動装置段6.1,6.2を介して、補助駆動機3.1,3.2を遊星キャリヤ10に接続している。遊星キャリヤ10は、一方では遊星ギヤ5を、遊星ボルトを介して保持しており、かつ他方の側では歯車として形成されており、この歯車は、補助駆動軸16.1,16.2におけるそれぞれの歯車と共に、第1の伝動装置段6を形成している。歯車はまた、遊星キャリヤに接合されていてもよく、歯車は、必ずしも一体に遊星キャリヤから形成されている必要はない。本図面では、伝動装置段のための好適な変化形態が、つまり平歯車段の形態で示されている。さらにこの構成は2つの補助駆動機3.1,3.2を備えており、しかしながらまた本発明は、ただ1つの補助駆動機、または複数の、例えば3つの補助駆動機と交換することも可能である。重要なことは、補助駆動機が、同じ変速比を有する伝動装置段6.1,6.2を介して、遊星キャリヤ10に連結されていることである。
【0044】
補助駆動機3.1,3.2は、比較的小さな出力を有する調整可能なモータとして形成され、かつ主駆動機2は、比較的大きな出力と一定の回転数とを有するモータとして形成されている。好ましくは、補助駆動機は、低電圧モータとして形成されていてもよい。それというのは、補助駆動機はしばしば、全駆動出力の約10~30%しか有しないからである。これによって必要な周波数変換器および調整のためのその他のコンポーネントもまた比較的小さくかつ比較的好適になる。主駆動機2は、多くの使用例では、必要な全出力を供給するために、中電圧モータとして形成されており、かつ調整機能なしに形成されてもよい。このような駆動装置は、石油産業およびガス産業または熱発電所における高速作動するポンプ、コンプレッサまたはベンチレータにおいて見られる、複数のMWの高出力の場合に特に興味深い。補助駆動機3.1,3.2の回転数および回転方向によって、出力軸15における回転数は、ある程度の割合だけ高くまたは低くすることができる。あるときは正の回転方向またあるときは負の回転方向での、補助駆動機3.1,3.2の最高回転数におけるこの範囲の限界は、可能な調整範囲を規定する。第1の伝動装置段6.1,6.2の変速比i_SG1は、補助駆動機と主駆動機との間における定格回転数比およびトルク比に適合されねばならない。
【0045】
ここでも再び平歯車段として補助駆動軸16.1における別の歯車とリングギヤ4における外歯列とによって形成される第2の伝動装置段8を介して、補助駆動機3.1,3.2は、遊星歯車伝動装置18を迂回して、入力軸14および主駆動機2に直接連結されてもよい。この出力路は、補助駆動機3.1,3.2と遊星キャリヤ10との間に存在する結合部に加えて作用する追加的な駆動結合部である。この追加的な駆動結合部は、切換可能なクラッチ11.1を介してアクチュエータ23によって開放または閉鎖されることができる。第2の伝動装置段の変速比i_SG2は、同期点における回転数が調整範囲内に位置するように設計されていなくてはならない。クラッチの開放時においても、補助駆動機3.1,3.2と遊星キャリヤ10との間における接続は、第1の伝動装置段6.1,6.2を介して活性化されたままである。
【0046】
いまや駆動機2,3.1,3.2のうちの1つの駆動機が、異常に基づいて停止すると、または特に主駆動機2の迅速遮断が導入されると、作業機械における回転数n1は、迅速に低下する。それというのは、作業機械の質量慣性は、その使用時において駆動モータ2,3.1,3.2の質量慣性よりも極めて大幅に小さいからである。補助駆動機3.1,3.2の質量慣性はまた、主駆動機2の質量慣性よりもさらに小さいので、遊星キャリヤ10および補助駆動機3.1,3.2は、異常時には作業機械1の迅速な停止と主駆動機2のゆっくりとした停止とによって、加速される。このとき許容不能な高回転数に達すると、補助駆動機3.1,3.2および特に遊星ギヤ5ならびに遊星ギヤ5のボルトは損傷することがある。この特別な異常時に対する遊星歯車伝動装置18の安全な設計、または追加的に設けられた制動装置は、駆動装置を不要に大きくかつ高価にするおそれがある。
【0047】
相応の異常の認識後におけるクラッチ11.1の閉鎖によって、本発明に係るシステムではこの過剰回転数を阻止することができる。故障を認識するための情報は、例えば制御システムまたはエネルギ供給のシステムからもたらすことができる。追加的に、駆動モータの軸受を監視するための温度センサ25,27,29または駆動モータの巻線温度を監視するための温度センサ24,26,28が設けられていてもよく、これらの温度センサの信号は、異常を認識するためまたは明らかになる異常を認識するために使用される。補助駆動機には、外部冷却器が設けられており、これらの外部冷却器はここでは、固有のファンモータと、巻線温度のための監視センサ32,33とを備えた外部ファン12,13として構成されている。外部冷却器を備えた構成には、補助駆動機の低回転数時にも、補助駆動機の回転数とは無関係に調整することができる比較的高い冷却出力が可能であるという利点がある。このことは、比較的低い回転数時において比較的大きなトルクが必要になる場合に必要であり、このことは、通常運転においてのみならず、クラッチ11.1の閉鎖後にも、回転数を制限するための、ここに記載された方法において行うことができる。
【0048】
好ましくは、クラッチ11.1およびその駆動制御装置は、クラッチが駆動制御装置の故障時に閉鎖されているように構成される。これによって、完全な停電時および制御装置の故障時においても、回転数制御機能を閉鎖されたクラッチによって得ることが保証される。
【0049】
さらに回転数センサ22.1,22.2,30が、駆動装置に設けられていてもよい。これらの回転数センサは、モータのパルス発信器によって形成することができる。択一的にまたは追加的に、回転数センサ20が第1の伝動装置段6.1,6.2の歯車に、回転数センサ21が遊星キャリヤ10の歯車に、かつ回転数センサ31が出力軸15に設けられていてもよい。これによって得られる変化形態によって、すべての回転数n1,n2,n3および遊星キャリヤの回転数を測定することができる。しかしながら結局、これらの回転数のうちの2つの回転数を測定するだけで十分である。なぜならばこのとき残りの回転数は、遊星歯車伝動装置18の回転数方程式および変速比によって確定することができるからである。したがって示されたすべての回転数センサが同時に必要になることはない。
【0050】
回転数の確定および特に故障時における回転数経過の認識は、これによって、何時がクラッチ11.1のための最高の切換時点であるかを確定することができるという利点を提供する。異常の認識後における遅延させられた閉鎖と、最適化された切換時点とによって、システムの停止時におけるクラッチ11.1における負荷および温度上昇を、大幅に減じることができる。
【0051】
図2aおよび図2bには、本発明に係る装置の別の構成が示されている。図1における構成との主要な相違は、第2の伝動装置段8が、リングギヤ4における外歯列によって形成されるのではなく、その代わりにピニオン4.1が入力軸14に配置されていて、このピニオン4.1が補助駆動軸16.1における第2の歯車に係合していることである。切換可能なクラッチ11.1は、本実施形態においてもこの第2の歯車と補助駆動軸16.1との間に示されている。しかしながらまた択一的にクラッチを、ピニオン4.1と入力軸14との間に設けることも可能である。
【0052】
この構成においても、図1において述べたセンサを好適に使用することができる。
【0053】
軸における矢印によって、回転方向(+/-)が示されている。両方の場合において、クラッチ11.1が開放されていることが想定される。出力軸15の回転方向は、入力軸14の回転方向に対して常に逆向きである。図2aには、反転点の上における運転が示されており、すなわちこの場合補助駆動機は、出力軸15における回転数を、遊星キャリヤ10および補助駆動機が停止している(反転点)場合に、主駆動機2の定格回転数時に発生すると思われる回転数に対して高める。図2bには、作業機械1の回転数が反転点の下に位置している場合、つまり補助駆動機が重畳によって回転数を減じている場合が示されている。
【0054】
図3aには、本発明に係る駆動装置の別の好適な構成が示されている。図面を簡単にするために、ただ1つの補助駆動機3.2だけが示されているが、しかしながら好ましくは、2つまたはそれどころか3つの補助駆動機が同様に設けられている。さらに、補助駆動機が2つの場合、補助駆動機3.2は、好ましくは主駆動機2と同一平面に位置していてもよいので、補助駆動機3.2は、主駆動機2の下に概略的に示されている。補助駆動機3.2からは、歯車列6.2a,6.2bとして形成された第1の伝動装置段を介して、トルクが遊星キャリヤ10に伝達される。追加的な駆動結合部は、同様にこの第1の伝動装置段を使用し、かつこのときトルクをさらに第2の伝動装置段8.1を介して、中間軸16.3の第1の部分に伝達する。切換可能なクラッチ11.2を介して、第1の中間軸16.3は第2の中間軸16.4に接続される。さらに中間軸16.4からトルクは、ここでは歯車列19.1,19.2,19.3として形成された第3の伝動装置段を介して、入力軸14におけるピニオン4.1に伝達される。したがってクラッチ11.2の閉鎖時には、補助駆動機3.2は、追加的な駆動結合部によって第1、第2および第3の伝動装置段を介して入力軸14に接続されている。クラッチ11.2の開放時には、補助駆動機は、第1の伝動装置段を介して単に遊星キャリヤにだけ作用する。クラッチ11.2は、アクチュエータ23を介して操作される。同期点の計算のためには、方程式(2b)が有効である。
【0055】
1つまたは2つの示された歯車列の代わりに、比較的大きな歯車を備えたそれぞれ1つの平歯車段を使用することも可能である。または、上に述べた他の変化形態のうちの1つをトルク伝達のために使用することが可能である。
【0056】
この構成が補助駆動軸16.2を備えた補助駆動機3.2の領域において幅に関して極めてコンパクトでかつスペースを節減することができるという利点を、良好に認識することができる。このことは例えば、本発明に係る駆動装置を使用時において従来の駆動システムに対して構造空間ニュートラルに使用することができるということを可能にする。
【0057】
図3bには、図3aに示された構成の一部が、視線方向Aから見た正面図で示されており、このとき単に歯車だけが示されている。軸および駆動機は、示されていない。2つの補助駆動機を備えた変化形態が示されている。第1の伝動装置段である歯車列6.1a,6.1b,6.2a,6.2bを介して、トルクは、それぞれの補助駆動軸から遊星キャリヤ10に伝達される。第2の伝動装置段8.1は、遊星キャリヤ10に係合しており、かつトルクを中間軸に伝達する。この中間軸から、クラッチの閉鎖時には、トルクは、同様に歯車列19.1,19.2,19.3として形成された第3の伝動装置段を介して、入力軸におけるピニオン4.1に伝達される。この図から認識できるように、伝動装置ケーシングは、好ましくは水平に分割されて形成されてもよい。それというのは、ケーシングを貫通する必要があるすべての軸は、1つの高さにおいて位置していてもよいからである。補助駆動軸、入力軸および出力軸の軸受座は、分割継ぎ目によって相応に1つの高さにおいて分割される。
【0058】
図4aおよび図4bにおける回転数変化は、本発明に係る駆動装置のために略示されている。このような回転数変化は、クラッチ11.1,11.2が閉鎖されることなしに、主駆動機2が故障した(時点50秒)場合に生じる。数値は、駆動装置の特定の設計を前提として、単に図示のための例である。駆動機2,3.1,3.2、作業機械1および伝動装置17,18における変速比がどのようであるかに応じて、数値はもちろん変化する可能性がある。
【0059】
図4aには、補助駆動機が異常発生前に、正の回転方向で、かつ作業機械1が最大回転数で運転されている場合が示されている。作業機械の小さな質量慣性に基づく、作業機械の回転数n1の迅速な低下によって、かつ主駆動機2の極めて大きな慣性質量に基づく、主駆動機2の回転数n2の僅かな低下によって、補助駆動機3.1,3.2はまず、負の回転方向に反転加速され、かつ次いで高回転数へとさらに加速される。このとき、補助駆動機3.1,3.2または遊星キャリヤ10が許容不能な過剰回転数によって損傷するおそれがある。
【0060】
図4bには、補助駆動機3.1,3.2が負の回転数で運転される逆の場合が示されている。このとき作業機械1は、減じられた回転数n1で作動している。故障時(再び時点50秒)において補助駆動機3.1,3.2は、この際にさらに高い負の回転数へと加速される。そして再び過剰回転数による損傷が発生するというリスクが発生する。
【0061】
そこで本発明に係る装置では、切換可能なクラッチ11.1,11.2を用いて適宜な方法において、補助駆動機3.1,3.2または遊星キャリヤ10における許容不能な過剰回転数の発生を阻止することができるようにした。図5には、異常(時点50秒)の認識後にクラッチ11が直ちに閉鎖される場合に対する回転数変化が例示されている。屈曲点に至るまでの約2秒の遅延が、クラッチ11.1,11.2において最初に発生するスリップによって生じ、このスリップは、補助駆動機3.1,3.2が反転加速されるまで続く。屈曲点によって、いまや伝動装置段8,8.1,19.1,19.2,19.3によって連結された回転数n2,n3が、どのように同様に0にまで低下するかを認識することができる。クラッチ11.1,11.2を直ちに閉鎖すると、全エネルギがクラッチ11.1,11.2において受け止められねばならず、このことは、相応の温度上昇を引き起こす。
【0062】
補助駆動機の反転加速を促進するために、補助駆動機は、異常の認識後に、トルク設定値または回転数設定値によって駆動制御することができる。このことはしかしながら、もっぱら主駆動機が故障した場合または迅速遮断された場合にしか可能でない。
【0063】
図6には、故障時における回転数制限のための最適化された方法に対する回転数変化が示されており、この方法では、クラッチ11.1,11.2はまず遅延させられ、かつ同期化されて閉鎖される。これによってクラッチ11.1,11.2における、必要なエネルギの受け止めおよび温度上昇を制限することができる。そのために同期回転数がGl.2,Gl.1によって計算される。さらに回転数n1,n2,n3が測定または確定される。これらの回転数のうちの2つが測定されると、第3の回転数は、回転数バランス(ウィリスの方程式)によって確定することができる。いまや回転数変化は、同期点における回転数と同等になることができる。
【0064】
補助駆動機の回転数n3が同期回転数に上昇すると、クラッチ11.1,11.2の閉鎖は、回転数n3が同期回転数の近くに至るまで遅延させられる。この遅延は例えば、回転数n3が同期回転数から最大5%、好ましくは最大3%の偏差を有するまで続く。閉鎖時における比較的小さな回転数差によって、このとき発生する温度上昇を制限することができる。図示の例では、閉鎖は、時点55秒において初めてクラッチ11における完全なトルク伝達が行われるように遅延させられている。
【0065】
しかしながら補助駆動機の回転数n3が、異常の認識時に同期回転数から離反移動する場合でも、差異がさらに増大することを回避するために、クラッチ11.1,11.2は直ちに閉鎖される。
【0066】
もちろん、クラッチ11.1,11.2を閉鎖するための回転数条件を、他の回転数に対して定式化することも可能である。換算のためには、Gl.1が使用される。
【符号の説明】
【0067】
1 作業機械
2 主駆動機
3.1,3.2 補助駆動機
4 リングギヤ
4.1 ピニオン
5 遊星ギヤ
6.1,6.1a,6.1b,6.2,6.2a,6.2b 第1の伝動装置段
7 サンギヤ
8,8.1 第2の伝動装置段
9 ケーシング
10 遊星キャリヤ
11.1,11.2 切換可能なクラッチ
12,13 外部冷却器
14 入力軸
15 出力軸
16.1,16.2 補助駆動軸
16.3,16.4 中間軸
17 重畳伝動装置
18 遊星歯車伝動装置
19.1,19.2,19.3 第3の伝動装置段
20,21,22.1,22.2,30,31 回転数センサ
23 冷却用のアクチュエータ
24,26,28,32,33 巻線温度センサ
25,27,29 軸受温度センサ
n1 出力軸=サンギヤの回転数
n2 主駆動機=リングギヤの回転数
n3 補助駆動機の回転数
i_PG 遊星歯車伝動装置の変速比(=n1/n2)
i_SG1 第1の伝動装置段の変速比(6.×)(=n3/n遊星キャリヤ)
i_SG2 第2の伝動装置段の変速比(8.×)(=n2/n3または=n中間軸/n遊星キャリヤ)
i_SG3 第3の伝動装置段の変速比(19.×)(=n中間軸/n2)
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5
図6