(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】アンカ用孔内へのアンカの配置構造および固定システム
(51)【国際特許分類】
E02D 5/80 20060101AFI20220311BHJP
E04B 1/41 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
E02D5/80 101
E04B1/41 503Z
(21)【出願番号】P 2019552989
(86)(22)【出願日】2018-03-01
(86)【国際出願番号】 EP2018055002
(87)【国際公開番号】W WO2018177675
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2020-12-04
(31)【優先権主張番号】102017106485.0
(32)【優先日】2017-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514271866
【氏名又は名称】フィッシャーヴェルケ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】fischerwerke GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Klaus-Fischer-Strasse 1, D-72178 Waldachtal, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン ホアン
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン シュヴァープ
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-197457(JP,A)
【文献】特表2019-500522(JP,A)
【文献】特開2014-141779(JP,A)
【文献】特開2009-293325(JP,A)
【文献】特開2007-155475(JP,A)
【文献】特開2002-070005(JP,A)
【文献】特開2017-155479(JP,A)
【文献】特表2014-500477(JP,A)
【文献】米国特許第06185886(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/80
E04B 1/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンカ用基礎(3)に設けられたアンカ用孔(2)内へのアンカ(1)の配置構造において、
前記アンカ用孔(2)内に電気的な位置発信器(17)が配置されており、前記アンカ(1)が前記アンカ用孔(2)から外方に移動させられる場合に、前記アンカ(1)が前記位置発信器(17)に対して移動させられ
、
前記アンカ(1)が、少なくとも1つの電気的なコンタクト(9)を有しており、前記位置発信器(17)が、少なくとも1つの電気的な対応コンタクト(8)を有しており、前記アンカ用孔(2)から外方への前記アンカ(1)の移動時に、前記対応コンタクト(8)が、前記アンカ(1)の前記コンタクト(9)と導電接触しているかまたは導電接触しなくなることを特徴とする、配置構造。
【請求項2】
前記位置発信器(17)が、前記アンカ(1)の、前記アンカ用孔(2)内に位置する端部において前記アンカ用孔(2)内に配置されていることを特徴とする、請求項1記載の配置構造。
【請求項3】
前記アンカ(1)と前記位置発信器(17)とが、硬化させられた材料(5)によって前記アンカ用孔(2)内に固定されていることを特徴とする、請求項1または2記載の配置構造。
【請求項4】
前記アンカ(1)が位置発信器ホルダ(4)を有しており、該位置発信器ホルダ(4)が、前記位置発信器(17)を可動にまたは解離可能に前記アンカ(1)に保持しかつ/または前記アンカ用孔(2)の長手方向への前記アンカ(1)の移動に抗して前記位置発信器(17)を保持することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の配置構造。
【請求項5】
前記位置発信器(17)が、前記アンカ用孔(2)の長手方向に連続して配置された複数の電気的な対応コンタクト(8,10)を有していることを特徴とする、請求項
1から4までのいずれか1項記載の配置構造。
【請求項6】
前記アンカ(1)が、コンデンサ(14)の一方の部材(13)を有しており、前記位置発信器(17)が、前記コンデンサ(14)の他方の部材(15)を有しており、前記アンカ用孔(2)の長手方向への前記アンカ(1)の移動時に、前記コンデンサ(14)の容量が変化することを特徴とする、請求項1から
5までのいずれか1項記載の配置構造。
【請求項7】
前記位置発信器ホルダ(4)が、前記アンカ(1)の一方の端部に被嵌可能なキャップ(18)を有していることを特徴とする、請求項
4記載の
配置構造。
【請求項8】
前記位置発信器ホルダ(4)が、前記アンカ(1)を半径方向に越えて張り出していることを特徴とする、請求項
4または
7記載の
配置構造。
【請求項9】
前記位置発信器ホルダ(4)が、該位置発信器ホルダ(4)をアンカ用孔(2)内に保持するための、前記アンカ(1)を半径方向に越えて張り出した複数の保持要素(6)を有していることを特徴とする、請求項
4または7または8記載の
配置構造。
【請求項10】
前記位置発信器ホルダ(4)が、該位置発信器ホルダ(4)の前記電気的な位置発信器(17)をアンカ用孔(2)の外側で接触接続させるための、前記アンカ(1)に沿って長手方向に延びるケーブル通路(11)を有していることを特徴とする、請求項
4または、請求項7から
9までのいずれか1項記載の
配置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部の特徴を有する、アンカ用孔内へのアンカの配置構造および請求項8に記載の、アンカを備えた固定システムに関する。
【0002】
本発明の範囲内でのアンカは、例えば岩石、コンクリートまたは組積造から成るアンカ用基礎に設けられたアンカ用孔内に固定するための建築要素である。固定はアンカ固定とも呼ばれる。アンカ用孔は、穿孔されていてもよいし、別の形式で製作されていてもよいし、初めから存在していてもよい。アンカ用孔は、例えば円筒形であってよく、例えば円錐形または段状のアンダカットを有していてもよい。また、アンカ用孔は不規則な形状を有していてもよい。アンカは、例えば、拡開によって機械的にまたは硬化性のもしくは硬化させられた材料、例えば合成樹脂モルタルも含めたモルタルによって化学的にアンカ用孔内にアンカ固定することができる。機械的なアンカ固定は、アンカ用孔内での力接続および/または形状接続を意味している。この場合、形状接続は、典型的には、アンカ用孔のアンダカットにおいて行われる。化学的なアンカ固定は、材料接続と、たびたび付加的に形状接続とを意味している。この場合、力接続は排除されている。この段落における説明は一例であって、複数の可能性を示すために役立つものであり、最終的なものではない。
【0003】
欧州特許第2809956号明細書(EP 2809956 B1)には、拡開ヘッドを有するアンカシャンクに対して摺動可能である拡開スリーブを備えたアンダカットアンカが開示されている。アンカスリーブ内への拡開ヘッドの引込みもしくは拡開ヘッドへのアンカスリーブの被嵌めによって、拡開スリーブが拡開され、アンダカットアンカがアンカ用孔内に機械的にアンカ固定される。適正な拡開を認識するために、アンカシャンクは、拡開後に拡開スリーブの一方の端部に位置していなければならないマーキングを有している。認識のために、光学式のセンサ機器が設けられている。
【0004】
国際公開第2015/110201号(WO 2015/110201 A1)には、拡開ねじのねじり込みによって拡開可能である拡開プラグが開示されている。この拡開プラグ内には、アンカ用孔の孔壁に対する拡開プラグの変形要素の押付け力を誘導式に検出する測定量検出器が配置されている。
【0005】
本発明の課題は、アンカ用孔内にアンカ固定されたアンカの変位を検出することができる可能性を提案することである。特にアンカ用孔から外方へのアンカの移動が検出されなければならない。この移動は、実際、アンカ固定の故障のはるか以前に故障を示唆することができるミリメートル以下の範囲内の移動である。
【0006】
この課題は、本発明によれば、請求項1の特徴を有する配置構造および請求項8に記載の固定システムによって解決される。請求項1の特徴を有する本発明に係る配置構造は、アンカ用基礎に設けられたアンカ用孔と、このアンカ用孔内に配置された、特にアンカ固定されたアンカとを有している。さらに、アンカ用孔内には、電気的な、例えば抵抗式、誘導式または容量式の位置発信器が配置されている。この位置発信器は、アンカがアンカ用孔から外方に移動させられる場合に、アンカが位置発信器に対して移動させられるように、アンカ用孔内に配置されている。これによって、アンカ用孔内にアンカ固定されたアンカの変位を検出することができ、アンカ固定の起こり得る故障を早期に認識することができる。特にアンカはアンカ用孔内に不動に配置されており、これによって、専らアンカがアンカ用孔に対して相対的に移動させられる。
【0007】
好ましくは、位置発信器が、アンカの、アンカ用孔内に位置する端部においてアンカ用孔内に配置されている。「(端部)において」とは、アンカの端部の近くへのまたはアンカの端部の前方への位置発信器の配置も含んでいる。なお、「(端部の)近くへの」とは、例えば1ミリメートル以下または1mm未満の範囲内を意味している。1つには、位置発信器を、アンカの、アンカ用孔内に位置する端部においてまたは端部の前方でアンカ用孔内に良好に収納することができ、アンカ用孔内の予め設定された箇所にアンカと共に挿入することができ、もう1つには、アンカ用孔内でのアンカの変位が、孔開口からの、好ましくは複数のアンカ直径の間隔を置いて、つまり、例えばアンカの、アンカ用孔内に位置する端部において検出される場合に、アンカ固定の起こり得る故障を良好に認識することができる。
【0008】
本発明の構成は、アンカ用孔内へのアンカの化学的なアンカ固定および位置発信器の化学的な固定を提案している。「化学的なアンカ固定」および「固定」とは、硬化させられた材料、例えば合成樹脂モルタルを含めたモルタル、接着剤または合成樹脂による固定を意味している。この構成によって、本発明の簡単な構成および取扱いが可能となる。硬化性の材料と位置発信器とがアンカと共にアンカ用孔内に挿入されさえすればよい。
【0009】
本発明の好適な構成は、位置発信器を可動にまたは解離可能にアンカに保持しかつ/または位置発信器をアンカ用孔内での、このアンカ用孔から外方へのアンカとの同時移動に抗して保持する位置発信器ホルダを提案している。化学的なアンカ固定時には、アンカをアンカ用孔内にアンカ固定する硬化させられた材料によって、位置発信器ホルダをアンカ用孔内に固定することができる。位置発信器ホルダによって、位置発信器をアンカと共にアンカ用孔内に挿入することが可能となる。アンカ用孔内には、アンカがアンカ用孔から外方に移動させられる場合に、位置発信器ホルダがアンカと一緒に移動させられないように、位置発信器ホルダが位置発信器を保持している。本発明のこの構成によって、位置発信器をアンカと共に簡単に取り扱うことが可能となる。
【0010】
本発明の構成は、アンカが電気的なコンタクトを有しており、位置発信器が電気的な対応コンタクトを有していることを提案している。この場合、アンカが導電性である、例えば金属ロッドであると、アンカ自体が電気的なコンタクトを形成することができる。アンカ用孔から外方へのアンカの移動時には、コンタクトが対応コンタクトと導電接触しているかまたは導電接触していない。これによって、電流回路が閉じられるかまたは遮断される。これによって、アンカ用孔内でのアンカの移動を確認することができる。
【0011】
本発明の改良形態は、位置発信器の、アンカ用孔の長手方向に連続して配置された複数の電気的な対応コンタクトを提案している。これによって、アンカ用孔内でのアンカの移動の事実だけでなく、アンカ用孔から外方へのアンカの移動距離もしくは後退させられた区間も確認することができる。これによって、アンカが許容可能な誤差の範囲内においてアンカ用孔内で変位させられたのか、またはアンカ固定の故障が見込まれるほど変位が大きいのかを認識することができる。
【0012】
本発明の別の構成は、アンカが、コンデンサの一方の部材を有しており、位置発信器が、コンデンサの他方の部材を有していることを提案している。アンカ自体はコンデンサの一方の部材を形成することができるか、またはアンカは、例えば、導電性である場合にアンカから電気的に絶縁されたコンデンサプレートまたはこれに類するものを有している。アンカ用孔内でのアンカの移動時には、アンカに設けられたコンデンサの部材と、位置発信器に設けられたコンデンサの他方の部材との間の間隔が変化する。これによって、コンデンサの容量が変化する。これによって、アンカ用孔内でのアンカの移動量を測定することができる。
【0013】
位置発信器ホルダは、例えば、アンカの一方の端部に被嵌可能であるキャップを有することができる。特にこのキャップは、1つまたはそれ以上の対応コンタクトまたはコンデンサの一方の部材が配置されたアンカの部分および/または位置発信器を、アンカ用孔内へのアンカの導入時に、硬化可能な材料の侵入に対して密封している。
【0014】
好ましくは、位置発信器ホルダが、アンカを半径方向に越えて張り出しているか、もしくは位置発信器ホルダをアンカ用孔内に保持するための、アンカを半径方向に越えて張り出した保持要素、逆鈎またはこれに類するものを有しており、これによって、位置発信器ホルダがアンカ用孔内に保持されており、その後、硬化性の材料が硬化させられて、アンカと位置発信器ホルダとをアンカ用孔内に保持している。機械的なアンカ固定時には、位置発信器ホルダが、アンカと、好ましくはアンカ用孔とに対する位置発信器ホルダの過大寸法または位置発信器ホルダの保持要素の過大寸法によって材料接続なしでアンカ用孔内に機械的にとどまっている。
【0015】
以下に、図面に示した実施例に基づき本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る第1の固定システムを示す図である。
【
図2】
図1に示した位置発信器ホルダを示す図である。
【
図3】アンカ用基礎に設けられたアンカ用孔内へのアンカと位置発信器ホルダとの本発明に係る配置構造を示す図である。
【
図4】本発明に係る固定システムの第2の実施例を示す図である。
【0017】
図1には、本発明に係る固定システムが示してある。この固定システムは、
図3に示したようなアンカ用基礎3に設けられたアンカ用孔2内にアンカ固定するために設けられたアンカ1と、位置発信器ホルダ4と、位置発信器17とを備えている。アンカ1はねじ山付きロッドである。このねじ山付きロッドは、化学的にアンカ固定するために、つまり、硬化性のもしくは硬化させられた材料5によって固定するために設けられている。この硬化性のもしくは硬化させられた材料5は、例えばセメントモルタルまたは合成樹脂モルタルである。位置発信器ホルダ4は、アンカ1の一方の端部に被嵌されたキャップ18を有している。本実施例では、位置発信器ホルダ4がプラスチックから成っていて、その周面に長手方向スリットを有している。この長手方向スリットによって、位置発信器ホルダ4をアンカ1の端部に保持する半径方向にばね弾性的な複数の保持要素6が形成されている。これらの保持要素6は、アンカ1を半径方向に越えて張り出した鋸歯状の逆鈎7を有している。変形させられていない状態では、保持要素6の逆鈎7が、アンカ用孔2の孔壁をも半径方向に越えて張り出しており、これによって、逆鈎7が位置発信器ホルダ4をアンカ用孔2内に保持している。
【0018】
位置発信器ホルダ4は、位置発信器17としての金属ディスク、メタライジングされた表面またはその他の導電性の要素を有している。この要素は、アンカ1に対する導電性の対応コンタクト8を形成していて、
図2および
図3に認めることができる。本実施例では、アンカ1が金属から成っていて、その端面がコンタクト9を形成している。このコンタクト9は、位置発信器ホルダ4が前述のようにアンカ1の端部に支持されていて、これによって、アンカ1の端面が、位置発信器ホルダ4に設けられた対応コンタクト8に接触している場合に、この位置発信器ホルダ4の対応コンタクト8に導電接触している。アンカ1が導電性の材料から成っていない場合には、アンカ1が、コンタクト9を形成するディスクを有していてもよいし、コンタクト9を形成する、アンカ1の端面に設けられたその他の導電性の要素を有していてもよいし、コンタクト9を形成するメタライジングされた端面を有していてもよい。
【0019】
位置発信器17は、金属ディスクとして形成された対応コンタクト8のほかに、別の対応コンタクト10としての金属リングを有している。この金属リングは、位置発信器ホルダ4が前述のようにアンカ1の一方の端部に支持されている場合に、アンカ1を取り囲んでいて、このアンカ1に導電接触している。アンカ1は、別の対応コンタクト10に対しても導電性のコンタクト9を形成している。
【0020】
位置発信器ホルダ4の複数の保持要素6のうちの1つの保持要素6は、位置発信器ホルダ4が前述のようにアンカ1の一方の端部の先端に支持されている場合に、アンカ1の周面に沿って軸線平行に延びる延長部を有している。この延長部はケーブル通路11を形成している。このケーブル通路11内には、アンカ1に沿ってケーブル12が案内されている。このケーブル12は、位置発信器ホルダ4の対応コンタクト8,10に導電的に接続されていて、アンカ1から絶縁されている。
【0021】
アンカ固定するためには、つまり、アンカ用基礎3に設けられたアンカ用孔2内にアンカ1を固定するためには、まず硬化性の材料5がアンカ用孔2内に供給され、次いで、位置発信器ホルダ4を備えたアンカ1が、アンカ用孔2内に挿入される。この位置発信器ホルダ4は、アンカ1の挿入方向で見て前方の端部に位置するようにアンカ1自体の端部に装着されている。このアンカ用孔2は、例えば穿孔されているか、別の形式で作製されているか、すでに存在している。アンカ用基礎3は、例えば岩石、コンクリートまたは組積造から成っている。アンカ1の挿入時には、硬化性の材料5が孔底から孔開口に向かって、一方では位置発信器ホルダ4及びアンカ1と、他方ではアンカ用孔2の孔壁との間の環状ギャップ内に押し退けられ、これによって、硬化性の材料5が、アンカ用孔2内で位置発信器ホルダ4とアンカ1とを取り囲む環状ギャップを埋め尽くす。このとき、材料5が位置発信器17に達してしまうことをキャップ18が阻止している。硬化性の材料5の硬化後(それ以降、この硬化性の材料5は、硬化させられた材料5と呼ばれることになる)、位置発信器ホルダ4とアンカ1とは、アンカ用基礎3に設けられたアンカ用孔2内に材料接続および形状接続によって固定、つまり、アンカ固定されている。ケーブル通路11は、アンカ1とアンカ用孔2との間の環状ギャップ内で孔開口を越えて外向きに延びており、そこで、ケーブル12を接触接続することができる。
【0022】
アンカ用孔2内にアンカ固定されたアンカ1が、軸線方向の引張り力の作用に際して、挿入方向と逆方向で引抜き方向もしくはアンカ用孔2から外方へと、孔底から離れる方向で孔開口の方向に変位させられると、まず、アンカ1のコンタクト9が位置発信器17の対応コンタクト8と接触しなくなる。これによって、アンカ1の変位を確認することができる。アンカ1が引き続き孔開口の方向に変位させられると、アンカ1のコンタクト9が位置発信器17の別の対応コンタクト10とも接触しなくなる。本実施例では、アンカ1が0.8mm以上変位させられると、アンカ1のコンタクト9が別の対応コンタクト10と接触しなくなる。本実施例では、アンカ1を形成するねじ山付きロッドが、M12サイズのねじ山を有している。本実施例では、アンカ用孔2の孔開口の方向へのアンカ1の最大0.8mmの変位が、許容可能な誤差の範囲内と見なされ、より大きな変位は許容不可であり、安全対策、例えば1つまたはそれ以上の代替アンカの設置を必要とする。アンカ用孔2の孔開口の方向へのアンカ1の変位の許容可能な誤差が維持されているかまたは上回っているかは、アンカ1のコンタクト9と位置発信器ホルダ4の別の対応コンタクト10との導電接触の有無に基づき、アンカ用基礎3の外側のケーブル12にて確認することができる。
【0023】
電気的なコンタクト9としてのアンカ1と、両対応コンタクト8,10とは、アンカ用孔2の長手方向に連続して配置された2つの電気的な位置発信器を形成している。位置発信器ホルダ4と、この位置発信器ホルダ4に配置された対応コンタクト8,10とは、硬化させられた材料5によってアンカ用孔2内に不動にアンカ固定されていて、アンカ1が孔開口の方向に変位させられる場合に一緒に移動することはない。これによって、アンカ用基礎3に対するアンカ1の変位を確認することができる。
【0024】
アンカ用孔1の外側にあって、位置発信器ホルダ4の変形させられていない状態では、保持要素6の逆鈎7が、アンカ用孔2の直径よりも大きな直径もしくはこのようなアンカ用孔2の、アンカ1に対応する公称直径よりも大きな直径に設定されており、これによって、位置発信器ホルダ4がアンカ用孔2内に位置している場合には、保持要素6の逆鈎7が予荷重を伴ってアンカ用孔2の孔壁を押圧している。したがって、位置発信器ホルダ4は、孔直径が位置発信器ホルダ4の保持要素6の逆鈎7の直径よりも大きくない場合に、硬化性の材料5なしでもアンカ用孔2内にとどまっている。よって、位置発信器ホルダ4は、アンカ、例えば拡開アンカとも使用することができる。この拡開アンカは、硬化性の材料なしで、例えば拡開により機械的にアンカ用孔内にアンカ固定される(図示せず)。好ましくは、このようなアンカと、位置発信器ホルダ4とは、この位置発信器ホルダ4が、先だってアンカ用孔内に挿入される方のアンカの端部に支持可能であるかまたは別の形式で解離可能に取付け可能であるように構成されている。位置発信器ホルダ4とアンカとの解離可能な結合は、アンカ用孔2内での、孔壁を押圧する逆鈎7による位置発信器ホルダ4の保持力よりも弱く、これによって、位置発信器ホルダ4は、アンカが孔開口の方向に変位させられる場合に、アンカと一緒に移動することはない。
【0025】
図4では、アンカ1が同じくねじ山付きロッドであり、位置発信器ホルダ4が、別の対応コンタクト10としての金属リングを有していないことを除いて、
図1~
図3に関して説明したものと同様に形成されている。
図4に示したアンカ1はその端面に、コンデンサ14の一方の部材13としての金属ディスクを有している。位置発信器ホルダ4は、本発明のこの構成においてコンデンサ14の他方の部材15を成す、半径方向平面に配置された金属ディスクを有している。コンデンサ14の第1の部材13を成す一方の金属ディスクは、アンカ1が金属またはその他の導電性の材料から成っている場合には、アンカ1から電気的に絶縁されている。コンデンサ14の、位置発信器ホルダ4に配置された第2の他方の部材15は、位置基準として役立つ位置発信器17を形成している。位置発信器ホルダ4は、アンカ1に対するストッパ16としての、内向きに設けられた全周にわたって延びるつばを有している。このつばは、コンデンサ14の両部材13,15の間に所定の間隔を確保している。アンカ1がアンカ用孔2内で孔開口の方向に変位させられると、コンデンサ14の両部材13,15の間の間隔が増加させられ、コンデンサ14の容量が減少させられるかまたはいずれにせよ変化させられる。コンデンサ14の他方の部材15を備えた位置発信器ホルダ4は、アンカ用孔内で不動であり、孔開口の方向へのアンカ1の変位時に一緒に移動することはない。コンデンサ14の容量の測定によって、アンカ1の変位量が測定可能となる。例えば、コンデンサ14の充電時間または放電時間が測定される。
【0026】
繰返しを避けるために、
図4の説明に補足して、
図1~
図3の説明が参照される。
図4では、同一の要素に
図1~
図3と同じ符号が付してある。コンデンサ14の両部材13,15は、一方の端部に位置発信器ホルダ4が支持されたアンカ1の電気的な位置発信器を構成している。
【符号の説明】
【0027】
1 アンカ
2 アンカ用孔
3 アンカ用基礎
4 位置発信器ホルダ
5 硬化性のもしくは硬化させられた材料
6 保持要素
7 逆鈎
8 対応コンタクト
9 コンタクト
10 別の対応コンタクト
11 ケーブル通路
12 ケーブル
13 コンデンサ14の部分
14 コンデンサ
15 コンデンサ14の他方の部分
16 ストッパ
17 位置発信器
18 キャップ