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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】導電性電極及びそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/28 20130101AFI20220311BHJP
   H01G 11/48 20130101ALI20220311BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20220311BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20220311BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20220311BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20220311BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20220311BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
H01G11/28
H01G11/48
H01G11/86
H01M4/02 Z
H01M4/04 Z
H01M4/13
H01M4/139
H01M4/66 A
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020108583
(22)【出願日】2020-06-24
(62)【分割の表示】P 2017523505の分割
【原出願日】2015-10-30
(65)【公開番号】P2020170857
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2020-06-24
(31)【優先権主張番号】1460575
(32)【優先日】2014-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591136931
【氏名又は名称】ハッチンソン
【氏名又は名称原語表記】HUTCHINSON
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バフェリー キャロル
(72)【発明者】
【氏名】デュフォー ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】モリセット エロディ
(72)【発明者】
【氏名】ソンタグ フィリップ
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-142105(JP,A)
【文献】特開昭60-176216(JP,A)
【文献】特表2011-501383(JP,A)
【文献】国際公開第2011/024799(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/00-11/86
H01M 4/00-4/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製集電体(3)と活物質(7)とを含む、電気エネルギーを貯蔵する電極(2)であって、前記集電体(3)の片面の少なくとも一部が、前記集電体(3)と前記活物質(7)との間に配置される少なくとも1つの保護層(5)でコーティングされており、前記保護層(5)が、該保護層(5)の総乾物重量に対して、乾物重量比で、
(A)
(A1)30~60重量%の少なくとも1つの架橋エポキシポリマー又はコポリマー、及び
(A2)10~30重量%の少なくとも1つのエラストマー、
を含む、ポリマーマトリックス、並びに
(B)30~50重量%の導電性フィラー、
を含み、かつ、
(A1)、(A2)及び(B)の重量の合計が95~100重量%を示す
ことを特徴とする、電極。
【請求項2】
請求項1に記載の電極(2)であって、前記保護層(5)が、
前記ポリマーマトリックス(A)の前駆体である、
架橋エポキシポリマー(複数の場合もある)又はコポリマー(複数の場合もある)(A1)の前駆体、及び
少なくとも1つのエラストマー(A2)、並びに
導電性フィラー(B)、
を含む水性組成物(G)を乾燥及び架橋させることによって得られる、電極。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電極(2)であって、前記集電体(3)が、アルミニウム又は銅から作られる、電極。
【請求項4】
(A2)が、20℃未満の塗膜形成温度を有するエラストマーから選択される、請求項1~3のいずれか1つに記載の電極。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の電極(2)であって、(A1)が、架橋エポキシポリマー、架橋エポキシ-アルキドコポリマー、エポキシポリマーと架橋アルキド樹脂との混合物から選択される、電極。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載の電極(2)であって、(A1)が、架橋エポキシ-アルキドコポリマーである、電極。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載の電極(2)であって、(A2)が、ブタジエン-アクリロニトリル(NBR)格子及びポリウレタン格子から選択される、電極。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載の電極(2)であって、(B)が、カーボンブラックと黒鉛との混合物から選択される、電極。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1つに記載の電極(2)であって、前記保護層(5)の総乾物重量に対して、乾物重量比で、
前記ポリマーマトリックス(A)が50~70重量%を示し、
前記導電性フィラー(B)が30~50重量%を示し、並びに、
(A)及び(B)の重量の合計が95~100重量%を示す、電極。
【請求項10】
前記保護層(5)が5~50μmの範囲の厚さを有する、請求項1~9のいずれか1つに記載の電極。
【請求項11】
プライマーを前記金属製集電体(3)と前記保護層(5)との間に配置する、請求項1~10のいずれか1つに記載の電極。
【請求項12】
プライマーを前記保護層(5)と前記活物質(7)との間に配置する、請求項1~11のいずれか1つに記載の電極。
【請求項13】
電極(2)を製造する方法であって、
1)金属製集電体(3)を供給すること、
2)水性組成物(G)を調製すること、ここで、前記水性組成物(G)は、該水性組成物(G)の総乾物重量に対して、乾物重量比で、
(A1)30~60重量%の少なくとも1つのエポキシポリマー又はコポリマー及び少なくとも1つの架橋剤、
(A2)10~30重量%の少なくとも1つのエラストマー、及び
(B)30~50重量%の導電性フィラー、
を含み、かつ、
(A1)、(A2)及び(B)の重量の合計が95~100重量%を示す、
3)前記組成物(G)を、前記集電体(3)の片面の少なくとも一部にコーティングさせること、
4)前記組成物(G)を乾燥させるための第1の熱処理、
5)前記乾燥された組成物(G)でコーティングされた集電体(3)の第2の熱処理であって、前記熱処理により、前記エポキシポリマー又はコポリマー(A1)が架橋され、当該熱処理が、架された前記エポキシポリマー又はコポリマー(A1)のガラス転移温度より高く、かつ架された前記エポキシポリマー又はコポリマー(A1)の分解温度未満の温度で適用され当該熱処理により保護層がもたらされる、並びに
6)活物質層を、前記コーティングされた集電体(3)上に堆積させること、
を含む、方法。
【請求項14】
前記組成物(G)の堆積前に、前記集電体(3)を調製する工程を更に含み、前記工程が、研磨処理、化学処理から選択される1つ又は複数の工程を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記集電体(3)上への前記組成物(G)の堆積を、フィルムプラーを用いて行う、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
乾燥後の堆積物厚さが5~50μmとなるまで、前記堆積工程3)と、それに続く乾燥4)とを1回又は複数回行う、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
工程5)における処理温度が、120~160℃である、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記活物質の調製及び堆積が、
(i)活物質の水性組成物を調製するサブ工程、
(ii)活物質の前記組成物を前記保護層上に堆積させるサブ工程、及び
(iii)乾燥のための熱処理のサブ工程、
を含む、請求項13~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
活物質層を堆積させる工程6)を、第2の熱処理の工程5)の前に行う、請求項13~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
2つの電極(2)を備えるスーパーキャパシタ(1)であって、前記2つの電極の少なくとも一部がイオン性電解質に浸漬しており、前記2つの電極(2)が絶縁膜(9)によって分離されており、前記2つの電極の少なくとも1つが請求項1~12のいずれか一項に記載されるものである、スーパーキャパシタ。
【請求項21】
請求項20に記載のスーパーキャパシタ(1)であって、前記電解質が水性電解質である、スーパーキャパシタ。
【請求項22】
請求項20又は21に記載のスーパーキャパシタ(1)であって、前記電解質がイオン液体である、スーパーキャパシタ。
【請求項23】
請求項20~22のいずれか一項に記載のスーパーキャパシタ(1)であって、前記2つの電極が請求項1~12のいずれか一項に記載されるものである、スーパーキャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーを貯蔵する電気化学デバイス分野に関する。本発明は特に電
池及びスーパーキャパシタに関する。本発明はより特に、水性基剤と合わせて配合される
1つ又は複数の保護層で被覆される少なくとも1つの金属製集電体を備え、該保護層が集
電体と活物質との間に配置される、電極に関する。水性基剤を伴う保護層の配合は、引火
性、毒性であるとともに環境を汚染する有機溶媒の使用を回避するという利点をもたらす
。本システムは、水性電解質スーパーキャパシタにおいて使用され、ここで保護層によっ
て、概して水性電解質の使用と関連づけられる腐食問題の極めて著しい軽減がもたらされ
る。保護層は、金属製集電体上への活物質の付着力を改善させることができるものである
【0002】
本発明の電極は、イオン液体タイプの電解質とともに働くスーパーキャパシタ電極とし
ても使用することができる。この場合、保護層が付着力を改善させるため、金属製集電体
上における活物質の等価直列抵抗の低減が可能となる。
【背景技術】
【0003】
スーパーキャパシタは概して2つの導電性電極の組合せからなり、該2つの導電性電極
は、大きい比表面積を有し、イオン性電解質中に浸漬され、またセパレータと称される絶
縁膜によって分離されており、該セパレータは、イオン伝導性を可能にするとともに、電
極間の電気接触を防止するものである。各電極は、少なくとも1つの金属製集電体と、1
つの活物質層とを備える。金属製集電体は、外部システムとの電流のやり取りを可能にし
ている。2つの電極間に印加される電位差の影響を受けて、電解質中に存在するイオンが
、反対の電荷を有する表面により引き付けられるため、各電極の界面に電気化学二重層が
形成される。こうして電気エネルギーが電荷分離によって静電気的に貯蔵される。
【0004】
これらのスーパーキャパシタの静電容量に関する式は、従来の電気キャパシタに関する
ものと同一であり、すなわち、
C=E×S/e
(式中、Eは媒体の誘電率であり、
Sは二重層により占有される表面積であり、かつ、
eは二重層の厚さである)である。
【0005】
比表面積が大きい多孔質電極が使用されること(表面積の最大化)、及び電気化学二重
層が極端に薄いこと(数ナノメートル)に起因して、スーパーキャパシタ内で達成可能な
静電容量は、従来のキャパシタによって一般に達成されるものよりも遙かに大きい。
【0006】
スーパーキャパシタ内に貯蔵されるエネルギーは、キャパシタに関する従来の式、すな
わち、
E=1/2×C×V
(式中、Vはスーパーキャパシタの電位である)に従って定義される。
【0007】
したがって、エネルギー性能を最適化するためには静電容量及び電位を上げなければな
らない。静電容量は、電解質によって実際にアクセス可能な細孔組織に依存するものであ
る。
【0008】
スーパーキャパシタシステムにおいて使用される炭素含有電極は必然的に、電荷の輸送
をもたらすために導電性でなければならず、イオン電荷の輸送及び広い表面積にわたって
電気二重層の形成をもたらすために多孔性でなければならず、また、付随して起こるいず
れのエネルギー消費反応も回避するために化学的に不活性でなければならない。
【0009】
電位は主に、電解質の性質、特に電場の影響を受ける電解質の安定性に依存するもので
ある。電解質は様々なタイプのものが存在する。有機電解質、すなわち有機溶媒中に分散
した有機塩を含むものによって、動作電位は2.7Vに達し得る。しかしながら、これら
の電解質は、高価かつ引火性、毒性であり、汚染の可能性がある。このため、それらを車
両に使用すると安全性の問題が生じる。水性電解質は、安価かつ不燃性であるため、この
用途に関してより興味深いものとなる。水性媒体中、印加可能な電位は1.2Vである。
様々な水性電解質、例えば、硫酸水溶液、塩化カリウム水溶液、硫酸カリウム水溶液、又
は他の塩の酸性媒体、塩基性媒体若しくは中性媒体水溶液を使用してもよい。
【0010】
活物質層が多孔質であり、また電極の少なくとも一部が電解質中に浸漬しているため、
集電体は水性電解質によって腐食しやすい。このため、電極の耐用年数が、集電体の耐食
性の欠如により短くなる。
【0011】
さらに、集電体がアルミニウムから作られる場合、動作中に、集電体を腐食から保護す
るアルミナ水和物Al・xHOからなる不動態化層が形成する。しかしながら、
そのイオン絶縁性及び電子絶縁性に起因して、この不動態化層は、アルミニウム/活物質
界面における抵抗を増大させる作用を有する。
【0012】
さらに、アルミニウムが正極集電体である場合、このアルミナ層が、スーパーキャパシ
タが付される電気サイクルに伴って成長して高密度となる。或る特定の電解質と接触する
と、アルミニウムの不動態性が更に低下するおそれがあり、それによりその溶解が促進す
ることがある。
【0013】
集電体を形成するチタン等の他の材料でも同様の問題が見出された。
【0014】
これらの問題を全て正すために様々な解決策が提案されている。それらの多くは、集電
体を、集電体と活性層との間に配置される1つ又は複数の保護層で被覆することからなる
ものである。
【0015】
集電体の十分な保護をもたらすために、保護層は、電解質が金属製集電体と接触して金
属製集電体を腐食させないように、電解質に対して不透過性のものでなければならない。
保護層は、典型的に最大60℃のシステムの全動作温度範囲にわたって、このような保護
をもたらし得るものでなければならない。保護層はまた、スーパーキャパシタの等価直列
抵抗(ESR)が最小となるように、金属製集電体と活物質との間の良好な電気接触を確
実にするものでなければならない。スーパーキャパシタの高出力動作には小さなESRが
不可欠である。保護層はまた、集電体を構成する金属材料上における十分な付着力を有し
ていなければならない。最終的に、スーパーキャパシタの重量及び体積を制限するために
、保護層の重量及び体積が可能な限り小さくなくてはならない。スーパーキャパシタ電極
にかかる好ましい構成はロールアップ形態であるため、電極の要求される他の特性は可撓
性である。このため、保護層は可撓性も示すものでなければならない。
【0016】
集電体のための保護層は幾つか従来技術に記載されている。
【0017】
腐食及び不動態化の問題を軽減するために、特許文献1は、アルミニウム集電体を、導
電性粒子のフィラーを含む塗料でコーティングすることを教示している。しかしながら、
この塗料はシステムの抵抗を上げる傾向にある。
【0018】
特許文献2では、導電性粒子、例えば黒鉛又はカーボンブラックを含む塗料の層を集電
体と活物質との間に塗布した後、加熱して溶媒を除去している。塗料は、エポキシポリマ
ー及び/又はポリウレタンをベースとするものである。この塗料は有機溶媒媒体中に配合
される。この層は、有機媒体中における集電体の保護を可能とする。しかしながら、水性
電解質の存在下におけるこの種の集電体の挙動は知られていない。
【0019】
特許文献3は、ゾルゲルタイプの有機ポリマーマトリックスに分散させた炭素含有粒子
の分散体を堆積させた後、高温における熱分解によりゾルゲルを除去することによって、
集電体上に炭素の薄膜を製造する方法を記載している。この層は、接触段階における導電
性を改善させることができる。水性媒体中における不透過性に関する情報は示されていな
い。さらに、この方法により得られる炭素含有膜は、脆弱で、電極の組立て中に摩耗する
おそれがある。
【0020】
特許文献4及び特許文献5は、エポキシであってもよいポリマーバインダーと、粉末形
態の炭素含有導電性フィラーとからなる、金属製集電体用の保護層を記載している。実験
セクションには、鉛ベースの集電体、及びポリ(塩化ビニル)をベースとする保護層が記
載されている。この保護層は硫酸に対して不透過性である。しかしながら、集電体を保護
する組成物は、有機溶媒媒体中に配合される。金属製集電体と活物質との電気接触に関す
る情報は示されていない。他の水性電解質、特に5Mの硝酸リチウム水溶液中における不
透過性に関する情報も示されていない。
【0021】
特許文献6は、コポリマーのマトリックス中に分散させた導電性フィラーからなる保護
層で被覆される金属製集電体を記載している。記載されるシステムは、金属製集電体と活
物質との電気接触の改善、及び硫酸に対する不透過性をもたらす。採用されるコポリマー
は、塩化ビニル及び/又は酢酸ビニルをベースとするものであり、保護組成物は有機媒体
中で調製される。
【0022】
特許文献7は、耐食性を有するリチウム電池電極用の集電体を記載している。集電体は
、フッ素樹脂をベースとする保護層でコーティングされている。保護層はさらに、添加剤
として、可撓性を改善させるためにゴムの微粒子、エポキシ樹脂等の付着促進剤、その膨
張を軽減するためにフッ素樹脂の架橋剤を含有するものであってもよい。しかしながら、
本文献により教示される保護組成物は有機溶媒をベースとしている。
【0023】
特許文献8は、ゴムタイプの材料から作られる集電体と活物質層とのアセンブリを記載
しており、該アセンブリは、カーボンブラック又は黒鉛と、樹脂とをベースとする中間接
着層を備え、該樹脂は、ポリカルボジイミド樹脂、ABS、エポキシ、ポリフェニレンサ
ルフェート、ウレタン、アクリル又はポリエステルとすることができる。接着組成物は有
機溶媒媒体中に配合される。活性層は、接着剤でコーティングされた集電体上におけるホ
ットプレスによって集電体上に固定される。
【0024】
特許文献9は、水性媒体中に配合される活物質層を備えるとともに、導電性材料と、カ
ルボキシメチルセルロースバインダと、アクリルエラストマー樹脂とを含む、スーパーキ
ャパシタ電極を記載している。
【0025】
特許文献10は、導電性材料と、ポリエステルアミド等の熱可塑性架橋エラストマーを
ベースとするバインダとを含む活物質層を備える、リチウム電池用の電極を記載している
【0026】
しかしながら、活物質層は、集電体の保護層と同様の特徴を有さない。特に、活物質層
は、保護層とは対照的に大きい多孔度を有していなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【文献】米国特許第4562511号
【文献】仏国特許第2824418号
【文献】米国特許出願公開第2009/0155693号
【文献】国際公開第200701201号
【文献】米国特許出願公開第2006/0292384号
【文献】仏国特許第2977364号
【文献】米国特許出願公開第2012/0237824号
【文献】特開平05-82396号
【文献】欧州特許第2207188号
【文献】特開2000-100441号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
目下、水性電解質中においてスーパーキャパシタを働かせ、集電体の保護コーティング
が水性基剤と合わせて配合され、電極が同時に、低いESR、良好な耐食性、多数のサイ
クルにわたる高温における安定性、及び十分な可撓性を有する、電極は存在しない。
【0029】
本発明は、従来技術の電極が直面するこれらの問題を解決することを可能とするもので
ある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、金属製集電体と活物質とを含む、電気エネルギーを貯蔵する電極であって、
前記集電体の片面の少なくとも一部を、前記集電体と前記活物質との間に配置される少な
くとも1つの保護層でコーティングし、前記保護層が、
(A)
(A1)少なくとも1つの架橋エポキシポリマー又はコポリマー、及び
(A2)少なくとも1つのエラストマー、
を含む、ポリマーマトリックス、並びに
(B)導電性フィラー、
を含むことを特徴とする、電極に関する。
【0031】
本発明はまた、
1)金属製集電体を供給すること、
2)
(A1)少なくとも1つのエポキシポリマー又はコポリマー及び少なくとも1つの架
橋剤、
(A2)少なくとも1つのエラストマー、及び
(B)導電性フィラー、
を含む水性組成物(G)を調製すること、
3)組成物(G)を、集電体の片面の少なくとも一部に堆積させること、
4)組成物(G)を乾燥させるための第1の熱処理、
5)架橋エポキシポリマー又はコポリマー(A1)のガラス転移温度より高く、かつ架
橋エポキシポリマー又はコポリマー(A1)の分解温度未満の温度における、コーティン
グされた集電体の第2の熱処理、並びに
6)活物質層を、コーティングされた集電体上に堆積させること、
を含む、電極製造方法に関する。
【0032】
本発明はまた、2つの電極を備えるスーパーキャパシタであって、前記2つの電極の少
なくとも一部が、イオン性電解質に浸漬しており、2つの電極が絶縁膜によって分離され
ており、2つの電極の少なくとも1つが上記に記載及び以下で詳細に説明される発明に準
拠するものである、スーパーキャパシタに関する。
【0033】
好ましい実施の形態によれば、前記保護層は、
前記ポリマーマトリックス(A)の前駆体である、
架橋エポキシポリマー(複数の場合もある)又はコポリマー(複数の場合もある)(
A1)の前駆体、及び
少なくとも1つのエラストマー(A2)、並びに
導電性フィラー(B)、
を含む水性組成物(G)を乾燥及び架橋させることによって得られる。
【0034】
好ましい実施の形態によれば、前記保護層は、
前記ポリマーマトリックス(A)の前駆体である、
架橋エポキシポリマー(複数の場合もある)又はコポリマー(複数の場合もある)(
A1)の前駆体、及び
少なくとも1つのエラストマー(A2)、並びに
導電性フィラー(B)、
から基本的になる水性組成物(G)を乾燥及び架橋させることによって得られる。
【0035】
好ましい実施の形態によれば、集電体3はアルミニウム又は銅から作られる。
【0036】
好ましい実施の形態によれば、(A2)は、20℃未満の塗膜形成温度を有するエラス
トマーから選択される。
【0037】
好ましい実施の形態によれば、(A1)は、架橋エポキシポリマー、架橋エポキシ-ア
ルキドコポリマー、エポキシポリマーと架橋アルキド樹脂との混合物から選択される。
【0038】
好ましい実施の形態によれば、(A1)は架橋エポキシ-アルキドコポリマーである。
【0039】
好ましい実施の形態によれば、(A2)は、ブタジエン-アクリロニトリル(NBR)
格子及びポリウレタン格子から選択される。
【0040】
好ましい実施の形態によれば、(B)はカーボンブラックと黒鉛との混合物から選択さ
れる。
【0041】
好ましい実施の形態によれば、前記保護層の総乾物重量に対して、乾物重量比で、
前記ポリマー組成物(A)は50~70%を示し、
前記導電性フィラー(B)は30~50%を示し、並びに、
(A)及び(B)の重量の合計は95~100%、有益には98~100%、好ましく
は99~100%を示す。
【0042】
好ましい実施の形態によれば、前記保護層は、該保護層の総乾物重量に対して、乾物重
量比で、
30~60%の少なくとも1つの架橋エポキシポリマー又はコポリマー(A1)、
10~30%の少なくとも1つのエラストマー(A2)、及び
30~50%の導電性フィラー(B)、
を含み、並びに
(A1)、(A2)及び(B)の重量の合計は95~100%、有益には98~100
%、好ましくは99~100%を示す。
【0043】
好ましい実施の形態によれば、前記保護層が5~50μmの範囲の厚さを有する。
【0044】
好ましい実施の形態によれば、プライマーを前記金属製集電体と前記保護層との間に配
置する。
【0045】
好ましい実施の形態によれば、プライマーを前記保護層と前記活物質との間に配置する
【0046】
好ましい実施の形態によれば、本発明の方法は、組成物(G)の堆積前に、前記集電体
を調製する工程を更に含み、該工程は、研磨処理、化学処理から選択される1つ又は複数
の工程を含む。
【0047】
本発明の方法の好ましい実施の形態によれば、前記集電体上への組成物(G)の堆積を
、フィルムプラー(film puller)を用いて行う。
【0048】
本発明の方法の好ましい実施の形態によれば、乾燥後の堆積物厚さが5~50μmとな
るまで、堆積工程3)と、それに続く乾燥4)とを1回又は複数回行う。
【0049】
本発明の方法の好ましい実施の形態によれば、工程5)における処理温度は、120~
160℃、好ましくは130~150℃である。
【0050】
本発明の方法の好ましい実施の形態によれば、前記活物質の調製及び堆積が、
(i)活物質の水性組成物を調製するサブ工程、
(ii)活物質の前記組成物を前記保護層上に堆積させるサブ工程、及び
(iii)乾燥のための熱処理のサブ工程、
を含む。
【0051】
本発明の方法の好ましい実施の形態によれば、活物質層を堆積させる工程6)を、第2
の熱処理の工程5)の前に行う。
【0052】
本発明のスーパーキャパシタの好ましい実施の形態によれば、前記電解質は水性電解質
である。
【0053】
本発明のスーパーキャパシタの好ましい実施の形態によれば、前記電解質はイオン液体
である。
【0054】
本発明のスーパーキャパシタの好ましい実施の形態によれば、その2つの電極は、上記
に記載及び以下で詳細に説明される発明に準拠する。
【0055】
詳細な説明
集電体:
既知のように、集電体に用いられる材料は例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金
、銅及び銅合金、ステンレス鋼、ニッケル及びニッケル合金、チタン及びチタン合金、並
びに炭素によるアルミニウム又はステンレス鋼又はチタンの表面処理により得られる材料
とすることができる。中でも、アルミニウム及びアルミニウム合金、並びに銅及び銅合金
が好ましい例である。有益には、集電体はアルミニウム又は銅から作られるものとする。
これらの材料はまた、使用前に表面酸化処理が施されていてもよい。表面処理による、集
電体の表面上におけるマイクロレリーフの導入は、材料の付着性を改善させ得るため有益
である。集電体の厚さは概して5~30μmの範囲である。
【0056】
保護層:
保護層は、少なくとも1つの架橋エポキシポリマー又はコポリマー(A1)、及び少な
くとも1つのエラストマー(A2)を含むポリマーマトリックス(A)を含む。保護層は
またフィラータイプの導電性材料(B)を含む。
【0057】
好ましくは、本発明による保護層では、該保護層の総乾物重量に対して、乾物重量比で

ポリマーマトリックス(A)は50~70%を示し、
導電性フィラー(B)は30~50%を示し、
(A)及び(B)の重量の合計は95~100%を示す。
【0058】
好ましくは(A)及び(B)の重量の合計は、該保護層の総乾物重量に対して、乾物重
量比で、98~100%、更に好ましくは99~100%を示す。
【0059】
ポリマーマトリックスとは、本発明においては、ポリマー、コポリマー、架橋剤及び添
加剤、例えば特に架橋触媒、界面活性剤、分散剤及び湿潤剤を乾燥及び任意に架橋するこ
とにより得られる材料を意味する。
【0060】
ポリマーマトリックスは、乾燥及び架橋によってポリマー組成物から得られる。事実、
ポリマー組成物を他の成分、特に導電性フィラーと混合すると、水性分散体形態のコーテ
ィング組成物又は保護組成物(G)が形成される。保護組成物を乾燥させた後、架橋反応
を開始する処理(例えば加熱)にかける。ポリマーマトリックスはこの処理の結果として
形成される。その後保護層が得られる。
【0061】
有益には、保護層が、保護層の総乾物重量に対して、乾物重量比で、
30~60%の架橋エポキシマトリックス(A1)、
10~30%の少なくとも1つのエラストマー(A2)、及び
30~50%の導電性フィラー(B)、
を含み、並びに、
(A1)、(A2)及び(B)の重量の合計が95~100%を示す。
【0062】
好ましくは、(A1)、(A2)及び(B)の重量の合計が、該保護層の総乾物重量に
対して、乾物重量比で、98~100%、更に好ましくは99~100%を示す。
【0063】
ポリマーマトリックス(A):
ポリマーマトリックス(A)は、
(A1)少なくとも1つの架橋エポキシポリマー又はコポリマー、及び
(A2)少なくとも1つのエラストマー、
を含む。
【0064】
ポリマーマトリックスとは好ましくは、本発明においては、本マトリックスを作製する
のに採用されるポリマー、コポリマー、架橋剤及び添加剤、例えば特に架橋触媒及び界面
活性剤から基本的になる材料を意味する。
【0065】
好ましくは、ポリマーマトリックス(A)は、1つ又は複数の架橋エポキシポリマー(
複数の場合もある)又はコポリマー(複数の場合もある)、1つ又は複数のエラストマー
(複数の場合もある)、架橋剤、架橋触媒、界面活性剤、分散剤及び湿潤剤から基本的に
なる。
【0066】
好ましくは、(A1)は、架橋エポキシポリマー、架橋エポキシ-アルキドコポリマー
、エポキシポリマーと架橋アルキド樹脂との混合物から選択される。
【0067】
更に好ましくは、(A1)は架橋エポキシ-アルキドコポリマーである。
【0068】
エポキシ樹脂の例として、
好適なジヒドロキシ化合物を、二酸又はジアミンと、またエピクロロヒドリンと縮合反
応させることにより調製されるグリシジルエポキシ樹脂、例えばビスフェノールAのジグ
リシジルエーテル(DGEBA)
ノボラックフェノール樹脂のグリシジルエーテルであるノボラックエポキシ樹脂に言及
することができる。ノボラックエポキシ樹脂は、酸触媒の存在下でフェノールをホルムア
ルデヒドと反応させてノボラックフェノール樹脂を生成した後、エピクロロヒドリンと反
応させることによって得られる。
【0069】
エポキシ-アルキドコポリマーの例として、カルボキシル基を含有するアルキド樹脂に
言及することができ、エポキシ樹脂は、該アルキド樹脂とカルボキシ/エポキシエステル
化反応によって反応するようになっている。
【0070】
架橋剤の中でも、アミン架橋剤、例えばメラミン、特にヘキサメトキシメチルメラミン
に言及することができる。
【0071】
好ましくは、架橋剤が、(A1)の乾物重量に対して、重量比で、10~40%、好ま
しくは15~35%、更に良好には20~30%を示す。
【0072】
好ましくは、触媒は、架橋剤の乾物重量に対して0.1~2.5wt%の範囲の量で使
用される。
【0073】
触媒の中でも、パラトルエンスルホン酸に言及することができる。
【0074】
好ましくは、(A1)は、架橋エポキシマトリックス、すなわち、エポキシポリマー組
成物の架橋により得られる材料である。好ましくは、(A1)は、少なくとも30wt%
の乾物がエポキシポリマー又はコポリマー中のエポキシフラグメントからなるポリマー組
成物から得られる材料である。好ましくは、(A1)は、架橋エポキシポリマー若しくは
架橋エポキシコポリマー、又はエポキシと別のポリマーとの架橋混合物、例えばアルキド
樹脂から基本的になる材料である。(A1)は、可変量の未架橋ポリマー又はコポリマー
、未反応架橋剤、触媒、界面活性剤、湿潤剤及び分散剤を含有したままであってもよい。
【0075】
(A1)は、ポリマー組成物(CA1)の形態で本発明に使用される。(A1)は、(
コ)ポリマー又は(コ)ポリマーの混合物、架橋剤、触媒、及び任意に界面活性剤を含む
水性組成物である。かかる組成物は市販されているか、又は市販製品から開始して容易に
調製することもできる。
【0076】
好ましくは、エラストマー(A2)は、20℃未満の塗膜形成温度を有するエラストマ
ーから選択される、エラストマー又はエラストマーの混合物である。
【0077】
(A2)は架橋又は非架橋エラストマーから選択されるものであってもよく、(A2)
は、天然格子又は合成格子、例えば、ブタジエン-アクリロニトリル(NBR)格子、水
素化ブタジエン-アクリロニトリル格子(NBR)、ポリウレタン格子、アクリル格子、
スチレン-ブタジエン格子(SBR)、ブチル格子、アクリロニトリル-ブタジエン-ス
チレン格子(ABS)、及びそれらの混合物から選択されるものであってもよい。
【0078】
(A2)は、(A1)と同じ1つの架橋剤の影響下で、又は特定の架橋剤の作用により
、(A1)の架橋と同時に架橋されるものであってもよい。
【0079】
好ましくは、(A2)は、ブタジエン-アクリロニトリル(NBR)格子及びポリウレ
タン格子から選択される。
【0080】
(A2)は、ラテックス組成物(CA2)の形態で本発明に使用される。(A2)は、
エラストマーと界面活性剤とを含む水性組成物である。(A2)は架橋剤を更に含んでい
てもよい。かかる組成物は市販されているか、又は市販製品から開始して容易に調製する
こともできる。
【0081】
好ましい実施の形態によれば、保護層は、保護層の総乾物重量に対して、乾物重量比で

架橋エポキシポリマー、架橋エポキシ-アルキドコポリマー、エポキシポリマーと架橋
アルキド樹脂との混合物から選択される、30~60%のマトリックス(A1)、
ブタジエン-アクリロニトリル(NBR)格子及びポリウレタン格子から選択される、
10~30%の少なくとも1つのエラストマー(A2)、及び
30~50%の導電性フィラー(B)、
を含み、並びに、
(A1)、(A2)及び(B)の重量の合計は95~100%、有益には98~100
%、更に好ましくは99~100%を示す。
【0082】
組成物(G):
本発明によれば、保護層は、
ポリマーマトリックス(A)の前駆体である、
架橋エポキシポリマー(複数の場合もある)又はコポリマー(複数の場合もある)(
A1)の前駆体、
少なくとも1つのエラストマー(A2)、及び
導電性フィラー(B)、
を含む水性組成物(G)を乾燥及び架橋させることによって得られる。
【0083】
好ましくは、水性組成物(G)中、水性組成物(G)の総乾物重量に対して、乾物重量
比で、
ポリマーマトリックス(A)の前駆体は50~70%を示し、
導電性フィラー(B)は30~50%を示し、
(A)及び(B)の重量の合計は95~100%を示す。
【0084】
好ましくは、(A)及び(B)の重量の合計は、水性組成物(G)の総乾物重量に対し
て、乾物重量比で、98~100%、更に良好には99~100wt%を示す。
【0085】
有益には、水性組成物(G)は、水性組成物(G)の総乾物重量に対して、乾物重量比
で、
30~60%の架橋エポキシマトリックス(A1)の前駆体、
10~30%の少なくとも1つのエラストマー(A2)、及び
30~50%の導電性フィラー(B)、
を含み、かつ、
(A1)、(A2)及び(B)の重量の合計が95~100%を示す。
【0086】
好ましくは、(A1)、(A2)及び(B)の重量の合計は、水性組成物(G)の総乾
物重量に対して、乾物重量比で、98~100%、更に良好には99~100wt%を示
す。
【0087】
好ましい実施の形態によれば、水性組成物(G)は、水性組成物(G)の総乾物重量に
対して、乾物重量比で、
(A1)が、架橋エポキシポリマー、架橋エポキシ-アルキドコポリマー、エポキシポ
リマーと架橋アルキド樹脂との混合物から選択される、30~60%の架橋エポキシマト
リックス(A1)の前駆体、
ブタジエン-アクリロニトリル(NBR)格子及びポリウレタン格子から選択される、
10~30%の少なくとも1つのエラストマー(A2)、及び
30~50%の導電性フィラー(B)、
を含み、並びに、
(A1)、(A2)及び(B)の重量の合計は、95~100%、有益には98~10
0%、更に好ましくは99~100%を示す。
【0088】
「ポリマーマトリックスの前駆体」とは、モノマー、プレポリマー、ポリマー及びコポ
リマー、本マトリックスを作製するのに使用される架橋剤及び添加剤、例えば特に架橋触
媒、界面活性剤、分散剤及び湿潤剤を意味する。
【0089】
保護層の成分の割合は、保護組成物(G)の成分の割合の選択により調節される。
【0090】
エポキシポリマー(複数の場合もある)又はコポリマー(複数の場合もある)の架橋を
生じさせる温度で十分な期間、既知の方法で熱処理を行う。
【0091】
水性組成物(G)は、様々な構成要素である(CA1)、(CA2)及び(B)をどん
な順番でも混合することによって調製することができる。例えば、(CA1)及び(C
)を混合する前に、(CA1)及び(CA2)に導電性フィラーを一部投入してもよく
、又は、(CA1)と(CA2)とを混合した後で導電性フィラーを投入してもよい。
【0092】
安定で均質な組成物の製造を容易にするために、当業者に既知のように、界面活性剤、
分散剤、湿潤剤及び水混和性溶媒、例えばアルコール、特にエタノール又はイソプロパノ
ールを組成物に組み込んでもよい。
【0093】
水性組成物(G)は、有益には25~50%、好ましくは30~45wt%である乾燥
抽出物を有する。乾燥抽出物の選択は、組成物の塗布方法に関連して当業者により変えら
れる。
【0094】
導電性フィラー:
「導電性フィラー」とは、本発明においては、1×10-9~1Ω・cmの体積抵抗率
を有するフィラーを意味する。好ましい体積抵抗率は1×10-6~1×10-1Ω・c
mである。
【0095】
導電性フィラーは例えば導電性炭素フィラーから選択され得る。
【0096】
これらの導電性フィラーは、粒子形態、繊維形態、又は種々のタイプのフィラーの混合
物であってもよい。
【0097】
粒子形態の炭素フィラーの中でも、カーボンブラック、アセチレンブラック、ナノポー
ラスカーボン、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛)に言及することができる。高い電気伝導率を
得るには、0.002~20μm、特に0.025~10μmの平均一次粒子直径が好ま
しい。
【0098】
繊維形態の炭素フィラーの中でも、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ及びカ
ーボンナノファイバーについて言及することができる。
【0099】
導電性フィラーは好ましくは、カーボンブラック、アセチレンブラック、ナノポーラス
カーボン、黒鉛、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ及びカーボンナノファイバ
ーからなる群から選択される少なくとも1つのフィラーからなる。好ましくは、本発明は
、カーボンブラックと黒鉛との混合物から選択されるフィラーを伴って実施される。有益
には、カーボンブラック/黒鉛重量比が4/1~1/1の混合物が導電性フィラーとして
選択される。
【0100】
導電性フィラーは好ましくは、保護組成物又は水性組成物(G)の乾物重量に対して、
乾物重量比で30~50wt%の範囲の量で組み込まれる。
【0101】
保護層の十分な電気伝導率を得るには、少なくとも30wt%の導電性フィラーを使用
することが好ましい。しかしながら、50wt%を超える導電性フィラーを使用する場合
、組成物の製造は、混合のし易さ、堆積中及び乾燥中のコーティングの安定性といった問
題を含む。
【0102】
界面活性剤:
有益には、水性組成物(G)が少なくとも1つの界面活性剤を含む。界面活性剤は、導
電性保護層中において複数の機能を発揮するのに用いることができる。界面活性剤は、(
A1)中、(CA2)中、及び/又は(CA1)と(CA2)と(B)とを混合した後
に投入してもよい。
【0103】
界面活性剤の役割は主に、集電体上への塗布前及び塗布の間、組成物の製剤中に湿潤状
態で存在することで、包括的なものではないが、導電性フィラーの分散性を改善し、組成
物中におけるポリマー及びコポリマーの安定性を改善し、またコーティング剤の散布特性
を改善することである。或る特定の界面活性剤は熱処理中に蒸発するが、保護組成物中に
残るものもある。
【0104】
他の成分:
導電性フィラーに加えて非導電性フィラーを保護組成物に使用してもよい。電気を伝え
ないフィラーの例は、非導電性炭素、無機酸化物、樹脂である。フィラーの性質及び量は
、導電性保護層の適用性(レオロジー)及び使用特性(付着特性、電気抵抗)に関連して
選択される。
【0105】
以下のもの、包括的なものではないが、集電体と導電性層との付着性を改善するために
付着促進剤を保護組成物中に使用してもよい。
【0106】
付着促進剤の中でも、例えばアクリルポリマー又はアクリルオレフィンコポリマーに言
及することができる。
【0107】
これらの成分は、(CA1)中、(CA2)中に投入してもよく、導電性フィラー(B
)と混合してもよく、及び/又は(CA1)と(CA2)と(B)とを混合した後に投入
してもよい。
【0108】
好ましくは、他の成分は乾物重量比でコーティング層及び水性組成物(G)の総乾物重
量の多くても5wt%を示す。有益には、他の成分は、乾物重量比でコーティング層及び
水性組成物(G)の総乾物重量の多くても2wt%、更に良好には1wt%を示す。
【0109】
付加的な層:
保護層は集電体と活物質との間に配置される。また、プライマーを金属製集電体と保護
層との間に配置することを想定してもよく、上記プライマーは、水分散性バインダと導電
性フィラーとを含む。例えば、水分散性バインダはポリウレタンラテックスとすることが
できる。
【0110】
プライマーは、プライマーの総乾物重量に対して、乾物重量比で、
60~70%の少なくとも1つの水分散性バインダ、及び
30~40%の導電性フィラー、
を含むことができ、水分散性バインダ及び導電性フィラーは、乾物重量比でプライマーの
95~100%を示す。
【0111】
別の変形形態によれば、プライマーを保護層と活性層との間に配置してもよい。この変
形形態は、イオン液体セルにとって特に興味深いものであり、その耐用年数が延びる。好
ましくは、この層は5~20マイクロメートルの厚さを有する。
【0112】
例えば、保護層の形成及び活性層の形成後に、
合計95~100wt%に達するように補填物として、乾物重量比で、60~70%の
水分散性バインダと、30~40%の導電性フィラーとを含む、水性溶媒中に希釈させた
組成物を調製する工程、
上記組成物を保護層上に堆積させる工程、及び
金属製集電体を乾燥させる工程、
を行う。
【0113】
プライマーを堆積及び乾燥させる操作は、所望厚さを得るのに必要なだけ繰り返すこと
ができる。
【0114】
電極製造方法:
本発明はまた、
1)金属製集電体を供給すること、
2)
少なくとも1つのエポキシポリマー又はコポリマー及び少なくとも1つの架橋剤、
少なくとも1つのエラストマー、及び
導電性フィラー、
を含む水性組成物(G)を調製すること、
3)組成物(G)を、集電体の片面の少なくとも一部に堆積させること、
4)25~60℃の範囲の温度における、(G)でコーティングされた集電体の第1の
熱処理、
5)架橋エポキシポリマー又はコポリマーのガラス転移温度より高く、かつ架橋エポキ
シポリマー又はコポリマーの分解温度未満の温度における、乾燥組成物(G)でコーティ
ングされた集電体の第2の熱処理、並びに
6)活物質層を、保護層又は乾燥させただけの組成物(G)でコーティングされた集電
体上に堆積させること、
を含む、電極製造方法に関する。
【0115】
本方法で使用される水性組成物(G)は上記に記載したものであり、本方法の好ましい
変形形態は、(G)の成分の選択に関して好ましい変形形態に対応するものである。
【0116】
本発明の方法は、水性組成物(G)の堆積前に集電体の調製を含み、該工程は、研磨処
理(例えば炭化ケイ素紙)、化学薬品によるピックリング(chemical pickling)(例え
ばアセトンによる洗浄、フッ化水素酸と硝酸との混合物を用いた洗浄)から選択される1
つ又は複数の工程を含む。
【0117】
集電体上への組成物(G)の堆積は、フィルムプラーを用いた、又は当業者に既知の任
意の他の方法、例えば刷毛による塗布、ローリング等による既知の方法で行うことができ
る。
【0118】
堆積は、集電体の片面全体又は一部においてのみ実施してもよい。堆積は、電解質中に
浸漬させる集電体の少なくとも一部に実施される。
【0119】
上記の堆積後、好ましくは25~60℃、更に良好には30~50℃の温度における熱
処理に施すことによって、組成物を乾燥させる。この処理は15分~1時間、好ましくは
約30分間施される。この工程は例えば、制御雰囲気の利得を得るように加熱炉内で行っ
てもよい。
【0120】
堆積工程3)と、それに続く乾燥4)とは、1回だけ行ってもよく、又は堆積物の厚さ
を厚くするために繰り返してもよい。
【0121】
好ましくは、乾燥後に5~50μmの堆積物厚さを得るように堆積工程(単数又は複数
)を行う。
【0122】
所望厚さの堆積物が得られたら、架橋剤とポリマー(複数の場合もある)又はコポリマ
ー(複数の場合もある)との反応によってポリマー網目構造が形成されるように、エポキ
シポリマー又はコポリマーのガラス転移温度より高く、かつエポキシポリマー又はコポリ
マーの分解温度未満の温度において第2の熱処理を行う。
【0123】
有益には、工程5)における処理温度は、120~160℃、好ましくは130~15
0℃である。
【0124】
使用される活物質は、この使用で従来技術から既知の材料、特に仏国特許出願公開第2
985598号に記載されているものから選択され得る。
【0125】
活物質が炭素含有水性組成物に由来する場合、活物質の堆積及び乾燥は、
(i)例えば、カーボンブラック、ポリビニルアルコール、ポリ(アクリル)酸及びカ
ルボキシメチルセルロースから開始して、活物質の水性組成物を調製するサブ工程、
(ii)例えばフィルムプラーを用いて、活物質の組成物を保護層上に堆積させるサブ
工程、
(iii)例えば50℃で30分間乾燥させる熱処理のサブ工程、及び
(iv)例えば140℃で30分間架橋させる熱処理のサブ工程、
を含んでいてもよい。
【0126】
活物質層を堆積させる工程6)は、第2の熱処理の工程5)の前に行ってもよいものと
する。工程1)~工程4)を行った後、工程(i)~工程(iii)を行い、その後、保
護層及び活性層を同時に架橋させるために、第2の熱処理の工程5)を施す。
【0127】
本発明の方法は、任意に、工程1)と工程2)との間に、集電体上への上記のようなプ
ライマーの堆積、その後のプライマーの乾燥を含んでいてもよい。
【0128】
この種の電極は、スーパーキャパシタに使用する場合に有利な特性を有している。イオ
ン液体タイプの電解質を伴って働くキャパシタでは、保護層の機能によって、付着力が改
善し、また金属製集電体上における活物質の等価直列抵抗が低減すると考えられる。
【0129】
水性電解質を伴って働くキャパシタでは、保護層の機能によって、集電体を腐食から保
護し、付着力を改善し、また金属製集電体上における活物質の等価直列抵抗が低減すると
考えられる。このため、保護層はキャパシタの耐用年数を延ばすのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0130】
図1】スーパーキャパシタの構造の概略図である。
図2】曲げ抵抗を測定するの(ESR試験)に使用されるセットアップの概略図である。
図3】動的腐食試験用の試験片の概略図である。
図4】動的腐食試験用のセットアップの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0131】
図中、同一の参照符号は異なる図面においても同一の要素を示すのに用いられている。
【0132】
図1は、スーパーキャパシタ1の構造の概略図である。スーパーキャパシタ1は、イオ
ン性電解質(不図示)に浸漬されているとともに、セパレータ9と称される絶縁膜によっ
て分離されている2つの導電性電極2を備え、該絶縁膜は、イオン伝導性を可能にすると
ともに、電極2間の電気接触を防止する。
【0133】
各電極2は、例えば5~50マイクロメートルの厚さを有する導電性保護層5で被覆さ
れる、例えば銅又はアルミニウムから作られる金属製集電体3と、例えば炭素である、セ
パレータ9と接触するモノリシック活物質7とを含む。
【0134】
保護層5は、集電体と活性層7との接触を改善させ、また、金属製集電体3を、電解質
中に存在する反応性種から保護する。
【0135】
保護層5は、とりわけ、例えばpH4以下の酸性媒体中、又は更にはpH7の中性媒体
中で水性電解質に対して不透過性である。この不透過性のために、水性媒体中における腐
食に対する金属製集電体3の保護がもたらされることから、上記金属製集電体3とモノリ
シック活物質7との電気接触の低下がいずれも防がれている。
【0136】
さらに、導電性保護層5は、上記金属製集電体3とモノリシック活物質7との電気接触
を改善させることもできる。
【0137】
第1の実施形態によれば、エネルギー貯蔵用の電気化学デバイスは、図1に示されるよ
うな複数の多層ユニットアセンブリの重ね合わせによって形成される。この第1の実施形
態は典型的にスーパーキャパシタ構造に対応するものである。
【0138】
このデバイスは、多層ユニットアセンブリを巻き上げることによって、又は複数の多層
ユニットアセンブリを積層することによって得ることができる。このため、アセンブリは
図1に示されるユニットアセンブリによって規定される繰返しパターンを有する。
【実施例
【0139】
実験セクション
I-材料及び方法:
I-1.材料:
バインダ(A1):これは、架橋によりRESYDROL AX 906W(商標)樹
脂(CYTEC)から得られる。エポキシ官能基及びアルキド官能基を含有する樹脂を、水性
相中に35%で分散させる。熱硬化性ポリマーを形成するために、樹脂をヘキサメトキシ
メチルメラミンで架橋する。使用する架橋剤はCYMEL(商標)303(CYTEC)であ
る。この反応は、予めエタノール中に分散させたパラ-トルエンスルホン酸であるCYC
AT 4040(商標)(CYTEC)によって触媒される。
バインダ(A2):
LITEX NX 1200(商標)(SYNTHOMER):水性相中に45%で分散させ
たブタジエン-アクリロニトリルラテックス、又は、
PU6800(ALBERDINGK):水性相中に33%で分散させたポリウレタンラテック
ス。
フィラー:使用する導電性フィラー(B)はカーボンブラック(ENSACO 260
G(商標))及び黒鉛(TIMCAL、Timrex KS6L(商標))。
添加剤:シリコーン界面活性剤を、表面張力を低減させるとともに、それによって、基
板上のコーティングの湿潤性を改善させるために、製剤に添加する。この作用物質はBY
K(商標)349とする。
金属ストリップ:アルミニウムホイル20μm厚。
【0140】
実験セクションでは、特に明記しない限り、比率は全て重量に基づくものとする。
【0141】
I-2.物品の製造方法:
保護コーティング剤の塗布:
55μmの保護組成物を、Elcometer(商標)を介しフィルムプラーを用いて
金属ストリップの第1の面に堆積させることで、制御された均一な堆積が得られる。50
℃で30分間乾燥させた後、コーティングされたストリップをその後140℃で30分間
処理する。マイクロメーターを用いてコーティング厚さを測定したところ、15ミクロン
~20ミクロンとなる。総厚が約35μmとなるように、第2の層を同様に製造する。
【0142】
セルの製造:
コーティング剤の塗布は上記と同様とする。
【0143】
変形形態1(第7表~第12表中の電極):次に、第1の電極用のコーティングされたス
トリップを、仏国特許出願公開第2985598号の実施例1に従って調製した活物質3
05μmでコーティングすると、50℃で30分間乾燥させた後、150μmの活性層厚
さが得られる。層を全て140℃で30分間同時に架橋させる。
【0144】
90μmの乾燥厚さ又は155μmの湿潤厚さの活物質を有する第2の電極を製造する
ために同様のプロセスを行う。
【0145】
変形形態2(第13表中の電極):
第A表に規定されるプライマー(製剤4)55μmをコーティング層上に堆積させる。
金属製集電体を50℃の温度で30分間乾燥させると、20±3マイクロメートルの厚さ
を有する層が得られる。同量を両電極上に堆積させる。
【0146】
第1の電極用のコーティングされたストリップを、仏国特許出願公開第2985598
号の実施例1に従って410μmの活物質でコーティングすると、50℃で30分間乾燥
させた後、200μmの活性層厚さが得られる。層を全て140℃で30分間同時に架橋
させる。
【0147】
両側に150μmの乾燥重量又は305μmの湿潤厚さの活物質を有する第2の電極の
ために同様のプロセスを行う。
【0148】
セルロースセパレータをそれらの間に配置して2つの電極を組み立てることによって、
モデルセルが得られる。
【0149】
水性電解質を含むセル:アセンブリに、水に溶解させた5Mの硝酸リチウム電解質を充
填し、2枚の90μmヒートシール性プラスチックフィルムで保護する。
【0150】
イオン液体を含むセル:アセンブリを制御雰囲気の下、98%のEMIM BF4(1
-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート)で充填し、2枚の90μ
mヒートシール性プラスチックフィルムで保護する。
【0151】
I-3.試験及び特性決定の方法:
4つの異なる試験方法を用いてコーティングされたストリップを特性決定する。
【0152】
試験1:曲げ抵抗試験(単位mΩ)は、圧力(200N)を、保護層5でコーティングさ
れた集電体3の2つのストリップの3cmの正方形11に印加することによって行う(
図2)。
【0153】
この測定により、種々の層の界面における適合性の概念がもたらされる。測定される抵
抗は、スーパーキャパシタの高出力動作を可能にするために可能な限り低いものでなけれ
ばならない。
【0154】
システムの抵抗はオームの法則U=RIを用いて評価される。
【0155】
電流は1アンペアに固定して、電位を掃引させる。それにより直線I=f(U)が得ら
れる。抵抗を算出することができる。データを処理するのに使用するソフトウェアはEC
-Lab(商標)ソフトウェアとする。
【0156】
詳細は次の通りである。集電体+コーティングの曲げ抵抗50mΩ未満
【0157】
試験2:保護層でコーティングされた集電体の伸び率及び付着性にかかる性能を試験する
ために、心棒に巻いた巻付試験(winding test)を用いる。あらゆる損傷、例えば亀裂及
び/又は破砕を視覚的に検出する。
【0158】
コーティング剤は上記と同じ条件で金属製集電体上に塗布する。試験中、試験片を心棒
の周りに180度で1秒~2秒間均一に折り畳む。最大折り畳み直径から折り畳みを開始
し、コーティングに亀裂が現れる直径まで試験を続ける。本発明について行った試験にお
いて、本試験は直径3mmの心棒に関して実証されるものとする。PF 5710(商標
)基準心棒はBYK社から得られる。
【0159】
詳細は次の通りである。直径3mmの心棒の周りの亀裂のない巻付け。
【0160】
試験3:室温における動的腐食測定
本測定は、0.8Vにおける3電極セットアップに基づくものである。
【0161】
使用される3つの電極は(図4)、
飽和カロメル基準電極15、
表面3.1部分は保護コーティングで被覆されるが、電解質中に浸漬されない3.2部
分はコーティングされておらず、集電体3の背面(不図示)及び縁を保護するプラスチッ
クフィルム13でコーティングされている集電体3からなる作用電極2(図3に詳細に示
される)、
ステンレス鋼の対向電極17、
である。3つの電極を180mLの電解質19を充填したビーカー内に浸漬させる。
【0162】
次に電流を電極に通す。本発明については、溶液が水溶液であることから、印加電流を
0.8Vとする。
【0163】
本試験の目的は、時間の関数として電流の変動を評価することである。Iが一定であれ
ば腐食は起こらず、Iが一定でなければ、腐食現象が存在することを意味する。
【0164】
導電性保護コーティングを23時間放置すれば、試験は実証されるものとする。
【0165】
本測定の目標は、実際の状況に可能な限り近い条件下でシステムの性能を評価するため
に、アルミニウムの酸化、それ故不動態化を引き起こすことである。他の試験が全て実証
される場合にのみ、本試験を行う。
【0166】
試験3+:60℃における動的腐食測定
或る特定の用途、特に自動車に関して、スーパーキャパシタをホットスポットの近くに
配置しなければならない場合、最大60℃の温度における高い耐性が要求され得る。その
ため或る特定の状況において60℃でも動的腐食試験を行った。本試験は目下任意選択的
なものである。その実施は、セットアップの温度以外同一のものであり、試験の間中60
℃に保たれる。導電性保護コーティングを40時間放置すれば、試験は実証されるものと
する。
【0167】
試験4:水性電解質を含むセル内における電極の性能測定
本発明による電極を含むセルでは、室温におけるサイクル動作及び60℃におけるサイ
クル動作を行う。0V~1.5Vの充放電サイクルを採用する。完全なシステムの初期及
び最終ESR試験は、室温における試験では90000サイクル後、60℃における試験
では10000サイクル後に行う。
【0168】
詳細は、
90000サイクルを超える室温サイクル動作では、ESR最終<2×ESR初期とな
り、
10000サイクルを超える60℃におけるサイクル動作では、ESR最終<2×ES
R初期となる。
【0169】
試験5:イオン性電解質を含むセル内における電極の性能測定
0V~3Vの充放電サイクルで上記の試験4と同様に試験を行う。システム(集電体+
保護コーティング+活物質)の全体性能は、クローズドセルにおいて評価する。
【0170】
詳細は次の通りである:
電圧(V)>3
静電容量(F)>10
ESR(mΩ)<70
【0171】
試験6:イオン性電解質を含むセル内における電極の性能の定期測定
本発明による電極を含むセルでは、DC電圧(3V)を室温において印加する。システ
ム(集電体+コーティング+活物質)の全体性能は、クローズドセルにおいて評価する。
【0172】
詳細は次の通りである:
電圧(V)>3
静電容量(F)>10
ESR(mΩ)<70
【0173】
セルが短絡したら試験を停止する。
【0174】
II-水性電解質で働くスーパーキャパシタの製造を目的とした、コーティングの作製:
金属製集電体のコーティング用の導電性保護層を作製するための製剤の例を以下に示す
【0175】
II-1.製剤
製剤1(F1.1及びF1.2):水性相中に分散させたエポキシ樹脂
第1表に記載される様々な組成物を混合するとペーストが得られる。製剤は、エタノー
ル中に分散させる触媒を添加する前を100%と表す。
【0176】
溶媒は水とする。完全な製剤(エタノールを含む)の乾燥抽出物は40%とする。
【0177】
【表1】
【0178】
その後、製剤F1.1から始めて触媒/架橋剤パーセンテージを変えた。
【0179】
【表2】
【0180】
製剤2:製剤1に添加するラテックスの選択及び配合
エポキシ樹脂をベースとする製剤の性能を改善させるために、第3表に記載されるもの
から選択されるラテックス製剤をこのペーストに添加した。これらの2つの分散体が、水
性相中に分散されているエポキシ樹脂自体と相溶性であることから、これらを使用した。
【0181】
【表3】
【0182】
製剤3:製剤1と製剤2との混合物から得られるコーティング組成物
製剤1/製剤2湿潤重量比は90/10~85/15である。製剤1+製剤2を含むコ
ーティング組成物は製剤3と称し、37.6%の乾燥抽出物を有するものとする。
【0183】
【表4】
【0184】
製剤F3.1から始めて、様々な触媒比を試験した。
【0185】
【表5】
【0186】
製剤F3.1から初めて、可撓化基剤(flexibilizing base)の様々な比率を試験した
【0187】
【表6】
【0188】
製剤4:プライマー
【0189】
【表7】
【0190】
II-2.結果:
【0191】
【表8】
【0192】
コーティングの可撓性が不十分であることが分かる。さらに、200Nにおけるその抵
抗は高すぎる。
【0193】
【表9】
【0194】
架橋を最適化するために、製剤F3.1から始めて触媒/架橋剤パーセンテージの研究
を行った。
【0195】
【表10】
【0196】
【表11】
【0197】
第8表、第9表及び第10表において与えられる結果から示されるように、製剤3の水
系導電性保護層は、保護層でコーティングされた集電体の抵抗を下げるとともに、水性電
解質の存在下における酸素付加に関連づけられる劣化から金属製集電体を保護することを
可能にする。
【0198】
詳細に規定されるように、製剤F3.9及びF3.1は、4つの特性化試験に合格した
。製剤F3.1は60℃における動的腐食において評価された。
【0199】
水性電解質を含むセル
【0200】
【表12】
【0201】
イオン性電解質を含むセル(第1の変形形態):
試験プロトコル5に従ってセルを試験する。
【0202】
【表13】
【0203】
イオン性電解質を含むセル(第2の変形形態):
試験プロトコル6に従ってセルを試験する。
【0204】
【表14】
図1
図2
図3
図4