(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】ソーラーコントロール用積層グレージング
(51)【国際特許分類】
C03C 3/087 20060101AFI20220311BHJP
C03C 3/078 20060101ALI20220311BHJP
C03C 3/083 20060101ALI20220311BHJP
C03C 3/085 20060101ALI20220311BHJP
C03C 17/36 20060101ALI20220311BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20220311BHJP
B32B 17/06 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
C03C3/087
C03C3/078
C03C3/083
C03C3/085
C03C17/36
B32B7/023
B32B17/06
(21)【出願番号】P 2021001311
(22)【出願日】2021-01-07
(62)【分割の表示】P 2017565278の分割
【原出願日】2016-06-14
【審査請求日】2021-01-07
(32)【優先日】2015-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】ランブリット, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】デポー, ジャン-ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】マレンヌ, イングリッド
(72)【発明者】
【氏名】ボラン, フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ドギモン, オドレイ
(72)【発明者】
【氏名】デガンド, アリン
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0315410(US,A1)
【文献】特開平10-218642(JP,A)
【文献】国際公開第2008/065962(WO,A1)
【文献】特開昭59-031147(JP,A)
【文献】特開昭63-134232(JP,A)
【文献】特表2016-513059(JP,A)
【文献】国際公開第2014/128016(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/115747(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00
C03C 15/00-23/00
C03C 27/12
B32B 17/00-17/12
B32B 7/023
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線反射層で被覆された透明基材を含む積層グレージングであって、前記基材がガラスであって、その組成が3%未満のレドックスを有し、780~2500nmの間でRIR
V≧1.087
*TL
V(TL
Vは380~780nmの間の前記ガラスの光透過率である)となる赤外線反射率RIR
Vを特徴とするガラスであり、前記赤外線反射層は、380~780nmの間でTL
C≧1.3
*TIR
C(TIR
Cは780~2500nmの間の前記層の赤外線透過率である)となる光透過率TL
Cを特徴とすることを特徴とする積層グレージング。
【請求項2】
前記基材が、RIR
V≧1.087
*TL
V+5となる赤外線反射率RIR
Vを特徴とするガラスであることを特徴とする請求項1に記載の積層グレージング。
【請求項3】
前記基材が、RIR
V≧0.510
*TL
V+53となる赤外線反射率RIR
Vを特徴とするガラスであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層グレージング。
【請求項4】
前記基材の前記ガラスが、ガラスの全重量に対するパーセント値で表される含有量で:
全鉄(Fe
2O
3の形態で表される) 0.002~0.06%;
Cr
2O
3 0.0001~0.06%
を含む組成を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項5】
前記基材の前記ガラスが、ガラスの全重量に対するパーセント値で表される含有量で:
全鉄(Fe
2O
3の形態で表される) 0.002~0.06%;
Cr
2O
3 0.0015~1%;
Co 0.0001~1%
を含む組成を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項6】
前記基材の前記ガラスが、ガラスの全重量に対するパーセント値で表される含有量で:
全鉄(Fe
2O
3の形態で表される) 0.02~1%;
Cr
2O
3 0.002~0.5%;
Co 0.0001~0.5%
を含む組成を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項7】
前記基材の前記ガラスが、ガラスの全重量に対するパーセント値で表される含有量で:
全鉄(Fe
2O
3の形態で表される) 0.002~1%;
Cr
2O
3 0.0010~0.5%;
Co 0.0001~0.5%;
Se 0.0003~0.5%
を含む組成を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項8】
前記赤外線反射層が、0.5
*(1-AIR
C)を超える赤外線反射率RIR
Cを特徴とすることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項9】
前記赤外線反射層が、0.76
*(1-AIR
C)を超える赤外線反射率RIR
Cを特徴とすることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項10】
前記赤外線反射層が、赤外線反射材料を主成分とするn層の機能性層(ここでn≧1である)と、n+1の誘電体コーティングとを含み、各機能性層に誘電体コーティングが隣接する多層スタックであることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項11】
前記赤外線反射層の1つ以上の機能性層が銀を主成分とすることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線反射層で被覆され、たとえばガラスでできた、または場合により着色ガラスでできた基材、特に透明基材を含む積層グレージングに関する。
【0002】
このような積層グレージングは、たとえば、単一構造または複数の構造中の建造物または乗り物のグレージングとして使用される。
【0003】
本文献では、他に示されない限り、以下の用語は以下の定義により使用される:
TL=光透過率=光源Cおよび2°観測者を使用する場合の製品を透過する入射光束のパーセント値(380~780nmの間)。
【0004】
TLV=基材の光透過率=光源Cおよび2°観測者を使用する場合のガラス基材を透過する入射光束パーセント値(380~780nmの間)。本明細書ではこれは厚さ4mmのガラスの場合で定義される。
【0005】
TLC=層の光透過率=光源Cおよび2°観測者を使用する場合の、ゼロ吸収を有する基材上に堆積された層からなる製品を透過する入射光束のパーセント値(380~780nmの間)。
【0006】
RL=光反射率=光源Cおよび2°観測者を使用する場合の、製品が反射する入射光束のパーセント値(380~780nmの間)。
【0007】
SF=g=日射透過率=一方では、製品を直接透過し、他方では、前記製品によって吸収され、次にエネルギー源とは反対側の面から放射される、入射エネルギー放射線のパーセント値であって、規格のISO9050:2003に準拠して計算される入射エネルギー放射線のパーセント値。
【0008】
S=選択=選択性=光透過率の日射透過率に対する比。
【0009】
TIR=赤外線透過率=規格のISO 9050:2003に準拠して計算される製品を透過する赤外線のパーセント値(780~2500nmの間)。
【0010】
TIRC=層の赤外線透過率=ゼロ吸収を有する基材上に堆積された層からなる製品を透過する赤外線のパーセント値であって、規格のISO9050:2003に準拠して計算される赤外線のパーセント値(780~2500nmの間)。
【0011】
RIR=赤外線反射率=規格のISO 9050:2003準拠して計算される、製品が反射する赤外線のパーセント値(780~2500nmの間)。
【0012】
RIRV=理想的な反射体を有する基材の赤外線反射率=赤外領域を100%反射する理想的な層を有するガラス基材が反射する赤外線のパーセント値(780nm~2500nmの間)。本明細書では、これは厚さ4mmのガラス基材の場合で定義される。この層は、入射放射線とは反対側の面上に堆積され、規格のISO9050:2003に準拠して計算される。ガラス中での吸収が全くない場合に100%の最大RIRV値に到達し、2*4mm(往復)=8mmとなる光路に沿ってガラス中の吸収が増加するとRIRVが減少する。
【0013】
RIRC=層の赤外線反射率=ゼロ吸収を有する基材上に堆積された層を含む製品の反射する赤外線のパーセント値であって、規格のISO9050:2003に準拠して計算される赤外線のパーセント値(780~2500nmの間)。
【0014】
AIR:赤外線吸収率=規格のISO 9050:2003に準拠して計算される、製品が吸収される赤外線のパーセント値(780~2500nmの間)。
【0015】
AIRC=層の赤外線吸収率=規格のISO9050:2003に準拠して計算される、ゼロ吸収を有する基材上に堆積された層を含む製品が吸収する赤外線のパーセント値(780~2500nmの間)。
【背景技術】
【0016】
ある状況では、建造物または乗り物のグレージングは、建造物または客室の内部が過度に加熱されないようにするため、あまり大きな比率の全入射太陽放射線は透過しないが、それにもかかわらず、建造物または客室の内部に十分な光量が得られるように、適切な光透過率(TL)が得られることが望ましい。全入射太陽放射線の透過率は、日射透過率(SFまたはg)で表すことができる。これらの幾分矛盾する要求は、高い選択性(S)を有するグレージングを得たいという要望につながる。光反射率(RL)および反射における色に関するある美的基準にグレージングが適合することも望まれる。
【0017】
既にある程度の時間、建造物または乗り物への太陽エネルギーの伝達を減少させるために、全体が着色されたガラスが使用されている。着色グレージングは、種々の広く評価されている美的感覚が得られることに加えて、内部の加熱の原因となる赤外線の透過を減少させることができ(上記放射線は主としてガラスによって吸収される)、同時に可視光は透過させることができ、それによって選択性が示される。
【0018】
続いて、提案されている別の解決策は、透明、さらには超透明のガラスでできた基材上に多層ソーラーコントロールコーティング(場合により日射防止コーティングまたは日射防護コーティングとも呼ばれる)を使用することであった。これらの多層ソーラーコントロールスタックによって、可視光は透過し赤外線は反射するので、良好な選択性が得られる。周知のソーラーコントロールコーティングの例は、一般に、銀などの赤外線反射金属の複数の層を含み、これらの各層は、誘電体材料の透明反射防止層の間に挟まれる。この種類のスタックの選択性は、コーティング中に存在する赤外線反射層の数が増加すると増加し、それによって赤外線反射の向上が保証される。しかし、これらのソーラーコントロールコーティングでは、高い選択性だけでなく、快適な美的外観、角度的に安定な反射における中間色、および中程度の光反射率をも保証することは、依然として困難であることが分かっている。
【0019】
たとえば、これら2つの解決策の組合せ(全体が着色された基材およびソーラーコントロール層)によって、グレージングの選択性の対応する改善を得ることが考えられたが、赤外線は着色ガラスを2回通過し(1回目は太陽から内部まで、2回目はソーラーコントロール層から反射した後に外部へ)、着色ガラスは2倍多くの赤外線を吸収し、その一部は内部に向かって放出され、さらに場合により破壊が生じるまで加熱される危険性があることが分かった。次に、解決策の1つは、熱的破壊に抵抗するためにガラスを強化することであるが、これは費用がかかり制約のあるさらなるステップとなる。
【0020】
したがって、特に着色されている、または低光透過率であり、ガラス側(すなわち、搭載後、建造物/乗り物の外部から見える側)からの低い外部光反射率を有し、反射における色の角度依存性がより低く、熱的加熱による破壊を防止するための強化が不要である、高選択的積層グレージングの提供が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0021】
本発明の請求項1による積層グレージングによって、必要な光学的性質のこれらの組合せを実現することができ、別の利点を得ることができることを発見し、従属請求項は好ましい実施形態を示している。
具体的には、本発明は、以下の(1)~(11)の構成を有する。
(1)赤外線反射層で被覆された透明基材を含む積層グレージングであって、前記基材がガラスであって、その組成が15%未満のレドックスを有し、780~2500nmの間でRIRV≧1.087*TLV(TLVは380~780nmの間の前記ガラスの光透過率である)となる赤外線反射率RIRVを特徴とするガラスであり、前記赤外線反射層は、380~780nmの間でTLC≧1.3*TIRC(TIRCは780~2500nmの間の前記層の赤外線透過率である)となる光透過率TLCを特徴とすることを特徴とする積層グレージング。
(2)前記基材が、RIRV≧1.087*TLV+5となる赤外線反射率RIRVを特徴とするガラスであることを特徴とする(1)に記載の積層グレージング。
(3)前記基材が、RIRV≧0.510*TLV+53となる赤外線反射率RIRVを特徴とするガラスであることを特徴とする(1)または(2)に記載の積層グレージング。
(4)前記基材の前記ガラスが、ガラスの全重量に対するパーセント値で表される含有量で:
全鉄(Fe2O3の形態で表される) 0.002~0.06%;
Cr2O3 0.0001~0.06%
を含む組成を有することを特徴とする(1)~(3)のいずれか一項に記載の積層グレージング。
(5)前記基材の前記ガラスが、ガラスの全重量に対するパーセント値で表される含有量で:
全鉄(Fe2O3の形態で表される) 0.002~0.06%;
Cr2O3 0.0015~1%;
Co 0.0001~1%
を含む組成を有することを特徴とする(1)~(3)のいずれか一項に記載の積層グレージング。
(6)前記基材の前記ガラスが、ガラスの全重量に対するパーセント値で表される含有量で:
全鉄(Fe2O3の形態で表される) 0.02~1%;
Cr2O3 0.002~0.5%;
Co 0.0001~0.5%
を含む組成を有することを特徴とする(1)~(3)のいずれか一項に記載の積層グレージング。
(7)前記基材の前記ガラスが、ガラスの全重量に対するパーセント値で表される含有量で:
全鉄(Fe2O3の形態で表される) 0.002~1%;
Cr2O3 0.0010~0.5%;
Co 0.0001~0.5%;
Se 0.0003~0.5%
を含む組成を有することを特徴とする(1)~(3)のいずれか一項に記載の積層グレージング。
(8)前記赤外線反射層が、0.5*(1-AIRC)を超える赤外線反射率RIRCを特徴とすることを特徴とする(1)~(7)のいずれか一項に記載の積層グレージング。
(9)前記赤外線反射層が、0.76*(1-AIRC)を超える赤外線反射率RIRCを特徴とすることを特徴とする(1)~(8)のいずれか一項に記載の積層グレージング。
(10)前記赤外線反射層が、赤外線反射材料を主成分とするn層の機能性層(ここでn≧1である)と、n+1の誘電体コーティングとを含み、各機能性層に誘電体コーティングが隣接する多層スタックであることを特徴とする(1)~(9)のいずれか一項に記載の積層グレージング。
(11)前記赤外線反射層の1つ以上の機能性層が銀を主成分とすることを特徴とする(1)~(10)のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【0022】
本発明の主題は、特に、赤外線反射層で被覆された透明基材を含む積層グレージングであって、基材が、RIRV≧1.087*TLVとなる赤外線反射率RIRVを特徴とするガラスであり、赤外線反射層がTLC≧1.3*TIRCとなる光透過率TLCを特徴とすることを特徴とする積層グレージングである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
このように、本発明により提供される解決策は、少なくとも反直観的であるが、その理由は、選択性が改善されるか、または少なくとも所望の用途に十分となるグレージングを得るために、それ自体は非選択的であるガラスと選択的コーティングを関連づける必要があることが実証されるからである。特に、従来、選択的ガラスの(美的理由、ソーラーコントロールの理由、またはその他のあらゆる理由での)光透過率の低下は、RIRVの大幅な低下と常に関連することが分かった。対照的に、本発明によるグレージングは、非常に有利な赤外線反射率を維持しながら、より低い光透過率を実現することができる。さらに、あらゆる赤外線反射層が本発明の目的を実現するために等しく適切となるわけではなく、吸収ではなく主として反射によって赤外線を遮断する層が必要となることが分かった。
【0024】
したがって、本発明による基材を組み込んでいるグレージングを、本発明による赤外線反射コーティングと組み合わせることで、以下の利点の1つ以上を有する積層グレージングを提供し得る:
・グレージングが、低光透過率のガラスでできた基材を含む場合でさえも高い選択性、
・RIRV<1.087*TLVとなる赤外線反射率RIRVを有する従来技術の同じ光透過率のガラス上に堆積された同じコーティングを組み込んでいるグレージングに関して改善された選択性、
・建造物または乗り物の内部まで透過するエネルギーの減少(日射透過率の減少)、したがってそれらの内部のより少ない加熱、
・同等の日射透過率における、グレージングの加熱の制限(吸収の減少)、破壊の危険性の減少、および強化の必要性の減少、
・種々の美的感覚および色、
・特定の光透過率および/または特定の選択性の場合の、外部の光の反射の減少、したがって建造物または乗り物の外部から見られる反射的外観の減少、
・着色ガラスでできた基材による、選択性などの性質に影響を与えることなく、コーティングによって得られる外部の反射における色の調整の可能性、
・選択性などの性質に影響を与えることなく、カーテンウォール中のグレージングの位置、または乗り物中のグレージングの設置角度とは無関係に、外部の反射における色のより少ない角度依存性、したがって、建造物のカーテンウォールまたは乗り物のグレージングの色のより均一な外観。
【0025】
前述のように、吸収と、建造物または乗り物の内部に向かって再放出されるエネルギーは厚さとともに増加するので、これらの利点の有益性は、厚いガラスでできた基材の場合にさらに大きくなる。太陽が空の非常に高い位置にあり、および/または比較的垂直となる位置でグレージングを透過するその光線の経路がより長くなる状況でも、同じことが言える。
【0026】
好ましくは、本発明による基材は、RIRV≧1.087*TLV+5、より好ましくはRIRV≧1.087*TLV+10、さらにより好ましくはRIRV≧1.087*TLV+15となる赤外線反射率RIRVを特徴とするガラスである。
【0027】
あるいは、本発明による基材は、RIRV≧1.141*TLV、より好ましくはRIRV≧1.196*TLV、さらにより好ましくはRIRV≧1.250*TLVとなる赤外線反射率RIRVを特徴とするガラスである。
【0028】
また、あるいは、本発明による基材は、RIRV≧1.033*TLV+5またはRIRV≧1.033*TLV+10またはRIRV≧1.033*TLV+15、あるいはRIRV≧0.978*TLV+10またはRIRV≧0.978*TLV+15またはRIRV≧0.978*TLV+20、あるいはさらにはRIRV≧0.924*TLV+15またはRIRV≧0.924*TLV+20またはRIRV≧0.870*TLV+20となる赤外線反射率RIRVを特徴とするガラスである。
【0029】
有利には、本発明による基材は、91%未満、90%未満、89%未満、88%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、または50%未満の光透過率TLVを特徴とするガラスである。有利には、本発明による基材は、50%を超える、75%を超える、80%を超える、85%を超える、90%を超える、95%を超える、97%を超える、98%を超える、または99%を超える赤外線反射率RIRVを特徴とするガラスである。本発明によって規定される範囲内のTLVおよびRIRVの選択は、主としてガラスの色によって異なり、最終的なグレージングに望まれる外観およびエネルギー特性と関連性がある。
【0030】
有利な一実施形態によると、本発明による基材は、RIRV≧0.510*TLV+53またはRIRV≧0.490*TLV+55、より好ましくはRIRV≧0.435*TLV+60またはRIRV≧0.380*TLV+65、さらにより好ましくはRIRV≧0.326*TLV+70となる赤外線反射率RIRVを特徴とするガラスである。
【0031】
好ましくは、本発明による透明基材は、TLV>85%およびRIRV>98%、またはTLV>87%およびRIRV>98.5%、またはさらにはTLV>88%およびRIRV>99%を特徴とするガラスである。
【0032】
好ましくは、本発明による着色基材は、最も明るいものから最も暗いものまで、TLV<80%およびRIRV>87%、またはTLV<70%およびRIRV>80%、またはTLV<50%およびRIRV>60%、またはさらにはTLV<30%およびRIRV>40%を特徴とするガラスである。
【0033】
本発明による基材は、種々の分類に属しうるガラスでできている。たとえばガラスは、ソーダ石灰シリカ型、アルミノケイ酸塩型、またはホウケイ酸塩型などのガラスであってよい。好ましくは、ガラスの基本組成は、ガラスの全重量に対するパーセント値で表される含有量で:
SiO2 55~85%
Al2O3 0~30%
B2O3 0~20%
Na2O 0~25%
CaO 0~20%
MgO 0~15%
K2O 0~20%
BaO 0~20%
を含む。
【0034】
より好ましくは、ガラスの基本組成は、ガラスの全重量に対するパーセント値で表される含有量で:
SiO2 55~78%
Al2O3 0~18%
B2O3 0~18%
Na2O 0~20%
CaO 0~15%
MgO 0~10%
K2O 0~10%
BaO 0~5%
を含む。
【0035】
最も好ましくは、製造コストを低下させる理由で、本発明によるガラス基材はソーダ石灰シリカガラスでできている。有利には、この実施形態によると、ガラスの基本組成は、ガラスの全重量に対するパーセント値で表される含有量で:
SiO2 60~75%
Al2O3 0~6%
B2O3 0~4%
CaO 0~15%
MgO 0~10%
Na2O 5~20%
K2O 0~10%
BaO 0~5%
を含む。
【0036】
その基本組成に加えて、ガラスは、求められる効果に合わせた性質および量の別の成分を含むことができる。
【0037】
赤外RIRvにおいて非常に高い反射率を有するガラスを得るために本発明において提案される解決策の1つは、特定の含有量範囲内のクロムをガラス組成中に使用することにある。
【0038】
したがって、第1の実施形態によると、ガラスは、有利には、ガラスの全重量に対するパーセント値で表される含有量で:
全鉄(Fe2O3の形態で表される) 0.002~0.06%;
Cr2O3 0.0001~0.06%
を含む組成を有する。
【0039】
少ない鉄およびクロムの含有量を併せ持つこのようなガラス組成は、赤外線反射率RIRvに関して特に良好な性能を示しており、「超透明」ガラスと呼ばれるものに近い高い透明性を可視領域で示し、あまり強くない着色を示す。これらの組成は、国際特許出願の国際公開第2014128016A1号パンフレット、国際公開第2014180679A1号パンフレット、国際公開第2015011040A1号パンフレット、国際公開第2015011041A1号パンフレット、国際公開第2015011042A1号パンフレット、国際公開第2015011043A1号パンフレット、および国際公開第2015011044A1号パンフレットに記載されており、これらは参照により本特許出願に援用される。この第1の特定の実施形態によると、組成は、好ましくは、ガラスの全重量を基準として0.002重量%~0.06重量%の範囲のクロム含有量(Cr2O3の形態で表される)を含む。このようなクロム含有量によって、赤外線反射率RIRvをさらに完全することができる。
【0040】
第2の実施形態によると、ガラスは、ガラスの全重量に対するパーセント値で表される含有量で:
全鉄(Fe2O3の形態で表される) 0.002~0.06%;
Cr2O3 0.0015~1%;
Co 0.0001~1%
を含む組成を有する。
【0041】
クロムおよびコバルトを主成分とするこのようなガラス組成は、赤外線反射率RIRvに関して特に良好な性能が示されており、同時に美的感覚/色に関して有利な可能性(青みを帯びた淡い色から強い色相またはさらには不透明まで)が得られている。このような組成は、参照により本特許出願に援用される欧州特許出願第13 198 445.4号明細書に記載されている。
【0042】
第3の実施形態によると、ガラスは、ガラスの全重量に対するパーセント値で表される含有量で:
全鉄(Fe2O3の形態で表される) 0.02~1%;
Cr2O3 0.002~0.5%;
Co 0.0001~0.5%
を含む組成を有する。
【0043】
好ましくは、この実施形態によると、組成は、0.06%<全鉄≦1%を含む。
【0044】
クロムおよびコバルトを主成分とするこのような組成によって、青色-緑色の範囲の色のガラス板を得ることができ、これらは色および光透過率に関しては市販の青色および緑色ガラスと同等であるが、赤外線反射に関しては特に良好な性能を示す。このような組成は、参照により本特許出願に援用される欧州特許出願第15172780.7号明細書に記載されている。
【0045】
第4の実施形態によると、少なくとも第1の外側のガラス板は、ガラスの全重量に対するパーセント値で表される含有量で:
全鉄(Fe2O3の形態で表される) 0.002~1%;
Cr2O3 0.001~0.5%;
Co 0.0001~0.5%;
Se 0.0003~0.5%
を含む組成を有する。
【0046】
クロム、コバルト、およびセレンを主成分とするこのようなガラス組成は、赤外線反射に関して特に良好な性能が示されており、同時に美的感覚/色に関して有利な可能性(灰色の淡い色から、灰色-ブロンズ色の範囲の弱い色相、さらには強い色相まで)が得られている。このような組成は、参照により本特許出願に援用される欧州特許出願第15172779.9号明細書に記載されている。
【0047】
クロムとは別に、非常に高い赤外線反射率RIRvを有するガラスを得るために特定の含有量で1種類以上の成分を使用する別の解決策も本発明により提案される。
【0048】
第1の別の実施形態によると、ガラスは、ガラスの全重量に対するパーセント値で表される含有量で:
全鉄(Fe2O3の形態で表される) 0.002~0.06%;
CeO2 0.001~1%
を含む組成を有する。
【0049】
このような組成は、参照により本特許出願に援用される欧州特許出願第13 193 345.9号明細書に記載されている。
【0050】
別の一実施形態によると、ガラスは、ガラスの全重量に対するパーセント値で表される含有量で:
全鉄(Fe2O3の形態で表される) 0.002~0.06%と;
以下の成分:
- 0.01~1重量%の範囲の含有量のマンガン(MnOの形態で表される);
- 0.01~1重量%の範囲の含有量のアンチモン(Sb2O3の形態で表される);
- 0.01~1重量%の範囲の含有量のヒ素(As2O3の形態で表される);
または
- 0.0002~0.1重量%の範囲の含有量の銅(CuOの形態で表される)
の1つとを含む組成を有する。
【0051】
このような組成は、参照により本特許出願に援用される欧州特許出願第14 167 942.3号明細書に記載されている。
【0052】
さらに別の一実施形態によると、ガラスは、ガラスの全重量に対するパーセント値で表される含有量で:
全鉄(Fe2O3の形態で表される) 0.002~0.04%と;
クロム、セレン、銅、セリウム、マンガン、およびアンチモンからの少なくとも2つの成分とを含む組成を有し;クロム(Cr2O3の形態で表される)は0.02重量%の最大含有量であり;セレン(Seの形態で表される)は0.08重量%最大含有量であり;銅(CuOの形態で表される)は0.04重量%の最大含有量であり;セリウム(CeO2の形態で表される)は0.8重量%の最大含有量であり;マンガン(MnOの形態で表される)は1.6重量%の最大含有量であり;アンチモン(Sb2O3の形態で表される)は0.8重量%の最大含有量であり;上記組成は式:
A≦[10.02*(Cr2O3/Fe2O3)+4*(Se/Fe2O3)+2.73*(CuO/Fe2O3)+0.7*(CeO2/Fe2O3)+0.23*(MnO/Fe2O3)+0.11*(Sb2O3/Fe2O3)]
を満たし;Aは0.30である。
【0053】
このような組成は、参照により本特許出願に援用される欧州特許出願第14 177 487.7号明細書に記載されている。
【0054】
本発明によると、ガラス基材の組成は15%未満のレドックスを有する。好ましくは、レドックスは10%未満、または5%未満、またはさらには3%未満である。ガラスの酸化度は、ガラス中に存在するFe
2+原子と鉄原子の全重量との重量比Fe
2+/全Feとして定義されるレドックスによって示される。同様に、レドックスは、Fe
2O
3の形態の第一鉄(Fe
2+)の重量および全鉄の重量を表すことによって計算することもできる。あるいは、レドックスは場合により、FeOの形態で表される第一鉄(Fe
2+)のFe
2O
3の形態で表される全鉄に対する重量比として表される。この場合、以下の関係によって一方の表現から他方の表現に変換することができる。
【0055】
本発明による赤外線反射層は、好ましくはTLC≧1.35*TIRC、TLC≧1.4*TIRC、またはTLC≧1.5*TIRC、より好ましくはTLC≧1.75*TIRC、TLC≧1.9*TIRC、またはTLC≧1.95*TIRC、さらにより好ましくはTLC≧2*TIRCとなる光透過率TLCを特徴とすることができる。
【0056】
この層は、有利には、0.5*(1-AIRC)を超える、または0.6*(1-AIRC)を超える、またはより好ましくはさらに0.76*(1-AIRC)を超える、または0.86*(1-AIRC)を超える、または0.9*(1-AIRC)を超える、または0.95*(1-AIRC)を超える、または0.96*(1-AIRC)を超える、または0.97*(1-AIRC)を超える、または0.98*(1-AIRC)を超える、または0.99*(1-AIRC)を超える赤外線反射率RIRCを特徴とすることができる。
【0057】
RIRC>0.5*(1-AIRC)およびRIRC≦0.76*(1-AIRC)の範囲内では、同じTLVの従来技術のガラスでできた基材が使用される状況と比較して、あらゆる状況で日射透過率が必ずしも低下するわけではない。しかし、建造物または乗り物の内部に熱を伝達するために温度差および/または気流が好都合となる状況においては、この範囲が依然として有用である。
【0058】
RIRC>0.76*(1-AIRC)の範囲内では、日射透過率は、同じTLVの従来技術のガラスでできた基材が使用される場合よりも低く、したがって内部に伝達されるエネルギー量が減少し、グレージングの選択性が増加する。
【0059】
これら2つの範囲内において、グレージングの加熱の制限、種々の美的感覚および色、減衰した外部の光の反射、外部反射における色の調整、および/または外部反射の色のより少ない角度依存性などの本発明による別の利点が存在する。
【0060】
あるいは、本発明によるガラスとともに、50%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満のTIRCを有する層を使用すると有利となる場合がある。
【0061】
有利には、これらに用途に使用される赤外線反射層は、赤外線反射材料を主成分とするn層の機能性層(n≧1)と、n+1の誘電体コーティングとを含み、各機能性層に誘電体コーティングが隣接する多層スタックである。
【0062】
赤外線反射層の一部を形成する機能性層は、有利には貴金属で形成される。これらは銀、金、パラジウム、白金、またはそれらの混合物もしくは合金を主成分とすることができるが、銅またはアルミニウム単独、それらが合金化したもの、またはそれらと1種類以上の貴金属との合金を主成分とするものであってもよい。好ましくは、すべての機能性層が銀を主成分とする。これは赤外線反射の効果が非常に高い貴金属である。これはマグネトロン装置中に容易に実装され、特にその効率に対しては、その原価が高すぎることはない。有利には、銀は、数パーセント、たとえば1~10質量%の量のパラジウム、アルミニウム、または銅がドープされ、または銀合金の使用も可能である。
【0063】
赤外線反射層の一部を形成する透明誘電体コーティングは、陰極スパッタリングによって堆積される層の分野においてよく知られている。多くの適切な材料が存在し、本明細書においてそれらの完全な一覧を示す理由は存在しない。これらは一般に、金属の酸化物、酸窒化物、または窒化物である。最も一般的なものの中では、例として、SiO2、TiO2、SnO2、ZnO、ZnAlOx、Si3N4、AlN、Al2O3、ZrO2、Nb2O5、YOx、TiZrYOx、TiNbOx、HfOx、MgOx、TaOx、CrOx、およびBi2O3、ならびにそれらの混合物を挙げることができる。AZO、ZTO、GZO、NiCrOx、TXO、ZSO、TZO、TNO、TZSO、TZAO、およびTZAYOの材料を挙げることもできる。AZOという用語は、好ましくは中性雰囲気下またはわずかに酸化性の雰囲気下のいずれかで堆積、スパッタリングされる酸化物によって形成されるセラミックターゲットから得られる、アルミニウムがドープされた酸化亜鉛、または亜鉛およびアルミニウムの混合酸化物を意味する。同様に、ZTOまたはGZOという語句は、それぞれ、中性雰囲気下またはわずかに酸化性の雰囲気下のいずれかでセラミックターゲットから得られる、チタンおよび亜鉛、または亜鉛およびガリウムの混合酸化物を意味する。TXOという語句は、セラミック酸化チタンターゲットから得られる酸化チタンを意味する。ZSOという語句は、酸化性雰囲気下で堆積される合金の金属ターゲットから、または中性雰囲気下もしくはわずかに酸化性の雰囲気下のいずれかで対応する酸化物のセラミックターゲットから得られる混合亜鉛スズ酸化物を意味する。TZO、TNO、TZSO、TZAO、またはTZAYOという語句は、それぞれ、中性雰囲気下またはわずかに酸化性の雰囲気下のいずれかでセラミックターゲットから得られる、チタン-ジルコニウム、チタン-ニオブ、チタン-ジルコニウム-スズ、チタン-ジルコニウム-アルミニウム、またはチタン-ジルコニウム-アルミニウム-イットリウムの混合酸化物を意味する。上記のすべての材料を、本発明に使用される誘電体コーティングの形成に使用することができる。
【0064】
好ましくは、誘電体コーティングの下、または各機能性層の下に配置される誘電体コーティングは、場合によりアルミニウムまたはガリウムがドープされた、または酸化スズと合金化された酸化亜鉛を主成分とする層を、1つ以上の機能性層に直接接触して含む。酸化亜鉛は、特に銀を主成分とする場合には、機能性層の安定性と腐食に対する抵抗性とに関して特に望ましい効果を有しうる。これは、銀を主成分とする層の導電性の改善、したがって低放射率の実現にも好都合である。
【0065】
スタックの種々の層は、たとえば、周知のマグネトロン装置中での低圧マグネトロン陰極スパッタリングによって堆積される。しかし本発明は、この特定の層堆積プロセスに限定されるものではない。
【0066】
本発明による積層グレージングは、接着性プラスチック材料、一般にPVBによってガラス質材料の板と接合された前述のような少なくとも1つの透明基材を含む。これらは建造物中または自動車中のグレージングとして使用することができる。自動車用グレージングの分野では、これらは、たとえばウインドシールドとして使用することができるが、サイドウィンドウ、屋根、またはウインドシールドなどの乗り物の別のグレージングに使用することもできる。
【0067】
本発明による積層グレージングは、単一グレージングとして使用することができるし、または積層グレージングが、場合によりコーティングが設けられた1枚以上の別のガラス板と関連する三重または二重グレージングなどの多重グレージングを組み立てることもでき、積層グレージングは、多重構造の外側に最も近くなるように配置される。したがって、建造物または乗り物に搭載される場合、太陽放射線は、最初に、層のない側の被覆ガラス板に到達し、次に赤外線反射層、次に接着性スペーサーシート、次に第2のガラス板、次に場合により、二重グレージングが対象となる場合は、別のガラス板に到達するように、積層グレージングが配置される。したがって、赤外線反射層は、一般に使用される慣習によると、位置2に存在する。太陽からの保護が最も有効となるのはこの位置である。
【実施例】
【0068】
例として、本発明による実施例1~18および本発明によらない比較例C1~C24を参照しながら、これより本発明の特定の実施形態を記載する。
【0069】
実施例および比較例に使用されるガラスの主要な性質を表Iaに示す。SiO2を除いたこれらの組成は、重量%で表Ibに示される。表IIには、関係TLC≧1.3*TIRCを満たす本発明による赤外線反射層が示され、一方、表IIIには、関係TLC≧1.3*TIRCを満たさない選択的な赤外線反射層の例(比較例と記載される)が示される。
【0070】
表IIおよびIII中、
- ZSO5は、亜鉛-スズの比率が50~50重量%(Zn2Sn2O4)付近である亜鉛-スズ混合酸化物を表し、
- SiNは窒化ケイ素を表し、
- TZOは、酸化チタンおよび酸化ジルコニウム比率が65~35重量%付近であるチタン-ジルコニウム混合酸化物を表す。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
以下の表中、他に示されない限り、外側から、厚さ6mm(厚さが8mmである比較例C1、C2、C3を除く)の被覆された第1のガラス基材(位置2の層)、厚さ0.76mmのPVBフィルム、および厚さ4mmの「中間鉄」ガラスと呼ばれる第2のガラスを含む積層グレージングについて測定が行われる。光透過率(TL)、光反射率(RL)、日射透過率(SF)、選択性(選択=TL/SF)、吸収(Abs)に関する性質は、他に示されない限り、規格のISO9050:2003に準拠して、光源D、2°の下で得られる。L*、a*、b*の色は、1976年にCommission internationale de l’eclairage(CIE)によって規定されたCIE Labモデルに準拠して、光源D、10°の下で、透過(T)および反射(R)において得られる。吸収(Abs)は、完成した積層グレージングのエネルギー吸収である。
【0076】
【0077】
【0078】
実施例1~18および比較例C1~C18
本発明による種々の層を、一部は、本発明によらず(comp-で示される)、それらの光透過率TLVの1.087倍未満の赤外線反射率RIRVを有し、他のものは、本発明により(inv-で示される)、それらの光透過率TLVの1.087倍以上の赤外線反射率RIRVを有する、さまざまなガラスと組み合わせた。積層グレージングの光透過率および反射率、透過および反射における色、日射透過率、選択性、ならびに全吸収のシミュレーションによる値を表Aに示す。
【0079】
これらの結果は、RIRV≧1.087*TLVとなる赤外線反射率を有するガラスと、関係TLC≧1.3*TIRCを満たす層との組合せを使用すると、同等のTLにおいて、日射透過率が低下するか、または日射透過率が少なくとも同等もしくはわずかに増加し、同時により少ない吸収が得られることを示している。したがってこれらの組合せは、ソーラーコントロールまたは日射防止グレージングに有利に使用することができる。
【0080】
層A、B、またはCを含む例から、RIRV≧1.087*TLVとなる赤外線反射率を有するガラスと、関係TLC≧0.76*TIRCを満たす層との組合せを使用すると、同等のTLにおいて、日射透過率の低下と同時により少ない吸収がすべての状況で得られることが示される。
【0081】
さらに層Dを含む例から、RIRV≧1.087*TLVとなる赤外線反射率を有するガラスと、RIRC>0.5*(1-AIRC)およびRIRC≦0.76*(1-AIRC)の範囲内の赤外線反射率RIRCを特徴とする層との組合せを使用すると、同等のTLにおいて、ある状況では許容される日射透過率のごくわずかな増加(最大約5%の増加)が得られるが、これはある状況では許容できるが、この場合もより少ない吸収の利点が得られることが示される。
【0082】
比較例C19~C24
本発明によらない層を種々のガラスと組み合わせており、その一部のガラスは本発明によらないものであり(comp-で示される)、他のガラスは本発明によるものであった(inv-で示される)。積層グレージングの光透過率および反射率、透過および反射における色、日射透過率、選択性、ならびに吸収のシミュレーションによる値を表Bに示す。
【0083】
これらの比較例は、RIRV≧1.087*TLVとなる赤外反射率を有するガラスと、関係TLC≧1.3*TIRCを満たさない層との組合せを使用すると、同等のTLにおいて、日射透過率の明らかな増加(約20%の増加)および選択性の明らかな低下が生じることが示され、このため、このようなグレージングはソーラーコントロール用途には適さない。