(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】圧電トランスデューサの高分解能検知
(51)【国際特許分類】
G01L 1/16 20060101AFI20220311BHJP
【FI】
G01L1/16 G
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021065840
(22)【出願日】2021-04-08
【審査請求日】2022-01-13
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519338245
【氏名又は名称】ボレアス テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シモン シャプット
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-537577(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2299596(EP,A1)
【文献】国際公開第2016/175986(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0306481(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00- 1/26
G01L 5/00- 5/28
H01L41/00-41/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の寄生伝導経路を有する第1のスイッチを含む圧電ドライバ回路を有する圧電トランスデューサを動作させる方法であって、
第1の圧電トランスデューサに印加された第1の力によって生成された第1の検知電圧を繰り返し検知するステップと、
前記第1の検知電圧が前記第1の寄生伝導経路の第1のトリガ・レベルに近づくたびに、前記第1の検知電圧を放電し、それによって複数の第1の電圧セグメントを生成するステップと、
前記複数の第1のセグメント電圧から前記第1の圧電トランスデューサの両端の第1の合計検知電圧を判定するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1のトリガ・レベルに基づいて、前記第1の検知電圧を第1の閾値電圧と比較するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記判定するステップが、
前記第1の検知電圧が前記第1の閾値電圧に達するたびに、前記複数の第1の電圧セグメントのうちの1つのデジタル表現を生成するステップと、
前記第1の検知電圧が前記第1の閾値電圧に達するたびに、各デジタル表現で第1の累積和を更新するステップと、
前記第1の累積和から、前記第1の圧電トランスデューサの両端の前記第1の合計検知電圧を判定するステップと
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記判定するステップが、
前記第1の検知電圧が検知されるたびに、各第1の検知電圧の中間デジタル表現を生成するステップと、
前記第1の累積和及び前記中間デジタル表現から、前記第1の圧電トランスデューサの両端の前記第1の合計検知電圧を判定するステップと
をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記圧電ドライバ回路の前記第1のスイッチが、前記第1の寄生伝導経路を含むドライバ回路スイッチを備え、前記方法が、前記第1の圧電トランスデューサに対する力又は変位の応答を生成するために前記第1の圧電トランスデューサに駆動電圧を送るステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の検知電圧が検知されるたびに、各第1の検知電圧の中間デジタル表現を生成するステップをさらに含み、
前記駆動電圧を送る前記ステップが、前記第1の合計検知電圧に前記中間デジタル表現を加えた和が所定の作動レベルよりも大きいときに前記駆動電圧を送るステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記圧電ドライバ回路が、第2の寄生伝導経路を有する第2のスイッチを含み、
前記方法が、
前記第2の寄生経路の第2のトリガ・レベルに基づいて、前記第1の検知電圧を第2の閾値電圧と比較するステップと、
前記第1の検知電圧が前記第2の閾値電圧に達するたびに、前記第1の検知電圧を放電し、それによって複数の第2の電圧セグメントを生成するステップと、
前記複数の第2のセグメント電圧から、前記第1の圧電トランスデューサの両端の第2の合計検知電圧を判定するステップと
をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記圧電ドライバ回路がまた、第2の圧電トランスデューサの両端に駆動電圧を選択的に送るように構成され、
前記ドライバ回路が前記第2の圧電トランスデューサの両端に前記駆動電圧を送っている間に、前記第1の圧電トランスデューサの両端の前記第1の合計検知電圧を判定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
第2の圧電トランスデューサに印加された第2の力によって生成された第2の検知電圧を検知するステップと、
前記第2の圧電トランスデューサの第2の寄生経路の第2のトリガ・レベルに基づいて、前記第2の検知電圧を第2の閾値電圧と比較するステップと、
前記第2の検知電圧が前記第2の閾値電圧に達するたびに、前記第2の検知電圧を放電し、それによって複数の第2の電圧セグメントを生成するステップと、
前記複数の第2の電圧セグメントから、前記第2の圧電トランスデューサの両端の第2の合計検知電圧を判定するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の検知電圧が第1の検知スイッチからの第3の寄生伝導経路の第3のトリガ・レベルに近づくたびに、前記第1の検知スイッチで前記第1の検知電圧を放電し、複数の第1のセグメント電圧を生成するステップと、
前記第2の検知電圧が第2の検知スイッチからの第4の寄生伝導経路の第4のトリガ・レベルに近づくたびに、前記第2の検知スイッチで前記第2の検知電圧を放電し、複数の第2のセグメント電圧を生成するステップと
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記圧電ドライバ回路が前記第1の圧電トランスデューサに駆動電圧を送っている間に、前記第2の圧電トランスデューサの両端の前記第2の合計検知電圧を判定することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
入力電圧を提供する電圧源に結合するように構成され、第1の圧電トランスデューサの両端に駆動電圧を送るように構成されている、前記第1の圧電トランスデューサを動作させるための装置であって、
前記第1の圧電トランスデューサに接続されるように構成されている、第1の寄生伝導経路を含む第1のドライバ回路スイッチを備えるドライバ回路であって、前記入力電圧を受け取り、前記第1の圧電トランスデューサに対する力又は変位の応答を生成するために前記駆動電圧を送るように構成されている、ドライバ回路と、
前記第1の圧電トランスデューサに印加された第1の力によって生成された第1の検知電圧を検知するように構成され、第1の検知スイッチを含む検知回路と、
前記第1のドライバ・スイッチ及び前記第1の検知スイッチを制御して、前記第1の検知電圧が前記第1の寄生伝導経路の第1のトリガ・レベルに近づくたびに、前記第1の検知電圧を放電し、複数の第1のセグメント電圧を生成するように構成され、前記複数の第1のセグメント電圧から前記第1の圧電トランスデューサの両端の第1の合計検知電圧を判定するように構成されている、コントローラと
を備える、装置。
【請求項13】
前記コントローラがまた、前記第1のトリガ・レベルに基づいて、前記第1の検知電圧を第1の閾値電圧と比較するように構成されている、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記コントローラがまた、
前記第1の検知電圧が前記第1の閾値電圧に達するたびに、前記複数の第1の電圧セグメントのうちの1つのデジタル表現を生成し、
前記第1の検知電圧が前記第1の閾値電圧に達するたびに、各デジタル表現で第1の累積和を更新し、
前記第1の累積和から、前記第1の圧電トランスデューサの両端の前記第1の合計検知電圧を判定する
ように構成されている、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記コントローラがまた、
前記第1の検知電圧が検知されるたびに、各第1の検知電圧の中間デジタル表現を生成し、
前記第1の累積和及び前記中間デジタル表現から、前記第1の圧電トランスデューサの両端の前記第1の合計検知電圧を判定する
ように構成されている、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記コントローラがまた、
前記第1の検知電圧が検知されるたびに、各第1の検知電圧の中間デジタル表現を生成し、
前記第1の累積和を含む前記第1の合計検知電圧に前記中間デジタル表現を加えた和が所定の作動レベルよりも大きいときに前記駆動電圧を送る
ように構成されている、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記ドライバ回路が、第2の寄生伝導経路を有する第2のドライバ・スイッチを含み、
前記コントローラがさらに、
前記第2の寄生経路の第2のトリガ・レベルに基づいて、前記第1の検知電圧を第2の閾値電圧と比較し、
前記第1の検知電圧が前記第2の閾値電圧に達するたびに、前記第1の検知電圧を放電し、それによって複数の第2の電圧セグメントを生成し、
前記複数の第2のセグメント電圧から、前記第1の圧電トランスデューサの両端の第2の合計検知電圧を判定する
ように構成されている、請求項12に記載の装置。
【請求項18】
前記ドライバ回路が、前記駆動電圧を第2の圧電トランスデューサに送るように構成されている、第2の寄生伝導経路を有する第2のドライバ回路スイッチをさらに備え、
前記検知回路がまた、前記第2の圧電トランスデューサに印加された第2の力によって生成された第2の検知電圧を検知するように構成され、
前記検知回路が、前記第2の検知電圧が前記第2の寄生伝導経路の第2のトリガ・レベルに近づくたびに、前記第2の検知電圧を放電し、複数の第2のセグメント電圧を生成するように構成されている第2の検知スイッチを含み、
前記コントローラがまた、前記複数の第2のセグメント電圧から前記第2の圧電トランスデューサの両端の第2の合計検知電圧を判定するように構成されている、請求項12に記載の装置。
【請求項19】
前記コントローラがまた、
前記第1の検知スイッチを制御して、前記第1の検知電圧が前記第1の検知スイッチからの第3の寄生伝導経路の第3のトリガ・レベルに近づくたびに、前記第1の検知電圧を放電し、前記複数の第1のセグメント電圧を生成し、
前記第2の検知スイッチを制御して、前記第2の検知電圧が前記第2の検知スイッチからの第4の寄生伝導経路の第4のトリガ・レベルに近づくたびに、前記第2の検知電圧を放電し、前記複数の第2のセグメント電圧を生成する
ように構成されている、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記コントローラがまた、前記ドライバ回路が前記第2の圧電トランスデューサに前記駆動電圧を送っている間に、前記複数の第1のセグメント電圧から前記第1の圧電トランスデューサの両端の前記第1の検知電圧を判定するように構成されている、請求項19に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電トランスデューサ用又は電気活性トランスデューサ用のドライバ回路に関し、詳細には、圧電トランスデューサ用の高分解能検知を備えたドライバ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電効果を使用する従来の触覚フィードバック・システムでは、ドライバ回路が、高電圧信号を圧電トランスデューサに印加し、印加された高電圧信号に応答して、圧電トランスデューサが、ユーザに触覚を与えるのに十分な機械的運動を生成する。さらに、ユーザによって圧電トランスデューサに力が印加されると、検知回路が検知電圧信号を生成し、これにより、圧電トランスデューサがスイッチとして機能できるようになる。
【0003】
ドライバ回路と検知回路が同じ回路である場合、電力デバイスの相互接続から生じる複数の寄生効果に起因して、検知の正確さに対する制限が多く存在する。これらの制限は、多くの印加に対する検知の実行可能性を制限する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】欧州特許第3,065,029号明細書
【文献】米国特許第10,199,555号明細書
【文献】米国特許出願第16/136,347号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、圧電トランスデューサなどの任意の電気活性トランスデューサに高分解能検知ドライバ回路を提供することによって、従来技術の欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、第1の寄生伝導経路を有する第1のスイッチを含む圧電ドライバ回路を有する圧電トランスデューサを動作させる方法に関し、方法は、
第1の圧電トランスデューサに印加された第1の力によって生成された第1の検知電圧を繰り返し検知するステップと、
第1の検知電圧が第1の寄生伝導経路の第1のトリガ・レベルに近づくたびに第1の検知電圧を放電し、それによって複数の第1の電圧セグメントを生成するステップと、
複数の第1のセグメント電圧から第1の圧電トランスデューサの両端の第1の合計検知電圧を判定するステップと
を含む。
【0007】
本発明の別の態様は、入力電圧を提供する電圧源に結合するように構成され、第1の圧電トランスデューサの両端に駆動電圧を送るように構成された、第1の圧電トランスデューサを動作させるための装置に関し、装置は、
第1の圧電トランスデューサに接続されるように構成された、第1の寄生伝導経路を含む第1のドライバ回路スイッチを備えるドライバ回路であって、入力電圧を受け取り、第1の圧電トランスデューサに対する力又は変位の応答を生成するために駆動電圧を送るように構成された、ドライバ回路と、
第1の圧電トランスデューサに印加された第1の力によって生成された第1の検知電圧を検知するように構成され、第1の検知スイッチを含む検知回路と、
第1のドライバ・スイッチ及び第1の検知スイッチを制御して、第1の検知電圧が第1の寄生伝導経路の第1のトリガ・レベルに近づくたびに第1の検知電圧を放電し、複数の第1のセグメント電圧を生成するように構成され、複数の第1のセグメント電圧から第1の圧電トランスデューサの両端の第1の合計検知電圧を判定するように構成された、コントローラと
を備える。
【0008】
本発明について、その好ましい実施例を示す添付図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施例による圧電トランスデューサ・システムの概略図である。
【
図2A】本開示の一実施例による圧電トランスデューサ・ドライバ回路の概略図である。
【
図2B】本開示の一実施例による圧電トランスデューサ・ドライバ回路の概略図である。
【
図3】本発明の一実施例による圧電トランスデューサ・システムの概略図である。
【
図4】
図3の圧電トランスデューサ・システムの、検知/駆動アルゴリズムを実行しない場合の出力電圧対時間のグラフである。
【
図5】
図1又は
図3の圧電トランスデューサ・システムの、検知/駆動アルゴリズムを動作中の出力電圧対時間のグラフである。
【
図6】圧電トランスデューサを制御するためのアルゴリズムの流れ図である。
【
図7】本開示の別の実施例によるマルチチャネル圧電トランスデューサ・システムの概略図である。
【
図8】従来のマルチチャネル圧電トランスデューサ・システムの場合の、圧電検知電圧の電圧対時間のグラフである。
【
図9】
図7のマルチチャネル圧電トランスデューサ・システムの場合の、圧電検知電圧の電圧対時間のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本教示を、様々な実施例及び実例と共に説明しているが、本教示をそのような実施例に限定することを意図するものではない。それとは逆に、本発明は、当業者によって理解されるような様々な代替物及び均等物を包含する。
【0011】
図1は、駆動用、例えば、触覚フィードバック用のアクチュエータと、力検知用、例えばスイッチ又はレベル制御用のアクチュエータとの両方として、圧電トランスデューサP
1、又は電気活性高分子トランスデューサなどの何らかの他の形態のトランスデューサを使用することができる、圧電トランスデューサ・システム1を示す。典型的には、回路は、圧電トランスデューサP
1を駆動するか、又は圧電トランスデューサP
1に印加された力を検知するように設計される。同じシステム内で両方の機能を組み合わせる場合、及び/又は、複数の圧電トランスデューサを同時に動作させる場合、システムのドライバ・セクションの出力デバイス(トランジスタ)によって作成される寄生経路から問題が生じる。特許文献1(京セラ)に開示されているシステムなどの従来のシステムは、異なるモード間で切り替えて寄生経路を分離するために、駆動ユニット及び検知ユニットに加えて4つ又は5つのスイッチを必要とする。
【0012】
圧電トランスデューサ・システム1は、入力段3と、ドライバ段4と、増幅器バイアス/スイッチ制御5と、圧電トランスデューサP1又は何らかの他の電気活性トランスデューサを含む出力段6とを備える圧電トランスデューサ回路2を含む。圧電トランスデューサ回路2は、処理すべき電力が高いため、単一のチップで、又はディスクリート部品を使用して実装されてもよい。入力段3は、典型的には20Vから200Vの間の高電圧電圧源VHVを含むか、又はそれに接続されてもよく、それにより、ドライバ段4は、例えば、圧電トランスデューサP1の両端の、出力ノード13での出力電圧Vout、及び出力段6への出力電圧Voutとして、所望のドライバ電圧VDRを、VHVと、高電圧源VHVと同じ大きさ又は降下させた大きさのVrefとの間、例えば、典型的には20Vから80Vの間の値で、駆動するだけでよい。
【0013】
代替として、入力段3は、典型的には2Vから10Vの間、好ましくは3.6Vから5Vの、バッテリなどの低電圧源VINを含むか、又はそれに接続されてもよく、それにより、ドライバ段4は、入力電圧Vinをより高いピーク、例えば30V~60VのACドライバ電圧VDRに変換するための、電力変換器回路18も含む。電力変換器回路18は、複数のスイッチ、例えば、電力変換トランジスタ、並びに入力電圧Vinを所望のドライバ電圧VDRに増幅するためのインダクタ及びコンデンサなどの他の電気構成要素を備えてもよい。
【0014】
ドライバ段4は、1つ又は複数のドライバ段スイッチ、例えば、駆動電圧VDRを出力段6に選択的に送るために出力電圧Voutとして必要とされる駆動電圧VDRで出力ノード13をバイアスするように構成された、第1のドライバ・トランジスタQDR1及び第2のドライバ・トランジスタQDR2を含んでもよい。圧電トランスデューサP1の両端の出力ノード13と基準ノード20との間に延在する第2の駆動トランジスタQDR2はまた、ドライバ段4が圧電トランスデューサP1を作動させた後、出力ノード13を例えば元の0Vまで放電して、通常の検知を続行できるように構成されてもよい。
【0015】
増幅器バイアス/スイッチ制御5は、ドライバ段スイッチQDR、例えば、第1のスイッチQDR1及び第2のスイッチQDR2、並びに必要に応じて電力変換器スイッチのバイアスを制御するコントローラ50を備えてもよい。所望のシステム仕様を実現するように増幅器バイアス/スイッチ制御5を設計するには、多くの方法がある。コントローラ50はまた、例えばユーザによって圧電トランスデューサP1に外力が印加されたかどうかを判定するために、例えば出力ノード13からの出力電圧Voutを継続的に検知してもよい。具体的には、コントローラ50は、外力、及び出力電圧Voutとして測定された圧電トランスデューサP1からの結果として生じる検知電圧VSensが、作動レベルを超えるかどうかを判定し、その結果、コントローラ50は、ドライバ段4を作動させて、圧電トランスデューサP1にドライバ電圧VDRを送り、触覚応答、例えば、振動、並進、及び/又はノイズを生成する。出力電圧Voutは、出力ノード13と基準電圧Vrefとの間で測定された電圧であり、この電圧は、圧電トランスデューサ・システム1の現在の活動に応じて、検知電圧VSens及び/又はドライバ電圧VDRを含み得る。コントローラ50はまた、外界、例えば、スマート・ウォッチ、スマート・フォン、又はタブレットなどの、圧電トランスデューサ・システム1を組み込んだホスト電子デバイスからの外部命令信号に応答して、ドライバ段4を作動させて、圧電トランスデューサP1にドライバ電圧VDRを送り、触覚応答を生成してもよい。
【0016】
出力段6には、例えば1つ又は複数の圧電トランスデューサP1などの負荷15と並列に、圧電トランスデューサ回路2の出力、例えば駆動電圧信号VDRをフィルタリングするように構成されたパッシブ・フィルタ8が設けられてもよい。パッシブ・フィルタ8は任意選択であるが、システム1の高レベルの挙動を変更することなく使用することができる。パッシブ・フィルタ8は、負荷15に到達する前に、駆動電圧信号VDRの高周波成分を除去するために、ドライバ段4と負荷15との間に挿入されてもよい。パッシブ・フィルタ8は、特に、ドライバ段4がD級増幅器トポロジを使用する場合に有用である。
【0017】
基準電圧Vrefは、負荷15、例えば、圧電トランスデューサP1の電圧基準を表す。基準電圧Vrefは、接地又はシステム内の任意の他の都合の良い電圧、例えば、Vinとすることができる。
【0018】
増幅器バイアス/スイッチ制御5内に、又は増幅器バイアス/スイッチ制御5とは別に、高電圧保護回路9が含まれてもよく、高電圧保護回路9は、出力ノード13からの出力電圧Vout、すなわち、負荷15からの検知電圧信号VSens、及び/又はドライバ段4からのドライバ電圧VDRを、1つ又は複数のアナログ・デジタル変換器ADC17にとって適切な、例えば、安全な電圧レベルに適合させるか又はブロックする、電子アーキテクチャを備える。1つ又は複数のADC17は、出力電圧Vout、すなわち、検知電圧信号VSens及び/又は駆動電圧信号VDRを、デジタル表現に変換し、検知電圧信号VSens及び/又は駆動電圧信号VDRの大きさの対応するデジタル値を、増幅器バイアス/スイッチ制御5内のコントローラ50に伝達する。
【0019】
検知/駆動アルゴリズム10は、圧電トランスデューサ・システム1の一部として、又は別個のメモリ記憶デバイスとして、コンピュータ・ハードウェア又は非一時的メモリに記憶されたコンピュータ・ソフトウェアの形態とすることができ、検知/駆動アルゴリズム10により、様々な印加中に、検知電圧信号VSensが、圧電トランスデューサP1に直接接続された任意のドライバ・トランジスタQDR、例えば、第1のスイッチQDR1又は第2のスイッチQDR2のいずれかの寄生伝導経路をトリガする、例えばボディ・ダイオードを、順方向にバイアスする場合でも、増幅器バイアス/スイッチ制御5、具体的にはコントローラ50が、負荷、例えば、圧電トランスデューサP1の両端の検知電圧VSensを正確に検知することが可能になる。例えば、圧電トランスデューサP1の作動後の圧電トランスデューサP1への力の除去中、負の電圧、例えば-2Vの電圧が生成される可能性があり、これにより、ドライバ・トランジスタQDRのうちの少なくとも1つ、例えば第2のスイッチQDR2で寄生リークが生じ、特に、力及び結果として生じる検知電圧VSensが作動レベルを超える程度に大きい場合、コントローラ50が圧電トランスデューサP1に印加された力を正確に判定することができなくなる。
【0020】
したがって、出力ノード13からの出力電圧Vout、すなわち検知電圧VSensを繰り返しゼロにして、実際の検知電圧VSensを判定するために使用される電圧セグメントの編集を可能にするために、検知スイッチQSが設けられてもよい。例えば、検知スイッチ、例えば検知トランジスタQSは、コントローラ50に接続された制御端子、例えばゲートと共に、圧電トランスデューサP1、例えば出力ノード13と、基準電圧、例えばVref、Vin、又は接地との間に接続されてもよく、以下に詳細に開示するように、必要に応じて、圧電トランスデューサP1の両端の検知電圧VSensをゼロにする、すなわち、基準電圧Vrefまで放電することを可能にする。第2のドライバ・スイッチQDR、又は圧電トランスデューサ・システム1にすでに設けられている何らかの他の適切なスイッチ、例えばトランジスタを、検知スイッチQSとして使用することもできる。
【0021】
通信インターフェース19は、システム1が、1つ若しくは複数の圧電トランスデューサP1を駆動することに関連する信号、及び/又は、1つ若しくは複数の圧電トランスデューサP1への力の印加を検知することに関連する信号を、外界、例えばスマート・ウォッチ、スマート・フォン、又はタブレットなどの、圧電トランスデューサ・システム1を組み込んだホスト電子デバイスとの間で送受信することを可能にする。圧電トランスデューサP1の作動が、任意の形態のユーザ入力、例えばオン/オフ、音量アップ、音量ダウン、入力などの指示を、ホスト・デバイスに提供してもよい。
【0022】
図2A及び
図2Bは、圧電トランスデューサ回路2の2つの実施例を示す。ドライバ段4は、異なる増幅器アーキテクチャ、例えば、A級、AB級、D級などに基づき得るが、アーキテクチャ及び構成要素の観点から、負荷15、例えば、1つ又は複数の電気活性又は圧電トランスデューサP
1は、出力ノード13と、ユニポーラ出力のための基準電圧ノードV
ref又はノード20との間に接続されている(
図2A)。バイポーラ出力、例えば、
図2Bの場合、負荷15の各端部は、異なる出力ノード13+及び13-に接続されている。すべての場合において、出力ノード13+及び13-での出力電圧V
out、例えば、ドライバ電圧V
DR及び/又は検知電圧V
Sensが、1つ又は複数のスイッチ、例えば、トランジスタQ
DR1+、Q
DR1-、Q
DR2+、及びQ
DR2-によって最小限に制御されて、負荷15の両端の、高電圧電源V
HV若しくはV
in(又は電流源)と基準電圧V
ref、例えば基準ノード20との間で電流が流れることを可能にしてもよい。
【0023】
図3には1つの例外が示されており、
図3は、参照により本明細書に組み込まれる、2019年2月5日にSimon Chaputの名で発行された特許文献2に記載されている2トランジスタ・アーキテクチャを示している。2トランジスタ・ドライバ段4により、電流を第2のスイッチQ
2を介して負荷15でシンク及びソースすることが可能になる。すべての図において、寄生経路を明示的に示すために、第1のスイッチQ
1及び第2のスイッチQ
2のボディ・ダイオードは、ダイオード記号によって示されている。すべてのトランジスタについて、導電端子から導電端子への電圧、例えばドレイン・ソース電圧(V
DS)が、例えば負荷15に接続された第2のスイッチQ
2のボディ・ダイオードのリーク又はターンオン電圧を超えて十分に負になると、電流は、ボディ・ダイオードを介して、第1の導電端子、例えばソースから、第2の導電端子、例えばドレインまで流れ始める。電流がダイオードに流れ始めるリーク電圧は、典型的には、使用される厳密なデバイス及び半導体技術に応じて、0.2Vから0.7Vの間とすることができる。説明を簡単にするためにN型MOSトランジスタを使用するものと仮定しているが、当業者には、他のトランジスタ、例えばP型デバイスでも同様の状況が発生することが理解されよう。
【0024】
圧電トランスデューサ・システム1は、入力段3と、ドライバ段4と、増幅器バイアス/スイッチ制御5と、出力段6とを備える圧電トランスデューサ回路2を含む。圧電トランスデューサ・システム1は、処理すべき電力が高いため、単一のチップで、又はディスクリート部品を使用して実装されてもよい。入力段3は、典型的には6Vから20Vの間、好ましくは9Vから16Vの入力電圧Vinを伴う、バッテリなどの電圧源VINに接続されてもよい。ドライバ段4は、クリーンな正弦波形を生成する順方向ブースト/逆方向バック変換器を含む電力変換器回路18を備えてもよい。ドライバ段4の電力変換器回路18は、電圧源VINに接続されたインダクタL1、及び、インダクタL1と接地との間に接続された第1のロー・サイド・スイッチQ1と、インダクタL1と出力段6との間に接続された第2のドライバ・スイッチQ2とから構成されるドライバ段スイッチ、例えば、ドライバ・トランジスタQDRを含んでもよい。第1のスイッチQ1内のトランジスタの制御端子、例えばゲートは、増幅器バイアス/スイッチ制御5内の第1のゲート・ドライバ11に接続されてもよく、第2のスイッチQ2内のトランジスタの制御端子、例えばゲートは、増幅器バイアス/スイッチ制御5内の第2のゲート・ドライバ12に接続されてもよい。第1のゲート・ドライバ11と第2のゲート・ドライバ12は共に、コントローラ50に接続されてもよく、コントローラ50は、第1のゲート・ドライバ11及び第2のゲート・ドライバ12に制御信号を送信して、第1のスイッチQ1及び第2のスイッチQ2の動作をそれぞれ制御する。
【0025】
前述の実施例が正弦波形に使用されることが説明されているが、当業者には、本明細書に記載の実施例が、任意の複雑なアナログ波形、例えば、正方形、三角形、AM変調、FM変調の波形で動作することができ、正弦波形での動作に限定されないことが理解されよう。
【0026】
入力段3は、低電圧源VINと接地との間に接続されたフィルタ・コンデンサ(CVIN)、及び低電圧源VINと単一インダクタL1との間に接続された検知抵抗器(RS)を含んでもよい。単一インダクタL1は、検知抵抗器RSとドライバ段4のスイッチング・ノードSWとの間に接続されてもよい。増幅器バイアス/スイッチ制御5に含まれ得る電流センサ7は、電流、並びに/又は、インダクタL1及びドライバ段4に入る電圧を測定するために、検知抵抗器RSの両側及びコントローラ50に接続されてもよい。電流センサ7は、動作中のすべての可能なスイッチング条件、例えば、境界伝導モード、不連続伝導モード、及び連続伝導モードにおいて、双方向電流検知を提供する。電流フィードバック・センサ7は、スイッチング・ノードSWでのスイッチング損失が高くなることを回避するために、第1のスイッチQ1及び第2のスイッチQ2が適時に、確実にオン/オフに切り替わるようにする。
【0027】
第2のスイッチQ2は、スイッチング・ノードSWに接続されてスイッチング・ノード電圧Vswを基準とする第1の導電端子、例えばソースと、負荷15に接続された第2の導電端子、例えばドレインと、コントローラ50に接続された第3の制御端子、例えばゲートとを含む、N型トランジスタとすることができる。
制御端子を適切に制御するために、増幅器バイアス/スイッチ制御5に含まれ得るレベル・シフト・ブロック14は、接地を基準とするコントローラ50からの制御信号を、フローティング・スイッチング・ノードSWでのスイッチング・ノード電圧Vswを基準とする信号に変換する。第1の実施例では、レベル・シフト・ブロック14は、デジタル制御信号振幅を、デジタル論理レベルから第2のスイッチQ2に適したより高い振幅へのスケーリング、例えば1.8Vから5Vへのスケーリングを可能にする。
【0028】
レベル・シフト・ブロック14は、駆動電圧信号V
DRの基準電圧V
ref、すなわち基準ノード20を、接地から任意のフローティング・ノード、この場合はスイッチング・ノードSWに変更することができる。
図3は、第1のスイッチQ
1及び第2のスイッチQ
2用のN型トランジスタを示しているが、代替の実施例では、レベル・シフト・ブロックの同様の要件で、異なる型のスイッチ、例えばP型トランジスタが使用されてもよい。P型スイッチ・トランジスタの場合、レベル・シフト・ブロック14は、フローティング・ブートストラップ電源(図示せず)を使用して、レベル・シフト・ブロック14の出力に所望のレベルを提供することができる。
【0029】
差動駆動電圧信号(VDR-VIN)が非常にクリーンであることが望ましいが、出力電圧Vout、例えば、出力ノード13での駆動電圧信号VDR又は検知電圧VSensは必ずしも接地を基準とする必要はない。高電圧保護回路9は、差増幅器16を含んでもよく、差増幅器16は、基準電圧VINと、出力ノード13での出力電圧Vout、すなわち駆動電圧VDR及び/又は検知電圧VSensとの間の差動駆動電圧を継続的に測定し、その差分をシングルエンド信号に変換し、シングルエンド信号はアナログ・デジタル変換器(ADC)17に供給され、アナログ・デジタル変換器(ADC)17は、出力電圧Vout、すなわち駆動電圧信号VDR及び/又は検知電圧VSensのデジタル表現をコントローラ50に提供する。
【0030】
通信インターフェース19は、シリアル・ペリフェラル・インターフェース(SPI)を備えてもよく、SPIは、外部マイクロコントローラ(又は他のデバイス、例えば、コンピュータ)が、特定の実装に使用される基準波形及び内部設定などの情報を、コントローラ50を介して圧電トランスデューサ回路2との間で送受信することを可能にする、通信プロトコルを実装する。SPIは、コントローラ50とインターフェースするために実装され得るいくつかのデジタル通信プロトコルのうちの一実例であることに留意されたい。通信インターフェースの他の実例には、I2C、TDM、及びI2Sが含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
インダクタL1は、10μHのインダクタとすることができる。インダクタL1の値は、(1)目標の歪みを実現すること、例えば、インダクタンスが低いほど、スイッチング周波数が高くなり、歪み/THD+Nが減少する、及び/又は(2)スイッチング周波数を最小化すること、例えば、一般にスイッチング周波数が低いほど消費電力が少なくなる、を目的として選択されてもよい。
【0032】
混合スイッチを用いた実施例が使用され得るが、第1のスイッチQ1及び第2のスイッチQ2は、同じタイプとすることができ、これは、集積回路(IC)実装のための最も実用的な選択であり得る。第1のスイッチQ1及び第2のスイッチQ2は、他の可能なスイッチの中でも、例えば、GaN、PMOSを備えてもよい。
【0033】
出力段6は、GNDの代わりに入力電圧Vinを基準としてもよい。出力段6は、フィルタ8、例えばコンデンサCHV、及び負荷15、例えば圧電トランスデューサP1のうちの1つ又は複数を含んでもよい。したがって、P1の両端で0Vの差分を得るために、駆動電圧VDRと入力電圧Vinを等しくすることができる。負荷15の両端の駆動電圧VDRを入力電圧Vinよりも高くすることは、ドライバ段4の電力変換器回路18によって実現されてもよい。
【0034】
図3に示す圧電トランスデューサ・システム1では、電力変換回路18の変換比、例えば電圧増幅は、例えば、3.6~5V
DCの入力電圧V
inからの、50から120V
ACの駆動電圧V
DRの場合、10倍より大きくてもよく、好ましくは10倍から20倍の間であってもよい。最初に、コントローラ50は、第1のスイッチQ
1をオンにし、基準ノード20、例えば接地に接続されているインダクタL
1における電流は、直線的に上昇する。コントローラ50が第1のスイッチQ
1をオフにすると、スイッチング・ノードSWにおける電圧V
SWは、駆動電圧V
DRを所望の出力電圧V
out値まで高め、電流がインダクタL
1から第2のダイオードQ
2を通って流れて、出力電圧V
outを増大させる。ここで、スイッチング・ノードSWを負荷15に接続する第2のスイッチQ
2のボディ・ダイオードがオンになる可能性があるか、又は第2のスイッチQ
2がオンになる可能性があり、負荷15、例えばピエゾP
1を充電する。インダクタのL
1電流が0に達すると、第2のスイッチQ
2がオフになり、スイッチング・ノード電圧V
SWが0Vに戻る。コントローラ50は、第1のスイッチQ
1と第2のスイッチQ
2の状態を交互に切り替えて、負荷15から送出又は抽出されるエネルギーの量を制御する。ドライバ段4の電力変換器回路18では、ブースト変換器の電圧利得は、ほとんどの場合、2より大きいので、スイッチング・ノード電圧V
SWは、0Vより少し低くなる可能性があり、第1のスイッチQ
1のボディ・ダイオードをオンにする。その結果、第1のスイッチQ
1は、ゼロ電圧スイッチング条件(ZVS:zero voltage switching)下で再びオンになり、それによりスイッチング・ノードSWの寄生容量に関連するスイッチング損失が減少する。
【0035】
第2のスイッチQ2がオフになると、第1のスイッチQ1は、ZVS条件でオンになる。この場合、第1のスイッチQ1は、インダクタL1がスイッチ・ノード電圧VSWを駆動電圧VDRまで充電するのに十分なエネルギーを累積するまで、オンのままでいる。第1のスイッチQ1がオフになると、スイッチ・ノード電圧VSWが駆動電圧VDRまで進み、第2のスイッチQ2がZVS条件でオンになり、それによりスイッチング損失が減少する。
【0036】
圧電トランスデューサ・システム1の問題は、圧電トランスデューサP1の両端の負の電圧を正確に検知できないことであり、これは、駆動スイッチQDRのうちの少なくとも1つ、例えば、第2のスイッチQ2の、寄生伝導経路、例えば、ボディ・ダイオードの、リーク又はターンオン電圧Vto、例えば、-0.3Vによって制限される。圧電トランスデューサP1の両端の検知電圧VSensによって、VSens-Vswが、駆動スイッチQDR、例えば第2のスイッチQ2におけるボディ・ダイオードのリークによって設定されたターンオン電圧Vtoよりも小さくなると、圧電トランスデューサP1によって生成された他のすべての電荷が、電圧の変化を制限するボディ・ダイオード伝導によって置き換えられるので、コントローラ50によって読み取られる出力電圧Voutは、ほぼそのターンオン電圧Vtoに制限される。
【0037】
図4を参照すると、最初にピエゾP
1に力を印加すると、ピエゾP
1の両端の検知電圧V
Sens、及び検知電圧V
Sensに続いてコントローラ50によって読み取られる出力電圧V
outが徐々に増加する、例えば正になる、すなわち、ゼロから最大電圧、例えば2.0Vまで増加する結果となる。検知電圧V
Sensが作動レベル、例えば1.8Vに達すると、圧電トランスデューサP
1に駆動電圧V
DRが強制的に印加され、触覚フィードバック・イベントを生成して、出力電圧V
outを、駆動電圧V
DRによって、例えば50V以上に増加させる。触覚イベントは、P
1の両端の電圧を0Vに設定することによって終了する。しかしながら、ピエゾP
1の力又は圧力を解放すると、今度は、検知電圧V
Sens及び出力電圧V
outが徐々に減少し、駆動スイッチQ
DRのうちの1つ、例えば第2のスイッチQ
2の、ボディ・ダイオードの、ターンオン電圧V
to、例えば-0.3Vよりも低い負の電圧になる可能性がある。残念なことに、より低い電圧、すなわち、より大きい負の電圧では、ピエゾP
1の両端の検知電圧V
Sensは、第2のスイッチQ
2におけるボディ・ダイオードのリーク又はターンオン電圧V
toによって設定された上限よりも低くなり、ピエゾP
1によって生成された他のすべての電荷が、測定された出力電圧V
outの変化を制限するボディ・ダイオード伝導によって置き換えられるので、コントローラ50によって読み取られる出力電圧V
outは、その上限電圧に制限される。
【0038】
図5は、検知スイッチ、例えば、検知トランジスタQ
Sを追加した基本アーキテクチャに関連する触覚システムの典型的な使用事例を示しており、この検知スイッチは、検知/駆動アルゴリズム10がコントローラ50によって実行されることを可能にするために、既存のドライバ段スイッチ、例えばQ
DR2(
図1)、追加された検知スイッチQ
S(
図1)、又は第3のスイッチ、例えばトランジスタQ
3(
図3)の形態をとることができる。負荷15、例えば、圧電トランスデューサP
1の両端の検知電圧信号V
Sensは通常、ユーザが圧電トランスデューサP
1に力を印加すると、検知電圧V
Sensが、触覚効果を開始するように設定された作動レベルに達するまで、正の方向に増加する。作動レベルに達すると、異なるドライバ段スイッチQ
DR、例えば、第1のスイッチQ
1及び第2のスイッチQ
2が、コントローラ50によってバイアスされて、圧電トランスデューサP
1上に高電圧駆動電圧信号V
DRを生成する。圧電トランスデューサP
1は、駆動電圧信号V
DRを、圧電トランスデューサP
1を介してユーザによって感知される変位又は力に変換する。圧電トランスデューサP
1での検知電圧信号V
Sensは、ドライバ段スイッチのうちの少なくとも1つ、例えばQ
2を使用して、触覚効果の終了時に0に戻される。次いで、ユーザが圧電トランスデューサP
1から力を除去すると、圧電トランスデューサP
1の両端の検知電圧信号V
Sensは負になる。したがって、コントローラ50によって検知/駆動アルゴリズム10を使用して、合計検知電圧V
SensTの正確な表現、例えばデジタル値を得ることができ、合計検知電圧V
SensTは、出力電圧信号V
out、例えば1kS/s~10kS/sで継続的に検知される検知電圧V
Sensのセグメントからつなぎ合わされ、各サンプルで現在の中間デジタル表現(interim digital representation)を提供し、次いで、出力電圧、すなわち検知電圧V
Sensが、例えば2~4msごとに、寄生伝導経路のターンオン電圧に近づくときは常に、検知スイッチQ
Sによって繰り返し放電されて、放電ごとに完全なセグメントのデジタル表現を提供する。
図5には示していないが、検知電圧信号V
Sens又はV
SensTが、作動レベル、例えば、-1.8V未満、又は作動レベル値の大きさ(絶対値)を上回る大きさ(絶対値)に達すると、次の触覚効果がトリガされ得る。
【0039】
第3のスイッチQ
3を備える検知スイッチ、例えば、検知トランジスタQ
Sは、コントローラ50に接続された制御端子、例えば、ゲートを有し、圧電トランスデューサP
1と、基準電圧、例えば、V
ref、V
in、又は、接地との間に接続されてもよく、圧電トランスデューサP
1の両端の出力電圧V
out、例えば、検知電圧V
Sensを、必要に応じてゼロにすること、すなわち、基準電圧まで放電することを可能にする。したがって、出力電圧V
outが、寄生伝導経路のトリガ・レベル、例えば、第2のスイッチQ
2のボディ・ダイオードのターンオン電圧(-0.3V)に近づくたびに、第3のスイッチQ
3は、コントローラ50によって作動されて、出力電圧V
out、例えば、圧電トランスデューサP
1の両端の検知電圧V
Sensをゼロにすることができる。その結果、V
Sensに基づく出力電圧V
outが、負のターンオン電圧よりも高い(又は、正のターンオン電圧よりも低い)レベルで、閾値電圧V
th、例えば、-0.25Vに達するたびに、全電圧セグメントが生成され、コントローラ50によってデジタル値に変換され、累積検知電圧値V
accに加算され、次いで、検知スイッチQ
Sの作動によって放電される。例えば、閾値電圧(0.25V)とほぼ同じ大きさであるが、通常はサンプル・レートに応じて大きくなる複数の電圧セグメントが順次生成され、次いで、放電される。コントローラ50によって実行される検知/駆動アルゴリズム10は、複数の電圧セグメントからの圧電トランスデューサP
1の両端の検知電圧V
Sensを判定する、例えば、その検知電圧V
Sensの再構築(デジタル)を提供することができ、正確さが必須である場合は、合計累積検知電圧V
SensTを表すデジタル値を形成する、現在の検知電圧V
Sensからの中間デジタル表現を提供することができる。例えば、コントローラ50によって実行される検知/駆動アルゴリズムは、出力電圧V
outの異なる電圧セグメント(
図5を参照)を(デジタルで)集計するか、又は、出力電圧V
outが0から閾値電圧V
thの間を動く回数をデジタルで集計し、これにより、圧電トランスデューサP
1の両端の負の電圧に対してはるかに優れた検知性能を提供することができる。したがって、コントローラ50は、ユーザがいつ圧電トランスデューサP
1を完全に解放したかを判定すること、並びに/又は、例えば、作動レベルの大きさを上回る、圧電トランスデューサP
1に対する二次的な力の印加をリセット及び判定するために、より正確な最小の負の電圧を設定することが可能であり得る。
図3のアーキテクチャでは、検知/駆動アルゴリズム10を実装可能にするために、検知スイッチQ
S、例えば、第3のスイッチQ
3を追加する必要があるが、いくつかのアーキテクチャでは、方法を実装するために、余分な構成要素、例えば、スイッチの追加を必要としない場合があり、既存の構成要素、例えば、スイッチを利用して制御アルゴリズムを変更することで十分である場合がある。
【0040】
図6を参照すると、コントローラ50は、以下の方法で検知/駆動アルゴリズム10を実行することができる。通常の動作中、コントローラ50は、検知ステップ101を含む検知ループを実行しており、ヒューマン・マシン・インターフェースにおけるアプリケーションの場合、好ましくは毎秒1000サンプルから毎秒10000サンプル(1kS/sから10kS/s)の間の典型的なレートで、現在の検知電圧V
Sensの中間デジタル表現を生成する。検知ループに入る前、第1の圧電トランスデューサP
1は、一方の側、例えばV
inで基準電圧V
refに接続され、ドライバ段スイッチQ
DR及び検知スイッチQ
Sがオフに切り替えられて高インピーダンス・ノード13を作成し、コントローラ50が、検知電圧V
Sensのみから構成される出力電圧V
outを継続的に判定すること、すなわち圧電トランスデューサP
1への力の印加を検知することを可能にする。ステップ101において、P
1の両端の検知電圧V
Sens、(V
out-V
ref)が検知される。累積電圧V
accの値は、最初に0Vに設定され、コントローラ50は、前述のサンプル・レートで、例えば0.1から1msごとに、検知電圧V
Sensの中間デジタル表現を検知及び受信する。
【0041】
判定ステップ102において、コントローラ50は、例えば、検知電圧V
Sensが閾値電圧V
thを超えているかどうか、又は閾値電圧V
thと寄生経路のうちの一部又はすべてのターンオン電圧V
toとの間にあるかどうかを判定することによって、圧電トランスデューサP
1の両端の電圧が回路内の寄生経路のいずれかのトリガ・レベルに近づいているかどうかを判定する。
図5に示すように、ピエゾP
1の両端の検知電圧V
Sensが十分に負になったとき、
図3の実装には単一の寄生経路が存在した。しかしながら、
図1及び
図8は、ピエゾP
1の両端の検知電圧V
Sensの上限及び下限が寄生経路をトリガし得る場合を示す。その結果、判定ステップ102は、ピエゾP
1の両端の現在の検知電圧V
Sensによって寄生経路がトリガされるかどうかを検証する。判定は単一の条件を示しているが、実際の適用では複数の条件がテストされてもよい。いずれの条件も真でない場合、すなわち、ピエゾP
1の両端の検知電圧V
Sensが寄生経路をトリガしそうにない場合、アルゴリズム10は、合計ステップ103に進み、合計検知電圧V
SensTは、累積電圧V
accの現在の値(以下で説明する累積ステップ105の結果、又は以前に寄生経路がトリガされていない場合は0V)に、現在のサンプル、すなわち中間デジタル表現に従ったピエゾP
1の両端の現在の測定された検知電圧V
Sensを加えた和に等しくなる。次いで、検知ループは、比較ステップ104に進み、検知電圧V
Sens又は合計累積検知電圧V
SensTの値が、1つ又は複数の任意の作動レベルと比較される。比較ステップ104の結果に応じて、アルゴリズム10は、合計累積検知電圧V
SenTが作動レベルに達するまで検知ループを継続し得るか、又は、アルゴリズム10は、検知ループを終了して、以下で説明するように、ドライバ・ステップ107においてドライバ段4及びピエゾP
1を駆動する。
【0042】
アルゴリズム10が検知ループを循環している間、判定ステップ102において、条件のうちの1つ、すなわち寄生経路のトリガが真になり得る。条件が真になると、アルゴリズム10は累積ステップ105に進む。累積電圧V
accの値は、現在のサンプル(現在の中間デジタル表現)に基づいてピエゾP
1の両端で測定された現在の検知電圧V
Sens(又は、V
out-V
ref)と、以前に放電された検知電圧V
Sensの数(電圧セグメントのデジタル表現)に基づいた累積電圧V
accの現在の値との和に対するV
accとして更新されることになる。アルゴリズム10が検知ループに入るとき、累積電圧V
accの値は常に0であり、その値は、累積ステップ105を通過するたびに更新され、その結果コントローラ50は、
図5及び
図9に示すように、圧電トランスデューサP
1によって生成された合計累積検知電圧V
SensTを判定することができる。累積ステップ105は、合計累積検知電圧V
SensTが新しい累積電圧V
accに等しくなる特殊な事例である。次いで、放電ステップ106において、検知スイッチ(例えば、Q
DR又はQ
S)を使用して、ピエゾP
1の両端の電圧を0Vまで放電する。検知スイッチQ
Sは、実装可能なフィルタを用いて適切な放電を確実にするのに十分な時間だけオンになる。比較ステップ104において、各サンプルの後、累積電圧V
acc+現在の検知電圧V
Sensすなわちその中間デジタル表現であり得る、合計累積検知電圧V
SensTが、作動レベルよりも大きい、すなわちピエゾP
1への力の印加が十分に大きいとコントローラ50が検知するか、又は、判定ステップ102でホスト・デバイスから外部プロンプトが送信されると、コントローラ50はドライバ・ステップ107に切り替わる。
【0043】
ドライバ・ステップ107において、コントローラ50は、適切にバイアスされたドライバ段スイッチQDR及び検知スイッチQSによって駆動電圧VDRを作動させ、ピエゾP1への力の印加又は他の何らかの他の通知に応答して触覚応答を生成する。駆動ステップ107中、ドライバ段スイッチQDR、例えば、第1のスイッチQ1及び第2のスイッチQ2、並びに検知スイッチングQs、第3のスイッチQ3は、コントローラ50によって適切にバイアスされて、第1の圧電トランスデューサP1を駆動し、例えば、ピエゾP1への力の印加など、デバイスからの何らかの形態の通知で、又は外部通知、例えば電話呼出しに応答して、ユーザへの触覚応答を生成する。繰り返しステップ108を参照すると、触覚効果の終了時、検知/駆動アルゴリズム10は、例えばホスト・デバイスからの外部プロンプトが別の触覚応答を要求する場合に駆動ステップ107を繰り返してもよく、又は検知ループに戻り、ユーザ又はデバイス入力を待ってもよい。ステップ101での検知ループに戻る前に、コントローラ50は、最初に検知スイッチQS及び又はドライバ段スイッチQDRをオンにして、ピエゾP1の両端の出力電圧Voutを、例えば0Vまで放電し(ステップ109)、次いで、リセット・ステップ110において、ドライバ段スイッチQDR及び検知スイッチQSをオフにすることによって、第1のリセット・ステップ109及び/又は第2のリセット・ステップ110を実行して、ピエゾP1によって生成された電荷を累積(又はドレイン)し、出力ノード13(Vout)と基準電圧Vref、例えばVINとの間の電圧を変化させてもよく、その結果、コントローラ50は、第1のピエゾP1の両端の検知電圧信号VSensを示す出力電圧Voutを正確に受け取る。
【0044】
寄生リークを回避するために、コントローラ50は、スイッチ、例えばピエゾP
1に接続されたトランジスタ、例えばドライバ段スイッチQ
DRごとに、出力電圧V
outがいつ閾値電圧V
thとターンオン電圧V
toとの間にあるかを判定してもよい。例えば、負の電圧の場合、コントローラ50は、出力電圧V
outがいつ閾値電圧V
thよりも小さくなるかを判定してもよい。正の電圧の場合、コントローラ50は、出力電圧V
outがいつ閾値電圧V
thよりも大きくなるかを判定してもよい。代替として、コントローラ50は、出力電圧の大きさ(又は絶対値)|V
out-V
ref|がいつ閾値電圧の大きさ(又は絶対値)|V
th|よりも大きくなるかを判定してもよい。
図3を参照すると、閾値電圧V
th(例えば、-0.25V)は、第2のスイッチQ
2のターンオン電圧V
to(例えば、-0.3V)よりも大きい電圧に対応する。
【0045】
図1を参照すると、判定ステップ102は、すべての駆動スイッチQ
DR又はそれらのうちの少なくともいくつか、例えば、ピエゾP
1に直接接続された駆動スイッチ(Q
DR1、Q
DR2、Q
2)又は最小の大きさ若しくは最大の値のターンオン電圧V
thを有する駆動スイッチQ
DRについて適切な閾値電圧V
th及びターンオン電圧V
toを用いて適用されてもよい。より一般的には、判定ステップ102は、出力電圧V
out値が、圧電トランスデューサ回路2内の既存の寄生経路をトリガする値に近づくかどうかを問う。圧電トランスデューサ回路2の寄生経路の数は、変化する可能性がある。
図1の実施例では、2つの経路、例えばQ
DR1及びQ
DR2があり、
図2Bの実施例では、4つの寄生経路、例えばQ
DR1+、Q
DR1-、Q
DR2+、及びQ
DR2-があり、
図3の実施例では、1つの寄生経路、例えばQ
2がある。
【0046】
少なくとも1つのテスト対象の寄生経路について、判定ステップ102に対する回答が、はい、である場合、累積ステップ105において、コントローラ50によって、以前の累積電圧Vacc(i-1)に現在の電圧セグメント、すなわち(Vout-Vref)iを加えた和として、累積電圧Vaccが計算され、各電圧セグメントは、閾値電圧Vthの大きさとほぼ等しいかわずかに大きくなる可能性がある。各電圧セグメントはデジタル表現に変換され、そのデジタル表現は、コントローラ50によって集計される。この状況で再構築された合計電圧VSensTは、電圧セグメントのデジタル表現に現在の電圧セグメントのデジタル表現、VSens又は(Vout-Vref)を加えた和に等しくなる可能性がある。
【0047】
検知電圧VSens、(Vout-Vref)が、判定ステップ102において寄生状態に達し、累積ステップ105が実行されるたびに、コントローラ50によって、放電ステップ106が実行されてもよく、その放電ステップ106中、コントローラ50は、検知スイッチQS、例えば第2のドライバ・スイッチQDR2又は第3のスイッチQ3のうちの少なくとも1つをオンにし、それを通して出力電圧Vout-Vrefをゼロにする、例えば0Vまで放電する。次いで、検知/駆動アルゴリズム10は、典型的には数ミリ秒にわたって発生する第1のピエゾP1への力の変化よりも速い繰り返し速度で、判定ステップ102を繰り返すように進む。したがって、デジタル・システムでは、検知ループを繰り返し、100μsから1msごとに、新しい中間デジタル表現及び新しい合計検知電圧VSensTと共に新しいサンプリングされた検知電圧VSensを取得して、ヒューマン・マシン・インターフェースにおいて優れた検知性能を得ることができる。
【0048】
例えば最小の大きさ若しくは最大の値のターンオン電圧Vtoを有する、すべての寄生経路、又は少なくとも1つ若しくは複数のテスト対象の寄生経路について、判定ステップ102に対する回答が、いいえ、である場合、判定ステップ103中、コントローラ50によって、累積電圧Vaccと検知電圧VSensの現在の電圧セグメント、すなわち(Vout-Vref)との和として、再構築された又は合計の累積検知電圧VSensTが計算される。ドライバ段4に寄生経路が存在しない場合、合計累積検知電圧VSensTの値は、出力ノード13の出力電圧Voutにある電圧を表す。
【0049】
検知/駆動アルゴリズム10の特定の実例は、合計累積検知電圧VSensTが作動レベルよりも大きいと判定ステップ104が判定するか、又はホスト・デバイスが外部プロンプトを送信するまで、ピエゾP1が、力の印加を引き続き検知し、その結果として、コントローラ50が、ステップ107でドライバ段4を作動させ、例えばドライバ段スイッチQ1及びQ2をバイアスして、ドライバ電圧VDRを生成し、ドライバ電圧VDRをピエゾP1に送る、という検知ループを含んでもよい。ピエゾP1への電圧波形の印加が終了すると、例えば、周波数200Hz、振幅50Vの正弦波形の1サイクル後、次いで、システムは検知ループに戻る。ステップ109で、ドライバ段スイッチQDR又は検知スイッチQSのうちの1つは、ピエゾP1を例えば0Vまで放電するのに十分な時間だけオンとすることができ、次いで、ステップ110として、ドライバ段スイッチQDR、例えば第1のスイッチQ1及び第2のスイッチQ2がオフにされて、ピエゾP1によって生成された電荷を累積できるようにし、それにより、出力電圧Voutと基準電圧Vrefとの間の電圧を、ピエゾP1への力の印加と共に増加及び/又は減少させることができる。
【0050】
例えば、力の解放中、又は2回目の連続した力の印加中に、元の力の印加が続くとき、コントローラ50は、ステップ102において、検知電圧VSensを表す出力電圧Vout、すなわち出力電圧Voutから基準電圧Vrefを引いたものが、寄生リーク条件に近づいているかどうかを判定する。言い換えると、コントローラ50は、出力電圧Voutがドライバ段スイッチQDRのうちの少なくとも1つ、例えば第2のスイッチQ2の、リーク電圧Vtoよりも低い所定の閾値電圧Vthよりも大きいかどうかを判定することによって、出力電圧Voutがドライバ段スイッチQDRのうちの1つ、例えば第2のスイッチQ2におけるボディ・ダイオードのリーク又はターンオン電圧Vtoを克服するのに十分な大きさの負の電圧であるかどうかを判定する。検知電圧VSens、したがって出力電圧Voutが閾値電圧Vth、例えば-0.5Vに達した場合、(ステップ105)コントローラ50は、ステップ105において、0からほぼ閾値電圧Vthの間、典型的には閾値電圧Vthのすぐ上の出力電圧Voutの電圧セグメントを、累積電圧Vaccに加算する。検知スイッチQS、例えば第3のスイッチQ3は、第1のピエゾP1を0Vまで放電するのに十分な長さの時間だけコントローラ50によってオンにされる(ステップ106)。累積プロセスは、典型的には数ミリ秒にわたって発生する第1のピエゾP1への力の変化よりも速い速度で、例えば毎秒1000サンプル(1kS/s)から毎秒10000サンプル(10kS/s)ごとに、繰り返されてもよい(ステップ105)。各サンプル中、閾値電圧Vthが満たされない場合、コントローラ50によって合計検知電圧VSensTが計算されてもよく(ステップ103)、合計検知電圧VSensTは、累積電圧Vaccに現在の基準電圧セグメント値VSensを加えたもの、すなわちVoutから基準電圧Vrefを引いたものであり、(接地の場合)0である場合がある。
【0051】
図7を参照すると、単一のドライバ回路を利用して、それぞれが複数の圧電トランスデューサ、例えば図示の実施例におけるP
1及びP
2を備える複数の負荷15を、独立して駆動することができる。圧電トランスデューサ・システム21は、入力段3と、電力変換器回路を含み得るドライバ段4と、増幅器バイアス/スイッチ制御5と、出力段6とを備える圧電トランスデューサ回路2を含む。圧電トランスデューサ・システム21は、処理すべき電力が高いため、単一のチップで、又はディスクリート部品を使用して実装されてもよい。入力段3は、典型的には2Vから10Vの間、好ましくは3.6Vから5Vの入力電圧V
inを生成する、バッテリなどの電圧源に接続されてもよい。前述のように、ドライバ段4は、前述のようにクリーンな正弦波形を生成する順方向ブースト/逆方向バック変換器とすることができる。変換器段4は、電圧源V
INに接続されたインダクタL
1、及び、1つ又は複数のドライバ段スイッチQ
DR、例えば、インダクタL
1と接地との間に接続された第1のロー・サイド・スイッチQ
1と、インダクタL
1と出力段6との間に接続された第2のスイッチQ
2とを含んでもよい。第1のスイッチQ
1内のトランジスタの制御端子、例えばゲートは、第1のゲート・ドライバ11に接続されてもよく、第2のスイッチQ
2内のトランジスタの制御端子、例えばゲートは、第2のゲート・ドライバ12に接続されてもよい。前述のように、第1のゲート・ドライバ11と第2のゲート・ドライバ12は共に、コントローラ50に接続されてもよく、コントローラ50は、第1のゲート・ドライバ11及び第2のゲート・ドライバ12に制御信号を送信して、ドライバ又は電力変換器スイッチQ
DR、例えば、第1のスイッチQ
1及び第2のスイッチQ
2の動作をそれぞれ制御する。
【0052】
入力段3は、低電圧源VINと高電圧波形VHVの間に接続されたフィルタ・コンデンサ(CHV)、及び低電圧源VINと単一インダクタL1の間に接続された検知抵抗器(RS)を含んでもよい。単一インダクタL1は、検知抵抗器RSとドライバ段4の電力変換器回路のスイッチング・ノードSWとの間に接続されてもよい。上記のように、電流センサ7は、電流、並びに/又は、インダクタL1及びドライバ段4の電力変換器回路に入る電圧を測定するために、検知抵抗器RSの両側及びコントローラ50に接続されてもよい。
【0053】
1つ又は複数のドライバ段スイッチQDRは、第1のピエゾP1の充電/放電を独立して制御するためにコントローラ50によって作動され得る、第2のスイッチQ2と第1のピエゾP1との間に接続された第4の(又は、第1のピエゾ選択)スイッチQ4と、第1の圧電トランスデューサP1及び第2の圧電トランスデューサP2の充電/放電をそれぞれ、その触覚駆動中に独立して制御するためにコントローラ50によって作動され得る、第2のスイッチQ2と第2のピエゾP2との間に接続された第5の(又は、第2のピエゾ選択)スイッチQ5とを含んでもよい。参照により本明細書に組み込まれる、2018年9月20日にBoreas Technologies,Inc.の名で出願された特許文献3に開示されているゼロ電力ウェイクアップ検知メカニズムZPS1及びZPS2を設けて、圧電トランスデューサ・システム21、具体的には第1の圧電トランスデューサP1又は第2の圧電トランスデューサP2を、第1の圧電トランスデューサP1又は第2の圧電トランスデューサP2に印加された力と、第1の圧電トランスデューサP1又は第2の圧電トランスデューサP2から受信された、結果として生じる電圧信号とに基づいてウェイクアップすることができる。
【0054】
第1の圧電トランスデューサP1及び/又は第2の圧電トランスデューサP2によってそれぞれ生成される検知電圧VSens1又は検知電圧VSens2は、しばしば、ドライバ段スイッチQDR又は検知スイッチQSのボディ・ダイオードのターンオン電圧レベルを超える可能性がある。ドライバ段スイッチQDR、例えば、第4のスイッチQ4及び第5のスイッチQ5、並びに/又は検知スイッチQ3及び検知スイッチQ6を介した寄生経路のため、力の変化が発生すると、圧電トランスデューサP1及び圧電トランスデューサP2のそれぞれの両端間に電圧差が生じる。検知電圧VSens1若しくはVSens2を表す出力電圧Vout1又はVout2が、ドライバ段スイッチQDR若しくは検知スイッチQSのうちの1つ又は複数の寄生ダイオードのリーク又はターンオン電圧を上回ると、ドライバ段スイッチQDR及び/又は検知スイッチQSのダイオードに電流が流れ始め、これは、コントローラ50が圧電トランスデューサP1又はP2からの検知電圧VSens1若しくはVSens2に基づいて、それらに印加される力の変化を測定するために利用可能な出力電圧信号Voutを制限することになる。例えば、出力電圧(又は、検知電圧VSens1若しくはVSens2)が、
例えば、ドライバ段スイッチQ4及びQ5の場合、(Vout1若しくはVout2)-VHV>Vto(~0.3V)、又は
例えば、検知スイッチQ3及びQ6の場合、(Vout1若しくはVout2)-Vref<Vto(~-0.3V)
のときは常に、寄生経路のトリガとなる可能性がある。これが発生し得る状況は数多くあり、例えば、第1の圧電トランスデューサP1が0.3Vより高い第1の検知電圧信号VSens1を生成する力の印加を検知している間、ドライバ段4は、第2の圧電トランスデューサP2の両端で0Vを駆動している可能性があり、これが、ドライバ段スイッチQ4内の寄生経路をトリガする。
【0055】
図8は、
図7の単純な事例を使用した問題を示す。第1の圧電トランスデューサP
1への力の変化が、駆動スイッチQ
DRのうちの1つ、例えばQ
4又はQ
5にある、2つの寄生ダイオードのうちの一方をトリガするのに十分な大きさの振幅を有する、圧電トランスデューサP
1の両端の第1の検知電圧V
Sens1を生成すると、第1の圧電トランスデューサP
1の両端の第1の検知電圧V
Sens1に基づく第1の出力電圧V
out1は、第1の圧電トランスデューサP
1に印加された力に比例するのではなく、駆動スイッチQ
DRのうちの1つのターンオン電圧V
toの近くで飽和する。簡単に言えば、駆動スイッチQ
DRのうちの1つの寄生ダイオードが、第1の検知電圧V
Sens1に基づく第1の出力電圧V
out1を飽和させると、第1の圧電トランスデューサP
1は、同じ方向の力のさらなる変化に影響を受けない。
【0056】
例えば、
図8を参照すると、従来のマルチピエゾ・システムの場合、第1の圧電トランスデューサP
1に最初の力を印加している間、OUT
1とV
refとの間の第1のピエゾP
1に正の検知電圧V
Sens1が発生する。ドライバ段4が信号を駆動しないと仮定すると、
図5に示すように、力の印加に応じて検知電圧V
Sens1が正常に発生する。しかしながら、第2の圧電トランスデューサP
2に第2の駆動電圧信号V
DR2が同時に印加される場合、第1の圧電トランスデューサP
1上の第1の検知電圧信号V
Sens1は、駆動スイッチQ
DRのうちの1つ又は複数、例えばQ
4のボディ・ダイオードを原因として、第2の圧電トランスデューサP
2の、例えば高電圧ノードV
HVにおける、第2の駆動電圧V
DR2に基づく様々な電圧で飽和する。したがって、このマルチチャネル・アーキテクチャでは、駆動電圧、例えば、V
DR1又はV
DR2が、高電圧ノードV
HVを介して第1の圧電トランスデューサP
1又は第2の圧電トランスデューサP
2のいずれかに送信されているとき、第1の圧電トランスデューサP
1又は第2の圧電トランスデューサP
2に印加された力を正確に読み取ることは不可能である。
【0057】
検知スイッチQ
Sは、コントローラ50に接続された制御端子、例えばゲートを有し、第1の圧電トランスデューサP
1と基準電圧V
refとの間に接続され得る、第3のスイッチQ
3と、コントローラ50に接続されたゲートを有し、第2の圧電トランスデューサP
2と基準電圧V
refとの間に接続され得る、第6のスイッチQ
6とを備えてもよく、第6のスイッチQ
6は、
図3の第3のスイッチQ
3と同様の機能を提供してもよく、すなわち、コントローラ50が、すべての状況において、第1の圧電トランスデューサP
1及び第2の圧電トランスデューサP
2の放電を互いに独立して制御できるようにしてもよい。したがって、第1の出力電圧V
out1又は第2の出力電圧V
out2が、ドライバ段スイッチQ
DR又は検知スイッチQ
S、例えばQ
4、Q
5、Q
3、又はQ
6のボディ・ダイオードのターンオン電圧、例えば0.3Vに近づくたびに、すなわち、出力電圧V
out1又はV
out2が、駆動スイッチQ
DR及び/又は検知スイッチQ
S、例えばQ
4、Q
5、Q
3、若しくはQ
6のうちの1つ又は複数のボディ・ダイオードのターンオン電圧V
toよりも低い閾値電圧V
th1又はV
th2、例えば、+/-0.25Vに達するたびに、第3のスイッチQ
3及び第6のスイッチQ
6が、コントローラ50によって作動されて、第1の圧電トランスデューサP
1の両端の第1の検知電圧V
Sens1又は第2の圧電トランスデューサP
2の両端の第2の検知電圧V
Sens2にそれぞれ基づいて、第1の出力電圧V
out1又は第2の出力電圧V
out2をゼロにしてもよい。各ドライバ段スイッチ、例えばQ
4及びQ
5に対して、異なる第1の閾値電圧V
th1が設定されてもよく、各検知スイッチQ
3及びQ
6に対して、異なる第2の閾値電圧V
th2が設定されてもよく、又は、ピエゾ選択スイッチの一部若しくは全部、及び検知スイッチの一部若しくは全部に対して、単一の閾値電圧V
th1が設定されてもよい。
【0058】
典型的には、別のアクションが発生している間、例えば第2のピエゾP2を駆動している間に、第1のピエゾP1で検知するとき、又は第1又は第2のピエゾP1で検知を継続するとき、ドライバ段スイッチQ4に対しては、寄生トリガを引き起こすノードVHVの第2のドライバ電圧VDR2に基づいて、第1の(上の)閾値電圧Vto1(約0.2Vから0.4V)が設定され、検知スイッチQ3に対しては、寄生トリガを引き起こす検知電圧VSens2に基づく出力電圧Voutに基づいて、第2の(下の)閾値電圧Vto2(-0.2Vから-0.4V)が設定される。第2のピエゾP2についても同様であり、すなわち、スイッチQ4及びQ5の場合、(Vout)-VHV>Vto1(~0.3V)、又はスイッチQ3及びQ6の場合、(Vout)-Vref<Vto2(~-0.3V)である。
【0059】
コントローラ50によって実行されるアルゴリズム10は、0から適切な閾値電圧Vth1又はVth2の間で動く、すなわち、対応する駆動スイッチQDR又は対応する検知スイッチQS、例えば、Q4、Q5、Q3、若しくはQ6のうちの1つ又は複数のボディ・ダイオードのターンオン電圧Vtoよりも低い出力電圧Voutの、異なるセグメントを集計することによって、第1の圧電トランスデューサP1及び/又は第2の圧電トランスデューサP2の両端の実際の累積検知電圧VSensT1又はVSensT2をデジタルで再構築することができ、これにより、第1の圧電トランスデューサP1の両端の電圧VSens1、及び第2の圧電トランスデューサP2の両端の電圧VSens2を検知するためのはるかに優れた検知性能を提供することができ、これは典型的には、第1の圧電トランスデューサP1及び第2の圧電トランスデューサP2の、タッチ・インターフェースでの解放、又は、同時の若しくは同時発生的な駆動及び/若しくは検知に対応する。
【0060】
すべてのチャネル、例えば第1の圧電トランスデューサP
1及び第2の圧電トランスデューサP
2で、独立した正確な検知を可能にするために、他のチャネルの駆動活動とは無関係に、スイッチQ
3及びQ
6のゼロ化又は検知が作動されてもよい。したがって、第1のピエゾP
1に力が印加され、第2の圧電トランスデューサP
2に駆動信号V
DR2が印加される場合(
図8の左側を参照)、第1のピエゾP
1の第1の検知電圧V
Sens1に基づく出力電圧信号V
out1が、第4のスイッチQ
4又は第3のスイッチQ
3のボディ・ダイオードがそれぞれ電流を流し始める、リーク又はターンオン電圧V
to1又はV
to2、例えば+/-0.3Vに近い(未満の)閾値電圧V
to1又はV
to2のいずれか、例えば+/-0.25Vに達すると、第3のスイッチQ
3を使用して、第1の圧電トランスデューサP
1を放電する。
図1及び
図2を参照して上述したように、コントローラ50は、0Vから対応する閾値電圧V
th1及びV
th2、例えば負の閾値電圧及び正の閾値電圧の間の小さいセグメントから、第1の圧電トランスデューサP
1の第1の合計累積検知電圧信号V
SensT1をデジタルで判定して、第1の圧電トランスデューサP
1からの実際の検知電圧信号V
SensT1の正確な表現を提供することができる。
【0061】
図9は、
図6で説明した方法の結果を示す。コントローラ50は、検知モードにあるとき、第1の圧電トランスデューサP
1及び第2の圧電トランスデューサP
2の両端の、検知電圧V
Sens1及びV
Sens2、すなわち出力電圧V
out1及びV
out2をそれぞれ、アナログ実装の場合は継続的に、又はデジタル実装の場合は測定信号と比較して速い速度で監視する。ヒューマン・マシン・インターフェースの場合、力の変化は、典型的には数ミリ秒にわたって発生し、したがって、検知電圧信号V
Sens1及びV
Sens2の良好な表現を得るには、1kS/sから10kS/sの間のサンプル・レートで十分である。
【0062】
図9の左側を参照すると、第2の圧電トランスデューサP
2がコントローラ50によって能動的に駆動され、同時に第1の圧電トランスデューサP
1に力が印加され、それにより、第1の圧電トランスデューサP
1での検知電圧信号V
Sens1が、駆動スイッチQ
DR又は検知スイッチQ
S、例えば、第3のスイッチQ
3又は第4のスイッチQ
4における寄生ダイオードのうちの1つのターンオン電圧又はリーク電圧に近づくと、第3のスイッチQ
3がオンになり、第1の圧電トランスデューサP
1の第1の検知電圧V
Sens1に対応する第1の出力電圧V
outを、V
ref、例えばVDDまで、放電する。第3のスイッチQ
3がオンである時間の長さは、第1の圧電トランスデューサP
1の静電容量、第3のスイッチQ
3の伝導チャネル抵抗R
dson、及びフィルタ8の存在などのいくつかの要因に依存する。第3のスイッチQ
3は、第1の圧電トランスデューサP
1を閾値電圧から0Vまで実質的に放電するのに十分な時間だけオンであるべきである。例示的な実施例では、時間は、100μSから1msの間とすることができる。第3のスイッチQ
3をオンにする直前に、第1の出力電圧V
out1が測定され、コントローラ50内の、又はコントローラ50に接続された累積器に、現在の検知電圧V
Sensとして加算されて、各基準電圧セグメントを累積器電圧V
accに加算する。累積器により、コントローラ50は、電力変換器段のスイッチ、例えばトランジスタ内に寄生経路が存在しない場合に、圧電トランスデューサP
1又はP
2に現れたであろう、実際の第1の検知電圧V
Sens1及び第2の検知電圧V
Sens2を追跡することが可能になる。
【0063】
同じ状況の場合、すなわち、第2の圧電トランスデューサP
2に駆動電圧信号V
DR2が印加されている間、第1の圧電トランスデューサP
1から力が解放されると、
図4及び
図5を参照して上で詳述した問題と同じ問題が生じる。
【0064】
したがって、第1の出力電圧V
out1が、例えば第4のスイッチQ
4のボディ・ダイオードのターンオン電圧V
to1、例えば0.3V、及び/又は第3のスイッチQ
3のターンオン電圧V
to2に近づくたびに、すなわち、第1の出力電圧V
out1が、ターンオン電圧V
toよりも小さい閾値電圧V
th1及び/又はV
th2、例えば+/-0.25Vに達するたびに、第3のスイッチQ
3は、コントローラ50によって作動されて、第1の圧電トランスデューサP
1の両端で測定された第1の検知電圧V
Sens1又は第1の出力電圧V
out1をゼロにすることができる。コントローラ50によって実行されるアルゴリズム10は、0から対応する閾値電圧V
to1又はV
to2のすぐ上の間で動く、すなわち、第3のスイッチQ
3及び第4のスイッチQ
4のボディ・ダイオードのターンオン電圧よりも低い検知電圧V
Sensを表す出力電圧V
out1の異なるセグメントから(
図8の右側を参照)、現在の検知電圧V
Sens、すなわち、その中間デジタル表現、及び累積電圧V
accを集計することによって、第1の圧電トランスデューサP
1の両端の実際の合計検知電圧V
SensT1をデジタルで再構築することができ、これにより、第1の圧電トランスデューサP
1の両端の負の電圧に対してはるかに優れた検知性能を提供することができる。
【0065】
電圧マルチプレクサ40は、検知スイッチQS、例えば、第3のスイッチQ3及び第6のスイッチQ6と、コントローラ50との間に接続されてもよい。電圧マルチプレクサ40は、2つの機能、すなわち、1)異なるチャネル、例えば、第1の圧電トランスデューサP1及び第2の圧電トランスデューサP2から、小さい入力範囲、例えば、100uVから100mV/ビット用に最適化された増幅器41への出力電圧信号、例えば、Vout1及びVout2を多重化し、これにより、複数の圧電トランスデューサ、例えば、P1からPnからの、出力電圧、例えば、Vout1からVoutnの非常に正確な読取りを提供し、高感度を可能にする機能、及び2)複数の圧電トランスデューサP1からPnが駆動されるとき、それら複数の圧電トランスデューサにおいて、例えば50Vの高電圧アクチュエータ信号から、低電圧電子機器を同様に保護するための高電圧入力デバイスを提供する機能を提供してもよい。
【0066】
図10を参照すると、電圧マルチプレクサ40は、各圧電トランスデューサ、例えばP
0からP
nからの、複数の入力を備えてもよい。各入力は、高電圧スイッチQ
0HからQ
nH、及び低電圧スイッチQ
0LからQ
nLに接続される。それぞれのレベル・シフタS
0からS
nは、高電圧スイッチQ
0HからQ
nH及び低電圧スイッチQ
0LからQ
nLのゲートと、コントローラ50との間に接続され、ピエゾP
0からP
nのうちの1つの検知電圧が測定されているときに、高電圧スイッチQ
0HからQ
nH及び低電圧スイッチQ
0LからQ
nLのうちのそれぞれ1つを作動させる。高電圧スイッチは、低電圧回路を損傷する可能性のある任意の信号、典型的には、使用するデバイスに応じて1.8Vから5Vの範囲を超える信号から、低電圧回路を保護する。
【0067】
電圧(正及び負)を閾値電圧Vth未満に制限する方法であり、閾値電圧Vthの地点で、圧電トランスデューサに接続されたスイッチ、例えばトランジスタ、例えば、駆動スイッチ(トランジスタ)QDR、又は、第3のスイッチQ3、第4のスイッチQ4、第5のスイッチQ5、及び第6のスイッチQ6などの検知スイッチQSの、ボディ・ダイオードに電流がリークしし始める。検知スイッチ、例えば、第3のスイッチQ3及び第6のスイッチQ6を使用することにより、ICのドライバ機能用に同じ電力トランジスタを共有しながら、複数の圧電トランスデューサからの検知電圧、例えばVSens1からVSensnを正確に独立して読み取ることが可能になる。コントローラ50のデジタル・アルゴリズム10により、寄生経路が存在しないかのように、第1のピエゾP1及び/又は第2のピエゾP2からの検知電圧信号、例えばVSens1及びVSens2をデジタルで再構築することが可能になる。その再構築された信号に基づいて、圧電トランスデューサ・システム1を使用して、複数の圧電トランスデューサをセンサとして正確に使用し、それらに対して触覚波形を出すことができる。
【0068】
コントローラ50で提供される検知アルゴリズムは、以下の特徴を示す。1)圧電トランスデューサP1及びP2に対する圧力の増加及び減少の正確な検知を提供する、2)マルチチャネル・アーキテクチャと互換性がある、3)検知チャネルごとに、単一のトランジスタ、例えばQ3又はQ6しか必要としない場合がある、4)あるチャネル、例えばピエゾP1で触覚応答を駆動しながら、別のチャネル、例えばピエゾP2で力の印加を検知することを可能にする、5)複数のピエゾ・トランスデューサ間の正と負の電圧を検知する能力、6)複数のトランスデューサを検知する際のクロストーク又は結合効果を回避する、7)高電圧ノードでの低電圧信号の直接検知により、高感度が可能になる、8)方法をシステムに存在する実際の寄生経路に適合させるように構成可能な「リセット」閾値、9)駆動用よりも検知用の余分な構成要素を必要としない場合がある。
【0069】
圧電トランスデューサ回路2を制御するためのコントローラ50、例えば、デジタル・コントローラは、コンピュータとすることができる。コントローラ50は、プロセッサ、記憶デバイス、上記の機能を定義するソフトウェアが記憶されたメモリ、入出力(I/O)デバイス(又は、周辺機器)、及びローカル・バス、又はコントローラ50内の通信を可能にするローカル・インターフェースを含んでもよい。ローカル・インターフェースは、例えば、当技術分野で知られているように、1つ若しくは複数のバス、又は、他の有線接続若しくは無線接続とすることができるが、これらに限定されない。ローカル・インターフェースは、簡単にするために省略されているが、通信を可能にするために、コントローラ、バッファ(キャッシュ)、ドライバ、リピータ、レシーバなどの追加の要素を含んでもよい。さらに、ローカル・インターフェースは、前述の構成要素間の適切な通信を可能にするために、アドレス、制御、及び/又はデータ接続を含んでもよい。
【0070】
プロセッサは、特にメモリに記憶されたソフトウェアを実行するためのハードウェア・デバイスとすることができる。プロセッサは、任意のカスタム・メイド又は市販のシングル・コア又はマルチ・コア・プロセッサ、中央処理装置(CPU)、本発明のコントローラ50に関連するいくつかのプロセッサのうちの補助プロセッサ、例えばマイクロチップ又はチップ・セットの形態の、半導体ベースのマイクロプロセッサ、マクロプロセッサ、又は一般にソフトウェア命令を実行するための任意のデバイスとすることができる。
【0071】
メモリには、揮発性メモリ要素、例えば、ランダム・アクセス・メモリ(DRAM、SRAM、SDRAMなどのRAM)、及び不揮発性メモリ要素、例えば、ROM、ハード・ドライブ、テープ、CDROMなどのうちのいずれか1つ又はそれらの組合せが含まれ得る。さらに、メモリは、電子的、磁気的、光学的、及び/又は他のタイプの記憶媒体を組み込んでもよい。メモリは、様々な構成要素が互いに離れた場所に配置されるが、プロセッサによってアクセスすることができる、分散型アーキテクチャを有してもよい。
【0072】
ソフトウェアは、本発明に従って、コントローラ50によって実行される機能を定義してもよい。メモリ内のソフトウェアは、1つ又は複数の別個のプログラムを含んでもよく、各プログラムは、以下に説明するように、コントローラ50の論理機能を実装するための実行可能命令の順序付けされたリストを含む。メモリは、オペレーティング・システム(O/S)を含んでもよい。オペレーティング・システムは、本質的に、コントローラ50内のプログラムの実行を制御し、スケジューリング、入出力制御、ファイル及びデータ管理、メモリ管理、並びに通信制御及び関連サービスを提供する。
【0073】
I/Oデバイスには、例えば、キーボード、マウス、スキャナ、マイクロフォンなどを含むがこれらに限定されない入力デバイスが含まれ得る。さらに、I/Oデバイスには、例えば、プリンタ、ディスプレイなどを含むがこれらに限定されない出力デバイスも含まれ得る。最後に、I/Oデバイスにはさらに、例えば、変調器/復調器(別のデバイス、システム、又はネットワークにアクセスするためのモデム)、無線周波数(RF)若しくは他のトランシーバ、電話インターフェース、ブリッジ、ルータ、又は他のデバイスを含むがこれらに限定されない、入力及び出力の両方を介して通信するデバイスが含まれ得る。
【0074】
コントローラ50が動作しているとき、プロセッサは、上記で説明したように、メモリ内に記憶されたソフトウェアを実行し、メモリとの間でデータを通信し、ソフトウェアに従ってコントローラの動作を全体として制御するように構成されてもよい。
【0075】
コントローラ50の機能が動作しているとき、プロセッサは、メモリ内に記憶されたソフトウェアを実行し、メモリとの間でデータを通信し、ソフトウェアに従ってコントローラの動作を全体として制御するように構成されてもよい。オペレーティング・システムは、プロセッサによって読み取られるか、場合によってはプロセッサ内にバッファリングされ、その後、実行されてもよい。
【0076】
コントローラ50がソフトウェアで実装される場合、コントローラ50を実装するための命令は、任意のコンピュータ関連のデバイス、システム、若しくは方法によって、又はそれらと関連して使用するために、任意のコンピュータ可読媒体に記憶され得ることに留意されたい。いくつかの実施例では、このようなコンピュータ可読媒体は、メモリ若しくは記憶デバイスのいずれか又は両方に対応してもよい。本文書の文脈において、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ関連のデバイス、システム、若しくは方法によって、又はそれらと関連して使用するために、コンピュータ・プログラムを含むか、又は記憶できる、電子的、磁気的、光学的、若しくは他の物理的なデバイス又は手段である。システムを実装するための命令は、プロセッサ又は他のそのような命令実行システム、装置、又はデバイスによって、又はそれらと関連して使用するために、任意のコンピュータ可読媒体で具現化されてもよい。プロセッサを実例として言及しているが、いくつかの実施例では、このような命令実行システム、装置、又はデバイスは、命令実行システム、装置、又はデバイスから命令をフェッチし、命令を実行することができる、任意のコンピュータ・ベースのシステム、プロセッサを含むシステム、又は他のシステムであり得る。本文書の文脈において、「コンピュータ可読媒体」は、プロセッサ又は他のこのような命令実行システム、装置、又はデバイスによって、又はそれらと関連して使用するために、プログラムを記憶、通信、伝播、又は転送することができる任意の手段であり得る。
【0077】
このようなコンピュータ可読媒体は、例えば、電子、磁気、光学、電磁気、赤外線、又は半導体システム、装置、デバイス、又は伝播媒体であり得るが、これらに限定されない。コンピュータ可読媒体のより具体的な例、すなわち非網羅的なリストには、以下のもの、すなわち、1本又は複数のワイヤを有する電気接続(電子)、ポータブル・コンピュータ・ディスケット(磁気)、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)(電子)、読取り専用メモリ(ROM)(電子)、消去可能プログラマブル読取り専用メモリ(EPROM、EEPROM、又はフラッシュ・メモリ)(電子)、光ファイバ(光学)、及びポータブル・コンパクト・ディスク読取り専用メモリ(CDROM)(光学)が含まれる。プログラムは、例えば、紙又は他の媒体の光学走査を介して電子的に捕捉され、次いで必要に応じて適切な方法でコンパイル、解釈、或いは処理され、次いでコンピュータ・メモリに記憶され得るので、コンピュータ可読媒体は、プログラムが印刷される紙又は別の適切な媒体でさえあり得ることに留意されたい。
【0078】
コントローラ50がハードウェアで実装される代替の実施例では、コントローラ50は、それぞれが当技術分野でよく知られている以下の技術、すなわち、データ信号に関する論理関数を実装するための論理ゲートを有するディスクリート論理回路、適切な組合せ論理ゲートを有する特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブル・ゲート・アレイ(PGA)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのいずれか又は組合せで実装されてもよい。
【0079】
本発明の1つ又は複数の実施例の前述の説明は、例示及び説明の目的で提示されている。前述の説明は、網羅的であること、又は本発明を開示された正確な形態に限定するものではない。上記の教示を考慮して、多くの修正及び変形が可能である。本発明の範囲は、この詳細な説明によってではなく、本明細書に添付された特許請求の範囲によって限定されるものである。