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特許7038985硬化性組成物及びこれを用いてなる目地構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】硬化性組成物及びこれを用いてなる目地構造
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/02 20060101AFI20220314BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20220314BHJP
   C08K 5/06 20060101ALI20220314BHJP
   C08L 33/00 20060101ALI20220314BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20220314BHJP
   E04B 1/68 20060101ALI20220314BHJP
   E04F 13/00 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
C08L71/02
C08K5/103
C08K5/06
C08L33/00
C08K5/17
E04B1/68
E04F13/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018079579
(22)【出願日】2018-04-18
(65)【公開番号】P2018178120
(43)【公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2017081769
(32)【優先日】2017-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】池内 拓人
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-238614(JP,A)
【文献】特開2017-206610(JP,A)
【文献】特開2003-342523(JP,A)
【文献】特開2009-155368(JP,A)
【文献】特開2009-84515(JP,A)
【文献】特開2005-75894(JP,A)
【文献】特開2005-314683(JP,A)
【文献】特開2018-142695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
C09D 1/00-10/00、101/00ー201/10
C09J 1/00-5/10、9/00-201/10
C09K 3/00-3/12、3/20-3/32
E04B 1/68
E04F 13/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)を含む加水分解性シリル基を有する重合体と、
ショ糖脂肪酸エステル型界面活性剤(C)とを含むことを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
アルキルエーテル型界面活性剤(B)を更に含有することを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
アクリル系重合体(D)を更に含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
脂肪族アミン(E)を更に含有することを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
建築構造物の壁部を構成している壁部材と、
上記壁部材間に形成された目地部に充填された請求項1~4の何れか1項に記載の硬化性組成物の硬化物と
を含むことを特徴とする目地構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雰囲気中の湿気により硬化して、防汚効果に優れた硬化物を与える硬化性組成物、及びこれを用いてなる目地構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、架橋可能な加水分解性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体を含有する硬化性組成物が知られている(例えば、特許文献1)。硬化性組成物は、雰囲気中に含まれる湿気により架橋可能な加水分解性シリル基が加水分解した後に脱水縮合することによって、接着性に優れた硬化物を生じる。
【0003】
このような硬化性組成物は、例えば、建築構造物の外壁などにおいて、モルタル板、コンクリート板、ALC(Autoclaved Light-weight Concrete)板、金属板などの外壁部材間の接合部(いわゆる「目地部」)に充填することによって、外壁部材同士を接合するために用いられている。このように硬化性組成物を使用することによって、外壁部材間の接合部から建築構造物内部へ雨水が浸入することを抑制している。
【0004】
また、近年、建築構造物の外壁を構成している外壁部材の表面に防汚処理が施されていることがある。このような場合、外壁部材が汚れなくても、目地部に充填された硬化性組成物の硬化物が、埃や汚染物質によって汚れると、外壁の外観が損なわれる。従って、目地部に充填される硬化性組成物にも防汚効果が求められている。
【0005】
硬化性組成物に防汚性を付与するために、フッ素系界面活性剤を添加することが提案されているものの、フッ素系界面活性剤は高価であり、防汚効果を有する安価な硬化性組成物が所望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平2008-1833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、雰囲気中の湿気により硬化して、防汚効果に優れた硬化物を与える硬化性組成物、及びこれを用いてなる目地構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の硬化性組成物は、
加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)を含む加水分解性シリル基を有する重合体と、
ショ糖脂肪酸エステル型界面活性剤(C)とを含む。
【0009】
加水分解性シリル基を有する重合体は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)を含有する。
【0010】
[ポリアルキレンオキサイド(A)]
硬化性組成物に含まれているポリアルキレンオキサイド(A)は、加水分解性シリル基を有している。加水分解性シリル基とは、珪素原子に1~3個の加水分解性基が結合してなる基である。
【0011】
加水分解性シリル基の加水分解性基としては、特に限定されず、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。
【0012】
なかでも、加水分解性シリル基としては、加水分解反応が穏やかであることから、アルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、及びトリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;メチルジメトキシシリル基、及びメチルジエトキシシリル基などのジメトキシシリル基;並びに、ジメチルメトキシシリル基、及びジメチルエトキシシリル基などのモノアルコキシシリル基が挙げられる。なかでも、ジアルコキシシリル基がより好ましく、メチルジメトキシシリル基が特に好ましい。
【0013】
ポリアルキレンオキサイド(A)は、1分子中に平均して、直鎖状の場合には1~2個、分岐の場合には1~3個の加水分解性シリル基を有していることが好ましい。ポリアルキレンオキサイド(A)における加水分解性シリル基の数が1個以上であると、硬化性組成物の硬化性が向上する。また、ポリアルキレンオキサイド(A)における加水分解性シリル基の数が上記上限値以下であると、硬化性組成物の硬化物の機械的強度又は伸び性が向上する。また、ポリアルキレンオキサイド(A)は、その主鎖の両末端のうち少なくとも一方に加水分解性シリル基を有していることが好ましい。
【0014】
なお、ポリアルキレンオキサイド(A)中における、1分子当たりの加水分解性シリル基の平均個数は、1H-NMRにより求められるポリアルキレンオキサイド(A)中の加水分解性シリル基の濃度、及びGPC法により求められるポリアルキレンオキサイド(A)の数平均分子量に基づいて算出することができる。
【0015】
ポリアルキレンオキサイド系重合体(A)としては、主鎖が、一般式:-(R-O)n-(式中、Rは炭素数が1~14のアルキレン基を表し、nは、繰り返し単位の数であって正の整数である。)で表される繰り返し単位を含有する重合体が好ましく挙げられる。ポリアルキレンオキサイド系重合体の主鎖骨格は一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。
【0016】
ポリアルキレンオキサイド系重合体(A)の主鎖骨格としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイド共重合体、及びポリプロピレンオキサイド-ポリブチレンオキサイド共重合体などが挙げられる。なかでも、ポリプロピレンオキサイドが好ましい。ポリプロピレンオキサイドによれば、硬化後に優れたゴム弾性及び接着性に優れる硬化性組成物を提供することができる。
【0017】
ポリアルキレンオキサイド系重合体(A)の数平均分子量は、15000~50000が好ましく、16000~30000がより好ましい。ポリアルキレンオキサイド系重合体(A)の数平均分子量が15000以上であると、硬化性組成物の硬化物の機械的強度又は伸び性が向上する。ポリアルキレンオキサイド系重合体(A)の数平均分子量が50000以下であると、硬化性組成物の塗工性が向上する。
【0018】
なお、本発明において、ポリアルキレンオキサイド系重合体(A)の数平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値を意味する。GPC法による測定においては、例えば、GPCカラムとして東ソー製Shodex KF800Dを用い、溶媒としてクロロホルムなどを用いることができる。
【0019】
加水分解性シリル基を含有しているポリアルキレンオキサイド系重合体(A)は、市販されているものを用いることができる。例えば、主鎖骨格がポリプロピレンオキサイドであり、主鎖骨格の末端にメチルジメトキシシリル基を有しているポリアルキレンオキサイド系重合体としては、旭硝子社製 商品名「エクセスター S4530」、「エクセスター S2730C」などが挙げられる。
【0020】
硬化性組成物中における加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体中、20~100質量%が好ましく、30~80質量%がより好ましく、40~70質量%が特に好ましく、100質量%が最も好ましい。硬化性組成物中における加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)の含有量が20質量%以上であると、硬化性組成物の柔軟性が向上する。
【0021】
[アルキルエーテル型界面活性剤(B)]
硬化性組成物は、アルキルエーテル型界面活性剤(B)を含有していることが好ましい。
【0022】
アルキルエーテル型界面活性剤(B)は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル構造を有する非イオン性界面活性剤である。即ち、アルキルエーテル型界面活性剤は、ポリオキシアルキレン骨格とアルキル基とが酸素に結合したエーテル構造を有する。
【0023】
アルキルエーテル型界面活性剤(B)としては、例えば、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンミリステルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンひまし油エーテルなどが挙げられるが、硬化性組成物の防汚効果に優れているので、ポリオキシアルキレンデシルエーテル及びポリオキシエチレンオクチルエーテルが好ましく、ポリオキシエチレンデシルエーテル及びポリオキシエチレンオクチルエーテルがより好ましい。
【0024】
アルキルエーテル型界面活性剤(B)のアルキル基の炭素数は、8~22個が好ましく、8~16個がより好ましく、8~14個が特に好ましい。
【0025】
ポリオキシアルキレン骨格としては、ポリオキシエチレン骨格、ポリオキシプロピレン骨格、ポリオキシブチレン骨格などが挙げられ、一種類の骨格のみを含んでいても複数種類の骨格を含んでいてもよい。
【0026】
ポリオキシアルキレン骨格の重合度は、4~16が好ましい。ポリオキシアルキレン骨格の重合度が4以上であると、硬化性組成物の親水性が向上し防汚効果が向上する。ポリオキシアルキレン骨格の重合度が16以下であると、硬化性組成物の防汚性が向上するので好ましい。
【0027】
硬化性組成物中におけるアルキルエーテル型界面活性剤(B)の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体100質量部に対して3~100質量部が好ましく、5~50質量部がより好ましく、6~15質量部が特に好ましい。アルキルエーテル型界面活性剤(B)の含有量が3質量部以上であると、硬化性組成物の防汚効果が向上する。アルキルエーテル型界面活性剤の含有量が100質量部以下であると、硬化性組成物の硬化物の外観性が向上するので好ましい。
【0028】
[ショ糖脂肪酸エステル型界面活性剤(C)]
硬化性組成物は、ショ糖脂肪酸エステル型界面活性剤(C)を含有する。
【0029】
ショ糖脂肪酸エステル型界面活性剤(C)は、ショ糖の水酸基の少なくとも1個が脂肪酸によってエステル化された構造、又は、ショ糖の水酸基の少なくとも1個にアルキレンオキサイドが付加され且つアルキレンオキサイドの末端水酸基の少なくとも1個が脂肪酸によってエステル化された構造を有している。ショ糖脂肪酸エステル型界面活性剤(C)は、ショ糖の水酸基の少なくとも1個にアルキレンオキサイドが付加され且つアルキレンオキサイドの末端水酸基の少なくとも1個が脂肪酸によってエステル化された構造を有していることが好ましい。
【0030】
脂肪酸としては、特に限定されず、例えば、ラウリン酸(炭素数:12)、ミリスチン酸(炭素数:14)、パルミチン酸(炭素数:16)、ステアリン酸(炭素数:18)、オレイン酸(炭素数:18)、ペヘン酸(炭素数:22)、エルカ酸(炭素数:22)などが挙げられる。
【0031】
脂肪酸の炭素数は6~24個が好ましく、6~20個がより好ましく、10~16個が特に好ましい。脂肪酸の炭素数が6以上であると、硬化性組成物の防汚性が向上するので好ましい。
【0032】
ショ糖の水酸基の少なくとも1個にアルキレンオキサイドが付加され且つアルキレンオキサイドの末端水酸基の少なくとも1個が脂肪酸によってエステル化された構造を有しているショ糖脂肪酸エステル型界面活性剤は、市販品を用いることができる。このような市販品は、第一工業製薬社から商品名「N-1400-1」及び「N-1400-2」にて市販されている。
【0033】
硬化性組成物中におけるショ糖脂肪酸エステル型界面活性剤(C)の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体100質量部に対して3~100質量部が好ましく、5~50質量部がより好ましく、6~15質量部が特に好ましい。ショ糖脂肪酸エステル型界面活性剤の含有量が3質量部以上であると、硬化性組成物の防汚効果が向上する。ショ糖脂肪酸エステル型界面活性剤の含有量が100質量部以下であると、硬化性組成物の硬化物の伸び性が向上するので好ましい。
【0034】
[アクリル系重合体(D)]
硬化性組成物は、アクリル系重合体(D)を含有していることが好ましい。
【0035】
アクリル系重合体(D)は、加水分解性シリル基を有していてもよい。加水分解性シリル基としては、硬化性組成物の硬化物が長期間に亘って優れたゴム弾性を維持することができるので、アルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、及びトリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;メチルジメトキシシリル基、及びメチルジエトキシシリル基などのジメトキシシリル基;並びに、ジメチルメトキシシリル基、及びジメチルエトキシシリル基などのモノアルコキシシリル基が挙げられる。なかでも、ジアルコキシシリル基及びトリアルコキシリル基がより好ましく、トリアルコキシシリル基がより好ましく、トリメトキシシリル基が特に好ましい。
【0036】
アクリル系重合体(D)は、1分子中に平均して、0.8~2個の加水分解性シリル基を有しているのが好ましい。アクリル系重合体(D)は、1分子中に平均して、0.8~1.8個の加水分解性シリル基を有しているのがより好ましい。アクリル系重合体(D)は、1分子中に平均して、0.8~0.95個の加水分解性シリル基を有しているのがより好ましい。アクリル系重合体(D)における加水分解性シリル基の数が0.8個以上であると、硬化性組成物の硬化性が向上する。アクリル系重合体(D)における加水分解性シリル基の数が2個以下であると、硬化性組成物の硬化物の機械的強度又は伸び性が向上する。また、アクリル系重合体(D)は、その主鎖の両末端のうち少なくとも一方に加水分解性シリル基を有していることが好ましく、主鎖の両末端に加水分解性シリル基を有していることが好ましい。
【0037】
なお、アクリル系重合体(D)中における、1分子当たりの加水分解性シリル基の平均個数は、1H-NMRにより求められるアクリル系重合体(D)中の加水分解性シリル基の濃度、及びGPC法により求められるアクリル系重合体(D)の数平均分子量に基づいて算出することができる。
【0038】
アクリル系重合体(D)の主鎖骨格としては、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート系モノマーをラジカル重合して得られるアクリル系重合体が挙げられる。なお、(メタ)アクリレートは、メタクリレート又はアクリレートを意味する。
【0039】
アクリル系重合体(D)の主鎖を構成する(メタ)アクリレート系モノマーとして、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-3-メチルブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-[アクリロイルオキシ]エチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸、及び2-[アクリロイルオキシ]エチル-2-ヒドロキシプロピルフタル酸などが挙げられる。これらの(メタ)アクリレート系モノマーは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0040】
アクリル系重合体(D)において、他のモノマーを共重合することも可能である。このようなモノマーとしては、例えば、スチレン、インデン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン、p-クロロメチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブトキシスチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、安息香酸ビニル、珪皮酸ビニルなどのビニルエステル基を持つ化合物、無水マレイン酸、N-ビニルピロリドン、N-ビニルモルフォリン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、n-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、tert-アミルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル、安息香酸(4-ビニロキシ)ブチル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ブタン-1,4-ジオール-ジビニルエーテル、ヘキサン-1,6-ジオール-ジビニルエーテル、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール-ジビニルエーテル、イソフタル酸ジ(4-ビニロキシ)ブチル、グルタル酸ジ(4-ビニロキシ)ブチル、コハク酸ジ(4-ビニロキシ)ブチルトリメチロールプロパントリビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、6-ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、3-アミノプロピルビニルエーテル、2-(N,N-ジエチルアミノ)エチルビニルエーテル、ウレタンビニルエーテル、ポリエステルビニルエーテルなどのビニロキシ基を持つ化合物などを挙げることができる。これらのモノマーは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0041】
なかでも、アクリル系重合体(D)の主鎖骨格としては、ブチル(メタ)アクリレート及びメチル(メタ)アクリレートの共重合体が好ましく、ブチルアクリレート及びメチルメタクリレートの共重合体がより好ましい。主鎖骨格が上記共重合体からなるアクリル系重合体(D)によれば、硬化後に伸び性及び柔軟性が両立された硬化物を形成することが可能な硬化性組成物が得られる。
【0042】
アクリル系重合体(D)の重合方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、フリーラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、UVラジカル重合法、リビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法、リビングラジカル重合法などの各種重合法が挙げられる。
【0043】
アクリル系重合体(D)への加水分解性シリル基の導入方法としては、特に限定されず、例えば、分子中に不飽和基を導入したアクリル系重合体に、加水分解性シリル基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化する方法など、公知の方法を利用することができる。
【0044】
アクリル系重合体(D)の数平均分子量は、1000~50000が好ましく、2000~30000がより好ましい。アクリル系重合体(D)の数平均分子量が50000以下であると、硬化性組成物の塗工性が向上する。アクリル系重合体(D)の数平均分子量が1000以上であると、硬化性組成物の硬化物の機械的強度又は伸び性が向上する。
【0045】
なお、本発明において、アクリル系重合体の数平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値を意味する。GPC法による測定においては、例えば、GPCカラムとして東ソー製Shodex KF800Dを用い、溶媒としてクロロホルムなどを用いることができる。
【0046】
硬化性組成物中におけるアクリル系重合体(D)の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体及びアクリル系重合体(D)の総量中、20~70質量%が好ましく、30~60質量%がより好ましい。加水分解性シリル基を有する重合体及びアクリル系重合体(D)の総量におけるアクリル系重合体(D)の含有量が20質量%以上であると、硬化性組成物の硬化物は長期間に亘って優れたゴム弾性を維持する。加水分解性シリル基を有する重合体及びアクリル系重合体(D)の総量中におけるアクリル系重合体(D)の含有量が70質量%以下であると、硬化性組成物の塗工性が向上する。
【0047】
[脂肪族アミン(E)]
硬化性組成物は、脂肪族アミン(E)を含有していることが好ましい。脂肪族アミン(E)を含有していることによって、硬化性組成物の防汚効果が向上する。
【0048】
脂肪族アミンとしては、特に限定されず、例えば、ステアリルアミン、ココナッツアミン、オクチルアミン、オレイルアミン、牛脂アミンなどが挙げられ、ステアリルアミンが好ましい。
【0049】
脂肪族アミンの炭素数は、8~20個が好ましく、14~20個がより好ましい。脂肪族アミンの炭素数が8個以上であると、硬化性組成物は高温雰囲気下においても優れた防汚性を有する。脂肪族アミンの炭素数が20個以下であると、硬化性組成物の硬化物の伸び性が向上するので好ましい。
【0050】
硬化性組成物中における脂肪族アミン(E)の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体100質量部に対して0.1~10質量部が好ましく、0.5~5質量部がより好ましく、1~3質量部が特に好ましい。脂肪族アミン(E)の含有量が0.1質量部以上であると、硬化性組成物は優れた防汚性を有する。脂肪族アミン(E)の含有量が10質量部以下であると、硬化性組成物の硬化物の伸び性が向上するので好ましい。
【0051】
[可塑剤]
硬化性組成物は、可塑剤をさらに含んでいてもよい。可塑剤として、具体的には、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレートなどのフタル酸エステル類、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレンオキサイド類、及びアクリル系重合体などが挙げられ、アクリル系重合体が好ましい。アクリル系重合体は、加水分解性シリル基を含有していないアクリル系重合体を少なくとも含む。
【0052】
硬化性組成物中における可塑剤の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)100質量部に対して、100質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、1~70質量部が特に好ましい。可塑剤の含有量が高過ぎると、可塑剤がブリードを起こす虞れがある。
【0053】
[充填剤]
硬化性組成物は、充填剤を更に含んでいるのが好ましい。充填剤によれば、機械的強度に優れている硬化物を得ることが可能な硬化性組成物を提供することができる。
【0054】
充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、含水ケイ酸、無水ケイ酸、微粉末シリカ、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、クレー、タルク、カーボンブラック、及びガラスバルーンなどを挙げることができる。これらの充填剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なかでも、炭酸カルシウムが好ましく用いられる。
【0055】
炭酸カルシウムの平均粒子径は、0.01~5μmが好ましく、0.05~2.5μmがより好ましい。このような平均粒子径を有している炭酸カルシムによれば、機械的強度及び伸び性に優れている硬化物を得ることができ、且つ優れた接着性を有している硬化性組成物を提供することができる。
【0056】
又、炭酸カルシウムは、脂肪酸や脂肪酸エステルなどにより表面処理されているのが好ましい。脂肪酸や脂肪酸エステルなどにより表面処理されている炭酸カルシウムによれば、硬化性組成物にチキソトロピー性を付与できると共に炭酸カルシムが凝集することを抑制することができる。
【0057】
硬化性組成物中における充填剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体100質量部に対して1~700質量部が好ましく、10~200質量部がより好ましい。充填剤の含有量が1質量部以上であると、充填剤の添加による効果が十分に得られる。また、充填剤の含有量が700質量部以下であると、硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物が優れた伸び性を有する。
【0058】
[脱水剤]
硬化性組成物は、脱水剤をさらに含んでいるのが好ましい。脱水剤によれば、硬化性組成物を保存している際に、空気中などに含まれている水分によって硬化性組成物が硬化することを抑制することができる。
【0059】
脱水剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、及びジフェニルジメトキシシランなどのシラン化合物;並びにオルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、及びオルト酢酸エチル等のエステル化合物などを挙げることができる。これらの脱水剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なかでも、ビニルトリメトキシシランが好ましい。
【0060】
硬化性組成物中における脱水剤の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)100質量部に対して0.5~20質量部が好ましく、1~15質量部がより好ましい。脱水剤の含有量が0.5質量部以上であると、脱水剤により得られる効果が十分に得られる。また、脱水剤の含有量が20質量部以下であると、硬化性組成物が優れた硬化性を有する。
【0061】
[シラノール縮合触媒]
硬化性組成物は、シラノール縮合触媒を含有していることが好ましい。シラノール縮合触媒とは、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)が含有する加水分解性シリル基、及び、アクリル系重合体(D)が有する加水分解性シリル基などが加水分解することにより形成されたシラノール基同士の脱水縮合反応を促進させるための触媒である。
【0062】
シラノール縮合触媒としては、1,1,3,3-テトラブチル-1,3-ジラウリルオキシカルボニル-ジスタノキサン、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレート、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ビス(ジブチル錫ビストリエトキシシリケート)オキサイド、及びジブチル錫オキシビスエトキシシリケートなどの有機錫系化合物;テトラ-n-ブトキシチタネート、及びテトライソプロポキシチタネートなどの有機チタン系化合物などが挙げられる。これらのシラノール縮合触媒は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0063】
シラノール縮合触媒としては、1,1,3,3-テトラブチル-1,3-ジラウリルオキシカルボニル-ジスタノキサンが好ましい。このようなシラノール縮合触媒によれば、硬化性組成物の硬化速度を容易に調整することができる。
【0064】
硬化性組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体100質量部に対して1~10質量部が好ましく、1~5質量部がより好ましい。シラノール縮合触媒の含有量が1質量部以上であると、硬化性組成物の硬化速度を速くして、硬化性組成物の硬化に要する時間の短縮化を図ることができる。また、シラノール縮合触媒の含有量が10質量部以下であると、硬化性組成物が適度な硬化速度を有し、硬化性組成物の貯蔵安定性及び取扱性を向上させることができる。
【0065】
[他の添加剤]
硬化性組成物は、チキソ性付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、沈降防止剤、及び溶剤など他の添加剤を含んでいてもよい。なかでも、チキソ性付与剤、紫外線吸収剤、及び酸化防止剤が好ましく挙げられる。
【0066】
チキソ性付与剤は、硬化性組成物にチキソトロピー性を発現せることができるものであればよい。チキソ性付与剤としては、水添ひまし油、脂肪酸ビスアマイド、ヒュームドシリカなどが好ましく挙げられる。
【0067】
硬化性組成物中におけるチキソ性付与剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体100質量部に対して0.1~200質量部が好ましく、1~150質量部がより好ましい。チキソ性付与剤の含有量が0.1質量部以上であると、硬化性組成物にチキソトロピー性を効果的に付与することができる。また、チキソ性付与剤の含有量が200質量部以下であると、硬化性組成物が適度な粘度を有し、硬化性組成物の取扱性が向上する。
【0068】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられ、及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。硬化性組成物中における紫外線吸収剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましい。
【0069】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、及びポリフェノール系酸化防止剤などが挙げられ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく挙げられる。硬化性組成物中における酸化防止剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、0.3~10質量部がより好ましい。
【0070】
[光安定剤]
硬化性組成物は、ヒンダードアミン系光安定剤を含んでいることが好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤によれば、硬化後に優れたゴム弾性をより長期間に亘って維持することができる硬化性組成物を提供することができる。
【0071】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートの混合物、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ジブチルアミン・1,3,5-トリアジン・N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールとの重縮合物などが挙げられる。
【0072】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、NOR型ヒンダードアミン系光安定剤が好ましく挙げられる。NOR型ヒンダードアミン系光安定剤によれば、硬化後に経時的なゴム弾性の低下が抑制されている硬化性組成物を提供することができる。
【0073】
NOR型ヒンダードアミン系光安定剤は、ピペリジン環骨格に含まれている窒素原子(N)に酸素原子(O)を介してアルキル基(R)が結合しているNOR構造を有している。NOR構造におけるアルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~18がより好ましく、18が特に好ましい。アルキル基としては、直鎖状のアルキル基、分岐鎖状のアルキル基、及び、環状のアルキル基(飽和脂環式炭化水素基)が挙げられる。
【0074】
直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基などが挙げられる。分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチルなどが挙げられる。環状のアルキル基(飽和脂環式炭化水素基)としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。また、アルキル基を構成している水素原子が、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)又はヒドロキシル基などで置換されていてもよい。
【0075】
NOR型ヒンダードアミン系光安定剤としては、下記式(I)で示されるヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。
【0076】
【化1】
【0077】
NOR型ヒンダードアミン系光安定剤を用いる場合、NOR型ヒンダードアミン系光安定剤と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤又はトリアジン系紫外線吸収剤とを組み合わせて用いることが好ましい。これにより、硬化後に経時的なゴム弾性の低下がより高く抑制されている硬化性組成物を提供することができる。
【0078】
硬化性組成物中におけるヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体100質量部に対して、0.01~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましい。
【0079】
硬化性組成物は、接着性に優れていると共に、優れたゴム弾性を長期間に亘って維持することができる硬化物を形成することができることから、シーリング材、コーティング材、接着剤、及び塗料など各種用途に使用することができる。なかでも、シーリング材として用いられることが好ましく、目地構造用シーリング材として用いられることがより好ましい。
【0080】
更に、硬化性組成物の硬化物は、防汚効果に優れていることから、埃や汚染物質の付着を抑制し、特に屋外での使用にあっても、長期間に亘って美麗な外観を保持することができる。
【0081】
硬化性組成物を目地部に施工して目地構造を得る方法としては、硬化性組成物を目地部に充填した後に養生させて硬化させる方法が用いられる。得られる目地構造は、建築構造物の壁部を構成している壁部材と、互いに隣接する壁部材間に形成された目地部に充填された、硬化性組成物の硬化物とを有している。建築構造物の壁部としては、例えば、外壁、内壁、天井部などが挙げられる。壁部材としては、例えば、外壁部材、内壁部材、天井部材などが挙げられる。
【0082】
目地部は、特に制限されないが、建築構造物の外壁、内壁、及び天井における目地部などが挙げられる。本発明の硬化性組成物は、硬化後に優れたゴム弾性を長期間に亘って維持することができることから、気温や日照等の温度変化による部材の膨張や収縮による、或いは振動や風圧などの作用による目地部の幅の変化に対して優れた追随性を呈し、部材の損傷や建築構造物内への漏水を防止することができる。従って、建築構造物の外壁における目地部など、所謂、「ワーキングジョイント」とも呼ばれる幅の変化が大きい目地部をシーリングするために好適に用いられる。
【0083】
建築構造物の外壁における目地部としては、例えば、モルタル板、コンクリート板、窯業系サイディングボード、金属系サイディングボード、ALC板、及び金属板などの外壁部材間の接合部にできる目地部が挙げられる。
【発明の効果】
【0084】
本発明の硬化性組成物は、上述の如き構成を有しているので、硬化性組成物の硬化物は、防汚効果に優れており、硬化物に埃や汚染物質の付着が抑制され、長期間に亘って美麗な外観を維持する。
【発明を実施するための形態】
【0085】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【実施例
【0086】
実施例及び比較例の硬化性組成物の製造において下記の原料を使用した。
[加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)]
・ポリアルキレンオキサイド(A1)(メチルジメトキシシリル基を有し且つ主鎖骨格がポリプロピレンオキサイドであるポリアルキレンオキサイド、旭硝子株式会社製 商品名「エクセスター S2420」、1分子当たりのメチルジメトキシシリル基の平均個数:1.7個、分子量分布:1.49、数平均分子量:18990)
【0087】
[アルキルエーテル型界面活性剤(B)]
・アルキルエーテル型界面活性剤(B1)(ポリオキシアルキレンデシルエーテル、第一工業製薬社製 商品名「ノイゲンXL-40」、ポリオキシアルキレン骨格の重合度:4)
・アルキルエーテル型界面活性剤(B2)(ポリオキシアルキレンデシルエーテル、第一工業製薬社製 商品名「ノイゲンXL-50」、ポリオキシアルキレン骨格の重合度:5)
・アルキルエーテル型界面活性剤(B3)(ポリオキシアルキレンデシルエーテル、第一工業製薬社製 商品名「ノイゲンXL-70」、ポリオキシアルキレン骨格の重合度:7)
・アルキルエーテル型界面活性剤(B4)(ポリオキシアルキレンデシルエーテル、第一工業製薬社製 商品名「ノイゲンXL-100」、ポリオキシアルキレン骨格の重合度:10)
・アルキルエーテル型界面活性剤(B5)(ポリオキシアルキレンラウリルエーテル、第一工業製薬社製 商品名「ノイゲンLP-70」、ポリオキシアルキレン骨格の重合度:7)
【0088】
[ショ糖脂肪酸エステル型界面活性剤(C)]
・ショ糖脂肪酸エステル型界面活性剤(C1)(ポリステアリン酸スクロース、第一工業製薬社製 商品名「コスメライクS-10」)
・ショ糖脂肪酸エステル型界面活性剤(C2)(ジステアリン酸スクロース、第一工業製薬社製 商品名「コスメライクS-70」)
・ショ糖脂肪酸エステル型界面活性剤(C3)(ステアリン酸スクロース、第一工業製薬社製 商品名「コスメライクS-160」)
・ショ糖脂肪酸エステル型界面活性剤(C4)(ショ糖の水酸基の少なくとも1個にアルキレンオキサイドが付加され且つアルキレンオキサイドの末端水酸基の少なくとも1個が脂肪酸(ラウリル酸)によってエステル化された構造を有している、第一工業製薬社製 商品名「N-1400-1」)
・ショ糖脂肪酸エステル型界面活性剤(C5)(ショ糖の水酸基の少なくとも1個にアルキレンオキサイドが付加され且つアルキレンオキサイドの末端水酸基の少なくとも1個が脂肪酸(ステアリル酸)によってエステル化された構造を有している、第一工業製薬社製 商品名「N-1400-2」)
【0089】
[アクリル系重合体(D)]
・アクリル系重合体(D1)(主鎖骨格がメチルメタクリレート-n-ブチルアクリレート共重合体(メチルメタクリレート成分の含有量:25質量%、n-ブチルアクリレート成分の含有量:75質量%)からなり、且つ主鎖骨格の末端又は側鎖にトリメトキシシリル基を有しているアクリル系重合体、数平均分子量:2400、一分子量あたりのトリメトキシシリル基の平均個数:0.9個、東亞合成株式会社製 商品名「アルフォンUS-6110」)
【0090】
[脂肪族アミン(E)]
・ステアリルアミン
【0091】
[充填剤]
・コロイダル炭酸カルシウム(平均粒子径:80nm、脂肪酸による表面処理、丸尾カルシウム社製 商品名「カルファイン200M」)
・重質炭酸カルシウム(平均粒子径:1.0μm、脂肪酸による表面処理、日東粉化社製 商品名「NCC2310」)
・微粉末シリカ(アエロジル社製 商品名「アエロジルR972」)
【0092】
[脱水剤]
・ビニルトリメトシシラン(信越化学工業株式会社製 商品名「KBM-1003」)
【0093】
[シラノール縮合触媒]
・シラノール縮合触媒(1,1,3,3-テトラブチル-1,3-ジラウリルオキシカルボニル-ジスタノキサン、日東化成株式会社製 商品名「ネオスタンU-130」)
【0094】
[紫外線吸収剤]
・ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASFジャパン社製 商品名「チヌビン326」)
【0095】
[酸化防止剤]
・ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASFジャパン社製 商品名「イルガノックス1010」)
【0096】
[光安定剤]
・ヒンダードアミン系光安定剤(BASFジャパン社製 商品名「チヌビン770」)
【0097】
[その他の添加剤]
・アミノシランカップリング剤(N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製 商品名「KBM-603」)
・揺変剤(脂肪酸アマイドワックス、楠本化成社製 商品名「ディスパロン#6500」)
【0098】
(実施例1~16、比較例1~4)
加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)、アクリル系重合体(D)、アルキルエーテル型界面活性剤(B)、ショ糖脂肪酸エステル型界面活性剤(C)、ステアリルアミン、コロイダル炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、ビニルトリメトシシラン、シラノール縮合触媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、ヒンダードアミン系光安定剤、及び、アミノシランカップリング剤をそれぞれ表1に示した配合量となるようにして、密封した攪拌機中で減圧しながら均一になるまで混合することにより硬化性組成物を得た。
【0099】
得られた硬化性組成物について、水接触角、珪砂付着性、赤土付着性及びカーボン付着性を下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0100】
(水接触角)
ステンレス板上に、硬化性組成物を23℃及び相対湿度50%の雰囲気下で厚さ5mmとなるように塗工して14日間養生した。硬化性組成物の硬化物の表面に純水を0.1mL滴下し、1分後の接触角を接触角計で測定した。
【0101】
(硅砂付着性)
ステンレス板上に硬化性組成物を23℃及び相対湿度50%の雰囲気下で厚さ5mmとなるように塗工して1日間養生した。7号硅砂を硬化性組成物の硬化物の表面に振り掛け、硅砂の付着の有無を目視観察し、下記基準に基づいて評価した。
◎・・付着なし
○・・5cm角当たりの硅砂の付着数が50粒未満であった。
△・・5cm角当たりの硅砂の付着数が50粒以上で且つ200粒未満であった。
×・・5cm角当たりの硅砂の付着数が200粒以上であった。
【0102】
(赤土付着性)
ステンレス板上に硬化性組成物を23℃及び相対湿度50%の雰囲気下で厚さ5mmとなるように塗工して14日間養生した。赤土を硬化性組成物の硬化物の表面に振り掛けた。赤土の表面の色差を測色計を用いて測定した。色差が小さくなるほど、赤土の付着が少ないことが分かる。
◎・・ΔEが3未満であった。
○・・ΔEが3以上で且つ5未満であった。
△・・ΔEが5以上で且つ10未満であった。
×・・ΔEが10以上であった。
【0103】
(カーボン付着性)
ステンレス板上に硬化性組成物を23℃及び相対湿度50%の雰囲気下で厚さ5mmとなるように塗工して3日間養生した。硬化性組成物の硬化物の表面に5質量%のカーボン水を滴下し、水で洗い流した後、カーボンの表面の色差を測色計を用いて測定した。色差が小さくなるほど、赤土の付着が少ないことが分かる。
◎・・ΔEが3未満であった。
○・・ΔEが3以上で且つ5未満であった。
△・・ΔEが5以上で且つ10未満であった。
×・・ΔEが10以上であった。
【0104】
(H型引張物性)
硬化性組成物を用いて、JIS A1439 4.21に準拠して、H型試験体を作製した。具体的には、アルマイト処理を施したアルミニウム板(縦50mm×横50mm×厚み3mm)2枚を用い、これらのアルミニウム板の間にスペーサーを挟むことによってアルミニウム板間の中央部に直方体状の空間(縦12mm×横50mm×高さ12mm)を形成した。この空間に硬化性組成物を空気が入らないように充填した。硬化性組成物の充填後、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で硬化性組成物を14日間放置した。しかる後、硬化性組成物をさらに温度30℃の雰囲気下で14日間放置した。硬化性組成物を養生させて硬化させることにより、2枚のアルミニウム板が硬化性組成物の硬化物によって接着一体化されてなるH型試験体を作製した。
【0105】
そして、作製直後のH型試験体について、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で、引張速度50mm/分での引張試験をJIS A1439に準拠して行い、50%モジュラス[N/cm2]及び最大荷重時伸び[%]を測定した。得られた結果を、表1における「H型引張物性」の欄にそれぞれ記載した。
【0106】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の硬化性組成物は、硬化後に優れた防汚効果を長期間に亘って維持するので、例えば、建築構造物の外壁を構成している外壁部材の間に形成された接合部への充填材として好適に用いることができる。