(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】フライヤー装置
(51)【国際特許分類】
A47J 37/12 20060101AFI20220314BHJP
【FI】
A47J37/12 321
A47J37/12 391
(21)【出願番号】P 2017207198
(22)【出願日】2017-10-26
【審査請求日】2020-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】506200304
【氏名又は名称】株式会社アトラステクノサービス
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鯛 かおる
【審査官】石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-070524(JP,A)
【文献】特開昭61-276525(JP,A)
【文献】中国実用新案第201743534(CN,U)
【文献】中国実用新案第2634993(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライ食品を揚げ油で揚げてフライ製品を製造するフライヤー装置であって、
前記フライ食品を揚げる前記揚げ油を貯留するフライ槽と、
前記フライ槽の下方に設けられた前記揚げ油の加熱部と、
前記フライ槽と前記加熱部との間を仕切り、前記揚げ油の流通が可能な開口部を有する仕切板と、
前記仕切板の上面の前記フライ槽に配置された濾紙と、
前記揚げ油を前記加熱部から循環経路を介して前記フライ槽に戻す油循環ポンプと、
を備えて
おり、
前記濾紙は、前記フライ槽を形成する側壁の一辺から対向する他辺に延びるように形成され、
前記フライ槽は、前記濾紙を前記仕切板の上面近傍で保持するガイド部を有し、
前記仕切板は、前記濾紙が配置される位置に前記開口部を有し、
前記ガイド部は、前記仕切板の上面近傍の配置位置と、前記フライ槽に貯留された前記揚げ油から上方に退避した退避位置とに変位可能に構成されている、
ことを特徴とするフライヤー装置。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記仕切板の上面近傍に配置するガイド部材と、前記ガイド部材を前記フライ槽の中心方向に揺動させる揺動部材と、前記揺動部材を前記フライ槽の上部で支持する支持部材と、を有し、
前記ガイド部材を前記配置位置と前記退避位置とに変位させる変位機構を備え、
前記変位機構は、前記支持部材を中心に前記揺動部材を介して前記ガイド部材を揺動させる操作部を備えている、
請求項
1に記載のフライヤー装置。
【請求項3】
前記フライ槽内に配置するフライ籠と、
前記フライ籠を前記仕切板から所定距離上方に配置する配置枠と、
をさらに備え、
前記配置枠は、前記フライ槽内に配置した状態で前記ガイド部材の揺動を阻止する大きさに形成されている、
請求項
2に記載のフライヤー装置。
【請求項4】
前記濾紙は、前記フライ槽の側壁の一辺側に未使用状態でロール状に巻かれ、側壁の他辺側に向けて端部が延びる帯状濾紙で構成され、
前記仕切板は、前記開口部の両側部に前記帯状濾紙の位置決め部を有し、
前記フライ槽内で使用された前記帯状濾紙を前記フライ槽の側壁の他辺側で巻き取る濾紙巻取り機を備えている、
請求項1~
3のいずれか1項に記載のフライヤー装置。
【請求項5】
前記加熱部は、中央付近に前記油循環ポンプで吸引する前記揚げ油の吸引口を有し、
前記フライ槽は、前記油循環ポンプから前記フライ槽に戻す前記揚げ油の戻し口を前記帯状濾紙が巻き取られる位置から側方にずれた位置に有している、
請求項
4に記載のフライヤー装置。
【請求項6】
前記循環経路は、該循環経路内の前記揚げ油に作用する負圧を検知する負圧センサを備え、
前記負圧センサで所定の負圧を検知したことで前記帯状濾紙を所定量巻き取る濾紙巻取り機をさらに備えている、
請求項
4に記載のフライヤー装置。
【請求項7】
移動架台をさらに備え、
前記移動架台は、
前記フライ槽を最上部に設置し、前記フライ槽の下方に前記加熱部を設置し、前記加熱部の下方に前記帯状濾紙と前記油循環ポンプとを設置する枠体と、
前記移動架台を支持する車輪と、
前記加熱部と前記油循環ポンプを制御する制御部と、を備えている、
請求項
4~6のいずれか1項に記載のフライヤー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天ぷら、コロッケなどを揚げ油で揚げてフライ製品を製造するフライヤー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天ぷら、コロッケ、スナック菓子等のフライ食品(揚げる前の状態を「フライ食品」ともいう)は、揚げ油で揚げてフライ製品(揚げた後の状態を「フライ製品」という)となっている。フライ製品を製造するフライヤー装置として、例えば、フライ食品を連続して揚げ油で揚げてフライ製品を製造するものがある。
【0003】
この種の先行技術として、例えば、本出願人が出願したフライヤー装置がある(例えば、特許文献1参照)。このフライヤー装置では、フライ槽の揚げ油を循環ラインで循環させ、その揚げ油を濾過機で濾過してフライ槽に戻している。これにより、揚げ油の状態をきれいに保ち、連続してフライ食品を揚げ油で揚げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、コロッケやスナック菓子は、店舗等で揚げたてを提供したい場合がある。この場合、店舗等にフライヤー装置を設置することになるが、多くの店舗等では、小さいフライ槽に貯留した揚げ油で一定量のフライ製品を製造した後、フライ食品の製造を止めて、揚げ油内の揚げカスを取り除いている。このため、揚げカスを取り除いている間はフライ製品を製造することができず、効率が悪い。そこで、上記特許文献1などのフライヤー装置を設置して連続的にフライ食品を揚げてフライ製品を製造することが考えられる。
【0006】
しかし、上記フライヤー装置の場合、フライ食品を揚げるフライ槽と、その揚げ油を濾過する濾過機とが別体で構成されているため、広い設置面積が必要となる。このため、揚げ油を濾過する機能を有するフライヤー装置を設置できる店舗は広い設置面積を確保できる店舗に限られてしまい、濾過機能を有する小型化のフライヤー装置が切望されている。
【0007】
そこで、本発明は、濾過機能を有し、小型化が可能なフライヤー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、フライ食品を揚げ油で揚げてフライ製品を製造するフライヤー装置であって、前記フライ食品を揚げる前記揚げ油を貯留するフライ槽と、前記フライ槽の下方に設けられた前記揚げ油の加熱部と、前記フライ槽と前記加熱部との間を仕切り、前記揚げ油の流通が可能な開口部を有する仕切板と、前記仕切板の上面の前記フライ槽に配置された濾紙と、前記揚げ油を前記加熱部から循環経路を介して前記フライ槽に戻す油循環ポンプと、を備えている。
【0009】
この構成により、フライ食品を揚げるフライ槽と、フライ槽に貯留された揚げ油を加熱する加熱部とを上下方向に配置し、それらの間に濾過機能を備えさせることで、濾過機能を備えたフライヤー装置をコンパクトに構成することができる。そして、加熱部の揚げ油を油循環ポンプで循環経路を介してフライ槽に戻すことで、フライ槽の揚げ油は、フライ槽と加熱部との間に設けられた仕切板の開口部を通って循環するときに仕切板の上面に設けられた濾紙で濾過することができる。よって、きれいな揚げ油の状態を保ってフライ食品を連続的に揚げてフライ製品を製造することができる。
【0010】
また、前記濾紙は、前記フライ槽を形成する側壁の一辺から対向する他辺に延びるように形成され、前記フライ槽は、前記濾紙を前記仕切板の上面近傍で保持するガイド部を有し、前記仕切板は、前記濾紙が配置される位置に前記開口部を有し、前記ガイド部は、前記仕切板の上面近傍の配置位置と、前記フライ槽に貯留された前記揚げ油から上方に退避した退避位置とに変位可能に構成されていてもよい。
【0011】
このように構成すれば、濾紙はガイド部によってフライ槽の仕切板の上面近傍で保持された状態が保たれる。これにより、フライ槽の揚げ油を仕切板の開口部を通して循環させることで、揚げ油を濾過してきれいな状態を保つことができる。しかも、濾紙に詰まりを生じた場合は、濾紙をフライ槽内でガイドするガイド部を揚げ油の上方に退避させることで、濾紙の点検・交換などを容易に行うことができる。
【0012】
また、前記ガイド部は、前記仕切板の上面近傍に配置するガイド部材と、前記ガイド部材を前記フライ槽の中心方向に揺動させる揺動部材と、前記揺動部材を前記フライ槽の上部で支持する支持部材と、を有し、前記ガイド部材を前記配置位置と前記退避位置とに変位させる変位機構を備え、前記変位機構は、前記支持部材を中心に前記揺動部材を介して前記ガイド部材を揺動させる操作部を備えていてもよい。
【0013】
このように構成すれば、変位機構の操作部を操作することで支持部材を中心に揺動部材を揺動させて、ガイド部のガイド部材をフライ槽内の仕切板の上面近傍に配置する操作と、フライ槽の揚げ油から上方に退避させる操作とが容易にできる。よって、フライ槽内の点検や帯状濾紙の点検・交換などを容易に行うことができる。
【0014】
また、前記フライ槽内に配置するフライ籠と、前記フライ籠を前記仕切板から所定距離上方に配置する配置枠と、をさらに備え、前記配置枠は、前記フライ槽内に配置した状態で前記ガイド部材の揺動を阻止する大きさに形成されていてもよい。
【0015】
このように構成すれば、フライ籠を配置するための配置枠をフライ槽内に配置することでガイド部材の揺動が阻止され、ガイド部材による帯状濾紙のガイドを安定して維持することができる。
【0016】
また、前記濾紙は、前記フライ槽の側壁の一辺側に未使用状態でロール状に巻かれ、側壁の他辺側に向けて端部が延びる帯状濾紙で構成され、前記仕切板は、前記開口部の両側部に前記帯状濾紙の位置決め部を有し、前記フライ槽内で使用された前記帯状濾紙を前記フライ槽の側壁の他辺側で巻き取る濾紙巻取り機を備えていてもよい。
【0017】
このように構成すれば、帯状濾紙に詰まりを生じた場合、ロール状に巻かれた帯状濾紙を濾紙巻取り機で所定量巻き取ることで新しい帯状濾紙を仕切板の開口部の上面に配置して濾過機能を連続的に維持することができる。よって、フライ槽においてフライ食品を揚げる作業を連続的に行うことができる。
【0018】
また、前記加熱部は、中央付近に前記油循環ポンプで吸引する前記揚げ油の吸引口を有し、前記フライ槽は、前記油循環ポンプから前記フライ槽に戻す前記揚げ油の戻し口を前記帯状濾紙が巻き取られる位置から側方にずれた位置に有していてもよい。
【0019】
このように構成すれば、フライ槽の揚げ油を帯状濾紙を介して循環させるときに、帯状濾紙の状態に影響することなく循環させることができる。
【0020】
また、前記循環経路は、該循環経路内の前記揚げ油に作用する負圧を検知する負圧センサを備え、前記負圧センサで所定の負圧を検知したことで前記帯状濾紙を所定量巻き取る濾紙巻取り機をさらに備えていてもよい。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「負圧」は、通常圧力に対する負の圧力をいう。
【0021】
このように構成すれば、フライ槽内の帯状濾紙が詰ることで循環経路内が負圧になると、巻取り機が帯状濾紙を所定巻き取ることで新しい帯状濾紙が仕切板状に配置される。よって、帯状濾紙の目詰まりを生じている部分を巻き取り、帯状濾紙の新しい部分を仕切板上に配置して、揚げ油の濾過を連続的に行うことが自動的にできる。
【0022】
また、移動架台をさらに備え、前記移動架台は、前記フライ槽を最上部に設置し、前記フライ槽の下方に前記加熱部を設置し、前記加熱部の下方に前記帯状濾紙と前記油循環ポンプとを設置する枠体と、前記移動架台を支持する車輪と、前記加熱部と前記油循環ポンプを制御する制御部と、を備えていてもよい。
【0023】
このように構成すれば、移動架台を備えたコンパクトなフライヤー装置を構成することができ、フライ食品を揚げる場所などの任意の場所にフライヤー装置を移動させて効率良くフライ製品を製造することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、フライ槽の下方に濾紙と加熱部とを備えさせ、濾紙を通した揚げ油を加熱部からフライ槽に循環させることで、濾過機能を有するフライヤー装置の小型化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るフライヤー装置を示す正面図である。
【
図3】
図3(A)は、
図1に示すフライヤー装置の平面図であり、(B)は(A)に示すIII部の拡大図である。
【
図5】
図5は、フライ槽の内部に配置される配置枠を示す図面であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【
図6】
図6は、
図5の配置枠に支持されるフライ籠を示す図面であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【
図7】
図7は、
図1に示すフライヤー装置における帯状濾紙の取り付け状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、移動架台10を備えたフライヤー装置1を例に説明する。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における上下左右方向の概念は、
図1に示すフライヤー装置1に向かった状態における上下左右方向の概念と一致するものとする。
【0027】
(フライヤー装置の全体構成)
図1は、一実施形態に係るフライヤー装置1を示す正面図である。
図2は、
図1に示すフライヤー装置1の側面図である。
図3(A)は、
図1に示すフライヤー装置の平面図であり、(B)は(A)に示すIII部の拡大図である。なお、
図1では、制御盤92の図示を省略し、フライ槽20の内部を透視した状態で示している。また、
図3(A)では、仕切板40と配置枠70を取り外した状態とし、フライ槽20の右部に設けられているガイド部23の図示を省略している。
【0028】
この実施形態のフライヤー装置1は、車輪13を有する移動架台10を備えている。移動架台10は、枠体で構成されており、矩形状の底部枠11と、底部枠11から立設された側部枠12とを有している。底部枠11及び側部枠12は、型鋼材を用いることができる。そして、上記側部枠12の最上部にフライ槽20が設けられている。フライ槽20の下方には、揚げ油を加熱する加熱部30が設けられている。フライ槽20と加熱部30とは、移動架台10と一体的な構成となっている。
【0029】
フライ槽20は、平面視が矩形状の容器となっており、所定の深さを有している。加熱部30は、平面視がフライ槽20と同じ矩形状で、所定の深さを有している。フライ槽20と加熱部30との間には、中央部分が開放した区画板21が設けられている。区画板21は、フライ槽20の周囲に固定されている。区画板21の上面には、後述する仕切板40を位置決めする位置決めピン22が設けられている。仕切板40の詳細は後述する(
図4)。なお、仕切板40の位置決めは、位置決めピン22以外でもよい。
【0030】
加熱部30には、右側方から加熱ヒータ31が挿入されている。この実施形態では、3本の加熱ヒータ31が並設されている。加熱ヒータ31としては、油用プラグヒータを用いることができる。プラグヒータとしては、例えば、容量5kw程度のものを複数本並設して用いることができる。加熱ヒータ31は、フライ槽20の大きさに応じて必要出力のものを必要本数設ければよい。
【0031】
移動架台10の下方には、ベース板14が設けられている。ベース板14には、帯状濾紙50と油循環ポンプ32とが設けられている。この実施形態では、濾紙が帯状濾紙50で構成されており、帯状濾紙50は未使用状態の濾紙が芯材51の周囲に巻かれたものである。ロール状に巻かれた帯状濾紙50は、フライ槽20の側壁の一辺側(
図1の左辺側)において、ベース板14の上面に設けられた一対の支持アーム15に芯材51が支持されている。帯状濾紙50は、移動架台10から側方に出ないように配置されている。
【0032】
また、フライ槽20には、帯状濾紙50をガイドするガイド部23が設けられている。ガイド部23は、仕切板40の上面近傍に配置するガイド部材たるガイドローラ24と、このガイドローラ24をフライ槽20の中心方向に揺動させる揺動部材25と、この揺動部材25をフライ槽20の上部で支持する支持部材たる支持軸26とを有している。支持軸26は、揺動部材25を揺動させる支点であるとともに、帯状濾紙50の案内部材にもなっている。また、
図3(B)に示すように、支持軸26の両端部にはバネ座金26aが設けられており、揺動部材25を揺動させた状態の位置を維持するようになっている。
【0033】
揺動部材25には、フライ槽20に貯留される揚げ油Oの油面よりも上方となる位置に操作部27が設けられている。操作部27は、揺動部材25から側方に突出する軸部材などにできる。この操作部27により、フライ槽20に揚げ油Oが貯留されている状態でも、操作部27を持って揺動部材25を揺動させることができる。揺動部材25を内向きに揺動させることで、支持軸26を中心にガイドローラ24を仕切板40の上面近傍の配置位置(実線で示す位置)と、フライ槽20から上方に退避した退避位置(二点鎖線で示す位置)とに変位させることができる。揺動部材25には、ストッパ25aが設けられており、配置位置と退避位置とでストッパ25aが規制部材18に当接し、所定の配置位置と退避位置とで揺動が規制されるようになっている。このガイドローラ24を揺動させる機構が変位機構28である。
【0034】
このような変位機構28により、帯状濾紙50を仕切板40の上面近傍に配置するガイドローラ24を、フライ槽20内の仕切板40の上面近傍の配置位置に配置する操作と、フライ槽20の揚げ油Oから上方に退避した退避位置に退避させる操作とが容易にできる。よって、フライ槽20内の点検や、帯状濾紙50に詰まりを生じた場合は、帯状濾紙50をフライ槽20内でガイドするガイドローラ24を揚げ油Oの上方に退避させることができ、帯状濾紙50の点検・交換などを容易に行うことができる。
【0035】
上記帯状濾紙50は、移動架台10に設けられた下部案内ローラ16を介してフライ槽20の左上部に設けられた上部案内ローラ17へと延び、左側のガイド部23の支持軸26からフライ槽20の内部のガイドローラ24へと延びている。フライ槽20の内部に導かれた帯状濾紙50は、ガイドローラ24によって仕切板40の上面近傍を右方向に延び、右側のガイド部23のガイドローラ24からフライ槽20の右上部に設けられた支持軸26へと延びている。帯状濾紙50は、この支持軸26から下流側保持ローラ63と下流側従動ローラ64との間を通るように取り付けられている。下流側保持ローラ63と下流側従動ローラ64との間は、帯状濾紙50を挟んだ状態を保つようになっている。帯状濾紙50は、下流側保持ローラ63と下流側従動ローラ64との間を通った後、廃棄ボックス(図示略)に排出される。
【0036】
さらに、フライ槽20の右側には、下流側保持ローラ63と下流側従動ローラ64とに挟まれて保持されている帯状濾紙50を巻き取る濾紙巻取り機60が設けられている。濾紙巻取り機60は、駆動軸が上向きに配置されたモータ61と、駆動軸の回転を直交方向に変換する歯車機構62とを有している。歯車機構62としては、例えば、傘歯車を用いた歯車機構などを利用できる。濾紙巻取り機60は、モータ61を回転させることで歯車機構62を介して下流側保持ローラ63を回転させ、帯状濾紙50を巻き取るように構成されている。
【0037】
上記油循環ポンプ32は、揚げ油Oを吸引する吸引パイプ33が加熱部30の中央付近の下面に設けられた吸引口34に接続されている。油循環ポンプ32から揚げ油Oをフライ槽20に戻す循環パイプ35は、フライ槽20の側面に設けられた戻し口36に接続されている。モータ39で油循環ポンプ32を駆動することで、加熱部30の下面から吸引した揚げ油Oをフライ槽20の側面から戻すように循環させる。この揚げ油Oを循環させる経路が循環経路である。
【0038】
フライ槽20の側面に設けられている戻し口36は、帯状濾紙50の巻き取られる位置から側方(帯状濾紙50の送り方向と直交する方向)にずれた位置となっている(
図3)。これにより、フライ槽20に戻す揚げ油Oによって帯状濾紙50に歪み、撓みなどが生じることはなく、帯状濾紙50の状態に影響することなく揚げ油Oを循環させるようにしている。
【0039】
また、循環パイプ35には、二点鎖線で示すように途中から上方に延びる分岐パイプ37を設け、分岐パイプ37の上部に負圧センサ38を設けることができる。負圧センサ38は、制御部90と電気的に接続されている。分岐パイプ37の上部に空気溜まりを設け、負圧センサ38によって分岐パイプ37内の圧力変化を検知することで、揚げ油が通常圧力から所定の負圧になったことを検知するようにできる。負圧センサ38によって揚げ油Oに作用する圧力が負圧になったことを検知すると、帯状濾紙50に詰まりを生じているものと判断して、濾紙巻取り機60によって帯状濾紙50を自動的に所定量巻き取るようにできる。濾紙巻取り機60による帯状濾紙50の巻き取りは、後述する仕切板40の開口部41の全面の長さ分、開口部41の一部の長さ分、などに応じた長さを巻き取るように、制御部90によって下流側保持ローラ63を所定量回転させるように制御される。これにより、仕切板40の上面に新しい帯状濾紙50が配置されて濾過機能を回復することができる。
【0040】
さらに、加熱部30の下面には、ドレン配管100が接続されている。ドレン配管100にはバルブ101が設けられており、バルブ101を開放することにより揚げ油Oを排出することができる。
【0041】
移動架台10の正面と右側面には、制御部90が備えられている。この実施形態の制御部90は、正面に設けられた制御盤92と右側面に設けられた操作盤91とで構成されている。操作盤91の前面には、操作スイッチ93、揚げ油温度表示部94などが設けられている。制御部90の内部には、プロセッサ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ及びI/Oインターフェース等が備えられている。制御部90は、加熱部30の加熱ヒータ31による加熱温度の設定、油循環ポンプ32の駆動制御、負圧センサ38による負圧の検知、濾紙巻取り機60の駆動制御、などを行う。制御部90は、不揮発性メモリに保存されたプログラムに基づいてプロセッサが揮発性メモリを用いて演算処理することで実現される。制御部90は、1つの構成でもよい。
【0042】
(仕切板の構成)
図4は、
図1に示す仕切板40の平面図である。仕切板40は、所定の厚みの板材であり、上記フライ槽20の内部に挿入できる大きさの矩形状に形成されている。仕切板40には、中央部分に開口部41が設けられている。この実施形態の開口部41は、複数の穴部42が千鳥状に配置されたものとなっている。開口部41は、上面に配置される帯状濾紙50の幅寸法よりも狭い幅寸法で、上面近傍に配置される上記左右のガイドローラ24の間隔よりも狭い範囲となっている。すなわち、開口部41は、仕切板40の上面に配置される帯状濾紙50よりも小さい大きさとなっている。開口部41は、揚げ油Oの流通が可能で、帯状濾紙50による揚げ油Oの濾過を妨げない構成であればよい。
【0043】
また、仕切板40の上面には、図示する左方向から右方向に帯状濾紙50が送られるため、開口部41の両側部に、帯状濾紙50の送り方向と直行する方向に位置決め部43が設けられている。位置決め部43により、帯状濾紙50が送られるときの横ずれを防止している。位置決め部43は、角棒材を用いることができる。位置決め部43の両側方には、仕切板40の取り付け、取り外しを行うための把持部44が設けられている。
【0044】
さらに、仕切板40の周囲には、複数の位置決め穴45が設けられている。位置決め穴45は、上記フライ槽20の区画板21に設けられた位置決めピン22が挿入されるようになっている。仕切板40は、フライ槽20に挿入し、位置決め穴45を区画板21の位置決めピン22に挿入することで定位置に配置される。
【0045】
(配置枠の構成)
図5は、フライ槽20の内部に配置される配置枠70を示す図面であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。配置枠70は、矩形状の下部材71と、下部材71を吊下げるように設けられた側部材72とを有している。下部材71は、フライ槽20の幅方向は挿入可能な大きさで、左右方向は上記ガイドローラ24をフライ槽20の内部に配置された状態で、上記揺動部材25と所定の隙間を有する状態で揺動部材25の間に入る大きさとなっている。下部材71は、例えばL字状の型鋼材を用い、外側周囲に壁面が形成されるように接続したものを用いることができる。
【0046】
下部材71の幅方向の対向する位置には、側部材72が取り付けられている。側部材72はL字状に折り曲げられた板材を用いることができる。側部材72は、上部にフライ槽20の上端に係止する係止片73が形成され、係止片73から下方に延びる支持片74が形成されている。係止片73には、フライ槽20の上面に設けられたピン29に挿入する位置決め穴73aと取手73bが設けられている。支持片74の上下方向には、所定間隔で複数の取付け孔75が設けられている。側部材72は、この取付け孔75で下部材71と連結される。下部材71は、取付け孔75の連結位置を変更することで、係止片73からの距離を変更することができる。これにより、フライ槽20の上端から下部材71までの距離を変更して、フライ槽20の揚げ油Oに挿入するフライ籠80を仕切板40から所定距離上方に配置する位置調整ができる。
【0047】
配置枠70は、上記ガイド部23のガイドローラ24で帯状濾紙50を仕切板40の上面近傍に配置した後、フライ槽20の内部の揺動部材25の間に配置される。配置枠70は、配置された状態で、揺動部材25と所定の隙間を有する状態となる。この状態の揺動部材25は、フライ槽20の中心方向に揺動しようとしても配置枠70に当接するため、揺動部材25がフライ槽20の中心方向に揺動することが阻止される。
【0048】
(フライ籠の構成)
図6は、
図5の配置枠70に支持されるフライ籠80を示す図面であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。フライ籠80は、上記配置枠70の下部材71に支持される矩形状の籠となっており、上面が全て開放している。フライ籠80は、底面と側面周囲が開口部81を有する板材によって矩形状に形成されている。開口部81を有する板材としては、パンチングメタルなどの板材を用いることができる。フライ籠80は、エキスパンドメタルなどの金網で開口部を形成したものでもよい。フライ籠80の対向する2辺の上端部には、取手82が設けられている。フライ籠80は、取手82を持ってフライ槽20に挿入され、上記配置枠70に支持される。
【0049】
(フライヤー装置の動作説明)
図7は、
図1に示すフライヤー装置における帯状濾紙50の取り付け状態を示す正面図である。
図7では帯状濾紙50の取り付けに関する部分のみを示している。上記したフライヤー装置1によれば、先ず、フライ槽20の左右位置に設けられたガイド部23のガイドローラ24を上方に退避させた状態で、フライ槽20の下部に設けられた区画板21の上に仕切板40が配置される。仕切板40は、位置決め穴45が位置決めピン22に挿入されて位置保持される。この仕切板40によってフライ槽20と加熱部30とが仕切られる。
【0050】
そして、帯状濾紙50をフライ槽20の左側に設けられた上部案内ローラ17からフライ槽20の右側に設けられた上部案内ローラ17の上部に延ばし、下流側保持ローラ63と下流側従動ローラ64とによって挟んで保持する。その後、左右のガイド部23のガイドローラ24を内向きに揺動させて、帯状濾紙50を左側のガイドローラ24と右側のガイドローラ24とでフライ槽20の内部に配置する。
【0051】
これにより、
図7に示すように、帯状濾紙50は、フライ槽20の一辺に設けられた左側の上部案内ローラ17から左側の支持軸26を介して左側のガイドローラ24で仕切板40の上面近傍に延び、仕切板40の上面近傍を右側に延びる。仕切板40の右側に延びた帯状濾紙50は、右側のガイドローラ24から上方に延び、フライ槽20の対向する他辺に設けられた右側の支持軸26を介して下流側保持ローラ63と下流側従動ローラ64との間に延びるように取り付けられる。
【0052】
その後、配置枠70をフライ槽20の内部に挿入して配置する。配置枠70を配置することで、揺動部材25の内向きの揺動が阻止されるので、ガイドローラ24の位置が保たれて、帯状濾紙50の配置状態が保たれる。フライ槽20に貯留される揚げ油Oは、仕切板40を配置した後、帯状濾紙50を仕切板40の上面近傍に配置した後、配置枠70をフライ槽20の内部に配置した後、などに貯留すればよい。これにより、フライヤー装置1の準備が完了する。
【0053】
そして、フライヤー装置1が運転されると、加熱ヒータ31によって揚げ油Oが加熱され、油循環ポンプ32によって加熱部30からフライ槽20に揚げ油Oが循環させられる。その後、フライ食品が入れられたフライ籠80がフライ槽20に挿入され、配置枠70によって所定位置に配置される。この状態でフライ食品が揚げられてフライ製品となる。揚げられたフライ製品は、フライ籠80をフライ槽20から出すことで容易に取り出すことができる。
【0054】
また、フライ食品を揚げることで発生する揚げカスは、揚げ油Oを加熱部30からフライ槽20に循環させることで、帯状濾紙50によって取り除かれる。帯状濾紙50が揚げカスなどで詰ったとしても、帯状濾紙50を下流側に巻き取ることで新たな帯状濾紙50をフライ槽20の仕切板40上面に配置することができる。よって、フライヤー装置1を停止させること無く連続的にフライ食品を揚げてフライ製品を製造することが可能となる。しかも、上記フライヤー装置1によれば、負圧センサ38で循環パイプ35内の負圧を検知すると自動的に帯状濾紙50を送ることができるため、連続的に揚げ作業を行える状態を自動的に維持することができる。帯状濾紙50の送りは、負圧検知、所定時間間隔、などで自動的に行うようにできる。帯状濾紙50の送りは、使用者が任意に行うこともできる。
【0055】
さらに、帯状濾紙50に亀裂などを生じて交換やメンテナンスを行う必要が生じたとしても、フライ槽20から揚げ油Oを排出することなく、変位機構28によってガイドローラ24をフライ槽20から上方に退避させることで交換やメンテナンスを行うことができるので、効率のよいメンテナンスが可能となる。
【0056】
(総括)
以上のように、上記フライヤー装置1によれば、コンパクトな構成で、フライ槽20に貯留された揚げ油Oを濾過してきれいな状態に保つことができるので、フライ槽20においてフライ食品を連続的に揚げることが可能となる。従って、濾過機能を有するフライヤー装置1を、小さな設置面積の店舗等に備えさせることが可能となる。
【0057】
(変形例)
上記した実施形態では、ガイド部23に備えられたガイドローラ(ガイド部材)24をフライ槽20の中心方向に揺動させる例としているが、ガイド部23は、ガイドローラ(ガイド部材)24をフライ槽20の内部に配置する配置状態と、フライ槽20の揚げ油Oから上方に退避させた退避状態とに変位可能な構成であればよい。例えば、ガイド部23は、上下方向に移動させるように構成されたものでもよい。ガイド部23の構成は上記した実施形態に限定されるものではない。
【0058】
また、上記した実施形態は一例を示しており、フライ槽20の大きさ、帯状濾紙50の構成などは一例であり、揚げ油Oを加熱部30からフライ槽20に循環させて揚げカスを取り除いた揚げ油Oでフライ食品を揚げるように構成されたものであればよい。これらの構成は、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の構成を変更することは可能であり、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0059】
1 フライヤー装置
10 移動架台
13 車輪
14 ベース板
15 支持アーム
16 下部案内ローラ
17 上部案内ローラ
20 フライ槽
21 区画板
23 ガイド部
24 ガイドローラ(ガイド部材)
25 揺動部材
26 支持軸
27 操作部
28 変位機構
30 加熱部
31 加熱ヒータ
32 油循環ポンプ
34 吸引口
36 戻し口
38 負圧センサ
40 仕切板
41 開口部
43 位置決め部
50 帯状濾紙
60 濾紙巻取り機
63 下流側保持ローラ
64 下流側従動ローラ
70 配置枠
71 下部材
72 側部材
80 フライ籠
81 開口部
90 制御部
O 揚げ油