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特許7039006吸入、舌下又は頬側投与のための非晶質炭酸カルシウムの組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】吸入、舌下又は頬側投与のための非晶質炭酸カルシウムの組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/10 20060101AFI20220314BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220314BHJP
   A61K 47/30 20060101ALI20220314BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20220314BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220314BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20220314BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20220314BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20220314BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220314BHJP
   A61P 29/02 20060101ALI20220314BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20220314BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20220314BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220314BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220314BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20220314BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220314BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20220314BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20220314BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220314BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220314BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220314BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
A61K33/10 ZMD
A61K45/00
A61K47/30
A61K47/24
A61K47/12
A61K9/72
A61K9/10
A61K9/14
A61P35/00
A61P29/02
A61P1/00
A61P3/04
A61P9/00
A61P11/00
A61P15/00
A61P17/00
A61P19/00
A61P21/00
A61P25/00
A61P31/00
A61P37/02
A61P43/00
A61P43/00 105
【請求項の数】 39
(21)【出願番号】P 2017562621
(86)(22)【出願日】2016-06-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-06-28
(86)【国際出願番号】 IL2016050573
(87)【国際公開番号】W WO2016193983
(87)【国際公開日】2016-12-08
【審査請求日】2019-05-31
(31)【優先権主張番号】62/170,712
(32)【優先日】2015-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515217694
【氏名又は名称】アモーフィカル リミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ベン,ヨセフ
(72)【発明者】
【氏名】ブラム,イーガル,ドヴ
【審査官】鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-501676(JP,A)
【文献】特表2015-500333(JP,A)
【文献】特表2008-545845(JP,A)
【文献】国際公開第2014/024191(WO,A1)
【文献】特表2013-536845(JP,A)
【文献】特開2014-210782(JP,A)
【文献】Pure and Applied Chemistry,1997年,69(5),921-928
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 33/00-33/44
A61K 45/00
A61K 47/00-47/69
A61K 9/00ー9/72
A61P 1/00
A61P 3/04
A61P 9/00
A61P 11/00
A61P 15/00
A61P 17/00
A61P 19/00
A61P 21/00
A61P 25/00
A61P 31/00
A61P 35/00
A61P 37/02
A61P 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の安定化剤によって安定化された活性剤として非晶質炭酸カルシウム(ACC)を含む組成物であって、前記ACCが粒子の形態であり、前記組成物は、吸入、頬側、及び下投与からなる群から選択される投与様式のために配合され、使用される場合の前記組成物は、吸入、頬側、及び舌下投与からなる群から選択される投与様式と、経口、頬側、及び舌下投与から選択される追加の異なる投与様式とを組み合わせて使用される、組成物。
【請求項2】
前記組成物中の前記ACCが天然ACC又は合成ACCである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ACCが合成ACCである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記安定化剤が、ポリリン酸塩、リン酸化アミノ酸、ビスホスホネート、クエン酸、酒石酸、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリリン酸塩がトリリン酸塩、ピロリン酸塩、及びヘキサメタリン酸塩からなる群から選択され、前記リン酸化アミノ酸がホスホセリン又はホスホトレオニンであり、前記ビスホスホネートは、アレンドロン酸塩、エチドロン酸、ゾレドロン酸、及びメドロン酸からなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記安定化剤がポリリン酸塩又はビスホスホネートであり、前記安定化剤のP原子と前記ACCのCa原子とのモル比が1:90~1:1である、請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項7】
前記安定化剤のP原子と前記ACCのCa原子との間の前記モル比が、1:30~1:3又は1:25~1:5である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が乾燥粉末の形態である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記乾燥粉末中の含水量が30%(w/w)を超えない、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記乾燥粉末中の前記含水量が20%(w/w)未満、15%(w/w)未満、又は10%(w/w)未満である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
固体分散体又は懸濁液として配合された、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が増量剤を更に含む固体分散体である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が液体担体中においてACC懸濁液の形態である、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記液体担体が少なくとも80重量%の水を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記ACCが少なくとも1時間安定したままである、請求項13又は14に記載の組成物。
【請求項16】
前記ACCが少なくとも1日、7日、14日、1ヶ月、3ヶ月、又は6ヶ月間安定したままである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物が0.1%(w/w)~30%(w/w)のACCを含む、請求項13~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
少なくとも1種の追加の活性剤を更に含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
吸入投与用に配合された、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記粒子の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が20μm以下の粒子径を有する、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記粒子の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が15μm以下の粒子径を有する、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記粒子の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が10μm以下の粒子径を有する、請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
前記粒子の少なくとも70%が5μm以下の粒子径を有する、請求項19に記載の組成物。
【請求項24】
前記粒子の少なくとも80%が5μm以下の粒子径を有する、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記粒子の少なくとも90%が5μm以下の粒子径を有する、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物が乾燥粉末吸入用に構成された乾燥粉末の形態である、請求項19又は25に記載の組成物。
【請求項27】
使用される場合の前記組成物が、安定化されたACCの経口投与と組み合わせて投与される、請求項19~26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
使用される場合の前記組成物が、安定化されたACCの舌下投与と組み合わせて投与される、請求項19~26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
炭酸カルシウム治療に応答する疾患又は病態の治療に使用するための、請求項1~28のいずれか一項に記載の組成物及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物であって、前記医薬組成物は、吸入、頬側、及び舌下投与からなる群から選択される投与様式配合され、前記医薬組成物は、吸入、頬側、及び舌下投与からなる群から選択される投与様式と、経口、頬側、及び舌下投与から選択される追加の異なる投与様式とを組み合わせて投与され、前記疾患又は病態が、癌、及び疼痛からなる群から選択される、医薬組成物。
【請求項30】
前記疾患又は病態が癌である、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記癌は、肺癌、乳癌、及び骨癌からなる群から選択される、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記疾患又は病態が疼痛である、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項33】
安定化された前記ACCが0.1~5%ACCを8mlの用量で吸入投与される、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項34】
頬側及び/又は舌下投与される前記ACCの用量がACC2000mg/日以下である、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項35】
入用に配合され、吸入により投与される、請求項2933のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項36】
安定化されたACCの経口投与と組み合わせて投与される、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項37】
安定化されたACCの舌下投与と組み合わせて投与される、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項38】
乾燥粉末吸入器と共に使用されるように構成されたパッケージに包装された、請求項1~28のいずれか一項に記載の組成物を含む少なくとも1種の一定量の医薬組成物を含む容器。
【請求項39】
前記少なくとも1種の一定量の医薬組成物の吸入投与を可能にするように構成された、請求項38に記載の容器を含む吸入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入によって、頬側若しくは舌下投与によって投与されるのに好適な、少なくとも1種の安定化剤によって安定化された非晶質炭酸カルシウム(ACC)を含む組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
カルシウムは、人体において最も重要なミネラルの1つであると考えられている。このカルシウムは、骨密度を維持するために必要であり、神経伝達物質のエキソサイトーシスに必須であり、筋肉細胞の収縮に関与し、心臓において脱分極ミネラルとしてナトリウムに置き換わり、他の多くの生理機能に関与している。
【0003】
現在のサプリメントで使用されるカルシウムは、天然源から得たか、又は合成沈殿物から得たかに関わらず、有機及び無機カルシウム塩の両方を含むことができる。カルシウムの無機塩である炭酸カルシウムは、栄養補助食品市場で商業的に使用されている主要化合物である。炭酸カルシウムは、6種の既知の多形体を有し、そのうちの3種は無水結晶体(すなわち、方解石、アラゴナイト、及びバテライト)であり、そのうちの2種は水和され(すなわち、結晶性モノハイドロカルサイト及びイカアイト)、そのうちの1種は水和非晶体、すなわち非晶質炭酸カルシウム(ACC)である。これらの相のうち最も熱力学的に安定しているものは方解石であり、最も安定性の低いものはACCである。ACCは、過飽和溶液から沈降する形態であり、任意の元素又は化合物によって安定化されない場合、ACCは数秒以内に急速かつ完全に結晶化して、5種のうちのより安定している多形の1つになる。溶解度試験では、炭酸カルシウム多形体間の劇的な差異が示唆される。結晶相は難溶性であると考えられているが、非晶質形態はかなり可溶性である。
【0004】
自然界では、ACCは、一部の生物、主に、一時的なミネラル沈着部位でACCを安定化する能力が発現している甲殻類及び他の無脊椎動物によって利用されている。これらの生物は、カルシウムの周期的動員、吸収及び沈殿のため、非常に効率の高いミネラル源を必要とする。淡水ザリガニなどの一部の甲殻類では、ACCは胃石と称される特殊な一過性の貯蔵器官に大量に貯蔵される。
【0005】
非晶質炭酸カルシウムを含む様々な経口投与型配合物が開示されている。例えば、公開された国際特許出願第WO2005/115414号は、医薬及び栄養補助食品用のカルシウム組成物中で微粉末に粉砕された胃石器官の使用に関する。胃石成分を含む組成物を毎日経口摂取することにより、骨障害、骨折、及び癌などの病態の範囲を劇的に改善することが更に開示された(WO2008/041236)。様々な障害及び病態を治療するための、ACC及びリン酸化ペプチド又はアミノ酸を含む医薬組成物及び栄養補助組成物が、国際特許出願第WO2009/053967号に開示されている。しかし、経口投与が必ずしも実現可能であるか、又は十分であるわけではない。ACCを投与するための更なる方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、吸入により投与されるように配合された活性剤としての非晶質炭酸カルシウム(ACC)を含む組成物と、定量単位の本組成物を含む容器と、本容器を含む吸入器と、癌などのACC応答性疾患及び病態の治療におけるその使用を提供する。また、頬側及び/又は舌下及び歯肉投与用に配合されたACCを含む組成物も提供する。吸入用に配合された組成物、並びに頬側及び/又は舌下及び/又は歯肉投与用に配合された組成物は、別々に、又は互いに組み合わせて投与してもよい。
【0007】
一態様によれば、本発明は、少なくとも1種の安定化剤によって安定化された活性剤として非晶質炭酸カルシウム(ACC)を含む組成物であって、ACCが粒子の形態であり、組成物は、吸入、頬側、舌下及び歯肉投与からなる群から選択される投与様式のために配合される、組成物を提供する。
【0008】
いくつかの実施形態によれば、ACCは天然ACCである。別の実施形態によれば、ACCは、少なくとも1種の安定化剤によって安定化された合成ACCである。いくつかの実施形態によれば、安定化剤は、ポリリン酸塩、ビスホスホネート、リン酸化アミノ酸、クエン酸、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0009】
いくつかの実施形態によれば、本組成物は固体である。一実施形態によれば、組成物は乾燥粉末の形態である。このような乾燥粉末は、ある実施形態によれば、30重量%未満の水を含む。
【0010】
一実施形態によれば、組成物は、固体分散体として配合される。別の実施形態によるこうした分散体は、増量剤を更に含む。
【0011】
別の実施形態によれば、本組成物は、液体担体中においてACC懸濁液の形態で、配合される。いくつかの実施形態では、液体担体は水、注射用水、又は食塩水である。更なる実施形態によれば、ACCは、少なくとも1時間、1日、7日、14日、1ヶ月、又は少なくとも3ヶ月間、このような懸濁液中で安定したままである。
【0012】
本発明による任意の組成物は、少なくとも1つの追加の活性剤を更に含んでもよい。
【0013】
本発明による組成物は、いくつかの実施形態では、吸入投与用に配合される。いくつかの実施形態では、このような組成物の少なくとも1種の安定化剤で安定化したACC粒子の少なくとも90%は、20μm以下の粒子径を有する。他の実施形態では、粒子の少なくとも90%は、5μm以下の粒子径を有する。いくつかの実施形態によれば、吸入投与用に配合された組成物は、乾燥粉末吸入用に構成された乾燥粉末の形態である。
【0014】
別の態様によれば、本発明の組成物は医薬組成物である。
【0015】
更なる態様によれば、本発明は、炭酸カルシウム治療に応答する疾患又は病態の治療に使用するための、本発明の組成物及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物であって、吸入、頬側、歯肉、及び舌下投与からなる群から選択される投与様式のために配合される、医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態によれば、疾患又は病態は、疼痛、過剰増殖性疾患、皮膚疾患、神経障害、免疫障害、心血管疾患、肺疾患、栄養障害、繁殖障害、筋骨格障害、感染症、及び歯科疾患からなる群から選択される。
【0016】
ある実施形態では、医薬組成物は、吸入による疼痛の治療に使用される。ある実施形態では、医薬組成物は、吸入による癌又はその少なくとも1つの症状の治療に使用される。ある実施形態では、医薬組成物は、肉腫、癌腫、リンパ腫、及び黒色腫の治療に使用するためのものである。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、癌腫の治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、癌腫は肺癌である。いくつかの実施形態では、癌腫は乳癌である。更なる実施形態では、乳癌は、肺を含むがこれに限定されない他の器官への転移を有する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、経口投与可能なACCと組み合わせて使用するためのものである。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、吸入投与用に配合される。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、懸濁液として配合される。
【0018】
別の態様では、本発明は、乾燥粉末吸入器と共に使用されるように構成されたパッケージに包装され、上記の医薬組成物の少なくとも1種の定量を含む容器を提供する。
【0019】
ある態様では、本発明は、医薬組成物の少なくとも1種の一定量の吸入投与を可能にするように構成された、本発明の容器を含む吸入器を提供する。上記の少なくとも1種の一定量の医薬組成物を含む容器は、乾燥粉末吸入器と共に使用されるように構成されたパッケージに包装される。
【0020】
更に別の態様では、本発明は、少なくとも1種の安定化剤によって安定化されたACCを、吸入投与、頬側投与、舌下投与、歯肉投与、及びこれらの任意の組み合わせから選択される投与経路により対象に投与することを含む、その必要がある対象における炭酸カルシウム治療に応答する疾患又は病態を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態によれば、この方法は、本発明の組成物又は医薬組成物を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態によれば、疾患又は病態は、疼痛、過剰増殖性疾患、皮膚疾患、神経障害、免疫障害、心血管疾患、肺疾患、栄養障害、繁殖障害、筋骨格障害、感染症、及び歯科の問題からなる群から選択される。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、本方法は、少なくとも1種の安定化剤によって安定化された0.1~5%のACCを含む組成物を約8mlの用量で吸入投与することを含む。
【0022】
別の実施形態によれば、頬側及び/又は舌下投与されるACCの用量は、2000mg/日以下である。
【0023】
更なる態様において、本発明は、炭酸カルシウム治療に応答する疾患又は病態を治療するために、吸入投与、頬側、舌下、及び歯肉投与から選択される投与により投与するために配合された薬剤の調製における、本発明による組成物の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
一態様においては、本発明は、少なくとも1種の安定化剤によって安定化された活性剤として非晶質炭酸カルシウム(ACC)を含む組成物であって、ACCが粒子の形態であり、組成物は、吸入投与、頬側、舌下、及び歯肉投与からなる群から選択される投与用に配合された、組成物を提供する。
【0025】
「非晶質炭酸カルシウム」及び「ACC」という用語は、本明細書で同義に使用され、炭酸カルシウムの非晶質及び最も安定性の低い多形体を指す。
【0026】
本明細書で使用される「活性剤」という用語は、生物、例えばヒトなどの哺乳動物と接触すると、生理学的結果、例えば有益又は有用な結果を生じる任意の化合物又は化合物の混合物を指す。活性剤は、送達用組成物の他の成分、例えば担体、希釈剤、潤滑剤、結合剤、着色剤などと区別され得る。いくつかの実施形態では、活性剤はACCである。いくつかの実施形態では、組成物又は医薬組成物は、ACCと追加の活性剤との組み合わせを含む。ある実施形態では、追加の活性剤はビスホスホネートである。いくつかの実施形態では、活性剤はまた、送達組成物の別の成分、例えば担体、希釈剤、潤滑剤、結合剤、着色剤などの機能を提供することもある。
【0027】
本明細書で使用される「粒子」という用語は、上記に定義された安定化剤によって安定化されたACCの別個の微粒子又はナノ粒子、並びにそのアグリゲート又はアグロメレートを指す。いくつかの実施形態によれば、粒子は安定化されたACCの一次粒子である。塩基性ナノ粒子は、5~500nm又は10~300nm又は20~100nmの範囲にある。多くの場合、これらのナノ粒子は直ちに凝集し、凝集塊となって、はるかに大きな二次粒子となる。これらのアグリゲーション及びアグロメレーションは、その後、粉砕及び溶解技術によってより小さな粒子に破壊され得る。他の実施形態によれば、粒子は、一次粒子のアグリゲート又はアグロメレート、すなわち二次粒子である。
【0028】
本明細書で使用される「粒子径」という用語は、アグリゲートなどの少なくとも1つの寸法など、粒子の代表的な直径の測定値を指す。
【0029】
一実施形態によれば、投与は、吸入投与、頬側、舌下及び歯肉投与からなる群から選択される。
【0030】
本明細書で同義に使用される「吸入用に配合された」及び「吸入配合物」という用語は、対象者の気道に投与されたときに身体によって吸収され得る任意の配合物を意味する。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、ACCは天然ACCである。別の実施形態によれば、ACCは合成ACCである。
【0032】
本明細書で使用される「天然ACC」という用語は、天然源から単離されたか、又は誘導された任意のACCを指す。ACCの天然源の非限定的例としては、淡水甲殻類の胃石が挙げられる。
【0033】
ある実施形態では、ACCは、自然発生ACC源から産生される。ある実施形態では、自然発生ACC源は、本質的に、参照によってその全体が本明細書に援用される国際公開公報第2005/115414号に記載されているように、細粉末に粉砕された胃石器官又はその一部を含む。任意で、ACCは、自然発生ACCと合成ACCとの組み合わせを含む。
【0034】
本明細書で使用される「合成ACC」という用語は、一般に、ヒトのエクスビボで産生された任意のACCを指す。
【0035】
ある実施形態では、ACCは合成により生成される。上記実施形態のいずれか1つによれば、ACCは、少なくとも1種の安定化剤によって安定化される。
【0036】
本明細書で使用される「安定化剤」という用語は、ACCの産生、配合及び/又は貯蔵中に、炭酸カルシウムをその非晶質状態で保存する一助となる任意の物質を指す。ある実施形態では、安定化剤は単一の剤であってもよい。他の実施形態では、いくつかの安定化剤の使用が含まれる。
【0037】
ACC安定化剤
【0038】
安定化剤は、これらに限定されないが、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミン基、ホスフィノ基、ホスホノ基、ホスフェート基、スルホニル基、スルフェート基又はスルフィノ基から選択される1つ以上の官能基を有する分子を含むことができる。水酸化物と組み合わせたヒドロキシ含有化合物は、任意でカルボキシル基などの他の官能基も含有するが、ヒドロキシ基がエステル化されることはない。
【0039】
いくつかの実施形態によれば、安定化剤は、哺乳類、特にヒトの細胞又は生物に対して、毒性が低いか、又は毒性を有さない。いくつかの実施形態によれば、安定化剤は、食品、栄養補助食品又は医薬品グレードのものである。
【0040】
ある実施形態では、ACC安定化剤は、それぞれの場合において独立して、有機酸;リン酸化、ホスホン化、硫酸化又はスルホン化有機化合物;ヒドロキシカルボン酸のリン酸エステル又は硫酸エステル;有機アミン化合物;ヒドロキシ基を含む有機化合物;有機リン化合物又はその塩;リン酸化アミノ酸、及びその誘導体、ビスホスホネート化合物;有機リン化合物;有機ホスホン酸化合物;無機亜リン酸、上記のような複数の官能基を有する有機化合物、無機リン酸塩及びポリリン酸塩化合物;ポリリン酸塩鎖を有する有機化合物;有機界面活性剤;生体必須無機イオン;又はこれらの任意の組合せである。
【0041】
いくつかの実施形態によれば、ポリリン酸塩は、ナトリウム、カリウム、及びポリリン酸塩の他の必須カチオンからなる群から選択される生理学的に相溶性の水溶性ポリリン酸塩の塩である。ポリリン酸塩の非限定的例としては、ピロリン酸塩、トリリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、及びこれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、ポリリン酸塩は、有機又は無機ポリリン酸塩である。
【0042】
好適なビスホスホネートの非限定的例としては、エチドロン酸、ゾレドロン酸、メドロン酸、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0043】
有機酸は、アスコルビン酸、クエン酸、乳酸又は酢酸、シュウ酸、マロン酸、グルタコン酸、コハク酸、マレイン酸、乳酸、アコニット酸から選択されてもよく、かつ、任意で、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸など、少なくとも2つのカルボキシル基を有し、分子量が250g/mol以下の化合物が挙げられる。
【0044】
別の実施形態では、ヒドロキシカルボン酸のリン酸エステルは、ホスホエノールピルビン酸塩である。別の実施形態では、ヒドロキシカルボン酸のリン酸エステル又は硫酸エステルは、アミノ酸を含む。こうしたエステルの例は、ホスホセリン、ホスホトレオニン、スルホセリン、スルホトレオニン、及びホスホクレアチンである。
【0045】
水酸化物と組み合わせたヒドロキシ基含有化合物は、例えば、単糖、二糖、三糖、オリゴ糖、及び多糖(スクロースなど)、又はグリセロールなどの他のポリオールを含み得る。ヒドロキシ基含有化合物は、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸などのヒドロキシ酸、又はセリン若しくはトレオニンなどのヒドロキシ基含有アミノ酸を更に含んでもよい。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0046】
天然食品の又はヒトにおいて発見される摂食量として承認されているこうしたACC安定化剤の特定の非限定例としては、フィチン酸、クエン酸、二塩基性ピロリン酸ナトリウム、アデノシン-5’-一リン酸(AMP)ナトリウム塩、アデノシン5’-二リン酸(ADP)ナトリウム塩、及びアデノシン5’-三リン酸(ATP)二ナトリウム塩水和物、ホスホセリン、リン酸化アミノ酸、食品グレードの界面活性剤、ステアロイル乳酸ナトリウム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0047】
いくつかの実施形態によれば、安定化剤は、ホスホエノールピルビン酸塩、ホスホセリン、ホスホトレオニン、スルホセリン又はスルホトレオニンなどのヒドロキシカルボン酸のリン酸エステル又は硫酸エステルから選択される少なくとも1つの成分、並びに例えばスクロース、マンノース、グルコースなど、単糖、二糖、三糖、オリゴ糖及び多糖から選択されるヒドロキシ基含有有機化合物が挙げられる。ヒドロキシ基含有化合物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの少なくとも1種のアルカリ水酸化物を更に含み得る。リン酸化された酸は、オリゴペプチド及びポリペプチド中に存在し得る。本発明の他の実施形態では、安定化剤は、モノカルボン酸又は複数のカルボン酸、例えばジカルボン酸又はトリカルボン酸から選択される有機酸である。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。有機酸は、上記で定義したとおりであってもよい。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態では、ACC安定化剤は、リン酸化アミノ酸、ポリオール、及びこれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、安定されたACCは、有機化合物のヒドロキシ基でリン酸化が行われる安定化剤として、リン酸化化合物を含む。いくつかの実施形態では、安定化したACCは、クエン酸、ホスホセリン、ホスホトレオニン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される安定化剤を含む。リン酸塩、亜リン酸塩、ホスホン酸基、及びそれらの塩又はエステルを含む安定化剤の非限定的例としては、フィチン酸、リン酸ジメチル、リン酸トリメチル、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸テトラエチル、リブロースビスリン酸、エチドロン酸、及び他の医学的ビスホスホネート、3-ホスホグリセリン酸の塩、グリセロアルデヒド3-リン酸塩、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸ナトリウム塩、ジエチレントリアミンペンタキス(メチルホスホン酸)、ニトリロトリ(メチルホスホン酸)、5-ホスホ-D-リボース1-ビスリン酸五ナトリウム塩、アデノシン5’-二リン酸ナトリウム塩、アデノシン5’-三リン酸二ナトリウム塩水和物、α-D-ガラクトサミン1-リン酸塩、2-ホスホ-L-アスコルビン酸トリナトリウム塩、α-D-ガラクトース1-リン酸ジカリウム塩5水和物、α-D-ガラクトサミン1-リン酸塩、O-ホスホリルエタノールアミン、二ナトリウム塩水和物、2,3-ジホスホ-D-グリセリン酸五ナトリウム塩、ホスホ(エノール)ピルビン酸一ナトリウム塩水和物、D-グリセルアルデヒド3-リン酸塩、sn-グリセロール3-リン酸リチウム塩、D-(-)-3-ホスホグリセリン酸二ナトリウム塩、D-グルコース6-リン酸ナトリウム塩、ホスファチジン酸、イバンドロン酸ナトリウム塩、ホスホノ酢酸、DL-2-アミノ-3-ホスホノプロピオン酸、又はこれらの組み合わせが挙げられる。生体必須無機イオンとしては、とりわけ、Na、K、Mg、Zn、Fe、P、S、N、酸化物の相ではP若しくはS、又はアンモニア基又はニトロ基としてのN、を含むことができる。
【0049】
ACCは、任意で、ホスホセリンとクエン酸の組み合わせによって安定化される。
【0050】
安定化したACCは、2種以上の安定化剤、例えば2種の安定化剤によって安定化されてもよい。いくつかの実施形態では、第1の安定化剤及び第2の安定化剤は類似している。他の実施形態では、第1の安定化剤及び第2の安定化剤は異なる安定化剤である。第1及び第2の安定化剤は、それぞれ独立して上記に定義されたとおりであってもよい。安定化したACCは、3種以上の安定化剤を含むことができ、安定化剤は同じでも異なっていてもよい。安定化したACCは3種以上の安定化剤を含むことができ、ACCが形成され、沈降する間に1種以上の安定化剤をACCに添加する。
【0051】
いくつかの実施形態によれば、ACCは合成ACCであり、上記に定義された少なくとも1種の安定化剤によって安定化される。
【0052】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1種の安定化剤は、ポリリン酸塩、ビスホスホネート、リン酸化アミノ酸、クエン酸、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、2種以上の安定化剤、例えば、2種、3種、又は4種の安定化剤が添加される。
【0053】
いくつかの実施形態によれば、安定化剤は、ポリリン酸塩又はその薬学的に許容される塩である。本明細書で使用される「ポリリン酸塩」という用語の非限定的例は、POのポリマー性エステルを指す。いくつかの実施形態によれば、ポリリン酸塩は、ポリリン酸ナトリウム及びポリリン酸カリウムからなる群から選択される生理学的に相溶する水溶性ポリリン酸塩の塩である。いくつかの実施形態では、ポリリン酸塩は、無機ポリリン酸塩又はその薬学的に許容される塩である。このような塩の非限定的例は、Na、K、Mg、Mn、及びZnである。いくつかの実施形態によれば、無機リン酸塩は、2~10個のリン酸基、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のリン酸基を含む。いくつかの実施形態によれば、ポリリン酸塩は、ピロリン酸塩、トリリン酸塩、及びヘキサメタリン酸塩から選択される。一実施形態によれば、安定化剤は、ピロリン酸塩、又はピロリン酸ナトリウムなど、その薬学的に許容される塩である。別の実施形態によれば、安定化剤は、トリリン酸塩、又はトリリン酸ナトリウムなど、その薬学的に許容される塩である。用語「トリリン酸塩」及び「トリポリリン酸塩」は、本明細書で同義に使用される。更なる実施形態によれば、安定化剤は、ヘキサメタリン酸塩、又はヘキサメタリン酸ナトリウムなど、その薬学的に許容される塩である。
【0054】
いくつかの実施形態によれば、安定化剤は、ビスホスホネート又はその薬学的に許容される塩である。塩の非限定的例は、Na、K、Mg、Mn、及びZnである。
【0055】
本明細書で使用される「ビスホスホネート」という用語は、2つのホスホネート(PO(OH))基を有する有機化合物を指す。この用語は更に、PO-有機-POの骨格を有する化合物に更に関する。最も典型的なものは、骨粗鬆症を治療するための医薬品として使用される一連のビスホスホネートである。いくつかの実施形態によれば、ビスホスホネートは、エチドロン酸、ゾレドロン酸、メドロン酸、アレンドロン酸、及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される。いくつかの実施形態によれば、安定化剤は、エチドロン酸又はその薬学的に許容される塩である。別の実施形態によれば、安定化剤は、ゾレドロン酸又はその薬学的に許容される塩である。更なる実施形態によれば、安定化剤は、メドロン酸又はその薬学的に許容される塩である。ある実施形態によれば、安定化剤は、アレンドロン酸又はその薬学的に許容される塩である。
【0056】
ある実施形態によれば、安定化剤は、リン酸化アミノ酸である。一実施形態によれば、リン酸化アミノ酸はホスホセリンである。別の実施形態によれば、リン酸化アミノ酸はホスホトレオニンである。
【0057】
いくつかの実施形態によれば、安定化剤は有機酸である。ある実施形態によれば、有機酸は、アスコルビン酸、クエン酸、乳酸、酢酸、シュウ酸、マロン酸、グルタコン酸、コハク酸、マレイン酸、乳酸、アコニット酸から選択され、任意で、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸などの2つのカルボキシル基を有し、分子量が250g/mol以下の化合物が挙げられる。1つの特定の実施形態によれば、安定化剤はクエン酸である。
【0058】
いくつかの実施形態によれば、ACC組成物は、上記で開示した安定化剤の組み合わせを含む。
【0059】
いくつかの実施形態によれば、安定化剤は、上記に定義されたポリリン酸塩又はビスホスホネートであり、安定化剤のP原子とACCのCa原子とのモル比(P:Caモル比)は、約1:90~1:1である。一実施形態では、P:Caモル比は約1:40~約1:1である。更なる実施形態では、P:Caモル比は、約1:35~約1:2である。ある実施形態では、P:Caモル比は、約1:30~約1:3である。ある実施形態では、P:Caモル比は、約1:28~約1:3である。他の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:4である。更なる実施形態では、P:Caモル比は、約1:20~約1:5である。別の実施形態では、P:Caモル比は、約1:20~約1:6である。特定の実施形態では、P:Caモル比は、約1:15~約1:5である。別の特定の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:5である。いくつかの実施形態によれば、このようなポリリン酸塩は、ピロリン酸塩、トリリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、又はそれらの薬学的に許容される塩である。別の実施形態によれば、ビスホスホネートは、アレンドロン酸、エチドロン酸、ゾレドロン酸、又はメドロン酸であり、P:Caモル比は、上記に定義されたとおりである。
【0060】
いくつかの実施形態によれば、安定化剤として、ポリリン酸塩又はビスホスホネートを含むこのような組成物のカルシウム含量(Ca含量)は、約1重量%~約39重量%、約5重量%~約39重量%、約10重量%~約39重量%、約15重量%~約39重量%、約20重量%~約38重量%、約25重量%~約38重量%、又は約30重量%~約38重量%である。用語「Ca含量」及び「カルシウム含量」は、本明細書では同義に使用され、最終組成物中でのACCのカルシウム含量を指す。
【0061】
ある実施形態では、P:Caモル比は約1:40~約1:1であり、Ca含量は約20重量%~約39重量%である。いくつかの実施形態では、モル比は1:28~約1:3であり、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。別の実施形態では、モル比は約1:25~約1:5であり、Ca含量は約30重量%~約36重量%である。
【0062】
いくつかの実施形態によれば、ACCは天然ACCである。
【0063】
上記実施形態のいずれか1つによれば、組成物は固体である。別の実施形態によれば、このような組成物は乾燥粉末の形態である。
【0064】
一実施形態によれば、本発明の組成物は、吸入投与、頬側、舌下、又は歯肉投与用に配合された乾燥粉末の形態であり、ピロリン酸塩、トリリン酸塩、及びヘキサメタリン酸塩などのポリリン酸塩;アレンドロン酸、エチドロン酸、ゾレドロン酸、及びメドロン酸などのビスホスホネート;ホスホセリン;ホスホトレオニン;クエン酸;及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される安定化剤を含む。一実施形態では、組成物は、安定化剤として、本明細書で定義されるポリリン酸塩又はビスホスホネートを含み、P:Caモル比が約1:40~約1:1である。更なる実施形態では、P:Caモル比は、約1:35~約1:2である。ある実施形態では、P:Caモル比は、約1:30~約1:3である。他の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:4である。別の特定の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:5である。更なる実施形態では、このような組成物のCa含量は、約20重量%~39重量%、約30重量%~約38重量%、約32重量%~約38重量%、又は約30重量%~約36重量%である。ある実施形態では、P:Caモル比は約1:40~約1:1であり、Ca含量は約20重量%~約38重量%である。いくつかの実施形態では、モル比は1:28~約1:3であり、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。
【0065】
一実施形態によれば、本発明の組成物は、乾燥粉末の形態であり、ACCは天然ACCである。
【0066】
いくつかの実施形態によれば、乾燥粉末の含水量は30%を超えない。したがって、いくつかの実施形態では、乾燥粉末の含水量は20%(w/w)未満、15%(w/w)未満又は10%(w/w)未満である。いくつかの実施形態では、乾燥粉末組成物は、5%未満の水を含む。他の実施形態では、乾燥粉末組成物は、約5重量%~約30重量%、又は約5重量%~約25重量%の水を含む。別の実施形態によれば、組成物は、約10重量%~約20重量%の水を含む。更なる実施形態によれば、組成物は、約10重量%~約25重量%の水を含む。ある実施形態では、上記の組成物は、1~99重量%のACCを含む乾燥粉末である。
【0067】
上記実施形態のいずれか1つによれば、組成物は安定している。
【0068】
「安定している」という用語は、本明細書では、炭酸カルシウムが約30%未満又は約30%の結晶性炭酸カルシウムを有する固体形態で、一定期間、例えば少なくとも約7日間非晶質状態のままであることを示すために使用される。いくつかの実施形態では、ACCは全く結晶化しない。他の実施形態によれば、ACCの一部は結晶性炭酸カルシウムに変換する。いくつかの実施形態では、ACCの30%以下が結晶形態に変換し、これにより、組成物は、全炭酸カルシウムの30%未満の結晶性炭酸カルシウム(CCC)を含む。ある実施形態では、組成物は、全炭酸カルシウムの25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、又は5%未満のCCCを含む。いくつかの実施形態によれば、組成物は、少なくとも1ヶ月間安定している。他の実施形態によれば、組成物は、少なくとも3ヶ月間安定している。更なる実施形態によれば、組成物は、6ヶ月間安定している。ある実施形態によれば、組成物は、少なくとも1年間安定している。特定の実施形態によれば、組成物は、少なくとも2年まで安定している。
【0069】
いくつかの実施形態によれば、上記実施形態のいずれか1つによる組成物は、固体分散体又は懸濁液の形態である。
【0070】
本明細書で使用する「固体分散体」という用語は、固体状態の不活性担体又はマトリックス中の本発明の固体組成物を指し、固体混合物系を含む。
【0071】
本明細書で使用される「懸濁液」という用語は、液体担体中に分散された固体粒子の組成物を指す。
【0072】
本明細書で使用される用語「液体担体」及び「水性担体」は、投与される活性剤、例えばACCが懸濁される水性ビヒクルを同義的に指す。水性担体の非限定的例としては、水及び水性溶液(例えば、生理食塩水)が挙げられる。
【0073】
一実施形態では、組成物は固体分散体の形態である。このような組成物は、本発明の固体組成物、例えば粉末の形態の組成物を含み、増量剤を更に含む。
【0074】
本明細書で使用される「増量剤」という用語は、本明細書に記載の1種以上の活性物質(すなわち、ACC)と組み合わせて、活性物質を取り扱い、測定し、かつ/又は投与できるその容易さを増すことができる1種以上の成分を指す。任意により、増量剤は、活性剤又はACC組成物と類似のサイズ及び重量特性を有する粒子を有する。一実施形態では、増量剤は不活性であり、吸入可能である。
【0075】
いくつかの実施形態によれば、固体分散体は、上記に定義された少なくとも1種の安定化剤によって安定化されたACCを約1重量%~約99重量%含む。他の実施形態によれば、固体分散体は、約5重量%~約95重量%のACCを含む。他の実施形態によれば、固体分散体は、約10重量%~約90重量%のACCを含む。他の実施形態によれば、固体分散体は、約15重量%~約85重量%のACCを含む。他の実施形態によれば、固体分散体は、約20重量%~約80重量%のACCを含む。他の実施形態によれば、固体分散体は、約25重量%~約75重量%のACCを含む。他の実施形態によれば、固体分散体は、約30重量%~約70重量%のACCを含む。他の実施形態によれば、固体分散体は、約35重量%~約65重量%のACCを含む。他の実施形態によれば、固体分散体は、約40重量%~約60重量%のACCを含む。他の実施形態によれば、固体分散体は、約45重量%~約55重量%のACCを含む。
【0076】
一実施形態によれば、本組成物は、液体担体中にACCを含む懸濁液の形態である。
【0077】
いくつかの実施形態によれば、液体担体は、少なくとも80重量%の水を含む。ある実施形態では、液体担体は、少なくとも85重量%の水を含む。ある実施形態では、液体担体は、少なくとも90重量%の水を含む。ある実施形態では、液体担体は、少なくとも95重量%又は99.9重量%までの水を含む。液体担体は、任意で、生理学的食塩水、又は吸入用の任意の他の許容される医薬組成物である。
【0078】
一実施形態によれば、懸濁液の形態の組成物のACCは、少なくとも1時間安定したままである。他の実施形態によれば、懸濁液の形態である組成物のACCは、少なくとも1日、7日、14日、1ヶ月、3ヶ月、又は6ヶ月間安定したままである。一実施形態によれば、懸濁液の形態の組成物のACCは、少なくとも1日間安定したままである。別の実施形態によれば、組成物は、少なくとも2日間又は3日間安定している。更なる実施形態によれば、懸濁液の形態の組成物のACCは、少なくとも7日間安定したままである。ある実施形態によれば、懸濁液の形態の組成物のACCは、少なくとも14日間安定したままである。更に別の実施形態によれば、懸濁液の形態の組成物のACCは、少なくとも1ヶ月間安定したままである。いくつかの実施形態によれば、懸濁液の形態の組成物のACCは、少なくとも3ヶ月間安定したままである。
【0079】
いくつかの実施形態によれば、上記に定義された懸濁液の形態の組成物は、少なくとも1種の安定化剤によって安定化された約0.01重量%~約40重量%(w/w)のACCを含む。更なる実施形態では、懸濁液の形態の組成物は、約0.1重量%~約30重量%のACCを含む。別の実施形態によれば、懸濁液の形態の組成物は、約1重量%~約15重量%、約2重量%~約10重量%、又は約1重量%~約5重量%のACCを含む。ある実施形態では、懸濁液は約1%のACCを含む。いくつかの他の実施形態によれば、懸濁液の形態の組成物は、少なくとも0.1重量%、少なくとも1重量%、少なくとも5重量%、又は少なくとも10重量%のACCを含む。
【0080】
上記の実施形態のいずれか1つによれば、組成物は、少なくとも1種の追加の活性剤を更に含んでもよい。
【0081】
上記実施形態のいずれか1つによれば、組成物は、吸入投与用に配合される。
【0082】
このような配合物の例は、固体、懸濁液、固体分散体、乾燥粉末、又はエアロゾル化可能な懸濁液である。
【0083】
いくつかの実施形態によれば、本組成物は、吸入投与用に配合され、ACCは天然ACCである。
【0084】
いくつかの実施形態によれば、本組成物は、吸入投与用に配合され、ACCは合成ACCである。
【0085】
したがって、一実施形態によれば、本発明による組成物は、ピロリン酸塩、トリリン酸塩、及びヘキサメタリン酸塩などのポリリン酸塩;アレンドロン酸、エチドロン酸、ゾレドロン酸、及びメドロン酸などのビスホスホネート;ホスホセリン;ホスホトレオニン;クエン酸など、複数の官能基を有する有機酸;及びこれらの任意の組み合わせ、からなる群から選択される少なくとも1種の安定化剤によって安定化されたACCを含み、組成物は、吸入投与による投与用に配合される。いくつかの実施形態によれば、吸入投与用に配合されたこのような組成物は、安定化剤としてポリリン酸塩を含む。一実施形態では、ポリリン酸塩は、ピロリン酸塩、トリリン酸塩、又はヘキサメタリン酸塩などの無機ポリリン酸塩である。いくつかの実施形態によれば、ACCは、安定化剤の任意の組み合わせによって安定化される。
【0086】
いくつかの実施形態によれば、吸入投与用に配合されたこのような組成物は、安定化剤としてビスホスホネートを含む。他の実施形態では、ビスホスホネートは、アレンドロン酸、エチドロン酸、ゾレドロン酸、及びメドロン酸から選択される。
【0087】
一実施形態では、吸入投与用に配合された組成物は、安定化剤として、本明細書で定義されるポリリン酸塩又はビスホスホネートを含み、P:Caモル比が約1:40~約1:1である。更なる実施形態では、P:Caモル比は、約1:35~約1:2である。ある実施形態では、P:Caモル比は、約1:30~約1:3である。他の実施形態では、P:Caモル比は、約1:28~約1:4である。別の特定の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:5である。
【0088】
更なる実施形態では、吸入投与用に配合された組成物のCa含量は、約20重量%~39重量%、約30重量%~約38重量%、約32重量%~約38重量%、又は約30重量%~約36重量%である。ある実施形態では、P:Caモル比は約1:40~約1:1であり、Ca含量は約20重量%~約38重量%である。いくつかの実施形態では、モル比は1:28~約1:3であり、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。別の実施形態では、モル比は1:25~約1:5であり、Ca含量は約30重量%~約36重量%である。
【0089】
いくつかの実施形態によれば、吸入投与用に配合された組成物は、リン酸化アミノ酸によって安定化されたACCを含む。更なる実施形態によれば、安定化剤はホスホセリンである。更なる実施形態によれば、安定化剤はホスホトレオニンである。
【0090】
更に別の実施形態によれば、吸入投与用に配合された組成物は、複数の結合官能基を有する有機酸によって安定化されたACCを含む。一実施形態によれば、組成物はクエン酸によって安定化されたACCを含む。
【0091】
いくつかの実施形態によれば、吸入投与により投与するために配合されたこのような組成物は、上記のように定義された固体である。特定の実施形態では、組成物は乾燥粉末の形態である。いくつかの実施形態によれば、乾燥粉末の含水量は30%を超えない。いくつかの実施形態では、乾燥粉末の含水量は20%(w/w)未満、15%(w/w)未満、又は10%(w/w)未満である。いくつかの実施形態では、乾燥粉末組成物は、約5重量%~約30重量%、又は約5重量%~約25重量%の水を含む。別の実施形態によれば、組成物は、約10重量%~約20重量%の水を含む。更なる実施形態によれば、組成物は、約10重量%~約25重量%の水を含む。
【0092】
いくつかの実施形態によれば、吸入投与用に配合された組成物、特に固体組成物は、少なくとも1ヶ月間安定している。他の実施形態によれば、組成物は、少なくとも3ヶ月間安定している。更なる実施形態によれば、組成物は、6ヶ月間安定している。ある実施形態によれば、組成物は、少なくとも1年間安定している。特定の実施形態によれば、組成物は、少なくとも2年まで安定している。
【0093】
いくつかの実施形態によれば、吸入投与による投与用に配合された組成物は、全炭酸カルシウムの30%未満の結晶性炭酸カルシウム(CCC)を含む。ある実施形態では、組成物は、全炭酸カルシウムの25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、又は5%未満のCCCを含む。
【0094】
いくつかの実施形態によれば、吸入投与による投与用に配合された組成物は、上記のように定義された固体分散体又は懸濁液の形態である。一実施形態では、組成物は固体分散体の形態である。このような組成物は、本発明の固体組成物、例えば粉末の形態の組成物を含み、増量剤を更に含む。
【0095】
別の実施形態では、吸入投与用に配合された組成物は、上記に定義された液体担体中に本発明による固体組成物を含む懸濁液の形態である。いくつかの実施形態によれば、懸濁液の形態の組成物中のACCは、少なくとも1時間、少なくとも1日、7日、14日、1ヶ月、3ヶ月、又は6ヶ月間安定したままである。
【0096】
いくつかの実施形態によれば、吸入投与による投与用の組成物は、少なくとも1種の追加の活性剤を更に含む。
【0097】
上記に定義されたように、吸入投与用に配合された組成物の少なくとも1種の安定化剤によって安定化されたACCは、粒子の形態である。いくつかの実施形態によれば、粒子は一次粒子である。
【0098】
ある実施形態では、組成物の粒子の少なくとも70%は、20μm以下の粒子径を有する。ある実施形態では、粒子の少なくとも80%は、20μm以下の粒子径を有する。ある実施形態では、粒子の少なくとも90%は、20μm以下の粒子径を有する。ある実施形態では、粒子の少なくとも95%は、20μm以下の粒子径を有する。
【0099】
ある実施形態では、粒子の少なくとも70%は、15μm以下の粒子径を有する。ある実施形態では、粒子の少なくとも80%は、15μm以下の粒子径を有する。ある実施形態では、粒子の少なくとも90%は、15μm以下の粒子径を有する。ある実施形態では、粒子の少なくとも95%は、15μm以下の粒子径を有する。
【0100】
ある実施形態では、粒子の少なくとも70%は、10μm以下の粒子径を有する。ある実施形態では、粒子の少なくとも80%は、10μm以下の粒子径を有する。ある実施形態では、粒子の少なくとも90%は、10μm以下の粒子径を有する。ある実施形態では、粒子の少なくとも95%は、10μm以下の粒子径を有する。
【0101】
ある実施形態では、粒子の少なくとも70%は、5μm以下の粒子径を有する。ある実施形態では、粒子の少なくとも80%は、5μm以下の粒子径を有する。ある実施形態では、粒子の少なくとも90%は、5μm以下の粒子径を有する。ある実施形態では、粒子の少なくとも95%は、5μm以下の粒子径を有する。
【0102】
ある実施形態では、粒子の少なくとも80%は、10~20μm以下の粒子径を有する。ある実施形態では、粒子の少なくとも90%は、10~20μm以下の粒子径を有する。ある実施形態では、粒子の少なくとも80%は、5~10μm以下の粒子径を有する。ある実施形態では、粒子の少なくとも90%は、5~10μm以下の粒子径を有する。
【0103】
いくつかの実施形態によれば、吸入投与用に配合された組成物は、乾燥粉末吸入用に構成された乾燥粉末の形態である。
【0104】
乾燥粉末吸入用のACCは、粒子の少なくとも90%に対して10μm未満、又は更には5μm未満の粒子径を有するACCを含む乾燥粉末である。
【0105】
乾燥粉末吸入用のACCは、以下に記載するように製造されたケーキ状物質を乾燥させ、それを所望の粒子径に達するまで粉砕することによって調製することができる。ACC配合物を調製するための他の既知の方法を適用することもできる。ACCは、任意で、天然発生ACC(例えば、甲殻類胃石)を乾燥し、かつ粉砕することによって調製される。
【0106】
本発明の原理によれば、粉末は1~99重量%のACCを含む。いくつかの実施形態では、粉末は、外部湿度から絶縁された複数の個別包装された単回用量(例えば、100~500mgACC/用量、又は200~300mgACC/用量)として提供される。例えば、用量は、カプセルとして提供されてもよく、カプセルは、使用することを目的として粉末を放出するために開かれる(例えば、切断されるか、又は破壊される)。任意で、粉末は増量剤(例えば乳糖)を含み、密閉容器に保存される。任意で、粉末は、アグロメレーションを防止するための添加剤を含む。粉末は、任意で、吸入操作の間に粉末の送達を補助する潤滑剤を含む。任意で、粉末中の成分はいずれも吸入可能であり、粒子の少なくとも90%に対して20μm未満、又は10μm未満の粒子径を有する。
【0107】
いくつかの実施形態によれば、上記に定義された懸濁液の形態の組成物は、吸入用に配合される。このような組成物は、少なくとも1種の安定化剤によって安定化され、少なくとも90%の粒子に対して、10μm未満、又は更には5μm未満の粒子径を有するACC粒子を含む水性懸濁液である。任意で、懸濁液は0.01%~20%のACC/水の重量比を含む。
【0108】
懸濁吸入用ACCは、上記のACC粉末の1種以上をある容積の水、注射用水、又は生理食塩水に懸濁することによって調製され得る。
【0109】
任意で、ACC粒子は、ACCが形成された後、乾燥する前に、乾燥させることなく懸濁させる任意の時点で、収集することができる。このような場合には、懸濁液又はケーキ状のACCを粉砕する。
【0110】
ACCは任意で乾燥形態で提供され、使用前に水中に懸濁される。
【0111】
上記の実施形態のいずれか1つによれば、組成物は、上記で定義した安定化剤に加えて、1つ以上の第2の安定化剤を更に含む。このような追加の安定化剤は、ACCの安定化剤として機能することが公知の有機化合物、例えば、カルボキシ基、アミン、リン酸塩、ホスホン酸塩、及びクエン酸、乳酸塩、ホスホセリン、グルコン酸塩などのCaイオンに結合するか、キレート化するか、複合化する傾向にある他の官能基を含む有機化合物であってもよい。いくつかの実施形態によれば、第2の安定化剤は、第1の安定化剤として存在する。
【0112】
ある実施形態によれば、本発明による組成物は、ピロリン酸塩、トリリン酸塩、及びヘキサメタリン酸塩などのポリリン酸塩;アレンドロン酸、エチドロン酸、ゾレドロン酸、及びメドロン酸などのビスホスホネート;ホスホセリン;ホスホトレオニン;クエン酸;及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の安定化剤によって安定化されたACCを含み、ACCは、粒子の少なくとも90%が10μm以下の粒子径を有する粒子の形態であり、本組成物は、吸入投与用に配合される。いくつかの実施形態によれば、粒子は5μm以下の粒子径を有する。いくつかの実施形態によれば、乾燥粉末の乾燥物の含水量は30%を超えない。いくつかの実施形態では、乾燥粉末の含水量は20%(w/w)未満、15%(w/w)未満、又は10%(w/w)未満である。いくつかの実施形態では、乾燥粉末組成物は、約5重量%~約30重量%、又は約5重量%~約25重量%の水を含む。別の実施形態によれば、組成物は、約10重量%~約20重量%の水を含む。更なる実施形態によれば、組成物は、約10重量%~約25重量%の水を含む。一実施形態によれば、このような組成物は、吸入投与用に配合された水性担体中の懸濁液の形態であるか、又は増量剤を含む固体分散体の形態である。一実施形態によれば、このような組成物は、吸入投与用に配合された水性担体中の懸濁液の形態であるか、又は増量剤を含む固体分散体の形態である。
【0113】
ある実施形態によれば、本発明による組成物は、ピロリン酸塩、トリリン酸塩、又はヘキサメタリン酸塩によって安定化されたACCを含む乾燥粉末の形態の固体組成物であり、ACCは、粒子の少なくとも90%が10μm以下の粒子径を有する粒子の形態であり、組成物が吸入投与用に配合され、P:Caのモル比は約1:25~約1:3である。いくつかの実施形態によれば、粒子は5μm以下の粒子径を有する。他の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:4である。更なる実施形態では、P:Caモル比は、約1:20~約1:5である。別の特定の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:5である。更なる実施形態では、このような組成物のCa含量は、約20重量%~38重量%、又は約30重量%~38約重量%である。ある実施形態では、P:Caモル比は約1:25~約1:3であり、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。いくつかの実施形態では、モル比は1:28~約1:3であり、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。いくつかの実施形態では、乾燥粉末の含水量は20%(w/w)未満、15%(w/w)未満、又は10%(w/w)未満である。いくつかの実施形態では、乾燥粉末組成物は、約5重量%~約30重量%、又は約5重量%~約25重量%の水を含む。別の実施形態によれば、組成物は、約10重量%~約20重量%の水を含む。更なる実施形態によれば、組成物は、約10重量%~約20重量%の水を含む。一実施形態によれば、このような組成物は、吸入投与用に配合された水性担体中の懸濁液の形態であるか、又は増量剤を含む固体分散体の形態である。
【0114】
ある実施形態によれば、本発明による組成物は、ホスホセリンによって安定化されたACCを含む、乾燥粉末の形態の固体組成物であり、ACCは、粒子の少なくとも90%が、10μm以下の粒子径を有する粒子の形態であり、本組成物は、吸入投与用に配合される。いくつかの実施形態によれば、粒子は5μm以下の粒子径を有する。いくつかの実施形態では、乾燥粉末の含水量は20%(w/w)未満、15%(w/w)未満、又は10%(w/w)未満である。いくつかの実施形態では、乾燥粉末組成物は、約5重量%~約30重量%、又は約5重量%~約25重量%の水を含む。別の実施形態によれば、組成物は、約10重量%~約20重量%の水を含む。更なる実施形態によれば、組成物は、約10重量%~約20重量%の水を含む。一実施形態によれば、このような組成物は、吸入投与用に配合された水性担体中の懸濁液の形態であるか、又は増量剤を含む固体分散体の形態である。
【0115】
ある実施形態によれば、本発明による組成物は、エチドロン酸、ゾレドロン酸、又はメドロン酸によって安定化されたACCを含む乾燥粉末の形態の固体組成物であり、ACCは、粒子の少なくとも90%が、10μm以下の粒子径を有する粒子の形態であり、組成物が吸入投与用に配合され、P:Caモル比は約1:25~約1:3である。いくつかの実施形態によれば、粒子は5μm以下の粒子径を有する。他の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:4である。更なる実施形態では、P:Caモル比は、約1:20~約1:5である。別の特定の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:5である。更なる実施形態では、このような組成物のCa含量は、約20重量%~39重量%、又は約30重量%~約38重量%である。ある実施形態では、P:Caモル比は約1:30~約1:3であり、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。いくつかの実施形態では、モル比は1:28~約1:3であり、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。いくつかの実施形態では、乾燥粉末の含水量は20%(w/w)未満、15%(w/w)未満、又は10%(w/w)未満である。いくつかの実施形態では、乾燥粉末組成物は、約5重量%~約30重量%、又は約5重量%~約25重量%の水を含む。別の実施形態によれば、組成物は、約10重量%~約20重量%の水を含む。更なる実施形態によれば、組成物は、約10重量%~約25重量%の水を含む。一実施形態によれば、このような組成物は、吸入投与用に配合された水性担体中の懸濁液の形態であるか、又は増量剤を含む固体分散体の形態である。
【0116】
ある実施形態によれば、本発明による組成物は、ホスホセリンによって安定化されたACCを含む、乾燥粉末の形態の固体組成物であり、ACCは、粒子の少なくとも90%が、5μm以下の粒子径を有する粒子の形態であり、本組成物は、吸入投与用に配合され、乾燥粉末の含水量は20%(w/w)未満である。いくつかの実施形態では、乾燥粉末の含水量は15%(w/w)未満、又は10%(w/w)未満である。いくつかの実施形態では、乾燥粉末組成物は、約5重量%~約20重量%、又は約5重量%~約15重量%の水を含む。別の実施形態によれば、組成物は、約10重量%~約20重量%の水を含む。一実施形態によれば、このような組成物は、吸入投与用に配合された水性担体中の懸濁液の形態であるか、又は増量剤を含む固体分散体の形態である。
【0117】
ある実施形態によれば、本発明による組成物は、トリリン酸塩によって安定化されたACCを含む、乾燥粉末の形態の固体組成物であり、ACCは、粒子の少なくとも90%が、5μm以下の粒子径を有する粒子の形態であり、乾燥粉末の含水量は20%(w/w)未満であり、P:Caモル比は、約1:25~約1:3であり、本組成物は、吸入投与用に配合される。他の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:4である。ある実施形態によれば、本発明による組成物は、ヘキサメタリン酸塩によって安定化されたACCを含む、乾燥粉末の形態の固体組成物であり、ACCは、粒子の少なくとも90%が、5μm以下の粒子径を有する粒子の形態であり、乾燥粉末の含水量は20%(w/w)未満であり、P:Caモル比は、約1:25~約1:3であり、本組成物は、吸入投与用に配合される。ある実施形態によれば、本発明による組成物は、ピロリン酸塩によって安定化されたACCを含む乾燥粉末の形態の固体組成物であり、ACCは、粒子の少なくとも90%が、5μm以下の粒子径を有する粒子の形態であり、乾燥粉末の含水量は20%(w/w)未満であり、P:Caモル比は、約1:25~約1:3であり、本組成物は、吸入投与用に配合される。他の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:4である。更なる実施形態では、P:Caモル比は、約1:20~約1:5である。別の特定の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:5である。更なる実施形態では、このような組成物のCa含量は、約30重量%~約38重量%である。ある実施形態では、P:Caモル比は約1:30~約1:3であり、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。いくつかの実施形態では、モル比は1:28~約1:3であり、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。いくつかの実施形態では、乾燥粉末組成物は、約5重量%~約20重量%、又は約5重量%~約15重量%の水を含む。別の実施形態によれば、組成物は、約10重量%~約20重量%の水を含む。一実施形態によれば、このような組成物は、吸入投与用に配合された水性担体中の懸濁液の形態であるか、又は増量剤を含む固体分散体の形態である。
【0118】
上記実施形態のいずれか1つによれば、吸入投与用に配合された組成物は、乾燥粉末吸入用に構成された乾燥粉末の形態である。
【0119】
上記実施形態のいずれか1つによれば、組成物は、頬側舌下、又は歯肉投与用に配合される。
【0120】
上記実施形態のいずれか1つによれば、組成物は、頬側投与用に配合される。
【0121】
本明細書で使用される場合、用語「頬側送達」又は「頬側投与」は、その組成物を口に投与することによって組成物を使用者に送達し、かつ組成物の少なくとも一部が頬側組織によって吸収され得るのに十分に長い期間頬側口腔内で組成物を保持することを意味する。例としては、頬側口腔内に粉末又はゲル又は液体又は半固体又は固体形態の組成物を入れることが挙げられる。任意で、ある期間の後(例えば、30秒~10分、例えば約3~6分)、口の中に残存している物質はいずれも、使用者が、例えば、液体(例えば、水)を添加してもしなくても、捨てるか飲み込むことができる。
【0122】
頬側投与用に配合された組成物の例は、接着錠剤、パッチ剤、ロゼンジ剤、ゲル剤、ディスク剤、ウエハー、及び薄片である。
【0123】
いくつかの実施形態によれば、本組成物は、頬側投与用に配合され、ACCは天然ACCである。
【0124】
いくつかの実施形態によれば、本組成物は、頬側投与用に配合され、ACCは合成ACCである。
【0125】
本明細書で使用される「舌下」という用語は、文字どおり「舌の下」を意味し、物質が消化管を介してではなく舌の下で迅速に吸収されるように口を介して物質を投与する方法を指す。
【0126】
いくつかの実施形態によれば、舌下投与用の組成物は、錠剤、細片、滴剤、噴霧剤、又はロゼンジ剤として配合されてもよい。
【0127】
上記実施形態のいずれか1つによれば、組成物は、舌下投与用に配合される。
【0128】
いくつかの実施形態によれば、本組成物は、舌下投与用に配合され、ACCは天然ACCである。
【0129】
いくつかの実施形態によれば、本組成物は、舌下投与用に配合され、ACCは合成ACCである。
【0130】
したがって、一実施形態によれば、本発明による組成物は、トリリン酸塩、ピロリン酸塩、及びヘキサメタリン酸塩などのポリリン酸塩;アレンドロン酸、エチドロン酸、ゾレドロン酸、及びメドロン酸などのビスホスホネート;ホスホセリン;ホスホトレオニン;クエン酸;及びこれらの任意の混合物、からなる群から選択される少なくとも1種の安定化剤によって安定化されたACCを含み、組成物は、頬側、舌下、又は歯肉投与用に配合される。いくつかの実施形態によれば、頬側、舌下、又は歯肉投与用に配合されたこのような組成物は、安定化剤としてポリリン酸塩を含む。一実施形態では、ポリリン酸塩は、ピロリン酸塩、トリリン酸塩、又はヘキサメタリン酸塩などの無機ポリリン酸塩である。
【0131】
いくつかの実施形態によれば、頬側、舌下、又は歯肉投与用に配合されたこのような組成物は、安定化剤としてビスホスホネートを含む。他の実施形態では、ビスホスホネートは、アレンドロン酸、エチドロン酸、ゾレドロン酸、及びメドロン酸から選択される。
【0132】
一実施形態では、頬側、舌下、又は歯肉投与用に配合された組成物は、安定化剤として、本明細書で定義されるポリリン酸塩又はビスホスホネートを含み、P:Caモル比が約1:40~約1:1である。更なる実施形態では、P:Caモル比は、約1:35~約1:2である。ある実施形態では、P:Caモル比は、約1:30~約1:3である。他の実施形態では、P:Caモル比は、約1:28~約1:4である。更なる実施形態では、P:Caモル比は、約1:20~約1:5である。別の実施形態では、P:Caモル比は、約1:20~約1:6である。特定の実施形態では、P:Caモル比は、約1:15~約1:5である。ある実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:1である。別の特定の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:5である。
【0133】
更なる実施形態では、頬側、舌下、又は歯肉投与用に配合された組成物のCa含量は、約20重量%~38重量%、約30重量%~約38重量%、約32重量%~約38重量%、又は約30重量%~約36重量%である。ある実施形態では、P:Caモル比は約1:40~約1:1であり、Ca含量は約20重量%~約38重量%である。いくつかの実施形態では、モル比は1:28~約1:3であり、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。別の実施形態では、モル比は約1:25~約1:5であり、Ca含量は約30重量%~約36重量%である。
【0134】
いくつかの実施形態によれば、頬側、舌下、又は歯肉投与用に配合された組成物は、リン酸化アミノ酸によって安定化されたACCを含む。更なる実施形態によれば、安定化剤はホスホセリンである。更なる実施形態によれば、安定化剤はホスホトレオニンである。
【0135】
更に別の実施形態によれば、頬側、舌下、又は歯肉投与用に配合された組成物は、クエン酸によって安定化されたACCを含む。
【0136】
いくつかの実施形態によれば、頬側、舌下、又は歯肉投与用に配合されたこのような組成物は、上記のように定義された固体である。特定の実施形態では、固体組成物は乾燥粉末の形態である。いくつかの実施形態によれば、乾燥粉末の含水量は30%を超えない。いくつかの実施形態では、乾燥粉末の含水量は20%(w/w)未満、15%(w/w)未満、又は10%(w/w)未満である。いくつかの実施形態では、乾燥粉末組成物は、約5重量%~約30重量%、又は約5重量%~約25重量%の水を含む。別の実施形態によれば、組成物は、約10重量%~約20重量%の水を含む。更なる実施形態によれば、組成物は、約10重量%~約25重量%の水を含む。
【0137】
いくつかの実施形態によれば、頬側、舌下、又は歯肉投与用に配合された組成物、特に固体組成物は、少なくとも1ヶ月間安定している。他の実施形態によれば、組成物は、少なくとも3ヶ月間安定している。更なる実施形態によれば、組成物は、6ヶ月間安定している。ある実施形態によれば、組成物は、少なくとも1年間安定している。特定の実施形態によれば、組成物は、少なくとも2年まで安定している。
【0138】
いくつかの実施形態によれば、頬側、舌下、又は歯肉投与用に配合された組成物は、全炭酸カルシウムの30%未満の結晶性炭酸カルシウム(CCC)を含む。ある実施形態では、組成物は、全炭酸カルシウムの25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、又は5%未満のCCCを含む。
【0139】
いくつかの実施形態によれば、頬側、舌下、又は歯肉投与用に配合された組成物は、上記のように定義された固体分散体又は懸濁液の形態である。一実施形態では、組成物は固体分散体の形態である。このような組成物は、本発明の固体組成物、例えば粉末の形態の組成物を含み、増量剤を更に含む。
【0140】
別の実施形態では、頬側、舌下、又は歯肉投与用に配合された組成物は、上記に定義された液体担体中に本発明による固体組成物を含む懸濁液の形態である。いくつかの実施形態によれば、懸濁液の形態の組成物中のACCは、少なくとも1時間、少なくとも1日、7日、14日、1ヶ月、3ヶ月、又は6ヶ月間安定したままである。
【0141】
いくつかの実施形態によれば、吸入投与による投与用の組成物は、少なくとも1種の追加の活性剤を更に含む。
【0142】
ある実施形態によれば、本発明による組成物は、ホスホセリンによって安定化されたACCを含む、乾燥粉末の形態の固体組成物であり、ACCは粒子の形態であり、その粒子の少なくとも90%が、10μm以下の粒子径を有し、本組成物は、頬側又は舌下投与用に配合され、乾燥粉末の含水量は20%(w/w)未満である。いくつかの実施形態では、乾燥粉末の含水量は15%(w/w)未満、又は10%(w/w)未満である。いくつかの実施形態では、乾燥粉末組成物は、約5重量%~約20重量%、又は約5重量%~約15重量%の水を含む。別の実施形態によれば、組成物は、約10重量%~約20重量%の水を含む。別の実施形態では、粒子の少なくとも90%は、5μm以下の粒子径を有する。一実施形態によれば、このような組成物は、吸入投与用に配合された水性担体中の懸濁液の形態であるか、又は増量剤を含む固体分散体の形態である。
【0143】
ある実施形態によれば、本発明による組成物は、トリリン酸塩によって安定化されたACCを含む、粉末の乾燥物の形態の固体組成物であり、ACCは粒子の形態であり、粒子の少なくとも90%が10μm以下の粒子径を有し、乾燥粉末の含水量は20%(w/w)未満であり、P:Caモル比は、約1:25~約1:3であり、本組成物は、頬側又は舌下投与用に配合される。いくつかの実施形態によれば、粒子は5μm以下の粒子径を有する。他の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:4である。更なる実施形態では、P:Caモル比は、約1:20~約1:5である。別の特定の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:5である。更なる実施形態では、このような組成物のCa含量は、約20重量%~38重量%、又は約30重量%~約38重量%である。ある実施形態では、P:Caモル比は約1:25~約1:3であり、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。いくつかの実施形態では、モル比は1:28~約1:3であり、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。いくつかの実施形態では、乾燥粉末組成物は、約5重量%~約20重量%、又は約5重量%~約15重量%の水を含む。別の実施形態によれば、組成物は、約10重量%~約20重量%の水を含む。一実施形態によれば、このような組成物は、吸入投与用に配合された水性担体中の懸濁液の形態であるか、又は増量剤を含む固体分散体の形態である。
【0144】
上記実施形態のいずれか1つによれば、組成物は、歯肉投与用に配合される。
【0145】
上記実施形態のいずれか1つによれば、組成物は医薬組成物である。したがって、本発明の組成物が医薬組成物であり、かつ/又は医薬組成物として配合されることは、本発明の原理によって包含される。
【0146】
いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物は、炭酸カルシウム治療に応答する疾患又は病態の治療に使用するための薬学的に許容される担体を含む医薬組成物であって、医薬組成物が、吸入、頬側、歯肉、及び舌下投与による投与からなる群から選択される投与用に配合される。
【0147】
本明細書で使用される「医薬組成物」という用語は、少なくとも1種の薬学的活性剤、及び任意で少なくとも1種の更なる薬学的に許容される担体、安定化剤、及び/又は増量剤を含む任意の組成物を指す。
【0148】
本明細書で使用される用語「薬学的に許容される担体」又は「薬学的に許容される賦形剤」は、薬学的投与に適合する任意の及び全ての溶媒、分散媒、防腐剤、酸化防止剤、コーティング剤、等張及び吸収遅延剤、界面活性剤などを指す。薬学的活性物質に関するこのような媒体及び薬剤の使用は、当技術分野において周知である。組成物は、補足的、追加的、又は増強された治療機能を提供する他の活性化合物を含み得る。
【0149】
「薬学的に許容される」及び「薬理学的に許容される」という用語は、動物又はヒトに必要に応じて適切に投与された場合に有害、又はアレルギー性ではないか、又は他の有害反応を生じることのない分子的実体及び組成物を含む。
【0150】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、上記に定義された少なくとも1種の安定化剤によって安定化されたACCを含む医薬組成物を提供し、ACCは粒子の形態であり、本組成物は、上記に定義された吸入投与、頬側、舌下及び歯肉投与からなる群から選択される投与用に配合される。いくつかの実施形態によれば、ACCは天然ACCである。別の実施形態によれば、ACCは、少なくとも1種の安定化剤によって安定化された合成ACCである。
【0151】
したがって、一実施形態によれば、本発明による医薬組成物は、ピロリン酸塩、トリリン酸塩、及びヘキサメタリン酸塩などのポリリン酸塩;アレンドロン酸、エチドロン酸、ゾレドロン酸、及びメドロン酸などのビスホスホネート;ホスホセリン;ホスホトレオニン;クエン酸;及びこれらの任意の組み合わせ、からなる群から選択される少なくとも1種の安定化剤によって安定化されたACCを含み、組成物は、吸入投与による投与用に配合される。
【0152】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、安定化剤としてポリリン酸塩を含む。一実施形態では、ポリリン酸塩は、ピロリン酸塩、トリリン酸塩、又はヘキサメタリン酸塩などの無機ポリリン酸塩である。
【0153】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は安定化剤としてビスホスホネートを含む。他の実施形態では、ビスホスホネートは、アレンドロン酸、エチドロン酸、ゾレドロン酸、及びメドロン酸から選択される。
【0154】
一実施形態では、吸入投与用、頬側、又は舌下投与用に配合された医薬組成物は、安定化剤として、本明細書で定義されるポリリン酸塩又はビスホスホネートを含み、P:Caモル比が、上記のとおり例えば、約1:40~約1:1である。更なる実施形態では、P:Caモル比は、約1:35~約1:2である。ある実施形態では、P:Caモル比は、約1:30~約1:3である。他の実施形態では、P:Caモル比は、約1:28~約1:4である。更なる実施形態では、P:Caモル比は、約1:20~約1:5である。別の実施形態では、P:Caモル比は、約1:20~約1:6である。特定の実施形態では、P:Caモル比は、約1:15~約1:5である。ある実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:1である。別の特定の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:5である。
【0155】
更なる実施形態では、医薬組成物のCa含量は、約20重量%~39重量%、約30重量%~約38重量%、約32重量%~約38重量%、又は約30重量%~約36重量%である。ある実施形態では、P:Caモル比は約1:40~約1:1であり、Ca含量は約20重量%~約38重量%である。いくつかの実施形態では、モル比は1:28~約1:3であり、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。別の実施形態では、モル比は1:25~約1:5であり、Ca含量は約30重量%~約36重量%である。
【0156】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、リン酸化アミノ酸によって安定化されたACCを含む。更なる実施形態によれば、安定化剤はホスホセリンである。更なる実施形態によれば、安定化剤はホスホトレオニンである。
【0157】
更に別の実施形態によれば、医薬組成物は、クエン酸により安定化されたACCを含む。
【0158】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、上記のように定義された固体である。特定の実施形態では、固体医薬組成物は、乾燥粉末の形態である。いくつかの実施形態によれば、乾燥粉末の含水量は30%を超えない。いくつかの実施形態では、乾燥粉末の含水量は20%(w/w)未満、15%(w/w)未満、又は10%(w/w)未満である。いくつかの実施形態では、乾燥粉末医薬組成物は、約5重量%~約30重量%、又は約5重量%~約25重量%の水を含む。別の実施形態によれば、医薬組成物は、約10重量%~約20重量%の水を含む。更なる実施形態によれば、医薬組成物は、約10重量%~約25重量%の水を含む。
【0159】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物中のACCは少なくとも1ヶ月間安定している。他の実施形態によれば、医薬組成物中のACCは少なくとも3ヶ月間安定している。更なる実施形態によれば、医薬組成物中のACCは6ヶ月間安定している。ある実施形態によれば、医薬組成物中のACCは少なくとも1年間安定している。特定の実施形態によれば、医薬組成物中のACCは少なくとも2年まで安定している。
【0160】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、全炭酸カルシウムの30%未満の結晶性炭酸カルシウム(CCC)を含む。ある実施形態では、医薬組成物は、全炭酸カルシウムの25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、又は5%未満のCCCを含む。
【0161】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、上記のように定義された固体分散体又は懸濁液の形態である。一実施形態では、医薬組成物は固体分散体の形態である。このような医薬組成物は、本発明の固体医薬組成物、例えば粉末の形態の医薬組成物を含み、増量剤を更に含む。
【0162】
別の実施形態では、医薬組成物は、上記に定義された液体担体中に本発明による固体医薬組成物を含む懸濁液の形態である。いくつかの実施形態によれば、懸濁液の形態の医薬組成物中のACCは、少なくとも1時間、少なくとも1日、7日、14日、1ヶ月、3ヶ月、又は6ヶ月間安定したままである。
【0163】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、少なくとも1種の追加の活性剤を更に含む。
【0164】
一実施形態によれば、医薬組成物は、舌下投与用に配合される。別の実施形態によれば、医薬組成物は、頬側投与用に配合される。更に別の実施形態によれば、医薬組成物は、吸入投与用に配合される。
【0165】
吸入投与用に配合された医薬組成物の少なくとも1種の安定化剤によって安定化されたACCは、粒子の形態である。ある実施形態では、粒子の少なくとも70%又は、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が20μm以下の粒子径を有する。ある実施形態では、粒子の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が15μm以下の粒子径を有する。ある実施形態では、粒子の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が10μm以下の粒子径を有する。
【0166】
ある実施形態では、粒子の少なくとも70%は、5μm以下の粒子径を有する。ある実施形態では、粒子の少なくとも80%は、5μm以下の粒子径を有する。ある実施形態では、粒子の少なくとも90%は、5μm以下の粒子径を有する。ある実施形態では、粒子の少なくとも95%は、5μm以下の粒子径を有する。
【0167】
ある実施形態では、粒子の少なくとも80%、又は少なくとも90%は、10~20μm以下の粒子径を有する。ある実施形態では、粒子の少なくとも80%、又は少なくとも90%は、5~10μm以下の粒子径を有する。
【0168】
いくつかの実施形態によれば、吸入投与用に配合された医薬組成物は、乾燥粉末吸入用に構成された乾燥粉末の形態である。
【0169】
別の態様によれば、本発明は、乾燥粉末吸入器と共に使用されるように構成されたパッケージに包装され、吸入投与用に配合された少なくとも1種の一定量の本発明の医薬組成物を含む容器を提供する。
【0170】
ある態様によれば、本発明は、少なくとも1種の一定量の本発明による医薬組成物の吸入投与を可能にするように構成された、本発明による容器を含む吸入器を提供する。
【0171】
いくつかの他の実施形態によれば、本発明は、炭酸カルシウム治療に応答する疾患又は病態の治療に使用するための上記に定義された医薬組成物を提供し、医薬組成物が、吸入投与、頬側、歯肉、及び舌下投与からなる群から選択される投与用に配合される。
【0172】
ある実施形態によれば、本発明は、炭酸カルシウム治療に応答する疾患又は病態の治療に使用するための、上記実施形態のいずれか1つに記載の組成物及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供し、本医薬組成物は、吸入投与、頬側、歯肉、及び舌下投与からなる群から選択される投与用に配合される。いくつかの実施形態によれば、このような使用は、安定化されたACCの経口投与を更に含む。
【0173】
いくつかの実施形態によれば、疾患又は病態は、疼痛、過剰増殖性疾患、皮膚疾患、神経障害、免疫障害、心血管疾患、肺疾患、栄養障害、繁殖障害、筋骨格障害、感染症、及び歯科疾患からなる群から選択される。特定の一実施形態では、疾患は癌である。したがって、一実施形態では、医薬組成物として配合された本発明の組成物又は本発明の組成物を含む医薬組成物は、癌治療に使用することが目的である。特定の一実施形態によれば、疾患又は病態は疼痛である。他の実施形態によれば、疾患又は病態は癌である。いくつかの実施形態によれば、癌は、肺癌、乳癌、及び骨癌からなる群から選択される。別の特定の実施形態によれば、疾患は、感染症である。
【0174】
いくつかの実施形態によれば、本発明による医薬組成物は、吸入投与用に配合される。別の実施形態によれば、医薬組成物は、頬側投与用に配合される。ある実施形態によれば、医薬組成物は、舌下投与用に配合される。
【0175】
いくつかの実施形態によれば、この使用は、約0.1~5%のACCを8mlの用量で吸入によりACCを投与することを含む。
【0176】
別の実施形態によれば、この使用は、ACC用量が2000mgACC/日以下である、ACCを頬側及び/又は舌下投与することを含む。別の実施形態によれば、ACC用量は1200mg/日以下である。
【0177】
別の態様によれば、本発明は、乾燥粉末吸入器と共に使用されるように構成されたパッケージに包装され、吸入投与用に配合された少なくとも1種の一定量の本発明の医薬組成物を含む容器を提供する。
【0178】
ある態様によれば、本発明は、少なくとも1種の一定量の本発明による医薬組成物の吸入投与を可能にするように構成された、本発明による容器を含む吸入器を提供する。
【0179】
本明細書で使用される「容器」という用語は、1つ以上の品目を保管するように適合された保管物品を指す。
【0180】
本明細書で使用される「定量」という用語は、本発明による医薬組成物の特定の量を指す。
【0181】
更なる態様では、本発明は、少なくとも1種の安定化剤によって安定化されたACCを、吸入投与、頬側投与、舌下投与、歯肉投与、及びこれらの任意の組み合わせから選択される投与経路により対象に投与することを含む、その必要がある対象における炭酸カルシウム治療に応答する疾患又は病態を治療する方法を提供する。
【0182】
一実施形態によれば、本発明の組成物を投与することを含む方法。別の実施形態によれば、上記実施形態のいずれか1つによって組成物を投与することを含む方法。
【0183】
ある実施形態によれば、本方法は、少なくとも1種の安定化剤によって安定化された活性剤としてACCを含む組成物を投与することを含み、ACCが粒子の形態であり、組成物は、投与吸入、頬側、舌下、及び歯肉投与からなる群から選択される投与のために配合される。
【0184】
一実施形態によれば、投与は、吸入投与である。別の実施形態によれば、投与は頬側投与である。更なる実施形態によれば、投与は舌下投与である。更に別の実施形態によれば、投与は歯肉投与である。いくつかの実施形態によれば、投与は、吸入及び頬側投与による。いくつかの実施形態では、頬側投与には、唇下投与が含まれる。
【0185】
いくつかの実施形態によれば、投与は、安定化されたACCの経口投与を更に含む。いくつか実施形態によれば、経口投与されるACCの用量は、1200mg/日以下である。本発明は、吸入によるACCを含む組成物の投与方法を包含し、本組成物は、これらに限定されないが、頬側、舌下及び/又は経口送達などの他の送達経路によって投与されるACCと組み合わせて投与することができることを理解されたい。
【0186】
いくつかの実施形態によれば、ACCは、上記に定義された天然又は合成ACCである。一実施形態によれば、ACCは天然ACCである。
【0187】
別の実施形態によれば、ACCは合成ACCである。いくつかの実施形態によれば、ACCは、上記に定義された少なくとも1種の安定化剤によって安定化される。いくつかの実施形態によれば、安定化剤は、ポリリン酸塩、ビスホスホネート、リン酸化アミノ酸、クエン酸、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0188】
いくつかの実施形態によれば、安定化剤は、ポリリン酸塩又はその薬学的に許容される塩である。ある実施形態によれば、ポリリン酸塩は、ピロリン酸塩、トリリン酸塩、及びヘキサメタリン酸塩から選択される。
【0189】
いくつかの実施形態によれば、安定化剤は、ビスホスホネート又はその薬学的に許容される塩である。
【0190】
いくつかの実施形態によれば、本組成物は、上記に定義された2種以上の安定化剤を含む。
【0191】
いくつかの実施形態によれば、安定化剤は、上記に定義されたポリリン酸塩又はビスホスホネートであり、安定化剤のP原子とACCのCa原子とのモル比(P:Caモル比)は約1:90~1:1である。一実施形態では、P:Caモル比は約1:40~約1:1である。更なる実施形態では、P:Caモル比は、約1:35~約1:2である。ある実施形態では、P:Caモル比は、約1:30~約1:3である。ある実施形態では、P:Caモル比は、約1:28~約1:3である。他の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:4である。更なる実施形態では、P:Caモル比は、約1:20~約1:5である。別の実施形態では、P:Caモル比は、約1:20~約1:6である。特定の実施形態では、P:Caモル比は、約1:15~約1:5である。別の特定の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:5である。
【0192】
いくつかの実施形態によれば、投与される組成物のカルシウム含量は、上記に定義されたとおりであり、例えば、約20重量%~約39重量%である。更なる実施形態では、Ca含量は、約25重量%~39重量%、約25重量%~約38重量%、約30重量%~約38重量%、約32重量%~約38重量%、又は約30重量%~約36重量%である。ある実施形態では、P:Caモル比は約1:40~約1:1であり、Ca含量は約20重量%~約38重量%である。いくつかの実施形態では、モル比は1:28~約1:3であり、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。別の実施形態では、モル比は1:25~約1:5であり、Ca含量は約30重量%~約36重量%である。
【0193】
ある実施形態によれば、安定化剤は、リン酸化アミノ酸である。一実施形態によれば、リン酸化アミノ酸はホスホセリンである。別の実施形態によれば、リン酸化アミノ酸はホスホトレオニンである。
【0194】
いくつかの実施形態によれば、安定化剤は有機酸である。ある実施形態によれば、有機酸は、アスコルビン酸、クエン酸、乳酸又は酢酸、シュウ酸、マロン酸、グルタコン酸、コハク酸、マレイン酸、乳酸、アコニット酸から選択され、任意で、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸などの少なくとも2つのカルボキシル基を有し、分子量が250g/mol以下の化合物が挙げられる。1つの特定の実施形態によれば、安定化剤はクエン酸である。
【0195】
上記実施形態のいずれか1つによれば、組成物は固体である。別の実施形態によれば、このような組成物は乾燥粉末の形態である。
【0196】
いくつかの実施形態によれば、乾燥粉末の含水量は30%を超えない。したがって、いくつかの実施形態では、乾燥粉末の含水量は20%(w/w)未満、15%(w/w)未満、又は10%(w/w)未満である。いくつかの実施形態では、乾燥粉末組成物は、5%未満の水を含む。他の実施形態では、乾燥粉末組成物は、約5重量%~約30重量%、又は約5重量%~約25重量%の水を含む。別の実施形態によれば、組成物は、約10重量%~約20重量%の水を含む。更なる実施形態によれば、組成物は、約10重量%~約20重量%の水を含む。ある実施形態では、上記の組成物は、1~99重量%のACCを含む乾燥粉末である。
【0197】
いくつかの実施形態によれば、組成物は、全炭酸カルシウムの30%未満の結晶性炭酸カルシウム(CCC)を含む。ある実施形態では、組成物は、全炭酸カルシウムの25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、又は5%未満のCCCを含む。いくつかの実施形態によれば、組成物は、少なくとも1ヶ月間安定している。他の実施形態によれば、組成物は、少なくとも3ヶ月間安定している。更なる実施形態によれば、組成物は、6ヶ月間安定している。ある実施形態によれば、組成物は、少なくとも1年間安定している。特定の実施形態によれば、組成物は、少なくとも2年まで安定している。
【0198】
いくつかの実施形態によれば、上記実施形態のいずれか1つによる組成物は、固体分散体又は懸濁液の形態である。
【0199】
一実施形態では、組成物は固体分散体の形態である。このような組成物は、本発明の固体組成物、例えば粉末の形態の組成物を含み、増量剤を更に含む。
【0200】
ある実施形態では、本組成物は、液体担体中にACCを含む懸濁液の形態である。いくつかの実施形態によれば、液体担体は、少なくとも80重量%の水を含む。ある実施形態では、液体担体は、少なくとも85重量%の水を含む。ある実施形態では、液体担体は、少なくとも90重量%の水を含む。ある実施形態では、液体担体は、少なくとも95重量%又は99.9重量%までの水を含む。液体担体は、任意で、生理学的食塩水、又は吸入用の任意の他の許容される医薬組成物である。
【0201】
一実施形態によれば、懸濁液の形態の組成物中のACCは、少なくとも1時間安定したままである。他の実施形態によれば、組成物は、少なくとも1日、7日、14日、1ヶ月、3ヶ月、又は6ヶ月間安定している。
【0202】
いくつかの実施形態によれば、上記で定義された懸濁液の形態の組成物は、約0.01%~約30%(w/w)のACCを含む。更なる実施形態では、懸濁液の形態の組成物は、約0.1重量%~約5重量%のACCを含む。ある実施形態では、懸濁液は約1%ACCを含む。
【0203】
上記の実施形態のいずれか1つによれば、組成物は、少なくとも1種の追加の活性剤を更に含んでもよい。
【0204】
上記に定義されたように、吸入投与用に配合された組成物の安定化されたACCは、粒子の形態である。ある実施形態では、粒子の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が20μm以下の粒子径を有する。ある実施形態では、粒子の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が15μm以下の粒子径を有する。ある実施形態では、粒子の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が10μm以下の粒子径を有する。
【0205】
ある実施形態では、粒子の少なくとも70%は、5μm以下の粒子径を有する。ある実施形態では、粒子の少なくとも80%は、5μm以下の粒子径を有する。ある実施形態では、粒子の少なくとも90%は、5μm以下の粒子径を有する。ある実施形態では、粒子の少なくとも95%は、5μm以下の粒子径を有する。
【0206】
ある実施形態では、粒子の少なくとも80%、又は少なくとも90%は、10~20μm以下の粒子径を有する。ある実施形態では、粒子の少なくとも80%、又は少なくとも90%は、5~10μm以下の粒子径を有する。
【0207】
いくつかの実施形態によれば、吸入投与用に配合された組成物は、乾燥粉末吸入用に構成された乾燥粉末の形態である。
【0208】
いくつかの実施形態によれば、組成物は、頬側投与用に配合される。別の実施形態によれば、組成物は、舌下投与用の配合物である。
【0209】
「炭酸カルシウム治療に応答する」という用語は、炭酸カルシウムで治療され得る任意の疾患を指す。一実施形態によれば、疾患又は病態は、疼痛、増殖性疾患、皮膚疾患、神経障害、免疫障害、心血管疾患、肺疾患、栄養障害、繁殖障害、筋骨格障害、感染症、及び歯科疾患からなる群から選択される。特定の一実施形態によれば、疾患又は病態は疼痛である。他の実施形態によれば、疾患又は病態は癌である。いくつかの実施形態によれば、癌は、肺癌、乳癌、及び骨癌からなる群から選択される。別の特定の実施形態によれば、疾患は、感染症である。
【0210】
癌疼痛は、癌罹患者に特徴的である。ある他の実施形態では、本発明による組成物は、肺癌患者の状態を改善する。ある他の実施形態では、本発明による組成物は、増殖性疾患に関連する骨痛を軽減する。ある実施形態では、本発明による組成物は、悪性疾患患者の健康による安心感を改善する。いくつかの実施形態では、本組成物は、少なくとも1種/日の吸入用、及び/又は任意で乾燥粉末吸入用、及び/又は頬側送達用のACCの投与、及び/又はACC経口剤形用のACC懸濁液の1日の用量にて、腫瘍の収縮及び/又は少なくとも1つの癌症状の軽減を引き起こす。ある実施形態では、本発明による組成物は、吸入用及び/又は乾燥粉末吸入用の1%ACC懸濁液を8ml(2回/日)の用量、任意で、ACC600~2000mgの用量の頬側送達用、及び/又はACC固体経口剤形で、腫瘍の収縮及び/又は少なくとも1つの癌症状の軽減を引き起こす。
【0211】
ある実施形態では、本発明による組成物は、他の臓器への転移を有する乳癌患者の状態を改善し、この改善は、腫瘍の収縮、骨量の増加、放射線療法後の爪の成長の回復、及び実験室における血液値(laboratory blood values)の改善からなる群から選択される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0212】
癌を治療することは、少なくとも1つの腫瘍の増殖速度を低下させること、少なくとも1つの腫瘍のサイズを縮小させるか、又はそれを消失させること、転移を予防するか、その速度又は重症度を低下させること、及び疾患に関連する少なくとも1つの症状(例えば、疼痛)を予防、軽減又は消失することのうちの1つ以上を含み得る。
【0213】
別の実施形態によれば、疾患は、感染症である。
【0214】
別の実施形態によれば、治療することは、上記に定義されたACCを含む組成物を頬側投与することを含む。ある実施形態によれば、治療することは、上に定義したACCを含む組成物を舌下投与することを含む。更なる実施形態によれば、治療することは、上記に定義されたACCを含む組成物を歯肉投与することを含む。いくつかの実施形態によれば、治療することは、ACCを頬側投与すること及びACCを吸入投与することを含む。
【0215】
いくつかの実施形態によれば、ACCは、約0.1~5%のACCを8mlの用量で吸入投与する。
【0216】
別の実施形態によれば、頬側及び/又は舌下投与されるACCの用量は、ACC2000mg/日以下である。
【0217】
ある実施形態によれば、本方法は、少なくとも1種の安定化剤によって安定化されたACCの経口投与を更に含む。いくつかの実施形態によれば、経口投与用のACCは、天然又は合成ACCである。
【0218】
更なる態様において、本発明は、炭酸カルシウム治療に応答する疾患又は病態を治療するために、吸入投与、頬側、舌下、及び歯肉投与から選択される投与により投与するために配合された薬剤の調製における、本発明による組成物の使用を提供する。
一実施形態によれば、疾患又は病態は、疼痛、増殖性疾患、皮膚疾患、神経障害、免疫障害、心血管疾患、肺疾患、栄養障害、繁殖障害、筋骨格障害、感染症、及び歯科疾患からなる群から選択される。特定の一実施形態によれば、疾患又は病態は疼痛である。他の実施形態によれば、疾患又は病態は癌である。いくつかの実施形態によれば、癌は、肺癌、乳癌、及び骨癌からなる群から選択される。
【0219】
一実施形態によれば、投与は、吸入投与である。別の実施形態によれば、投与は頬側投与である。更なる実施形態によれば、投与は舌下投与である。更に別の実施形態によれば、投与は歯肉投与である。いくつかの実施形態によれば、投与は、吸入及び頬側投与による。
【0220】
いくつかの実施形態によれば、薬剤は、安定化されたACCの経口配合物と共に投与される。
【0221】
いくつかの実施形態によれば、治療することは、ACCを約0.1~5%ACCを8mlの用量で吸入投与することを含む。
【0222】
本明細書で使用されるとき、量、時間的持続時間などの測定可能値を指す場合、用語「約」は、±10%、又は±5%、±1%、又は更には±0.1%の規定値からの変動を包含することを意味する。一実施形態では、「含む(comprising)」という用語には「からなる(consisting)」が含まれる。
【0223】
以下の実施例は、本発明のいくつかの実施形態をより完全に説明するために提示される。しかし、これらは、本発明の広い範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。
実施例
材料及び方法
【0224】
実験に使用した材料は、塩化カルシウム(78%)、炭酸ナトリウム、クエン酸、ホスホセリン(PS)、トリリン酸ナトリウム(90%)、ヘキサメタリン酸ナトリウム(HMP)(90%)、エタノール(95%)、ピロリン酸ナトリウム(Pyr)(90%)、リン酸一ナトリウム(無水)、エチドロン酸(ET)(60%水溶液)、ゾレドロン酸(ZA)、メドロン酸(MA)及び塩酸である。
安定化剤濃度の定義
【0225】
以下に示す全実施例における安定化剤の濃度は、以下のように定義される:
安定化剤(%)=(最初に添加された安定化剤の量(g)/最初に添加されたCaCl2の量(g))×100
【0226】
安定化剤の異なる濃度とP:Caモル比との間の相関を表2にまとめる。
安定性評価
【0227】
懸濁液中又は粉末としてのACCの安定性試験は、異なる時間間隔でサンプリングし、結晶性炭酸カルシウムの量を初期量(百分率)として評価することによって行った。試料中の炭酸カルシウムの結晶相の量は、X線回折(XRD)法を用いて評価した。
【0228】
XRD収集-実験セクション
【0229】
X線データは、Cu-Kα放射を提供する回折されたビーム上で、V=40kV、I=30mAで動作する、グラファイトモノクロメータを備えたPanalytical粉末回折計(Philips 1050/70又はEmpyrean)で収集する。スキャンは、2θが15°~50°又は24°~36°の範囲であり、約0.03°に等しいステップで実行する。この間隔には、方解石(2θ角度=29.3°±0.2°での反射(104))及びバテライト(2θ角度=24.8°、27.0°及び32.7°、それぞれ±0.2°に等しい2θ角での反射(100)、(101)及び(102))の主ピークを含む。
【0230】
X線データは、Cu-Kα放射線を提供する回折されたビーム上で、V=40kV、I=15mAで動作する、グラファイトモノクロメータを備えたRigaku粉末回折計(MiniFlex 600 Benchtop)で収集する。スキャンは、2θが26~34°の範囲であり、約0.02°に等しいステップで実行する。この間隔には、方解石(2θ角度=29.3°±0.2°での反射(104))及びバテライト(2θ角度=24.8°、27.0°及び32.7°、それぞれ±0.2°に等しい2θ角での反射(101)、及び(102))の主ピークを含む。
【0231】
試料は、非晶質及び結晶質(方解石又はバテライトなど)炭酸カルシウムの既知の量及び比を含む標準試料を用いて作成した較正プロットと比較した。

実施例1ポリリン酸塩、一塩基性リン酸又はクエン酸で安定化したACCの粉末組成物の安定性
【0232】
異なる安定化剤(トリリン酸塩(TP)、ヘキサメタリン酸塩(HMP)、ピロリン酸塩(Pyr)、一塩基性リン酸(PM)、又はクエン酸(CA))によって安定化されたACCの粉末組成物を調製した。典型的な手順では、カルシウム溶液(水300ml、塩化カルシウム24g及び安定化剤)と炭酸塩溶液(水200ml及び炭酸ナトリウム17.3g)とを一緒に混合してACCを沈降させた。安定化剤溶液(表1には、100mlの水及び安定化剤;カルシウム及び安定化剤溶液中の安定化剤の含量を提示し、表2には、異なる濃度の安定化剤とP:Caモル比の相関をまとめる)をACC懸濁液に添加して、安定化したACC懸濁液を作製した。次いで、ブフナー漏斗を用いてACCをろ過し、ケーキを水で洗浄した。このケーキを乾燥させて、粉末を得た。材料及び方法の部分に記載したように、粉末中のACCの安定性試験は、XRDによって行った。
【表1】
【0233】
1%以上のトリリン酸塩によって安定化されたACCは、少なくとも1ヶ月間安定していた(4%以上などの高濃度では、ACCは3ヶ月以上安定であった)ことが示されている。

【表2】
【0234】
クエン酸及びHMPによって安定化されたACCの2種の粉末組成物(6%HMP-1%CA及び10%HMP-1%CAと称する)を以下のように調製した:カルシウム溶液(水100mL、塩化カルシウム11.76g、クエン酸0.12g、及びHMP0.35g又は0.59g)と炭酸塩溶液(水100ml及び炭酸ナトリウム8.48g)とを一緒に混合してACCを沈降させた。安定化剤溶液(水20mL及びHMP0.35g又は0.59g)をACC懸濁液に添加して、安定化したACC懸濁液(6%HMP-1%CA懸濁液及び10%HMP-1%CA懸濁液であって、それぞれ、0.7及び1.18gのHMPを含む)を作製した。次いで、ブフナー漏斗を用いてACCをろ過し、ケーキを水で洗浄した。
【0235】
クエン酸及びホスホセリンによって安定化されたACCの2つの粉末組成物(6.8%PS-6%CA-Et-OH及び5%PS-6%CA-Et-OHと称する)を以下のように調製した:カルシウム溶液(水100mL、塩化カルシウム11.76、クエン酸0.12g及びホスホセリン0.8g又は0.59g(6.8%PS-6%CA及び6%PS-6%CA組成物のそれぞれに対して))と炭酸塩溶液(水100mL、及び炭酸ナトリウム8.48g)とを一緒に混合してACCを沈降させた。ACC懸濁液に安定化剤溶液(水20mL及び0.59のクエン酸)及びエタノール50mlを添加して、安定化したACC懸濁液を作製した。次いで、ブフナー漏斗を用いてACCをろ過し、ケーキをエタノールで洗浄した。
【0236】
得られた粉末を水1100mに分散させて懸濁液を得、材料及び方法に記載したようにACCの安定性試験を行った。
【0237】
クエン酸及びホスホセリンによって安定化されたACCの2種の粉末組成物(10%TP-1%CA)を以下のように調製した:カルシウム溶液(水300mL、塩化カルシウム24g、クエン酸0.24g、及びトリリン酸塩1.2g)と炭酸塩溶液(水200mL及び炭酸ナトリウム17.3g)とを一緒に混合してACCを沈降させた。ACC懸濁液に安定化剤溶液(水100mL、及びトリリン酸塩1.2g)を添加して、安定化したACC懸濁液を作製した。次いで、ブフナー漏斗を用いてACCをろ過し、ケーキを水で洗浄した。得られた粉末を水792mlに分散させて懸濁液を得、材料及び方法に記載したようにACCの安定性試験を行った。
【0238】
クエン酸及びホスホセリンによって安定化されたACCの2種の粉末組成物(5%PS-5%CA)を以下のように調製した:カルシウム溶液(水100mL、塩化カルシウム11.76、クエン酸0.12g、及びホスホセリン0.6g)と炭酸塩溶液(水100ml及び炭酸ナトリウム8.48g)とを一緒に混合してACCを沈降させた。ACC懸濁液に安定化剤溶液(水20mL及び0.48のクエン酸)及びエタノール50mlを添加して、安定化したACC懸濁液を作製した。次いで、ブフナー漏斗を用いてACCをろ過し、ケーキをエタノールで洗浄した。このケーキを乾燥させて、粉末を得た。ACC粉末8gを水792gに再懸濁させた。
【0239】
いずれの組成物も、ACCを少なくとも1週間安定させるのに有効であることが判明した。HMP-10%-1%CA及び5%PS-5%CA-Et-OHは、わずかな結晶化(5%以下)のみで組成物を1ヶ月以上安定させることができた。
実施例3再懸濁ACCの安定性に及ぼす異なるポリリン酸塩の効果
【0240】
3種の粉末組成物(10%HMP、10%Pyr、及び10%TPと称する)を、実施例1の教示と同様に調製した。得られた粉末を水1100mlに分散させて懸濁液を得、安定性試験を行った。いずれの組成物も、わずかに15~20%の結晶化で少なくとも2週間、ACCの安定性を保持した。
実施例4ビスホスホネートで安定化したACCの安定性
【0241】
様々な含量の安定化剤により安定化させたACCのいくつかの懸濁液を調製した。典型的な手順では、カルシウム溶液(水100mL又は200mL、塩化カルシウム12g及び安定化剤)と炭酸塩溶液(水100ml及び炭酸ナトリウム8.65g)とを一緒に混合してACCを沈降させた。安定化剤溶液(水300mL及び安定化剤;表3には、カルシウム及び安定化剤溶液中の安定化剤の含量を提示する)をACC懸濁液に添加して、安定化したACC懸濁液を作製した。次いで、ブフナー漏斗を用いてACCをろ過し、ケーキを水で洗浄した。懸濁液は、ケーキを水で分散することにより得た。得られた粉末を水1100mlに分散させて、懸濁液中のACCの安定性試験を行った。その中にACCを保存したいずれの組成物も、結晶化のいかなる兆候も伴わずに2週間以上にわたって非晶質状態であることが示されている。
【表3】
実施例5クエン酸及びエチドロン酸で安定化した再懸濁ACCの安定性
【0242】
典型的な手順において、カルシウム溶液は、水100mL、塩化カルシウム11.76g、クエン酸0.12g、及びエチドロン酸0.59gを含んだ。炭酸塩溶液は、水100mL及び炭酸ナトリウム8.48gを含んだ。安定化溶液は、水20mLと0.59gのクエン酸を含んだ。有機溶媒としてエタノール50mlを用いた。カルシウム溶液及び炭酸塩溶液を一緒に混合してACCを沈降させ、安定化剤溶液及びエタノールをACC懸濁液に添加して、安定化したACC懸濁液を作製した。次いで、ブフナー漏斗を用いてACCをろ過し、ケーキをエタノールで洗浄した。懸濁液は、ケーキを水で分散することにより得た。ACCの安定性試験を行った。その中にACCを保存した組成物は、結晶化のいかなる兆候も伴わずに1ヵ月以上にわたって非晶質状態であることが判明している。
実施例6ACC乾燥粉末の含量
【0243】
異なる安定化剤によって安定化され、実施例1に記載されたように調製されたACCの粉末調製物中のリン酸原子及びカルシウムなどの異なる化合物の含量は、誘導結合プラズマ(ICP)法を用いて、試験を行った。これらの結果を表4にまとめる。
【表4】
【0244】
異なる安定化剤で安定化したACCの固体粉末組成物のCa含量は約30~40重量%であることが分かる。
実施例7ACC-TP10%粉末のスケールアップ生産
【0245】
典型的な手順では、カルシウム溶液は、水11L、塩化カルシウム1.2kg、及びトリリン酸塩60gを含んだ。炭酸塩溶液は、水10L及び炭酸ナトリウム864gを含んだ。安定化溶液は、水1Lとトリリン酸塩60gを含んだ。カルシウム溶液と炭酸塩溶液とを一緒に混合してACCを沈降させ、安定化剤溶液をACC懸濁液に添加して、安定化したACC懸濁液を作製した。次いで、ヌッチェ濾過用漏斗を用いてACCをろ過し、ケーキを水で洗浄した。このケーキを乾燥させて、粉末を得た。得られた粉末の安定性を表5に提示する。
【表5】
実施例8異なる安定化剤によって安定化された固体ACCの含水量
【0246】
熱重量分析を用いて、異なる安定化剤で安定化した固体ACC調製物の含水量を測定した。TGA Q500 V20.13/Universal V4.5A TA機器を以下の加熱プログラムで使用した:RT~1000℃、加熱速度:10℃/分。N流速:80mL/分。試料重量:約10~15mg、1回繰り返す。
【0247】
TGA曲線では、二つの見かけの重量減少プロセスが明らかである:1つ目は室温(RT)から約300°Cまでに放出された水であり、2つ目は約500~800°Cから炭酸カルシウムが分解するまでの温度範囲である。これにより、ACC-TP試料中の含水量は約17~18%であったと推定できた。これらの結果を表6にまとめる。
【表6】
実施例9吸入投与用に配合された粉末組成物の調製
【0248】
乾燥粉末吸入用のACCは、粒子の少なくとも90%に対して10μm未満、又は更には5μm未満の粒子径を有するACCを含む乾燥粉末である。
【0249】
乾燥粉末用のACCの調製は、例えば実施例1において上述した手順のいずれかによって製造されたケーキ状の物質を乾燥させ、粒子の少なくとも90%が5μm以下の粒子径を有するように粉砕することによって行った。ACC配合物を調製するための他の既知の方法を適用することもできる。ACCは、任意で、天然発生ACC(例えば、甲殻類胃石)を乾燥し、かつ粉砕することによって調製される。
実施例10吸入毒性試験
【0250】
ACCは非常に可溶性が高く、40~100nmの範囲のナノ粒子から構成される。ACCのこれらの独特な特性により、独特の吸入投与が可能になり、肺の局所的作用及び/又は全身作用をもたらし、したがって、ACCが血液系に進入するための効率的な経路となり得る。このような投与は、これに限定されないが、癌などの種々の疾患の治療に有用であり得る。
【0251】
この試験の原理は、健常な未処置マウスに対するACCの長期吸入投与の毒性を試験することにあった。マウスには、1日2回、1週間に5日間、4週間ACCの吸入を行った。これは一般的であり、かつ毒性評価には十分である。この試験では、雄及び雌の両方のマウス(合計12匹/群のマウス)を調べた。3つの異なるマウス群について、3つの異なる濃度のACC(0.5%、1%及び2%)の試験を行った。対照群は、生理食塩水の吸入のみを受け、ビヒクルは、ACC懸濁液であった。
【0252】
材料及び方法
【0253】
ACC25、50又は100mgを生理食塩水と混合して、それぞれ0.5%、1%、2%(w/w)の濃度のACC吸入懸濁液を作製した。ACCエアロゾルは、ジェットネブライザー(PariBoy)を用いて生成し、特定のエアロゾル濃度を維持しながら、試験対象のマウス群の入った密閉プラスチックケージに送達した。空気圧噴霧においては、エアロゾルは定在波によって生成される。これは、薬剤溶液を通して空気流を適用した結果である。所望のチャンバのエアロゾル濃度が達成されるまで、給気によりエアロゾルを希釈した。具体的には、ACC懸濁液5mlを空気流速4リットル/分で作動するネブライザーに装填した。最長操作時間を20分に設定した。温度は、18~22℃の許容範囲で連続して監視した。
【0254】
試験のエンドポイントは、臨床徴候スコア、マウス死亡率、マウス体重、マウス臨床血液分析(全身び生化学)、臓器の肉眼的所見及び肺組織病理学の差分に基づいて行った。
【0255】
結果
【0256】
ACCアグロメレート粒子径、すなわち吸入セッションに沿ったそれらの空気動力学的中央粒子径(MMAD)には有意な変化は見られなかった。吸入セッションの開始時及び終了時には、1%ACCエアロゾルMMAD中央値は<1μmであり、2%ACCエアロゾルMMAD中央値が<3μmであることが判明した(表7及び表8)。
【表7】

【表8】
【0257】
全試験期間を通してマウス群のいずれにおいても、物理的又は行動的変化は観察されず、死亡例は見られなかった。さらに、全ての群が、試験期間中に体重が増加し、ほぼ同じの体重バランスを示した。
【0258】
全ての血液の臨床化学結果(グルコース、尿素窒素、クレアチニン、総タンパク質、アルブミン、アルカリホスファターゼ(AP)、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(ASP)、アラニントランスアミナーゼ(ALT)、カルシウム、ナトリウム、カリウム、リン、マグネシウム及びコリンエステラーゼ)は、正常範囲内にあることが分かった。さらに、各群を対照群と比較したときに、統計的t-検定による有意差は見出されず、全てのP値は>0.05であった。
【0259】
肉眼的病理検査では、いずれの病理学的徴候も検出されなかった。さらに、マウスの内臓(心臓、肺、肝臓、脾臓、及び腎臓)の湿重量を対照群と比較したときに、統計学的有意差は見られなかった(P値>0.05)。
【0260】
組織病理学によって検査されたいずれの器官においても、示唆される処置関連病変は認められなかった。肝臓及び腎臓には偶発的病変が見られ、未処置のマウスでは全て自発的に発生することが公知である。動物の終了方法(頸部脱臼)を原因とする、マウスの肺でのアーチファクト肺胞内での出血が検出された。これらは、試験化合物の投与に関連するとは考えられていない。さらに、肺水腫、硝子膜、及び肺胞壁破壊などのびまん性肺胞障害(DAD)の他の徴候は観察されなかった。
結論
【0261】
上記の全てから、ACCのエアロゾル吸入は観察されたいかなる毒性も誘発することなく、ACCの投与経路として使用できると結論付けることができる。
実施例11癌患者へのACCの頬側投与
【0262】
舌の根元に嚢胞を呈した成人女性は、舌根の悪性新生物と診断された。嚢胞は生検のために除去され、腺様嚢胞癌と診断された。推奨された治療は手術であった。
【0263】
成人女性は頬側及び/又は経口投与によってACCの服用を開始し、200mgを1日2回(合計400mg/日)服用した。ACCは錠剤(Density(商標)、Amorphical Ltd.、Israel)の形態で送達され、約5分間咀嚼された。残りの物質は飲み込まれた(ある程度の飲み物や食べ物によって任意に補助された)。この期間に他の治療法は提供されなかった。
【0264】
ACC投与2ヶ月後、手術の準備において、生検により腫瘍が消失したことが明らかになり、確認された。
実施例12癌患者へのACCの経口投与と組み合わせた吸入投与
【0265】
経口投与され、同時に吸入投与される、非結晶炭酸カルシウム(ACC)治療による、末期の進行固形癌患者(肺の関与を伴う、又は伴わない)の安泰性の改善を評価するために、単回非盲検コンパッショネイト(compassionate)臨床サポーティブケア試験を実施する。
試験対象母集団:
【0266】
肺転移の有無にかかわらず、抗癌治療が奏効しなかった20名の固形悪性腫瘍対象が登録されている。
【0267】
投与計画
【0268】
口腔用剤形
【0269】
DENSITYは、不活性賦形剤として、ACC、並びにセルロース微結晶、Plasdone K-25、ステアリン酸、及びステアリン酸マグネシウムを含有するカプレットとして配合される。
【0270】
各DENSITYカプレットは、CaCO500mgに相当し、元素カルシウム200mgに等しいAPI(すなわち、非晶質CaCO+アエロジル+薬剤物質安定化剤)としてACC666mgを含有する(以下、用量は元素カルシウムの量を示す)。カルシウムの最大用量1,800mg/日の場合、1日あたり最大9個のDENSITY錠が投与される。
【0271】
吸入剤形
【0272】
吸入配合物は、滅菌懸濁液(8mL、1日2回)として1%ACC(すなわち、0.3%カルシウム)+注射用水から形成される。
【0273】
全対象者はDENSITY用量600mg/日にて開始し、漸増させて1日の総用量1,800mgとし、1日2回、1%ACC/水8mLを吸入する。
試験手順
【0274】
他の抗癌治療で奏効しなかった後期固形癌(肺の関与の有無にかかわらず)と診断された20名の対象者が参加し、ポリリン酸塩で安定化した1%ACCの吸入溶液に加えて、DENSITYの形態で1800mg以下のACCを経口投与する。
【0275】
開始用量:ACCの経口投与600mg(3錠を1錠ずつ1日3回)は、最大用量1,800mgに達するまで2日ごとに200mgずつスケールアップする。ACCの吸入投与では、1%ACC/生理食塩水8mLを1日1回投与し、3日後、1日2回、最大吸入用量である1%ACC/生理食塩水8mLまで漸増させた。
【0276】
カルシウムレベルは、各用量の漸増前のアルブミン(CA)値試験に関して補正した血清カルシウムを用いて評価する。
エンドポイント
【0277】
コンパッショネイト臨床サポーティブケアケアプログラムでは、以下を評価することによって決定される対象者の安泰の向上を評価する:
VASスコアに基づく疼痛の軽減
鎮痛薬の用量及び/又は回数ごとのオピエート離脱
ECOG PSに基づく機能の改善
医師の推定又はホスピス履歴データと比較した生存率
パルスオキシメータによる動脈酸素飽和度の変化
評価エンドポイント(安全性):
用量あたりの高カルシウム血症DLT対象者の割合
用量あたりのDLT対象者の割合
【0278】
バイタルサイン
身長及び体重は、プロトコルごとに測定する(このような評価が行われたときの場所と時間を挿入する(例えば、休憩後X分)。
全試験段階を通して、対象者は5分間休憩後、バイタルサイン(体温、末梢動脈血圧、心拍数、及び呼吸数)を得る。
体温は、全試験段階を通して温度計によって得る。
末梢動脈血圧(収縮期血圧、拡張期血圧)は、全試験段階を通して血圧計によって得る。
心拍数は較正済み標準測定装置を用いて得る。
呼吸数は、最小30秒間の胸郭可動域を観察することによって得る。
理学的検査は、直腸及び骨盤の検査を除く、主要な全臓器系で実施される。身長及び体重は、プロトコルごとに測定し、記録する。
治験責任医師は、任意の理学的検査所見の臨床的意義を決定する際に臨床判断を使用するものとする。
【0279】
理学的検査
【0280】
治験責任医師又は有資格指名者が理学的検査を実施し、文書にする。治験責任医師が臨床的に有意であると評価した異常所見は、関連するCRFモジュールに記録するものとする(例えば有害事象、病歴など)。
【0281】
患者の肯定的及び否定的結果を監視する際に、以下のうちの1つ以上が改善として承認される:
-ECOG PSに基づく機能の改善
-医師の推定又はホスピス履歴データの少なくとも1つと比較した際の生存率の延長
-パルスオキシメータにより判定された動脈酸素飽和度の上昇
-強度、頻度及び持続時間の少なくとも1つにおいて、疼痛の軽減(VASスケール)
【0282】
ACC投薬計画を選択する際に、所定の患者の投薬量を調整するための考慮事項として、血中カルシウム測定値又はその変化を使用してもよい。例えば、高カルシウム血症が増加するか、又は発現することがあった場合に、それにより1日の用量を減少させ、かつ/又はACC用量を多くの場合摂取されるよりも少ない用量へと変更することもある。
実施例13癌患者へのACCの吸入投与
【0283】
43歳の女性は、転移を有する進行性乳癌であると診断され、診断前、余命は約3~4年であると推定された。
【0284】
診断から3年半後、治療にもかかわらず、3つの腫瘍が片側の肺に発見され、複数の小さな腫瘍が他方の肺に存在していた。この女性は骨盤骨折、肘骨折、肺、及び頭部に分散した腫瘍を患っており、頭部腫瘍については放射線療法を受けた。
【0285】
さらに、肺に重度の疼痛を有し、基本機能、呼吸能力の制限、会話の減少、運動の困難が認められた。
【0286】
その後、重度の疼痛のために入院し、最終的に治療を受けないことを意図して退院し、余命は2~6週間に制限されていた。この時点で、患者の血中酸素飽和度は約80%であり、絶えず酸素マスクを付けていたが、それでも息切れがあり、会話及び運動が減少し、重度の疼痛を患っていた。
【0287】
この女性患者は、市販のACC(Density(商標)、Amorphical Ltd.Israel)を用いて合計1200mgのACC、2ピル/日を3回経口投与する療法を開始した。各DENSITYカプレットは、CaCO500mgに相当し、元素カルシウム200mgに等しい666mg(非晶質CaCO+アエロジル+薬剤物質安定化剤)を含有する。
【0288】
疼痛の軽減。このような経口療法の数日後、ACC懸濁液の吸入も開始した。滅菌水に懸濁したポリリン酸塩を用いて調製した8mlの1%ACCを用いて、1日2回吸入を行った。ACC投与中に他の抗癌治療は行わなかった。
【0289】
ACC吸入の開始から数日以内に、劇的な疼痛の軽減があった。吸入開始から数週間以内(この患者に対して、最大限予測された平均余命)で、酸素マスクなしで血中酸素飽和度はほぼ正常(95%)であり、会話能力は大幅に改善された。また、座る姿勢からもたれかかる姿勢への変化、座ったり立ったりすることなど、がかなり容易になった。同時に、患者の胸痛は完全に消失した。
【0290】
ACC治療の開始から2ヶ月以内に、患者は歩く能力を回復した。画像化では、片側の肺の3つの大きな腫瘍のうち2つはもはや検出できず、また、もう1つはサイズが縮小した。他の肺では、全ての腫瘍が劇的に減少した。
【0291】
本発明を特定の実施形態及び実施例を参照して説明したが、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更が可能であり、同等物を代用することができることが理解されよう。さらに、本発明の範囲から逸脱することなく、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるために、多くの変更を行うことができる。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲内に入る全ての実施形態を含むことが意図される。