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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/08 20210101AFI20220314BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20220314BHJP
   H01L 43/02 20060101ALI20220314BHJP
   H01L 43/08 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
G02B7/08 Z
H04N5/225 100
H04N5/225 400
H01L43/02 Z
H01L43/08 U
H01L43/08 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018103789
(22)【出願日】2018-05-30
(65)【公開番号】P2019207374
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000131326
【氏名又は名称】株式会社シグマ
(72)【発明者】
【氏名】田内 久真
(72)【発明者】
【氏名】正木 幸宏
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-003311(JP,A)
【文献】特開2013-041200(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0212336(US,A1)
【文献】特開2010-096859(JP,A)
【文献】特開昭56-105358(JP,A)
【文献】特開平03-232167(JP,A)
【文献】特開平07-044978(JP,A)
【文献】特開平11-211956(JP,A)
【文献】特開昭61-258346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/08
H04N 5/225
H01L 43/02
H01L 43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材と、
加圧部材、配線部材、及び磁気抵抗素子からなり、前記固定部材に取り付けられる位置検出装置と、
前記位置検出装置に重畳して設けられる保護部材と、
前記固定部材に対して回転する回転部材と、
前記回転部材に取り付けられ、所定のピッチでN,S極が着磁された磁気記録媒体と、
前記加圧部材と前記保護部材との空隙に充填される衝撃減衰部材とを有し、
前記加圧部材によって加圧された前記磁気抵抗素子が前記磁気記録媒体の移動量を検出することで前記固定部材に対する前記回転部材の位置を検出するレンズ鏡筒であって、
前記磁気抵抗素子の感受面は前記磁気記録媒体に対向して設けられ、
前記保護部材は前記加圧部材の輪郭を覆うように配置され、
前記衝撃減衰部材は前記保護部材及び前記加圧部材と接触することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
前記衝撃減衰部材は高稠度のグリス、弾性部材又は発泡材であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記衝撃減衰部材は前記保護部材及び前記加圧部材と接触する面積が、前記保護部材及び前記加圧部材の面積より小さいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレンズ鏡筒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の位置を検出する位置検出装置に関し、特に、磁気抵抗(Magneto Resistive、MR)素子を用いた位置検出装置を搭載したスチルカメラ、ビデオカメラ等のレンズ鏡筒に関する。
【背景技術】
【0002】
スチルカメラ、ビデオカメラ等に用いられるレンズ鏡筒では、ズーム動作又はフォーカス動作時に、レンズの移動や位置を検出し、撮影者に焦点距離情報や撮影距離情報を伝えたり、カメラに搭載された様々な機能に応用して精密な動作を実現させたりするものが知られている。この時、レンズの移動に用いるモータ自体が位置情報をもたない時や、レンズの移動が手動で行われたとき、位置検出手段が必要となる。
【0003】
レンズ鏡筒における位置検出手段として、磁気抵抗素子が知られている。磁気抵抗素子は、インジウム・アンチモン(InSb)等の半導体薄膜に磁界を加えた時に、その磁気抵抗値が変化する現象を活用した素子である。この種の磁気抵抗素子を用いた位置検出装置は、フェライトやプラスチックマグネットのような磁気記録媒体と組み合わせて、その磁気記録媒体の位置検出に広く用いられている。
【0004】
この種の位置検出装置としては、例えば嘗て出願人が行った特許出願である、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された発明においては、所定のピッチで着磁された帯状の磁気シート表面上を磁気センサが摺動し検出を行う磁気検出構成において、磁気シート、磁気センサ、磁気センサを支持し磁気センサと磁気シート表面を付勢する加圧バネ、保護板からなる構造をしている。
【0005】
このような構造を取ることで、磁気シートと磁気センサとの距離を一定に保ち、また、保護板が加圧バネを保護し、組立時や衝撃時に加圧バネが変形する事を防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-003311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら先述のような構成の位置検出装置では、磁気シートと磁気センサとが相対的に摺動する際に、摩擦音が発生し得るという課題が存在した。
【0008】
摩擦音は音圧レベルの低い音と、音圧レベルの高く正弦波の波形を持つ鳴き音と呼称されている音の2種類に分類される。鳴き音の原因は摩擦による自励振動であり、自励振動の周波数が可聴域の場合に騒音が発生してしまう。ここで、自励振動が発生する場合には自励振動の周波数と加圧バネの固有周波数がほぼ一致することが知られている。加圧バネの固有周波数は加圧バネの形状に由来するが、レンズ鏡筒のようなスペースの限られた空間では鳴き音抑制のために形状を大きく変化させる事は困難であった。
【0009】
上記課題から本発明は、加圧部材を保護し、位置検出性能を維持しながら、摺動に係る摩擦音を抑制する機構を省スペースに設けた位置検出装置を用いたレンズ鏡筒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に示す発明は、固定部材と、加圧部材、配線部材、及び磁気抵抗素子からなり、前記固定部材に取り付けられる位置検出装置と、前記位置検出装置に重畳して設けられる保護部材と、前記固定部材に対して回転する回転部材と、前記回転部材に取り付けられ、所定のピッチでN,S極が着磁された磁気記録媒体と、前記加圧部材と前記保護部材との空隙に充填される衝撃減衰部材とを有し、前記加圧部材によって加圧された前記磁気抵抗素子が前記磁気記録媒体の移動量を検出することで前記固定部材に対する前記回転部材の位置を検出するレンズ鏡筒であって、前記磁気抵抗素子の感受面は前記磁気記録媒体に対向して設けられ、前記保護部材は前記加圧部材の輪郭を覆うように配置され、前記衝撃減衰部材は前記保護部材及び前記加圧部材と接触することを特徴とするレンズ鏡筒である。
【0011】
請求項2に示す発明は、前記衝撃減衰部材は高稠度のグリス、弾性部材又は発泡材であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ鏡筒である。
【0012】
請求項3に示す発明は、前記衝撃減衰部材は前記保護部材及び前記加圧部材と接触する面積が、前記保護部材及び前記加圧部材の面積より小さいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレンズ鏡筒である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、加圧部材を保護し、位置検出性能を維持しながら、摺動に係る摩擦音を抑制する機構を省スペースに設けた位置検出装置を用いたレンズ鏡筒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例におけるレンズ鏡筒を示す斜視図である。
図2】本発明の実施例におけるレンズ鏡筒を示す展開図である。
図3】本発明の実施例におけるセンサユニットを示す平面図である。
図4】本発明の実施例における保護板を示す平面図である。
図5】本発明の実施例におけるレンズ鏡筒を正面から見た断面図である。
図6】本発明の実施例におけるレンズ鏡筒を側面から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面に従って、本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0016】
まず、本発明の位置検出装置の構造について、図面を用いてそれぞれの構成部材について説明する。図1は、本発明の位置検出装置が適用されたレンズ鏡筒100の斜視図であり、固定筒1に取り付けられたセンサユニット5の端部がスケールリング3に取付けられた磁気テープ9に対向し、その移動を検出する構造を示している。
【0017】
図2は、本発明の位置検出装置が適用されたレンズ鏡筒100の展開図であり、固定筒1にセンサユニット5がダンパー23を挟んで保護部材であるところの保護板7と共に固定ビス13によって締結されている。また、センサユニット5は固定筒1に対して締結部材であるところの押さえビス11によっても締結されている。
【0018】
固定筒1は、撮影時に回転しない固定部材であり、レンズを保持するレンズ枠を内部に保持する他、フォーカス駆動に用いるモータ(不図示)や各種センサを保持している。固定筒1は、切削加工されたアルミ合金を酸化表面処理して製作されるが、ポリカーボネイト等のエンジニアリングプラスチックによって成型されてもよい。固定筒1の側面には、センサユニット5が取り付けられる取付け台1zが一体的に形成されているが、別の部材を取り付ける構成でも良い。取付け台1zの平面の頂部には、センサユニット5及び保護板7を固定ビス13で取り付けるための孔部1a及び1bが設けられている。また、取付け台1zの近傍にはセンサユニット5を押さえビス11で取り付けるための孔部1cが設けられている。
【0019】
スケールリング3は、撮影時に回転する回転部材であり、フォーカス駆動に用いるモータ(不図示)に接続されており、固定筒1の表面で回転摺動しながら連結されたフォーカスレンズ枠(不図示)を光軸方向に移動させる。すなわち、スケールリング3の回転量を検出することで、検出したいレンズの位置情報を算出することができる構成となっている。スケールリング3は、切削加工されたアルミ合金を酸化表面処理して製作されるが、ポリカーボネイト等のエンジニアリングプラスチックによって成型されてもよい。また、スケールリング3の後端には帯状の貼り付け面1eが形成されており、粘着テープや接着剤により磁気テープ9が貼り付けられる。
【0020】
位置検出装置であるところのセンサユニット5は、図3に示すように、配線部材であるところのフレキシブルプリント基板(FPC)17と磁気抵抗素子であるところのMRセンサ21と加圧部材であるところの加圧バネ19から構成される。まず、既知の電子部品実装手段によってFPC17の先端部17hの裏面にMRセンサ21が実装され、さらに、MRセンサ21の裏面とFPC17の中央部17gの裏面で加圧バネ19に貼り付けられる。すなわち、加圧バネ19の先端部がMRセンサ21を磁気テープ9に圧接するために湾曲しても、FPC17が加圧バネ19から剥離することがない構成になっている。
【0021】
加圧部材であるところの加圧バネ19は、孔部19a及び19bが固定筒1の取付け台1zに設けられた孔部1a及び1bに保護板7と共に固定ビス13によって共締めされて取り付けられる。これにより、先端部19fに貼り付けられたMRセンサ21を固定筒1から迫り出した状態で保持している。なお、加圧バネは極めて薄く柔軟なバネ材で出来ており、MRセンサ21が磁気テープ9と摺動しても互いに傷つけることはなく、磁気テープ9の移動に常に追従させる程度の弾性を備えた構造となっている。
【0022】
保護部材であるところの保護板7は、図4に示すように、センサユニット5と共に孔部7a及び7bに固定ビス13を挿通することで固定筒1に取り付けられる。保護板7の輪郭は加圧バネ19とほぼ同一かやや大きい程度であり、加圧バネ19全体を覆い隠す形状となっている。また、保護板7はアルミ合金やステンレスの薄板をプレス加工で成形したもので、十分な強度を持っている。
【0023】
衝撃減衰部材であるところのダンパー23は図2図5及び図6に示すように、加圧バネ19と保護板7との空隙を充填するよう配置される。ダンパー23の輪郭は加圧バネ19及び保護板7より小さく、保護板7に覆い隠されるような形状となっている。またダンパー23は加圧バネ19の表面及び保護板7の裏面の両方にそれぞれ接触する。なお本実施例において、ダンパー23は高粘度で流動性が少ない高稠度のグリスである。ダンパー23は通常は形状を保ったまま加圧バネ19と保護板7とに接着しており、衝撃に対しては変形するといった性質を有する。
【0024】
磁気記録媒体であるところの磁気テープ9は、粉末状の磁性体をテープ状のフイルムに、バインダー(接着剤)で塗布または蒸着した記録媒体であり、黒色の光沢面に数十μmのピッチでS極とN極とが交互に着磁されている。表面は平滑であり、MRセンサ21が表面を抵抗なく摺動できる。裏面には粘着面が形成されており、スケールリング3の後端に形成された帯状の貼り付け面1eに貼り付けられる(図2)。
【0025】
締結部材であるところの押さえビス11及び固定ビス13は、部品の締結用途に供される一般的なねじであり、締結する部位の材質、厚み、要求される締結強度等によって最適な条数、ねじ溝の形状、径及びピッチが種々用いられる。また、締結する部位によってはタッピングねじ、逆ねじなどのねじを用いても良い。図では、便宜的にねじ山を記載していないが、一般的なねじを示しており、本発明の実施にあたってはこれに限定されるものではない。
【0026】
外観部材であるところのカバーリング15は、図6に示すとおり、センサユニット5の外径方向に取り付けられており、内部機構を塵芥や水滴などの異物や、衝撃から内部を保護している。一方、近年の撮像装置の小型化に伴ったレンズ鏡筒の小径化により、カバーリング15と保護板7とのクリアランスは極めて小さく、組立時にカバーリング15の内部が保護板7と接触しやすい構造である。例えば、落下等によりカバーリング15に強い衝撃が加わった際等に、カバーリング15が変形して内部に突出することが考えられる。このような場合でも、保護板7が加圧バネ19を覆っているため、変形したカバーリング15が加圧バネ19に触れることはなく、本来の性能を維持することができる。
【0027】
配線部材であるところのフレキシブルプリント基板(FPC)17は、図3に示すとおり、先端部17hにMRセンサ21を実装している。さらに、先端部17hと中央部17gとで加圧バネ19に接着されている。このような構成により、加圧バネ19が湾曲しても、FPC17は剥離したり断線したりすることなく、加圧バネ19と一体的に動くことができる。また、FPC17はその中間部に設けた孔部17cで固定筒1に押さえビス11で締結される。これにより、ズーム駆動やフォーカス駆動に伴ってレンズ鏡筒100が光軸方向に動き、端子部17dの方向にFPC17を引っ張る力が働いたとしても、FPC17が引っ張られて加圧バネ19が反り返り、MRセンサ21を磁気テープ9から引き離して接触が断たれることはない。また、FPC17の端子部17dはレンズ鏡筒100のメイン基板(不図示)に設けられたコネクタに挿入されて電気的に接続される。なお、FPC17は厚み数十μmの導体箔(主に銅)を同程度の厚みのフイルム状の絶縁体(主にポリイミド膜)で挟んだ構造であり、柔軟性に富み、屈曲を繰り返しても導通が失われない強度を持つ。
【0028】
次に本発明の特徴である騒音抑制に係る機構の説明を行う。前述したように、MRセンサ21と磁気テープ9とが摺動する際の摩擦力に起因して、加圧バネ19が自励振動をする。ここで自励振動の周波数が可聴域の場合、鳴き音が発生してしまう。従って本発明においては、加圧バネ19と保護板7との空隙にダンパー23を充填することで減衰力を付与し、加圧バネ19に自励振動が起こりえない構成とした。
【0029】
まずダンパー23が自励振動に与える影響について説明する。速度をV0としてMRセンサ21を磁気テープ9上で動かしたとき、自励振動は以下の式のように表される。
ただし、
vs(t):MRセンサ21の振動速度
ω:MRセンサ21の固有周波数
A、θ:初期条件によって決まる定数
γ:減衰係数
m:MRセンサ21の質量
f(vr):MRセンサ21と磁気テープ9の摩擦力
である。
【0030】
自励振動の周波数は√(ω^2ーγ^2)であるが、ωに比べてγは十分小さいため、MRセンサ21の固有周波数ωに近い値になる。また、摩擦力f(vr)はMRセンサ21と磁気テープ9の相対速度vrによって変化する。
【0031】
式(1)から、減衰係数γが負の場合、すなわち摩擦力fの速度微分f’(v0)が負の場合にMRセンサ21の振動速度vs(t)が発振条件となり自励振動が発生してしまう。従って、減衰係数γが常に正となるような構成を取れば、自励振動は発生し得ないこととなる。加圧バネ19と保護板7の間に粘性減衰係数がCのダンパー23を充填し加圧バネ19に減衰力を付与すると、減衰係数γは式(3)のように表される。
【0032】
ここで、ダンパー23の粘性減衰係数Cが式(4)のように設定されていれば、摩擦力fの速度微分f’(v0)が負の場合でも減衰係数γは常に正となる。従って、ダンパー23の減衰力によって自励振動が発生しない構成とすることができる。
【0033】
図6は本発明が適用されたレンズ鏡筒の断面図である。保護板7は中央部7iで一旦折り曲げられ、再度固定筒1の表面に平行に延出する形状となっている。中央部7iは、加圧バネ19の先端部19fが湾曲する基点付近である。保護板7は径方向に折り曲げられて加圧バネ19からわずかに離れており、保護板7と加圧バネ19との空隙にはダンパー23が充填されている。なお、図6においては構成を明示するために他の図とは寸法等を変更して描写している。
【0034】
ダンパー23は加圧バネ19の表面に接着しているため、摺動による加圧バネ19の撓み変形に対して追随して移動する。しかしこの際、衝撃による変形が起きず固定ビス13によって固定されている保護板7にもダンパー23は接着しているため、上方向への移動は規制されている。従って、ダンパー23は加圧バネ19の撓み変形による上方向への負荷によって、縦方向に収縮し横方向に拡大する変形をすることとなる。ダンパー23の変形に伴って摺動による衝撃は減衰され、更に接着している加圧バネ19の振動量は減少する。
【0035】
以上のように、ダンパー23が摺動に係る衝撃を減衰することで、加圧バネ19の振動量を減少させ、音鳴きを抑制することが可能となる。またダンパー23は本来空隙であるはずの空間に充填させているため、新たにレンズ鏡筒100内の空間を占有する必要がないことから、本発明に係る機構は省スペースな構成となっている。
【0036】
ここでダンパー23として使用する高稠度なグリスを充填する面積については、摺動に際して収縮しても加圧バネ19及び保護板7から外に溢れない範囲とする必要がある。外に溢れてしまえば周囲の部材にグリスが付き、機構全体の動きに悪影響が及ぶ恐れがあるためである。よって本発明においては、ダンパー23と加圧バネ19が接触する面積及びダンパー23と保護板7が接触する面積は、加圧バネ19及び保護板7の面積より狭くなるよう構成されている。グリスを充填する面積は、上記の制限を満たした上で、本発明の効果を満たす範囲で設計者が適宜調整すれば良い。
【0037】
また、本実施例においてはダンパー23として高稠度のグリスを使用しているが、高稠度のペースト状物質である他の物質を使用しても良い。また、負荷がかかることによって変形収縮を行う材質であれば、固形の物体を使用しても良い。例えばマイクロセルポリマーシート等の弾性部材や、天然ゴム等の発泡材が採用可能である。固形の物体をダンパー23として使用する際には、加圧バネ19の表面と保護板7の裏面とでダンパー23を挟み込む、もしくは接着剤等で接着する等すれば良い。なお、低稠度のグリスは形状を保てず加圧バネ19及び保護板7から外に流れ出てしまうことから、ダンパー23として不適格である。
【0038】
即ち本発明は、組立時や衝撃時における加圧部材の変形を防ぎ、位置検出性能を維持しながら、摺動に係る摩擦音を抑制する機構を省スペースに設けた位置検出装置およびこれを用いたレンズ鏡筒を提供するという目的を特に、固定部材と、加圧部材、配線部材、及び磁気抵抗素子からなり、前記固定部材に取り付けられる位置検出装置と、前記位置検出装置に重畳して設けられる保護部材と、前記固定部材に対して回転する回転部材と、前記回転部材に取り付けられ、所定のピッチでN,S極が着磁された磁気記録媒体と、前記加圧部材と前記保護部材との空隙に充填される衝撃減衰部材とを有し、前記磁気抵抗素子が前記磁気記録媒体の移動量を検出することで前記固定部材に対する前記回転部材の位置を検出するレンズ鏡筒であって、前記磁気抵抗素子の感受面は前記磁気記録媒体に対向して設けられ、前記保護部材は前記加圧部材の輪郭を覆うように配置され、前記衝撃減衰部材は前記保護部材及び前記加圧部材と接触することを特徴とするレンズ鏡筒の構成により実現した。
【0039】
なお、本発明にかかるレンズ鏡筒は、本発明が適用される撮像装置に応じて適宜変形、及び拡大縮小される。また、必要に応じて、装置の外寸法の変更による外観の変化、部材間の結合位置など、種々の変形や変更が可能であるが、いずれも本発明の均等の範囲内である。
【符号の説明】
【0040】
1 固定筒
3 スケールリング
5 センサユニット
7 保護板
9 磁気テープ
11 押さえビス
13 固定ビス
15 カバーリング
17 フレキシブルプリント基板
19 加圧バネ
21 MRセンサ
23 ダンパー
70 押さえ板
100 レンズ鏡筒
図1
図2
図3
図4
図5
図6