(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】操作装置
(51)【国際特許分類】
G05G 9/047 20060101AFI20220314BHJP
G05G 25/00 20060101ALI20220314BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
G05G9/047
G05G25/00 C
E02F9/20 K
(21)【出願番号】P 2020116133
(22)【出願日】2020-07-06
【審査請求日】2021-03-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591148255
【氏名又は名称】朝日音響株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【氏名又は名称】豊栖 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100214145
【氏名又は名称】藤原 尚恵
(72)【発明者】
【氏名】河野 繁美
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-237812(JP,A)
【文献】特開平11-67017(JP,A)
【文献】特開昭62-74585(JP,A)
【文献】特開2017-8527(JP,A)
【文献】特開2001-306168(JP,A)
【文献】特開平8-132903(JP,A)
【文献】特開平4-129682(JP,A)
【文献】実開昭64-27715(JP,U)
【文献】独国特許出願公開第102004004616(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 9/047
G05G 25/00
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つ以上の可動箇所
であって、任意の長さを有するアーム又はブームを可動自在に連結した可動箇所を一以上含む可動箇所をそれぞれ駆動系で動作可能な操作対象物の動作を制御するための操作装置であって、
上面に取付穴を形成している基台と、
棒状で一端側を前記基台に対し、互いに交差する第一方向及び第二方向に傾動可能な第一傾動部を介して取り付けられた第一操作部と、
前記第一操作部の他端側に、前記第一方向及び第二方向に傾動可能な第二傾動部を介して一端側を取り付けられた棒状の第二操作部と、
前記第二操作部の他端側に、少なくとも前記第一方向に傾動可能な第三傾動部を介して取り付けられた第三操作部と、
前記基台と第一操作部との相対位置である第一位置を検出可能な第一検出部と、
前記第一操作部と第二操作部との相対位置である第二位置を検出可能な第二検出部と、
前記第二操作部と第三操作部との相対位置である第三位置を検出可能な第三検出部と、
前記第一検出部で検出された第一位置、前記第二検出部で検出された前記第二位置、前記第三検出部で検出された第三位置を、操作対象物の3つ以上の可動箇所をそれぞれ駆動する各駆動系に対して、個別に出力可能な出力部と、
前記出力部の第一位置、第二位置、第三位置のいずれかの出力を、アーム又はブームを連結した可動箇所の移動方向と対応させるように割り付けるための割当部と、
を備え
る操作装置。
【請求項2】
3つ以上の可動箇所
であって、任意の長さを有するアーム又はブームを可動自在に連結した可動箇所を一以上含む可動箇所をそれぞれ駆動系で動作可能な操作対象物の動作を制御するための操作装置であって、
上面に取付穴を形成している基台と、
一端側を前記基台に対し、互いに交差する第一方向及び第二方向に傾動可能な第一傾動部を介して取り付けられた第一操作部と、
前記第一操作部の他端側に、少なくとも前記第一方向に傾動可能な第二傾動部を介して一端側を取り付けられた第二操作部と、
前記第二操作部の他端側に、少なくとも前記第一方向に傾動可能な第三傾動部を介して取り付けられた第三操作部と、
前記基台と第一操作部との相対位置である第一位置を検出可能な第一検出部と、
前記第一操作部と第二操作部との相対位置である第二位置を検出可能な第二検出部と、
前記第二操作部と第三操作部との相対位置である第三位置を検出可能な第三検出部と、
前記第一検出部で検出された第一位置、前記第二検出部で検出された前記第二位置、前記第三検出部で検出された第三位置を、操作対象物の3つ以上の可動箇所をそれぞれ駆動する各駆動系に対して、個別に出力可能な出力部と、
前記出力部の第一位置、第二位置、第三位置のいずれかの出力を、アーム又はブームを連結した可動箇所の移動方向と対応させるように割り付けるための割当部と、
を備え
る操作装置。
【請求項3】
3つ以上の可動箇所
であって、任意の長さを有するアーム又はブームを可動自在に連結した可動箇所を一以上含む可動箇所をそれぞれ駆動系で動作可能な操作対象物の動作を制御するための操作装置であって、
基台と、
棒状で一端側を前記基台に対し、互いに交差する第一方向及び第二方向に傾動可能な第一傾動部を介して取り付けられた第一操作部と、
前記第一操作部の他端側に、少なくとも前記第一方向に傾動可能な第二傾動部を介して一端側を取り付けられた棒状の第二操作部と、
前記第二操作部の他端側に、少なくとも前記第一方向に傾動可能な第三傾動部を介して取り付けられた第三操作部と、
前記基台と第一操作部との相対位置である第一位置を検出可能な第一検出部と、
前記第一操作部と第二操作部との相対位置である第二位置を検出可能な第二検出部と、
前記第二操作部と第三操作部との相対位置である第三位置を検出可能な第三検出部と、
前記第一検出部で検出された第一位置、前記第二検出部で検出された前記第二位置、前記第三検出部で検出された第三位置を、操作対象物の3つ以上の可動箇所をそれぞれ駆動する各駆動系に対して、個別に出力可能な出力部と、
前記出力部の第一位置、第二位置、第三位置のいずれかの出力を、アーム又はブームを連結した可動箇所の移動方向と対応させるように割り付けるための割当部と、
を備え、
前記第一操作部は、前記基台から垂直方向に突出されるように、前記第一傾動部を介して前記基台に連結され、
ユーザの指と対応する位置に配置された前記第三操作部の前記第三傾動部を傾動させる応力を、前記第二傾動部を傾動させる応力よりも小さく設定し、
前記第二傾動部を傾動させる応力を、前記第一傾動部を傾動させる応力よりも小さく設定してなる操作装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の操作装置であって、
前記基台に対する前記第一操作部の傾動方向と、
前記第一操作部に対する前記第二操作部の傾動方向と、
前記第二操作部に対する前記第三操作部の傾動方向とを、
操作対象物の3つ以上の可動箇所のそれぞれの可動方向と、各々一致させてなる操作装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の操作装置であって、
前記第三傾動部は、前記第一方向と交差する前記第二方向にも傾動可能に構成してなる操作装置。
【請求項6】
請求項5に記載の操作装置であって、
前記第三傾動部は、親指で操作可能なジョイスティック状に構成されてなる操作装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の操作装置であって、
医療機器を除く操作対象物の動作を制御する操作装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の操作装置であって、
前記出力部は、前記出力を無線で外部に送信してなる操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の可動箇所を有する操作対象物の動作を制御するための操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機械や車両の操作、例えばパワーショベルのアームやブームの操作、消防車のはしごの操作等にスティック状のレバーを有する操作装置が使用されている。従来、このような操作装置においては、機械や車両の各可動部分の動作を操作するために、それぞれ1つずつ操作レバーが割り当てられていた。例えば
図15に示すようなパワーショベルPは、アームやブーム、バケット等を回転させるため、4つの回転軸J1~J4を有している。これらの回転軸J1~J4の回転によりアームやブーム、バケットをそれぞれ矢印の方向に動作させるよう、個別の操作レバーLV1~LV4を4本並べて独立に操作していた。
【0003】
しかしながら、このような構成では1本のレバーで1つの可動部しか操作できないため、片手での操作が困難で、常時両手での操作が必要になるという問題があった。また、複数のレバーが区別無く並べられているだけの構成のため、各レバーに割り当てられた操作対象物の移動方向といった動作を感覚的に理解し難いという問題もあった。このため、初心者等操作の経験が浅い者では、どの部材をどの方向に移動させるために、どのレバーをどの方向に操作させるべきかを感覚的に把握できず、簡単に操作することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的の一は、複数の可動箇所を有する操作対象物の操作を片手でも容易に行えるようにした操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
本発明の第1の形態に係る操作装置によれば、3つ以上の可動箇所であって、任意の長さを有するアーム又はブームを可動自在に連結した可動箇所を一以上含む可動箇所をそれぞれ駆動系で動作可能な操作対象物の動作を制御するための操作装置であって、上面に取付穴を形成している基台と、棒状で一端側を前記基台に対し、互いに交差する第一方向及び第二方向に傾動可能な第一傾動部を介して取り付けられた第一操作部と、前記第一操作部の他端側に、前記第一方向及び第二方向に傾動可能な第二傾動部を介して一端側を取り付けられた棒状の第二操作部と、前記第二操作部の他端側に、少なくとも前記第一方向に傾動可能な第三傾動部を介して取り付けられた第三操作部と、前記基台と第一操作部との相対位置である第一位置を検出可能な第一検出部と、前記第一操作部と第二操作部との相対位置である第二位置を検出可能な第二検出部と、前記第二操作部と第三操作部との相対位置である第三位置を検出可能な第三検出部と、前記第一検出部で検出された第一位置、前記第二検出部で検出された前記第二位置、前記第三検出部で検出された第三位置を、操作対象物の3つ以上の可動箇所をそれぞれ駆動する各駆動系に対して、個別に出力可能な出力部と、前記出力部の第一位置、第二位置、第三位置のいずれかの出力を、アーム又はブームを連結した可動箇所の移動方向と対応させるように割り付けるための割当部とを備えることができる。上記構成により、複数の可動箇所の操作機能を一本の操作装置に集約して、操作性を向上させることが可能となる。また、3つ以上の可動箇所をそれぞれ操作するための操作レバーを複数設ける必要がないため、狭い場所への設置も可能となる。それに加えて、第二傾動部が傾動可能な方向を増やすことができる。その結果、操作可能な操作対象物の可動箇所の数を増やすことができ、利便性が向上するという利点がある。
また、本発明の第2の形態に係る操作装置によれば、上記構成に加えて、3つ以上の可動箇所であって、任意の長さを有するアーム又はブームを可動自在に連結した可動箇所を一以上含む可動箇所をそれぞれ駆動系で動作可能な操作対象物の動作を制御するための操作装置であって、上面に取付穴を形成している基台と、一端側を前記基台に対し、互いに交差する第一方向及び第二方向に傾動可能な第一傾動部を介して取り付けられた第一操作部と、前記第一操作部の他端側に、少なくとも前記第一方向に傾動可能な第二傾動部を介して一端側を取り付けられた第二操作部と、前記第二操作部の他端側に、少なくとも前記第一方向に傾動可能な第三傾動部を介して取り付けられた第三操作部と、前記基台と第一操作部との相対位置である第一位置を検出可能な第一検出部と、前記第一操作部と第二操作部との相対位置である第二位置を検出可能な第二検出部と、前記第二操作部と第三操作部との相対位置である第三位置を検出可能な第三検出部と、前記第一検出部で検出された第一位置、前記第二検出部で検出された前記第二位置、前記第三検出部で検出された第三位置を、操作対象物の3つ以上の可動箇所をそれぞれ駆動する各駆動系に対して、個別に出力可能な出力部と、前記出力部の第一位置、第二位置、第三位置のいずれかの出力を、アーム又はブームを連結した可動箇所の移動方向と対応させるように割り付けるための割当部とを備えることができる。
さらに、本発明の第3の形態に係る操作装置によれば、上記何れかの構成に加えて、3つ以上の可動箇所であって、任意の長さを有するアーム又はブームを可動自在に連結した可動箇所を一以上含む可動箇所をそれぞれ駆動系で動作可能な操作対象物の動作を制御するための操作装置であって、基台と、棒状で一端側を前記基台に対し、互いに交差する第一方向及び第二方向に傾動可能な第一傾動部を介して取り付けられた第一操作部と、前記第一操作部の他端側に、少なくとも前記第一方向に傾動可能な第二傾動部を介して一端側を取り付けられた棒状の第二操作部と、前記第二操作部の他端側に、少なくとも前記第一方向に傾動可能な第三傾動部を介して取り付けられた第三操作部と、前記基台と第一操作部との相対位置である第一位置を検出可能な第一検出部と、前記第一操作部と第二操作部との相対位置である第二位置を検出可能な第二検出部と、前記第二操作部と第三操作部との相対位置である第三位置を検出可能な第三検出部と、前記第一検出部で検出された第一位置、前記第二検出部で検出された前記第二位置、前記第三検出部で検出された第三位置を、操作対象物の3つ以上の可動箇所をそれぞれ駆動する各駆動系に対して、個別に出力可能な出力部と、前記出力部の第一位置、第二位置、第三位置のいずれかの出力を、アーム又はブームを連結した可動箇所の移動方向と対応させるように割り付けるための割当部とを備え、前記第一操作部は、前記基台から垂直方向に突出されるように、前記第一傾動部を介して前記基台に連結され、ユーザの指と対応する位置に配置された前記第三操作部の前記第三傾動部を傾動させる応力を、前記第二傾動部を傾動させる応力よりも小さく設定し、前記第二傾動部を傾動させる応力を、前記第一傾動部を傾動させる応力よりも小さく設定することができる。上記構成により、複数並んだ傾動部を傾動させる応力を異ならせることで、どの部分を傾動させているかの感覚を操作者が把握し易くできる。
【0007】
さらにまた、本発明の第4の形態に係る操作装置によれば、上記構成に加えて、前記基台に対する前記第一操作部の傾動方向と、前記第一操作部に対する前記第二操作部の傾動方向と、前記第二操作部に対する前記第三操作部の傾動方向とを、操作対象物の3つ以上の可動箇所のそれぞれの可動方向と、各々一致させることができる。上記構成により、操作装置の傾動方向を操作対象物の可動方向と合致させることで、操作対象物の可動方向を感覚的に把握できるようになり、初心者でも直感的な操作を行い易くなり、操作性を向上できる。
【0009】
さらにまた、本発明の第5の形態に係る操作装置によれば、上記何れかの構成に加えて、前記第三傾動部は、前記第一方向と交差する前記第二方向にも傾動可能に構成することができる。上記構成により、第三傾動部が傾動可能な方向を増やすことで、操作可能な操作対象物の可動箇所の数を増やすことができ、利便性が向上するという利点がある。
【0010】
さらにまた、本発明の第6の形態に係る操作装置によれば、上記何れかの構成に加えて、前記第三傾動部を、親指で操作可能なジョイスティック状に構成することができる。上記構成により、ジョイスティック状の第三傾動部を親指で簡単に操作することができる。
【0012】
さらにまた、本発明の第7の形態に係る操作装置によれば、上記何れかの構成に加えて、医療機器を除く操作対象物の動作を制御することができる。
【0013】
さらにまた、本発明の第8の形態に係る操作装置によれば、上記何れかの構成に加えて、前記出力部は、前記出力を無線で外部に送信することができる。上記構成により、煩雑な接続用のケーブル等を省略し、遠隔操作の自由度も向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態1に係る操作装置及びその使用の状態を示す部分拡大図付き斜視図である。
【
図3】
図1の操作装置及び割当部の接続の状態を示す模式図である。
【
図5】
図4の操作装置が傾動する様子を示す斜視図である。
【
図6】
図1の操作装置及びパワーショベルの部分拡大図である。
【
図7】
図1の操作装置の傾動と、パワーショベルの台座の水平面内での動作を示す斜視図である。
【
図8】
図1の操作装置の傾動と、パワーショベルのブームの垂直面内での動作を示す斜視図である。
【
図9】
図9Aはパワーショベルの一部の動作を示す斜視図、
図9Bは
図4の操作装置の第二操作部及び第三操作部の傾動を示す斜視図である。
【
図10】
図10Aはアームの動作を示す側面図、
図10Bは第二操作部を所定の方向に操作した際の傾動を示す側面図である。
【
図11】表示部に表示される割付画像の一例を示す図である。
【
図12】表示部に表示される割付画像の別の例を示す図である。
【
図13】実施形態2に係る操作装置の部分拡大図付き斜視図である。
【
図14】
図14Aは
図13の第二操作部の第一方向D1における傾動を示す斜視図、
図14Bは第二操作部の第二方向D2における傾動を示す斜視図である。
【
図15】従来の操作装置の一例を示す斜視図である。
【
図16】従来の操作装置の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに特定されない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
[実施形態1]
【0016】
本発明の実施形態1に係る操作装置を
図1~
図12に示す。これらの図において、
図1は本発明の実施形態1に係る操作装置及びその使用の状態を示す部分拡大図付き斜視図、
図2Aは
図1の操作装置の使用の状態を示す正面図、
図2Bは
図1の操作装置の使用の状態を示す側面図、
図2Cは
図1の操作装置の別の使用の状態を示す側面図、
図3は
図1の操作装置及び割当部の接続の状態を示す模式図、
図4は
図1の操作装置を示す斜視図、
図5は
図4の操作装置が傾動する様子を示す斜視図、
図6は
図1の操作装置及びパワーショベルの部分拡大図、
図7は
図1の操作装置の傾動と、パワーショベルの台座の水平面内での動作を示す斜視図、
図8は
図1の操作装置の傾動と、パワーショベルのブームの垂直面内での動作を示す斜視図、
図9Aはパワーショベルの一部の動作を示す斜視図、
図9Bは
図4の操作装置の第二操作部及び第三操作部の傾動を示す斜視図、
図10Aはアームの動作を示す側面図、
図10Bは第二操作部を所定の方向に操作した際の傾動を示す側面図、
図11は表示部に表示される割付画像の一例を示す図、
図12は表示部に表示される割付画像の別の例を示す図を、それぞれ示している。
(操作装置100)
【0017】
本発明の実施形態1に係る操作装置100は、
図1に示すように、複数の可動箇所を有し、駆動系で動作可能な操作対象物を操作するためのものである。本実施形態の操作装置は、複数の可動箇所を有する機械や車両等、任意のものを操作することができる。一例として、実施形態1では、操作対象物としてパワーショベルPSを、操作装置100で操作する例について説明する。
【0018】
パワーショベルPSは駆動系である4つの回転軸AX1~AX4を有している。そして、これらの回転軸AX1~AX4の回転により、台座OP、ブームBM、アームAM、バケットBKが、矢印の方向にそれぞれ動作する。また、後述する第一操作部10で回転軸AX1及びAX2を、第二操作部20で回転軸AX3を、第三操作部30で回転軸AX4を操作するようにしている。この操作装置100は、
図15に示す従来のように個別の操作に個別のレバーを設け、それぞれの動作を独立に操作するように構成することを避け、一の操作装置に複数の操作部を集約したものである。
【0019】
本実施形態に係る操作装置においては、一本の操作装置に複数の操作部を集約することで、片手でも操作し易い操作環境が実現される。例えば従来のパワーショベルのアームやブーム、バケットは
図15に示すように、個別の操作レバーを複数並べて独立に操作していた。しかし、これでは複数の操作レバーを握り替えて操作しなければならず、両手での操作を強要され、操作しにくいという問題が生じていた。これに対し上記構成によれば、一本の操作装置に複数の操作部を集約することで、複数の操作レバーを設ける必要がないため、狭い場所への設置も可能となる。
【0020】
さらに、各操作部の操作を操作対象物の動作と一致させるように割り付けることで、感覚的な操作環境を実現した、初心者等操作の経験が浅い者でも操作が容易となる。
【0021】
従来の操縦装置において、複数の可動部分の操作を一本に統合した操縦装置は、
図16に示すような構成であった(特許文献1)。この操縦装置は、
図16に示すように、操作レバー90の先端に操作ボタン91、92、93を設けている。操作レバー90の3次元的な位置情報は、駆動手段94、95及び往復動作付勢手段96の各ステッピングモータの回転角度を検出し、算出される。この算出された位置情報は、産業用ロボット側に出力される。また、各操作ボタン91、92、93の印加により、予め設定された所定の動作指令が産業用ロボット側に伝達される。これにより、産業用ロボット側では、各操作ボタン毎に設定された各動作を行う。
【0022】
しかしながら、
図16の操縦装置では、直立姿勢に保持された操作レバー90に対して、リンク部材97、98を用いた移動が水平方向に制限されているため、操作対象物がパワーショベルやはしご車のような、垂直面内での移動を含む操作対象物の移動方向とは一致せず、依然として操縦装置の操作方向と操作対象物の移動との対応関係を感覚的に理解し難い。このため、初心者が操作対象物を所望の方向に移動させるためにどのような操作が必要かを直感的に把握できず、操作し難いという問題は解決されていなかった。
【0023】
これに対して、本実施形態に係る操作装置においては、一本の操作装置に複数の操作部を集約すると共に、各操作部の傾動方向を操作対象物の可動方向と対応させることで、感覚的な操作感を得ることができる。すなわち、従来のパワーショベルのアームやブーム、バケットは上述の通り、
図15のように複数の操作レバーをどの方向に倒せば、どのような操作結果が得られるのか、初心者等操作の経験が浅い者では把握し難かった。
【0024】
さらに
図16のように、操縦装置の複数の可動部分を統合したとしても、可動部分の傾動と、実際の動作方向が一致しないため、予め各部材に割り当てられた可動箇所と可動方向を頭に入れておかなければ所望の方向に操作させることが容易でなく、結果として初心者が扱うことは困難であった。これに対し上記構成によれば、一本の操作装置に複数の操作部を集約し、かつ各操作部の操作を、パワーショベルの各部材の傾斜方向と一致させるように割り付けることで、感覚的な操作環境が実現される。その結果、初心者等操作の経験が浅い者でも操作が容易となる。また、複数の操作レバーを設ける必要がないため、狭い場所への設置も可能となる。
【0025】
図1の拡大図に示す操作装置100は、基台40と、一端側を基台40に取り付けられた棒状の第一操作部10と、第一操作部10の他端側に一端側を取り付けられた棒状の第二操作部20と、第二操作部20の他端側に取り付けられた第三操作部30とを備える。この操作装置100は、パワーショベルPSの台座OPに設けられている操作エリアの内、例えば、ユーザURの前方に配置されている操作台OBに設けられ、ブームBM等の動作を確認しつつ、操作するようにしている。
【0026】
また、第一操作部10の一端側は、交差する第一方向D1及び第二方向D2に傾動可能な第一傾動部11を介して基台40に取り付けられている。第一方向D1及び第二方向D2は任意の方向とできる。本実施形態においては、一例として、ユーザURから見て前後方向を第一方向D1とし、横方向を第二方向D2としている。すなわちこの例では第一方向D1及び第二方向D2は直交している。第二操作部20の一端側は、少なくとも第一方向D1に傾動可能な第二傾動部21を介して第一操作部10の他端側に取り付けられている。さらに、第三操作部30は、少なくとも第一方向D1に傾動可能な第三傾動部31を介して第二操作部20の他端側に取り付けられている。
【0027】
操作装置100は、基台40側から、第一操作部10、第二操作部20、第三操作部30を、この順に設けるようにしている。このような配置により、
図2A~
図2Cに示すように、ユーザは、第一操作部10の先端側から第三操作部30にかかる部分を片手で握持して、操作装置100を操作することができる。この際、第三操作部30をユーザの親指と対応する位置又は、ユーザが親指で操作しやすい位置に配置している。ここで、
図2Aに示す例では、腕を左右に動作させることにより、第一操作部10を操作している。一方で、
図2Bに示す例では、ユーザが第二操作部20近傍を手で握持して第二操作部20を操作しつつ、第三操作部30を指で操作している。さらに、
図2Cに示す例では、第二傾動部21を跨ぐように掴んで、人差し指と中指のペア、薬指と小指のペアで中間の折曲を調整し、親指で第三操作部を操作している。このような各操作部の配置や操作装置の持ち方により、片手で複数の操作部を操作することを実現している。
【0028】
操作装置100はさらに、
図3に示すように、第一検出部51と、第二検出部52と、第三検出部53と、出力部50を備える。第一検出部51は、基台と第一操作部との間の角度、すなわち第一傾動部11の傾動の角度を示す第一位置L1を検出可能としている。第二検出部52は、第一操作部と第二操作部との間の角度、すなわち第二傾動部21の傾動の角度を示す第二位置L2を検出可能としている。第三検出部53は、第二操作部と第三操作部との間の角度、すなわち第三傾動部31の傾動の角度を示す第三位置L3を検出可能としている。一例として、本実施形態においては、第一検出部51、第二検出部52及び第三検出部53は、第一傾動部11、第二傾動部21及び第三傾動部31の近傍にそれぞれ設けられている。第一検出部51に検出された第一位置L1、第二検出部52に検出された第二位置L2及び第三検出部53に検出された第三位置L3を、後述する出力部50から操作対象物に出力するようにしている。この際、各検出部と、出力部50とを有線で接続してもよいし、無線で接続してもよい。
【0029】
第一位置L1は、基台40と第一操作部10との相対位置として検出される。例えば、ポテンショメータ等の位置検出センサ(電気抵抗を用いた接触式や光学式、磁力検出式等の非接触式を含む)を用いた回転角や移動量の電圧変換や、傾斜センサ、ジャイロセンサ、ロータリーエンコーダによるカウント値等、回転角度や回転位置を検出可能な既知の構成を適宜利用できる。なお第一位置L1は、相対位置の他、地軸に対する絶対的な位置として検出してもよい。例えば絶対的な位置の検出には、ジャイロセンサやGセンサ、GPSなどを利用することができる。同様に第二位置L2は、第一操作部10と第二操作部20の相対位置として、第三位置L3は、第二操作部20と第三操作部30の相対位置として、それぞれ検出してもよいし、絶対位置として検出してもよい。検出の方法によらず、検出された第一位置L1や第二位置L2、第三位置L3を、それぞれ傾動角度に換算して、出力部50から対応する回転量や移動量を示す出力値として出力する。
【0030】
この出力部50は、第一位置L1、第二位置L2、第三位置L3を、操作対象物の可動箇所を駆動する各駆動系に対して出力可能としている。そして、出力部50からの第一位置L1、第二位置L2、第三位置L3のそれぞれの出力を、操作対象物の各可動箇所の移動方向と対応させるように割り付ける。具体的には、基台40に対する第一操作部10の傾動方向と、第一操作部10に対する第二操作部20の傾動方向と、第二操作部20に対する第三操作部30の傾動方向とを、それぞれ、操作対象物の3つ以上の可動箇所のそれぞれの可動方向と一致させるように割り付けるようにしている。その結果、操作対象物の可動方向を感覚的に把握できるようになり、初心者でも直感的な操作を行い易くなり、操作性を向上できる。
(基台40)
【0031】
基台40は、
図4に示すように、棒状の第一操作部10の一端側が、傾動可能な第一傾動部11を介して取り付けられ、第一操作部10を傾動可能に支持するものである。この基台40の形状は、第一操作部10及び第一傾動部11を支持できる任意の形状とすることができる。例えば、直方体状、立方体状、柱状等が挙げられる。基台40の材料も任意のものでよく、例えば、プラスチックや金属等が使用し得る。一例として、基台40は、プラスチック製の概ね直方体状としている。また、基台40の上面には、第一操作部10を取り付けるための取付穴41を形成している。さらに基台40は、第一傾動部11を収納するために、内部を中空としている。
(第一操作部10)
【0032】
第一操作部10は、複数の可動箇所を有する操作対象物のうち、2つの可動箇所を操作するためのものである。すなわち、2つの可動箇所に対し、移動量をそれぞれ出力する。実施形態1では一例として、
図1のパワーショベルPSの回転軸AX1及びAX2を介して、台座OPの水平面内の回転及びブームBMの垂直面内の回転をそれぞれ操作するようにしている。第一操作部10は棒状であって、一端側には、傾動可能な第一傾動部11を連結している。この第一操作部10は、基台40から垂直方向に突出されるように、第一傾動部11を介して基台40に連結される。具体的には、第一傾動部11を基台40の内部に収納し、第一操作部10を取付穴41を介して傾動可能に立設している。また、
図3の第一検出部51が、第一傾動部11の傾動の角度を示す第一位置L1を検出し、パワーショベルPSに対して出力部50から出力するようにしている。
【0033】
このような第一操作部10及び第一傾動部11を備える操作装置100は、第一傾動部11の第一位置L1を検出し、出力できる構成であればよく、既知の操作機構を利用できる。例えば実施形態1では、ジョイスティックの位置検出機構を使用している。このジョイスティックは、アナログスティックとも呼ばれている。
【0034】
図4に示す例では、第一傾動部11は、第一ハウジング12に収納されている。そして、直交する第一傾動軸13-1及び13-2を中心として傾動するようにしている。本実施形態において、第一傾動軸13-1を第二方向D2に沿って設け、第一傾動部11を第一傾動軸13-1を中心として第一方向D1に傾動するようにしている。一方、第一傾動軸13-2を第一方向D1に沿って設け、第一傾動部11を第一傾動軸13-2を中心として第二方向D2に傾動するようにしている。この第一傾動部11を収納する第一ハウジング12は、基台40の内部に収納されている。さらに、第一操作部10を、第一ハウジング12に収納されている第一傾動部11を介して基台40に立設している。
【0035】
この第一操作部10は、交差する第一方向D1及び第二方向D2に傾動可能な第一傾動部11の傾動に伴って傾動可能に立設されている。また、
図5に示すように、第一操作部10が第一方向D1に傾動する際の第一位置L1-1、又は第二方向D2に傾動する際の第一位置L1-2を検出し、パワーショベルPSに対して出力することができる。
【0036】
出力部50から出力された第一位置L1の情報は、パワーショベルPSの入力部に入力される。この第一位置L1に係る出力は、予め回転軸AX1及びAX2を介したパワーショベルPSの台座部OPやブームBMの動作方向に割り付けられ、台座部OPやブームBMを操作するように構成される。例えば、
図6に示すように、第一操作部10の傾動方向のうち、ユーザから見て左右方向をax1L及びax1Rとし、前後方向をax2D及びax2Uとする。また、回転軸AX1を介したパワーショベルPSの台座部OPの水平面内での回転方向をAX1L及びAX1Rとし、回転軸AX2を介したブームBMの上下に移動する方向をAX2D及びAX2Uとする。
【0037】
さらに、後述する手順で、第一操作部10をax1Lの方向に傾動させた場合の第一位置L1に対して、台座部OPの回転方向AX1Lを、ax1Rの方向に傾動させた場合の第一位置L1に対して、台座部OPの回転方向AX1Rを割り付けるようにしている。同様に、第一操作部10をax2Dに傾動させた場合の第一位置L1に対して、ブームBMの下方への移動方向AX2Dを、ax2Uの方向に傾動させた場合の第一位置L1に対して、ブームBMの上方への移動方向AX2Uを割り付けるようにしている。
【0038】
このような割り付けを行うことにより、
図7に示すように、ユーザが第一操作部をax1Lの方向に傾動させると、回転軸AX1を介して操作部OPがAX1Lの方向に回転することを可能とする。また、
図8に示すように、ユーザが第一操作部10をax2Uの方向(図において手前側)に傾動させると、回転軸AX2を介して、ブームBMがAX2U方向に移動することを可能とする。このように、第一操作部10の操作方向を操作対象物の移動方向と一致させることにより、感覚的な操作環境の実現を図っている。
(第二操作部20)
【0039】
第二操作部20は、複数の可動箇所を有する操作対象物の、第一操作部10で操作される可動箇所とは異なる可動箇所を操作するためのものである。実施形態1では一例として、
図9Aに示すパワーショベルPSの回転軸AX3を介してアームAMを操作するようにしている。
図9Bの第二操作部20は棒状であって、一端側は、傾動可能な第二傾動部21を介して第一操作部10の他端側に連結されている。第二傾動部21は、回転軸Rが第一操作部10と概ね直交するように設けられ、第一方向D1に傾動可能としている。この第二傾動部21の傾動に伴って、第二操作部20も第一方向D1に傾動可能としている。また、
図3の第二検出部52が、第二傾動部21の傾動の角度を示す第二位置L2を検出し、パワーショベルPSに対して出力部50から出力するようにしている。
【0040】
このような第二操作部20及び第二傾動部21を備える操作装置100は、第二位置L2を検出し、出力できる構成であればよく、既知の操作機構を利用できる。例えば実施形態1では、ポテンショメータを使用して第二位置L2を検出するようにしている。
【0041】
出力部50から出力された第二位置L2の情報は、パワーショベルPSの入力部に入力される。この第二位置L2に係る出力は、上述の第一位置L1の場合と同様に、予め回転軸AX3を介したアームAMの動作方向に割り付けられ、アームAMを操作するようにしている。例えば、
図9Bに示すように、第二操作部20を第一方向D1に沿って傾動させた場合のそれぞれの第二位置L2に応じて、
図9Aに示す回転軸AX3を介したアームAMの垂直面内の移動方向を割り付けるようにしておく。このように割り付けておくことで、第二操作部20の傾動に応じて、アームAMの動作、つまり、アームAMがユーザURに対して近接又は離間する動作を操作することが可能となる。
【0042】
具体的には、例えば
図10Bに示すように、第二操作部20を矢印Y1の方向に傾動させると、
図10Aに示すようにアームAMが矢印Y2の方向に移動する。このように、第二操作部20の操作方向をアームAMの移動方向と一致させることにより、感覚的な操作環境の実現を図っている。
【0043】
ただ、第二傾動部21の傾動方向は、第一方向D1のみに限られない。第一方向D1に加え、第二方向D2に傾動してもよい。第二傾動部が第一方向D1及び第二方向D2に傾動する態様については以下の実施形態2で説明する。
(第三操作部30)
【0044】
第三操作部30は、複数の可動箇所を有する操作対象物の、第一操作部10及び第二操作部20で操作される可動箇所とは異なる可動箇所を操作するためのものである。実施形態1では一例として、
図9AのパワーショベルPSの回転軸AX4を介してバケットBKを操作するようにしている。
図9Bの第三操作部30は、第三傾動部31を収納している収納ケース34を介して、第二操作部20の他端側に取り付けられている。第三傾動部31は、少なくとも第一方向D1に傾動可能とし、これに伴って第三操作部30も少なくとも第一方向D1に傾動可能としている。また、
図3の第三検出部53が、第三傾動部31の傾動の角度を示す第三位置L3を検出し、パワーショベルPSに対して出力部50から出力するようにしている。
【0045】
このような第三操作部30及び第三傾動部31を備える操作装置100は、第三傾動部31の第三位置L3を検出し、出力できる構成であればよく、既知の操作機構を利用できる。例えば実施形態1では、ジョイスティックの位置検出機構を使用している。このジョイスティックは、アナログスティックとも呼ばれている。
【0046】
具体的には、
図9Bに示すように、第三傾動部31は、第三ハウジング32に収納されている。そして、直交する第三傾動軸33-1及び33-2を中心として傾動するようにしている。本実施形態において、第三傾動軸33-1を第二方向D2に沿って設け、第三傾動部31を第三傾動軸33-1を中心として第一方向D1に傾動するようにしている。一方、第三傾動軸33-2を第一方向D1に沿って設け、第三傾動部31を第一傾動軸33-2を中心として第二方向D2に傾動するようにしている。この第三傾動部31を収納する第三ハウジング32は、収納ケース34の内部に収納されている。収納ケース34は、概ね直方体状であって、上面を面取して開口している。
【0047】
また、第三操作部30は、第三傾動部31と連結し、収納ケース34の開口から延出している。そして、収納ケース34の底面が、第二操作部20の他端側に取り付けられている。その結果、第三操作部30は操作装置100の先端側に設けられる。つまり、
図10B等に示すように、ユーザがパワーショベルPSを操作するために第一操作部10の先端側から第三操作部30にかかる部分を握持した際、ユーザの親指と対応する位置又は、ユーザが親指で操作しやすい位置に第三操作部30を配置している。このため第三操作部30をボタン状とすることで、ユーザの例えば親指で簡単に操作できるようにし、操作性の向上を図っている。
【0048】
本実施形態において、第三操作部30はジョイスティック状とし、第三傾動軸33-1及び33-2を中心に傾動可能としている。その上で、第一方向D1における第三傾動部31の傾動の角度を示す第三位置L3のみを検出し、パワーショベルPSに対して出力するようにしている。これにより、
図9A及び
図9Bに示すように、第三操作部30の傾動方向と、バケットBKの垂直面内での移動方向とを一致させ、感覚的な操作環境の実現を図ることができる。
【0049】
ただ、第三位置L3を検出する位置は、第一方向D1のみに限られない。第一方向D1に加え、第二方向D2で検出してもよい。このように、第三位置の検出箇所を増やすことにより、操作可能な操作対象物の可動箇所の数を増やすことができ、利便性が向上するという利点がある。
【0050】
また多軸に移動可能とした第三傾動部31は、
図9Bに示したようなジョイスティック状に限定されず、他の既知の入力デバイス、例えば多点タッチパネルや光学式ポインティングデバイス、VR用入力デバイスなどを利用することもできる。
【0051】
出力部50から出力された第三位置L3の情報は、パワーショベルPSの入力部に入力される。この第三位置L3に係る出力は、上述の第一位置L1の場合と同様に、予め回転軸AX4を介したバケットBKの動作方向に割り付けられ、バケットBKを操作するようにしている。例えば、
図9Aに示すように、第三操作部30を第一方向D1に沿って傾動させた場合のそれぞれの第三位置L3に応じて、回転軸AX4を介したバケットBKの垂直面内の移動方向を割り付けるようにしておく。このように割り付けておくことで、第三操作部30のユーザから見て前後の傾動に応じて、バケットBKの前後の動作、つまり、バケットBKが土砂等をかき込むクラウド、又はかき込んだ土砂等を放出するダンプなどの動作を操作することが可能となる。このように、第三操作部30の操作方向をバケットBKの移動方向と一致させることにより、感覚的な操作環境の実現を図っている。具体的には、第三操作部30の前後の傾動に合わせて、バケットBKが前後に動作するため、第三操作部30の傾動と、バケットBKの動作とを同一視できるかのように操作することができる。
【0052】
さらに、第三傾動部31を傾動させる応力を、第二傾動部21を傾動させる応力よりも小さく設定し、一方で第二傾動部21を傾動させる応力を、第一傾動部31を傾動させる応力よりも小さく設定することも可能である。各傾動部を傾動させる応力を第三傾動部31<第二傾動部21<第一傾動部11と設定することにより、複数の操作部が傾動部を介して異なる力で傾動することを可能とする。
【0053】
上述の通り、実施形態1において、第一操作部10、第二操作部20、第三操作部30は、基台40側からこの順に設けられている。ユーザは、
図2B等に示すように、第一操作部10の先端側から第三操作部30にかかる部分を握持して操作装置100を操作するため、第三操作部30をユーザの指と対応する位置又は、ユーザが指で操作しやすい位置に配置している。つまり、第三操作部30を、ユーザの指で、第二操作部20を手で、第一操作部10を腕で操作するようにしている。ここで、ユーザの体において、付与する力の大きさは、指<手<腕となるのが通常である。したがって、ユーザの体の各部位から付与される力の大きさに応じて、各傾動部を傾動させる応力を第三傾動部31<第二傾動部21<第一傾動部11としておくことで、操作もしやすくなり、操作性の向上が可能となる。また、複数並んだ傾動部を傾動させる応力を異ならせることで、どの部分を傾動させているかの感覚を操作者が把握し易くできる。
(出力部50)
【0054】
出力部50は、
図3に示すように、第一位置L1、第二位置L2及び第三位置L3を操作対象物、実施形態1においてはパワーショベルPSに出力するものである。出力部50は、第一傾動部11、第二傾動部21及び第三傾動部31のそれぞれに対応して設けてもよいし、
図3の出力部50のように1つの出力部から各傾動部の位置情報を出力できるようにしてもよい。このような出力部としては、例えば、CPUやマイコン、プログラムシーケンサー等が使用できる。
【0055】
また、出力部50は、パワーショベルPSに設けられている駆動系である回転軸AX1、AX2、AX3及びAX4と無線接続している。無線接続により煩雑な接続用のケーブル等を省略し、遠隔操作の自由度も向上できる。無線接続方式は、専用の通信方式とする他、既知の規格化された方式、例えばWiFiやBluetooth、ZigBee(いずれも商品又はサービス名)等が利用できる。ただ、本発明の操作装置は、操作対象物と無線接続される態様に限定されない。操作対象物と有線接続してもよいことはいうまでもない。
(割当部60)
【0056】
図3の割当部60は、出力部50の第一位置L1、第二位置L2、第三位置L3のそれぞれの出力を、操作対象物の各可動箇所の移動方向と対応させるように割り付けるためのものである。一例として、割当部60は、後述する割付画像63を表示する表示部61と、割当入力部62とを備える。割当部60としては、例えば外部のPC等、既知のものを使用し得る。また、入力部62としては、例えばマウスやキーボード等、既知のものを使用し得る。
【0057】
図11は、パワーショベルPSに対して移動方向を割り付けるための割付画像63の一態様を示している。割付画像63は、操作対象物及びその移動方向を示す操作対象物表示欄64と、操作装置及びその移動方向を示す操作装置表示欄65とを含む。この図において、操作対象物表示欄64は、パワーショベルPSと、台座OPの移動方向を示している。また、操作装置表示欄65は、操作装置100と、第一操作部10の傾動方向を示している。
【0058】
割付画像63はさらに、操作対象物の動作及び移動方向を示す動作・移動方向欄64a及び64bと、操作装置の各操作部が所定の方向に移動した場合の位置を示す位置表示欄65a及び65bとを含む。
図11において、動作・移動方向欄64a及び64bは、パワーショベルPSの台座OPの回転動作と、その移動方向を示している。また、位置表示欄65a及び65bは、第一操作部10が傾動した際の第一位置L1を示している。
【0059】
割付方法としては、例えば、割当部60の割当入力部62により、割付画像63の各表示欄から選択、又は各表示欄に入力して割り付けていくようにしている。具体的には、
図11に示すようにパワーショベルPSの台座OPの回転方向AX1Lと、第一操作部10がax1Lの方向に傾動した際の第一位置L1とを対応させ、割り付けている。一方で、台座OPの回転方向AX1Rと、第一操作部10がax1Rの方向に傾動した際の第一位置L1とを対応させ、割り付けている。そして、このような割り付けを出力部50を介して、パワーショベルPSに入力するようにしている。
【0060】
同様に、パワーショベルPSのアームAMと、第二傾動部21の第二位置L2とを割り付け、バケットBKと、第三傾動部31の第三位置L3とを割り付ける等することにより、操作対象物の移動方向と、操作装置100の各操作部の傾動方向を対応させ、感覚的な操作環境を実現することが可能である。
【0061】
ここで、上述の例では、パワーショベルPSや操作装置100の画像を表示した上で、割り付けを行っている。ただ、本実施形態において、操作対象物の動作や移動方向が、操作装置100の各傾動部の位置と対応できれば、割り付けの方法は、任意の態様とすることができる。例えば、割付画像63の操作対象物表示欄64及び操作装置表示欄65を省略して、動作・移動方向欄64a及び64bと、位置表示欄65a及び65bとで割り付けてもよい。一方で、操作対象物表示欄64及び操作装置表示欄65のみで割り付けることも可能である。
【0062】
さらにこのような割り付けは、パワーショベルPSに限定されない。例えば、
図12は、実施形態1の操作装置100が梯子車FEを操作する場合の、割付画像63の一例を示している。この図において、操作対象物表示欄64は、梯子車FEと、梯子の移動方向を示している。また、操作装置表示欄65は、操作装置100と、第一操作部10の傾動方向を示している。そして上記と同様の手順で、梯子車の梯子の移動方向AX2U’と、第一操作部10がax2Uの方向に傾動した際の第一位置L1とを対応させ、割り付けることができる。同様に、梯子の移動方向AX2D’と、第一操作部10がax2Dの方向に傾動した際の第一位置L1とを対応させ、割り付けることができる。これにより操作者は、梯子の縦方向における移動、つまり梯子が傾斜する動作を、第一操作部10の縦方向の傾動と捉え、感覚的に理解しやすい操作環境を実現できる。
【0063】
また、梯子車FEにおいて、梯子の伸縮の動作も、同様に任意の操作部に割り付けることができる。例えば、第二操作部20をユーザから離れる方向に押し倒すと、梯子が延び、第二操作部20をユーザに向かう方向に倒すと、梯子が縮むように割り当てることで、操作者は梯子の前後方向におけるスライド動作を、第二操作部20の前後方向の動作と捉え、上述と同様に、感覚的に理解しやすい操作環境を実現できる。
【0064】
このように、各操作部に割り当てる動作は、傾動や旋回のみならず、梯子の伸縮やウィンチの巻き上げ、バックホーのアームのクラウドやダンプ、ハンドの把持等、任意の動作が挙げられ、これら各操作対象物の動作を操作部の動作方向と感覚的に理解しやすい方向と合致させることで、操作性を向上できる。
(カバー部70)
【0065】
図1等に示すカバー部70は、操作装置100の第一操作部10から第三操作部30にかかる少なくとも一部をカバーするためのものである。カバー部70は、プラスチックやゴム等の既知の材料から作製できる。このようにカバー部70を設けることにより、外部の衝撃から各操作部等を保護したり、操作装置100の内部に塵や埃がたまることを妨げるという利点がある。
【0066】
上述の例では、操作対象物を主にパワーショベルPSとして説明した。ただ、実施形態1の操作装置100は、パワーショベルを操作するものに限定されない。上述の通り、複数の可動箇所を有する機械や車両等であれば任意のものを操作することができる。例えば、ウィンチ付きクレーンのブーム、ジブ、ウィンチを第一操作部10、第二操作部20、第三操作部30でそれぞれ操作してもよい。また、梯子車の梯子の水平面内での回転や起伏、梯子の伸縮、梯子の先端に設けられているバスケットの操作をそれぞれ操作することも可能である。
[実施形態2]
【0067】
実施形態1では、第二傾動部21が第一方向D1に傾動する場合を説明した。ただ、第二傾動部21の傾動方向は、第一方向D1のみに限られない。第一方向D1に加え、第二方向D2に傾動してもよい。
図13は、実施形態2に係る第二傾動部21Bを介して取り付けられる第二操作部20Bを備える操作装置100Bを示す。この第二操作部20B及び第二傾動部21Bは、
図4等に示す実施形態1の第一操作部10及び第一傾動部11の構成と概ね同様の構成を有するジョイスティックの上下を逆にして取り付けたものである。
【0068】
具体的には、
図13に示すように、第二操作部20Bは、棒状のシャフト20Baと枠体20Bbとを備える。第二傾動部21Bは、第二ハウジング22Bに収納されている。そして、直交する第二傾動軸23B-1及び23B-2を中心として傾動するようにしている。本実施形態において、第二傾動軸23B-1は第二方向D2に沿って設けられ、第二傾動軸23B-2は第一方向D1に沿って設けられている。この第二傾動部21Bを収納する第二ハウジング22Bを、枠体20Bbの内部に収納している。
【0069】
この枠体20Bbの形状は、第二ハウジング22B及び第二出力軸23Bを収納できる任意の形状とすることができ、例えば、直方体状、立方体状、柱状等が挙げられる。実施形態2においては、枠体20Bbの形状を概ね直方体状としている。また、枠体20Bbの上面20Bc及び底面20Bdは板状とし、底面20Bdには枠体側取付穴20Beを形成している。
【0070】
また、第二操作部20Bのシャフト20Baは、一端側が枠体20Bbから枠体側取付穴20Beを貫通して垂直方向に突出するように、第二傾動部21Bを介して枠体20Bbに連結される。このシャフト20Baの一端側は、第一操作部10の他端側に取り付けるようにしている。また、シャフト20Baの他端側は、第二傾動部21B、枠体20Bb等を取り付け、枠体21Bbの上面20Bcに第三操作部30を収納する収納ケース34をさらに載置している。
【0071】
この第二操作部20Bは、交差する第一方向D1及び第二方向D2に傾動可能な第二傾動部21Bを介して傾動可能に取り付けられている。実施形態2では、
図14A及び
図14Bに示すように、第二操作部20Bの枠体20Baが第一操作部10に対して相対的に傾動するようにしている。
【0072】
このような構成により、
図14Aに示すように、第二傾動部21Bの第一方向D1における第二位置L2B-1を、又は、
図14Bに示すように、第二傾動部21Bの第二方向D2における第二位置L2B-2を検出し、操作対象物に対して出力部50から出力することができる。
【0073】
このような構成により、第二傾動部21Bが傾動可能な方向を増やすことができる。その結果、操作可能な操作対象物の可動箇所の数を増やすことができ、利便性が向上するという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上の操作装置は、複数の可動箇所を有する操作対象物を、初心者等操作の経験が浅い者でも簡単に操作するために好適に利用できる。
【符号の説明】
【0075】
100、100B…操作装置
10…第一操作部
11…第一傾動部
12…第一ハウジング
13-1、13-2…第一傾動軸
20、20B…第二操作部
20Ba…シャフト
20Bb…枠体
20Bc…枠体の上面
20Bd…枠体の底面
20Be…枠体側取付穴
21、21B…第二傾動部
22B…第二ハウジング
23B-1、23B-2…第二傾動軸
30…第三操作部
31…第三傾動部
32…第三ハウジング
33-1、33-2…第三傾動軸
34…収納ケース
40…基台
41…取付穴
50…出力部
51…第一検出部
52…第二検出部
53…第三検出部
60…割当部
61…表示部
62…入力部
63…割付画像
64…操作対象物表示欄
64a、64b…動作・移動方向欄
65…操作装置表示欄
65a、65b…位置表示欄
70…カバー部
PS…パワーショベル
FE…梯子車
OB…操作台
OP…台座
BM…ブーム
AM…アーム
BK…バケット
UR…ユーザ
AX1~AX4…回転軸
D1…第一方向
D2…第二方向
ax1L、ax1R、ax2D、ax2U…第一操作部の傾動方向
AX1L、AX1R…パワーショベルの台座部の水平面内での回転方向
AX2D、AX2U…ブームの上下に移動する方向
AX2U’、AX2D’…梯子車の梯子の移動方向
Y1…第二操作部の傾動方向
Y2…アームの移動方向
R…第二傾動部の回転軸
L1、L1-1、L1-2…第一位置
L2、L2B-1、L2B-2…第二位置
L3…第三位置
90…操作レバー
91~93…操作ボタン
94、95…駆動手段
96…往復動作付勢手段
97、98…リンク部材
P…パワーショベル
J1~J4…回転軸
LV1~LV4…操作レバー