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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】成膜装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20220314BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20220314BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20220314BHJP
   H05H 1/46 20060101ALN20220314BHJP
【FI】
H01L21/31 C
H01L21/316 X
C23C16/455
H05H1/46 L
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021140476
(22)【出願日】2021-08-30
【審査請求日】2021-09-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】318004501
【氏名又は名称】株式会社クリエイティブコーティングス
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英児
(72)【発明者】
【氏名】坂本 仁志
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/104379(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/048337(WO,A1)
【文献】特開2019-210550(JP,A)
【文献】特開2007-165805(JP,A)
【文献】特許第6787621(JP,B1)
【文献】特許第4694209(JP,B1)
【文献】特開2021-147623(JP,A)
【文献】特開2020-161722(JP,A)
【文献】国際公開第2016/67380(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/316
C23C 16/455
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器内にて、金属化合物ガスと、OHラジカルまたはNHラジカルとを交互に導入して、原子層堆積により金属酸化膜または金属窒化膜を形成する成膜装置であって、
酸素または窒素を供給する第1ガス源と、
水素を供給する第2ガス源と、
キャリアガスを供給する第3ガス源と、
前記第1ガス源及び前記第3ガス源と前記反応容器とを連通させる第1配管と、
前記第1配管に設けられ、前記酸素または前記窒素から解離される酸素ラジカルまたは窒素ラジカルを含むプラズマを生成する第1プラズマ生成部と、
前記第2ガス源及び前記第3ガス源と前記反応容器とを連通させる第2配管と、
前記第2配管に設けられ、前記水素から解離される水素ラジカルを含むプラズマを生成する第2プラズマ生成部と、
含み、前記酸素ラジカルと前記水素ラジカルとを衝突させて前記OHラジカルを生成し、または前記窒素ラジカルと前記水素ラジカルとを衝突させて前記NHラジカルを生成する成膜装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1配管及び前記第2配管の少なくとも一方は第1の荷電粒子除去部を含み、前記第1の荷電粒子除去部は、前記第1プラズマ生成部及び前記第2プラズマ生成部での前記プラズマ中の電離されたイオン及び/または電子から成る荷電粒子を、前記荷電粒子の電荷を利用して除去をする成膜装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記第1配管及び前記第2配管は、合流配管を介して前記反応容器に連結される成膜装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記第1配管及び前記第2配管は、合流配管を介して前記反応容器に連結される成膜装置。
【請求項5】
請求項3または4において、
前記合流配管は第2の荷電粒子除去部を含み、前記第2の荷電粒子除去部は、前記第1プラズマ生成部及び前記第2プラズマ生成部での前記プラズマ中の電離されたイオン及び/または電子から成る荷電粒子を、前記荷電粒子の電荷を利用して除去をする成膜装置。
【請求項6】
請求項1または2において、
前記第1配管は、前記第1プラズマ生成部と前記反応容器との間に第1バルブを有し、
前記第2配管は、前記第2プラズマ生成部と前記反応容器との間に第2バルブを有し、
前記第1バルブ及び前記第2バルブの一方が開放されている間は、前記第1バルブ及び前記第2バルブの他方が閉鎖される成膜装置。
【請求項7】
反応容器内にて、金属化合物ガスと、OHラジカルまたはNHラジカルとを交互に導入して、原子層堆積により金属酸化膜または金属窒化膜を形成する成膜装置であって、
酸素または窒素を供給する第1ガス源と、
水素を供給する第2ガス源と、
キャリアガスを供給する第3ガス源と、
前記第1ガス源及び前記第3ガス源と連結される第1配管と、
前記第2ガス源及び前記第3ガス源と連結される第2配管と、
一端が前記第1配管及び前記第2配管と連結され、他端が前記反応容器に連結される合流配管と、
前記合流配管に設けられ、前記合流配管に導入される気体から解離されるラジカルを含むプラズマを生成するプラズマ生成部と、
を有し、
前記第1配管は、前記プラズマ生成部よりも上流に第1バルブを有し、
前記第2配管は、前記プラズマ生成部よりも上流に第2バルブを有し、
前記プラズマ生成部は、前記第1バルブ開放さ、前記第2バルブ閉鎖されているときに、前記酸素または前記窒素から解離される酸素ラジカルまたは窒素ラジカルを含むプラズマを生成し、
前記プラズマ生成部は、前記第2バルブ開放さ、前記第1バルブ閉鎖されているときに、前記水素から解離される水素ラジカルを含むプラズマを生成し、
前記反応容器では、前記酸素ラジカルと前記水素ラジカルとを衝突させて前記OHラジカルを生成し、または前記窒素ラジカルと前記水素ラジカルとを衝突させて前記NHラジカルを生成する成膜装置。
【請求項8】
請求項において、
前記合流配管は荷電粒子除去部を含み、前記荷電粒子除去部は、前記プラズマ生成部での前記プラズマ中の電離されたイオン及び/または電子から成る荷電粒子を、前記荷電粒子の電荷を利用して除去をする成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応容器の対象物にOHラジカルまたはNHラジカルを用いてALD(原子層堆積)により金属酸化膜または金属窒化膜を形成する成膜装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
OHラジカルを用いて、特許文献1及び2ではレジスト除去し、特許文献3では水中の雑菌を死滅させ、特許文献4では被浄化物を分解して浄化し、特許文献5では硝酸を製造し、特許文献6では導電層上から有機バインダーや保護剤が酸化分解されて導電性が向上され、本出願人の特許である特許文献7ではALDにより粉体上に金属酸化物を形成している。これら特許文献1~7では、OHラジカルは、水蒸気をプラズマ励起することで生成している。特許文献7ではさらに、NHラジカルを用いて金属窒化膜を形成している。NHラジカルは、NHをプラズマ励起して生成している。
【0003】
特許文献8は、基板上に酸化膜をALDにより形成するために必要な酸素ラジカルを、酸素Oと水素Hとを処理室内でプラズマ励起することで生成している。それにより、HOまたはオゾンOを用いる場合と比較して、水分発生器やオゾン発生器を必要とせず、低コスト化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-085231号公報
【文献】特開2008-109050号公報
【文献】特開2012-096141号公報
【文献】特開2013-086072号公報
【文献】特開2016-150888号公報
【文献】特開2020-113654号公報
【文献】特許第6787621号公報
【文献】特許第4694209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~7によれば、OHラジカルを生成するために水分発生器を必要とする上、加工対象が水分に弱い場合、水蒸気を導入すると、加工対象の表面がダメージを受ける可能性がある。
【0006】
特許文献7によれば、NHをプラズマで分解してNH*(*はラジカルを示す)を生成する過程で、次の状態が混在すると考えられる。
NH→NH*+2H*→NH*+H
NH→NH+H*→NH*+2H*→NH*+H
NH→N*+3H*→NH*+2H*→NH*+H
このような状態の混在により、NHラジカルの発生効率は低い。
【0007】
特許文献8によれば、酸素Oと水素Hとを500~600℃の熱で分解して酸素ラジカルO*を生成する過程で、次のような熱反応が生じている(段落0032参照)。
+O→H*+HO
+H*→OH*+O*
+O*→H*+OH*
+OH*→H*+H
【0008】
ここで、特許文献8ではOH*(OHラジカル)の生成を目的とするものではないが、酸素Oと水素Hとを熱励起すると結果的にOH*(OHラジカル)が生成される。しかし、上記のような状態の混在により、OHラジカルの発生効率は低い。さらに、特許文献8の処理室内では、O同士またはH同士等の衝突による次のような安定系に移行する反応も行われるからである。
O+O→O
H+H→H
O+OH→O
H+OH→H
【0009】
本発明は、反応容器内の対象物にALDによって金属酸化膜または金属窒化膜を形成するのに必要な反応性の高いOHラジカルまたはNHラジカルを効率よく発生させ、成膜効率を高めることができる成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明は、反応容器内にて、金属化合物ガスと、OHラジカルまたはNHラジカルとを交互に導入して、原子層堆積により金属酸化膜または金属窒化膜を形成する成膜装置であって、
酸素または窒素を供給する第1ガス源と、
水素を供給する第2ガス源と、
キャリアガスを供給する第3ガス源と、
前記第1ガス源及び前記第3ガス源と前記反応容器とを連通させる第1配管と、
前記第1配管に設けられ、前記酸素または前記窒素から解離される酸素ラジカルまたは窒素ラジカルを含むプラズマを生成する第1プラズマ生成部と、
前記第2ガス源及び前記第3ガス源と前記反応容器とを連通させる第2配管と、
前記第2配管に設けられ、前記水素から解離される水素ラジカルを含むプラズマを生成する第2プラズマ生成部と、
含み、合流された前記酸素ラジカルと前記水素ラジカルとを衝突させて前記OHラジカルを生成し、または前記窒素ラジカルと前記水素ラジカルとを衝突させて前記NHラジカルを生成する成膜装置に関する。
【0011】
本発明の一態様によれば、反応容器内の対象物に吸着する金属化合物ガスは、OHラジカルにより金属の成分以外の有機物または無機物が解離され、OH基により酸化されて金属酸化物となる。あるいは、反応容器内の対象物に吸着する金属化合物ガスは、NHラジカルにより金属の成分以外の有機物または無機物が解離され、NH基により窒化されて金属窒化物となる。この金属酸化物または金属窒化物が原子層レベルで順次堆積されて、対象物上に金属酸化膜または金属窒化膜が形成される。
【0012】
ここで、キャリアガスを例えばアルゴンArとすると、第1配管に設けられた第1プラズマ生成部では、次の(1)または(2)に示すように、酸素分子または窒素分子から解離される酸素ラジカルO*または窒素ラジカルN*が生成される。なお、プラズマ中では電子やイオンが電離されるが、その多くはプラズマ生成部の下流の配管中で失活し、キャリアガスArで守られた酸素ラジカルと窒素ラジカルのみが残ると考えられる。
+Ar→2O*+Ar…(1)
+Ar→2N*+Ar…(2)
【0013】
一方、第2配管に設けられた第2プラズマ生成部では、次の(3)に示すように、水素分子から解離される水素ラジカルH*が生成される。この場合でも、プラズマ中の電子やイオンは失活し、キャリアガスArで守られた水素ラジカルのみが残ると考えられる。
+Ar→2H*+Ar…(3)
【0014】
第1及び第2配管が連結された反応容器には、第1配管を介して酸素ラジカルO*または窒素ラジカルN*が、第2配管を介して水素ラジカルH*が、キャリアガスと共に導入される。こうすると、合流された酸素ラジカルO*または窒素ラジカルN*と水素ラジカルH*とが衝突して、次の(4)または(5)に示す反応により、OHラジカルまたはNHラジカルが生成される。
O*+H*+Ar→OH*+Ar…(4)
N*+H*+Ar→NH*+Ar…(5)
【0015】
つまり、(4)では、キャリアガスで守られた酸素ラジカルO*と水素ラジカルH*とが別々に反応容器に導入されて、反応容器内で初めて互いに衝突・結合してOHラジカルを生成することが主体的となる。このため、酸素Oと水素Hとを処理容器内にて同時に熱励起することで結果的にOHラジカルが生成される特許文献8の生成過程と比較すると、本発明の方がOHラジカルを効率よく生成することができる。同様にして、(5)では窒素ラジカルN*と水素ラジカルH*とは、互いに結合してNHラジカルを生成することが主体的となる。このため、NHを励起してNHラジカルを生成する特許文献7の生成過程と比較すると、本発明の方がNHラジカルを効率よく生成することができる。
【0016】
(2)本発明の一態様(1)では、前記第1配管及び前記第2配管の少なくとも一方は第1の荷電粒子除去部を含み、前記第1の荷電粒子除去部は、前記第1プラズマ生成部及び前記第2プラズマ生成部での前記プラズマ中の電離されたイオン及び/または電子から成る荷電粒子を、前記荷電粒子の電荷を利用して除去することができる。こうすると、正の電荷を持つ陽イオン、負の電荷を持つ陰イオン、電子等が、過不足の電子が金属配管から放出/注入されて中和される。こうして、第1及び第2プラズマ生成部で発生する陽イオン、陰イオン、電子などの荷電粒子は、それらが保有する電荷を利用して除去される。その結果、酸素ラジカルまたは窒素ラジカルと、水素ラジカルとが主体的に反応容器に供給される。それにより、反応容器内でのOHラジカルまたはNHラジカルがより効率的に生成される。
【0017】
(3)本発明の一態様(1)では、前記第1配管及び前記第2配管は、合流配管を介して前記反応容器に連結されても良い。こうすると、上述の式(4)または(5)の反応は、反応容器よりも十分に狭い容積に設計できる合流配管内にてさらに効率よく行われ、合流配管内で生成されるOHラジカルまたはNHラジカルを反応容器内に供給することができる。
【0018】
(4)本発明の一態様(2)でも、前記第1配管及び前記第2配管は、合流配管を介して前記反応容器に連結されても良い。こうすると、本発明の一態様(1)~(3)と同じ効果が得られる。
【0019】
(5)本発明の一態様(3)または(4)でも、前記合流配管は第2の荷電粒子除去部を含み、前記第2の荷電粒子除去部は、前記第1プラズマ生成部及び前記第2プラズマ生成部での前記プラズマ中の電離されたイオン及び/または電子から成る荷電粒子を、前記荷電粒子の電荷を利用して除去をすることができる。こうすると、本発明の一態様(1)、(2)及び(4)と同じ効果が得られる。つまり、第1及び第2プラズマ生成部で発生する陽イオン、陰イオン及び電子等の荷電粒子は、それらが保有する電荷を利用して除去される。その結果、酸素ラジカルまたは窒素ラジカルと、水素ラジカルとが主体的に合流配管に供給される。さらに、合流配管に残存する陽イオン、陰イオン及び電子等も、それらが保有する電荷を利用して除去される。それにより、反応容器にOHラジカルまたはNHラジカルがより効率的に供給される。
【0020】
(6)本発明の一態様(3)では、前記第1配管は、前記第1プラズマ生成部よりも上流に第1バルブを有し、前記第2配管は、前記第2プラズマ生成部よりも上流に第2バルブを有し、前記第1バルブ及び前記第2バルブの一方が開放されている間は、前記第1バルブ及び前記第2バルブの他方が閉鎖され、前記第1プラズマ生成部及び前記第2プラズマ生成部は、前記合流配管に設けられる一つのプラズマ生成部が兼用されても良い。こうすると、第1バルブが開放され第2バルブが閉鎖されている時に、一つのプラズマ生成部で生成された酸素ラジカルまたは窒素ラジカルが反応容器に供給される。その前又は後であって、第2バルブが開放され第1バルブが閉鎖されている時に、一つのプラズマ生成部で生成された水素ラジカルが反応容器に供給される。
【0021】
(7)本発明の一態様(6)でも、前記合流配管は荷電粒子除去部を含み、前記荷電粒子除去部は、前記プラズマ生成部での前記プラズマ中の電離されたイオン及び/または電子から成る荷電粒子を、前記荷電粒子の電荷を利用して除去をすることができる。こうすると、本発明の一態様(5)と同じ効果が得られる。
【0022】
(8)本発明の一態様(1)または(2)では、前記第1配管は、前記第1プラズマ生成部と前記反応容器との間に第1バルブを有し、前記第2配管は、前記第2プラズマ生成部と前記反応容器との間に第2バルブを有し、前記第1バルブ及び前記第2バルブの一方が開放されている間は、前記第1バルブ及び前記第2バルブの他方が閉鎖されても良い。こうすると、第1バルブが開放されている時に、第1プラズマ生成部で生成された酸素ラジカルまたは窒素ラジカルが反応容器に供給される。この時、第2バルブが閉鎖されているので、酸素ラジカルまたは窒素ラジカルが第2プラズマ生成部に流入することがない。その前又はその後であって、第2バルブが開放されている時に、第2プラズマ生成部で生成された水素ラジカルが反応容器に供給される。この時、第1バルブが閉鎖されているので、第1プラズマ生成部に水素ラジカルが流入することはない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の成膜装置の第1実施形態及び第2実施形態を示す図である。
図2】第1実施形態での各種バルブの開閉動作を示すタイミングチャートである。
図3】第1実施形態で実施されるALDの一サイクルを示すタイミングチャートである。
図4】第2実施形態での各種バルブの開閉動作を示すタイミングチャートである。
図5】第2実施形態で実施されるALDの一サイクルを示すタイミングチャートである。
図6】本発明の成膜装置の第3実施形態を示す図である。
図7】本発明の成膜装置の第4実施形態を示す図である。
図8】第4実施形態での各種バルブの開閉動作を示すタイミングチャートである。
図9】陽イオン及び陰イオン等をそれらの電荷を利用して配管途中で除去する構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の開示において、提示された主題の異なる特徴を実施するための異なる実施形態や実施例を提供する。もちろんこれらは単なる例であり、限定的であることを意図するものではない。さらに、本開示では、様々な例において参照番号および/または文字を反復している場合がある。このように反復するのは、簡潔明瞭にするためであり、それ自体が様々な実施形態および/または説明されている構成との間に関係があることを必要とするものではない。さらに、第1の要素が第2の要素に「接続されている」または「連結されている」と記述するとき、そのような記述は、第1の要素と第2の要素とが互いに直接的に接続または連結されている実施形態を含むとともに、第1の要素と第2の要素とが、その間に介在する1以上の他の要素を有して互いに間接的に接続または連結されている実施形態も含む。また、第1の要素が第2の要素に対して「移動する」と記述するとき、そのような記述は、第1の要素及び第2の要素の少なくとも一方が他方に対して移動する相対的な移動の実施形態を含む。
【0025】
1.第1実施形態
1.1.ALD装置
図1に、ALD装置10の一例が示されている。ALD装置10は、反応容器20と、各種ガス源30~60と、を含む。反応容器20は、加工対象物(ワークピース)1に成膜するための容器である。反応容器20は、加工対象物1である例えば基板を載置する載置部21を有することができる。加工対象物が粉体等の場合には、反応容器20内で粉体が分散状態で保持されればよい。反応容器20には各種ガス源30~60が連結され、反応容器20内に各種ガスが導入される。反応容器20には排気管70が連結され、排気ポンプ71によって反応容器20内を排気することができる。
【0026】
原料ガス源30は、加工対象物1に堆積される膜に応じて選択される原料ガスである金属化合物ガス、例えば有機金属ガスを供給する。原料ガス源30と反応容器20とは、流量制御器(MFC)31及びバルブ32を備える配管33で連結される。原料ガスは、原料ガス源30から流量制御器31及びバルブ32を備えた配管33を介して、供給タイミング及び流量が制御されて、反応容器20内に供給される。
【0027】
酸素/窒素ガス源40及び水素ガス源50は、反応ガス源である。酸素/窒素ガス源(第1ガス源)40は、酸化膜を形成する時には酸素が収容され、窒化膜が形成される時には窒素が収容される。酸素/窒素ガス源40と反応容器20とは、流量制御器(MFC)41、バルブ42及び第1プラズマ生成部44を備える配管43で連結される。なお、配管43に設けられるバルブ47は、第1実施形態では設置は任意であり、設置される場合には常時全開とされる。水素ガス源50と反応容器20とは、流量制御器(MFC)51、バルブ52及び第2プラズマ生成部54を備える配管53で連結される。なお、配管53に設けられるバルブ57は、第1実施形態では設置が任意であり、設置される場合には常時全開とされる。
【0028】
キャリアガス源60は、不活性ガス例えばアルゴンArを収容する。本実施形態では、キャリアガス源60中のアルゴンArは、キャリアガスの他にパージガスとしても用いられる。このために、キャリアガス源60と反応容器20とは、流量制御器(MFC)61、バルブ62及びバルブ66を備える配管63で連結することができる。こうすると、アルゴンArは、パージガスとして、配管63を介して、供給タイミング及び流量が制御されて、反応容器20内に供給される。それにより、反応容器20内の雰囲気をアルゴンガスArに置換することができる。配管63は、バルブ62の下流に、第1~第3分岐管63A~63Cを有する。第1分岐管63Aは、バルブ64を介して配管33と連結されている。第2分岐管63Bは、バルブ65を介して配管43と連結されている。第3分岐管63Cは、バルブ66を介して配管53と連結されている。こうして、アルゴンArは、原料ガスと、酸素または窒素、あるいは水素のキャリアガスとして用いることができる。
【0029】
第1プラズマ生成部44は、酸素又は窒素の励起手段として、非金属例えば石英製の配管45の周囲に誘導コイル46を有する。誘導コイル46には、図示しない高周波電源が接続される。例えば、誘導コイル46によって加えられる電磁エネルギーは20Wで、周波数は13.56MHzである。誘導コイル46によって第1プラズマ生成部44内にはガスの誘導結合プラズマP1が生成される。このプラズマP1には、酸素分子または窒素分子から解離された酸素ラジカル又は窒素ラジカルが含まれる。
【0030】
同様に、第2プラズマ生成部54は、水素の励起手段として、非金属例えば石英製の配管55の周囲に誘導コイル56を有する。誘導コイル56によって第2プラズマ生成部54内にはガスの誘導結合プラズマP2が生成される。このプラズマP2には、水素分子から解離された水素ラジカルが含まれる。
【0031】
1.2.ALD方法
加工対象物1に金属酸化膜例えばAl膜を形成する例について説明する。酸素/窒素ガス源40は、酸素が収容されるので、以下、酸素ガス源40とも称する。先ず、反応容器20内に加工対象物1が搬入される。第1実施形態では、図1に示す各種バルブを図2に示すタイミングチャートに従って開閉させることで、図3に示す次に、ALDサイクルを実施する。ALDサイクルとは、第1前駆体(原料ガス)の投入→排気(パージを含む)→第2前駆体(反応性ガス)の投入→排気(パージを含む)の最小4ステップを一サイクルとする。なお、排気とは排気ポンプ71による真空排気であり、パージとはキャリアガス源60からの不活性ガス(パージガス)の供給であり、いずれによっても、反応容器20内は、第1又は第2前駆体の雰囲気から、真空またはパージガス雰囲気に置換される。加工対象物1に成膜される膜の厚さはALDサイクルの数Nに比例する。よって、ALDサイクルが必要数Nだけ繰り返し実施される。
【0032】
1.2.1.原料ガスの供給
先ず、排気ポンプ71により反応容器20内が真空引きされ、例えば10-4Paに設定される。次に、図2に示すように、期間Т1に亘ってバルブ32、62及び64を開く。こうすると、原料ガス源30からの原料ガス例えばТMA(Al(CH)と、キャリアガス源60からのキャリアガスである例えばアルゴンArとが、反応容器20に供給され、所定の圧力例えば1~10Paで充満される。図3に示すALDサイクルの1ステップ目(期間Т1)で、加工対象物1の露出表面にТMAが浸透する。
【0033】
1.2.2.パージ
その後、ALDサイクルの2ステップ目として、図2に示すようにバルブ32、64は閉鎖され、バルブ62は開放が維持され、バルブ67が期間Т2に亘って開放される。それにより図3に示すように反応容器20内にパージガスが導入され、反応容器20内のトリメチルアルミニウムAl(CHがパージガスに置換される。
【0034】
1.2.3.反応ガス導入
次に、ALDサイクルの3ステップ目として、図2に示すようにバルブ67は閉鎖され、バルブ62は開放が維持され、バルブ42、52、65、66が期間Т3に亘って開放される。こうすると、酸素ガス源40からの酸素ガスと、キャリアガス源60からのキャリアガスであるアルゴンArとが、第1プラズマ生成部44に供給される。同時に、水素ガス源50からの水素ガスと、キャリアガス源60からのキャリアガスであるアルゴンArとが、第2プラズマ生成部54に供給される。第1プラズマ生成部44では、上述の式(1)に示すように酸素から解離される酸素ラジカルを含む誘導結合プラズマP1が生成される。酸素ラジカルは、キャリアガスと共に配管43を介して反応容器20に供給される。一方、第2プラズマ生成部54では、上述の式(3)に示すように水素から解離される水素ラジカルを含む誘導結合プラズマP2が生成される。水素ラジカルは、キャリアガスと共に配管53を介して、酸素ラジカルとは別ルートで反応容器20に供給される。
【0035】
反応容器20では、酸素ラジカルと水素ラジカルとが初めて合流される。よって、反応容器20内では、上述の式(4)に示すように、酸素ラジカルと水素ラジカルとが衝突・結合したOHラジカルが生成される。反応ガスであるOHラジカル(OH*)は反応容器20内に所定の圧力例えば1~10Paで充満され(図3の期間Т3)、加工対象物1の露出表面にOHラジカル(OH*)が浸透する。その結果、加工対象物1の露出表面では、ТMA(Al(CH)から有機物CHが解離されると共に、金属Alが酸化されることで、酸化アルミニウムAlが生成される。それにより、加工対象物1の露出表面は金属酸化膜により被覆される。特に、加工対象物1の露出表面のヒドロキシ基(-OH)上には、有機金属ガスは室温でも飽和吸着が可能である。よって、成膜中に加工対象物1を強制加熱する必要がない。
【0036】
1.2.4.パージ
その後、ALDサイクルの4ステップ目として、図2に示すようにバルブ42、52、65、66は閉鎖され、バルブ62は開放が維持され、バルブ67が期間Т4に亘って開放される。それにより反応容器20内にパージガスが導入され、反応容器20内の反応ガスがパージガスに置換される。Al膜は1サイクルでおよそ1オングストローム=0.1nmずつ成膜ができるので、例えば10nmの膜厚にするにはALDサイクル(Т)を100回繰り返せばよい。全てのALDサイクルが終了すると、加工対象物1は反応容器20の外に搬出される。
【0037】
2.第2実施形態
第2実施形態は、図1のALD装置10において、図1に示す各種バルブを図4に示すタイミングチャートに従って開閉させることで、図5に示すALDサイクルを実施する。第1実施形態とは異なり、第2実施形態では第1バルブとして機能するバルブ47と、第2バルブとして機能するバルブ57とが開閉される。
【0038】
2.1.原料ガスの供給
図4に示すように、期間Т1に亘ってバルブ32、62及び64を開く。こうすると、原料ガス源30からの原料ガス例えばТMA(Al(CH)が、キャリアガス源60から例えばアルゴンArをキャリアガスとして、反応容器20に供給され、所定の圧力例えば1~10Paで充満される。図5に示すALDサイクルの1ステップ目(期間Т1)で、加工対象物1の露出表面にТMAが浸透する。
【0039】
2.2.パージ
その後、ALDサイクルの2ステップ目として、図4に示すようにバルブ32、64は閉鎖され、バルブ62は開放が維持され、バルブ67が期間Т2に亘って開放される。それにより、図5に示すように反応容器20内にパージガスが導入され、反応容器20内のトリメチルアルミニウムAl(CHがパージガスに置換される。
【0040】
2.3.反応ガス導入
次に、ALDサイクルの3ステップ目として、図4に示すようにバルブ67は閉鎖され、バルブ62は開放が維持され、バルブ42、47、65が期間Т3に亘って開放される。こうすると、酸素ガス源40からの酸素ガスが、キャリアガス源60からのアルゴンArをキャリアガスとして、第1プラズマ生成部44に供給される。第1プラズマ生成部44では、上述の式(1)に示すように酸素から解離される酸素ラジカルを含む誘導結合プラズマP1が生成される。酸素ラジカルは、キャリアガスと共に配管43を介して反応容器20に供給される。こうして、酸素ラジカルは所定の圧力で反応容器20内に充満される。このとき、第2バルブ57は閉鎖されているので、酸素ラジカルが第2プラズマ生成部54に流入することが無い。
【0041】
次に、図4に示すようにバルブ42、47、65は閉鎖され、バルブ52、57、66が期間Т4に亘って開放される。こうすると、水素ガス源50からの水素ガスが、キャリアガス源60からのアルゴンArをキャリアガスとして、第2プラズマ生成部54に供給される。第2プラズマ生成部54では、上述の式(3)に示すように水素から解離される水素ラジカルを含む誘導結合プラズマP2が生成される。水素ラジカルは、キャリアガスと共に配管53を介して、酸素ラジカルとは別ルートで反応容器20に供給される。こうして、水素ラジカルは所定の圧力で反応容器20内に充満される。このとき、第1バルブ47は閉鎖されているので、水素ラジカルが第1プラズマ生成部44に流入することが無い。
【0042】
反応容器20では、酸素ラジカルと水素ラジカルとが初めて合流される。よって、反応容器20内では、上述の式(4)に示すように、酸素ラジカルと水素ラジカルとが衝突・結合したOHラジカルが生成される。反応ガスであるOHラジカル(OH*)は反応容器20内に所定の圧力例えば1~10Paで充満され(図5の期間Т4)、加工対象物1の露出表面にOHラジカル(OH*)が浸透する。その結果、加工対象物1の露出表面では、第1実施形態と同様にして、酸化アルミニウムAlが生成される。
【0043】
2.4.パージ
その後、ALDサイクルの4ステップ目として、図4に示すようにバルブ52、57、66は閉鎖され、バルブ62は開放が維持され、バルブ67が期間Т5に亘って開放される。それにより反応容器20内にパージガスが導入され、反応容器20内の反応ガスがパージガスに置換される。
【0044】
3.第3実施形態
3.1.ALD装置
図6に、ALD装置11の一例が示されている。ALD装置11のうち、図1に示すALD装置10の部材と同一機能を有する部材については、図1と同一符号を付し、その説明を省略する。ALD装置11は、第1配管43及び第2配管53は、合流配管80を介して反応容器20に連結される。
【0045】
3.2.ALD方法
第3実施形態は、図6のALD装置11において、図6に示す各種バルブを図2に示すタイミングチャートに従って開閉させることで、図3に示すALDサイクルを実施する。ここで、第3実施形態でのALD方法は期間Т3での反応ガスの導入(3ステップ目)のみが第1実施形態と異なるので、以下期間Т3での動作について説明する。
【0046】
ALDサイクルの3ステップ目として、図2に示すようにバルブ67は閉鎖され、バルブ62は開放が維持され、バルブ42、52、65、66が期間Т3に亘って開放される。こうすると、酸素ガス源40からの酸素ガスと、キャリアガス源60からのキャリアガスであるアルゴンArとが、第1プラズマ生成部44に供給される。同時に、水素ガス源50からの水素ガスと、キャリアガス源60からのキャリアガスであるアルゴンArとが、第2プラズマ生成部54に供給される。第1プラズマ生成部44では、上述の式(1)に示すように酸素から解離される酸素ラジカルを含む誘導結合プラズマP1が生成される。酸素ラジカルは、キャリアガスと共に配管43を介して合流配管80に供給される。一方、第2プラズマ生成部54では、上述の式(3)に示すように水素から解離される水素ラジカルを含む誘導結合プラズマP2が生成される。水素ラジカルは、キャリアガスと共に配管53を介して合流配管80に供給される。
【0047】
合流配管80では、酸素ラジカルと水素ラジカルとが初めて合流される。よって、合流配管80内では、上述の式(4)に示すように、酸素ラジカルと水素ラジカルとが衝突・結合したOHラジカルが生成される。反応ガスであるOHラジカル(OH*)は、合流配管80から反応容器20に供給され、反応容器20内に所定の圧力例えば1~10Paで充満され、加工対象物1の露出表面にOHラジカル(OH*)が浸透する。その結果、第1実施形態と同様にして、加工対象物1の露出表面は金属酸化膜により被覆される。
【0048】
4.第4実施形態
4.1.ALD装置
図7に、ALD装置12の一例が示されている。ALD装置12のうち、図1に示すALD装置10の部材と同一機能を有する部材については、図1と同一符号を付し、その説明を省略する。ALD装置12は、第1配管43及び第2配管53は、合流配管90を介して反応容器20に連結される。そして、合流配管90にプラズマ生成部94が設けられる。合流配管90は、キャリアガスの配管63から分岐された分岐管63Dとバルブ68を介して連結されている。この第4実施形態では、プラズマ生成部94よりも上流のバルブ42及び68が第1バルブとして機能し、プラズマ生成部94よりも上流の他のバルブ52が第2バルブとして機能する。
【0049】
4.2.ALD方法
第4実施形態は、図7のALD装置12において、図7に示す各種バルブを図8に示すタイミングチャートに従って開閉させることで、図5に示すALDサイクルを実施する。ここで、第4実施形態でのALD方法は期間Т3~Т4での反応ガスの導入(3ステップ目)のみが第2実施形態と異なるので、以下期間Т3~Т4での動作について説明する。
【0050】
図8のうち、期間Т1、Т2及びТ5のバルブ動作は図4と同じである。ALDサイクルの3ステップ目(期間Т3及びТ4)として、先ず、図8に示すようにバルブ67は閉鎖され、バルブ62は開放が維持され、バルブ42、68が期間Т3に亘って開放される。こうすると、酸素ガス源40からの酸素ガスと、キャリアガス源60からのキャリアガスであるアルゴンArとが、プラズマ生成部94に供給される。プラズマ生成部94では、上述の式(1)に示すように酸素から解離される酸素ラジカルを含む誘導結合プラズマPが生成される。酸素ラジカルは、キャリアガスと共に合流配管90を介して反応容器20に供給される。こうして、酸素ラジカルは所定の圧力で反応容器20内に充満される。
【0051】
次に、図8に示すようにバルブ42は閉鎖され、バルブ62は開放が維持され、バルブ52、68が期間Т4に亘って開放される。こうすると、水素ガス源50からの水素ガスと、キャリアガス源60からのキャリアガスであるアルゴンArとが、プラズマ生成部94に供給される。プラズマ生成部94では、上述の式(3)に示すように水素から解離される水素ラジカルを含む誘導結合プラズマPが生成される。水素ラジカルは、キャリアガスと共に合流配管90を介して反応容器20に供給される。こうして、水素ラジカルは所定の圧力で反応容器20内に充満される。
【0052】
反応容器20では、酸素ラジカルと水素ラジカルとが初めて合流される。よって、反応容器20内では、上述の式(4)に示すように、酸素ラジカルと水素ラジカルとが衝突・結合したOHラジカルが生成される。反応ガスであるOHラジカル(OH*)は反応容器20内に所定の圧力例えば1~10Paで充満され(図8の期間Т4)、加工対象物1の露出表面にOHラジカル(OH*)が浸透する。その結果、加工対象物1の露出表面では、第1実施形態と同様にして、酸化アルミニウムAlが生成される。
【0053】
5.変形例
金属酸化膜を成膜する場合に用いられる反応ガスである酸素ガスに代えて、窒素ガスを用いれば、金属窒化膜を成膜することが可能である。この場合、図1等の酸素/窒素ガス源40に窒素が収容される。こうすると、窒素ラジカル(N*)と水素ラジカル(H*)とを用いて、NHラジカルを効率よく生成することができる。原料ガスとして例えばTDMAS(SiH[N(CH)を用いると、加工対象物1の表面にSiNを成膜することができる。原料ガスとして例えばTDMAT(Ti[N(CH)を用いると、加工対象物1の表面にTiNを成膜することができる。いずれの場合も、NHラジカルの存在により、低温プロセスを実現することができる。
【0054】
原料ガスは、上述された有機金属化合物に限らず、無機金属化合物でも良い。例えば無機金属化合物ガスであるSiClを基板1の表面に供給すると、SiClで吸着し、Clが脱離して排気される。
SiCl→SiCl+Cl
その状態でOHラジカルを供給すると、SiClは酸化されてSiOとなり、HClが脱離して排気される。
SiCl+OH→SiO+2HCl↑
この他、他の無機金属化合物ガスであるТiClやSiH2Clでも同様に金属酸化膜を形成することができる。
【0055】
第1及び第2プラズマ生成部44、54またはプラズマ生成部94の下流側において、酸素ラジカル、水素ラジカルまたはOHラジカルを反応容器20に供給する図1の配管43及び配管53、図6の合流配管80または図7の合流配管90は、例えば図9に示す金属配管100を含み、例えば10~100Hzで-100V~+100Vに変化する交流電圧を印加する交流電源101が金属配管100と接続されていてもよい。特に、図9の金属配管100には金属製の屈曲管102が設けられることが好ましい。こうすると、金属配管100に負電圧が印加されている時には正の電荷を持つ陽イオン等が、金属配管100に正電圧が印加されている時には負の電荷を持つ陰イオン等の荷電粒子が、それぞれ配管100に吸着されて、かつ、過不足の電子が金属配管から放出/注入されて中和される。こうして、陽イオン、陰イオン及び電子等は、それらが保有する電荷を利用して除去される。それにより、実施形態1及び2では、反応容器20には酸素ラジカル又は窒素ラジカルと、水素ラジカルとが主体的に供給される。実施形態3では、合流配管80に酸素ラジカル又は窒素ラジカルと、水素ラジカルと主体的に供給され、さらに、反応容器20にOHラジカルまたはNHラジカルが主体的に供給される。実施形態4では、合流配管90に酸素ラジカル又は窒素ラジカルと、水素ラジカルと主体的に供給され、さらに、反応容器20にOHラジカルまたはNHラジカルが主体的に供給される。この荷電粒子除去部は、金属配管100を設置するものでも良い。あるいは、荷電粒子除去部は、配管途中に電荷吸着ファイバーで形成されたメッシュを配置しても良い。電荷吸着ファイバーは、接地されても良く、あるいは交流電源が接続されても良い。
【符号の説明】
【0056】
1…加工対象物、10~12…ALD装置、20…反応容器、30…原料ガス源、31、41、51、61…流量制御器、32、42、52、62、64、66~68…バルブ、33…配管、40…酸素/窒素ガス源(第1ガス源)、42…第1バルブ、43、63、63A…第1配管、44…第1プラズマ生成部、47…第1バルブ、50…水素ガス源(第2ガス源)、52…第2バルブ、53、63、63B…第2配管、54…第2プラズマ生成部、57…第2バルブ、60…キャリアガス源(第3ガス源)、70…排気管、71…排気ポンプ、80、90…合流配管、94…プラズマ生成部、100~102…荷電粒子除去部、100…金属配管、101…交流電源、102…屈曲管
【要約】
【課題】 反応容器内の対象物にALDによって金属酸化膜または金属窒化膜を形成するのに必要な反応性の高いOHラジカルまたはNHラジカルを効率よく発生させ、成膜効率を高めることができる成膜装置を提供すること。
【解決手段】 反応容器20内にて、金属化合物ガスと、OHラジカルまたはNHラジカルとを交互に導入して、原子層堆積により金属酸化膜または金属窒化膜を形成する成膜装置10は、酸素または窒素を供給する第1ガス源40と、水素を供給する第2ガス源50と、キャリアガスを供給する第3ガス源60と、第1ガス源及び第3ガス源と反応容器とを連通させる第1配管32と、酸素または窒素から解離される酸素ラジカルまたは窒素ラジカルを含むプラズマを生成する第1プラズマ生成部44と、第2ガス源及び第3ガス源と前記反応容器とを連通させる第2配管52と、水素から解離される水素ラジカルを含むプラズマを生成する第2プラズマ生成部54と、含む。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9