(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】電気自動車
(51)【国際特許分類】
B60L 58/10 20190101AFI20220314BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20220314BHJP
B60L 7/14 20060101ALI20220314BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20220314BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20220314BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220314BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
B60L58/10
B60L1/00 L
B60L7/14
B60L9/18 J
B60L50/60
H02J7/00 P
H02J7/34 C
(21)【出願番号】P 2021159402
(22)【出願日】2021-09-29
【審査請求日】2021-10-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521426431
【氏名又は名称】株式会社アイディアル.ケー
(74)【代理人】
【識別番号】100163533
【氏名又は名称】金山 義信
(72)【発明者】
【氏名】木村 一彦
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-175621(JP,A)
【文献】特開2014-019356(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0025977(US,A1)
【文献】特開2009-179311(JP,A)
【文献】特開2009-268211(JP,A)
【文献】特開平10-304511(JP,A)
【文献】特開2020-145875(JP,A)
【文献】特開2011-172318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/00 - 10/30
B60W 20/00 - 20/50
H02J 7/00
H02J 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪を駆動する駆動モータと、前記駆動モータに電力を供給する駆動用バッテリと、前記駆動用バッテリの出力である直流電力を変換して前記駆動モータに供給するインバータを有する電気自動車において、
電気エネルギを前記駆動用バッテリへ供給する発電機と、
前記駆動用バッテリよりも低電圧であり、前記発電機を駆動する低電圧バッテリと、
同期型モータであり、前記発電機と接続される発電モータと、
電磁力で前記発電モータと前記発電機とを接続及び切断するマグネットクラッチと、
を備えた電気自動車。
【請求項2】
前記駆動用バッテリはリチウムイオンバッテリであり、前記低電圧バッテリは鉛蓄電池であることを特徴とする請求項1に記載の電気自動車。
【請求項3】
従動輪の回転を前記発電機へ伝達し、前記従動輪の回転で生じる電気エネルギを前記駆動用バッテリへ供給することを特徴とする請求項1
又は2に記載の電気自動車。
【請求項4】
前記駆動用バッテリへの負荷が過大となる場合、前記発電機による電気エネルギを前記駆動用バッテリへ供給することを特徴とする請求項1から
3のいずれか1項に記載の電気自動車。
【請求項5】
前記駆動モータからの回生電力を前記駆動用バッテリへ戻すことを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項に記載の電気自動車。
【請求項6】
前記駆動モータからの回生電力を前記低電圧バッテリへ戻すことを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項に記載の電気自動車。
【請求項7】
前記駆動用バッテリの残容量と温度、及び前記インバータと前記駆動モータの状態量、走行情報が入力され、前記駆動用バッテリへの充電及び放電を制御するバッテリ管理ユニットを備えたことを特徴とする請求項1から
6のいずれか1項に記載の電気自動車。
【請求項8】
前記駆動用バッテリは複数の電池セル1-1、1-2、1-nを接続してパッケージングされ、前記バッテリ管理ユニットは、前記駆動用バッテリの充放電の停止により保護及び前記低電圧バッテリへの充電及び放電により前記電池セル1-1、1-2、1-nの電荷量を均一にするセルバランシングを行うことを特徴とする請求項
7に記載の電気自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、電動機の駆動力を用いて走行が可能な電気自動車に係り、特に、電動機に供給する電力源として、二次電池あるいは燃料電池等を用いるものに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車とは、電動機の駆動力のみを用いて走行が可能な車であり、走行用の大出力モータに供給する電力源として、二次電池(バッテリ)を用いる電気自動車(EV)、燃料電池を用いる燃料電池車(FV)、エンジンと発電機により二次電池(バッテリ)を充電して走行用の大出力モータを駆動するに代表される自動車(E-power:登録商標)、走行用のエンジンと小出力モータを用い、小出力モータは二次電池(バッテリ)で駆動する従来型のハイブリッド自動車(HV)が知られている。
【0003】
E-power(登録商標)、従来型のハイブリッドは、依然、内燃機関であるエンジンを用いるため、世界的な環境規制の強化及びエネルギ費用削減の傾向に基づいて、環境にやさしい電気自動車についての要求が増加している。そして、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)は、走行中に二酸化炭素(CO2)をまったく出さないため、世界的な「脱炭素」の動きで需要が急増している。
【0004】
走行用の大出力モータを駆動するには、大容量の電池が必要とされ、搭載される電池の生産コストが高いという課題がある。そのため、当分の間は、電池、駆動機構等の技術課題の進行状態により、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)、(E-power:登録商標)、ハイブリッド自動車(HV)が混在せざるを得ない。
【0005】
特に、燃料電池車(FCV)、(E-power:登録商標)は、内燃機関であるエンジンのための燃料タンクの設置が必須であり、電池の低容量化、車体の軽量化の点が課題とされている。特に、電気自動車(EV)は、高価格のリチウムイオン電池を必須としているが、リチウムイオン電池製造のために排出される二酸化炭素(CO2)の低減も要求されている。
【0006】
特許文献1は、自動車を走行させる駆動源となる走行用電動機と、電池電源と、走行用電動機及び電池電源に発電電力を供給する発電装置とを備えたハイブリッド電気自動車が記載されている。そして、発電装置は、エンジンで回転駆動されるようになっており、その発電出力はコンバータを介してインバータ及びバッテリに供給される。電池電源をリチウムイオン電池とした場合は、電池の重量と電池のみの走行距離を考慮した容量の電池を搭載する。
【0007】
特許文献2は、例えば段落0052から0058において、主駆動源がガソリンエンジン又はディーゼルエンジン等の内燃機関、又は電動モータ、あるいは両者を組み合わせたハイブリッド自動車(HV)において、バッテリとして低電圧バッテリと中電圧バッテリとを設けることが記載されている。
【0008】
また、低電圧バッテリは、制御系等の電源として各種の自動車一般に用いられているバッテリであり、例えば12V又は24Vとされ、内燃機関のスタータモータ、灯火類に使用される。中電圧バッテリは、48V系統であり、駆動輪側の動力アシストモータ、電動ポンプ、電動パワーステアリング、スーパーチャージャ、及びエアーコンプレッサなどに利用されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平10-304511号公報
【文献】特開2020-145875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来技術において、特許文献1において、二次電池(バッテリ)を用いる電気自動車(EV)は、強電バッテリとして例えばリチウムイオンバッテリのような高電圧(100V以上、例えば200~400V)かつ容量が大きいものが必須とされ、低価格化に対して不利であり、電池の低容量化が望まれている。
【0011】
また、燃料電池車(FCV)、(E-power:登録商標)は、燃料タンクの設置が必須であり、車体の軽量化に困難さがある。さらに、ハイブリッド自動車(HV)は、走行用のエンジンと小出力モータ及び高圧バッテリよりも低く、例えば、48Vバッテリを用い、従来の内燃機関を搭載した車両に比較的容易に搭載することができる。しかし、ハイブリッド自動車(HV)は、内燃機関、燃料タンクの軽量化による燃費の向上等に課題がある。
【0012】
特許文献2に記載のものは、電力による動力アシストや回生を効率的にし、燃費低減することができ、電動機又は発電機の体積を小さくすることができる。しかし、単にバッテリを用途別に設けただけなので、特許文献1と同様に主駆動源の低容量化、車体の軽量化に課題が残っている。
【0013】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、二次電池(バッテリ)を用いる電気自動車(EV)、燃料電池を用いる燃料電池車(FV)の電池の低容量化、車体の軽量化、燃費の向上を図り、電池製造のために排出される二酸化炭素(CO2)の低減も考慮して総合的な「脱炭素」の動きを進めるのに好適な電気自動車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明は、駆動輪を駆動する駆動モータと、前記駆動モータに電力を供給する駆動用バッテリと、前記駆動用バッテリの出力である直流電力を変換して前記駆動モータに供給するインバータを有する電気自動車において、電気エネルギを前記駆動用バッテリへ供給する発電機と、前記駆動用バッテリよりも低電圧であり、前記発電機を駆動する低電圧バッテリと、を備えたものである。
【0015】
また、上記の電気自動車において、前記駆動用バッテリはリチウムイオンバッテリであり、前記低電圧バッテリは鉛蓄電池であることされたことが好ましい。
【0016】
さらに、上記の電気自動車において、同期型モータであり、前記発電機と接続される発電モータと、電磁力で前記発電モータと前記発電機とを接続及び切断するマグネットクラッチと、を備えたことが好ましい。
【0017】
さらに、上記の電気自動車において、従動輪の回転を前記発電機へ伝達し、前記従動輪の回転で生じる電気エネルギを前記駆動用バッテリへ供給することが好ましい。
【0018】
さらに、上記の電気自動車において、前記駆動用バッテリへの負荷が過大となる場合、前記発電機による電気エネルギを前記駆動用バッテリへ供給することが好ましい。
【0019】
さらに、上記の電気自動車において、前記駆動モータからの回生で生じる電力(以下「回生電力」ともいう。)を前記駆動用バッテリへ戻すことが好ましい。
【0020】
さらに、上記の電気自動車において、前記駆動モータからの回生電力を前記低電圧バッテリへ戻すことが好ましい。
【0021】
さらに、上記の電気自動車において、前記駆動用バッテリの残容量と温度、及び前記インバータと前記駆動モータの状態量、走行情報が入力され、前記駆動用バッテリへの充電及び放電を制御するバッテリ管理ユニットを備えたことが好ましい。
【0022】
さらに、上記の電気自動車において、前記駆動用バッテリは複数の電池セル1-1、1-2、1-nを接続してパッケージングされ、前記バッテリ管理ユニットは、前記駆動用バッテリの充放電の停止により保護及び前記低電圧バッテリへの充電及び放電により前記電池セル1-1、1-2、1-nの電荷量を均一にするセルバランシングを行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明による電気自動車は、駆動輪9-1を駆動する駆動モータ7と、駆動モータ7に電力を供給する駆動用バッテリ1と、駆動用バッテリ1の出力である直流電力を変換して駆動モータ7に供給するインバータ6を有し、電気エネルギを駆動用バッテリ1へ供給する発電機5と、駆動用バッテリ1よりも低電圧であり、発電機5を駆動する低電圧バッテリ2と、を備える。これにより、電気自動車は駆動用バッテリ1の低容量化、車体の軽量化が図られ、稼働時間を延伸できる。
【0024】
したがって、二次電池(バッテリ)を用いる電気自動車(EV)において、電池製造のために排出される二酸化炭素(CO2)の低減も考慮して総合的な「脱炭素」の動きを進めるのに好適な電気自動車を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電気自動車の概略ブロック図
【
図2】
図1において、従動輪9―2の回転で発電する例を示す概略ブロック図
【
図3】
図1において、駆動モータ7からの回生電力を駆動用バッテリ1へ戻した例を示す概略ブロック図
【
図4】
図1において、駆動モータ7からの回生電力を低電圧バッテリ2へ戻した例を示す概略ブロック図
【
図5】バッテリ管理ユニット30を設けた電気自動車の概略ブロック図
【
図6】
図1において、バッテリ管理ユニット30の機能を説明する概略ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電気自動車の概略ブロック図であり、駆動用バッテリ1は、電力を供給する高圧バッテリであり、例えばリチウムイオンバッテリのような高電圧(100V以上、例えば200~400V)である。駆動用バッテリ1の出力である直流電力は、インバータ6で交流電力に変換して駆動モータ7に供給する。
【0027】
駆動モータ7は、トランスミッション8を介して駆動輪9-1を駆動する。なお、トランスミッション8は、歯車や軸などからなり、動力源の駆動モータ7の動力をトルクや回転数、回転方向を変えて活軸である駆動輪9-1へ伝達する。
【0028】
駆動モータ7は、例えばロータに永久磁石を用いた同期型モータからなり、電気自動車の駆動源である。駆動モータ7は、インバータ6からの交流電力により電気自動車を加速及び走行させ、減速時に発電機として機能する。なお、駆動モータ7は、アウターロータ型の例えば表面磁石型永久磁石モータ、すなわちSPM同期モータ(Surface Permanent Magnet Motor)、あるいはIPM同期モータ(Interior Permanent Magnet Synchronous Motor)、スイッチトリラクタンスモータ(Switched reluctance motor)であってもよい。
【0029】
本実施形態の電気自動車は、各種アクチュエータなどに給電も行う低電圧(100V未満、例えば12から15V)の低電圧バッテリ2を備えている。一形態として、低電圧バッテリ2は、電極に鉛を用いた二次電池であり、出力電圧がDC12Vから15Vの鉛蓄電池である。低電圧バッテリ2は、12Vで動作する電装品(各種コントローラを構成するコンピュータ、ランプ、ナビゲーションシステム、オーディオ、エアコン用ブロア等)に電力を供給することにも用いられる。なお、低電圧バッテリ2は、電圧が12Vのリチウムイオンバッテリであってもよい。
【0030】
発電モータ3は、例えばロータに永久磁石を用いた同期型モータからなっており、マグネットクラッチ4を介して発電機5と接続及び切断可能とされる。マグネットクラッチ4は、電流が流れるとONとなり、電磁力で発電モータ3と発電機5と断続可能として繋がって発電機5を駆動する。発電機5は、高電圧で大電流を発電できる三相交流発電機であり、低電圧バッテリ2で駆動されて、高電圧で大電流を発電する。
【0031】
発電機5の電気エネルギは、AC/DCコンバータ(図示せず)で直流電圧へ変換され、駆動用バッテリ1へ供給可能となっている。マグネットクラッチ4は、発電モータ3と発電機5との接続及び切断によって発電機5の電気エネルギの駆動用バッテリ1への供給及び停止を制御できる。
【0032】
駆動用バッテリ1は、急速充電コネクタ11を介して、高電圧(100V以上、例えば200~400V)で、低電圧バッテリ2は、低電圧(100V未満、例えば12から15V)で普通充電コネクタ10を介してそれぞれ充電される。また、低電圧バッテリ2は、駆動用バッテリ1からDC/DCコンバータ(図示せず)によって降圧されて、充電が行われても良い。
【0033】
図2は、従動輪9―2の回転で発電する例を示す概略ブロック図であり、従動輪9―2をベルト40で発電機5へマグネットクラッチ4を介して伝達した例を示す。従動輪9―2の回転は、発電機5へ伝達可能とされる。発電機5の発電出力は、マグネットクラッチ4をONすることにより、従動輪9―2の回転で生じる電気エネルギを駆動用バッテリ1へ供給する。なお、発電機5の発電出力は、低電圧バッテリ2へ供給するようにしても良い。
【0034】
電気自動車の加速走行時や急な登坂走行時は、駆動用バッテリ1への負荷が過大となる。そこで、発電機5による電気エネルギは、駆動用バッテリ1へ供給され、(発電機5の出力+駆動用バッテリ1)で駆動輪9-1が駆動される。電気自動車は、駐停車や信号待ちなどの間に駆動モータ7を停止させるアイドリングストップ機能を付けることが駆動用バッテリ1の電荷を維持するために好ましい。しかし、起動時は大電力を必要とするので、その時に発電機5の電気エネルギを駆動用バッテリ1へ供給する。
【0035】
駆動用バッテリ1は、(電気自動車の車両出力-発電機5の出力)で放電されることになる。定速走行時や緩やかな登坂走行時は、駆動用バッテリ1だけの電気エネルギで駆動輪9-1が駆動される。
図2に示すように、発電機5の出力は、いずれの走行時においても、低電圧バッテリ2と従動輪9―2の回転を加えて得ても良い。これにより、駆動用バッテリ1の低容量化、燃料タンクや内燃機関が不要なので車体の軽量化、燃費の向上を図ることができる。
【0036】
減速走行時は、駆動モータ7からの回生電力を駆動用バッテリ1あるいは低電圧バッテリ2へ戻すことになり、駆動用バッテリ1あるいは低電圧バッテリ2が充電されることとなる。
図3は、駆動モータ7からの回生電力を駆動用バッテリ1へ戻した例を示す概略ブロックであり、
図4は、駆動モータ7からの回生電力を低電圧バッテリ2へ戻した例を示す概略ブロックである。
【0037】
図3の場合は矢印20に示すように、駆動モータ7からの回生電力が駆動用バッテリ1へ戻され、駆動用バッテリ1の残容量(SOC:State Of Charge)の低減を直接に回復できる利点がある。ただし、低電圧バッテリ2は、回生電力が戻されないので、電装品への電力供給を制限、例えば、エアコンなどの走行への影響が少ない電装部品への電力供給を制限することが望ましい。
【0038】
図4の場合は、矢印21に示すように、駆動モータ7からの回生電力が低電圧バッテリ2へ戻さる。この場合は、低電圧バッテリ2の残容量(SOC)の低減を回復するだけでなく、発電機5を介して駆動用バッテリ1へも充電が可能となる。
【0039】
図5は、バッテリ管理ユニット30を設けた電気自動車の概略ブロック図である。バッテリ管理ユニット30は、駆動用バッテリ1の残容量、温度等、及びインバータ6、駆動モータ7の状態量(電流、速度、トルク)等、さらに、電気自動車の走行情報(速度、起動停止操作等)が入力される。そして、バッテリ管理ユニット30は、駆動用バッテリ1への充電及び放電をスイッチ50で制御する。バッテリ管理ユニット30を設けることは、マグネットクラッチ4による発電モータ3と発電機5との接続及び切断よりも、きめ細かい制御が可能となる。
【0040】
例えば、バッテリ管理ユニット30は、駆動用バッテリ1の残容量が所定値より小さいか否か判断し、小さい場合は、スイッチ50をオンして発電機5の電気エネルギを駆動用バッテリ1へと供給する。所定値は、例えば、電費と残容量とから計算される走行可能距離と、ナビゲーションシステムにより計算される現在地から目的地までの距離との関係について、予め定められた値であってもよい。
【0041】
一形態としては、現在地から目的地までの距離の情報をバッテリ管理ユニット30が取得し、残容量と電費とをもとに走行可能距離を計算し、この差が、予め定められた閾値よりも小さい場合、電気自動車の使用者に対してアラートしてもよい。
アラートは、例えば、音声や表示により、残容量が少ないので、充電拠点で充電することを指示する内容であってもよい。
【0042】
さらに、ナビゲーションシステムにより走行可能範囲内に充電拠点が存在すると判断される場合は、バッテリ管理ユニット30は、駆動用バッテリ1の駆動モータ7への電力供給を制限し、電気自動車の速度を制限することが好ましい。このとき、速度の制限は、充電可能拠点まで残りの電気容量で到達可能となるように計算され制御されることが好ましい。また、バッテリ管理ユニット30は、走行情報より加速走行であると判断した場合、発電機5の電気エネルギを駆動用バッテリ1へ供給する。さらに、バッテリ管理ユニット30は、駆動用バッテリ1の温度が所定値よりも上昇している場合、発電機5の電気エネルギを駆動用バッテリ1へ供給を制限する。
【0043】
図6は、バッテリ管理ユニット30の機能を説明する概略ブロック図である。駆動用バッテリ1は、リチウムイオンバッテリのような高電圧(100V以上、例えば200~400V)であり、急速充電コネクタ11を介して高電圧(100V以上、例えば200~400V)で充電される。しかし、駆動用バッテリ1は、さらに高い電圧の変電設備(図示せず)から受電することが好ましい。高圧キュービクル100は、キュービクル式高圧受電設備であり、高圧で受電するための機器一式を金属製の外箱に収めている。
【0044】
変電設備(図示せず)から6600Vで受電した電気は、高圧キュービクル100内で高電圧(100V以上、例えば200~400V)に変圧され、駆動用バッテリ1に供給される。高圧キュービクル100は、箱体・建屋の中に変電装置を集めることで、メンテナンスや操作が容易になり、コンビニやファミリーレストランの駐車場・ビルの地下・工場敷地などで稼働することができる。
【0045】
駆動用バッテリ1は、一定の出力、電圧、容量を得られるように複数の電池セル1-1、1-2、1-nを接続してパッケージングされている。バッテリ管理ユニット30は、駆動用バッテリ1の保護及びセルバランシング機能として以下のことを行う。
(1)過充電時の充電の停止
各電池セル1-1、1-2、1-nの電圧を監視し、1本でも過充電であれば充電を停止する。
(2)過放電時の放電の停止
各電池セル1-1、1-2、1-nの電圧を監視し、1本でも過放電であれば放電を停止する。
(3)外部短絡等の大電流放電の停止
大電流が流れ続ける場合、外部短絡等の可能性があるため、放電を停止する。
(4)温度保護による充放電の停止
駆動用バッテリ1の内温度を監視し、適正範囲を超えると放電を停止する。
(5)低電圧時の動作停止
充放電にかかわらず電圧を監視し、適正外で停止する。
(6)セルバランシング機能
内部放電(自己放電)をゼロにすることはできず、その速度は電池セル1-1、1-2、1-n毎に異なる。そこで、バッテリ管理ユニット30は、電池セル1-1、1-2、1-n毎の電圧のバラツキ修正を行う。
【0046】
バッテリ管理ユニット30は、駆動用バッテリ1の安全のため、過充電や過放電にならないように、例えば90%充電された状態を満充電とし、残量が30%になった時点で完全に放電された状態とする。また、バッテリ管理ユニット30は、駆動用バッテリ1の電池セル1-1、1-2、1-nのいずれかの電圧が、下限値もしくは上限値に達したら放電もしくは充電を停止する。
【0047】
したがって、例えば電池セル1-1の放電速度が若干速い場合は、電池セル1-2が少し電力を残した状態で止まるようにする。しかし、駆動用バッテリ1は、充放電を繰り返すと電池セル1-1と電池セル1-2の差はどんどん開いてしまい、見かけの容量はどんどん下がる。そのため、バッテリ管理ユニット30は、充電サイクル/放電サイクルにおいて電池セル1-1、1-2、1-nで電荷を再分配するアクティブ・セルバランシングを行う。これにより、駆動用バッテリ1は、使用できる総電荷量が増え、電気自動車の稼働時間を延伸できる。
【0048】
バッテリ管理ユニット30は、放電時(走行時:駆動用バッテリ1で駆動モータ7を駆動する時)において、電池セル1-1、1-2、1-nの内、比較的低電圧のものに低電圧バッテリ2から駆動用バッテリ1へ充電電流を供給して電圧を増加させる。そして、バッテリ管理ユニット30は、各電池セル1-1、1-2、1-nの電荷量を均一にする。
【0049】
また、充電時において、電池セル1-1、1-2、1-nの内、劣化したものは、劣化のないものよりも先にフル充電に達する。そうすると、駆動用バッテリ1が保持できる全体の総電荷量が劣化したセルによって制限される。そこで、電池セル1-1、1-2、1-nの内、比較的高い電圧を有するものは、低電圧バッテリ2へ放電して各電池セル1-1、1-2、1-nの電荷量を均一にする。いずれにしても、各電池セル1-1、1-2、1-nは、目標電圧よりも高い電圧を有するものを放電し、目標電圧より低いものを充電する。
【0050】
バッテリ管理ユニット30は、駆動用バッテリ1の充放電の停止による保護を行う。また、バッテリ管理ユニット30は、低電圧バッテリ2への充放電サイクルにおいて、各電池セル1-1、1-2、1-nの電荷量を均一にするセルバランシングを行う。
したがって、電気自動車は、駆動用バッテリ1の低容量化、車体の軽量化を図り、稼働時間を延伸できる。
【0051】
以上、駆動用バッテリ1をリチウムイオンバッテリ、低電圧バッテリ2を鉛蓄電池として説明したが、駆動用バッテリ1と、低電圧バッテリ2とは、共にリチウムイオンバッテリとしても良いし、両者共に他の二次電池としても良い。また、駆動用バッテリ1は、燃料電池とし、低電圧バッテリ2をリチウムイオンバッテリ、あるいは鉛蓄電池としても良い。これにより、駆動用バッテリ1は低容量化される。そして、電池製造のために排出される二酸化炭素(CO2)は低減され、総合的な「脱炭素」の動きを進めるのに好適な電気自動車が得られる。
【0052】
さらに、実施形態による電気自動車は、トランスミッション8、駆動モータ7、インバータ6、駆動用バッテリ1は、電気自動車(EV)、燃料電池車(FV)、E-power(登録商標)自動車、ハイブリッド自動車(HV)において、共通化することができる。したがって、技術開発の進展状況によって、随時に車種展開が容易に可能となる。
【符号の説明】
【0053】
1…駆動用バッテリ
1-1、1-2、1-n…電池セル
2…低電圧バッテリ
3…発電モータ
4…マグネットクラッチ
5…発電機
6…インバータ
7…駆動モータ
8…トランスミッション
9-1…駆動輪
9―2…従動輪
10…普通充電コネクタ
11…急速充電コネクタ
20、21…矢印
30…バッテリ管理ユニット
40…ベルト
50…スイッチ
100…高圧キュービクル
【要約】
【課題】二次電池を用いる電気自動車の電池の低容量化、車体の軽量化を図り、「脱炭素」の動きを進めるのに好適な電気自動車を得る。
【解決手段】
駆動輪9-1を駆動する駆動モータ7と、駆動モータ7に電力を供給する駆動用バッテリ1と、駆動用バッテリ1の出力である直流電力を変換して駆動モータ7に供給するインバータ6を有する電気自動車において、電気エネルギを駆動用バッテリ1へ供給する発電機5と、駆動用バッテリ1よりも低電圧であり、発電機5を駆動する低電圧バッテリ2と、を備える。
【選択図】
図1