(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】平面複合構造で空間的に大きなストロークを有する柔軟性ヒンジ
(51)【国際特許分類】
F16H 21/54 20060101AFI20220314BHJP
【FI】
F16H21/54
(21)【出願番号】P 2021509175
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(86)【国際出願番号】 CN2019110289
(87)【国際公開番号】W WO2020173096
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】201910141050.4
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512000569
【氏名又は名称】華南理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】張 憲民
(72)【発明者】
【氏名】張 洪川
(72)【発明者】
【氏名】朱 本亮
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109207343(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101387315(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結されている矩形状平面単位と叉状平面単位とを含み、
面外ねじり機能を実現するための前記矩形状平面単位は、2本の可撓性の長直桁と2本の可撓性の短直桁で囲まれた矩形構造であり、そのうち一方の長直桁の中央部が固定セグメントであり、その両端がそれぞれ第1ねじりセグメントであり、他方の長直桁の中心部が第2ねじりセグメントであり、その両端がそれぞれ第3ねじりセグメントであり、
面内回転機能を実現するための前記叉状平面単位は、2本の可撓性を有し交差する直桁薄板で構成された叉状構造であり、
前記叉状構造の外側と第2ねじりセクションとは、叉状構造と矩形状構造とを連結してトルクを伝達するための、剛性が高く構造が安定する三角形構造を、外部結合の連結によって構成することを特徴とする平面複合構造で空間的に大きなストロークを有する柔軟性ヒンジ。
【請求項2】
前記矩形状平面単位は、前記長直桁と短直桁のアスペクト比が大きい狭幅矩形構造とすることにより、長直桁のねじり剛性が低く、矩形状平面単位の面外の広範囲な曲げ変形が可能であり、且つ、長直桁の幅と柔軟性ヒンジ全体の厚さとの比が0.35以下であり、
前記2本の直桁薄板で構成された叉状構造の長直桁への角度が30~90度であり、且つ、直桁薄板の幅が長直桁の幅に近く、柔軟性ヒンジ全体の厚さとの比が0.31以下とすることにより、矩形状平面単位のねじり柔軟性が叉状平面単位の回転柔軟性に相当することを特徴とする請求項1に記載の平面複合構造で空間的に大きなストロークを有する柔軟性ヒンジ。
【請求項3】
前記第1ねじりセグメントの長さは、短直桁の長さよりも大きく、前記第1ねじりセグメントの幅は、短直桁の幅よりも小さく、第1ねじりセグメントの幅と、柔軟性ヒンジ全体の厚さとの比は、0.1~0.35であり、前記直桁薄板の長さは、それぞれ、固定セグメントの長さ及び第2ねじりセグメントの長さと等しく、その変形長さは、固定セグメントの長さの1.414倍を超えず、前記直桁薄板の幅と、柔軟性ヒンジ全体の厚さとの比は、0.1~0.25であることを特徴とする請求項2に記載の平面複合構造で空間的に大きなストロークを有する柔軟性ヒンジ。
【請求項4】
前記矩形状平面単位のねじり柔軟性と、叉状平面単位の曲げ柔軟性との比が0.2~1であることを特徴とする請求項1に記載の平面複合構造で空間的に大きなストロークを有する柔軟性ヒンジ。
【請求項5】
連結されている矩形状平面単位と連結桁付きの叉状平面単位とを含み、
面外ねじり機能を実現するための前記矩形状平面単位は、2本の可撓性の長直桁と2本の可撓性の短直桁で囲まれた矩形構造であり、そのうち一方の長直桁の中央部が固定セグメントであり、その両端がそれぞれ第1ねじりセグメントであり、他方の長直桁の中心部が第2ねじりセグメントであり、その両端がそれぞれ第3ねじりセグメントであり、
面内回転機能を実現するための連結桁付きの叉状平面単位は、2本の可撓性を有し交差する直桁薄板で構成された叉状構造であり、
叉状構造の矩形状構造に近い側の両端部を連結する前記連結桁は、その中心部が第4ねじりセグメントであり、その両側が第5ねじれセグメントであり、
前記叉状構造の内側は、すなわち、第4ねじれセグメントと第2ねじれセグメントとが、内嵌式に連結されて三角形構造を構成し、且つ叉状構造の外側は、いかなる構造にも連結されず、
叉状構造と矩形状構造を連結してトルクを伝達するための前記三角形構造は、直桁薄板における部分の面内の曲げ変形が可能であり、矩形状構造に連結される部分の面外のねじり変形が可能であることを特徴とする平面複合構造で空間的に大きなストロークを有する柔軟性ヒンジ。
【請求項6】
前記矩形状平面単位は、前記長直桁と短直桁のアスペクト比が大きい狭幅矩形構造とすることにより、長直桁のねじり剛性が低く、矩形状平面単位の面外の広範囲な曲げ変形が可能であり、且つ、長直桁の幅と柔軟性ヒンジ全体の厚さとの比が0.35以下であり、
前記2本の直桁薄板で構成された叉状構造の長直桁への角度が30~90度であり、且つ、直桁薄板の幅が長直桁の幅に近く、柔軟性ヒンジ全体の厚さとの比が0.31以下とすることにより、矩形状平面単位のねじり柔軟性が叉状平面単位の回転柔軟性に相当することを特徴とする請求項5に記載の平面複合構造で空間的に大きなストロークを有する柔軟性ヒンジ。
【請求項7】
前記第1ねじりセグメントの長さは、短直桁の長さよりも大きく、前記第1ねじりセグメントの幅は、短直桁の幅よりも小さく、第1ねじりセグメントの幅と、柔軟性ヒンジ全体の厚さとの比は、0.1~0.35であり、前記直桁薄板の長さは、それぞれ、固定セグメントの長さ及び第2ねじりセグメントの長さと等しく、その変形長さは、固定セグメントの長さの1.414倍を超えず、前記直桁薄板の幅と、柔軟性ヒンジ全体の厚さとの比は、0.1~0.25であることを特徴とする請求項6に記載の平面複合構造で空間的に大きなストロークを有する柔軟性ヒンジ。
【請求項8】
前記矩形状平面単位のねじり柔軟性と、叉状平面単位の曲げ柔軟性との比が0.2~1であることを特徴とする請求項5に記載の平面複合構造で空間的に大きなストロークを有する柔軟性ヒンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟機構の技術分野に関し、特に、平面複合構造で空間的に大きなストロークを有する柔軟性ヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
柔軟機構とは、自身の弾性変形を利用して入力や変位を伝達する機構のことである。柔軟機構は、クリアランスがない、潤滑がない、組立が不要である、高精度、高剛性である等の利点が、学者によって発見され、航空宇宙、機械工学、ロボット科学、医療機器等の多くの分野で広く利用されている。柔軟機構の主流設計方法の一つに剛体代替法があり、その基本的な考え方は、従来の剛性機構の剛性ヒンジを等価的に対応する柔軟性ヒンジに置き換え、これに対応する柔軟機構を構成することである。従って、柔軟性ヒンジの設計、及び新規な空間柔軟機構の設計は、機構学的な重点及びホットスポットに常にあった。
【0003】
近年、微小電気機械加工技術分野における柔軟機構の応用及び発展に伴い、平面構造を有する各種の柔軟性ヒンジ及び柔軟機構が提案されている。しかし、平面構造の柔軟性ヒンジ又は機構の多くは、その構造が存在する平面内での運動しか実現できず、空間運動能力を有する柔軟機構及びヒンジは、単純な平面構造ではなく、空間柔軟機構又は柔軟性ヒンジの加工を困難にし、小規模加工又は製造を困難にする。
【0004】
LET(Lamina Emergent Torsional Joint)柔軟性ヒンジ及びLET柔軟性ヒンジからなるLEMs(Lamina Emergent Mechanisms)柔軟機構は、特定の平面構造によって面外運動を実現するという特徴を有し、このような柔軟機構は、柔軟機構の分野の学者にとって広範な関心をもたらし、かつ重要視される(詳細は米国特許第9,157,497号を参照)。LET柔軟性ヒンジは、具体的には、薄い板材を加工して形成され、面外回転を可能にする狭幅矩形の平面構造を有し、新規な1自由度の柔軟性ヒンジである。LEMs柔軟機構は、LET柔軟性ヒンジからなる柔軟機構であり、このような柔軟機構も、平面構造によって平面外空間運動を実現するという特徴を有する。LET柔軟性ヒンジ及びLEMs柔軟機構は、両方とも、大きな変形を可能にし、機械加工が簡単である。ワイヤ切断、3D印刷、レーザ切断などの従来の方法により、マクロ規模の機構又はデバイスを製造することもできるし、マイクロ電気機械システムMEMS(Micro-Electro-Mechanical System)の分野の微小加工技術を用いてマイクロ規模の機械又はデバイスを製造することもできる。
【0005】
LETヒンジ及びLEMs機構は、空間移動機能を有する空間柔軟機構及び空間マイクロ柔軟機構を実現するために新たな発想を提供するが、LET柔軟性ヒンジは、剛性機構の単一自由度関節と等価であるため、LET柔軟性ヒンジから構成されるLEMs柔軟機構の等価な剛性機構は、低次対偶によって構成される空間的に少ない自由度機構であることが多い。従って、平面シート複合体における大きなストロークを設計する空間多自由度柔軟機構では、LET柔軟性ヒンジは、一定の制限性を有する。多自由度関節を必要とするデルタ機構、Gough-Stewart機構、及び中国特許出願第201810223057.6号に記載されている反転多安定柔軟機構等は、LET柔軟性ヒンジだけでは、上記等価柔軟機構を構成することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来の平面構造の柔軟性ヒンジが1自由度で大きいストロークの低次対偶しか等価できないことや、従来のLEMs柔軟機構と等価な多自由度柔軟性ヒンジの全体的なストロークが小さいという問題点を克服し、構造が簡単で、加工が容易で、分析計算が容易で、大きなストロークの空間多自由度柔軟性と等価であるなどの利点を有する平面複合構造で空間的に大きなストロークを有する柔軟性ヒンジを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を実現するために、本発明は、以下の技術手段を提案する。平面複合構造で空間的に大きなストロークを有する柔軟性ヒンジは、連結されている矩形状平面単位と叉状平面単位とを含み、面外ねじり機能を実現するための前記矩形状平面単位は、2本の可撓性の長直桁と2本の可撓性の短直桁で囲まれた矩形構造であり、そのうち一方の長直桁の中央部が固定セグメントであり、その両端がそれぞれ第1ねじりセグメントであり、他方の長直桁の中心部が第2ねじりセグメントであり、その両端がそれぞれ第3ねじりセグメントであり、面内回転機能を実現するための前記叉状平面単位は、2本の可撓性を有し交差する直桁薄板で構成された叉状構造であり、前記叉状構造の外側と第2ねじりセクションとは、叉状構造と矩形状構造とを連結してトルクを伝達するための、剛性が高く構造が安定する三角形構造を、外部結合の連結によって構成する。
【0008】
更に、前記矩形状平面単位は、前記長直桁と短直桁のアスペクト比が大きい狭幅矩形構造とすることにより、長直桁のねじり剛性が低く、矩形状平面単位の面外の広範囲な曲げ変形が可能であり、且つ、長直桁の幅と柔軟性ヒンジ全体の厚さとの比が0.35以下であり、前記2本の直桁薄板で構成された叉状構造の長直桁への角度が30~90度であり、且つ、直桁薄板の幅が長直桁の幅に近く、柔軟性ヒンジ全体の厚さとの比が0.31以下とすることにより、矩形状平面単位のねじり柔軟性が叉状平面単位の回転柔軟性に相当する。
【0009】
更に、前記第1ねじりセグメントの長さは、短直桁の長さよりも大きく、前記第1ねじりセグメントの幅は、短直桁の幅よりも小さく、第1ねじりセグメントの幅と、柔軟性ヒンジ全体の厚さとの比は、0.1~0.35であり、前記直桁薄板の長さは、それぞれ、固定セグメントの長さ及び第2ねじりセグメントの長さと等しく、その変形長さは、固定セグメントの長さの1.414倍を超えず、前記直桁薄板の幅と、柔軟性ヒンジ全体の厚さとの比は、0.1~0.25である。
【0010】
更に、前記矩形状平面単位のねじり柔軟性と、叉状平面単位の曲げ柔軟性との比が0.2~1である。
【0011】
平面複合構造で空間的に大きなストロークを有する柔軟性ヒンジは、連結されている矩形状平面単位と連結桁付きの叉状平面単位とを含み、面外ねじり機能を実現するための前記矩形状平面単位は、2本の可撓性の長直桁と2本の可撓性の短直桁で囲まれた矩形構造であり、そのうち一方の長直桁の中央部が固定セグメントであり、その両端がそれぞれ第1ねじりセグメントであり、他方の長直桁の中心部が第2ねじりセグメントであり、その両端がそれぞれ第3ねじりセグメントであり、面内回転機能を実現するための連結桁付きの叉状平面単位は、2本の可撓性を有し交差する直桁薄板で構成された叉状構造であり、叉状構造の矩形状構造に近い側の両端部を連結する前記連結桁は、その中心部が第4ねじりセグメントであり、その両側が第5ねじれセグメントであり、前記叉状構造の内側は、すなわち、第4ねじれセグメントと第2ねじれセグメントとが、内嵌式に連結されて三角形構造を構成し、且つ叉状構造の外側は、いかなる構造にも連結されず、叉状構造と矩形状構造を連結してトルクを伝達するための前記三角形構造は、直桁薄板における部分の面内の曲げ変形が可能であり、矩形状構造に連結される部分の面外のねじり変形が可能である。
【0012】
更に、前記矩形状平面単位は、前記長直桁と短直桁のアスペクト比が大きい狭幅矩形構造とすることにより、長直桁のねじり剛性が低く、矩形状平面単位の面外の広範囲な曲げ変形が可能であり、且つ、長直桁の幅と柔軟性ヒンジ全体の厚さとの比が0.35以下であり、前記2本の直桁薄板で構成された叉状構造の長直桁への角度が30~90度であり、且つ、直桁薄板の幅が長直桁の幅に近く、柔軟性ヒンジ全体の厚さとの比が0.31以下とすることにより、矩形状平面単位のねじり柔軟性が叉状平面単位の回転柔軟性に相当する。
【0013】
更に、前記第1ねじりセグメントの長さは、短直桁の長さよりも大きく、前記第1ねじりセグメントの幅は、短直桁の幅よりも小さく、第1ねじりセグメントの幅と、柔軟性ヒンジ全体の厚さとの比は、0.1~0.35であり、前記直桁薄板の長さは、それぞれ、固定セグメントの長さ及び第2ねじりセグメントの長さと等しく、その変形長さは、固定セグメントの長さの1.414倍を超えず、前記直桁薄板の幅と、柔軟性ヒンジ全体の厚さとの比は、0.1~0.25である。
【0014】
更に、前記矩形状平面単位のねじり柔軟性と、叉状平面単位の曲げ柔軟性との比が0.2~1である。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、従来技術と比較して、以下の利点及び効果を有する。
1.本発明は、2自由度の回転関節を等価的に実現でき、叉状平面単位の曲げにより面内の広範囲の回動を実現することができるとともに、矩形状平面単位のねじりにより面外の広範囲の回動を実現することもできる。
2.本発明の矩形状平面単位は、狭幅矩形構造であり、長直桁のねじり剛性が低く、矩形状平面単位の面外の広範囲の曲げ変形が可能である。
3.本発明の柔軟性機構によれば、面外の大きな変形及び運動を実現することができ、1以上の平面自由度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の外部結合式の柔軟性ヒンジの斜視図である。
【
図2】本発明の外部結合式の柔軟性ヒンジの平面図である。
【
図3】本発明の内嵌式の柔軟性ヒンジの斜視図である。
【
図4】本発明の内嵌式の柔軟性ヒンジの平面図である。
【
図5】本発明を用いて設計された反転多安定柔軟機構の平面構造を示す図である。
【
図6】上記反転多安定柔軟機構の4つの定常状態を示す図である。
【
図7】本発明の等価設計を採用する柔軟性折り畳みdelta機構の平面図である。
【
図8】上記柔軟性折り畳みdelta機構の展開動作を示す図その1である。
【
図9】上記柔軟性折り畳みdelta機構の展開動作を示す図その2である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて更に説明する。
【0018】
図1、
図2に示すように、本実施例に係る平面複合構造で空間的に大きなストロークを有する柔軟性ヒンジは、連結されている矩形状平面単位1と叉状平面単位2とを含む。面外ねじり機能を実現するための前記矩形状平面単位1は、2本の可撓性の長直桁と2本の可撓性の短直桁102で囲まれた矩形構造であり、そのうち一方の長直桁の中央部が固定セグメント100であり、その両端がそれぞれ第1ねじりセグメント101であり、他方の長直桁の中心部が第2ねじりセグメント103であり、その両端がそれぞれ第3ねじりセグメント104である。面内回転機能を実現するための前記叉状平面単位2は、2本の可撓性を有し交差する直桁薄板201で構成された叉状構造である。前記叉状構造の外側と第2ねじりセクション103とは、叉状構造と矩形状構造とを連結してトルクを伝達するための、剛性が高く構造が安定する三角形構造を、外部結合の連結によって構成する。本発明の主な特徴は、2自由度の回転関節を等価的に実現でき、叉状平面単位2の曲げにより面内の広範囲の回動を実現することができるとともに、矩形状平面単位1のねじりにより面外の広範囲の回動を実現することもできる。面内の広範囲の回動とは、本発明の構造の初期状態が存在する平面上での広範囲の回転運動を指す。面外の広範囲の回動とは、本発明の構造が存在する初期平面外でかつ等価回動軸が平面法線ベクトルに対し垂直である広範囲の回動運動を指す。
【0019】
外部結合式の柔軟性ヒンジは、変形過程全体において三角形構造の面内の曲げ変形が大きく、面外のねじり変形が小さく、矩形状平面単位1がY軸002及び叉状平面単位2がZ軸003回りにのみ回動変形可能である。この両変形により、本発明は、非連結空間の大きな変形可能性を有し、その主な変形部分は、矩形状平面単位1全体がY軸002回りにのみ回動可能となることを主たる機能とする長直桁の第1ねじりセグメント101である。従って、矩形状平面単位1のY軸002に沿った回動の柔軟性は、矩形状平面単位1のX軸001及びZ軸003に沿った回動の柔軟性よりも著しく大きい。叉状平面単位2が主にZ軸003に沿って回動するため、叉状平面単位2のZ軸003に沿った回動の柔軟性は、叉状平面単位2のX軸001及びY軸002に沿った回動の柔軟性よりも著しく大きい。
【0020】
上記の性能を達成するためには、幾何学的寸法関係を次のように制約する必要がある。
1)矩形状平面単位1は、前記長直桁と短直桁102のアスペクト比が大きい狭幅矩形構造とすることにより、長直桁のねじり剛性が低く、矩形状平面単位1の面外の広範囲な曲げ変形が可能である。ここで、第1ねじりセグメント101の長さは、短直桁102の長さよりも大きく、第1ねじりセグメント101の幅は、短直桁102の幅よりも小さく、かつ第1ねじりセグメント101の幅がヒンジ全体の厚さよりも小さい。加工の複雑度を考慮し、第1ねじりセグメント101の幅と、ヒンジ全体の厚さとの比は、0.1~0.35である。
2)前記2本の直桁薄板201で構成された叉状構造の長直桁への角度204が30~90度であり、直桁薄板201の幅が長直桁の幅に近く、ヒンジ全体の厚さとの比が0.31以下とする。加工の難度を考慮し、その数値の比は、0.1~0.25である。それにより、矩形状平面単位1のねじり柔軟性が叉状平面単位2の回転柔軟性に相当する。前記直桁薄板201の長さは、それぞれ固定セグメント100の長さ及び第2ねじれセグメント103の長さに等しく、その変形長さは、固定セグメント100の長さの1.414倍以下である。
【0021】
矩形状平面単位1は、直列に接続することによって柔軟性を増大させることができることを考慮すると、矩形状平面単位1のねじり柔軟性と叉状平面単位2の曲げ柔軟性の比は、0.2~1であるべきである。最後に、各寸法パラメータを条件制約によって最適化することにより、上記要件を満たす外部結合式連結の上記柔軟性ヒンジを得ることができる。
【0022】
図3、
図4に示すように、本実施例に係る別の平面複合構造で空間的に大きなストロークを有する柔軟性ヒンジは、連結されている矩形状平面単位1と連結桁付きの叉状平面単位2とを含む。面外ねじり機能を実現するための前記矩形状平面単位1は、2本の可撓性の長直桁と2本の可撓性の短直桁102で囲まれた矩形構造であり、そのうち一方の長直桁の中央部が固定セグメント100であり、その両端がそれぞれ第1ねじりセグメント101であり、他方の長直桁の中心部が第2ねじりセグメント103であり、その両端がそれぞれ第3ねじりセグメント104である。面内回転機能を実現するための連結桁付きの叉状平面単位2は、2本の可撓性を有し交差する直桁薄板201で構成された叉状構造である。叉状構造の矩形状構造に近い側の両端部を連結する前記連結桁は、その中心部が第4ねじりセグメント202であり、その両側が第5ねじれセグメント203である。前記叉状構造の内側は、すなわち、第4ねじれセグメント202と第2ねじれセグメント103とが、内嵌式に連結されて三角形構造を構成し、且つ叉状構造の外側は、いかなる構造にも連結されない。叉状構造と矩形状構造を連結してトルクを伝達するための前記三角形構造は、直桁薄板201における部分の面内の曲げ変形が可能であり、矩形状構造に連結される部分の面外のねじり変形が可能である。本発明の主な特徴は、2自由度の回転関節を等価的に実現でき、叉状平面単位2の曲げにより面内の広範囲の回動を実現することができるとともに、矩形状平面単位1のねじりにより面外の広範囲の回動を実現することもできる。面内の広範囲の回転とは、本発明の構造の初期状態が存在する平面上での広範囲の回動運動を指す。面外の広範囲の回転とは、本発明の構造が存在する初期平面外でかつ等価回転軸が平面法線ベクトルに対し垂直である広範囲の回動運動を指す。
【0023】
内嵌式の柔軟性ヒンジは、変形の全体において主な変形部分が長直桁の第1ねじりセグメント101と、叉状平面単位2の内側の第5ねじりセグメント203であり、その主な機能は、矩形状平面単位1全体をY軸002の周りに回動させる能力のみを有することであり、矩形状平面単位1のY軸002に沿った回動の柔軟性は、X軸001及びZ軸003に沿った回動の柔軟性よりも大きい。前記叉状平面単位2は、主にZ軸003の周りに回動することを可能にする。従って、叉形平面単位2のZ軸003に沿った回動の柔軟性は、X軸001及びY軸002に沿った回動の柔軟性よりも大きい。
【0024】
上記の性能を達成するためには、幾何学的寸法関係を次のように制約する必要がある。
1)矩形状平面単位1は、前記長直桁と短直桁102のアスペクト比が大きい狭幅矩形構造とすることにより、長直桁のねじり剛性が低く、矩形状平面単位1の面外の広範囲な曲げ変形が可能である。ここで、第1ねじりセグメント101の長さは、短直桁102の長さよりも大きく、第1ねじりセグメント101の幅は、短直桁102の幅よりも小さく、かつ第1ねじりセグメント101の幅がヒンジ全体の厚さよりも小さい。加工の複雑度を考慮し、第1ねじりセグメント101の幅と、ヒンジ全体の厚さとの比は、0.1~0.35である。
2)前記2本の直桁薄板201で構成された叉状構造の長直桁への角度204が30~90度であり、直桁薄板201の幅が長直桁の幅に近く、ヒンジ全体の厚さとの比が0.31以下とする。加工の難度を考慮し、その数値の比は、0.1~0.25である。これにより、矩形状平面単位1のねじり柔軟性が叉状平面単位2の回転柔軟性に相当する。前記直桁薄板201の長さは、それぞれ固定セグメント100の長さ及び第2ねじれセグメント103の長さに等しく、その変形長さは、固定セグメント100の長さの1.414倍以下である。
【0025】
矩形状平面単位1は、直列に接続することによって柔軟性を増大させることができることを考慮すると、矩形状平面単位1のねじり柔軟性と叉状平面単位2の曲げ柔軟性の比は、0.2~1であるべきである。最後に、各寸法パラメータを条件制約によって最適化することにより、上記要件を満たす外部結合式連結の上記柔軟性ヒンジを得ることができる。
【0026】
上記の2つの外部結合式又は内嵌式の平面構造の柔軟性ヒンジは、それぞれ、上記の特徴要件を満たした後、パラメータの微調整又は寸法最適化によって、実際の動作条件の要求に応じて構造体全体の特定の柔軟性の値を調整することもでき、最終的に、前記柔軟性ヒンジの最終構造パラメータ値を得る。
【0027】
本発明の外部結合式又は内嵌式の柔軟性ヒンジ及び他の従来の平面ヒンジは、直列又は並列接続によって構成され、1つ又は複数の平面自由度を有して、平面外での大きな変形及び移動を可能にする。剛体置換法による考え方は、多安定反転機構、delta機構などの空間多自由度運動特性を有する大きなストロークの柔軟性折りたたみ機構と等価である。
【0028】
本発明は、2自由度ヒンジと等価であり、2方向の回動の柔軟性が同等である。従って、中国特許出願第201810223057.6号に記載の反転多安定柔軟機構に用いられる。
図5に示すように、501は、反転機構の変形単位群であり、すなわち本発明に係る平面複合構造で空間的に大きなストロークを有する柔軟性ヒンジである。理論的な解析及び実験により、ABSエンジニアリングプラスチックを用いて製造した本発明の柔軟性ヒンジは、全ての方向に22.5度回動可能であることが実証される。従って、16個の本発明の柔軟性ヒンジを直列に接続するだけで、中国特許出願第201810223057.6号に記載される反転多安定柔軟機構を設計することができる。この柔軟機構は、4つの定常状態を有する。その定常状態は、
図6に示される601、602、603、604のように、X軸001、Y軸002、及びZ軸003によって、全体構造体の変形の方向を図から区別することができる。
【0029】
図7は、本発明の柔軟性ヒンジを用いて等価的に設計された柔軟性折り畳みdelta機構を平面状態に折り畳んだ状態の平面図であり、701は、本発明の柔軟性ヒンジを用いて設計されたdelta機構の末端リンクのチャフヒンジ部分であり、この平面構造は、delta機構の加工工程を大幅に簡略化していることが分かる。
【0030】
図8、
図9は、本発明の柔軟性ヒンジに等価的に設計された柔軟性折り畳みdelta機構の2つの展開状態を示す。この機構が展開されると、空間X、YとZ方向の3方向の移動が可能となり、移動変位が大きく、可動台の慣性質量が小さく、位置決め精度が高い等の利点がある。
【0031】
以上説明した実施例は、本発明の好適な実施例に過ぎず、これによって本発明の実施範囲が制限されるものではなく、本発明の形状、原理に基づく変更は、本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【0032】
(付記)
(付記1)
連結されている矩形状平面単位と叉状平面単位とを含み、
面外ねじり機能を実現するための前記矩形状平面単位は、2本の可撓性の長直桁と2本の可撓性の短直桁で囲まれた矩形構造であり、そのうち一方の長直桁の中央部が固定セグメントであり、その両端がそれぞれ第1ねじりセグメントであり、他方の長直桁の中心部が第2ねじりセグメントであり、その両端がそれぞれ第3ねじりセグメントであり、
面内回転機能を実現するための前記叉状平面単位は、2本の可撓性を有し交差する直桁薄板で構成された叉状構造であり、
前記叉状構造の外側と第2ねじりセクションとは、叉状構造と矩形状構造とを連結してトルクを伝達するための、剛性が高く構造が安定する三角形構造を、外部結合の連結によって構成することを特徴とする平面複合構造で空間的に大きなストロークを有する柔軟性ヒンジ。
【0033】
(付記2)
前記矩形状平面単位は、前記長直桁と短直桁のアスペクト比が大きい狭幅矩形構造とすることにより、長直桁のねじり剛性が低く、矩形状平面単位の面外の広範囲な曲げ変形が可能であり、且つ、長直桁の幅と柔軟性ヒンジ全体の厚さとの比が0.35以下であり、
前記2本の直桁薄板で構成された叉状構造の長直桁への角度が30~90度であり、且つ、直桁薄板の幅が長直桁の幅に近く、柔軟性ヒンジ全体の厚さとの比が0.31以下とすることにより、矩形状平面単位のねじり柔軟性が叉状平面単位の回転柔軟性に相当することを特徴とする付記1に記載の平面複合構造で空間的に大きなストロークを有する柔軟性ヒンジ。
【0034】
(付記3)
前記第1ねじりセグメントの長さは、短直桁の長さよりも大きく、前記第1ねじりセグメントの幅は、短直桁の幅よりも小さく、第1ねじりセグメントの幅と、柔軟性ヒンジ全体の厚さとの比は、0.1~0.35であり、前記直桁薄板の長さは、それぞれ、固定セグメントの長さ及び第2ねじりセグメントの長さと等しく、その変形長さは、固定セグメントの長さの1.414倍を超えず、前記直桁薄板の幅と、柔軟性ヒンジ全体の厚さとの比は、0.1~0.25であることを特徴とする付記2に記載の平面複合構造で空間的に大きなストロークを有する柔軟性ヒンジ。
【0035】
(付記4)
前記矩形状平面単位のねじり柔軟性と、叉状平面単位の曲げ柔軟性との比が0.2~1であることを特徴とする付記1に記載の平面複合構造で空間的に大きなストロークを有する柔軟性ヒンジ。
【0036】
(付記5)
連結されている矩形状平面単位と連結桁付きの叉状平面単位とを含み、
面外ねじり機能を実現するための前記矩形状平面単位は、2本の可撓性の長直桁と2本の可撓性の短直桁で囲まれた矩形構造であり、そのうち一方の長直桁の中央部が固定セグメントであり、その両端がそれぞれ第1ねじりセグメントであり、他方の長直桁の中心部が第2ねじりセグメントであり、その両端がそれぞれ第3ねじりセグメントであり、
面内回転機能を実現するための連結桁付きの叉状平面単位は、2本の可撓性を有し交差する直桁薄板で構成された叉状構造であり、
叉状構造の矩形状構造に近い側の両端部を連結する前記連結桁は、その中心部が第4ねじりセグメントであり、その両側が第5ねじれセグメントであり、
前記叉状構造の内側は、すなわち、第4ねじれセグメントと第2ねじれセグメントとが、内嵌式に連結されて三角形構造を構成し、且つ叉状構造の外側は、いかなる構造にも連結されず、
叉状構造と矩形状構造を連結してトルクを伝達するための前記三角形構造は、直桁薄板における部分の面内の曲げ変形が可能であり、矩形状構造に連結される部分の面外のねじり変形が可能であることを特徴とする平面複合構造で空間的に大きなストロークを有する柔軟性ヒンジ。
【0037】
(付記6)
前記矩形状平面単位は、前記長直桁と短直桁のアスペクト比が大きい狭幅矩形構造とすることにより、長直桁のねじり剛性が低く、矩形状平面単位の面外の広範囲な曲げ変形が可能であり、且つ、長直桁の幅と柔軟性ヒンジ全体の厚さとの比が0.35以下であり、
前記2本の直桁薄板で構成された叉状構造の長直桁への角度が30~90度であり、且つ、直桁薄板の幅が長直桁の幅に近く、柔軟性ヒンジ全体の厚さとの比が0.31以下とすることにより、矩形状平面単位のねじり柔軟性が叉状平面単位の回転柔軟性に相当することを特徴とする付記5に記載の平面複合構造で空間的に大きなストロークを有する柔軟性ヒンジ。
【0038】
(付記7)
前記第1ねじりセグメントの長さは、短直桁の長さよりも大きく、前記第1ねじりセグメントの幅は、短直桁の幅よりも小さく、第1ねじりセグメントの幅と、柔軟性ヒンジ全体の厚さとの比は、0.1~0.35であり、前記直桁薄板の長さは、それぞれ、固定セグメントの長さ及び第2ねじりセグメントの長さと等しく、その変形長さは、固定セグメントの長さの1.414倍を超えず、前記直桁薄板の幅と、柔軟性ヒンジ全体の厚さとの比は、0.1~0.25であることを特徴とする付記6に記載の平面複合構造で空間的に大きなストロークを有する柔軟性ヒンジ。
【0039】
(付記8)
前記矩形状平面単位のねじり柔軟性と、叉状平面単位の曲げ柔軟性との比が0.2~1であることを特徴とする付記5に記載の平面複合構造で空間的に大きなストロークを有する柔軟性ヒンジ。