(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 11/02 20160101AFI20220314BHJP
H02K 5/22 20060101ALI20220314BHJP
H02K 11/30 20160101ALI20220314BHJP
【FI】
H02K11/02
H02K5/22
H02K11/30
(21)【出願番号】P 2017171874
(22)【出願日】2017-09-07
【審査請求日】2020-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137947
【氏名又は名称】石井 貴文
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 健
(72)【発明者】
【氏名】木村 勇介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智
(72)【発明者】
【氏名】岡本 聖也
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 義明
【審査官】小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-050970(JP,U)
【文献】実開昭62-044660(JP,U)
【文献】特開2003-037956(JP,A)
【文献】特開2002-136056(JP,A)
【文献】特開2013-009570(JP,A)
【文献】特開2013-158172(JP,A)
【文献】国際公開第2018/043197(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/02
H02K 5/22
H02K 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ本体と、
前記モータ本体を覆うよう配置されたケース部と、
前記モータ本体に電気的に接続される基板と、
前記基板に形成された、前記モータ本体への給電用の正電極及び負電極と、
前記負電極に電気的に接続され、かつ、前記ケース部の外表面に電気的に接続されるグランド電極と、を備え
、
前記グランド電極は、前記基板の外縁よりも外側に延びるようにして前記基板に形成されていて、前記基板が前記モータ本体に設置されることにより前記ケース部の外表面に溶接により溶着されており、
前記グランド電極は、前記基板と前記モータ本体との間に配置される、
モータ。
【請求項2】
前記グランド電極はレーザ溶接により前記ケース部の外表面に溶着されている、
請求項
1に記載のモータ。
【請求項3】
前記グランド電極は、平板状である、
請求項1
または請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記グランド電極は前記ケース部に付勢力を与えながら弾性的に前記ケース部に接触する、
請求項
1~請求項3のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項5】
前記グランド電極は、前記基板の一方の主面に形成されており、
前記基板は、前記主面が前記モータ本体側となるように設置され
る、
請求項1~請求項
4のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項6】
前記基板に連結されたコネクタを備えた、
請求項1~請求項
5のいずれか1項に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、携帯電話、モバイル用機器、乗物(例えば自動車)などに搭載されるモータに関する。
【背景技術】
【0002】
モータにおいて、金属ケースにアースをとることは従来よりなされている。例えば、特許文献1には、モータの金属カバーの内側に接触するようにアース用の電極が設置されているものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、モータの小型化が望まれていることから、アース用のグランド電極についてもより小型化を図れるような配置が望まれている。また、モータの製造コストの低減も望まれている。そこで、アース用のグランド電極についてもより容易に設置できる構造であって、製造コストを抑制することも望まれている。このように、モータにおけるグランド電極は、よりスペースを取らない配置であって、容易に設置できるものが望まれているとの課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために次のような手段を採る。なお、以下の説明において、発明の理解を容易にするために図面中の符号等を括弧書きで付記するが、本発明の各構成要素はこれらの付記したものに限定されるものではなく、当業者が技術的に理解しうる範囲にまで広く解釈されるべきものである。
【0006】
本発明の一の手段は、
モータ本体(1)と、
前記モータ本体(1)を覆うよう配置されたケース部(11)と、
前記モータ本体(1)に電気的に接続される基板(2)と、
前記基板(2)に形成された、前記モータ本体(1)への給電用の正電極及び負電極(基板電極3a、3b)と、
前記負電極(基板電極3a)に電気的に接続され、かつ、前記ケース部(11)の外表面に電気的に接続されるグランド電極(4)と、を備えた、
モータ(100)である。
【0007】
上記構成のモータによれば、負電極及びケース部の外表面に電気的に接続されるグランド電極を備えていることから、電気ノイズを低減することができる。また、グランド電極は基板に設置されることから、スペースを取ることなく設置できるのでモータが大型化することを避けることができる。さらに、構成が容易であることから、製造コストを抑えることができる。
【0008】
上記モータにおいて、好ましくは、
前記グランド電極(4)は溶接により前記ケース部(11)の外表面に溶着されている。
【0009】
上記構成のモータによれば、グランド電極がケース部の外表面に溶接により溶着されることから、確実にアースをとることができる。また、グランド電極及びケース部の外表面が溶接により接続されるため、振動等が生じたとしてもこれらははずれにくく、電気的な不具合を防止することができる。
【0010】
上記モータにおいて、好ましくは、
前記グランド電極(4)はレーザ溶接により前記ケース部(11)の外表面に溶着されている。
【0011】
上記構成のモータによれば、レーザ溶接により、グランド電極及びケース部の外表面が溶着されることから、短時間で容易に溶着でき、グランド電極の面積が比較的小さくて済むことから、製造コストを抑えることができる。
【0012】
上記モータにおいて、好ましくは、
前記グランド電極(4)は、平板状である。
【0013】
上記構成のモータによれば、グランド電極が平板状であることから一定の面積があり、グランド電極をケース部の外表面に溶着しやすい。
【0014】
上記モータにおいて、好ましくは、
前記グランド電極(4)は、前記基板(2)に形成されていて、前記基板(2)が前記モータ本体(1)に設置されることにより前記ケース部(11)に接触する。
【0015】
上記構成のモータによれば、基板をモータ本体に設置することによりグランド電極がケース部に接触することから、基板をモータ本体に設置しただけで容易にアースをとることができる。したがって、グランド電極をケース部の外表面に溶着せずとも確実にアースできる。なお、溶着した場合は、振動等によりアースがはずれるとの不具合を確実に防止することができる。
【0016】
上記モータにおいて、好ましくは、
前記グランド電極(4)は前記ケース部(11)に付勢力を与えながら弾性的に前記ケース部(11)に接触する。
【0017】
上記構成のモータによれば、グランド電極がケース部に付勢力を与えながら弾性的にケース部に接触していることから、グランド電極がケース部から離間することがなく、確実にグランド電極とケース部とが接触している。したがって、確実にアースをとることができる。
【0018】
上記モータにおいて、好ましくは、
前記グランド電極(4)は、前記基板(2)の一方の主面に形成されており、
前記基板(2)は、前記主面が前記モータ本体(11)側となるように設置され、
前記グランド電極(4)が、前記基板(2)及び前記モータ本体(1)間に配置される。
【0019】
上記構成のモータによれば、グランド電極が、基板においてモータ本体側の主面に形成されるので、基板をモータ本体に設置することによりグランド電極がモータ本体のケース部に接触することになることから、容易にアースをとることができる。また、グランド電極は基板とモータ本体とにより挟まれる状態であることから、グランド電極がケース部から離れにくく、振動等によりアースがはずれるとの不具合を防止することができる。
【0020】
上記モータにおいて、好ましくは、
前記基板(2)に連結されたコネクタ(6)を備えている。
【0021】
上記構成のモータによれば、基板にはコネクタが連結されていることから、コネクタを介して、容易にモータ本体に給電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る実施形態について、以下の構成に従って図面を参照しながら具体的に説明する。ただし、以下で説明する実施形態はあくまで本発明の一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定的に解釈させるものではない。なお、各図面において、同一の構成要素には同一の符号を付しており、その説明を省略する場合がある。
1.実施形態
2.補足事項
【0024】
<1.実施形態>
本実施形態のモータは、モータ本体と、モータ本体の外側に配置されたケース部と、モータ本体に電気的に接続される基板(プリント基板、またはPCBとも呼ばれる)と、を備え、基板に形成されたグランド電極がモータ本体の負電極及びケース部に電気的に接続している構成となっている。以下、本実施形態のモータについて具体的に説明する。
【0025】
図1は、本実施形態のモータの斜視図である。
図2は、本実施形態のモータの側面図である。
図3は、本実施形態のモータの分解斜視図である。
【0026】
図1~
図3に示されるように、本実施形態のモータ100は、モータ本体1と、モータ本体1に電気的に接続された基板2と、を備える構成となっている。モータ本体1はDCモータであり、特に
図3に示されるように、モータ本体1の給電用の差込口12a、12bに、基板2に形成された基板電極3a、3bを挿入可能である。ここで、差込口12a及び基板電極3aは負極であり、差込口12b及び基板電極3bは正極である。また、モータ本体1の外側は金属ケーであるケース部11である。
【0027】
<基板2>
図4は、本実施形態のモータの拡大斜視図である。
図5は、本実施形態のモータの拡大側面図である。なお、
図4及び
図5は、特に、モータにおける基板部分の拡大図である。
図1、
図2、
図4、
図5に示されるように、基板電極3a、3bが差込口12a、12bに挿入されて、基板2はモータ本体1に電気的に接続されている。そして、基板2はコネクタ6とも接続されている。図示していない電源から供給された電力はコネクタ6を介して基板電極3a、3bに送られ、差込口12a、12bからモータ本体1に供給される。
【0028】
基板電極3a、3bは、基板2の主面に対して略垂直に基板2を貫通するように形成され、基板2の両主面から突出するように形成されている。図示はしていないが、コネクタ6と基板電極3a、3bとが電気的に接続されるように、基板2には配線が形成されている。また、基板2の主面のうちモータ本体1側の主面に、グランド電極4が形成されている。グランド電極4は負極である基板電極3aと電気的に接続され、基板2の外縁の外側に形成され、モータ本体1のケース部11の外表面に接触している。
【0029】
また、基板2には、電子部品5が設置されており、モータ本体1の駆動を制御するため、または、電気ノイズを軽減するため等の所定の目的に応じた電子回路が構成されている。電子部品5は、抵抗もしくはコンデンサ等の受動素子、またはトランジスタ等の能動素子またはこれら以外の素子のいずれであってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。また、2つの電子部品5が図示されているが、これら電子部品5の数は2つに限られるわけではなく、1つ又は複数であってもよい。また、図示はしていないが、基板2には、電子部品5を電気的に接続するための配線も形成されている。
【0030】
<グランド電極4>
上述したようにグランド電極4は基板2の主面のうちモータ本体1側の主面上に形成されていることから、グランド電極4は基板2及びモータ本体1間に配置され、これらにより挟まれるように配置されている。例えば、グランド電極4は基板2上の配線とはんだ付けにより電気的及び物理的に接続されている。また、上述したように、グランド電極4は基板2の外縁よりも外側まで伸びて形成されており、この部分がモータ本体1の外側の金属ケースであるケース部11の外表面により溶着されている。なお、より好ましくは、グランド電極4はレーザ溶接によりケース部11の外表面に溶着されている。
【0031】
また、
図3に示されているようにモータ本体1と基板2とは元は分離されており、モータ本体1の差込口12a、12bに基板2の基板電極3a、3bを挿入することにより、
図1に示されるようにモータ本体1と基板2とが接続されてモータ100が構成される。このように、差込口12a、12bに基板電極3a、3bを挿入してモータ本体1と基板2とを連結することにより、グランド電極4がケース部11の外表面に接触するように構成されている。特に、グランド電極4は平板状の板バネであり、モータ本体1と基板2とを連結した際にケース部11に付勢力を与えながら弾性的にケース部11の外表面に接触する。また、グランド電極4には凹部7が形成されている。なお、凹部7はグランド電極4を上方から見た場合(平面視した場合)には凹んでいるが、ケース部11側に突出するように形成されている。これにより、グランド電極4はより確実にケース部11に接触している。
【0032】
また、モータ本体1と基板2とを連結することによりグランド電極4がケース部11に接触するように構成されているが、さらにグランド電極4はケース部11に溶着する。これにより、モータ100を駆動することにより生じる振動等によってグランド電極4がケース部11から離れることを防止することができる。
【0033】
このように、本実施形態のモータ100では、モータ本体1と、モータ本体1を覆うよう配置されたケース部11と、モータ本体1に電気的に接続される基板2と、基板2に形成された、モータ本体1への給電用の基板電極3a(負極)及び基板電極3b(正極)と、基板電極3bに電気的に接続され、かつ、ケース部11の外表面に電気的に接続されるグランド電極4と、を備えた構成とすることができる。このように、負電極である基板電極3a及びケース部11の外表面に電気的に接続されるグランド電極4を備えていることから、電気ノイズを低減することができる。また、グランド電極4は基板2に設置されることから、スペースを取ることなく設置できるのでモータ100が大型化することがない。さらに、構成が容易であることから、製造コストを抑えることができる。
【0034】
また、本実施形態のモータ100では、グランド電極4は溶接によりケース部11の外表面に溶着される構成とすることができる。このように、グランド電極4がケース部11の外表面に溶接により溶着されることから、確実にアースをとることができる。また、グランド電極4及びケース部11の外表面が溶接により接続されるため、振動等が生じたとしてもこれらははずれにくく、電気的な不具合を防止することができる。
【0035】
また、本実施形態のモータ100では、グランド電極4はレーザ溶接によりケース部11の外表面に溶着される構成とすることができる。このように、レーザ溶接により、グランド電極4及びケース部11の外表面が溶着されることから、短時間で容易に溶着でき、グランド電極4の面積が比較的小さくて済むことから、製造コストを抑えることができる。
【0036】
また、本実施形態のモータ100では、グランド電極4は、平板状である構成とすることができる。このように、グランド電極4が平板状であることから一定の面積があり、グランド電極4はケース部11の外表面に溶着しやすい。
【0037】
また、本実施形態のモータ100では、グランド電極4は、基板2に形成されていて、基板2がモータ本体1に設置されることによりケース部11に接触する構成とすることができる。このように、基板2をモータ本体1に設置することによりグランド電極4がケース部11に接触することから、基板2をモータ本体1に設置しただけで容易にアースをとることができる。したがって、グランド電極4をケース部11の外表面に溶着せずとも確実にアースできる。なお、溶着した場合は、振動等によりアースがはずれるとの不具合を確実に防止することができる。
【0038】
また、本実施形態のモータ100では、グランド電極4はケース部11に付勢力を与えながら弾性的にケース部11に接触する構成とすることができる。このように、グランド電極4がケース部11に付勢力を与えながら弾性的にケース部11に接触していることから、グランド電極4がケース部11から離間することがなく、確実にグランド電極4とケース部11とが接触している。したがって、確実にアースをとることができる。
【0039】
また、本実施形態のモータ100では、グランド電極4は、基板2の一方の主面に形成されており、基板2は、主面がモータ本体1側となるように設置され、グランド電極4が、基板2及びモータ本体1間に配置される構成とすることができる。このように、グランド電極4が、基板2においてモータ本体1側の主面に形成されるので、基板2をモータ本体1に設置することによりグランド電極4がモータ本体1のケース部11に接触することになることから、容易にアースをとることができる。また、グランド電極4は基板2とモータ本体1とにより挟まれる状態であることから、グランド電極4がケース部11から離れにくく、振動等によりアースがはずれるとの不具合を防止することができる。
【0040】
また、本実施形態のモータ100では、基板2に連結されたコネクタ6を備えた構成とすることができる。これにより、コネクタ6を介して、容易にモータ本体1に給電することができる。
【0041】
<2.補足事項>
以上、本発明の実施形態についての具体的な説明を行った。上記説明は、あくまで一実施形態としての説明であって、本発明の範囲はこの一実施形態に留まらず、同様の技術思想に基づいて当業者が把握可能な範囲にまで広く解釈されるものである。
【0042】
上記実施形態では、一例としてDCモータを例に挙げて説明したが、アースを必要とするモータであればよく、ACモータ等に変更可能である。なお、アースが取れればよく、グランド電極4が負極に接続されることとしているが、正極に接続されることとしてもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、グランド電極4がケース部11の外表面に溶着されているが、グランド電極4及びケース部11が電気的に接続されていればよく、溶着に限定されているわけではない。例えば、溶着されずにグランド電極4がケース部11の外表面に単に接触しているだけでも十分である。しかし、溶着されていない場合は、モータ駆動時に生じる振動等によりグランド電極4がケース部11から離間する可能性もあることから、グランド電極4がケース部11の外表面に接触した状態を保てるようにすることが好ましい。例えば、はんだ付けにより、グランド電極4をケース部11に固着させてもよい。
【0044】
また、グランド電極4及びケース部11の材料は、それぞれ導体であればかまわないが、これらを溶接により溶着する場合は、溶接しやすい材料とすることが好ましい。例えば、ケース部11を亜鉛メッキ鋼板として、グランド電極4を真鍮とすることが好ましい。
【0045】
また、上記実施形態では、グランド電極4は平板状の板バネとしたが、グランド電極4がケース部11と電気的に接続されていればよく、グランド電極4の形状は限定されるわけではない。また、板バネに限定されるわけではない。さらに、凹部7が形成されていなくてもよい。また、上記実施形態では、グランド電極4は基板2の外縁の外側に形成されることとしたが、基板2の内側に形成されていてもよく、モータ本体1と基板2とを連結した際にグランド電極4がケース部11の外表面に接触する構成であればよい。
【0046】
また、上記実施形態では本発明で特徴的な部分のみについて説明したが、本発明のモータは、従来のモータが有する種々の構成をさらに備えている。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のモータは、例えば自動車等に搭載される振動モータに好適に利用される。
【符号の説明】
【0048】
1…モータ本体
2…基板
3a、3b…基板電極
4…グランド電極
5…電子部品
6…コネクタ
7…凹部
11…ケース部
12a、12b…差込口
100…モータ