(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】波エネルギー変換装置
(51)【国際特許分類】
F03B 13/24 20060101AFI20220314BHJP
【FI】
F03B13/24
(21)【出願番号】P 2015526830
(86)(22)【出願日】2013-08-07
(86)【国際出願番号】 AU2013000869
(87)【国際公開番号】W WO2014026219
(87)【国際公開日】2014-02-20
【審査請求日】2016-08-08
【審判番号】
【審判請求日】2019-12-17
(32)【優先日】2012-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】515042845
【氏名又は名称】ボムボラ ウェーブ パワー プロプライエタリー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BOMBORA WAVE POWER PTY LTD
【住所又は居所原語表記】11 Arlington Avenue, South Perth, Western Australia 6151 AU
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】ライアン グレン リー
(72)【発明者】
【氏名】ライアン ショーン ケイ
【合議体】
【審判長】柿崎 拓
【審判官】田合 弘幸
【審判官】長馬 望
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-521147(JP,A)
【文献】国際公開第2012/095669(WO,A1)
【文献】特開昭56-110573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/00-13/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水面より下に沈めて使用する波力エネルギー変換装置(10)であって、
少なくとも本体部(18)と、
少なくとも2つのセル(22)と、
各セル(22)の送りポート(34)と連結された送り導管(30)と、
前記各セル(22)の戻りポート(36)と連結された戻り導管(32)と、
前記各セル(22)への及び前記セルからの流れを制御するための前記セル(22)それぞれと連結されて流れの中に配置されている弁(68)と、
を備えた、波力エネルギー変換装置(10)において、
前記各セル(22)は、屈曲性を有する膜(16)を含み、
前記各セル(22)は、該セル(22)内の流体の容積の少なくとも一部を区画し、
前記膜(16)は、使用時に水中へ沈み込んだ波の前後うねり及び上下うねりにより生じた力で変形され、この変形した膜(16)が前記流体を圧縮させることによって流体の流れを引き起こし、これにより前記波のエネルギーが前記流体の流れのエネルギーに変換され、
前記少なくとも2つのセル(22)のそれぞれの前記屈曲性を有する前記膜(16)の一部分は、垂直面に対して傾斜し、前記波に対して曲線形になり
前記屈曲性を有する膜(16)は、前記各セル(22)の外部の波の圧力と前記各セル(22)の内部圧力との圧力差に応じて、前記本体部(18)に向けて形が変形することにより前記流体の容積を圧縮し、
前記波力エネルギー変換装置(10)を波が通過する際に、垂直方向から傾いている前記セル(22)のうち、少なくとも一つの前記屈曲性膜(16)の一部により、波の前後うねり及び上下うねりによって生じる圧力は、前記各セル(22)内の流体の圧力に変換され、
前記少なくとも2つのセル(22)は、前記送り導管(30)へ圧力を供給するように構成したものであって、
さらに、
前記波力エネルギー変換装置(10)の垂直方向の動きは、波がこの波力エネルギー変換装置を通過する際に、波力エネルギー変換装置自身の重量、或いはバラスト、或いは海底(12)へ係留されることで規制された構成を有する、
ことを特徴とする波力エネルギー変換装置。
【請求項2】
水面より下に沈めて使用する波力エネルギー変換装置(10)であって、
少なくとも本体部(18)と、
少なくとも2つのセル(22)と、
各セル(22)の送りポート(34)と連結された送り導管(30)と、
前記各セル(22)の戻りポート(36)と連結された戻り導管(32)と、
前記各セル(22)への及び前記セルからの流れを制御するための前記セル(22)それぞれと連結されて流れの中に配置されている弁(68)と、
を備えた、波力エネルギー変換装置(10)において、
前記各セル(22)は、屈曲性を有する膜(16)を含み、
前記各セル(22)は、該セル(22)内の流体の容積の少なくとも一部を区画し、
前記膜(16)は、使用時に水中へ沈み込んだ波の前後うねり及び上下うねりにより生じた力で変形され、この変形した膜(16)が前記流体を圧縮させることによって流体の流れを引き起こし、これにより前記波のエネルギーが前記流体の流れのエネルギーに変換され、
前記少なくとも2つのセル(22)のそれぞれの前記屈曲性を有する前記膜(16)の一部分は、垂直面に対して傾斜し、前記波に対して曲線形になり
前記屈曲性を有する膜(16)は、前記各セル(22)の外部の波の圧力と前記各セル(22)の内部圧力との圧力差に応じて、前記本体部(18)に向けて形が変形することにより前記流体の容積を圧縮し、
前記波力エネルギー変換装置(10)を波が通過する際に、垂直方向から傾いている前記セル(22)のうち、少なくとも一つの前記屈曲性膜(16)の一部により、波の前後うねり及び上下うねりによって生じる圧力は、前記各セル(22)内の流体の圧力に変換され、
前記少なくとも2つのセル(22)は、前記送り導管(30)へ圧力を供給するように構成したものであって、
さらに、
前記波力エネルギー変換装置(10)の垂直方向の動
きは、海底へ固定されている少なくとも2つのパイルのいずれか一方が、前記波力エネルギー変換装置(10)の前方で、ヒンジで取り付けられており、水中に埋没されている波力エネルギー変換装置の上を波が通過するときに、前記波力エネルギー変換装置の傾斜角度を変更させることができるように構成されている、
ことで規制される、
ことを特徴とする波力エネルギー変換装置。
【請求項3】
水面より下に沈めて使用する波力エネルギー変換装置(10)であって、
少なくとも本体部(18)と、
少なくとも2つのセル(22)と、
各セル(22)の送りポート(34)と連結された送り導管(30)と、
前記各セル(22)の戻りポート(36)と連結された戻り導管(32)と、
前記各セル(22)への及び前記セルからの流れを制御するための前記セル(22)それぞれと連結されて流れの中に配置されている弁(68)と、
を備えた、波力エネルギー変換装置(10)において、
前記各セル(22)は、屈曲性を有する膜(16)を含み、
前記各セル(22)は、該セル(22)内の流体の容積の少なくとも一部を区画し、
前記膜(16)は、使用時に水中へ沈み込んだ波の前後うねり及び上下うねりにより生じた力で変形され、この変形した膜(16)が前記流体を圧縮させることによって流体の流れを引き起こし、これにより前記波のエネルギーが前記流体の流れのエネルギーに変換され、
前記少なくとも2つのセル(22)のそれぞれの前記屈曲性を有する前記膜(16)の一部分は、垂直面に対して傾斜し、前記波に対して曲線形になり
前記屈曲性を有する膜(16)は、前記各セル(22)の外部の波の圧力と前記各セル(22)の内部圧力との圧力差に応じて、前記本体部(18)に向けて形が変形することにより前記流体の容積を圧縮し、
前記波力エネルギー変換装置(10)を波が通過する際に、垂直方向から傾いている前記セル(22)のうち、少なくとも一つの前記屈曲性膜(16)の一部により、波の前後うねり及び上下うねりによって生じる圧力は、前記各セル(22)内の流体の圧力に変換され、
前記少なくとも2つのセル(22)は、前記送り導管(30)へ圧力を供給するように構成したものであって、
さらに、
前記波力エネルギー変換装置(10)の垂直方向の動
きは、
バラストにより、海底に固定されている2つのパイル(52,52)の何れか一方に取り付けられたピボット(54)を中心に、前記波力エネルギー変換装置(10)
を上昇又は下降さ
せる制御を行うように構成されている、
ことで規制される、
ことを特徴とする波力エネルギー変換装置。
【請求項4】
水面よりも下に沈んだ状態で使用するための波力エネルギー変換装置(10)であって、
少なくとも1個の本体部(18)と、
少なくとも2つのセル(22)と、
各セル(22)の送りポート(34)と連結された送り導管(30)と、
前記各セル(22)の戻りポート(36)と連結された戻り導管(32)と、
前記各セル(22)への及び前記セルからの流れを制御するための前記セル(22)それぞれと連結されて流れの中に配置されている弁(68)と、
を備えた波力エネルギー変換装置において、
前記各セル(22)は、屈曲性膜(16)を有し、
前記各セル(22)は、少なくとも前記セル(22)内の各々において流体の容積の少なくとも一部を区画し、
前記屈曲性膜(16)は、波のエネルギーを流体の流れのエネルギーに変換させて使用する際に、潜っている波の前後うねり及び上下うねりによって引き起こされる力により前記流体を圧縮させることで、前記流体の流れを生じさせ、
少なくとも2つのセル(22)の各々の屈曲性の膜(16)の一部は、垂直から傾斜して、波の流れの方向に沿って形を曲線形にさせ、
前記屈曲性の膜(16)は、前記各セル外部の波の圧力と前記各セル(22)の内部圧力との圧力差に応じて前記本体部に向けて形が変形し、前記流体の容積を圧縮し、
水中に沈められている前記波力エネルギー変換装置(10)を波が通過する際に、垂直方向から傾斜している前記セル(22)のうち少なくとも一つの前記屈曲性の膜(16)の一部により、波の前後うねり及び上下うねりによって生じる圧力は、前記各セル(22)の流体圧に変換され、
前記少なくとも2つのセル(22)は、前記送り導管(30)へ圧力を供給するように構成したものであって、
前記少なくとも2つのセル(22)は、2つの脚(10a、10b)を有するV字型に配置され、
2つの脚(10a、10b)を持った前記V字構成の頂点は、大洋に向けた開いた向きで配置され、
前記2つの脚(10a、10b)は、V字構成の前記2つの脚(10a、10b)に沿って傾斜した状態で、波の流れを作るために岸に向けて配置されている、
ことを特徴とする波力エネルギー変換装置。
【請求項5】
水面よりも下に沈んだ状態で使用するための波力エネルギー変換装置(10)であって、
少なくとも1個の本体部(18)と、
少なくとも2つのセル(22)と、
各セル(22)の送りポート(34)と連結された送り導管(30)と、
前記各セル(22)の戻りポート(36)と連結された戻り導管(32)と、
前記各セル(22)への及び前記セルからの流れを制御するための前記セル(22)それぞれと連結されて流れの中に配置されている弁(68)と、
を備えた波力エネルギー変換装置において
前記各セル(22)は、屈曲性膜(16)を有し、
前記各セル(22)は、少なくとも前記セル(22)の各々において流体の容積の少なくとも一部を区画し、
前記屈曲性膜(16)は、波のエネルギーを流体の流れのエネルギーに変換させて使用する際に、水中に潜っている波の、前後のうねり及び上下のうねりによって引き起こされる力により、前記流体を圧縮させることで、前記流体の流れを生じさせ、
少なくとも2つのセル(22)の各々の屈曲性の膜(16)の一部は、垂直から傾斜して、波の流れの方向に沿って形を曲線に形成させ、
前記屈曲性膜(16)は、前記各セル(22)の外部の波の圧力と前記各セル(22)の内部の圧力との圧力差に対応し、前記本体部(18)に向けて形が変形し、前記流体の容積を圧縮させ、
水中に沈めてある前記波力エネルギー変換装置(10)を前記波が通過する際に、垂直に対して傾斜している少なくとも一つのセル(22)の前記屈曲性膜(16)の一部により、前記前後のうねり及び上下のうねりによって生じる圧力は、前記各セル(22)の流体圧に変換され、
前記少なくとも2つのセル(22)は圧力を前記送り導管(30)へ供給するように構成したものであって、
前記少なくとも2つのセル(22)は、2つの脚(10a、10b)を有するV字型の脚に配置されるとともに、
前記V字形状の2つの脚(10a、10b)の頂点は、浜に向かう向きに配置され、かつ、
前記2つの脚(10a、10b)は大洋に向かう向きに配置され、
前記波がV字形状の2つの脚(10a、10b)に沿って傾斜した状態に流れるようにした、
ことを特徴とする波力エネルギー変換装置。
【請求項6】
水面よりも下に沈んだ状態で使用するための波力エネルギー変換装置であって、
少なくとも1個の本体部(18)と、
少なくとも2つのセル(22)と、
各セル(22)の送りポート(34)と連結された送り導管(30)と、
前記各セル(22)の戻りポート(36)と連結された戻り導管(32)と、
前記各セル(22)への及び前記セルからの流れを制御するための前記セル(22)それぞれと連結されて流れの中に配置されている弁(68)と、
前記送り導管(30)及び前記戻り導管(32)に接続された双方向タービンと、
を備えた波力エネルギー変換装置において、
前記各セル(22)は、屈曲性膜(16)を有し、
前記各セル(22)は、少なくとも前記セル(22)の各々において流体の体積の少なくとも一部を区画し、
前記屈曲性膜(16)は、波のエネルギーを流体の流れのエネルギーに変換させて使用する際に、水中に潜っている波の、前後のうねり及び上下のうねりによって引き起こされる力により、前記流体を圧縮させることで、前記流体の流れを生じさせ、
少なくとも2つのセル(22)の各々の屈曲性の膜(16)の一部は、垂直から傾斜して、波の流れの方向に沿って形を曲線に形成させ、
前記屈曲性膜(16)は、前記各セル(22)の外部の波の圧力と前記各セル(22)の内部圧力との圧力差に応じて、前記本体部(18)に向けて形が変形し、前記流体の容積を圧縮させ、
水中に沈められている前記波力エネルギー変換装置(10)を前記波が通過する際に、垂直から傾斜している前記セル(22)のうち少なくとも一つの前記屈曲性の膜(16)の一部により、前記波の、前後のうねり及び上下のうねりによって生じている圧力は、前記各セル(22)内部の流体圧に変換され、
前記少なくとも2つのセル(22)は、前記少なくとも一方のセル(22)から、送り導管(30)を通り、前記双方向タービンへ圧力を供給するように構成されたものであって、
前記波力エネルギー変換装置(10)は、円環状配列を有する環状に構成され、
環状構成の中心部を通過する一直線状に切断させた断面の、互いに対峙する環状構成の左部分と右部分において、少なくとも一方側のセル(22)は、最初の波が直面する、環状構成の前記左部分と右部分とのうちいずれか一方部分の外側の外周面に配置されているとともに、少なくとも他方側のセル(22)は、前記波が2番目に直面する、前記環状構成の前記左部分と右部分とのうちいずれか他方部分の内側の外周面に配置されており、
前記波が前記環状構成の前記一方部分の外側の外周面を乗り越え、前記他方部分の内側の外周面において前記他方側のセル(22)に対面し、
前記一方部分における前記セル(22)に向けて進入する同一波により生成されるエネルギーは、前記一方部分での前記セル(22)、及び前記他方部分での前記セル(22)の双方から引き出される、
ことを特徴とする波力エネルギー変換装置。
【請求項7】
前記波力エネルギー変換装置(10)は、
直線部分と、曲線部分と、円形部分と、凹部と、凸部と、多重カーブと、真直ぐに傾斜、或いは楔状、のいずれかを、後面にさらに有し、
外部波の流れを制御するように構成されている、
請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の波力エネルギー変換装置
【請求項8】
前記屈曲性膜(16)は、
波が押し寄せて前記屈曲性膜(16)が完全に収縮し、セルの容積(22)が完全に無くなると、くびれや折り目を生じることなく、前記屈曲性膜(16)はセル面(20)上に平坦になるように構成されている、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の波力エネルギー変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は波エネルギー変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化、炭素排出及び伝統的な化石燃料の入手可能性又は利用可能性に対する関心の高まりに伴い、代替的再生可能エネルギー源はますます重要になってきている。
【0003】
電力エネルギーを発生する太陽光、風力、波力発電システムはよく知られている。十分な太陽光が取得できる場合は、太陽熱エネルギーシステムは有効に機能する。しかし一方、連続的なエネルギー出力が必要とされる場合は、日照時にエネルギーを貯蔵し、夜間に放出する必要がある。これは熱エネルギーが貯蔵されるときは液体化し、熱エネルギーが解放されるときは再度固体化する相変化塩を使用することで、多くの場合達成できる。しかし、日照時間中に十分な熱エネルギーが貯蔵できなければ、エネルギー出力が使い尽くされる危険性がある。
【0004】
風力エネルギーは、風力タービンから電力を発生させるために十分な空気の移動を必要とすることは明らかである。風力タービン技術が発展し、風力エネルギーによって、より高いコスト性が得られるようになってきているが、断続性の問題及び、必要な量の再生エネルギーを取得するための多数の風力タービンを設置する場所が必要になるといった問題が残る。風力タービンは、地域住民が必ずしも許容することができない、視覚的及び騒音の影響を地上に与える。より信頼性の高い卓越風から利益を得るため、かつ、背の高い風力タービンが存在することによる環境への影響を低減するために、最近では、風力発電所は海上に設置されてきている。
【0005】
海や大洋からエネルギーを取得することも、再生エネルギーの分野では、公知の概念である。波エネルギーの主な利点は、波からは、ほとんど常に少なくともいくらかのエネルギーを取得することができるという点にある。このため、波エネルギーは、太陽熱エネルギー又は風力エネルギーよりも潜在的に信頼性が高く、かつ、地域環境に与える視覚的影響及び、潜在的な騒音の影響がより低いという意味において、環境的な許容度がより高くなる。
【0006】
波エネルギーは比較的直接的に把握できる概念であるが、一方、波エネルギーは複合的なエネルギー媒体である。
【0007】
エネルギーは、水の流動性及び粘性に依存し、水の粒子を円形又は楕円形(水深に応じて)の振動動作(上下の「うねり」と前後の「うねり」)で動かし、海や大洋を通じて効果的に「揺動」して、エネルギーを1つの場所から別の場所へ移動させる。水は絶えず、垂直と水平両方に方向を変え、絶えず、本質的に、位置エネルギー(高さ)から運動(動作)エネルギーと、その間の組み合わせで変化する。
【0008】
海や大洋からの波はまた、規則的ではない。所定の位置と所定の時間では、平均的期間と平均的波高は存在するかもしれないが、その場合でも、波間及び各波内で変動する。
【0009】
これはすべて、波からエネルギーを取得しようとするいかなる波エネルギー変換装置(WEC)(ときに波エネルギー変換システム又はWECDと呼ばれる)もが、解決すべき重大な課題となる。これらの課題を効果的に解決するのは、変換装置は波と効率よく「結合」し(すなわち、波の動きに応答する、または波の動きを「追跡」する)、同時に、波からエネルギーを取得するためには十分に波に抵抗しなければならない。変換装置はまた、波力、特に暴風中の逆の力に耐えられるように強固でなければならず、エネルギー損失が少なく効率的であり、コスト性が高くなければならない。
【0010】
これまで数多くの異なる波エネルギー変換装置が発明されてきた。しかし、コスト性が高い変換装置であって、また波からエネルギーを取り出すために十分効率的で、また十分信頼性の高い変換装置の開発は、未だに把握しにくいことが判明している。
【0011】
波エネルギー変換装置の多くは、非常に大きくその構築と操作は「機械的」であるため、製造コスト、メンテナンスコスト及び/又は操作コストが高くなるばかりでなく、変換装置の容積と慣性が大きいことにより、波との結合を保持することが困難である。これにより、結合(帯域幅)が低くなり、実社会での遂行能力が低減する。
【0012】
いくつかの波エネルギー変換装置は波エネルギーを獲得し、伝達し、電力に変換するため、比較的複合的な方法を使用しており、しばしば、波(液体)エネルギーから機械的エネルギー、水圧エネルギー、回転機械的(タービン)エネルギーそして電力エネルギーへと連続したエネルギー変換を通じて進行する。変換の各段階には効率性に関するコスト及びシステム複合性に関するコストがかかり、エネルギー損失に至る。伝達の各段階には、特に液圧などの高圧で高速の条件下で濃度の高い流体(液体)と作用する場合に、摩擦的損失がある。
【0013】
いくつかの変換装置は、水中のエネルギーの一方向成分(すなわち、垂直成分又は水平成分)のみに着目し、垂直成分及び水平成分の両方を効果的に獲得しようとしたり、波のエネルギー中の流れの流体の性質を効果的に利用していない。
【0014】
他の波エネルギー変換装置は主として、解放室から出入りする大量の水を動かすことに依存する振動水柱(OWC)を使用する。その動きはタービン上で空気を前後にポンプ操作して、発電機を回転させる。これらの振動水柱変換装置は、多くの場合、水が方向転換して、非流線型縁の周りを流れることが必要である。これにより、システム中の摩擦とエネルギー損失が増大し、波との良好な結合を妨げる可能性のある過度のラグを導入する可能性がある。これらの変換装置はまた、変換装置の電力出力の割には、構築と設置又は固定のために大量の物質を必要とする。タービンもまた塩分を多量に含有した空気にさらされているため、耐腐食のコストと性能を維持するために羽根をきれいに保つことに関するメンテナンスコストが増大する。
【0015】
数多くの波エネルギー変換装置もまた、悪天候状況下では極めて強い力を受けることが明らかな、沖合又は大洋の表面上に配置されている。これにより、効果的な電力出力を得るためには、変換装置のコストが増大することになる。
【0016】
大きな可能性を示した波エネルギー変換装置の一分野は、「膜」電力変換装置、特に膜空気圧電力変換装置である。これらの変換装置は、一連の低コストかつ低慣性の膜又はダイアフラムを使用して、波と相互に作用し、エネルギーを効率的に第2の流体、通常は空気などの低慣性で低摩擦の流体に伝達し、第2の流体はエネルギーをタービンと発電機上に伝達する。これらの波エネルギー変換装置は、一般に、システム慣性(速応性)が低く、複合性が低減されるため、他の波エネルギー変換装置よりも波との結合性が良い。そして、上記した波エネルギー変換装置の他のタイプよりも広い範囲で波条件に対応でき、よりコスト性の高い発電が可能となる。
【0017】
先行特許文献には多様なエネルギー変換装置が記載されている。例えば、1960年代のSemoに付与された米国特許3,353,787は、第2(伝達)流体として水又はオイルを使用することを提案している。その目的は、当時の他のより複合的な変換装置と比較して、耐暴風性がより大きく、利用可能な波エネルギーの殆どを使用することができる頑丈な海中変換装置を提供することにある。Semoは、不圧縮流体(液体)を、逆止弁を通して、エネルギー獲得のため陸上に設置された流体モータに送り出すため、各々が屈曲性を有する上面を有する一連の細長い室を提示している。流体の流れは、同じ回路を通して流出水として陸上から海へ戻るが、小さなオリフィスを通じて室に流入する。
【0018】
1970年代半ばのLessterに付与された米国特許3,989,951は、伝達流体の容積と慣性を低減することによって変換装置の応答性を向上させるために、圧縮可能な流体(空気など)を伝達流体として使用する水中変換装置を論じている。Lessterはまた、操作の柔軟性を向上させるためにより短い屈曲性の壁に囲まれたセルを設け、波を各セル上に順番に変換装置の長さに沿って走らせた。インフロー回路とアウトフロー回路を分離し、逆止弁を通じて各セルから空気を取得し、空気の流れに「押し引き(プッシュ/プル)」挙動を提供する閉鎖ループ回路中で一以上のタービン発電機へ導いている。
【0019】
1970年代後期にFrenchに付与された米国特許4,164,383は、縦型(背骨)デザインと、変換装置の向きを波面に垂直に向けることを維持している。この変換装置は、逆止弁を有する閉鎖ループ回路と伝達流体として空気を使用したが、変換装置を長い「背骨」のような波の表面における、又は直下における浮遊型変換装置へと移し、隔室に区分けされた袋のような単一の屈曲性を有する包囲体を使用している。
【0020】
1980年代初期にFrenchに付与された米国特許4,375,151は、この後に、波の高さと、多数の閉鎖ループ回路と、タービン発電機を使用して、空気流の脈動を低減することによりエネルギー抽出効率を向上させ、変換装置の凌波性、特に、縦揺れ制御を向上させた制御システムを開示している。
【0021】
1980年代半ばにBellamyに付与された米国特許4,441,030は、同様の浮遊「背骨」デザインであるが、波エネルギーを獲得し、袋の摩耗を低減するために、「終端」モードにおいて、すなわち、波面に平行で、背骨の側面をはずして設けられた屈曲性の「枕状袋」を開示している。同特許は主として袋のデザインに着目するものであるが、本特許文献は、また、先行技術である閉鎖ループ回路に代えて、むしろセル毎の自己修正型タービンの使用を開示している。
【0022】
そして、1980年代半ばに発展した、後のBellamyに付与された米国特許4,675,536は、変換装置のサイズとコストを低減し、凌波性を向上させるために、円または環デザインへと発展し、波エネルギーを獲得するための袋ではなく一連の膜を使用するオプションを復帰させたが、今回はそれらの膜を垂直に配置している。
【0023】
その後、膜変換装置の開発は停滞するかにみえたが、さらに2008年に、Turnerに付与された米国特許2011-0185721及びBellamy等に付与された米国特許2011-0162357に明示された開発は、その原理を扱った。Turnerの文献は、膜のための「S」字形状の設置縁を有する円形変換装置と、膜のデザイン的特徴(サイズ、厚さ、剛性、補強等)に、主として着目している。Bellamy等もまた円形変換装置(又は「終端のない背骨」)にとどまったが、1つの変換装置に膜と振動水柱の組み合わせを導入している。波エネルギーの上下うねり(垂直)成分と前後うねり(水平)成分の両方に連動することによって、有効性及び変換装置の「帯域幅」(すなわち、波との結合)を増大させることを目的とする。Bellamy等は、また、LessterとFrenchの特徴でありかつある程度Semoの特徴である、逆止弁と単一方向の空気流(閉鎖ループ回路)についても開示している。
【0024】
Winsloeに付与された米国特許7,554,216 と、Rasmussenに付与された国際公開特許 2007/057013の両方が振動水柱(OWC)変換装置を開示している。振動水柱変換装置は、多数のセルを有し、逆止弁を使用して、空気を高圧マニホールドに送り、タービン発電機へ送り、低圧マニホールドを介して戻す閉鎖回路エアフローシステムを有する。どちらの変換装置も浮遊OWC変換装置であり、完全に逆の波状況に晒される。
【0025】
本発明は、上記した各種の公知のエネルギー変換装置と比較して、波をより効率的に利用することができる波エネルギー変換装置(WEC)を提供することを目的とする。
【0026】
前記した本発明に係る波エネルギー変換装置(WEC)を前提として、本発明は、また、より高い耐暴風性を有し、前記した従来の問題点を解決することができる海中波エネルギー変換装置を提供することを目的とする。
【0027】
さらに、本発明は、上記した各種の公知のエネルギー変換装置と比較して、動作効率が向上した波エネルギー変換装置を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【0028】
以上に鑑み、本発明の一側面は、本体部と、一定の容積を有する流体の少なくとも一部を区画する少なくとも1枚の屈曲性を有する膜とを具備する波エネルギー変換装置であって、前記少なくとも1枚の膜の大部分は垂直から傾斜して、波エネルギーが前記波エネルギー変換装置上を進行するための円滑流路を形成するとともに、流体を圧縮するために前記少なくとも1枚の膜を前記本体部に向けて変形し、前記少なくとも1枚の膜の傾きによって、波の位置エネルギーと運動エネルギーの前記流体内の圧力への変換を助長するようにしたことを特徴とする波エネルギー変換装置を提供することにある。
【0029】
本発明の他の側面は、本体部と、被圧縮流体の少なくとも1つのセル(cell)容積の少なくとも一部を形成する少なくとも1枚の屈曲性を有する膜とを具備する波エネルギー変換装置であって、前記少なくとも1枚の膜は、同膜の下部から上部に向けて傾斜し、前記波エネルギー変換装置に衝突する波を前記少なくとも膜上を流れるようにし、前記波の前後うねりと上下うねりから生じる力によって前記少なくとも1枚の膜を前記本体部に向けて変形して前記少なくとも1つの容積における前記流体を圧縮するようにしたことを特徴とする波エネルギー変換装置を提供することにある。
【0030】
本発明の波エネルギー変換装置は、波エネルギー変換装置の膜上を流れる波からのエネルギーを、波エネルギー変換装置中の流体の一つ以上の容積内の圧力(エネルギー)に変換して、その後、有益なエネルギーとして利用できるようにする。傾斜膜を有する波エネルギー変換装置は、効率よく波と結合する。
【0031】
フロー円滑部によって、波エネルギー変換装置上の波又は波エネルギーを案内することができる。
【0032】
好ましくは、波エネルギー変換装置を切断する垂直断面で、膜の断面の長さは、本体の表面又はセル又は容積を区画する面の断面の長さとほぼ等しい。このことにより、膜が完全に変形される又は本体又は面に押しつけられたとき、膜が本体表面または面に重なることができる。
【0033】
波エネルギー変換装置は、好ましくは各セルの上部後方部に又は同上部後方部の近傍に形成されている少なくとも1つのポートを有する。波圧が、膜に衝突するセル容積内の流体の圧力より高いときは、膜を面に向けて変形し、被圧縮流体は、各セルの上部後方部において又は同上部後方部の近傍に形成されている少なくとも1つのポートを通してセルから強制的に押し出される。
【0034】
本体は、屈曲性を有する各膜が対向する各面に向けて、変形する又は、外部の波によって変形するように、少なくとも1枚以上の屈曲性の面の一以上とそれぞれが対向する1つの面を有する。
【0035】
少なくとも1枚の屈曲性を有する膜は、本体に向けて、下前方部から上後方部に次第に変形する。
【0036】
本発明の他の側面は、本体部と、少なくとも1つのセルを有し、各前記セルは少なくとも部分的に屈曲性を有する膜及び対向する面によって規定され、屈曲性の各膜と面はセル内の被圧縮流体のための容積を提供し、屈曲性を有する膜は、波からの膜への外部の力によって面に向けて変形可能であり、これによって流体が少なくとも1つのポートを通してセルから強制的に押し出される波エネルギー変換装置(WEC)であって、各屈曲性の面に衝突するセル容積内の流体の圧力よりも高い波の圧力によって、膜が面に向けて変形する波エネルギー変換装置を提供することにある。
【0037】
本発明の他の側面は、本体部と、少なくとも1つのセルを有し、各前記セルは少なくとも部分的に屈曲性を有する膜及び対向する面によって規定される波エネルギー変換装置(WEC)であって、セルを通る垂直平面に関して、平面によって切断された膜の曲線の長さは、同平面によって切断された面の曲線の長さにほぼ等しい波エネルギー変換装置を提供する。
【0038】
本発明の他の側面は、以下の波エネルギー変換装置を提供することにある。即ち、波エネルギー変換装置は、本体部と屈曲性を有する膜とからなる少なくとも1つのセルを具備する。膜と本体部によって、セル内に被圧縮流体の容積を形成する。膜に衝突する波圧がセル内の圧力より高い場合は、屈曲性を有する膜は本体に向けて変形し、同変形によって少なくとも1つのポートを介して流体をセル外に強制的に流出させる。一方、膜に衝突する波圧がセル内の圧力より低い場合は、屈曲性を有する膜は本体から遠ざかる方向に変形し、同変形によって少なくとも1つのポートを介して流体をセル内に強制的に流入させる。本体部と膜とは、平滑な流線形状に形成されている。
【0039】
本明細書において、本発明との関連において用いられる用語“波エネルギー変換装置(WEC)”は、単一の波エネルギー変換装置、複数の波エネルギー変換装置、単一の波エネルギー変換装置と複数の波エネルギー変換装置との組み合わせ、他の構成要素を具備する波エネルギー変換システム(例えば、発電設備、タービン、ポンプ、淡水化システム及び制御弁)に適用されるそのような波エネルギー変換装置を含む。
【0040】
本発明の少なくとも1つの実施例では、使用に際して、1つの流体(典型的には水)の波に生じるエネルギー変動を他の流体(典型的には空気)の波に生じるエネルギー変動に変換し、次いで、タービンのような出力取出変換装置又は好ましくは電気を生成する発電機を挙動する波エネルギー変換装置を提供する。
【0041】
波エネルギー変換装置は、1つの又は複数の前記セルを具備してもよい。そのような複数のセルは相互に剛的に連結される、又は、複数セル波エネルギー変換装置からなる1つの単一のユニットを形成する。セルは直線状の列に配置され、単一の波エネルギー変換装置を形成する。そのような複数の列を使用して複数の波エネルギー変換装置を形成し、波エネルギー変換装置を二列以上有する複合変換装置を構成してもよい。複数の独立した波エネルギー変換装置を相互に連結して鋳造製の複数セル本体のような大型の複数セル波エネルギー変換装置を形成するに際して、隣接する波エネルギー変換装置の送り・戻り導管間に1以上のシール材を介設してもよい。
【0042】
膜は、単層材料又は、多層構造又は積層構造でもよく、補強された構造又は、補強を組み入れた構造でもよい。
【0043】
好ましくは、膜は非孔膜からなる。このような膜は、2つの流体(波の動きを搬送する外部流体とセル内の内部流体)を分離し、エネルギーを外部流体から内部流体に伝達する。この圧力伝達は、膜の一側の圧力が他側の圧力より高い場合に生じ、波からエネルギーを抽出し伝達する、これによって、本発明は、非常にコスト効果が高く、慣性が低く、応答性のよい方法を提供することができる。
【0044】
変換装置は、それぞれ膜を有する、複数の隣接するセルを具備するものとしてもよい。
【0045】
変換装置は、波の“揺動”動作に感応するように配置されかつ構成されており、波が変換装置上を通過する際に、波のエネルギーの垂直(上下うねり)成分と水平(前後うねり)成分の両方からエネルギーを進行的に抽出する。
【0046】
変換装置は、自重によって係留されてもよく、又は、他の方法によって海底に取り付けられてもよい。例えば、変換装置は、コンクリートによって海底に設置してもよく、又は、海底に取り付けた、隆起した支持台、プラットフォーム又は基礎に取り付けてもよく、又は、地質織布や充填(例えば、砂充填)内側空所を用いて自重で設置することができる。設置場所における主な気候や設置条件に合わせて変換装置の動作を調整するため、海底から隆起させることができる。例えば、海底に非常に凹凸があり又は岩が多い場合、大量の岩を浚渫することなく海底から好ましくは隆起させてもよい。また、海の環境が破壊されやすい場合には、変換装置を海底から隆起させることによって、海の環境や、植物相や動物相への障害を防止することができ、さらに、変換装置の下方に、安全な避難環境を積極的に形成することができる。
【0047】
本発明の波力エネルギー変換装置は、好ましくは、平均静水表面より下方、好ましくは、水中で水深2.5m~15mに位置させる。
【0048】
本発明の波エネルギー変換装置は、好ましくは外浜型水中空圧式緩和型波エネルギー変換装置であるが、沖合水中又は半水中深水型の適用又は防波堤への適合も可能である。
【0049】
本発明の少なくとも1つの実施例によれば、各セルは、波からエネルギーを抽出しながら、波の動きを考慮してかつ波エネルギーが変換装置と円滑に相互作用すると共に変換装置上を揺動することができるように構成されている。変換装置は、翼のように流線型の前部を有し、波が変換装置に近づいたり、変換装置上を通過する際、同前部は衝突する波と相互作用し、好ましくは波を遅くし、前後うねり動作(即ち、変換装置への流れ)と上下うねり動作(即ち、変換装置上の流れ)の一部を伝達し、膜への圧力を増大する。膜への圧力は、波が変換装置に近づく際に、波の動きを生じる動圧力波面によって生じる。動圧は、波中における運動エネルギーと位置エネルギーによって生じる圧力の組み合わせとして理解できる。このように、膜を水中に設置することによって常時ある程度の圧力が発生し、この圧力は、波中における運動エネルギーと位置エネルギーによって動的になる、即ち、変化する。
【0050】
前記波エネルギー変換装置の後部は、曲線状または丸みを有する形状の部分(曲線上または丸みを有する後部面または上部コーベル部)を有してもよい。この形状によって、変換装置上の水の戻り流を制御しやすくなり、戻り流における上下うねり効果と前後うねり効果を強めることができ、波の底部での揺動において水粒子が戻る際、膜上により高速かつより低圧を生じることができる。これによって、同変換装置上を前後に水が通過する際、変換装置は円滑にプッシュプル(押し引き)動作を行うことができ、乱れ、波の動きにおける損失や摩擦を低減し、かつ、装置に作用する不要な力を最小化しながら、波からエネルギーを抽出することができる。
【0051】
その結果、本発明の波エネルギー変換装置は、水の流れを円滑に且つ流線形状にして(翼のように)挙動し、円滑に波と相互作用し波の動きを波エネルギー変換装置上で案内する。その際、波が最初に膜に衝突する。その後、変換装置上を進行する際に前後うねりを上下うねりに変換して、エネルギーの抽出を最大にする。次に、波の底部が変換装置上を通過する際に、波の流れは、次の波の作用のために膜が復元するのを補助する。波の底部が進行して波エネルギー変換装置上を通過するので、頂部時における波によって生じる高い外圧と比較して低減された外圧が膜に付与されることになる。波の底部と関連付けられたこの低圧は、平均波圧より低く、すなわち、外圧がセル内の圧力よりも低いので、膜は次の波に対して再度膨張することになる。
【0052】
各セルの各膜は、波の作用に感応して流線形状に形成されている。膜は屈曲性を有するので、波から又は波への圧力に対して反応することができ、波の作用が波エネルギー変換装置に接近し、同波エネルギー変換装置上を移動し、かつ、同波エネルギー変換装置に対して又はその周りに作用することによって変形し、最大量のエネルギーを波から抽出して、セル内の流体に伝達する。その際、波の動作に対する不要な乱れ、損失又は摩擦を最小にすることができる。
【0053】
波の動作に対する不要な乱れ、損失または摩擦のレベルを最小化することによって、変換装置は、同変換装置に作用する不要な力を最小化することができ、かつ、特に悪い気象条件のもとで必要とされる構造的且つ基礎的な力を低減することができる。波エネルギー変換装置を水面下である水中に配置することによって、波エネルギー変換装置に対する波の瞬間的な力を低減でき波エネルギー変換装置の構造的及び基礎的力を低減することができる。この効果は劣悪な気象条件下で特に有益である。
【0054】
これらの技術的特徴を組み合わせることによって、本発明は、効率的で、慣性が低く、反応性が良好で且つコスト効果の高い波エネルギー変換装置を提供することができる。
【0055】
前述したように、各セルは、個々のユニットの部品でもよく、また上記した複数のセルを含む大型構造の一部をなす副部品でもよい。
【0056】
本発明の1以上の実施例において、波エネルギー変換装置は、V形状又は山形状に配列することもできる。好ましくは、V形状又は山形状の各肢(腕又は脚)は、一又は複数のセルを具備する。
【0057】
V形状又は山形状の頂点が、押し寄せる波の方向または面して、すなわち、開かれた海/大洋に向けて(大洋向きに)配置され、かつ、前記V形状又は山形状の肢(腕または脚)が前記頂点から離れて前記浜に向けて伸延し、前記波が最初に前記頂点に近づき、その後、V形状又は山形状、各腕/脚に沿って傾斜状に、例えば、90°より小さい角度で、流れることが好ましい。
【0058】
V形状又は山形状の配置を逆転させて、頂点が前記浜に向けて指向しかつ波から離れ、前記V形状の肢は前記頂点から離れ、大洋に向けて突出する(浜向き)ようにしてもよい。
【0059】
前記V形状又は山形状の内角は実質的に又は略90°でよいが、10°~180°の範囲内(180°では直線状の列を提供する)でもよい。角度は45°~120°の範囲内にあることがより好ましい。
【0060】
大洋(例えば海又は海洋)側の頂点は、より深刻な波事象を経験し易い場所により適している。即ち、波は頂点に最初に衝突し、その後、変換装置の腕又は脚に沿って下方に向けて剥離され、その後、過剰な波エネルギーは腕又は脚の端部から清浄水中に脱離する。
【0061】
浜側に配置した頂点の変形例として、過剰な波エネルギーを変換装置の中央(頂点の中央)に向けて集中させることもできる。この場合、浅い海においてより大きな変換効率を得ることができる。
【0062】
本発明の1以上の実施例は、前記曲面または前記孤は、開放側が浜に向かい(凸状の)又は同開放側が大洋に向かう(凹状の)ように配置された開放された曲面状又は弧状に形成されてもよい。
【0063】
これらの技術的特徴の組み合わせによって波のエネルギーを変換装置の脚に集中させ、下方に向けて転動させることができる。
【0064】
本発明の1以上の実施例は、単一の脊柱配置を採ることもできる。例えば、変換装置は複数のセルからなる長手方向列を具備し、各セルは相互に隣接して配置され、衝突する波を受ける。好ましくは、脊柱は、波の方向に対して所定の角度をなす軸を有する。好ましくは、10°~80°の値とすることが出来、さらに好ましくは、30°~60°の値とすることができる。
【0065】
本発明の1以上の実施例は、水中型応用(即ち、浮遊する又は大洋の海底に係留されているが、直接海底上に設置されない)として構成されてもよく、概して深海での位置に関連する全方向の波スペクトルを受けるために円形又は環状の形状とすることが好ましい。このように、波は、変換装置に時間の経過とともにあらゆる方向から変換装置に衝突する場所では、円形または環状の配置とすることが、平均的な波の作用を最大化する上で、変換装置を直線状に、従って、より方向性を持たせて配置した場合と比較して、平均的な波の作用を最大化するために有益と考えられる。そのような実施例は、海又は大洋において、他の構造物の周りに設けることができ、又は他の構造物、例えば、風力タービン、石油又はガス掘削リグ又はチャンネルマーカーの支持体として用いることができる。波エネルギー変換装置は、四辺形状、すなわち、2つの山型形状又は4つの直線状配列を相互に結合した四辺形状に形成することもできる。他の形状も本発明の範囲内に属する。例えば、変換装置は、3つの山型形状の配置または六つの直線状配列から成る六角形またはそれらの組み合わせからなるようにしてもよい。本発明の実施例は、複数の側面を有する波エネルギー変換装置を具備するようにしてもよい。このような多面型波エネルギー変換装置は、奇数または偶数の側面を有してもよい。全てのまたは大多数の側面が、1またはそれ以上の波エネルギー変換装置の配列またはセルを具備するようにしてもよい。例えば、波エネルギー変換装置は側面6、8、10、12を有し、そのうちの幾つかまたは全ての側面が、セルまたはセル列を具備するようにしてもよい。セルは、波エネルギー変換装置の1または両面に設けられる(即ち、卓越波と対面する波または卓越波から遠ざかる波)。
【0066】
本発明に係る波エネルギー変換装置の位置及び配置の選択は、設置位置及び波発生源の特徴(通常、卓越風、水深、平均水面レベルに対する海底角及び潮の状態)に関連付けられる。全ての形態において、波エネルギー変換装置は、波を、変換装置と円滑に相互作用させるように構成されている。
【0067】
膜は、変換装置の本体に取り付けることができる。また本体は、膨張していないときは、好ましくは、膜が着座する面を形成または有する。例えば、本体は、コンクリートやプラスチックからなる1以上の鋳込み部又は成形部からなり、又は鋼から製造することもできる。面は本体の曲面部からなり、好ましくは本体の一部として鋳造又は成形によって形成される。また、面は所定の外形を形成するために本体に取り付けられる一定の形状を有する剛性の、又は、半剛性のライナーからなるようにしてもよい。
【0068】
各膜の1以上の端は、特に、単一の又は複数のセル又は室からなる列配置において、半円形、円弧状、又はスプライン状に形成することができる。即ち、各膜の1以上の端は、傾斜面を有し、或る平面に対して内側又は外側となる面に形成することができる。その際、膜はドーム形状を有し、エラストメリックな性質(弾性的な性質)を利用して伸長したり、エラストメリックな歪み(応力)を低減して幾何学的な形状となることができる。
【0069】
膜は、変換装置の本体の上部及び下部に隣接した位置にて、本体に取り付けられる。セルが、外圧(変換装置が設置されている水中における圧力等)に打ち勝つに十分な被圧縮流体を収納しかつ膜を膨張する場合は、膜は外部流体(例えば、海水)に向けて外側に湾曲する。各セル膜の前部曲面又は“面”は、その外形又は断面において、好ましくは、全体的に流線形状をなす。流線形状は、例えば、凹形状、“懸垂線”形状又は略懸垂線形状、ドーム形状、逆懸垂形状、“S”形状または同様な形状である。膜に作用する張力及び重力の力に加えて、静水圧力が膜の形状を変化させる。従って、この膜は、完全に平滑な凹部ではない。
【0070】
そのような懸垂線を可視化した弦は、0°から90°の範囲内、好ましくは20°~60°の範囲内、そしてより好ましくは、30°+/-15°等、水平面に対して角度をもって傾斜してもよい(弦角)。
【0071】
本発明に係る波エネルギー変換装置を具備する防波堤設備は、より短い足長(足跡長)を有し、従って、より大きな弦角を有し、好ましくは弦長に対する懸垂線の比率を大きくすることができる。
【0072】
本発明の波エネルギー変換装置を深水の海底に設置する場合は、変換装置はより長い足長(より長い足跡長)を有し、これによって、弦角がより小さくなり、平坦となり、弦長に対する懸垂線の比率がより小さくなる。
【0073】
セル内の容積が外圧(例えば、水中下で受ける静水圧)に打ち勝つために十分に加圧されている場合は、膜は最大膨張状態に変形し、凸状の曲面(ドーム状の逆懸垂線、“S”又は同様な形状)を形成する。その際、曲面の弦は、セルの本体の“面”(面)となる水平面に対して同じ30°又は同様な角度で傾斜する。膜がセル面(面)の外形状又は本体構造に形成される平滑な基盤に追従する場合は、膜は、そのような形態をとり、上下うねりが生じた際に波の動きによって破損されることはなく、従って、セルは収縮し、膜は対応する面又は面に追随して押圧され保護されることになる。
【0074】
1以上のセルを、例えば、変換装置の各肢(腕/脚)(全体として一群のセル)如何に関わらず、各変換装置は向かってくる波に対してその弦角を変えることができるように枢支してもよく、これによって、波の力(波の高さ及びうねり等)及び方向によって、装置を最適化することができる。
【0075】
ある時点における内外流体圧及び波の動きの相対的関係に基づいて、波圧がまず膜の前方下部を押圧するにつれて、膜は伸長したS形状の中間外形を形成する。この中間外形はセル本体のセル膜の上部膜取り付け点と下部膜取り付け点間に存在する。
【0076】
前記膜の有効幅(横の長さ)は前記セル面又は壁の有効幅(横の長さ)と一致することが好ましい。これによって、面とその固定配置は、膜をセル面に沿わせることが出来、膜に不要な応力が生じるのを防止することができる。
【0077】
動作中において、一旦セルの容積が完全に無くなり膜が完全に収縮すると、応力やくびれや折り目を生じることなく、膜はセル面、壁又は基盤上に平坦に載置される。これによって、変換装置は、膜内に過大な応力を生じることなく、完全に収縮した状態で過大な波事象を乗り切ることができる。
【0078】
各セルからの空気等の流体は、以下のいずれかの動きをする。
i)セル毎に流体が1組の一方向弁(逆止弁)を通過し、すべてのセルからの流体を合流して(高圧)マニホールドに流入させ、流体を1以上の一方向タービン上に移送する(その結果、1以上の発電機が駆動される)。流体は、第2(低圧)マニホールドと2組目の逆止弁を介して、同一又は他のセルへ戻り流する。又は、
ii)空気は、双方向タービンを内部に有するダクトを通過し、共通貯留部(マニホールド)に入り、いったんセル内の圧力が貯留部の圧力より下方に降下すると、貯留部からの流体が再びセル内に充填される。
【0079】
空気をセルから逆止弁(又は双方向タービン)に連通させるための各セルにおける少なくとも1つのポートを位置決めすることによって、収縮ストロークにおけるセルの容積からの空気の排除を最大にし、かつ、セル膜がセルの対向面に密着して、流体(例えば、空気)がセルへ流入し膜を再膨張することを阻止する現象であるスティクション(静止摩擦)を生じることなく、セル膜を円滑に再膨張することができる。
【0080】
弁は本体の面の一部を形成する。例えば、本体部の面上には、本体部に挿入された又は設置された弁を有する。弁上に、面の一部として、格子又はカバーを設けてもよい。
【0081】
これは、各セルの少なくとも1つのポートを変換装置の本体部と一体的に位置させることにより達成することができる。少なくとも1つのポートは本体に鋳込み成形される。
【0082】
好ましくは、各セルの少なくとも1つのポートは、入口ポート及び出口ポートを含む。単一のポートは、1つのポートを介してセルからの出力空気流及びセルへの戻り流を制御する逆止弁と連通してもよい。
【0083】
好ましくは、送りポート又は送り逆止弁(高圧)及び戻りポート又は逆止弁(低圧)のうちの1つ又は両方が、セル面の最上限又は膜の上部制限縁の直下の盆部に近接して位置している。
【0084】
好ましくは、変換装置において、波の方向における各腕/脚の長手方向長さが、特定位置における主エネルギー波の平均波長と等しくしている。この配置は、脚が、好ましいV字形状又は山形状に起因して、波に対して角度を有していることを考慮したものである。この結果、好ましくは、典型的には、各脚の長さは40m~80mの範囲内となる。しかし、所定の位置における波の主な波長によって他の長さを設定することもできる。この構成によっては、セルからの空気流は「ソースシンク関係」モードで挙動することができる。即ち、1つのセルが波の頂部下(最大圧)にあって、空気を前記少なくとも1つのポートを通して前記セルからポンプ作用によって流出させ、一方、他のセルは波の底部下(又は最小圧)にあって、貯留部又は低圧マニホールドから少なくとも1つのポートを通して戻る空気を受けるように、変換装置は配置されている。
【0085】
変換装置は、好ましくは、水平線上にセルを配置することによって、セル間の空気圧を平均化することができる。
【0086】
好ましくは、各セルの平均圧は、制御システムによって、上昇したり、低下することができる。例えば、潮時またはその他の長期間による影響によって水深が変化するにつれて、及び又は、現在の海の状態の最適条件に基づいて、最適セル圧を維持する空気圧システムを設けてもよい。
【0087】
本発明の1以上の好ましい実施例によれば、1以上のタービン(そして、各タービンによって駆動される1以上の発電機)は、高圧マニホールドから送られ、低圧マニホールドへ排出されるセルからの空気流によって駆動するようにしてもよい。タービン及び発電機は、V字状又は山状に隣接して、又はV字状又は山状の頂点に設けてもよい。これにより、各腕/脚からの空気流の流れを合流することができる。あるいは、別々のタービン発電機の組み合わせを、各腕/脚の端部に向けて又は端部に設置してもよいし、脚の長さに沿っていかなる場所にも設置してもよいし、別の場所に設置してもよい。
【0088】
実際の又は予測された又は期待される波の高さ、形状、期間に関する情報に基づき、発電機の負荷(又は電力出力)又はタービンの性能を変えることができるので、タービン間の圧力差や流れを制御又は最適化することができ、その結果、タービン速度を、電力エネルギーの生産を最大にするために最適化することができる。
【0089】
本発明の実施例の好ましい流線型デザイン及び/又は懸垂線形状又は対応する膜の外形又はセル面を従来の揺動水柱変換装置に採用することで、従来の揺動水柱変換装置を膜変換装置に変換して、塩分を多量に含有する空気がタービン上を通過しないようにすることも可能である。
【0090】
変換装置は、発電装置を少なくとも1つのポンプと交換することによって、加圧した第3の流体(典型的には、貯蔵用の水又は、淡水化用の海水)を生産するために使用してもよい。
【0091】
本発明の各種の上記した実施例及び形状による波エネルギー変換装置は、本明細書中では、波エネルギー変換システムを含むものとしている。しかし、波エネルギー変換装置中に波エネルギー変換システムが含まれるか否かについての疑義を回避するため、本発明の他の側面は、本明細書中に記載されている本発明の1以上の実施例に係る1以上の波エネルギー変換装置を組み入れた波エネルギー変換装置を提供することにある。
【0092】
セルが収縮した際に接触するセル内の膜の後部面又は表面及び/又はセルの本体の対応する面又は表面は平滑でなくてもよい。表面は、再度セルに流体を充填する間にスティクションが生じるのを抑制するため、うねり又は凹凸を形成してもよく、かつ/又はエンボス模様又は雄型模様を形成してもよい。
【0093】
波エネルギー変換装置の後部は、凹形状、凸形状、複数の曲線からなる形状又は直線的に傾斜した形状(楔型形状など)を有する後部面であってよい。波エネルギー変換装置の後部は、卓越波と位置条件(波の深さや卓越風力等)に適した構成とすることができる。
【0094】
波エネルギー変換装置又は波エネルギー変換装置本体に、凹形状又は直線状の後部を形成することで、波エネルギー変換装置の後部における渦巻き流の発生を低減でき、これにより、後部の海底の浸食を低減することができる。後部に、選択的に又は追加的に、少なくとも1枚の膜に対して1以上のセルを設けることにより、例えば、陸、海岸、崖又は岬から、又は防波堤又は港の壁などの人工的な建造物から戻ってくる戻り波からエネルギーを抽出することができる。このように、波エネルギー変換装置は、セルに関して両面的に構成して、装置に対して押し寄せる波及び戻り波の双方から波エネルギーを抽出できるようにしてもよい。
【0095】
膜は、本体に、スプライン嵌合、ビード溶接又はクランプ装置によって取り付けることができる。スプライン嵌合、ビード溶接は、断面形状で、円形又は楕円形でもよい。例えば、膜の材料は、スプライン上に折り畳むようにするか、スプラインを挿入する縁や筒部を有してもよい。膜のスプライン結合縁は、その後、スプライン結合縁を、チャネル又は溝中に押入し、スプライン結合縁を、チャネル又は溝中にクランプ結合するためのファスナを取り付ける。あるいは、膜の外周の少なくとも一部の周辺を、クランプリングを用いてクランプすることによって、膜を本体に密着してもよい。あるいは、膜を支柱に密着し、その後、膜を本体に取り付けてもよい。この場合、膜と支柱とは、それぞれ独立した構成要素となる。
【0096】
膜の端部及び/又は結合部を、円弧状、半円の曲線とスプライン状に、要部である上下結合部と接触すること及び/又は接するようにすることによって、膜の上下側が鋭い角部又は結合点で、本体に結合するのを避けることができる。
【0097】
本発明の他の側面は、波エネルギー変換装置又は波エネルギー変換装置システムの少なくとも1つのセル内の流体圧を制御又は最適化する方法を提供することにある。この方法は、システムの各セル内の流体圧及び/又は低圧及び/又は高圧導管内及び/又はマニホールド内の流体圧を低減する工程を含む。
【0098】
好ましくは、流体圧を、少なくとも1つの基準圧力値に対して増減することができる。基準圧力値は、システムの各セル内及び/又は低圧及び/又は高圧導管内及び/又はマニホールド内で決定された流体圧の平均値を用いることができる。
【0099】
平均圧は、少なくとも一部は、特定の時間、1つのセル内又は多くのセルにわたる各種圧力を平均することによって(同時平均圧)、又は経時的な1以上のセルにわたる各種圧力を平均することによって(時間的平均圧)決定される。
【0100】
好ましくは、この方法は、セル内の圧力を制御する又は最適化する工程を含み、潮時またはその他の長期間による影響による水深の変化の関数としての最適セル圧を、主なまたは現在の海の状態の最適条件に基づいて、維持することが好ましい。従って、セル内の圧力は、セル上の有効水深の増加とともに、水から受ける増加した外圧と均衡し、水深が低減するにつれてセル内の圧力も低減し、水から受ける減少した圧力と均衡するようにしてもよい。このように、セル及び/又はシステムからの性能と出力は、必要な出力又はシステム上の要求に応じて最適化することができる。
【0101】
また、海の状況の悪化が実際に判断され又は予測される場合、セル内の流体圧を低減して膜の損傷を防止するようにしてもよい。必要であれば、膜が水圧によって平らに押圧されており、セル内部に圧力がかけられてセルが再び膨張するまで、膜が機能しないように、圧力をゼロまたは大気圧にまで低減することができる。
【0102】
本発明の実施例を、添付図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0103】
図1a~1kは、連続する工程における、本発明の実施例に係る
波エネルギー変換装置の波連続全体にわたる全充填工程セル容積の膜上の波の動きを示している。
【0104】
図1m~1wは、連続する工程における、本発明の実施例に係る
波エネルギー変換装置の波連続全体にわたる全充填工程セル容積の膜上の波の動きと、波流線の図示を示している。
【0105】
図1l及び1xは、膜が完全に収縮している本発明の実施例に係る
波エネルギー変換装置を示している。
【0106】
図2a~2kは、連続する工程における、本発明の実施例に係る
波エネルギー変換装置の波連続全体にわたる半充填工程セル容積の膜上の波の動きを示している。
【0107】
図2lは、膜は完全に収縮している本発明の実施例に係る
波エネルギー変換装置の膜を示している
【0108】
図3及び
図4は、本発明の実施例に係る
波エネルギー変換装置の他の配置を示している。
【0109】
図5は、単一曲率半径セル面を有する本発明の実施例に係る
波エネルギー変換装置の断面を示している。
【0110】
図6a~6dは、他の本発明の実施例に係る二重曲率半径セル面の各種配置を示している。
【0111】
図7a~7cは、本発明の他の実施例に係る三重曲率半径セル面の各種配置を示している。
【0112】
図8a~8dは、本発明の他の実施例に係る、押し寄せる波に関して異なる弦角度配列を有する
波エネルギー変換装置の他の配置を示している。
【0113】
図9a~9dは、本発明の実施例に係る他の係留配置を示している。
【0114】
図10a~10cは、本発明の実施例に係る
波エネルギー変換装置の他の形状の断面を示している。
【0115】
図11a~11dは、本発明の実施例に係る、少なくとも1つの弁又はポートのオプションを有する
波エネルギー変換装置の他の形状の断面を示している。
【0116】
図12a及び12bは、本発明の実施例に係る
波エネルギー変換装置の他の弁又はポートのオプション及び、本発明の実施例に係るセルに近接した閉鎖結合タービンを示している。
【0117】
図13a及び13bは、本発明の実施例に係るマルチセル
波エネルギー変換装置及び膜の位置を示している。
【0118】
図14a~14cは、本発明の実施例に係る、
波エネルギー変換装置の単一セル長手方向バンク形状を示している。
【0119】
図15a~15cは、本発明の実施例に係る一体的な屈曲性の区画壁を具備する
波エネルギー変換装置のマルチセル長手方向バンクの形状を示している。
【0120】
図16a~16cは、本発明の実施例に係るダイアフラムセル区画部を具備した
波エネルギー変換装置のマルチセル長手方向バンクの形状を示している。
【0121】
図17a~17cは、本発明の実施例に係る隣接する個別のセル間に設けられた固定の区画壁を具備する
波エネルギー変換装置(
図13a及び13bに示す
波エネルギー変換装置と同一)のマルチセル長手方向バンクの形を示している。
【0122】
図18は、本発明の実施例に係る弁配置を示す
波エネルギー変換装置の断面を示している。
【0123】
図19は、本発明の実施例に係る複合的
波エネルギー変換装置を形成するマルチセルの2つの直線列又はバンクから成るV字形状又は山形状の構造を示している。
【0124】
図20は、本発明の実施例に係る複合的
波エネルギー変換装置を形成するマルチセル
の2つの直線列又はバンクから成るV字形状又は山形状の斜視図である。
【0125】
図21~23は、本発明の実施例に係る、衝突する波に関するセル膜変位の連続を示している。
【0126】
図24~26は、本発明の実施例に係る外浜へ適用した
波エネルギー変換装置の直線列又はバンクから成る構造の各種配列を示している。
【0127】
図27~29は、
図24~26に示す各配列に対応した各種直線状又はバンクの形状を示している。
【0128】
図30及び31は、本発明の実施例に係る
波エネルギー変換装置の深海への適用例(適用例)を示しており、
図30s及び31sはそれぞれの断面を示している。
【0129】
図30a、30b、30c及び30dは本発明の実施例に係る
波エネルギー変換装置の他の深海への適用例を示している。
図30aは、浮遊型
波エネルギー変換装置に設置した風力タービンを示している。
図30bは、風力タービンマストが上方に向けて突出している、海底設置型
波エネルギー変換装置を示している。
図30c及び30dは、本発明の他の実施例に係る
波エネルギー変換装置と風力タービンの組み合わせを示している。
【0130】
図32~34は本発明の実施例に係る
波エネルギー変換装置の防波堤及び振動水柱(OWC)への適用例を示している。
【0131】
図35及び36は、
図32及び33の防波堤
波エネルギー変換装置の他の実施例を示している。
【0132】
図37は、本発明の実施例に係る
波エネルギー変換装置を組み込んだ防水堰型防波堤適用例を示している。
【0133】
図38~42は、本発明の実施例に係る
波エネルギー変換装置の他の形状を示している。
【0134】
図43~46は、本発明の実施例に係る、
波エネルギーを利用エネルギーに変換する1以上のタービンを通しての
波エネルギー変換装置の1以上のセルから二次流体の流れを制御するためのプロセス、配管及び器具類の各種配置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0135】
好適な実施例の説明
図1a~
図1kは海底12上に設置された
波エネルギー変換装置(WEC)10を示しており、同
波エネルギー変換装置10は、自重により海底に載置されている。連続して行われる複数の工程は、本発明の実施例に係る
波エネルギー変換装置の波連続全体にわたる
波エネルギー変換装置の屈曲性を有する膜16上の波14の挙動を示している。波は頂部14aと底部14bを有する。
波エネルギー変換装置は、本体18と、同本体と一体をなす面20とを具備する。面は、独立した面部材として、本体とは別部材によって形成することもできる。面部材と膜は、本体に取り付ける前にあらかじめ互いに取りけられていてもよい。それに代えて、膜と面は、その間に可変の容積セル22を区画するように、外波に対して耐水性を有して封止される。セルの容積は、
波エネルギー変換装置内の流体の加圧供給によって増加し、波形の底部14bにおける波の圧力に十分抵抗できるので、膜は膨張し、張力を受ける。波の頂部14aが
波エネルギー変換装置に近づき、
波エネルギー変換装置上を通過する際(
図1a~1f)、波内の上下うねりと前後うねりの圧力が増大し、膜は、面に向かって、通常は下部前方部から、圧縮され、セル容積は圧縮され、セル内の流体は上方に押し出され、セルの後方及び上方へ傾斜に沿って後方と上方に徐々に進行する。
【0136】
図1m~
図1wは、
図1a~
図1kに示す
波エネルギー変換装置の同じ挙動を示している。但し、
図1m~
図1wは、波の流れ線を含んでいる。これらの波の流れ線は一般的な流れと
波エネルギー変換装置10上の波の動きを示す。膜16は、波14の頂部14aが
波エネルギー変換装置10の真上になる前に変形を開始するように形成されている。これは、波頂部14aが
波エネルギー変換装置に近づくにつれて、圧力の先端が波に先立つことによる。
【0137】
本実施例のセルは、下部が波の力に最初に出会い、波圧が後方に進行し、これによってセル容積が下部から上部に向かって強制的に収縮するように、セルの下部がセルの上部の前方になるよう、後方に傾斜して形成されている。
【0138】
波内のエネルギーの流体の性質と膜の屈曲性の性質により、膜は均等に順序良く圧縮されないかもしれないが、セルの容積は、通常、下部から上部に圧縮される。面20は、通常、長さと幅が膜と同じであり、長さ、歪み、形状は通常一致する。しかし、膜が完全に膨張した状態にあるとき(
図1a)は、面20の長さ、歪み、形状は、膜の長さ、歪み、と反対になる。膜が完全に面まで圧縮されるときは、
図1fのように、膜は、面に対して平らにある。波が
波エネルギー変換装置上を進行し続けるにつれて(
図1g~
図1k参照)、圧力は膜上で低減し(即ち、波の頂部14aが
波エネルギー変換装置を越える)、戻り圧力が上部後方部から下がっていき、下部前方部へと膜を膨らませて次の波を迎える準備をする。
【0139】
図1lと
図1xは、面に対して完全に収縮した又は押し戻された膜を示している。これによって、セルに過度の圧力をかけたり、又は膜の損傷の原因となる、又は
波エネルギー変換装置を係留場所から移動させる可能性さえある荒れた海の状態や、潮の上下うねり又は大波が生じた際に、膜を安全に保持することができる。この特徴により、
波エネルギー変換装置の一部が故障した際に、故障した部分又は同部分に関連する部分がさらに損傷するのを防止するべく、
波エネルギー変換装置が波資源からエネルギーを受けないようにすることができる。また、この特徴により、メンテナンスを安全に行えるように、力エネルギー変換装置が波資源からエネルギーを受けないようにすることができる。
【0140】
図2a~2kは、本発明の実施例に係る
波エネルギー変換装置の波連続全体にわたる、半充填セル容積(c/w
図1a~1k及び
図1m~1w)の膜上の波の波動を示している。
【0141】
図3及び4は、一つの
波エネルギー変換装置10と、本発明の実施例に係るいくつかの他の設置及び構成を示している。
波エネルギー変換装置10は、本体18を有する。セル容積22は膜16とセル面20により形成される。
波エネルギー変換装置は概して楔形状又は流線形翼状を有する。断面では、
波エネルギー変換装置は、方向Wから衝突する波に対して、前方部24を後方部26より低くしている。
【0142】
図3では、
波エネルギー変換装置は、海底12の砂またはコンクリート28中に係留されている。
波エネルギー変換装置は、セル容積22と連通する各送り(出口)ポート34と戻り(入口)ポート36にそれぞれ接続された送り(出口)導管30と戻り導管32を具備する。
【0143】
波エネルギー変換装置は、セルに対して送り導管への流体の流入と、戻り導管からの流体の流出を制御する弁を具備してもよい。波エネルギー変換装置は、セルから送り導管への流体の流れと戻り導管からセルへの流体の戻りを単一のポートを用いて行うようにしてもよい。波エネルギー変換装置は、一対の一方向弁を具備してもよい。これに代えて、双方向の流体流を利用するために、波エネルギー変換装置は、双方向タービンを具備してもよい。この構成では、波エネルギー変換装置の後部面38と上方後部コーベル40によって、波エネルギー変換装置上の戻り波RWが戻る流れの制御を容易にすることができる。完全に膨張した膜16の曲面と面20の曲面は、完全に収縮した際に膜が面上に滑らかに載置されるように、共通の長さ42を有する。
【0144】
図4は、桟橋42上に設置される
波エネルギー変換装置10を示している。桟橋42は、海底を基準とした深さの測定において
波エネルギー変換装置を持ち上げることによって、
波エネルギー変換装置の位置を平均静水水位と同一又はそれに近い値にすることができる。桟橋を用いることによって、水深と一般的な波状況を考慮して、
波エネルギー変換装置から必要な仕様と性能基準に適合する水中の正確な深さに、
波エネルギー変換装置を容易に設置することができる。
【0145】
図5は、単一曲率半径セル面20を有する本発明の
波エネルギー変換装置10の断面を示している。弦42は、膜が完全に収縮する又は膜が面上に押し戻された場合に膜が面に対して平らに載置可能であるように、面上に膜16と面20に共通である。このように、部分16a、16b、20a、20bの一般的長さは同じである。
【0146】
図6a~6dは本発明の他の側面による二重の曲率半径セル面20の多様な配置を示している。セル面は第1曲面部44と第2曲面部46を有する。膜は第1曲面部と第2曲面部を組み合わせた長さに等しい部分長を有する。
【0147】
図7a~7cは本発明の他の態様による三重の曲率半径44、46、48セル面20の多様な配置を示している。
【0148】
図8a~8dは本発明の他の態様による押し寄せる波Wに対して90°、45°、30°、0°の異なる弦角度42をとるWECの他の配置を示している。他の角度配置も使用可能であり、その角度配置は、配備された
波エネルギー変換装置の型式、主な設置場所(方向、水深など)及び波状況に基づき選択することができる。
【0149】
図9a~9dは本発明の実施例に係る
波エネルギー変換装置10の他の係留配置を示している。
【0150】
図9aは、例えば、コンクリート、砂、地質織布製袋又は岩、又はこれらの組み合わせを使用した海底係留型
波エネルギー変換装置50である。
図9bは足場又はパイル52使用型の
波エネルギー変換装置である。
【0151】
図9cは、
波エネルギー変換装置が、
波エネルギー変換装置の前方に向けて足場又はパイルに枢支54されている、足場又はパイル設置型の
波エネルギー変換装置である。これにより、
波エネルギー変換装置は前方でヒンジ状態に取り付けられ、角度βを変更することによって卓越波の状況における変化に適合し、
波エネルギー変換装置を前傾させることができる。各種バラストを採用して、
波エネルギー変換装置を、枢軸54を中心として上昇・下降させる制御をしてもよい。バラストは、
波エネルギー変換装置を通して室、又は導管からポンプを使用して流入、排出される海水などの水でもよい。
【0152】
図9dに示す他の型の
波エネルギー変換装置はロープ58を用いた係留を行うものであり、ロープ58の一端を係留点60に取り付け、ロープ58の他端を係留点62に取り付けている。かかる構成によって、
波エネルギー変換装置をバラストを使用して水中で浮くようにすることができ、好ましくは、所望の深さで中立的に浮くようにすることができる。バラスト56の可変量を制御することによって、
波エネルギー変換装置をこのように浮かせることができる。
【0153】
図10a~10cは本発明の実施例に係る
波エネルギー変換装置の他の形態による断面を示している。
図10aは凸状曲面後部型の
波エネルギー変換装置、
図10bはスロープ状後部型の
波エネルギー変換装置、
図10cは凹状又はコーベル型の
波エネルギー変換装置、
図10dは凸状の
波エネルギー変換装置である。後部の異なる
波エネルギー変換装置は、異なる波及び設置位置の要求に対応できるように構成されている。これらの多様な後部型
波エネルギー変換装置は、戻り波の流れを緩和し、所定の適用及び設置位置において
波エネルギー変換装置の効率を最大限にすることができる。
【0154】
図11a~11dは、本発明の実施例に係る
波エネルギー変換装置の他の形態による断面を示し、少なくとも1つの弁オプションを含む。
【0155】
図11aは二重または双ポートまたはダクトを示している。
波エネルギー変換装置は、出口又は送り導管64及び入口又は戻り導管66を具備する。セル容積22は、セル容積と弁68に1以上のポートを介して導管と連通しており、及び/又は、セル容積22は、セル容積と弁68から1以上のポートを介して導管と連通している。
図11bに示される弁は、交互に配置された一方向弁70、72を示している。最上部弁70は流体をセル容積から送り導管に送り、下部弁72は、戻り導管からセル容積へ流体を戻すように設けられている。断面A-A及び断面B-Bを、それぞれ
図11c及び11dに示す。これらは、セルからの出口ポート74及びセル容積への入口ポート76を示している。
【0156】
図12a及び12bは、本発明の実施例に係る
波エネルギー変換装置の他の弁オプションを示している。双方向タービン80が単一ポート82に設けられている。
【0157】
図12bはセル容積からポートとタービンを見た図である。
【0158】
図13a及び13bは、本発明の実施例に係るマルチセル
波エネルギー変換装置と膜位置を示している。
波エネルギー変換装置セルのバンク又は列は単一のユニットとして具備されている。単一の本体18は、複数のセルを収容している。各セルは、単一体中に鋳造又は成形によって形成されているか、又は、個別のセル本体を形成した後に結合して単一体を形成してもよい。送り導管64及び戻り導管66は本体と一体的に設けることもでき、又、
波エネルギー変換装置の外部に、パイプの形態を有する個々の導管として設けることもできる。
【0159】
図13bは、
図13aの断面A-Aの一部を示しており、左側の膜は部分的に圧縮されていて、中央の膜は完全に膨張していて、右側の膜は完全に収縮している。
【0160】
図14a~14cは、本発明の実施例に係る
波エネルギー変換装置の単一セル長手方向バンクの形状を示している。図から明らかなように。単一のセルには区画壁が設けられていない。
【0161】
図15a~15cは、本発明の実施例に係る一体的な屈曲性の区画壁84を具備する
波エネルギー変換装置のマルチセル長手方向バンクの形状を示している。セル間の区画壁は、隣接したセルによって共有されている。即ち、隣接する一対のセルの間に一つのセル壁が設けられている。
【0162】
図16a~16cは、本発明の実施例に係るダイアフラムセル区画部を具備した
波エネルギー変換装置のマルチセル長手方向バンクの形状を示している。このように、各セルは、それ自体の壁と膜を有する個別のものである。
図17a~17cは、本発明の実施例に係る、自体の膜を有する、隣接する個別のセルの間の、固定の、好ましくは強固な区画壁を具備する
波エネルギー変換装置のマルチセル長手方向バンクの形を示している。
【0163】
図18は、本発明の実施例に係るポートと弁の配置を示す
波エネルギー変換装置の断面を示している。
波エネルギー変換装置10は、流体の送り流と戻り流のための一体導管64、66を具備する本体18を含む。セル容積22からの流れは出力ポート74を通り、弁68を通り、送り導管64に入る。戻り流は、戻り導管66から出て、弁68を介してセル容積22へと入る。弁は別個の出力弁と戻り一方向弁を含む。弁は、交換可能なカートリッジ部分として構成される。弁は、
波エネルギー変換装置10の後部における接触ポートカバーを取り外すことによって接触できることが好ましく、弁68の軸と同一線上に配置されていることが好ましい。弁68は、解放され、その後、後部及び上部に引き込まれる。交換弁は、その後、下向き及び前向きの動きで挿入され、位置にロックされ、アクセスポートカバーが再び取り付けられる。面及び又は膜は、本体に水密に、又は導管への又は導管からの漏れを最小限にして
波エネルギー変換装置の効率的な動作が確保されるだけの水密度を得られる程度に封止状態に取り付けられている。
【0164】
波エネルギー変換装置の外形を楔形状とすることによって、波が波エネルギー変換装置にランプ状に接近し、最小の抵抗とともに波エネルギー変換装置を乗り越えるのを促進し、一方、膜の圧縮によって前後うねりから上下うねりへの変換を最大にし、その結果エネルギー変換を最大にすることができる。
【0165】
図19は、それぞれ複数のセルから成る2つの直線列又はバンクから成るV字形状又は山形状の構造を示しており、このような構造によって本発明の実施例に係る複合
波エネルギー変換装置配列を形成している。
波エネルギー変換装置の2つの肢(腕又は脚)10a、10b間の角度Yは、そのような配列が設置される場所や波に適するように角度が付けられるように、所望の値に設定される。2つの肢間の角度は、動力を用いて又は手動で調整することによって変えることができる。2つの肢間の連結部90において、動力発生及び/又はポンプ装置及び/又は角度調整装置を設置することができる。
【0166】
図20は、本発明の実施例に係る複合
波エネルギー変換装置配列を形成する複数のセルから成る2つの直線列又はバンクから成るV字形状又は山形状の構造の斜視図である。
【0167】
図21~22は、本発明の実施例に係る衝突してくる波に対するセル膜の変位の連続を示している。各図の上部グラフAは波の高さと圧力を示している。各図の下部グラフBは各セルの膜の垂直変位を示している。各図は
波エネルギー変換装置の肢10aにわたる各連続における実際のセル膜変位のパターンを図示している。
【0168】
図24~26は、本発明の実施例に係る外浜型適用例の
波エネルギー変換装置の直線列又はバンクから成る構造の各種配列を示している。
【0169】
図24は、
波エネルギー変換装置の肢が浜に向かう外浜大洋向き頂点を示している。
図25は、
波エネルギー変換装置の肢が大洋に向かう外浜浜向き頂点を示している。
【0170】
図26は、浜近くの
波エネルギー変換装置の単一肢又は単一背骨型の配列を示している。
【0171】
図27~29は、
図24~26に示す各配列に対応した各種直線状及び非直線状配列又はバンクの形状を示している。
【0172】
図30及び31は、本発明の実施例に係る
波エネルギー変換装置10の深海型適用例を示している。
図30において、
波エネルギー変換装置10のセル22を円環状配列90とすることによって、あらゆる方向からの
波エネルギーを効率的に変換することが可能である。このように、一定の期間にわたる異なる波方向に対する期間の
波エネルギー変換を平均することができる。
図30のA-A断面(
図30sのsは断面を示す)は、セルの一般的配列の断面を示している。
【0173】
図31は、
波エネルギー変換装置の深海型バージョンの他の実施例を示しており、いくつかのセルは環の開口の内部にあり、他のセルは開口の外部にある。
図31のB-B断面(
図31sのsは断面を示す)は、セルの一般的配列の断面を示している。
【0174】
図30及び31の
波エネルギー変換装置構造は、最初に環の一側面に衝突した波からエネルギーを抽出して、また、環を通過して環の内面に衝突する波からもエネルギーを抽出する。このような深海型適用例は、波の表面上の、又は波の表面下に中立的に浮かせるようにしたロープ浮遊型適用例でもよいし、パイロン、沖合風力タービン塔、石油又はガス掘削リグ、又は他の同様の大洋又は深海装置に固定してもよい。
【0175】
図30a及び30bは本発明の実施例に係る
波エネルギー変換装置の他の深海型適用例を示している。
図30aは、浮遊型
波エネルギー変換装置に一体化した風力タービン114を示している。浮遊型
波エネルギー変換装置は
図30に示したものと同様であるが、風力タービン114のマスト112として中央(十字形の)支柱110が形成されている。風力タービンの支柱は、他の形状としたり、他の装置を用いることができる。例えば、中央の単一の円材、中実又は網目状のプラットフォーム又は枠組体を用いることができる。
波エネルギー変換装置は、海底に係留116されることによって、浮遊できるが漂流はしない。風力タービンによって発電された電力は
波エネルギー変換装置に関係するポンプや、制御システムや安全システムなどの電気設備に電力を供給するために使用することができる。
【0176】
図30bは、風力タービンマスト122が上方に向けて突出している、海底設置海中
波エネルギー変換装置120を提供する他のバージョンを示している。
波エネルギー変換装置は、海底126中に設けられた支柱124上に設置されている。
波エネルギー変換装置は、水深と海の状況の変化に対応するために海底に対して上下動してもよく、これによって、
波エネルギー変換装置を主な海/天候状況に対して最適化することができ、又は、荒れた海/天候状況の際には、海底まで下げることができる。十字形支柱110がマストを支えており、マスト自体は横支柱126によって補強可能である。
【0177】
図30c及び30dは、本発明の実施例に係る
波エネルギー変換装置の深海型適用例を示している。
波エネルギー変換装置10は、風力タービン114aのマスト112aに設置されている。特に、
図30dは、
波エネルギー変換装置10と風力タービン114aのマスト112aのE-E垂直断面を示している。マストは海底12に埋設されている。
波エネルギー変換装置はマストを中心として回転可能である。回転は、1以上のロープ192、194によって、
波エネルギー変換装置の各端部に接続されたウィンチ190によって制御することができる。単一のロープ(連続したロープ192+194)が、ウィンチ滑車190の周りを通過するようにしてもよく、又は別個のロープ192、194を設けて、
波エネルギー変換装置を回転するように、それぞれを効率的に長くしたり短くしたり制御するようにしてもよい。これによって、
波エネルギー変換が最大限になるように主な押し寄せる波に向かうように
波エネルギー変換装置を揺動させたり、波の
波エネルギー変換装置に対する影響を制御する、すなわち、エネルギー変換を制限するために
波エネルギー変換装置に角度をつけることができる。これは、強風状況において、振動数、頂部から底部への高さ、波からの力によって、波に直接向かうことが、完全に効率的である場合も低い可能性がある場合に、特に役に立つ。水深の変化及び/又はマストに対する波の高さの変化を許容するために、
波エネルギー変換装置はマストに対して上下に動いてもよい。トラックや、ガイドホイール、ローラー等の1以上のガイド198をマスト、
波エネルギー変換装置又はこれらの両方に取り付けることができる。このようなガイドによれば、
波エネルギー変換装置を、自在に上下動したり、又は、所望の位置又は深さに維持するように制御することができる。
【0178】
図32~34は本発明の実施例に係る
波エネルギー変換装置の防波堤適用例を示している。
波エネルギー変換装置10は、浜に近接設置されたセルの直線状列またはバンクとして構成されていて、水14中に伸延した桟橋96の縁を形成している。桟橋は、中実の又はほぼ中実の防波堤でよい。
【0179】
図33は防波堤と
波エネルギー変換装置10のC-C断面を示している。
【0180】
図34に示すように、厳しい状況に適応可能な
波エネルギー変換装置10を用いることもできる。
波エネルギー変換装置は、1以上の膜16に、1または複数のセル22を設けている。単一のポート98は、双方向タービン100と連絡しており、上方部単一の送り戻り導管又は室102の中に入っている。下方部室104は、荒れた海や潮の上下うねり状況で
波エネルギー変換装置が移動することを防ぐ目的で重量を追加するために水やコンクリートや割栗などのバラストで満たすことができる。送り導管と戻り導管は、対応する一方向弁をとりつけて別々に構成することができる。
【0181】
図38~40の例に示すように、
波エネルギー変換装置10は水の戻り流142を案内するために配置された後部壁の他の形状を有してよい。例えば、
図38は二重曲面又はS字状の後部130を示しているが、
図39は凹状後部132を示し、
図40は直線状(
波エネルギー変換装置10の大まかな本体形状に関しては楔又は三角形状)の後部134を示している。これらの後部の他の形状は、後部が凸状曲面である結果として、海底に近接した後部の基部の直近において渦流が起こる場合に採用できる。このような戻り142からの渦流140は、
図41に示すように、
波エネルギー変換装置の後部に近接した海底14の浸食の原因となる可能性がある。
【0182】
図42は、凸状後部136を有し、海底から距離dだけ持ち上げられている
波エネルギー変換装置の例を示しており、戻り流の一部を
波エネルギー変換装置の下を通過させることにより、そのような浸食する渦流を避けている。
【0183】
図43~46は、1以上のタービンを通じて二次流体を介して変換された
波エネルギーを案内するための回路のプロセス及び計装図(P&ID)の他の配置を示している。特に、
図43は、共有のマニホールド148、150及び単一の(共有の)タービン152を有するセルのダブルダイアフラムバンク144,146を示している。この配列は、閉鎖ループ二重空圧回路(修正流)及び発電機に連結された単一軸タービンを有するVバンク構造に使用可能である。
【0184】
図44は、セルのダブルダイアフラムバンク154、156であるが、二つのタービン162、164のひとつにそれぞれ交差流マニホールド158、160接続されたセルのダブルダイアフラムバンクを示している。これはまた、閉鎖ループ二重空圧回路(修正流)及び発電機に連結された二重軸タービンを有するセルのバンクのV字形状構造に関する。
【0185】
図45は、交差流マニホールド170、172及びダブルタービン174、176を有するセルのバンク166,168の単一のダイアフラムの
波エネルギー変換装置の配列を提供している。この単一のバンク配列は閉鎖ループからなる二重空圧回路交差流(修正流)及び発電機に連結された二重軸タービンを有する。
【0186】
図46は単一のマニホールド180及び双方向タービン182を有するセルの単一のダイアフラムバンク178を示している。これは解放ループダクティング(すべての構成に適用可能である)を提供する。修正タービン及び発電機は、ダイアフラムセルと共有の移送マニホールド間のポート中に設置されている。ダイアフラムセル毎の複数のタービンも可能である。
【0187】
波エネルギー変換装置セル及び/又はシステムの性能は、主な又は予測される海の状況に適合するため、または、所望のレベルの性能又は要求に見合わせるために制御されまたは最適化されるよう構成する。
【0188】
1以上のセル内又はセルを含むシステム内の流体圧は、必要に応じて増減可能である。例えば、システムの低圧又は高圧導管及び/又はマニホールド内の流体圧は、変更可能である。
【0189】
流体圧は、少なくとも1つの基準圧力値に応じて増減することが好ましい。流体圧は、システムのセル及び/又は導管及び/又はマニホールド内の1以上の圧力センサから読み取ることで測定可能である。このような圧力センサは、必要な圧力値を決定するための、圧力に応答する信号をプロセッサに提供することができ、その信号は、流体圧を制御又は最適化するファクターとして使用される。
【0190】
基準圧力値は、システムの各セル内及び/又は低圧及び/又は高圧導管内及び/又はマニホールド内で測定された流体圧の平均でもよい。
【0191】
平均圧は、少なくともある程度は、特定の時間1つのセル内又は、多くのセルにわたる各種圧力を平均することによって(同時平均圧)、又は経時的な1以上のセルにわたる各種圧力を平均することによって(時間的平均圧)決定される。
【0192】
この方法はセル内の圧力を制御する又は最適化する工程を含み、潮時またはその他の長期間による影響による水深の変化の関数としての最適セル圧を、好ましくは主なまたは現在の海の状態の最適条件に基づいて、維持することが好ましい。従って、セル内の圧力は、セル上の有効水深の増加とともに、水から受ける増加した外圧と均衡し、水深が低減するにつれてセル内の圧力も低減し、水から受ける減少した圧力と均衡するようにしてもよい。このように、セル及び/又はシステムからの性能と出力は、必要な出力又はシステム上の要求に応じて最適化してもよい。
【0193】
また、海の状況の悪化を実際に判断又は予測する際に、セル内の流体圧を低減して膜の損傷を防止するようにしてもよい。必要であれば、膜が水圧によって平らに押圧され、セル内部に圧力がかけられセルが再び膨張するまで膜が機能しないように、圧力をゼロまたは気圧にまで低減することが可能である。