(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20220314BHJP
【FI】
A61B5/055 350
A61B5/055 390
(21)【出願番号】P 2017119668
(22)【出願日】2017-06-19
【審査請求日】2020-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 治貴
(72)【発明者】
【氏名】副島 和幸
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0253120(US,A1)
【文献】特開2005-045790(JP,A)
【文献】特表2006-522519(JP,A)
【文献】特開2011-172750(JP,A)
【文献】特開2015-058009(JP,A)
【文献】特開2008-272481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFパルス信号を生成する生成部と、
前記RFパルス信号に基づいて、被検体が配置される撮像空間にRF磁場を印加する送信コイルと、
前記生成部と前記送信コイルとの間の少なくとも一部の区間で、複数の経路を介して前記RFパルス信号を並列に送信する送信経路と、
シールドルーム外に配置され、前記複数の経路を介して送信される前記RFパルス信号の位相が互いにずれた関係になる
ことによって前記複数の経路から放射されるRF放射ノイズが相殺されるように、前記RFパルス信号の位相の少なくとも一つを変更する第1の位相変更部と、
前記シールドルーム内に配置され、前記第1の位相変更部により変更された位相量に応じて、前記送信コイルに入力する前段で前記RFパルス信号の位相の少なくとも一つを変更する第2の位相変更部と
を備える、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記第1の位相変更部は、前記複数の経路を介して送信される前記RFパルス信号の位相が互いに逆相にずれた関係になるように、前記RFパルス信号の位相の少なくとも一つを変更する、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記第1の位相変更部は、ダイレクトデジタルシンセサイザを用いて、前記RFパルス信号の位相の少なくとも一つを変更する、
請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
第1のRFパルス信号を生成する第1の生成部と、第2のRFパルス信号を生成する第2の生成部とを備え、
前記送信経路は、前記複数の経路を介して、前記第1のRFパルス信号と前記第2のRFパルス信号とを並列に送信する、
請求項1~3のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
RFパルス信号を生成する生成部と、
前記RFパルス信号に基づいて、被検体が配置される撮像空間にRF磁場を印加する送信コイルと、
前記生成部と前記送信コイルとの間に設けられ、シールドルームの外における少なくとも一部の区間で、複数の経路を介して前記RFパルス信号を並列に送信する送信経路と、
前記複数の経路で送信されるRFパルス信号の位相を経路間でずらす位相変更部と、
前記送信コイルの前段に設けられ、前記複数の経路を介して送信されたRFパルス信号の位相を同相に合わせる移相部と
を備える、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
RFパルス信号を生成する生成部と、
前記RFパルス信号に基づいて、被検体が配置される撮像空間にRF磁場を印加する送信コイルと、
前記生成部と前記送信コイルとの間に設けられ、少なくとも一部の区間で、複数の経路を介して前記RFパルス信号を並列に送信する送信経路と、
前記複数の経路で送信されるRFパルス信号の位相を経路間で逆相にずらす位相変更部と、
前記送信コイルの前段に設けられ、前記複数の経路を介して送信されたRFパルス信号の位相を同相に合わせる移相部と
を備える、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記送信コイルの前段に設けられ、前記移相部によって位相が合わせられたRFパルス信号を合成する合成部をさらに備える、
請求項5又は6に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記生成部の後段に設けられ、前記RFパルス信号を前記複数の経路に分配する分配部をさらに備える、
請求項1~7のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置に関する技術として、EMC(Electromagnetic Compatibility)規格への適合や、受信系へのノイズ混入の低減を目的として、RFパルス信号の送信時に発生するRF放射ノイズを抑制する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-264101号公報
【文献】特開2013-005956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、RFパルス信号の送信時に送信経路で発生するRF放射ノイズを抑制することができる磁気共鳴イメージング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、生成部と、送信コイルと、送信経路と、位相変更部とを備える。生成部は、RFパルス信号を生成する。送信コイルは、前記RFパルス信号に基づいて、被検体が配置される撮像空間にRF磁場を印加する。送信経路は、前記生成部と前記送信コイルとの間に設けられ、シールドルームの外における少なくとも一部の区間で、複数の経路を介して前記RFパルス信号を並列に送信する。位相変更部は、前記複数の経路で送信されるRFパルス信号の位相を経路間でずらす。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るMRI装置によるRF放射ノイズの抑制を説明するための図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係るMRI装置における送信系の構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、第2の実施形態に係るMRI装置における送信系の構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、第3の実施形態に係るMRI装置における送信系の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成例を示す図である。例えば、
図1に示すように、本実施形態に係るMRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、送信コイル4、送信回路5、受信コイル6、受信回路7、架台8、寝台9、入力回路10、ディスプレイ11、記憶回路12、及び処理回路13~16を備える。
【0008】
静磁場磁石1は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面が楕円状となるものを含む)に形成されており、内側の空間に静磁場を発生させる。例えば、静磁場磁石1は、略円筒状に形成された冷却容器と、当該冷却容器内に充填された冷却材(例えば、液体ヘリウム等)に浸漬された超伝導磁石等の磁石とを有している。ここで、例えば、静磁場磁石1は、永久磁石を用いて静磁場を発生させるものであってもよい。また、例えば、静磁場磁石1は、略円筒状に形成されたものではなく、被検体Sが配置される撮像空間を挟んで対向するように1対の磁石を配置した、いわゆるオープン型の構成を有するものであってもよい。
【0009】
傾斜磁場コイル2は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面が楕円状となるものを含む)に形成されており、静磁場磁石1の内側に配置されている。傾斜磁場コイル2は、互いに直交するx軸、y軸及びz軸それぞれに沿った傾斜磁場を発生させる3つのコイルを備える。ここで、x軸、y軸及びz軸は、MRI装置100に固有の装置座標系を構成する。例えば、x軸の方向は、水平方向に設定され、y軸の方向は、鉛直方向に設定される。また、z軸の方向は、静磁場磁石1によって発生する静磁場の磁束の方向と同じに設定される。
【0010】
傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2が備える3つのコイルそれぞれに個別に電流を供給することで、x軸、y軸及びz軸それぞれに沿った傾斜磁場を傾斜磁場コイル2の内側の空間に発生させる。x軸、y軸及びz軸それぞれに沿った傾斜磁場を適宜に発生させることによって、リードアウト方向、位相エンコード方向、及びスライス方向それぞれに沿った傾斜磁場を発生させることができる。
【0011】
ここで、リードアウト方向、位相エンコード方向、及びスライス方向それぞれに沿った軸は、撮像の対象となるスライス領域又はボリューム領域を規定するための論理座標系を構成する。なお、以下では、リードアウト方向に沿った傾斜磁場をリードアウト傾斜磁場と呼び、位相エンコード方向に沿った傾斜磁場を位相エンコード傾斜磁場と呼び、スライス方向に沿った傾斜磁場をスライス傾斜磁場と呼ぶ。
【0012】
そして、各傾斜磁場は、静磁場磁石1によって発生する静磁場に重畳され、MR(Magnetic Resonance(磁気共鳴))信号に空間的な位置情報を付与するために用いられる。具体的には、リードアウト傾斜磁場は、リードアウト方向の位置に応じてMR信号の周波数を変化させることで、MR信号にリードアウト方向に沿った位置情報を付与する。また、位相エンコード傾斜磁場は、位相エンコード方向に沿ってMR信号の位相を変化させることで、MR信号に位相エンコード方向に沿った位置情報を付与する。また、スライス傾斜磁場は、撮像領域がスライス領域の場合には、スライス領域の方向、厚さ、枚数を決めるために用いられ、撮像領域がボリューム領域である場合には、スライス方向の位置に応じてMR信号の位相を変化させることで、MR信号にスライス方向に沿った位置情報を付与する。
【0013】
送信コイル4は、送信回路5から出力されるRF(Radio Frequency)パルス信号に基づいて、被検体Sが配置される撮像空間にRF磁場を印加するRFコイルである。具体的には、送信コイル4は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面が楕円状となるものを含む)に形成されており、傾斜磁場コイル2の内側に配置されている。そして、送信コイル4は、送信回路5から出力されるRFパルス信号に基づいて、当該送信コイル4の内側の空間に形成された撮像空間にRF磁場を印加する。
【0014】
送信回路5は、ラーモア周波数に対応するRFパルス信号を送信コイル4に出力する。
【0015】
受信コイル6は、被検体Sから発せられるMR信号を受信するRFコイルである。例えば、受信コイル6は、送信コイル4の内側に配置された被検体Sに装着され、送信コイル4によって印加されるRF磁場の影響で被検体Sから発せられるMR信号を受信する。そして、受信コイル6は、受信したMR信号を受信回路7へ出力する。例えば、受信コイル6には、撮像対象の部位ごとに専用のコイルが用いられる。ここで、専用のコイルとは、例えば、頭部用の受信コイル、頚部用の受信コイル、肩用の受信コイル、胸部用の受信コイル、腹部用の受信コイル、下肢用の受信コイル、脊椎用の受信コイル等である。
【0016】
受信回路7は、受信コイル6から出力されるMR信号に基づいてMR信号データを生成し、生成したMR信号データを処理回路14に出力する。
【0017】
なお、ここでは、送信コイル4がRF磁場を印加し、受信コイル6がMR信号を受信する場合の例を説明するが、各RFコイルの形態はこれに限られない。例えば、送信コイル4が、MR信号を受信する受信機能をさらに有してもよいし、受信コイル6が、RF磁場を印加する送信機能をさらに有していてもよい。送信コイル4が受信機能を有している場合は、受信回路7は、送信コイル4によって受信されたMR信号からもMR信号データを生成する。また、受信コイル6が送信機能を有する場合は、送信回路5は、受信コイル6にもRFパルス信号を出力する。
【0018】
架台8は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2及び送信コイル4を収容している。具体的には、架台8は、円筒状に形成された中空のボアBを有しており、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2及び送信コイル4がボアBを囲むように配置された状態で、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2及び送信コイル4それぞれを収容している。ここで、架台8におけるボアBの内側の空間が、被検体Sの撮像が行われる際に被検体Sが配置される撮像空間となる。
【0019】
寝台9は、被検体Sが載置される天板9aを備え、被検体Sの撮像が行われる際に、架台8におけるボアBの内側へ天板9aを挿入する。例えば、寝台9は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置されている。
【0020】
入力回路10は、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。具体的には、入力回路10は、処理回路16に接続されており、操作者から受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路16へ出力する。例えば、入力回路10は、トラックボールやスイッチボタン、マウス、キーボード、タッチパネル等によって実現される。
【0021】
ディスプレイ11は、各種情報及び各種画像を表示する。具体的には、ディスプレイ11は、処理回路16に接続されており、処理回路16から送られる各種情報及び各種画像のデータを表示用の電気信号に変換して出力する。例えば、ディスプレイ11は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。
【0022】
記憶回路12は、各種データを記憶する。具体的には、記憶回路12は、MR信号データや画像データを記憶する。例えば、記憶回路12は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子やハードディスク、光ディスク等によって実現される。
【0023】
処理回路13は、寝台制御機能13aを有する。例えば、処理回路13は、プロセッサによって実現される。寝台制御機能13aは、寝台9に接続され、制御用の電気信号を寝台9へ出力することで、寝台9の動作を制御する。例えば、寝台制御機能13aは、入力回路10を介して、天板9aを長手方向、上下方向又は左右方向へ移動させる指示を操作者から受け付け、受け付けた指示に従って天板9aを移動するように、寝台9が有する天板9aの駆動機構を動作させる。
【0024】
処理回路14は、実行機能14aを有する。例えば、処理回路14は、プロセッサによって実現される。実行機能14aは、処理回路16から出力されるシーケンス実行データに基づいて傾斜磁場電源3、送信回路5及び受信回路7を駆動することで、MR信号データのデータ収集を行う。
【0025】
ここで、シーケンス実行データは、MR信号データを収集するための手順を示すパルスシーケンスを定義した情報である。具体的には、シーケンス実行データは、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に電流を供給するタイミング及び供給される電流の強さ、送信回路5が送信コイル4に供給するRFパルス信号の強さや供給タイミング、受信回路7がMR信号を検出する検出タイミング等を定義した情報である。
【0026】
また、実行機能14aは、各種パルスシーケンスを実行した結果として、受信回路7からMR信号データを受信し、受信したMR信号データを記憶回路12に記憶させる。なお、実行機能14aによって受信されたMR信号データの集合は、前述したリードアウト傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場、及びスライス傾斜磁場によって付与された位置情報に応じて2次元又は3次元に配列されることで、k空間を構成するデータとして記憶回路12に記憶される。
【0027】
処理回路15は、画像生成機能15aを有する。例えば、処理回路15は、プロセッサによって実現される。画像生成機能15aは、記憶回路12に記憶されたMR信号データに基づいて画像を生成する。具体的には、画像生成機能15aは、実行機能14aによって記憶回路12に記憶されたMR信号データを読み出し、読み出したMR信号データに後処理すなわちフーリエ変換等の再構成処理を施すことで画像を生成する。また、画像生成機能15aは、生成した画像の画像データを記憶回路12に記憶させる。
【0028】
処理回路16は、主制御機能16aを有する。例えば、処理回路16は、プロセッサによって実現される。主制御機能16aは、MRI装置100が有する各構成要素を制御することで、MRI装置100の全体制御を行う。例えば、主制御機能16aは、入力回路10を介して操作者から撮像条件(パルスシーケンスに関する各種のパラメータの入力等)を受け付け、受け付けた撮像条件に基づいてシーケンス実行データを生成する。そして、主制御機能16aは、生成したシーケンス実行データを処理回路14に送信することで、各種のパルスシーケンスを実行する。また、例えば、主制御機能16aは、操作者から要求された画像の画像データを記憶回路12から読み出し、読み出した画像をディスプレイ11に出力する。
【0029】
ここで、例えば、上述した処理回路13~16が有する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路12に記憶される。各処理回路は、各プログラムを記憶回路12から読み出し、読み出した各プログラムを実行することで、各プログラムに対応する処理機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路13~16は、
図1に示した各処理機能を有することとなる。
【0030】
なお、
図1に示す例では、寝台制御機能13a、実行機能14a、画像生成機能15a及び主制御機能16aの各処理機能が、それぞれ単一の処理回路によって実現されることとしたが、実施形態はこれに限られない。これらの処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0031】
また、上述した実施形態において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。ここで、記憶回路12にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合には、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて一つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
【0032】
以上、本実施形態に係るMRI装置100の構成例について説明した。ここで、上述したMRI装置100の各構成要素は、シールドルーム200と機械室300とに分けて設置される。シールドルーム200は、室外で発生する電磁波ノイズから室内の空間を遮蔽するとともに、室内で発生する電磁波ノイズが室外に漏れるのを防ぐ。
【0033】
例えば、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、送信コイル4、受信コイル6、架台8、及び寝台9が、シールドルーム200に設置される。また、傾斜磁場電源3、送信回路5、受信回路7、入力回路10、ディスプレイ11、記憶回路12、及び処理回路13~16が、機械室300に設置される。
【0034】
ここで、MRI装置100は、EMC規格への適合や、受信系へのノイズ混入の低減を目的として、RFパルス信号の送信時に発生するRF放射ノイズを抑制するように構成される。例えば、RFパルス信号を送信する送信ケーブルにフェライトコアを取り付けたり、送信ケーブルや筐体のシールドを強化したりすることが行われる。
【0035】
しかしながら、このような構成では、RF放射ノイズの低減の効果が十分に得られないこともあり得る。特に、送信ケーブルからのRF放射ノイズが大きいと考えられる。このようなことから、本実施形態に係るMRI装置100は、RFパルス信号の送信時に送信経路で発生するRF放射ノイズを抑制することができるように構成されている。
【0036】
具体的には、本実施形態に係るMRI装置100は、生成部と、送信コイル4と、送信経路と、位相変更部とを備える。生成部は、RFパルス信号の波形を生成する。送信コイル4は、RFパルス信号に基づいて、被検体Sが配置される撮像空間にRF磁場を印加する。送信経路は、生成部と送信コイル4との間に設けられ、少なくとも一部の区間で、複数の経路を介してRFパルス信号を並列に送信する。位相変更部は、複数の経路で送信されるRFパルス信号の位相を経路間でずらす。
【0037】
図2は、第1の実施形態に係るMRI装置100によるRF放射ノイズの抑制を説明するための図である。例えば、
図2に示すように、複数の箇所から電波が放射される場合に、各箇所からの電波が同相であれば、それぞれの電波が互いに強めあうことになり、その結果、アンテナ等によって測定される時点では大きい値が観測されることになる。一方、各箇所からの電波が逆相であれば、それぞれの電波は互いに打ち消しあうことになり、その結果、アンテナ等によって測定される時点では小さい値が観測されることになる。
【0038】
本実施形態に係るMRI装置100は、このような電波の特性を利用し、RFパルス信号を送信する送信経路において、少なくとも一部の区間に複数の経路を設け、当該複数の経路で並列に送信されるRFパルス信号の位相をずらすようにしている。これにより、当該区間で各径路から放射されるRF放射ノイズが互いに打ち消しあうことになり、RFパルス信号の送信時に送信経路で発生するRF放射ノイズを抑制することができるようになる。
【0039】
図3は、第1の実施形態に係るMRI装置100における送信系の構成例を示す図である。なお、本実施形態では、送信コイル4が二つの給電点を有しており、二つの送信経路を介して、送信コイル4の各給電点にRFパルス信号を供給する場合の例を説明する。
【0040】
例えば、
図3に示すように、本実施形態に係るMRI装置100は、第1の生成回路51aと、第2の生成回路51bと、第1の増幅回路52aと、第2の増幅回路52bと、第1の送信経路17aと、第2の送信経路17bと、移相回路18と、送信コイル4とを備える。ここで、第1の生成回路51a、第2の生成回路51b、第1の増幅回路52a、及び第2の増幅回路52bは、
図1に示した送信回路5に含まれる。
【0041】
第1の生成回路51aは、第1のRFパルス信号を生成する。例えば、第1の生成回路51aは、第1の波形生成回路511aと、第1の発振回路512aと、第1のミキシング回路513aと、第1のDA変換回路514aとを含む。なお、第1の生成回路51aは、上述した生成部の一例である。
【0042】
第1の波形生成回路511aは、第1のRFパルス信号の波形を表すRF波形信号を生成する。例えば、第1の波形生成回路511aは、RF波形信号として、sinc関数で表される包絡線の波形を生成する。
【0043】
第1の発振回路512aは、静磁場中に置かれた対象原子核に固有の共鳴周波数のデジタル搬送波信号を生成する。例えば、第1の発振回路512aは、NCO(Numerically Controlled Oscillators)であり、ダイレクトデジタルシンセサイザ(Direct Digital Synthesizer:DDS)を用いて実現される。
【0044】
第1のミキシング回路513aは、第1の発振回路512aによって発生したデジタル搬送波信号を第1の波形生成回路511aによって生成されたRF波形信号で変調することによって、第1のRFパルス信号を生成する。
【0045】
第1のDA変換回路514aは、第1のミキシング回路513aによって生成された第1のRFパルス信号をアナログ信号に変換して出力する。
【0046】
第2の生成回路51bは、第2のRFパルス信号を生成する。例えば、第2の生成回路51bは、第2の波形生成回路511bと、第2の発振回路512bと、第2のミキシング回路513bと、第2のDA変換回路514bとを含む。なお、第2の生成回路51bは、上述した生成部の一例である。
【0047】
第2の波形生成回路511bは、第2のRFパルス信号の波形を表すRF波形信号を生成する。例えば、第2の波形生成回路511bは、RF波形信号として、sinc関数で表される包絡線の波形を生成する。
【0048】
第2の発振回路512bは、静磁場中に置かれた対象原子核に固有の共鳴周波数のデジタル搬送波信号を生成する。例えば、第2の発振回路512bは、NCOであり、DDSを用いて実現される。
【0049】
第2のミキシング回路513bは、第2の発振回路512bによって発生したデジタル搬送波信号を第2の波形生成回路511bによって生成されたRF波形信号で変調することによって、第2のRFパルス信号を生成する。
【0050】
第2のDA変換回路514bは、第2のミキシング回路513bによって生成された第2のRFパルス信号をアナログ信号に変換して出力する。
【0051】
第1の増幅回路52aは、第1の生成回路51aの後段に設けられ、第1の生成回路51aによって生成された第1のRFパルス信号を増幅する。
【0052】
第2の増幅回路52bは、第2の生成回路51bの後段に設けられ、第2の生成回路51bによって生成された第2のRFパルス信号を増幅する。
【0053】
第1の送信経路17aは、第1の生成回路51aと送信コイル4との間に設けられ、第1の生成回路51aによって生成された第1のRFパルス信号を送信コイル4へ送信する。例えば、第1の送信経路17aは、信号線のケーブルによって実現される。
【0054】
第2の送信経路17bは、第2の生成回路51bと送信コイル4との間に設けられ、第2の生成回路51bによって生成された第2のRFパルス信号を送信コイル4へ送信する。例えば、第2の送信経路17bは、信号線のケーブルによって実現される。
【0055】
ここで、本実施形態では、第1の生成回路51aに含まれる第1の発振回路512aと、第2の生成回路51bに含まれる第2の発振回路512bとが、上述した位相変更部として機能する。具体的には、第1の発振回路512a及び第2の発振回路512bは、それぞれが有するDDSを用いて、RFパルス信号の位相をずらす。例えば、第1の発振回路512a及び第2の発振回路512bのうちの一方が、他方によって生成されるデジタル搬送波信号の位相を180°反転させたデジタル搬送波信号を生成する。この結果、第1のDA変換回路514aから出力される第1のRFパルス信号の位相と、第2のDA変換回路514bから出力される第2のRFパルス信号の位相とが、互いに180°ずれた逆相となる。
【0056】
そして、本実施形態では、第1の送信経路17aと第2の送信経路17bとが、第1のRFパルス信号と第2のRFパルス信号とを並列に送信する。
【0057】
このような構成によれば、第1のRFパルス信号の位相と第2のRFパルス信号の位相とが逆相となっているため、シールドルーム200の外における少なくとも一部の区間で、第1の送信経路17aから放射されるRF放射ノイズと、第2の送信経路17bから放射されるRF放射ノイズとが相殺されることになる。これにより、RFパルス信号の送信時に送信経路で発生するRF放射ノイズを抑制することができるようになる。
【0058】
移相回路18は、第2の送信経路17b上で、送信コイル4の前段に設けられ、第2の送信経路17bを介して送信された第2のRFパルス信号の位相を、送信コイル4の仕様によって要求される位相に合わせる。
【0059】
例えば、送信コイル4が、QD(Quadrature Detection)コイルのように、互いの位相が90°ずれたRFパルス信号を二つの給電点に供給することを要求するものであった場合には、移相回路18は、第2のRFパルス信号の位相を-90°ずらすことで、第1のRFパルス信号の位相から90°ずれた位相に合わせる。
【0060】
ここで、移相回路18が第2のRFパルス信号の位相をずらす量は、-90°に限られない。例えば、送信コイル4が、互いの位相が120°ずれたRFパルス信号を二つの給電点に供給することを要求するものであった場合には、移相回路18は、第2のRFパルス信号の位相を-60°ずらすことで、第1のRFパルス信号の位相から120°ずれた移相に合わせる。
【0061】
なお、移相回路18は、いわゆるデジタル回路でなくてもよく、ケーブルによって実現されてもよい。その場合には、送信コイル4の前段において、第2の送信経路17bのケーブルの長さを部分的に第1の送信経路17aのケーブルよりも長くすることで、第2のRFパルス信号の位相が送信コイル4に達するまでの間にずれるようにする。
【0062】
このように、移相回路18によって、シールドルーム200の中では、二つの送信経路で送信されるRFパルス信号の位相が逆相からずれることになるが、シールドルーム200によってRF放射ノイズが室外に漏れるのが防がれるため、EMC性能に影響を与えることはない。
【0063】
上述したように、第1の実施形態では、第1の送信経路17aを介して送信される第1のRFパルス信号と、第2の送信経路17bを介して送信される第2のRFパルス信号とが、互いに逆相とされて送信される。これにより、各送信経路から放射されるRF放射ノイズが相殺されることになり、RFパルス信号の送信時に送信経路で発生するRF放射ノイズを抑制することができる。また、不要なRF放射ノイズが抑制されることによって、MRI装置100のEMC性能を向上させることができる。
【0064】
(第2の実施形態)
なお、上述した第1の実施形態では、送信経路ごとに生成回路が設けられる場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、一つの生成回路によって生成されたRFパルス信号を複数の経路に分配して送信するようにしてもよい。
【0065】
以下では、このような場合の例を第2の実施形態として説明する。なお、第2の実施形態に係るMRI装置は、全体的には、
図1に例示した構成と同様の構成を有しており、送信系の構成のみが異なる。そこで、以下では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明することとし、第1の実施形態と共通する構成要素については同じ符号を付すこととして詳細な説明を省略する。
【0066】
具体的には、本実施形態に係るMRI装置100は、生成部の後段に設けられ、生成部によって生成されたRFパルス信号を複数の経路に分配する分配部を備える。また、本実施形態に係るMRI装置100は、送信コイル4の前段に設けられ、複数の経路を介して送信されたRFパルス信号の位相を同相に合わせる移相部を備える。また、本実施形態に係るMRI装置100は、送信コイル4の前段に設けられ、移相部によって位相が合わせられたRFパルス信号を合成する合成部を備える。
【0067】
図4は、第2の実施形態に係るMRI装置100における送信系の構成例を示す図である。なお、本実施形態では、送信コイル4が一つの給電点を有しており、二つの経路を介して送信されたRFパルス信号を一つに合成して、送信コイル4の給電点に供給する場合の例を説明する。
【0068】
例えば、
図4に示すように、本実施形態に係るMRI装置100は、生成回路151と、送信経路117と、増幅回路152と、分配回路119と、移相回路118と、合成回路120と、送信コイル4とを備える。ここで、生成回路151及び増幅回路152は、
図1に示した送信回路5に含まれる。
【0069】
生成回路151は、RFパルス信号を生成する。例えば、生成回路151は、波形生成回路1511と、発振回路1512と、ミキシング回路1513と、DA変換回路1514とを含む。なお、生成回路151は、上述した生成部の一例である。
【0070】
波形生成回路1511は、RFパルス信号の波形を表すRF波形信号を生成する。例えば、波形生成回路1511は、RF波形信号として、sinc関数で表される包絡線の波形を生成する。
【0071】
発振回路1512は、静磁場中に置かれた対象原子核に固有の共鳴周波数のデジタル搬送波信号を生成する。例えば、発振回路1512は、NCOであり、DDSを用いて実現される。
【0072】
ミキシング回路1513は、発振回路1512によって発生したデジタル搬送波信号を波形生成回路1511によって生成されたRF波形信号で変調することによって、RFパルス信号を生成する。
【0073】
DA変換回路1514は、ミキシング回路1513によって生成されたRFパルス信号をアナログ信号に変換して出力する。
【0074】
増幅回路152は、生成回路151の後段に設けられ、生成回路151によって生成されたRFパルス信号を増幅する。
【0075】
送信経路117は、生成回路151と送信コイル4との間に設けられ、生成回路151によって生成されたRFパルス信号を送信コイル4へ送信する。例えば、送信経路117は、信号線のケーブルによって実現される。
【0076】
そして、本実施形態では、送信経路117は、シールドルーム200の外における少なくとも一部の区間で、二つの経路を介してRFパルス信号を並列に送信する。
【0077】
分配回路119は、生成回路151の後段に設けられ、生成回路151によって生成されたRFパルス信号を、送信経路117に含まれる二つの経路に分配する。なお、分配回路119は、上述した分配部の一例である。
【0078】
ここで、本実施形態では、分配回路119が、上述した位相変更部として機能する。具体的には、分配回路119は、送信経路117に含まれる二つの経路のうちの第1の経路CH1には、第1のRFパルス信号を出力し、第2の経路CH2には、第1のRFパルス信号の位相を180°反転させた第2のRFパルス信号を出力する。この結果、第1の経路CH1に送出される第1のRFパルス信号の位相と、第2の経路CH2に送出される第2のRFパルス信号の位相とが、互いに180°ずれた逆相となる。なお、このとき、例えば、分配回路119は、第1のRFパルス信号と第2のRFパルス信号とを同じ振幅で出力する。
【0079】
このような構成によれば、第1のRFパルス信号の位相と第2のRFパルス信号の位相とが逆相となっているため、シールドルーム200の外における少なくとも一部の区間で、第1の経路CH1から放射されるRF放射ノイズと、第2の経路CH2から放射されるRF放射ノイズとが相殺されることになる。これにより、RFパルス信号の送信時に送信経路で発生するRF放射ノイズを抑制することができるようになる。
【0080】
移相回路118は、送信コイル4の前段に設けられ、送信経路117に含まれる二つの経路を介して送信されたRFパルス信号の位相を同相に合わせる。なお、移相回路118は、上述した位相部の一例である。
【0081】
ここで、移相回路118は、いわゆるデジタル回路でなくてもよく、ケーブルによって実現されてもよい。その場合には、送信コイル4の前段において、第2のRFパルス信号が送信される経路のケーブルの長さを、部分的に、第1のRFパルス信号が送信されるケーブルよりも長くすることで、第2のRFパルス信号の位相が送信コイル4に達するまでの間にずれるようにする。
【0082】
合成回路120は、送信コイル4の前段に設けられ、移相回路118によって位相が合わせられたRFパルス信号を合成する。なお、合成回路120は、上述した合成部の一例である。
【0083】
上述したように、第2の実施形態では、送信経路117に含まれる第1の経路CH1を介して送信される第1のRFパルス信号と、第2の経路CH2を介して送信される第2のRFパルス信号とが、互いに逆相とされて送信される。これにより、各経路から放射されるRF放射ノイズが相殺されることになり、RFパルス信号の送信時に送信経路で発生するRF放射ノイズを抑制することができる。また、不要なRF放射ノイズが抑制されることによって、MRI装置100のEMC性能を向上させることができる。
【0084】
(第3の実施形態)
なお、上述した第2の実施形態では、合成回路120によってRFパルス信号を合成して送信コイル4に供給する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、第1の実施形態と同様に、送信コイル4が二つの給電点を有する場合には、分配回路119によって二つの経路に分配されたRFパルス信号のうちの一方の位相を移相回路によってずらして、送信コイル4の一方の給電点に供給してもよい。
【0085】
以下では、このような場合の例を第3の実施形態として説明する。なお、第3の実施形態に係るMRI装置は、全体的には、
図1に例示した構成と同様の構成を有しており、送信系の構成のみが異なる。そこで、以下では、第1及び第2の実施形態と異なる点を中心に説明することとし、第1及び第2の実施形態と共通する構成要素については同じ符号を付すこととして詳細な説明を省略する。
【0086】
図5は、第3の実施形態に係るMRI装置100における送信系の構成例を示す図である。なお、本実施形態では、
図3に示した例と同様に、送信コイル4が二つの給電点を有しており、二つの経路を介して、送信コイル4の各給電点にRFパルス信号を供給する場合の例を説明する。
【0087】
例えば、
図5に示すように、本実施形態に係るMRI装置100は、生成回路151と、送信経路217と、増幅回路152と、分配回路119と、移相回路218と、送信コイル4とを備える。ここで、生成回路151及び増幅回路152は、
図1に示した送信回路5に含まれる。
【0088】
送信経路217は、生成回路151と送信コイル4との間に設けられ、生成回路151によって生成されたRFパルス信号を送信コイル4へ送信する。例えば、送信経路217は、信号線のケーブルによって実現される。
【0089】
そして、本実施形態では、送信経路217は、シールドルーム200の外における少なくとも一部の区間で、二つの経路を介してRFパルス信号を並列に送信する。
【0090】
分配回路119は、生成回路151の後段に設けられ、生成回路151によって生成されたRFパルス信号を、送信経路217に含まれる二つの経路に分配する。なお、分配回路119は、上述した分配部の一例である。
【0091】
ここで、本実施形態では、第2の実施形態と同様に、分配回路119が、上述した位相変更部として機能する。具体的には、分配回路119は、送信経路217に含まれる二つの経路のうちの第1の経路CH1には、第1のRFパルス信号を出力し、第2の経路CH2には、第1のRFパルス信号の位相を180°反転させた第2のRFパルス信号を出力する。この結果、第1の経路CH1に送出される第1のRFパルス信号の位相と、第2の経路CH2に送出される第2のRFパルス信号の位相とが、互いに180°ずれた逆相となる。
【0092】
このような構成によれば、第1のRFパルス信号の位相と第2のRFパルス信号の位相とが逆相となっているため、シールドルーム200の外における少なくとも一部の区間で、第1の経路CH1から放射されるRF放射ノイズと、第2の経路CH2から放射されるRF放射ノイズとが相殺されることになる。これにより、RFパルス信号の送信時に送信経路で発生するRF放射ノイズを抑制することができるようになる。
【0093】
移相回路218は、第2の経路CH2上で、送信コイル4の前段に設けられ、第1の実施形態で説明した移相回路18と同様に、第2の経路CH2を介して送信された第2のRFパルス信号の位相を、送信コイル4の仕様によって要求される位相に合わせる。なお、移相回路218は、第1の実施形態で説明した移相回路18と同様に、いわゆるデジタル回路でなくてもよく、ケーブルによって実現されてもよい。
【0094】
上述したように、第3の実施形態でも、送信経路217に含まれる第1の経路CH1を介して送信される第1のRFパルス信号と、第2の経路CH2を介して送信される第2のRFパルス信号とが、互いに逆相とされて送信される。これにより、各経路から放射されるRF放射ノイズが相殺されることになり、RFパルス信号の送信時に送信経路で発生するRF放射ノイズを抑制することができる。また、不要なRF放射ノイズが抑制されることによって、MRI装置100のEMC性能を向上させることができる。
【0095】
なお、上述した各実施形態では、二つの経路で送信されるRFパルス信号の位相を互いに180°ずらした逆相とする場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。RF放射ノイズをより効率よく抑制するためには、二つの経路で送信されるRFパルス信号の位相差を180°により近付けるのが望ましい。しかし、二つの経路で送信されるRFパルス信号は、少しでも位相がずれていれば、少なからず互いに弱めあうことになり、同相である場合と比べれば、RF放射ノイズが小さくなると考えられる。したがって、二つの経路で送信されるRFパルス信号の位相は、互いに少しでもずれていればよい。すなわち、二つの経路で送信されるRFパルス信号の位相は、位相差がゼロでなければよい。
【0096】
また、RF放射ノイズをより効率よく抑制するためには、上述した各実施形態において、RFパルス信号を並列に送信する二つの経路をできるだけ近い位置に配置するのが望ましい。例えば、各径路を実現するケーブルを、より合わせたり、隣接して配置したりする。また、例えば、各径路を実現するケーブルが接続されるコネクタの位置を、できるだけ近い位置に配置する。
【0097】
また、上述した各実施形態では、二つの経路でRFパルス信号を並列に送信する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、三つ以上の経路で、RFパルス信号を並列に送信するようにしてもよい。例えば、四つの経路でRFパルス信号を送信する場合には、第1の経路と第2の経路とを近くに配置し、第3の経路と第4の経路とを近くに配置する。そして、第1の経路で送信されるRFパルス信号の位相を0°とし、第2の経路で送信されるRFパルス信号の位相を180°にする。また、第3の経路で送信されるRFパルス信号の位相を90°とし、第4の経路で送信されるRFパルス信号の位相を270°とする。
【0098】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、RFパルス信号の送信時に送信経路で発生するRF放射ノイズを抑制することができる磁気共鳴イメージング装置を提供することができる。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0100】
100 磁気共鳴イメージング装置
4 送信コイル
5 送信回路
51a 第1の生成回路
51b 第2の生成回路
512a 第1の発振回路
512b 第2の発振回路
17a 第1の送信経路
17b 第2の送信経路