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  • 特許-追跡システム用の磁界発生回路 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】追跡システム用の磁界発生回路
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/00 20060101AFI20220314BHJP
   A61B 34/20 20160101ALI20220314BHJP
【FI】
G01B7/00 101E
A61B34/20
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017131716
(22)【出願日】2017-07-05
(65)【公開番号】P2018017724
(43)【公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-04-15
(31)【優先権主張番号】15/202,705
(32)【優先日】2016-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】バディム・グリナー
(72)【発明者】
【氏名】ヤロン・エフラス
(72)【発明者】
【氏名】アロン・ボウメンディル
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第87/004801(WO,A1)
【文献】特開2014-223954(JP,A)
【文献】特開2008-284303(JP,A)
【文献】特開2007-301375(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第02829264(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00-7/34
A61B 34/00-90/98
G01R 33/00-33/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
第1の卓越周波数及び第2の卓越周波数の両方を有する信号を供給するように構成されている、信号発生器と、
反応性コンポーネントを含む電気回路であって、前記電気回路は、前記信号が前記電気回路に供給されると、前記第1の卓越周波数及び前記第2の卓越周波数の両方で同時に共振する前記反応性コンポーネントによって、前記第1の卓越周波数及び前記第2の卓越周波数の両方を有する磁界を発生させるように構成されている、電気回路と、
を含み、
前記反応性コンポーネントが第1のインダクタであり、かつ、前記電気回路が更に、
前記第1のインダクタに直列に接続された第1のコンデンサと、
前記第1のインダクタに並列に接続された第2のインダクタと、
前記第1のインダクタに並列に接続され、かつ前記第2のインダクタに直列に接続された、第2のコンデンサと、
を含む、装置。
【請求項2】
前記電気回路は、前記第1の卓越周波数で共振するように構成された第1の共振回路と、前記第2の卓越周波数で共振するように構成された第2の共振回路とを含み、かつ、前記反応性コンポーネントは、前記第1の共振回路及び前記第2の共振回路の両方に対してコモンである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1のコンデンサ及び前記第1のインダクタが、複数の前記第1の卓越周波数のうちの1つで集合的に共振するように構成され、かつ、
前記第2のコンデンサ、前記第1のインダクタ、及び前記第2のインダクタは、複数の前記第2の卓越周波数のうちの1つで集合的に共振するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第1のコンデンサは、前記第2の卓越周波数で20オーム未満の大きさを有するインピーダンスを有するように構成され、かつ、前記第2のコンデンサは、前記第1の卓越周波数で1000オーム超の大きさを有するインピーダンスを有するように構成されている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記電気回路が、
コイルと、
前記コイルをタップする、前記第1のコンデンサを含むコイルタップと、を含み、
前記第1及び第2のインダクタは、前記コイルタップの相対する側にある前記コイルのそれぞれ対応する部分である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の卓越周波数と前記第2の卓越周波数との差が少なくとも5kHzである、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記第1の卓越周波数は5kHz未満であり、かつ前記第2の卓越周波数は15kHz超である、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の卓越周波数での前記磁界の検出に応じて第1の信号を生成するように構成された、少なくとも1つの第1のセンサと、
前記第2の卓越周波数での前記磁界の検出に応じて第2の信号を生成するように構成された、少なくとも1つの第2のセンサと、
を更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記第1のセンサを含む体内ツールを更に含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
方法であって、
信号発生器を用いて、反応性コンポーネントを含む電気回路に、第1の卓越周波数及び第2の卓越周波数の両方を有する信号を供給することと、
前記電気回路を用いて、前記信号が前記電気回路に供給されると、前記第1の卓越周波数及び前記第2の卓越周波数の両方で同時に共振する前記反応性コンポーネントによって、前記第1の卓越周波数及び前記第2の卓越周波数の両方を有する磁界を発生させることと、
を含み
少なくとも1つの第1のセンサを用いて、前記第1の卓越周波数での前記磁界の検出に応じて第1の信号を生成することと、
少なくとも1つの第2のセンサを用いて、前記第2の卓越周波数での前記磁界の検出に応じて第2の信号を生成することと、
前記第1の信号及び前記第2の信号に応じて、前記第1のセンサ及び前記第2のセンサのそれぞれの位置を確定することと、
を更に含む、方法。
【請求項11】
前記第1のセンサを用いて前記第1の信号を生成することは、前記第1のセンサが被験者の体内にある状態で、前記第1のセンサを用いて前記第1の信号を生成することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記磁界を発生させることが、前記被験者の下側から前記磁界を発生させることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記電気回路が、前記第1の卓越周波数で共振するように構成された第1の共振回路と、前記第2の卓越周波数で共振するように構成された第2の共振回路とを含み、かつ、前記反応性コンポーネントは、前記第1の共振回路及び前記第2の共振回路の両方に対してコモンである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記反応性コンポーネントが第1のインダクタであり、かつ、前記電気回路が更に、
前記第1のインダクタに直列に接続された第1のコンデンサと、
前記第1のインダクタに並列に接続された第2のインダクタと、
前記第1のインダクタに並列に接続され、かつ前記第2のインダクタに直列に接続された、第2のコンデンサと、
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のコンデンサ及び前記第1のインダクタが、複数の前記第1の卓越周波数のうちの1つで集合的に共振するように構成され、かつ、
前記第2のコンデンサ、前記第1のインダクタ、及び前記第2のインダクタは、複数の前記第2の卓越周波数のうちの1つで集合的に共振するように構成されている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記電気回路が、
コイルと、
前記コイルをタップする、前記第1のコンデンサを含むコイルタップと、を含み、
前記第1及び第2のインダクタは、前記コイルタップの相対する側にある前記コイルのそれぞれ対応する部分である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の卓越周波数と前記第2の卓越周波数との差が少なくとも5kHzである、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の卓越周波数は5kHz未満であり、かつ前記第2の卓越周波数は15kHz超である、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は概ね医療機器分野に関するものであり、具体的には、医療処置に使用するツールの位置及び向きを追跡することによりその医療処置のパフォーマンスを促進することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、米国特許出願公開第2007/0265526号(この開示内容は参照により本明細書に援用される)は、テーブルの上面上に位置付けられた患者に対して医療処置を施すための磁気位置追跡システムについて記載している。このシステムは、患者の体の下にあるテーブルの上面上に位置付けられた、位置特定パッドを含む。位置特定パッドは、それぞれの磁界を発生させるように動作可能であって、位置特定パッドの厚さ寸法が3センチメートル以下であるように配置される、1つ又は2つ以上の磁界発生器を含む。ポジションセンサーが、患者の身体内に挿入される侵襲性医療用デバイスに固定され、身体内の医療用デバイスの位置を測定するために、磁界を感知するように配置される。
【0003】
米国特許第5,425,367号(この開示内容は参照により本明細書に援用される)は、仮想の回転磁界を発生させる外部プローブで、組織内におけるカテーテルの深さ及び向きを外部的に位置特定するためのシステムについて記載している。このカテーテルは、仮想の回転磁界に応じて誘導される信号を生成する誘導コイルを含む。ライトバーディスプレイ又はデジタル出力装置などの指示装置は、プローブ及びカテーテルの相対的な角度向きとは独立に、カテーテルの組織内での深さの位置特定のために誘導された信号の強度を示す。
【0004】
米国特許第6,223,066号(この開示内容は参照により本明細書に援用される)は、被験者の体内で位置が追跡されている近位端及び遠位端を有する、細長い医療用プローブについて記載している。このプローブは、遠位端に隣接する磁界応答性光学エレメントを含み、これは、外部から印加される磁界に応じて、中を通過する光を変調する。このプローブは更に光ファイバーを含み、これは、光学エレメントから変調された光を受け取り、プローブの近位端にこれを伝えて、変調の分析を行うよう連結されている。
【0005】
米国特許第6,335,617号(この開示内容は参照により本明細書に援用される)は、磁界発生器を校正するための方法を記載し、この方法は、1つ以上の磁界センサを既知の位置及び向きでプローブに固定することと、磁界発生器の付近の1つ以上の既知の場所を選択することとを含む。この磁界発生器が、磁界を発生するよう駆動される。このプローブが、所定の既知の向きで1つ以上の場所のそれぞれに移動されて、信号が1つ以上の場所のそれぞれで1つ以上のセンサから受信される。この信号が、1つ以上のセンサのそれぞれの位置にて、磁界の振幅及び方向を測定するよう、かつ磁界発生器付近の磁界の振幅及び方向に関する校正係数を決定するよう、処理される。
【0006】
PCT国際公開第2013/149683号(この開示内容は参照により本明細書に援用される)は、好ましくは経壁アブレーションで、好ましくは洞レベルにおいて、内側から1本又は2本以上の肺静脈(PV)の壁のアブレーション(the ablation of a ablation)を行うためのシステム、装置及び方法について記載している。1つ以上の埋め込み装置を脈管内に埋め込むことができ、次いで、外部のエネルギー供給手段によってこれを加熱することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のいくつかの実施形態により、信号発生器及び電気回路を含む装置が提供される。この信号発生器は、第1の卓越周波数及び第2の卓越周波数の両方を有する信号を供給するように構成されている。この電気回路は、反応性コンポーネントを含み、この電気回路は、信号が電気回路に供給されると、第1の卓越周波数及び第2の卓越周波数の両方で同時に共振する反応性コンポーネントによって、第1の卓越周波数及び第2の卓越周波数の両方を有する磁界を発生するように構成されている。
【0008】
いくつかの実施形態では、この電気回路は、第1の卓越周波数で共振するように構成された第1の共振回路と、第2の卓越周波数で共振するように構成された第2の共振回路とを含み、この反応性コンポーネントは、第1の共振回路及び第2の共振回路の両方に対してコモンである。
【0009】
いくつかの実施形態では、この反応性コンポーネントは第1のインダクタであり、この電気回路は更に、
第1のインダクタに直列に接続された第1のコンデンサと、
第1のインダクタに並列に接続された第2のインダクタと、
第1のインダクタに並列に接続され、かつ第2のインダクタに直列に接続された、第2のコンデンサと、を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、
第1のコンデンサ及び第1のインダクタは、第1の卓越周波数で集合的に共振するように構成され、かつ、
第2のコンデンサ、第1のインダクタ、及び第2のインダクタは、第2の卓越周波数で集合的に共振するように構成されている。
【0011】
いくつかの実施形態では、第1のコンデンサは、第2の卓越周波数で20オーム未満の大きさを有するインピーダンスを有するように構成され、かつ、第2のコンデンサは、第1の卓越周波数で1000オーム超の大きさを有するインピーダンスを有するように構成されている。
【0012】
いくつかの実施形態では、この電気回路は、
コイルと、
このコイルをタップする、第1のコンデンサを含むコイルタップと、を含み、
第1及び第2のインダクタは、このコイルタップの相対する側にあるコイルのそれぞれ対応する部分である。
【0013】
いくつかの実施形態では、第1の卓越周波数と第2の卓越周波数との差は少なくとも5kHzである。
【0014】
いくつかの実施形態では、第1の卓越周波数は5kHz未満であり、かつ第2の卓越周波数は15kHz超である。
【0015】
いくつかの実施形態では、この装置は、
第1の卓越周波数での磁界の検出に応じて第1の信号を生成するように構成された、少なくとも1つの第1のセンサと、
第2の卓越周波数での磁界の検出に応じて第2の信号を生成するように構成された、少なくとも1つの第2のセンサと、を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、この装置は更に、第1のセンサを含む体内ツールを含む。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態により、更に、磁界を発生させる方法が提供される。この方法は、信号発生器を用いて、反応性コンポーネントを含む電気回路に、第1の卓越周波数及び第2の卓越周波数の両方を有する信号を供給することを含む。この方法は更に、この電気回路を用いて、信号がこの電気回路に供給されると、第1の卓越周波数及び第2の卓越周波数の両方で同時に共振する反応性コンポーネントによって、第1の卓越周波数及び第2の卓越周波数の両方を有する磁界を発生させることを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、この方法は更に、
少なくとも1つの第1のセンサを用いて、第1の卓越周波数での磁界の検出に応じて第1の信号を生成することと、
少なくとも1つの第2のセンサを用いて、第2の卓越周波数での磁界の検出に応じて第2の信号を生成することと、
この第1の信号及び第2の信号に応じて、第1のセンサ及び第2のセンサのそれぞれの位置を確定することと、を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、第1のセンサを用いて第1の信号を生成することは、第1のセンサが被験者の体内にある状態で、第1のセンサを用いて第1の信号を生成することを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、磁界を発生させることは、被験者の下側から磁界を発生させることを含む。
【0021】
本発明は、その実施形態の以下の詳細な説明を図面と併せ読むことによってより深く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明のいくつかの実施形態による、磁界追跡システムの概略図である。
図2A】本発明のいくつかの実施形態による、発生回路の概略図である。
図2B】本発明のいくつかの実施形態による、発生回路の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
概説
前述の米国特許出願公開第2007/0265526号(この開示内容は参照により本明細書に援用される)に記載されているように、磁界位置追跡システムは、医療処置の実施のために使用することができる。そのようなシステムは複数の磁界発生器を含み、このそれぞれが、特定の「基底周波数」近くのそれぞれの周波数で磁界を発生させるように構成されている。(例えば、基底周波数が1kHzの場合、この発生器はそれぞれ1kHz、1.2kHz、1.4kHz等で発生させることができる。)よって、処置中にこれらの発生器(被験者の下側に配置されている)は、複数の異なる卓越周波数を有する磁界を集合的に発生させる。この処置に使用される体内ツールはセンサと共に提供され、このセンサは磁界を検出し、これに応じて、(磁界により誘導された、センサを通る交流電圧の形態で)信号を生成する。これらの信号に応じて、センサのそれぞれの位置及び/又は向き(したがって、体内ツールの位置及び/又は向き)を確定することができる。
【0024】
いくつかの処置において、異なる寸法のセンサのそれぞれの位置及び/又は向きを同時に追跡することが望ましい場合がある。例えば、特定の処置に使用される大きい方の体内ツールには、より大きなセンサが装備されてよく、この大きな体内ツールと共に使用される小さい方の体内ツールには、より小さなセンサが装備されてよい。ただし、一般的なルールとして、より小さなセンサが最も良い性能を発揮する周波数は、より大きなセンサが最も良い性能を発揮する磁界周波数よりも高くなる。よって、(i)小さい方のセンサには、大きい方の基底周波数(例えば17kHz)に近い第1の周波数セット、及び(ii)大きい方のセンサには、小さい方の基底周波数(例えば1kHz)に近い第2の周波数セット、というように、卓越周波数の2倍の数の磁界を発生させることが必要な可能性がある。1つの仮説的解決策は、発生器の数を倍にすることである。しかしながらこの解決策は、発生器が占める空間量の増大及び/若しくは消費電力の増大により、並びに/又はコスト的考慮により、実用的ではない可能性がある。
【0025】
よって、本明細書に記述される実施形態は、よりすぐれた解決策を提供し、これにより各磁界発生器は、2つの異なる卓越周波数で1つの磁界を同時に発生させるのに使用することができる。典型的に、この発生器はそれぞれ電気回路を含み、この電気回路は、回路中の他のエレメントに接続されている反応性コンポーネント(すなわち、インダクタ又はコンデンサ)を含んでおり、これによって、好適な交流信号がこの電気回路に供給されると、この反応性コンポーネントが、第1の卓越周波数と第2の卓越周波数の両方で同時に共振する。反応性コンポーネントの共振により、この電気回路は、第1の卓越周波数及び第2の卓越周波数の両方を有する磁界を発生させる。
【0026】
例えば、この電気回路は、第1のコンデンサと、第1のコンデンサに直列に接続された第1のインダクタと、第1のインダクタに並列に接続された第2のインダクタと、1のインダクタに並列に接続されかつ第2のインダクタに直列に接続された、第2のコンデンサと、を含む。そのような実施形態では、第1のコンデンサ及び第1のインダクタは第1の周波数で集合的に共振し、同時に、第2のコンデンサ、第1のインダクタ、及び第2のインダクタは、第2の周波数で集合的に共振する。
【0027】
ゆえに、本明細書に記述される実施形態を用いることにより、発生器の数を増やす必要なしに、より小さなセンサとより大きなセンサの両方を追跡することが可能になる。
【0028】
システムの説明
最初に、本発明のいくつかの実施形態による、磁界追跡システム20の概略図である図1を参照する。
【0029】
図1は、医師34が、例えば、米国特許出願公開第14/578,807号(この開示内容は参照により本明細書に援用される)に記載されている装置を用いて、被験者26に対する心臓アブレーション処置を実施している様子を示す。最初に、シース22が被験者26の心臓25に挿入され、カテーテル40がシース22から心臓内に配置される。カテーテル40はその遠位端に膨張可能な構造(例えばバルーン42)を含み、この表面に複数の電極が配置されている。カテーテルを配置した後、ガイド(又は「ラッソー」)44を使用して肺静脈の内側壁に係合させることによりカテーテルを安定化させ、次に電極を使用して肺静脈のアブレーションを行う。下記に詳しく述べるように、処置中に、システム20は、シース22の遠位端とカテーテル40の遠位端の両方の位置及び/又は向きを追跡する。同様に、システム20は、任意の関連する処置中に、任意の複数のツール(例えば体内ツール)のそれぞれの位置及び/又は向きを追跡するのに使用することができる。
【0030】
システム20は、被験者の下側、又は被験者の近くに配置された複数の発生回路27(本明細書において「発生器」とも呼ばれる)を含む。発生回路27は、複数の異なる卓越周波数を有する磁界を集合的に発生させるように構成される。処置中に、コンソール36内の信号発生器28は、発生回路それぞれに対し、交流信号(典型的には交流電流)を供給し、この交流信号には複数の卓越周波数が含まれる。図2A~Bを参照して下記で詳しく述べるように、交流信号を発生回路に適用することにより、その卓越周波数でその発生回路が共振し、これによって磁界を発生させる。
【0031】
シース22の遠位端は複数のセンサ24を含み、各センサ24はそれぞれ1本のコイルを含む。発生した磁界は、複数の卓越周波数を含む交流電圧を、センサ24にわたって誘導する。誘導された電圧のこれらの周波数構成要素のそれぞれの振幅に基づいて、シースの遠位端の位置及び/又は向きを確定することができる。言い換えれば、センサ24は磁界の検出に応じて信号を発生し、この信号が、シースの遠位端の位置及び/又は向きを示す。
【0032】
同様に、カテーテル40の遠位端も、1本のコイルを含むセンサ46を含む。発生した磁界は、センサ46にわたって交流電圧を誘導し、これによって、誘導された電圧の卓越周波数構成要素のそれぞれの振幅に基づいて、カテーテルの遠位端の位置及び/又は向きを確定することができる。
【0033】
図1に示すように、カテーテル40はシース22よりもサイズが小さいため、センサ46はセンサ24よりも小さい。よって、上述のように、センサ46はセンサ24よりも高い周波数の磁界を必要とする。ゆえに各発生回路27は、センサ24のためのより低い第1の周波数、及び、センサ46のためのより高い第2周波数という、2つの周波数で磁界を発生させる。
【0034】
例えば、システム20は9つの発生回路を含み得、このそれぞれが、(i)基底周波数1kHz近くの第1の周波数、及び(ii)基底周波数17kHz近くの第2の周波数の両方で、同時に発生させるように構成されている。(図1はそのような9つの発生器の実施形態に対応しており、この9つの発生回路は、3つずつ3列に配置され、図1には最も外側の列にある3つが示されている。)よって例えば、発生器は集合的に1つの磁界を発生させるように構成されてよく、この磁界は、(i)第1の卓越周波数セット:1kHz、1.2kHz、1.4kHz、1.6kHz、1.8kHz、2kHz、2.2kHz、2.4kHz、及び2.6kHz、並びに(ii)第2の卓越周波数セット:17kHz、17.2kHz、17.4kHz、17.6kHz、17.8kHz、18kHz、18.2kHz、18.4kHz、及び18.6kHz、を有し、これらは、第1の周波数セットのうち1つと第2の周波数セットのうち1つの両方で同時に共鳴する各発生器によるものである。センサ24は第1の周波数セットでの磁界検出に応じて信号を生成し、これによって、第1の周波数セットでの信号の構成要素を解析することにより、センサ24のそれぞれの位置及び/又は向き(よって、シース22の位置及び/又は向き)を確定することができる。同様に、センサ46は第2の周波数セットでの磁界検出に応じて信号を生成し、これによって、第2の周波数セットでの信号の構成要素を解析することにより、センサ46の位置及び/又は向き(よって、カテーテル40の位置及び/又は向き)を確定することができる。
【0035】
一般に、追跡されている体内ツールそれぞれが、任意の好適な数のセンサを含み得る。典型的に、このツールの位置及び向きは、集合的に、自由度6のみを有するが、センサ及び発生器の合計数は6よりも大きく、すなわち、このシステムは「優決定」系である。よって、例えば、シース22は3つのセンサ24を含むが、厳密に言えば、シースが必要なセンサは1つのみである。(カテーテル40は寸法が小さいため、カテーテル40は1つのみのセンサ46を含む。)
【0036】
一般に、各発生回路を、任意の2つの関連する周波数で共振するよう構成することができる。この2つの周波数の間の差は、比較的大きくてよく(例えば、上述の例のように少なくとも5kHz又は10kHz)、又は比較的小さくてもよい(例えば5kHz未満)。
【0037】
ここで図2A~Bを参照し、図2A~Bは、本発明のいくつかの実施形態による発生回路27の概略図である。一般に、図2Aは、図2Bに示す回路と機能的に同等である。下記に述べるように、これらの図の違いは、回路のレイアウトに関する点のみである。
【0038】
下記に詳しく述べるように、発生回路27は、この回路に対する、信号発生器28からの適切な交流信号の供給に応じて、より低い共振周波数(下記で「f1」と呼ばれる)と、更に、より高い共振周波数(下記で「f2」と呼ばれる)とで振動するように構成されている。実際、下記に詳しく述べるように、回路27は2つの共振回路を含んでおり、第1の共振回路はf1で共振し、第2の共振回路はf2で共振する。
【0039】
図2A~Bに示す具体的な例において、発生回路27は、第1のコンデンサC1、第2のコンデンサC2、第1のインダクタL1、及び第2のインダクタL2(これは、第1のインダクタL1と同じ方向(すなわち時計回りか反時計回りか)で巻かれている)を含む。第1のインダクタL1及び第2のインダクタL2は、互いに並列に接続されており、かつ第1のコンデンサC1に直列に接続されているが、第2のコンデンサC2は、第1のインダクタL1に並列に接続され、かつ第2のインダクタL2に直列に接続されている。図2Aにおいて、この回路はコイルL0を含み、これは第1のコンデンサを含むコイルタップ48によりタップされており、これにより、第1及び第2のインダクタは、コイルタップ48の相対する側にある、L0のそれぞれのコイル部分となる。一方、図2Bにおいて、第1及び第2の各インダクタは、別個のコイルをそれぞれ含み、図2Aに比べると、第2のコンデンサと第2のインダクタの位置が入れ替わっている。
【0040】
回路27に含まれるインダクタはそれぞれ、任意の好適な形状を有し得る。例えば、各インダクタは樽型であってよく、あるいは平坦であってもよい。更に、各インダクタは任意の好適な寸法を有し得る。純粋に例示的な例として、各インダクタは5cm×5cm×3cmであり得る。
【0041】
下記の説明では、「|C1|」が第1のコンデンサC1のキャパシタンスを指し、「|C2|」が第2のコンデンサC2のキャパシタンスを指し、「|L1|」が第1のインダクタL1のインダクタンスを指し、及び「|L2|」が第2のインダクタL2のインダクタンスを指す表記を用いる。
【0042】
一般に、|C1|、|C2|、|L1|、及び|L2|は下記の条件を満たすように選択される:
(i)f2近くの周波数で、第1のコンデンサが効果的に短絡として作用すること(すなわち、第1のコンデンサのインピーダンスの大きさは20オーム未満となる)、
(ii)
【数1】
であり、式中、L’=1/(1/|L1|+1/|L2|)であること、
(iii)f1近くの周波数で、第2のコンデンサが効果的に開回路として作用すること(すなわち、第2のコンデンサのインピーダンスの大きさは1000オーム超となる)、並びに、
(iv)
【数2】
であること。
【0043】
f1近くの周波数で、回路27は「直列LC共振回路」として機能し、この共振周波数は
【数3】
である。よって、|L1|及び|C1|の適切な選択を行った場合、第1のコンデンサ及び第1のインダクタは集合的にf1で共振する。言い換えれば、第1のコンデンサ及び第1のインダクタが合わせて第1の共振回路を形成し、これはf1で共振する。一方、f2近くでは、第1のコンデンサが短絡として作用するため、回路27は「並列LC共振回路」として機能し、この共振周波数は
【数4】
である。よって、|L1|、|L2|、及び|C2|の適切な選択を行った場合、第2のコンデンサ、第1のインダクタ、及び第2のインダクタは、集合的にf2で共振する。言い換えれば、第2のコンデンサ、第1のインダクタ、及び第2のインダクタが合わせて第2の共振回路を形成し、これはf2で共振する。(第1のインダクタは、第1の共振回路及び第2の共振回路の両方に対してコモンである。)ゆえに、回路に供給されている信号がf1及びf2の周波数構成要素両方を含んでいる限り、回路27はf1とf2の両方で同時に共振する。
【0044】
例えば、|C1|=750nF、|C2|=60nF、|L1|=3.3mH、及び|L2|=3.3mHのとき、回路27は3.2kHzと16kHzの両方で共振する。特に:
(i)16kHzで、コンデンサC1のインピーダンスの大きさがわずか13.3オームであり、すなわち、C1は効果的に短絡として機能する。
(ii)
【数5】
である。
(iii)3.2kHzで、コンデンサC2のインピーダンスの大きさは828.9オームであり、すなわち、C2は効果的に開回路として機能する。
(iv)
【数6】
である。
【0045】
上述のように、図2A~Bの実施形態において、第1のインダクタL1は第1の卓越周波数及び第2の卓越周波数の両方で同時に共振し、すなわち、L1は第1の共振回路及び第2の共振回路の両方に対してコモンである。他の実施形態では、コモンの反応性コンポーネントは、インダクタではなくコンデンサである。例えば、図2A~Bの実施形態は、C1とL1の位置を入れ替えることにより改変することができ、これによりL1ではなくC1が、第1の卓越周波数及び第2の卓越周波数の両方で同時に共振する。
【0046】
当業者であれば、本発明が上記で具体的に図示及び記載されたものに限定されない点を理解するであろう。むしろ、本発明の実施形態の範囲は、上述した様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせ、並びに上記の説明を読むことで当業者には想到されるであろう、従来技術には見られない特徴の変形例及び改変例をも含むものである。参照により本特許出願に組み込まれる文献は、これらの組み込まれた文献においていずれかの用語が、本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0047】
〔実施の態様〕
(1) 装置であって、
第1の卓越周波数及び第2の卓越周波数の両方を有する信号を供給するように構成されている、信号発生器と、
反応性コンポーネントを含む電気回路であって、前記電気回路は、前記信号が前記電気回路に供給されると、前記第1の卓越周波数及び前記第2の卓越周波数の両方で同時に共振する前記反応性コンポーネントによって、前記第1の卓越周波数及び前記第2の卓越周波数の両方を有する磁界を発生させるように構成されている、電気回路と、
を含む、装置。
(2) 前記電気回路は、前記第1の卓越周波数で共振するように構成された第1の共振回路と、前記第2の卓越周波数で共振するように構成された第2の共振回路とを含み、かつ、前記反応性コンポーネントは、前記第1の共振回路及び前記第2の共振回路の両方に対してコモンである、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記反応性コンポーネントが第1のインダクタであり、かつ、前記電気回路が更に、
前記第1のインダクタに直列に接続された第1のコンデンサと、
前記第1のインダクタに並列に接続された第2のインダクタと、
前記第1のインダクタに並列に接続され、かつ前記第2のインダクタに直列に接続された、第2のコンデンサと、
を含む、実施態様1に記載の装置。
(4) 前記第1のコンデンサ及び前記第1のインダクタが、前記第1の卓越周波数で集合的に共振するように構成され、かつ、
前記第2のコンデンサ、前記第1のインダクタ、及び前記第2のインダクタは、前記第2の卓越周波数で集合的に共振するように構成されている、実施態様3に記載の装置。
(5) 前記第1のコンデンサは、前記第2の卓越周波数で20オーム未満の大きさを有するインピーダンスを有するように構成され、かつ、前記第2のコンデンサは、前記第1の卓越周波数で1000オーム超の大きさを有するインピーダンスを有するように構成されている、実施態様4に記載の装置。
【0048】
(6) 前記電気回路が、
コイルと、
前記コイルをタップする、前記第1のコンデンサを含むコイルタップと、を含み、
前記第1及び第2のインダクタは、前記コイルタップの相対する側にある前記コイルのそれぞれ対応する部分である、実施態様3に記載の装置。
(7) 前記第1の卓越周波数と前記第2の卓越周波数との差が少なくとも5kHzである、実施態様1に記載の装置。
(8) 前記第1の卓越周波数は5kHz未満であり、かつ前記第2の卓越周波数は15kHz超である、実施態様7に記載の装置。
(9) 前記第1の卓越周波数での前記磁界の検出に応じて第1の信号を生成するように構成された、少なくとも1つの第1のセンサと、
前記第2の卓越周波数での前記磁界の検出に応じて第2の信号を生成するように構成された、少なくとも1つの第2のセンサと、
を更に含む、実施態様1に記載の装置。
(10) 前記第1のセンサを含む体内ツールを更に含む、実施態様9に記載の装置。
【0049】
(11) 方法であって、
信号発生器を用いて、反応性コンポーネントを含む電気回路に、第1の卓越周波数及び第2の卓越周波数の両方を有する信号を供給することと、
前記電気回路を用いて、前記信号が前記電気回路に供給されると、前記第1の卓越周波数及び前記第2の卓越周波数の両方で同時に共振する前記反応性コンポーネントによって、前記第1の卓越周波数及び前記第2の卓越周波数の両方を有する磁界を発生させることと、
を含む、方法。
(12) 少なくとも1つの第1のセンサを用いて、前記第1の卓越周波数での前記磁界の検出に応じて第1の信号を生成することと、
少なくとも1つの第2のセンサを用いて、前記第2の卓越周波数での前記磁界の検出に応じて第2の信号を生成することと、
前記第1の信号及び前記第2の信号に応じて、前記第1のセンサ及び前記第2のセンサのそれぞれの位置を確定することと、
を更に含む、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記第1のセンサを用いて前記第1の信号を生成することは、前記第1のセンサが被験者の体内にある状態で、前記第1のセンサを用いて前記第1の信号を生成することを含む、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記磁界を発生させることが、前記被験者の下側から前記磁界を発生させることを含む、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記電気回路が、前記第1の卓越周波数で共振するように構成された第1の共振回路と、前記第2の卓越周波数で共振するように構成された第2の共振回路とを含み、かつ、前記反応性コンポーネントは、前記第1の共振回路及び前記第2の共振回路の両方に対してコモンである、実施態様11に記載の方法。
【0050】
(16) 前記反応性コンポーネントが第1のインダクタであり、かつ、前記電気回路が更に、
前記第1のインダクタに直列に接続された第1のコンデンサと、
前記第1のインダクタに並列に接続された第2のインダクタと、
前記第1のインダクタに並列に接続され、かつ前記第2のインダクタに直列に接続された、第2のコンデンサと、
を含む、実施態様11に記載の方法。
(17) 前記第1のコンデンサ及び前記第1のインダクタが、前記第1の卓越周波数で集合的に共振するように構成され、かつ、
前記第2のコンデンサ、前記第1のインダクタ、及び前記第2のインダクタは、前記第2の卓越周波数で集合的に共振するように構成されている、実施態様16に記載の方法。
(18) 前記電気回路が、
コイルと、
前記コイルをタップする、前記第1のコンデンサを含むコイルタップと、を含み、
前記第1及び第2のインダクタは、前記コイルタップの相対する側にある前記コイルのそれぞれ対応する部分である、実施態様16に記載の方法。
(19) 前記第1の卓越周波数と前記第2の卓越周波数との差が少なくとも5kHzである、実施態様11に記載の方法。
(20) 前記第1の卓越周波数は5kHz未満であり、かつ前記第2の卓越周波数は15kHz超である、実施態様19に記載の方法。
図1
図2A
図2B