(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】送風量制御装置、送風量制御方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
C02F 3/12 20060101AFI20220314BHJP
C02F 3/34 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
C02F3/12 J
C02F3/12 H
C02F3/34 101C
(21)【出願番号】P 2017140343
(22)【出願日】2017-07-19
【審査請求日】2020-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小原 卓巳
(72)【発明者】
【氏名】山中 理
(72)【発明者】
【氏名】難波 諒
(72)【発明者】
【氏名】平岡 由紀夫
(72)【発明者】
【氏名】中川 祐一
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-054272(JP,A)
【文献】特開2002-224687(JP,A)
【文献】特開2000-167582(JP,A)
【文献】特開2017-077527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/12
C02F 3/28- 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物反応槽内の被処理水のアンモニア濃度の移動平均値である移動平均アンモニア濃度を算出する移動平均アンモニア濃度取得部と、
前記移動平均アンモニア濃度と所定の移動平均アンモニア濃度目標値との差に基づいて、前記生物反応槽に空気を供給する送風機の送風量を制御する制御部と、
を備える送風量制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記生物反応槽内の被処理水のアンモニア濃度と
第1の目標値である前記送風機の第1送風量目標値との関係を示す第1設定情報と、前記被処理水のアンモニア濃度の測定値と、に基づいて前記第1送風量目標値を取得する第1の制御部と、
前記移動平均アンモニア濃度と前記移動平均アンモニア濃度目標値との差に基づいて前記第1送風量目標値を補正することによって得られる第2送風量目標値を前記送風機の送風量の目標値として前記送風機を制御する第2の制御部と、
を備える、
請求項1に記載の送風量制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記生物反応槽内の被処理水のアンモニア濃度と
第1の目標値である前記送風機の第1空気倍率目標値との関係を示す第1設定情報と、前記被処理水のアンモニア濃度の測定値と、に基づいて前記第1空気倍率目標値を取得する第1の制御部と、
前記移動平均アンモニア濃度と前記移動平均アンモニア濃度目標値との差に基づいて前記第1空気倍率目標値を補正した第2空気倍率目標値を取得し、前記第2空気倍率目標値と前記生物反応槽に流入する被処理水の流量とに基づいて得られる送風量の目標値に基づいて、前記送風機を制御する第2の制御部と、
を備える、
請求項1に記載の送風量制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記生物反応槽内の被処理水のアンモニア濃度と
第1の目標値である前記被処理水の第1溶存酸素濃度目標値との関係を示す第1設定情報と、前記被処理水のアンモニア濃度の測定値と、に基づいて前記第1溶存酸素濃度目標値を取得する第1の制御部と、
前記移動平均アンモニア濃度と、前記移動平均アンモニア濃度目標値との差に基づいて前記第1溶存酸素濃度目標値を補正した第2溶存酸素濃度目標値を取得し、前記第2溶存酸素濃度目標値と前記被処理水の溶存酸素濃度の測定値との差に基づいて前記送風機の送風量を制御する第2の制御部と、
を備える、
請求項1に記載の送風量制御装置。
【請求項5】
前記第1の制御部は、前記被処理水の処理日の特性に応じた前記関係を示す前記第1設定情報を用いて前記第1の目標値を取得する、
請求項2から4のいずれか一項に記載の送風量制御装置。
【請求項6】
前記第1の制御部は、前記被処理水の処理日の天候に応じた前記関係を示す前記第1設定情報を用いて前記第1の目標値を取得する、
請求項5に記載の送風量制御装置。
【請求項7】
生物反応槽内の被処理水のアンモニア濃度の移動平均値である移動平均アンモニア濃度を算出し、
前記移動平均アンモニア濃度と所定の移動平均アンモニア濃度目標値との差に基づいて、前記生物反応槽に空気を供給する送風機の送風量を制御する、
送風量制御方法。
【請求項8】
生物反応槽内の被処理水のアンモニア濃度の移動平均値である移動平均アンモニア濃度を算出する移動平均アンモニア濃度取得部と、
前記移動平均アンモニア濃度と所定の移動平均アンモニア濃度目標値との差に基づいて、前記生物反応槽に空気を供給する送風機の送風量を制御する制御部と、
を備える送風量制御装置として、
コンピュータを機能させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、送風量制御装置、送風量制御方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機物を含む排水を処理する有機排水処理施設(例えば、下水処理場)において、排水中の有機物を除去する代表的な手法として標準活性汚泥法が知られている。標準活性汚泥法は、好気微生物の働きによって排水中の有機物を酸化分解することにより排水中の有機物を除去する方法である。好気微生物は空気が供給されることで活性化する微生物である。標準活性汚泥法を採用する有機排水処理施設は、送風機によって排水中に空気を供給することで好気微生物を活性化させる生物反応槽を備える。さらに近年では、有機物の除去に加え、処理済み水(以下「処理水」という。)の放流先河川のN-BOD(Nitrogenous Biochemical Oxygen Demand:アンモニア態窒素の酸化分解に伴う生物化学的酸素要求量)対策や、放流先河川の富栄養化対策などを背景に、処理水中のアンモニア態窒素の低減が求められるケースが多くなってきている。
【0003】
しかしながら、従来の制御方法では、流入水量の変動や流入水質の変動が大きい場合、送風量の日間変動幅が非常に大きくなることから、送風量の調整によって省エネルギー効果を得ようとする場合、その調整による送風量の変動に対応した機器構成が必要となる。通常、送風機が送り出すことができる風量の上限値は高負荷時の最大風量が賄えるように設計される。その一方で、上限値が高く設計されるほど、送風機が送り出すことができる風量の下限値は相対的に高くなる。そのため、大きな変動幅に対応できるように設計された送風機は、本来、省エネルギー効果を得られる低負荷時間帯で、送風量を十分に下げることができず、省エネルギー効果を十分に得ることができない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、より高い省エネルギー効果を得ることができる送風量制御装置、送風量制御方法及びコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の送風量制御装置は、移動平均アンモニア濃度取得部と、制御部とを持つ。移動平均アンモニア濃度取得部は、生物反応槽内の被処理水のアンモニア濃度の移動平均値である移動平均アンモニア濃度を算出する。制御部は、前記移動平均アンモニア濃度と所定の移動平均アンモニア濃度目標値との差に基づいて、前記生物反応槽に空気を供給する送風機の送風量を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態における有機排水処理システム100の構成の具体例を示す図。
【
図2】第1の実施形態における第1設定情報の具体例を示す図。
【
図3】第1の実施形態の送風量制御装置1が生物反応槽20に対する送風機50の送風量を制御する処理の流れを示すフローチャート。
【
図4】第1の実施形態の有機排水処理システム100によって実現される省エネルギー効果の具体例を示す図。
【
図5】第2の実施形態における有機排水処理システム100aの構成の具体例を示す図。
【
図6】第2の実施形態における第1設定情報の具体例を示す図。
【
図7】第3の実施形態における有機排水処理システム100bの構成の具体例を示す図。
【
図8】第3の実施形態における第1設定情報の具体例を示す図。
【
図9】第4の実施形態における有機排水処理システム100cの構成の具体例を示す図。
【
図10】第4の実施形態における第1設定情報の具体例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の送風量制御装置、送風量制御方法及びコンピュータプログラムを、図面を参照して説明する。
【0009】
(概略)
河川の環境指標値の代表的なものとして、BOD(Biochemical Oxygen Demand:生物化学的酸素要求量)がある。このBODは、有機物の酸化分解に伴う酸素要求量(C-BOD)とアンモニア態窒素の酸化分解に伴う酸素要求量(N-BOD)の総和として表される。近年、放流先となる河川や湖沼、閉鎖性海域等の富栄養化によるプランクトンの異常増殖を抑制するために、処理水中の窒素濃度の低減が求められており、その一つの手段として処理水中のアンモニア態窒素の濃度を低減させる方法が検討されている。
【0010】
生物反応槽におけるアンモニアの除去は硝化菌によって行われる。そして、アンモニアを効果的に除去するためには、硝化菌に十分な酸素を供給する必要がある。水中のアンモニア態窒素(NH4+)は、生物反応槽内の硝化菌の働きにより、亜硝酸態窒素(NO2
-)を経て硝酸態窒素(NO3
-)に酸化される。この反応は次の化学式(1)及び(2)によって表される。
【0011】
【0012】
【0013】
上式の反応により、アンモニア態窒素が除去された水のN-BODが低下する。一般に有機物の分解反応速度は、化学式(1)及び(2)に示す生物反応の速度よりも早いため、十分にN-BODが低下した水は、C-BODも十分に低下したものとなる。したがって、N-BODを十分に小さくする水処理を行うことで、有機物及びアンモニアの両方が十分に除去された処理水を得ることができる。
【0014】
一方、上式の反応によって生成した硝酸態窒素(NO3
-)を無酸素槽に返送すると、嫌気微生物の作用により硝酸態窒素が無害な窒素ガスに還元される反応が生じる。この反応は一般に脱窒と呼ばれ、この脱窒により水中から窒素成分が除去される。
【0015】
従来の目標値追従型の制御によれば、生物反応槽内のアンモニア濃度(槽の出口付近に設置されたアンモニア濃度計で測定される)が目標値に近づくように送風量を制御することで、アンモニア濃度を常に目標値近辺に維持することができるが、高負荷時間帯(例えば、流入量が多い時間帯又は流入水の窒素濃度が高い時間帯などであり、すなわち処理すべき窒素量が大きい時間帯である)においては必要となる送風量が大きくなり、低負荷時間帯においては逆に送風量が非常に小さくなる。特に流入水量の変動や流入水質の変動の大きな処理施設では、送風量の日間変動幅が非常に大きくなることから、送風量の調整によって省エネルギー効果を得ようとした場合、その調整による送風量の変動に対応した機器構成が必要となる。
【0016】
通常、送風機が送り出すことができる風量の上限値は高負荷時の最大風量が賄えるように設計される。その一方で、上限値が高く設計されるほど、送風機が送り出すことができる風量の下限値は相対的に高くなる。そのため、大きな変動幅に対応できるように設計された送風機は、本来、省エネルギー効果を得られる低負荷時間帯で、送風量を十分に下げることができず、省エネルギー効果を十分に得ることができない場合があった。以下では、このような送風機の制約がある場合においても、より高い省エネルギー効果を得ることができる送風量制御装置、送風量制御方法及びコンピュータプログラムの実施形態について説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における有機排水処理システム100の構成の具体例を示す図である。例えば、有機排水処理システム100は、最初沈澱池10、生物反応槽20、アンモニア濃度計21、最終沈澱池30、返送汚泥ポンプ40、送風機50及び送風量制御装置1を備える。
【0018】
最初沈澱池10は、処理対象の下水(排水)が流入する貯水槽である。最初沈澱池10では、重力によって沈殿した不要物が下水から分離される。最初沈澱池10では、下水に含まれる比較的大きな不要物が除去される。最初沈澱池10において不要物が分離された上澄み水は後段の生物反応槽20に送られる。以下、最初沈澱池10に流入し有機排水処理システム100によって放流可能な水(処理水)に処理されるまでの間の下水を被処理水という。
【0019】
生物反応槽20は、硝化菌等の微生物の働きによって被処理水から有機物や窒素成分を除去するための貯水槽である。生物反応槽20では、微生物の働きによる不要物の除去に加え、凝集剤等の薬剤の注入による不要物の沈降分離も行われる。生物反応槽20において不要物が分離された上澄み水は後段の最終沈澱池30に送られる。
【0020】
アンモニア濃度計21は、例えば生物反応槽20の下流側の出口付近に設置され、最終沈澱池30に送られる上澄み水のアンモニア濃度を測定する。アンモニア濃度計21は、所定タイミングで周期的にアンモニア濃度を測定し、測定したアンモニア濃度を示す情報を、送風量制御装置1に送信する。なお、アンモニア濃度計21は、アンモニアがある程度除去された状態の被処理水を測定可能な位置であれば、どのような位置に設置されてもよい。例えば、アンモニア濃度計21は、生物反応槽20と最終沈澱池30との間の配水路に設置されてもよいし、最終沈澱池30に設置されてもよい。
【0021】
最終沈澱池30は、最初沈澱池10と同様に、重力沈降によって被処理水から不要物を分離するための貯水槽である。最終沈澱池30において不要物が分離された上澄み水は処理水として河川等に放流される。なお、最終沈澱池30において分離された不要物(汚泥)のうち、一部の汚泥は返送汚泥ポンプ40によって生物反応槽20に返送される。一方、余剰分の汚泥(余剰汚泥)は図示しない汚泥処理プロセスに送られて処理される。
【0022】
返送汚泥ポンプ40は、汚泥中に残留する薬剤等の有効活用のため、最終沈澱池30において沈殿した汚泥の一部を引き抜き、生物反応槽20に返送する。
【0023】
送風機50は、生物反応槽20に空気を供給する。例えば、送風機50が送り出す空気配管22は、生物反応槽20の底部に設置された曝気用の吹き出し管23に接続される。送風機50が送り出した空気は、吹き出し管23を介して生物反応槽20内の被処理水に供給される。送風機50が送り出す風量(以下「送風量」という。)は、送風量制御装置1によって制御される。
【0024】
送風量制御装置1は、アンモニア濃度計21によって測定された被処理水のアンモニア濃度に基づいて、送風機50の送風量を制御する。具体的には、送風量制御装置1は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、プログラムを実行する。送風量制御装置1は、プログラムの実行によって第1設定部11、第2設定部12、日平均アンモニア濃度取得部13、第1の目標値取得部14(第1の制御部の一例)及び第2の目標値取得部15(第2の制御部の一例)を備える装置として機能する。なお、送風量制御装置1の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0025】
第1設定部11は、第1の目標値取得部14に対して、アンモニア濃度と送風量の目標値(以下「送風量目標値」という。)との関係を示す第1設定情報を出力する。第1設定情報は、アンモニア濃度を入力として送風量目標値を出力する関数を示す情報であってもよいし、個々のアンモニア濃度又はアンモニア濃度の範囲に対して送風量目標値が対応づけられたテーブルを示す情報であってもよい。
【0026】
例えば、第1設定部11は、マウスやキーボード、タッチパネル等の入力装置を含んで構成され、入力された第1設定情報を第1の目標値取得部14に出力してもよい。この場合、第1設定情報は、例えばオペレータによって入力される。また、例えば、第1設定部11は、オペレータが使用する監視端末(図示せ得ず)との通信インタフェースを含んで構成され、監視端末からネットワークを介して入力された第1設定情報を第1の目標値取得部14に出力してもよい。また、例えば、第1設定部11は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を含んで構成され、それらの記憶装置に予め記憶された第1設定情報を第1の目標値取得部14に出力してもよい。
【0027】
第2設定部12は、第2の目標値取得部15に対して、1日の平均アンモニア濃度(以下「日平均アンモニア濃度」という。)の目標値を示す第2設定情報を出力する。第1設定部11と同様に、第2設定部11は、入力装置又は通信インタフェースを介して第2設定情報を取得してもよいし、予め第2設定情報を記憶した記憶装置から第2設定情報を取得してもよい。
【0028】
日平均アンモニア濃度取得部13は、アンモニア濃度計21によって測定されたアンモニア濃度の測定値を蓄積し、日平均アンモニア濃度の実績値を算出する。具体的には、日平均アンモニア濃度取得部13は、現在時刻から24時間前までに取得された測定値の移動平均値を日平均アンモニア濃度として算出する。日平均アンモニア濃度取得部13は、算出した日平均アンモニア濃度を示す情報を第2の目標値取得部15に出力する。
【0029】
第1の目標値取得部14は、第1設定部11から出力された第1設定情報と、アンモニア濃度計21によって取得された生物反応槽20の現在のアンモニア濃度とに基づいて、第1の送風量目標値を算出する。例えば、第1設定情報は、次の式(3)に示す関数Fによって表される。
【0030】
【0031】
【0032】
式(3)において、xはアンモニア濃度計21によって測定された現在(時刻t)のアンモニア濃度NH4(t)[mg/L]を表し、Y1は現在のアンモニア濃度に対応する第1の送風量目標値[m3/h]を表す。第1の目標値取得部14は、算出した第1の送風量目標値を第2の目標値取得部15に出力する。
【0033】
第2の目標値取得部15は、第2設定部12から出力された第2設定情報と、日平均アンモニア濃度取得部13によって取得された日平均アンモニア濃度と、第1の目標値取得部14によって取得された第1の送風量目標値とに基づいて、第2の送風量目標値を算出する。例えば、第2の目標値取得部15は、次の式(5)によって第1の送風量目標値の補正値ΔY[m3/h]を算出する。
【0034】
【0035】
式(5)において、MNH4は日平均アンモニア濃度取得部13によって取得された日平均アンモニア濃度(移動平均値)[mg/L]を表し、CNH4は第2設定部12によって設定された日平均アンモニア濃度の目標値[mg/L](第2設定情報)を表す。k1は、日平均アンモニア濃度とその目標値との差分に基づいて補正値ΔYを決定するための比例パラメータ[(m3/h)/(mg/L)]である。第2の目標値取得部15は、このように算出した補正値ΔYを用いて第1の送風量目標値を補正することにより、実際の制御に用いる最終的な送風量目標値として第2の送風量目標値を取得する。例えば、第2の目標値取得部15は、次の式(6)によって第2の送風量目標値Y2を算出する。
【0036】
【0037】
第2の目標値取得部15は、送風機50の送風量が、算出した第2の送風量目標値となるように送風機50を制御する。例えば、第2の目標値取得部15は、インバータにより送風ファンを駆動するモータの回転数を制御する。
【0038】
図2は、第1の実施形態における第1設定情報の具体例を示す図である。
図2は、第1設定情報が、アンモニア濃度を入力として第1の送風量目標値を出力する関数(以下「目標値関数」という。)として表される場合の具体例を示す。
図2(A)~(C)のそれぞれにおいて、実線は目標値関数を表し、破線は第1の送風量目標値Y
1をΔYで補正することによって得られる第2の送風量目標値Y
2を表す。このように、測定された現在のアンモニア濃度に応じて定まる第2の送風量目標値が、実際の制御に用いられる送風量目標値となる。
【0039】
例えば
図2(A)は、目標値関数が、アンモニア濃度の上昇に応じて目標値を線形的に増大させる関数である場合の例を示す。
図2(B)は、目標値関数が、アンモニア濃度の上昇に応じて目標値を非線形的に増大させる関数である場合の例を示す。
図2(C)は、目標値関数が、アンモニア濃度の上昇に応じて目標値をステップ的に増大させる関数である場合の例を示す。目標値関数は、アンモニア濃度の上昇に応じて目標値を増大させる関数であれば
図2(A)~(C)と異なる関数であってもよい。また、目標値関数は、過去の運転データ等に基づいて決定されるとよい。
【0040】
図3は、第1の実施形態の送風量制御装置1が生物反応槽20に対する送風機50の送風量を制御する処理の流れを示すフローチャートである。まず、送風量制御装置1は、所定の測定周期ごとに、アンモニア濃度計21から生物反応槽20の出口付近の上澄み水の現在のアンモニア濃度の測定値を取得する(ステップS101)。日平均アンモニア濃度取得部13は、取得されたアンモニア濃度の測定値、及び過去に取得されたアンモニア濃度の測定値に基づいて日平均アンモニア濃度を算出する(ステップS102)。日平均アンモニア濃度取得部13は、算出した現時点における日平均アンモニア濃度を第2の目標値取得部15に出力する。
【0041】
第1の目標値取得部14は、取得された現在のアンモニア濃度の測定値と、第1設定情報が示すアンモニア濃度と第1の送風量目標値との関係性とに基づいて、現時点における第1の送風量目標値を取得する(ステップS103)。第1の目標値取得部14は、取得した第1の送風量目標値を第2の目標値取得部15に出力する。
【0042】
第2の目標値取得部15は、日平均アンモニア濃度取得部13によって算出された現時点における日平均アンモニア濃度と、第2設定情報が示す日平均アンモニア濃度の目標値とに基づいて、第1の送風量目標値の補正値ΔYを決定する(ステップS104)。具体的には、第2の目標値取得部15は、現時点における日平均アンモニア濃度がその目標値以上であるか否かを判定する。現時点における日平均アンモニア濃度が目標値未満である場合、第2の目標値取得部15は、補正値ΔY=0とする。一方、現時点における日平均アンモニア濃度が目標値以上である場合、第2の目標値取得部15は、現時点における日平均アンモニア濃度と目標値との差に比例パラメータk1を乗じた値を補正値ΔYとする。
【0043】
第2の目標値取得部15は、決定した補正値ΔYと第1の目標値取得部14が算出した第1の送風量目標値とに基づいて、第2の送風量目標値を算出する(ステップS105)。具体的には、第2の目標値取得部15は、第1の送風量目標値に補正値ΔYを加えた値を第2の送風量目標値とする。そして、第2の目標値取得部15は、送風機50の送風量が算出した第2の送風量目標値となるように送風機50を制御する(ステップS106)。
【0044】
図4は、第1の実施形態の有機排水処理システム100によって実現される省エネルギー効果の具体例を示す図である。
図4(A)は、有機排水処理システム100に流入する窒素量の1日の変動パターンの具体例を示す。
図4(B)は、生物反応槽20の出口付近のアンモニア濃度を一定とする従来の制御方式の具体例を示す。
図4(C)は、本実施形態の有機排水処理システム100における制御方式の具体例を示す。
図4(D)は、従来の制御方式において決定される送風量目標値と、本実施形態の制御方式において決定される送風量目標値との比較を示す。
【0045】
1日の流入窒素量が
図4(A)のように変動する場合、有機排水処理システム100にかかる窒素除去に関する負荷は時点1で最大となり、時点2で最小となる。このような変動パターンで流入する下水に対して、
図4(B)に示す従来の制御方式でアンモニア濃度を一定に保つように送風機50の送風量を制御した場合、時点1における送風量目標値と時点2における送風量目標値との差が大きくなり、
図4(D)に示すように、制御しようとする送風量の範囲が、送風量の動作可能範囲を超えてしまう場合がある。このような状況では、低負荷時においても十分に送風量を下げることができず、十分な省エネルギー効果を得ることができなくなる。
【0046】
これに対して、本実施形態の制御方式では、現時点におけるアンモニア濃度の移動平均値(日平均アンモニア濃度)に基づいて送風量目標値を決定する。この場合、
図4(C)に示すように、高負荷時のアンモニア濃度は従来方式よりも高くなるものの、低負荷時のアンモニア濃度が従来方式よりも低くなる。また、この場合、
図4(D)に示すように、高負荷時(例えば時点1)の送風量目標値は従来方式よりも低くなり、低負荷時(例えば時点2)の送風量目標値は従来方式よりも高くなる。すなわち、本実施形態の制御方式は、1日における送風量目標値の変動幅を小さくすることができる。
【0047】
このように構成された第1の実施形態の送風量制御装置1は、送風量目標値を常に送風機50の動作可能範囲内に設定することができるため、より高い省エネルギー効果を得ることが可能となる。また、本実施形態の制御方式は、使用する送風機の動作可能範囲の制約を従来方式よりも緩和することができるため、既設の水処理設備に対しても容易に導入することができる。
【0048】
(変形例)
第1の送風量目標値の補正値△Yは、日平均アンモニア濃度とその目標値との差に基づいて決定されるものであれば、どのような方法で決定されてもよい。例えば、補正値ΔYは、次の式(7)によって算出されてもよい。
【0049】
【0050】
式(7)において、LNH4は所定のマージン値を表す。例えば、LNH4の値が0.1[mg/L]に、CNH4の値が1.0[mg/L]にそれぞれ設定されている場合、MNH4(日平均アンモニア濃度)が0.9[mg/L]を超えたときに第1の送風量目標値が補正される。そのため、式(5)及び(6)を用いて補正値ΔYを決定する場合に比べて、日平均アンモニア濃度が、目標値である1.0[mg/L]を超過するリスクを低下させることが可能となる。
【0051】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態における有機排水処理システム100aの構成の具体例を示す図である。有機排水処理システム100aは、流入流量計24をさらに備える点、送風量制御装置1に代えて送風量制御装置1aを備える点で第1の実施形態における有機排水処理システム100と異なる。他の構成は第1の実施形態の有機排水処理システム100と同様のため、
図1と同じ符号を付すことにより同様の構成の説明を省略する。
【0052】
流入流量計24は、最初沈澱池10から生物反応槽20に流入する被処理水の流量(以下「流入流量」という。)を測定する。流入流量計24は、所定のタイミングで周期的に流入流量を測定し、測定した流入流量を示す情報を送風量制御装置1aに送信する。なお、流入流量計24は、生物反応槽20に流入する被処理水の流量を測定可能な位置であれば、
図5に示す位置に限らず、どのような位置に設置されてもよい。
【0053】
送風量制御装置1aは、第1設定部11に代えて第1設定部11aを備える点、第1の目標値取得部14に代えて第1の目標値取得部14aを備える点、第2の目標値取得部15に代えて第2の目標値取得部15aを備える点で第1の実施形態における送風量制御装置1と異なる。他の機能部は第1の実施形態の送風量制御装置1と同様のため、
図1と同じ符号を付すことにより同様の機能部の説明を省略する。
【0054】
第1設定部11aは、第1の目標値取得部14aに対して、アンモニア濃度と送風量の空気倍率の目標値(以下「空気倍率目標値」という。)との関係を示す情報を第1設定情報として出力する。第1の実施形態と同様に、第1設定情報は、アンモニア濃度を入力として空気倍率目標値を出力する関数を示す情報であってもよいし、個々のアンモニア濃度又はアンモニア濃度の範囲に対して空気倍率目標値が対応づけられたテーブルを示す情報であってもよい。
【0055】
図6は、第2の実施形態における第1設定情報の具体例を示す図である。
図6は、第2の実施形態における第1設定情報が、第1の実施形態と同様の目標値関数(
図2参照)として表される場合の具体例を示す。
図6(A)~(C)のそれぞれにおいて、実線は目標値関数を表し、破線は第1の空気倍率目標値Z
1をΔZで補正することによって得られる第2の送風量目標値Z
2を表す。第1の実施形態と同様に、測定された現在のアンモニア濃度に応じて定まる第2の空気倍率目標値が、実際の制御に用いられる空気倍率目標値となる。これらの目標値関数は、第1の実施形態と同様に、過去の運転データ等に基づいて決定されるとよい。
【0056】
図5の説明に戻る。第1の目標値取得部14aは、第1設定部11aから出力された第1設定情報と、アンモニア濃度計21によって取得された生物反応槽20の現在のアンモニア濃度とに基づいて、第1の空気倍率目標値を算出する。例えば、第1設定情報は、次の式(8)に示す関数Gによって表される。
【0057】
【0058】
【0059】
式(8)において、Z1は現在のアンモニア濃度に対応する第1の空気倍率目標値を表す。第1の目標値取得部14aは、算出した第1の空気倍率目標値を第2の目標値取得部15aに出力する。
【0060】
第2の目標値取得部15aは、第2設定部12から出力された第2設定情報と、日平均アンモニア濃度取得部13によって取得された日平均アンモニア濃度と、第1の目標値取得部14aによって取得された第1の空気倍率目標値とに基づいて、第2の空気倍率目標値を算出する。例えば、第2の目標値取得部15aは、次の式(10)によって第1の空気倍率目標値の補正値ΔZを算出する。
【0061】
【0062】
式(10)において、k2は、日平均アンモニア濃度とその目標値との差分に基づいて補正値ΔZを決定するための比例パラメータ[1/(mg/L)]である。第2の目標値取得部15aは、このように算出した補正値ΔZを用いて第1の空気倍率目標値を補正することにより、実際の制御に用いる最終的な空気倍率目標値として第2の空気倍率目標値を取得する。例えば、第2の目標値取得部15aは、次の式(11)によって第2の空気倍率目標値Z2を算出する。
【0063】
【0064】
第2の目標値取得部15aは、送風機50の送風量が、算出した第2の空気倍率目標値に基づく送風量となるように送風機50を制御する。例えば、第2の目標値取得部15aは、インバータにより送風ファンを駆動するモータの回転数を制御する。なお、空気倍率をZとした場合の送風量Y[m3/h]は、流入流量計24によって測定される流入流量Qin[m3/h]を用いて次の式(12)によって表される。
【0065】
【0066】
このように構成された第2の実施形態の送風量制御装置1aは、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0067】
(変形例)
第1の実施形態における送風量目標値と同様に、空気倍率目標値の補正値ΔZは、日平均アンモニア濃度とその目標値との差に基づいて決定されるものであれば、どのような方法で決定されてもよい。例えば、補正値ΔZは、第1の実施形態と同様にマージン値を含めて算出されてもよい。
【0068】
(第3の実施形態)
図7は、第3の実施形態における有機排水処理システム100bの構成の具体例を示す図である。有機排水処理システム100bは、DO濃度計25をさらに備える点、送風量制御装置1に代えて送風量制御装置1bを備える点で第1の実施形態における有機排水処理システム100と異なる。他の構成は第1の実施形態の有機排水処理システム100と同様のため、
図1と同じ符号を付すことにより同様の構成の説明を省略する。
【0069】
DO濃度計25は、例えば生物反応槽20の下流側の出口付近に設置され、最終沈澱池30に送られる上澄み水のDO(Dissolved Oxygen:溶存酸素)濃度を測定する。DO濃度計25は、所定タイミングで周期的にDO濃度を測定し、測定したDO濃度を示す情報を、送風量制御装置1bに送信する。なお、DO濃度計25は、アンモニアがある程度除去された状態の被処理水を測定可能な位置であれば、どのような位置に設置されてもよい。例えば、DO濃度計25は、アンモニア濃度計21と同じ位置に設置されてもよいし、生物反応槽20と最終沈澱池30との間の配水路に設置されてもよいし、最終沈澱池30に設置されてもよい。
【0070】
送風量制御装置1bは、第1設定部11に代えて第1設定部11bを備える点、第1の目標値取得部14に代えて第1の目標値取得部14bを備える点、第2の目標値取得部15に代えて第2の目標値取得部15bを備える点、DO制御部16をさらに備える点で第1の実施形態における送風量制御装置1と異なる。他の機能部は第1の実施形態の送風量制御装置1と同様のため、
図1と同じ符号を付すことにより同様の機能部の説明を省略する。
【0071】
第1設定部11bは、第1の目標値取得部14bに対して、アンモニア濃度とDO濃度の目標値(以下「DO目標値」という。)との関係を示す情報を第1設定情報として出力する。第1の実施形態と同様に、第1設定情報は、アンモニア濃度を入力としてDO目標値を出力する関数を示す情報であってもよいし、個々のアンモニア濃度又はアンモニア濃度の範囲に対してDO目標値が対応づけられたテーブルを示す情報であってもよい。
【0072】
図8は、第3の実施形態における第1設定情報の具体例を示す図である。
図8は、第3の実施形態における第1設定情報が、第1の実施形態と同様の目標値関数(
図2参照)として表される場合の具体例を示す。
図8(A)~(C)のそれぞれにおいて、実線は目標値関数を表し、破線は第1のDO目標値D
1をΔDで補正することによって得られる第2のDO目標値D
2を表す。第1の実施形態と同様に、測定された現在のアンモニア濃度に応じて定まる第2のDO目標値が、実際の制御に用いられるDO目標値となる。これらの目標値関数は、第1の実施形態と同様に、過去の運転データ等に基づいて決定されるとよい。
【0073】
図7の説明に戻る。第1の目標値取得部14bは、第1設定部11bから出力された第1設定情報と、アンモニア濃度計21によって取得された生物反応槽20の現在のアンモニア濃度とに基づいて、第1のDO目標値を算出する。例えば、第1設定情報は、次の式(13)に示す関数Hによって表される。
【0074】
【0075】
【0076】
式(13)において、D1は現在のアンモニア濃度に対応する第1のDO目標値を表す。第1の目標値取得部14bは、算出した第1のDO目標値を第2の目標値取得部15bに出力する。
【0077】
第2の目標値取得部15bは、第2設定部12から出力された第2設定情報と、日平均アンモニア濃度取得部13によって取得された日平均アンモニア濃度と、第1の目標値取得部14bによって取得された第1のDO目標値とに基づいて、第2のDO目標値を算出する。例えば、第2の目標値取得部15bは、次の式(15)によって第1のDO目標値の補正値ΔDを算出する。
【0078】
【0079】
式(15)において、k3は、日平均アンモニア濃度とその目標値との差分に基づいて補正値ΔDを決定するための比例パラメータである。第2の目標値取得部15bは、このように算出した補正値ΔDを用いて第1のDO目標値を補正することにより、実際の制御に用いる最終的なDO目標値として第2のDO目標値を取得する。例えば、第2の目標値取得部15bは、次の式(16)によって第2のDO目標値D2を算出する。第2の目標値取得部15bは、算出した第2のDO目標値をDO制御部16に出力する。
【0080】
【0081】
DO制御部16は、送風機50の送風量が、第2の目標値取得部15bによって算出された第2のDO目標値に基づく送風量となるように送風機50を制御する。例えば、DO制御部16は、インバータにより送風ファンを駆動するモータの回転数を制御する。この場合、ある時刻tにおけるDO濃度の測定値をD(t)とすると、時刻tにおける送風量目標値Y(t)は、例えば次の式(17)~(19)によって算出される。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
式(17)~(19)は、PI制御(Proportional-Integral Controller)やPID制御(Proportional-Integral Controller)等のフィードバック制御の一例である速度型PI制御を表す式である。式(17)~(19)において、Y(t)は時刻tにおける送風量目標値を表す。Kp及びTIは、それぞれPI制御パラメータである比例ゲイン及び積分定数を表す。Δtは制御周期を表し、ΔY(t)は時刻tにおける送風量目標値の変化量を表す。D2(t)は、時刻tにおいて第2の目標値取得部15bから出力される第2のDO目標値を表す。
【0086】
このように構成された第3の実施形態の送風量制御装置1bは、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。なお、第3の実施形態の有機排水処理システム100bは、DO濃度の目標値に基づいて送風量を制御するため、第1の実施形態や第2の実施形態に比べて流入水質や流入水量の変動に対して、処理水の水質を担保しやすいという利点がある。このため、第3の実施形態の送風量制御装置1bは、流入水量や流入水質の変動が大きい下水処理場等の有機排水処理施設に適しており、変動が小さい食品工場等の有機排水処理施設には、第1の実施形態の送風量制御装置1又は第2の実施形態の送風量制御装置1aが適していると考えられる。
【0087】
(第4の実施形態)
図9は、第4の実施形態における有機排水処理システム100cの構成の具体例を示す図である。有機排水処理システム100cは、送風量制御装置1bに代えて送風量制御装置1cを備える点で第3の実施形態における有機排水処理システム100bと異なる。さらに、送風量制御装置1cは、第1設定部11bに代えて第1設定部11cを備える点で第3の実施形態の送風量制御装置1bと異なる。他の構成は第3の実施形態の有機排水処理システム100bと同様のため、
図7と同じ符号を付すことにより同様の構成の説明を省略する。
【0088】
第1設定部11cは、第1の目標値取得部14bに対して、アンモニア濃度とDO目標値との関係を日の種別ごとに示す情報を第1設定情報として出力する。日の種別は、流入する排水の水量や水質、流入パターン等、水処理に影響する諸要素(以下「影響要素」という。)が他の日とは大きく異なることが予想される日であればどのように定義されてもよい。
【0089】
図10は、第4の実施形態における第1設定情報の具体例を示す図である。
図10は、
アンモニア濃度とDO目標値との関係を、平日、休祝日及び特異日ごとに示す第1設定情報の例である。例えば、特異日はゴールデンウィーク等の連休として定義されてもよいし、夏季や冬期等の季節ごとの連休として定義されてもよい。なお、第1設定情報は、
図10に示す以外の種別で表されてもよい。例えば、第1設定情報は、曜日別に表れてもよいし、平日又は休日別に表されてもよい。送風量制御装置1cは、処理日に応じた第1設定情報に基づいて、第3の実施形態と同様の処理を行う。
【0090】
このように構成された第4の実施形態の送風量制御装置1cは、処理日の特性に応じて送風機50の送風量を制御することができる。そのため、より省エネルギー効果を高めることが可能となる。
【0091】
特に下水処理場においては、人の活動パターンにより、下水処理場に流入する水量や水質が大きく異なる場合がある。例えば、居住地域においては、休祝日や特異日に平日における水量が増加し、処理水の水質が悪化する傾向がある。一方、工場地域などでは、休祝日に人口が減るため、水量が減少し、処理水の水質が向上する傾向がある。そのため、処理対象とする地域の特性や、日の種別ごとの特性に応じた第1設定情報を用いることにより、省エネルギー効果を高めることが可能となる。
【0092】
(変形例)
第1設定情報は、必ずしも日の種別ごとに表される必要はない。例えば、第1設定情報は、時間帯別に表されてもよい。また、例えば、第1設定情報は、晴天時及び雨天時等の天候別に表されてもよい。また、例えば、第1設定情報は、月や週など、複数日からなる期間別に表されてもよい。
【0093】
このような日又は期間ごとに設定される第1設定情報に基づいて第1の目標値を算出する構成は、第1~第3の実施形態の送風量制御装置に適用されてもよい。
【0094】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、生物反応槽内の被処理水のアンモニア濃度の日平均アンモニア濃度(移動平均アンモニア濃度の一例)を算出する日平均アンモニア濃度取得部(移動平均アンモニア濃度取得部の一例)と、日平均アンモニア濃度と、日平均アンモニア濃度の目標値との差に基づいて生物反応槽に空気を供給する送風機の送風量を制御する第1及び第2の目標値取得部(制御部の一例)と、を持つことにより、より高い省エネルギー効果を得ることができる。
【0095】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0096】
100,100a,100b,100c…有機排水処理システム、1,1a,1b,1c…送風量制御装置、11,11a,11b,11c…第1設定部、12…第2設定部、13…日平均アンモニア濃度取得部、14,14a,14b…第1の目標値取得部、15,15a,15b…第2の目標値取得部、16…DO(Dissolved Oxygen)制御部、10…最初沈澱池、20…生物反応槽、21…アンモニア濃度計、22…空気配管、23…吹き出し管、24…流入流量計、25…DO濃度計、30…最終沈澱池、40…返送汚泥ポンプ、50…送風機