(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】複合ケーブルの断線予測装置及び静電コーティング装置用高電圧電源装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/54 20200101AFI20220314BHJP
B05B 5/053 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
G01R31/54
B05B5/053
(21)【出願番号】P 2017156686
(22)【出願日】2017-08-14
【審査請求日】2020-02-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000232461
【氏名又は名称】日本電波株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 新一
(72)【発明者】
【氏名】小原 一洋
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-305478(JP,A)
【文献】特開平10-326526(JP,A)
【文献】特開2011-78860(JP,A)
【文献】実開平4-60374(JP,U)
【文献】特開2001-208783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/50-31/74
B05B 5/00-5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの機器を相互に接続する、少なくとも2本以上のケーブル線を含む複合ケーブルの断線予測装置であって、
前記ケーブル線のうちの少なくとも1本は、複数の絶縁被覆された素線を用いた検出線であり、
前記複合ケーブルは、一端において前記検出線と接続された基準線を有し、前記基準線は素線を相互に絶縁しないで束ねたものであり、
前記検出線と前記基準線との直列接続を含み、かつ前記直列接続が直列に挿入された1つの前記検出通電経路と、
基準電圧を発生する基準電圧発生源と、
前記基準電圧を前記検出通電経路に供給する電流制限抵抗と、
前記検出通電経路の電圧を検出する電圧検出手段と、を有し、
前記電圧検出手段で検出された前記検出通電経路の両端の検出電圧値の変化により前記検出線の断線率の増加を検出する
ものであって、
前記電圧検出手段は、前記検出線の両端の第一の電圧を検出する第一電圧検出手段と、前記基準線の両端の第二の電圧を検出する第二電圧検出手段と、を有し、
前記第一の電圧と第二の電圧の比率を用いて断線率を算出することを特徴とする複合ケーブルの断線予測装置。
【請求項2】
静電的に荷電されるコーティング材料粒子を散布する静電コーティング装置に用いられる高電圧電源装置であって、
一次巻線及び二次巻線を有する高圧トランスと、前記二次巻線の誘起電圧を整流する高電圧整流器とを有し、前記高電圧整流器の出力電圧を、静電電位利用の塗装機器に供給する高電圧発生部と、
前記一次巻線に流れる電流をスイッチングする高電圧制御部と、
前記高電圧発生部と前記高電圧制御部とを接続する複合ケーブルとを備え、
前記複合ケーブルは、複数の絶縁被覆された素線を用いた検出線と、前記高電圧発生部において、前記検出線と接続された基準線とを有し、前記基準線は素線を相互に絶縁しないで束ねたものであり、
前記高電圧制御部は、
前記一次巻線に電圧を供給する第一の電源と、
基準電圧を発生する第二の電源と、
前記検出線及び前記基準線の直列接続を含む1つの検出通電経路に、前記基準電圧を供給する電流制限抵抗と、
前記検出線の両端の第一の電圧を検出する第一電圧検出手段と、
前記基準線の両端の第二の電圧を検出する第二電圧検出手段と、を有し、
前記高電圧制御部は、前記第一の電圧と第二の電圧の比率を用いて前記検出線の断線率を算出することを特徴とする静電コーティング装置用高電圧電源装置。
【請求項3】
前記検出線と前記基準線は、前記一次巻線のセンタータップに接続され、また、前記一次巻線の他の端子の一つは、前記第一電圧検出手段及び前記第二電圧検出手段に接続し、
切替手段により、前記第一の電源出力と前記第二の電源出力を切り替えて前記検出線に供給し、前記検出線と前記基準線は前記一次巻線への電源供給線を兼ねることを特徴とする請求項
2に記載の静電コーティング装置用高電圧電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルの断線を予測する機能を有する断線予測装置、及び静電的に荷電されるコーティング材料粒子を散布する静電コーティング装置に用いられる、前記断線予測装置を含む高電圧電源装置に関する。例えば、塗装ブース内に配置される静電塗装機に含まれる高電圧発生部と、塗装ブースの外部に設置される制御部とを接続するケーブル断線を予測可能な高電圧電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の静電コーティング装置における高電圧電源装置は、高圧トランスとその二次側の電圧増倍回路(例えば倍電圧整流回路)とを含む高電圧発生モジュールと、高圧トランス一次側に流れる電流をスイッチングする駆動回路とこれにドライブ信号を供給するコントローラとを含む高電圧制御部とを備えている。コーティング材料は、液体のペイント材料などが用いられる。
【0003】
自動車ボディの塗装システムなどでは、塗装ロボットのアームの先端に高電圧発生モジュールを内蔵した静電塗装機を備えている。この静電塗装機は塗装ブースの外部に設置した高電圧制御部とケーブルを通じて接続される。高電圧制御部に含まれるコントローラは、駆動回路にドライブ信号を供給し、最長30m程度のケーブルを介して高圧トランスの一次側に周期的ないし振動的な駆動電圧を発生させる。これにより高圧トランスの二次側に高電圧が発生し、これが電圧増倍回路へ加えられ、電圧増倍回路の出力高電圧が静電電位利用の静電塗装機に供給されるようになっている。また、高圧トランスの二次側に流れる電流に比例した電圧、高電圧に比例した電圧が前記ケーブルを経由して高電圧制御部に入力され、高電圧制御部は一定の高電圧を発生する制御を行ったり、高圧トランスの二次側に流れる電流が異常の場合に、高電圧を停止する制御を行う高電圧電源装置が知られている。
【0004】
塗装作業により、ロボットは被塗装物の形状に沿って静電塗装機を移動させるが、この際に接続ケーブルに屈曲が発生して、ケーブルの劣化が発生することがある。ケーブルは、一般にシールド構成を持つ多芯のキャブタイヤケーブルが用いられる。ケーブルを構成する銅線の脆性劣化により、断線が発生することが知られている。
【0005】
従来の断線、または劣化検出の方法としては、下記のような方法が知られている。
(1)特許文献1に示すように、多芯ケーブルの信号の一つに、検出用途を兼ねた信号を用いるもの。
(2)特許文献2に示すように、断線検出用信号を多芯ケーブルの信号の一つに用い、多芯ケーブルの機械的寿命が短い検出線に断線検出用信号を印加するもの。
(3)特許文献3、4に示すように、ケーブルの抵抗値を観測し、撚り線の断線による抵抗値変化や電圧変化を検出するもの。
(4)特許文献5に示すように、複数の被覆された素線の部分的な断線を検出する手法として、部品として長さが決まった線路の断線率を検出する方式が知られている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1では、ケーブルの劣化が進んだ断線の状態になった後に検出を行う方式であり、断線の進行状況すなわち予兆を発見することができないという問題があった。上記特許文献2では、多芯ケーブルの構造や、屈曲寿命の異なる特殊な構造のケーブルを用いる必要があった。また、一般に検出線の素線の直径や材質に対する屈曲寿命は予想が難しく、設置した環境により予知線の破断が遅すぎたり、早すぎたりするばらつきが発生する問題があった。上記特許文献3、4では、抵抗値変化により連続的な劣化の検出を試みるものの、銅線の抵抗率が低いため、断線区間による電圧降下を検出するために高精度の回路が必要となり、また、ケーブルの一区間で発生した断線による抵抗値変化は、ケーブル全長による抵抗値に対して微小であり、この場合もかなり破断が進んだ状態で検出を行うものであった。また、検出のために比較的大きな電流を流す場合があるが、ケーブルを構成する素線の断線が進んでいる場合、断線部分の過熱が発生するため、塗装溶剤の引火を防ぐ観点から好ましくない。また、特許文献5は、主にコイルなどの製造不良の摘出を行う技術であり、実際に高電圧電源装置に使用されるケーブルは、設置場所のレイアウトによりケーブル長がそれぞれ異なり、また、素線の導電率や断面積のばらつきといったケーブル製造上のばらつきにより基準となる抵抗値を求めるのが困難であるため、これらケーブルの抵抗値を高精度で測定しつつ、設置場所での設置を簡便に行う方法としては不適切である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-252465公報
【文献】特開2011-42004公報
【文献】特開2001-208783公報
【文献】特開2012-68171公報
【文献】特開平6-292243公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、2つの機器を相互に接続するケーブル、例えば静電塗装機と制御部間を接続するケーブルの断線を予測し、計画的なケーブル交換を行うことで設備の保全時間を短縮可能な断線予測装置及び静電コーティング装置用高電圧電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は複合ケーブルの断線予測装置である。この複合ケーブルの断線予測装置は、2つの機器を相互に接続する、少なくとも2本以上のケーブル線を含む複合ケーブルの断線予測装置であって、
前記ケーブル線のうちの少なくとも1本は、複数の絶縁被覆された素線を用いた検出線であり、前記複合ケーブルは、一端において前記検出線と接続された基準線を有し、前記基準線は素線を相互に絶縁しないで束ねたものであり、
前記検出線と前記基準線との直列接続を含み、かつ前記直列接続が直列に挿入された1つの前記検出通電経路と、
基準電圧を発生する基準電圧発生源と、
前記基準電圧を前記検出通電経路に供給する電流制限抵抗と、
前記検出通電経路の電圧を検出する電圧検出手段と、を有し、
前記電圧検出手段で検出された前記検出通電経路の両端の検出電圧値の変化により前記検出線の断線率の増加を検出するものであって、
前記電圧検出手段は、前記検出線の両端の第一の電圧を検出する第一電圧検出手段と、前記基準線の両端の第二の電圧を検出する第二電圧検出手段と、を有し、
前記第一の電圧と第二の電圧の比率を用いて断線率を算出することを特徴とする。
【0013】
本発明の第2の態様は静電的に荷電されるコーティング材料粒子を散布する静電コーティング装置用高電圧電源装置である。この静電コーティング装置用高電圧電源装置は、一次巻線及び二次巻線を有する高圧トランスと、前記二次巻線の誘起電圧を整流する高電圧整流器とを有し、前記高電圧整流器の出力電圧を、静電電位利用の塗装機器に供給する高電圧発生部と、前記一次巻線に流れる電流をスイッチングする高電圧制御部と、前記高電圧発生部と前記高電圧制御部とを接続する複合ケーブルとを備え、
前記複合ケーブルは、複数の絶縁被覆された素線を用いた検出線と、前記高電圧発生部において、前記検出線と接続された基準線とを有し、前記基準線は素線を相互に絶縁しないで束ねたものであり、
前記高電圧制御部は、
前記一次巻線に電圧を供給する第一の電源と、
基準電圧を発生する第二の電源と、
前記検出線及び前記基準線の直列接続を含む1つの検出通電経路に、前記基準電圧を供給する電流制限抵抗と、
前記検出線の両端の第一の電圧を検出する第一電圧検出手段と、
前記基準線の両端の第二の電圧を検出する第二電圧検出手段と、を有し、
前記高電圧制御部は、前記第一の電圧と第二の電圧の比率を用いて前記検出線の断線率を算出することを特徴とする。
【0014】
前記第2の態様において、前記検出線と前記基準線は、前記一次巻線のセンタータップに接続され、また、前記一次巻線の他の端子の一つは、前記第一電圧検出手段及び前記第二電圧検出手段に接続し、
切替手段により、前記第一の電源出力と前記第二の電源出力を切り替えて前記検出線に供給し、前記検出線と前記基準線は前記一次巻線への電源供給線を兼ねる構成であるとよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、2つの機器を相互に接続する複合ケーブルのケーブル線のうちの少なくとも一つを、複数の被覆された素線を用いた検出線とし、この検出線を含む検出経路の電圧を用いて、従来の方式よりも高い精度で、検出線の断線率を検出することで、ケーブルの断線を予測可能である。この結果、計画的なケーブル交換を行うことで設備の保全時間を短縮可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態1であって、断線予測機能を有する静電コーティング装置用高電圧電源装置を示すブロック図。
【
図2】断線率Kdに対する検出電圧Vdを示すグラフ。
【
図3】断線率Kdに対する検出電圧Vd及び検出線の抵抗変化を示す表。
【
図4】本発明の実施の形態2であって、断線予測機能を有する静電コーティング装置用高電圧電源装置を示すブロック図。
【
図5】本発明の実施の形態3であって、断線予測機能を有する静電コーティング装置用高電圧電源装置を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0020】
<実施の形態1>
図1乃至
図3で本発明の実施の形態1である静電コーティング装置用高電圧電源装置を説明する。
図1に示す静電コーティング装置用高電圧電源装置は、高電圧を発生して噴射器(ガン)10に供給する高電圧発生部としての高電圧発生モジュール20と、高電圧発生モジュール20の出力を制御するとともに効率を最適化するための高電圧制御部30と、両者を接続するケーブル40とを有する。噴射器10は静電電位利用の塗装機器であって、荷電コーティング材料粒子を対象物に散布するものであり、高電圧発生モジュール20は通常、噴射器10のケーシング内に収納されているため、ケーブル40で高電圧制御部30と電気的に接続される。
【0021】
高電圧発生モジュール20は、一次巻線21a及び二次巻線21bを有する高圧トランス21と、二次巻線21bの誘起電圧を整流し増倍する電圧増倍回路22(例えば倍電圧整流回路)とを有し、電圧増倍回路22の高電圧出力が噴射器10に供給される。高電圧出力検出用の抵抗R21、R22の直列回路の一端は電圧増倍回路22の出力端に接続され、他端は電圧コモン端子201fに接続される。抵抗R21、R22の接続点は高電圧出力を検出する端子201gに接続される。高電圧電流検出用の抵抗R23は、二次巻線21bに接続されており、一端は高電圧電流を検出する端子201eに、他端は電圧コモン端子201fに接続される。
【0022】
高電圧制御部30は、駆動回路31、32、入力回路33、34、可変制御安定化電源35、マイクロコントローラ(略称:マイコン)50、基準電圧発生回路51、切替手段としてのスイッチ52、電流制限抵抗RL、及び電圧検出手段としての増幅回路501、502(例えば演算増幅器)を有する。駆動回路31、32はマイコン50からのドライブ信号を受けて高圧トランス21の一次巻線21aに流れる電流をスイッチングするものである。
【0023】
ケーブル40は、多数本のケーブル線を束ねた多芯の集合ケーブル(複合ケーブルとも言う)であり、その長さは最大30m~40m程度である。ケーブル線401e~401gは制御用の信号線であり、主にコネクタや端子の仕様や加工性のため0.2mm2~0.4mm2程度の断面積を持つ信号線が用いられる。これに対して、電源用信号線401a~401dは、高電圧発生モジュール20の効率を考慮して、0.5mm2~0.9mm2程度の断面積を持つ信号線を使用する。401hはケーブルのシールド部分であり、高電圧制御部30の電圧コモン端子301hに接続され、アース(グラウンドに接続)される。
【0024】
高電圧発生モジュール20の高電圧電流を検出する端子201e及び高電圧出力を検出する端子201gは、それぞれケーブル線401e、401gにより、高電圧制御部30の端子301e、301gを経由して入力回路33、34に接続される。高電圧発生モジュール20の電圧コモン端子201fは、ケーブル線401fにより高電圧制御部30の電圧コモン端子301fに接続される。
【0025】
高圧トランス21の一次巻線21aはセンタータップを有し、このセンタータップは高電圧発生モジュール20のセンタータップ端子201a、201bに接続される。センタータップ端子201aは、ケーブル線401a、高電圧制御部30のセンタータップ端子301a、スイッチ52を介し可変制御安定化電源35に接続され、センタータップ端子201bは、ケーブル線401b、高電圧制御部30のセンタータップ端子301bを介し可変制御安定化電源35に接続される。つまり、高圧トランス21の駆動電圧として、可変制御安定化電源35の出力電圧を、ケーブル401a、401bを介して、センタータップ端子201a、201bに供給可能となっている。一次巻線21aの両端は、それぞれ高電圧発生モジュール20のドライブ信号端子201c、201dに接続され、さらにケーブル線401c、401dにより、高電圧制御部30のドライブ信号端子301c、301dを経由して駆動回路31、32に接続される。これら駆動回路31、32は既知の技術により、マイコン50からの相補的な2相のドライブ信号で駆動される。
【0026】
本実施の形態1では、ケーブル40の一部である、検出線としてのケーブル線401aの断線の割合を、基準電圧発生回路51、スイッチ52、電流制限抵抗RL、増幅回路501、502、長さが等しいケーブル線401a、401bを用いて検出することができる。検出線としてのケーブル線401aは、リッツ線などの複数の被覆された素線を用いた線を使用する。一方、基準線となるケーブル線401bを含む他のケーブル線はリッツ線などの複数の被覆された素線を用いるのではなく、素線を相互に絶縁しないで束ねたものを絶縁被覆したケーブル線である。但し、他の信号線としてのケーブル線と劣化の速度が著しく変わらないよう、検出線としてのケーブル線401aを構成する素線の直径と本数は、他の電源用信号線と同等とすることが好ましい。例えば、ケーブル40の線路長30m程度とした場合、一般的に入手容易な直径0.1mmの素線を使用し、100本を撚り線とした構成を用いる。断面積は0.785mm2 程度となる。
【0027】
既知の技術による駆動回路31、32の方式により、一次巻線21aのセンタータップ流れる電流は、ドライブ信号端子201c、201dに流れる電流の2倍である。このため、ケーブル線401c、401dに対して、センタータップ端子201a、201bにケーブル線401a、401bをそれぞれ接続して、2本の信号線により駆動電流を供給している。つまり、運転中はスイッチ52は可変制御安定化電源35の出力を端子301aに接続しており、マイコン50は、出力高電圧値に対応するセンタータップ電圧値を可変制御安定化電源35に指示し、可変制御安定化電源35の出力は、ケーブル線401bと、スイッチ52を経由してケーブル線401aとにより、高電圧発生モジュール20に供給される。
【0028】
塗装ロボットに取り付けられた噴射器10が、塗装作業により移動することにより、集合ケーブル40が屈曲を繰り返すと、ケーブル内の信号線を構成する素線が断線し、屈曲の回数により断線の比率が進むことになる。
【0029】
基準電圧発生回路51は、可変制御安定化電源35出力を基準として、基準電圧Vcを発生する。絶縁型の電源装置を用い、たとえば基準電圧Vc=2Vを発生する。電流制限抵抗RLは基準電圧発生回路51の出力に対し直列に挿入される。ケーブル状態を観測する際は、スイッチ52は抵抗RLを介して基準電圧を端子301aに印加する。また、駆動回路31、32は、計測時には共にOFF状態とし、電流が駆動回路31、32に流れない状態とする。
【0030】
この状態で端子301aと端子301cの間の電圧Vdを増幅回路501により測定する。これは検出線401aの電圧降下である。続いて端子301cと301bの間の電圧Vmを増幅回路502により測定する。これは検出線401aと同じ素線構成を持つ、基準線401bの電圧降下である。
【0031】
本発明の実施の形態1によれば、電圧VdとVmを用いて、ケーブル40の長さによらず、検出線としてのケーブル線401aの断線率を検出することができることを説明する。ケーブル線401aの抵抗値R1は、ケーブル長L、断線率Kd、温度T2のとき、式1のように記載できる。
【数1】
ここで、Kaは銅の抵抗値の温度係数=0.00393、Krは基準温度T1=20℃のときのケーブルの単位長さあたりの抵抗値である。前記記載のケーブル構成では、断面積0.785mm
2 程度であるので、Kr=0.022Ω/m程度である。
続く計算のため、基準となる係数Rrefを求める。Kd=0%、L1=30m、T2=20℃として、式1に代入し、Rref=0.66Ω となる。
【0032】
本発明の実施の形態1では、検出線401aにリッツ線などの複数の被覆された素線を用いた線を使用することで、断線率に応じて下記のように大きい抵抗変化を得ることができる。断線率Kd=50%、99%の場合は、同じ温度T2=20℃の条件では、断線率Kdにの応じて下記のように抵抗率が変化することで容易に理解される。
Kdが50%の場合のR1=1/(1-0.5)×Rref=2×0.66Ω
Kdが99%の場合のR1=1/(1-0.99)×Rref=100×0.66Ω
【0033】
一方、単なる抵抗値変化では、ケーブルの線路長Lと温度による抵抗値変化の影響を含んだものとなるため、基準線401bの抵抗値R2を用いて、式2、式3の関係から影響を打ち消すようにする。
【数2】
【0034】
基準線401bは、大幅に断線が進まないと、抵抗値が変化しないため、R2は一定値としてよい。たとえば、検出線401aと同様に、直径0.1mmの素線100本構成において、基準線の全長30m中の5mmが断線率99%であるとして、下記の試算により明確である。
ケーブルの単位長さあたりの抵抗値は、例として温度20℃の場合0.022Ωであるので、
30m区間の抵抗値=0.022Ω×30m =0.66Ω
5mm区間の抵抗値=2.2Ω×0.005m =0.011Ω
このように、極めて断線率の大きい区間があっても、上記の計算では0.011Ω÷0.66Ω=1.67%の抵抗変化である。
【0035】
また、本発明の実施の形態1の特徴として、検出線としてのケーブル線401a、基準線としてのケーブル線401bは、集合ケーブル40内において他のケーブル線と並走しており、また、他のケーブル線と同一のケーブル素線構成とすることで、温度に対する抵抗値の変化率を同一とすることができる。これは、ケーブル40全長の一部に温度変化がある場合についても補償可能である。
【0036】
式2、式3より、R2を断線率0%のR1と近似して、更に温度に対する変動を係数Rrefを用いて記載すると式4、式5を得る。
【数3】
式5を、Kdを求める式に変形して式6を得る。
【数4】
【0037】
下記に例を示す。ケーブル線401a、401bに前記の素線構成を用いた場合、温度20℃において、Vc=2V、RL=2Ω、ケーブル長L=30mの構成を用いると、Vd=0.85V、Vm=0.28Vのとき、Kd=0.67となる。これは、ケーブル401aの抵抗値1.98Ω、ケーブル401bの抵抗値0.66Ωに相応する。
【0038】
電流制限抵抗RLは、マイコン50内のA/Dコンバータの精度や抵抗RLの精度を考慮して決定する。下記に手順を説明する。
図2は、電流制限抵抗RLの抵抗値1Ω、2Ω、10Ωに対する、断線率Kd対検出電圧Vdの電圧をプロットした図である。Vc=2.0V、検出線としてのケーブル線401a、基準線としてのケーブル線401bに前記の素線構成を用いた例であり、温度20℃、ケーブル長は最大30mに対して、最少の値である10mとしている。
【0039】
また、
図3は
図2の各断線率Kdに対するVdの値と、断線率Kdに対応した検出線401aの抵抗(R1)の値を記載した表である。
【0040】
端子301a、301b間の抵抗値、すなわちケーブル線401aと401bの抵抗値の和が、抵抗RLに等しいとき、Vd+Vm=Vc×0.5となる。RLは、接続されるケーブル長の範囲と、断線率Kdが0~50%に対する電圧Vdの変化量が少なくともVcの5%~10%以上になる範囲で求める。また、この時の測定電流が約1A以下になるようにする。
【0041】
断線率0%から50%のときのR1の抵抗値の変化は、
図3から0.22Ωであり、RL=2Ωを使用すると、断線率0%から50%のときの電圧変化は0.33V-0.18V=0.15Vであり、、Vc=2.0Vの7.5%である。このときの測定の最大電流は、Vc÷(RL+R1+R2)=2V÷(2Ω+0.22Ω+0.22Ω)=0.82Aである。
【0042】
RL=1Ωを使用すると、断線率0%から50%のときの電圧変化は0.53V-0.18V=0.35Vであり、Vc=2.0Vの11%である。このときの測定の最大電流は、Vc÷(RL+R1+R2)=2.0V÷(1Ω+0.22Ω+0.22Ω)=1.39Aとなる。
断線率0%から50%のときのVc電圧変化より、RLは2Ω以下が適していることが分かる。この点から、RLが1Ωの場合も、ADコンバータの分解能の観点から適しているものの、基準電圧発生回路51の出力電流が1Aを超えることにより、基準電圧発生回路51の回路構成が大型化するため、RLは2Ωが適している。
【0043】
上記より、検出用の基準電圧Vcは2~4Vとし、また、RLは測定対象とするケーブル線の0%断線の抵抗値を基準とすると、RLはその5~15倍程度とし、測定電流ができるなら1Aを超えず、断線部分の過熱を考慮して2A以下としてVcとRLを調整すると良い。
【0044】
本発明に係る実施の形態1によれば、下記の効果を奏することができる。
【0045】
(1)多芯の集合ケーブル40を構成するケーブル線の一つを、複数の絶縁被覆された素線を用いた検出線401aとして、この検出線401aの電圧と、素線が個別に絶縁被覆されていない基準線401bの電圧を用いて、周囲温度やケーブル長の影響を補正し、従来の方式よりも高い精度で、検出線の断線率を検出することができる。断線率は素線数を30~150程度とすることで連続的に求めることができ、断線の状況を確認することで、集合ケーブル40が破断に至る前に、速やかにケーブル交換を行うことができる。なお、素線数30未満では断線率を段階的に変化させるには本数が不足し、素線数150を超えるとケーブルが太くなり過ぎるきらいがある。
(2)可動ケーブルとして用いられる集合ケーブル40は、その太さや重量により敷設時のケーブルの引き回しや交換時の保守性が大きく異なる。検出線401a及び基準線401bを構成するケーブル線は、高電圧発生モジュール20に接続する電源線を使用しており、ケーブル40の直径を増加することなく実施が可能である。ケーブル40の信号構成に追加が無いため、敷設時のケーブル40の引き回しや交換時の保守性を損なう事が無い。
(3)ケーブル長は、設置された工場内の配置により様々な線路長となるが、本実施の形態ではケーブル長の測定は必要無い。すなわち装置導入時の初期設定が容易である。
【0046】
なお、
図1の構成において、断線率を演算し、その増加を検出する制御装置として機能する部分は、検出線401a、基準線401b、マイコン50、基準電圧発生回路51、切替手段52、及び増幅回路501、502を含み、式1~式6の演算はマイコン50で行う。
【0047】
<実施の形態2>
本発明は、より簡略化した回路構成で実現することも可能であり、この場合を
図4に実施の形態2として示す。
図4は、ケーブル線401a、401bにリッツ線などの複数の被覆された素線を用いて、専用の検出線として使用した構成である。
図1に対して、検出線の構成が異なる部分のみ記載している。ケーブル線401a、401bは高電圧発生モジュール20側の端子211a、211bに接続されることで、基準電圧発生回路51が発生する基準電圧Vcによって、電流制限抵抗RL、高電圧制御部30側の端子311a、ケーブル線401a、高電圧発生モジュール20側の内部接続された端子211a、211b、ケーブル線401b、高電圧制御部30側の端子311bの経路で電流が流れる。
【0048】
なお、集合ケーブル40内で発生する断線を効果的に検出するため、2本の被覆された素線によるケーブル線401a、401bを、集合ケーブル内で隣接させず、集合ケーブル内で分けて配置すると良い。
【0049】
この構成においても、ケーブル長と温度変化の影響によらず、断線率を検出することが可能である。以下に式7から式12を用いて説明を行う。
検出電圧Vdは式7となる。断線が進むにつれて、式7におけるケーブル線401aの抵抗値R1、基準線401bの抵抗値R2がそれぞれ変化するため、電圧VdはR1及びR2の断線率に応じて変化する。ケーブル401aとケーブル401bについて、それぞれの断線率が40%以下である場合には、ほぼ断線率の平均値で近似できる。
【数5】
7式に対して、R1とR2の平均値をRcとすると式8となり、変形により式9を得る。
【数6】
ケーブル線401a、401bの基準温度T1、断線率0%における抵抗値をRrefとし、その時のVdをVd0として、RL/Rrefの定数を式10により求める。
【数7】
式9、式10は、後述で使用するので、次に所定の温度T2でのRcと、基準温度T1でのRrefに対する断線率Kdの関係式を使用すると、式11及び変形した式12のように表記することができる。
【数8】
【0050】
静電コーティング装置の設置時、または、ケーブル40の交換時には、断線率0%、基準温度T1として、基準となるVd0を測定し、式10により係数KRref=RL/(2Rref)を求める。たとえば、試算例として、温度T1=20℃、直径0.1mmの素線を使用し、100本を撚り線としたケーブルを用いると、Vc=3.3V、RL=2Ω、ケーブル長L=30mの場合、Vd0=1.31V、KRref=1.52である。マイコン50は、基準となる温度T1とVd0を温度値保持手段53、電圧値保持手段54にそれぞれ保持する。また、周囲温度は温度センサ55により測定する。
運転中に、式9によりRL/(2Rc)の値をVc、Vdの比より求め、これをKRcとする。
温度T2=40℃となり、Vd=1.55Vを測定し、KRc=1.13とする。
KRc÷KRref=RC/Rrefであり、更に既知のケーブルの温度係数Ka(=0.00393)を用いて、式12より、
Kd=1-(KRc/KRref)×(1+Ka(40℃-20℃))
=1-1.13/1.52×(1+Ka(40℃-20℃))=0.20
これは、R1の抵抗値が、ケーブル40の交換時に、温度T1=20℃において0.66Ω、断線が発生し、温度T2=40℃において0.89Ωに相当する。
【0051】
本発明に係る実施の形態2によれば、下記の効果を奏することができる。
【0052】
(1)多芯ケーブル40を構成するケーブル線のうちの2本を、複数の被覆された素線を用いた検出線401a、401bとして構成し、検出線401a、401bで高電圧発生モジュール20と高電圧制御部30間を折り返し接続することで、検出線401a、401bを含む検出経路の電圧と、周囲温度を用いて、周囲温度やケーブル長の影響を補正し、従来の方式よりも高い精度で、検出線401a、401bの断線率を検出することができる。断線率は検出線の素線数を30~150程度とすることで連続的に求めることができ、断線の状況を確認することで、集合ケーブル40が破断に至る前に、速やかにケーブル交換を行うことができる。
(2)検出線は2本であり、ケーブル線の追加を少なくしてケーブル40の直径の増加を抑えることができ、敷設時のケーブル40の引き回しや交換時の保守性の影響が少ない。
(3)断線率検出に必要な初期設定値を、設置時の検出電圧と温度とし、予めケーブル長を求める事なく容易かつ短時間のセットアップが可能である。
(4)静電コーティング装置は大きな工場構内に設置され、ケーブル40の抵抗値は温度変化の影響を受けやすい傾向があるが、周囲温度を考慮して(温度センサ55で温度検出を行うことで)断線予測の精度を向上させることができる。
【0053】
<実施の形態3>
本発明に係る実施の形態3を
図5を用いて説明する。この実施の形態3では、複数の被覆された素線からなる1本のケーブル線を検出線として用い、ケーブル40の信号追加を最少としている。
図5のケーブル線401aはリッツ線などの複数の被覆された素線であり、高電圧発生モジュール20側の端子211aと高電圧制御部30側の端子311aとを接続している。また、集合ケーブル40のシールド部分401hは高電圧発生モジュール20側の端子211hと高電圧制御部30側の電圧コモン端子311h(アース端子)とを接続している。従って、基準電圧発生回路51が発生する基準電圧Vcによって、電流制限抵抗RL、高電圧制御部30側の端子311a、ケーブル線401a、高電圧発生モジュール20側の内部接続された端子211a、211h、シールド部分401h、高電圧制御部30側の端子312hの経路で電流が流れる。
【0054】
この構成においても、ケーブル長と温度変化の影響によらず、断線率を検出することが可能である。以下に式13から式17を用いて説明を行う。
前記の式7を変形して下記式13を得る。
【数9】
また、シールド部分401hの抵抗値R2は、断線率0%における検出線401aの抵抗値の1/Nとすると、R1の基準となる抵抗値Rrefを用いて、式14のように記載できる。
シールド部分401hの断線率が極めて大きくない限り、R2は温度係数Kaにのみ依存する条件は、前記実施の形態1、2と同様である。
R2=Rref×(1+Ka(T2-T1))/N ・・・式14
式簡略化のため基準温度のときの係数KT0(=RL÷Rref÷N)を用いて式13を変形すると式15となる。
【数10】
【0055】
続いて、マイコン50による断線率Kdの算出手順を説明する。検出線401aとシールド部分401hの抵抗比は、予め設計仕様または測定により求めておく。また、式15における定数部KT0・Nは、基準温度T1のときに(1+Ka(T2-T1))=1、また、R1/R2=Nであることから、基準となる電圧Vd0を用いて式16と記載できる。
KT0・N= (Vc/Vd0-1)・(N+1)・・・式16
式15、16より、運転中に測定した温度T2と検出電圧Vdより、R1/R2を算出して、式17に代入することでKdを求める手順となる。
【数11】
【0056】
下記に算出例を示す。静電コーティング装置の設置時、または、ケーブル40の交換時には、断線率0%、基準温度T1として、基準となるVd0を測定し、式15により係数KT0・Nを求める。
試算例として、検出線401aに直径0.1mmの素線を使用し、それぞれ絶縁被覆した100本を撚り線としたケーブル線を用いると、温度T1=20℃、Vc=3.3V、RL=2Ω、ケーブル長L=30mの場合、Vd0=1.01V、 KT0・N=9.07である。シールド部分の仕様によりN=3を用いている。
運転中に、温度T2とVdを測定して、式15によりR1/R2を求める。
温度T2=40℃となり、Vd=1.80V、R1/R2=9.09とすると、式17よりKd=0.67である。
これは、R1の抵抗値が、ケーブル40の交換時に、温度T1=20℃において0.66Ω、断線が発生し、温度T2=40℃において2.16Ωに相当する。
【0057】
本発明に係る実施の形態3によれば、下記の効果を奏することができる。
【0058】
(1)多芯ケーブル40を構成するケーブル線のうちの1本を、複数の被覆された素線を用いた検出線401aとし、検出線401aを含む検出経路の電圧と、周囲温度を用いて、周囲温度やケーブル長の影響を補正し、従来の方式よりも高い精度で、検出線の断線率を検出することができる。断線率は素線数を30~150程度とすることで連続的に求めることができ、断線の状況を確認することで、集合ケーブル40が破断に至る前に、速やかにケーブル交換を行うことができる。
(2)検出線は1本であり、集合ケーブル40のシールド部分401hを戻りの電流路として用いているため、ケーブル40の直径の増加を抑えることができ、敷設時のケーブルの引き回しや交換時の保守性の影響が少ない。
(3)検出に必要な初期設定値を、設置時の検出電圧と温度とし、予めケーブル長を求める事なく容易かつ短時間のセットアップが可能である。
(4)静電コーティング装置は大きな工場構内に設置され、ケーブル40の抵抗値は温度変化の影響を受けやすい傾向があるが、周囲温度を考慮して(温度センサ55で温度検出を行うことで)断線予測の精度を向上させることができる。
【0059】
以上のように、実施の形態1、3は、本発明の特徴として、複数の被覆された素線を用いた線を検出線401aとして用いることで、断線率に対する検出電圧の変化を大きくすることができるとともに、検出線401aに断線が発生したとして、残る接続状態の素線に対する温度分布は基準線401bと同一であることから、断線率Kdに対して温度に対する抵抗値変化は独立している。言い換えると、ケーブル40の一部がロボット内を通過して、ケーブル40の一部分に温度上昇がある場合についても有効である。本来は、ケーブル上の断線位置は予測できないため、従来の方式では、異なる抵抗値の直列接続が、それぞれ温度分布を持つ状態となり、検出が困難な変動が発生していた。検出線として複数の被覆された素線を用いることでこの影響を除去し、検出結果の精度向上を行うことができる。
【0060】
実施の形態2では、上記の観点からは近似的な検出となってしまうが、2つの検出線において、同程度の断線が発生する条件では同様と言える。
【0061】
なお、各実施の形態において、ケーブル線401a~401gや、シールド部分401hについて、断線の進む割合(速度)は、ケーブル線の直径、集合ケーブル40を構成するケーブル線が集合ケーブル断面積の中心からどの位置に配置されているか、また、使用する被覆などにより異なるが、集合ケーブル40の交換時期を示す目安として検出線の断線率を用いることができる。各実施の形態によれば連続的な断線率がわかるため、設置環境や運転の状況により、他の信号線としてのケーブル線の断線が、検出線よりも早く進むようであれば、ケーブル40の交換の判定とする断線率を5%、10%などにすると良い。
【0062】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。
【0063】
本発明の実施の形態として、静電コーティング装置用高電圧電源装置について説明したが、10m以上、30m以下程度の多芯ケーブルを用いた装置に応用が可能であり、特に断面積0.5mm2~1.0mm2のケーブルを用いて2つの機器を相互に接続する用途に適している。
【0064】
各実施の形態において、検出線には、直径0.1mmの素線を使用し、100本を撚り線とした構成という比較的太い信号線を用いているが、より細い構成でも可能である。一方、検出線の抵抗率の変化の状態数は、検出線を構成する素線の本数に等しいため、段階的な断線率を求めるためには、素線数は30本以上が適している。
【符号の説明】
【0065】
10 噴射器
20 高電圧発生モジュール
21 高圧トランス
22 電圧増倍回路
30 高電圧制御部
31、32 駆動回路
33、34 入力回路
35 可変制御安定化電源
40 ケーブル
401a~401g ケーブル線
401h シールド部分
50 マイコン
51 基準電圧発生回路
52 切替手段
53 温度値保持手段
54 電圧値保持手段
55 温度センサ
501 増幅回路
502 増幅回路