(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】導電性フィルム、タッチパネル、および、表示装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20220314BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20220314BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
G06F3/041 422
G06F3/044 122
G02F1/1333
(21)【出願番号】P 2017203313
(22)【出願日】2017-10-20
【審査請求日】2020-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】518236856
【氏名又は名称】株式会社VTSタッチセンサー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 佑美
(72)【発明者】
【氏名】中込 友洋
【審査官】梅本 章子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-212518(JP,A)
【文献】国際公開第2016/174986(WO,A1)
【文献】特開2017-130112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
G02F 1/1333
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、前記第1面とは反対側の面である第2面とを有する透明誘電体層と、
前記第1面にて、不規則に屈曲しながら第1方向に延びるとともに、前記第1方向と直交する第2方向に沿って並ぶ複数の第1電極線と、
前記第2面にて、不規則に屈曲しながら前記第2方向に延びるとともに、前記第1方向に沿って並ぶ複数の第2電極線と、を備え、
前記第1面と対向する方向から見て、前記複数の第1電極線と前記複数の第2電極線とが構成するパターンが電極線パターンであり、
所定の周期で屈曲を繰り返しながら前記第1方向に延びるとともに、前記第2方向に沿って並ぶ仮想的な電極線が第1基準電極線であり、所定の周期で屈曲を繰り返しながら前記第2方向に延びるとともに、前記第1方向に沿って並ぶ仮想的な電極線が第2基準電極線であり、複数の前記第1基準電極
線において、互いに隣り合う前記
第1基準電極線にてこれらの電極線が有する屈曲部が向かい合い、
複数の前記第2基準電極線において、互いに隣り合う前記第2基準電極線にてこれらの電極線が有する屈曲部が向かい合い、
前記複数の第1基準電極線と前記複数の第2基準電極線とが重ね合わされたパターンが基準パターンであり、前記電極線パターンは、前記基準パターンにおける前記屈曲部を、各基準電極線における前記屈曲部の並びの順序に対し不規則に変位したパターンであり、
前記電極線パターンおよび前記基準パターンの各々の二次元フーリエ変換によって得られるパワースペクトルにおいて、
所定の周波数幅ごとに、各周波数幅でのスペクトル強度の積算値を前記周波数幅で除した値がスペクトル密度であり、
前記基準パターンにおける電極線の斜線部分の並びの周期性に由来するピークの空間周波数を第1空間周波数とし、前記基準パターンにおける前記第1基準電極線の前記周期の半分の大きさに応じて現れるピークの空間周波数を第2空間周波数とし、前記基準パターンにおける前記第1基準電極線の配列間隔の大きさに応じて現れるピークの空間周波数を第3空間周波数とし、前記第1空間周波数の4分の1の値と、前記第2空間周波数と、第3空間周波数とのうちの最小値以下の周波数領域を規定周波数領域とするとき、
前記電極線パターンにおける前記規定周波数領域の前記スペクトル密度の積算値を、前記基準パターンにおける前記規定周波数領域の前記スペクトル密度の積算値で除した値の常用対数が第1評価値であって、前記第1評価値が3.6以下である
導電性フィルム。
【請求項2】
前記第1評価値が1.0以上である
請求項1に記載の導電性フィルム。
【請求項3】
複数の前記第1基準電極
線において、前記
第1基準電極線の配列間隔に対する、互いに隣り合う前記
第1基準電極線間の隙間の長さの割合が、5%以上10%以下であ
り、
複数の前記第2基準電極線において、前記第2基準電極線の配列間隔に対する、互いに隣り合う前記第2基準電極線間の隙間の長さの割合が、5%以上10%以下である
請求項1または2に記載の導電性フィルム。
【請求項4】
前記パワースペクトルにおいて、
前記第1空間周波数の2分の1の周波数を第4空間周波数とするとき、
前記電極線パターンにおける前記第4空間周波数での前記スペクトル密度を、前記電極線パターンにおける前記規定周波数領域の前記スペクトル密度の平均値で除した値の常用対数が第2評価値であって、前記第2評価値が2.0以下である
請求項1~3のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の導電性フィルムと、
前記導電性フィルムを覆うカバー層と、
前記複数の第1電極線と
前記複数の第2電極線との間の静電容量を測定する周辺回路と、を備える
タッチパネル。
【請求項6】
格子状に配列された複数の画素を有して情報を表示する表示パネルと、
前記表示パネルの表示する前記情報を透過するタッチパネルと、
前記タッチパネルの駆動を制御する制御部と、を備え、
前記タッチパネルは、請求項5に記載のタッチパネルである
表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電極線を備える導電性フィルム、この導電性フィルムを備えるタッチパネル、および、このタッチパネルを備える表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルを入力デバイスとして用いる表示装置は、画像を表示する表示パネルと、表示パネルに重ねられた上記タッチパネルとを備えている。タッチパネルにおける指等の接触位置の検出方式としては、指等がタッチパネルの操作面に接触することを静電容量の変化として検出する静電容量方式が広く用いられている。静電容量方式のタッチパネルにおいて、タッチパネルの備える導電性フィルムは、第1方向に沿って延びる複数の第1電極と、第1方向と直交する第2方向に沿って延びる複数の第2電極と、第1電極と第2電極とに挟まれた透明誘電体層とを備えている。そして、1つの第1電極と複数の第2電極の各々との間における静電容量の変化が第1電極ごとに検出されることに基づき、操作面における指等の接触位置が検出される。
【0003】
こうした導電性フィルムの一例では、複数の第1電極の各々は、第1方向に沿って延びる複数の第1電極線から構成され、複数の第2電極の各々は、第2方向に沿って延びる複数の第2電極線から構成される。電極線としては、銀や銅などの金属からなる細線が用いられる。電極線の材料として金属が用いられることによって、接触位置の検出に際しての迅速な応答性や高い分解能が得られるとともに、タッチパネルの大型化や製造コストの削減が可能となる。
【0004】
ところで、可視光を吸収、あるいは、反射する金属から電極線が構成される形態では、操作面と対向する方向から見て、複数の第1電極線と複数の第2電極線とが、これらの電極線が相互に直交した格子状のパターンを形成している。一方で、タッチパネルが積層される表示パネルでも、第1方向と第2方向とに沿って複数の画素を区画するブラックマトリクスが、格子状のパターンを形成している。
【0005】
上記構成において、相互に隣り合う第1電極線の間の間隔は、相互に隣り合う画素間の第2方向における間隔とは一般に異なり、また、相互に隣り合う第2電極線の間の間隔も、相互に隣り合う画素間の第1方向における間隔とは異なる。そして、操作面と対向する方向から見て、第1電極線と第2電極線とから形成される格子状の周期構造と、画素を区画する格子状の周期構造とが重なることによって、2つの周期構造のずれが、モアレ(moire)を誘起する場合がある。モアレが視認されると、表示装置にて視認される画像の品質の低下が生じる。
【0006】
こうしたモアレを抑えるための方策の1つとして、電極線の周期構造の周期性を低下させることが提案されている。複数の電極線から構成されたパターンの周期性が低いと、この電極線パターンは周期構造として認識され難くなるため、画素を区画するパターンである画素パターンと電極線パターンとのずれが、2つの周期構造のずれとして認識され難くなる。それゆえ、モアレが視認されることが抑えられる。
【0007】
例えば、特許文献1に記載のタッチパネルでは、第1電極線と第2電極線との各々が、山部と谷部とが交互に繰り返される折れ線形状を有しており、これらの電極線から構成されるパターンは、矩形とは異なる多角形の繰り返し構造を有する。したがって、こうした電極線パターンの周期性は、矩形が並ぶ格子状の電極線パターンの周期性と比較して低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
電極線パターンの周期性が低いほど、電極線パターンは周期構造として認識され難くなるため、画素パターンと電極線パターンとのずれが、2つの周期構造のずれとして認識され難くなる。したがって、電極線パターンの周期性が低いほど、モアレが視認されることは抑えられる。例えば、電極線の形状を、不規則に屈曲する折れ線形状とすれば、上記特許文献1に記載の規則的な折れ線形状を有する電極線から構成されるパターンと比較して、電極線パターンの周期性をさらに低下させることが可能である。
【0010】
一方で、電極線パターンの周期性が低いと、電極線パターンが位置する領域内に明るさ等のムラが生じ、操作面と対向する方向から見て、砂状に分布するちらつきや画面のぎらつきが感じられる、砂目と呼ばれる現象が生じる場合がある。電極線パターンの周期性が低いと、パターン内における電極線の密度に偏りが生じるため、こうした電極線の疎密の差が、砂目の生じる一因であると考えられる。このように、電極線パターンの周期性が低すぎると、砂目に起因して、表示装置にて視認される画像の品質は低下する。したがって、モアレと砂目とを考慮して、電極線パターンが有する周期性の程度を規定することが望ましい。
本発明は、表示装置にて視認される画像の品質の低下を抑えることのできる導電性フィルム、タッチパネル、および、表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する導電性フィルムは、第1面と、前記第1面とは反対側の面である第2面とを有する透明誘電体層と、前記第1面にて、不規則に屈曲しながら第1方向に延びるとともに、前記第1方向と直交する第2方向に沿って並ぶ複数の第1電極線と、前記第2面にて、不規則に屈曲しながら前記第2方向に延びるとともに、前記第1方向に沿って並ぶ複数の第2電極線と、を備え、前記第1面と対向する方向から見て、前記複数の第1電極線と前記複数の第2電極線とが構成するパターンが電極線パターンであり、所定の周期で屈曲を繰り返しながら前記第1方向に延びるとともに、前記第2方向に沿って並ぶ仮想的な電極線が第1基準電極線であり、所定の周期で屈曲を繰り返しながら前記第2方向に延びるとともに、前記第1方向に沿って並ぶ仮想的な電極線が第2基準電極線であり、複数の前記第1基準電極線および複数の前記第2基準電極線において、互いに隣り合う前記基準電極線にてこれらの電極線が有する屈曲部が向かい合い、前記複数の第1基準電極線と前記複数の第2基準電極線とが重ね合わされたパターンが基準パターンであり、前記電極線パターンは、前記基準パターンにおける前記屈曲部を、各基準電極線における前記屈曲部の並びの順序に対し不規則に変位したパターンであり、前記電極線パターンおよび前記基準パターンの各々の二次元フーリエ変換によって得られるパワースペクトルにおいて、所定の周波数幅ごとに、各周波数幅でのスペクトル強度の積算値を前記周波数幅で除した値がスペクトル密度であり、前記基準パターンにおける電極線の斜線部分の並びの周期性に由来するピークの空間周波数を第1空間周波数とし、前記基準パターンにおける前記第1基準電極線の前記周期の半分の大きさに応じて現れるピークの空間周波数を第2空間周波数とし、前記基準パターンにおける前記第1基準電極線の配列間隔の大きさに応じて現れるピークの空間周波数を第3空間周波数とし、前記第1空間周波数の4分の1の値と、前記第2空間周波数と、第3空間周波数とのうちの最小値以下の周波数領域を規定周波数領域とするとき、前記電極線パターンにおける前記規定周波数領域の前記スペクトル密度の積算値を、前記基準パターンにおける前記規定周波数領域の前記スペクトル密度の積算値で除した値の常用対数が第1評価値であって、前記第1評価値が3.6以下である。
【0012】
上記構成によれば、不規則な屈曲線形状の電極線から構成される電極線パターンにおいて、強い砂目が生じることが抑えられる程度に、パターンの周期性が保たれる。したがって、電極線パターンと画素パターンとの重ね合わせに際してモアレが視認されることが抑えられるとともに、砂目が視認されることも抑えられる。したがって、表示装置にて視認される画像の品質の低下を抑えることができる。
【0013】
上記構成において、前記第1評価値が1.0以上であってもよい。
上記構成によれば、電極線パターンにおいて周期構造を視認させる周期性が、モアレが抑えられる程度に十分に低い。したがって、電極線パターンと画素パターンとの重ね合わせに際してモアレが好適に抑えられる。特に、電極線パターンにおいて、第1電極線のパターンに対する第2電極線のパターンの位置が理想的な位置からずれている場合には、第1評価値が1.0以上であれば、こうしたずれに起因した周期構造が視認されることも抑えられるため、モアレが的確に抑えられる。
【0014】
上記構成において、複数の前記第1基準電極線および複数の前記第2基準電極線において、前記基準電極線の配列間隔に対する、互いに隣り合う前記基準電極線間の隙間の長さの割合が、5%以上10%以下であってもよい。
【0015】
上記構成によれば、基準電極線間の隙間が大きすぎないため、こうした隙間に起因した周期性が電極線パターンに生じてモアレが視認されることが抑えられる。また、上記隙間が小さすぎないため、基準パターンに基づく電極線パターンにて、屈曲部付近の形状を精密に形成することが可能である。そして、基準電極線間の隙間が上記割合を満たす場合に、第1評価値は砂目についての指標として有効に機能する。
【0016】
上記構成において、前記パワースペクトルにおいて、前記第1空間周波数の2分の1の周波数を第4空間周波数とするとき、前記電極線パターンにおける前記第4空間周波数での前記スペクトル密度を、前記電極線パターンにおける前記規定周波数領域の前記スペクトル密度の平均値で除した値の常用対数が第2評価値であって、前記第2評価値が2.0以下であってもよい。
【0017】
上記構成によれば、電極線パターンにおいて、第1電極線のパターンに対する第2電極線のパターンの位置が理想的な位置からずれている場合に形成される周期構造の周期性が低く抑えられる。したがって、こうした周期性に起因してモアレが視認されることが抑えられる。それゆえ、電極線パターンに上記ずれが生じた場合であっても、表示装置にて視認される画像の品質の低下を抑えることができる。
【0018】
上記課題を解決するタッチパネルは、上記導電性フィルムと、前記導電性フィルムを覆うカバー層と、前記第1面に配置された電極線と前記第2面に配置された電極線との間の静電容量を測定する周辺回路と、を備える。
上記構成によれば、モアレの発生と砂目の発生とが抑えられるタッチパネルが実現される。
【0019】
上記課題を解決する表示装置は、格子状に配列された複数の画素を有して情報を表示する表示パネルと、前記表示パネルの表示する前記情報を透過するタッチパネルと、前記タッチパネルの駆動を制御する制御部と、を備え、前記タッチパネルは、上記タッチパネルである。
上記構成によれば、モアレの発生と砂目の発生とが抑えられるため、視認される画像の品質の低下を抑えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、表示装置にて視認される画像の品質の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】表示装置の第1実施形態について、表示装置の断面構造を示す断面図。
【
図2】第1実施形態の導電性フィルムの平面構造を示す平面図。
【
図3】第1実施形態の表示パネルの画素配列を示す平面図。
【
図4】第1実施形態のタッチパネルの電気的構成を説明するための模式図。
【
図5】第1実施形態のセンシング基準電極線の構成を示す図。
【
図6】第1実施形態のセンシング電極線の構成を示す図。
【
図7】第1実施形態のドライブ基準電極線の構成を示す図。
【
図8】第1実施形態のドライブ電極線の構成を示す図。
【
図9】第1実施形態の基準パターンの構成を示す図。
【
図10】第1実施形態の電極線パターンの構成を示す図。
【
図11】第1実施形態の基準パターンに対する二次元フーリエ変換によって得られたパワースペクトルを模式的に示す図。
【
図12】第1実施形態の基準パターンのパワースペクトルにおける空間周波数とスペクトル密度との関係を示す図。
【
図13】第1実施形態の電極線パターンに対する二次元フーリエ変換によって得られたパワースペクトルを模式的に示す図。
【
図14】第1実施形態の電極線パターンのパワースペクトルにおける空間周波数とスペクトル密度との関係を示す図。
【
図15】第1実施形態の基準パターンのパワースペクトル画像を示す図。
【
図16】第1実施形態の電極線パターンのパワースペクトル画像を示す図。
【
図17】表示装置の第2実施形態について、第2実施形態の基準パターンに対する二次元フーリエ変換によって得られたパワースペクトルを模式的に示す図。
【
図18】第2実施形態の基準パターンのパワースペクトルにおける空間周波数とスペクトル密度との関係を示す図。
【
図19】第2実施形態の電極線パターンに対する二次元フーリエ変換によって得られたパワースペクトルを模式的に示す図。
【
図20】第2実施形態の電極線パターンのパワースペクトルにおける空間周波数とスペクトル密度との関係を示す図。
【
図21】変形例における表示装置の断面構造を示す断面図。
【
図22】変形例における表示装置の断面構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
図1~
図16を参照して、導電性フィルム、タッチパネル、および、表示装置の第1実施形態について説明する。なお、各図は、第1実施形態の導電性フィルム、タッチパネル、および、表示装置を説明するために、これらの構成を模式的に示した図であり、各図に示される構成が有する各部位の大きさの比率は、実際の比率とは異なる場合がある。
【0023】
[表示装置の構成]
図1を参照して、表示装置の構成について説明する。
【0024】
図1が示すように、表示装置100は、例えば、液晶パネルである表示パネル10と、タッチパネル20とが、図示しない1つの透明接着層によって貼り合わされた積層体を備え、さらに、タッチパネル20を駆動するための回路やタッチパネル20の駆動を制御する制御部を備えている。なお、表示パネル10とタッチパネル20との相対的な位置が筐体などの他の構成によって固定される前提であれば、上記透明接着層は割愛されてもよい。
表示パネル10の表面には、略矩形形状の表示面が区画され、表示面には、画像データに基づく画像などの情報が表示される。
【0025】
表示パネル10を構成する構成要素は、タッチパネル20から遠い構成要素から順番に、以下のように並んでいる。すなわち、タッチパネル20から遠い順番に、下側偏光板11、薄膜トランジスタ(以下、TFT)基板12、TFT層13、液晶層14、カラーフィルタ層15、カラーフィルタ基板16、上側偏光板17が位置している。
【0026】
これらのうち、TFT層13には、サブ画素を構成する画素電極がマトリクス状に位置している。また、カラーフィルタ層15が有するブラックマトリクスは、矩形形状を有した複数の単位格子から構成される格子形状を有している。そして、ブラックマトリクスは、こうした格子形状によって、サブ画素の各々と向かい合う領域として矩形形状を有する複数の領域を区画し、ブラックマトリクスの区画する各領域には、白色光を赤色、緑色、および、青色のいずれかの色の光に変える着色層が位置している。
【0027】
なお、表示パネル10が有色の光を出力するELパネルであって、赤色の光を出力する赤色画素、緑色の光を出力する緑色画素、および、青色の光を出力する青色画素を有する構成であれば、上述したカラーフィルタ層15は割愛されてもよい。この際に、ELパネルにおいて相互に隣り合う画素の境界部分は、ブラックマトリクスとして機能する。また、表示パネル10は放電によって発光するプラズマパネルであってもよく、この場合、赤色の蛍光体層と、緑色の蛍光体層と、青色の蛍光体層とを区画する境界部分がブラックマトリクスとして機能する。
【0028】
タッチパネル20は、静電容量方式のタッチパネルであり、導電性フィルム21とカバー層22とが透明接着層23によって貼り合わされた積層体であって、表示パネル10の表示する情報を透過する光透過性を有している。
【0029】
詳細には、タッチパネル20を構成する構成要素のなかで表示パネル10に近い構成要素から順番に、透明基板31、複数のドライブ電極31DP、透明接着層32、透明誘電体基板33、複数のセンシング電極33SP、透明接着層23、カバー層22が位置している。このうち、透明基板31、ドライブ電極31DP、透明接着層32、透明誘電体基板33、および、センシング電極33SPが、導電性フィルム21を構成している。
【0030】
透明基板31は、表示パネル10の表示面が表示する画像等の情報を透過する光透過性と絶縁性とを有し、表示面の全体に重ねられている。透明基板31は、例えば、透明ガラス基板や、透明樹脂フィルムや、シリコン基板などの基材から構成される。透明基板31に用いられる樹脂としては、例えば、PET(Polyethylene Terephthalate)、PMMA(Polymethyl methacrylate)、PP(Polypropylene)、PS(Polystyrene)などが挙げられる。透明基板31は、1つの基材から構成される単層構造体であってもよいし、2つ以上の基材が重ねられた多層構造体であってもよい。
【0031】
透明基板31における表示パネル10とは反対側の面は、ドライブ電極面31Sとして設定され、ドライブ電極面31Sには、複数のドライブ電極31DPが配置されている。複数のドライブ電極31DP、および、ドライブ電極面31Sにおいてドライブ電極31DPが位置しない部分は、1つの透明接着層32によって透明誘電体基板33に貼り合わされている。
【0032】
透明接着層32は、表示面に表示される画像等の情報を透過する光透過性を有し、透明接着層32には、例えば、ポリエーテル系接着剤やアクリル系接着剤などが用いられる。
【0033】
透明誘電体基板33は、表示面に表示される画像等の情報を透過する光透過性と、電極間における静電容量の検出に適した比誘電率とを有する。透明誘電体基板33は、例えば、透明ガラス基板や、透明樹脂フィルムや、シリコン基板などの基材から構成される。透明誘電体基板33に用いられる樹脂としては、例えば、PET、PMMA、PP、PSなどが挙げられる。透明誘電体基板33は、1つの基材から構成される単層構造体であってもよいし、2つ以上の基材が重ねられた多層構造体であってもよい。
【0034】
複数のドライブ電極31DPが透明接着層32によって透明誘電体基板33に貼り合わされる結果、透明誘電体基板33における透明基板31と向かい合う面である裏面には、複数のドライブ電極31DPが並んでいる。
【0035】
透明誘電体基板33における透明接着層32とは反対側の面である表面は、センシング電極面33Sとして設定され、センシング電極面33Sには、複数のセンシング電極33SPが配置されている。すなわち、透明誘電体基板33は、複数のドライブ電極31DPと、複数のセンシング電極33SPとに挟まれている。複数のセンシング電極33SP、および、センシング電極面33Sにおいてセンシング電極33SPが位置しない部分は、1つの透明接着層23によってカバー層22に貼り合わされている。
【0036】
透明接着層23は、表示面に表示される画像等の情報を透過する光透過性を有し、透明接着層23には、例えば、ポリエーテル系接着剤やアクリル系接着剤などが用いられる。透明接着層23として用いられる接着剤の種類は、ウェットラミネート接着剤であってもよいし、ドライラミネート接着剤やホットラミネート接着剤であってもよい。
【0037】
カバー層22は、強化ガラスなどのガラス基板や樹脂フィルムなどから形成され、カバー層22における透明接着層23とは反対側の面は、タッチパネル20における表面であって操作面20Sとして機能する。
【0038】
なお、上記構成要素のうち、透明接着層23は割愛されてもよい。透明接着層23の省略される構成においては、カバー層22が有する面のなかで透明誘電体基板33と対向する面がセンシング電極面33Sとして設定され、センシング電極面33Sに形成される1つの薄膜のパターニングによって、複数のセンシング電極33SPが形成されればよい。
【0039】
また、タッチパネル20の製造に際しては、導電性フィルム21とカバー層22とが、透明接着層23によって貼り合わされる方法が採用されてもよいし、こうした製造方法とは異なる他の例として、以下の製造方法が採用されてもよい。すなわち、樹脂フィルムなどのカバー層22に、銅などの導電性金属から構成される薄膜層が直に、もしくは、下地層を介して形成され、薄膜層の上にセンシング電極33SPのパターン形状を有したレジスト層が形成される。次いで、塩化第二鉄などを用いたウェットエッチング法によって、薄膜層が複数のセンシング電極33SPに加工されて、第1のフィルムが得られる。また、センシング電極33SPと同様に、透明基板31として機能する他の樹脂フィルムに形成された薄膜層が複数のドライブ電極31DPに加工されて、第2のフィルムが得られる。そして、第1フィルムと第2フィルムとが透明誘電体基板33を挟むように、透明誘電体基板33に対して透明接着層23,32によって貼り付けられる。
【0040】
[導電性フィルムの平面構造]
図2を参照して、センシング電極33SPとドライブ電極31DPとの位置関係を中心に、導電性フィルム21の平面構造について説明する。なお、
図2は、透明誘電体基板33の表面と対向する方向から導電性フィルム21を見た図であり、二点鎖線で囲まれた横方向に沿って延びる帯状領域の各々は、1つのセンシング電極33SPが配置される領域を示し、二点鎖線で囲まれた縦方向に沿って延びる帯状領域の各々は、1つのドライブ電極31DPが配置される領域を示している。なお、センシング電極33SPおよびドライブ電極31DPの数は簡略化して示している。
【0041】
また、センシング電極33SPとドライブ電極31DPとの構成を理解しやすくするために、
図2にて最も上側に位置するセンシング電極33SPについてのみ、センシング電極33SPを構成するセンシング電極線を示し、
図2にて最も左側に位置するドライブ電極31DPについてのみ、ドライブ電極31DPを構成するドライブ電極線を示している。
【0042】
図2が示すように、透明誘電体基板33のセンシング電極面33Sにおいて、複数のセンシング電極33SPの各々は、1つの方向である第1方向D1に沿って延びる帯形状を有し、かつ、第1方向D1と直交する第2方向D2に沿って並んでいる。各センシング電極33SPは、隣り合う他のセンシング電極33SPと互いに絶縁されている。
【0043】
各センシング電極33SPは、複数のセンシング電極線33SRから構成され、センシング電極面33Sには、これら複数のセンシング電極線33SRの集合であるセンシング電極線群が配置されている。センシング電極線33SRの形成材料には、銅や銀やアルミニウム等の金属膜が用いられ、センシング電極線33SRは、例えば、センシング電極面33Sに成膜された金属膜がエッチングによってパターニングされることにより形成される。
【0044】
複数のセンシング電極33SPの各々は、センシングパッド33Pを介して個別にタッチパネル20の周辺回路の一例である検出回路に接続され、検出回路によって電流値を測定される。1つのセンシングパッド33Pに接続されている複数のセンシング電極線33SRが、1つのセンシング電極33SPを構成するセンシング電極線33SRである。1つのセンシング電極33SPを構成する複数のセンシング電極線33SRは、協働して、当該センシング電極33SPが位置する領域での静電容量の変化の検出に寄与する。
【0045】
透明基板31のドライブ電極面31Sにおいて、複数のドライブ電極31DPの各々は、第2方向D2に沿って延びる帯形状を有し、かつ、第1方向D1に沿って並んでいる。各ドライブ電極31DPは、隣り合う他のドライブ電極31DPと互いに絶縁されている。
【0046】
各ドライブ電極31DPは、複数のドライブ電極線31DRから構成され、ドライブ電極面31Sには、これら複数のドライブ電極線31DRの集合であるドライブ電極線群が配置されている。ドライブ電極線31DRの形成材料には、銅や銀やアルミニウム等の金属膜が用いられ、ドライブ電極線31DRは、例えば、ドライブ電極面31Sに成膜された金属膜がエッチングによってパターニングされることにより形成される。
【0047】
複数のドライブ電極31DPの各々は、ドライブパッド31Pを介して個別にタッチパネル20の周辺回路の一例である選択回路に接続され、選択回路が出力する駆動信号を受けることによって選択回路に選択される。1つのドライブパッド31Pに接続されている複数のドライブ電極線31DRが、1つのドライブ電極31DPを構成するドライブ電極線31DRである。1つのドライブ電極31DPを構成する複数のドライブ電極線31DRは、協働して、当該ドライブ電極31DPが位置する領域での静電容量の変化の検出に寄与する。
【0048】
透明誘電体基板33の表面と対向する平面視において、センシング電極33SPとドライブ電極31DPとが相互に重なる部分は、
図2の二点鎖線によって区画される四角形状を有した容量検出部NDである。1つの容量検出部NDは、1つのセンシング電極33SPと、1つのドライブ電極31DPとが立体的に交差する部分であって、タッチパネル20において使用者の指などが触れている位置を検出することの可能な最小の単位である。
なお、センシング電極線33SRおよびドライブ電極線31DRの形成方法としては、上述のエッチングに限らず、例えば印刷法などの他の方法が用いられてもよい。
【0049】
[表示パネルの平面構造]
図3を参照して、表示パネル10におけるカラーフィルタ層15の平面構造、すなわち、表示パネル10の画素配列について説明する。
【0050】
図3が示すように、カラーフィルタ層15のブラックマトリクス15aは、上記第1方向D1と上記第2方向D2とに沿って並ぶ矩形形状を有した複数の単位格子から構成される格子パターンを有している。1つの画素15Pは、第1方向D1に沿って連続する3つの単位格子から構成され、複数の画素15Pは、第1方向D1、および、第2方向D2の各々に沿って格子状に並んでいる。
【0051】
複数の画素15Pの各々は、赤色を表示するための赤色着色層15R、緑色を表示するための緑色着色層15G、および、青色を表示するための青色着色層15Bから構成されている。カラーフィルタ層15において、例えば、赤色着色層15R、緑色着色層15G、および、青色着色層15Bが、第1方向D1に沿って、この順で、繰り返し並んでいる。また、複数の赤色着色層15Rは、第2方向D2に沿って連続して並び、複数の緑色着色層15Gは、第2方向D2に沿って連続して並び、複数の青色着色層15Bは、第2方向D2に沿って連続して並んでいる。
【0052】
1つの赤色着色層15R、1つの緑色着色層15G、および、1つの青色着色層15Bは、1つの画素15Pを構成し、複数の画素15Pは、第1方向D1における赤色着色層15R、緑色着色層15G、および、青色着色層15Bの並ぶ順番を維持した状態で、第1方向D1に沿って並んでいる。また、換言すれば、複数の画素15Pは、第2方向D2に沿って延びるストライプ状に配置されている。
【0053】
画素15Pにおける第1方向D1に沿った幅が第1画素幅P1であり、画素15Pにおける第2方向D2に沿った幅が第2画素幅P2である。第1画素幅P1、および、第2画素幅P2の各々は、表示パネル10の大きさや表示パネル10に求められる解像度などに応じた値に設定される。
【0054】
[タッチパネルの電気的構成]
図4を参照して、タッチパネル20の電気的構成を、表示装置100の備える制御部の機能とともに説明する。なお、以下では、静電容量方式のタッチパネル20の一例として、相互容量方式のタッチパネル20における電気的構成を説明する。
【0055】
図4が示すように、タッチパネル20は、周辺回路として、選択回路34および検出回路35を備えている。選択回路34は、複数のドライブ電極31DPに接続され、検出回路35は、複数のセンシング電極33SPに接続され、表示装置100の備える制御部36は、選択回路34と検出回路35とに接続されている。
【0056】
制御部36は、各ドライブ電極31DPに対する駆動信号の生成を選択回路34に開始させるための開始タイミング信号を生成して出力する。制御部36は、駆動信号が供給される対象を1番目のドライブ電極31DP1からn番目のドライブ電極31DPnに向けて選択回路34に順次走査させるための走査タイミング信号を生成して出力する。
【0057】
制御部36は、各センシング電極33SPを流れる電流の検出を検出回路35に開始させるための開始タイミング信号を生成して出力する。制御部36は、検出の対象を1番目のセンシング電極33SP1からn番目のセンシング電極33SPnに向けて検出回路35に順次走査させるための走査タイミング信号を生成して出力する。
【0058】
選択回路34は、制御部36の出力した開始タイミング信号に基づいて、駆動信号の生成を開始し、制御部36の出力した走査タイミング信号に基づいて、駆動信号の出力先を1番目のドライブ電極31DP1からn番目のドライブ電極31DPnに向けて走査する。
【0059】
検出回路35は、信号取得部35aと信号処理部35bとを備えている。信号取得部35aは、制御部36の出力した開始タイミング信号に基づいて、各センシング電極33SPに生成されたアナログ信号である電流信号の取得を開始する。そして、信号取得部35aは、制御部36の出力した走査タイミング信号に基づいて、電流信号の取得元を1番目のセンシング電極33SP1からn番目のセンシング電極33SPnに向けて走査する。
【0060】
信号処理部35bは、信号取得部35aの取得した各電流信号を処理して、デジタル値である電圧信号を生成し、生成された電圧信号を制御部36に向けて出力する。このように、選択回路34と検出回路35とは、静電容量の変化に応じて変わる電流信号から電圧信号を生成することによって、ドライブ電極31DPとセンシング電極33SPとの間の静電容量の変化を測定する。
【0061】
制御部36は、信号処理部35bの出力した電圧信号に基づいて、タッチパネル20において使用者の指等が触れている位置を検出し、検出した位置の情報を、表示パネル10の表示面に表示される情報の生成等の各種の処理に利用する。なお、タッチパネル20は、上述した相互容量方式のタッチパネル20に限らず、自己容量方式のタッチパネルであってもよい。
【0062】
[電極線パターンの構成]
図5~
図10を参照して、複数のセンシング電極線33SRと複数のドライブ電極線31DRとの重ね合わせによって形成される電極線パターンの構成について説明する。
【0063】
第1実施形態において、センシング電極線33SRとドライブ電極線31DRとの各々は、不規則に屈曲する屈曲線形状を有する。複数のセンシング電極線33SRが構成するパターン、および、複数のドライブ電極線31DRが構成するパターンの各々は、規則的な屈曲線から構成される基準パターンを用いて作成される。
図5を参照して、複数のセンシング電極線33SRが構成するパターンの基とされるセンシング基準パターンについて説明する。
【0064】
図5が示すように、センシング基準パターンは、規則的な折れ線形状を有する仮想的な電極線である複数のセンシング基準電極線40KRから構成される。複数のセンシング基準電極線40KRの各々は、直線形状を有して相互に異なる傾きを有する2種類の基準短線部40Eの集合であり、第1方向D1に沿って交互に繰り返される2種類の基準短線部40Eと、2種類の基準短線部40Eが接続される部分である基準屈曲部40Qとを含んでいる。換言すれば、各センシング基準電極線40KRは、複数の基準短線部40Eが基準屈曲部40Qを介して連なり、全体として第1方向D1に延びる折れ線形状を有する。
【0065】
2種類の基準短線部40Eの各々は、基準短線部40Eの延びる方向に沿って長さLkを有している。センシング基準パターンが含む複数の基準短線部40Eの長さLkはすべて等しい。2種類の基準短線部40Eのうち、一方の基準短線部40Eaは、第1方向D1に沿って延びる仮想的な直線である基軸線A1に対して角度+θkの傾きを有し、他方の基準短線部40Ebは、基軸線A1に対して角度-θkの傾きを有している。すなわち、センシング基準パターンが含む複数の基準短線部40Eにおいて、基軸線A1に対する各基準短線部40Eの傾きの絶対値は一定であり、各センシング基準電極線40KRにおいて、上記傾きが正である基準短線部40Eと、上記傾きが負である基準短線部40Eとが、第1方向D1に沿って交互に繰り返されている。
【0066】
第1方向D1に沿って互いに隣り合う2つの基準短線部40Eのなす角の角度は、基準角度αsであって、センシング基準パターンにおける基準角度αsはすべて等しい。また、基準角度αsは、基準屈曲部40Qを通り、第2方向D2に沿った方向に延びる直線によって、二等分される。
【0067】
センシング基準電極線40KRにおける第2方向D2の一方側に位置する複数の基準屈曲部40Qは、第1方向D1に沿って延びる直線上に位置し、センシング基準電極線40KRにおける第2方向D2の他方側に位置する複数の基準屈曲部40Qもまた、第1方向D1に沿って延びる直線上に位置する。これらの直線間の長さ、すなわち、第2方向D2の一方側に位置する基準屈曲部40Qと、第2方向D2の他方側に位置する基準屈曲部40Qとの間の、第2方向D2に沿った長さが基準幅Hsである。換言すれば、基準幅Hsは第2方向D2において1つのセンシング基準電極線40KRが占める幅、すなわち、1つの基準短線部40Eにおける第2方向D2に沿った長さである。センシング基準パターンにおいて、基準幅Hsは一定である。
【0068】
基準半周期Wsは、センシング基準電極線40KRに沿って並ぶ2つの基準屈曲部40Qの間の第1方向D1に沿った長さである。換言すれば、基準半周期Wsは、1つの基準短線部40Eにおける第1方向D1に沿った長さであり、センシング基準パターンにおいて、基準半周期Wsは一定である。そして、センシング基準電極線40KRにおいて、第1方向D1に沿って隣り合う基準屈曲部40Qの間の長さは、基準半周期Wsの2倍の長さであり、この基準半周期Wsの2倍の長さが、センシング基準電極線40KRにおける屈曲の繰り返しの1周期の長さである。
【0069】
上記構成では、換言すれば、複数の基準屈曲部40Qは、第1仮想屈曲部の一例である図中山部と、第2仮想屈曲部の一例である図中谷部とから構成され、第1仮想屈曲部と第2仮想屈曲部とは、センシング基準電極線40KRに沿って周期的に1つずつ交互に並ぶ。そして、複数の第1仮想屈曲部と複数の第2仮想屈曲部とは、第1方向D1に沿って延びる別々の直線上に位置する。
【0070】
複数のセンシング基準電極線40KRは、第1方向D1に位相のずれた状態で第2方向D2に沿って並んでいる。すなわち、第2方向D2に沿って互いに隣り合うセンシング基準電極線40KRにおいて、第2方向D2に沿って並ぶ部分の位相は、互いに異なっている。位相は、センシング基準電極線40KRにおける1周期内での第1方向D1における位置であり、例えば、谷部である基準屈曲部40Qから、この基準屈曲部40Qと第1方向D1に沿って隣り合う谷部である基準屈曲部40Qまでの部分における位置である。
【0071】
詳細には、互いに隣り合うセンシング基準電極線40KRにおいて、第2方向D2に沿って並ぶ部分は逆位相になっている。換言すれば、互いに隣り合うセンシング基準電極線40KRの位相は反転している。例えば、
図5に示す領域S1の中央部分では、谷部間を1周期とするとき、図中上側のセンシング基準電極線40KRの位相は、1周期の開始位置に相当し、図中下側のセンシング基準電極線40KRの位相は、1周期の2分の1の位置に相当する。こうした構成においては、第2方向D2に沿って、山部である基準屈曲部40Qと谷部である基準屈曲部40Qとが交互に並び、また、基準短線部40Eaと基準短線部40Ebとが交互に並ぶ。換言すれば、互いに隣り合うセンシング基準電極線40KRにおいて、これらの電極線が有する基準屈曲部40Qが向かい合う。
【0072】
複数のセンシング基準電極線40KRは、第2方向D2に沿って、一定の配列間隔で並び、この配列間隔が基準間隔Psである。すなわち、基準間隔Psは、互いに隣り合うセンシング基準電極線40KRにおける、第1仮想屈曲部である基準屈曲部40Q同士の間、もしくは、第2仮想屈曲部である基準屈曲部40Q同士の間の第2方向D2に沿った距離である。
【0073】
第2方向D2に沿って互いに隣り合うセンシング基準電極線40KRの間の隙間の長さが、電極線間ギャップGsである。換言すれば、電極線間ギャップGsは、互いに隣り合うセンシング基準電極線40KRにおいて向かい合う2つの基準屈曲部40Qの間、すなわち、一方のセンシング基準電極線40KRにおける第1仮想屈曲部と他方のセンシング基準電極線40KRにおける第2仮想屈曲部との間の、第2方向D2に沿った距離である。
【0074】
電極線間ギャップGsが大きすぎると、電極線間ギャップGsに起因した周期性が生じることに起因して、センシング基準パターンを基に作成される電極線パターンを画素パターンと重ね合わせた場合にモアレが生じやすくなる。一方、電極線間ギャップGsが小さすぎると、電極線パターンにて電極線の屈曲部付近を精密に形成することが困難になる。特に、電極線が金属薄膜のエッチングによって形成される場合には、屈曲部同士が近接する部分において電極線の線幅が設計寸法よりも太くなり、屈曲部付近が点状に視認されやすくなる。
【0075】
こうした観点から、基準間隔Psに対する電極線間ギャップGsの百分率をギャップ率Rgとするとき、ギャップ率Rgは、0%以上25%以下であることが好ましく、5%以上10%以下であることがより好ましい。
【0076】
センシング基準パターンの形状を規定する上述の各パラメータは、例えば、フーリエ解析を利用して、センシング基準パターンと表示パネル10の画素パターンとを重ね合わせたときに、モアレの発生が抑えられる値に設定されることが好ましい。具体的には、センシング基準パターンを所定周期の画素パターンと重ね合わせたときに生じるモアレのコントラストや、モアレとして視認される縞のピッチおよび角度を算出し、モアレが視認され難くなるように、各パラメータの値が設定される。このとき、互いに異なるサイズや互いに異なる解像度の複数の表示パネル10が有する画素パターンに対し、共通してモアレの発生が抑えられる各パラメータの値が求められることが好ましい。重ね合わせの対象となる複数の表示パネル10は、少なくとも、互いに異なるサイズを有する2種類の表示パネル、もしくは、互いに異なる解像度を有する2種類の表示パネルを含んでいればよい。
【0077】
フーリエ解析では、重ね合わされるパターンに対してフーリエ変換を行って周波数情報を取得し、得られた二次元フーリエパターンの畳み込み(Convolution)を計算した上で、2次元マスクをかけて、逆フーリエ変換によって画像の再構成を行う。モアレのピッチは、重ね合わされる元のパターンの周期より大きいため、上記2次元マスクは、2次元マスクによって高周波成分が取り除かれ、低周波成分のみが取り出されるようにかければよい。マスクの大きさを、人間の視覚応答特性に応じて決まるサイズに設定することによって、画像の再構成後に、モアレのコントラストやピッチや角度を算出することに基づき、視認されるモアレの程度を判断できる。
【0078】
また、基準間隔Psは、表示パネル10における第1画素幅P1および第2画素幅P2の10%以上600%以下の範囲で設定されることが好ましい。第1画素幅P1と第2画素幅P2とが異なる場合には、第1画素幅P1および第2画素幅P2のうちの大きい方の画素幅が基準とされればよい。基準間隔Psが第1画素幅P1および第2画素幅P2の10%以上であれば、センシング基準パターンを基に作成される電極線パターン内にて電極線の占める割合が過剰になりすぎないため、タッチパネル20における光の透過率の低下が抑えられる。一方、基準間隔Psが第1画素幅P1および第2画素幅P2の600%以下であれば、タッチパネルにおける位置の検出精度が高められる。
【0079】
また、基準角度αsは、95度以上150度以下であることが好ましく、100度以上140度以下であることがさらに好ましい。基準角度αsが95度以上であると、基準短線部40Eの数が多くなってパターン内で電極線の占める割合が過剰になることが抑えられる。一方、基準角度αsが150度以下であると、基準半周期Wsが大きすぎない範囲に保たれるため、基準間隔Psおよび基準幅Hsを適切な範囲内の値に設定することが容易となる。
図6を参照して、センシング基準パターンを基に作成されるセンシング電極線33SRのパターンについて説明する。
【0080】
図6が示すように、複数のセンシング電極線33SRから構成されるパターンは、複数のセンシング基準電極線40KRにおける基準屈曲部40Qの位置を不規則に変位させたパターンである。
図6においては、センシング基準電極線40KRを細線で示し、センシング電極線33SRを太線で示している。
【0081】
センシング基準電極線40KRの基準屈曲部40Qの位置を、基準屈曲部40Qを囲む三角形状の変位領域Ss内で動かした位置に、センシング電極線33SRの屈曲部33Qが配置される。1つのセンシング電極線33SRは、1つのセンシング基準電極線40KRにおける各基準屈曲部40Qの位置を、基準屈曲部40Qごとの変位領域Ss内で基準屈曲部40Qの並びの順序に対して不規則に変位した形状を有する。複数のセンシング基準電極線40KRにおける各基準屈曲部40Qの位置を、各センシング基準電極線40KRにおける基準屈曲部40Qの並びの順序に対し不規則に変位することによって、複数のセンシング電極線33SRから構成されるパターンが形成される。
【0082】
変位領域Ssは、第1方向D1に沿って延びる底辺Bkを有する二等辺三角形状を有し、底辺Bkがセンシング基準電極線40KRの外側に向けられ、基準屈曲部40Qを通って第2方向D2に延びる直線が、二等辺三角形の頂点と底辺Bkの中点とを通るように配置される。底辺Bkは、第2方向D2に沿って互いに隣り合うセンシング基準電極線40KRの間の中央に配置される。そして、底辺Bkは、一方のセンシング基準電極線40KRの基準屈曲部40Qに対して設定される変位領域Ssと、この基準屈曲部40Qと向かい合う、他方のセンシング基準電極線40KRの基準屈曲部40Qに対して設定される変位領域Ssとの間で共有されている。すなわち、変位領域Ssの底辺Bkは、第2方向D2におけるセンシング基準電極線40KRの中央の位置から、第2方向D2に基準間隔Psの2分の1の長さだけ離れた位置に配置される。
【0083】
変位領域Ssである三角形の高さds1と、底辺Bkの長さds2とは、基準間隔Psに対する高さds1の比と、基準半周期Wsの2倍の長さに対する長さds2の比とが一致するように設定される。この基準間隔Psに対する高さds1の比が、変位率Rsである。変位率Rsが大きいほど、変位領域Ssが大きくなり、すなわち、基準屈曲部40Qに対して屈曲部33Qが変位する範囲が大きくなる。そのため、変位率Rsが大きいほど、センシング電極線33SRの規則性が崩れ、センシング電極線33SRのパターンの周期性が低下する。
【0084】
このように作成されるセンシング電極線33SRは、不規則に屈曲を繰り返しながら第1方向D1に延びる折れ線形状を有している。詳細には、センシング電極線33SRは、複数の屈曲部33Qと、センシング電極線33SRに沿って互いに隣り合う屈曲部33Qを結ぶ直線形状を有した複数の短線部33Eとを含んでいる。屈曲部33Qは、互いに隣り合う2つの短線部33Eが接続される部分であり、第1屈曲部の一例である図中山部に相当する屈曲部33Qと、第2屈曲部の一例である図中谷部に相当する屈曲部33Qとが、センシング電極線33SRに沿って1つずつ交互に並んでいる。屈曲部33Qは、センシング基準電極線40KRの基準屈曲部40Qを変位領域Ss内で変位した位置に配置され、この屈曲部33Qを結ぶ位置に、短線部33Eが位置する。
【0085】
複数の短線部33Eの各々は、短線部33Eの延びる方向に沿って長さLsを有し、複数の短線部33Eには、互いに異なる長さLsを有する短線部33Eが含まれる。すなわち、複数の短線部33Eにおいて、長さLsは一定ではない。第1方向D1に沿って並ぶ複数の短線部33Eの間で、短線部33Eの並びの順序に対し長さLsは不規則に変化している。複数の短線部33Eの各々は、基軸線A1に対して傾きθsを有し、複数の短線部33Eには、互いに異なる大きさの傾きθsを有する短線部33Eが含まれる。すなわち、複数の短線部33Eにおいて、傾きθsの絶対値は一定ではない。第1方向D1に沿って並ぶ複数の短線部33Eの間で、短線部33Eの並びの順序に対し傾きθsの絶対値は不規則に変化している。
【0086】
図7および
図8を参照して、複数のドライブ電極線31DRが構成するパターンの基とされるドライブ基準パターン、および、ドライブ基準パターンを基に作成されるドライブ電極線31DRのパターンについて説明する。ドライブ基準パターンも、センシング基準パターンと同様、規則的な折れ線形状を有する仮想的な電極線から構成され、ドライブ基準パターンの屈曲部を変位させることによって、ドライブ電極線31DRのパターンが作成される。
【0087】
図7が示すように、ドライブ基準パターンを構成する仮想的な電極線であるドライブ基準電極線41KRは、第2方向D2に沿って交互に繰り返される2種類の基準短線部41Eと、2種類の基準短線部41Eが接続される部分である基準屈曲部41Qとを含んでいる。ドライブ基準パターンが含む基準短線部41Eの長さは一定である。2種類の基準短線部41Eのうち、一方の基準短線部41Eが、第2方向D2に沿って延びる仮想的な直線である基軸線A2に対して有する傾きは正であり、他方の基準短線部41Eが、基軸線A2に対して有する傾きは負であり、これらの傾きの絶対値は等しい。ドライブ基準電極線41KRにおける第1方向D1の一方側に位置する基準屈曲部41Qと他方側に位置する基準屈曲部41Qとは、第2方向D2に沿って延びる別々の直線上に位置する。
【0088】
ドライブ基準電極線41KRにおいて、互いに隣り合う2つの基準短線部41Eのなす角の角度は、基準角度αdであり、ドライブ基準電極線41KRにおける第1方向D1の一方側に位置する基準屈曲部41Qと、第1方向D1の他方側に位置する基準屈曲部41Qとの間の、第1方向D1に沿った長さが基準幅Hdである。ドライブ基準電極線41KRに沿って並ぶ2つの基準屈曲部41Qの間の第2方向D2に沿った長さが基準半周期Wdである。ドライブ基準電極線41KRにおいて、第2方向D2に沿って隣り合う基準屈曲部41Qの間の長さは、基準半周期Wdの2倍の長さであり、この基準半周期Wdの2倍の長さが、ドライブ基準電極線41KRにおける屈曲の繰り返しの1周期の長さである。ドライブ基準パターンにおいて、基準角度αd、基準幅Hd、基準半周期Wdはそれぞれ一定である。
【0089】
複数のドライブ基準電極線41KRは、第1方向D1に沿って、一定の配列間隔である基準間隔Pdで並んでいる。複数のドライブ基準電極線41KRは、第2方向D2に位相のずれた状態で第1方向D1に沿って並んでいる。位相は、ドライブ基準電極線41KRにおける1周期内での第2方向D2における位置である。詳細には、互いに隣り合うドライブ基準電極線41KRにおいて、第1方向D1に沿って並ぶ部分は逆位相になっており、これらの電極線が有する基準屈曲部41Qが向かい合っている。
【0090】
第1方向D1に沿って互いに隣り合うドライブ基準電極線41KRの間の隙間の長さが、電極線間ギャップGdである。電極線間ギャップGdは、基準間隔Pdに対する電極線間ギャップGdの百分率であるギャップ率が、センシング基準パターンでのギャップ率Rgと一致するように、設定される。すなわち、センシング基準パターンとドライブ基準パターンとのいずれにおいても、ギャップ率は、所定のギャップ率Rgとなっている。
【0091】
ここで、基準半周期Ws,Wdおよび基準間隔Ps,Pdについて、センシング基準電極線40KRの基準半周期Wsは、ドライブ基準電極線41KRの基準間隔Pdと一致し(Ws=Pd)、ドライブ基準電極線41KRの基準半周期Wdは、センシング基準電極線40KRの基準間隔Ps一致する(Wd=Ps)ように設定される。なお、このように基準半周期Ws,Wdおよび基準間隔Ps,Pdが設定されるとき、センシング基準電極線40KRの基準角度αsとドライブ基準電極線41KRの基準角度αdとの少なくとも一方が、上述の基準角度αsの好ましい範囲として示した範囲に含まれればよい。
【0092】
図8が示すように、複数のドライブ電極線31DRから構成されるパターンは、複数のドライブ基準電極線41KRにおける基準屈曲部41Qの位置を不規則に変位させたパターンである。
図8においては、ドライブ基準電極線41KRを細線で示し、ドライブ電極線31DRを太線で示している。
【0093】
ドライブ基準電極線41KRの基準屈曲部41Qの位置を、基準屈曲部41Qを囲む三角形状の変位領域Sd内で動かした位置に、ドライブ電極線31DRの屈曲部31Qが配置される。1つのドライブ電極線31DRは、1つのドライブ基準電極線41KRにおける各基準屈曲部41Qの位置を、基準屈曲部41Qごとの変位領域Sd内で基準屈曲部41Qの並びの順序に対して不規則に変位した形状を有する。
【0094】
変位領域Sdは、第2方向D2に沿って延びる底辺を有する二等辺三角形状を有し、底辺がドライブ基準電極線41KRの外側に向けられ、基準屈曲部41Qを通って第1方向D1に延びる直線が、二等辺三角形の頂点と底辺の中点とを通るように配置される。底辺は、第1方向D1に沿って互いに隣り合うドライブ基準電極線41KRの間の中央に配置される。
【0095】
変位領域Sdである三角形の高さdd1と、底辺の長さdd2とは、基準間隔Pdに対する高さdd1の比と、基準半周期Wdの2倍の長さに対する長さdd2の比とが一致するように設定される。この基準間隔Pdに対する高さdd1の比が、変位率Rdであり、変位率Rdは、変位率Rsと一致する。
【0096】
このように作成されるドライブ電極線31DRは、複数の屈曲部31Qと、ドライブ電極線31DRに沿って互いに隣り合う屈曲部31Qを結ぶ直線形状を有した複数の短線部31Eとを含んでいる。屈曲部31Qは、ドライブ基準電極線41KRの基準屈曲部41Qを変位領域Sd内で変位した位置に配置され、この屈曲部31Qを結ぶ位置に、短線部31Eが位置する。
【0097】
各ドライブ電極線31DRにおいて、短線部31Eの延びる方向に沿った長さは、第2方向D2に沿って並ぶ複数の短線部31Eの間で、短線部31Eの並びの順序に対し不規則に変化している。また、各ドライブ電極線31DRにおいて、基軸線A2に対する短線部31Eの傾きの絶対値は、第2方向D2に沿って並ぶ複数の短線部31Eの間で、短線部31Eの並びの順序に対し不規則に変化している。
【0098】
図9および
図10を参照して、複数のセンシング電極線33SRと複数のドライブ電極線31DRとが重ね合わされることによって形成される電極線パターンについて説明する。
【0099】
導電性フィルム21では、透明誘電体基板33の表面と対向する方向から見て、複数のセンシング電極線33SRから構成されるパターンと、複数のドライブ電極線31DRから構成されるパターンとが重ね合わされたパターンである電極線パターンが形成される。このとき、センシング電極33SPの延びる方向とドライブ電極31DPの延びる方向とが直交するように、これらの電極線が重ねられる。こうした電極線パターンは、センシング基準パターンとドライブ基準パターンとが第1方向D1と第2方向D2とが直交するように重ね合わされたパターンである基準パターンに対して、屈曲部が不規則に変位されたパターンである。
【0100】
図9は基準パターンを示す。Ws=Pd、かつ、Wd=Psである場合、ドライブ基準電極線41KRに対するセンシング基準電極線40KRの配置、すなわち、基準屈曲部41Qや基準短線部41Eに対する基準屈曲部40Qや基準短線部40Eの位置が、基準パターン内で一定となる。したがって、基準パターンにおいて、電極線の配置の密度の均一性を高めることが可能であり、ひいては、電極線パターンにおける電極線の配置の密度がパターン内で過度に不均一になることが抑えられる。
【0101】
具体的には、
図9が示すように、基準パターンにおいて、センシング基準電極線40KRの基準屈曲部40Qは、互いに隣り合うドライブ基準電極線41KRの間の中央部で、これらの電極線間の隙間と重なる。また、ドライブ基準電極線41KRの基準屈曲部41Qは、互いに隣り合うセンシング基準電極線40KRの間の中央部で、これらの電極線間の隙間と重なる。そして、センシング基準電極線40KRの基準短線部40Eの中点と、ドライブ基準電極線41KRの基準短線部41Eの中点とが交差する。
【0102】
図10は、
図9に示した基準パターンを基に作成された電極線パターンを示す。直線状に延びる電極線が交差するパターンのように、同一形状の矩形が繰り返されるパターンと比較して、本実施形態の電極線パターンは、矩形とは異なる多角形から構成されるパターンであるため、パターンの周期性が低い。したがって、画素パターンと電極線パターンとのずれが、2つの周期構造のずれとして認識され難くなるため、本実施形態の電極線パターンを表示パネル10の画素パターンと重ね合わせた場合に、モアレが視認されることが抑えられる。その結果、表示装置100にて視認される画像の品質の低下が抑えられる。
【0103】
特に、電極線パターンを構成するセンシング電極線33SRおよびドライブ電極線31DRの各々が不規則な屈曲線形状を有するため、規則的な屈曲線形状を有する電極線からパターンが形成される場合と比較して、パターンの周期性がより低くなる。したがって、電極線パターンと画素パターンとを重ね合わせた場合に、モアレが視認されることがより好適に抑えられる。
【0104】
また、基準パターンにおけるセンシング基準電極線40KRおよびドライブ基準電極線41KRの形状は、基準角度αs,αdや基準半周期Ws,Wd等のパラメータがモアレの生じ難い値に設定されていることにより、モアレを抑えやすい形状とされている。そして、こうしたモアレを抑えやすい基準パターンの周期性が崩されることによって、電極線パターンは、より一層、モアレが視認されることを抑えられるパターンとなる。
【0105】
また、基準パターンにおいて、互いに隣り合う電極線の位相がずれていることにより、第1方向D1や第2方向D2に沿って、同一の傾きの基準短線部40E,41Eが並ぶことは起こらず、基準パターンを基に作成された電極線パターンにおいても、同一の傾きの斜線部分が並ぶことが抑えられる。同一の傾きの斜線部分が並ぶと、これらの斜線部分が構成する帯状の領域が電極線の並ぶ方向に延びるように形成され、さらに、斜線部分の傾きが互いに異なる2種類の帯状の領域が交互に並ぶと、帯状のパターンが、特に、表示装置100の非点灯時に外光の反射によって視認される場合がある。
【0106】
本実施形態においては、同一の傾きの斜線部分が並ぶことが抑えられるため、こうした帯状のパターンが視認されることが抑えられ、その結果、操作面20Sから見たタッチパネル20の外観の品質が低くなることが抑えられる。
【0107】
[電極線パターンの周期性の評価]
図11~
図16を参照して、本実施形態の電極線パターンが有する周期性と、砂目の発生との関係を、FFT(Fast Fourier Transformation)によって解析した結果を用いて考察する。
【0108】
図11は、第1方向D1を水平方向、第2方向D2を垂直方向として、基準パターン、すなわち、センシング基準電極線40KRとドライブ基準電極線41KRとが重ね合わされたパターンに対して二次元フーリエ変換を行い、それによって得られたパワースペクトルの一例を模式的に示す図である。
図11は、特徴的なピークを強調して示しており、基準パターンと関連の低い微弱な点は割愛されている。なお、
図15は、基準パターンの一例についての実際のパワースペクトルの画像を示す。
【0109】
図11が示すように、2次元の周波数空間には、基準パターンにおける基準短線部40E,41Eの並び、換言すれば、折れ線の斜線部分の並びの周期性に由来する周波数成分のピークを示す輝点G1が現れている。輝点G1に対応する空間周波数が、第1空間周波数fsである。輝点G1は、水平方向の軸であるu軸、および、垂直方向の軸であるv軸の各々に対して対称に現れ、原点に対して輝点G1が現れる方向は、基準角度αs,αdの大きさに応じて決まる。
【0110】
また、u軸上およびv軸上には、基準パターンにおける基準屈曲部40Q,41Qの並び、換言すれば、折れ線の頂点部分の並びの周期性に由来する周波数成分のピークを示す輝点G2,G3が現れている。このうち、輝点G2はu軸上に位置し、輝点G2に対応する空間周波数が、第2空間周波数fwである。輝点G2は、原点に対して対象に現れ、輝点G2の位置は、基準半周期Wsの大きさ、すなわち、基準間隔Pdの大きさに応じて決まる。また、輝点G3はv軸上に位置し、輝点G3に対応する空間周波数が、第3空間周波数fpである。輝点G3は、原点に対して対象に現れ、輝点G3の位置は、基準間隔Psの大きさ、すなわち、基準半周期Wdの大きさに応じて決まる。
また、輝点G1の現れる方向には、高次成分のピークを示す輝点G4が現れている。輝点G4は、第1空間周波数fsの整数倍に対応する位置に現れる。
【0111】
図12は、基準パターンのパワースペクトルにおける空間周波数ごとのスペクトル強度を定量的に表した図である。詳細には、
図12に示すグラフの横軸は空間周波数であり、縦軸は、スペクトル密度の常用対数値である。
【0112】
スペクトル密度は、所定の周波数幅ごとにスペクトルの強さを表す尺度である。スペクトル密度の算出方法について以下に説明する。まず、パワースペクトルに示される空間周波数を、所定の微小な範囲に分割する。この範囲が、単位周波数幅である。続いて、単位周波数幅ごとに、各範囲に含まれる空間周波数でのスペクトル強度を積算する。そして、単位周波数幅ごとのスペクトル強度の積算値を、単位周波数幅の大きさで除することによって、各単位周波数幅のスペクトル密度が求められる。単位周波数幅の大きさは、1つの範囲に含まれる空間周波数の値の幅である。
図12は、各単位周波数幅におけるスペクトル密度の常用対数をプロットした点の近似曲線を示す。
【0113】
図12が示すように、
図11のパワースペクトルに現れていた輝点G1,G2,G3に対応する空間周波数fw,fp,fs、および、高次成分に対応する空間周波数fs2について、突出したピークが形成されている。第2空間周波数fwおよび第3空間周波数fpの各々のピークは、第1空間周波数fsのピークよりも小さい。
【0114】
図13は、第1方向D1を水平方向、第2方向D2を垂直方向として、本実施形態の電極線パターン、すなわち、センシング電極線33SRとドライブ電極線31DRとが重ね合わされたパターンに対して二次元フーリエ変換を行い、それによって得られたパワースペクトルの一例を模式的に示す図である。なお、
図16は、電極線パターンの一例についての実際のパワースペクトルの画像を示す。
【0115】
図13が示すように、屈曲部の変位により基準パターンに対して電極線パターンの周期性が低くなっていることに起因して、電極線パターンのパワースペクトルでは、帯状に分布する多数の点が現れる。この帯状に点が分布する領域は、原点から輝点G2,G3が現れていた位置付近まで広がるとともに、輝点G1の現れていた方向を中心とした方向に高周波領域に延びる。
【0116】
図14は、
図12と同様の方法によって、電極線パターンのパワースペクトルを対象として、空間周波数とスペクトル密度との関係を実線で示し、基準パターンのパワースペクトルを対象として、空間周波数とスペクトル密度との関係を一点鎖線で示す図である。スペクトル密度は、
図12と同様、常用対数を用いて示している。
【0117】
図14が示すように、電極線パターンでは、ピークが分散し、基準パターンと比較して、突出したピークの減衰や消失が生じている。特に、電極線パターンと基準パターンとは低周波領域で差異が大きく、電極線パターンにおいては、空間周波数fw,fpに対応するピークは、分散したピークに埋もれている。
【0118】
電極線パターンでの低周波領域において、突出したピークが観察されず、スペクトル密度の大きさが全体的に増大していることは、この領域に、単一のピークではなく、分散した種々のピークが混在していることを示す。このことは、電極線パターンにおいて、低い周波数、すなわち、視認性の高い周波数で特定の周期構造が見えることが抑えられる一方で、電極線パターンに靄がかかるようにムラが見える、つまり、砂目を生じさせる因子が増大していることを示す。したがって、基準パターンに対し、電極線パターンにおける低周波領域でのスペクトル密度の増大が過大であると、モアレが生じ難くなる一方で砂目が強く観察されやすくなる。
【0119】
そこで、モアレと砂目とを低減して表示装置100にて視認される画像の品質の低下を抑えるためには、電極線パターンとして、基準パターンをどの程度まで崩したパターンが許容されるか、換言すれば、低周波領域でのスペクトル密度の増大がどの程度まで許容されるかを評価するパラメータとして、本願の発明者は、以下に説明する第1評価値Ev1を導入した。
【0120】
まず、第1評価値Ev1の算出に用いる規定周波数領域について説明する。規定周波数領域は、第1空間周波数fsの4分の1の値である空間周波数fq、第2空間周波数fw、および、第3空間周波数fpの3つの周波数値のうちの最小値以下の周波数領域である。例えば、
図14においては、空間周波数fq以下の周波数領域が規定周波数領域である。
【0121】
そして、第1評価値Ev1は、電極線パターンにおける規定周波数領域のスペクトル密度の積算値を、基準パターンにおける規定周波数領域のスペクトル密度の積算値で除した値の常用対数である。すなわち、第1評価値Ev1は、基準パターンに対する電極線パターンの、規定周波数領域におけるスペクトル密度の比の常用対数である。スペクトル密度の積算値は、例えば、単位周波数幅ごとのスペクトル密度の総和として求められる。
【0122】
表1を参照して、第1評価値Ev1と砂目の発生の程度との関係についての試験結果について述べる。表1は、変位率Rsを変化させて作成した複数の電極線パターンについて、砂目の発生の程度を評価した結果を示す。電極線パターンの作成に用いた基準パターンにおいて、基準半周期Ws、および、基準半周期Wsと一致する基準間隔Pdは、250μm以上350μm以下の範囲に含まれる所定の値であり、基準間隔Ps、および、基準間隔Psと一致する基準半周期Wdは、150μm以上250μm以下の範囲に含まれる所定の値である。なお、表1の第1評価値Ev1は、電極線パターンごとに、電極線パターンと、その電極線パターンの基となる基準パターンとを対象として算出し、小数第2位以下を四捨五入した値で示している。
【0123】
砂目の評価は、目視によって行った。砂目の評価においては、砂目の強さを4段階に分け、砂目が視認されない場合を「◎」、弱い砂目が視認される場合を「○」、中程度の砂目が視認される場合を「△」、強い砂目が視認される場合を「×」とした。なお、砂目が視認されるとは、パターンが位置する領域に砂状に分布するちらつきが感じられたり、領域がぎらついて見えたりすることを意味する。
【0124】
【0125】
表1に示されるように、第1評価値Ev1が3.6以下である電極線パターンでは、強い砂目は視認されない。すなわち、第1評価値Ev1が3.6以下であれば、砂目の発生が抑制される。また、ギャップ率Rgが小さいほど、すなわち、電極線間ギャップGs,Gdが小さいほど、砂目が弱くなる第1評価値Ev1の値が大きくなる傾向が確認される。これは、電極線間ギャップGs,Gdが大きくなるほど、電極線間ギャップGs,Gdに起因した周期性に由来するピークが基準パターンにて大きくなることにより、基準パターンと電極線パターンとにおいて、低周波領域でのスペクトル密度の積算値の差が小さくなるためであると考えられる。
【0126】
ギャップ率Rgの好ましい範囲である5%以上10%以下の範囲においては、変位率Rsを0から1.0まで変化させるとき、第1評価値Ev1が、0から4程度となる。第1評価値Ev1がこうした範囲である場合に、3.6を閾値として第1評価値Ev1によって電極線パターンの良否を判定する構成であれば、特に、第1評価値Ev1が砂目についての指標として有効に機能する。
【0127】
また、モアレを抑えるためには、基準パターンと比較して、電極線パターンにて周期構造が視認されにくいこと、すなわち、低周波領域でのスペクトル密度の積算値が適度に大きいことが好ましい。こうした観点から、第1評価値Ev1は、1.0以上であることが好ましい。
【0128】
なお、第1実施形態において、透明誘電体基板33は透明誘電体層の一例である。そして、透明誘電体基板33の表面が第1面の一例であり、透明誘電体基板33の裏面が第2面の一例であり、センシング電極線33SRが第1電極線の一例であり、ドライブ電極線31DRが第2電極線の一例である。さらに、センシング基準電極線40KRが第1基準電極線の一例であり、ドライブ基準電極線41KRが第2基準電極線の一例である。
【0129】
以上説明したように、第1実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)第1評価値Ev1が3.6以下である電極線パターンであれば、不規則な屈曲線形状の電極線から構成される電極線パターンにおいて、強い砂目が生じることが抑えられる程度に、パターンの周期性が保たれる。したがって、電極線パターンと画素パターンとの重ね合わせに際してモアレが視認されることが抑えられるとともに、砂目が視認されることも抑えられる。したがって、表示装置100にて視認される画像の品質の低下を抑えることができる。
【0130】
(2)第1評価値Ev1が1.0以上である電極線パターンであれば、電極線パターンにおいて周期構造を視認させる周期性が、モアレが抑えられる程度に十分に低い。したがって、電極線パターンと画素パターンとの重ね合わせに際してモアレが好適に抑えられる。
【0131】
(3)ギャップ率Rgが5%以上10%以下であれば、電極線間ギャップGs,Gdが大きすぎないため、電極線間ギャップGs,Gdに起因した周期性が電極線パターンに生じてモアレが視認されることが抑えられる。また、電極線間ギャップGs,Gdが小さすぎないため、電極線パターンにて電極線の屈曲部付近の形状を精密に形成することが可能であり、例えば、電極線の線幅が局所的に太くなって点状に視認されることが抑えられる。
【0132】
(第2実施形態)
図17~
図20を参照して、導電性フィルム、タッチパネル、および、表示装置の第2実施形態について説明する。以下では、第2実施形態と第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0133】
第2実施形態の電極線パターンは、第1実施形態と同様、不規則な屈曲線形状を有する複数のセンシング電極線33SRおよび複数のドライブ電極線31DRから構成される。第2実施形態の電極線パターンも、第1実施形態と同様、センシング基準電極線40KRおよびドライブ基準電極線41KRから構成される基準パターンにおける屈曲部の位置を不規則に変位させることにより作成される。
【0134】
ところで、導電性フィルム21の形成に際しては、センシング電極線33SRが形成された基板と、ドライブ電極線31DRが形成された基板とが貼り合わされることによって、電極線パターンが形成される。このとき、重ね合わされる基板同士の位置が、設計上の位置からずれると、センシング電極線33SRのパターンに対するドライブ電極線31DRのパターンの位置も、設計上の位置、すなわち、理想的な位置からずれる。こうしたパターンのずれである表裏ずれが、電極線パターンに新たな周期構造を生じさせ、この周期構造がモアレの要因となる場合がある。
【0135】
図17は、表裏ずれが生じている基準パターンについて、第1方向D1を水平方向、第2方向D2を垂直方向として、二次元フーリエ変換を行うことにより得られたパワースペクトルの一例を模式的に示す図である。
図17は、特徴的なピークを強調して示しており、パターンと関連の低い微弱な点は割愛されている。
【0136】
図17に示すパワースペクトルにおいては、
図11に示した表裏ずれのない基準パターンのパワースペクトルと比較して、輝点G1~G4に加え、表裏ずれ、すなわち、センシング基準パターンとドライブ基準パターンとのずれに起因して生じた周期に由来する周波数成分のピークを示す輝点G5が現れている。輝点G5に対応する空間周波数が、第4空間周波数fhである。輝点G5は、輝点G1と同じ方向に現れ、第4空間周波数fhは、第1空間周波数fsよりも小さい。詳細には、表裏ずれに起因して生じた周期は、斜線部分が並ぶことに起因して生じる周期の2倍の周期となり、こうした周期に応じた周波数が、第4空間周波数fhである。すなわち、第4空間周波数fhは、第1空間周波数fsの2分の1の空間周波数である。
【0137】
図18は、
図12と同様の方法によって、表裏ずれが生じている基準パターンのパワースペクトルを対象として、空間周波数とスペクトル密度との関係を示す図である。スペクトル密度は、
図12と同様、常用対数を用いて示している。
【0138】
図18が示すように、表裏ずれが生じた基準パターンでは、
図12に示した表裏ずれが生じていない基準パターンの場合と比較して、低周波領域に、第4空間周波数fhに対応するピークとして突出したピークが生じている。
【0139】
図19は、表裏ずれが生じている電極線パターンについて、第1方向D1を水平方向、第2方向D2を垂直方向として、二次元フーリエ変換を行うことにより得られたパワースペクトルの一例を模式的に示す図である。また、
図20は、
図12と同様の方法によって、表裏ずれが生じている電極線パターンのパワースペクトルを対象として、空間周波数とスペクトル密度との関係を実線で示し、表裏ずれが生じている基準パターンのパワースペクトルを対象として、空間周波数とスペクトル密度との関係を一点鎖線で示す図である。スペクトル密度は、
図12と同様、常用対数を用いて示している。
【0140】
図19が示すように、
図13と同様、屈曲部の変位により基準パターンに対して電極線パターンの周期性が低くなっていることに起因して、電極線パターンのパワースペクトルでは、帯状に分布する多数の点が現れている。
図20が示すように、電極線パターンでは、ピークが分散し、基準パターンと比較して、突出したピークの減衰や消失が生じている。表裏ずれに起因した第4空間周波数fhに対応するピークも、分散したピークに埋もれる傾向を有するものの、表裏ずれに起因して生じた周期構造の周期性の程度や、電極線パターンにおける周期性の崩れの程度によっては、
図20が示すように、第4空間周波数fhのピークが周囲から突出する場合がある。
【0141】
第1実施形態にて説明したように、電極線パターンについて、低周波領域において、突出したピークとして単一のピークが形成されることは、視認性の高い周波数で特定の周期構造が形成されて周期構造が認識されやすいことを意味し、モアレが視認されやすくなる。
したがって、第4空間周波数fhのピークの周囲からの突出の程度が小さい方が、モアレの発生を抑えることができる。
【0142】
そこで、表裏ずれによるモアレを低減して表示装置100にて視認される画像の品質の低下を抑えるためには、第4空間周波数fhのピークの大きさが周囲のスペクトル密度に対してどの程度まで大きいことが許容されるかを評価するパラメータとして、本願の発明者は、以下に説明する第2評価値Ev2を導入した。
【0143】
第2評価値Ev2の算出には、第1実施形態と同様、規定周波数領域が用いられる。規定周波数領域は、第1実施形態と同様、第1空間周波数fsの4分の1の値である空間周波数fq、第2空間周波数fw、および、第3空間周波数fpの3つの周波数値のうちの最小値以下の周波数領域である。例えば、
図20においては、空間周波数fq以下の周波数領域が規定周波数領域である。
【0144】
そして、第2評価値Ev2は、電極線パターンにおける第4空間周波数fhでのスペクトル密度を、電極線パターンにおける規定周波数領域でのスペクトル密度の平均値で除した値の常用対数である。すなわち、第2評価値Ev2は、電極線パターンにおける、規定周波数領域でのスペクトル密度の平均値に対する第4空間周波数fhでのスペクトル密度の比の常用対数である。スペクトル密度の平均値は、例えば、各単位周波数幅のスペクトル密度の平均として求められる。
【0145】
第2評価値Ev2が、2.0以下であれば、第4空間周波数fhでのスペクトル密度が周囲に対して大きくなりすぎないため、表裏ずれによるモアレが良好に抑えられる。特に、理想的な電極線パターンと比較して、センシング電極線33SRのパターンに対するドライブ電極線31DRのパターンの位置が、第1方向D1にxμm、かつ、第2方向D2にyμmだけずれており、x2+y2>450であるとき、表裏ずれによるモアレが生じやすい。そこで、x2+y2>450となる表裏ずれが生じているときに、2.0を閾値として第2評価値Ev2をモアレの程度の指標として用いれば、モアレが好適に低減できる。
【0146】
また、表裏ずれが生じている場合に、第1実施形態にて説明したように、第1評価値Ev1が1.0以上となるように電極線パターンを構成すれば、表裏ずれによって形成される周期構造が視認されることも抑えられるため、モアレを的確に抑えることができる。
【0147】
以上説明したように、第2実施形態によれば、第1実施形態の(1)~(3)の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(4)第2評価値Ev2が、2.0以下であれば、電極線パターンの表裏ずれが生じた場合に形成される周期構造の周期性が低く抑えられる。したがって、こうした周期性に起因してモアレが視認されることが抑えられる。それゆえ、電極線パターンに表裏ずれが生じた場合であっても、表示装置100にて視認される画像の品質の低下を抑えることができる。
【0148】
(5)第1評価値Ev1が1.0以上であれば、電極線パターンに表裏ずれが生じた場合であっても、表裏ずれに起因した周期構造も含めて低周波の周期構造が視認されることが抑えられるため、モアレが視認されることが的確に抑えられる。
【0149】
(変形例)
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することが可能である。
・上記各実施形態では、センシング基準パターンの基準屈曲部40Qとドライブ基準パターンの基準屈曲部41Qとに、同一の変位率Rs,Rdの変位領域Ss,Sdを設定し、この変位領域Ss,Sd内で変位した位置に屈曲部33Q,31Qを配置することによって電極線パターンを作成した。電極線パターンの作成手法はこれに限られず、例えば、センシング基準パターンの変位率Rsとドライブ基準パターンの変位率Rdとは異なってもよいし、変位領域Ss,Sdの形状は二等辺三角形でなくてもよい。また、互いに隣接する基準電極線にて向かい合う基準屈曲部の組ごとに、屈曲部を変位させてもよいし、電極線の並ぶ方向や電極線の延びる方向のみに、屈曲部を変位させてもよい。また、向かい合う基準屈曲部を変位させた屈曲部、すなわち、電極線パターンにて互いに隣り合う電極線の屈曲部が接触してもよい。また、センシング基準パターンとドライブ基準パターンとでギャップ率は異なってもよい。要は、電極線パターンは、基準パターンにおける屈曲部を、各基準電極線40KR,41KRにおける屈曲部の並びの順序に対し不規則に変位したパターンであればよい。なお、基準パターンを決定する各パラメータは、例えば、電極線パターンにおける特徴解析や、電極線パターンのパワースペクトルから輝点を抽出すること等によって導き出すことが可能である。
【0150】
・上記各実施形態では、センシング電極線33SRの屈曲部33Qおよびドライブ電極線31DRの屈曲部31Qは、直線形状の短線部33E,31Eを繋ぐ点状の部分である。これに限らず、屈曲部33Q,31Qは、電極の延びる方向に互いに隣り合う2つの短線部33E,31Eを曲線状に繋ぐ部分であってもよい。
【0151】
・電極線パターンは、少なくとも画像の品質の低下を抑えたい領域、例えば、操作面20Sから見た中央の領域等に配置される部分において、第1実施形態や第2実施形態の特徴を有していればよい。また、複数のセンシング電極線33SRからなるパターンは、このパターンに含まれる一部の領域のパターンが第1方向D1や第2方向D2に沿って繰り返されるパターンであってもよい。同様に、複数のドライブ電極線31DRからなるパターンは、このパターンに含まれる一部の領域のパターンが第1方向D1や第2方向D2に沿って繰り返されるパターンであってもよい。この場合、上記一部の領域、すなわち、繰り返しの単位領域に含まれる部分が第1電極線もしくは第2電極線である。
【0152】
・
図21が示すように、タッチパネル20を構成する導電性フィルム21において、透明基板31および透明接着層32が割愛されてもよい。こうした構成では、透明誘電体基板33の面のなかで、表示パネル10と対向する裏面がドライブ電極面31Sとして設定され、ドライブ電極面31Sには、ドライブ電極31DPが位置する。そして、透明誘電体基板33における裏面と反対側の面である表面はセンシング電極面33Sであって、センシング電極面33Sには、センシング電極33SPが位置する。なお、こうした構成において、ドライブ電極31DPは、例えば、透明誘電体基板33の一方の面に形成された1つの薄膜が、エッチングによってパターニングされることにより形成され、センシング電極33SPは、例えば、透明誘電体基板33の他方の面に形成された1つの薄膜が、エッチングによってパターニングされることにより形成される。
【0153】
なお、上記各実施形態のように、センシング電極33SPとドライブ電極31DPとが互いに異なる基材上に形成されている構成では、1つの基材の両面に電極線が形成されている構成と比較して、電極線の形成が容易である一方で、表裏ずれは生じやすい。したがって、センシング電極33SPとドライブ電極31DPとが互いに異なる基材上に形成されている構成において第2実施形態の構成が適用されると効果が高い。
【0154】
・
図22が示すように、タッチパネル20において、表示パネル10に近い構成要素から順番に、ドライブ電極31DP、透明基板31、透明接着層32、透明誘電体基板33、センシング電極33SP、透明接着層23、カバー層22が位置してもよい。
【0155】
こうした構成において、例えば、ドライブ電極31DPは、透明基板31のドライブ電極面31Sとなる1つの面に形成され、センシング電極33SPは、透明誘電体基板33のセンシング電極面33Sとなる1つの面に形成される。そして、透明基板31においてドライブ電極面31Sの反対側の面と、透明誘電体基板33においてセンシング電極面33Sの反対側の面とが、透明接着層32によって接着される。この場合、透明基板31、透明接着層32、および、透明誘電体基板33が、透明誘電体層を構成し、透明誘電体基板33のセンシング電極面33Sが第1面であり、透明基板31のドライブ電極面31Sが第2面である。
【0156】
・表示パネル10とタッチパネル20とは、個別に形成されていなくともよく、タッチパネル20は、表示パネル10と一体に形成されてもよい。こうした構成では、例えば、導電性フィルム21のうち、複数のドライブ電極31DPがTFT層13に位置する一方、複数のセンシング電極33SPがカラーフィルタ基板16と上側偏光板17との間に位置するインセル型の構成とすることができる。あるいは、導電性フィルム21がカラーフィルタ基板16と上側偏光板17との間に位置するオンセル型の構成でもよい。こうした構成においては、ドライブ電極31DPとセンシング電極33SPとに挟まれる層が、透明誘電体層を構成する。
【符号の説明】
【0157】
A1,A2…基軸線、D1…第1方向、D2…第2方向、Gs,Gd…電極線間ギャップ、ND…容量検出部、Ps,Pd…基準間隔、Hs,Hd…基準幅、Ws,Wd…基準半周期、Ss,Sd…変位領域、Rs,Rd…変位率、Rg…ギャップ率、αs,αd…基準角度、fs…第1空間周波数、fw…第2空間周波数、fp…第3空間周波数、fh…第4空間周波数、10…表示パネル、11…下側偏光板、12…薄膜トランジスタ基板、13…TFT層、14…液晶層、15…カラーフィルタ層、15P…画素、16…カラーフィルタ基板、17…上側偏光板、20…タッチパネル、21…導電性フィルム、22…カバー層、23…透明接着層、31…透明基板、31S…ドライブ電極面、31DP…ドライブ電極、31DR…ドライブ電極線、31E…短線部、31Q…屈曲部、33…透明誘電体基板、33SP…センシング電極、33SR…センシング電極線、33S…センシング電極面、33E…短線部、33Q…屈曲部、34…選択回路、35…検出回路、36…制御部、40KR…センシング基準電極線、40E…基準短線部、40Q…基準屈曲部、41KR…ドライブ基準電極線、41E…基準短線部、41Q…基準屈曲部、100…表示装置。