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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】戸車
(51)【国際特許分類】
   E05D 15/06 20060101AFI20220314BHJP
【FI】
E05D15/06 108
E05D15/06 114
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017232658
(22)【出願日】2017-12-04
(65)【公開番号】P2019100103
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(73)【特許権者】
【識別番号】596077455
【氏名又は名称】大征工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】大泉 聡
(72)【発明者】
【氏名】本橋 成哲
(72)【発明者】
【氏名】松田 幸一郎
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】実開昭64-043174(JP,U)
【文献】実開昭63-117882(JP,U)
【文献】実開昭64-18275(JP,U)
【文献】仏国特許出願公開第2751367(FR,A1)
【文献】中国特許出願公開第105986719(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を回転可能に支持する軸支持部を備えるケースと、
軸部材が案内される傾斜溝と、前記車輪の車軸が挿入される下部貫通孔とが形成された案内部材と、を備え、
前記傾斜溝を形成している案内部材に当接する前記軸部材の端部は、前記傾斜溝に面接触する一対の平行な面からなる戸車。
【請求項2】
前記ケースには、前記軸部材が貫通する貫通孔が形成され、
前記軸部材は、前記軸部材の軸方向における両端部において前記傾斜溝に係合している溝係合部と、前記溝係合部の間の中間部とを備え、
前記中間部は、前記傾斜溝を構成する前記案内部材の部分に当接する請求項1に記載の戸車。
【請求項3】
前記ケースは、外側ケースと、前記外側ケースに対して第1方向へ移動可能に前記外側ケースに支持された中ケースと、前記中ケースに対して前記第1方向と交差する第2方向へ移動可能に前記外側ケースに支持され、車輪の軸部材を回転可能に支持する内側ケースと、
前記中ケースは、前記案内部材を備え、
前記外側ケースには、第2方向に直線状に延びる溝が形成され、
前記軸部材の端部は、前記溝を形成している前記外側ケースに形成される一対の直線状の壁面に当接する一対の平面を有している請求項1又は請求項2に記載の戸車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸の下框に設けられる戸車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、引戸を構成する障子の下框には、戸車が設けられている。戸車は、ケースと、ケースに回転可能に支持された車輪とを備えている(例えば、特許文献1参照)。このような引戸においては、例えば、車輪を支持する内側ケース部には、長穴が形成されており、また、外側ケース部には、内側ケース部に形成されたれ長穴とは異なる方向へ延びる長穴が形成されており、軸部材により構成される操作軸体によりこれら2つの長穴が貫通されて、内側ケース部と外側ケース部とが連結されている。内側ケース部は、操作軸体を介して外側ケース部に対して移動可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-158949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記公報に記載の従来の戸車においては、操作軸体は円柱形状に形成されている。障子を枠に建て込む際に、障子の重量が操作軸体に荷重がかかり、長穴に操作軸体が点で当たることで窪みが生じる変形、問題が生ずる。この結果、戸車の高さを調整する時に、操作軸体が長穴によってガイドされるが、窪み部分において引っ掛かりスムーズに操作軸体が長穴によってガイドできなくなる状況が発生する。通常、障子の上下高さはビス等により調整するものであるが、長穴の変形により操作軸体が引っかかると、ネジ山が潰れて調整できないことにもつながる。
【0005】
本発明は、長穴の変形が抑えられる戸車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明は、車輪(例えば、後述の車輪54)を回転可能に支持する軸支持部(例えば、後述の内側ケース53)を備えるケースと、軸部材が案内される傾斜溝(例えば、後述の傾斜貫通溝523)が形成された案内部材(例えば、後述の中ケース52)と、を備え、前記傾斜溝を形成している案内部材に当接する前記軸部材の端部は、前記傾斜溝に面接触する一対の平行な面からなる戸車(例えば、後述の戸車5)を提供する。
【0007】
また、前記ケースには、前記軸部材が貫通する貫通孔(例えば、後述の内側中央貫通孔531)が形成され、前記軸部材は、前記軸部材の軸方向における両端部において前記傾斜溝に係合している溝係合部(例えば、後述の周面直線状部62)と、前記溝係合部の間の中間部(例えば、後述の中央部61)とを備え、前記中間部は、前記傾斜溝を構成する前記案内部材の部分に当接することが好ましい。
【0008】
また、前記ケースは、外側ケース(例えば、後述の外側ケース51)と、前記外側ケースに対して第1方向へ移動可能に前記外側ケースに支持された中ケース(例えば、後述の中ケース52)と、前記中ケースに対して前記第1方向と交差する第2方向へ移動可能に前記外側ケースに支持され、車輪の軸部材を回転可能に支持する内側ケース(例えば、後述の内側ケース53)と、を備え、前記中ケースは、前記案内部材を備え、前記外側ケースには、第2方向に直線状に延びる溝(例えば、後述の外側中央貫通孔511)が形成され、前記軸部材の端部は、前記溝を形成している前記外側ケースに形成される一対の直線状の壁面に当接する一対の平面を有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、長穴の変形が抑えられる戸車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る引戸の障子が閉鎖された状態を示す正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る引戸の障子が開放された状態を示す正面図である。
図3】上記実施形態に係る引戸の縦断面図である。
図4】上記実施形態に係る引戸の横断面図である。
図5】上記実施形態に係る引戸の下部の拡大縦断面図である。
図6】上記実施形態に係る引戸の戸車の車輪が最も上側に位置している状態を示す側面図である。
図7】上記実施形態に係る引戸の戸車の車輪が最も下側に位置している状態を示す側面図である。
図8】上記実施形態に係る引戸の戸車の車輪の車軸が水平に平行な位置関係にある様子を示す断面図である。
図9】上記実施形態に係る引戸の戸車の車輪の車軸が傾斜している様子を示す断面図である。
図10】上記実施形態に係る引戸の戸車の外側ケースを示す側面図である。
図11】上記実施形態に係る引戸の戸車の中ケースを示す側面図である。
図12A】上記実施形態に係る引戸の戸車の内側ケースを示す側面図である。
図12B】上記実施形態に係る引戸の戸車の内側ケースを示す正面図である。
図13A】上記実施形態に係る引戸の戸車の軸部材を示す側面図である。
図13B】上記実施形態に係る引戸の戸車の軸部材を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、本明細書において、「見付方向」とは、建物に形成された開口部に納められた引戸の上枠、下枠の長手方向(すなわち、ガラスや障子の面内方向)を意味し、「見込方向」とは、屋内外方向(すなわち、奥行き方向)を意味する。また、見付方向における縦枠23、24の中央(障子4が閉鎖されたときに、2つの障子4、4の戸先側縦框44が見込方向において重なる位置)を「中央位置」と定義する。
【0012】
まず、本発明の一実施形態に係る引戸1について説明する。図1は、引戸1の障子4が閉鎖された状態を示す正面図である。図2は、引戸1の障子4が開放された状態を示す正面図である。
引戸1は、建物の開口部10に取り付けられる枠体2と、枠体2内に配置され図中左右方向にスライド可能な障子4,4と、を備える引違い戸である。
【0013】
枠体2は、上枠21と、下枠22と、左右の縦枠23,24と、を有しており、上枠21と、下枠22と、縦枠23,24とにより矩形に枠組みされる。
【0014】
障子4は、框体40(図2等参照)と、框体40の内部に嵌め込まれるガラスパネル45と、を備える。框体40は、上框41と、下框42と、召合框(召外框、召内框)43と、戸先側縦框44と、を框組みすることで構成される。また、戸先側縦框44には、施錠装置46が設けられており、障子4、4の施錠開錠を可能としている。
【0015】
図3に示すように、上枠21は、屋外側に配置され且つ中空部を有する断面矩形のホロー構造である上枠屋外側本体211と、それぞれ一方がコの字に開口する壁部材が二重に重ねられて構成された上枠屋内側本体212と、見込方向における上枠屋外側本体211と上枠屋内側本体212との間に配置されてこれらに接続され、一方がコの字に開口する上枠中間本体213と、を備える。上枠屋外側本体211と上枠屋内側本体212とは、例えば樹脂製の連結部材215によって連結されている。
図3は、引戸1の縦断面図である。
【0016】
連結された上枠屋外側本体211と、上枠屋内側本体212と、上枠中間本体213との下部には、一方が開口するガラスパネル支持凹部217が形成されている。上枠中間本体213には、下側へ延びる延出部を有する凹部天井部材2172が固定されている。凹部天井部材2172の下側のガラスパネル支持凹部217の部分には、2枚のガラスパネル45の上部が配置されている。
【0017】
下側へ延びるコの字形状の上枠中間本体213の一対の壁部のうちの屋外側の壁部は、下側へ延びるコの字形状の上枠屋外側本体211の一対の壁部のうちの屋内側の壁部に接続されており、上レール2171を構成する。下側へ延びるコの字形状の上枠中間本体213の一対の壁部のうちの屋内側の壁部は、下側へ延びるコの字形状の上枠屋内側本体212の一対の壁部のうちの屋外側の壁部に接続されており、上レール2173を構成する。
【0018】
下枠22は、図3図5に示すように、屋外側に配置され且つ中空部を有する断面略矩形のホロー構造である下枠屋外側本体221と、それぞれ一方がコの字に開口する壁部材が二重に重ねられて構成された下枠屋内側本体222と、見込方向における下枠屋外側本体221と下枠屋内側本体222との間に配置されてこれらに接続され、一方がコの字に開口する下枠中間本体223と、を備える。下枠屋外側本体221と下枠屋内側本体222とは、例えば樹脂製の連結部材225によって連結されている。
図5は、引戸1の下部の拡大縦断面図である。
【0019】
連結された下枠屋外側本体221と、下枠中間本体223と、下枠屋内側本体222との上部には、一方が開口するガラスパネル支持凹部227が形成されている。上側へ延びるコの字形状の下枠中間本体223の一対の壁部のうちの屋外側の壁部は、上側へ延びるコの字形状の下枠屋外側本体221の一対の壁部のうちの屋内側の壁部に接続されており、下レール2271を構成する。上側へ延びるコの字形状の下枠中間本体223の一対の壁部のうちの屋内側の壁部は、上側へ延びるコの字形状の下枠屋内側本体222の一対の壁部のうちの屋外側の壁部に接続されており、下レール2273を構成する。
【0020】
図4に示すように、縦枠23は、板状に形成された縦枠屋外側本体231と、縦枠屋外側本体231の屋内側の部分に固定され中空部を有する断面矩形のホロー構造である戸先側縦框対向部材237とを備えている。縦枠屋外側本体231の屋内側の端部及び戸先側縦框対向部材237は、被額縁固定部201に固定されている。縦枠屋外側本体231の屋外寄りの部分には、見付方向内側へ延びる延出部2311が設けられている。
【0021】
図4に示すように、縦枠24は、板状に形成された縦枠屋外側本体241を備えている。縦枠屋外側本体241の屋内側の端部は、被額縁固定部201に固定されている。縦枠屋外側本体241の屋内寄りの部分には、見付方向内側へ延びる延出部2411が設けられている。縦枠屋外側本体241の見込方向における中央の部分には、見付方向内側へ延びる延出部2412が設けられている。
【0022】
図3に示すように、上框41は、屋外側に配置され且つ中空部を有する断面矩形のホロー構造である屋外側に配置された上框屋外側本体411と、屋内側に配置され且つ中空部を有する断面矩形のホロー構造である上框屋内側本体412と、を備える。上框屋外側本体411の屋外内側の部分には、下側へ延びる上框屋外下側延出部4111が設けられている。上框屋内側本体412の屋内側の部分には、下側へ延びる上框屋内下側延出部4121が設けられている。上框屋外側本体411と上框屋内側本体412とは、連結されて接続されている。連結された上框屋外側本体411と上框屋内側本体412との下部には、一方が開口するガラスパネル挿入凹部417が形成されている。ガラスパネル挿入凹部417には、一方が開口する断面コの字形状のグレージングチャンネル4171が設けられており、グレージングチャンネル4171の開口には、ガラスパネル45の端部が挿入されている。
【0023】
下框42は、屋外側に配置され且つ中空部を有する断面矩形のホロー構造である屋外側に配置された下框屋外側本体421と、屋内側に配置され且つ中空部を有する断面矩形のホロー構造である下框屋内側本体422と、を備える。下框屋外側本体421の屋外側の部分には、上側へ延びる下框屋外上側延出部4211が設けられている。下框屋内側本体422の屋内側の部分には、上側へ延びる下框屋内上側延出部4221が設けられている。下框屋外側本体421と下框屋内側本体422とは、連結されて接続されている。連結された下框屋外側本体421と下框屋内側本体422との上部には、上側へ開口するガラスパネル挿入凹部427が形成されている。ガラスパネル挿入凹部427には、上側に開口する断面コの字形状のグレージングチャンネル4271が設けられており、グレージングチャンネル4271と、連結された下框屋外側本体421及び下框屋内側本体422との間には、セッティングブロック4272が設けられている。グレージングチャンネル4271の開口には、ガラスパネル45の下部が配置されて固定されている。下框屋内側本体422のホロー構造の部分は、下側に長く形成されており、下框42の端部であって当該ホロー構造の部分の下側の屋外側には、戸車5が設けられている。
【0024】
図4に示すように、屋内側に位置する障子4の召内框43は、障子4が閉鎖されているときの中央位置に配置され複数の断面矩形の室に区画されたホロー構造である召内框本体部431と、召内框本体部431の屋内側及び縦枠23の側を覆うような断面L字状の屋内側部材432と、を備える。召内框本体部431と屋内側部材432とは、連結され接続されている。召内框本体部431及び屋内側部材432の屋外側の部分には、見付方向に平行な板状の屋外側板部材433が固定されている。また、屋外側板部材433には、縦枠24へ向って延びる煙返し4331が設けられている。召内框本体部431の戸先側には、一方が開口するガラスパネル挿入凹部437が形成されている。ガラスパネル挿入凹部437には、それぞれ一方が開口する断面コの字形状のグレージングチャンネル4371が設けられており、グレージングチャンネル4371の開口には、ガラスパネル45の戸尻側の部分が配置されている。
【0025】
屋内側に位置する障子4の戸先側縦框44は、屋内側に配置され中空部を有する複数の断面矩形の室に区画されたホロー構造である戸先框屋内側本体441と、屋外側に配置され且つ中空部を有する断面矩形のホロー構造である戸先框屋外側本体442と、を備える。戸先框屋外側本体442の屋内側の部分には、戸尻側へ延びる戸先框屋内戸尻側延出部4411が設けられている。戸先框屋外側本体442の屋外側の部分には、戸尻側へ延びる戸先框屋外戸尻側延出部4421が設けられている。戸先框屋内側本体441と戸先框屋外側本体442とは、連結されて接続されている。連結された戸先框屋内側本体441と戸先框屋外側本体442との戸尻側の部分には、一方が開口するガラスパネル挿入凹部447が形成されている。ガラスパネル挿入凹部447には、一方が開口する断面コの字形状のグレージングチャンネル4471が設けられており、グレージングチャンネル4471の開口には、ガラスパネル45の戸先側の部分が配置されている。戸先框屋外側本体442のホロー構造の部分下側には、戸車5が配置されている。
【0026】
図4に示すように、屋外側に位置する障子4の召外框43は、障子4が閉鎖されているときの中央位置に配置され断面矩形のホロー構造である召外框本体部431を備える。また、召外框本体部431の屋内側には、屋内側へ延びL字状に折れ曲がる煙返し4341が設けられている。煙返し4341は、障子4が閉鎖されているときに、屋内側に位置する障子4の召内框43の煙返し4311に係合する。
【0027】
召外框本体部431の戸先側には、戸先側へ開口するガラスパネル挿入凹部437が形成されている。ガラスパネル挿入凹部437には、それぞれ戸先側へ開口する断面コの字形状のグレージングチャンネル4371が設けられており、グレージングチャンネル4371の開口には、ガラスパネル45の端部が配置されている。
【0028】
屋外側に位置する障子4の戸先側縦框44は、屋内側に配置され中空部を有する複数の断面矩形の室に区画されたホロー構造である戸先框屋内側本体441と、屋外側に配置され且つ中空部を有する断面矩形のホロー構造である戸先框屋外側本体442と、を備える。戸先框屋内側本体441の屋内側の部分には、戸尻側へ延びる戸先框屋内戸尻側延出部4411が設けられている。戸先框屋外側本体442の屋外側の部分には、戸尻側へ延びる戸先框屋外戸尻側延出部4421が設けられている。戸先框屋内側本体441と戸先框屋外側本体442とは、連結されて接続されている。連結された戸先框屋内側本体441と戸先框屋外側本体442との戸尻側の部分には、一方が開口するガラスパネル挿入凹部447が形成されている。ガラスパネル挿入凹部447には、一方が開口する断面コの字形状のグレージングチャンネル4471が設けられており、グレージングチャンネル4471の開口には、ガラスパネル45の戸先側の部分が配置されている。戸先框屋外側本体442のホロー構造の部分下側には、戸車5が配置されている。
【0029】
図6図7に示すように、戸車5は、外側ケース51と、外側ケース51に収納される中ケース52と、中ケース52に収納される内側ケース53と、を備えている。外側ケース51は、図10に示すように、底面が開放された直方体形状(箱形状(箱型))に形成されている。開放された底面の開口から、後述の車輪54が露出する。図6は、引戸1の戸車5の車輪54が最も上側に位置している状態を示す側面図である。図7は、引戸1の戸車5の車輪54が最も下側に位置している状態を示す側面図である。図10は、引戸1の戸車5の外側ケース51を示す側面図である。
外側ケース51の側面であって外側ケース51の長手方向(図10の左右方向)における中央部には、外側ケース51の下端部近傍の位置から上面の近傍の位置まで延びる上下方向溝である外側中央貫通孔511が形成されている。外側中央貫通孔511は、外側ケース51の長手方向である横方向に対する縦方向としての上下方向に延びており、外側中央貫通孔511の下端部の幅は、外側ケース51の長手方向(図10の左右方向)に広がっている。外側中央貫通孔511の上部には、2つの斜辺が接続された角部512が設けられており、角部512には、後述の軸部材6の周面直線状部62が係合可能である。また、外側中央貫通孔511と、外側ケース51の端部との中央部には、長方形状に形成された支持貫通孔513が形成されている。
【0030】
外側ケース51の長手方向における端部(図10に示す左側の端部)には、外側ケース51の長手方向に貫通する貫通孔514が形成されており、図6に示すように、貫通孔514にはボルト515が螺合している。ボルト515が回転させられることにより、ボルト515が外側ケース51の長手方向(図10に示す左右方向)に進退し、外側ケース51の内部に収容されている中ケース52を左右方向に移動するように構成されている。
【0031】
中ケース52は、図11に示すように、上面及び下面が開放された直方体形状に形成されている。図11は、引戸1の戸車5の中ケース52を示す側面図である。
中ケース52の側面には、中ケース52の長手方向(図11の左右方向)に等間隔で下部貫通孔521が形成されている。下部貫通孔521は、それぞれ頂点が丸く形成された平行四辺形状に形成されている。中央の下部貫通孔521と、中ケース52の長手方向における一方の端部の下部貫通孔521(図11の左側の下部貫通孔521)との間には、下部凸部522が設けられており、下部凸部522は、外側ケース51の支持貫通孔513に上から差し込まれた状態で係合している。これにより、中ケース52は、外側ケース51によって、外側ケース51に対して水平方向へ移動可能に、且つ、外側ケース51から外れないように支持されている。即ち、中ケース52は外側ケースに対して下框42の長手方向に移動可能に支持されている。
【0032】
中央の下部貫通孔521と、中ケース52の長手方向における他方の端部の下部貫通孔521(図11の右側の下部貫通孔521)との間には、中ケース52の上端部から中央の下部貫通孔521に向かって傾斜して延びる傾斜溝である傾斜貫通溝523が形成されている。傾斜貫通溝523は、中ケース52の長手方向、即ち、外側ケース51が中ケース52に対して相対的に移動する方向に対して下方に傾斜しており、傾斜貫通溝523の上端部は、上側に開放している。
【0033】
内側ケース53は、図12Aに示すように、上面の一部、正面及び背面及び下面が開放された直方体形状に形成されており、中ケース52に対して上下方向に移動可能に外側ケース51に支持されている。内側ケース53の長手方向における中央部は、上側に僅かに突出している。図12Aは、引戸1の戸車5の内側ケース53を示す側面図である。
内側ケース53の側面であって内側ケース53の長手方向(図12Aの左右方向)における中央部の上部には、円形の内側中央貫通孔531が形成されている。
また、内側ケース53の側面には、内方突出部532が形成されている。内方突出部532は、内側中央貫通孔531の近傍からそれぞれ内側ケース53の長手方向における一方の端部、他方の端部に至るまで延びており、図12Bに示すように、断面視で横向きV字状に内側ケース53の内側へ屈曲して形成されている。従って、一対の内方突出部532は、屈曲された頂点から上下方向に離れるにつれて互いに離間する屈曲部を構成と共に、後述の車軸挿入貫通孔533に沿って内側ケース53の内方に向かって屈曲される屈曲部を構成する。そしてこの屈曲部は、図12Bに示す断面視で車軸挿入貫通孔533に沿ったくの字に形成される。
図12Bは、引戸1の戸車5の内側ケース53を示す正面図である。
【0034】
内方突出部532には、車軸挿入貫通孔533が形成されている。車軸挿入貫通孔533は、内方突出部532のV字状の窪みの底の位置に、内側ケース53の長手方向に等間隔で4つ形成されており、図12Aに示すように、上下方向に長い長孔により構成されている。
また、内側ケース53の上面には4つの上部開口534が形成されている。上部開口534には、それぞれ車輪54の上部が配置され、4つの車輪54が一体となる4連の戸車とされる。これにより、戸車5の上下方向の高さが抑えられている。この車輪の直径は約30mmとされ、4連の車輪が取り付けられた戸車を障子4の下部である下框のほぼ左右端部に配置し、約200kg近くの大開口用障子の重量を分散して受けつつ、左右方向に移動可能としている。
【0035】
内側ケース53の内側中央貫通孔531には、軸部材6が挿入されて貫通している。軸部材6は、図13A図13Bに示すように、円柱形状の中央部61と、軸部材6の軸方向の両端部を構成する周面直線状部62とを有している。図13Aは、引戸1の戸車5の軸部材6を示す側面図である。図13Bは、引戸1の戸車5の軸部材6を示す正面図である。
【0036】
周面直線状部62は、内側ケース53の内側中央貫通孔531、中ケース52の傾斜貫通溝523、及び、外側ケース51の外側中央貫通孔511を貫通しており、これにより、内側ケース53は、外側ケース51及び中ケース52に対して僅かに揺動可能である。周面直線状部62の周面は、傾斜貫通溝523の側壁に倣って平行に傾斜する一対の平面である傾斜直線状部621と、外側中央貫通孔511の側壁に倣って平行な直線状の一対の平面である垂直線状部622と、を有している。傾斜直線状部621は、傾斜貫通溝523の側壁に斜面同士面で当接し、垂直線状部622は、外側中央貫通孔511に垂直方向に延びる面同士で当接する。図13Aに示すように、周面直線状部62の部分は、中央部61よりも小さい。即ち、中央部61の軸方向における端面は、傾斜貫通溝523を形成している中ケース52の部分に当接する。従って、中央部61は、傾斜貫通溝523、外側中央貫通孔511を挿通不能である。
【0037】
車輪54は、図8等に示すように、外輪部541と車軸542と、ベアリング543とを備えている。車軸542は外輪部541を貫通している。図8は、引戸1の戸車5の車輪54の車軸542が水平に平行な位置関係にある様子を示す断面図である。図9は、上記実施形態に係る引戸1の戸車5の車輪54の車軸542が傾斜している様子を示す断面図である。
外輪部541の周面には、レール2212、2232に係合する溝5411が形成されている。外輪部541は、車軸542と同軸的な位置関係で車軸542の外周を取り囲んで配置されている。外輪部541と車軸542との間には、ベアリング543が配置されており、外輪部541は車軸542に対して滑らかに回転可能に構成されている。図6に示す左側の3つの車軸542は、中ケース52の下部貫通孔521に挿入されている。
【0038】
次に、上記構成を備える戸車5の車輪54の、車軸挿入貫通孔533に挿入され軸支された車軸542が傾斜する動作について説明する。錠が開かれて障子4が開放された状態においては、図8に示すように、車軸542は水平の状態とされている。障子4が閉鎖されて錠が閉じられると、屋外側の障子4と屋内側の障子4とが互いに見込方向へ引き寄せられる。これにより、図3図9等に示すように、車輪54が傾いた状態となる。このとき、車軸542は水平の状態から傾斜した状態となり、図9に示す車軸542の左側の端部は、車軸挿入貫通孔533(図12A参照)の下部に位置し、車軸542の右側の端部は、車軸挿入貫通孔533の上部に位置した状態とされる。
【0039】
次に、戸車5の車輪54の上下方向における位置の調整について説明する。先ず、図6に示すように、外側ケース51に対して車輪54が最も上側に配置されているときには、中ケース52は外側ケース51の内部において、最も図6における左側に位置している。このとき、軸部材6は、傾斜貫通溝523の中央の位置にある。
【0040】
次に、外側ケース51のボルト515を回転させることにより、図6に示すボルト515の右端部を、中ケース52を図6における右方向へ移動させる。この際、中ケース52の側面の上端面526の全体は、外側ケース51の上面を構成する上壁516の内側に当接した状態が維持され、この当接する部分により、障子4の荷重を受けている。この移動により、軸部材6は、中ケース52の傾斜貫通溝523に沿って、相対的に傾斜貫通溝523の左下側へ移動すると共に、外側ケース51の外側中央貫通孔511に沿って、相対的に下側へ移動する。即ち、中ケース52の上端面526を外側ケース51の上壁516に面接触させた状態が維持されて、中ケース52の傾斜貫通溝523に沿って内側ケース53が外側ケース51に対してスライドする。
また、車軸542は、平行四辺形状の下部貫通孔521において、図6に示す右上の部分から図7に示すように、左下の部分へ移動する。これにより、車輪54は、内側ケース53と共に、外側ケース51に対して下方向へ移動して、外側ケース51に対して車輪54が最も下側へ配置された状態となる。
【0041】
以上説明した本実施形態の戸車5によれば、以下のような効果を奏する。
本実施形態においては、車軸挿入貫通孔533は、上下方向(内側ケース53の長手方向である横方向に対する縦方向)に長く形成され、一対の支持壁としての外側ケース51の側壁は、屈曲された頂点部位から離れるにつれて互いに離間する屈曲部としての内方突出部532を有する。
これにより、車輪54を下框42に対して傾斜させるいわゆる起倒を実現させるための追加部品が一切不要となり、シンプルな構造で、低コストで、車輪54の傾斜が可能な起倒式の車輪54を有する戸車5を提供することが可能となる。特に、内方突出部532を有するため、所定の傾斜角度までの安定した戸車5の車輪54の起倒を実現させることが可能となる。
【0042】
また、一対の支持壁としての外側ケース51の側壁は、複数の車輪54が並べられる方向において、車軸挿入貫通孔533から離れるにつれて、互いに離間する横方向離間部535を有する。この横方向離間部535の中央の部分は、屈曲部(内方突出部532)が形成されていない平坦な部分により構成されている。
これにより、横方向離間部535の位置に、障子4の全体の荷重がかかる内側中央貫通孔531を配置させることにより、内側中央貫通孔531が形成されている内側ケース53の部分を剛性の高い部分とすることが可能となり、内側ケース53の耐荷重性及び耐久性を高めることが可能となる。
【0043】
また、外側ケース51と、外側ケース51の内部において外側ケース51に対して揺動可能に外側ケース51に支持された内側ケース53とを有し、内側ケース53は、車軸542を支持する。
これにより、内側ケース53は、外側ケース51に対して揺動するため、複数の車輪54を有する場合であっても、各車輪54が適切にレール2212、2232に接触するようにすることが可能となる。
【0044】
また、本実施形態では、外側ケース51と、外側ケース51に対して水平方向へ移動可能に外側ケース51に支持された中ケース52と、中ケース52に対して上下方向へ移動可能に外側ケース51に支持され、車輪54を回転可能に支持する内側ケース53と、を備え、中ケース52には、水平方向及び上下方向に対して傾斜する傾斜溝である傾斜貫通溝523が形成され、外側ケース51には、上下方向に延びる上下方向溝である外側中央貫通孔511が形成され、内側ケース53には、軸部材6が貫通する軸部材貫通孔としての内側中央貫通孔531が形成され、軸部材6は、外側中央貫通孔511及び内側中央貫通孔531に係合している。
【0045】
これにより、中ケース52が水平方向に移動することにより、内側ケース53を上下移動させることが可能となる。この結果、車輪54を上下させることが可能となる。このとき、中ケース52は水平方向に移動し、中ケース52は外側ケースから離れないで、中ケース52の上端部は、広い部分で外側ケース51に対して当接した状態で摺動することが可能となり、車輪54にかかる荷重を内側ケース53と外側ケース51との両方で支えることが可能となり、障子4の荷重が集中することを抑えることが可能である。加えて車輪54を複数とすることにより、車輪54一個あたりにかかる荷重を分散させることで車輪54の径を小さくすることが可能となり、結果的に戸車5そのもののサイズを小さくすることができ、戸車5を収容する下框42の上下方向における高さを小さくすることが可能となる。
【0046】
また、軸部材6は、軸部材6の軸方向における両端部において傾斜貫通溝523及び外側中央貫通孔511に係合している溝係合部としての周面直線状部62と、溝係合部の間の中間部としての中央部61とを備え、中央部61は、傾斜貫通溝523を挿通不能に傾斜貫通溝523よりも大きく構成されている。これにより、軸部材6が外側ケース51、中ケース52、内側ケース53から外れてしまうことを防止できる。
【0047】
また、本実施形態では、水平方向及び上下方向に対して傾斜し軸部材6が係合する傾斜貫通溝523が形成された軸部材案内部材としての中ケース52を備え、傾斜貫通溝523を形成している中ケース52に当接する軸部材6の部分は、傾斜貫通溝523に倣った傾斜形状を有している。これにより、傾斜貫通溝523に沿って広い部分で周面直線状部62が当接して障子4の荷重を支えることが可能となり、軸部材6が変形することを抑えることが可能となる。この結果、中ケース52に対する内側ケース53の動きがスムーズである状態を維持することが可能となる。
【0048】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。例えば、戸車の各部の構成は、本実施形態における戸車5の各部の構成に限定されない。例えば、1つの戸車が備える車輪の数は、本実施形態における戸車5の車輪54の数に限定されない。また、外側ケース、中ケース、内側ケースの構成は、本実施形態における外側ケース51、中ケース52、内側ケース53の構成に限定されない。
【符号の説明】
【0049】
5…戸車
6…軸部材
51…外側ケース
52…中ケース
53…内側ケース
54…車輪
61…中央部
62…周面直線状部
511…外側中央貫通孔
523…傾斜貫通溝
531…内側中央貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B