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特許7039272アルミニウム合金線の製造方法、これを用いた電線の製造方法及びワイヤハーネスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】アルミニウム合金線の製造方法、これを用いた電線の製造方法及びワイヤハーネスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22F 1/04 20060101AFI20220314BHJP
   C22C 21/00 20060101ALI20220314BHJP
   H01B 13/012 20060101ALI20220314BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20220314BHJP
   C22C 21/02 20060101ALI20220314BHJP
   C22C 21/08 20060101ALI20220314BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20220314BHJP
   H01B 1/02 20060101ALN20220314BHJP
【FI】
C22F1/04 D
C22C21/00 A
H01B13/012 Z
H01B13/00 501D
C22C21/02
C22C21/08
C22F1/00 625
C22F1/00 661A
C22F1/00 630A
C22F1/00 630K
C22F1/00 660Z
C22F1/00 683
C22F1/00 685Z
C22F1/00 684C
C22F1/00 686B
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 692A
C22F1/00 602
C22F1/00 613
H01B1/02 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017233889
(22)【出願日】2017-12-06
(65)【公開番号】P2018154916
(43)【公開日】2018-10-04
【審査請求日】2020-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2017049378
(32)【優先日】2017-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(72)【発明者】
【氏名】篠田 辰規
(72)【発明者】
【氏名】金子 直貴
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 剛
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/047617(WO,A1)
【文献】特開2012-229485(JP,A)
【文献】国際公開第2011/052644(WO,A1)
【文献】特開2017-218645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22F 1/04
C22C 21/00
H01B 13/012
H01B 13/00
C22F 1/00
H01B 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム、添加元素及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金であって前記添加元素が少なくともSi及びMgを含有するアルミニウム合金で構成される荒引線を形成する荒引線形成工程と、
前記荒引線に対し、処理ステップを行うことにより、アルミニウム合金線を得る荒引線処理工程とを含み、
前記処理ステップが、
少なくとも1回の伸線処理ステップと、
前記少なくとも1回の伸線処理ステップのうち、最後の伸線処理ステップの直前に行われ、前記アルミニウム及び前記添加元素の固溶体を形成した後、焼き入れ処理して第1溶体化材を形成する第1溶体化処理ステップと、
前記最後の伸線処理ステップの直後に行われ、前記アルミニウム及び前記添加元素の固溶体を形成した後、焼き入れ処理して第2溶体化材を形成する第2溶体化処理ステップと、
前記第2溶体化処理ステップの後に行われる時効処理ステップとを含み、
前記添加元素が、
Siと、
Mgと、
任意成分であるFeと、
任意成分であるCuと、
任意成分であるTiと、
任意成分であるBと、
任意成分であるVのみからなり、
前記アルミニウム合金中のSiの含有率が0.35質量%以上0.75質量%以下であり、
前記アルミニウム合金中のMgの含有率が0.3質量%以上0.7質量%以下であり、
前記アルミニウム合金中のFeの含有率が0.6質量%以下であり、
前記アルミニウム合金中のCuの含有率が0.4質量%以下であり、
前記アルミニウム合金中のTi、V及びBの合計含有率が0.06質量%以下であり、
前記第2溶体化処理ステップにおいて、前記固溶体の形成を10分間以下の条件で行う、アルミニウム合金線の製造方法。
【請求項2】
前記第2溶体化処理ステップにおいて、前記固溶体の形成を、500~600℃の温度で行う、請求項1に記載のアルミニウム合金線の製造方法。
【請求項3】
前記第2溶体化処理ステップにおいて、前記固溶体の形成を、10秒間より長い時間行う、請求項1又は2に記載のアルミニウム合金線の製造方法。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載のアルミニウム合金線の製造方法によってアルミニウム合金線を準備するアルミニウム合金線準備工程と、
前記アルミニウム合金線を被覆層で被覆して電線を製造する電線製造工程とを含む、電線の製造方法。
【請求項5】
請求項に記載の電線の製造方法によって電線を準備する電線準備工程と、
前記電線を複数本用いてワイヤハーネスを製造するワイヤハーネス製造工程とを含む、ワイヤハーネスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金線の製造方法、これを用いた電線の製造方法及びワイヤハーネスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ワイヤハーネスなどの電線の素線として、軽量化、耐屈曲性及び耐衝撃性を同時に満足させる観点から、銅線の代わりにアルミニウム合金からなるアルミニウム合金線が用いられるようになってきている。
【0003】
このようなアルミニウム合金線の製造方法として、例えば下記特許文献1には、Si及びMgを含有するアルミニウム合金で構成されるワイヤロッド(荒引線)に対して、伸線加工及び溶体化工程を順次行った後、時効硬化処理工程を行う製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-265509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載のアルミニウム合金線の製造方法は、得られるアルミニウム合金線の引張強度及び伸びの向上の点で改善の余地を有していた。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、得られるアルミニウム合金線の引張強度及び伸びを向上させることができるアルミニウム合金線の製造方法、これを用いた電線の製造方法及びワイヤハーネスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、以下の発明によって上記課題を解決し得ることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、アルミニウム、添加元素及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金であって前記添加元素が少なくともSi及びMgを含有するアルミニウム合金で構成される荒引線を形成する荒引線形成工程と、前記荒引線に対し、処理ステップを行うことにより、アルミニウム合金線を得る荒引線処理工程とを含み、前記処理ステップが、少なくとも1回の伸線処理ステップと、前記少なくとも1回の伸線処理ステップのうち、最後の伸線処理ステップの直前に行われ、前記アルミニウム及び前記添加元素の固溶体を形成した後、焼き入れ処理して第1溶体化材を形成する第1溶体化処理ステップと、前記最後の伸線処理ステップの直後に行われ、前記アルミニウム及び前記添加元素の固溶体を形成した後、焼き入れ処理して第2溶体化材を形成する第2溶体化処理ステップと、前記第2溶体化処理ステップの後に行われる時効処理ステップとを含む、アルミニウム合金線の製造方法である。
【0009】
本発明のアルミニウム合金線の製造方法によれば、得られるアルミニウム合金線の引張強度及び伸びを向上させることができる。
【0010】
なお、本発明者らは、本発明のアルミニウム合金線の製造方法によって上記の効果が得られる理由については以下のように推察している。
【0011】
すなわち、本発明のアルミニウム合金線の製造方法では、荒引線に対して行われる処理ステップにおいて、少なくとも1回の伸線処理ステップのうち最後の伸線処理ステップの直前に第1溶体化処理ステップを行い、最後の伸線処理ステップの直後で第2溶体化処理ステップを行うことで、微細な結晶粒を有する第2溶体化材が得られるのではないかと考えられる。その結果、第2溶体化材の伸びを向上させることができるのではないかと考えられる。そして、この第2溶体化材を時効処理することで、得られるアルミニウム合金線の引張強度及び伸びを向上させることができるのではないかと本発明者らは推察している。
【0012】
上記製造方法においては、前記アルミニウム合金中のSiの含有率が0.35質量%以上0.75質量%以下であり、前記アルミニウム合金中のMgの含有率が0.3質量%以上0.7質量%以下であり、前記アルミニウム合金中のFeの含有率が0.6質量%以下であり、前記アルミニウム合金中のCuの含有率が0.4質量%以下であり、前記アルミニウム合金中のTi、V及びBの合計含有率が0.06質量%以下であることが好ましい。
【0013】
この場合、優れた引張強度と伸びとを両立でき、導電性に優れるアルミニウム合金線を得ることができる。
【0014】
上記製造方法においては、前記第2溶体化処理ステップにおいて、前記固溶体の形成を、500~600℃の温度で且つ10分間以下の条件で行うことが好ましい。
【0015】
この場合、得られるアルミニウム合金線の引張強度及び伸びをより顕著に向上させることができる。
【0016】
上記製造方法においては、前記第2溶体化処理ステップにおいて、前記固溶体の形成を、10秒間より長い時間行うことが好ましい。
【0017】
この場合、得られるアルミニウム合金線において、より高い引張強さ及び伸びが得られる。
【0018】
また本発明は、上記アルミニウム合金線の製造方法によってアルミニウム合金線を準備するアルミニウム合金線準備工程と、前記アルミニウム合金線を被覆層で被覆して電線を製造する電線製造工程とを含む、電線の製造方法である。
【0019】
この電線の製造方法によれば、アルミニウム合金線準備工程により、得られるアルミニウム合金線の引張強度及び伸びを向上させることができる。このため、このようなアルミニウム合金線を被覆層で被覆して得られる電線は、屈曲や振動が加えられる動的な箇所(例えば自動車のドア部、又は自動車のエンジンの近傍)に配置される電線として有用である。
【0020】
さらに本発明は、上記電線の製造方法によって電線を準備する電線準備工程と、前記電線を複数本用いてワイヤハーネスを製造するワイヤハーネス製造工程とを含む、ワイヤハーネスの製造方法である。
【0021】
このワイヤハーネスの製造方法によれば、電線準備工程に含まれるアルミニウム合金線準備工程により、得られるアルミニウム合金線の引張強度及び伸びを向上させることができる。このため、このようなアルミニウム合金線を被覆層で被覆して得られる電線を含むワイヤハーネスは、屈曲や振動が加えられる動的な箇所(例えば自動車のドア部、又は自動車のエンジンの近傍)に配置されるワイヤハーネスとして有用である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、得られるアルミニウム合金線の引張強度及び伸びを向上させることができるアルミニウム合金線の製造方法、これを用いた電線の製造方法及びワイヤハーネスの製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0024】
[アルミニウム合金線の製造方法]
本発明は、アルミニウム、添加元素及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金であって添加元素が少なくともSi及びMgを含有するアルミニウム合金で構成される荒引線を形成する荒引線形成工程と、荒引線に対し、処理ステップを行うことにより、アルミニウム合金線を得る荒引線処理工程とを含む、アルミニウム合金線の製造方法である。処理ステップは、少なくとも1回の伸線処理ステップと、少なくとも1回の伸線処理ステップのうち、最後の伸線処理ステップの直前に行われ、アルミニウム及び添加元素の固溶体を形成した後、焼き入れ処理して第1溶体化材を形成する第1溶体化処理ステップと、最後の伸線処理ステップの直後に行われ、アルミニウム及び添加元素の固溶体を形成した後、焼き入れ処理して第2溶体化材を形成する第2溶体化処理ステップと、第2溶体化処理ステップの後に行われる時効処理ステップとを含む。
【0025】
上記アルミニウム合金線の製造方法によれば、得られるアルミニウム合金線の引張強度及び伸びを向上させることができる。
【0026】
次に、上述した荒引線形成工程及び荒引線処理工程について詳細に説明する。
【0027】
<荒引線形成工程>
荒引線形成工程は、アルミニウム合金で構成される荒引線を形成する工程である。
【0028】
(アルミニウム合金)
荒引線を構成するアルミニウム合金は、少なくともSi及びMgを添加元素として含有していればよいが、アルミニウム合金中のSiの含有率は0.35質量%以上0.75質量%以下であることが好ましい。この場合、Siの含有率が0.35質量%未満である場合と比べて、アルミニウム合金線において、優れた引張強度と伸びとを両立でき、Siの含有率が0.75質量%より多い場合と比べて、アルミニウム合金線が導電性に優れる。Siの含有率は好ましくは0.45質量%以上0.65質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上0.6質量%以下である。
【0029】
上記アルミニウム合金中のMgの含有率は0.3質量%以上0.7質量%以下であることが好ましい。この場合、Mgの含有率が0.3質量%未満である場合と比べて、アルミニウム合金線において、優れた引張強度と伸びとを両立でき、Mgの含有率が0.7質量%より多い場合と比べて、アルミニウム合金線が導電性に優れる。Mgの含有率は好ましくは0.4質量%以上0.6質量%以下であり、より好ましくは0.45質量%以上0.55質量%以下である。
【0030】
上記アルミニウム合金中のCuの含有率は0.4質量%以下であることが好ましい。この場合、Cuの含有率が0.4質量%より多い場合と比べて、アルミニウム合金線が導電性に優れる。Cuの含有率は好ましくは0.3質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以下である。但し、アルミニウム合金中のCuの含有率は0.1質量%以上であることが好ましい。
【0031】
上記アルミニウム合金中のFeの含有率は0.6質量%以下であることが好ましい。この場合、Feの含有率が0.6質量%より多い場合と比べて、アルミニウム合金線が導電性に優れる。Feの含有率は好ましくは0.4質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以下である。但し、アルミニウム合金中のFeの含有率は0.1質量%以上であることが好ましい。
【0032】
上記アルミニウム合金中のTi及びVの合計含有率は0.05質量%以下であることが好ましい。この場合、アルミニウム合金線が導電性に優れる。Ti及びVの合計含有率は好ましくは0.03質量%以下である。Ti及びVの合計含有率は0.05質量%以下であればよく、0質量%であってもよい。すなわち、Ti及びVの含有率がいずれも0質量%であってもよい。またTi及びVのうちTiの含有率のみが0質量%であってもよく、Vの含有率のみが0質量%であってもよい。但し、Ti及びVの合計含有率は0.005質量%以上であることが好ましい。
【0033】
あるいは、上記アルミニウム合金中のTi、V及びBの合計含有率は0.06質量%以下であることが好ましい。この場合、アルミニウム合金線が導電性に優れる。Ti、V及びBの合計含有率は0.06質量%以下であればよく、0質量%であってもよい。すなわち、Ti、V及びBの含有率がいずれも0質量%であってもよい。また、Ti、V及びBのうち1つ又は2つの元素の含有率のみが0質量%であってもよい。但し、Ti、V及びBの合計含有率は0.010質量%以上であることが好ましい。
【0034】
なお、Si、Fe、Cu及びMgの含有率、並びに、Ti及びVの合計含有率は、荒引線の質量を基準(100質量%)としたものである。また、不可避的不純物は、添加元素とは異なるものである。
【0035】
(荒引線)
荒引線は、例えば上述したアルミニウム合金からなる溶湯に対し、連続鋳造圧延やビレット鋳造後の熱間押出し等を行うことにより得ることができる。
【0036】
<荒引線処理工程>
荒引線処理工程は、荒引線に対し、処理ステップを行い、アルミニウム合金線を得る工程である。
【0037】
上記処理ステップは、上述したように少なくとも1回の伸線処理ステップと、少なくとも1回の伸線処理ステップのうち最後の伸線処理ステップの直前に行われ、アルミニウム及び添加元素の固溶体を形成した後、焼き入れ処理して第1溶体化材を形成する第1溶体化処理ステップと、最後の伸線処理ステップの直後に行われ、アルミニウム及び添加元素の固溶体を形成した後、焼き入れ処理して第2溶体化材を形成する第2溶体化処理ステップと、第2溶体化処理ステップの後に行われる時効処理ステップとを含む。
【0038】
処理ステップの手順の具体的な態様としては、例えば以下のものが挙げられる。
(1)第1溶体化処理ステップ→伸線処理ステップ→第2溶体化処理ステップ→時効処理ステップ
(2)伸線処理ステップ→第1溶体化処理ステップ→最後の伸線処理ステップ→第2溶体化処理ステップ→時効処理ステップ
(3)伸線処理ステップ→通常熱処理ステップ→伸線処理ステップ→第1溶体化処理ステップ→最後の伸線処理ステップ→第2溶体化処理ステップ→時効処理ステップ
【0039】
以下、伸線処理ステップ、第1溶体化処理ステップ、第2溶体化処理ステップ及び時効処理ステップについて詳細に説明する。
【0040】
<伸線処理ステップ>
伸線処理ステップは、荒引線、荒引線を伸線して得られる伸線材、又は伸線材をさらに伸線して得られる伸線材(以下、「荒引線」、「荒引線を伸線して得られる伸線材」、又は「伸線材をさらに伸線して得られる伸線材」をまとめて「線材」と呼ぶ)などの径を低減させるステップである。伸線処理ステップは、熱間伸線であっても冷間伸線であってもよいが、通常は冷間伸線である。
【0041】
伸線処理ステップは、複数回行われてもよいし、1回だけ行われてもよいが、伸線処理ステップは、複数回行われることが好ましい。伸線処理ステップのうち、最後の伸線処理ステップで得られる線材(以下、「最終線材」と呼ぶ)の線径は、特に限定されるものではないが、本発明の製造方法は、最終線径が0.5mm以下である場合でも有効である。但し、最終線材の線径は、0.1mm以上であることが好ましい。
【0042】
<第1溶体化処理ステップ>
第1溶体化処理ステップは、最後の伸線処理ステップの直前に行われ、アルミニウム及び添加元素の固溶体を形成した後、焼き入れ処理して第1溶体化材を形成するステップである。ここで、固溶体の形成は、線材を高温に加熱して熱処理することにより、アルミニウム中に溶け込んでいない添加元素をアルミニウムに溶け込ませることで行われる。
【0043】
焼き入れ処理は、固溶体を形成した後に線材に対して行われる急冷処理である。線材の急冷処理は、線材を自然冷却する場合と比べて、アルミニウム中に溶け込んだ添加元素が冷却中に析出することを抑制するために行われる。ここで、急冷とは、100K/min以上の冷却速度で冷却することを言う。
【0044】
第1溶体化処理ステップにおいて、固溶体を形成する際の熱処理温度は、アルミニウム中に溶け込んでいない添加元素をアルミニウム中に溶け込ませることができる温度であれば特に制限されるものではないが、450℃以上であることが好ましい。この場合、熱処理温度が450℃未満である場合と比べて、添加元素をより十分にアルミニウム中に溶け込ませることができる。固溶体を形成する際の熱処理温度は500℃以上であることがより好ましい。但し、固溶体を形成する際の熱処理温度は600℃以下であることが好ましい。この場合、熱処理温度が600℃より高い場合と比べて、線材が部分的に溶解することをより十分に抑制できる。固溶体を形成する際の熱処理温度は、550℃以下であることがより好ましい。
【0045】
固溶体を形成する際の熱処理時間は、特に制限されるものではないが、アルミニウム中に溶け込んでいない添加元素をアルミニウム中に十分に溶け込ませる観点からは、1時間以上であることが好ましい。但し、熱処理時間は、5時間超処理してもあまり効果が変わらないため、生産性を向上させるという理由からは、5時間以下であることが好ましい。
【0046】
焼き入れ処理における線材の冷却速度は、急冷となる冷却速度であれば特に制限されるものではないが、200K/min以上であることが好ましい。この場合、得られるアルミニウム合金線において、より高い引張強さ及び伸びが得られる。
【0047】
急冷は例えば液体を用いて行うことができる。このような液体としては、水又は液体窒素などを用いることができる。
【0048】
<第2溶体化処理ステップ>
第2溶体化処理ステップは、処理ステップにおける最後の伸線処理ステップの直後に行われ、アルミニウム及び添加元素の固溶体を形成した後、焼き入れ処理して第2溶体化材を形成するステップである。ここで、固溶体の形成は、最終線材を高温に加熱して熱処理することにより、アルミニウム中に溶け込んでいない添加元素をアルミニウム中に溶け込ませることで行われる。
【0049】
焼き入れ処理は、固溶体を形成した後に最終線材に対して行われる急冷処理である。最終線材の急冷処理は、最終線材を自然冷却する場合と比べて、アルミニウム中に溶け込んだ添加元素が冷却中に析出することを抑制するために行われる。ここで、急冷とは、100K/min以上の冷却速度で冷却することを言う。
【0050】
第2溶体化処理ステップにおいて、固溶体を形成する際の熱処理温度は、アルミニウム中に溶け込んでいない添加元素をアルミニウム中に溶け込ませることができる温度であれば特に制限されるものではないが、450℃以上であることが好ましい。この場合、熱処理温度が450℃未満である場合と比べて、添加元素をアルミニウム中に溶け込ませることができる。固溶体を形成する際の熱処理温度は、500℃以上であることがより好ましい。但し、固溶体を形成する際の熱処理温度は650℃以下であることが好ましい。この場合、熱処理温度が650℃より高い場合と比べて、最終線材が部分的に溶解することをより十分に抑制できる。固溶体を形成する際の熱処理温度は、600℃以下であることがより好ましい。固溶体を形成する際の熱処理温度は、第1溶体化処理ステップにおける熱処理温度と同じ温度であってもよいし、異なる温度であってもよい。
【0051】
また固溶体を形成する際の熱処理時間は、特に限定されるものではないが、3時間以下であることが好ましく、10分以下であることがより好ましい。この場合、固溶体を形成する際の熱処理時間が10分を超える場合と比べて、得られるアルミニウム合金線の引張強度及び伸びをより向上させることができる。但し、固溶体を形成する際の熱処理時間は、10秒より長い時間であることが好ましい。この場合、得られるアルミニウム合金線において、より高い引張強さ及び伸びが得られる。固溶体を形成する際の熱処理時間は、1分以上であることがより好ましい。
【0052】
固溶体の形成は、500~600℃の温度で且つ10分間以下の条件で行われることが好ましい。この場合、得られるアルミニウム合金線の引張強度及び伸びをより顕著に向上させることができる。但し、固溶体の形成は、500~600℃の温度で且つ10秒より長い時間行われることがより好ましい。この場合、得られるアルミニウム合金線において、より高い引張強さ及び伸びが得られる。
【0053】
焼き入れ処理における最終線材の冷却速度は、急冷となる冷却速度であれば特に限定されるものではないが、200K/min以上であることが好ましい。この場合、得られるアルミニウム合金線において、より高い引張強さ及び伸びが得られる。第2溶体化処理ステップにおける焼き入れ処理における冷却速度は、第1溶体化処理ステップの焼き入れ処理における冷却速度と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0054】
なお、第2溶体化処理ステップでは、最終線材に対して溶体化処理が行われるとともに、最後の伸線処理ステップで最終線材に生じたひずみを除去することが可能となる。
【0055】
<時効処理ステップ>
時効処理ステップは、最終線材を構成するアルミニウム合金中に析出物を形成させることにより、最終線材の時効処理を行うステップである。析出物としては、例えば添加元素(例えばSi及びMg)を含む化合物などが挙げられる。具体的には析出物としては、MgSiが挙げられる。
【0056】
時効処理ステップにおいては、最終線材を300℃以下で熱処理することが好ましい。この場合、熱処理温度が300℃を超える場合に比べて、得られるアルミニウム合金線の引張強度及び伸びをより向上させることができる。但し、時効処理ステップにおける最終線材の熱処理温度は、120℃以上であることが好ましい。この場合、熱処理温度が120℃未満である場合と比べて、最終線材を短時間で効率よく時効硬化させることができる。
【0057】
時効処理ステップにおける熱処理時間は3時間以上であることが好ましい。この場合、最終線材の熱処理を3時間未満行う場合に比べて、得られるアルミニウム合金線において、伸び及び導電性がより向上する。但し、熱処理時間は18時間以下であることが好ましい。
【0058】
<その他>
上記処理ステップは、第1溶体化処理ステップの前に、伸線処理ステップを行う場合には、その伸線処理ステップと第1溶体化処理ステップとの間に、線材を熱処理する通常熱処理ステップをさらに含むことが好ましい。この場合、通常熱処理ステップによって、伸線処理ステップで生じた歪みを除去することが可能となる。ここで、通常熱処理ステップとは、溶体化を行わない熱処理ステップ(非溶体化処理ステップ)のことを言い、具体的には、線材を熱処理した後、徐冷(例えば自然冷却)するステップを言う。徐冷とは、100K/min未満の冷却速度で冷却することを言う。
【0059】
通常熱処理ステップにおける熱処理温度は特に制限されるものではないが、通常は100~400℃であり、好ましくは200~400℃である。
【0060】
また、通常熱処理ステップにおける熱処理時間は、熱処理温度にも依存するので一概には言えないが、通常は1~20時間である。
【0061】
[電線の製造方法]
本発明の電線の製造方法は、上述したアルミニウム合金線の製造方法によってアルミニウム合金線を準備するアルミニウム合金線準備工程と、アルミニウム合金線を被覆層で被覆して電線を製造する電線製造工程とを含む電線の製造方法である。
【0062】
本発明の電線の製造方法によれば、アルミニウム合金線準備工程により、得られるアルミニウム合金線の引張強度及び伸びを向上させることができる。このため、このようなアルミニウム合金線を被覆層で被覆して得られる電線は、屈曲や振動が加えられる動的な箇所(例えば自動車のドア部、又は自動車のエンジンの近傍)に配置される電線として有用である。
【0063】
<アルミニウム合金線準備工程>
アルミニウム合金線準備工程は、上記アルミニウム合金線の製造方法によって、アルミニウム合金線を準備する工程である。
【0064】
<電線製造工程>
電線製造工程は、上記アルミニウム合金線準備工程で準備したアルミニウム合金線を被覆層で被覆して電線を製造する工程である。
【0065】
(被覆層)
被覆層は、特に限定されるものではないが、例えばポリ塩化ビニル樹脂や、ポリオレフィン樹脂に難燃剤等を添加してなる難燃性樹脂組成物などの絶縁材で構成される。
【0066】
被覆層の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば0.1~1mmである。
【0067】
被覆層をアルミニウム合金線に被覆する方法は、特に限定されるものではないが、例えばテープ状に成型した被覆層をアルミニウム合金線に巻き付ける方法、及び、アルミニウム合金線に押出被覆する方法が挙げられる。
【0068】
[ワイヤハーネスの製造方法]
本発明のワイヤハーネスの製造方法は、上記電線の製造方法によって電線を準備する電線準備工程と、電線を複数本用いてワイヤハーネスを製造するワイヤハーネス製造工程とを含むワイヤハーネスの製造方法である。
【0069】
本発明のワイヤハーネスの製造方法によれば、電線準備工程に含まれるアルミニウム合金線準備工程により、得られるアルミニウム合金線の引張強度及び伸びを向上させることができる。このため、このようなアルミニウム合金線を被覆層で被覆して得られる電線を含むワイヤハーネスは、屈曲や振動が加えられる動的な箇所(例えば自動車のドア部、又は自動車のエンジンの近傍)に配置されるワイヤハーネスとして有用である。
【0070】
<ワイヤハーネス製造工程>
ワイヤハーネス製造工程は、電線準備工程で準備した電線を複数本用いてワイヤハーネスを製造する工程である。
【0071】
ワイヤハーネス製造工程においては、すべての電線が異なる線径を有していてもよいし、同じ線径を有していてもよい。
【0072】
また、ワイヤハーネス製造工程においては、すべての電線が異なる組成のアルミニウム合金で構成されていてもよいし、同じ組成のアルミニウム合金で構成されていてもよい。
【0073】
また、ワイヤハーネス製造工程において用いる電線の本数は、2本以上であれば特に限定されるものではないが、200本以下であることが好ましい。
【実施例
【0074】
以下、本発明の内容を実施例及び比較例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0075】
(実施例1~26及び比較例1~26)
Si、Fe、Mg、Cu、Ti、V及びBを表1及び表2に示す含有率(単位:質量%)となるようにアルミニウムとともに溶解し、直径25mmの鋳型に流し込むことで線径25mmのアルミニウム合金を鋳造した。こうして得られたアルミニウム合金について、スウェージングマシン(吉田記念社製)によって線径9.5mmとなるようにスウェージング加工を行った後、270℃、8時間で熱処理することで線径9.5mmの荒引線を得た。こうして得られた荒引線に対し、下記の処理ステップA1~A9及びB1~B9のうち表1及び表2に示す処理ステップを行うことにより、アルミニウム合金線を得た。
【0076】
なお、表1及び表2においては、処理ステップの種類、最後の伸線処理ステップ直前の熱処理の種類及び条件、最後の伸線処理ステップ直後の溶体化処理の条件、並びに、時効処理の条件についても示した。
【0077】
また、下記処理ステップA1~A9の最後の伸線処理ステップの直前の第1溶体化処理ステップでは、アルミニウム及び添加元素の固溶体を形成した後、水冷による焼き入れ処理を行った。このときの焼き入れ処理の冷却速度は800K/minとした。また下記の処理ステップA1~A9及びB1~B9の最後の伸線処理ステップの直後の第2溶体化処理でも、アルミニウム及び添加元素の固溶体を形成した後、水冷による焼き入れ処理を行った。このときの焼き入れ処理の冷却速度は800K/minとした。また、下記の処理ステップA1~A9及びB1~B9における「通常熱処理」とは、溶体化処理ではない熱処理を言う。

(処理ステップA1)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.2mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→550℃×3時間で溶体化処理(第1溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×3時間で溶体化処理(第2溶体化処理ステップ)
→150℃×8時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップA2)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.2mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→550℃×3時間で溶体化処理(第1溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×1分間で溶体化処理(第2溶体化処理ステップ)
→150℃×8時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップA3)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.0mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→530℃×3時間で溶体化処理(第1溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×3時間で溶体化処理(第2溶体化処理ステップ)
→150℃×8時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップA4)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.0mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→530℃×3時間で溶体化処理(第1溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×1分間で溶体化処理(第2溶体化処理ステップ)
→150℃×8時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップA5)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.2mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→550℃×3時間で溶体化処理(第1溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×1分間で溶体化処理(第2溶体化処理ステップ)
→140℃×8時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップA6)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.2mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→550℃×3時間で溶体化処理(第1溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×1分間で溶体化処理(第2溶体化処理ステップ)
→120℃×24時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップA7)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.2mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→550℃×3時間で溶体化処理(第1溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×4秒間で溶体化処理(第2溶体化処理ステップ)
→140℃×8時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップA8)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.2mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→550℃×3時間で溶体化処理(第1溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×12秒間で溶体化処理(第2溶体化処理ステップ)
→140℃×8時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップA9)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.2mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→550℃×3時間で溶体化処理(第1溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×8分間で溶体化処理(第2溶体化処理ステップ)
→140℃×8時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップB1)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.2mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×3時間で溶体化処理
→150℃×8時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップB2)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.2mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×1分間で溶体化処理
→150℃×8時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップB3)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.0mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×3時間で溶体化処理
→150℃×8時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップB4)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.0mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×1分間で溶体化処理
→150℃×8時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップB5)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.2mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×1分間で溶体化処理
→140℃×8時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップB6)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.2mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×1分間で溶体化処理
→120℃×24時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップB7)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.2mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×4秒間で溶体化処理
→150℃×8時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップB8)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.2mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×12秒間で溶体化処理
→150℃×8時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップB9)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.2mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×8分間で溶体化処理
→150℃×8時間で時効処理(時効処理ステップ)
【0078】
[特性評価]
(引張強度及び伸び)
実施例1~26及び比較例1~26のアルミニウム合金線について、JIS C3002に準拠した引張試験による引張強度及び伸びを測定した。結果を表1及び表2に示す。

また、比較例1~26の引張強さ及び伸びを100とし、比較例1~26の引張強さ及び伸びに対する実施例1~26の引張強さ及び伸びの相対値も併記した。ここで、実施例1~26の引張強さ及び伸びの相対値はそれぞれ、表1及び表2において、実施例のすぐ下に配置されている比較例の引張強さ及び伸びを100としたときの相対値である。結果を表1及び表2に示す。

【表1】
【表2】
【0079】
表1及び表2に示す結果より、本発明のアルミニウム合金線の製造方法によれば、得られるアルミニウム合金線の引張強度及び伸びを向上させることができることが確認された。