(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】医用情報処理システム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20220314BHJP
【FI】
A61B6/00 350A
A61B6/00 370
A61B6/00 331E
(21)【出願番号】P 2017248083
(22)【出願日】2017-12-25
【審査請求日】2020-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂口 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】渡部 勇一郎
【審査官】井上 香緒梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-106990(JP,A)
【文献】特表2017-502807(JP,A)
【文献】特開2015-112232(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0161800(US,A1)
【文献】特開平08-280657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の治療の実施時の第1のフェーズにおいて時系列に複数の2次元画像を取得し、前記被検体の治療の実施時であって、前記第1のフェーズより後の第2のフェーズにおいて時系列に複数の2次元画像を取得する取得部と、
前記治療の実施より前に生成された前記被検体の3次元画像を用いて、前記第1のフェーズにおける複数の2次元画像に設定された第1の関心領域に対応する第2の関心領域を、前記第2のフェーズにおける複数の2次元画像に設定する設定部と、
前記第1の関心領域と、前記第2の関心領域とにおける血流動態を解析する解析部と、
を備えた、医用情報処理システム。
【請求項2】
前記設定部は、前記第2のフェーズにおける2次元画像を取得する際の撮像系の幾何学的情報に基づいて、前記3次元画像を投影して2次元投影画像を生成し、前記第2のフェーズにおける2次元画像と前記2次元投影画像とを位置合わせすることで、前記第2のフェーズにおける2次元画像に前記第2の関心領域を設定する、請求項1に記載の医用情報処理システム。
【請求項3】
前記設定部は、前記第2のフェーズにおける2次元画像を取得する際の撮像系の幾何学的情報に基づいて、前記3次元画像を投影して2次元投影画像を生成し、前記第2のフェーズにおける2次元画像における血管の中心線と前記2次元投影画像における血管の中心線とを位置合わせすることで、前記第2のフェーズにおける2次元画像に前記第2の関心領域を設定する、請求項1に記載の医用情報処理システム。
【請求項4】
前記3次元画像において関心領域の設定を受付ける受付部を更に備え、
前記設定部は、前記3次元画像において設定された関心領域を用いて、前記第1の関心領域を設定する、請求項1~3のいずれか一つに記載の医用情報処理システム。
【請求項5】
前記設定部は、前記第1のフェーズにおける2次元画像を取得する際の幾何学的情報に基づいて、前記3次元画像を投影して2次元投影画像を生成し、前記第1のフェーズにおける2次元画像と前記2次元投影画像とを位置合わせすることで、前記第1のフェーズにおける2次元画像に前記第1の関心領域を設定する、請求項4に記載の医用情報処理システム。
【請求項6】
前記設定部は、前記第1のフェーズにおける2次元画像を取得する際の幾何学的情報に基づいて、前記3次元画像を投影して2次元投影画像を生成し、前記第1のフェーズにおける2次元画像における血管の中心線と前記2次元投影画像における血管の中心線とを位置合わせすることで、前記第1のフェーズにおける2次元画像に前記第1の関心領域を設定する、請求項1に記載の医用情報処理システム。
【請求項7】
被検体の治療の実施時の第1のフェーズにおいて時系列に複数の2次元画像を取得し、前記被検体の治療の実施時であって、前記第1のフェーズより後の第2のフェーズにおいて時系列に複数の2次元画像を取得する取得部と、
前記第1のフェーズにおける2次元画像におい
て第1の関心領域の設定を受付ける受付部
と、
前記
治療の実施より前に生成された前記被検体の3次元画像において前記第1の関心領域に対応する関心領域を設定し、設定した関心領域に基づいて、
前記第1の関心領域に対応する第2の関心領域を、前記第2のフェーズにおける
複数の2次元画像
に設定する
設定部と、
前記第1の関心領域と、前記第2の関心領域とにおける血流動態を解析する解析部と、
を備えた医用情報処理システム。
【請求項8】
前記第1の関心領域及び前記第2の関心領域は、被検体の組織に設定され、
前記解析部は、前記第1の関心領域におけるパラメータ値と、前記第2の関心領域におけるパラメータ値との比を指標値として算出する、請求項1~7のいずれか一つに記載の医用情報処理システム。
【請求項9】
被検体の治療の実施時の第1のフェーズにおいて時系列に複数の2次元画像を取得し、前記被検体の治療の実施時であって、前記第1のフェーズより後の第2のフェーズにおいて時系列に複数の2次元画像を取得する取得部と、
前記治療の実施より前に生成された前記被検体の3次元画像を用いて、前記第1のフェーズにおける複数の2次元画像に設定された第1の関心領域に対応する第2の関心領域を、前記第2のフェーズにおける複数の2次元画像に設定する設定部と、
前記第1の関心領域と、前記第2の関心領域とにおける血流動態を解析する解析部と、
を備え、
前記第1の関心領域及び前記第2の関心領域は、前記治療における治療対象部位を支配する血管領域に設定され、
前記解析部は、前記第1の関心領域における入力関数で補正した、前記第1のフェーズのパラメータ画像と前記第2のフェーズのパラメータ画像とを生成する
、医用情報処理システム。
【請求項10】
被検体の治療の実施時の第1のフェーズにおいて時系列に複数の2次元画像を取得し、前記被検体の治療の実施時であって、前記第1のフェーズより後の第2のフェーズにおいて時系列に複数の2次元画像を取得する取得部と、
前記治療の実施より前に生成された前記被検体の3次元画像を用いて、前記第1のフェーズにおける複数の2次元画像に設定された第1の関心領域に対応する第2の関心領域を、前記第2のフェーズにおける複数の2次元画像に設定する設定部と、
前記第1の関心領域と、前記第2の関心領域とにおける血流動態を解析する解析部と、
を備え、
前記第1の関心領域及び前記第2の関心領域は、前記治療における治療対象部位を支配する血管領域に設定され、
前記解析部は、前記第1の関心領域における血流量と、前記第2の関心領域における血流量とを算出する
、医用情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
肝臓癌の治療においては、癌への栄養血管を塞栓する肝動脈塞栓術(TAE:Transcatheter Arterial Embolization、或いは、TACE:Transcatheter Arterial Chemo-Embolization)という治療がおこなわれている。
【0003】
肝動脈塞栓術は、栄養血管のみを塞栓させるため正常組織の機能を失うことなく、癌細胞にのみ血液供給を絶つことができる治療法である。この治療法では、術者は、例えば、血管造影をおこない、X線画像で造影剤が癌細胞に染まる様子を目視で観察する。そして、術者は、造影剤が癌細胞及び栄養血管に染まらなくなったら治療終了と判断する。
【0004】
また、近年、パラメトリックイメージング(Parametric imaging)という技術が知られている。この技術は、血管に投与された造影剤が各組織にて拡散される時間変化の特徴量を定量値として抽出する技術である。例えば、パラメトリックイメージングでは、連続して収集された複数フレームの画像において、各画素の時間濃度曲線を測定し、この時間濃度曲線のPH(Peak Height)やTTP(Time to peak)等のパラメータが出力される。これにより、術者は、例えば治療開始直後のパラメータと治療中のパラメータとを比較することで、治療中に造影剤による染まりの変化を定量的に把握することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、治療時における術者の負荷を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の医用情報処理システムは、取得部と、設定部と、解析部とを備える。取得部は、被検体の治療の実施時の第1のフェーズにおいて時系列に複数の2次元画像を取得し、前記被検体の治療の実施時であって、前記第1のフェーズより後の第2のフェーズにおいて時系列に複数の2次元画像を取得する。設定部は、前記治療の実施より前に生成された前記被検体の3次元画像を用いて、前記第1のフェーズにおける複数の2次元画像に設定された第1の関心領域に対応する第2の関心領域を、前記第2のフェーズにおける複数の2次元画像に設定する。解析部は、前記第1の関心領域と、前記第2の関心領域とにおける血流動態を解析する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る医用情報処理システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る処理回路による処理手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、第1の実施形態を説明するための図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る処理回路による処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る処理回路による処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る処理回路による処理手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第1の実施形態を説明するための図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態を説明するための図である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態を説明するための図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態に係る処理回路による処理手順を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、第2の実施形態に係る処理回路による処理手順を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、第2の実施形態を説明するための図である。
【
図14】
図14は、第3の実施形態に係る処理回路による処理手順を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、第3の実施形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態に係る医用情報処理システムを説明する。また、以下では、医用画像処理装置及びX線診断装置を有する医用情報処理システムについて説明する。なお、実施形態は、以下の実施形態に限られるものではない。また、一つの実施形態に記載した内容は、原則として他の実施形態にも同様に適用される。例えば、医用情報処理システムにPACS(Picture Archiving and Communication System)が導入されている場合、各装置は、医用画像データに付帯情報を付与したDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)形式の医用画像データ等を相互に送受信する。ここで、付帯情報には、例えば、患者を識別する患者ID(Identifier)、検査を識別する検査ID、各装置を識別する装置ID、各装置による1回の撮影を識別するシリーズIDなどが含まれる。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る医用情報処理システム1の構成の一例を示す図である。
図1に示すように、第1の実施形態に係る医用情報処理システム1は、X線診断装置100と医用画像処理装置200とを有する。
【0011】
X線診断装置100は、高電圧発生器11と、X線管12と、コリメータ13と、天板14と、Cアーム15と、X線検出器16とを備える。また、第1の実施形態に係るX線診断装置100は、Cアーム回転・移動機構17と、天板移動機構18と、Cアーム・天板機構制御回路19と、絞り制御回路20と、処理回路21と、入力インターフェース22と、ディスプレイ23とを備える。また、第1の実施形態に係るX線診断装置100は、画像データ生成回路24と、記憶回路25と、画像処理回路26と、通信インターフェース27とを備える。また、X線診断装置100は、インジェクター30と接続される。そして、X線診断装置100は、
図1に示すように、各回路が相互に接続され、各回路間で種々の電気信号を送受信したり、インジェクター30と電気信号を送受信したりする。
【0012】
インジェクター30は、被検体Pに挿入されたカテーテルから造影剤を注入するための装置である。ここで、インジェクター30からの造影剤注入は、後述する処理回路21を介して受信した注入指示に従って実行される。具体的には、インジェクター30は、後述する処理回路21から受信する造影剤の注入開始指示や、注入停止指示、さらに、注入速度などを含む造影剤注入条件に応じた造影剤注入を実行する。なお、インジェクター30は、操作者が直接インジェクター30に対して入力した注入指示に従って注入開始や、注入停止を実行することも可能である。
【0013】
図1に示すX線診断装置100においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路25へ記憶されている。Cアーム・天板機構制御回路19、絞り制御回路20、処理回路21、画像データ生成回路24、及び、画像処理回路26は、記憶回路25からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の各回路は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0014】
高電圧発生器11は、処理回路21による制御の下、高電圧を発生し、発生した高電圧をX線管12に供給する。X線管12は、高電圧発生器11から供給される高電圧を用いて、X線を発生する。
【0015】
コリメータ13は、絞り制御回路20による制御の下、X線管12が発生したX線を、被検体Pの関心領域に対して選択的に照射されるように絞り込む。例えば、コリメータ13は、スライド可能な4枚の絞り羽根を有する。コリメータ13は、絞り制御回路20による制御の下、これらの絞り羽根をスライドさせることで、X線管12が発生したX線を絞り込んで被検体Pに照射させる。天板14は、被検体Pを載せるベッドであり、図示しない寝台の上に配置される。なお、被検体Pは、X線診断装置100に含まれない。
【0016】
X線検出器16は、被検体Pを透過したX線を検出する。例えば、X線検出器16は、マトリックス状に配列された検出素子を有する。各検出素子は、被検体Pを透過したX線を電気信号に変換して蓄積し、蓄積した電気信号を画像データ生成回路24に送信する。
【0017】
Cアーム15は、X線管12、コリメータ13及びX線検出器16を保持する。X線管12及びコリメータ13とX線検出器16とは、Cアーム15により被検体Pを挟んで対向するように配置される。なお、
図1では、X線診断装置100がシングルプレーンの場合を例に挙げて説明しているが、実施形態はこれに限定されるものではなく、バイプレーンの場合であってもよい。
【0018】
Cアーム回転・移動機構17は、Cアーム15を回転及び移動させるための機構であり、天板移動機構18は、天板14を移動させるための機構である。Cアーム・天板機構制御回路19は、処理回路21による制御の下、Cアーム回転・移動機構17及び天板移動機構18を制御することで、Cアーム15の回転や移動、天板14の移動を調整する。絞り制御回路20は、処理回路21による制御の下、コリメータ13が有する絞り羽根の開度を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線の照射範囲を制御する。
【0019】
画像データ生成回路24は、X線検出器16によってX線から変換された電気信号を用いて画像データを生成し、生成した画像データを記憶回路25に格納する。例えば、画像データ生成回路24は、X線検出器16から受信した電気信号に対して、電流・電圧変換やA(Analog)/D(Digital)変換、パラレル・シリアル変換を行い、画像データを生成する。一例を挙げると、画像データ生成回路24は、造影剤が注入されていない状態で撮像された画像データ(マスク画像)及び造影剤が注入された状態で撮像された画像データ(コントラスト画像)を生成する。そして、画像データ生成回路24は、生成したマスク画像及びコントラスト画像を記憶回路25に格納する。
【0020】
記憶回路25は、画像データ生成回路24によって生成された画像データを受付けて記憶する。例えば、記憶回路25は、造影剤が投与される前後の被検体Pの画像データを記憶する。また、記憶回路25は、後述する差分画像を記憶する。
【0021】
画像処理回路26は、記憶回路25が記憶する画像データに対して各種画像処理を行う。例えば、画像処理回路26は、記憶回路25が記憶するマスク画像とコントラスト画像とを読み出し、サブトラクション(Logサブ)することで差分画像を生成する。
【0022】
なお、画像処理回路26は、造影剤投与直前の1フレームをマスク画像として用いることで、体動による位置合わせ(レジストレーション)のミスを最小限に抑えることが可能である。また、画像処理回路26は、移動平均(平滑化)フィルタ、ガウシアンフィルタ、メディアンフィルタなどの画像処理フィルタによるノイズ低減処理を実行することも可能である。すなわち、画像処理回路26は、造影剤を用いて経時的に撮影された複数のX線画像群それぞれに対して、位置ずれ補正及びノイズ除去を含む前処理を実行することができる。
【0023】
入力インターフェース22は、所定の領域(例えば、差分画像内で補正処理の対象領域)などの設定などを行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード等によって実現される。入力インターフェース22は、処理回路21に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換し処理回路21へと出力する。
【0024】
ディスプレイ23は、操作者の指示を受付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、画像処理回路26によって生成された差分画像、パラメトリックイメージングによるカラー画像などを表示する。
【0025】
通信インターフェース27は、処理回路21に接続され、ネットワークを介して接続された医用画像処理装置200等の他装置との間で行われる各種データの伝送及び通信を制御する。例えば、通信インターフェース27は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。
図1では、通信インターフェース27は、記憶回路25に記憶されているX線画像を医用画像処理装置200に送信する。
【0026】
処理回路21は、X線診断装置100全体の動作を制御する。例えば、処理回路21は、装置全体を制御するための制御機能に対応するプログラムを記憶回路25から読み出して実行することにより、種々の処理を実行する。例えば、処理回路21は、入力インターフェース22から転送された操作者の指示に従って高電圧発生器11を制御し、X線管12に供給する電圧を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線量やON/OFFを制御する。また、例えば、処理回路21は、操作者の指示に従ってCアーム・天板機構制御回路19を制御し、Cアーム15の回転や移動、天板14の移動を調整する。また、例えば、処理回路21は、操作者の指示に従って絞り制御回路20を制御し、コリメータ13が有する絞り羽根の開度を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線の照射範囲を制御する。
【0027】
また、処理回路21は、操作者の指示に従って、画像データ生成回路24による画像データ生成処理や、画像処理回路26による画像処理、あるいは解析処理などを制御する。また、処理回路21は、操作者の指示を受付けるためのGUIや記憶回路25が記憶する画像などを、ディスプレイ23に表示するように制御する。また、処理回路21は、インジェクター30に対して、造影剤注入開始及び終了の信号を送信することで、造影剤の注入タイミングを制御する。
【0028】
医用画像処理装置200は、入力インターフェース201と、ディスプレイ202と、記憶回路203と、通信インターフェース204と、処理回路205とを有する。
【0029】
通信インターフェース204は、処理回路205に接続され、ネットワークを介して接続された各種の医用画像診断装置等の他装置との間で行われる各種データの伝送及び通信を制御する。例えば、通信インターフェース204は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。
図1では、通信インターフェース204は、X線診断装置100からX線画像を受信し、受信したX線画像を処理回路205に出力する。
【0030】
記憶回路203は、処理回路205に接続され、各種データを記憶する。例えば、記憶回路203は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。記憶回路203は、X線診断装置100から受信したX線画像を記憶する。例えば、記憶回路203は、X線画像として、マスク画像及びコントラスト画像を記憶する。或いは、記憶回路203は、X線画像として、差分画像を記憶する。また、或いは、記憶回路203は、X線画像として、マスク画像、コントラスト画像及び差分画像を記憶する。また、記憶回路203は、処理回路205による処理結果を記憶する。
【0031】
入力インターフェース201は、処理回路205に接続され、操作者から受付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路205に出力する。例えば、入力インターフェース201は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、タッチパネル等によって実現される。
【0032】
ディスプレイ202は、処理回路205に接続され、処理回路205から出力される各種情報及び各種画像データを表示する。例えば、ディスプレイ202は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。
【0033】
処理回路205は、入力インターフェース201を介して操作者から受付けた入力操作に応じて、医用画像処理装置200が有する各構成要素を制御する。例えば、処理回路205は、プロセッサによって実現される。処理回路205は、通信インターフェース204から出力されるX線画像を記憶回路203に記憶させる。また、処理回路205は、記憶回路203からX線画像データを読み出し、ディスプレイ202に表示する。
【0034】
また、処理回路205は、
図1に示すように、取得機能205aと、設定機能205bと、解析機能205cと、受付機能205dとを実行する。ここで、例えば、
図1に示す処理回路205の構成要素である取得機能205aと、設定機能205bと、解析機能205cと、受付機能205dと実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路203に記録されている。処理回路205は、各プログラムを記憶回路203から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路205は、
図1の処理回路205内に示された各機能を有することとなる。
【0035】
以上、医用情報処理システム1の構成の一例について説明した。かかる構成のもと、本実施形態に係る医用情報処理システム1では、例えば、肝臓癌の血管内治療において治療の進行状況の把握や治療の終了判断を客観的におこなう際に、パラメトリックイメージング(Parametric imaging)という技術が利用される。パラメトリックイメージングは、血管に造影剤を投与してX線二次元投影画像を取得し、このX線二次元投影画像における時間変化の特徴量をパラメータ化して表示する技術である。例えば、術者は、パラメータを比較することで、癌組織に供給される血液動態を治療中に把握しながら治療を進めることが可能となってきている。
【0036】
しかしながら、このパラメトリックイメージングを用いて、治療前後のパラメータを比較するためには、術者は、治療した部位ごとに関心領域を設定し、関心領域における治療前後のパラメータを比較する。具体的には、術者は、治療中に癌組織の部分に関心領域(ROI:Region of Interest)を設定し、治療前に比べて治療後で癌組織の部分の血流が低下していることを確認する。また、術者は、正常組織の部分にもROIを設定し、治療前に比べて治療後で正常組織の血流が低下していないことを確認する。このため治療中の最初の造影で画像を作成した後に、ROIを設定する作業が必要になる。治療中にROIを設定する作業は術者にとって手間であるので、ROIを設定する作業を無くすことが望まれる。
【0037】
そこで、第1の実施形態では、医用画像処理装置200は、治療時における術者の負荷を軽減するために、以下に示す支援処理を実行する。すなわち、医用画像処理装置200は、被検体Pの治療の実施時の第1のフェーズにおいて時系列に複数の2次元画像を取得し、被検体Pの治療の実施時であって、第1のフェーズより後の第2のフェーズにおいて時系列に複数の2次元画像を取得する。続いて、医用画像処理装置200は、治療の実施より前に生成された被検体Pの3次元画像を用いて、第1のフェーズにおける複数の2次元画像に設定された第1の関心領域に対応する第2の関心領域を、第2のフェーズにおける複数の2次元画像に設定する。そして、医用画像処理装置200は、第1の関心領域と、第2の関心領域とにおける血流動態を解析する。この支援処理は、処理回路205が、取得機能205a、設定機能205b、解析機能205c及び受付機能205dを実行することにより実現される。
【0038】
以下では、
図2から
図8を用いて、第1の実施形態に係る支援処理について説明する。
図2、
図4、
図5及び
図6は、第1の実施形態に係る処理回路205による処理手順を示すフローチャートであり、
図3、
図7及び
図8は、第1の実施形態を説明するための図である。
【0039】
まず、
図2及び
図3を用いて、治療の実施より前に生成された被検体Pの3次元画像に関心領域を設定する処理を説明する。
図2では、医用画像処理装置200の処理回路205の動作を説明するフローチャートを示し、各構成要素がフローチャートのどのステップに対応するかを説明する。なお、
図2に示す処理は、治療の実施より前に実行されることが望ましい。例えば、
図2に示す処理は、治療に先立ち実施される治療計画の作成時に実行される支援処理である。
【0040】
ステップS1からステップS4は、受付機能205dに対応するステップである。処理回路205が記憶回路203から受付機能205dに対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、受付機能205dが実現されるステップである。ステップS1では、受付機能205dは、治療計画の作成を受付けたか否かを判定する。ここで、受付機能205dは、治療計画の作成を受付けたと判定しなかった場合(ステップS1、No)、ステップS1の処理を繰り返す。
【0041】
一方、受付機能205dは、治療計画の作成を受付けたと判定した場合(ステップS1、Yes)、3D血管画像を取得する(ステップS2)。例えば、受付機能205dは、X線CT装置などによって被検体Pの治療対象部位を含んだ領域を撮像することで生成された、造影剤非存在下の3次元画像(3Dマスク画像)と、造影剤存在下の3次元画像(3Dコントラスト画像)とを記憶回路203から取得する。そして、受付機能205dは、3Dマスク画像と3Dコントラスト画像とをサブトラクションすることで、3D血管画像を取得する。なお、受付機能205dは、3Dマスク画像と3Dコントラスト画像とをサブトラクションして得られた3D血管画像が記憶回路203に記憶されている場合には、記憶回路203から3D血管画像を取得してもよい。
【0042】
また、受付機能205dが取得する3次元画像(3D血管画像、3Dマスク画像、3Dコントラスト画像)は、X線CT装置により生成された3次元画像に限定されるものではなく、例えば、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置やX線診断装置100によって生成された3次元画像であってもよい。また、受付機能205dが取得する画像は、3次元画像に限定されるものではなく、造影剤存在下において被検体Pの治療対象部位を時系列に撮影することで得られた、4次元画像であってもよい。
【0043】
ステップS3では、受付機能205dは、3D血管画像をディスプレイ202に表示する。そして、ステップS4では、受付機能205dは、関心領域の設定を受付ける。
図3を用いて、受付機能205dによる関心領域の設定について説明する。
図3では、癌組織51と、この癌組織51に栄養を供給する栄養血管(
図3中の網掛け部分)とが描出された血管構造の一例を示す。例えば、受付機能205dは、
図3に示すように、癌組織51に繋がる栄養血管に関心領域52の設定を術者などの操作者から受付ける。なお、
図3では、癌組織51に繋がる栄養血管に関心領域52の設定を受付ける場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、受付機能205dは、癌組織51に関心領域の設定を受付けるようにしてもよい。
【0044】
また、受付機能205dは、
図3中での図示を省略するが、正常組織の部分にも関心領域の設定を受付ける。例えば、受付機能205dは、癌組織と同じ栄養血管に繋がる正常組織にも関心領域の設定を受付ける。このようにして、受付機能205dは、3次元画像において関心領域の設定を受付ける。なお、以下では説明の便宜上、治療部位や治療部位に繋がる栄養血管や正常組織に設定される関心領域のことを「出力ROI」と適宜記載する。
【0045】
なお、
図2の説明では、受付機能205dは、3D血管画像における関心領域の設定を操作者から受付けるものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、医用画像処理装置200において、TACE支援機能が実装されている場合には、受付機能205dは、3D血管画像において癌組織の部分を関心領域として自動的に設定するようにしてもよい。より具体的には、受付機能205dは、取得した3D血管画像において栄養血管を自動的に同定し、自動的に癌組織の部分をセグメンテーションする。そして、受付機能205dは、セグメンテーションした癌組織の部分を関心領域として設定する。
【0046】
続いて、
図4を用いて治療の実施より前に生成された被検体Pの3次元画像を用いて、第1のフェーズにおける複数の2次元画像に第1の関心領域を設定する処理と、この第1の関心領域に対応する第2の関心領域を、治療の実施より前に生成された被検体Pの3次元画像を用いて、第2のフェーズにおける複数の2次元画像に設定する処理とを説明する。すなわち、
図4に示す処理は、治療実施時に実行される支援処理である。
図4では、医用画像処理装置200の処理回路205の動作を説明するフローチャートを示し、各構成要素がフローチャートのどのステップに対応するかを説明する。
【0047】
ステップS11、ステップS12、ステップS15、ステップS16及びステップS20は、取得機能205aに対応するステップである。処理回路205が記憶回路203から取得機能205aに対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、取得機能205aが実現されるステップである。ステップS11では、取得機能205aは、治療の開始を受付けたか否かを判定する。ここで、取得機能205aは、治療の開始を受付けたと判定しなかった場合(ステップS11、No)、ステップS11の処理を繰り返す。
【0048】
一方、取得機能205aは、治療の開始を受付けたと判定した場合(ステップS11、Yes)、第1のフェーズの2D血管画像を取得する(ステップS12)。ここで、第1のフェーズとは、治療の開始後のフェーズであって、2Dコントラスト画像を複数枚収集する最初のフェーズである。例えば、取得機能205aは、X線診断装置100によって被検体Pの治療対象部位を含んだ領域を撮像することで生成された、造影剤非存在下の2次元画像(2Dマスク画像)と、造影剤存在下の2次元画像(2Dコントラスト画像)とをX線診断装置100から取得する。ここで、取得機能205aは、時系列に撮影された複数の2Dコントラスト画像を取得する。そして、取得機能205aは、2Dマスク画像と各2Dコントラスト画像とをサブトラクションすることで、複数の2D血管画像を取得する。
【0049】
なお、取得機能205aは、2Dマスク画像と各2Dコントラスト画像とをサブトラクションして得られた複数の2D血管画像がX線診断装置100の記憶回路25に記憶されている場合には、記憶回路25から2D血管画像を取得してもよい。このようにして、取得機能205aは、被検体Pの治療の実施時の第1のフェーズにおいて時系列に複数の2次元画像を取得する。
【0050】
ステップS13及びステップS17は、設定機能205bに対応するステップである。処理回路205が記憶回路203から設定機能205bに対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、設定機能205bが実現されるステップである。ステップS13では、設定機能205bは、ステップS12で取得した第1のフェーズの複数の2D血管画像に対して関心領域設定処理を実行する。すなわち、設定機能205bは、3次元画像において設定された関心領域を用いて、第1のフェーズの複数の2D血管画像に第1の関心領域を設定する。
図5を用いて設定機能205bによる関心領域設定処理について説明する。
【0051】
図5では、設定機能205bの動作を説明するフローチャートを示す。
図5に示す処理は、
図4に示すステップS13に対応する。なお、ステップS101からステップS105は、設定機能205bに対応するステップである。処理回路205が記憶回路203から設定機能205bに対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、設定機能205bが実現されるステップである。
【0052】
ステップS101では、設定機能205bは、撮影時の幾何学的情報を取得する。例えば、設定機能205bは、ステップS12で取得した2次元画像がX線診断装置100によって撮影された際の幾何学的情報を取得する。一例をあげると、設定機能205bは、X線診断装置100によって撮影された際の、撮影時のCアーム15(LAO,RAO,CRA,CAU)、SID(Source Image receptor Distance)、SOD(Source Object Distance )、FOV(Field of View)などを幾何学的情報として取得する。なお、幾何学的情報は、ステップS12で取得した2次元画像において付帯情報として付帯されてもよい。
【0053】
ステップS102では、設定機能205bは、幾何学的情報に基づいて3D血管画像から2D投影画像を生成する。例えば、設定機能205bは、
図2のステップS4において関心領域が設定された3D血管画像を取得し、ステップS101で取得した幾何学的情報を用いて3D血管画像を投影して2D投影画像を生成する。すなわち、ステップS102では、設定機能205bは、X線診断装置100によって撮影された2次元画像と略同じ方向から撮影した2D投影画像を3D血管画像から生成する。
【0054】
ステップS103では、設定機能205bは、2D血管画像と2D投影画像とを解剖学的な特徴量を用いて位置合わせする。そして、ステップS104では、位置あわせの結果から運動ベクトルを算出する。ステップS105では、設定機能205bは、運動ベクトルに基づいて3D血管画像上の関心領域を変形して2D血管画像上に関心領域を設定する。このようにして、設定機能205bは、第1のフェーズにおける2次元画像を取得する際の幾何学的情報に基づいて、3次元画像を投影して2次元投影画像を生成する。そして、設定機能205bは、第1のフェーズにおける2次元画像と2次元投影画像とを位置合わせすることで、第1のフェーズにおける2次元画像に第1の関心領域を設定する。このようにして、第1の関心領域は、被検体Pの治療部位や治療部位に繋がる栄養血管や正常組織に設定される。
【0055】
図4に戻る。
図4のステップS14、ステップS18及びステップS19は、解析機能205cに対応するステップである。処理回路205が記憶回路203から解析機能205cに対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、解析機能205cが実現されるステップである。ステップS14では、解析機能205cは、ステップS13で関心領域が設定された第1のフェーズの複数の2D血管画像を用いて、パラメータ値取得処理を実行する。
図6を用いて解析機能205cによるパラメータ値取得処理について説明する。
【0056】
図6では、解析機能205cの動作を説明するフローチャートを示す。
図6に示す処理は、
図4に示すステップS14に対応する。なお、ステップS201からステップS203は、解析機能205cに対応するステップである。処理回路205が記憶回路203から解析機能205cに対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、解析機能205cが実現されるステップである。
【0057】
ステップS201では、解析機能205cは、ステップS13で関心領域が設定された第1のフェーズの複数の2D血管画像から流入時間を同定する。ここで、流入時間は、2D血管画像の各位置における画素値の変化を造影剤濃度の変化と見なし、各画素値の時系列変化に基づいて定義されるパラメータである。言い換えると、解析機能205cは、複数の2D血管画像の全画素を解析対象とし、各位置における画素値の経時的変化に基づいて、対象物に注入される造影剤の流入時間を同定する。なお、流入時間の算出方法には任意の方法を選択可能である。例えば、流入時間の算出方法として、画素値の時間変化が最大となる時間を流入時間として同定する方法であるTTP(Time-to-Peak)を選択可能である。また、例えば、流入時間の算出方法として、画素値の時間変化が所定値に到達する時間、若しくは、画素値の時間変化における最大値に対して所定割合に到達する時間を流入時間として同定する方法であるTTA(Time-to-Arrival)を選択可能である。
【0058】
続いて、ステップS202では、解析機能205cは、カラーコードを生成する。例えば、解析機能205cは、静止画としてパラメトリック画像データを生成する場合には、1つのカラーコードを生成する。また、解析機能205cは、動画としてパラメトリック画像データを生成する場合には、動画に含まれるフレーム数に対応する数のカラーコードを生成する。
【0059】
ステップS203では、解析機能205cは、パラメトリック画像データを生成する。例えば、解析機能205cは、2D血管画像の各画素に、画素値の経時的変化に応じたカラーを割り当てることにより、パラメトリック画像データを生成する。すなわち、解析機能205cは、同定した流入時間に応じたカラーを各位置に割り当ててカラー画像を生成する。
【0060】
図4に戻る。ステップS15では、取得機能205aは、第2のフェーズの撮影が開始されたか否かを判定する。ここで、第2のフェーズとは、治療の開始後のフェーズであって、第1のフェーズより以降に2Dコントラスト画像を複数枚収集するフェーズである。取得機能205aは、第2のフェーズの撮影が開始されたと判定しなかった場合(ステップS15、No)、ステップS15の処理を繰り返す。
【0061】
一方、取得機能205aは、第2のフェーズの撮影が開始されたと判定した場合(ステップS15、Yes)、第2のフェーズの2D血管画像を取得する(ステップS16)。ここで、取得機能205aは、例えば、ステップS12で取得した第1のフェーズの2D血管画像と同じ時間間隔で同じ枚数の第2のフェーズの2D血管画像を取得する。すなわち、取得機能205aは、被検体Pの治療の実施時であって、第1のフェーズより後の第2のフェーズにおいて時系列に複数の2次元画像を取得する。なお、ステップS15における取得機能205aによる処理の詳細は、ステップS12で説明した取得機能205aによる処理の詳細と同様である。
【0062】
ステップS17では、設定機能205bは、ステップS16で取得した第2のフェーズの複数の2D血管画像に対して関心領域設定処理を実行する。ここで、設定機能205bは、第1のフェーズにおける複数の2次元画像に設定された第1の関心領域に対応する第2の関心領域を、第2のフェーズにおける複数の2次元画像に設定する。すなわち、設定機能205bは、治療の実施より前に生成された被検体Pの3次元画像を用いて、第1のフェーズにおける複数の2次元画像に設定された第1の関心領域に対応する第2の関心領域を、第2のフェーズにおける複数の2次元画像に設定する。なお、ステップS17における設定機能205bによる処理の詳細は、ステップS13で説明した設定機能205bによる処理の詳細と同様である。言い換えると、設定機能205bは、
図5を用いて説明した関心領域設定処理を実行する。すなわち、設定機能205bは、第2のフェーズにおける2次元画像を取得する際の幾何学的情報に基づいて、3次元画像を投影して2次元投影画像を生成する。そして、設定機能205bは、第2のフェーズにおける2次元画像と2次元投影画像とを位置合わせすることで、第2のフェーズにおける2次元画像に第2の関心領域を設定する。このようにして、第2の関心領域は、被検体Pの治療部位や治療部位に繋がる栄養血管や正常組織に設定される。
【0063】
ステップS18では、解析機能205cは、ステップS17で関心領域が設定された第2のフェーズの複数の2D血管画像を用いて、パラメータ値取得処理を実行する。なお、ステップS18における解析機能205cによる処理の詳細は、ステップS14で説明した解析機能205cによる処理の詳細と同様である。言い換えると、解析機能205cは、
図6を用いて説明したパラメータ値取得処理を実行する。
【0064】
ステップS18の処理により、解析機能205cは、例えば、
図7に示すパラメトリック画像データを生成する。
図7では、左側に被検体Pの3次元画像60の一例を示し、中央にステップS14で生成された第1のフェーズのパラメトリック画像62の一例を示し、右側にステップS18で生成された第2のフェーズのパラメトリック画像64の一例を示す。
【0065】
図7に示すように、3次元画像60には関心領域61が設定される。また、第1のフェーズのパラメトリック画像62及び第2のフェーズのパラメトリック画像64には、3次元画像60に設定された関心領域61を用いて、関心領域63及び関心領域65がそれぞれ設定される。
【0066】
図4に戻る。ステップS19では、解析機能205cは、指標値を算出する。例えば、解析機能205cは、ステップS14で生成されたパラメトリック画像データにおける第1の関心領域の指標値と、ステップS18で生成されたパラメトリック画像データにおける第2の関心領域の指標値とを算出する。言い換えると、解析機能205cは、第1の関心領域におけるパラメータ値と、第2の関心領域におけるパラメータ値との比を指標値として算出する。
【0067】
図8を用いて、解析機能205cによるステップS19の処理について説明する。
図8では、
図7に示す関心領域63と関心領域65とにおける時間濃度曲線の一例を示す。
図8では、横軸に各フェーズにおいて2D血管画像の取得を開始してからの経過時間を示し、縦軸に画素値を示す。
図8における時間濃度曲線63aは、
図7に示す関心領域63における画素値の平均値の時間変化を示し、
図8における時間濃度曲線65aは、
図7に示す関心領域65における画素値の平均値の時間変化を示す。
【0068】
例えば、解析機能205cは、指標値として、
図8に示す時間濃度曲線63a及び時間濃度曲線65aを算出して、ディスプレイ202に表示する。或いは、解析機能205cは、
図8に示す経過時間t1における画素値の比を値として算出して、ディスプレイ202に表示してもよい。このようにして、解析機能205cは、第1の関心領域と、第2の関心領域とにおける血流動態を解析する。
【0069】
図4に戻る。ステップS20では、取得機能205aは、治療の終了を受付けたか否かを判定する。例えば、術者は、ステップS19で算出された指標値を参照することで、治療を終了するか否かを判断する。例えば、第2のフェーズにおける癌組織への血流を示す指標値と、第1のフェーズにおける癌組織への血流を示す指標値との比率が50%未満である場合、術者は、治療を終了すると判断する。一方、術者は、指標値の比率が50%以上である場合、治療を終了しないと判断する。ここで、術者は、治療を終了すると判断した場合には、入力インターフェース201を介して治療の終了を指示する。そして、取得機能205aは、治療の終了を受付けたと判定した場合(ステップS20、Yes)、処理を終了する。
【0070】
一方、取得機能205aは、治療の終了を受付けたと判定しなかった場合(ステップS20、No)、ステップS15に移行する。これにより、術者は、例えば、指標値の比率が50%未満となるまで治療を継続する。
【0071】
上述したように、第1の実施形態では、医用画像処理装置200は、3次元画像において設定された関心領域(出力ROI)を用いて、第1のフェーズにおける複数の2次元画像に第1の関心領域を設定する。また、第1の実施形態では、医用画像処理装置200は、治療の実施より前に生成された被検体Pの3次元画像を用いて、第1のフェーズにおける複数の2次元画像に設定された第1の関心領域に対応する第2の関心領域を、第2のフェーズにおける複数の2次元画像に設定する。これにより、第1の実施形態では、術者は、手術中に2D血管画像にROIを指定する作業を省略することができる。この結果、第1の実施形態によれば、治療時における術者の負荷を軽減することができる。
【0072】
また、第1の実施形態では、医用画像処理装置200は、第1の関心領域におけるパラメータ値と、第2の関心領域におけるパラメータ値との比を指標値として算出する。ここで、第1の関心領域及び第2の関心領域として、癌組織或いは癌組織に栄養を供給する栄養血管を設定した場合、術者は、指標値を参照することで、治療の終了を客観的に判断することが可能になる。
【0073】
更に、第1の実施形態では、医用画像処理装置200は、第1の関心領域及び第2の関心領域として、正常組織を設定し、正常組織における血流動態を解析する。これにより、術者は、正常組織における治療開始直後と治療終了時とで血流動態が変化していないことを確認することが可能になる。これにより、術者は、癌組織を治療したことによる、正常組織の血流動態への影響の有無を確認することが可能になる。なお、医用画像処理装置200は、癌組織或いは癌組織に栄養を供給する栄養血管を第1の関心領域及び第2の関心領域として設定し、正常組織を第1の関心領域及び第2の関心領域として設定しなくてもよい。
【0074】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、癌組織或いは癌組織に繋がる栄養血管と、正常組織とに関心領域を設定するものとして説明した。第2の実施形態では、造影剤を注入した先の血管内に関心領域を更に設定する場合について説明する。
【0075】
なお、第2の実施形態に係る医用情報処理システム1の構成は、医用画像処理装置200の処理回路205が実行する設定機能205bの一部及び解析機能205cの一部が異なる点を除いて、
図1に示す第1の実施形態に係る医用情報処理システム1の構成と同様である。このため、第2の実施形態では、設定機能205b及び解析機能205cについて詳細に説明する。
【0076】
【0077】
まず、治療に先立ち実施される治療計画の作成時に実行される支援処理について説明する。第2の実施形態に係る受付機能205dは、治療計画の作成時に実行される支援処理として、3次元画像において関心領域の設定を受付ける。ここで、第2の実施形態では、例えば、術者は、癌組織或いは癌組織に繋がる栄養血管と、正常組織とに関心領域を設定することに加えて、治療における治療対象部位を支配する血管領域に関心領域を更に設定する。
【0078】
第2の実施形態に係る受付機能205dによる処理は、第1の実施形態と同様に、例えば、治療に先立ち実施される治療計画の作成時に実行される。また、第2の実施形態に係る受付機能205dの処理の詳細は、治療における治療対象部位を支配する血管領域に関心領域を更に設定を受付ける点を除いて、
図2を用いて説明した処理手順と同様である。
図9を用いて、受付機能205dによる関心領域の設定について説明する。
【0079】
図9では、カテーテル50と、癌組織51と、この癌組織51に栄養を供給する栄養血管(
図9中の網掛け部分)とが描出された血管構造の一例を示す。受付機能205dは、
図9に示すように、癌組織51に繋がる栄養血管の上流であって、カテーテル50の下流に関心領域53の設定を術者などの操作者から受付ける。なお、以下では説明の便宜上、治療部位に繋がる栄養血管の上流であってカテーテルの下流に設定される関心領域のことを「入力ROI」と適宜記載する。
【0080】
また、受付機能205dは、第1の実施形態と同様に、
図9に示すように、癌組織51に繋がる栄養血管に関心領域52の設定を術者などの操作者から受付ける。なお、
図9では、癌組織51に繋がる栄養血管に関心領域52の設定を受付ける場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、受付機能205dは、癌組織51に関心領域の設定を受付けるようにしてもよい。また、受付機能205dは、
図9中での図示を省略するが、正常組織の部分にも関心領域の設定を受付ける。例えば、受付機能205dは、癌組織と同じ栄養血管に繋がる正常組織にも関心領域の設定を受付ける。
【0081】
続いて、治療実施時に実行される支援処理について説明する。なお、第2の実施形態に係る治療実施時に実行される支援処理の処理手順は、関心領域設定処理(ステップS13、ステップS17)及びパラメータ値取得処理(ステップS14、ステップS18)の手順が異なる点を除いて、
図4を用いて説明した第1の実施形態に係る治療実施時に実行される支援処理の処理手順と同様である。
【0082】
以下では、第2の実施形態に係る設定機能205bによる関心領域設定処理及び解析機能205cによるパラメータ値取得処理について説明する。なお、第2の実施形態に係る取得機能205aは、第1の実施形態と同様に、被検体Pの治療の実施時の第1のフェーズにおいて時系列に複数の2次元画像を取得する。また、第2の実施形態に係る取得機能205aは、第1の実施形態と同様に、被検体Pの治療の実施時であって、第1のフェーズより後の第2のフェーズにおいて時系列に複数の2次元画像を取得する。
【0083】
第2の実施形態に係る設定機能205bは、
図4に示すステップS13において、ステップS12で取得した第1のフェーズの複数の2D血管画像に対して関心領域設定処理を実行する。ここで、設定機能205bは、3次元画像において設定された関心領域を用いて、第1のフェーズの複数の2D血管画像に第1の関心領域を設定する。
【0084】
また、第2の実施形態に係る設定機能205bは、
図4に示すステップS17において、ステップS16で取得した第2のフェーズの複数の2D血管画像に対して関心領域設定処理を実行する。ここで、設定機能205bは、第1のフェーズにおける複数の2次元画像に設定された第1の関心領域に対応する第2の関心領域を、第2のフェーズにおける複数の2次元画像に設定する。すなわち、設定機能205bは、治療の実施より前に生成された被検体Pの3次元画像を用いて、第1のフェーズにおける複数の2次元画像に設定された第1の関心領域に対応する第2の関心領域を、第2のフェーズにおける複数の2次元画像に設定する。
図10を用いて、ステップS13及びステップS17における設定機能205bによる処理の詳細について説明する。
【0085】
図10では、設定機能205bの動作を説明するフローチャートを示す。
図10に示す処理は、
図4に示すステップS13に対応する。なお、ステップS301からステップS306は、設定機能205bに対応するステップである。処理回路205が記憶回路203から設定機能205bに対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、設定機能205bが実現されるステップである。
【0086】
ステップS301では、設定機能205bは、
図5に示すステップS101と同様にして、撮影時の幾何学的情報を取得する。ステップS302では、設定機能205bは、2D血管画像と3D血管画像とから血管の中心線を抽出する。例えば、設定機能205bは、
図2のステップS4において関心領域が設定された3D血管画像と、
図4のステップS12において取得された2D血管画像を細線化処理して、血管の中心線を抽出する。
【0087】
ステップS303では、設定機能205bは、幾何学的情報に基づいて3D血管画像の血管の中心線を投影して2D投影画像を生成する。例えば、設定機能205bは、ステップS301で取得した幾何学的情報を用いて3D血管画像から抽出した血管の中心線を投影して2D投影画像を生成する。すなわち、ステップS303では、設定機能205bは、X線診断装置100によって撮影された2次元画像から抽出した血管の中心線と略同じ方向の2D投影画像を、3D血管画像の血管の中心線から生成する。
【0088】
ステップS304では、設定機能205bは、2次元画像の血管の中心線と2D投影画像とを解剖学的な特徴量を用いて位置合わせする。そして、ステップS305では、設定機能205bは、位置あわせの結果から運動ベクトルを算出する。ステップS306では、設定機能205bは、運動ベクトルに基づいて3D血管画像上の関心領域を変形して2D血管画像上に関心領域を設定する。このようにして、設定機能205bは、第1のフェーズにおける2次元画像を取得する際の幾何学的情報に基づいて、3次元画像を投影して2次元投影画像を生成する。そして、設定機能205bは、第1のフェーズにおける2次元画像における血管の中心線と2次元投影画像における血管の中心線とを位置合わせすることで、第1のフェーズにおける2次元画像に第1の関心領域を設定する。
【0089】
なお、
図4に示すステップS17に対応する処理も
図10に示す処理の手順と同様である。すなわち、ステップS17では、設定機能205bは、第2のフェーズにおける2次元画像を取得する際の幾何学的情報に基づいて、3次元画像を投影して2次元投影画像を生成する。そして、設定機能205bは、第2のフェーズにおける2次元画像における血管の中心線と2次元投影画像における血管の中心線とを位置合わせすることで、第2のフェーズにおける2次元画像に第2の関心領域を設定する。
【0090】
第2の実施形態に係る解析機能205cは、
図4に示すステップS14において、ステップS13で関心領域が設定された第1のフェーズの複数の2D血管画像を用いて、パラメータ値取得処理を実行する。また、第2の実施形態に係る解析機能205cは、
図4に示すステップS18において、ステップS17で関心領域が設定された第2のフェーズの複数の2D血管画像を用いて、パラメータ値取得処理を実行する。ここで、第2の実施形態に係る解析機能205cは、第1の関心領域における入力関数で補正した、第1のフェーズのパラメータ画像と第2のフェーズのパラメータ画像とを生成する。まず、
図11Aから
図11Cを用いて、第1の関心領域における入力関数で補正する意義について説明する。なお、
図11Aから
図11Cでは、第1のフェーズの入力ROIにおける時間濃度曲線を入力関数とする場合について説明する。
【0091】
図11Aから
図11Cでは、
図9に示す関心領域52と関心領域53とにおける時間濃度曲線の一例を示す。
図11Aでは、第1のフェーズにおける関心領域52における時間濃度曲線71と、関心領域53における時間濃度曲線70とを示す。
図9に示す例では、投与された造影剤は、関心領域53を通過した後、分岐した各血管に流出してから関心領域52に到達する。このため、
図11Aに示すように、関心領域53における時間濃度曲線70の画素値のピークから遅れて、関心領域52における時間濃度曲線71の画素値のピークが出現する。なお、
図11Aに示す例では、時間濃度曲線70のピークの画素値がPV2であり、時間濃度曲線71のピークの画素値がPV1(PV2>PV1)である。
【0092】
図11Bでは、第2のフェーズにおける関心領域52における時間濃度曲線73と、関心領域53における時間濃度曲線72とを示す。ここで、本来であれば、治療の進行に伴い関心領域52への血流量が低下する。すなわち、治療が順調に進行していれば、
図11Bに示す治療進行中の時間濃度曲線73のピークは、
図11Aに示す治療開始直後の時間濃度曲線71のピークよりも低くなるはずである。
【0093】
しかしながら、
図11Bに示す治療進行中の時間濃度曲線73のピークの画素値PV1は、
図11Aに示す治療開始直後の時間濃度曲線71のピークの画素値PV1と同じ値である。一方で、
図11Bでは、関心領域53における時間濃度曲線72のピークの画素値PV3(PV3>PV2)は、
図11Aに示す治療開始直後の時間濃度曲線70のピークの画素値PV2よりも高くなっている。すなわち、
図11Bに示す治療進行中に投与された造影剤量は、
図11Aに示す治療開始直後に投与された造影剤量よりも多くなっている。このように投与される造影剤量が治療開始直後に投与された造影剤量よりも多くなっている場合、順調に治療が進行していても、関心領域52における血流量が見掛け上低下しないことになる。
【0094】
そこで、解析機能205cは、治療開始直後における関心領域53の時間濃度曲線70を用いて、第1のフェーズの2D血管画像と、第2のフェーズの2D血管画像とを補正する。
図11Cは、治療開始直後における関心領域53の時間濃度曲線70を用いて、
図11Bに示す時間濃度曲線72を補正した時間濃度曲線72aと、時間濃度曲線73を補正した時間濃度曲線73aとを示す。
【0095】
図11Cに示すように、関心領域53における補正後の時間濃度曲線72aのピークの画素値PV2は、
図11Aに示す治療開始直後の時間濃度曲線70のピークの画素値PV2と同じ値である。すなわち、
図11Cでは、治療開始直後に投与された造影剤量と治療進行中に投与された造影剤量とを揃えたうえで治療部位の血流量を評価することが可能になる。
図11Cに示す例では、治療部位である関心領域52における補正後の時間濃度曲線73aのピークの画素値PV4(PV4<PV1)は、
図11Aに示す治療開始直後の時間濃度曲線71のピークの画素値PV1よりも低下している。
【0096】
続いて、
図12を用いて、第2の実施形態に係る解析機能205cによるパラメータ値取得処理の処理手順について説明する。
図12に示す処理は、
図4に示すステップS14及びステップS18に対応する。なお、ステップS401からステップS403は、解析機能205cに対応するステップである。処理回路205が記憶回路203から解析機能205cに対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、解析機能205cが実現されるステップである。
【0097】
ステップS401では、解析機能205cは、2D血管画像を入力関数で補正する。すなわち、解析機能205cは、第1のフェーズの入力ROIにおける時間濃度曲線を入力関数として、2D血管画像を正規化する。なお、
図12に示すステップS402からステップS404は、
図6に示すステップS201からステップS203にそれぞれ対応する。
【0098】
図12に示す処理により、解析機能205cは、例えば、
図13に示すパラメトリック画像データを生成する。
図13では、左側に被検体Pの3次元画像80の一例を示し、中央にステップS14で生成された第1のフェーズのパラメトリック画像83の一例を示し、右側にステップS18で生成された第2のフェーズのパラメトリック画像86の一例を示す。
【0099】
図13に示すように、3次元画像80には関心領域81(入力ROI)と、関心領域82(出力ROI)とが設定される。また、第1のフェーズのパラメトリック画像83には、3次元画像80に設定された関心領域81及び関心領域82を用いて、関心領域84及び関心領域85がそれぞれ設定される。また、第2のフェーズのパラメトリック画像86には、3次元画像80に設定された関心領域81及び関心領域82を用いて、関心領域87及び関心領域88がそれぞれ設定される。
【0100】
ここで、
図13に示すパラメトリック画像83及びパラメトリック画像86では、投与される造影剤量が正規化されている。このため、術者は、例えば、関心領域85と関心領域88とにおけるカラーコードを比較することにより、治療部位への血流量が低下しているか否かを判断することが可能になる。
【0101】
上述したように、第2の実施形態では、医用画像処理装置200は、3次元画像において設定された関心領域(入力ROI)を用いて、第1のフェーズにおける複数の2次元画像に第1の関心領域を設定する。また、第2の実施形態では、医用画像処理装置200は、治療の実施より前に生成された被検体Pの3次元画像を用いて、第1のフェーズにおける複数の2次元画像に設定された第1の関心領域に対応する第2の関心領域を、第2のフェーズにおける複数の2次元画像に設定する。これにより、第2の実施形態では、術者は、手術中に2D血管画像にROIを指定する作業を省略することができる。この結果、第2の実施形態によれば、治療時における術者の負荷を軽減することができる。
【0102】
また、第2の実施形態では、医用画像処理装置200は、造影剤を注入した先の血管内に関心領域(入力ROI)を設定することにより、入力関数として時間濃度曲線(AIF:Arterial input function)を取得する。また、第2の実施形態では、医用画像処理装置200は、組織に関心領域(出力ROI)を設定して時間濃度曲線を取得する。そして、第2の実施形態では、医用画像処理装置200は、出力値を入力値で補正する。このように、第2の実施形態では、医用画像処理装置200は、第1のフェーズの入力ROIで正規化したパラメトリック画像を生成する。これにより、投与される造影剤量が異なっていても、指標値を正当に比較することが可能になる。この結果、第2の実施形態によれば、術者は、精度よく血行動態を把握することが可能になる。すなわち、第2の実施形態によれば、術者は、治療前後での比較精度を向上させることが可能になる。
【0103】
更に、第2の実施形態では、出力ROIの指標値を算出しなくても、パラメトリック画像中における出力ROIに該当する部分を参照することにより、治療の終了を客観的に判断することが可能になる。なお、上述した第2の実施形態において、解析機能205cは、第1の関心領域における血流量と、第2の関心領域における血流量とを算出するようにしてもよい。
【0104】
なお、上述した第2の実施形態では、受付機能205dは、入力ROIと出力ROIとを受付ける場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、受付機能205dは、入力ROIのみを受付けるようにしてもよい。
【0105】
(第3の実施形態)
上述した第1の実施形態及び第2の実施形態では、治療計画時に被検体Pの3次元画像を用いて関心領域を設定しておくことにより、第1のフェーズにおける複数の2次元画像に第1の関心領域を設定し、この第1の関心領域に対応する第2の関心領域を、第2のフェーズにおける複数の2次元画像に設定する場合について説明した。しかしながら、治療計画時に被検体Pの3次元画像を取得できない場合や、治療計画時に被検体Pの3次元画像に関心領域を設定しない場合が生じることもある。
【0106】
そこで、第3の実施形態では、第1のフェーズの2D血管画像において入力ROIを第1の関心領域として設定し、この第1の関心領域に対応する第2の関心領域を第2のフェーズの2D血管画像に設定する場合について説明する。また、第3の実施形態では、治療開始直後の第1フェーズでのX線診断装置100による撮影角度と、第2のフェーズでのX線診断装置100による撮影角度とが異なるものとして説明する。なお、第3の実施形態に係る医用情報処理システム1の構成は、医用画像処理装置200の処理回路が実行する受付機能205dの一部及び設定機能205bの一部が異なる点を除いて、
図1に示す第1の実施形態に係る医用情報処理システム1の構成と同様である。このため、第3の実施形態では、受付機能205d及び設定機能205bについて詳細に説明する。
【0107】
図14は、第3の実施形態に係る処理回路205による処理手順を示すフローチャートである。
図14に示す処理は、治療実施時に実行される支援処理である。なお、第3の実施形態では、治療に先立ち実施される治療計画の作成時には支援処理は実行されない。
【0108】
ステップS501、ステップS502、ステップS506、ステップS507及びステップS410は、取得機能205aに対応するステップである。処理回路205が記憶回路203から取得機能205aに対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、取得機能205aが実現されるステップである。ステップS501では、取得機能205aは、治療の開始を受付けたか否かを判定する。ここで、取得機能205aは、治療の開始を受付けたと判定しなかった場合(ステップS501、No)、ステップS501の処理を繰り返す。
【0109】
一方、取得機能205aは、治療の開始を受付けたと判定した場合(ステップS501、Yes)、第1のフェーズの2D血管画像を取得する(ステップS502)。なお、
図14に示すステップS402の処理は、
図4に示すステップS12の処理と同様である。
【0110】
ステップS503は、受付機能205dに対応するステップである。処理回路205が記憶回路203から受付機能205dに対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、受付機能205dが実現されるステップである。ステップS503では、受付機能205dは、ステップS502で取得した第1のフェーズの2D血管画像に第1の関心領域の設定を受付ける。すなわち、受付機能205dは、第1のフェーズにおける2次元画像において第1の関心領域の設定を受付ける。なお、受付機能205dは、第1の関心領域として入力ROIを受付けるものとして説明する。
【0111】
ステップS504、及びステップS508は、設定機能205bに対応するステップである。処理回路205が記憶回路203から設定機能205bに対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、設定機能205bが実現されるステップである。ステップS504では、設定機能205bは、3D血管画像に関心領域を設定する。例えば、設定機能205bは、ステップS2と同様にして3D血管画像を取得する。そして、設定機能205bは、ステップS503で設定を受付けた第1の関心領域に対応する関心領域を、3D血管画像に設定する。すなわち、設定機能205bは、3次元画像において第1の関心領域に対応する関心領域を設定する。
【0112】
一例をあげると、設定機能205bは、ステップS503で設定を受付けた第1の関心領域を元に、3D血管画像において第1の関心領域に相当する位置を予測する。ここで、一般的に入力ROIは血管内に設定されるので、候補はいくつもあるわけではない。このため、設定機能205bは、入力ROIが一意に決まる場合、この一意に決まる位置を入力ROIに対応する関心領域に設定する。また、設定機能205bは、入力ROIの候補が2個以上ある場合、ユーザーから選択を受付けるようにしてもよい。
【0113】
ステップS505及びステップS509は、解析機能205cに対応するステップである。処理回路205が記憶回路203から解析機能205cに対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、解析機能205cが実現されるステップである。ステップS505では、解析機能205cは、ステップS503で第1の関心領域が設定された第1のフェーズの複数の2D血管画像を用いて、パラメータ値取得処理を実行する。なお、ステップS505における解析機能205cによる処理の詳細は、ステップS14で説明した解析機能205cによる処理の詳細と同様である。言い換えると、解析機能205cは、
図6を用いて説明したパラメータ値取得処理を実行する。
【0114】
ステップS506では、取得機能205aは、第2のフェーズの撮影が開始されたか否かを判定する。取得機能205aは、第2のフェーズの撮影が開始されたと判定しなかった場合(ステップS506、No)、ステップS506の処理を繰り返す。
【0115】
一方、取得機能205aは、第2のフェーズの撮影が開始されたと判定した場合(ステップS506、Yes)、第2のフェーズの2D血管画像を取得する(ステップS507)。なお、ステップS507における取得機能205aによる処理の詳細は、ステップS16で説明した取得機能205aによる処理の詳細と同様である。
【0116】
ステップS508では、設定機能205bは、ステップS507で取得した第2のフェーズの複数の2D血管画像に対して関心領域設定処理を実行する。ここで、設定機能205bは、第1の関心領域に対応する関心領域として3次元画像において設定された関心領域に基づいて、第2のフェーズにおける2次元画像に第2の関心領域を設定する。すなわち、設定機能205bは、治療の実施より前に生成された被検体Pの3次元画像を用いて、第1のフェーズにおける複数の2次元画像に設定された第1の関心領域に対応する第2の関心領域を、第2のフェーズにおける複数の2次元画像に設定する。なお、ステップS508における設定機能205bによる処理の詳細は、ステップS13で説明した設定機能205bによる処理の詳細と同様である。言い換えると、設定機能205bは、
図10を用いて説明した関心領域設定処理を実行する。すなわち、設定機能205bは、第2のフェーズにおける2次元画像を取得する際の幾何学的情報に基づいて、3次元画像を投影して2次元投影画像を生成する。そして、設定機能205bは、第2のフェーズにおける2次元画像における血管の中心線と2次元投影画像における血管の中心線とを位置合わせすることで、第2のフェーズにおける2次元画像に第2の関心領域を設定する。なお、設定機能205bは、第1のフェーズの複数の2D血管画像と第2のフェーズの複数の2D血管画像とが同じ角度で撮影されている場合には、3D血管画像を用いなくても、第1の関心領域を拡大したり縮小したり位置をずらしたりするだけで第2の関心領域を設定することが可能である。
【0117】
ステップS509では、解析機能205cは、ステップS508で関心領域が設定された第2のフェーズの複数の2D血管画像を用いて、パラメータ値取得処理を実行する。なお、ステップS509における解析機能205cによる処理の詳細は、ステップS14で説明した解析機能205cによる処理の詳細と同様である。言い換えると、解析機能205cは、
図12を用いて説明したパラメータ値取得処理を実行する。
【0118】
ステップS509の処理により、解析機能205cは、例えば、
図15に示すパラメトリック画像データを生成する。
図15は、第3の実施形態を説明するための図である。
図15では、左側に被検体Pの3次元画像90の一例を示し、中央にステップS505で生成された第1のフェーズのパラメトリック画像93の一例を示し、右側にステップS509で生成された第2のフェーズのパラメトリック画像96の一例を示す。
【0119】
図15に示すように、第1のフェーズのパラメトリック画像93には関心領域94(入力ROI)が設定される。そして、3次元画像90には関心領域94に対応する関心領域91(入力ROI)が設定される。また、第2のフェーズのパラメトリック画像96には、3次元画像90に設定された関心領域91を用いて、関心領域97が設定される。なお、
図15中には、出力ROIとしては設定されていないが、癌組織92、癌組織95及び癌組織98を図示している。
【0120】
ここで、
図15に示すパラメトリック画像93及びパラメトリック画像96では、投与される造影剤量が正規化されている。このため、術者は、例えば、癌組織95と癌組織98とにおけるカラーコードを比較することにより、治療部位への血流量が低下しているか否かを判断することが可能になる。
【0121】
図14に戻る。ステップS410では、取得機能205aは、治療の終了を受付けたか否かを判定する。例えば、術者は、ステップS509で生成されたパラメトリック画像を参照することで、治療を終了するか否かを判断する。例えば、第2のフェーズにおける癌組織への血流量が、第1のフェーズにおける癌組織への血流量より優位に低下している場合、術者は、治療を終了すると判断する。ここで、術者は、治療を終了すると判断した場合には、入力インターフェース201を介して治療の終了を指示する。そして、取得機能205aは、治療の終了を受付けたと判定した場合(ステップS410、Yes)、処理を終了する。
【0122】
一方、取得機能205aは、治療の終了を受付けたと判定しなかった場合(ステップS410、No)、ステップS506に移行する。これにより、術者は、例えば、第2のフェーズにおける癌組織への血流量が、第1のフェーズにおける癌組織への血流量より優位に低下するまで治療を継続する。
【0123】
上述したように、第3の実施形態では、医用画像処理装置200は、第1のフェーズにおける複数の2次元画像に第1の関心領域の設定を受付ける。そして、医用画像処理装置200は、治療の実施より前に生成された被検体Pの3次元画像を用いて、第1のフェーズにおける複数の2次元画像に設定された第1の関心領域に対応する第2の関心領域を、第2のフェーズにおける複数の2次元画像に設定する。これにより、第3の実施形態によれば、第1のフェーズにおける2D血管画像の撮影角度と、第2のフェーズにおける2D血管画像の撮影角度とが変更されている場合でも、術者は、第2のフェーズの2D血管画像にROIを指定する作業を省略することができる。
【0124】
なお、
図14に示す例では、出力ROIの設定を受付けないものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、
図14に示すステップS503において、受付機能205dは、入力ROIと共に出力ROIの設定を受付けてもよい。かかる場合、解析機能205cは、ステップS509でパラメータ値取得処理を実行した後に、指標値を更に算出するようにしてもよい。また、
図14に示すステップS503において、受付機能205dは、入力ROIを受付けずに出力ROIのみの設定を受付けてもよい。
【0125】
(その他の実施形態)
実施形態は、上述した実施形態に限られるものではない。
【0126】
上述した実施形態では、医用画像処理装置200において、支援処理を実行する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、X線診断装置100において、支援処理を実行してもよい。かかる場合、X線診断装置100の処理回路21は、上述した第1の実施形態から第3の実施形態に係る医用画像処理装置200の処理回路205と同様の支援処理を実行する。すなわち、X線診断装置100において、支援処理を実行する場合、処理回路21は、取得機能21aと、設定機能21bと、解析機能21cと、受付機能21dとを実行する。ここで、例えば、取得機能21aは、上述した取得機能205aと同様の処理を実行する。設定機能21bは、上述した設定機能205bと同様の処理を実行する。解析機能21cは、上述した解析機能205cと同様の処理を実行する。受付機能21dは、上述した受付機能205dと同様の処理を実行する。
【0127】
また、上述した実施形態では、医用情報処理システム1には、インジェクター30が含まれる場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、医用情報処理システム1には、インジェクター30が含まれなくてもよい。かかる場合、造影剤は、術者によって被検体Pに注入される。
【0128】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0129】
上記の実施形態の説明において、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0130】
また、上記の実施形態で説明した制御方法は、予め用意された制御プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この制御プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この制御プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0131】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、治療時における術者の負荷を軽減することができる。
【0132】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0133】
1 医用情報処理システム
200 医用画像処理装置
205 処理回路
205a 取得機能
205b 設定機能
205c 解析機能
205d 受付機能