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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】内装シート、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/07 20060101AFI20220314BHJP
   E04F 15/16 20060101ALI20220314BHJP
   E04F 15/10 20060101ALI20220314BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20220314BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
E04F13/07 B
E04F15/16 A
E04F15/10 104A
E04F15/10 104E
B32B3/30
B32B27/00 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017254123
(22)【出願日】2017-12-28
(65)【公開番号】P2019120014
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000222495
【氏名又は名称】東リ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】特許業務法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松川 尭彦
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-135236(JP,A)
【文献】特開平04-133800(JP,A)
【文献】特開平07-229269(JP,A)
【文献】特公昭59-019012(JP,B2)
【文献】特開2015-063854(JP,A)
【文献】特開2010-234766(JP,A)
【文献】特開昭61-060953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/00-13/30
E04F 15/00-15/22
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面側から順に、表層、着色印刷層、合成樹脂層及び繊維補強層を有するシート本体と、前記シート本体の表面に形成され且つ凹み傾斜部と最深部とから構成される凹部と、を有し、
前記表層及び合成樹脂層が、主成分樹脂として塩化ビニル系樹脂を含み、前記合成樹脂層の厚みが100μm~1.2mmであり、前記着色印刷層が、前記合成樹脂層の表面に設けられた印刷インキによって形成された厚み0.2μm~20μmのインキ固化層からなり、
記合成樹脂層が、前記着色印刷層の一部又は全部とは異なる色彩を有し、
前記着色印刷層が、前記凹部の凹み傾斜部に対応した領域において、前記最深部に向かって次第に薄肉状に形成された漸減部を有する、内装シート。
【請求項2】
前記凹部が、平面視で第1方向に直線状に延びる部分と、平面視で前記第1方向と直交する方向である第2方向に直線状に延びる部分と、を有し、前記凹部によって囲われた範囲が、平面視長方形状又は正方形状を成し、前記凹部の最深部が、平坦面を成している、請求項1に記載の内装シート。
【請求項3】
前記合成樹脂層が、前記着色印刷層の裏面側に積層された第1樹脂層と、前記第1樹脂層の裏面側に積層された第2樹脂層と、を有し、
前記第2樹脂層の裏面側に前記繊維補強層が積層されている、請求項1または2に記載の内装シート。
【請求項4】
前記着色印刷層が、前記凹部の最深部に対応した領域において、最も薄肉に形成された最薄部を有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の内装シート。
【請求項5】
前記凹部の最深部に対応した領域に、着色印刷層を有さない、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の内装シート。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の内装シートの製造方法であって、
着色印刷層である厚み0.2μm~20μmのインキ固化層が厚み100μm~1.2mmの合成樹脂層の表面に形成されたフィルムを準備する工程、
表面側から順に、表層と、前記着色印刷層及び合成樹脂層を有する前記フィルムと、繊維補強層と、を有する積層体を準備する準備工程、
前記積層体の表面側からエンボス突起を有するエンボス版を押圧して前記積層体の表面に、凹み傾斜部と最深部とから構成される凹部を形成するエンボス工程、を有し、
前記エンボス工程において、前記着色印刷層であるインキ固化層の厚みが前記凹み傾斜部から最深部に向かって次第に薄くなるように、前記エンボス版の押圧力によって前記着色印刷層のうち前記エンボス突起に対応する部分を引き延ばしながら前記凹部を形成する、内装シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に凹部が形成されている内装シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の床材、壁材、天井材などの建築物用の内装シートとして、合成樹脂を主体とするシートが用いられている。
また、凹みが表面に形成されている内装シートも知られている。
内装シートの表面に凹みを形成する方法としては、発泡抑制剤を用いたケミカルエンボス法、エンボス版を押圧するメカニカルエンボス法が知られている。前記ケミカルエンボス法は、凹部を形成したい部分に発泡抑制剤を含有させることにより、発泡させた部分を凸部とし且つ発泡させない部分を凹部として形成する方法である。
しかしながら、ケミカルエンボス法は、非発泡の内装シートに適用できない上、境界が曖昧な凸部及び凹部が形成され、全体的になだらかな凹凸を有する表面形状になり易い。
メカニカルエンボス法は、非発泡及び発泡の何れの内装シートにも形成でき、比較的シャープな形状を有する凹凸を形成できるが、内装シートに表出されるデザインと凹凸を一致させることが困難である。
【0003】
特許文献1には、エンボス凹部がその他の部分と異なる模様及び色調となるようにするために、合成樹脂製基材層、印刷層及び表面層からなる合成樹脂製床材であって、表面層が合成樹脂と耐熱性透明粒子とから形成されており、また、部分的にエンボスされた凹部を有しており、前記凹部は透明粒子が印刷層を貫通して基材層内に埋没しているエンボス床材が開示されている。
特許文献1には、エンボスロールなどで積層体を型押してエンボス凹部を形成することにより、凹部に対応する表面層の粒子が樹脂層内に埋入して印刷が破壊され、樹脂層内に混入されて消失し、エンボス凹部が、その他の部分と異なる模様及び色調となり、あたかも谷染エンボスが施されたと同様の効果を有すると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公平6-043748号公報
【発明の概要】
【0005】
特許文献1の方法は、透明粒子を含む表面層をエンボスロールにて型押しすることにより、その透明粒子を鉛直方向に強制的に移動させて印刷層に埋入させることにより、エンボス凹部に対応した箇所の印刷を断裂させて消失させるものである。
しかしながら、かかる透明粒子を鉛直方向に移動させて印刷層に強制的に埋入させると、エンボス凹部の最深部と凹み傾斜部との境界において印刷層が分断され、エンボス凹部の最深部に対応して印刷層が存在せず、凹み傾斜部に対応して分断された印刷層の端面が生じる。このように凹み傾斜部において印刷層のない領域が存在すると、デザイン的に不自然な印象を与える外観となるという問題点がある。
また、透明粒子によって印刷層を断裂させるために、表面層に比較的大粒径の透明粒子を多量に含有させなければならず、表面の防汚性が低下し、滑らかな表面意匠が得られないおそれがある。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、凹部の最深部と凹み傾斜部の境界が目立ち難く、凹部の最深部から表出される色彩が着色印刷層のデザインに自然な感じで取り込まれた外観を有する内装シート及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の内装シートは、面側から順に、表層、着色印刷層、合成樹脂層及び繊維補強層を有するシート本体と、前記シート本体の表面に形成され且つ凹み傾斜部と最深部とから構成される凹部と、を有し、前記表層及び合成樹脂層が、主成分樹脂として塩化ビニル系樹脂を含み、前記合成樹脂層の厚みが100μm~1.2mmであり、前記着色印刷層が、前記合成樹脂層の表面に設けられた印刷インキによって形成された厚み0.2μm~20μmのインキ固化層からなり、記合成樹脂層が、前記着色印刷層の一部又は全部とは異なる色彩を有し、前記着色印刷層が、前記凹部の凹み傾斜部に対応した領域において、前記最深部に向かって次第に薄肉状に形成された漸減部を有する。
【0008】
本発明の好ましい内装シートは、前記凹部が、平面視で第1方向に直線状に延びる部分と、平面視で前記第1方向と直交する方向である第2方向に直線状に延びる部分と、を有し、前記凹部によって囲われた範囲が、平面視長方形状又は正方形状を成し、前記凹部の最深部が、平坦面を成している
本発明の好ましい内装シートは、前記合成樹脂層が、前記着色印刷層の裏面側に積層された第1樹脂層と、前記第1樹脂層の裏面側に積層された第2樹脂層と、を有し、前記第2樹脂層の裏面側に繊維補強層が積層されている。
本発明の好ましい内装シートは、前記着色印刷層が、前記凹部の最深部に対応した領域において、最も薄肉に形成された最薄部を有する。
本発明の好ましい内装シートは、前記凹部の最深部に対応した領域に、着色印刷層を有さない。
【0009】
本発明の別の局面によれば、内装シートの製造方法を提供する。
本発明の製造方法は、上記何れかに記載の内装シートの製造方法であって、着色印刷層である厚み0.2μm~20μmのインキ固化層が厚み100μm~1.2mmの合成樹脂層の表面に形成されたフィルムを準備する工程、表面側から順に、表層と、前記着色印刷層及び合成樹脂層を有する前記フィルムと、繊維補強層と、を有する積層体を準備する準備工程、前記積層体の表面側からエンボス突起を有するエンボス版を押圧して前記積層体の表面に、凹み傾斜部と最深部とから構成される凹部を形成するエンボス工程、を有し、前記エンボス工程において、前記着色印刷層であるインキ固化層の厚みが前記凹み傾斜部から最深部に向かって次第に薄くなるように、前記エンボス版の押圧力によって前記着色印刷層のうち前記エンボス突起に対応する部分を引き延ばしながら前記凹部を形成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の内装シートは、凹部の最深部と凹み傾斜部の境界が目立ち難く、凹部の最深部から表出される色彩が着色印刷層に自然な感じで取り込まれた外観を有する。このような内装シートは、デザイン上、凹部と着色印刷層の色彩が一体となり、装飾性に優れている。
また、請求項2に記載の内装シートは、タイル調の外観を有し、例えば、台所、浴室などの床面や壁面に施工する床シート又は壁シートとして好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態の内装シートの一部省略平面図。
図2図1のII-II線で切断した拡大断面図。
図3図2の一部分をさらに拡大した断面図。
図4】凹部の形態の変形例を示す拡大断面図。
図5】本発明の第2実施形態の内装シートの拡大断面図。
図6図5の一部分をさらに拡大した断面図。
図7】内装シートの製造時における積層体の準備工程を示す断面図。
図8】内装シートの製造時における積層体のエンボス工程を示す断面図。
図9】実施例1の内装シートの製造過程を示す断面図。
図10】実施例2の内装シートの製造過程を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について、適宜図面を参照しつつ説明する。
本明細書において、平面視は、水平方向に対して直交する方向から内装シートの表面を見ることをいい、平面視形状は、その平面視における形状をいう。また、断面視形状は、内装シートを厚み方向で切断したときの形状をいう。
本明細書において、「下限値X~上限値Y」で表される数値範囲は、下限値X以上上限値Y以下を意味する。前記数値範囲が別個に複数記載されている場合、任意の下限値と任意の上限値を選択し、「任意の下限値~任意の上限値」を設定できるものとする。
【0013】
[内装シートの概要]
図1乃至図3において、内装シート1は、シート本体2と、そのシート本体2の表面に設けられた複数の凹部3と、を有する。
本発明の内装シート1は、図1に示すように、長尺帯状に形成されていてもよく、或いは、枚葉状に形成されていてもよい。前記長尺帯状は、1つの方向の長さが他の方向よりも十分に長い平面視略長方形状をいう。長尺帯状の内装シート1は、例えば、第1方向の長さが1000mm~4000mmで、第2方向の長さが5m以上であり、好ましくは、第2方向の長さが10m以上である。なお、第1方向は、第2方向と直交する方向である。
前記枚葉状は、例えばタイル床材のような平面視で略矩形状などの略多角形状などの所定形状に形成されているものであり、一般に、積み重ねて保管・運搬できる形状をいう。枚葉状の内装シートは、例えば、第1方向の長さが200mm~1000mm、第2方向の長さが200mm~1000mmの略矩形状などが挙げられる。
【0014】
[シート本体]
シート本体2は、柔軟性を有するものでもよく、容易に曲がらない柔軟性を有さないものでもよい。内装シート1を簡易に保管・運搬でき、施工時に浴室内に容易に搬入できるようにするため、シート本体2は、例えば、直径20cmの芯材にロール状に巻き取ることができるような柔軟性を有するシートから形成されていることが好ましい。シート本体2は、非発泡体のみから構成されていてもよく、発泡体を含んでいてもよい。
シート本体2の厚みは、特に限定されず、例えば、1.0mm~10mmであり、好ましくは、1.8mm~4.0mmである。ただし、前記シート本体2の厚みは、凹部3に対応する領域の厚みを除く。
シート本体2は、表面側から順に、表層4、着色印刷層5及び合成樹脂層6を有する。シート本体2は、必要に応じて、これら以外の層を有していてもよい。例えば、合成樹脂層6の裏面側に繊維補強層7を積層してもよく、或いは、合成樹脂層6の裏面側(前記繊維補強層7が積層されている場合には繊維補強層7の裏面側)にバッキング層8や補強層などを積層してもよく、或いは、表層4の表面に保護層41を積層してもよい。また、合成樹脂層6は、1層でもよく、2層以上で構成されていてもよい。
図示例のシート本体2は、表面側から順に、保護層41、表層4、着色印刷層5、2層構造の合成樹脂層6、繊維補強層7及びバッキング層8を有する。
保護層41は、シート本体2(内装シート1)の最表面を構成している。なお、保護層41を有さない場合には、表層4がシート本体2(内装シート1)の最表面を構成する。
【0015】
<表層>
表層4は、例えば、樹脂を含む層から形成される。表層4は、有色透明でもよいが、無色透明であることが好ましい。表層4は、着色印刷層5の表面に直接的に接着されている。また、表層4は、非発泡である。
表層4は、1層で構成されていてもよく、2層以上の多層構造であってもよい。
図示例の表層4は、1層構造である。
表層4は、主成分樹脂を含み、必要に応じて、主成分樹脂以外の樹脂及び各種添加剤が含まれていてもよい。前記添加剤としては、従来公知のものを使用でき、例えば、充填剤、可塑剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの耐候剤、粒子タイプではない滑剤、防黴剤などが挙げられる。好ましくは、表層4は、添加剤として耐候剤を含む。前記耐候剤としては、2-4-ジヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、エチル-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレートなどのアクリレート系紫外線吸収剤、フェニルサリシレートなどのサリシレート系紫外線吸収剤、2-エトキシ-2’-エチルオキザリックアシドビスアニリドなどのオキザニリド系紫外線吸収剤などが挙げられる。
本明細書において、主成分樹脂は、その層を構成する樹脂成分中で質量が最も多い樹脂成分(重量比)をいう。
表層4は、特許文献1のような微粒子を実質的に含まないことが好ましい。表層4に特許文献1などの微粒子が含まれていると、凹部3の形成時に、その微粒子によって着色印刷層5が断裂されてしまい、着色印刷層5を引き延ばして薄肉状に形成することが困難となる。特に、前記微粒子の粒径が大きい場合には凹部形成の妨げとなるおそれがあり、例えば、粒径が30μm以上、さらに、50μm以上の微粒子が含まれていると凹部形成の妨げとなる。また、表層が前記微粒子を実質的に含まないことによって、表層4の表面を比較的滑らかに形成することができ、木材や石材のような滑らかな質感や意匠を再現することも可能である。
なお、前記微粒子を実質的に含まないとは、不可避的に含まれる程度の微量の微粒子の混入は許容され、有意な量の混入は除外されるという意味である。
【0016】
表層4を形成する主成分樹脂としては、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂などが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、塩化ビニルや塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル系樹脂;ポリオレフィン系樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル系樹脂;エチレン-メタクリレート樹脂などのアクリル系樹脂;ポリアミド系樹脂;エステル系樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーなどの各種の熱可塑性エラストマー;などが挙げられる。
耐水性及び柔軟性に優れることから、表層4は、熱可塑性樹脂から形成されていることが好ましく、さらに、エンボス版を押圧した際に良好に変形することから、主成分樹脂として塩化ビニル系樹脂を含むものから形成されていることがより好ましい。
【0017】
ここで、本発明で用いることができる塩化ビニル系樹脂を簡単に説明する。
塩化ビニル系樹脂は、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法などで製造されたものが挙げられる。加工し易く且つ取り扱い易いことから、乳化重合法、又は、懸濁重合法で得られる塩化ビニル系樹脂が好ましい。これらの塩化ビニル系樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
前記乳化重合法で得られる塩化ビニル系樹脂は、多数の微粒子集合体からなる基本粒子径数μm以下(好ましくは1~3μm)の微細粉末の表面に界面活性剤がコーティングされたものであり、可塑剤などを配合することによってペースト状になるものである。前記乳化重合法による塩化ビニル系樹脂は、その平均重合度が1000~2000程度のものが好ましく用いられる。
前記懸濁重合法で得られる塩化ビニル系樹脂は、好ましくは20~100μmの微細粉末であり、カレンダー成形法にてシート加工されて使用されるものである。カレンダー成形法に適したロールタック性を付与できる点から、前記懸濁重合法による塩化ビニル系樹脂は、その平均重合度が700~1500程度のものが好ましく、更に700~1000程度のものがより好ましい。
以下、乳化重合法で得られる塩化ビニル系樹脂を「ペースト塩化ビニル」、懸濁重合法で得られる塩化ビニル系樹脂を「サスペンジョン塩化ビニル」という場合がある。
【0018】
ペースト塩化ビニル樹脂は、製造時の加工性がよく、材料コストが安価である。サスペンジョン塩化ビニルは、吸水白化が生じにくく、耐汚れ性も良好であり、室内のみならず屋外でも好適に使用可能である。
表層4に用いる塩化ビニル系樹脂としては、ペースト塩化ビニル又は/及びサスペンジョン塩化ビニルが好ましい。
【0019】
前記表層4の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.1mm~1.0mmであり、好ましくは、0.15mm~0.5mmであり、より好ましくは、0.2mm~0.4mmである。
【0020】
<保護層>
保護層41は、例えば、樹脂を含む層から形成される。保護層41は、有色透明でもよいが、無色透明であることが好ましい。保護層41は、表層4の表面に直接的に接着され、表層4を保護する。また、保護層41は、非発泡である。
保護層41を形成する主成分樹脂としては、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂、紫外線硬化型樹脂などの電離線硬化型樹脂などが挙げられる。耐傷付き性などの観点から、保護層41は、紫外線硬化型樹脂などの電離線硬化型樹脂から形成されていることが好ましい。
電子線硬化型樹脂としては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールの縮合物などの不飽和ポリエステル類、ポリエステルメタクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリオールメタクリレート、メラミンメタクリレートなどのメタクリレート類、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレートなどの紫外線硬化型樹脂などが挙げられる。
着色印刷層5との間に表層4が介在していること及び凹部形成後に保護層を形成することもできることから、保護層41には、アルミナなどの微粒子が含まれていてもよい。なお、保護層41は、微粒子を含まないものでもよい。また、保護層41には、必要に応じて、<表層>の欄に例示したような添加剤が含まれていてもよく、特に、耐候剤が含まれていることにより、内装シートの最表面における耐候性が向上する。
保護層41の厚みは、特に限定されず、例えば、5μm~100μmであり、好ましくは10μm~50μmである。ただし、保護層41の厚みは、凹部3に対応する領域の厚みを除く。
【0021】
<着色印刷層>
着色印刷層5は、内装シートのデザインとなる色彩を表示するための層である。着色印刷層5は、例えば、従来公知の印刷インキによって形成できる。印刷インキから形成された着色印刷層5は、インキ固化層からなる。着色印刷層5は、合成樹脂層6の表面に直接的に接着されている。換言すると、着色印刷層5は、表層4と合成樹脂層6の間に積層されている。
着色印刷層5は、1色又は多色で所望のデザインなどが表されている。着色印刷層5が1色である場合、1色のインキをベタ状に設ける、或いは、濃淡のある1色のインキを塗り分ける、或いは、1色のインキとインキ無し部分を混在させる、或いは、これらの組み合わせなどの手法でデザインを表すことができる。
着色印刷層5を構成するインキは、顔料又は染料などの着色剤、樹脂成分及び必要に応じて添加剤を含む。インキの樹脂成分は特に限定されず、例えば、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂などが挙げられる。エンボス版を押圧した際に、着色印刷層5が引き延ばされ易くなることから、比較的軟らかい着色印刷層5(インキ固化層)が好ましく、このようなインキとしては、樹脂成分として塩化ビニル系樹脂を含むものが好ましい。着色印刷層5の塩化ビニル系樹脂としては、<表層>の欄に記載したものが挙げられ、特に、ペースト塩化ビニル又は/及びサスペンジョン塩化ビニルを用いることが好ましい。また、着色印刷層5には、必要に応じて、<表層>の欄に例示したような添加剤が含まれていてもよく、特に、耐候剤が含まれていることにより、着色印刷層5の耐候性が向上する。
前記着色印刷層5の厚みは特に限定されないが、例えば、0.2μm~20μmであり、好ましくは0.4μm~10μmである。ただし、前記着色印刷層5の厚みは、凹部3に対応する領域の厚みを除くものであり、後述する凸部に対応した着色印刷層5の厚みをいう。
【0022】
<合成樹脂層>
合成樹脂層6は、着色印刷層5を定着させるために設けられている。さらに、合成樹脂層6は、凹部3の最深部32の色彩を呈する背景色層としても機能する。
合成樹脂層6は、繊維補強層7(繊維補強層7を有さない場合にはバッキング層8)の表面に直接的に接着されている。
合成樹脂層6は、有色透明又は有色不透明であり、好ましくは有色不透明である。つまり、合成樹脂層6は、色彩を有する。合成樹脂層6の色彩は、着色印刷層5の一部又は全部の色彩とは異なり、好ましくは、着色印刷層5の全部の色彩とは異なる。着色印刷層5の裏面側に、着色印刷層5の色彩とは異なる有色の合成樹脂層6が配置されていることにより、着色印刷層5に起因する色彩の中に、凹部3の最深部32において合成樹脂層6の色彩が表出し、外観上、凹部3が目立つようになる。
また、合成樹脂層6は、着色印刷層5に比して明度が高い色彩を有していてもよく、或いは、着色印刷層5に比して明度が低い色彩を有していてもよい。合成樹脂層6が着色印刷層5に比して明度が高い色彩を有していることにより、凹部3の最深部32から表出される色彩が着色印刷層5との関係で際立つようになる。
【0023】
また、合成樹脂層6は、発泡されていてもよいが、エンボス版を押圧した際に着色印刷層5が引き延ばされ易くなることから、非発泡であることが好ましい。
図示例では、合成樹脂層6は、2層の樹脂層(表面側から順に、第1樹脂層61と第2樹脂層62)から構成されている。なお、特に図示しないが、合成樹脂層6は、1層の樹脂層から構成されていてもよく、或いは、3層以上の樹脂層から構成されていてもよい。合成樹脂層6が1層の樹脂層からなる場合には、第2樹脂層62が省略される。合成樹脂層6が3層以上の樹脂層からなる場合には、第2樹脂層62の裏面に第3樹脂層以降が積層される。
【0024】
第1樹脂層61は、第2樹脂層62の表面に直接的に接着され、第2樹脂層62は、繊維補強層7(繊維補強層7を有さない場合にはバッキング層8)の表面に直接的に接着されている。なお、着色印刷層5は、第1樹脂層61の表面に直接的に接着されている。
第1樹脂層61及び第2樹脂層62のうち少なくとも何れか一方は、有色透明又は有色不透明であり(つまり、色彩を有する)、好ましくは有色不透明である。何れか一方が色彩を有することにより、着色印刷層5の裏面側に、着色印刷層5とは異なる色彩を有する合成樹脂層6を配置できる。
例えば、第1樹脂層61が色彩を有する場合、第2樹脂層62は、無色透明であってもよく或いは有色透明又は有色不透明であってもよい。また、第2樹脂層62が色彩を有する場合、第1樹脂層61は、無色透明であってもよく或いは有色透明又は有色不透明であってもよい。
好ましくは、第1樹脂層61及び第2樹脂層62の何れも有色である。両層61,62が色彩を有することにより、凹部3の最深部32において第1樹脂層61及び第2樹脂層62の何れか一方が消失した場合であっても、他方が残存するので、凹部3の最深部32において合成樹脂層6の色彩が表出する。第1樹脂層61及び第2樹脂層62の何れも色彩を有する場合、それらの色彩は、着色印刷層5の一部又は全部の色彩とは異なり、好ましくは、着色印刷層5の全部の色彩とは異なる。また、この場合、第1樹脂層61と第2樹脂層62は、同じ色彩であってもよく、或いは、異なる色彩を有していてもよいが、凹部3の最深部32において1色の色彩が表出することから、両層61,62は同じ色彩を有していることが好ましい。
例えば、(a)第1樹脂層61及び第2樹脂層62が乳白色を含む白色を呈し、着色印刷層5が白色以外の色彩を呈する場合、(b)第1樹脂層61及び第2樹脂層62が黄色を呈し、着色印刷層5が黄色以外の色彩を呈する場合、などが挙げられる。
有色の第1樹脂層61及び第2樹脂層62は、それらの形成材料に着色剤を配合することによって形成できる。例えば、白色の合成樹脂層6は、酸化チタンなどの白色顔料を配合することによって形成できる。また、形成材料そのものが有色である場合には、着色剤を配合せずに第1樹脂層61及び第2樹脂層62を形成してもよい。
【0025】
前記合成樹脂層6の厚みは、特に限定されないが、例えば、100μm~1.2mmであり、好ましくは200μm~1mmである。前記第1樹脂層61の厚みは、特に限定されないが、例えば、20μm~200μmであり、好ましくは30μm~150μmである。前記第2樹脂層62の厚みは、特に限定されないが、例えば、100μm~800μmであり、好ましくは200μm~600μmである。ただし、前記第1樹脂層61及び第2樹脂層62の厚みは、凹部3に対応する部分の厚みを除く。
【0026】
合成樹脂層6(第1樹脂層61及び第2樹脂層62)は、主成分樹脂を含み、必要に応じて、主成分樹脂以外の樹脂及び各種添加剤が含まれていてもよい。第1樹脂層61及び第2樹脂層62の各主成分樹脂としては、それぞれ独立して、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂及び添加剤の具体例は、<表層>の欄に記載したものが挙げられる。合成樹脂層6(第1樹脂層61及び第2樹脂層62)に耐候剤が含まれていることによりその耐候性が向上する。
第1樹脂層61及び第2樹脂層62は主成分樹脂が同じものでもよく、或いは、主成分樹脂が異なっていてもよいが、好ましくは同じものが用いられる。
第1樹脂層61及び第2樹脂層62を形成する主成分樹脂としては、両層が互いに強固に接着し易いこと及びエンボス版を押圧した際に良好に変形することから、塩化ビニル系樹脂が好ましく、ペースト塩化ビニル又は/及びサスペンジョン塩化ビニルを用いることがより好ましい。
【0027】
繊維補強層7の表面に直接的に接着される第2樹脂層62は、繊維補強層7に含浸した状態で積層されていてもよい。なお、繊維補強層7に含浸している状態とは、第2樹脂層62の形成材料が、繊維補強層7の内部に入り込み、繊維補強層7を構成する繊維の周りに付着している部分が存在している状態をいう。
第2樹脂層62がペースト塩化ビニルを主成分樹脂とする場合、繊維補強層7に含浸し易く且つ繊維の周りに強固に付着するようになる。また、ペースト塩化ビニルは、サスペンジョン塩化ビニルに対する相溶性に優れているので、第1樹脂層61がサスペンジョン塩化ビニルを主成分とする場合であっても、ペースト塩化ビニルを主成分とする第2樹脂層62は第1樹脂層61に強固に接着するようになる。
【0028】
<繊維補強層>
繊維補強層7は、シート本体2の剛性を高め、且つシート本体2に寸法安定性を付与するための層である。さらに、繊維補強層7は、凹部3の形成時のエンボス版を押圧する際に、過度な沈み込みを防止する機能も有する。この機能によって、凹部3の形成に際して、本発明の効果をより容易に創出することが可能となる。
繊維補強層7としては、繊維を含んでいれば特に限定されず、不織布、織布などが挙げられる。前記不織布や織布を構成する繊維の材質は、特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリオレフィンなどの合成樹脂繊維;ガラス、カーボンなどの無機繊維;天然繊維などが挙げられる。特に、沈み込み防止機能に優れていることから、繊維補強層7としては、ガラス繊維などの無機繊維を含む不織布又は無機繊維を含む織布を用いることが好ましく、さらに、ガラス繊維を含む不織布(ガラスマット)又はガラス繊維を含む織布(ガラスネット)を用いることがより好ましい。中でも、エンボス版の押圧力を面的にサポートし、過度な沈み込みを防止する機能が高く、さらに、凹部3の最深部32において繊維が見え難くなることから、ガラス繊維を含む不織布を用いることが特に好ましい。
【0029】
前記ガラス繊維の太さは、特に限定されず、例えば、直径2μm~20μmであり、好ましくは、直径5μm~15μmである。
ガラス繊維を含む不織布のガラス繊維は、短繊維のみから構成されていてもよく、長繊維のみから構成されていてもよく、或いは、短繊維と長繊維の混合から構成されていてもよい。短繊維のみから構成されたガラス不織布は、寸法安定性に優れているが、短繊維と長繊維の混合物から構成されたガラス不織布は、寸法安定性に加えて引張り強度にも優れている。前記短繊維の長さは、特に限定されないが、例えば、5mm~30mmであり、好ましくは10mm~15mmである。なお、長繊維の長さは、その短繊維の長さよりも大きい。
また、繊維補強層7を構成する繊維は、ガラス繊維のみでもよく、ガラス繊維とこれ以外の繊維を含んでいてもよい。ガラス繊維以外の繊維としては、パルプなどの天然繊維、合成樹脂繊維、ガラス以外の無機繊維などが挙げられるが、天然繊維が好ましい。前記パルプなどの天然繊維の太さは、特に限定されないが、例えば、10μm~30μmである。尚、パルプなどの天然繊維は、一般に様々な繊維長や繊維径のものが分布をもって混在しているため、前記天然繊維の太さは、分布の中心的な範囲である。
【0030】
前記繊維補強層7を構成する不織布又は織布の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.05mm~1mmであり、好ましくは、0.1mm~0.5mmである。また、繊維補強層7を構成する不織布又は織布の目付量は、10g/m~100g/mであり、好ましくは、20g/m~50g/mである。
【0031】
<バッキング層>
バッキング層8は、例えば、樹脂、ゴムなどから形成される。
繊維補強層7の内部に含浸して繊維補強層7と強固に接合することから、バッキング層8は、樹脂から形成されていることが好ましい。また、バッキング層8は、発泡されていてもよく、非発泡でもよい。内装シート1に適度なクッション性を付与する観点から、バッキング層8は、発泡されていることが好ましい。発泡体からなるバッキング層8の発泡倍率は、特に限定されないが、例えば、1.05倍~2倍であり、好ましくは1.1倍~1.5倍である。
バッキング層8は、主成分樹脂を含み、必要に応じて、主成分樹脂以外の樹脂及び各種添加剤が含まれていてもよい。バッキング層8の主成分樹脂としては、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂及び添加剤の具体例は、<表層>の欄に記載したものが挙げられる。
バッキング層8を形成する主成分樹脂としては、柔軟性に優れることから、塩化ビニル系樹脂が好ましい。
前記バッキング層8の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.5mm~7mmであり、好ましくは1mm~3mmである。
なお、特に図示しないが、バッキング層8の裏面又はバッキング層8の中途部に、補強層が設けられていてもよい。補強層としては、不織布、織布が用いられる。
【0032】
[凹部]
上記シート本体2の表面には、凹部3が形成されている。
凹部3は、シート本体2の表面よりも厚み方向に凹んだ部分である。なお、凹部3は、シート本体2の表面を基準にして凹んだ部分であり、凹部3を基準にすると、凹部3は、凸部で挟まれた部分とも言える。つまり、凹凸は相対的な概念であり、以下、凹部3との関係で、凹部以外のシート本体2の表面を「凸部」という場合がある。
凹部3は、図1に示すように、所定方向に平面視直線状に形成されていてもよく、或いは、平面視屈曲状、平面視曲線状、平面視不定形状などに形成されていてもよい。図示例では、平面視で、第1方向に直線状に延びる凹部3と、第2方向に直線状に延びる凹部3と、を有し、第1方向に延びる凹部3が、第2方向に延びる凹部3に対してT字状に交わるように形成されている。もっとも、凹部3の平面視形状は、図示例に限定されるわけではない。
【0033】
図2及び図3に示すように、凹部3は、凹み傾斜部31と、最深部32と、から構成される。最深部32は、凹部3の底であり、凹部3の最も深い部分を指す。凹み傾斜部31は、凸部2aと最深部32の間の部分であり、断面視で、水平方向に対して傾斜されている。凹み傾斜部31は、最深部32の両側に向かい合って存在する。向かい合った凹み傾斜部31は、図示例のように対称的な形状でもよく、或いは、非対称な形状でもよい。対称的な形状とすることにより、一方の凹み傾斜部31が他方の凹み傾斜部31に対して目立ち難くなる。
凹み傾斜部31は、全体的に断面視直線状であってもよく、或いは、全体的に断面視曲線状であってもよく、或いは、断面視多角形状であってもよく、或いは、直線状と曲線状が組み合わされた断面視形状であってもよい。断面視曲線状については、内側に膨らんだ曲線状と外側に膨らんだ曲線状があるが、好ましくは、図2及び図3に示すように外側に膨らんだ曲線状とされる。なお、全体的に断面視直線状の凹み傾斜部31は、立体的には、平面を成しており、全体的に断面視曲線状の凹み傾斜部31は、立体的には曲面を成しており、断面視多角形状の凹み傾斜部31は、立体的には、複数の平面が鈍角状に交わって連続した多角面を成している。
【0034】
ここで、図4は、凹み傾斜部31が全体的に断面視直線状に形成されている凹部3を示している。
好ましくは、凹み傾斜部31は、図3に示すような直線状と曲線状が組み合わされた断面視形状、又は、図4に示すように全体的に断面視直線状に形成される。
断面視曲線状の凹み傾斜部31は、凸部2aに連続し且つその凸部2aから裏面側へ凹み始める曲線状の始端部311と、大きく湾曲した中途部312と、中途部312から最深部32へと連続する終端部313と、からなる。断面視で、始端部311の曲率は、中途部312の曲率よりも小さい。終端部313は、断面視で直線状に形成されている。
なお、図4を参照して、全体的に断面視直線状の凹み傾斜部31は、前記のような断面視で直線状の終端部313を含んでいる。つまり、全体的に断面視直線状の凹み傾斜部31は、凸部2aに連続し且つその凸部2aから裏面側へ凹み始める直線状の始端部311と、始端部311に連続し且つ始端部311と同じ傾斜角の直線状の中途部312と、中途部312に連続し且つ中途部312と同じ傾斜角の直線状の終端部313と、からなり、概念的には、直線状の終端部313が凸部2aにまで延長されたものである。
なお、特に図示しないが、多角形状の凹み傾斜部31は、前記のような断面視で直線状の始端部311、中途部312、終端部313などを含み、これらが異なる円弧を描くように連続しているものである。
【0035】
最深部32は、例えば、断面視直線状に形成され、より好ましくは、水平方向に延在する断面視直線状に形成される。断面視直線状の最深部32は、立体的には、所定幅を有する帯状且つ平坦面を成す。最深部32が断面視直線状に形成されていることにより、外観上、最深部32から表出される色彩が目立ち易くなる。
凹部3において、凹み傾斜部31の終端部313と最深部32とが断面視で直線状に形成される場合、終端部313と最深部32との成す角度α(図3及び図4参照)は、90度~140度が好ましく、95度~125度がより好ましく、100度~110度がさらに好ましい。この角度を90度以上とすることにより、エンボス版を用いて凹部3を形成する際、凹み傾斜部31と最深部32との境目で応力集中が起こりにくく、材料破壊を抑制できる。また、前記角度が140度よりも大きいと、凹み傾斜部31が目立ち易くなり、デザイン性が低下するおそれがある。
なお、凹部3の最深部32の形状は、平坦面に限定されず、曲面であってもよい。もっとも、エンボス版によって凹部3を形成する際、より均一に圧力を付与できるので、最深部32は平坦面であることが好ましい。
【0036】
図2を参照して、凹部3の深さ3Dは、特に限定されないが、最深部32から表出される色彩が目立ち易くなる観点から、0.8mm以上が好ましく、0.8mmを超えることがより好ましく、さらに、0.9mm以上がさらに好ましく、1mm以上が特に好ましい。また、凹み傾斜部31に対応する着色印刷層を良好な薄肉状に形成できることから、凹部3の深さ3Dは、1.5mm以下が好ましく、1.5mm未満がより好ましく、さらに、1.4mm以下がさらに好ましく、1.3mm以下が特に好ましい。
また、凹部3の最深部32の幅32Wは、特に限定されないが、0.5mm~3mmであることが好ましく、1mm~2mmであることがより好ましい。
また、凹部3の凹み傾斜部31の幅31Wは、特に限定されないが、0.5mm~2mmであることが好ましく、1mm~1.5mmであることがより好ましい。
なお、図示例では、凸部2aの表面は、平坦状であるが、必要に応じて、凸部2aに、凹部3とは明らかに深さが小さい凹み部分が形成されていてもよい(図示せず)。例えば、凸部2aの表面に、梨地模様のような微細な凹み部分から構成される模様が形成されていてもよい。
【0037】
図2及び図3は、第1実施形態の内装シートの、凹部に対応した領域の着色印刷層の形態を示す断面図である。
図2及び図3において、第1実施形態の内装シート1の着色印刷層5は、凹部3の凹み傾斜部31に対応した領域において、最深部32に向かうに従って薄肉状に形成されている。また、着色印刷層5は、凹部3の最深部32に対応した領域において、最も薄肉に形成されている。以下、凹部3の凹み傾斜部31に対応した領域の次第に薄肉状に形成された部分を漸減部といい、凹部3の最深部32に対応した領域の最も薄肉に形成された部分を最薄部という。従って、着色印刷層5は、凹部3に対応して、漸減部51と最薄部52とを有する。
漸減部51の厚み及び最薄部52の厚みは、凸部2aに対応した着色印刷層5の厚みよりも小さい。
漸減部51の一方端は、前記凸部2aに対応した着色印刷層5に連設されており、漸減部51の他方端は、最薄部52に連設されている。漸減部51の厚みは、凸部2aから凹み傾斜部31にかけて、最深部32に向かうに従って徐々に小さくなっている。
最薄部52は、非常に薄い膜状であり、凹部3の最深部32の裏面側に延在されている。なお、最薄部52は、上述のように非常に薄い膜状であるため、穴空きのないベタ状に存在する場合のほか、微視的に見ると、部分的にピンホールを生じている場合もあることに留意されたい。
着色印刷層5の最薄部52の厚みは、凸部2aに対応した着色印刷層5の厚み×0.05倍~×0.3倍であり、好ましくは、凸部2aに対応した着色印刷層5の厚み×0.1倍~×0.2倍である。
【0038】
表層4、合成樹脂層6(第1樹脂層61及び第2樹脂層62)は、凹部3に対応した領域において、薄肉状に形成されている。つまり、凹部3に対応した領域における表層4、合成樹脂層6(第1樹脂層61及び第2樹脂層62)の厚みは、それぞれ、凸部2aに対応した領域におけるそれらの厚みよりも小さく形成されている。
また、保護層41は、後述する製法に従えば、凹部3を形成した後に積層されるので、保護層41の厚みは、全体的に略均等である。
なお、表層4は、凹部3に対応した領域において、実質的に存在していなくてもよいが(凹部形成過程において実質的に消失していてもよいが)、凹部3における耐水性及び防汚性の観点から、前述のように凹部3に対応した領域において表層4が存在していることが好ましい。
また、第1樹脂層61及び第2樹脂層62の何れか一方は、凹部3に対応した領域において、実質的に存在していなくてもよい(凹部形成過程において実質的に消失していてもよい)。
【0039】
図5及び図6は、第2実施形態の内装シートの、凹部に対応した領域の着色印刷層の形態を示す断面図である。第2実施形態の内装シートの平面図は、第1実施形態と同様であるので、省略している。なお、図5及び図6は、第2実施形態の内装シートを、図1のII-II線と同様の箇所で切断した断面図である。
【0040】
図5及び図6において、第2実施形態の内装シート1の着色印刷層5は、凹部3の凹み傾斜部31に対応した領域において、最深部32に向かうに従って薄肉状に形成された漸減部51を有する。第2実施形態では、凹部3の最深部32に対応する領域に、着色印刷層を有さない。
具体的には、2つの凹み傾斜部31に対応した領域において、着色印刷層5は、最深部32に向かうに従って薄肉状に形成されている(つまり、漸減部51を有する)。漸減部51の厚みは、凸部2aに対応した着色印刷層5の厚みよりも小さい。漸減部51の一方端は、前記凸部2aに対応した着色印刷層5に連設されており、漸減部51の他方端は、尖っている。2つの漸減部51の他方端は、凹部3の最深部32の両側に対応した位置で向かい合っており、その2つの漸減部51の他方端の間には、着色印刷層が設けられていない。
第2実施形態の内装シート1の保護層41、表層4、合成樹脂層6(第1樹脂層61及び第2樹脂層62)は、上記第1実施形態と同様である。
【0041】
本発明の内装シート1は、凹部3の最深部32と凹み傾斜部31の境界が目立ち難く、凹部3の最深部32から表出される色彩が着色印刷層5のデザインに自然な感じで取り込まれた外観を有する。かかる内装シート1は、凹部3と着色印刷層5の色彩が一体となってデザインを構成するので、装飾性に優れている。
具体的には、第1実施形態及び第2実施形態の内装シート1は、凹部3の凹み傾斜部31に対応する領域において、着色印刷層5が漸減部51を有する。かかる凹み傾斜部31に対応して、着色印刷層5の漸減部51が位置することにより、凹み傾斜部31においては着色印刷層5の色彩が徐々に変化していくので、凹み傾斜部31と最深部32の境界が目立ち難く、自然な感じとなる。一方、最深部32においては、合成樹脂層6の色彩が表出するので、凹部3の存在が目立ち、その最深部32の色彩と着色印刷層5の色彩が1つの纏まりのあるデザインを構成できる。
なお、第1実施形態の内装シート1は、凹部3の最深部32に対応した領域に着色印刷層5の最薄部52が延在するが、最薄部52は非常に薄いので、実質的に着色印刷層5の色彩が消失し、最薄部52の裏面側に位置する合成樹脂層6(第1樹脂層61又は第2樹脂層62)の色彩が凹部3の最深部32において表出するようになる。第2実施形態の内装シート1は、凹部3の最深部32に対応した領域に着色印刷層5を有さないので、最薄部52の裏面側に位置する合成樹脂層6(第1樹脂層61又は第2樹脂層62)の色彩が凹部3の最深部32において表出するようになる。
このように最深部32から表出される色彩が着色印刷層5に自然な感じで取り込まれたデザインを有する本発明の内装シート1は、例えば、図1のように、凹部3によって囲われた範囲が平面視長方形又は正方形を成すように凹部3を形成することにより、恰もタイル貼りの如き外観を有する。
【0042】
[内装シートの製造方法]
本発明の内装シートは、例えば、表面側から順に、表層、着色印刷層、合成樹脂層及び繊維補強層を有する積層体を準備する準備工程、前記積層体の表面側からエンボス突起を有するエンボス版を押圧して前記積層体の表面に、凹み傾斜部と最深部とから構成される凹部を形成するエンボス工程、を有し、前記エンボス工程において、前記着色印刷層の厚みが前記凹み傾斜部から最深部に向かって次第に薄くなるように、前記着色印刷層を引き延ばしながら前記凹部を形成することによって得られる。
上述のように、表層4などは様々な樹脂を用いて形成できるが、ここでは、塩化ビニル系樹脂を用いた内装シート1の製造方法を具体的に説明する。
【0043】
<ペースト塩化ビニルを使用した場合>
(準備工程)
着色印刷層5の形成方法として、塩化ビニル系樹脂などの樹脂フィルムに着色印刷層5が印刷された印刷済みフィルムを用いる方法(第1の方法という)と、第2樹脂層62の表面上に、第1樹脂層61を形成した後、その第1樹脂層61の表面上に着色印刷層5を印刷又は転写する方法(第2の方法という)とがある。
【0044】
・第1の方法
繊維補強層7の一方面に、例えば、ペースト塩化ビニル、可塑剤、充填剤及び発泡剤などの混合物からなる塩化ビニルペースト(バッキング層8の形成材料)を、適宜なコーターにて塗工する。さらに、繊維補強層7の他方面に、例えば、ペースト塩化ビニル、可塑剤及び充填剤などの混合物からなる塩化ビニルペースト(第2樹脂層62の形成材料)を塗工して層状に形成した後、120℃~140℃でプリゲル化する。
次に、第2樹脂層62の表面上に、印刷済みフィルムを積層する。印刷済みフィルムは、塩化ビニル系樹脂などの樹脂フィルムに着色印刷層5が印刷されたものであり、前記樹脂フィルムが第1樹脂層61となる。印刷は、グラビア印刷、ロータリー印刷などの公知の印刷法を用いて行うことができるが、厚みの制御が容易で、デザイン表現性も優れるため、グラビア印刷法が好ましい。
前記第2樹脂層62の表面上に、印刷済みフィルムの樹脂フィルム面を積層した後、着色印刷層5の表面上に、例えば、ペースト塩化ビニル、可塑剤及び充填剤などの混合物からなる塩化ビニルペースト(表層4の形成材料)を塗工して層状に形成した後、再び130℃~150℃でプリゲル化すると共にバッキング層8の形成材料を発泡させる。
【0045】
・第2の方法
繊維補強層7の一方面に、例えば、ペースト塩化ビニル、可塑剤、充填剤及び発泡剤などの混合物からなる塩化ビニルペースト(バッキング層8の形成材料)を、適宜なコーターにて塗工する。さらに、繊維補強層7の他方面に、例えば、ペースト塩化ビニル、可塑剤及び充填剤などの混合物からなる塩化ビニルペースト(第2樹脂層62の形成材料)を塗工して層状に形成し、さらに、その上に、例えば、ペースト塩化ビニル、可塑剤及び充填剤などの混合物からなる塩化ビニルペースト(第1樹脂層61の形成材料)を塗工して層状に形成した後、120℃~140℃でプリゲル化する。
次に、第1樹脂層61の表面上に、インキを印刷して着色印刷層5を形成する。印刷は、グラビア印刷、ロータリー印刷などの公知の印刷法を用いて行うことができるが、厚みの制御が容易で、デザイン表現性も優れるため、グラビア印刷法が好ましい。なお、このような直接印刷に代えて、着色印刷層5が設けられた転写フィルムを第1樹脂層61の表面に貼り付けて、着色印刷層5のみを転写してもよい。
着色印刷層5を形成した後、その表面上に、例えば、ペースト塩化ビニル、可塑剤及び充填剤などの混合物からなる塩化ビニルペースト(表層4の形成材料)を塗工して層状に形成した後、再び130℃~150℃でプリゲル化すると共にバッキング層8の形成材料を発泡させる。
このようにして、表面側から順に、表層4/着色印刷層5/第1樹脂層61/第2樹脂層62/繊維補強層7/バッキング層8からなる積層体10を形成する(図7参照)。
【0046】
(エンボス工程)
前記積層体10の表面側から、エンボス突起91を有するエンボス版9を積層体10の厚み方向に押圧する。エンボス版9としては、例えば、エンボスローラーを用いることができる。また、エンボス突起91は、凹部3の形状に対応した形状を有することが好ましく、例えば、図示のように、最深部32に対応する端部であって平坦状に形成された凸端面部911と、凹み傾斜部31に対応する側部であって曲面状に形成された凸側面部912と、を有する。
エンボス版9を押圧する際、図8に示すように、エンボス突起91にて着色印刷層5を引き延ばしながらエンボス版9を押圧する。
エンボス版9の押圧によって、積層体10の表面に凹部3を形成した後、積層体10の全体を160℃~200℃で加熱して塩化ビニルペーストをゲル化する。
最後に、積層体10の表面に、保護層41の形成材料(紫外線硬化型樹脂など)を塗工し、これを硬化させることにより、上記内装シート1を得ることができる。
【0047】
<サスペンジョン塩化ビニルを使用した場合>
なお、上述したペースト塩化ビニルを用いた製造方法のほか、サスペンジョン塩化ビニルを用いて、積層体10を形成することもできる。
【0048】
(準備工程)
繊維補強層7の一方面に、例えば、ペースト塩化ビニル、可塑剤、充填剤及び発泡剤などの混合物からなる塩化ビニルペースト(第2樹脂層62の形成材料)を、適宜なコーターにて塗工して層状に形成した後、120℃~140℃でプリゲル化し、塩化ビニルペーストを繊維補強層7に含浸させた状態で一体化させる。このようにして、繊維補強層7の他方面に第2樹脂層62が積層された中間積層体を準備する。
他方、サスペンジョン塩化ビニルを用いて、シート状の表層4及びバッキング層8を形成しておく。これらの形成方法は、特に限定されず、例えば、カレンダー法、溶融押出法、溶液流延法などが挙げられる。
【0049】
次に、前記中間積層体の第2樹脂層62の表面に、印刷済みフィルムの樹脂フィルム面を積層し、さらに、その上に、前記シート状の表層4を積層する。また、前記中間積層体の繊維補強層7の表面に、前記シート状のバッキング層8を積層する。これらを加熱加圧して各層を一体化させて積層体10を形成する。加熱加圧による各層の接合方法は、例えば、ラミネート加工法、カレンダー成形法、連続プレス法などが挙げられる。中でも、ラミネート加工法、カレンダー成形法のようなロールによる加熱加圧によって積層体を連続的に接合する方法は、一度に多くの製品を製造することができるので好ましい。特に、ラミネート加工法は、多くの積層体を一度に接合できるので、好適に適用することができる。ラミネート加工法の加熱温度及び圧力は、公知の加工法に準じて適宜設定される。例えば、積層体10の加熱温度は、140℃~200℃であり、ロール間の圧力は、20kgf/cm~100kgf/cmである。
なお、印刷済みフィルムは、上記<ペースト塩化ビニルを使用した場合>に説明したようなものを用いることができる。
このようにして、表面側から順に、表層4/着色印刷層5/第1樹脂層61/第2樹脂層62/繊維補強層7/バッキング層8からなる積層体10を形成する(図7参照)。
【0050】
(エンボス工程)
得られた積層体10に対して、上記<ペースト塩化ビニルを使用した場合>と同様にしてエンボス版を押圧し、保護層41の形成材料(紫外線硬化型樹脂など)を塗工し、これを硬化させることにより、上記内装シート1を得ることができる。
【0051】
[内装シートの用途]
本発明の内装シート1は、建築物の床面、壁面及び天井面などの施工面に施工される。内装シート1の施工面に対する取り付け方法は、特に限定されず、例えば、接着剤を用いて内装シート1の裏面を施工面に貼り付けることなどが挙げられる。
特に、本発明によれば、タイル調の外観を有する内装シート1を容易に構成できるので、台所、浴室などの床面や壁面に施工する床シート又は壁シートとして好適である。
また、本発明の内装シート1は、新設の施工面に施工してもよく、或いは、リフォームなどの既存の施工面に施工してもよい。
本発明の内装シート1は、床材、壁材、天井材などに使用でき、特に、床材、壁材として好適に使用できる。また、凹部3を形成するため、厚みが十分に大きいことから、本発明の内装シート1を床材として使用することが最も好適である。
【実施例
【0052】
以下、実施例を示し、本発明をさらに詳述する。ただし、本発明は、下記実施例に限定されるわけではない。
【0053】
[使用材料]
・印刷済みフィルム
商品名「長尺塩ビシート用印刷フィルム」。
厚み120μmの塩化ビニル樹脂製の白色フィルム(主成分樹脂としての塩化ビニル系樹脂と白色顔料としての酸化チタンと耐候剤としての紫外線吸収剤とを含むフィルム)の表面に、黒色インキ(バインダー樹脂としての塩化ビニル系樹脂と黒色顔料としてのカーボンブラックと耐候剤としての紫外線吸収剤とを含む溶剤揮発型インキ)をグラビア印刷法にてベタ状に印刷したもの。黒色印刷層の厚みは、約12μm。
・サスペンジョン塩化ビニル
株式会社カネカ製の商品名「カネビニール」。重合度:1050、K値:67。
【0054】
[実施例1]
上記サスペンジョン塩化ビニルに、耐候剤としてベンゾフェノン系紫外線吸収剤を適量加えたものを、汎用的なカレンダー成形機を用いてカレンダー成形することにより、厚み:0.28mm、縦:100cm、横:100cmのシート状の透明な表層を作製した。
別途、上記サスペンジョン塩化ビニルに白色顔料、黒色顔料、炭酸カルシウム及び安定剤を適量加えたものを、汎用的な押出し成形機を用いて押出し成形することにより、厚み:2mm、縦:100cm、横:100cmのシート状の灰色のバッキング層を作製した。
上記印刷済みフィルムを、着色印刷層及び合成樹脂層として使用した。
前記バッキング層の表面に、印刷済みフィルムのフィルム面を積層し、その印刷済みフィルムの印刷層の表面に、表層を積層することにより、積層体を構成した。この積層体を180℃に加熱しつつ、積層体の合成樹脂層の表面に、180℃に加熱したエンボス突起を有するエンボス版(図9参照)を、プレス機にて4kgf/cmの圧力で120秒間押圧し続けることによって、各層を一体化させると同時に凹部を形成した。その後、エンボス版を引き離すことによって、凹み傾斜部及び最深部を有する凹部を有する内装シートを作製した。
【0055】
前記エンボス版は、平滑状の表面に、エンボス突起が突設されている。図9において、便宜上、エンボス突起に相当する部分に無数のドットを付加している。
このエンボス突起は、平坦状の凸端面部と、凸端面部の両側からエンボス版の表面に断面視曲線状(立体的には曲面状)に延設された凸側面部と、を有し、凸側面部のうち凸端面部の近傍部分は、凸端面部に対して略直交する直線状(立体的には平面状)に形成されている。なお、エンボス突起は、平面視では直線状に形成されており、2つの凸側面部は、凸端面部を挟んで対称形に形成されている。
実施例1では、凸端面部の幅Aが、1mm、2つの凸側面部の基端間の長さBが、4mm、エンボス突起の高さCが、0.8mmであるエンボス版を使用した。
【0056】
実施例1の内装シートの一部分を切断し、その部分を拡大撮像し、凹部の状態を確認した。
実施例1の内装シートの表面に形成された凹部は、使用したエンボス突起に対応した形状となっており、図3に示すような断面視曲線状及び直線状の凹み傾斜部を有していた。また、凹部の深さ及び最深部の幅を計測したところ、表1の通り、エンボス突起の寸法に対応していた。
凹み傾斜部に対応した領域における着色印刷層は、最深部に向かって次第に薄肉状に形成されていた。また、最深部に対応した領域における着色印刷層(最薄部)は、約10μmに形成されていた。
【0057】
[実施例2]
図10に示すようなエンボス突起を有するエンボス版を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、凹部を有する内装シートを作製した。
実施例2のエンボス版は、平滑状の表面に、エンボス突起が突設されている。図10において、便宜上、エンボス突起に相当する部分に無数のドットを付加している。
このエンボス突起は、平坦状の凸端面部と、凸端面部の両側からエンボス版の表面に断面視直線状に延設された凸側面部と、を有する。2つの凸側面部は、凸端面部を挟んで対称形に形成されている。
実施例2では、凸端面部の幅Aが、1mm、2つの凸側面部の基端間の長さBが、4mm、エンボス突起の高さCが、0.9mmであるエンボス版を使用した。
【0058】
実施例2の内装シートの一部分を切断し、その部分を拡大撮像し、凹部の状態を確認した。
実施例2の内装シートの表面に形成された凹部は、使用したエンボス突起に対応した形状となっており、図4に示すような断面視直線状の凹み傾斜部を有していた。また、凹部の深さ及び最深部の幅を計測したところ、表1の通り、エンボス突起の寸法に対応していた。
凹み傾斜部に対応した領域における着色印刷層は、最深部に向かって次第に薄肉状に形成されていた。また、最深部に対応した領域における着色印刷層(最薄部)は、約7μmに形成されていた。
【0059】
[実施例3]
図10に示すようなエンボス突起を有するエンボス版を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、凹部を有する内装シートを作製した。
実施例3では、図10に示す凸端面部の幅Aが、2mm、2つの凸側面部の基端間の長さBが、4mm、エンボス突起の高さCが、0.9mmであるエンボス版を使用した。
【0060】
実施例3の内装シートについても、凹部の状態を確認したところ、凹部は、使用したエンボス突起に対応した形状となっており、断面視直線状の凹み傾斜部を有し、凹部の深さ及び最深部の幅は、表1の通り、エンボス突起の寸法に対応していた。
凹み傾斜部に対応した領域における着色印刷層は、最深部に向かって次第に薄肉状に形成されていた。また、最深部に対応した領域における着色印刷層は、約7μmに形成されていた。
【0061】
[実施例4]
図9に示すようなエンボス突起を有するエンボス版を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、凹部を有する内装シートを作製した。
実施例4では、図9に示す凸端面部の幅Aが、1mm、2つの凸側面部の基端間の長さBが、4mm、エンボス突起の高さCが、1mmであるエンボス版を使用した。
【0062】
実施例4の内装シートについても、凹部の状態を確認したところ、凹部は、使用したエンボス突起に対応した形状となっており、断面視曲線状及び直線状の凹み傾斜部を有し、凹部の深さ及び最深部の幅は、表1の通り、エンボス突起の寸法に対応していた。
凹み傾斜部に対応した領域における着色印刷層は、最深部に向かって次第に薄肉状に形成されていた。また、最深部に対応した領域における着色印刷層は、約4~6μmに形成されていた。
【0063】
[実施例5]
図10に示すようなエンボス突起を有するエンボス版を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、凹部を有する内装シートを作製した。
実施例5では、図10に示す凸端面部の幅Aが、1mm、2つの凸側面部の基端間の長さBが、4mm、エンボス突起の高さCが、1.2mmであるエンボス版を使用した。
【0064】
実施例5の内装シートについても、凹部の状態を確認したところ、凹部は、使用したエンボス突起に対応した形状となっており、断面視直線状の凹み傾斜部を有し、凹部の深さ及び最深部の幅は、表1の通り、エンボス突起の寸法に対応していた。
凹み傾斜部に対応した領域における着色印刷層は、最深部に向かって次第に薄肉状に形成されていた。また、最深部に対応した領域における着色印刷層は、約1~3μmに形成されていた。
【0065】
[実施例6]
図9に示すようなエンボス突起を有するエンボス版を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、凹部を有する内装シートを作製した。
実施例6では、図9に示す凸端面部の幅Aが、1mm、2つの凸側面部の基端間の長さBが、4mm、エンボス突起の高さCが、1.2mmであるエンボス版を使用した。
【0066】
実施例6の内装シートについても、凹部の状態を確認したところ、凹部は、使用したエンボス突起に対応した形状となっており、断面視曲線状及び直線状の凹み傾斜部を有し、凹部の深さ及び最深部の幅は、表1の通り、エンボス突起の寸法に対応していた。
凹み傾斜部に対応した領域における着色印刷層は、最深部に向かって次第に薄肉状に形成されていた。また、最深部に対応した領域における着色印刷層は、約1~3μmに形成されていた。
【0067】
[実施例7]
図10に示すようなエンボス突起を有するエンボス版を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、凹部を有する内装シートを作製した。
実施例7では、図10に示す凸端面部の幅Aが、2mm、2つの凸側面部の基端間の長さBが、4mm、エンボス突起の高さCが、1.2mmであるエンボス版を使用した。
【0068】
実施例7の内装シートについても、凹部の状態を確認したところ、凹部は、使用したエンボス突起に対応した形状となっており、断面視直線状の凹み傾斜部を有し、凹部の深さ及び最深部の幅は、表1の通り、エンボス突起の寸法に対応していた。
凹み傾斜部に対応した領域における着色印刷層は、最深部に向かって次第に薄肉状に形成されていた。また、最深部に対応した領域における着色印刷層は、約1~3μmに形成されていた。
【0069】
[比較例1]
図9に示すようなエンボス突起を有するエンボス版を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、凹部を有する内装シートを作製した。
比較例1では、図9に示す凸端面部の幅Aが、1mm、2つの凸側面部の基端間の長さBが、4mm、エンボス突起の高さCが、0.7mmであるエンボス版を使用した。
【0070】
比較例1の内装シートについても、凹部の状態を確認したところ、凹部は、使用したエンボス突起に対応した形状となっており、断面視曲線状及び直線状の凹み傾斜部を有し、凹部の深さ及び最深部の幅は、表1の通り、エンボス突起の寸法に対応していた。
凹み傾斜部に対応した領域における着色印刷層は、凸部に対応した領域における着色印刷層とほぼ同じ厚みであった。また、最深部に対応した領域において、着色印刷層が存在しており、その最深部に対応した着色印刷層の厚みは、凸部に対応した領域における着色印刷層とほぼ同じ厚みであった。つまり、着色印刷層は全体的に殆ど一定であった。
【0071】
[比較例2]
図10に示すようなエンボス突起を有するエンボス版を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、凹部を有する内装シートを作製した。
比較例2では、図10に示す凸端面部の幅Aが、1mm、2つの凸側面部の基端間の長さBが、4mm、エンボス突起の高さCが、1.5mmであるエンボス版を使用した。
【0072】
比較例2の内装シートについても、凹部の状態を確認したところ、凹部は、使用したエンボス突起に対応した形状となっており、断面視直線状の凹み傾斜部を有し、凹部の深さ及び最深部の幅は、表1の通り、エンボス突起の寸法に対応していた。
凹み傾斜部に対応した領域における着色印刷層は、断裂しており、断裂した端面が確認された。また、最深部に対応した領域において、着色印刷層は存在していなかった(着色印刷層が存在する箇所では、着色印刷層の厚みは殆ど一定であった)。
【0073】
[比較例3]
図10に示すようなエンボス突起を有するエンボス版を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、凹部を有する内装シートを作製した。
比較例3では、図10に示す凸端面部の幅Aが、2mm、2つの凸側面部の基端間の長さBが、4mm、エンボス突起の高さCが、1.5mmであるエンボス版を使用した。
【0074】
比較例3の内装シートについても、凹部の状態を確認したところ、凹部は、使用したエンボス突起に対応した形状となっており、断面視直線状の凹み傾斜部を有し、凹部の深さ及び最深部の幅は、表1の通り、エンボス突起の寸法に対応していた。
凹み傾斜部に対応した領域における着色印刷層は、断裂しており、断裂した端面が確認された。また、最深部に対応した領域において、着色印刷層は存在していなかった(着色印刷層が存在する箇所では、着色印刷層の厚みは殆ど一定であった)。
【0075】
【表1】
【0076】
[外観観察]
各実施例及び比較例の内装シートを、水平な机の上に載置し、その真上約50cmの位置から内装シートの表面を目視観察した。
その結果を表1に示す。表1の外観の欄の記号は、下記の通りである。
○1:凹部の最深部が綺麗な白色に見え、凸部(凹部以外の内装シートの表面)が黒色に見え、凹み傾斜部において黒色から白色へなだらかに色彩が変化し、自然な感じのデザインとなっていた。
○2:凹部の最深部が白色に見え、凸部が黒色に見え、凹み傾斜部において黒色から白色へなだらかに色彩が変化し、自然な感じのデザインとなっていた。
○3:凹部の最深部が若干灰色がかった白色に見え、凹み傾斜部において黒色から白色へなだらかに色彩が変化し、自然な感じのデザインとなっていた。
×1:凹部の凹み傾斜部及び最深部が黒色に見え、内装シートが全体的に黒一色のデザインとなっていた。
×2:凹部の最深部が綺麗な白色に見えたが、凹み傾斜部において黒色と白色の境界が目立っていた。
【0077】
[耐候性試験]
JIS A 1415の「高分子系建築材料の実験室光源による暴露試験方法」を行った。具体的には、各実施例及び比較例の内装シートを、凹部を含んで縦×横=300mm×300mmに切り取って試験片を作製した。この試験片を用いて、「高分子系建築材料の実験室光源による暴露試験方法」の6試験方法に規定されているJIS K 7350-2に従い、キセノンアークランプを用いて、所定条件下で(ブラックパネル温度が63±3℃で、スプレーサイクルが102分照射後、18分照射及び水噴霧である)、暴露試験を行った。試験片は4000時間暴露した。暴露後に、試験片の外観変化を観察した。外観変化の判定には、変退色用グレースケールを用いた。
その結果を表1に示す。表1の外観の欄の「○」は、4級以上の性能がある場合、「△」は3級の場合、「×」は2級以下の場合を示す。
【0078】
[評価]
外観的には実施例5乃至7の内装シートが優れていたが、外観及び耐光性を考慮すると、実施例2乃至4の内装シートが優れていた。実施例1乃至7のように、凹部の深さを1.2mm以下(特に、実施例1乃至4のように1mm以下)にすることにより、凹み傾斜部においてなだらかに色彩が変化する内装シートが得られた。
なお、実施例5乃至7の内装シートは、凹部において実施例2乃至4に比して表層及び着色印刷層の厚みが小さくなっており、それが耐候性を低下させたものと推定される。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の内装シートは、一般住宅、オフィスビル、ホテル、マンション、商業施設などの各種建築物の床材、壁材、天井材などに使用できる。
【符号の説明】
【0080】
1 内装シート
2 シート本体
3 凹部
31 凹み傾斜部
32 最深部
4 表層
5 着色印刷層
51 着色印刷層の漸減部
52 着色印刷層の最薄部
6 合成樹脂層
7 繊維補強層
8 バッキング層
9 エンボス版
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10