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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】水耕栽培用水槽
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20220314BHJP
【FI】
A01G31/00 601B
A01G31/00 601D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018023139
(22)【出願日】2018-02-13
(65)【公開番号】P2019135993
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】特許業務法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】加藤 晋康
(72)【発明者】
【氏名】塚本 篤史
【審査官】佐藤 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-082668(JP,A)
【文献】特開2014-217290(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0056437(US,A1)
【文献】特開2017-118837(JP,A)
【文献】特開2014-082996(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2003-0066554(KR,A)
【文献】特開平06-327367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00-31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に段差を形成した底部を具備する長尺樋部材で構成され、
前記底部の最下部に略水平に配置される第一底部を備え、
前記段差は、前記第一底部から略垂直に延びる第一側部と前記第一側部から外側に延びる第二底部とを備え、
前記第二底部の外側から略鉛直方向に延びる第二側部を備え、
前記第一底部と前記第二側部とを接続する曲面状の外周部を備え、
前記第二側部の上方部に突起形状又は中空形状のリブを具備する水耕栽培用水槽であって、
前記水耕栽培用水槽と、継手と、が一体化されており、
前記水耕栽培用水槽と前記継手との間にシーリング材が充填されていること、
を特徴とする水耕栽培用水槽。
【請求項2】
前記段差の内部及び前記リブの内部に形成された中空部にシーリング材が充填されていること、
を特徴とする請求項1に記載の水耕栽培用水槽。
【請求項3】
前記第二側部は、前記外周部の上端から前記リブの高さ位置まで略鉛直に延びる平滑面を有すること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の水耕栽培用水槽。
【請求項4】
最下段の第一底部幅と二段目の第二底部幅との比が70~90%であること、
を特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の水耕栽培用水槽。
【請求項5】
前記継手に排水管が接続されていること、
を特徴とする請求項1~のいずれかに記載の水耕栽培用水槽。
【請求項6】
前記水耕栽培用水槽の長さと幅の比が20:1~300:1であること、
を特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の水耕栽培用水槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の根部が流路内で広がることを抑えて養液の流路を確保しつつ、全体の剛性を担保し、継手を用いて簡便に接続することができる水耕栽培用水槽に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、土壌を用いる必要が無く、屋内の狭い空間において高密度な生産が可能で、また、天候の影響を受けること無く温度や湿度等を調整でき、さらには、雑菌や害虫等による汚染を除去しやすい等の多くの利点から、水耕栽培装置が注目されている。当該水耕栽培装置は、植物を生育する栽培棚を上下方向に所定の離間距離で多段に配置すると共に、各水耕容器の上方部側に照明装置を設けた水耕栽培装置が一般に採用されている。
【0003】
上記水耕栽培用装置には、内部に植物の成長を促進させる養液を貯留又は循環させる長尺樋状の水槽が配設されており、この水槽内の養液に植物の根部を浸すことで植物の成長を促進させている。一部には、この水槽の内部に段差を設け、藻の発生を防止しつつ異物等が入り込むことによる養液の循環(流れ)不良を抑制するものが存在する(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-82996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の水槽では、植物の成長に伴う根部の広がりにより、水槽内の流路が封鎖されて養液の流れが妨害され、外部に溢れ出てしまう問題があった。また、水槽は水耕栽培装置の構造から長尺状に構成されるため、継手等を用いて複数を突き合わせて接続し、延長可能とすることが求められるが、従来の水槽では内部に設けた段差形状が外周部の形状にも影響を及ぼしていることから、継手等を用いた接続が困難となり、漏水や清掃性を含めた取扱性が低下していた。
【0006】
更に、水槽は水耕栽培装置内で部分的に支持されて固定されるため、撓み等の発生が懸念されるが、従来の水槽では構造的に上方部の剛性が低く、使用中に撓んで養液が所望しない方向に流れてしまう等の問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みて創作されたものであり、植物の成長に伴う根部の広がりに起因する槽内部の流路の止水を防止して養液の流水性を維持し、全体の剛性を高めつつ、継手を用いて簡便に接続することができる水耕栽培用水槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決すべく、本発明は、
内側に段差を形成した底部を具備する長尺樋部材で構成され、
側部の上方部に突起形状又は中空形状のリブを具備すること、
を特徴とする水耕栽培用水槽を提供する。
【0009】
このような構成を有する本発明の水耕栽培用水槽では、内部に段差を形成した底部を具備することで、植物の成長に伴う根部の広がりに起因する槽内部の流路の止水を防止し、養液の流水性を維持することができる。また、突起形状又は中空形状のリブを具備しているため、特に上方部の剛性を担保して長尺でも安定して使用することができる。
【0010】
また、上記の本発明の水耕栽培用水槽においては、最下段の第一底部幅と二段目の第二底部幅との比が70~90%であることが望ましい。
【0011】
このような構成を有する本発明の水耕栽培用水槽では、所定の流量で養液を第一流路(第一底部幅内)に流すことができ、植物の根部が成長して第一流路を堰き止めたとしても、第二流路(第二底部幅内)を流路として流すことができる。
【0012】
また、上記の本発明の水耕栽培用水槽においては、外周部が略曲面状に形成されていることが望ましい。
【0013】
このような構成を有する本発明の水耕栽培用水槽では、外周部に段差を有さず緩やかな曲面で形成されているため、継手を用いて容易に他の水耕栽培用水槽を長尺方向に複数接続して延長することができる。また、継手との当接面が平滑となるため、隙間等の発生を抑制し、漏水を好適に防止することができる。
【0014】
また、上記の本発明の水耕栽培用水槽においては、請求項1~3に記載の水耕栽培用水槽と、継手と、が一体化されていることが望ましい。
【0015】
このような構成を有する本発明の水耕栽培用水槽では、継手を水耕栽培用水槽と一体的に形成することで、部品点数を低減して取扱性を向上し、かつ水耕栽培用水槽同士の延長接続をより簡便に行うことができる。また、水耕栽培用水槽とは別個に用意した継手を用いて二本を接続する場合と比較すると、継手と水耕栽培用水槽とが接面する面積が低減され、継手周辺からの漏水を大幅に抑制することができる。これに伴い、取扱性及び清掃性も向上することができる。
【0016】
また、上記の本発明の水耕栽培用水槽においては、前記継手に排水管が接続されていることが望ましい。
【0017】
このような構成を有する本発明の水耕栽培用水槽では、継手に排水管を接続することで、排水管が継手を用いた水耕栽培用水槽の接続に干渉することがなく、また長尺方向の端部に配設することができるため、例えば川下に流れ着いた養液を効果的に移送することができる。すなわち、従来の水槽では、一つの樋部材で形成されている結果、排水管の接続が水槽端部に限定されたものであったが、本発明の水耕栽培用水槽では、継手を介して排水管を接続することにより、従来のような限定はなく、水槽の任意の位置に排水管の接続が可能となる。
【0018】
また、上記の本発明の水耕栽培用水槽においては、前記水耕栽培用水槽と前記継手との間にシーリング材が充填されていることが望ましい。
【0019】
このような構成を有する本発明の水耕栽培用水槽では、継手との当接面近傍及び断面に形成した中空部内にシーリング材が充填されることで、接続部の固定力を向上しつつ漏水を防止することができる。
【0020】
また、上記の本発明の水耕栽培用水槽においては、更に、長さと幅の比が20:1~300:1であることが望ましい。
【0021】
このような構成を有する本発明の水耕栽培用水槽では、水耕栽培用水槽の剛性を担保しつつ、養液を所望の流量で流すことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、植物の成長に伴う根部の広がりに起因する槽内部の流路の止水を防止して養液の流水性を維持し、全体の剛性を高めつつ、継手を用いて簡便に接続することができる水耕栽培用水槽を提供することができる。
【0023】
なお、第二底部の下方に中空部があるが、流路確保の都合上、第一及び第二底部の幅、及び高さで従来の水槽の形状とは異なる。また、側部がほぼ一様に垂直に形成されており、多数の水槽を水耕栽培装置内に効率よく並べることが出来る。また、内側面が滑らかな曲面で形成されることで清掃も容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態における水耕栽培用水槽1の概要を示す模式図である。
図2】本実施形態における水耕栽培用水槽1の構造を示す斜視図である。
図3】本実施形態における水耕栽培用水槽1の断面図である。
図4】本実施形態における水耕栽培用水槽1の流水効果を示す図であって、図4(a)は、第一流路13を用いて養液53を流した状態を示す模式図であり、図4(b)は、第二流路14を用いて養液53を流した状態を示す模式図である。
図5】本実施形態の水耕栽培用水槽1に用いる継手11の構造を示す模式図である。
図6】排水管23を具備した継手211の構造を示す図であって、図6(a)は、幅方向Xに切断した継手211の断面図であり、図6(b)は、継手211の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る水耕栽培用水槽1の代表的な実施形態を、図を参照しながら詳細に説明する。但し、本発明は図示されるものに限られるものではなく、各図面は本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表している場合もある。更に、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略することもある。
【0026】
1.水耕栽培用水槽1の概要
図1を用いて、本実施形態における水耕栽培用水槽1の概要について説明する。図1は、本実施形態における水耕栽培用水槽1の概要を示す模式図である。本水耕栽培用水槽1は、天候及び気温、さらに害虫等の種々の影響を低減し、植物51の光合成を高効率化しつつ安定した栽培を可能にする水耕栽培装置101に配設する部品であって、内部に植物51の成長を促進させる養液53を貯留又は循環させる水槽である。
【0027】
また、本実施形態の水耕栽培用水槽1は、植物51の成長に伴う根部55の広がりに起因する槽内部の流路の止水を防止し、養液53の流水性を維持することができる特徴を有している。また、長尺で使用するものであるため、剛性を高めつつ、別個又は一体的に形成された継手11部品を用いて簡便に接続することができる特徴も有したものである。
【0028】
なお、本実施形態における水耕栽培用水槽1を配設する水耕栽培装置101は、例えば、本体を形成する構造フレーム103と、植物51を保持する植生プレート105と、植物51に光を照射して光合成を促す照明装置107と、栽培エリア内の空気を外部に排出させる排気ファン109と、構造フレーム103で構成した本体の天部に配設される天板111及び側部に貼付けられる側板113と、などから構成されたものであって、既に公知の構成を用いることができ、例えば特開2017-042009号公報に示される水耕栽培装置等が好ましい。
【0029】
2.水耕栽培用水槽1の構造
<水耕栽培用水槽1の断面構造>
次に、図2を用いて、本実施形態における水耕栽培用水槽1の構造について詳細に説明する。図2は、本実施形態における水耕栽培用水槽1の構造を示す斜視図である。なお、以下より水耕栽培用水槽1の幅方向をX、長尺(長さ)方向をY及び高さ方向をZとして説明する。
【0030】
図2に示すように、水耕栽培用水槽1は、幅方向Xに垂直な断面を長尺方向Yからみた場合に、略U字状(樋形状)の断面形状を有する長尺の水槽(長尺状樋部材)で構成されており、概ね側面の壁となる第二側部19と、最下段に位置する第一底部3と、第一底部3より上方に位置する第二底部5と、第一底部3から第二底部5を略鉛直に繋ぐ第一側部17と、双方の第二側部19の上方で互いに対向して配設されたリブ7と、を断面に具備して形成されている。
【0031】
本実施形態における水耕栽培用水槽1の断面形状についてより具体的には、最下部に略水平(水耕栽培装置101を設置する床面115と略平行)に配置される第一底部3が配設され、この第一底部3の幅方向Xの両端に第一底部3に対して略鉛直に立設した第一側部17が配設されて第一流路13が形成されている。また、双方の第一側部17から幅方向Xかつ外側に延びる第二底部5が接続されており、この第二底部5は第一底部3と略平行(換言すると床面115と略平行)に配設されていて、段差を形成している。
【0032】
更に、第二底部5の幅方向Xの外側端部には、この第二底部5に対して略鉛直に立設した第二側部19が配設されて上方まで延び、第二流路14を形成しつつ、略最上部に双方が対向する突起状のリブ7を具備している。上述した第一底部3、第二底部5、第一側部17及び第二側部19は、平滑な面であって、断面視した角度は違うが、全て長尺方向Yに延びている。
【0033】
また、第二底部5及び第一側部17によって形成された段内部は中空部21となっており、リブ7の内部も中空部15となっている。これら中空部21、15により、本実施形態における水耕栽培用水槽1全体の剛性を向上しつつ、重量を低減して軽量化に貢献している。水耕栽培用水槽1は、上述のとおり養液53を内部で貯留又は循環させるため、全長に渡って湾曲や撓みが発生すると養液53の偏りや意図しない方向へ流れてしまうため所定の剛性付与が不可欠となるが、本実施形態の水耕栽培用水槽1では、長尺方向Yに延びるリブ7や第二底部5及び第一側部17によって形成された段を有するため、上記剛性を好適に担保することができる。
【0034】
なお、水耕栽培用水槽1は、上記のとおり剛性を担保する断面形状としたうえで、より撓み等の変形を防止するために全体のサイズを所定の範囲内で決定することが望ましい。より具体的には、水耕栽培用水槽1の長尺方向Yの長さ寸法と、幅方向Xの幅寸法と、の比が20:1~300:1の範囲となるよう全体のサイズを設定することが好ましい。
【0035】
<第一底部3及び第二底部5の幅寸法>
続いて、図3を用いて第一底部3及び第二底部5の幅寸法の設定について詳細に説明する。図3は、本実施形態における水耕栽培用水槽1の断面図である。上記第一底部3及び第二底部5は、幅方向Xに対してそれぞれ所定の幅を設定し、形成することが望ましい。より具体的には、第二底部5の幅寸法L2(第二底部5に接する二面の第二側部19の対向距離)に対する第一底部3の幅寸法L1(第一底部3に接する二面の第一側部17の対向距離)の比を70%~90%として双方の幅寸法を設定することが好ましい。
【0036】
第一底部3の幅寸法L1及び第二底部5の幅寸法L2を上記比率にて設定することにより、所定の流量で養液53を第一流路13に流すことができ、植物51の根部55が成長して第一流路13を堰き止めたとしても、第二流路14から継続して流すことができる。
【0037】
図3に示すとおり、本実施形態における水耕栽培用水槽1は、外周部9に段差を有さず平滑で、緩やかな曲面状に形成されている。より具体的には、第一側部17と第二底部5とにより形成される段差の裏面の谷部を外部にそのまま露出せず、平滑で緩やかな曲面状の外壁で被覆することが望ましい(同時に中空部21を形成)。これにより、後述の継手11を用いて容易に水耕栽培用水槽1を長尺方向Yに複数接続して延長することができる。
【0038】
3.水耕栽培用水槽1の流水効果
次に、図4(a)及び(b)を用いて、本実施形態における水耕栽培用水槽1の流水効果について詳細に説明する。図4(a)及び(b)は、本実施形態における水耕栽培用水槽1の流水効果を示す図であって、図4(a)は、第一流路13を用いて養液53を流した状態を示す模式図であり、図4(b)は、第二流路14を用いて養液53を流した状態を示す模式図である。上述のとおり、水耕栽培用水槽1は、第一底部3及び第一側部17で形成された第一流路13と、第二底部5及び第二側部19で形成された第二流路14と、を用いることで、植物51の根部55に起因する止水が発生しても継続して養液53の流れを維持することができる。
【0039】
図4(a)に示すとおり、植物51を植生すると、根部55が成長と共に徐々に上方から下方に垂下し、次第に第一底部3に当接する。引続き根部55の成長に伴って第一底部3の幅方向Xに広がるが、第一底部3の幅方向Xの両端に立設した第一側部17に阻まれて略一時的に第一流路13内に収まる。この結果、植物51の根部55が第一側部17を超えて広がることを抑制される。
【0040】
更に植物51の成長が進むと、徐々に第一流路13内における根部55の密度が上昇し、第一流路13が有していた養液53の移送スペースを失って川下への流れを止め、止水する状態に陥る。しかしながら、川上からの流水は継続されるため、第一流路13内の養液53の水位が増して水面が上昇する。
【0041】
図4(b)に示すとおり、第一流路13の第一側部17が根部55の広がりを抑制しているため、第二側部19から第一側部17の間(第二流路14)は流水可能なスペースが確保された状態である。根部55により止水されて水位を増した養液53は、第一側部17の上端を乗り越えて第二流路14に到達し、上記スペースから川下に流れる。
【0042】
本実施形態の水耕栽培用水槽1は、幅寸法を異にしつつ上下に構成した二段の第一流路13及び第二流路14を有することで、植物51の根部55の成長に伴う広がり可能な範囲を強制し、状況に応じて養液53の流路を切り替えて流れを維持することができる。なお、本実施形態では、上述のとおり第一流路13と第二流路14とからなる二段の流路を具備して構成されたものを代表して説明しているが、より多数段の流路を具備して構成してもよい。
【0043】
4.継手を用いた水耕栽培用水槽1の延長
<継手11の構造>
次に、図5を用いて本実施形態の水耕栽培用水槽1に用いる継手11の構造について詳細に説明する。図5は、本実施形態の水耕栽培用水槽1に用いる継手11の構造を示す模式図である。水耕栽培用水槽1は、一般的な雨樋等の延長手法と同様の方法で複数を接続し、所望の長さに延長することができる。
【0044】
水耕栽培用水槽1とは別個の継手を形成し、複数の水耕栽培用水槽1の端面を突合せた状態で双方を固定するよう継手で接続する手法を用いることもできるが、部品点数が増えて取扱性が低下するため、より簡便に接続可能な以下の態様とすることが望ましい。
【0045】
図5に示すとおり、本実施形態の水耕栽培用水槽1の接続に用いる継手は、水耕栽培用水槽1の一方の端部に一体的に形成されることが好ましい。より具体的には、水耕栽培用水槽1の一方の端部の外周部9に沿って被覆(接着又は一体成形)する略U字状(樋形状)の継手11を形成し、水耕栽培用水槽1の一方の端部を越えて長尺方向Yに突出した受部12で、突合せた他の水耕栽培用水槽1の外周部9を被覆しつつ接続するものである。
【0046】
なお、受部12の突出長さ寸法は水耕栽培用水槽1の断面寸法及び長尺方向Yの長さ寸法に応じて適宜決定することが望ましい。また、本実施形態では他の水耕栽培用水槽1と継手11との固定態様を明示していないが、例えば受部12の高さ方向Zの上方に係止部等(図示せず)を形成し、他の水耕栽培用水槽1のリブ7に係止させて固定する等の態様を用いることができる。
【0047】
継手11を水耕栽培用水槽1の一方の端部と一体的に形成することで、部品点数を低減して取扱性を向上し、かつ水耕栽培用水槽1同士の延長接続を簡便に行うことができる。また、水耕栽培用水槽1とは別個に用意した継手を用いて二本を接続する場合と比較すると、継手と水耕栽培用水槽1とが接面する面積が略半分程度に減り(継手11は一方の水耕栽培用水槽1と一体的に形成されているため)、継手11周辺からの漏水を大幅に抑制することができる。
【0048】
また、水耕栽培用水槽1と継手11との当接面近傍及び断面に形成した中空部15及び中空部21内にシーリング材を充填することで、継手11の固定力を向上しつつ漏水を更に防止することができる。
【0049】
<排水管23を具備した継手211>
続いて、図6(a)及び(b)を用いて排水管23を具備した継手211の構造について詳細に説明する。図6(a)及び(b)は、排水管23を具備した継手211の構造を示す図であって、図6(a)は、幅方向Xに切断した継手211の断面図であり、図6(b)は、継手211の平面図である。水耕栽培装置101は養液53を循環させることで、より効率的に植物51の育成を促進させるため、水耕栽培用水槽1には川下等の所定の位置に排水管23を配設し、養液53を循環装置(図示せず)等に移送する必要がある。
【0050】
上記排水管23は、水耕栽培用水槽1とは別個に設けることもできるが、接続方法が煩雑となるため、継手211に接続して一体的に構成することが望ましい。より具体的には、図6(a)及び(b)に示すとおり、継手211の底面側から第一底部3に貫通する孔を設け、この孔に排水管23の端部を接続しつつ、排水管23の内部と水耕栽培用水槽1の第一流路13とを連通して構成することが望ましい。
【0051】
当該位置に排水管23を接続することで、排水管23が継手211を用いた水耕栽培用水槽1の接続に干渉することがなく、長尺方向Yの端部に配設することができるため、例えば川下に流れ着いた養液53を効果的に他へ移送することができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明してきたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載の精神及び教示を逸脱しない範囲でその他の改良例や変形例が存在する。そして、かかる改良例や変形例は全て本発明の技術的範囲に含まれることは、当業者にとっては容易に理解されるところである。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本実施形態における水耕栽培用水槽は、植物の成長に伴う根部の広がりに起因する槽内部の流路の止水を防止して養液の流水性を維持し、全体の剛性を高めつつ、継手を用いて簡便に接続することができるものである。
【符号の説明】
【0054】
1 水耕栽培用水槽
3 第一底部
5 第二底部
7 リブ
9 外周部
11 継手
12 受部
13 第一流路
14 第二流路
15 中空部
17 第一側部
19 第二側部
21 中空部
23 排水管
51 植物
53 養液
55 根部
101 水耕栽培装置
103 構造フレーム
105 植生プレート
107 照明装置
109 排気ファン
111 天板
113 側板
115 床面
211 継手
212 受部
X 幅方向
Y 長尺方向
Z 高さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6