(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】焦点調節装置及び焦点調節装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
G02B 7/28 20210101AFI20220314BHJP
G02B 7/34 20210101ALI20220314BHJP
G03B 13/36 20210101ALI20220314BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
G02B7/28 N
G02B7/34
G03B13/36
H04N5/232 120
(21)【出願番号】P 2018032501
(22)【出願日】2018-02-26
【審査請求日】2021-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】星野 友宏
(72)【発明者】
【氏名】菊地 哲央
【審査官】藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-109839(JP,A)
【文献】国際公開第2014/041733(WO,A1)
【文献】特開2017-219786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/28 - 7/40
G03B 3/00 - 3/12
G03B 13/30 -13/36
G03B 21/53
H04N 5/222- 5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のAFエリアを備え、前記AFエリアについて繰り返しデフォーカス量を検出し、前記デフォーカス量に基づきAFエリアを選択してフォーカス位置の調節を行う焦点調節装置において、
繰り返し検出される複数の前記デフォーカス量の各々を変換して複数のフォーカス目標位置を算出する変換部と、
特定の時点のフォーカス位置を基準位置に設定する基準設定部と、
前記デフォーカス量が検出される毎に、前記複数のフォーカス目標位置と前記基準位置とに基づいて前記基準位置を更新する基準更新部と、
前記デフォーカス量が検出される毎に、前記複数のフォーカス目標位置と更新された前記基準位置とに基づいて、前記複数のAFエリアから前記調節に用いるAFエリアを選択するエリア選択部と
を備
え、
前記基準更新部は、前記複数のフォーカス目標位置のうち最至近のフォーカス目標位置が、前記基準位置より第1の閾値以上至近側に離れた状態が、第1の回数だけ連続して発生するとき、前記基準位置を更新する、
焦点調節装置。
【請求項2】
前記基準更新部は、前記複数のフォーカス目標位置のうち、前記最至近のフォーカス目標位置に前記基準位置を更新する、請求項
1に記載の焦点調節装置。
【請求項3】
前記基準更新部は、前記複数のフォーカス目標位置のうち、2番目に至近側のフォーカス目標位置に前記基準位置を更新する、請求項
1に記載の焦点調節装置。
【請求項4】
前記エリア選択部は、前記複数のフォーカス目標位置のうち、更新された前記基準位置に最も近いフォーカス目標位置に対応するAFエリアを選択する、請求項
1乃至
3のうち何れか1項に記載の焦点調節装置。
【請求項5】
前記基準更新部は、前記複数のAFエリアのフォーカス目標位置のうち前記基準位置から最近傍のフォーカス目標位置が、前記基準位置より第2の閾値以上
無限側に離れた状態が、第2の回数だけ連続して発生するとき、前記基準位置を更新する、請求項1に記載の焦点調節装置。
【請求項6】
前記基準更新部は、前記複数のAFエリアのフォーカス目標位置のうち前記基準位置から最近傍のフォーカス目標位置と、前記基準位置との差の絶対値が第3の閾値以上の状態が発生するとき、前記基準位置を更新する、請求項1に記載の焦点調節装置。
【請求項7】
前記基準更新部は、前記基準位置を更新する前の最新のフォーカス位置に前記基準位置を更新する、請求項
5又は
6に記載の焦点調節装置。
【請求項8】
前記エリア選択部は、
時系列に算出されるフォーカス目標位置と時間の関係に基づく動体予測式であって、至近側を正とする場合に、正の所定の閾値以上の傾きを有する動体予測式が成立すると判定されたとき、前記複数のフォーカス目標位置のうち、至近側のフォーカス目標位置に対応するAFエリアを選択する、請求項1乃至
7のうち何れか1項に記載の焦点調節装置。
【請求項9】
前記エリア選択部は、絞り値又は感度値の設定に応じて、前記複数のフォーカス目標位置のうち、何れのフォーカス目標位置に前記基準位置を更新するか決定する、請求項
8に記載の焦点調節装置。
【請求項10】
複数のAFエリアを備え、前記AFエリアについて繰り返しデフォーカス量を検出し、
前記デフォーカス量に基づきAFエリアを選択してフォーカス位置の調節を行う焦点調節装置において、
繰り返し検出される複数の前記デフォーカス量の各々を変換して複数のフォーカス目標位置を算出することと、
特定の時点のフォーカス位置を基準位置に設定することと、
前記デフォーカス量が検出される毎に、前記複数のフォーカス目標位置と前記基準位置とに基づいて前記基準位置を更新することと、
前記デフォーカス量が検出される毎に、前記複数のフォーカス目標位置と更新された前記基準位置とに基づいて、前記複数のAFエリアから前記調節に用いるAFエリアを選択することと
を含
み、
前記基準位置を更新することは、前記複数のフォーカス目標位置のうち最至近のフォーカス目標位置が、前記基準位置より第1の閾値以上至近側に離れた状態が、第1の回数だけ連続して発生するとき、前記基準位置を更新することを含む、
焦点調節装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点調節装置及び焦点調節装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オートフォーカス(AF)動作中のAFエリア選択において、デフォーカス量に基づいてAFエリアを選択する技術がある。例えば、特許文献1では、デフォーカス量に基づいて主要被写体の存在するAFエリアを検出する技術が開示されている。例えば、特許文献2では、デフォーカス量の偏差が大きいAFエリアが主要被写体の存在しないAFエリアとして選択され難くなるようにする技術が開示されている。
【0003】
しかしながら、特に遠近混在の被写体において、これらの技術では適切にAFエリアを選択できるとは限らない。例えば至近側の被写体を撮影したいときに、無限側の背景に対してAFしてしまうことも十分に起こり得る。このような中、主要被写体に対して確実にAFできる技術には需要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-199261号公報
【文献】特開2015-087706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、主要被写体に合焦するために、適切なオートフォーカス(AF)エリアを選択できる焦点調節装置及び焦点調節装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、焦点調節装置は、複数のAFエリアを備え、前記AFエリアについて繰り返しデフォーカス量を検出し、前記デフォーカス量に基づきAFエリアを選択してフォーカス位置の調節を行う焦点調節装置において、繰り返し検出される複数の前記デフォーカス量の各々を変換して複数のフォーカス目標位置を算出する変換部と、特定の時点のフォーカス位置を基準位置に設定する基準設定部と、前記デフォーカス量が検出される毎に、前記複数のフォーカス目標位置と前記基準位置とに基づいて前記基準位置を更新する基準更新部と、前記デフォーカス量が検出される毎に、前記複数のフォーカス目標位置と更新された前記基準位置とに基づいて、前記複数のAFエリアから前記調節に用いるAFエリアを選択するエリア選択部とを備え、前記基準更新部は、前記複数のフォーカス目標位置のうち最至近のフォーカス目標位置が、前記基準位置より第1の閾値以上至近側に離れた状態が、第1の回数だけ連続して発生するとき、前記基準位置を更新する。
【0007】
本発明の一態様によれば、焦点調節装置の制御方法は、複数のAFエリアを備え、前記AFエリアについて繰り返しデフォーカス量を検出し、前記デフォーカス量に基づきAFエリアを選択してフォーカス位置の調節を行う焦点調節装置において、繰り返し検出される複数の前記デフォーカス量の各々を変換して複数のフォーカス目標位置を算出することと、特定の時点のフォーカス位置を基準位置に設定することと、前記デフォーカス量が検出される毎に、前記複数のフォーカス目標位置と前記基準位置とに基づいて前記基準位置を更新することと、前記デフォーカス量が検出される毎に、前記複数のフォーカス目標位置と更新された前記基準位置とに基づいて、前記複数のAFエリアから前記調節に用いるAFエリアを選択することとを含み、前記基準位置を更新することは、前記複数のフォーカス目標位置のうち最至近のフォーカス目標位置が、前記基準位置より第1の閾値以上至近側に離れた状態が、第1の回数だけ連続して発生するとき、前記基準位置を更新することを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、主要被写体に合焦するために、適切なオートフォーカス(AF)エリアを選択できる焦点調節装置及び焦点調節装置の制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る焦点調節装置1の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2A】
図2Aは、一実施形態に係る焦点調節装置制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図2B】
図2Bは、一実施形態に係る焦点調節装置制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る複数のAFエリアの一例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係るオールターゲットの場合における補正量の算出単位の一例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、一実施形態に係る第1のエリア選択処理におけるグループターゲットの場合のAF演算の実施範囲の一例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、一実施形態に係る第1のエリア選択処理におけるグループターゲットの場合のAF演算の実施範囲の一例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、一実施形態に係る第1のエリア選択処理におけるオールターゲットの場合のAF演算の実施範囲の一例を示す模式図である。
【
図8】
図8は、一実施形態に係る第1のエリア選択処理における顔AFの場合の顔検出範囲及びAF演算の実施範囲の一例を示す模式図である。
【
図9】
図9は、一実施形態に係る第1のエリア選択処理における顔AFの場合のAF演算の実施範囲に含まれるAFエリアの選択の優先順位の一例を示す模式図である。
【
図10】
図10は、一実施形態に係る第2のエリア選択処理における追尾AF時のAF演算の実施範囲の一例を示す模式図である。
【
図11】
図11は、一実施形態に係る第1のケースにおけるAFエリアの選択の一例を示す模式図である。
【
図12】
図12は、一実施形態に係る第2のケースにおけるAFエリアの選択の一例を示す模式図である。
【
図13】
図13は、一実施形態に係る第3のケースにおけるAFエリアの選択の一例を示す模式図である。
【
図14】
図14は、一実施形態に係るデフォーカス量=0を狙いとした制御が行われる場合のAFエリアに対するデフォーカス量分布と現在のレンズ位置及び真の合焦位置との関係の一例を示す模式図である。
【
図15】
図15は、一実施形態に係るデフォーカス量=+1Fδを狙いとした制御が行われる場合のAFエリアに対するデフォーカス量分布と現在のレンズ位置及び真の合焦位置との関係の一例を示す模式図である。
【
図16】
図16は、一実施形態に係る基準決定処理において、第1の基準変更条件に基づいて行われる第1の更新判定について説明するための図である。
【
図17】
図17は、一実施形態に係る基準決定処理の第1の更新判定において、第1の基準変更条件が成立しないと判定された場合に決定される基準位置について説明するための図である。
【
図18】
図18は、一実施形態に係る基準決定処理の第1の更新判定において、第1の基準変更条件が成立しないと判定された場合に決定される基準位置について説明するための図である。
【
図19】
図19は、一実施形態に係る基準決定処理において、第2の基準変更条件に基づいて行われる第2の更新判定について説明するための図である。
【
図20】
図20は、一実施形態に係る基準決定処理の第2の更新判定において、第2の基準変更条件が成立しないと判定された場合に決定される基準位置について説明するための図である。
【
図21】
図21は、一実施形態に係る基準決定処理の第2の更新判定において、第2の基準変更条件が成立しないと判定された場合に決定される基準位置について説明するための図である。
【
図22】
図22は、一実施形態に係る基準決定処理において、第3の基準変更条件に基づいて行われる第3の更新判定について説明するための図である。
【
図23】
図23は、一実施形態に係る基準決定処理の第3の更新判定において、第3の基準変更条件が成立しないと判定された場合に決定される基準位置について説明するための図である。
【
図24】
図24は、一実施形態に係る基準決定処理の第3の更新判定において、第3の基準変更条件が成立しないと判定された場合に決定される基準位置について説明するための図である。
【
図25】
図25は、一実施形態に係る第3のエリア選択処理において、静止被写体に対して選択されるAFエリアについて説明するための図である。
【
図26】
図26は、一実施形態に係る第3のエリア選択処理において、遠近混在時の動体被写体に対して選択されるAFエリアについて説明するための図である。
【
図27】
図27は、一実施形態に係る第3のエリア選択処理において、動体被写体に対して選択されるAFエリアについて説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
【0011】
≪焦点調節装置の構成≫
まず、本実施形態に係る焦点調節装置1の構成について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る焦点調節装置1の構成の一例を示すブロック図である。なお、当該焦点調節装置1は撮像装置の一例であって、また、カメラシステムの一例でもある。なお、
図1中において、矢印付き実線はデータの流れを、矢印付き破線は制御信号の流れをそれぞれ示している。
【0012】
本実施形態に係る焦点調節装置1は、主要被写体に合焦するために、適切なオートフォーカス(AF)エリアを選択できる焦点調節装置である。
図1に示すように、焦点調節装置1は、交換式レンズ100と、カメラ本体200とを備えるカメラシステムである。交換式レンズ100は、カメラ本体200に対して着脱できるように構成されている。交換式レンズ100とカメラ本体200とは、交換式レンズ100がカメラ本体200に装着されたときに、互いに通信できるように接続される。なお、焦点調節装置1は、必ずしもレンズ交換式のカメラシステムでなくてもよい。例えば、焦点調節装置1は、レンズ一体型のカメラシステムであってもよい。
【0013】
交換式レンズ100は、撮影レンズ102と、駆動部104と、レンズCPU106と、レンズ側記憶部108とを備える。
【0014】
撮影レンズ102は、被写体光束をカメラ本体200の撮像素子208の撮像面上に結像させるための光学系である。撮影レンズ102は、フォーカスレンズ1021と、絞り1022とを備える。フォーカスレンズ1021は、光軸方向への移動により、撮影レンズ102の焦点位置を調節できるように構成されている。絞り1022は、フォーカスレンズ1021の光軸上に配置されている。絞り1022の口径は可変である。絞り1022は、フォーカスレンズ1021を通過して撮像素子208に入射する被写体光束を調節する。駆動部104は、レンズCPU106の出力する制御信号に基づいて、フォーカスレンズ1021、絞り1022を駆動する。駆動部104は、フォーカスレンズ1021を光軸方向に移動させる。ここで、撮影レンズ102は、ズームレンズとして構成されていてもよい。この場合、駆動部104はズーム駆動も行う。
【0015】
レンズCPU106は、カメラ本体200のCPU216との間で通信自在となるように構成されている。レンズCPUとカメラ本体200との間の通信は、レンズ通信部としてのインターフェイス(I/F)110を介して行われる。レンズCPU106は、フォーカス制御部としての機能を有する。駆動部104は、CPU216又はレンズCPU106の制御に従ってフォーカスの動作を行う。レンズCPU106は、I/F110を介して、各種情報をCPU216に送信する。各種情報は、例えば、絞り1022の絞り値(F値)及びレンズ側記憶部108に記憶されているレンズ情報、現在のレンズパルス位置を含む。レンズ側記憶部108は、交換式レンズ100に関するレンズ情報を記憶している。レンズ情報は、例えば撮影レンズ102の焦点距離の情報や収差の情報を含む。
【0016】
カメラ本体200は、メカシャッタ202と、駆動部204と、操作部206と、撮像素子208と、撮像制御回路210と、アナログ処理部212と、アナログデジタル変換部(ADC)214と、CPU216と、画像処理部218と、画像圧縮展開部220と、焦点検出回路222と、表示部224と、バス226と、DRAM228と、本体側記憶部230と、記録媒体232と、追尾回路234と、顔検出回路236とを備える。
【0017】
メカシャッタ202は、開閉自在に構成されている。メカシャッタ202は、撮像素子208への被写体からの被写体光束の入射時間を調節する。被写体光束の入射時間は、例えば撮像素子208の露光時間である。メカシャッタ202としては、例えばフォーカルプレーンシャッタが採用される。駆動部204は、CPU216からの制御信号に基づいてメカシャッタ202を駆動する。
【0018】
操作部206は、焦点調節指示部206aを備える。焦点調節指示部206aは、例えばレリーズボタンである。焦点調節指示部206aは、1stレリーズ等のユーザによる操作に応じてフォーカシングを開始させる制御信号を出力する。すなわち、焦点調節指示部206aは焦点調節の開始指示を行う。操作部206は、電源ボタン、動画ボタン、再生ボタン、メニューボタンといった各種の操作釦及びタッチパネル等の各種の操作部材を含む。操作部206は、各種の操作部材の操作状態を検知し、検知結果を示す信号をCPU216に出力する。
【0019】
撮像素子208は、撮影レンズ102の光軸上に配置されている。撮像素子208は、メカシャッタ202の後方、かつ、撮影レンズ102によって被写体光束が結像される位置に配置されている。撮像素子208は、画素を構成する受光部が二次元的に配置されて構成されている。受光部は、例えばフォトダイオードである。撮像素子208を構成する受光部は、受光量に応じた電荷を生成する。受光部で発生した電荷は、各受光部に接続されているキャパシタに蓄積される。このキャパシタに蓄積された電荷は、撮像制御回路210からの制御信号に従って画素信号として読み出される。ここで、撮像素子208は、焦点検出画素を有していてもよい。
【0020】
撮像制御回路210は、撮像素子208の露光を制御する。撮像制御回路210は、撮像素子208からの画素信号の読出しを制御する。これらの制御は、撮像素子208からの画素信号の読出しの設定に従って行われる。
【0021】
アナログ処理部212は、撮像制御回路210の制御に従って撮像素子208から読み出された画素信号を取得する。アナログ処理部212は、画素信号に対して増幅処理等のアナログ処理を行う。アナログ処理部212は、処理後の画素信号をADC214へ出力する。ADC214は、アナログ処理部212から出力された画素信号を、デジタル形式の画素データに変換する。なお、以下の説明では、画素データの集まりを画像データと言うことにする。
【0022】
CPU216は、焦点調節装置1の全体の制御を行う制御部である。これらの制御は、本体側記憶部230等に記憶されているプログラムに従って行われる。CPU216は、動体予測部216aと、判定部216bと、敏感度設定部216cと、基準設定部216dと、基準更新部216eと、エリア選択部216fとしての機能を有する。
【0023】
動体予測部216aは、繰り返し検出される複数のデフォーカス量の履歴に基づいて動体予測式を算出する。当該履歴は、例えばDRAM228が記憶している過去の測距結果の履歴を含む。測距結果は、例えばデフォーカス量又はフォーカスレンズ1021の駆動位置に係る情報である。つまり、動体予測式は、デフォーカス量と時間との関係式であってもよいし、レンズパルス位置と時間との関係式であってもよい。また、動体予測式は、デフォーカス量の累積値と時間との関係式であってもよい。なお、複数の当該デフォーカス量は、例えば後述する焦点検出回路222によって繰り返し検出される。
【0024】
判定部216bは、動体予測式が成立するか否かを判定する第1の判定を行う。また、当該動体予測式から求まるフォーカスレンズ1021の駆動方向が至近方向であるか無限方向であるかを判定する第2の判定をさらに行う。第2の判定は、縦軸をレンズ位置と、横軸を時間としたときの当該動体予測式の傾きが正であるか負であるかの判定とも表現できる。ここで、フォーカスレンズ1021の駆動方向は至近方向であるとき、当該動体予測式の傾きが正であるとする。また、フォーカスレンズ1021の駆動方向は無限方向であるとき、当該動体予測式の傾きが負であるとする。なお、本実施形態における説明では、デフォーカス量が正であるとは、あるピントずれ量があってピントずれ方向が至近方向側であることを表すものとする。ただし、デフォーカス量、動体予測式の傾き等が正であるか負であるかは、例えばレンズ駆動方向の何れを正の方向とするかで変化し得ることは言うまでもない。また、詳細は後述するが、判定部216bは、検出された複数のデフォーカス量のうち、正のデフォーカス量の絶対値の最小値であって、負のデフォーカス量の絶対値の最小値の所定係数倍よりも小さいデフォーカス量が存在するか、又は、正のデフォーカス量が十分小さいか否かを判定する第3の判定をさらに行う。
【0025】
なお、判定部216bは、動体予測式の精度に係る評価を行ってもよい。本評価は、算出された動体予測式が、どの程度デフォーカス量の履歴情報に沿っているか等の評価である。また、このように評価される動体予測式の精度は、例えば動体予測式の信頼性、動体予測式の確からしさ等と表現することができる。
【0026】
敏感度設定部216cは、焦点調節の敏感度を設定する。例えばユーザは、急加速又は急減速するような、激しく動く被写体にAFを追従させたいときに、高い敏感度を設定することになる。当該敏感度は、例えば「高」、「標準」、「低」のような選択され得る区分等、複数の所定値が用意されているものでもよいし、ユーザが任意の値を設定できるようなものでもよい。
【0027】
基準設定部216dは、特定の時点のフォーカスレンズ1021のレンズパルス位置を取得する。フォーカスレンズ1021のレンズパルス位置は、焦点検出回路222から取得される。特定の時点には、例えば、移動する被写体に合わせてAFと合焦とを繰り返すコンティニュアスAF(C-AF)における連写の開始時が含まれる。以下、C-AFにおける連写をC-AF連写と記載する。特定の時点には、1stレリーズ保持中のLV用の撮影の開始時が含まれていてもよい。基準設定部216dは、取得したレンズパルス位置を基準位置に設定する。
【0028】
基準更新部216eは、基準位置を決定する基準決定処理において、基準位置を更新するか否かを判定する更新判定を行う。基準更新部216eは、更新判定の結果に基づいて、更新判定後の基準位置を決定する。
【0029】
エリア選択部216fは、複数のAFエリアから、フォーカス位置の調整に用いるAFエリアを選択する。第1のエリア選択処理及び第2のエリア選択処理におけるAFエリアの選択は、デフォーカス量に基づく。第3のエリア選択処理におけるAFエリアの選択は、フォーカス目標位置と、基準位置とに基づく。ここで、フォーカス目標位置は、デフォーカス量に基づいて算出されるレンズパルス位置である。フォーカス目標位置は、フォーカスレンズ1021を駆動させるときの目標位置であるから、レンズ目標位置であるとも表現できる。第2のエリア選択処理及び第3のエリア選択処理におけるAFエリアの選択は、動体予測式の成立の可否及び動体予測式の傾きにさらに基づく。
【0030】
画像処理部218は、画像データに対して各種の画像処理を施す。画像処理部218は、静止画像の記録の際には、静止画記録用の画像処理を施す。画像処理部218は、動画像の記録の際には、動画記録用の画像処理を施す。画像処理部218は、ライブビュー(LV)表示を行う際には、LV表示用の画像処理を施す。
【0031】
画像圧縮展開部220は、画像データの圧縮及び伸張を行う。画像データは、静止画像データであってもよいし、動画像データに含まれる画像データであってもよい。画像圧縮展開部220は、画像データの記録時には、画像処理部218で生成された画像データを圧縮する。画像圧縮展開部220は、画像データの再生時には、記録媒体232に圧縮状態で記録されている画像データを伸張する。
【0032】
焦点検出回路222は、フォーカスレンズ1021の合焦位置に対するデフォーカス量を算出するためのデフォーカス量演算を行う。デフォーカス量は、ピントずれ方向及びピントずれ量を示す。焦点検出回路222は、撮像素子208に焦点検出画素が設けられている場合には、焦点検出画素の画素データを取得する。焦点検出回路222は、取得した画素データに基づき、公知の位相差方式を用いてフォーカスレンズ1021の合焦位置に対するデフォーカス量を算出する。以下では焦点検出回路222は、焦点検出画素を用いた位相差方式でデフォーカス量を検出するものであるとして説明をする。しかしながら、焦点検出回路222は、焦点検出画素を用いた位相差方式以外の各種の方式でデフォーカス量を検出するものでよい。例えば、焦点検出回路222は、焦点検出画素とは別の測距センサから出力される一対の像データからデフォーカス量を検出するものであってもよい。焦点検出回路222は、信頼性判定部222aと、変換部222bとしての機能を有する。信頼性判定部222aは、デフォーカス量の検出に関する信頼性を判定する。すなわち、信頼性判定部222aは、2像間隔値の信頼性判定を行う。変換部222bは、算出されたデフォーカス量に基づいてフォーカス目標位置を算出する。ここで、フォーカス目標位置は、フォーカスレンズ1021の駆動すべきレンズパルス位置である。なお、デフォーカス量は、フォーカスレンズ1021の位置に対する相対位置である。一方で、フォーカス目標位置は、絶対位置である。なお、変換部222bとしての機能は、CPU216によって実行されてもよい。
【0033】
表示部224は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイである。表示部224は、例えばカメラ本体200の背面に配置される。表示部224は、電子ビューファインダ(EVF)を含む。表示部224は、CPU216の制御に従って画像を表示する。表示部224は、ライブビュー(LV)表示や記録済み画像の表示等に使用される。
【0034】
バス226は、撮像制御回路210、ADC214、CPU216、画像処理部218、画像圧縮展開部220、焦点検出回路222、表示部224、DRAM228、本体側記憶部230、記録媒体232、追尾回路234、顔検出回路236に接続されている。バス226は、これらのブロックで発生した各種のデータを転送するための転送路として機能する。
【0035】
DRAM228は、電気的に書き換えできるメモリである。DRAM228は、前述した画像データ(画素データ)、記録用の画像データ、表示用の画像データ、CPU216における処理データといった各種データを一時的に記憶する。なお、一時記憶用の記録回路としてSDRAMが用いられてもよい。本体側記憶部230は、CPU216で使用されるプログラム、カメラ本体200の調整値等の各種データを記憶している。記録媒体232は、記録用の画像データを所定の形式の画像ファイルとして記録する。記録媒体232は、カメラ本体200に内蔵されるように構成されていてもよいし、カメラ本体200に着脱自在に装填されるように構成されていてもよい。なお、DRAM228、本体側記憶部230及び記録媒体232は、それぞれ、1つのメモリ等で構成されていてもよいし、複数のメモリ等が組み合わされて構成されていてもよい。なお、DRAM228及び本体側記憶部230は、1つのメモリ等で構成されていてもよい。
【0036】
追尾回路234は、動きのある子供やペット等、動く被写体を追尾する。顔検出回路236は、被写体に顔が含まれているか否かを検出する。顔検出回路236は、顔が含まれている場合には、画角内の何れの位置に顔があるか等をさらに検出する。以下、本実施形態では顔検出回路236が検出した顔が含まれる領域を顔検出範囲と記載する。また、顔検出回路236は瞳検出回路を備える。瞳検出回路は、例えば顔検出回路236の検出した顔検出範囲内で、瞳の有無、瞳の位置等を検出する。
【0037】
なお、レンズCPU106及びCPU216は、例えばCentral Processing Unit(CPU)であるが、Application Specific Integrated Circuit(ASIC)、Field Programmable Gate Array(FPGA)、Digital Signal Processor(DSP)又はGraphics Processing Unit(GPU)等の集積回路であってもよい。レンズCPU106及びCPU216は、それぞれ、1つの集積回路等で構成されていてもよいし、複数の集積回路等が組み合わされて構成されていてもよい。これら集積回路等の動作は、例えばレンズ側記憶部108、本体側記憶部230又は集積回路の記録領域に記録されたプログラムに従って行われる。
【0038】
≪焦点調節装置の動作≫
次に、本実施形態に係る焦点調節装置1の動作について図面を参照して説明する。
図2A及び
図2Bは、本実施形態に係る焦点調節装置1で実行される制御処理の一例を示すフローチャートである。
【0039】
ステップS101において、CPU216は、例えば操作部206がユーザの操作に応じて出力する操作信号に基づいて、カメラの電源をオンとする。その後、処理はステップS102へ進む。
【0040】
ステップS102において、CPU216は、1stレリーズスイッチがオンの状態であるか否かを判定する。本判定は、例えば焦点調節指示部206aがユーザの操作に応じて出力する操作信号に基づいて行われる。1stレリーズスイッチは、例えばユーザによるレリーズボタンの半押し操作に応答してオンの状態となるスイッチである。処理は、1stレリーズスイッチがオンの状態であると判定された場合はステップS104へ進み、判定されなかった場合はステップS103へ進む。
【0041】
ステップS103において、CPU216は、ライブビュー(LV)表示用の画像データを取り込む。CPU216は、メカシャッタ202を全開状態とするように駆動部204の制御信号を切換えさせる。CPU216は、絞り1022を駆動するようにレンズCPU106に対して制御信号を出力する。CPU216は、絞り1022が開放され、かつ、メカシャッタ202が全開状態となるだけの所定時間の経過後に、撮像素子208によるLV表示用の露光動作を開始させる。このLV表示用の露光動作のフレームレートは、例えば60fpsである。画像処理部218は、焦点検出画素からの画素データに対して補正処理を行う。この補正処理により、焦点検出画素からの画素データは、撮像画素からの画素データと同様にLV表示に使用することができるようになる。この補正処理の後、画像処理部218は、LV表示用の画像データの生成に必要なその他の処理を行う。画像処理部218は、これら各種処理の後、表示用の画像データを生成する。CPU216は、表示用の画像データを表示部224に表示させる。その後、処理はステップS102へ戻る。ステップS103におけるLV画像の取り込み及びLV表示に係る処理はステップS102において1stレリーズスイッチがオンの状態であると判定されるまで繰り返し行われる。なお、カメラの電源をオフとするためのユーザ操作が検出されたとき、及び1stレリーズスイッチがオンの状態であると判定されない状態で所定の時間が経過したときには、処理は、ステップS130へ進んでもよい。
【0042】
ステップS104において、CPU216は、オートフォーカス(AF)用の画像データを取り込む。この際、CPU216は、撮像素子208によるAF用の露光動作を開始する。AF用の露光動作における露光時間は、LV表示用の露光動作における露光時間と異ならせてよい。また、AF用の露光動作においては、画素信号は、焦点検出画素のみから読み出されるものであってよい。
【0043】
ステップS105において、信頼性判定部222aは、2像間隔値の信頼性判定を行う。信頼性判定の詳細は後述する。本実施形態では、ステップS105以降の処理は、信頼性判定において3つの判定条件が全て成立していると判定されたAFエリアA1に対して実施されるものとする。なお、ここでの記載は、3つの判定条件の全てが成立しないAFエリアA1に対して以降の処理が行われることを除外するものではない。
【0044】
ステップS106において、焦点検出回路222は、フォーカスレンズ1021の合焦位置に対するデフォーカス量を検出する。デフォーカス量の検出は、デフォーカス量の算出と表現されてもよい。デフォーカス量は、ピントずれ方向及びピントずれ量を示す。デフォーカス量の算出は、焦点検出画素から取得された画素データを用いた公知の位相差方式に基づいて行われる。焦点検出回路222は、各々のAFエリアA1の2像間隔値に対してAFエリア毎に異なる感度値を乗算して、デフォーカス量を算出する。ここで、2像間隔値は、最少となる相関演算結果を示す像ずれ量の値である。デフォーカス量は、例えばmm単位の値として算出される。また、焦点検出回路222は、撮影レンズ102のコントラストベストずれ補正量をデフォーカス量に加算する。ここで、撮影レンズ102のコントラストベストずれ補正量は、光学補正量とも表現できる。光学補正量は、AFエリアA1毎に異なる。光学補正量は、概ね撮影レンズ102の周波数ずれ量である。なお、当該光学補正量は、例えば本体側記憶部230に記憶される。
【0045】
ステップS107において、CPU216は、第1のエリア選択処理を行う。第1のエリア選択処理の詳細は後述する。当該処理においては、ステップS106で算出されたデフォーカス量の値に基づいて最至近のデフォーカス量を示すAFエリアが選択される。また、第1のエリア選択処理は、1stレリーズが押下された後、一旦合焦判断が行われるまでの間に実施されることになる。
【0046】
ステップS108において、CPU216は、フォーカスレンズ1021が合焦状態であるか否かを判定する。本判定では、例えばデフォーカス量が予め定められた許容範囲内であるか否かが判定される。本判定の詳細は後述する。処理は、フォーカスレンズ1021が合焦状態であると判定されなかった場合はステップS109に進み、判定された場合はステップS111へ進む。
【0047】
ステップS109において、焦点検出回路222は、第1のエリア選択処理において選択されたAFエリアの出力するデフォーカス量をフォーカス目標位置へ変換する処理を行う。フォーカス目標位置は、レンズパルス位置である。本処理の詳細は後述する。本ステップで算出されたフォーカス目標位置は、ステップS110のフォーカスレンズ駆動で用いられる。ステップS110において、CPU216は、フォーカスレンズ1021を駆動させるための制御信号を生成する。生成された制御信号は、レンズCPU106へ出力される。制御信号は、第1のエリア選択処理で選択されたAFエリアに対応するフォーカス目標位置へフォーカスレンズ1021を移動させるための信号である。レンズCPU106は、取得した制御信号に基づいて、駆動部104を動作させる。駆動部104は、フォーカスレンズ1021を駆動する。その後、処理は、ステップS102へ戻る。
【0048】
ステップS111において、CPU216は、ステップS104の処理と同様にして、AF及びLV用の露光動作を開始し、また、画素信号を読み出す。ステップS112において、信頼性判定部222aは、ステップS105の処理と同様にして、2像間隔値の信頼性判定を行う。ステップS113において、焦点検出回路222は、ステップS106の処理と同様にして、デフォーカス量を算出する。
【0049】
ステップS114において、CPU216は、連写中か否かを判定する。処理は、連写中であると判定された場合はステップS127へ進み、判定されなかった場合はステップS115へ進む。
【0050】
ステップS115において、CPU216は、第2のエリア選択処理を行う。第2のエリア選択処理の詳細は後述する。本処理は、一旦主要被写体にピントが合った後、つまり、1stレリーズ保持中に実施されることになる。
【0051】
ステップS116において、焦点検出回路222は、ステップS109の処理と同様にして、デフォーカス量をフォーカス目標位置へ変換する処理を行う。本ステップでは、第2のエリア選択処理で選択されたAFエリアの出力するデフォーカス量について処理が行われる。本ステップで算出されたフォーカス目標位置は、ステップS118の動体予測演算及びステップS121又はステップS123のフォーカスレンズ駆動で用いられる。
【0052】
ステップS117において、CPU216は、動体予測演算に用いられる履歴情報を例えばDRAM228へ記憶させる。履歴情報は、例えば、第2のエリア選択処理において選択されたAFエリアの出力するデフォーカス量又は第2のエリア選択処理において選択されたAFエリアに対応するフォーカス目標位置を含む。ステップS118において、動体予測部216aは、動体予測演算を行う。動体予測演算は、過去の測距結果の履歴から今回のフォーカスレンズ1021の駆動すべき位置を予測する処理である。測距結果は、フォーカスレンズ1021の駆動位置である。
【0053】
ステップS119において、CPU216は、2ndレリーズスイッチがオンされているか否かを判定する。2ndレリーズスイッチは、例えばユーザによるレリーズボタンの全押し操作に応答してオンするスイッチである。処理は、2ndレリーズスイッチがオンされていないと判定された場合はステップS120へ進み、2ndレリーズスイッチがオンされていると判定されたときには、処理はステップS121へ進む。なお、2ndレリーズスイッチがオンであると判定されなかったとき、ステップS120の処理に先立って、1stレリーズスイッチがオンであるか否かが判定されてもよい。この場合、処理は、1stレリーズスイッチがオンであると判定された場合はステップS120へ進み、判定されなかった場合はステップS130へ進めばよい。
【0054】
ステップS120において、CPU216は、ステップS108と同様にして、フォーカスレンズ1021が合焦状態であるか否かを判定する。当該判定の詳細は後述する。処理は、フォーカスレンズ1021が合焦状態であると判定されていない場合はステップS121に進み、フォーカスレンズ1021が合焦状態であると判定された場合はステップS111へ戻る。ステップS121において、CPU216は、ステップS110と同様にして、フォーカスレンズを駆動させる。なお、本ステップにおいて、デフォーカス量のレンズパルス位置への変換が行われてもよい。その後、処理は、ステップS111へ戻る。
【0055】
ステップS122において、CPU216は、静止画連写撮影の本露光を行うために、メカシャッタ202の動作を開始させる。このメカシャッタ202の動作は、本露光の前後のメカシャッタ202の開閉動作と、本露光の後でライブビュー用及びAF用の露光動作を開始するためのメカシャッタ202の全開動作とを含む。CPU216は、まず、メカシャッタ202を全閉状態とするように駆動部204の制御信号を切り替える。そして、ステップS124で本露光を行った後に、CPU216は、メカシャッタ202を全開状態とするように駆動部204を制御する。ステップS123において、CPU216は、レンズCPU106に対してフォーカスレンズ1021及び絞り1022を同時駆動させるように指示して動作を開始させる。ここで、本ステップにおいては、Automatic Exposure(AE)用の露光量演算等で予め決定された静止画連写撮影に必要な開口量まで絞り1022を絞り込む駆動を行うように指示が行われる。ステップS124において、CPU216は、本露光を開始させる。本露光は、記録用の画像データを取得するための露光動作である。本露光において、CPU216は、予め決定された静止画連写撮影に必要な露光期間だけメカシャッタ202を開閉させるように駆動部204を制御する。そして、CPU216は、露光期間中に撮像素子208の撮像動作を開始する。露光期間の終了後、撮像制御回路210は、撮像素子208の各画素からの画素信号を読み出す。画素信号の読出し後、画像処理部218は、焦点検出画素の画素出力の補正及びその他の記録用の画像データを生成するための処理を行う。画像処理の完了後に画像圧縮展開部220は、記録用画像データを圧縮する。圧縮の完了後、CPU216は、圧縮された記録用画像データを画像ファイルとして記録媒体232に記録する。ステップS125において、CPU216は、レンズCPU106に対して絞り1022を駆動させるように指示する。ここで、本ステップにおいては、ライブビュー用の露光及びAF用の露光に必要な開口量(例えば開放絞り)まで絞り1022を開放する駆動を行うように指示が行われる。なお、本ステップの処理は、ステップS124の本露光後の画素信号の読出しと並列に行われてもよい。このような並列処理により、本露光の間のライブビュー画像の表示時間を延ばすことができる。
【0056】
ステップS126において、CPU216は、1stレリーズスイッチがオンの状態であるか又は2ndレリーズスイッチがオンの状態であるか否かを判定する。処理は、1stレリーズがオンの状態又は2ndレリーズスイッチがオンの状態であると判定された場合はステップS111へ戻り、判定されなかった場合はステップS130へ進む。
【0057】
ステップS127において、焦点検出回路222は、ステップS109及びステップS116の処理と同様にして、デフォーカス量をフォーカス目標位置へ変換する処理を行う。ただし、本ステップでは、ステップS113においてデフォーカス量が算出されたAFエリア毎に、フォーカス目標位置が算出される。本ステップで算出されたフォーカス目標位置は、ステップS128の基準決定処理、ステップS129の第3のエリア選択処理、ステップS118の動体予測演算及びステップS121又はステップS123のフォーカスレンズ駆動で用いられる。
【0058】
ステップS128において、CPU216は、基準決定処理を行う。基準決定処理の詳細は後述する。本処理は、ステップS129で実行される第3のエリア選択において基準として用いられる基準位置を決定する処理である。
【0059】
ステップS129において、CPU216は、第3のエリア選択処理を行う。第3のエリア選択処理の詳細は後述する。本処理では、主要被写体に合焦するために、ステップS127で算出されたフォーカス目標位置と、ステップS128の基準決定処理で決定された基準位置とに基づいて、複数のフォーカス目標位置から、適切なフォーカス目標位置が選択される。つまり、本処理では、相対位置であるデフォーカス量ではなく、絶対位置であるレンズパルス位置に基づいてAFエリアが選択される。
【0060】
なお、本実施形態に係る焦点調節装置制御処理において、ステップS127乃至ステップS129の処理が行われるのは、ステップS119で2ndレリーズがオンであると判定された後に、ステップS114で連写中であると判定された後である。つまり、本実施形態に係る焦点調節装置制御処理において、基準決定処理及び第3のエリア選択処理が行われるのは、C-AF連写中であると表現できる。なお、基準決定処理及び第3のエリア選択処理は、1stレリーズ保持中に行われてもよいし、LV表示用の撮像中に行われてもよい。
【0061】
ステップS130において、CPU216は、カメラ本体200の電源をオフするか否かを判定する。例えば、ユーザの操作部206の操作によって電源のオフが指示された場合又は所定時間のユーザの操作部206の操作がない場合には電源をオフすると判定される。処理は、カメラ本体200の電源をオフしないと判定された場合はステップS102へ戻り、電源をオフすると判定された場合は終了する。
【0062】
<信頼性判定について>
ここでは、ステップS105及びステップS112で実行される2像間隔値の信頼性判定について図面を参照して説明する。
図3は、本実施形態に係る全AFエリアA0の一例を示す模式図である。
図3に示すように、全AFエリアA0は、複数のAFエリアA1を含む。AFエリアA1は、縦と横とにそれぞれ11点ずつ配置されている。つまり、全AFエリアA0は、121点のAFエリアA1を含む。信頼性判定は、例えば、121点の各々のAFエリアA1に対して行われる。
【0063】
なお、焦点検出画素の配置によっては、1つのAFエリアA1について縦方向と横方向との2つの位相差検出方向のそれぞれで2像間隔値を得ることができる。この場合、信頼性判定は、121点の各々のAFエリアA1において縦方向と横方向とに対して行われる。
【0064】
信頼性判定は、焦点検出画素出力のコントラスト量が十分にあるか否かの判定を含む。信頼性判定は、相関演算結果における極小値が十分に小さいか否かの判定を含む。信頼性判定は、相関演算結果における極小値と、当該極小値をとる位置の両隣の位置における相関演算結果のうち大きい方の相関演算結果の値との傾きFSが十分であるか否かの判定を含む。傾きFSが十分であるか否かの判定は、V字にエッジが立っているか否かの判定であるとも表現できる。
【0065】
なお、信頼性判定の閾値は、エリア選択時の値と単なる合焦判断用の値とを分けて設定することもある。エリア選択時は、閾値を厳しく設定することで安定したエリア選択を実施し、合焦判断実施時などは、精度が確保できるぎりぎりのレベルの閾値とする。
【0066】
なお、信頼性判定における判定条件は上述した3つの条件に限定されず、他の条件が加わったり、3つの条件のうち何れかの条件が省かれたりし得る。また、各々のAFエリアA1が諸条件を満たすか否かの判定は、当該諸条件をどの程度満たしているかの程度を数値として算出し、当該数値に基づいて信頼性を評価するような判定であってもよい。
【0067】
<補正量の加算に係る演算時間について>
ここでは、ステップS106及びステップS113で実行されるデフォーカス量の検出における演算時間の短縮について、説明する。ステップS106及びステップS113では、例えば、AFエリアA1毎に、光学補正量がデフォーカス量に加算される。ここで、補正量の加算に係る演算時間を減らしたい場合には、焦点検出回路222は、例えば以下のように処理を行う。
【0068】
(グループターゲットの場合)
AFエリア設定がグループターゲットである場合を説明する。グループターゲットの場合、補正量の演算が実施される範囲は、5点グループ又は9点グループである。5点グループは、例えば、全AFエリアA0の121点中の5点のAFエリアA1を含む。9点グループは、全AFエリアA0の121点中の9点を含む。
【0069】
焦点検出回路222は、グループターゲット内に含まれる1点のAFエリアA1における補正量を算出する。焦点検出回路222は、算出された1点のAFエリアA1における補正量を仮の補正量として設定する。焦点検出回路222は、グループターゲット内の全てのAFエリアA1に対して、同一の仮の補正量を適用する。
【0070】
(オールターゲットの場合)
AFエリア設定がオールターゲットである場合を説明する。オールターゲットの場合、補正量の演算が実施される範囲は、全AFエリアA0である。ただし、焦点検出回路222は、上述したグループターゲットの場合と同様に、まとまった領域毎に同一の補正量を仮の補正量として適用する。
図4は、オールターゲットの場合における補正量の算出単位の一例を示す模式図である。
図4中に太枠線で示すように、全AFエリアA0内には、複数の補正量演算の実施範囲A2が設定されている。各々の補正量演算の実施範囲A2は、複数のAFエリアA1を含む。補正量演算の実施範囲A2に含まれるAFエリアA1の数は、補正量演算の実施範囲A2によって異なる。例えば、全AFエリアA0の中央に位置する補正量演算の実施範囲A2は、縦3点×横3点の9点のAFエリアA1を含む。同様に、補正量演算の実施範囲A2は、中央の上下では2×3の6点、中央の左右では3×2の6点、その他の位置では2×2の4点のAFエリアA1をそれぞれ含む。つまり、全AFエリアA0に設定される補正量演算の実施範囲A2は、25個である。
【0071】
焦点検出回路222は、補正量演算の実施範囲A2毎に補正量の算出を行う。焦点検出回路222は、補正量演算の実施範囲A2内に含まれる1点のAFエリアA3における補正量を算出する。ここで、補正量が算出されるAFエリアA3は、
図4中において、ハッチングが付されて示されているAFエリアA1である。
図4中に示すように、AFエリアA3は、例えば、各々の補正量演算の実施範囲A2に含まれるAFエリアA1のうち、撮像素子208の中央に最も近い位置に配置されているAFエリアA1である。焦点検出回路222は、算出された1点のAFエリアA3における補正量を仮の補正量として設定する。焦点検出回路222は、補正量演算の実施範囲A2内の全てのAFエリアA1に対して、同一の仮の補正量を適用する。
【0072】
したがって、補正量の演算は、121回×2方向分ではなく、25回×2方向分の算出時間で済ますことが出来る。そして、レンズ駆動を行うための最終的なデフォーカス量を算出するときには、焦点検出回路222は、後述するエリア選択処理にて選択したAFエリアに対して、最終的に、正しい補正量を算出すればよい。
【0073】
なお、補正量演算の実施範囲A2内のAFエリアA3は、
図4に示す配置に限らない。補正量演算の実施範囲A2に含まれるAFエリアA1のうち、何れのAFエリアA1がAFエリアA3として選択されてもよい。
【0074】
<デフォーカス量のレンズパルス位置への変換について>
ここでは、ステップS109、ステップS116及びステップS127で実行されるデフォーカス量をレンズパルス位置へ変換する処理について説明する。本処理は、ステップS109では、第1のエリア選択処理で選択されたAFエリアの出力するデフォーカス量について行われる。本処理は、ステップS116では、第2のエリア選択処理で選択されたAFエリアの出力するデフォーカス量について行われる。本処理は、ステップS127では、ステップS113でデフォーカス量が算出されたAFエリアA1毎に行われる。
【0075】
デフォーカス量は、近似式を用いてレンズパルス位置へ変換される。近似式は、例えば、交換レンズ毎に決まるデフォーカス量の3次式である。例えば、レンズパルス位置へ変換されたデフォーカス量PDは、式(1)のように表される。また、本処理では、AFエリアA1毎にフォーカス目標位置TLPが算出される。フォーカス目標位置TLPは、合焦レンズ位置、合焦パルス位置とも表現され得る。フォーカス目標位置TLPは、現在のレンズ位置CLPと、レンズパルス位置へ変換されたデフォーカス量PDを用いて、式(2)のように表される。なお、フォーカス目標位置TLP及び現在のレンズ位置CLPは、それぞれ、レンズパルス位置である。
【0076】
PD=a×(Def)3+b×(Def)2+c×(Def), 式(1)
TLP=CLP+PD. 式(2)
ここで、Defはデフォーカス量である。三次の項の比例定数であるaと、二次の項の比例定数であるbと、一次の項の比例定数であるcとの各々の係数は、撮影レンズのズーム値、現在のレンズ位置によって撮影レンズ毎に一意に決まる値である。
【0077】
このように、相対位置を示すデフォーカス量は、絶対位置を示すレンズパルス位置へと変換される。算出されたフォーカス目標位置TLPは、ステップS110、ステップS121及びステップS123のフォーカスレンズ1021の駆動、ステップS118の動体予測演算、ステップS128の基準決定処理、ステップS129の第3のエリア選択処理等で用いられる。
【0078】
なお、ステップS109で行われるデフォーカス量のレンズパルス位置への変換に係る処理は、例えば、ステップS106でデフォーカス量が検出されたときに行われてもよい。このとき、本処理は、ステップS106でデフォーカス量が算出されたAFエリアA1毎に行われる。また、ステップS116及びステップS127で行われるデフォーカス量のレンズパルス位置への変換に係る処理は、例えば、ステップS113でデフォーカス量が検出されたときに行われてもよい。このとき、本処理は、ステップS113でデフォーカス量が算出されたAFエリアA1毎に行われる。
【0079】
<第1のエリア選択処理>
ここでは、ステップS107で実行される第1のエリア選択処理について、図面を参照して、より詳細に説明をする。第1のエリア選択処理では、焦点調節指示部206aから焦点調節の開始指示がなされたときから、合焦判断がなされるときまでの間に実施される。ここで、焦点調節指示部206aから焦点調節の開始指示がなされたときは、例えば、ステップS102において1stレリーズスイッチが押下されたと判定されたときである。合焦判断がなされるときは、例えば、ステップS108において一旦合焦状態か否かの判定がなされるときである。第1のエリア選択処理では、複数のデフォーカス量のうち正のデフォーカス量の最大値を示すAFエリアA1が選択される。デフォーカス量の最大値が示すAFエリアは、最至近を示すAFエリアA1であると表現できる。
【0080】
(シングルターゲットの場合)
シングルターゲットの場合には、例えば、ユーザによって指定された1つのAFエリアA1について、縦方向と横方向との2つの位相差検出方向のそれぞれで位相差が検出される。つまり、位相差検出方向のそれぞれで2像間隔値が得られる。信頼性を有すると判定された位相差検出方向のうち、デフォーカス量の最大値を示す位相差検出方向が選択される。選択された位相差検出方向の示すデフォーカス量が採用される。なお、当該位相差検出演算が行われるAFエリアA1は、AF演算の実施範囲と表現され得る。
【0081】
(グループターゲットの場合)
図5は、本実施形態に係る第1のエリア選択処理における5点グループの場合のAF演算の実施範囲A4の一例を示す模式図である。5点グループの場合のAF演算の実施範囲A4は、
図5中において、十字形の太枠線で囲まれて示されている領域である。
図6は、本実施形態に係る第1のエリア選択処理における9点グループの場合のAF演算の実施範囲A5の一例を示す模式図である。9点グループの場合のAF演算の実施範囲A5は、
図6中において、矩形の太枠線で囲まれて示されている領域である。
【0082】
グループターゲットの場合には、例えば、ユーザによって指定されたAF演算の実施範囲内のAFエリアA1が考慮される。信頼性を有すると判定されたAF演算の実施範囲内のAFエリアA1のうち、デフォーカス量の最大値を示すAFエリアA1が選択される。選択されたAFエリアA1の示すデフォーカス量が採用される。
【0083】
なお、デフォーカス量の最大値を示すAFエリアA1が選択された後に、シングルターゲットの場合と同様にして、デフォーカス量の最大値を示す位相差検出方向がさらに選択されてもよい。この場合、2つの位相差検出方向が示すデフォーカス量のうち、デフォーカス量の最大値を示す位相差検出方向が選択される。
【0084】
なお、位相差検出方向の選択は、デフォーカス量の最大値を示すAFエリアA1が選択された後に限らない。例えば、信頼性判定の結果、信頼性を有すると判定されたAFエリアA1に含まれる位相差検出方向のうち、デフォーカス量の最大値を示す位相差検出方向が選択される。このとき、選択された位相差検出方向の示すデフォーカス量が採用される。
【0085】
(オールターゲットの場合)
オールターゲットの場合のAF演算の実施範囲は、全AFエリアA0である。ただし、本実施形態に係る第1のエリア選択処理では、オールターゲットの場合には、優先的にAF演算が実施される範囲が設定されている。
図7は、本実施形態に係る第1のエリア選択処理におけるオールターゲットの場合のAF演算の優先実施範囲の一例を示す模式図である。
図7に示すように、AF演算の優先実施範囲は、第1のAF演算の優先実施範囲A6と、第2のAF演算の優先実施範囲A7とを含む。第1のAF演算の優先実施範囲A6は、
図7中において、実線の太線枠で囲まれて示されている領域である。第1のAF演算の優先実施範囲A6は、全AFエリアA0のうち、中央25点のAFエリアA1を含む領域である。第2のAF演算の優先実施範囲A7は、
図7中において、破線の太線枠で囲まれて示されている領域である。第2のAF演算の優先実施範囲A7は、全AFエリアA0のうち、中央49点のAFエリアA1を含む領域である。
【0086】
オールターゲットの場合には、まず、第1のAF演算の優先実施範囲A6内のAFエリアA1が考慮される。このとき、信頼性を有すると判定されたAFエリアA1が第1のAF演算の優先実施範囲A6内に存在するか否かが判定される。
【0087】
信頼性を有すると判定されたAFエリアA1が第1のAF演算の優先実施範囲A6内に存在する場合を説明する。この場合、信頼性を有すると判定されたAFエリアA1のうち、正のデフォーカス量の最大値を示すAFエリアA1が選択される。つまり、最至近のデフォーカス量を示すAFエリアA1が選択される。
【0088】
信頼性を有すると判定されたAFエリアA1が第1のAF演算の優先実施範囲A6内に存在しない場合を説明する。この場合、第1のAF演算の優先実施範囲A6に代えて、第2のAF演算の優先実施範囲A7内のAFエリアA1が考慮される。このとき、信頼性を有すると判定されたAFエリアA1が第2のAF演算の優先実施範囲A7内に存在するか否かが判定される。
【0089】
信頼性を有すると判定されたAFエリアA1が、第1のAF演算の優先実施範囲A6内には存在しない、かつ、第2のAF演算の優先実施範囲A7内には存在する場合を説明する。この場合、信頼性を有すると判定されたAFエリアA1のうち、正のデフォーカス量の最大値を示すAFエリアA1が選択される。つまり、最至近のデフォーカス量を示すAFエリアA1が選択される。
【0090】
信頼性を有すると判定されたAFエリアA1が、第1のAF演算の優先実施範囲A6内及び第2のAF演算の優先実施範囲A7内の何れの領域にも存在しない場合を説明する。この場合、第2のAF演算の優先実施範囲A7に代えて、121点の全AFエリアA0内のAFエリアが考慮される。このとき、全AFエリアA0内で信頼性を有すると判定されたAFエリアA1のうち、正のデフォーカス量の最大値を示すAFエリアA1が選択される。つまり、最至近のデフォーカス量を示すAFエリアA1が選択される。
【0091】
このように、オールターゲットの場合には、中央優先で、信頼性を有すると判定されたAFエリアA1のうち、最至近のデフォーカス量を示すAFエリアA1が選択される。
【0092】
なお、オールターゲットの場合もグループターゲットの場合と同様に、位相差検出方向の示すデフォーカス量について選択されてもよい。
【0093】
(追尾AFの場合)
追尾AFの場合には、まず、上述したシングルターゲット、グループターゲット又はオールターゲットのAFエリア設定に基づいて、AFエリアA1が選択される。選択されたAFエリアA1の示すデフォーカス量が取得される。ただし、追尾AFの場合には、選択されるAFエリアA1は、被写体の動き(追尾結果)に基づいて随時更新されていくことになる。
【0094】
(顔AFの場合)
図8は、本実施形態に係る第1のエリア選択処理における顔AFの場合の顔検出範囲A8及びAF演算の実施範囲A9の一例を示す模式図である。顔AFの場合の顔検出範囲A8は、
図8中において、破線の太線枠で囲まれて示されている領域である。顔検出範囲A8は、顔F0が存在する範囲である。顔検出範囲A8は、顔検出回路236の検出結果に基づいて決定される。顔AFの場合のAF演算の実施範囲A9は、
図8中において、実線の太線枠で囲まれて示されている領域である。AF演算の実施範囲A9は、顔検出範囲A8に基づいて決定される。本実施形態では、
図8に示すように、顔検出回路236の備える瞳検出回路によって瞳位置F1及び瞳位置F2が検出されている場合を例として説明する。
【0095】
図9は、
図8に示す場合におけるAF演算の実施範囲A9に含まれるAFエリアA1の選択の優先順位を示す模式図である。
図9中に示されている縦6点×横4点の数字は、それぞれ、
図8に示されているAF演算の実施範囲A9内の縦6点×横4点のAFエリアA1に対応する。
図9中の数字は、AF演算の実施範囲A9内の各々のAFエリアA1が選択される優先順位を表している。
図9中の数字は、値が小さいほど優先順位が高いことを示している。
図9に示すように、瞳位置F1に対応するAFエリアA1の優先順位は1位に設定されている。また、瞳位置F2に対応するAFエリアA1の優先順位は2位に設定されている。なお、
図9に示す瞳位置F1に対応するAFエリアA1と、瞳位置F2に対応するAFエリアA1との優先順位は一例であり、瞳位置F2に対応するAFエリアA1の優先順位が1位に設定されていてもよい。
【0096】
顔AFの場合には、AF演算の実施範囲A9内のAFエリアA1が考慮される。このとき、
図9に示す優先順位に従って、信頼性を有すると判定されたAFエリアA1のうち、瞳の位置に最も近いAFエリアA1が優先して選択される。なお、瞳位置近傍のAFエリアが信頼性を有していない場合には、顔中心のAFエリアが優先して選択されることになる。
【0097】
例えば、
図9に示す優先順位が1位である瞳位置F1に対応するAFエリアA1が信頼性を有すると判定されているとき、瞳位置F1に対応するAFエリアA1が選択される。なお、瞳位置F1に対応するAFエリアA1又は瞳位置F2に対応するAFエリアA1が信頼性を有すると判定されているとき、これらのうち、より信頼性の高いAFエリアA1が選択される仕様もあり得る。一方で、瞳位置F1に対応するAFエリアA1及び瞳位置F2に対応するAFエリアA1の何れも信頼性を有していない場合もあり得る。この場合には、信頼性を有しているAFエリアのうち、
図9中の優先順位が最も高いAFエリアが優先的に選択されることになる。
【0098】
このように、第1のエリア選択処理における顔AFでは、焦点検出回路222が各々のAFエリアにおいて繰り返し検出する複数のデフォーカス量のうち、顔検出範囲内の瞳の位置に対応するAFエリア又は信頼性の高いと判定されたAFエリアが選択されることになる。
【0099】
なお、本実施形態では、顔検出範囲A8が4×4点のAFエリアである場合について説明をしたが、これに限定されない。顔検出範囲A8は、顔F0のサイズによって3×3点、5×5点のAFエリアを含み得る。また、AF演算の実施範囲A9は、当該顔検出範囲A8のサイズに応じて変化し得る。
【0100】
なお、CPU216は、焦点調節指示部206aから焦点調節の開始指示がなされてから一旦合焦判断がなされるまでの間に第1のエリア選択処理を実施すると説明したが、これに限定されない。例えば、CPU216は、1stレリーズスイッチがオンの状態であると判定されるまで繰り返し行われるLV表示用の露光動作を行う際に第1のエリア選択処理と同様の処理を行ってもよい。すなわち、焦点調節指示部206aから焦点調節の開始の指示がなされるまで、焦点検出回路222が各々のAFエリアにおいて繰り返し検出する複数のデフォーカス量のうち、最至近を示すAFエリアが選択される処理が行われてもよい。また、例えば顔AFにおいても、焦点調節指示部206aから焦点調節の開始の指示がなされるまで、当該複数のデフォーカス量のうち、顔検出範囲内の瞳の位置に対応するAFエリア又は信頼性の高いと判定されたAFエリアが選択される処理が行われてもよい。
【0101】
<第2のエリア選択処理>
ここでは、ステップS115で実行される第2のエリア選択処理について、図面を参照して、より詳細に説明をする。第2のエリア選択処理では、一旦主要被写体にピントが合った後に実施され、以下のようにしてAFエリアが選択される。ここで、一旦主要被写体にピントが合った後とは、例えば、1stレリーズ保持中を示す。
【0102】
1stレリーズ保持中には主要被写体を捉え続ける必要がある。このような、主要被写体にピントを合わせた状態のときは、主要被写体が移動しない限り、デフォーカス量はゼロの値が正しいことになる。また、露光時間の短さを考慮すると、主要被写体が移動する場合には、通常は当該主要被写体が等速で、かつ、短距離を移動するとみなせるため、動体予測式に則っているデフォーカス量を示すAFエリアが正しいデフォーカス量を示すと言える。
【0103】
{AF演算の実施範囲について}
ここで、第2のエリア選択処理におけるAF演算の実施範囲について説明をする。デフォーカス量は、AF演算の実施範囲内のAFエリアにおいて算出される。
【0104】
(シングルターゲットの場合)
シングルターゲットの場合、AF演算の実施範囲は、選択された1つのAFエリアA1である。このとき、選択されたAFエリアA1において、縦方向と横方向との各々についてデフォーカス量が算出される。
【0105】
(グループターゲットの場合)
5点グループや9点グループ等のグループターゲットの場合、AF演算の実施範囲は、選択されたグループターゲット内のAFエリアA1である。このとき、選択されたグループターゲット内のAFエリアA1において、縦方向と横方向との各々についてデフォーカス量が算出される。
【0106】
(オールターゲットの場合)
オールターゲットの場合、AF演算の実施範囲は、121点の全AFエリアA0内のAFエリアA1である。このとき、前回選択されたAFエリアA1を中心として、例えば5×5点のAF演算の実施範囲内において、デフォーカス量が算出される。
【0107】
(追尾AFの場合)
図10は、追尾AF時のAF演算の実施範囲の一例を示す模式図である。追尾AF時には、追尾座標C0を中心に、例えば
図10に示すように3×3点のAF演算の実施範囲内のデフォーカス量が算出される。算出されたデフォーカス量に基づいて、AFエリアA1が選択される。
【0108】
(顔AFの場合)
顔AF時のAF演算の実施範囲は、顔検出回路が検出する顔が存在する範囲内のAFエリアA1である。顔検出範囲内のAFエリアにおいて、デフォーカス量が算出される。算出されたデフォーカス量に基づいてAFエリアA1が選択される。なお、第2のエリア選択処理における顔AF時には、第1のエリア選択処理とは異なり、顔AF特有の処理は行われないものとする。第2のエリア選択処理における顔AF時には、例えば上述したグループターゲットの場合のように、顔検出範囲内における縦方向と横方向との各々についてデフォーカス量が算出される。なお、この記載は、第2のエリア選択処理において、顔AF特有の処理が行われることを除外するものではない。
【0109】
{エリア選択について}
第2のエリア選択処理におけるAFエリアの選択について、図面を参照して説明する。
【0110】
(エリア選択の概要)
第2のエリア選択処理におけるAFエリアの選択では、まず、動体予測式が成立するか否かを判定する第1の判定が行われる。次に、動体予測式から求まるフォーカスレンズ1021の駆動方向が至近方向であるか無限方向であるかを判定する第2の判定が行われる。その後、第1のケース、第2のケース及び第3のケースの順に、各々の条件を満たすデフォーカス量が存在するか否かが判定される。
【0111】
(第1の判定)
第2のエリア選択処理において、判定部216bは、動体予測式が成立するか否かを判定する第1の判定を行う。第1の判定では、第1の条件及び第2の条件がともに成立するとき、動体予測式が成立すると判定される。第1の条件は、デフォーカス量に係る履歴情報が一定ポイント数以上存在することである。例えば、現在時刻から過去1秒以内の履歴情報が5ポイント以上であるとき、第1の条件が成立すると判定される。第2の条件は、第1の条件が成立している状態で、算出した一次予測式との乖離量が一定量以下に収まっているポイント数が、5ポイント以上あることである。例えば、デフォーカス量に係る履歴情報のうち、現在時刻から過去1秒以内の履歴情報が5ポイント以上、かつ、算出した一次予測式との乖離量が10Fδ以下に収まっているポイント数が5ポイント以上であるとき、第2の条件が成立すると判定される。なお、動体予測式としては、
図2A及び
図2Bのフローチャートを参照して説明した通り、1つ前までの測距結果に基づいて算出した予測式の結果が使用される。なお、Fδとの記載において、Fは、FNOを示し、δは許容錯乱円を示す。Fは、F値、絞り値ともいう。一般的に、Fδは許容深度を示すものである。また、Fδを1Fδと表現する場合もある。
【0112】
(第2の判定)
第2のエリア選択処理において、判定部216bは、動体予測式から求まるフォーカスレンズ1021の駆動方向が至近方向であるか無限方向であるかを判定する第2の判定をさらに行う。なお、本実施形態における説明では、至近方向を正とする。ここで、至近方向は、フォーカスレンズ1021が無限側から至近側へ向かって駆動される方向である。また、ピントずれ方向が至近側である場合をデフォーカス量が正である場合としている。このとき、被写体が無限側から至近側に向かっていれば、縦軸をレンズパルス位置、横軸を時間としたときの動体予測式の傾きは正となる。もちろん、何れを正とするかによって、他の値の正負、動体予測式の傾き等が変わり得ることは言うまでもない。
【0113】
(第1のケース)
ここでは、第1のケースにおけるAFエリアの選択について説明する。第1のケースは、第1の判定において動体予測式が成立すると判定され、かつ、第2の判定において動体予測式が正の傾きを有すると判定された場合を含む。第1のケースは、動体予測式の傾きがゼロである場合を含んでいてもよい。
【0114】
図11は、第1のケースにおけるAFエリアの選択の一例について示す模式図である。
図11中のグラフにおいて、縦軸はステップS116の処理で算出されるAFエリア毎のレンズパルス位置を示し、横軸は時間を示している。
図11中のグラフにおいて、塗りつぶされた丸で示されているプロットは、例えば時間δt毎の各タイミングで選択されたレンズパルス位置を示している。つまり、塗りつぶされた丸で示されたプロットは、タイミング0からタイミングn-1までに取得されたレンズパルス位置の履歴である。実線は、レンズパルス位置の履歴に基づいて算出された動体予測式Eq1を示している。ここでは、説明の簡単のために、動体予測式Eq1の一例として、レンズパルス位置と時間との関係式が示されている。ここで、タイミングnは、これから第2のエリア選択処理が行われるタイミングであるとする。
図11中のグラフにおいて、塗りつぶされていない丸及び二重丸で示されているプロットは、AFエリア毎のデフォーカス量に対応するフォーカス目標位置TLPを示している。
【0115】
第1のケースでは、これら複数のフォーカス目標位置TLPのうち、動体予測式Eq1に最も近いフォーカス目標位置TLPに対応するデフォーカス量が選択される。例えば、
図11に示す状態では、二重丸で示されているレンズパルス位置pnに対応するデフォーカス量が選択される。これは、第1のケースでは、動体予測式Eq1に最も近いフォーカス目標位置TLPの算出に用いられたデフォーカス量が選択されるとも表現できる。なお、第1のケースでは、デフォーカス量の正負は問わない。
【0116】
このように、第1のケースは、フォーカスレンズ1021の駆動方向が至近方向の場合である。つまり、第1のケースは、
図11中のグラフに示すように、動体予測式Eq1は成立しており、かつ、動体予測式Eq1の傾きは正である場合である。このとき、動体予測式に最も近いフォーカス目標位置TLPに対応するデフォーカス量を示すAFエリアが選択される。
【0117】
(第2のケース)
ここでは、第2のケースにおけるAFエリアの選択について説明する。第2のケースは、第1のケースに該当しない場合のうち、第1の判定において動体予測式が成立すると判定され、かつ、第2の判定において動体予測式が負の傾きを有すると判定された場合を含む。
【0118】
図12は、第2のケースにおけるAFエリアの選択の一例について示す模式図である。
図12中のグラフの縦軸及び横軸の各々が示す事項と、各々のプロットの種別が示す事項とは、
図11中のグラフと同様である。また、
図12中の実線は、レンズパルス位置の履歴に基づいて算出された動体予測式Eq2を示している。ここでは、説明の簡単のために、動体予測式Eq2の一例として、レンズパルス位置と時間との関係式が示されている。なお、
図12中のグラフの縦軸とデフォーカス量を示す軸とは同一平面上に記載されているが、互いに別次元の軸である。
【0119】
第2のケースでは、第3の条件を満たす正のデフォーカス量があるか否かを判定する第3の判定と、第4の条件が成立するか否かを判定する第4の判定とが行われる。
【0120】
(第3の判定)
第3の条件は、式(3)に示す関係式で表される。
|D+|min≦|D-|min×e. 式(3)
ここで、|D+|minは、正の値を有するデフォーカス量の絶対値のうち最小値である。|D-|minは、負の値を有するデフォーカス量の絶対値のうち最小値である。eは、定数である。
【0121】
つまり、第3の判定において、判定部216bは、信頼性を有すると判定されたAFエリアの示すデフォーカス量について、第3の条件を満たす正の値を有するデフォーカス量が存在するか否かを判定する。
【0122】
(第4の判定)
第4の条件は、顔AFではない、かつ、敏感度が所定値より高い設定であることである。ここで、敏感度はユーザが設定できるパラメータである。敏感度設定部216cは、例えばユーザ操作に応じて、敏感度を設定する。敏感度設定のための操作画面等の表示は、例えばカメラシステムの通常メニュー画面内に存在する。
【0123】
つまり、第4の判定において、判定部216bは、顔AFではなく、かつ、敏感度が所定値より高い設定である場合か否かを判定する。
【0124】
第2のケースでは、エリア選択部216fは、第3の判定又は第4の判定が満たされると判定されたとき、正のデフォーカス量の最小値を示すAFエリアを選択する。なお、例えばデフォーカス量=0を示すAFエリアが存在する場合もあり得る。このとき、デフォーカス量=0は、第3の判定において、第3の条件が成立すると判定される。
【0125】
このように、第2のケースは、フォーカスレンズ1021の駆動方向が無限方向の場合である。つまり、第2のケースは、
図12中のグラフに示すように、動体予測式Eq2は成立しており、かつ、動体予測式Eq2の傾きは負である場合である。このとき、正のデフォーカス量を示すAFエリアが優先的に採用されることになる。正のデフォーカス量を示すAFエリアが優先的に採用されることによって、主要被写体と比べて無限側にある背景にピントを合わせんとするデフォーカス量を算出したAFエリアが選択され難くなる。
【0126】
なお、第2のケースには、第1のケースに該当しない場合のうち、第1の判定において動体予測式が成立しないと判定された場合が含まれていてもよい。ここで、動体予測式が成立しない場合には、動体予測式の精度が低い場合が含まれる。なお、動体予測式の精度が低い場合は、動体予測式の確からしさが不十分な場合であると表現できる。
【0127】
(第3のケース)
ここでは、第3のケースにおけるAFエリアの選択について説明する。第3のケースは、第1のケース及び第2のケースに該当しない場合である。第3のケースは、例えば、動体予測式が成立せず、正の値を有するデフォーカス量の値が大きい場合を含む。
【0128】
図13は、第3のケースにおけるAFエリアの選択の一例について示す模式図である。
図13中のグラフの縦軸、横軸及びデフォーカス量を示す軸の各々が示す事項と、破線及び各々のプロットの種別が示す事項とは
図12中の記載と同様である。
【0129】
第3のケースでは、複数のフォーカス目標位置TLPのうち、負のデフォーカス量の絶対値のうち最小値を示すデフォーカス量に対応するフォーカス目標位置TLPが選択される。例えば、
図13に示す状態では、二重丸で示されているレンズパルス位置pnが選択される。つまり、第3のケースでは、レンズパルス位置pnに対応するデフォーカス量を示すAFエリアが選択される。
【0130】
以上のように、本実施形態に係る第2のエリア選択処理では、第1のケース、第2のケース及び第3のケースの順に各々の場合を満たすデフォーカス量が存在するか否かが判定される。このため、第2のエリア選択処理では、正の値を有するデフォーカス量が採用されやすくなっている。このように、正の値を有するデフォーカス量が採用されやすくしている理由は、例えば遠近混在被写体において被写体よりも遠方に存在することの多い背景にピントを合わせてしまわない様にするためである。したがって、正のデフォーカス量が採用されやすくする観点から行う上述した判定の順序等の変更は、本技術と同様の趣旨であり、同様の効果が得られ得ることは言うまでもない。
【0131】
また、第2のケースにおいて上述した定数は、10倍程度とする。このようにする理由は、極端に大きな正のデフォーカス量でなければ、なるべく正のデフォーカス量を採用するためである。また、第2のケースで記述した「敏感度=高」の状態は、被写体に敏感に追従するように設定された状態を指す。「敏感度=高」の状態は、例えば、急加速する被写体等にも追従することを狙っている状態である。当該敏感度設定は、特に、遠方から手前へと近づいてくる被写体に追従しやすい様に、正のデフォーカス量の値そのものが大きくても積極的に採用することを目的として考慮されている。
【0132】
<合焦状態(合焦範囲内)か否かの判定>
ここで、ステップS108又はステップS120における合焦状態か否かの判定について、より詳細に説明をする。合焦状態か否かの判定は、合焦範囲内か否かの判定と表現されてもよい。本判定は、主に、第2のエリア選択処理の後に2ndレリーズがオンであると判定されなかった場合に実行されることになる。つまり、本実施形態では、本判定がC-AF連写中には実行されない場合を例として説明をする。
【0133】
まず、本実施形態に係る焦点調節装置1が要求される状況の一例について説明する。
図14は、デフォーカス量=0を狙いとした制御が行われる場合のAFエリアに対するデフォーカス量分布と現在のレンズ位置及び真の合焦位置との関係の一例を示す模式図である。なお、上述したように、顔AF時は、最至近優先ではなく顔中心優先としたAFエリア選択が行われる。また、以下の説明では、各々のAFエリアの示すデフォーカス量が考慮される場合を例として記載をするが、各々のAFエリアに含まれる各々の位相差検出方向が考慮される場合も同様に実施でき、また、同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0134】
図14中のグラフは、縦軸がデフォーカス量を、横軸がAFエリアを、それぞれ示している。
図14中のdef0、def1、def2及びdef3の各々のプロットは、各々のAFエリアにおいて算出されたデフォーカス量をそれぞれ表している。当該プロットのうち、二重丸のプロットdef0は本来選択したいAFエリアで算出されるデフォーカス量を、塗りつぶされた丸のプロットdef1は選択されるデフォーカス量を、丸の中に×のプロットdef2は背景の雑被写体に対して算出されたデフォーカス量を、塗りつぶされていない丸のプロットdef3はその他のデフォーカス量をそれぞれ示している。また、
図14中のグラフにおいて、実線は現デフォーカス量がゼロである現在のレンズ位置を、破線は真の合焦位置を、矢印付き実線D1は現在のレンズ位置に対する許容深度を、矢印付き破線D0は真の合焦位置に対する許容深度を、それぞれ示している。なお、当該破線の示す真の合焦位置及び矢印付き破線D0の示す当該真の合焦位置に対する許容深度は、焦点調節装置1が焦点調節時に目指すべき値であるが、同時に焦点調節装置1が焦点調節時に把握していない未知の情報であることは言うまでもない。
【0135】
一般に、合焦判断における許容深度の設定は、例えば-1Fδ~+1Fδとされている。しかしながら、
図14に示すような遠近混在の被写体に対してAFを実施する状況では、プロットdef0、プロットdef1、プロットdef3等のデフォーカス量に加えて、プロットdef2のような背景の雑被写体に合わせて算出されたデフォーカス量もまた許容深度の範囲内に含まれる。そのため、現在のレンズ位置が真の合焦位置から-1Fδの位置に存在するとき等では、検出したデフォーカス量のばらつきにより、プロットdef1のように、本来選択したいプロットdef0のAFエリアから若干ずれたAFエリアのデフォーカス量が選択されてしまう。また、この選択の結果に基づいて、さらに負側にデフォーカス駆動してしまうと、少しずつ背景の雑被写体に合わせてレンズ駆動してピントを合わせてしまうこととなり、適切に主要被写体に合わせたAF動作が実現しない可能性がある。
【0136】
例えば、移動する被写体に合わせてAFと合焦とを繰り返すコンティニュアスAF(C-AF)においては、通常手前に移動する被写体に追従し続けることが重要である。また、本実施形態に係る焦点調節装置1の制御処理では、
図2A及び
図2Bを参照して上述した通り、ステップS124の本露光の直前に動体予測演算の結果に基づいて、ステップS123でレンズ駆動(LD)が実施される。
【0137】
したがって、本実施形態に係る焦点調節装置1は、1stレリーズ保持中に必ずしも許容深度内にフォーカスレンズ位置を合わせる必要はない。また、特にC-AFにおいては背景にピントを合わせてしまわないことが重要であり、第2のエリア選択処理に示すように、本実施形態に係る焦点調節装置1は、正の値を有するデフォーカス量を優先して選択する。
【0138】
そこで、本実施形態に係る焦点調節装置1は、ステップS121のフォーカスレンズ駆動では、例えばデフォーカス量=+1Fδを狙いとした制御を行う。
図15は、このときのAFエリアに対するデフォーカス量分布と現在のレンズ位置及び真の合焦位置との関係の一例を示す模式図である。ここでは、
図15を参照して以下の説明を行う。
図15中のグラフの縦軸、横軸、実線、破線、矢印付き実線D1及び矢印付き破線D0の各々が示す事項と、各々のプロットの種別が示す事項とは
図14中のグラフと同様である。また、矢印付き一点鎖線D2は、デフォーカス量=+1Fδを狙いとした場合の現在のレンズ位置に対する許容深度を示す。
【0139】
図14を参照して上述したように、特に遠近混在の被写体において背景の雑被写体に合ったデフォーカス量が採用されてしまう場合等、真の合焦位置よりも無限側にレンズ駆動してしまう。そのため、
図15中に示すように、本実施形態に係る焦点調節装置1は、あえて実線で示されるように、フォーカスレンズを、破線で示される真の合焦位置より正のデフォーカス量の値を取り得るように例えば「+1Fδ」分のオフセットを加算して駆動する。これは、本実施形態に係る焦点調節装置1は、選択されたAFエリアの示すデフォーカス量を所定量だけ正側に補正して焦点調節を行う、とも表現できる。これにより、本実施形態に係る焦点調節装置1は、検出されたデフォーカス量のばらつきによって真の合焦位置から+1Fδ程度ずれたデフォーカス量def1を採用することになる。したがって、本技術は、デフォーカス量=0を狙いとしてレンズ駆動(LD)したときの様に、背景側の雑被写体に合ったデフォーカス量を検出してしまうことを避けることができる。すなわち、雑被写体のデフォーカス量を採用しない様にすることができる。
【0140】
このように、本実施形態に係る焦点調節装置1は、例えばデフォーカス量=+1Fδを狙いとした制御を行うなど、第2のエリア選択処理において正の値を有するデフォーカス量を優先して選択し、また、ステップS120の合焦判断の合焦範囲の設定を例えば-2Fδ~+1Fδ等のように負側に広げて設定する。これは、本実施形態に係る焦点調節装置1は、合焦判断における閾値を負側に補正して合焦判断を行う、とも表現できる。すなわち、遠近混在の被写体において、真の合焦位置に対する許容深度に相当すると考えられる許容深度と、オフセット駆動された現在のレンズ位置に対する許容深度とを合わせたような許容深度内を合焦範囲として設定する。現在のレンズ位置に対して-2Fδ~+1Fδの範囲ではレンズ駆動が行われない。これにより、本技術は、背景に向かう負方向のレンズ駆動を抑制しつつ、背景の雑被写体に合わせたデフォーカス量を示すAFエリアを選択しにくくして、主要被写体に合わせたデフォーカス量を算出する適切なAFエリアを選択しやすくすることができる。
【0141】
<基準決定処理>
ここでは、ステップS128で実行される基準決定処理について、図面を参照して説明する。上述したように、レンズパルス位置は、相対位置であるデフォーカス量とは異なり、絶対位置である。このため、レンズパルス位置を基にAFエリア選択を実施するためには、レンズパルス位置を評価する基準となる基準位置が必要となる。つまり、本処理は、レンズパルス位置を基にAFエリア選択が行われる第3のエリア選択処理のために行われる処理であると表現できる。
【0142】
本処理では、基準位置を更新するか否かを判定する更新判定が行われる。更新判定は、毎フレーム実施される。更新判定は、数フレームに渡って実施される。更新判定は、被写体の状態に応じた基準変更条件に基づいて行われる。基準位置の決定は、下記の順序で実施する。なお、基準の判定と更新とは、1フレーム内で実施される。
【0143】
初回の基準決定処理が開始されるとき、例えば、現在のフォーカスレンズ1021の位置が基準位置として設定される。ここで、現在のフォーカスレンズ1021の位置は、露光中のレンズ位置とも表現できる。
【0144】
(第1の更新判定)
まず、第1の更新判定が行われる。
図16は、第1の基準変更条件に基づいて行われる第1の更新判定について説明するための図である。
図16の縦軸は、レンズパルス位置である。
図16中の丸は、1エリア毎のフォーカス目標位置TLPを示している。このとき、各々のフォーカス目標位置TLPは、最至近から順に、TLP1、TLP2、TLP3及びTLP4の位置であるとする。また、
図16中の破線は、更新判定前の基準位置RPを示している。
図16に示す状態では、更新判定前の基準位置RPは、TLP3とTLP4との間に位置している。以下、
図16に示す状態で行われる第1の更新判定について説明する。
【0145】
(第1の基準変更条件)
第1の更新判定は、第1の基準変更条件に基づいて行われる。第1の基準変更条件は、至近側に近づいてくる被写体を想定した条件である。第1の基準変更条件は、以下の関係式が成立する状態が、所定のフレーム数以上継続していることである。ここで、本条件における所定のフレーム数は、第1の回数である。
d1 ≧ f1, 式(4)
d1 = TLP_C - RP_OLD. 式(5)
ここで、TLP_Cは、最至近のフォーカス目標位置TLPである。TLP_Cは、
図16に示す状態では、TLP1である。RP_OLDは、更新判定前の基準位置RPである。f1は、定数である。また、f1は、第1の閾値である。
【0146】
図17は、第1の基準変更条件が成立しないと判定された場合に決定される基準位置RPについて説明するための図である。第1の更新判定において、第1の基準変更条件が成立していないと判定されたとき、
図17中に実線で示されているように、更新判定前の基準位置RP_OLDが保持される。つまり、更新判定後の基準位置RP_NEWは、変更されず、更新判定前の基準位置RP_OLDのままである。
【0147】
図18は、第1の基準変更条件が成立すると判定された場合に決定される基準位置RPについて説明するための図である。第1の更新判定において、第1の基準変更条件が成立すると判定されたときに、
図18中に実線で示されているように、更新判定後の基準位置RP_NEWは、TLP2の位置へ更新される。ここで、TLP2は、最至近から2番目のフォーカス目標位置TLPである。
【0148】
このように、第1の更新判定では、第1の基準変更条件が成立しているとき、最至近から2番目のフォーカス目標位置TLPの位置に基準位置が更新される。このとき、最至近のフォーカス目標位置TLPは、所定のフレーム数以上連続して、至近側に更新された基準位置RPに対して、さらに至近側に位置することになる。このことから、第1の基準変更条件が成立しているときには、誤測距ではなく、被写体が近づいてきていること又は被写体が近づいたことが検出されている可能性が高いと判断できる。
【0149】
なお、本実施形態に係る第1の更新判定では、第1の基準変更条件が成立しているとき、更新判定後の基準位置RPとして、最至近から2番目のフォーカス目標位置TLPが採用される場合を例として説明したが、これに限らない。第1の基準変更条件が成立しているとき、更新判定後の基準位置RPとして、最至近のフォーカス目標位置TLPが採用されてもよい。この場合も、更新判定後の基準位置RPとして、最至近から2番目のフォーカス目標位置TLPが採用される場合と同様の効果が得られ得る。ただし、更新判定後の基準位置RPとして、最至近から2番目のフォーカス目標位置TLPを採用する場合には、万一、最至近のフォーカス目標位置TLPが誤測距によって検出された値であったとしても、以降フレームにおける判定に与える影響を抑制できる効果がさらに得られる。
【0150】
(第2の更新判定)
第2の更新判定は、第1の更新判定と同じフレーム内で、第1の更新判定に続けて行われる。
図19は、第2の基準変更条件に基づいて行われる第2の更新判定について説明するための図である。ただし、
図19に示す状態は、説明のために、
図16を参照して上述したフレームとは異なるフレームの状態を示している。
図19において、縦軸と、丸と、破線との各々が示す事項は、
図16と同様である。
図19の一点鎖線は、露光中のレンズ位置LPを示している。
図19に示す状態では、更新判定前の基準位置RPは、TLP3とTLP4との間に位置している。また、露光中のレンズ位置LPは、更新判定前の基準位置RPとTLP4との間に位置している。以下、
図19に示す状態で行われる第2の更新判定について説明する。
【0151】
(第2の基準変更条件)
第2の更新判定は、第2の基準変更条件に基づいて行われる。第2の基準変更条件は、無限側に遠ざかる被写体を想定した条件である。第2の基準変更条件は、以下の関係式が成立する状態が、所定のフレーム数以上継続していることである。ここで、本条件における所定のフレーム数は、第2の回数である。第2の回数は、第1の回数と同じであっても、異なっていてもよい。
d2 ≦ f2 < 0, 式(6)
d2 = TLP_R - RP_OLD. 式(7)
ここで、TLP_Rは、基準位置RPに最も近いフォーカス目標位置TLPである。TLP_Rは、
図19に示す状態では、TLP4である。RP_OLDは、更新判定前の基準位置RPである。f2は、0未満の定数である。また、f2は、第2の閾値である。
【0152】
図20は、第2の基準変更条件が成立しないと判定された場合に決定される基準位置RPについて説明するための図である。第2の更新判定において、第2の基準変更条件が成立していないと判定されたとき、
図20中に実線で示されているように、更新判定前の基準位置RP_OLDが保持される。つまり、更新判定後の基準位置RP_NEWは、変更されず、更新判定前の基準位置RP_OLDのままである。
【0153】
図21は、第2の基準変更条件が成立すると判定された場合に決定される基準位置RPについて説明するための図である。第2の更新判定において、第2の基準変更条件が成立していると判定されたとき、
図21中に実線で示されているように、更新判定後の基準位置RP_NEWは、露光中のレンズ位置LPの位置へ更新される。ここで、露光中のレンズ位置LPは、動体予測式に則って駆動されたレンズ位置である。
【0154】
このように、第2の更新判定では、第2の基準変更条件が成立していると判定されたとき、露光中のレンズ位置LPの位置に基準位置が更新される。このとき、第1の基準変更条件は成立しておらず、かつ、基準位置RPに最も近いフォーカス目標位置TLPは、所定のフレーム数以上連続して、無限側に更新された基準位置RPに対して、さらに無限側に位置することになる。このことから、第2の基準変更条件が成立していると判定されたときには、被写体が遠ざかっていること又は被写体が遠ざかったことが検出されている可能性が高いと判断できる。つまり、第2の基準変更条件が成立していると判定されるまでの所定のフレーム数の間に、AFエリア選択において無限側が選択されているはずであるから、本実施形態に係る第2の更新判定では、動体予測に則って基準位置が変更される。
【0155】
(第3の更新判定)
第3の更新判定は、第1の更新判定及び第2の更新判定と同じフレーム内で、第2の更新判定に続けて行われる。
図22は、第3の基準変更条件に基づいて行われる第3の更新判定について説明するための図である。ただし、
図22に示す状態は、説明のために、
図16又は
図19を参照して上述したフレームとは異なるフレームの状態を示している。
図22において、縦軸と、丸と、破線と、一点鎖線との各々が示す事項は、
図19と同様である。
図22に示す状態では、更新判定前の基準位置RPは、TLP3とTLP4との間に位置している。また、露光中のレンズ位置LPは、TLP3と更新判定前の基準位置RPとの間に位置している。以下、
図22に示す状態で行われる第3の更新判定について説明する。
【0156】
(第3の基準変更条件)
第3の更新判定は、第3の基準変更条件に基づいて行われる。第3の基準変更条件は、被写体が切り替えられたとき又は所定のフレーム数以上待っていられないときを想定した条件である。ここで、所定のフレーム数以上待っていられないときは、例えば、被写体の速度が速いときである。第3の基準変更条件は、第1の基準変更条件及び第2の基準変更条件の穴埋め用の条件であるとも表現できる。第3の基準変更条件は、以下の関係式が成立することである。
d3 ≧ f3, 式(8)
d3 = | TLP_R - RP_OLD |. 式(9)
ここで、TLP_Rは、基準位置RPに最も近いフォーカス目標位置TLPである。TLP_Rは、
図22に示す状態では、TLP3である。RP_OLDは、更新判定前の基準位置RPである。f3は、定数である。また、f3は、第3の閾値である。
【0157】
図23は、第3の基準変更条件が成立しないと判定された場合に決定される基準位置RPについて説明するための図である。第3の更新判定において、第3の基準変更条件が成立していないと判定されたとき、
図23中に実線で示されているように、更新判定前の基準位置RPが保持される。つまり、更新判定後の基準位置RP_NEWは、変更されず、更新判定前の基準位置RP_OLDのままである。
【0158】
図24は、第3の基準変更条件が成立すると判定された場合に決定される基準位置RPについて説明するための図である。第3の更新判定において、第3の基準変更条件が成立していると判定されたとき、
図24中に実線で示されているように、更新判定後の基準位置RP_NEWは、露光中のレンズ位置LPの位置へ更新される。ここで、露光中のレンズ位置LPは、動体予測式に則って駆動されたレンズ位置である。
【0159】
このように、第3の更新判定では、第3の基準変更条件が成立していると判定されたとき、露光中のレンズ位置LPの位置に基準位置が更新される。このとき、第1の基準変更条件及び第2の基準変更条件は成立しておらず、かつ、基準位置RPに近いフォーカス目標位置TLPが存在しないことになる。このことから、第3の基準変更条件が成立していると判定されたときには、被写体が切り替えられたこと又は被写体の速度が速いことが検出されている可能性が高いと判断できる。つまり、第3の基準変更条件が成立していると判定されたときは、何れのフォーカス目標位置TLPが正しいのか不明な状態である。したがって、本実施形態に係る第3の更新判定では、数フレーム後に何れかの基準変更条件が成立すると判定されることを想定して、動体予測に則って基準位置が変更される。
【0160】
(第4の更新判定)
第4の更新判定は、第1の更新判定、第2の更新判定及び第3の更新判定と同じフレーム内で、第3の更新判定に続けて行われる。第4の基準変更条件は、静止被写体を想定した条件である。第4の更新判定では、第1の基準変更条件、第2の基準変更条件及び第3の基準変更条件の何れの条件も成立しないと判定されたとき、第4の基準変更条件が成立すると判定される。このとき、更新判定後の基準位置RPは、変更されず、更新判定前の基準位置RPのままである。
【0161】
第4の基準変更条件が成立すると判定されるとき、つまり、第1の基準変更条件、第2の基準変更条件及び第3の基準変更条件の何れの条件も成立しないと判定されたとき、被写体は、合焦位置の近傍にいると判断できる。したがって、第4の基準変更条件が成立すると判定されるとき、被写体は、動体被写体ではなく静止被写体であるから、基準は変更される必要がない。
【0162】
なお、f1、f2及びf3の値は、それぞれ、1Fδの倍数である。f1、f2及びf3は、それぞれ、例えば1.5Fδであったり、2Fδであったりする。ここで、1Fδは、被写界深度を示す。なお、f1、f2及びf3の値は、例えば、敏感度の設定、絞り値(AV値)、感度値(SV値)に応じて、それぞれ決定される。例えば、敏感度が高くなるとき、より敏感に基準変更が行われるように、f1及びf3の値は小さく、f2は大きくなるように値が変更される。このとき、f2の値は、例えば、-1.5Fδから-1Fδに変更される。例えば、敏感度が低くなるとき、より鈍感に基準変更が行われるように、f1及びf3の値は大きく、f2は小さくなるように値が変更される。このとき、f2の値は、例えば、-1Fδから-1.5Fδに変更される。例えば、AV値又はSV値が高いときには、測距精度が落ちることが予想されるため、f1及びf3の値は大きく、f2は小さくなるように値が変更される。このとき、f2の値は、例えば、-1Fδから-1.5Fδに変更される。
【0163】
なお、第1の基準変更条件が成立したとき、基準位置RPは、最至近から2番目のフォーカス目標位置TLP又は最至近のフォーカス目標位置TLPへ変更されると説明したが、これに限らない。更新判定後の基準位置RPは、例えば、AV値又はSV値に応じて設定され得る。AV値又はSV値が高いときには、誤測距が生じ易くなる。このため、例えば、AV値又はSV値が高いとき、更新判定後の基準位置RPは、最至近から3番目のフォーカス目標位置TLPへ変更されたりする。
【0164】
なお、所定のフレーム数、すなわち継続フレーム数は、例えば敏感度の設定に応じて決定される。例えば、敏感度が高くなるとき、より敏感に基準変更が行われるように、所定のフレーム数は減らされる。例えば、敏感度が低くなるとき、より鈍感に基準変更が行われるように、所定のフレーム数は増やされる。何れのフレーム数であっても、数フレームにわたって基準決定処理が行われることで、誤測距結果の影響を低減させることができる。
【0165】
<第3のエリア選択処理>
ここでは、ステップS129で実行される第3のエリア選択処理について、図面を参照して説明する。第3のエリア選択処理では、基準決定処理で随時更新され得る基準位置と、絶対位置であるレンズパルス位置とに基づいて、AFエリアが選択される。本処理は、基準決定処理の後、毎フレーム実施される。本処理は、下記の順序で実施される。
【0166】
(第1のエリア選択条件に基づく判定)
まず、第1のエリア選択条件に基づく判定が行われる。第1のエリア選択条件は、至近側に近づいてくる被写体を想定した条件である。第1のエリア選択条件は、第1の基準変更条件が成立したフレームであることである。つまり、本判定では、第1の基準変更条件が成立したフレームであるか否かが判定される。
【0167】
第1のエリア選択条件が成立すると判定された場合、すなわち、第1の基準変更条件が成立したフレームであると判定された場合、更新された基準位置RPに最も近いフォーカス目標位置TLPを出力するAFエリアが選択される。これは、基準決定処理において、第1の基準変更条件が成立したと判定されたとき、至近側のフォーカス目標位置TLPの位置に基準位置が更新されていることに基づく。したがって、本判定では、更新された基準位置RPに最も近いフォーカス目標位置TLPを出力するAFエリアが選択される。例えば、第1の基準変更条件が成立したフレームでは、最至近から2番目のフォーカス目標位置TLPの位置に基準位置が更新されている。つまり、第1のエリア選択条件が成立するとき、最至近から2番目のフォーカス目標位置TLPを出力するAFエリアが選択される。
【0168】
(第2のエリア選択条件に基づく判定)
次に、第2のエリア選択条件に基づく判定が行われる。本判定は、第1のエリア選択条件が成立すると判定されなかった場合に行われる。第2のエリア選択条件は、第1のエリア選択条件と同様に、至近側に近づいてくる被写体を想定した条件である。第2のエリア選択条件は、動体予測式が成立し、かつ、動体予測式が所定の正の値以上の傾きを有することである。つまり、本判定では、動体予測式が成立し、かつ、動体予測式の傾きが所定の正の値以上であるか否かが判定される。なお、第2のエリア選択条件は、至近側を正とする場合に、正の所定の閾値以上の傾きを有する動体予測式が成立することであるとも表現できる。ここで、正の所定の閾値は、例えば0.05である。このとき、第2のエリア選択条件は、至近側を正とする場合に、g>0.05の関係を満たす傾きgを有する動体予測一次式が成立することであると表現できる。
【0169】
第2のエリア選択条件が成立すると判定された場合、すなわち、動体予測式が成立し、かつ、動体予測式の傾きが所定の正の値以上であると判定された場合、最至近から2番目のフォーカス目標位置TLPを出力するAFエリアが選択される。これは、第2のエリア選択条件が成立するとき、例えば、被写体は至近側へ移動しているものの、所定のフレーム数に足りないことから基準決定処理の第1の基準変更条件が成立していないと考えられることに基づく。なお、第2のエリア選択条件が成立するときには、例えば、被写体は至近側へ移動しているものの、d1≧f1が成立するほど被写体が至近側へ移動していないことから基準決定処理の第1の基準変更条件が成立していないとも考えられる。なお、本判定でも、基準決定処理の第1の更新判定と同様に、最至近のフォーカス目標位置TLPを出力するAFエリアが選択されてもよい。
【0170】
(第3のエリア選択条件に基づく判定)
次に、第3のエリア選択条件に基づく判定が行われる。本判定は、第2のエリア選択条件に基づく判定において、動体予測式が成立し、かつ、動体予測式の傾きが所定の正の値以上であると判定されなかった場合に行われる。つまり、本判定は、第1のエリア選択条件及び第2のエリア選択条件が成立しなかった場合に行われる。
【0171】
(第3のエリア選択条件)
第3のエリア選択条件は、第1のエリア選択条件及び第2のエリア選択条件と同様に、至近側に近づいてくる被写体を想定した条件である。第3のエリア選択条件は、第1のエリア選択条件及び第2のエリア選択条件の穴埋め用の条件であるとも表現できる。第3のエリア選択条件は、以下の関係式を満たすフォーカス目標位置TLPが複数存在し、かつ、以下の関係式が成立する状態が所定のフレーム数以上継続していることである。つまり、本判定では、以下の関係式を満たすフォーカス目標位置TLPが複数存在し、かつ、以下の関係式が成立する状態が所定のフレーム数以上継続しているか否かが判定される。
d4 ≧ f4, 式(10)
d4 = TLP - RP_NEW. 式(11)
ここで、RP_NEWは、更新判定後の基準位置RPである。f4は、定数である。第3のエリア選択条件は、本判定では、以下の関係式が成立する状態が所定のフレーム数以上継続しているか否かが判定されるとも表現できる。
n(d4≧f4) ≧ 2. 式(12)
ここで、n(d4≧f4)は、d4≧f4を満たすフォーカス目標位置TLPの個数である。
【0172】
第3のエリア選択条件が成立すると判定された場合、すなわち、式(12)が成立する状態が所定のフレーム数以上継続していると判定された場合、第3の基準変更条件が成立すると判定されたときと同様に、何れのフォーカス目標位置TLPが正しいのか不明な状態である。したがって、動体予測に則って変更された基準位置RPに最も近い至近側のフォーカス目標位置TLPを出力するAFエリアが選択される。つまり、基準位置RPより大きいフォーカス目標位置TLPのうち、最小のフォーカス目標位置TLPを出力するAFエリアが選択される。
【0173】
(第4のエリア選択条件に基づく判定)
次に、第4のエリア選択条件に基づく判定が行われる。本判定は、式(12)が成立する状態が所定のフレーム数以上継続していると判定されなかった場合に行われる。つまり、本判定は、第1のエリア選択条件、第2のエリア選択条件及び第3のエリア選択条件が成立しなかった場合に行われる。第4のエリア選択条件は、静止被写体又は無限側へ移動している動体被写体を想定した条件である。本判定では、第1のエリア選択条件、第2のエリア選択条件及び第3のエリア選択条件の何れの条件も成立しなかったと判定されたとき、第4のエリア選択条件が成立すると判定される。
【0174】
第4のエリア選択条件が成立すると判定されたとき、つまり、第1のエリア選択条件、第2のエリア選択条件及び第3のエリア選択条件の何れの条件も成立しないと判定されたとき、被写体は、至近側へ移動している動体被写体ではないと判断できる。第4のエリア選択条件が成立すると判定されたとき、基準位置RPに最も近いフォーカス目標位置TLPを出力するAFエリアが選択される。ここで、無限側のフォーカス目標位置TLPを出力するAFエリアが選択されないのは、背景抜けを防ぐためである。ただし、無限側へ移動している動体被写体である場合には、基準決定処理において、基準位置RPが無限側に更新されている。
【0175】
なお、第2のエリア変更条件が成立したとき、最至近から2番目のフォーカス目標位置TLP又は最至近のフォーカス目標位置TLPを出力するAFエリアが選択されると説明したが、これに限らない。複数のAFエリアから、最至近から何番目のフォーカス目標位置TLPを出力するAFエリアが選択されるかは、例えば、AV値又はSV値に応じて設定され得る。AV値又はSV値が高いときには、誤測距が生じ易くなる。このため、例えば、AV値又はSV値が高いとき、最至近から3番目のフォーカス目標位置TLPを出力するAFエリアが選択されたりする。
【0176】
<基準決定処理及び第3のエリア選択処理の一例>
ここで、基準決定処理における基準位置RPの決定及び第3のエリア選択処理におけるAFエリア選択の一例について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で参照される図面の各々は、それぞれ、模式図であり、長さ及び縦横比等は必ずしも一致しない。以下、1フレーム目における更新前の基準位置RPは現在のフォーカスレンズ1021のレンズパルス位置であり、所定のフレーム数は3フレームであるとした場合を例として説明する。以下、説明の簡単のために、カウンタ(c1、c2、c3、c4)を用いる。c1は、第1の基準変更条件が連続して成立しているフレーム数を示すカウンタである。c2は、第2の基準変更条件が連続して成立しているフレーム数を示すカウンタである。c3は、第3の基準変更条件が連続して成立しているフレーム数を示すカウンタである。c4は、第3のエリア選択条件が連続して成立しているフレーム数を示すカウンタである。例えば、c1が3に達したとき、c2が3に達したとき又はc3が1に達したときには、カウンタはリセットされる。また、以下の動作は、1フレーム目の基準決定処理が開始されるとき、カウンタ(c1、c2、c3、c4)=(0、0、0、0)であるとする。
【0177】
(静止被写体における動作)
図25は、第3のエリア選択処理において、静止被写体に対して選択されるAFエリアについて説明するための図である。
図25において、縦軸は至近方向を正の向きとしたレンズ位置を示し、横軸は時間を示す。塗りつぶされていない丸のプロットは、AFエリア毎のフォーカス目標位置TLPを示している。破線は、主要被写体の位置を示している。実線は、フレーム毎の基準位置RPを示している。複数のフォーカス目標位置TLPのうち二重丸のプロットは、その時間に選択されるフォーカス目標位置TLPを示している。
図25に示す状態では、3フレーム目で誤測距が生じて、至近側に外れたフォーカス目標位置TLP13及びフォーカス目標位置TLP23が検出されているとする。
【0178】
1フレーム目では、例えば、
図25に示すように、d1≧f1、かつ、d2>f2、かつ、|d3|<f3、かつ、n(d4≧f4)<2であるとする。このとき、カウンタ(c1、c2、c3、c4)=(1、0、0、0)である。したがって、基準決定処理において第4の基準変更条件が成立するから、基準位置RPは変更されない。また、第3のエリア選択処理において第4のエリア選択条件が成立するから、基準位置RPに最も近いフォーカス目標位置TLP21が選択される。
【0179】
2フレーム目では、例えば、
図25に示すように、d1<f1、かつ、d2>f2、かつ、|d3|<f3、かつ、n(d4≧f4)<2であるとする。このとき、カウンタ(c1、c2、c3、c4)=(0、0、0、0)である。したがって、基準決定処理において第4の基準変更条件が成立するから、基準位置RPは変更されない。また、第3のエリア選択処理において第4のエリア選択条件が成立するから、基準位置RPに最も近いフォーカス目標位置TLP22が選択される。
【0180】
3フレーム目では、例えば、
図25に示すように、d1≧f1、かつ、d2>f2、かつ、|d3|<f3、かつ、n(d4≧f4)≧2であるとする。このとき、カウンタ(c1、c2、c3、c4)=(1、0、0、1)である。したがって、基準決定処理において第4の基準変更条件が成立するから、基準位置RPは変更されない。また、誤測距により、基準位置RPから離れた位置にフォーカス目標位置TLP13及びフォーカス目標位置TLP23が存在しているが、この状態は3フレーム連続していないから、第3のエリア選択条件は成立しない。このため、第3のエリア選択処理において第4のエリア選択条件が成立するから、基準位置RPに最も近いフォーカス目標位置TLP33が選択される。つまり、
図25に示す状態では、正の最小のデフォーカス量に対応するフォーカス目標位置TLP23ではなく、基準に最も近いフォーカス目標位置TLP33が選択される。
【0181】
4フレーム目では、例えば、
図25に示すように、d1≧f1、かつ、d2>f2、かつ、|d3|<f3、かつ、n(d4≧f4)<2であるとする。このとき、カウンタ(c1、c2、c3、c4)=(2、0、0、0)である。したがって、基準決定処理において第4の基準変更条件が成立するから、基準位置RPは変更されない。また、第3のエリア選択処理において第4のエリア選択条件が成立するから、基準位置RPに最も近いフォーカス目標位置TLP24が選択される。
【0182】
5フレーム目では、例えば、
図25に示すように、d1<f1、かつ、d2>f2、かつ、|d3|<f3、かつ、n(d4≧f4)<2であるとする。このとき、カウンタ(c1、c2、c3、c4)=(0、0、0、0)である。したがって、基準決定処理において第4の基準変更条件が成立するから、基準位置RPは変更されない。また、第3のエリア選択処理において第4のエリア選択条件が成立するから、基準位置RPに最も近いフォーカス目標位置TLP25が選択される。
【0183】
(動体被写体における動作)
図26は、第3のエリア選択処理において、動体被写体に対して選択されるAFエリアについて説明するための図である。
図26における縦軸、横軸、プロット、破線及び実線は、それぞれ、
図25と同様である。
図26に示す状態では、5フレーム目で誤測距が生じて、至近側に外れたフォーカス目標位置TLP15が検出されているとする。
【0184】
1フレーム目では、例えば、
図26に示すように、d1≧f1、かつ、d2>f2、かつ、|d3|<f3、かつ、n(d4≧f4)<2であるとする。このとき、カウンタ(c1、c2、c3、c4)=(1、0、0、0)である。したがって、基準決定処理において第4の基準変更条件が成立するから、基準位置は変更されない。また、第3のエリア選択処理において第4のエリア選択条件が成立するから、基準位置RPに最も近いフォーカス目標位置TLP31が選択される。
【0185】
2フレーム目では、例えば、
図26に示すように、d1≧f1、かつ、d2>f2、かつ、|d3|<f3、かつ、n(d4≧f4)≧2であるとする。このとき、カウンタ(c1、c2、c3、c4)=(2、0、0、1)である。したがって、基準決定処理において第4の基準変更条件が成立するから、基準位置は変更されない。また、第3のエリア選択処理において第4のエリア選択条件が成立するから、基準位置RPに最も近いフォーカス目標位置TLP42が選択される。
【0186】
3フレーム目では、例えば、
図26に示すように、d1≧f1、かつ、d2>f2、かつ、|d3|<f3、かつ、n(d4≧f4)<2であるとする。このとき、カウンタ(c1、c2、c3、c4)=(3、0、0、0)である。したがって、3フレーム連続してd1≧f1であるから、基準決定処理において第1の基準変更条件が成立する。このため、基準位置RPは、最至近から2番目のフォーカス目標位置TLP23の位置へ変更される。また、第3のエリア選択処理において第1の基準変更条件が成立していることから、第1のエリア選択条件が成立する。このため、更新された基準位置RPに最も近いフォーカス目標位置TLP23が選択される。ここで、c1が3に達したため、カウンタはリセットされる。
【0187】
4フレーム目では、例えば、
図26に示すように、d1<f1、かつ、d2>f2、かつ、|d3|<f3、かつ、n(d4≧f4)<2であるとする。また、動体予測式が成立し、かつ、動体予測式の傾きが正であるとする。このとき、カウンタ(c1、c2、c3、c4)=(1、0、0、0)である。したがって、基準決定処理において第4の基準変更条件が成立するから、基準位置RPは変更されない。また、第3のエリア選択処理において第2のエリア選択条件が成立するから、最至近から2番目のフォーカス目標位置TLP24が選択される。
【0188】
5フレーム目では、例えば、
図26に示すように、d1≧f1、かつ、d2>f2、かつ、|d3|<f3、かつ、n(d4≧f4)<2であるとする。また、動体予測式が成立し、かつ、動体予測式の傾きが正であるとする。このとき、カウンタ(c1、c2、c3、c4)=(2、0、0、0)である。したがって、基準決定処理において第4の基準変更条件が成立するから、基準位置RPは変更されない。また、第3のエリア選択処理において第2のエリア選択条件が成立するから、最至近から2番目のフォーカス目標位置TLP25が選択される。つまり、誤測距によって得られたフォーカス目標位置TLP15ではなく、被写体の位置に近いフォーカス目標位置TLP25が選択される。
【0189】
(遠近混在時の動体被写体における動作)
図27は、第3のエリア選択処理において、遠近混在時の動体被写体に対して選択されるAFエリアについて説明するための図である。
図27における縦軸、横軸、プロット、破線及び実線は、それぞれ、
図25又は
図26と同様である。また、
図27における一点鎖線は、背景位置を示している。
図27に示す状態では、1フレーム目及び2フレーム目では、背景に合焦してしまっているとする。
【0190】
1フレーム目では、例えば、
図27に示すように、d1≧f1、かつ、d2>f2、かつ、|d3|<f3、かつ、n(d4≧f4)<2であるとする。このとき、カウンタ(c1、c2、c3、c4)=(1、0、0、0)である。したがって、基準決定処理において第4の基準変更条件が成立するから、基準位置RPは変更されない。また、第3のエリア選択処理において第4のエリア選択条件が成立するから、基準位置RPに最も近いフォーカス目標位置TLP31が選択される。
【0191】
2フレーム目では、例えば、
図27に示すように、d1≧f1、かつ、d2>f2、かつ、|d3|<f3、かつ、n(d4≧f4)≧2であるとする。このとき、カウンタ(c1、c2、c3、c4)=(2、0、0、1)である。したがって、基準決定処理において第4の基準変更条件が成立するから、基準位置RPは変更されない。また、第3のエリア選択処理において第4のエリア選択条件が成立するから、基準位置RPに最も近いフォーカス目標位置TLP32が選択される。
【0192】
3フレーム目では、例えば、
図27に示すように、d1≧f1、かつ、d2>f2、かつ、|d3|<f3、かつ、n(d4≧f4)≧2であるとする。このとき、カウンタ(c1、c2、c3、c4)=(3、0、0、2)である。したがって、3フレーム連続してd1≧f1であるから、基準決定処理において第1の基準変更条件が成立する。このため、基準位置RPは、最至近から2番目のフォーカス目標位置TLP23の位置へ変更される。また、第3のエリア選択処理において第1の基準変更条件が成立していることから、第1のエリア選択条件が成立する。このため、更新された基準位置RPに最も近いフォーカス目標位置TLP23が選択される。ここで、c1が3に達したため、カウンタはリセットされる。
【0193】
4フレーム目では、例えば、
図27に示すように、d1≧f1、かつ、d2>f2、かつ、|d3|<f3、かつ、n(d4≧f4)≧2であるとする。このとき、カウンタ(c1、c2、c3、c4)=(1、0、0、1)である。したがって、基準決定処理において第4の基準変更条件が成立するから、基準位置RPは変更されない。また、正の所定値以上の傾きを有する動体予測式が成立しているから、第3のエリア選択処理において第2のエリア選択条件が成立する。このため、最至近から2番目のフォーカス目標位置TLP24が選択される。
【0194】
5フレーム目では、例えば、
図27に示すように、d1≧f1、かつ、d2>f2、かつ、|d3|≧f3、かつ、n(d4≧f4)≧2であるとする。このとき、カウンタ(c1、c2、c3、c4)=(2、0、1、2)である。したがって、|d3|≧f3であるから、基準決定処理において第3の基準変更条件が成立する。このため、基準位置RPは露光中のレンズ位置へ変更される。このとき、露光中のレンズ位置は、例えば、フォーカス目標位置TLP32、フォーカス目標位置TLP23、フォーカス目標位置TLP24等の履歴情報に基づいて、動体予測によって決定された位置である。また、第3のエリア選択処理において第2のエリア選択条件が成立するから、最至近から2番目のフォーカス目標位置TLP25が選択される。
【0195】
≪焦点調節装置の利点≫
本実施形態に係る焦点調節装置1は、例えばC-AFを実行するとき等、1stレリーズ押下直後から合焦判断できるまでは、AFエリアのうち最至近を示すデフォーカス量を選択する。また、本実施形態に係る焦点調節装置1は、1stレリーズ押下中や連写中等には、第1の判定乃至第4の判定によってデフォーカス量が最も小さいAFエリア又は動体予測演算結果に最も近いデフォーカス量を示すAFエリアを選択する。さらに、本実施形態に係る焦点調節装置1は、合焦判断において、例えばデフォーカス量=+1Fδを狙いとした制御を行う。
【0196】
このようにして、本実施形態に係る焦点調節装置1は、背景の雑被写体に合わせたデフォーカス量を示すAFエリアを選択しないようにできる。したがって、本技術を適用すれば、遠近混在の被写体に対して撮影を行う場合であっても、1stレリーズの押下直後に最至近のデフォーカス量を示す主要被写体を捉え、また、背景の雑被写体ではなく主要被写体に合ったデフォーカス量を示すAFエリアを適切に選択できる。
【0197】
本実施形態に係る焦点調節装置1は、例えばC-AF連写中には、基準決定処理及び第3のエリア選択処理を実行する。本実施形態に係る基準決定処理では、基準位置RPは、露光中のレンズ位置に限らない。基準位置RPは、測距結果に応じて、保持されたり、変更されたりする。また、各々の判定は、所定のフレーム数の結果に基づいて実施される。また、本実施形態に係る第3のエリア選択処理では、基準決定処理でフレーム毎に更新され得る基準位置RPと、絶対位置であるフォーカス目標位置TLPとに基づいて、AFエリア選択が行われる。このように、基準位置RPに基づいてAFエリア選択が行われることで、仮に、誤測距等、精度の悪い結果が選択されたフレームがあったとしても、その後のフレームにおいて、元の合焦位置付近のフォーカス目標位置TLPを出力するAFエリアが選択され得る。
【0198】
例えば、誤測距等によって、主要被写体の位置から外れたフォーカス目標位置TLPを出力するAFエリアが一時的に存在していても、基準位置RPは、主要被写体の位置の近傍に保持される。つまり、本技術では、一時的に誤測距結果が生じても、主要被写体の位置の近傍のフォーカス目標位置TLPを出力するAFエリアを選択できるため、主要被写体に合焦し続けることができる。
【0199】
例えば、基準位置RPは、動体予測式に基づいて駆動したフォーカスレンズ1021のレンズパルス位置に限らない。例えば、至近側のAFエリアが選択されてフォーカスレンズ1021が至近側へ移動した場合であっても、所定のフレーム数の間は、更新前の基準位置RPが保持される。このことから、本技術は、動体予測式から外れたフォーカス目標位置TLPを出力するAFエリアが一時的に存在していても、主要被写体の位置の近傍のフォーカス目標位置TLPを出力するAFエリアを選択できるため、主要被写体に合焦し続けることができる。
【0200】
例えば、基準位置RPから外れたフォーカス目標位置TLPが一時的に検出されたときには、誤測距を考慮して、基準位置RPは変更されない。一方で、基準位置RPから外れたフォーカス目標位置TLPが検出される状態が続いたときには、主要被写体が移動していることを考慮して、基準位置RPは変更される。このことから、本技術は、最至近のフォーカス目標位置TLPを監視することにより、一度背景に合焦した後であっても、至近側へ移動している主要被写体に合焦できる。
【0201】
[変形例]
ここまで、1つのAFエリアのデフォーカス量は縦方向と横方向との2つの測距結果を示すとして説明をしてきたが、これに限定されない。デフォーカス量は、当該縦方向と横方向とが、それぞれさらに細かく分割されてもよく、例えば、縦方向で3つのデフォーカス量が、横方向で3つのデフォーカス量が算出される場合もあり得る。このように縦方向と横方向とをさらに3分割する場合には、例えば1つのAFエリアが3つの位置に分けられて、各々のAFエリア内でL・C・Rの3つのブロックに分けてデフォーカス量を算出する場合があり得る。この場合も、AFエリアを121×2(縦横)×3ブロックとして扱って本技術によって実現できることは言うまでもない。
【0202】
しかしながら、このようにAFエリアをさらに分割してデフォーカス量を算出する場合には、当該デフォーカス量の演算量が増加し、演算時間もまた増加する。演算時間を短縮するために、例えばブロック選択が実施される時は、デフォーカス量への変換や各種補正値を適用する前の、2像間隔値の状態でブロック選択が実施されるようにすればよい。ただし、このときは動体予測結果も得られないため、以下の判定処理が行われることとする。
【0203】
このとき、判定部216bは、(正の2像間隔値の絶対値の最小値)≦(負の2像間隔値の絶対値の最小値×定数)の関係を満たす正の値を有する2像間隔値が存在するか否かの判定(第5の判定)を行う。第5の判定を満たす2像間隔値が存在する場合は、当該2像間隔値を示すブロックが選択される。一方で、第5の判定を満たす2像間隔値が存在しない場合、負の2像間隔値の絶対値の最小値を示すブロックが選択される。
【0204】
なお、第1のエリア選択処理及び第2のエリア選択処理は、デフォーカス量の代わりに、デフォーカス量から変換されたフォーカス目標位置TLPを用いて行われてもよい。この場合、これらの処理に先立って、デフォーカス量が算出されたAFエリアA1毎に、フォーカス目標位置TLPが算出されていればよい。また、この場合、その時点でのフォーカスレンズ1021の位置が、基準位置RPとして用いられればよい。例えば、デフォーカス量が正であるときとは、フォーカス目標位置TLPが、基準位置RPよりも至近側にあるときである。
【0205】
なお、フローチャートで示した各々の処理及び各々の処理内の各ステップは、その順序を変更でき、また、追加及び削除もできる。これら各々の処理は、交換式レンズ100又はカメラ本体200の内部に記録された各々のプログラムによって実行される。各々のプログラムは、予め交換式レンズ100又はカメラ本体200の内部に記録されていても、別の記録媒体に記録されていてもよい。これら記録の方法は様々であり、製品出荷時に記録されるものでもよく、配布された記録媒体が利用されて記録されるものでもよく、インターネット等通信回線が利用されて記録されるものでもよい。
【0206】
なお、実施形態において、「部」(セクションやユニット)として記載した部分は、専用の回路や、複数の汎用の回路を組み合わせて構成してもよく、必要に応じて、予めプログラムされたソフトウェアに従って動作を行うマイコン、CPU等のプロセッサ、又はFPGA等のシーケンサを組み合わせて構成されてもよい。また、その制御の一部又は全部を外部の装置が引き受けるような設計も可能で、この場合、有線又は無線の通信回路が介在する。通信は、Bluetooth(登録商標)通信、Wi-Fi(登録商標)通信、電話回線等で行われればよく、USB等で行われてもよい。専用の回路、汎用の回路や制御部を一体としてASICとして構成してもよい。
【符号の説明】
【0207】
1…焦点調節装置、100…交換式レンズ、102…撮影レンズ、104…駆動部、106…レンズCPU、108…レンズ側記憶部、110…インターフェイス(I/F)、200…カメラ本体、202…メカシャッタ、204…駆動部、206…操作部、206a…焦点調節指示部、208…撮像素子、210…撮像制御回路、212…アナログ処理部、214…アナログデジタル変換部(ADC)、216…CPU、216a…動体予測部、216b…判定部、216c…敏感度設定部、216d…基準設定部、216e…基準更新部、216f…エリア選択部、218…画像処理部、220…画像圧縮展開部、222…焦点検出回路、222a…信頼性判定部、222b…変換部、224…表示部、226…バス、230…本体側記憶部、232…記録媒体、234…追尾回路、236…顔検出回路、1021…フォーカスレンズ、1022…絞り。