(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 13/08 20060101AFI20220314BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20220314BHJP
H01P 5/08 20060101ALI20220314BHJP
H01Q 21/08 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
H01Q13/08
H01Q1/38
H01P5/08 A
H01Q21/08
(21)【出願番号】P 2018053241
(22)【出願日】2018-03-20
【審査請求日】2020-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【氏名又は名称】鈴木 順生
(74)【代理人】
【識別番号】100206243
【氏名又は名称】片桐 貴士
(72)【発明者】
【氏名】橋本 紘
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-127481(JP,A)
【文献】特開2012-199895(JP,A)
【文献】特開2001-044716(JP,A)
【文献】特開2002-111208(JP,A)
【文献】特開2014-165610(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0052755(US,A1)
【文献】特表2012-520652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00- 1/10
H01Q 1/27- 3/46
H01Q 13/00-13/28
H01Q 21/00-25/04
H01P 5/00- 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に積層された複数の誘電体板と、
前記複数の誘電体板に含まれる第1誘電体板を貫通し、第1高周波信号を伝送する第1ビアと、
前記第1誘電体板の
第1面にあり、前記第1ビア
と電気的に接続された送信用信号線と、
前記
複数の誘電体板
に含まれる第2誘電体板と、前記第1誘電体板および前記第2誘電体板の間
の第3誘電体板と、の間に
ある第1導体板と、
少なくとも一部が、前記送信用信号線の
少なくとも一部と前記第1方向から見て重なり、前記第1導体板を貫通した第1開口部と、
少なくとも一部が、前記第1開口部の
少なくとも一部と前記第1方向から見て重なる送信用アンテナ素子と、
前記第2誘電体板の
第1面にあり、第2高周波信号を伝送する受信用信号線と、
前記第2誘電体板を貫通し
、前記受信用信号線と
電気的に接続された第2ビアと、
少なくとも一部が、前記第2ビアの
少なくとも一部と前記第1方向から見て重なり、前記第1誘電体板から前記第2誘電体板の間にある各誘電体板をそれぞれ貫通した、一つ以上の第3ビアと、
前記第1導体板を貫通し、
前記第1方向から見て前記第3ビアの一つを内側に含む第2開口部と、
少なくとも一部が、前記第2ビアの
少なくとも一部と前記第1方向から見て重なり、前記第1誘電体板を貫通した第4ビアと、
を備え
、
前記第2ビアおよび前記第3ビアは離間し、前記第3ビアおよび前記第4ビアは離間する、
アンテナ装置。
【請求項2】
前記送信用信号線および前記第1導体板が、マイクロストリップ線路またはストリップ線路を構成し、
前記第1ビアから前記送信用信号線に前記第1高周波信号が伝送されたときに、前記マイクロストリップ線路またはストリップ線路により、前記送信用信号線および前記送信用アンテナ素子が電磁結合し、
前記電磁結合により、前記第1高周波信号が前記送信用アンテナ素子に伝送される
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1誘電体板よりも下層に
ある第2導体板
をさらに備える請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1導体板と前記第2導体板の間に存在する各誘電体板をそれぞれ貫通し、
前記第1方向に並んだ複数のビアを構成要素とする、複数の第1ビアセット
をさらに備え、
前記第1導体板と前記第2導体板の間に存在し、かつ高周波信号を伝送するビアの少なくともいずれかを中心にして、前記複数の第1ビアセットが円弧上に配置される
請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記
複数の誘電体板に含まれる第4誘電体板の
第1面、または、前記
複数の誘電体板に含まれる第
5誘電体板
及び第6誘電体板
の間に
ある第3導体板と、
少なくとも一部が、前記第1開口部の
少なくとも一部と前記第1方向から見て重なり、前記第3導体板を貫通した第3開口部と、
をさらに備え、
前記第4誘電体板は前記第2誘電体板及び前記第5誘電体板の間にあり、
前記第4誘電体板は前記第2誘電体板及び前記第6誘電体の間にあり、
前記送信用アンテナ素子が、
前記第1方向から見て前記第3開口部の内側に
ある
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記受信用信号線の
少なくとも一部
と前記送信用アンテナ素子の
少なくとも一部は、前記第1方向から見て重なり、
前記受信用信号線および前記送信用アンテナ素子が電磁結合することにより、前記受信用信号線に前記第2高周波信号が伝送される
請求項5に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
少なくとも一部が、前記受信用信号線の
少なくとも一部と前記第1方向から見て重なり、前記第3導体板を貫通した第4開口部
をさらに備え、
前記第4開口部がスロットアンテナとして動作することにより、前記受信用信号線に前記第2高周波信号が伝送される
請求項5に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記第1導体板と前記第3導体板の間に存在する各誘電体板をそれぞれ貫通し、
前記第1方向に並んだ複数の保護用のビアを構成要素とする、複数の第2ビアセット
をさらに備え、
前記第1導体板と前記第3導体板の間に存在し、かつ高周波信号を伝送するビアの少なくともいずれかを中心にして、前記複数の第2ビアセットが円弧上に配置される
請求項5ないし7のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
第1内導体と、第1外導体と、を含む、送信用同軸コネクタと、
第2内導体と、第2外導体と、を含む、受信用同軸コネクタと、
をさらに備え、
前記第1内導体が、前記第1ビアと導通し、
前記第1外導体が、前記第2導体板と導通し、
前記第2内導体が、前記第4ビアと導通し、
前記第2外導体が、前記第2導体板と導通する
請求項3、または請求項3に直接的または間接的に従属する請求項4ないし請求項8のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記送信用信号線が
第1分岐
および第2分岐を有し、
前記第1分岐の少なくとも一部と前記第1開口部の少なくとも一部が前記第1方向から見て重なり、
前記第2分岐の少なくとも一部と前記第1開口部の少なくとも一部が前記第1方向から見て重なり、
前記受信用信号線が
第3分岐
および第4分岐を有し、
前記第3分岐の少なくとも一部と前記第1開口部の少なくとも一部が前記第1方向から見て重なり、
前記第4分岐の少なくとも一部と前記第1開口部の少なくとも一部が前記第1方向から見て重なり、
前記第1開口部ごとに、
対応する前記送信用アンテナ素子が存在する
請求項6に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
前記複数の誘電体板に含まれ、隣接する誘電体板同士を接着する接着層
をさらに備える請求項1ないし8のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項12】
前記受信用信号線に前記第2高周波信号が印加されたとき、前記第2ビアおよび前記第3ビアは容量結合し、前記第3ビアおよび前記第4ビアは容量結合する、
請求項1ないし11のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項13】
請求項1ないし1
2のいずれか一項に記載された、複数のアンテナ装置と、
分配器と、
前記分配器と、前記複数のアンテナ装置それぞれと、を接続する複数の送信用伝送線路と、
合成器と、
前記合成器と、前記複数のアンテナ装置それぞれと、を接続する複数の受信用伝送線路と、
を備えるアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
積層基板に形成されたストリップ線路を構成する信号線に対して高周波信号を伝送するために、「同軸-ストリップ線路変換器」が提案されている。さらに、「同軸-ストリップ線路変換器」において用いられるビアのアスペクト比を低減することにより、温度変化に対する長期信頼性を向上する技術が提案されている。当該技術では、接続された同軸コネクタと、ストリップ線路と、の間に存在する各誘電体基板ごとに、積層方向(上下方向)に導通するビアを設ける。さらに、これらのビアが積層方向に並ぶように配置される。複数のビアを用いて個々のビアのアスペクト比を抑えつつ、対向するビア同士の容量結合により、同軸コネクタから信号線への伝送を可能にする。
【0003】
しかし、提案技術では、製品によってアンテナ特性がばらつきやすいことが発覚した。アンテナは、その用途に応じて、送信特性に仕様が定められていることが多いため、送信特性に対してのばらつきを抑える技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一実施形態は、送信特性に対するばらつきを改善したアンテナを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様としてのアンテナ装置は、複数の誘電体板、第1ビア、送信用信号線、第1導体板、第1開口部、送信用アンテナ素子、受信用信号線、第2ビア、一つ以上の第3ビアと、第2開口部、および第4ビアを備える。第1から第4のビアは、それぞれ対応する誘電体板を貫通し、高周波信号を伝送する。第1ビアを流れる第1高周波信号は、第1誘電体板の上面に設けられて第1ビアの上端部と接続された送信用信号線と、送信用信号線の一部の真上に設けられて第1導体板を貫通した第1開口部と、を介して、送信用アンテナ素子に伝送される。第2ビア、第3ビア、および第4ビアを流れる第2高周波信号は、第2誘電体板の上面に設けられて第2ビアの上端と接続されたた受信用信号線から伝送される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態のアンテナ装置について説明する図。
【
図2】第2の実施形態のアンテナ装置について説明する図。
【
図3】第3の実施形態のアンテナ装置について説明する図。
【
図4】第4の実施形態のアンテナ装置について説明する図。
【
図5】第5の実施形態のアンテナ装置について説明する図。
【
図6】第6の実施形態のアンテナ装置を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。各図面において、同一の構成要素には同一の参照符号を付している。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態のアンテナ装置について説明する図である。
図1Aは、第1の実施形態のアンテナ装置100の分解斜視図である。
図1Bはアンテナ装置100の上面図である。
図1Cは、
図1Bに示されたC-C線における断面図である。C-C線は、後述する受信用信号線112に沿った線である。
図1Dは、
図1Bに示されたD-D線における断面図である。D-D線は、後述する送信用信号線111に沿った線である。なお、
図1Aにおいて、各誘電体板は透明にて図示されている。また、
図1Aにおいて、
図1Cおよび1Dに示されている接着層181および182は省略されている。また、
図1Bにおいて、送信用信号線111は、本来は第2誘電体板102に隠れているため、点線で示されている。
【0010】
第1の実施形態のアンテナ装置100は、第1誘電体板(第1誘電層)101と、第2誘電体板(第2誘電層)102と、第3誘電体板(第3誘電層)103と、送信用信号線111と、受信用信号線112と、送信用アンテナ素子121と、受信用アンテナ素子122と、第1導体板(第1導電層)131と、第1ビア141と、第2ビア142と、第3ビア143と、第4ビア144と、を備える。また、各層を接着する接着層を有していてもよい。本実施形態では、アンテナ装置100が、第1接着層181と、第2接着層182と、をさらに備えているとする。
【0011】
図1に示すように、第1誘電体板101、第2誘電体板102、および第3誘電体板103は、積層されている。本説明においては、この積層方向(層の厚さ方向)を上下方向として説明する。また、第1誘電体板101がある方を下とし、第2誘電体板102がある方を上とする。第3誘電体板103は、第1誘電体板101および第2誘電体板102の間に挟まれている(中間層)とする。なお、説明の便宜上、ここでは、三つの誘電層としたが、誘電層は三つ以上存在してもよい。例えば、第1誘電体板101および第2誘電体板102の間に、第4誘電体板と第5誘電体板が存在してもよい。
【0012】
本実施形態のアンテナ装置100では、第1誘電体板101の下面において、図示されていない外部の回路などに対する、高周波信号の入出力が行われることを想定する。また、本実施形態のアンテナ装置100では、第2誘電体板102の上面において、電磁波を用いた高周波信号の送受信が行われることを想定する。ゆえに、第1誘電体板101の下面と、第2誘電体板102の上面との間において、高周波信号の伝送経路が設けられている。なお、高周波信号は、周波数が1GHz以上の信号を想定する。
【0013】
また、本実施形態では、高周波信号の伝送経路が、送信される高周波信号を伝送するための送信経路と、受信された高周波信号を伝送するための受信経路と、に分けられている。詳細は後述する。また、以降においては、送信される高周波信号を単に送信信号(第1高周波信号)と記載し、受信された高周波信号を単に受信信号(第2高周波信号)と記載する。
【0014】
アンテナ装置100の構成要素について説明する。
【0015】
第1誘電体板101から第3誘電体板103までの各誘電体板は、絶縁体で形成された基板である。当該絶縁体として、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、エポキシなどの樹脂基板が用いられてもよい。あるいは、樹脂を発泡した発泡プラスチック、液晶ポリマーなどのフィルムが用いられてもよい。
【0016】
なお、
図1Aおよび1Bにおいて、各誘電体板の平面視の形状は矩形であるが、当該形状は矩形に限られるものではない。例えば、多角形、円形、またはその他の形状でもよい。
【0017】
図1Aに示すように、第1誘電体板101には、送信用信号線111と、第1ビア141と、第4ビア144と、が設けられている。
【0018】
送信用信号線111は、第1誘電体板101の上面に設けられる。送信用信号線111は、通常、誘電体板表面にパターニングされた導電材膜だが、その他の方法で形成されていてもよい。
【0019】
第1ビア141は、第1誘電体板101を貫通するように設けられた導電性のビアである。第1ビア141の下端のランド部は、第1誘電体板101の下面の表面に露出している。また、第1ビア141は、第1誘電体板101の上面において、第1ビア141の上端のランド部を介して、送信用信号線111と接続されている。
【0020】
第1ビア141の下端のランド部に対して送信信号が伝送されると、第1ビア141の上端のランド部と送信用信号線111とが接続されているために、第1ビア141および送信用信号線111に当該信号が伝送される。つまり、第1ビアおよび送信用信号線111は、送信信号を送信するための送信経路の一部である。
【0021】
第4ビア144は、第1誘電体板101を貫通するように設けられた導電性のビアである。第4ビア144の下端のランド部は、第1誘電体板101の下面の表面に露出している。これにより、第4ビア144の下端のランド部は、外部の回路などと電気的に接続でき、受信信号を外部の回路などに出力する。つまり、第4ビアは、受信信号を受信するための受信経路の一部である。
【0022】
なお、第1ビア141から第4ビア144までの各ビアは、各誘電体板の貫通孔の内壁面にメッキを形成することにより、または、貫通孔に導電性樹脂を充填することにより、生成される。
【0023】
なお、第1ビア141から第4ビア144までの各ビアの上端および下端にはランド部が形成されている。ランド部は、通常、誘電体板表面にパターニングされた導電材膜だが、その他の方法で形成されていてもよい。また、
図1Aにおいて、各ランド部の形状は円形であるが、円形に限られるわけではない。矩形、多角形などの形状であってもよい。
【0024】
また、
図1Aおよび1Bに示すように、第2誘電体板102には、送信用アンテナ素子121と、受信用アンテナ素子122と、受信用信号線112と、第2ビア142と、が設けられている。
【0025】
本実施形態では、送信用アンテナ素子121および受信用アンテナ素子122は、第2誘電体板102の上面に設けられている。送信用アンテナ素子121および受信用アンテナ素子122は、金属などの導電材で形成された、導電性のパッチである。また、送信用アンテナ素子121および受信用アンテナ素子122は、平面視の形状が、
図1Bに示すような矩形(例えば正方形)になるように形成される。
【0026】
送信用アンテナ素子121は、送信信号を受け取り、電磁波にて放射する。つまり、第1ビア141に伝送された送信信号は、送信用アンテナ素子121まで伝送される。
【0027】
また、
図1Aおよび1Bに示すように、送信用アンテナ素子121は、送信用信号線111の一部の真上に位置するように、配置される。
図1Bに示すように、平面視において、送信用アンテナ素子121と送信用信号線111とが重なっている領域があればよい。
【0028】
受信用アンテナ素子122は、電磁波により、受信信号を生成する。つまり、第4ビア144に伝送された受信信号は、受信用アンテナ素子122から伝送されたものである。
【0029】
受信用信号線112は、第2誘電体板102の上面に設けられている。受信用信号線112の一端は、受信用アンテナ素子122に接続されている。受信用信号線112は、通常、誘電体板表面にパターニングされた導電材膜だが、その他の方法で形成されていてもよい。
【0030】
第2ビア142は、第2誘電体板102を貫通するように設けられた導電性のビアである。第2ビア142の上端のランド部は、第2誘電体板102の上面において、受信用信号線112の受信用アンテナ素子122とは接続されていない方の一端と接続されている。また、第2ビア142は、第4ビア144の真上に位置するように設けられる。
【0031】
受信用アンテナ素子122、受信用信号線112、および第2ビア142が接続されていることにより、受信信号は、受信用アンテナ素子122から、受信用信号線112および第2ビア142に伝送される。つまり、受信用信号線112および第2ビア142は、受信信号を受信するための受信経路の一部である。
【0032】
また、
図1Aに示すように、第3誘電体板103には、第1導体板131と、第3ビア143と、が設けられている。また、第1導体板131には、少なくとも、第1開口部(送信用スロット)151および第2開口部152が設けられている。
【0033】
第1導体板131は、第2誘電体板102と第3誘電体板103との間に設けられる。第1導体板131の形成方法は特に限られるものではない。
図1Aにおいては、第1導体板131は、第3誘電体板103の上面にパターニングされた導電材膜として図示されている。しかし、第1導体板131は、第2誘電体板102の下面にパターニングされた導電材膜であってもよい。あるいは、第2誘電体板102と第3誘電体板103の間に設けられた、独立した導体板であってもよい。
【0034】
第1開口部(送信用スロット)151は、送信用信号線111と送信用アンテナ素子121との間に設けられる。
図1Aにおいて、第1開口部の形状は矩形であるが、矩形に限られるわけではない。H字型、ダンベル型、楕円、円形などの形状であってもよい。
【0035】
第2開口部152は、絶縁のため、第3ビア143が第1導体板131と接触しないように、第3ビア143の周囲に設けられる。つまり、第2開口部152は第3ビア143を内側に含む。なお、
図1Aにおいて、第2開口部152の形状は、円形としているが、特に限られるものではない。矩形、多角形などの形状であってもよい。
【0036】
第1導体板131は、その配置により、送信用信号線111と、送信用マイクロストリップ線路を構成する。第1ビア141を介して送信用信号線111に送信信号が伝送されると、送信用マイクロストリップ線路により、送信用信号線111は、第2誘電体板102の上面の送信用アンテナ素子121と電磁結合する。送信用信号線111と送信用アンテナ素子121との間には、電磁結合を妨げる第1導体板131があるが、送信用信号線111の一部の真上に第1開口部151があることにより、当該一部において、電磁結合することができる。これにより、送信用信号線111から送信信号が、送信用アンテナ素子121に伝送される。このように、送信用アンテナ素子121は、スロット結合給電されるパッチアンテナとして動作する。
【0037】
また、第1導体板131は、その配置により、受信用信号線112と、受信用マイクロストリップ線路を構成する。前述の通り、受信用信号線112は受信用アンテナ素子122と接続されているため、受信用アンテナ素子122は受信用マイクロストリップ線路により共平面給電されるパッチアンテナとして動作する。
【0038】
第3ビア143は、第3誘電体板103を貫通するように設けられた導電性のビアである。第3ビア143は、第4ビア144の真上および第2ビア142の真下に設けられる。言い換えると、第2ビア142、第3ビア143、および第4ビア144は、積層方向に対して同軸上に並ぶ。
【0039】
第3ビア143は、接着層または隙間などにより、第2ビア142および第4ビア144と、直接接続されてはいない。そのため、直流電流は、第3ビア143を介して、第2ビア142と第4ビア144との間を流れない。
【0040】
しかし、第3ビア143の上端のランド部と、第2ビア142の下端のランド部とは、容量結合するのに十分に短い距離で、対向している。また、第3ビア143の下端のランド部と、第4ビア144の上端のランド部とは、容量結合するのに十分に短い距離で、対向している。ゆえに、高周波電流ならば、第2ビア142および第3ビア143の容量結合と、第3ビア143および第4ビア144の容量結合と、により、第2ビア142と第4ビア144との間を流れる。つまり、高周波信号である受信信号は、第3ビア143を介して、第2ビア142から第4ビア144へ伝送される。ゆえに、第3ビア143は、受信経路の一部となる。
【0041】
また、
図1Aでは省略したが、アンテナ装置100は、
図1Cに示すように、各誘電体板の間に接着層を設けて、各誘電体板を接着してもよい。接着層は、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などのフィルムにより形成されてもよいし、プリプレグにより形成されてもよい。なお、接着層があると、各構成要素の積層方向の距離が、複数のアンテナ装置100ごとにばらつかなくなり、結果として、アンテナ特性が複数のアンテナ装置100ごとにばらつくことを防ぐ。そのため、接着層がある方が好ましい。
【0042】
なお、接着層は、積層のためのプレス工程において、真空環境(減圧環境とも称する)において加熱された状態でプレスされる。これにより、誘電体板同士が接着層により接着されるが、当該プレス工程において、対向するビア同士の間(例えば、第4ビア144と第3ビア143との間)に接着層が残存する場合と、残存しない場合とが有り得る。例えば、ビアのランド部により接着層が破断される場合も多い。本実施形態では、隣接層のビア同士は容量結合により電気的に接続されるが、設計仕様とは異なり、接着層が残存せずに一部のビア同士が接触している場合でも、高周波電流は流れるために問題は生じない。
【0043】
次に、
図1Cを用いて、アンテナ装置100の受信時の動作について説明する。まず、第2誘電体板102の上面において、受信用アンテナ素子122により受信信号が受信される。受信信号は、受信用アンテナ素子122に接続された受信用信号線112と、受信用信号線112に接続された第2ビア142とに、伝送される。
【0044】
第2ビア142の受信信号は、第2ビア142と第3ビア143との容量結合により、第3ビア143に伝送される。そして、第3ビア143の受信信号は、第3ビア143と第4ビア144との容量結合により、第4ビア144に伝送される。
【0045】
このように、受信信号は、各ビアにより各積層を経由して、第2誘電体板102の上面から第1誘電体板101の下面まで伝送される。そして、第4ビア144の下端のランド部に伝送線路などを接続すれば、伝送線路の接続先の回路などに受信信号を出力することができる。
【0046】
また、第2誘電体板102の上面から第1誘電体板101の下面までの受信信号の伝送を、一つのビアではなく、第2ビア142、第3ビア143、および第4ビア144に分けて、実現している。これにより、一つのビアで実現した場合よりも、個々のビアのアスペクト比が低減されて、温度変化に対する長期信頼性が向上する。
【0047】
なお、誘電体板が4層以上ある場合も、各積層ごとに第3ビア143のようなビアを設けて、受信信号を上層から下層へ受け渡せばよい。
【0048】
次に、
図1Dを用いて、アンテナ装置100の送信時の動作について説明する。まず、送信信号は、第1誘電体板101の下面において、第1ビア141の下端のランド部に入力される。そして、第1ビア141と接続された送信用信号線111に、送信信号が伝送される。送信用信号線111と、第2誘電体板102の上面の送信用アンテナ素子121とは電磁結合しているため、送信信号が送信用アンテナ素子121に伝送される。
【0049】
このように、送信信号は、容量結合されたビアを介さずに、第1誘電体板101の下面から第2誘電体板102の上面まで伝送される。そして、送信用アンテナ素子121が、電磁波を用いて、送信信号を外部空間へ放射する。ゆえに、送信信号は、容量結合されたビアを経由していないため、容量結合の影響を受けない。
【0050】
容量結合の静電容量は、ビアの位置、ビア同士間の距離などに依存する。当該位置および距離は、多くの要因により、製品ごとにばらついてしまう。そのため、静電容量を設計仕様に合致させることは、比較的困難である。例えば、誘電体板、接着層などの製造ばらつき、導体ランドの膜厚に対するばらつきが、静電容量のばらつきの原因となる。また、プレス工程における圧力、温度なども、静電容量のばらつきの原因となる。つまり、容量結合されたビアを経由して伝送を行うと、アンテナ特性が製品ごとにばらつくこととなる。
【0051】
しかし、第1の実施形態のアンテナ装置100では、送信信号が容量結合されたビアを経由しない。そのため、送信特性がばらつくことを抑えることができる。
【0052】
なお、誘電体板が4層以上あっても、電磁結合により、送信信号は送信用信号線111から送信用アンテナ素子121に伝送される。
【0053】
以上のように、本実施形態によれば、送信用信号が、容量結合されたビアを介さずに、送信用信号線111から送信用アンテナ素子121へ伝送される。これにより、アンテナ装置100が、同軸-ストリップ線路変換器を有していても、その送信特性が、製品によってばらつかずに安定する。
【0054】
(第2の実施形態)
図2は、第2の実施形態のアンテナ装置について説明する図である。第1の実施形態と同様に、
図2Aから2Dにおいて、分解斜視図、上面図、C-C線断面図、D-D線断面図が示されている。なお、
図2Cおよび2Dでは、アンテナ装置100の入出力インタフェースとして、同軸コネクタが接続されている。なお、これまでの実施形態と同様な点は、説明を省略する。
【0055】
第2の実施形態のアンテナ装置100は、送信特性を改善するために、第2導体板132をさらに備える点が第1の実施形態と異なる。また、第2導体板132には、少なくとも、第3開口部153および第4開口部154が設けられている。
【0056】
第2導体板132は、第1誘電体板101よりも下側に設けられる。そのため、第1誘電体板101よりも下側へ向かう不要放射を防ぐ。これにより、アンテナの送信特性をさらに改善することができる。なお、第2導体板132も、第1導体板131と同様、その形成方法は特に限られるものではない。
図2Aにおいて、第2導体板132は、第1誘電体板101の下面にパターニングされた導電材膜として図示しているが、独立した導体板であってもよい。また、第1誘電体板101よりも下層の誘電体板の上面または下面にあってもよい。
【0057】
第3開口部153および第4開口部154はそれぞれ、絶縁のため、第1ビア141および第4ビア144が第2導体板132と接触しないように、第1ビア141および第4ビア144の周囲に設けられている。つまり、第3開口部153は第1ビア141を内側に含み、第4開口部154は第4ビア144を内側に含む。第2開口部152と同様に、第3開口部153および第4開口部154の形状は、特に限られるものではない。
【0058】
第2導体板132は、第1導体板131とともに、送信用信号線111を積層方向に挟み込むように配置されるため、送信用ストリップ線路を構成する。第2の実施形態における送信用ストリップ線路も、第1の実施形態における送信用マイクロストリップ線路と同様に、送信用信号線111および送信用アンテナ素子121を電磁結合させる。これにより、第1の実施形態と同様、送信用信号線111の送信信号が送信用アンテナ素子121に伝送され、送信用アンテナ素子121がスロット結合給電型パッチアンテナとして動作する。したがって、第1の実施形態同様に、送信用信号は、容量結合されたビアを介さずに伝送される。ゆえに、送信特性は、第1の実施形態同様、容量結合の影響を受けない。
【0059】
また、第2の実施形態では、第1導体板131および第2導体板132の間に存在する各ビアの周囲を取り囲むように、新たなビアをさらに備える点が第1の実施形態と異なる。なお、新たなビアは、第1から第4ビアと同様に形成されたものでよい。
【0060】
前述のように、第2の実施形態では、ストリップ線路が用いられている。そのため、送信時において、ストリップ線路による不要な平行平板モードが平行平板(つまり、第1導体板131および第2導体板132)内を伝搬し、平行平板内に存在する各ビアに影響を及ぼす恐れがある。また、第1導体板131が受信用マイクロストリップ線路を構成しているため、受信時においても、平行平板内を不要な平行平板モードが伝搬し、平行平板内に存在する各ビアに影響を及ぼす恐れがある。
【0061】
そのため、平行平板の間に存在する各ビアの周囲に新たなビアをさらに設けることにより擬似同軸構造とし、この平行平板モードの影響を防ぐほうが好ましい。
【0062】
擬似同軸構造にするためには、まず、二つの平行平板を電気的に接続するために、二つの平行平板の間に存在する各誘電体板ごとに、新たなビアを設ける。本説明では、各誘電体板ごとに設けられた新たなビアを構成要素とする組を、ビアセットと記載する。また、ビアセットの要素である新たなビアはそれぞれ積層方向に並ぶように配置する。新たなビア同士は容量結合により電気的に接続される。平行平板および新たなビアは直接接続されてもよいし、容量結合により電気的に接続されていてもよい。接着層の破断などにより、直接接続されている新たなビア同士があってもよい。
【0063】
そして、平行平板モードの影響から保護する対象のビアを取り囲むように、複数のビアセットを配置する。つまり、平行平板の間に存在し、かつ高周波信号を伝送するビアを中心にして、複数のビアセットが円弧上に配置される。こうして、保護対象が内導体に該当し、ビアセットが外導体に該当する擬似同軸構造が形成される。なお、必ずしも、平行平板の間に存在し、かつ高周波信号を伝送するビアの全てに対し、擬似同軸構造を構成しなくてはならないわけではない。
【0064】
本実施形態の擬似同軸構造について、具体的に説明する。
図2Cに示すように、受信経路側では、第3ビア143および第4ビア144が平行平板の間に存在する。そのため、第3ビア143および第4ビア144を中心として、円弧上に新たなビアが示されている。第3ビア143を取り囲む複数のビアを第5ビア145と記載し、第4ビア144を取り囲む複数のビアを第6ビア146と記載する。
【0065】
第5ビア145は、第3誘電体板103を貫通し、かつ、上端のランド部において第1導体板131と接続されている。第6ビア146は、第1誘電体板101を貫通し、かつ、下端のランド部において第2導体板132と接続されている。第6ビア146は、第5ビア145のいずれかと、積層方向において、対向している。つまり、積層方向に並んだ第5ビア145および第6ビア146のビアセットが複数存在し、当該複数のビアセットにより、第3ビア143および第4ビア144が取り囲まれている。これにより、第3ビア143および第4ビア144が内導体に該当し、第5ビア145および第6ビア146のビアセットが外導体に該当する、擬似同軸構造が形成される。
【0066】
送信経路側では、
図2Dに示すように、第1ビア141が平行平板の間に存在する。そのため、第1ビア141を中心として、円弧上に新たなビアが示されている。第1ビア141を取り囲む複数のビアを第7ビア147と記載する。第7ビア147は、第1誘電体板101を貫通し、かつ、下端のランド部において第2導体板132と接続されている。
【0067】
また、
図2Dには、第7ビア147のそれぞれと積層方向において対向するように設けられた新たなビアが示されている。第7ビア147のそれぞれと対向する複数のビアを第8ビア148と記載する。第8ビア148は、第3誘電体板103を貫通し、かつ、上端のランド部において第1導体板131と接続されている。
【0068】
なお、複数のビアセットの数および間隔は適宜調整されてよい。
図2Aに示すように、第3ビア143および第4ビア144を取り囲むビアセット(第5ビア145および第6ビア146のセット)は8本である。一方、第1ビア141を取り囲むビアセット(第7ビア147および第8ビア148のセット)は、送信用信号線111と接触しないように、7本としている。なお、
図2Aにおいては、対象のビアを取り囲む新たなビアに対する符号は一つだけ示しており、残りは省略している。以降の図も同様である。
【0069】
こうして、第1ビア141が内導体に該当し、第7ビア147および第8ビア148のビアセットが外導体に該当する、擬似同軸構造が形成される。これにより、平行平板モードの影響を抑制することができる。
【0070】
また、第1誘電体板101よりも下側に第2導体板132が設けられたことにより、第2の実施形態では、
図2Cおよび2Dに示すように、アンテナ装置100の入出力インタフェースとして、同軸コネクタを利用することが容易になる。
【0071】
同軸コネクタは、内導体191と外導体192から構成される。なお、内導体191と外導体192の間に絶縁体193が設けられていても問題ない。第1誘電体板101の下面において、同軸コネクタの内導体191が擬似同軸構造の内導体に接続され、同軸コネクタの外導体192が第2導体板132に接続されるように、同軸コネクタをアンテナ装置100に実装する。つまり、送信用の同軸コネクタでは、内導体191が第1ビア141に接続され、外導体192が第2導体板132に接続される。受信用の同軸コネクタでは、内導体191が第4ビア144に接続され、外導体192が第2導体板132に接続される。これにより、内導体191が受信経路または送信経路と接続でき、外導体が基準電圧に接続できる。
【0072】
なお、同軸コネクタの実装方法は、特に限られるものではない。一般的には、はんだ付けや、ねじ止めなどによって実装されるが、その他の方法で実装されていてもよい。また、実装の信頼性を高めるため、いくつかの方法を組み合わせて実装されていてもよい。
【0073】
以上のように、本実施形態によれば、第2導体板132により、アンテナ装置100の下側へ向かう不要放射を防ぎ、第1の実施形態よりも送信特性を改善することができる。また、第2導体板132を設けたために、第1導体板131および第2導体板132内に発生する平行平板モードに対しては、擬似同軸構造を形成することにより、その影響を防ぐことができる。また、第2導体板132を設けたために、入出力インタフェースとして、同軸コネクタを利用することが容易になる。
【0074】
(第3の実施形態)
図3は、第3の実施形態のアンテナ装置について説明する図である。これまでの実施形態と同様に、
図3Aから3Dにおいて、分解斜視図、上面図、C-C線断面図、D-D線断面図が示されている。なお、これまでの実施形態と同様な点は、説明を省略する。
【0075】
なお、上記において、第1導体板131は、第2誘電体板102と第3誘電体板103との間に存在すればよいと記載した。その例として、第3の実施形態では、これまでの実施形態と異なり、第1導体板131は、第2誘電体板102の下面に設けた場合を示している。
【0076】
第3の実施形態のアンテナ装置100は、送信特性を改善するために、第4誘電体板104と、第3導体板133と、第3接着層183と、をさらに備える点がこれまでの実施形態と異なる。なお、
図3では、第2の実施形態に新たな構成要素を加えているが、第1の実施形態に新たな構成要素を加えてもよい。
【0077】
第2の実施形態ではアンテナ装置100から下側へ向かう不要放射を防いたが、第3の実施形態ではアンテナ装置100の上側へ向かう不要放射を防ぐ。しかし、アンテナ装置100の上側(つまり、第2誘電体板102の上面)では、電波の送受信が行われていたため、第2の実施形態のように、第2誘電体板102よりも上側に導体板を設けるだけでは、電波の送受信に支障がでる。
【0078】
そこで、第3の実施形態では、第2誘電体板102よりも上方に第4誘電体板104および第3導体板133を設け、第3導体板133が、アンテナ装置100の上側へ向かう不要放射を防ぎつつ、第3導体板133の上面において、電磁波を用いて、送信信号および受信信号が送受されるようにする。
【0079】
第4誘電体板104は、第2誘電体板102よりも上側に設けられる。第4誘電体板104は、第1から第4の各誘電体板と同様に形成されたものでよい。また、第4誘電体板104と第2誘電体板102とを接着する第3接着層183も、他の接着層と同様である。
【0080】
第3導体板133は、第4誘電体板104よりも上側に設けられる。これにより、第3導体板133が、第4誘電体板104の上側へ向かう不要放射を防ぐ。第3導体板133も、第1導体板131などと同様、その形成方法は特に限られるものではない。
図3Aにおいて、第3導体板133は、第4誘電体板104の上面にパターニングされた導電材膜として図示しているが、独立した導体板であってもよい。
【0081】
また、第3導体板133は、第5開口部155と、第6開口部(受信用スロット)156と、を備える。第5開口部155は、その内側に送信用アンテナ素子121を配置し、絶縁のため、送信用アンテナ素子121と第3導体板133とが接触しないように設けられたものである。
【0082】
送信用アンテナ素子121は第2誘電体板102の上面に設けられていたが、本実施形態では、第4誘電体板104の上面の第5開口部155の内側に設けられる。また、
図3Bに示すように、上面図における送信用アンテナ素子121の位置(第4誘電体板104の上面における位置)は、これまでの実施形態と同じである。つまり、これまでの実施形態と同様に、送信用アンテナ素子121が送信用信号線111の一部の真上に配置されている。
【0083】
なお、ここでは、第5開口部155の内側に、後から送信用アンテナ素子121が設けられることを想定したが、結果として、送信用アンテナ素子121と第3導体板133とが接触しないように隙間が設けられればよい。例えば、一枚の導体板に溝を設けて、送信用アンテナ素子121と第3導体板133とに分離してもよい。この場合、当該溝が第5開口部155となる。
【0084】
これまでの実施形態と同様に、本実施形態でも、送信用マイクロストリップ線路(第2導体板132がない場合)または送信用ストリップ線路(第2導体板132がある場合)により、送信用信号線111と送信用アンテナ素子121とが電磁結合する。これにより、本実施形態では、送信用信号線111からの送信信号が送信用アンテナ素子121に伝送される。ゆえに、これまでの実施形態と同様に、送信用アンテナ素子121がスロット結合給電型パッチアンテナとして動作し、電磁波を用いて、送信信号を送信することができる。
【0085】
第6開口部(受信用スロット)156は、受信用アンテナ素子122の代わりとして、設けられる。つまり、本実施形態では、受信用アンテナ素子122は存在しない。なお、受信用信号線112は、これまでの実施形態と同様に、第2誘電体板102の上面に設けられている。第6開口部156は、
図3Aおよび3Bに示すように、受信用信号線112の一部の真上に位置するように、配置される。また、
図3Aおよび3Bにおいて、第6開口部156の形状は矩形であるが矩形に限られるわけではない。H字型、ダンベル型、楕円、円形などの形状であってもよい。
【0086】
第3導体板133は、第1導体板131とともに、受信用信号線112を上下方向に挟み込むように配置されるため、受信用ストリップ線路を構成する。これにより、第6開口部156はスロットアンテナとして動作する。ゆえに、受信用アンテナ素子122がなくとも、第6開口部156により、受信信号が受信用信号線112に伝送される。ゆえに、これまでの実施形態と同様に受信信号を受信することができる。
【0087】
このように、第3の実施形態では、送信経路および受信経路が一部変更されたが、これまでの実施形態と同様に、送受信を行うことができる。また、送信用信号が、容量結合されたビアを介さずに、送信用信号線111から送信用アンテナ素子121へ伝送される点も変わりない。ゆえに、アンテナの送信特性を安定させることができる。
【0088】
また、本実施形態でも、ストリップ線路が用いられているため、平行平板内を不要な平行平板モードが伝搬する。そのため、第2の実施形態と同様に、平行平板の間に存在する各ビアの周囲に新たなビアをさらに設けることにより擬似同軸構造とし、この平行平板モードの影響を防ぐほうが好ましい。また、擬似同軸構造を用いることにより、同軸コネクタを利用することが容易になることは、第2の実施形態と同様である。
【0089】
送信経路側では、
図3Aおよび3Dに示すように、第2の実施形態と同様に、第1ビア141の周囲を、第7ビア147および第8ビア148のビアセットが取り囲んでいる。なお、
図3Cでは、第1導体板131が第2誘電体板102の下面に設けられている例が示されているため、第8ビア148は、第1導体板131と直接接続されておらず、容量結合している。しかし、この場合でも、擬似同軸構造として、平行平板モードの影響を防ぐことができる。
【0090】
受信経路側では、
図3Aおよび3Cに示すように、第3ビア143および第4ビア144が、第5ビア145および第6ビア146のビアセットに取り囲まれている点は、第2の実施形態と同様である。さらに、本実施形態では、第3導体板133が設けられたため、第2ビアも平行平板(第1導体板131および第3導体板133)内に存在する。ゆえに、第2ビアに対しても、
図3Aおよび3Cに示すように、新たなビアセットがさらに設けられている。
【0091】
第2ビア142を取り囲む複数のビアを第9ビア149と記載する。第9ビア149は、第2誘電体板102を貫通し、かつ、下端のランド部において第1導体板131接続されている。また、
図3Dには、第9ビア149のそれぞれと積層方向において対向するように設けられた新たなビアが示されている。第9ビア149のそれぞれと対向する複数のビアを第10ビア140と記載する。第10ビア140は、第4誘電体板104を貫通し、かつ、上端のランド部において第3導体板133と接続されている。これにより、第2ビア142が内導体に該当し、第9ビア149および第10ビア140のビアセットが外導体に該当する、擬似同軸構造が形成される。なお、第9ビア149および第10ビア140も、第1ビア141から第8ビア148と同様に形成されたものでよい。
【0092】
以上のように、本実施形態によれば、第3導体板133により、アンテナ装置100の上側へ向かう不要放射を防ぎ、第2の実施形態よりも送信特性を改善することができる。
【0093】
(第4の実施形態)
図4は、第4の実施形態のアンテナ装置について説明する図である。これまでの実施形態と同様に、
図4Aから4Dにおいて、分解斜視図、上面図、C-C線断面図、D-D線断面図が示されている。なお、これまでの実施形態と同様な点は、説明を省略する。
【0094】
第4の実施形態は、第3の実施形態の変形例である。第3の実施形態では、第3導体板133が、第5開口部155と、第6開口部(受信用スロット)156と、を別々に備えていた。これに対し、第4の実施形態では、第6開口部(受信用スロット)156が存在せず、送信用アンテナ素子121が受信用アンテナ素子を兼ねる点が、第3の実施形態と異なる。ゆえに、本実施形態では、送信用アンテナ素子121を、送受信兼用(共用)アンテナ素子121と記載する。但し、送受信兼用アンテナ素子121は、役割が増えただけであり、これまでの実施形態の送信用アンテナ素子121と同じでよい。これにより、第3導体板133におけるアンテナ素子の占有面積を削減することができる。
【0095】
また、送受信兼用アンテナ素子121は、送信用信号線111の一部の真上、かつ受信用信号線112の一部の真上、に位置するように配置される。これにより、
図4Bに示すように、送受信兼用アンテナ素子121、受信用信号線112、第1開口部(送信用スロット)151、送信用信号線111が、積層方向に並び、平面視において重なる。
【0096】
第6開口部(受信用スロット)156が送受信兼用アンテナ素子121に変わったため、受信用信号線112と、第1導体板131と、第3導体板133とにより形成される受信用ストリップ線路が、送受信兼用アンテナ素子121と受信用信号線112とを電磁結合する。これにより、送受信兼用アンテナ素子121が近接結合給電型パッチアンテナとして動作する。ゆえに、送受信兼用アンテナ素子121から受信用信号線112に受信信号が伝送される。
図4Cに示すように、受信用信号線112から第4ビア144までの受信経路に変更はない。したがって、これまでの実施形態と同様に、受信信号が受信される。
【0097】
図4Dに示すように、送信経路は、第3の実施形態と変わりない。つまり、送信信号は、第3の実施形態と同様に、送信用マイクロストリップ線路(第2導体板132がない場合)または送信用ストリップ線路(第2導体板132がある場合)により、送信用信号線111から送受信兼用アンテナ素子121に伝送される。ゆえに、これまでの実施形態と同様に、送信信号が送信でき、送信特性が安定する。
【0098】
以上のように、本実施形態によれば、第3導体板133により、アンテナ装置100の上側へ向かう不要放射を防ぎ、第2の実施形態よりも送信特性を改善することができる。また、アンテナ素子を送受信兼用にすることにより、第3の実施形態よりもアンテナ素子の占有面積を削減することができる。
【0099】
(第5の実施形態)
図5は、第5の実施形態のアンテナ装置について説明する図である。
図5Aに分解斜視図を、
図5Bに上面図を示す。C-C断面図およびD-D断面図は、第4の実施形態と同様のため、省略する。
【0100】
第5の実施形態では、第3導体板133が送受信兼用アンテナ素子121および第5開口部155を複数備える点が、第4の実施形態と異なる。つまり、第5の実施形態では、複数のアンテナ素子により、送受信を行う。これにより、アンテナ装置100のアンテナ利得および指向性をさらに向上することができる。なお、
図5では、四つのアンテナ素子が示されているが、アンテナ素子の数はアンテナ装置100の仕様に応じて適宜定めてよい。
【0101】
送受信兼用アンテナ素子121が複数あるため、本実施形態の送信経路および受信経路も複数に分岐する。
図5Aおよび5Bに示すように、本実施形態の送信用信号線111は、送信信号を各送受信兼用アンテナ素子121に分配するため、分岐を有した形状とする。また、本実施形態の受信用信号線112は、各送受信兼用アンテナ素子121にて受信信号を合成するため、分岐を有した形状とする。
【0102】
送信用信号線111および受信用信号線112の分岐の形状は、アンテナ装置100の仕様などに応じて、適宜、定めてよい。各送受信兼用アンテナ素子121に直列給電する形状でもよいし、直列給電と並列給電を組み合わせた部分並列給電する形状であってもよい。例えば、
図5Aの送信用信号線111および受信用信号線112は、2段のT分岐を従属接続した4分岐回路である。
【0103】
送信用信号線111および受信用信号線112の分岐により、複数の送受信兼用アンテナ素子121は全て、送信用信号線111の一部の真上、かつ受信用信号線112の一部の真上、に位置するように配置される。これにより、本実施形態のアンテナ装置100は、送信時および受信時に、完全並列給電アレーアンテナとして動作する。
【0104】
送信用信号線111および受信用信号線112が分岐しているものの、個々の送受信兼用アンテナ素子121にとって、送信経路および受信経路の構成は、第4の実施形態と同じである。ゆえに、第4の実施形態と同様に、送信および受信が可能である。
【0105】
以上のように、本実施形態によれば、複数のアンテナ素子により、アンテナ利得および指向性を、これまでの実施形態よりも向上することができる
【0106】
(第6の実施形態)
図6は、第6の実施形態のアンテナ装置を示すブロック図である。第6の実施形態のアンテナ装置200は、それぞれがこれまでの実施形態で示された複数のアンテナ装置100と、分配器201と、複数の送信用伝送線路202と、合成器203と、複数の受信用伝送線路204と、を備える。分配器201および合成器203は、入力インタフェースおよび出力インタフェースを備える。
図6に示すように、分配器201および各アンテナ装置100は、複数の送信用伝送線路202により接続される。合成器203と各アンテナ装置100は、複数の受信用伝送線路204により接続される。
【0107】
アンテナ装置200は、複数のサブアレーを備えるアレーアンテナである。つまり、これまでの実施形態によるアンテナ装置100が、アレーアンテナのサブアレーとして用いられる。サブアレーとして用いられる各アンテナ装置100は、アンテナ利得および指向性の観点からは第5の実施形態であることが好ましいが、これまでに示したいずれの実施形態でもよい。また、全てのサブアレーが、同一の実施形態でなくともよい。
【0108】
分配器201は、分配器201の入力インタフェースを介して、送信信号を生成する回路等と接続される。当該回路等から伝送された送信信号は、分配器201により分配されて、分配器201の各出力インタフェースおよび各送信用伝送線路202を介して、各アンテナ装置100に伝送される。
【0109】
分配器201は、送信アンテナの利得を最大化するために、振幅および位相を等しくなるように、送信信号を分配してもよい。あるいは、ビーム方向を走査するために、位相差があるように送信信号を分配してもよい。
【0110】
送信用伝送線路202からの送信信号は、アンテナ装置100の第1ビア141の下端のランド部に伝送される。これにより、送信信号は、これまでの実施形態にて説明した送信経路を通り、最終的に電磁波にて放射される。
【0111】
合成器203は、合成器203の各入力インタフェースおよび各受信用伝送線路204を介して、各アンテナ装置100により受信信号を受け取る。そして、合成器203は、各受信信号を合成することにより、合成信号を生成する。
【0112】
合成器203は、受信アンテナの利得を最大化するために、各受信信号の振幅および位相を等しくしてから、合成してもよい。あるいは、受信方向を可変とするために、各受信信号に位相差を与えてから、合成してもよい。
【0113】
合成器203は、合成器203の出力インタフェースを介して、合成信号を受け取る回路等と接続される。こうして、合成信号は、出力インタフェースを介して、当該回路に伝送される。
【0114】
受信用伝送線路204の受信信号は、これまでの実施形態にて説明したアンテナ装置100の受信経路を通り、アンテナ装置100の第4ビア144の下端のランド部から、受信用伝送線路204に受け取られる。
【0115】
送信用伝送線路202および受信用伝送線路204は、例えば、同軸ケーブルであるが、導波管などの伝送線路でもよい。第2の実施形態にて説明した同軸ケーブルのように、送信用伝送線路202および受信用伝送線路204がアンテナ装置100に直接接続されてもよい。あるいは、送信用伝送線路202および受信用伝送線路204が変換器を有し、当該変換器が、アンテナ装置100の入力または出力インタフェース、分配器201の出力インタフェース、合成器203の入力インタフェースに対応してもよい。
【0116】
アレーアンテナにおいて、指向性合成を行う場合、所望の振幅および位相にて、各サブアレーのアンテナ素子を励振する必要がある。そのため、各サブアレーが通過振幅および通過位相のばらつきを有すると、各サブアレーの励振振幅および励振位相が所望値から乖離するため、アレーアンテナ全体としての放射指向性が所望特性に対して劣化する恐れがある。また、所望方向以外に放射された電磁波が、通信相手のアンテナ以外のアンテナに対する妨害波となる恐れから、送信アンテナの放射指向性に対して、厳しい仕様が定められている場合がある。
【0117】
それに対し、第6の実施形態におけるアンテナ装置200は、送信特性が安定しているアンテナ装置100をサブアレーとして用いている。ゆえに、アンテナ装置200では、送信信号の振幅および位相を安定して励振することができる。したがって、送信に対して厳しい放射指向性が要求されている場合でも、アンテナ装置200により、当該要求を満足させることができる。
【0118】
以上のように、本実施形態によれば、これまでの実施形態によるアンテナ装置が、アレーアンテナのサブアレーとして用いられる。ゆえに、アレーアンテナの送信特性を安定させることができ、送信信号の振幅および位相を安定して励振することができる。
【0119】
上記に、本発明の一実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0120】
100:アンテナ装置、101:第1誘電体板(第1誘電層)、102:第2誘電体板(第2誘電層)、103:第3誘電体板(第3誘電層)、104:第4誘電体板(第4誘電層)、111:送信用信号線、112:受信用信号線、121:送信用アンテナ素子、122:受信用アンテナ素子、131:第1導体板(第1導電層)、141:第1ビア、142:第2ビア、143:第3ビア、144:第4ビア、145:第5ビア、146:第6ビア、147:第7ビア、148:第8ビア、149:第9ビア、140:第10ビア、151:第1開口部(送信用スロット)、152:第2開口部、153:第3開口部、154:第4開口部、155:第5開口部、156:第6開口部(受信用スロット)、181:第1接着層、182:第2接着層、183:第3接着層、191:内導体、192:外導体、200:アンテナ装置(アレーアンテナ)、201:分配器、202:送信用伝送線路、203:合成器、204:受信用伝送線路。