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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】ドア
(51)【国際特許分類】
   E05D 5/06 20060101AFI20220314BHJP
   E05D 3/02 20060101ALI20220314BHJP
   E06B 3/82 20060101ALI20220314BHJP
   E05F 3/20 20060101ALI20220314BHJP
   E05D 11/00 20060101ALI20220314BHJP
   E05F 1/12 20060101ALI20220314BHJP
   E05D 7/04 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
E05D5/06 C
E05D3/02
E06B3/82
E05F3/20 Z
E05D11/00
E05F1/12
E05D7/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018065811
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019173507
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100081569
【弁理士】
【氏名又は名称】若田 勝一
(74)【代理人】
【識別番号】100156018
【弁理士】
【氏名又は名称】若田 充史
(72)【発明者】
【氏名】三橋 隆史
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-004292(JP,U)
【文献】特開平11-270213(JP,A)
【文献】特開2005-299253(JP,A)
【文献】特開2012-057423(JP,A)
【文献】特開平08-184254(JP,A)
【文献】実開昭54-131360(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 5/06
3/02
11/00
E05F 1/12
3/20
E06B 3/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の開口部に設けられ、少なくとも吊元側縦枠と戸先側縦枠とを有するドア枠と、
前記ドア枠に、前記吊元側縦枠に設けられた蝶番により回動可能に取り付けられたドア本体とを備えたドアであって、
前記蝶番は、前記吊元側縦枠内に取り付けられ、平面視において、前記蝶番の軸心は、前記吊元側縦枠の側面より内側に位置し、
前記ドア本体に対面する見込み面部に開口部が設けられた吊元側縦枠と、
第1の取付部と第2の取付部とが軸を介して連結される蝶番とを備え、
前記第1の取付部は、前記吊元側縦枠に取り付けられ、
前記第2の取付部は、前記ドア本体の見込み面部に取り付けられると共に、前記第2の取付部は前記吊元側縦枠の前記開口部に挿通され、
前記第2の取付部は、前記軸に一端側が設けられ、他端側が前記ドア本体に結合されるアーム部と位置調整部材とを備え、前記アーム部の前記他端側の先端は、前記ドア本体の見込み面部に対向するように、前記アーム部と前記ドア本体との相対位置を変更可能にさせるための前記位置調整部材を介して、固定されるドア。
【請求項2】
建物の開口部に設けられ、少なくとも吊元側縦枠と戸先側縦枠とを有するドア枠と、
前記ドア枠に、前記吊元側縦枠に設けられた蝶番により回動可能に取り付けられたドア本体とを備えたドアであって、
前記蝶番は、前記吊元側縦枠内に取り付けられ、平面視において、前記蝶番の軸心は、前記吊元側縦枠の側面より内側に位置し、
前記ドア本体に対面する見込み面部に開口部が設けられた吊元側縦枠と、
第1の取付部と第2の取付部とが軸を介して連結される蝶番とを備え、
前記第1の取付部は、前記吊元側縦枠に取り付けられ、
前記第2の取付部は、前記ドア本体の見込み面部に取り付けられると共に、前記第2の取付部は前記吊元側縦枠の前記開口部に挿通され、
前記第2の取付部のドア本体側端部は、前記ドア本体に設けられたブラケットに形成される凹部の開口部に前記第2の取付部が挿通されて、前記ドア本体部の見込み面部よりも、前記ドア本体の内側に位置するドア。
【請求項3】
前記蝶番と同軸に、ドアクローザーが取り付けられた請求項1又請求項2に記載のドア。
【請求項4】
前記第1の取付部は、前記ドア本体に対面する前記吊元側縦枠の前記見込み面部に取り付けられた請求項1から3までのいずれか1項に記載のドア。
【請求項5】
前記吊元側縦枠の見付け面部と、前記見付け面部に隣接する前記ドア本体の見付け面部との間に、前記吊元側縦枠側から前記ドア本体側に突出するか、もしくは前記ドア本体側から前記吊元側縦枠側に突出して、前記吊元側縦枠と前記ドア本体との間の隙間を覆う遮蔽部が設けられた請求項1から4までのいずれか1項に記載のドア。
【請求項6】
前記蝶番は、前記吊元側縦枠に、ブラケットを介して取り付けられた請求項1から5までのいずれか1項に記載のドア。
【請求項7】
前記蝶番は、前記軸に一端側が設けられ、他端側が前記ドア本体に結合されるアーム部を有し、前記アーム部は、水平断面形状がL字形をなす請求項1から6までのいずれか1項に記載のドア。
【請求項8】
前記ブラケットを覆う遮蔽部材を備えた請求項6に記載のドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば住宅等の建築物に用いられ、ドア本体がドア枠に蝶番を介して取り付けられるドアに関する。
【背景技術】
【0002】
アパートまたは一般住宅あるいは公共の建築物等に用いられる従来のドアには、ドア本体の吊元側に設けられた上下の軸を中心として、ドア本体をドア枠に回動可能に取付けたものと、ドア枠とドア本体との間を蝶番により結合したものとがある。これらのドアのうち、ドア枠とドア本体との間を蝶番により結合した従来のドアは、例えば特許文献1に記載されたもののように構成される。すなわち、蝶番は軸を中心として互いに回動可能に結合された一対の回動板を有し、対をなす一方の回動板をドア枠の縦枠のドア本体側に露出した見込み面に固定し、他方の回動板をドア本体の見込み面に固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-25211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のように、ドア枠とドア本体とを蝶番を介して結合した従来のドアは、蝶番の一方の回動板を縦枠の見込み面に固定している。このため、ドア蝶番が見えてしまい、デザイン性を損ねてしまう。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑み、デザイン性の向上が可能となるドアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のドアは、建物の開口部に設けられ、少なくとも吊元側縦枠と戸先側縦枠とを有するドア枠と、
前記ドア枠に、前記吊元側縦枠に設けられた蝶番により回動可能に取り付けられたドア本体とを備えたドアであって、
前記蝶番は、前記吊元側縦枠内に取り付けられ、平面視において、前記蝶番の軸心は、前記吊元側縦枠の側面より内側に位置し、
前記ドア本体に対面する見込み面部に開口部が設けられた吊元側縦枠と、
第1の取付部と第2の取付部とが軸を介して連結される蝶番とを備え、
前記第1の取付部は、前記吊元側縦枠に取り付けられ、
前記第2の取付部は、前記ドア本体の見込み面部に取り付けられると共に、前記第2の取付部は前記吊元側縦枠の前記開口部に挿通され、
前記第2の取付部は、前記軸に一端側が設けられ、他端側が前記ドア本体に結合されるアーム部と位置調整部材とを備え、前記アーム部の前記他端側の先端は、前記ドア本体の見込み面部に対向するように、前記アーム部と前記ドア本体との相対位置を変更可能にさせるための前記位置調整部材を介して、固定されるものである。
【0007】
このように、本発明のドアは、蝶番の軸心は、前記吊元側縦枠の側面部より内側に位置させたので、蝶番を外部から見えにくくすることができ、デザインを向上させることが可能となる。
【0008】
また、本発明のドアは、建物の開口部に設けられ、少なくとも吊元側縦枠と戸先側縦枠とを有するドア枠と、
前記ドア枠に、前記吊元側縦枠に設けられた蝶番により回動可能に取り付けられたドア本体とを備えたドアであって、
前記蝶番は、前記吊元側縦枠内に取り付けられ、平面視において、前記蝶番の軸心は、前記吊元側縦枠の側面より内側に位置し、
前記ドア本体に対面する見込み面部に開口部が設けられた吊元側縦枠と、
第1の取付部と第2の取付部とが軸を介して連結される蝶番とを備え、
前記第1の取付部は、前記吊元側縦枠に取り付けられ、
前記第2の取付部は、前記ドア本体の見込み面部に取り付けられると共に、前記第2の取付部は前記吊元側縦枠の前記開口部に挿通され、
前記第2の取付部のドア本体側端部は、前記ドア本体に設けられたブラケットに形成される凹部の開口部に前記第2の取付部が挿通されて、前記ドア本体部の見込み面部よりも、前記ドア本体の内側に位置する構成としてもよい。この態様によれば、吊元側縦枠の蝶番の取り付け部分や固定具が見えにくくなり、デザイン性が向上する。
【0009】
上述した本発明において、蝶番と同軸に、ドアクローザーが取り付けられることが好ましい。この態様によれば、蝶番と同軸にドアクローザーが設けられるため、上枠にドアクローザーが取り付けられた従来のドアのように、ドアクローザーが外部に露出することがなくなり、さらなるデザインの向上を図ることができる。また、ドアクローザーの取り付け場所がドア上部ではなくなるため、取り付けが高所の作業ではなくなり、施工性が向上する。更に、ドアクローザーの調整も高所でなくなるため容易となり、メンテナンス性が向上する。
【0010】
上述した本発明において、前記第1の取付部は、前記ドア本体に対面する前記吊元側縦枠の前記見込み面部に取り付けられることが好ましい。この態様によれば、吊元側縦枠の見込み面部や、ドア本体の見込み面部に、ドア本体の縦横の位置調整機構を設けることが可能となるので、ドアを開放状態とすれば、建付け調整が可能となり、施工性およびメンテナンス性がより向上する。
【0011】
上述した本発明において、前記吊元側縦枠の見付け面部と、前記見付け面部に隣接する前記ドア本体の見付け面部との間に、前記吊元側縦枠側から前記ドア本体側に突出するか、もしくは前記ドア本体側から前記吊元側縦枠側に突出して、前記吊元側縦枠と前記ドア本体との間の隙間を覆う遮蔽部が設けられることが好ましい。この態様によれば、ドアを閉じた状態で蝶番やその取り付け部分が見えないため、よりデザイン性の優れたドアを提供できる。また、吊元側縦枠とドア本体との間の隙間が遮蔽部で覆われるため、ドアが閉じているときに蝶番にアクセスしにくくなるので、外部から蝶番が壊され難くなり、防犯性が向上する。
【0012】
上述した本発明において、前記蝶番は、前記吊元側縦枠に、ブラケットを介して取り付けられることが好ましい。この態様によれば、ドアが閉じた状態において、ブラケットにより、蝶番が見えない構造がより実現し易くなり、デザイン性がより向上する。また、ブラケットに建付け調整機構等のための部分を設けることにより、吊元側縦枠への加工部分を減らすことができ、製造が容易となる。
【0013】
上述した本発明において、前記蝶番は、前記軸に一端側が設けられ、他端側が前記ドア本体に結合されるアーム部を有し、前記アーム部は、水平断面形状がL字形をなすことが好ましい。この態様によれば、吊元側縦枠内の領域をアーム部の回動に有効に利用して、ドア本体の回動範囲を広く確保することができる。
【0014】
上述した本発明において、前記ブラケットを覆う遮蔽部材を備えることが好ましい。この態様によれば、ブラケットを覆う遮蔽部材を備えることにより、蝶番を含むドア本体回動のための機能部品をさらによりよく隠すことができる。このため、ドアのデザイン性がより向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のドアの第1の実施形態を室外側から見た図である。
図2】本実施形態のドアの縦断面図である。
図3】本実施形態のドアの横断面図である。
図4】本実施形態のドア枠とドア本体との蝶番による結合部を示す斜視図である。
図5】本実施形態のドア枠とドア本体との蝶番による結合部を、ドアを閉めた状態で示す横断面図である。
図6】本実施形態のドア枠とドア本体との蝶番による結合部を、ドアを開けた状態で示す横断面図である。
図7】本実施形態の蝶番によるドア枠への取り付け側の構造を示す分解斜視図である。
図8】本実施形態の蝶番によるドア本体への取り付け側の構造を示す分解斜視図である。
図9】本実施形態の蝶番により結合されたドア枠とドア本体を示す斜視図である。
図10】本実施形態において、蝶番取り付けのためのブラケットを、カバーにより覆った状態を示す斜視図である。
図11図10に示すカバーのうち、吊元側縦枠側で上側のカバーの取り付け構造を示す縦断面図である。
図12図10に示すカバーのうち、吊元側縦枠側で下側のカバーの取り付け構造を示す縦断面図である。
図13図10に示すカバーのうち、ドア本体側のカバーの取り付け構造を示す縦断面図である。
図14図10に示すカバーのうち、ドア本体側のカバーの取り付け構造を示す横断面図である。
図15】本実施形態において、ドア本体の取り付けに当たり、蝶番を開いた状態に固定しておくための治具をブラケットと蝶番の間に取り付けた状態を示す斜視図である。
図16】本実施形態において、ドア本体を蝶番に仮止めした状態を示す縦断面図である。
図17】本発明のドアの第2の実施形態を実現する蝶番を示す縦断面図である。
図18図17の蝶番を示す分解斜視図である。
図19図17の蝶番の下部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1の実施形態>
図1は本発明のドアの第1の実施形態を室内側から見た図、図2図3はそれぞれ図1のドアの縦断面図および横断面図である。本発明のドア1は、一般住宅やビル等の建物に設置されるが、本実施形態においては、一般住宅に設置されるドアについて示す。すなわち、図1ないし図3に示すように、建物の玄関に設けられる開口部2には、ドア枠3内にドア本体4を設けたドア1が設置される。ドア本体4は、ドア枠3に蝶番5により回動可能に、すなわち開閉可能に取付けられる。本実施形態においては、ドア本体4は、図2および図3に示す室外側6に開放される外開き式ドアを示すが、本発明は室内側7に開く内開き式ドアにも適用可能なものである。
【0017】
ドア枠3は、吊元側縦枠9及び戸先側縦枠10と、これらの縦枠9と10との間に設けられた上枠11と下枠12とを備える。縦枠9および縦枠10と上枠11および下枠12とは、不図示のねじ部材、または結合金具とねじ部材とにより結合される。なお、縦枠9と10および上枠11と下枠12の材料は特に限定されず、例えば金属製や合成樹脂製、または木製その他の素材あるいはこれらを複合した材料を用いることができる。また、本発明は、上枠11又は下枠12を省略したドア枠にも適用できる。また、本発明は、ドア枠が吊元側縦枠9と戸先側縦枠10のみからなる場合にも適用できるものである。また、本発明において、ねじ部材は、ねじのみならず、ボルトを含めた意味に用いる。
【0018】
本実施形態のドア本体4は、左右に縦芯材14と15とを備え、上下に横芯材16と17とを備える。この例のドア本体4は、採光のため、吊元側に縦長の複層ガラス19が組み込まれ、上部に横長の複層ガラス20が組み込まれている。縦長の複層ガラス19は、吊元側の縦芯材14と、この芯材14に平行に配置される補助の縦芯材21との間に設けられる。横長の複層ガラス20は、上の横芯材16とこの芯材16に平行に配置される補助の横芯材22との間に設けられる。
【0019】
縦芯材14と15と21、および横芯材16と17と22はいずれも鋼板を折曲げ成形材またはアルミニウム合金等の押し出し成形材を用いることができる。しかしながら、本発明においてはこれらの芯材の材料は上記例に限定されない。芯材14~17および21と22は鋼板等でなる内側表面板24と外側表面板25との間に挟まれて、内側表面板24と外側表面板25がリベット等の固定具や溶接により芯材14~17および21と22に固定される。
【0020】
本実施形態においては、内側表面板24および外側表面板25の間に、パネル状の断熱材26を挟み、断熱材26を内側表面板24と外側表面板25に接着して構成している。ドア本体4としては、本実施形態で示したもの以外に種々の構造のものが採用される。例えば縦横の框内に、押出形材により成形されたパネルを取り付けたもの等、本実施形態と異なる種々の構造や素材の組み合わせのものを用いることができる。
【0021】
図4図5に示すように、吊元側縦枠9は内部に中空部9aを有する中空構造を有する。本実施形態の吊元側縦枠9は、室内側見付け面部9bと、室外側見付け面部9cと、ドア本体側見込み面部9dと、躯体側見込み面部9eとで囲まれた矩形の中空部9aが、吊元側縦枠9の内部に形成された例を示す。なお、本発明において、縦枠9及び縦枠10を平面視した場合の外周を縦枠の側面と称する。したがって、本実施形態のように、吊元側縦枠9の水平断面が矩形に形成されている場合、見付け面部9b、見付け面部9c、見込み面部9d及び見込み面部9eは縦枠の側面となる。なお、略U字状・略C字状のように平面視で外周に一部に欠けた部分のある枠を構成した場合、平面視においてその外周の欠けた部分における端部どうしを線でつなげた範囲が「側面の内側」である。
【0022】
図4に示すように、吊元側縦枠9の室内側見付け面部9bには、隣接するドア本体4の室内側見付け面部4d側に突出して、吊元側縦枠9とドア本体4との隙間8を覆う遮蔽部9gを設けている。また、室外側見付け面部4eに吊元側縦枠9の室外側見付け面部9c側に突出して隙間8を隠す遮蔽部4fが設けられている。
【0023】
蝶番5は、その軸5aが吊元側縦枠9内に位置するように、後述の構造で吊元側縦枠9に取り付けられる。吊元側縦枠9のドア本体側見込み面部9dには、蝶番5を取り付けるための開口部9fが設けられている。図4おいて、蝶番5の軸心5xは、軸5aの中心であり、この蝶番5の軸心5xは、吊元側縦枠9の側面の内側に位置する。また図4おいて、蝶番5の上筒部5c及び下筒部5bは、吊元側縦枠9の側面の内側、即ち室内側見付け面部9b、室外側見付け面部9c、躯体側見込み面部9e及びドア本体側見込み面部9dに囲まれた範囲内に収まっていることが好ましい。ただし、蝶番5の軸心5xが吊元側縦枠9の側面の内側に位置していれば、ドア本体側見込み面部9d又は躯体側見込み面部9eから上筒部5c及び下筒部5bの一部が突出していてもよい。
【0024】
蝶番5は、図6ないし図8に示すように、軸5aを保持した下筒部5bと、軸5aの下筒部5bより上方につき出した部分に嵌めた上筒部5cとを有する。本実施形態においては、軸5aは下筒部5bと上筒部5cのうちの少なくともいずれか一方に対して回動可能に取り付けられていればよい。下筒部5bには下筒部5bと一体に吊元側縦枠9への取付部5dが設けられている。
【0025】
上筒部5cには、水平断面形状がL字形をなすアーム部5eが上筒部5cと一体に設けられている。アーム部5eには後述の位置調整部材としての水平調整部材5fが取り付けられている。本実施形態においては、取付部5dが第1の取付部であり、アーム部5eと水平調整部材5fとで第2の取付部5gを構成する。
【0026】
蝶番5は吊元側縦枠9に直接取り付けてもよいが、本実施形態においては、ブラケット28を介して蝶番5が吊元側縦枠9に取り付けられる例を示す。ブラケット28は、金属製のもののみならず、合成樹脂製のものであってもよい。
【0027】
図4および図5に示すように、ブラケット28は、本体部28aの水平断面形状が略L字形をなす。本体部28aの縦横の幅は、それぞれ吊元側縦枠9に設けた開口部9fの縦横の幅より小さく、本体部28aは開口部9fから吊元側縦枠9内に差し込むことができる。
【0028】
ブラケット28の本体部28aには、蝶番5を取り付けるための受板部28dを有する。図7に示すように、受板部28dには、その上下2個所に、蝶番5を取り付けるねじ部材30をねじ込むねじ孔31が設けられている。
【0029】
受板部28dには、上下のねじ孔31と31との間に、偏心回転体34の軸部34aを回動可能に挿通する円孔32が設けられている。偏心回転体34は、ドア枠3に対するドア本体4の上下位置を調整するものであり、その軸部34aの一端に、軸部34aより大径の円形部34bが、軸部34aに対して偏心して一体に設けられたものである。
【0030】
ブラケット28の本体部28aの上下端部に、吊元側縦枠9にブラケット28を取り付けるためのL字形の取付部28bと28cが、ねじ部材36により本体部28aに固定して取り付けられている。なおこれらの取付部28bと28cは本体部28aと一体に設けてもよい。上下の取付部28bと28cには、吊元側縦枠9にブラケット28を取り付けるための取付孔38が設けられている。
【0031】
吊元側縦枠9の見込み面部9dに設けられた開口部9fの上下には、ブラケット28を取り付けるための裏板39が溶接または不図示の固定機構により固定され、裏板39には、ねじ孔39aが設けられている。ブラケット28の取り付けは、本体部28aを吊元側縦枠9の開口部9fに挿入し、取付部28bと28cを裏板39に当て、ねじ部材30を、取付部28bと28cの取付孔38に通し、裏板39のねじ孔39aにねじ込むことにより行なわれる。
【0032】
蝶番5の取付部5dには、ブラケット28の受板部28dのねじ孔31に対応して、それぞれ上下に長い長孔43が設けられている。これらの上下の長孔43と43との間に、横方向に長い長孔44が設けられている。この長孔44の上下幅は、偏心回転体34の円形部34bの直径よりわずかに大きく形成されている。ブラケット28に設けられたねじ孔31および円孔32と、取付部5dに設けられた縦長の長孔43および横長の長孔44と、長孔43にねじ部を通してブラケット28のねじ孔31にねじ込まれる蝶番5固定用のねじ部材30と、ブラケット28の円孔32に軸部34aが回動可能に嵌められると共に、偏心した円形部34bが取付部5dの長孔44に回動可能に嵌められる偏心回転体34とにより、ドア枠3に対するドア本体4の上下方向の位置調整機構が構成される。
【0033】
蝶番5のアーム部5eに取り付ける水平調整部材5fは、図8に示すように、L字形のアーム部5eの先端側縦板部46に当てる縦板部47と、先端側縦板部46の上端部、下端部にそれぞれ当てる上板部48および下板部49と、ドア本体4に水平調整部材5fを取り付けるための取付板部50とを有する。
【0034】
水平調整部材5fの縦板部47には、水平調整部材5fをアーム部5eに取り付けるためのねじ部材52をねじ込むねじ孔47aが、上下2個所に設けられている。また、縦板部47の上下のねじ孔47aと47aとの間に、偏心回転体53の軸部53aを回動可能に嵌める円孔47bが設けられている。偏心回転体53は、ドア枠3に対するドア本体4の幅方向の位置調整用に設けられたもので、その軸部53aの一端に、軸部53aより大径の円形部53bが、軸部53aに対して偏心して一体に設けられたものである。
【0035】
水平調整部材5fの取付板部50には、水平調整部材5fをドア本体4に取り付けるためのねじ部材55を通す横長の長孔50aが上下2個所に設けられている。また、取付板部50の上部には、偏心回転体57の円形部57bを上下動可能に嵌める縦長の長孔50bが設けられている。図4および図5のとおり、水平調整部材5fのドア本体側端部5f1は、ブラケット60の本体部60aにおいて形成される凹部60jの開口部60kに第2の取付部が挿通して取り付けられるため、ドア本体4の見込み面部4aよりもドア本体4の内側(図4及び図5の水平断面におけるドア本体4の見込み面部4aから吊元側縦枠9の反対側)に設けられる。
【0036】
アーム部5eの先端側縦板部46には、アーム部5eに水平調整部材5fを取り付けるためのねじ部材52を通す横長の長孔46aが、上下2個所に設けられている。また、上下の長孔46aと46aとの間に、偏心回転体53の円形部53bを回動可能に嵌める縦長の長孔46bが設けられている。長孔46bの左右の幅は、偏心回転体53の円形部53bの直径よりわすかに大きく形成されている。水平調整部材5fに設けられたねじ孔47aおよび円孔47bと、アーム部5eに設けられた横長の長孔46aおよび縦長の長孔46bと、長孔46aにねじ部を通して水平調整部材5fのねじ孔46aにねじ込まれる水平調整部材5f固定用のねじ部材52と、水平調整部材5fの円孔47bに軸部53aが回動可能に嵌められると共に、偏心した円形部53bがアーム部5eの長孔46bに回動可能に嵌められる偏心回転体53とにより、ドア枠3に対するドア本体4の幅方向の位置調整機構が構成される。図4及び図5において、アーム部5eは、アーム部5eの先端部5e1をドア本体の見込み面部4aに対向して設けられる。
【0037】
蝶番5の第2の取付部5g、すなわち水平調整部材5fは、ドア本体4に直接取り付けてもよいが、本実施形態においては、図8に示すように、第2の取付部5gをドア本体4にブラケット60を介して取り付ける構造としている。すなわち、ドア本体4の見込み面部4aには、蝶番5にドア本体4を取り付けるためのブラケット60を挿入する開口部4cが設けられている。ブラケット60は、金属製のもののみならず、合成樹脂製のものであってもよい。
【0038】
ブラケット60は、ドア本体4の見込み面部4aの開口部4cに挿入される本体部60aと、本体部60aの上下端部にそれぞれ設けられた取付部60bと60cとを有する。これらの取付部60bと60cには、ブラケット60をドア本体4に取り付けるためのねじ部材62を通す取付孔63を有する。ブラケット60は、本体部60aの吊元側の凹部60jと、その凹部60jの吊元側の開口部60kを備える。また、図8および図16に示すように、本体部60aの上部には、ドア本体4をドア枠3に取り付ける際に、ドア本体4を仮止めしておくために、水平調整部材5fの取付板部50の頂部に設けた段部50cに掛ける引掛部60dを有する。
【0039】
ブラケット60の本体部60aには、水平調整部材5fにブラケット60を取り付けるねじ部材55をねじ込むねじ孔64と、偏心回転体57の軸部57aを回動可能に嵌める円孔65とが設けられている。偏心回転体57は、ドア枠3に対するドア本体4の厚み方向の位置を調整するもので、その軸部57aの一端に、軸部57aより大径の円形部57bが、軸部57aに対して偏心して一体に設けられたものである。ブラケット60に設けられたねじ孔64および円孔65と、水平調整部材5fに設けられた横長の長孔50aおよび縦長の長孔50bと、長孔50aにねじ部を通してブラケット60のねじ孔54にねじ込まれる水平調整部材5f固定用のねじ部材55と、ブラケット60の円孔65に軸部57aが回動可能に嵌められると共に、偏心した円形部57bが水平調整部材5fの長孔50bに回動可能に嵌められる偏心回転体57とにより、ドア枠3に対するドア本体4の厚み方向の位置調整機構が構成される。
【0040】
図10に示すように、吊元側縦枠9には、ブラケット28の上下の部分をそれぞれ覆う遮蔽部材67Aと67Bが設けられている。下側の遮蔽部材67Bは、蝶番5の下側部分、すなわち下筒部5bやそのブラケット28への取り付け部分も覆う。遮蔽部材67Aを取り付けるため、図11に示すように、ブラケット28の上部の取付部28bには、その垂直板部28jの上下に段部28eと溝部28fとが設けられ、遮蔽部材67Aに設けた爪部67cと突起67dを、それぞれ段部28eと溝部28fに、遮蔽部材67Aの弾性を利用して掛けることにより、遮蔽部材67Aがブラケット28に取り付けられる。
【0041】
下側の遮蔽部材67Bについても同様に、図12に示すように、取付部28cの垂直板部28gの上下に溝部28hと段部28iが設けられ、遮蔽部材68Bの突起67fと爪部67eをそれぞれ溝部28iと段部28hに、遮蔽部材67Bの弾性を利用して掛けることにより、遮蔽部材67Bがブラケット28に取り付けられる。これらの遮蔽部材67Aと67Bのブラケット28への取り付けは、遮蔽部材67Aと67Bの弾性を利用して行なっているので、蝶番5によるドア枠3にドア本体4を取り付けた後、遮蔽部材67Aと67Bをそれぞれワンタッチで取り付けることができる。
【0042】
図13図14に示すように、ドア本体4側に取り付けるブラケット60についても同様に、ブラケット60の上部を覆う遮蔽部材68Aと、ブラケット60の下部を覆う遮蔽部材68Bが設けられる。すなわちブラケット60の上部を覆う遮蔽部材68Aは、図13に示すように、ブラケット60の上端部60eに遮蔽部材68Aの上端部の折曲げ部68cを当て、遮蔽部材68Aに設けた突起68dをブラケット60に設けた溝部60fに掛けると共に、図14に示すように、遮蔽部材68Aの両側の折曲げ部68eを、ブラケット60の両側の突起60gに掛けてブラケット60に取り付ける。
【0043】
ブラケット60の下部を覆う遮蔽部材68Bは、図13に示すように、ブラケット60の下端部60hに遮蔽部材68Bの下端部の折曲げ部68fを当て、遮蔽部材68Bに設けた突起68gをブラケット60に設けた溝部60iに掛けると共に、図14に示すように、遮蔽部材68Bの両側の折曲げ部68eを、ブラケット60の両側の突起60gに掛けてブラケット60に取り付ける。
【0044】
本実施形態において、建物の開口部2にドア枠3を取り付けた後のドア本体4のドア枠3への取り付けは以下の手順で行なわれる。まず、ブラケット28には、蝶番5を取り付けておく。このブラケット28への蝶番5の取り付けは、蝶番5の取付部5dをねじ部材30によりブラケット28に結合することにより行なう。すなわち、図7に示すように、ねじ部材30を、取付部5dの上下の長孔43と、ブラケット28の受板部28dのねじ孔にねじ込み、締め付けることにより取付部5dをブラケット28に結合する。
【0045】
このように、ねじ部材30で蝶番5の取付部5dをブラケット28に結合するとき、取付部5dの長孔44に、偏心回転体34の円形部34bを嵌め、軸部34aをブラケット28の受板部28dの円孔32に嵌め、軸部34a端部に設けられている不図示の溝に不図示のワッシャを嵌めて抜け止めしておく。
【0046】
このように、ブラケット28に蝶番5を取り付けた状態にしておき、ブラケット28の本体部28aを吊元側縦枠9の開口部9fに挿入する。この時、蝶番5の軸5aは、吊元側縦枠9の中空部9a内に位置する。また、取付部5gのアーム部5eの一部は、開口部9fを通して吊元側縦枠9の外に露出する。
【0047】
そして、ブラケット28の取付部28bと28cの取付孔38にねじ部材30を通して、さらに吊元側縦枠9の見込み面部9dの裏面に設けられた裏板39のねじ孔39aにねじ込んで締め付けることにより、ブラケット28と共に蝶番5を吊元側縦枠9に取り付ける。
【0048】
このように、吊元側縦枠9に蝶番5を取り付けた状態においては、平面視において、蝶番5の軸5aにおける回動中心は、吊元側縦枠9の側面、すなわち本実施形態においては見付け面部9bと9cおよび見込み面部9dと9eで囲まれた箇所に位置する。
【0049】
一方、ドア本体4を蝶番5を取り付ける際には、前もって図8に示すブラケット60をドア本体4に取り付けておく。すなわち、ブラケット60の本体部60aを、ドア本体4の見込み面部4aの開口部4cに挿入し、ねじ部材62を取付部60bと60cの取付孔63に通し、見込み面部4aの裏面に設けた裏板66のねじ孔66aにねじ込み、締め付けることにより、ブラケット60をドア本体4の見込み面部4aに取り付ける。
【0050】
ドア本体4を蝶番5に取り付けるに当たり、蝶番5のアーム部5eは水平調整部材5fにねじ部材52により固定しておく。また、アーム部5eと水平調整部材5fとでなる取付部(第2の取付部)5gの回動を防止するため、図15に示すように、蝶番5をドア本体4が開いた状態に相当する姿勢に回動させておき、蝶番5のL字形のアーム部5eとブラケット28との間に、回動規制具33を挿入し、固定しておく。この回動規制具33の固定は、ねじ部材35を回動規制具33に設けた取付孔33aに挿通してブラケット28に設けられたねじ孔37(図7参照)にねじ込み、締め付けることにより行なう。
【0051】
このように蝶番5の取付部5gの回動を防ぐ状態にしておき、蝶番5の取付部5gにドア本体4を載せる。すなわち、図16に示すように、ブラケット60に設けられた引掛部60dを、取付部5gの水平調整部材5fの取付板部50の上端の段部50cに掛けてドア本体4を蝶番5に仮止めする。そして、水平調整部材5fの取付板部50の長孔50aにねじ部材55を通し、ブラケット60に設けたねじ孔64にねじ込む、締め付けることにより、水平調整部材5fにドア本体4を固定する。
【0052】
このように、吊元側縦枠9に蝶番5を介してドア本体4を取り付けた後、吊元側縦枠9に対するドア本体4の建付けを調整する。この時、蝶番5の回動を阻止していた回動規制具33を外しておく。そして、まずドア本体4のドア枠3に対する上下方向の建付け調整を行なうため、蝶番5をブラケット28に固定していたねじ部材30を緩めて、ブラケット28に対して蝶番5、すなわちドア本体4の上下位置を調整可能にする。
【0053】
そして、偏心回転体34の円形部34bに設けられた多角形の凹部34cに、この凹部34cに合致する形状の先端形状を有する不図示の工具を嵌めて回すことにより、ブラケット28に対する蝶番5の上下位置、すなわちドア本体4の上下位置を調整する。この上下位置の調整を適正に行なった後、ねじ部材30を締めてブラケット28に対する蝶番5の上下位置、すなわち吊元側縦枠9に対するドア本体4の上下位置を固定する。
【0054】
次にドア枠3に対するドア本体4の幅方向の位置を調整するため、アーム部5eに水平調整部材5fを固定しているねじ部材52を緩めて、アーム部5eに対する水平調整部材5fの相対移動を可能にしておく。そして、偏心回転体53を回してアーム部5eに対する水平調整部材5fの位置、すなわちドア本体4の幅方向の位置を調整する。このドア本体4の幅方向の位置の調整を適正に行なった後、ねじ部材52を締めてアーム部5eに対する水平調整部材5fの水平位置、すなわち吊元側縦枠9に対するドア本体4のドア幅方向の位置を固定する。
【0055】
次に水平調整部材5fにドア本体4を固定しているねじ部材55を緩め、偏心回転体57を回すことにより、水平調整部材5fに対するドア本体4の厚み方向に位置を調整した後、ねじ部材55を締める。これにより吊元側縦枠9に対するドア本体4の厚み方向の位置が調整される。このようなドア本体4の厚み方向の位置調整により、ドアを閉じている時にドア枠3とドア本体4との間に挟まれる不図示のガスケットの圧力を適正に保つことができる。
【0056】
上述のように、本実施形態のドアは、吊元側縦枠9に蝶番5を取り付けた状態においては、平面視において、蝶番5の軸5aにおける回動中心は、吊元側縦枠9の側面で囲まれた箇所に位置する。このため、蝶番5を見えにくくすることができ、デザインを向上させることが可能となる。すなわち、蝶番5は、そのドア本体4側の取付部である第2の取付部5gを、吊元側縦枠9の開口部9fに通し、第2の取付部5gをドア本体4の見込み面部4aに取り付けたので、ドアを開いた状態において、第2の取付部5gのみが目視され、デザイン性が向上する。
【0057】
また、本実施形態においては、第1の取付部5dは、ドア本体4に対面する吊元側縦枠9の見込み面部9dに取り付けたので、ドアを開いた状態において、ドア本体の縦横の位置調整機構を行なうことが可能となるので、ドアを開放状態とすれば、建付け調整が可能となり、施工性およびメンテナンス性がより向上する。
【0058】
また、本実施形態においては、吊元側縦枠9の見付け面部9bに、縦枠9側からドア本体4側に突出する遮蔽部9gを設け、ドア本体4の見付け面部4eに、吊元側縦枠9の見付け面部9c側に突出する遮蔽部4fを設けることにより、吊元側縦枠9とドア本体4との間の隙間8を覆っている。このため、ドアを閉じた状態では、遮蔽部9gと4fとにより、蝶番5やその取り付け部分が見えないため、よりデザイン性の優れたドアを提供できる。また、吊元側縦枠9とドア本体4との間の隙間8が遮蔽部4fで覆われるため、ドアが閉じているときに蝶番にアクセスしにくくなるので、外部から蝶番5が壊され難くなり、防犯性が向上する。なお、吊元側縦枠9とドア本体4との間の隙間8を覆う遮蔽部は、ドア本体4の室内側見付け面部から吊元側縦枠9側に突出させ、吊元側縦枠9の室外側見付け面部からドア本体4の見付け面部側に突出させて設けてもよい。
【0059】
また、本実施形態においては、吊元側縦枠9に、ブラケット28を介して蝶番5を取り付けたので、ドアが閉じた状態において、ブラケット28により、蝶番5が見えない構造がより実現し易くなり、デザイン性がより向上する。また、ブラケット28と第1の取付部5dとの間に、建付け調整機構のためのねじ孔31や偏心回転体34の取付部を設けることにより、吊元側縦枠9への加工部分を減らすことができ、製造が容易となる。
【0060】
また、本実施形態においては、蝶番5は、軸5aに一端側が取り付けられ、他端側がドア本体4に水平調整部材5fを介して結合されるアーム部5eを有し、このアーム部5eは、水平断面形状がL字形をなす。このようなアーム部5eを設ければ、吊元側縦枠9内の領域をアーム部5eの回動に有効に利用して、ドア本体4の回動範囲を広く確保することができる。
【0061】
また、図10ないし図12に示すように、前記ブラケット28を覆う遮蔽部材67A、67Bを備えることにより、蝶番5を含むドア本体4の回動のための機能部品をさらによりよく隠すことができる。このため、ドアのデザイン性がより向上する。さらに、図10図13図14に示すように、ドア本体4側のブラケット60を覆う遮蔽部材68A、68Bを設けることにより、ドアのデザイン性をさらに向上させることができる。
【0062】
<第2の実施形態>
上述のように、第1の実施形態においては、蝶番5の軸5aの中心が吊元側縦枠9内に位置する構成としたので、デザイン性を向上させることが可能である。この第1の実施形態において、例えば特開2013-11054号公報に記載のように、従来のドアクローザーを採用することが考えられる。この従来のドアクローザーは、ドア枠の上枠とドア本体の上部との間に設けられるものである。しかしながら、このような従来のドアクローザーを採用した場合、高所での作業による取り付け作業やメンテナンス作業が必要となり、施工性、メンテナンス性の面で改良すべき点がある。また、ドアクローザーがドアの外部から目視できるので、デザイン性の面でも改良すべき点がある。
【0063】
仮に、例えば特開平6-66060号公報に記載のように、ドアクローザーの本体部分、すなわちドア本体を閉じる方向に力を加えるスプリングを収容するドアクローザー本体部をドア本体の上部に収容して外部から目視できない構造にしたとしても、ドアクローザー本体部に連結される操作アーム部分はドア本体の外に露出するので、やはりデザイン性の課題が残る。その上、ドア施工後は、ドアクローザーへのアクセスがドア本体の上からのみに限定されるため、調整ができず、施工性、メンテナンス性の面で改良すべき点がある。以下に説明する本発明の第2の実施の形態は、このような課題をも解決し、さらなるデザイン性の向上および施工性とメンテナンス性の向上を図るものである。
【0064】
図17ないし図19は第2の実施形態のドアに用いる蝶番5を示す。この蝶番5は、蝶番5内に蝶番5内の軸81と同軸のドアクローザー69を構成するものであり、図1ないし図15に示したドアにおける蝶番5の代わりに用いることができるものである。すなわち、図1ないし図15に示したドア枠3やドア本体4の構成は第2の実施形態のドア枠3やドア本体4の構成に用いることができ、ブラケット28やブラケット60と蝶番5との関連構成、すなわち建付け調整に関する構成も、第1の実施の形態のものを用いることができる。
【0065】
図17ないし図19において、蝶番5の下筒部5bは下筒部5bと一体の吊元側縦枠9への取付部5dを有する。この取付部(第1の取付部)5dは図4ないし図7に示したように、ブラケット28を介して吊元側縦枠9に取り付けられるものである。また、蝶番5の上筒部5cは上筒部5cと一体のアーム部5eを有する。このアーム部5eは水平断面形状がL字形をなすもので、図6図8に示すように、水平調整部材5fが取り付けられ、第2の取付部5gを構成するものである。また、この第2の取付部5gにブラケット60を介してドア本体4が取り付けられる。
【0066】
下筒部5b内にはチャンバ73が形成され、このチャンバ73にプランジャ74が上下動可能に収容される。下筒部5bの下端部は、下筒部5bに設けられた雌ねじ部5mにねじ込まれる雄ねじ部76aを有する端部キャップ76により閉塞される。下筒部5bの上部には、内径、外径が下筒部5bより小さな円筒部77が一体に設けられる。この円筒部77内に、ロッド78が上下動可能に挿入され、このロッド78の下端は、プランジャ74に結合されている。チャンバ73内には、プランジャ74を下方に押す力を加える圧縮スプリング79が設けられている。円筒部の内壁にはチャンバ73内に充填される油等の作動流体の漏れを防ぐパッキング80が設けられている。
【0067】
下筒部5bの上部に設けられた小筒部77の外側には、円筒状のブッシング83が嵌めて固定されている。上筒部5c内には、軸81が、上筒部5cの回動と共に回動するように組み込まれている。軸81の下部は円筒部81aをなし、この円筒部81aがロッド78の上端部の外側に嵌まり、かつブッシング83の内側に回動可能に嵌め込まれている。ブッシング83と軸81との間には、ブッシング83と軸81および上筒部5cとの間の回動抵抗を低減する軸受85と86とが設けられている。
【0068】
軸81の下部の円筒部81aには、対をなす螺旋溝81bと81cとが設けられている。また、ブッシング83にも溝83aと83bが設けられている。この例ではブッシング83に設ける溝83aと83bは螺旋状の溝として設けられている。ロッド78と軸81とブッシング83とは、ロッド78の上端部近傍に設けられた孔78aと、軸81の円筒部81aに設けられた螺旋溝81bと81c、およびブッシング83に設けられた溝83aと83bに嵌めるピン87により相互に連結される。
【0069】
このため、上筒部5cがドア開方向に回動すると、上筒部5cと共に軸81が回動することにより、軸81の螺旋溝81bと81cとがピン87およびロッド78を押し上げる方向に動かす。これにより、後述の作動流体回路を介して、チャンバ73のプランジャ74より上の上室73aの作動流体がプランジャ74より下の下室73bに流れて、ロッド78がプランジャ74を引き上げて圧縮スプリング79を圧縮するように動く。
【0070】
図19に示すように、端部キャップ76には、ドアの閉じ速度を調節するための第1の調節部材90と、閉じ動作の際の最後の閉じ速度(ラッチ速度)を調節するための第2の調節部材91とが設けられている。これらの調節部材90と91は、それぞれ、上部90aと91aは上側が細くなるテーパー形をなし、下部は雄ねじ部90bと91bが形成されたものである。端部キャップ76には、調節部材90と91にそれぞれ対応して、孔92と93が設けられている。これらの孔92と93は、調節部材90と91がそれぞれ嵌まるように、上部92aと93aとをテーパー形とし、下部は、調節部材90と91の雄ねじ部90bと91bとがそれぞれねじ込まれる雌ねじ部92bと93bとして形成されている。
【0071】
端部キャップ76の中央部には、上面から端部キャップ76の途中部分にわたって、流体回路の一部となる縦孔94が設けられる。縦孔94と、調節部材90と91をそれぞれ嵌める孔92と93とは、それぞれ孔95と96により連通している。
【0072】
端部キャップ76の上面には、端部キャップ76の周囲から一体に立ち上げて形成された円筒部98が設けられている。この円筒部98の外面には、その上端から縦方向に流体回路の一部となる溝99が設けられ、この溝99と第1の調節部材90を嵌める孔92とが、孔100により連通している。
【0073】
したがって、ドアが開いた状態、すなわち圧縮スプリング79が圧縮された状態からドアが閉じるとき、圧縮スプリング79の弾力によってプランジャ74が下降する。これにより、プランジャ74の下室73bからの作動流体は、端部キャップ76の中心の縦孔94から孔95を通り、第1の調節部材90と孔92との間の隙間を通る。さらに孔100を経て、円筒部98の外周の溝99を通って、プランジャ74の上室73aに至る。このため、第1の調節部材90の位置を上げてその外周面と孔92の内壁との間を狭くすると、作動流体の流量が制限されてドアを閉じる速度が遅くなり、反対に第1の調節部材90の位置を下げるとドアを閉じる速度が速くなる。
【0074】
なお、ドアが開いた状態から人手により外力を加えてドアを閉じる際に、その力が過大であったために下室73bの流体圧力が過大になった際には、下室73bの流体を上室73aに流す逆止弁を有する回路が設けられているが、図示を省略している。
【0075】
次に第2の調節部材91に関する流体回路について説明する。円筒部98の外周には、円筒部98の上下方向に流体回路の一部となる溝101が設けられている。溝101の上端部は、円筒部98を半径方向に貫通する孔102により、チャンバ73内に連通する。この孔102は、ドアが閉じた状態、すなわち図19に示すように圧縮スプリング79が最も伸びた状態において、プランジャ74の上面よりわずかに上に位置する円筒部98の箇所に設けられる。溝101の下端部は、端部キャップ76に設けられた孔103により、第2の調節部材91を嵌めた孔93に連通する。
【0076】
したがって、ドアが開いた状態から、圧縮スプリング79が伸びながらドアが閉じていくとき、ドアが閉じる直前までは溝101の上端部に繋がる孔102はプランジャ74により塞がれており、溝101には作動流体は流れない。しかしドアが閉じる最終段階になると、プランジャ74の下降により、溝101の上端部の孔102がプランジャ74の上室73aに露出する。
【0077】
このため、ドアが閉じる最終段階になると、プランジャ74の上室73aから、孔102と、溝101と、孔103を介して第2の調節部材91が嵌まる孔93に連通し、さらに孔96と、縦孔94を介してプランジャ74の下室73bに連通する。したがって、ドアが閉じる最終段階では、第1の調節部材90に関連する回路を流れる作動流体の流量に、第2の調節部材91に関連する回路を流れる作動流体の流量が加わる。その結果、ドアが閉じる最終段階では、第2の調節部材91で調節される流量に対応して、ドアの閉じる速度(ラッチ速度)を変えることができる。
【0078】
プランジャ74には、ドアを開く際にプランジャ74の上室73aの作動流体を下室73bに流す逆止弁104が設けられている、ロッド78とプランジャ74には、それぞれ逆止弁104に連通する孔105と106が設けられている。この逆止弁104は、ドアが閉じるときには下室73bが圧縮されて作動流体の圧力が上がることによって閉じ、下室73bが孔105と106を通して作動流体が流れることを防ぎ、第1の調節部材90と孔92との間の回路を通して作動流体が流れ、調整された速度でドアが閉じる。
【0079】
第1の調節部材90と第2の調節部材91は、例えば多角形の形状を有する操作部90cと91cを蝶番5から下方に突出させることにより、容易に調整作業が行なえる。すなわち、作業者は、高所作業によらず、自然な姿勢で工具により操作部90cと91cを掴むことが可能になるため、容易に調整作業が行なえる。また、図10図12に示したように、ブラケット28を隠す隠蔽部材67Bを設けることにより、蝶番5の下部は外部から視認できないため、操作部90c、91cが下方に突出していても、デザイン性を損なうことはない。
【0080】
上述のように、第2の実施形態のドアにおいては、吊元側縦枠9内に取り付けられる蝶番5にドアクローザー69を収容したものであり、蝶番5のみならず、ドアクローザーも吊元側縦枠9内に収めることができる。このため、従来のドアクローザーのように、ドアクローザーをドア本体4の上部とドア枠3の上枠11との間に設ける必要がなくなる。このため、ドアクローザーを隠蔽することができ、第1の実施形態よりもさらにデザイン性が向上する。また、ドアクローザーの取り付け場所がドア上部ではなくなるため、取り付けが高所作業でなくなり、施工性が向上する。さらに、ドアクローザーの設置も、蝶番5の設置と同時に行なえるので、施工の手間が少なくなる。また、調節部材90及び調節部材91等によるドアクローザー69の調整も、ドア上部における高所の作業ではなく、手元で行なえるので、調整作業も容易となるため、メンテナンス性が向上する。
【0081】
以上本発明を実施形態により説明したが、本発明を実施する場合、吊元側縦枠9の形状は水平断面形状が矩形のみではなく、他の形状とすることも可能であり、例えば側面部の一部に縦方向に溝が形成された構造とすることもできる。また、本発明おける蝶番と同軸のドアクローザーは、少なくともドアが閉まる速度をコントロールする機能若しくはラッチ速度をコントロールする機能を備えた装置であればドアクローザーとして適用可能であり、上記実施形態に示したドアクローザーに限らない。その他、本発明の具体的実施に当たっては、上記説明に限られず、種々の変更、付加が可能である。
【符号の説明】
【0082】
1:ドア
2:開口部
3:ドア枠
4:ドア本体
4a:見込み面部
4f:遮蔽部
5:蝶番
5a:軸
5b:下筒部
5c:上筒部
5d:第1の取付部
5e:アーム部
5f:水平調整部材
5g:第2の取付部
8:隙間
9:吊元側縦枠
9d:見込み面部
9f:開口部
9g:遮蔽部
10:縦枠
11:上枠
12:下枠
28:ブラケット
60:ブラケット
67A、67B、68A、68B:遮蔽部材
69:ドアクローザー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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